JP2007527719A - 改変された腫瘍崩壊性ウイルス - Google Patents

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Abstract

細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されている選択されたピコルナウイルス、および対象物の治療方法を提供する。

Description

本発明は、改変された腫瘍崩壊性ピコルナウイルスおよび対象の治療方法に関連する。
細胞表面分子に対するウイルスの付着はウイルス複製の最初の段階であり、従って、細胞の特異的なウイルス受容体がウイルスの組織親和性のための主要な決定因子である。崩壊促進因子(DAF/CD55)は、4つの細胞外の短いコンセンサス反復(SCR)からなる70kDaのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)固定の補体調節タンパク質であり、この崩壊促進因子が、いくつかのエコーウイルス(EV)、コクサッキーB型ウイルス(CVB)およびコクサッキーウイルスA21(CVA21)をはじめとする数々のヒトエンテロウイルスに対する膜付着タンパク質として役立っている。一般に、DAFだけに対するウイルスの結合は、エンテロウイルスの感染を許すには不十分であり、DAFとの相互作用は、細胞進入のための必要条件であると見なされている135Sの変化型(A)粒子を誘導しない。エンテロウイルスの感染のためのDAFの生理学的な役割は、感染性ウイルスと結合し、これを濃縮し、これにより、第2の機能的な細胞進入受容体との相互作用を介する細胞進入のための増大した機会を生じさせる膜隔離受容体としてであることが主張されている。
多くの他のピコルナウイルス受容体(これらはポリオウイルスによって用いられ、ライノウイルスおよびコクサッキーB型ウイルスの主要な受容体群である)の場合と同様に、CVA21細胞内在化受容体、すなわち、細胞間接着分子−1(ICAM−1/CD54)は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、5重に軸を取り囲むカプシドの谷の内部で結合する。そのような谷の底でのウイルス受容体との間での相互作用はカプシドを脱安定化させ、立体配座の変化、すなわち、ウイルスが脱外皮することへの準備段階を誘導する。
CVA21のプロトタイプ株(Kuykendall)は呼吸器感染症の原因因子であり、ICAM−1およびDAFの両方に結合する。しかしながら、表面に発現しているDAFに対するCVA21のプロトタイプ株の結合は、増殖性感染またはA粒子の形成を開始させるために十分でなく、ICAM−1との相互作用が細胞進入のために要求される。CVA21感染時におけるDAFについてのより機能的な役割が、表面のDAFが、DAFのウイルス非結合ドメインに対するモノクローナル抗体(mAb)によって架橋され、これにより、ICAM−1の非存在下での感染が可能であるときに観測される。
本出願人は、ICAM−1を認識する腫瘍崩壊性ウイルスを使用して悪性腫瘍を治療するための新しい方法を以前に開発していた(国際特許出願公開WO01/37866)。優れた治療結果が、様々なコクサッキーウイルスA型株を多数のガン細胞タイプについて使用することによって得られていた。可能なガン治療を拡大し、また、さらに一層有効な治療を提供するために、本発明者らは、改善された腫瘍崩壊特性および殺傷特性を有する新しい腫瘍崩壊性ウイルスを改変および生物選抜によって得ている。
第1の態様において、本発明は、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されている選択されたピコルナウイルスを提供する。
好ましくは、選択されたピコルナウイルスは細胞上の崩壊促進因子(DAF)を介して細胞に溶解的に感染することができる。
好ましくは、ピコルナウイルスは、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルス、未分類のエンテロウイルス、ライノウイルス、パラエコーウイルス、ヘパトウイルスおよびカルジオウイルスを含むエンテロウイルスのプロトタイプ株および臨床単離株の両方からなる群から選択される。
好ましい形態において、ピコルナウイルスはコクサッキーウイルスである。好ましくは、コクサッキーウイルスはA型またはB型であり、より好ましくはコクサッキーウイルスA型であり、さらにより好ましくは、コクサッキーウイルスはコクサッキーウイルスA21である。
好ましい形態において、ピコルナウイルスはエコーウイルスである。好ましくは、エコーウイルスは、エコーウイルスの6型、7型、11型、12型、13型または29型である。
好ましい形態において、ピコルナウイルスはポリオウイルスである。好ましくは、ポリオウイルスは、ポリオウイルスの1型、2型または3型である。
好ましい形態において、ピコルナウイルスはライノウイルスである。好ましくは、ライノウイルスはライノウイルスの主要群またはライノウイルスの非主要群のメンバーである。
1つの好ましい形態において、ピコルナウイルスは、ICAM−1を有しない細胞に溶解的に感染することができないピコルナウイルスを、ICAM−1を有しないDAF発現細胞株において継代培養し、ICAM−1を有しない細胞に溶解的に感染することができる選択されたピコルナウイルスを回収することによって生物選抜される。
別の好ましい形態において、ピコルナウイルスは、任意の既知の手段によって、例えば、部位特異的変異誘発、または、ICAM−1への接近が抗ICAM−1抗体の使用によって阻止される細胞における継代培養などによって変化させ、または変異させ、または改変することができる。
好ましくは、選択されたピコルナウイルスは、野生型ウイルスと比較して、1つまたは複数のカプシドタンパク質において変化を有する。例えば、コクサッキーウイルスでは、カプシドタンパク質が、VP1、VP2およびVP3から選択される。より好ましくは、変異が、VP3のR96H、VP3のE101A、VP3のA239S、VP2のS164LおよびVP2のV209の1つまたは複数から選択される。
好ましくは、細胞は新生物であり、より好ましくは、新生物は、DAFを発現する新生物である。例には、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、メラノーマ、前ガン性細胞、食道ガン、乳ガン、脳ガン、卵巣ガン、胃ガンおよび腸ガンが含まれるが、これらに限定されない。
第2の態様において、本発明は、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染することができる単離されたピコルナウイルスの核酸分子を提供する。1つの実施形態において、核酸分子はピコルナウイルスに由来することができ、また、ウイルス由来の一本鎖RNAまたは相補的DNAであり得る。好ましくは、核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される核酸配列を含む。
第3の態様において、本発明は、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染することができるピコルナウイルスを生物選抜するための方法を提供し、この場合、この方法は、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染することができないピコルナウイルスを十分な数の継代培養にわたって好適な細胞株において培養すること、および、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染することができるピコルナウイルスを選択することを含む。
好ましくは、細胞株はヒトのガンから選択され、例えば、横紋筋肉腫、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、メラノーマ、前ガン性細胞、食道ガン、乳ガン、脳ガン、卵巣ガン、胃ガンおよび腸ガンなどから選択される。より好ましくは、細胞株は、ICAM−1を発現しないDAF発現細胞株である。
典型的には、十分な数の継代培養は一般には約10回までである。しかしながら、1回〜100回またはそれ以上の継代培養が、ピコルナウイルスおよび細胞タイプに依存して使用され得ることが理解される。1つの実施形態では、4回の継代培養が使用される。別の実施形態では、5回の継代培養が使用される。さらに別の実施形態では、6回、7回または8回の継代培養を使用することができる。
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様による方法から得られるピコルナウイルスを提供する。
第5の態様において、本発明は、本発明の第1の態様または第4の態様による単離されたピコルナウイルスを好適な医薬的に許容され得る賦形剤または希釈剤と一緒に含有する医薬組成物を提供する。
第6の態様において、本発明は、本発明の第2の態様によるウイルス核酸分子またはウイルス核酸の相補的なDNA複製体を好適な医薬的に許容され得る賦形剤または希釈剤と一緒に含有する医薬組成物を提供する。
第7の態様において、本発明は、新生物に罹患している哺乳動物における新生物を治療するための方法を提供し、この場合、この方法は、本発明の第1の態様または第5の態様による単離されたピコルナウイルスの効果的な量を、新生物の細胞のウイルス媒介による腫瘍崩壊を生じさせる条件のもとで哺乳動物に投与することを含む。
好ましくは、新生物は、DAFを発現する新生物である。例には、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、メラノーマ、前ガン性細胞、食道ガン、乳ガン、脳ガン、卵巣ガン、胃ガンおよび腸ガンが含まれるが、これらに限定されない。
第8の態様において、本発明は、新生物に罹患している哺乳動物における新生物を治療するための方法を提供し、この場合、この方法は、本発明の第2の態様による核酸分子またはウイルス核酸の相補的なDNA複製体の効果的な量、あるいは、本発明の第6の態様による医薬組成物の効果的な量を、新生物の細胞のウイルス媒介による腫瘍崩壊を生じさせる条件のもとで哺乳動物に投与することを含む。
好ましくは、新生物は、DAFを発現する新生物である。例には、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、メラノーマ、前ガン性細胞、食道ガン、乳ガン、脳ガンおよび卵巣ガンが含まれるが、これらに限定されない。
第9の態様において、本発明は、治療方法または処置方法における、本発明の第1の態様または第5の態様による単離されたピコルナウイルスの使用を提供する。
第10の態様において、本発明は、治療方法または処置方法における、本発明の第2の態様による核酸分子の使用を提供する。
第11の態様において、本発明は、本明細書中で定義されるようなCVA21−DAFvの形態における単離されている選択されたピコルナウイルスまたはその改変形態もしくは変化形態を提供する。
第12の態様において、本発明は、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されている選択されたピコルナウイルスの使用であって、哺乳動物における新生物を治療するための医薬品の製造における使用を提供する。好ましい実施形態において、新生物の細胞の少なくとも一部が殺されるようにピコルナウイルスを用いて哺乳動物における新生物を治療するための医薬品の製造における、本発明のピコルナウイルスを生じさせるための接種物の使用が提供される。
第13の態様において、本発明は、哺乳動物における新生物を治療するためにウイルスを生じさせるための接種物を哺乳動物に適用するためのアプリケーターが提供され、この場合、アプリケーターは、接種物が哺乳動物と接触させられ得るように接種物を含浸させた領域を含み、かつ、ウイルスは、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されている選択されたピコルナウイルスである。
本明細書中に記載されるウイルスのサンプルが、ブダペスト条約の条項に従って、Australian Government Analytical Labolatories(National Measurement Institute、1 Suakin Street(PO BOx 385)、Pymble、NSW 2073、オーストラリア)に寄託された。単離体CVA21#272101(受入番号NM05/43993)、同CVA21#275238(受入番号受入番号NM05/43991)および同CVA21#272598(受入番号NM05/43992)が2005年1月14日に寄託された。CVA21−DAFvは受入番号NM05/43996で2005年1月17日に寄託された。
本明細書全体を通して、文脈が他のことを要求しない限り、語句「含む(“comprise”)」または変化形(“comprises”または“comprising”など)は、言及された要素、完全体または工程、あるいは、要素、完全体または工程の群を包含することを意味し、任意の他の要素、完全体または工程、あるいは、要素、完全体または工程の群を除外することを意味しないことが理解される。
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイスまたは論文などの議論はいずれも、ある特定の状況を本発明に提供するという目的のためだけである。そのことは、これらの事柄のいずれかまたはすべてが先行技術の基礎の一部を形成しているか、あるいは、本出願の優先日の前において、本発明に関連する分野における広く既知の一般的な知識であったことを認めるものとして理解してはならない。
本発明がより明快に理解され得るために、好ましい形態が、下記の図面および実施例を
参照して記載される。
図1は抗ICAM−1 MAbの存在下および非存在下における(A)DAF発現CHO細胞および(B)ICAM−1発現CHO細胞に対する、[35S]−メチオニン標識されたCVA21プロトタイプ(Kuykendall)および3つのCVA21臨床単離体(#272101、#275238および#272598)の結合。結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを液体シンチレーション計数によって求めた。結果が三連のサンプルの平均+SDとして表される。Y軸は、結合したウイルスを示す(cmpx10)。
図2は抗DAF SCR1 MAb処理、抗ICAM−1ドメイン1 MAb処理および/またはPI−PLC処置の存在下におけるHeLa細胞に対する、[35S]−メチオニン標識されたCVA21プロトタイプ(Kuykendall)(A)および臨床単離体#272101(B)の結合。結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを液体シンチレーション計数によって求めた。結果が三連のサンプルの平均+SDとして表される。Y軸は、結合したウイルスを示す(cmpx10)。
図3はDAFまたはICAM−1のいずれかを単独または組合せで発現するCHO細胞に対する、[35S]−メチオニン標識されたCVA21プロトタイプ(Kuykendall)および3つのCVA21臨床単離体(#272101、#275238、#272598)の結合。(A)表面のDAF発現およびICAM−1発現のフローサイトメトリー分析。トランスフェクションされたCHO細胞を、コンジュゲート単独、抗DAF MAb(IH4)または抗ICAM−1 MAb(WEHI)のいずれかとインキュベーションし、特異的な結合をFACStar分析装置で測定した。黒塗りのヒストグラムはコンジュゲートの結合を表し、白抜きのヒストグラムは抗DAF MAbの結合を表し、点線のヒストグラムは抗ICAM−1 Mabの結合を表す。(B)結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを液体シンチレーション計数によって求めた。結果が三連のサンプルの平均+SDとして表される。Y軸は、結合したウイルスを示す(cmpx10)。
図4は抗DAF MAbのIA10(SCR1)、VIIIA7(SCR2)、IH4(SCR3)およびIIH6(SCR4)の存在下におけるCVA21プロトタイプ(Kuykendall)および臨床単離体(#272101、#275238、#272598)によるICAM−1陰性RD細胞の溶解性感染。抗DAF MAb(20μg/ml)を、96ウエルプレートで培養されたRD細胞の単層物に加えた。37℃で1時間インキュベーションした後、細胞を約10TCID50/ウエルのCVA21単離体により攻撃し、37℃で48時間インキュベーションした。細胞溶解を、細胞単層物をクリスタルバイオレット/メタノール溶液により染色し、その後、吸光度を540nmで測定することによって評価した。結果が二連のウエルの平均パーセント溶解として表される。
図5はプロトタイプCVA21Kuykendall株および臨床単離体(#272101、#275238および#272598)についての、VP1、VP2およびVP3のカプシドタンパク質の多配列アラインメント。Kuykendall株に対する臨床単離体におけるアミノ酸変化が太字で表される。配列アラインメントを、ClustalXプログラムを使用して作製した。CVA21−ICAM−1の結合フットプリントを構成する個々のアミノ酸配列が黒塗りの四角によって強調される。
図6はCVA21親株およびCVA21−DAFvによるSkMel28細胞およびRD細胞の感染。(A)RD細胞およびSkMel28細胞におけるICAM−1発現およびDAF発現のフロ−サイトメトリー分析。実線のヒストグラムはコンジュゲートのみの結合を表し、点線のヒストグラムは抗ICAM−1mAbの結合を表し、抗DAFmAbの結合が黒塗りのヒストグラムによって示される。(B)96ウエルプレートにおけるSkMel28細胞およびRD細胞の単層物をCVA21親株およびCVA21−DAFvの10倍希釈物とインキュベーションした。72時間のインキュベーションの後、単層物を固定し、クリスタルバイオレット溶液により染色した。+は、顕微鏡検査によって検出されたCPEを示す。(C)RD細胞上におけるCVA21−DAF変化体と比較したときの、SkMel28細胞上におけるCVA21親株およびCVA21−DAFvの代表的なプラーク形態。細胞にウイルスの連続希釈物を感染させ、0.7%のアガロースを含有するDMEMを感染後1時間して重層した。プレートを37℃でインキュベーションし、感染後48時間でクリスタルバイオレットにより染色した。
図7はCVA21−DAFvの結合および溶解性感染に対する抗DAFmAbおよび抗ICAM−1mAbの影響。(A)CHO細胞、CHO−DAF細胞、CHO−ICAM−1細胞およびDOV13細胞におけるDAFおよびICAM−1の表面レベルのフローサイトメトリー分析。実線のヒストグラムはコンジュゲートのみの結合を表し、点線のヒストグラムは抗ICAM−1mAbの結合を表し、抗DAFmAbの結合が黒塗りのヒストグラムによって示される。CHO細胞、CHO−ICAM−1細胞、CHO−DAF細胞およびDOV13細胞における表面発現したICAM−1(B)およびDAF(C)に対する放射能標識ウイルスの結合を液体シンチレーション計数によって測定した。結果が三連のサンプル+SDとして表される。(D)RD細胞およびDOV13細胞のCVA21溶解性感染に対するDAFのmAb架橋の影響。96ウエルプレートにおける単層物を抗DAF SCR3mAbとプレインキュベーションし、その後、CVA21親株およびCVA21−DAFv(1−10TCID50/ウエル)により攻撃した。37℃で72時間のインキュベーションの後、細胞単層物を固定し、クリスタルバイオレット溶液により染色した。+は、顕微鏡検査によって検出されたCPEを示す。10TCID50/ml未満のウイルス力価。
図8はDAFからのCVA21−DAFvの溶出。(A)表面のDAFに対するCVA21親株およびCVA21−DAFvの結合の厳格さ(stringency)の比較。CHO−DAF細胞を放射能標識ウイルスと4℃で2時間インキュベーションし、その後、細胞に結合しているウイルスを、氷上で1時間、様々な濃度の抗DAF SCR1mAb(IA10)により溶出した。上清を、溶出されたウイルスのレベルについてモニターした。結果が、細胞から溶出された放射能標識ウイルスの%として表される。(B)DAF結合CVA21−DAFvビリオンおよびICAM−1結合CVA21−DAFvビリオンの沈降。CHO−DAF細胞およびCHO−ICAM−1細胞を放射能標識されたCVA21−DAFvビリオンと4℃で2時間インキュベーションし、37℃で2時間溶出させた。溶出されたビリオンの沈降を5%〜30%のスクロースグラジエントで分析した。成熟ビリオン(160S)およびプロビリオン(125S)を内部移動コントロールとして使用した。
図9は抗DAF SCR1mAbおよび可溶性DAF(sDAF)によるCVA21−DAFv溶解性感染の阻害。(A)RD細胞のコンフルエント単層物を、CVA21−DAFvによる感染の前に抗DAF SCR1mAbのIA10とインキュベーションした。37℃で24時間インキュベーションした後、細胞を細胞溶解について調べ、写真撮影した。(B)CVA21−DAFvをsDAF(85μg/ml)と37℃で1時間インキュベーションし、RD細胞の単層物に加えた。37℃で48時間インキュベーションした後、細胞を細胞溶解について調べ、写真撮影した。
図10はCVA21の予測される受容体−ウイルス結合表面の詳細図。(A)VP1が黄色で描かれ、VP2がピンク色で描かれ、VP3がマゼンダ色で描かれる等表面(isosurface)として示される1つのCVA21プロトマーの上面図。数字は、二十面体の5回軸、3回軸および2回軸の対応する位置を示す。相互作用するICAM−1分子およびDAF分子がウォーム描図として示され、DAFがコムギ色で、谷と結合しているICAM−1が緑色で示される。CVA21親株におけるVP3のR96残基の位置(空間充填モデル)がVP1のC末端ループによって部分的に覆われ、かつ、アルギニン側鎖における1つの窒素原子(星印の隣の青色表面)だけをウイルスの表面から見ることができる。(B)上記のように着色されたタンパク質と、空間充填モデルにおいて強調されるVP3のR96残基およびE101残基とを伴うCVA21プロトマーの側面図。この図はプログラムpymol(http://www.pymol.org)を用いて作製された。
図11はキメラなDAF/CD46受容体に対する放射能標識CVA21の結合。(A)野生型DAF分子、野生型CD46分子およびDAF/CD46キメラ分子の概略図。(B)DAFの個々のSCRおよびCD46に向けられたmAbの結合のフローサイトメトリー分析。抗DAFmAbは、IA10(SCR1)、IH4(SCR3)、IIH6(SCR4)であり、抗CD46mAb(SCR1)はMCI20.6であった。適切なmAbとのインキュベーションの後、細胞をPBSにより洗浄し、PBSにおけるヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)フラグメント(DAKO A/S、デンマーク)の100μlに再懸濁し、氷上で20分間インキュベーションした。細胞を上記のように洗浄およびペレット化し、PBSに再懸濁し、FACStar分析装置(Becton Dickenson、Sydney、オーストラリア)を使用してDAFおよびCD46の発現について分析した。(C)DAF分子、CD46分子またはキメラなDAF/CD46分子を発現するCHO細胞に対する放射能標識CVA21の結合。細胞を約2x10cpmの35S標識されたCVA21と37℃で1時間インキュベーションし、その後、PBSにより4回洗浄した。細胞に結合したCVA21の量を液体シンチレーションによって測定した。結果が三連の平均+SDとして表される。
図12は時間、温度、および、インキュベーション媒体のpHに応答したDAF発現CHO細胞からのCVA21溶出。(A)CVA21を、細胞表面に発現したDAFに4℃で結合させ、温度を37℃に上げることによって2時間後に、さらに0分間、1分間、5分間、15分間、30分間および60分間にわたって溶出させた。溶出されたCVA21のレベルを液体シンチレーション計数によって求めた。(B)CVA21を、細胞表面に発現したDAFに4℃で2時間結合させ、その後、適切な温度でさらに30分間インキュベーションすることによって溶出させた。(C)CVA21を、細胞表面に発現したDAFに4℃で2時間結合させ、その後、適切なpHの媒体においてさらに30分間インキュベーションすることによって溶出させた。
図13はDAFおよびICAM−1から溶出された後におけるCVA21の感染性。(A)細胞表面に発現したDAFおよびICAM−1に対する4℃での[35S]−メチオニン標識CVA21の結合のレベル、および、37℃でのインキュベーションの後におけるそれぞれの受容体からの放射能標識ウイルスの溶出のレベル。結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを1450Microbeta TRILUX(Wallac、Turku、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定した。結果が三連のサンプル+SDとして表される。(B)細胞表面に発現したDAFおよびICAM−1への結合、そして、それらからの溶出の後におけるCVA21によるRD−ICAM−1細胞の溶解性感染。細胞の生存をクリスタルバイオレット/メタノール溶液による染色によって四連のウエルから定量化し、染色された細胞単層物の相対的な吸光度をマルチスキャン酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダー(Flow Laboratories、McLean、Virginia、米国)で540nmにおいて読み取った。50パーセントのエンドポイント力価を、ReedおよびMuenchの方法を使用して計算した。この場合、吸光度がウイルス非含有コントロール−3倍の標準偏差よりも小さいならば、ウエルは陽性としてスコア化された。
図14は架橋されたDAFからの溶出の後におけるCVA21の感染性。(A)RD細胞における細胞表面に発現したICAM−1(RD−ICAM−1)およびRD細胞におけるmAb架橋DAFからの[35S]−メチオニン標識CVA21の0℃および37℃での溶出。溶出された[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを1450Microbeta TRILUX(Wallac、Turku、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定した。結果が、三連のサンプルから溶出されたパーセントウイルス+SDとして表される。(B)コントロールのCVA21と比較される、ICAM−1およびmAb架橋DAFに対する結合、そして、それらからの溶出の後におけるCVA21によるRD−ICAM−1細胞の溶解性感染。細胞の生存をクリスタルバイオレット/メタノール溶液による染色によって四連のウエルから定量化し、染色された細胞単層物の相対的な吸光度をマルチスキャン酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダー(Flow Laboratories、McLean、Virginia、米国)で540nmにおいて読み取った。50パーセントのエンドポイント力価を、図13に記載されるように計算した。(C)ICAM−1または架橋DAFに対するCVA21結合の厳格さ。RD−ICAM−1細胞またはDAF架橋のRD細胞[抗DAF SCR3(IH4)mAbとプレインキュベーションされたRD細胞]を約2x10cpmの35S標識されたCVA21と0℃で2時間インキュベーションした。冷PBSによる4回の洗浄の後、細胞を多数のチューブに分割し、様々な濃度(0〜100μg/ml)の抗DAF SCR1mAbまたは抗ICAM−1ドメイン1mAbのいずれかと0℃で1時間インキュベーションした。細胞および上清を放射能について液体シンチレーション計数によってモニターした。結果が、細胞から溶出された35S標識CVA21の%として表される。
図15はICAM−1発現の遅れた誘導の後におけるRD細胞のCVA21誘導による溶解性感染。(A)アデノウイルスにより形質導入されたICAM−1発現の経時変化。RD細胞を、ヒトICAM−1のcDNAを含有する組換えアデノウイルスの2.5x10TCID50/mlによる形質導入によりヒトICAM−1を発現させるために誘導した。細胞を、抗ICAM−1ドメインmAb(IH4)を使用してアデノウイルス接種後の様々な時間でICAM−1の発現についてフローサイトメトリーによって評価した。(B)モック形質導入後24時間、あるいは、ヒトのICAM−1cDNAまたはCD36cDNAを含有する組換えアデノウイルスによる形質導入の後24時間での、DAF、ICAM−1およびCD36の表面発現を示すRD細胞のフローサイトメトリー分析。黒塗りのヒストグラムはDAF発現を表し、一方、ピンク色のヒストグラムはICAM−1発現を表し、青色のヒストグラムはCD36発現を表す。ICAM−1cDNAまたはCD36cDNAを含有する組換えアデノウイルスを、Adeno−questキット(Quantum Biotechnologies Inc)を製造者の説明書に従って使用して構築した。(C)24時間後までのICAM−1の遅れた発現を介するRD細胞のCVA21溶解性感染。RD細胞を、DAFに対するCVA21(moi=1.0TCID50)の結合の後0時間、6時間および24時間で、ICAM−1cDNAまたはCD36cDNAを含有する組換えアデノウイルスの2.5x10TCID50/mlによる形質導入によりICAM−1受容体またはCD36受容体を発現させるために誘導した。非形質導入のRD細胞がコントロールとして役立った。四連のウエルからの細胞生存をクリスタルバイオレット/メタノール溶液による染色によって定量化し、染色された細胞単層物の相対的な吸光度をマルチスキャン酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダー(Flow Laboratories、McLean、Virginia、米国)で540nmにおいて読み取った。50パーセントのエンドポイント力価を、ReedおよびMuenchの方法を使用して計算した。この場合、吸光度がウイルス非含有コントロール−3倍の標準偏差よりも小さいならば、ウエルは陽性としてスコア化された。(D)CVA21により誘導される溶解性感染。モック形質導入後24時間、あるいは、ヒトのICAM−1cDNAまたはCD36cDNAを含有する組換えアデノウイルスによる形質導入の後24時間で、CVA21(moi=1.0TCID50)とのインキュベーションの直後におけるRD細胞単層物の顕微鏡写真(X200)。
図16は乳ガン、卵巣ガン、前立腺ガンおよび結腸ガンの細胞株における受容体発現。3つの乳ガン細胞株、卵巣ガン細胞株、前立腺ガン細胞株および結腸ガン細胞株におけるICAM−1発現およびDAF発現のフローサイトメトリー分析。黒実線のヒストグラムはコンジュゲートのみを表し、ICAM−1発現が灰色のヒストグラムによって表され、DAF発現が白抜きのヒストグラムによって示される。
図17はCVA21−DAFvによるインビボ腫瘍崩壊。ヒトの乳ガン細胞、卵巣ガン細胞、前立腺ガン細胞および結腸ガン細胞のインビトロ培養物のCVA21−DAFv誘導による感染の顕微鏡写真。細胞単層物にCVA21親株またはCVA21−DAFvを感染させ、細胞単層物を細胞傷害作用についてモニターした。感染後72時間経った後、単層物を写真撮影した。
図18はヒトの乳ガン細胞株、卵巣ガン細胞株、前立腺ガン細胞株および結腸ガン細胞株におけるCVA21−DAFvの腫瘍崩壊能力の定量化。96ウエルプレートにおけるガン細胞の単層物にCVA21親株またはCVA21−DAFvのストック調製物の10倍希釈物を接種した。72時間のインキュベーションの後、単層物を細胞傷害作用の存在について調べた。50パーセントの感染エンドポイント力価を、顕微鏡により検出可能な細胞傷害作用(CPE)を陽性として示したウエルをスコア化することによって、ReedおよびMuenchの方法を使用して計算した。
図19はCVA21−DAFvによるヒト前立腺異種移植片のインビボ腫瘍崩壊。2x10個のPC3細胞を注入した後、脇腹で成長している皮下のPC3腫瘍(約50mm〜100mm)を有するSCID(重症複合免疫不全)マウスに、単回用量のCVA21親株、CVA21−DAFvまたはPBSによる静脈内注射を与えた。平均腫瘍サイズをカリパスにより体外から測定し、腫瘍体積を、球状体についての式を使用して推定する。腫瘍体積が6匹の処置マウスの平均+/−SEとして表される。
図20はCVA21#272598単離体のカプシドコード領域の配列。(A)ヌクレオチド配列および(B)翻訳されたアミノ酸配列(これらは配列番号1および配列番号2にそれぞれ対応する)。
図21はCVA21#275238単離体のカプシドコード領域の配列。(A)ヌクレオチド配列および(B)翻訳されたアミノ酸配列(これらは配列番号3および配列番号4にそれぞれ対応する)。
図22はCVA21#272101単離体のカプシドコード領域の配列。(A)ヌクレオチド配列および(B)翻訳されたアミノ酸配列(これらは配列番号5および配列番号6にそれぞれ対応する)。
図23はCVA21−DAFvのカプシドコード領域の配列。(A)ヌクレオチド配列および(B)翻訳されたアミノ酸配列(これらは配列番号7および配列番号8にそれぞれ対応する)。
一部の天然に存在するピコルナウイルスおよび他のウイルス(例えば、レオウイルスなど)が、限定されたタイプのガンの治療における使用に好適であることが知られているが、改善された治療を開発することが依然として求められている。ガン治療の可能な範囲を拡大し、また、さらに一層有効な治療を提供するために、本発明者らは、改善された腫瘍崩壊性を有する新しい腫瘍崩壊性ピコルナウイルスを改変および生物選抜によって得ている。
本明細書中に記載されるように、本発明者らは、野生型ピコルナウイルスが、DAFを発現し、かつ、ICAM−1を発現しない細胞(そのような細胞は通常、野生型ピコルナウイルスの感染に対して抵抗性である)に溶解的に感染させるために生物選抜され得ることを発見している。ピコルナウイルスの感染に対する細胞の「抵抗性」は、ウイルスによる細胞の感染が著しいウイルス産生またはウイルス収量を生じさせなかったことを示す。「感受性」である細胞は、細胞傷害作用の誘導、ウイルスタンパク質の合成および/またはウイルス産生を明らかにする細胞である。
これらの観測結果に基づいて、本発明者らは、哺乳動物における新生物を治療する際の使用に好適である新しいピコルナウイルスを得るための方法を開発している。哺乳動物はヒトであり得るか、あるいは、マウス、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長類およびヒト(これらに限定されない)を含む、社会的、経済的または研究的に重要な任意の生物種の個体であり得る。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
ピコルナウイルスは、天然に存在していてもよく、または、改変されてもよい。ピコルナウイルスは、ピコルナウイルスを自然界の供給源から単離することができ、かつ、それが研究室においてヒトによって意図的に改変されていないとき、「天然に存在している」。例えば、ピコルナウイルスを、「現場の供給源」から、すなわち、ヒト患者から得ることができる。
ピコルナウイルスは改変することができるが、依然として、DAFおよび/またはICAM−1を発現する哺乳動物細胞に溶解的に感染することができる。ピコルナウイルスは、天然に存在しているピコルナウイルスを、改変されたピコルナウイルスが得られるまで多数回の継代にわたって細胞株において培養することによって生物選抜することができる。好適な細胞株には、DAFを発現する細胞(例えば、ガン細胞株など)が含まれる。他の細胞株もまた好適であることが理解される。
ピコルナウイルスは、対象の細胞への投与に先立って、(例えば、プロテアーゼ(例えば、キモトリプシンまたはトリプシンなど)による処理によって)化学的または生化学的に前処理することができる。プロテアーゼによる前処理により、ウイルスの外皮またはカプシドが除かれ、ウイルスの感染性を増大させることができる。ピコルナウイルスは、ピコルナウイルスに対する免疫性を発達させている哺乳動物からの免疫応答を低下または防止するためにリポソームまたはミセルで覆うことができる。例えば、ビリオンを、ミセル形成濃度のアルキルスルファート界面活性剤の存在下においてキモトリプシンにより処理して、新しい感染性サブビリオン粒子を作製することができる。
ピコルナウイルスは、異なる抗原性決定基を含有し、それにより、ピコルナウイルスのサブタイプに以前にさらされた哺乳動物による免疫応答を低下または防止するように病原性表現型が異なる2つ以上のタイプのピコルナウイルスに由来する組換えピコルナウイルスであってもよい。そのような組換えビリオンは、異なるサブタイプのピコルナウイルスによる哺乳動物細胞の同時感染、その結果としての、異なるサブタイプのコートタンパク質の再分類、および、生じたビリオンカプシドへのそれらの組み込みによって生じさせることができる。
ピコルナウイルスは、変異しているコートタンパク質(例えば、VP1、VP2およびVP3など)をビリオンの外側カプシドに組み込むことによって改変することができる。コートタンパク質は、置換、挿入または欠失によって変異させることができる。置換には、本来のアミノ酸の代わりに異なるアミノ酸を挿入することが含まれる。挿入には、さらなるアミノ酸残基を1つまたは複数の場所においてタンパク質に挿入することが含まれる。欠失には、タンパク質における1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失が含まれる。そのような変異は、この分野で既知の様々な方法によって生じさせることができる。例えば、コートタンパク質の1つをコードする遺伝子のオリゴヌクレオチド部位特異的変異誘発により、所望する変異型コートタンパク質を生じさせることができる。ピコルナウイルスが感染した哺乳動物細胞におけるインビトロでの変異タンパク質の発現は変異タンパク質のピコルナウイルスビリオン粒子への組み込みをもたらす。
ピコルナウイルスはまた、ピコルナウイルスに対する免疫反応を低下または除去するために改変することができる。そのような改変されたピコルナウイルスは「免疫保護ピコルナウイルス」と呼ばれる。そのような改変では、哺乳動物の免疫系からピコルナウイルスを遮蔽するためのリポソーム、ミセルまたは他のビヒクルにピコルナウイルスを包むことを含むことができる。あるいは、外側カプシドに存在するタンパク質は宿主の体液性応答および細胞性応答の主要な決定因子であるので、ピコルナウイルスビリオン粒子の外側カプシドを除去または変化させることができる。
本発明の方法において、ピコルナウイルスは個々の哺乳動物における新生物に投与される。使用することができるヒトピコルナウイルスの代表的なタイプには、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルスおよび未分類のエンテロウイルス、ライノウイルス、パラエコーウイルス、ヘパトウイルスならびにカルジオウイルスが含まれる。好ましい形態において、ピコルナウイルスはコクサッキーウイルスである。好ましくは、コクサッキーウイルスはA型であり、より好ましくはコクサッキーウイルスA21である。異なる血清型および/または異なる株のピコルナウイルス(例えば、異なる動物種からのピコルナウイルスなど)の組合せを使用することができる。ピコルナウイルスは「天然に存在している」。すなわち、ピコルナウイルスは自然界の供給源から単離することができ、かつ、研究室においてヒトによって意図的に改変されていない。例えば、ピコルナウイルスを、「現場供給源」から、すなわち、ヒト患者から生物選抜することができる。所望されるならば、ピコルナウイルスは、新生物への投与に先立って、(例えば、プロテアーゼ(例えば、キモトリプシンまたはトリプシンなど)による処理によって)化学的または生化学的に前処理することができる。そのような前処理により、ウイルスの外皮が除かれ、それにより、ウイルスのより良好な感染性がもたらされ得る。
新生物は充実性新生物(例えば、肉腫またはガン腫)であり得るか、または、造血系を冒すガン性の成長物(「造血系新生物」;例えば、リンパ腫または白血病)であり得る。新生物は、正常な組織成長よりも迅速に細胞増殖によって成長する、明瞭な塊を一般には形成する異常な組織成長物である。新生物は、正常な組織との構造的な組織化および機能的な協調の部分的または完全な喪失を示す。本明細書中で使用されるように、「新生物」は「腫瘍」としてもまた示されるが、造血系新生物ならびに充実性新生物を包含することが意図される。新生物の細胞の少なくとも一部はDAFおよび/またはICAM−1を発現する。本発明の方法による治療に対して特に感受性である新生物の1つがメラノーマである。発明の方法による治療に対して特に感受性である他の新生物には、乳ガン、脳ガン(例えば、神経膠芽細胞腫)、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、卵巣ガン、胃ガンおよび腸ガンなどが含まれる。
ピコルナウイルスは、典型的には、生理学的に許容され得るキャリアまたはビヒクル(例えば、リン酸塩緩衝化生理的食塩水など)において新生物に投与される。「新生物への投与」は、ピコルナウイルスが新生物の細胞(これはまた本明細書中では「新生物細胞」として示される)と接触するような様式でピコルナウイルスが投与されることを示す。ピコルナウイルスが投与される経路は、配合物、キャリアまたはビヒクルと同様に、新生物の存在位置ならびにタイプに依存する。広範囲の様々な投与経路を用いることができる。例えば、近づくことができる充実性新生物については、ピコルナウイルスを注射によって新生物に対して直接に投与することができる。造血系新生物については、例えば、ピコルナウイルスを静脈内または血管内に投与することができる。体内において容易に近づくことができない新生物(例えば、転移物または脳ガンなど)については、ピコルナウイルスは、ピコルナウイルスが哺乳動物の身体中を通って全身に輸送され、それにより、新生物に到達し得るような様式で投与される(例えば、クモ膜下、静脈内または筋肉内)。あるいは、ピコルナウイルスを1つだけの充実性新生物に対して直接に投与することができ、この場合、ピコルナウイルスは、その後、全身的に身体中を通って転移物に運ばれる。ピコルナウイルスはまた、皮下、腹腔内、局所的(例えば、メラノーマの場合)、経口(例えば、口腔または食道の新生物の場合)、直腸(例えば、結腸直腸の新生物の場合)、膣(例えば、子宮頸部または膣の新生物の場合)、鼻腔に、または、吸入スプレー(例えば、肺の新生物の場合)によって投与することができる。
一般には、好適な組成物を当業者に既知の方法に従って調製することができ、従って、好適な組成物は、医薬的に許容され得るキャリア、希釈剤および/または補助剤を含むことができる。
このような組成物は標準的な経路によって投与することができる。一般に、組成物は、非経口経路(例えば、静脈内経路、髄腔内経路、皮下経路または筋肉内経路)、経口経路または局所経路によって投与することができる。より好ましくは、投与は非経口経路によってである。
キャリア、希釈剤および補助剤は、組成物の他の成分との適合性を有し、かつ、その被投与者に対して有害でないという点で「許容され得る」ことが必要である。
医薬的に許容され得るキャリアまたは希釈剤の例には、脱塩水または蒸留水;生理的食塩水溶液;植物系オイル、例えば、ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、ダイズ油、ゴマ油、例えば、ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、ダイズ油、ゴマ油、ラッカセイ油またはココナッツ油など;シリコーンオイル、ポリシロキサン(例えば、メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンなど)が含まれる;揮発性シリコーン;鉱油、例えば、流動パラフィン、軟パラフィンまたはスクアレンなど;セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど;低級アルカノール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールまたはグリセリンなど;脂肪酸エステル、例えば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルまたはオレイン酸エチルなど;ポリビニルピロリドン;寒天;トラガカントゴムまたはアラビアゴム、およびワセリンがある。典型的には、キャリアは組成物の10重量%〜99.9重量%を形成する。
本発明の組成物は、注射による投与のために好適な形態、経口摂取のために好適な配合物の形態(例えば、カプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤)、局所投与のために好適な軟膏、クリームまたはローションの形態、点眼剤としての送達のために好適な形態、吸入による投与(例えば、鼻腔内吸入または経口吸入などによる投与)のために好適なエアロゾル形態、非経口投与(すなわち、皮下注射、筋肉内注射または静脈内注射)のために好適な形態にすることができる。
注射可能な溶液または懸濁物として投与される場合、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤またはキャリアには、リンゲル液、等張性の生理的食塩水、リン酸塩緩衝化生理的食塩水、エタノールおよび1,2−プロピレングリコールが含まれ得る。
経口使用される好適なキャリア、希釈剤、賦形剤および補助剤のいくつかの例には、ピーナッツ油、流動パラフィン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチンおよびレシチンが含まれる。加えて、これらの経口配合物は、好適な矯味矯臭剤および着色剤を含有することができる。カプセル形態で使用されるとき、カプセルは、崩壊を遅らせる化合物(例えば、グリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートなど)でコーティングすることができる。
補助剤には、典型的には、皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤および緩衝化剤が含まれる。
経口投与される固体形態物は、ヒトおよび動物の製薬実務において許容され得る結合剤、甘味剤、崩壊剤、希釈剤、矯味矯臭剤、コーティング剤、保存剤、滑剤および/または時間遅延剤を含有することができる。好適な結合剤には、アラビアゴム、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースまたはポリエチレングリコールが含まれる。好適な甘味剤には、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンが含まれる。好適な崩壊剤には、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアールガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天が含まれる。好適な希釈剤には、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムまたはリン酸二カルシウムが含まれる。好適な矯味矯臭剤には、ハッカ油、ウインターグリーン油、サクランボ、オレンジまたはラズベリーの香料が含まれる。好適なコーティング剤には、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステルのポリマーまたはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラックまたはグルテンが含まれる。好適な保存剤には、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは重亜硫酸ナトリウムが含まれる。好適な滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクが含まれる。好適な時間遅延剤には、グリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートが含まれる。
経口投与される液体形態物は、上記の薬剤に加えて、液体キャリアを含有することができる。好適な液体キャリアには、水、オイル、例えば、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ラッカセイ油、ココナッツ油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリドなど、またはその混合物が含まれる。
経口投与される懸濁物は分散化剤および/または懸濁化剤をさらに含むことができる。好適な懸濁化剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムまたはアセチルアルコールが含まれる。好適な分散化剤には、レシチン、脂肪酸(例えば、ステアリン酸など)のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートまたはポリオキシエチレンソルビトールジオレアート、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアラートまたはポリオキシエチレンソルビトールジステアラート、ポリオキシエチレンソルビトールモノラウラートまたはポリオキシエチレンソルビトールジラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートまたはポリオキシエチレンソルビタンジオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラートまたはポリオキシエチレンソルビタンジステアラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートまたはポリオキシエチレンソルビタンジラウラートなどが含まれる。
経口投与されるエマルションは1つまたは複数の乳化剤をさらに含むことができる。好適な乳化剤には、上記で例示されたような分散化剤、または、天然ゴム(例えば、グアールガム、アラビアガムまたはトラガカントガムなど)が含まれる。
非経口投与可能な組成物を調製するための様々な方法が当業者には明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、これは本明細書により参考として本明細書中に組み込まれる)においてより詳しく記載される。
本発明の局所配合物は、1つまたは複数の許容され得るキャリアと一緒での有効成分と、必要な場合には任意の他の治療的成分とを含む。局所投与のために好適な配合物には、治療が必要とされる部位への皮膚を介した浸透のために好適な液体または半液体の調製物(例えば、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏またはペーストなど)、および、眼、耳または鼻への投与のために好適な滴剤が含まれる。
本発明による滴剤は無菌の水性または油性の溶液または懸濁物を含むことができる。これらは、有効成分を、殺菌剤および/または抗真菌剤および/または任意の他の好適な保存剤の水溶液に溶解し、そして、必要な場合には、表面活性剤を含むことによって調製することができる。得られる溶液は、その後、ろ過によって清澄化され、好適な容器に移され、滅菌され得る。滅菌は、オートクレーブ処理するか、または、90℃〜100℃で半時間維持することによって、あるいは、ろ過し、その後、無菌技術によって容器に移すことによって達成することができる。滴剤に含めるために好適な殺菌剤および抗真菌剤の例には、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、ベンザルコニウムクロリド(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)がある。油性溶液を調製するための好適な溶媒には、グリセロール、希釈されたアルコールおよびプロピレングリコールが含まれる。
本発明によるローションには、皮膚または眼に対する適用のために好適なローションが含まれる。眼用ローションは、殺菌剤を場合により含有する無菌の水溶液を含むことができ、滴剤の調製に関連して上記で記載された方法と類似する方法によって調製することができる。皮膚に適用されるローションまたはリニメント剤はまた、乾燥を急がせ、また、皮膚を冷やすための薬剤(例えば、アルコールまたはアセトンなど)、および/または、保湿剤(例えば、グリセロールなど)、または、オイル(例えば、ひまし油またはラッカセイ油など)を含むことができる。
本発明によるクリーム、軟膏またはペーストは、外用適用のための有効成分の半固体配合物である。それらは、細かく分割された形態または粉末化された形態での有効成分を、単独で、あるいは、水性流体または非水性流体における溶液または懸濁物で、脂肪性または非脂肪性の基剤と混合することによって作製することができる。このような基剤は、炭化水素(例えば、硬パラフィン、軟パラフィンまたは流動パラフィンなど)、グリセロール、蜜ろう、金属石けん;粘漿剤;天然起源のオイル、例えば、アーモンド油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ひまし油またはオリーブ油など;羊毛脂またはその誘導体、あるいは、アルコール(例えば、プロピレングリコールまたはマクロゴールなど)と一緒での脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはオレイン酸など)を含むことができる。
本発明の組成物は、任意の好適な界面活性剤、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤など、例えば、ソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体などを含むことができる。懸濁化剤(例えば、天然ゴム、セルロース誘導体または無機物質(例えば、ケイ酸系シリカなど)など)および他の成分(例えば、ラノリンなど)もまた含めることができる。
ピコルナウイルス、または、ピコルナウイルスから得られる核酸、または、ピコルナウイルスに由来する核酸が、新生物を治療するために十分である量(例えば、「効果的な量」)で投与される。新生物は、新生物の細胞に対するピコルナウイルスの投与が新生物細胞の溶解を生じさせ、新生物のサイズの減少または新生物の完全な除去をもたらすときに「治療される」。新生物のサイズの減少、または、好ましくは、新生物の除去は、一般には、ピコルナウイルスによる新生物細胞の溶解(「腫瘍崩壊」)によって引き起こされる。効果的な量は個体に基づいて決定され、少なくとも部分的には、ピコルナウイルスのタイプ;個体の体格、年齢、性別;新生物のサイズおよび他の特徴の検討に基づくことができる。例えば、ヒトの治療については、約10〜1012プラーク形成ユニット(PFU)のピコルナウイルスを、存在する腫瘍のタイプ、サイズおよび数に依存して使用することができる。好ましくは、接種物は約10PFUよりも多く含有し、例えば、約10PFU〜10PFUの間または約10PFU〜10PFUの間を含有する。より好ましくは、接種物は約1x10PFU〜約5x10PFUの間(例えば、約3x10PFUなど)を含有することができる。例えば、ヒトにおけるメラノーマの治療については、約3x10PFUの1回または複数回の接種を使用することができる。ピコルナウイルスは単回服用量または多数回の服用量(すなわち、2回以上の服用量)で投与することができる。多数回の服用量を同時に投与することができ、または、連続して(例えば、数日または数週間の期間にわたって)投与することができる。典型的には、治療的適用において、治療は疾患状態の継続期間にわたり、例えば、少なくとも、新生物が従来の手段によってもはや検出できなくなるまでである。例えば、検出不可能な新生物が存在するかもしれないことを治療医師が疑う場合には、検出可能な新生物の存在が認められなくなった後も一定の期間、治療を継続することが望ましい場合があることもまた意図される。ピコルナウイルスまたは核酸はまた、同じ個体における2つ以上の新生物に対して投与することができる。
ピコルナウイルスの多数回の投与が所望される場合、異なるウイルスを、前回に投与されたウイルスに対する何らかの免疫応答の影響を避け、または最小限に抑えるために、毎回投与することができ、また、治療の経過を、主治医によって決定され得るように1週間〜2週間またはそれ以上にわたって延長することができる。最も好ましくは、哺乳動物が以前にさらされていないウイルス、または、哺乳動物が、標準的な技術によって明らかにされ得るような比較的軽微な免疫応答を生じさせるウイルスを投与することができる。
本発明は、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染することができるピコルナウイルスの単離された核酸分子を包含する。1つの実施形態において、核酸分子はそのようなピコルナウイルスに由来することができ、ウイルスに由来する一本鎖RNAまたは相補的なDNAであり得る。本発明の核酸配列は、例えば、ウイルスの生成を可能にするために、または、細胞における溶解性感染を誘発することができるために、ウイルスゲノムをコードする核酸配列またはその十分な配列を含む、ピコルナウイルスに由来した核酸配列を包むことが理解される。例えば、核酸分子は、一本鎖RNA分子またはDNA分子(例えば、相補的なDNA分子など)、あるいは、異なるウイルス配列をコードする多数のそのような分子を含むことができる。
本明細書中で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド塩基、リボヌクレオチド塩基、または既知のアナログもしくは天然のヌクレオチド、またはその混合物の一本鎖ポリマーまたは二本鎖ポリマーを示す。
本明細書に関連して、「由来する」の用語は、配列が、ピコルナウイルスから直接に単離されたウイルスRNA、合成RNA、単離された配列に対応するcDNAであり得ることを包含することを理解しなければならない。この用語はまた、野生型配列または元の配列と比較して、例えば、カプシドタンパク質における変異を含めて、1つまたは複数の変異を配列に含む合成ポリヌクレオチド配列を包含する。
ウイルスRNAを単離するための任意の好適な方法を使用することができ、これには、フェノール/クロロホルム抽出の使用に基づく方法(例えば、ウイルスRNAを単離するための市販のキット形態などで提供され、例えば、Trizol(登録商標)LS試薬(GIBCO BRL、Life Technologies Grand Island、NY、米国)などがある)、磁気ビーズに基づく単離を利用する方法(例えば、Ambion MagMax(商標)ウイルスRNA単離キットなど)が含まれる。ウイルスRNAを単離するための様々な方法が、例えば、Ausubel,F.他編、Current Protocols in Molecular Biology(1992、Green Publishing Associates and Wiley−Interscience、John Wiley and Sons:New York)、および、Sambrook他(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York)に一般的に記載される。
本発明は、核酸配列がウイルスから直接的に単離されるか、または、合成されるか、または、プラスミド分子として提供されるか、または、混入物(例えば、細胞破片など)を有しないために、インビトロで、例えば、バクテリオファージT7RNAポリメラーゼを使用してcDNAテンプレートから作製されるとしても、核酸配列(例えば、ウイルスRNAなど)が、本明細書に関連して「単離された(されている)」と見なされることを必要としないことが理解される。従って、本明細書に関連して、RNAは、供給源材料からの非RNA成分(例えば、細胞のタンパク質など)がRNAから部分的または完全に除かれているとき、単離された(されている)と見なされる。例えば、RNAは、50%を超える非RNA物質が除かれているとき、「単離された(されている)」と見なされる。60%を超える非RNA物質が除かれること、より好ましくは、70%、80%または90%を超える非RNA物質が除かれることが好ましい。典型的には、RNAは10%未満の混入物質(より典型的には、5%未満の混入物質)を含有する。従って、RNAは、好ましくは、ウイルスRNAについて95%を超えて純粋であり、さらに一層より好ましくは、97%を超えて、または、99%を超えて純粋である。
好ましくは、核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される核酸配列を含む。当業者は、遺伝暗号の縮重性を考慮して、かなりの配列変化がこれらのポリヌクレオチド分子の間で可能であることを認識する。
本発明はまた、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド(例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7)に実質的に類似する単離されたポリヌクレオチド配列を提供し、この場合、そのような配列は、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染する能力をピコルナウイルスに提供する。ポリヌクレオチド配列変化体は、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7の配列の1つまたは複数と共通して、質的な生物学的活性を有する。用語「実質的に類似する」は、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7のいずれか1つに示される配列に対して少なくとも約60%(より好ましくは、少なくとも約70%、さらに一層より好ましくは、さらに少なくとも約80%)の配列同一性を有する配列を示すために本明細書中では使用される。典型的には、そのような配列は、より好ましくは、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7のいずれか1つに対して少なくとも約90%が同一であり、最も好ましくは、少なくとも約95%以上が同一である。
本明細書中で使用される「配列同一性」は、この分野で既知のコンピュータープログラムによって、例えば、GCGプログラムパッケージにおいて提供されるGAP(Program Manual for the Wisconsin Package、バージョン8(1996年8月)、Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wisconsin、米国、53711)(Needleman,S.B.およびWunsch,C.D.(1970)、Journal of Molecular Biology、48、443〜453)などによって指定の比較範囲にわたって最大限の一致のためにアラインメントされたときに同じである、2つの配列における残基を示す。
本発明の配列の上記記載に加えて、本発明の配列には、様々な変化体配列、例えば、ポリペプチド配列については、1つまたは複数のアミノ酸置換、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸変化を含む配列、例えば、保存的アミノ酸変化など、そして、ポリヌクレオチド配列については、1つまたは複数のアミノ酸置換、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸変化(例えば、1つまたは複数の保存的アミノ酸変化など)を含むポリペプチド配列をコードする配列が含まれることが理解される。これらの変化は、好ましくは、性質が軽微であり、すなわち、配列の活性(例えば、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染する能力をウイルスに付与することなど)に著しく影響しない保存的アミノ酸置換および他の置換である。保存的アミノ酸置換およびその導入方法がこの分野で知られており、それらは、一般には、1つのアミノ酸を、ポリペプチド鎖(タンパク質の一次配列)内において類似する性質を有する別のアミノ酸に置き換えるか、または取り替えることを示す。例えば、荷電アミノ酸のグルタミン酸(Glu)を同様に荷電したアミノ酸のアスパラギン酸(Asp)に置き換えることは保存的アミノ酸置換である。下記の表を1つの指針として使用することができる:
変化体配列は、例えば、本明細書中に記載されるカプシドタンパク質変化の保存的置換を含む。例えば、変異型VP3のR96Hの保存的置換(例えば、VP3のR96K)を含む配列は所望の性質を有し得ることが予想される。同様に、変異型VP3のE101Aの保存的置換(例えば、VP3のE101G、VP3のE101T、VP3のE101SまたはVP3のE101M)を含む1つまたは複数の配列は所望の性質を有し得ることが予想される。さらなる一例として、変異型VP3のA239Sの保存的置換(例えば、VP3のA239G、VP3のA239TまたはVP3のA239Mなど)を含む1つまたは複数の配列は所望の性質を有し得ることが予想される。なおかつさらに、例として、変異型VP2のS164Lの保存的置換(例えば、VP2のS164IまたはVP2のS164Vなど)を含む1つまたは複数の配列は所望の性質を有し得ることが予想される。
変化体配列は、本明細書中に記載されるように本発明に従って機能性について容易に試験することができる。
ピコルナウイルスは、RNAゲノムまたはゲノムの相補的なDNA複製体を使用することによって間接的に投与することができることもまた理解される。投与されたとき、ピコルナウイルスは、依然として、細胞内で複製することができ、かつ、所望される溶解性感染および殺傷を生じさせることができる。
従って、無傷のウイルスではなく、ウイルスを生じさせるための核酸を組み込むウイルスプラスミドまたは他のプラスミドまたは発現ベクターを、治療を行うために腫瘍細胞により取り込まれ、かつ、無傷のウイルスを細胞内で生じさせるために腫瘍内に注入することができる。好適な発現ベクターには、ウイルスを生じさせるために必要なウイルスタンパク質をコードするDNA(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)インサートを発現することができるプラスミドが含まれる。発現ベクターは、典型的には、挿入された核酸が機能的に連結されている転写調節制御配列を含む。「機能的に連結されている(される)」によって、核酸インサートが、挿入された配列の転写を、目的の読み枠がずれることなく可能にするための転写調節制御配列に連結されている(される)ことが意味される。そのような転写調節制御配列には、転写を開始させるためにRNAポリメラーゼの結合を容易にするためのプロモーター、および、転写されたmRNAに対するリボソームの結合を可能にするための発現制御エレメントが含まれる。
より具体的には、本明細書中で使用される用語「調節制御配列」は、所与のDNA配列の転写を行わせ、かつ、その転写レベルを制御(すなわち、調節)することに関与する任意のDNAを包含することを理解しなければならない。例えば、5’調節制御配列は、コード配列の上流側に位置するDNA配列であり、これはプロモーターおよび5’非翻訳リーダー配列を含むことができる。3’調節制御配列は、コード配列の下流側に位置するDNA配列であり、これは、1つまたは複数のポリアデニル化シグナルをはじめとする好適な転写終結(および/または)調節シグナルを含むことができる。本明細書中で使用される用語「プロモーター」は、転写開始時にDNA依存性RNAポリメラーゼによって認識され、かつ(直接的または間接的に)結合される任意のDNA配列を包含する。プロモーターは、転写開始部位、ならびに、転写開始因子およびRNAポリメラーゼに対する結合部位を含み、また、遺伝子発現調節タンパク質が結合し得る様々な他の部位または配列(例えば、エンハンサー)を含むことができる。
哺乳動物細胞のトランスフェクションのために好適な数多くの発現ベクターがこの分野では知られている。哺乳動物細胞のトランスフェクションのために好適な発現ベクターには、pSV2neo、pEF−PGk.puro、pTk2、ならびに、ポリアデニル化部位および伸長因子1−xプロモーターを組み込む非複製アデノウイルスシャトルベクター、ならびに、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを最も好ましくは組み込むpAdEasy型発現ベクター(例えば、He他(1998)を参照のこと)が含まれる。ポリペプチド伸長因子−α2をプロモーターとして用いるプラスミドpEFBOSもまた利用することができる。ウイルスを生じさせるために必要なウイルスタンパク質をコードするcDNAを、ウイルスRNAゲノムまたはそのフラグメントを逆転写することによって調製することができ、また、例えば、Sambrook他(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York)、および、Ausubel他(1994)、Current Protocols in Molecular Biology(米国、第1巻および第2巻)に記載されるようなこの分野で広く既知の組換え技術を利用して好適なベクターに組み込むことができる。
細胞を、cDNAではなく、精製されたビリオンから抽出されたウイルスRNAによりトランスフェクションすることができ、または、例えば、RNA転写物を、Ansardi、D.C.他(2001)に記載されるようにバクテリオファージT7RNAポリメラーゼを利用してcDNAテンプレートからインビトロで生じさせることができる。
同様に、1個だけのプラスミド分子またはRNA分子をウイルスタンパク質の発現またはウイルスの生成のために投与することができ、あるいは、ウイルスタンパク質の異なるタンパク質をコードする多数のプラスミド分子またはRNA分子を、細胞をトランスフェクションし、ウイルスを生じさせるために投与することができる。
プラスミドまたはRNAは、例えば、局所的に、あるいは、細胞のトランスフェクションを容易にするためのキャリアビヒクルの非存在下、または、そのようなビヒクルとの組合せでの腫瘍細胞による取り込みのための注入によって、それらのいずれでも腫瘍に投与することができる。好適なキャリアビヒクルには、この分野では従来から既知の水中油型のエマルションとして典型的には提供されるリポソームが含まれる。リポソームは、典型的には、脂質(特に、リン脂質、例えば、高い相転移温度のリン脂質など)と、通常の場合には、膜安定性をリポソームに提供するための1つまたは複数のステロイドまたはステロイド前駆体(例えば、コレステロールなど)との組合せを含む。リポソームを提供するために有用な脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セレブロシドおよびガングリオシドが含まれる。ジアセチルホスファチジルグリセロール類が特に好適であり、この場合、脂質成分は14個〜18個の炭素原子(より好ましくは16個〜18個の炭素原子)を含有し、かつ、飽和している。
ピコルナウイルスまたはピコルナウイルスを含む組成物はリポソームの形態で投与することができる。リポソームは、一般には、リン脂質または他の脂質物質に由来し、水性媒体に分散される単層または多層の水和した液晶によって形成される。リポソームを形成することができる生理学的に許容可能かつ代謝可能な任意の非毒性の脂質を使用することができる。リポソーム形態での組成物は、安定化剤、保存剤および賦形剤などを含有することができる。好ましい脂質は、天然および合成の両方で、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成させるための様々な方法がこの分野では知られており、これに関連して、Prescott編、Methods in Cell Biology(第XIV巻、Academic Press、New York、N.Y.(1976)、33頁以降)が特に参照される(その内容は本明細書中に参考として組み込まれる)。
リポソームと標的細胞との相互作用は受動的または能動的であり得る。能動的な標的化では、標的細胞によって発現される対応するリガンドと結合するか、または、そうでない場合には、標的細胞によって発現される対応するリガンドと相互作用する特異的なリガンドをリポソームの膜に組み込むことによるリポソームの修飾が伴う。そのようなリガンドには、例えば、モノクローナル抗体またはその結合性フラグメント(例えば、FabフラグメントまたはF(ab’)2フラグメント)、糖または糖脂質成分、あるいは、ウイルスタンパク質、DAFに対して特異的なモノクローナル抗体が含まれ、これらは特に好ましい。
ピコルナウイルスは他の治療的因子との組合せで投与することができる。例えば、ピコルナウイルスは1つまたは複数の異なる血清型または株のピコルナウイルスと一緒に投与することができる。さらなる血清型または株のピコルナウイルスは、本発明のピコルナウイルスと同じまたは異なる、細胞感染のための受容体要求を有することができる。
さらなる一例として、ピコルナウイルスまたはその組合せは、治療されている個体において免疫応答を調節または抑制することができる1つまたは複数の薬剤との組合せで投与することができる。この様式では、ウイルス感染に対する個体の生来的な免疫応答が変化させられ、それにより、好ましくは、より有効なウイルス感染および/または腫瘍崩壊の結果を可能にし得る。典型的には、免疫応答を変化させることができる薬剤は、免疫応答を抑制することができる薬剤である。個体(例えば、ヒト個体など)において免疫応答を調節または抑制することができる薬剤が、例えば、The Merck Index(第13版、Merck&Co.Inc、Whitehouse Station、NJ、米国)に記載される(その内容は本明細書中に参考として組み込まれる)。
ピコルナウイルスまたはその組合せは1つまたは複数の化学療法剤(これはまた抗新生物剤とも呼ばれる)との組合せで使用することができる。様々な抗新生物剤が、例えば、The Merck Index(第13版、Merck&Co.Inc、Whitehouse Station、NJ、米国)に記載される。例えば、ピコルナウイルスは下記の化学療法剤と一緒に投与することができる:例えば、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウラシル、メルファラン、シスプラチン、α−インターフェロン、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキサートおよびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびデキサメタゾン)、PROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート(ロイコボリンレスキューとともに)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン類、TNP−470、ペントサンポリスルファート、血小板因子4、アンギオスタチン、LM−609、SU−101、CM−101、テクガラン、サリドマイドおよびSP−PGなど。他の化学療法剤には、下記が含まれる:アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、これには、メクロレタミン、メルファン、クロラムブチル、シクロホスファミドおよびイホスファミドが含まれる;ニトロソウレア系、これには、カルムスチン、ロムスチン、セムスチンおよびストレプトゾシンが含まれる;アルキルスルホナート系、これには、ブスルファンが含まれる;トリアジン系、これには、ダカルバジンが含まれる;エチエンイミン系、これには、チオテパおよびヘキサメチルメラミンが含まれる;葉酸アナログ、これには、メトトレキサートが含まれる;ピリミジンアナログ、これには、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシドが含まれる;プリンアナログ、これには、6−メルカプトプリンおよび6−チオグアニンが含まれる;抗腫瘍抗生物質、これには、アクチノマシンDが含まれる;アントラサイクリン系、これには、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよびメトラマイシンが含まれる;ホルモンおよびホルモンアナログ、これには、タモキシフェンおよびコルチコステロイド類が含まれる;ならびに、その他の薬剤、これには、シスプラチンおよびブレキナルが含まれる。ピコルナウイルスは、例えば、メラノーマの治療のためには、ブレオマイシン、ビンデシン、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、プロカルバジン、ロムスチンまたはダカルバジンの1つまたは複数との組合せで使用することができる。ピコルナウイルスは、例えば、卵巣ガンの治療のためには、シスプラチンおよびカルボプラチンの1つまたは複数との組合せで使用することができる。ピコルナウイルスとの組合せで使用することができる化学療法剤のさらなる例には、例えば、乳ガンの治療については、シクロホスファミド(シトキサン)、メトトレキサート(アメトプテリン、メキサート、ホレクス)およびフルオロウラシル(フルオロウラシル、5−FU、アドルシル)[これはCMFと略記される];シクロホスファミド、ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびフルオロウラシル[これはCAFと略記される];ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびシクロホスファミド[これはACと略記される];パクリタキセル(タキソール)を伴うドキソルビシン(アドリアマイシン)およびシクロホスファミド;ドキソルビシン(アドリアマイシン)、その後、CMF;シクロホスファミド、エピルビシン(エレンス)およびフルオロウラシルが含まれる。乳ガンの女性を治療するために使用される他の化学療法薬物には、例えば、ドセタキセル(タキソテレ)、ビノレルビン(ナベルビン)、ゲムシタビン(ジェムザール)およびカペシタビン(キセロダ)が含まれる。
1つまたは複数の薬剤/因子(例えば、1つまたは複数のさらなるピコルナウイルス、免疫応答を調節または刺激することができる1つまたは複数の薬剤、あるいは、1つまたは複数の抗新生物剤など)との「組合せで」のピコルナウイルスの使用または投与は、ピコルナウイルスおよびさらなる薬剤/因子が治療効果(例えば、重なる一時的な効果など)を有する任意の様式での使用または投与を意味することが理解される。組合せの各要素は同時に投与することができ、または、所望する治療的効果を提供する任意の順序で個々に投与することができる。混合治療のために意図されるとき、ピコルナウイルスおよびさらなる薬剤/因子は物理的混合の状態であり得るか、または、例えば、投与のための説明書を伴うか、または伴わないキット形態などで、別個に提供され得る。本発明によるキットはまた、本発明の方法を行うために要求される他の構成成分(例えば、緩衝液および/または希釈剤など)を含むことができる。キットは、典型的には、様々な構成成分と、キットの構成成分を本発明の方法において使用するための説明書とを収容するための容器を含む。
本発明の医薬組成物には、1つまたは複数のさらなる治療的薬剤/因子との物理的な混合でのピコルナウイルスの組成物、ならびに、ピコルナウイルスを唯一の治療的に活性な因子として含む組成物が含まれることが理解される。
本発明の方法において、ピコルナウイルスは、新生物の治療するための他の方法(例えば、新生物の手術による縮小化もしくは切除および/または化学療法および/または放射線療法など)との併用で使用され得ることもまた理解される。例えば、充実性新生物の治療が所望される場合、ピコルナウイルスを、新生物の手術による縮小化または切除に対する補助として使用することができる。
本明細書中で使用されるように、「単離された(されている)」ウイルスは、ウイルスが、天然に存在しているウイルスであるか、あるいは、ヒトによって意図的または非意図的に改変されたウイルスであるとしても、ウイルスがともに見出される成分の一部またはすべてから除かれているウイルス、すなわち、ウイルスがともに見出される成分の一部またはすべてが除かれているウイルスである。そのような成分は混入成分と呼ばれることがある。「単離された(されている)」ウイルスは、すべての混入成分が除かれているという意味で、ウイルスの純粋な調製物である必要はないことが理解される。従って、ウイルスは、非ウイルス成分がウイルスから部分的または完全に除かれているとき、「単離された(されている)」と見なされる。例えば、ウイルスは、約50%を超える混入物質が除かれているとき、「単離された(されている)」と見なされる。約60%を超える混入物質が除かれ、より好ましくは、約70%を超える混入物質が除かれることが好ましい。典型的には、単離された(されている)ウイルスは、約80%を超える混入物質または約90%を超える混入物質が除かれている。より典型的には、約95%を超える混入物質または約97%を超える混入物質が除かれる。1つの実施形態において、99%を超える混入物質が除かれる。
本明細書中で使用される「ICAM−1の実質的には非存在下で」は、細胞に関連して使用されるとき、細胞が最小限のICAM−1を発現するか、または、ICAM−1を全く発現していないことを意味する。具体的には、そのような細胞は、感染のためにICAM−1の存在を必要とするウイルスによる細胞への溶解性感染のための基礎を提供するためには不十分なICAM−1を発現することが理解される。
本明細書中で使用されるように、細胞をウイルスと「接触させる」ことは、ウイルスを細胞の培養物に入れ、その結果、ウイルスが、細胞と接触するための機会を有するようになり、これにより、ウイルスによる成功した感染またはアポトーシスによる細胞死の誘導が生じ得ることを示す。
本明細書中で使用される「ウイルス感染」は、細胞内へのウイルスの進入、および、それに続く、細胞におけるウイルスの複製またはアポトーシスによる細胞死の誘導を示す。
本明細書中で使用される「感染多重度」は、ウイルスが、細胞と接触させるために使用されるとき、細胞の数に対するウイルスの数の比率を示す。
本明細書中で使用される「細胞溶解」は、細胞の細胞膜の破壊、および、細胞の内容物のすべてもしくは一部のその後の放出またはアポトーシスによる細胞死の誘導を示す。
本明細書中で使用される「完全な溶解」は、多数の細胞からなる培養物におけるすべての細胞の溶解を示す。
本明細書中で使用される「培養条件」は、細胞培養において使用される条件を示し、これには、温度、培養容器のタイプ、湿度、培養容器において使用されるCOまたは任意の他のガスの濃度、培養培地のタイプ、培養された細胞の初期密度、および、細胞にウイルスが感染させられるならば、最初の感染多重度が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用されるように、「細胞と会合している」ウイルスは、ウイルスが産生されている細胞の一部に付着しているか、または、ウイルスが産生されている細胞の一部に捕捉されているウイルスを示す。従って、ウイルスは、宿主細胞が溶解される前には細胞と会合している。細胞溶解が始まるとき、ウイルスは依然として、破壊された細胞の一部に付着し、または、破壊された細胞細胞の一部に捕捉され、細胞と会合したままであり得る。しかしながら、ウイルスが培地中に放出されて自由になったとき、ウイルスはもはや細胞と会合していない。
本明細書中で使用されるように、細胞は、細胞膜が破裂し、細胞内容物の少なくとも一部が細胞から放出されるとき、「破壊」されている。細胞を、例えば、凍結・融解、超音波処理または界面活性剤処理によって破壊することができる。
本明細書中で使用されるように、ウイルスを「集める」は、産生されたウイルスを、ウイルスが以前から感染している細胞培養物から収集するという行為を示す。ウイルスを集めることは、ウイルスが依然として細胞と会合しているならば、宿主細胞を破壊することが伴う。あるいは、しかし、あまり好ましくはないが、培養培地に放出されているウイルス粒子を培地から集めることができる。
本明細書中で使用される「細胞傷害作用」は、細胞が外見において膨張し、粒状なり、かつ、細胞膜が破壊されることによって示される。細胞傷害作用を示す細胞は、染色色素を取り込むので生細胞計数において陰性に染色され、または、細胞DNAの分解を示す。
本明細書中で使用される「接着性細胞」は、細胞培養において培養容器に接着する細胞を示す。接着性細胞の例には、培養容器の表面において細胞の単一層を形成する細胞である単層細胞が含まれる。「懸濁細胞」または「懸濁された細胞」は、細胞培養において培養容器に接着していない細胞を示す。懸濁細胞は「スピン培養」(これは、培養培地が培養プロセス期間中に継続的に撹拌される培養である)で成長させることができる。
本明細書中で使用される「細胞の生存性」または「生存し続ける細胞の百分率」は、集団において細胞傷害作用を示さない細胞の百分率である。
本明細書中で使用される「取り入れ時間」は、ピコルナウイルスが回収および精製される時点を示す。ウイルスは、好ましくは、力価が十分に高くなり、かつ、ウイルスが依存として細胞と会合しているときに集められる。ウイルスは、完全な細胞溶解が生じた後でさえ集めることができるが、精製プロセスを簡略化するために、ウイルスが細胞から放出される前にウイルスを集めることが望ましい。従って、細胞の生存性が、ウイルスが依存として細胞と会合しているどうかの目安として日常的に測定される。ウイルスは、一般には、細胞の少なくとも5%が生存しているときに集められる。好ましくは、ウイルスは、細胞の20%〜95%が生存しているときに集められ、より好ましくは、35%〜90%の細胞が依然として生存しているときに集められ、最も好ましくは、50%〜80%の細胞が依然として生存しているときに集められる。
本発明がより明快に理解され得るために、好ましい形態が、下記の実施例および図面(これらは、本発明の範囲を限定するとして解釈すべきではない)を参照して記載される。
材料および方法
細胞およびウイルス
コクサッキーウイルスA21(CVA21)プロトタイプ株Kuykendallおよび3つの臨床単離体(#272101、#272598および#275238)をMargery Kennett博士(Entero−respiratory Laboratory、Fairfield Hospital、Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。単離体#272101はHIV感染の26歳の男性から得られ、単離体#275238は、乳児突然死症候群のために死亡した3ヶ月の乳児から得られ、単離体#272598は、クループの激しい症状発現に苦しんでいる8歳の男児から得られた。これらの臨床CVA21単離体は、HeLa細胞および/またはヒトの肺繊維芽細胞もしくはHeLa−T細胞において約3回、そして、ICAM−1を発現する横紋筋肉腫(RD)細胞(RD−ICAM−1)において1回、継代培養された(Shafren,D.R.、D.J.Dorahy、R.A.Ingham、G.F.BurnsおよびR.D.Barry、1997、コクサッキーウイルスA21は崩壊促進因子に結合するが、細胞間接着分子1を細胞進入のために要求する、J.Virol.、71:4736〜4743)。CAV21のプロトタイプ株は、HeLa細胞および/またはヒトの肺繊維芽細胞もしくはHeLa−T細胞において約10回、そして、RD−ICAM−1細胞において3回〜4回、継代培養された。
CVA21プロトタイプ株(Kuykendall、GenBank受入番号AF465515)はMargery Kennett博士から得られ、SkMel28細胞において二重プラーク精製された(これは本明細書中ではCVA21親株と呼ばれる)。CVA21−DAFvが、本明細書中に記載されるように、RD細胞における連続継代培養によって、ICAM−1陰性細胞において成長させるために生物選抜された。インビボ研究のためのウイルスをSkMel28細胞の単層物(CVA21親株)またはRD細胞の単層物(CVA21−DAFv)において調製し、以前に記載されたように5%〜30%のスクロースグラジエントでの速度遠心分離によって精製し、ピーク画分をプールし、PBSに対して透析し、−80℃で保存した。ウイルスストック物(CVA21親株およびCVA21−DAFv)の力価を、ReedおよびMuenchのエンドポイント法を使用してSkMel28細胞に対して求めた。
HeLa細胞をAmrican Type Culture Collection(Manassas、Va、米国)から得た。一方、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をBruce Loveland博士(Austin Research Institute、Heidelberg、Victoria、オーストラリア)から得た。
ヒトメラノーマ細胞株のSkMel28を、S.J.Ralph博士(Department of Biochemistry and Molecular Biology、Monash University、Victoria、オーストラリア)から得た。横紋筋肉腫(RD)細胞をMargery Kennett博士(Entero−respiratory Laboratory、Fairfield Hospital、Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をBruce Loveland博士(Austin Research Institute、Heidelberg、Victoria、オーストラリア)から得た。卵巣ガン細胞株のDOV13をIan Campbell博士(Peter MacCallum Cancer Centre、Melbourne、オーストラリア)から得た。ICAM−1またはDAFを安定的に発現するCHO細胞(CHO−DAF細胞およびCHO−ICAM−1細胞)。CVA21プロトタイプ株(Kuykendall、GenBank受入番号AF465515)をMargery Kennett博士から得て、SkMel28細胞において増殖させた。
ヒト乳ガン細胞株(MDA−MB157、MDA−MB453、ZR−75−1)、上皮卵巣ガン細胞株(OVHS−1、OAW−42、DOV13)および不死化された正常なヒト卵巣表面上皮細胞株(HOSE)をPeter MacCallum Cancer Centre(Melbourne、オーストラリア)から得た。ヒト前立腺細胞株(PC3およびDU145)をGarvan Institute(Sydney、オーストラリア)から得て、LNCaP細胞をElizabeth Williams(Bernard O’Brien Institute of Microsurgery(Melbourne、オーストラリア)から得た。ヒト結腸直腸ガン細胞株(HCT116、SW620)をPeter MacCallum Cancer Centreから得て、HT−29をJohn Hunter Hospital(Newcastle、オーストラリア)から得た。
抗体
ICAM−1の最初のドメインに対して特異的な抗ICAM−1 MAbのWEHI(Berendt,A.R.、A.McDowell、A.G.Craig、P.A.Bates、M.J.E.Sternberg、K.Marsch、C.I.NewboldおよびN.Hogg、1992、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)感染赤血球についてのICAM−1上の結合部位は重なるが、LFA−1結合部位とは異なる、Cell、68:71〜81)はAndrew Boyd博士(Queensland Institute of Medical Research、Queensland、オーストラリア)によって提供された。抗DAF MAbのIA10(IgG2a)はDAFの最初の短いコンセンサス反復(SCR)を認識し、VIIIA7(IgG1)は、3番目のSCRと、2番目のSCRの一部とを認識し(Kinoshita,T.、M.E.Medof、R.SilberおよびV.Nussenzweig、1985、正常者および発作性夜間ヘモグロビン尿症患者の末梢血における崩壊促進因子の分布、J.Exp.Med.、162:75〜92)、IH4(IgG1)はDAFの3番目のSCRを認識し(Coyne,K.E.、E.S.Hall、M.A.Thompson、M.A.Arce、T.Kinoshoita、T.Fujita、D.J.Anstee、W.RosseおよびD.M.Lublin、1992、ヒトの崩壊促進因子におけるエピトープ、グリコシル化部位および補体調節ドメインのマッピング、J.Immunol.、149:2906〜2913)、一方、IIH6(IgG1)は4番目のSCRを認識する(Kinoshita,T.、M.E.Medof、R.SilberおよびV.Nussenzweig、1985、正常者および発作性夜間ヘモグロビン尿症患者の末梢血における崩壊促進因子の分布、J.Exp.Med.、162:75〜92)。MAbのIA10、VIIIA7およびIIH6は木下タロウ博士(免疫不全疾患研究分野、大阪大学、大阪、日本)からの譲渡であり、MAb IH4はBruce Loveland博士(Austin Research Institute、Heidelberg、Victoria、オーストラリア)からの譲渡であった。
抗DAFmAbのIH4(これはDAFのSCR3に対して特異的であり(Coyne,K.E.、E.S.Hall、S.Thompson、M.A.Arce、T.Kinoshita、T.Fujita、D.J.Anstee、W.RosseおよびD.M.Lublin、1992、ヒトの崩壊促進因子におけるエピトープ、グリコシル化部位および補体調節ドメインのマッピング、J.Immunol.、149:2906〜2913)、かつ、ヒト組換え可溶性DAF(sDAF)に対して特異的である)はBruce Loveland博士からの譲渡であった。SCR1に向けられた抗DAFmAbのIA10は木下タロウ博士(免疫不全疾患研究分野、大阪大学、大阪、日本)からの譲渡であった。抗ICAM−1 WEHImAbはICAM−1のN末端ドメインに向けられており(Hoover−Litty,H.およびJ.M.Greve、1993、ライノウイルス−可溶性ICAM−1複合体の形成およびビリオンにおける立体配座変化、J.Virol.、67:390〜397)、Andrew Boyd博士(Queensland Institute for Medical Research、Queensland、オーストラリア)によって提供された。
ウイルスの精製および放射能標識による結合アッセイ
6ウエル組織培養プレートにおけるRD−ICAM−1細胞のコンフルエント単層物に、37℃で1時間、500μlの適切な株のCVA21(1x10TCID50/ml)を接種した。非結合ウイルスを、メチオニン/システイン非含有DMEM(ICN Biochemicals、Aurora、Ohio、米国)により3回洗浄することによって除き、そして、メチオニン/システイン非含有DMEMを加えた後、細胞単層物をさらに2時間インキュベーションし、その後、300μCiの[35S]−メチオニン/システインTrans−Label(ICN Radiochemicals、Irvine、California、米国)を加えた。その後、感染させた単層物を5%COの環境において37℃で12時間インキュベーションした。3回の凍結/融解サイクルの後、ウイルス溶解物を5%〜50%のスクロースグラジエントで精製した(Shafren,D.R.、R.C.Bates、M.V.Agrez、R.L.Herd、G.F.BurnsおよびR.D.Barry、1995、コクサッキーウイルスB1、B3およびB5は崩壊促進因子を細胞付着のための受容体として使用する、J.Virol.、69:3873〜3877)。分画物を各チューブの底から回収し、1450Microbeta TRILUX(Wallac、Turku、フィンランド)での液体シンチレーション計数によってモニターして、放射能標識ウイルス結合アッセイにおいて使用される160Sピーク画分を突き止めた。
HeLa細胞を使用する放射能標識ウイルス結合アッセイを24ウエル組織培養プレートで行った(Shafren他、1995)。トランスフェクションされたCHO細胞のウイルス結合アッセイを、細胞懸濁物を使用して行った。1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する800μlのDMEMにおける約1x10個の細胞を、300μl(約1x10CPM)の[35S]−メチオニン標識ウイルスの存在下、室温で2時間インキュベーションした。その後、細胞を、200μlの0.2M NaOH−1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に溶解された血清非含有DMEMにより4回洗浄し、その後、結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスの量を液体シンチレーション計数によって求めた。必要とされるときには、細胞を20μg/mlの抗DAF MAbまたは抗ICAM−1 MAbまたはホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI−PLC)(Sigma Chemicals、Sydney,New South Wales、オーストラリア)(1.0U/5x10細胞)(Davitz,M.A.、M.G.LowおよびV.Nussenzweig、1986、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI−PLC)による細胞膜からの崩壊促進因子(DAF)の放出:補体調節タンパク質の選択的修飾、J.Exp.Med.、163:1150〜1161)と37℃で1時間プレインキュベーションし、その後、放射能標識されたウイルスを加えた。
ウイルス感染性アッセイ
96ウエル組織培養プレートにおけるRD細胞単層物およびRD−ICAM−1細胞単層物に、1%ウシ胎児血清(FCS)を含有するDMEMにおけるCVA21の10倍連続希釈物(100μl/ウエル、四連で)を接種し、これを5%COの環境において37℃で48時間インキュベーションした。細胞の生存を、接種された単層物を100μl/ウエルのクリスタルバイオレット/メタノール溶液(PBSにおける0.1%クリスタルバイオレット、20%メタノール、4.0%ホルムアルデヒド)により24時間染色することによって定量した。蒸留水で洗浄した後、染色された細胞単層物の相対的な吸光度をマルチスキャン酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダー(Flow Laboratories、McLean、Virginia、米国)で540nmにおいて読み取った。50パーセントエンドポイント力価を、吸光度の値がコントロールのウイルス非含有ウエルの3倍の標準偏差(SD)よりも小さいならば、ウエルを陽性としてスコア化することによってReedおよびMuenchの方法を使用して計算した(Reed,L.J.およびH.A.Muench、1938、50パーセントエンドポイントを推定する簡便な方法、Am.J.Hyg.、27:493〜497)。
抗受容体MAbによる細胞単層物の前処理が必要とされた場合、細胞をMAb(1μg/ml)の存在下において37℃で1時間インキュベーションした。その後、細胞単層物に適切なウイルスの四連のサンプルを接種し、これを5%COの環境において37℃で48時間インキュベーションし、その後、上記で記載されたように染色した。
細胞トランスフェクション
CHO細胞およびRD細胞を、以前に記載されたように、ICAM−1および/またはDAFを発現させるためにトランスフェクションした(Shafren,D.R.、D.J.Dorahy、S.J.Greive、G.F.BurnsおよびR.D.Barry、1997、ヒトの細胞間接着分子−1を発現するマウス細胞はコクサッキーウイルスA21による感染に対して感受性である、J.Virol.、71:785〜789)。簡単に記載すると、500μlアリコートの細胞(5x10細胞/ml〜1x10細胞/ml)をエレクトロポレーション緩衝液(20mMのHEPES、137mMのNaCl、5mMのKCl、0.7mMのNaPO、6mMのグルコース、pH7.05)に再懸濁し、エレクトロポレーションキュベット(Bio−Rad、Richmond、California、米国)において、DAFまたはICAM−1をコードする75μgのpEF−BOS(Mizushima,S.およびS.Nagata、1990、pEF−BOS:強力な哺乳動物発現ベクター、Nucl.Acid.Res.、18:5322)および5μgのpcDNA.neoと混合した。細胞に、Bio−Radジーンパルサーを用いて300Vおよび250μFでパルスを与え、その後、細胞を組織培養フラスコに播種し、コンフルエントな単層物が形成されるまで37℃で48時間インキュベーションした。受容体を発現するトランスフェクションされた細胞を、G−418(400μg/ml)を含有するDMEMで選択し、そして、適切な抗受容体MAbを使用して蛍光活性化細胞分取によってさらに濃縮した。
フローサイトメトリー
トランスフェクションされた細胞におけるDAFおよびICAM−1の表面発現をフローサイトメトリーによって分析した。簡単に記載すると、分散された細胞(1x10個)を適切なMAb(PBSにおいて5μg/ml)と氷上で20分間インキュベーションした。その後、細胞をPBSにより洗浄し、1000xgで5分間ペレット化し、そして、PBSで希釈されたヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)フラグメント(DAKO A/S、デンマーク)の100μlに再懸濁し、氷上で20分間インキュベーションした。細胞を上記のように洗浄およびペレット化し、PBSに再懸濁し、FACStar分析装置(Becton Dickenson、Sydney、オーストラリア)を用いてDAFおよびICAM−1の発現について分析した。
分散された細胞(1x10個)を抗DAF IH4mAbまたは抗ICAM−1mAb(5μg/ml、リン酸塩緩衝化生理的食塩水[PBS]で希釈される)と氷上で20分間インキュベーションした。その後、細胞をPBSにより洗浄し、1000xgで5分間ペレット化し、そして、PBSで1:100希釈されたヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)フラグメント(DAKO A/S、デンマーク)の100μlに再懸濁し、氷上で20分間インキュベーションした。細胞を上記のように洗浄およびペレット化し、PBSに再懸濁し、FACStar分析装置(Becton Dickenson、Sydney、オーストラリア)を使用してDAFおよびICAM−1の発現について分析した。
ウイルスRNAの配列分析
CVA21単離体をRD−ICAM−1細胞のコンフルエントな単層物において増殖させた。ウイルス細胞溶媒物を低速遠心分離によって事前に清澄化し、上清中のビリオンを4℃で40000rpmにおける3時間にわたるSW41Tiローターでの超遠心分離によってペレット化した。ウイルスのペレットをTE緩衝液(10mMのTris−HCl、1mMのEDTA、pH7.5)に再懸濁し、RNAを、TRIZOL Ls試薬(Gibco BRL Life Technologies)を使用して各株から単離し、ゲノムのP1領域を、以前に記載された遠距離法を使用することによって増幅した(Lindberg,A.M.、C.PolacekおよびS.Johansson、1997、遠距離PCRによる完全なエンテロウイルスゲノムの増幅およびクローニング、J.Virol.Meth.、65:191〜199)。CVA21のP1領域のヌクレオチド配列を、精製されたPCRアンプリコンから、プライマーウォーキング法を使用し、かつ、ABI Prism BigDye(商標)ターミネーターサイクル配列決定用調製済み反応キット(PE Biosystems、スウェーデン)(Lindberg他、1997)を製造者の説明書に従って用いて決定した。ヌクレオチド配列アラインメントを、ClustalXプログラム(Thompson,J.D.、D.G.HigginsおよびT.J.Gobson、1994、Clustal_W−配列重みづけ、位置特異的ギャップペナルティーおよび重み行列選択を用いて連続多配列アラインメントの感度を改善する、Nucleic Acids Res.、22:4673〜4680)を使用して得た。
ヌクレオチドの受入番号
本研究において記載されるCVA21臨床単離体(#272101、#275238および#272598)のP1領域(カプシドコード領域)のヌクレオチド配列をGenBankに付託し、これらには、AY319942、AY319943およびAY3199454の受入番号がそれぞれ付与された。
ウイルスの分子的特長づけおよび構造のモデル化
ウイルスRNAを、QIAampウイルスRNAミニキットを使用してCVA21親株およびCVA21−DAFv株から抽出し、カプシドコード領域を、CVA21特異的プライマーを使用してワンステップRT−PCR(Qiagen OneStep RT−PCRキット)を製造者の説明書に従って用いて増幅した。ヌクレオチド配列を、ABI Prism BigDye(商標)ターミネーターサイクル配列決定用調製済み反応キット(PE Biosystems、スウェーデン)を製造者の説明書に従って使用するサイクル配列決定反応において、精製されたPCR生成物(QIAquickゲル抽出キット、QIAGEN GmbH)を使用して決定した。
CVA21の主要な構造タンパク質(VP1〜VP3)のモデルを、ポリオウイルスの受容体構造を予測するために使用されたのと同様な様式でDECアルファステーションにおいてプログラムModellerを用いて組み立てた。CVA21親株の配列を、分子構造が以前に決定され、50%を超える配列同一性を含有する相同的なエンテロウイルスカプシドタンパク質に対してアラインメントした。これらには、ポリオウイルス1、EV1、EV11、CVB3、CVA9およびブタ水疱病ウイルスが含まれ(それぞれ、1AR7、1EV1、1H8T、1COV、1D4Mおよび1OOPのPDBコード)、アライメントがFASTAによって得られた。CVA21−DAFvカプシドに対するICAM−1およびDAFの位置が、ヒトのライノウイルス3およびEV12とのそれらのリガンド接触に従ってそれぞれアラインメントされた。
ウイルス感染性アッセイ
96ウエルプレートにおけるコンフルエントな細胞単層物に100μlの10倍連続希釈物のウイルスを接種し、これを37℃で72時間インキュベーションした。細胞の生存を定量するために、プレートを、クリスタルバイオレット/メタノール溶液による固定の前に顕微鏡により検査した。50パーセントエンドポイント力価を、ReedおよびMuenchの方法を使用して計算した(Reed,L.J.およびH.A.Muench、1938、50パーセントエンドポイントを推定する簡便な方法、Am.J.Hyg.、27:493〜497)。ウイルス媒介による細胞溶解のmAbの影響を評価するために、細胞単層物を50μlの抗DAF SCR3 IH4(5μg/ml)mAbと37℃で1時間インキュベーションし、その後、上記のように、ウイルスを加え、細胞溶解を定量した。抗DAF SCR1mAb遮断による細胞溶解アッセイのために、6ウエルプレートにおけるRD細胞の単層物を抗DAF SCR1mAb(15μg/ml)により前処理し、その後、ウイルス(10TCID50)により攻撃した。37℃で1時間インキュベーションした後、非結合ウイルスを除き、単層物にダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を重層した。抗DAF SCR1mAbの阻害を、SkMel28細胞に対する力価測定によってウイルス収量を調べて評価した。
放射能標識ウイルス結合アッセイ
親株およびCVA21−DAFv株を35S−メチオニンによりSkMel28細胞およびRD細胞においてそれぞれ放射能標識し、5%〜30%のスクロースグラジエントで精製した。分散された細胞(1x10個)をmAb(20μg/ml、1%ウシ血清アルブミン[BSA]を含有するDMEMで希釈される)と室温で1時間プレインキュベーションし、その後、2%ウシ胎児血清(FCS)を含有するDMEMにおいて室温で1時間、35S標識されているスクロース精製ウイルス(5x10cpm)とインキュベーションした。DMEM−2%FCSによる3回の洗浄の後、結合した35S−メチオニン標識ウイルスの量を1450Microbeta TRILUX(Wallac、Turku、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定した。
DAF結合ビリオンおよびICAM−1結合ビリオンの沈降
精製された放射能標識されている160SのCVA21−DAFvビリオン(2.5x10cpm)をDMEM−1%BSAにおいてCHO−DAF細胞またはCHO−ICAM−1細胞(2x10個)と4℃で2時間インキュベーションした。非結合ウイルスをDMEM−2%FCSによる4回の洗浄によって除き、細胞に結合しているビリオンを37℃で2時間溶出させた。細胞を遠心分離によって除き、溶出されたビリオンを5%〜30%のスクロースグラジエントに重層し、SW41Tiローターにおいて36.000rpmで4℃で95分間遠心分離した。分画物(約700μl)をグラジエントの底から回収し、放射能を液体シンチレーション計数によって求めた。
抗DAFmAbによる細胞結合ウイルスの溶出
CHO−DAF細胞(3x10個)を放射能標識ウイルス(4x10cpm)と4℃で2時間インキュベーションした。非結合ウイルスを氷冷のDMEM−2%FCSによる4回の洗浄によって除き、細胞を100μlのDMEM−2%FCSに再懸濁し、様々な濃度(0〜50μg/ml)の抗DAF SCR1mAbとインキュベーションした。氷上での1時間のmAb競合の後、細胞をペレット化した。上清を集め、溶出されたウイルスのレベルについてモニターした。結果が、細胞から溶出された放射能標識ウイルスの百分率として表される。
可溶性DAFによるウイルスの中和
ヒト組換えsDAF(85μg/ml、PBSで希釈される)を1000の50%組織培養感染量(TCID50)のCVA21−DAFvとインキュベーションした。37℃で1時間インキュベーションした後、ウイルス−DAF混合物を96ウエルプレートにおけるRD細胞の単層物に加え、48時間さらにインキュベーションした。
前立腺腫瘍異種移植片のCVA21−DAFv治療
SCIDマウスを、Newcastle大学の動物管理・倫理委員会により承認されたプロトコルに従って病原体非含有条件で飼育した。PC3細胞をインビトロで成長させ、集め、PBSにより2回洗浄し、無菌PBSに再懸濁した。異種移植のために使用された細胞の95%超が、トリパンブルー染色によって評価されたとき、生存していた。異種移植に先だって、動物を3%イソフルオランにより麻酔した。腫瘍細胞を、麻酔した7週齢SCIDマウスの脇腹に2x10個のPC3細胞の脇腹での皮下注入によって異種移植した。異種移植片の成長を毎日モニターし、カリパスを用いて測定した。腫瘍体積の推定値を、球状体についての式を使用して計算した。触診可能な腫瘍が確立されると(50mm〜100mm)、PC3腫瘍に、CVA21親株、CVA21−DAFv(3x10TCID50)またはPBSを静脈内注射によって投与し、42日の期間にわたってモニターした。血清中のウイルス力価をウイルス感染性アッセイによってモニターした。
結果
1.エンテロウイルスカプシドの相互作用
CVA21の臨床株はDAFおよびICAM−1に結合する
CVA21の臨床単離体が、プロトタイプのKuykendall株の様式と類似するか、または異なるかのいずれかである様式でDAFおよびICAM−1に結合するかどうかを明らかにするために、DAFまたはICAM−1のいずれかを発現させるために安定的にトランスフェクションされたCHO細胞を放射能標識ウイルス結合アッセイで使用した。DAFまたはICAM−1の非存在下でのCHO細胞に対する著しい結合はCVA21単離体のいずれについても観測されなかった(図1)。CVA21株のすべてが、DAFを発現するCHO細胞に結合した(図1A)。これは、プロトタイプのCVA21Kuykendall株について以前に明らかにされた相互作用である。予想されたように、すべての臨床CVA21単離体もまた、CHO細胞の表面に発現したICAM−1に結合した(図1B)。CVA21/ICAM−1相互作用の特異性の確認が、ICAM−1に対するウイルスの結合を完全に無効にする抗ICAM−1ドメイン1特異的MAbの作用によって立証された(図1B)。全体的には、これらの結果から、CVA21の臨床単離体がプロトタイプ株の相互作用と同様な様式で2つの別個の細胞受容体(DAFおよびICAM−1)に結合することが確認される。
CVA21の臨床単離体とDAF/ICAM−1との相互作用をさらに特徴づけるために、CVA21ウイルス結合アッセイを、DAFおよびICAM−1を遍在的に同時発現するHeLa細胞に対して着手した。CVA21の結合を個々の受容体のMAb遮断または組合せでのMAb遮断によって評価した(図2)。プロトタイプKuykendall株の細胞付着(図2A)を臨床CVA21単離体#272101の細胞付着(図2B)と比較した。両者とも、MAb受容体遮断の非存在下においてHeLa細胞に対する高レベルの結合を示した(図2)。DAF SCR1の特異的なMAb遮断はウイルスの結合を部分的に阻止した。しかしながら、ICAM−1との相互作用のためにウイルスの付着を完全に無効にすることはできなかった。ICAM−1への接近がMAb遮断によって阻害されたとき、ウイルスの結合が低下し、臨床単離体#272101についてはプロトタイプよりも大きく低下したが、ウイルス結合は、DAFへの代わりのウイルス付着のために完全には阻害されなかった。DAFおよびICAM−1のN末端ドメインについてのCVA21の臨床株およびプロトタイプ株の特異性が、抗DAF SCR1 MAbおよび抗ICAM−1ドメイン1 MAbが、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(これはGPI結合タンパク質を切断する)と抗ICAM−1 MAbとの組合せにより細胞を前処理したときと同じ程度にウイルスの付着を阻害できることによって明らかにされた。まとめると、これらの結果から、臨床単離体#272101は、プロトタイプ株と同様に、DAFの最初のSCRおよびICAM−1のN末端ドメインに結合することが確認される。
DAFおよびICAM−1へのCVA21の結合は付加的でない
DAFまたはICAM−1のいずれかと単独または組合せで結合するCVA21臨床単離体の能力を、宿主細胞の表面における両方の受容体の存在が付加的なビリオン細胞付着に寄与したかどうかを明らかにするために評価した。この疑問に取り組むために、CHO細胞を、DAFまたはICAM−1のいずれかを単独または組合せで発現させるためにトランスフェクションした。フローサイトメトリー分析により、いずれかの受容体を単独または組合せで発現する細胞におけるDAF発現またはICAM−1発現のレベルが同程度であることが明らかにされた(図3A)。CHO細胞に対するバックグラウンド結合の最少レベルがすべてのCVA21株について観測された。個々に発現させたDAFまたはICAM−1に対する結合の著しいレベルがすべてのCVA21株によって示された(図3B)。驚くべきことに、DAFおよびICAM−1の両方を同時発現するCHO細胞に結合した放射能標識ウイルスの量は、これらの受容体のいずれかが単独で発現したときに結合した量と比較して著しく低下していた(図3B)。
CVA21の臨床単離体はDAFとの相互作用を介してICAM−1陰性細胞の溶解性感染を誘導することができる
ICAM−1は、CVA21プロトタイプ株の宿主細胞進入を成功させるための主要な決定因子である。しかしながら、ICAM−1発現を有しない細胞のCVA21媒介による溶解性感染がMAb架橋DAFの存在下で可能である。本発明者らは、臨床CVA21単離体が、架橋されたDAFとの異なった相互作用を介してICAM−1陰性細胞に溶解的に感染し得るかどうかを調べた。RD細胞の単層物を処理せず、あるいは、SCR1、SCR2、SCR3もしくはSCR4のそれぞれに対する特異的なMAbにより、または、DAFの抗SCR1および抗SCR3の組合せにより前処理し、その後、1の投入多重度のCVA21により攻撃した。CVA21媒介による溶解性感染が、DAFのSCR2、SCR3およびSCR4に対するMAbにより前処理されたRD細胞の培養物において観測された(図4)。実際、特異的なCVA21カプシド/DAF相互作用により、溶解性の細胞感染が媒介されたことの確認が、抗SCR1 DAF MAbを、抗SCR3 DAF MAbにより前処理された細胞に加えることにより、細胞溶解が完全に阻止されたという発見によって裏付けられた。
興味深いことに、臨床CVA21単離体の2つ(#275238および#272598)は抗DAF MAbによる架橋の非存在下でICAM−1陰性RD細胞に溶解的に感染することができた(図4)。一般に、DAFに対するエンテロウイルスの結合は、さらなる内在化受容体との相互作用のためのビリオンの隔離と見なされており、その結果、今日まで、もっぱらDAFとの相互作用を介して媒介される細胞溶解性感染を明らかにする結論的な報告は1つもなされていない。CVA21臨床単離体の#275238および#272598がDAFおよびICAM−1の両方の抗体架橋の非存在下で細胞に溶解的に感染することができることは、そのような受容体使用法を最初に明らかにするものである。抗DAF SCR1 MAbによる遮断の後におけるこれらの株による細胞溶解の完全な阻害(図4)および子孫ウイルス産生の著しい減少は、この発見が整合していることをさらに裏付けている。
この新規なDAF使用法の分析を続けるために、CVA21の臨床株およびプロトタイプ株を、DAFを単独で発現する単層細胞培養物(RD)、または、ICAM−1との組合せで発現する単層細胞培養物(RD−ICAM−1)に対する溶解性の感染性について力価測定した。CVA21のすべての株が、DAFおよびICAM−1の両方を発現する細胞において高レベルの細胞溶解活性を示し、一方、#275238および#272598の単離体のみが、DAFのみを発現するRD細胞において溶解性力価を誘導し、その溶解性力価が、RD−ICAM−1細胞で得られる溶解性力価と同程度であることが観測された。実際、単離体#275238では、RD細胞において、RD−ICAM−1細胞の場合よりも約20倍大きい溶解性力価が得られた。興味深いことに、ウイルス投入多重度が高い場合、単離体#272101は、DAFのみを発現するRD細胞の著しいレベルの溶解性感染をさらに示した。プロトタイプ株によるRD細胞における、最少ではあるが、検出可能なレベルの溶解活性は、強化されたDAF使用表現型を有するビリオンの少数集団のためであると考えられる。
CVA21臨床単離体のICAM−1結合フットプリントの分析
調べられたCVA21のすべての株が強いICAM−1付着/内在化表現型を示したので(図1)、本発明者らは、それらが、保存されたICAM−1結合フットプリントを有するかどうかを調べた。CVA21−ICAM−1受容体結合フットプリントを構成する残基が、精製されたICAM−1およびプロトタイプKuykendallビリオンを用いて、極低温電子顕微鏡観察を使用して以前に特定されている。すべてのCVA21株のP1コード領域のアミノ酸配列分析により、VP2の168におけるAlaからValへの保存的なコード変化を除いて以前に発表されたフットプリントを同一である保存されたICAM−1フットプリントの存在が明らかにされた(図5)。
プロトタイプに対して、ICAM−1の非存在下でDAF発現細胞に溶解的に感染するCVA21臨床単離体の増大した能力(図4)を説明することを目指して、本発明者らは、ICAM−1結合フットプリントの外側におけるアミノ酸の違いについて検索した(図5)。数多くのアミノ酸変化が3つのCVA21臨床単離体とプロトタイプ株との間でP1領域において検出された(図5)。アミノ酸変化が、VP4コード領域ではCVA21株のいずれの間にも検出されなかった。VP3、VP2およびVP1のカプシドタンパク質において、同じ位置での13個の同一の変化が、プロトタイプ株に対して、すべての臨床単離体で検出された。加えて、単離体#272101は、それ以外の2つの臨床単離体におけるAlaと比較してSerを有するVP3の239位において異なる変化を示し、かつ、プロトタイプ株に対して、VP1全体、VP2全体、VP3全体に散らばったさらに9個の異なったアミノ酸変化を有していた(図5)。アミノ酸レベルで、#272598および#272238の単離体は同一であり、一方、ヌクレオチドレベルでは、これら2つの間における多数のサイレント変異が検出された。
II.コクサッキーウイルスA21変化体の生物選抜および分子的特長づけ
ICAM−1相互作用とは無関係に溶解的に感染するCVA21変化体の生物選抜
CVA21プロトタイプ株の細胞付着がDAFおよび/またはICAM−1への結合によって媒介される。ICAM−1の相互作用のみが、細胞内在化、および、CVA21との間での相互作用を促進させ、DAFは、DAFが抗DAFmAbにより架橋されない限り、増殖性の溶解性細胞感染を誘導しない。CVA21はまた、細胞がICAM−1によりトランスフェクションされているとき、DAFを発現するRD細胞に溶解的に感染することができる。このことは、CVA21がRD細胞において複製できないことが単に細胞進入のレベルでのことにすぎないことを強調している。ヒトメラノーマ細胞株のSkMel28は、CVA21のプロトタイプ株が高いウイルス力価に成長することを支援しており、フローサイトメトリー分析により、高レベルのICAM−1およびDAF(43.2の幾何平均蛍光[GMF])の表面発現が明らかにされた(図6A)。
SkMel28細胞において二重プラーク精製されたCVA21プロトタイプ株の調製物(本発明ではCVA21親株と呼ばれる)を、反復した継代培養(4回の継代培養)によって、RD細胞の迅速な溶解性感染を生じさせるために順応させた。フローサイトメトリー分析により、RD細胞が、SkMel28細胞と同程度である高レベルのDAF(64.0のGMF)を発現したが、表面ICAM−1を発現していないことが明らかにされた(図6A)。RD細胞における親株CVA21の連続した継代培養により、ICAM−1の非存在下での迅速な溶解性感染を誘導することができる能力を有するCVA21変化体(CVA21−DAFvと呼ばれる)を親株集団から生物選抜した。ICAM−1およびDAFを二重に発現するSkMel28細胞は、10のTCID50/mlの過度の力価の親株およびCVA21−DAFvの両方の溶解性感染を支援し、一方、CVA21−DAFvのみがRD細胞において同程度の溶解性感染を誘導しただけであった(図6B)。
CVA21−DAFvの表現型性質
ICAM−1陰性RD細胞への順応の後、CVA21−DAFvは、SkMel28細胞およびRD細胞の両方の単層物において類似する効率でプラークを生じさせた(5x10PFU/ml)。プラークが、RD細胞における親株については、高いウイルス投入多重度(SkMel28細胞に対して1x10PFU/ml)にもかかわらず、観測することができなかった。CVA21−DAFvは、異なる細胞基質での表現型におけるわずかな違いを伴ってプラークを誘導した:RD細胞では、大きく、曇ったプラークが感染後2日以内に観測され、これに対して、輪郭がはっきりした小さいプラークのみがSkMel28細胞では認められただけであった(図6C)。SkMel28細胞におけるCVA21−DAFvの10回の連続した戻し継代培養では、親株表現型への復帰体を選択することができず、CVA21−DAFvは依然として、低い感染多重度(1TCID50/96ウエル)でRD細胞に溶解的に感染する能力を保持していた(データは示されず)。従って、CVA21−DAFvの強化されたDAF使用法は、安定かつ望ましい表現型であるようである。さらに興味深いことは、CVA21−DAFv(10TCID50)が、親株(10TCID50)と比較して、内在化されるために、より高レベルのプールされた免疫グロブリンを必要としたことであった(1:63対1:178)。これは、RD細胞における生物選抜時におけるCVA21−DAFvの血清学的特異性の部分的変化を暗示するものである。
CVA21−DAFvはDAFおよびICAM−1のN末端ドメインに結合する
CVA21のプロトタイプ株はICAM−1およびDAFの両方のN末端ドメインに結合する。CVA21−DAFvがプロトタイプ株と同様な様式でICAM−1および/またはDAFに直接的に結合するかどうかを調べるために、放射能標識結合アッセイを、ICAM−1またはDAFを安定的に発現するCHO細胞、RD細胞、および、卵巣ガン細胞株DOV13を使用して行った。フローサイトメトリー研究により、それぞれのトランスフェクションされたCHO細胞株におけるDAFまたはICAM−1の高レベルの表面発現が示され(CHO−DAF細胞でのDAF発現についてのGMF、296.2)、DAFのみがRD細胞およびDOV13細胞の表面で発現していた(RD細胞およびDOV13細胞でのDAF発現についてのGMF、それぞれ、64.0および84.0)(図6Aおよび図7A)。CVA21親株はICAM−1およびDAFの両方に結合した(図7Bおよび図7C)。著しいレベルのCVA21−DAFvがCHO−DAF細胞およびCHO−ICAM−1細胞の両方に結合し、一方、バックグラウンド結合のみがCHO細胞について観測された(図7Bおよび図7C)。トランスフェクションされたCHO細胞における表面発現したICAM−1およびDAFとのウイルスの相互作用の特異性が、ウイルス付着の特異的な抗DAFmAb遮断および抗ICAM−1mAb遮断を使用して確認された。抗ICAM−1(WEHI)mAbおよび抗DAF SCR1(IA10)mAbによる遮断は両ウイルスの結合をバックグランドレベルに低下させ、一方、抗DAF SCR3(IH4)mAbによる遮断は、トランスフェクションされたCHO細胞に対するいずれかのCVA21調製物のウイルス結合に影響しなかった(図7Bおよび図7C)。親株と同様に、CVA21−DAFvはICAM−1およびDAFのN末端ドメインに結合することができると結論される。
DAFの抗体架橋はCVA21−DAFvの細胞感染性を高めない
わずかな違いが存在するならば、そのわずかな違いがCVA21親株とCVA21−DAFv株との間でのDAF結合/使用法において存在するかどうかを調べるために、放射能標識ウイルス結合アッセイを用いて、表面DAFの架橋の存在下および非存在下におけるRD細胞およびDOV13細胞に対する付着の相対的なレベルを評価した。親株CVA21およびCVA21−DAFvはともに、高レベルの表面DAFを発現するCHO細胞に結合し(図7)、一方、CVA21のプロタイプ株は、DAFを発現するICAM−1陰性のRD細胞に不良に結合する。これは、この研究で使用されたCHO−DAF細胞における、RD細胞およびDOV13細胞での場合よりも高レベルの表面発現したDAFのためであることが最も考えられる(図6Aおよび図7A)。生物選抜されたCVA21−DAFvはRD細胞およびDOV13細胞の両方に対する著しいレベルの付着を示し、一方、これらの細胞に対する付着が親株についてはほとんど観測されなかった(図7C)。CHO−DAF細胞と同様に、RD細胞およびDOV13細胞に対するCVA21−DAFvの特異的な結合が、抗SCR1mAbによる前処理によってバックグラウンドレベルに減少した(図7C)。
表面発現したDAFを、DAFのウイルス非結合性SCR3ドメインに対するmAbと架橋することにより、RD細胞に対するプロトタイプCVA21の結合が増大し、また、細胞が溶解性感染に対して感受性になった。次に、本発明者らは、CHO−DAF細胞およびDOV13細胞の表面におけるDAFの架橋が、RD細胞について観測されるような増大したウイルス結合を生じさせるかどうかを調べた。抗SCR3による前処理は親株CVA21のウイルス結合をRD細胞において8倍増強し、DOV13細胞において4倍増強した(図7C)。CVA21−DAFvの場合、抗DAF SCR3による前処理は、RD細胞またはDOV13細胞のいずれかに対する結合を強化することにおいてほとんど影響を有していなかった。実際、DOV13細胞に対するCVA21−DAFvの結合におけるわずかな減少が観測された(図7C)。CVA21−DAFvがmAb架橋DAFの非存在下でRD細胞およびDOV13細胞に対して著しいレベルで結合することができることは、親株と比較して、CVA21−DAFvの強化されたDAF結合表現型を示唆している。両方のウイルスについてのCHO−DAF細胞に対するウイルス付着は、抗DAF SCR3mAbによる前処理によって影響されなかった(図7C)。安定的にトランスフェクションされたCHO−DAF細胞における表面発現したDAFのレベルは、一過性にDAFを発現するCHO細胞よりも著しく高かった。このことは、抗DAF SCR3mAbによる前処理がなぜ親株CVA21のウイルス付着を増大させることができなかったかの1つの考えられる説明を提供する。
抗DAF SCR3mAbによる前処理が、CVA21親株またはCVA21−DAFvのいずれかによる溶解性感染に対するRD細胞およびDOV13細胞の感受性に影響を及ぼしたかどうかを明らかにするために、RD細胞およびDOV13細胞のコンフルエントな単層物をウイルス攻撃の前に抗DAF SCR3mAbとプレインキュベーションした。ウイルス感染を37℃で3日間行わせ、その後、単層物を溶解性感染について評価した。抗DAF SCR3mAbの架橋がない場合、RD細胞およびDOV13細胞はともに、高いウイルス投入多重度(10TCID50/ウエル)でさえ、CVA21親株による感染に対して抵抗性であった。対照的に、RD細胞およびDOV13細胞は抗DAF SCR3mAbによる前処理によって親株CVA21の溶解性感染に対して感受性になった(図7D)。CVA21−DAFvはICAM−1陰性のRD細胞およびDOV13細胞の両方において溶解性ウイルス力価(105.5TCID50/mlを超える)を誘導する。驚くべきことに、抗DAF SCR3mAbによる前処理は、mAbが存在しなかったときに測定される力価と比較して、RD細胞およびDOV13細胞の両方でCVA21−DAFvの溶解性力価を約1/100に低下させた(図7D)。DAF発現細胞に対するCVA21−DAFvの結合は、抗DAF SCR3mAbによる前処理によって強化されず(図7C)、DOV13細胞の場合には、低下した付着を生じさせた。これらの発見は、DAF SCR3のmAb遮断がDAF SCR1に結合したCVA21−DAFvの細胞進入機構を妨害し得ることを示唆している(図7)。
DAFではなく、ICAM−1の相互作用がCVA21−DAFvのカプシドの立体配座変化を誘導する
DAFに結合し、かつ、ICAM−1陰性細胞に溶解的に感染するCVA21−DAFvの増大した能力を背景にして(図6および図7)、本発明者らは、親株CVA21およびCVA21−DAFvのDAFに対する相対的な結合の厳格さ(stringency)を比較した。放射能標識されたビリオンをCHO−DAF細胞に4℃で2時間結合させ、非結合ビリオンを除いた後、細胞に結合しているビリオンを、増大する濃度の抗DAF SCR1mAbを用いて細胞から溶出した。約10倍高い濃度の抗DAF SCR1mAbが、CVA21親株ビリオンと比較して、CHO−DAF細胞の表面からCVA21−DAFvビリオンを追い出すために必要とされた(図8A)。この発見は、CVA21−DAFvが、CVA21親株が結合するよりも接近しにくいカプシドの部位においてDAFに結合するか、または、より大きい親和性でDAFに結合することを示唆している。
DAFは、エンテロウイルスの隔離受容体として機能することが主張され、また、一般に、DAF−エンテロウイルスの相互作用はカプシドの検出可能な立体配座変化の形成を誘導することができない。CVA21−DAFvのA粒子形成が、表面発現したDAFまたはICAM−1との相互作用によって誘導されたかどうかを調べるために、精製された160SビリオンをCHO−DAF細胞またはCHO−ICAM−1細胞と4℃で2時間インキュベーションした。非結合ビリオンを除いた後、細胞に結合しているビリオンを37℃で2時間溶出させ、その後、5%〜30%のスクロースグラジエントでの速度遠心分離に供した。ICAM−1から溶出されたCVA21−DAFvビリオンは、A粒子の形成を示す低下した沈降係数を示し、また、CVA21プロトタイプ株について観測された感染性と同様に、感染性をほとんど保持していなかった。CVA21−DAFvの強化されたDAF相互作用にもかかわらず、CVA21−DAFvビリオンが、検出可能な立体配座変化を何ら伴うことなくDAFから溶出し(図8B)、このビリオンは高レベルの感染性を保持していた。
DAFの遮断はRD細胞におけるCVA21−DAFvの溶解性感染を阻害する
溶解性細胞感染アッセイおよび競合的結合アッセイにより、CVA21親株と比較して、表面発現したDAFと、CVA21−DAFvとの間での強化された相互作用が示唆される(図7および図8)。この観測された増大した相互作用のために、本発明者らは、抗DAF SCR1mAbが、親株とは対照的に、RD細胞のCVA21−DAFv溶解性感染を阻止し得るかどうかを調べた。抗DAF SCR1mAbは、10TCID50/ウエルの投入多重度でさえRD細胞のCVA21−DAFv誘導による溶解性感染からの完全な保護をもたらした(図9A)。さらに、抗DAF SCR1mAbによるRD細胞の前処理は子孫ウイルスの産生を著しく阻害した。
CVA21−DAFvが表面DAFとの直接的な相互作用を細胞感染性のために必要としたかどうかをさらに立証するために、RD細胞の感染を阻害するヒト組換えsDAFの能力(Bruce Loveland博士、未発表連絡)を評価した。CVA21−DAFvとの可溶性DAFの相互作用は細胞溶解性感染を著しく低下させたが、DAF非結合性のCVA20による感染を低下させることに対する検出可能な影響を全く有していなかった。CVA20もまたICAM−1に結合する一方で、CVA20は、未だ特定されていない受容体を細胞進入のために必要とする(図9B)。全体的には、これらの発見は、CVA21−DAFvの溶解性感染が抗DAF SCR1mAbおよびsDAFによって阻害されることを明らかにしており、このことは、CVA21−DAFvの進入におけるDAF相互作用の重要性を立証している。
CVA21−DAFvのDAF表現型を付与する分子的決定因子
CVA21−DAFvの拡大された細胞親和性および増大したDAF使用表現型をさらに調べるために、CVA21親型およびCVA21−DAFvの両方のカプシドコード領域のヌクレオチド配列を決定した。カプシドタンパク質配列を、DAFおよびICAM−1との相互作用が十分に特徴づけられているCVA21Kuykendallプロトタイプ株のカプシドタンパク質配列と比較した。二重プラーク精製された親株のカプシドコード領域の配列分析により、CVA21プロトタイプの配列(GenBank AF465515)と比較したとき、VP2における1つのコード置換(S164L)が明らかにされた。CVA21親株のDAF結合特性およびICAM−1結合特性(図7)は、このVP2アミノ酸置換によってプロトタイプ株に関して変化していなかった。RD細胞における生物選抜の後、VP1のL164残基はCVA21−DAFvに残っており、一方、2つのさらなるアミノ酸置換がVP3において検出され(R96HおよびE101A)、1つのサイレント変異がVP2において検出された(V209)。VP2のL164アミノ酸置換は親株およびCVA21−DAFvの間でともに有されるので、CVA21−DAFvの強化されたDAF結合表現型を付与することに関与しているとは考えられない。CVA21−DAFvはヌクレオチド位置2038(VP3 101)で混合集団(C/A)を示し、これはAla/Gluをもたらし、一方、A(Glu)のみがこの位置において親株CVA21によってコードされていた。
CVA21の分子構造は原子的分解能で決定されていないので、本発明者らは、CVA21親株とCVA21−DAFvとの間でのDAF結合における違いについての説明を提供することを目指して、関連したピコルナウイルスの以前に決定された構造に対する類似性に基づいて親株CVA21の構造をモデル化した。CVA21−DAFvの強化されたDAF結合表現型を付与すると考えられる変異(VP3のR96HおよびE101A)が、VP1、VP2およびVP3のカプシドタンパク質の境界に埋め込まれていることが予測される(図5および図10)。VP3残基のR96およびE101は、VP3のC末端によって側面が覆われ、VP1のC末端によって上部が覆われ、アルギニン(R96)の側鎖窒素原子のみが溶媒の接近を可能にする(図10Aにおける青色の球)。DAFに対するCVA21−DAFvの付着は、EV12について当てはまるように、カプシドの谷の外側で生じることが主張されている。CVA21−DAFvのVP3のH96変異およびA101変異は、提案されたEV12−DAF結合部位において直接的には位置していないが、それらの配置は、DAF結合フットプリントに対する強化された立体配座および接近性を与え、これにより、親株の結合親和性と比較して、DAFに対する増大した結合親和性をもたらし得る(図8A)。
III.DAFおよびコクサッキーウイルスA21により媒介される細胞感染性
CVA21はDAFのN末端ドメインに結合する
DAFの個々の短いコンセンサス反復(SCR)に対する予備的な抗体遮断研究では、CVA21がDAFのSCR1に結合することが示唆されている。しかしながら、エンテロウイルスのDAF結合エピトープの存在位置をマッピングすることがDAF結合mAbからの立体的な障害によって間接的に影響され得るという可能性が高い。そのような疑問に取り組むために、表面に発現させたキメラなDAF分子およびDAF欠失構築物を使用して、SCR1に対するEV70のDAF結合ドメイン(Karnauchow,T.M.、S.Dawe、D.M.LublinおよびK.Dimock、1998、崩壊促進因子の短いコンセンサス反復ドメイン1がエンテロウイルス70の結合のために要求される、J.Virol.、72:9380〜9383)、CVB3のSCR2〜3に対するEV70のDAF結合ドメイン(Bergelsen,J.M.、J.G.Mohanty、R.L.Crowell、N.F.St.John、D.M.LublinおよびR.W.Crowell、1995、RD細胞における成長に順応したコクサッキーウイルスB3は崩壊促進因子(CD55)に結合する、J.Virol.、69:1903〜1906)、SCR3に対するEV7のDAF結合ドメイン(Powell,R.M.、T.Ward、D.J.EvansおよびJ.W.Almond、1997、エコーウイルス7とその受容体(崩壊促進因子(CD55)との間での相互作用:A粒子形成における二次的な細胞因子に対する証拠、J.Virol.、71:9306〜9312)がマッピングされている。CVA21−DAF結合領域の存在位置を確認することを目指して、本発明者らは、CD46メンブランコファクタープロテイン(MCP[CD46])のドメインがDAFの対応するドメインによって置き換えられたキメラなDAF/CD46受容体(図11A)を用い、放射能標識されたCVA21と結合するその能力について評価した。キメラ受容体および野生型受容体の表面発現の相対的なレベルを、個々のDAF SCRについて特異的なmAb、および、CD46について特異的なmAbを使用してフローサイトメトリー分析によって評価した(図11B)。抗DAF SCR1mAb(IA10)、抗DAF SCR3mAb(IH4)および抗DAF SCR4mAb(IIH6)は、野生型DAF、および、DAFのSCR1/2、SCR3またはSCR4をそれぞれ有するDAF/CD46キメラ受容体に結合しただけであった。これらの抗DAFmAbはどれも野生型のCD46には結合しなかった。CD46のSCR1を認識する抗CD46mAb(MCI20.6)は、野生型CD46、または、CD46のSCR1を有するDAF/CD46キメラ受容体に結合しただけであった。著しいレベルの放射能標識CVA21が野生型DAFおよびDAF SCR1/CD46キメラ受容体に結合し、野生型CD46または残りのキメラ構築物には結合しなかった(図11C)。野生型DAFおよびキメラなDAF SCR1/CD46分子の両方に対するCVA21の結合が、抗DAF SCR1mAbによる抗体遮断によって阻害された。DAF SCR2/CD46キメラ受容体がこの研究について利用できないにもかかわらず、上記の発見は、EV70のCVA21カプシド結合エピトープと同様なCVA21カプシド結合エピトープが、最も可能性があることには、DAF分子の最初のSCRに存在することを明瞭に明らかにしている。
CVA21の結合およびDAFからのCVA21の溶出
ピコルナウイルスの細胞付着およびその後の細胞進入は、最初に付着した後、高レベルのウイルス粒子の、その特異的な細胞表面受容体からの溶出によって特徴づけられる。このことは、受容体媒介によるウイルス溶出がピコルナウイルス感染の病理発生において重要な役割を果たし得ることを示唆している。多くのピコルナウイルスと同様に、CVA21がその生来的な内在化受容体(この場合にはICAM−1)から溶出されるとき、CVA21は著しく低下した感染性を有しており、従って、その後の感染を開始させるその能力を最小限に抑えている。しかしながら、表面発現したDAFから直接的に溶出されたCVA21粒子の相対的な速度論および感染性を特徴づけることは以前には着手されていない。従って、本発明者らは、本発明者らの研究を、DAFからのCVA21の溶出に対する時間、温度およびpHの影響に集中した。この場合、放射能標識ウイルス結合アッセイが、DAFを発現するCHO細胞をCVA21結合基質として使用して行われた。DAFからのCVA21の溶出は15分で最大レベルに達し、さらなる著しい溶出の増大はこの時間の後では認められなかった(図12A)。DAFから溶出されたCVA21の量は、30分の一定の溶出時間を維持しながら、温度を4℃から42℃に徐々に上げることによって増大した(図12B)。この環境では、最大レベルのCVA21が42℃で溶出された。驚くべきことではないが、42℃で溶出されたウイルスの感染性は、37℃で溶出されたウイルスよりも著しく小さかった。37℃を超える温度はビリオンカプシドの一体性に対する悪影響を有しており、これは、低下した受容体結合、および、従って、弱まった感染力をもたらし得る。溶出環境のpHを、30分の溶出時間および37℃の温度を維持しながらpH5.5からpH8.0に上げることにより、DAFから溶出されたCVA21のレベルの連続的な増大がもたらされた(図12C)。
DAFから溶出されたCVA21は感染性を保持する
溶出されたピコルナウイルス粒子の大部分は、細胞に結合しているビリオンが、特異的な受容体により誘導されるカプシド立体配座変化を受けていることの結果として、非感染性であることが一般に認識されている。表面発現したDAFまたはICAM−1のいずれかに対する結合、および、表面発現したDAFまたはICAM−1のいずれかからの溶出がCVA21の感染性に対して及ぼす相対的な影響を比較するために、放射能標識ウイルス結合アッセイおよび細胞溶解アッセイを、CHO―DAF発現細胞およびCHO−ICAM−1発現細胞をCVA21結合基質として使用して行った。フローサイトメトリー分析により、適切なトランスフェクションされたCHO細胞の表面におけるDAFおよびICAM−1の高レベルの発現が明らかにされた。類似するレベルの放射能標識されたCVA21が、トランスフェクションされた細胞の表面におけるDAFおよびICAM−1の両方に結合し、また、トランスフェクションされた細胞の表面におけるDAFおよびICAM−1の両方から溶出した(図13A)。ICAM−1から溶出されたウイルスとは対照的に、DAFから溶出されたCVA21のみが感染性の十分な保持を示した(>10TCID50/100CPM)(図13B)。CVA21が架橋DAFからの溶出の後で高レベルの感染性を保持していたかを明らかにするために、DAFを抗DAF SCR3mAb(IH4)による前処理により架橋するとともに、類似するプロトコルを用いた。ICAM−1からの溶出を、ICAM−1によりトランスフェクションされたRD細胞(RD−ICAM−1)から評価した。最少レベルのCVA21が0℃で両方の受容体から溶出され、これに対して、結合ウイルスの15%〜20%が37℃で両方の受容体から溶出された(図14A)。しかしながら、以前に観測されたように(図13A)、ICAM−1から溶出されたCVA21は感染性をほとんど有しておらず(<1.0TCID50/100CPM)、一方、架橋DAFから溶出されたCVA21は著しい感染性を示した(>102.5TCID50/100CPM)(図14B)。低レベルのDAFがRD−ICAM−1細胞の表面に存在するにもかかわらず、感染性のCVA21がウイルス溶出液に存在しないことは、両方の受容体が細胞表面に同時発現されるとき、CVA21がDAFよりもICAM−1に結合することについての優先性を示唆している。
表面のDAFおよびICAM−1に対するCVA21結合の相対的な厳格さを評価することを目指して、放射能標識ビリオンを、RD−ICAM−1細胞上のICAM−1に、または、RD細胞の表面におけるmAbされた架橋DAFに0℃で結合させた。非結合ビリオンを除いた後、増大する濃度のCVA21受容体阻止mAb(抗DAF SCR1または抗ICAM−1ドメイン1)を適切な架橋DAF細胞懸濁物またはICAM−1発現細胞懸濁物に加えた。RD−ICAM−1細胞への抗ICAM−1ドメイン1mAbの添加は、ICAM−1結合CVA21を追い出すことに対してほとんど影響を有していなかった(図14C)。対照的に、0.1μg/mlもの低い濃度での抗DAF SCR1mAbによる架橋DAF RD細胞の処理は約50%のDAF結合CVA21の放出を促進し、その一方で、mAbの濃度を1.0μg/mlに増大したとき、本質的にはすべてのDAF結合ウイルスの放出がもたらされた(図14C)。
CVA21はDAFに結合し、感染性を保持し、かつ、ICAM−1の遅れた発現の後で増殖性感染を開始させることができる
表面発現したDAFから溶出されたCVA21が高レベルの感染性を保持することが明らかにされたので(図13および図14)、研究は、DAFから溶出されたウイルスが天然のCVA21感染の病理発生において積極的な役割を果たし得るかどうかに集中した。検討すべきこの具体的な疑問は、表面発現したDAFによって隔離されたウイルスが、細胞表面のICAM−1の遅れた誘導を利用して増殖性感染を開始させることができるかどうかを明らかにすることであった。ヒト身体中における内因性ICAM−1の表面発現は比較的低く、炎症性サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子(TNF)−αおよびインターロイキン(IL)−1βなど)の作用による誘導を待っていることが一般に受け入れられている。そのような環境を模倣することを目指して、CVA21の溶解性感染に対して通常の場合には抵抗性であるDAF発現RD細胞(ICAM−1陰性)を、ICAM−1またはCD36を発現させるために、(組換えアデノウイルスベクターを使用して)、表面DAFに対するCVA21結合の後0時間、6時間および24時間で形質導入した。フローサイトメトリー分析により、形質導入後4時間での著しいレベルの表面ICAM−1の発現、そして、この発現がアデノウイルス接種後の約16時間で最大レベルに増大したことが明らかにされた(図15A)。さらなるフローサイトメトリー分析(図15B)およびウエスタンブロットアッセイにより、ICAM−1およびCD36の両方の高レベルの発現が、適切な受容体保有組換えアデノウイルスによるRD細胞の形質導入後24時間で確認され、一方、内因性DAFの発現はすべての細胞の間で同程度であった。ウイルス感染性アッセイを、内因性DAFに対するウイルス結合の後0時間、6時間または24時間の時間で、形質導入されたICAM−1受容体発現およびCD36受容体発現の存在下で増殖させた子孫CVA21のレベルを比較するために行った。CVA21による最初の接種後0時間、6時間または24時間でICAM−1を発現させるために誘導されたRD細胞は、モック受容体(CD36)を発現させるために誘導された細胞、または、形質導入されていないRD細胞よりも著しく高いウイルス収量(約200倍)をもたらした(図15C)。DAF結合後0時間、6時間または24時間でICAM−1を発現させるために形質導入されたRD細胞におけるCVA21の多サイクル複製は、細胞単層物の完全な溶解性破壊をもたらし、これに対して、細胞溶解が、CD36を発現する細胞、または、形質導入されていない細胞では全く観測されなかった(図15D)。
IV.コクサッキーウイルスA21のDAF変化体によるヒト乳ガン細胞、前立腺ガン細胞、結腸ガン細胞および卵巣ガン細胞のインビトロ溶解
CVA21プロトタイプ株は、高レベルのCVA21細胞受容体、すなわち、細胞間接着分子−1(ICAM−1)および崩壊促進因子(DAF)を発現する悪性メラノーマ細胞を迅速に標的化し、これを溶解することができる。近年、本発明者らは、生物選抜されたCVA21−DAFv株が、強化された受容体特異性を示し、かつ、ICAM−1またはDAFのいずれか、あるいは、両受容体の組合せを発現する細胞に迅速に感染し、かつ、その細胞を溶解することができることを示している。本研究では、ウイルス受容体発現が、多様な組織起源の12個のヒトガン細胞株の集団について調べられた:ヒト乳ガンに由来する3つの腫瘍細胞株(MDA−MB157、MDA−MB453、ZR−75−1)、3つの卵巣ガン細胞株(DOV13、OAW−42、OVHS−1)、3つの前立腺ガン性細胞(DU145、LNCaP、PC3)および3つのヒト結腸ガン細胞(HCT116、HT−29、SW620)。フローサイトメトリーによって明らかにされるように、著しいレベルのICAM−1が、3/3の乳ガン細胞株、1/3の卵巣ガン細胞株、2/3の前立腺ガン細胞株および3/3の結腸ガン細胞株で検出され、一方、12個の細胞株のすべてが高レベルのDAFを発現することが見出された(図16)。
CVA21−DAFvが、CVA21親株の腫瘍崩壊能力よりも広範囲の腫瘍崩壊能力を示すかどうかを調べるために、CVA21−DAFvを使用して、乳房、卵巣、前立腺および結腸のガン性細胞の集団を攻撃した。顕微鏡検査では、CVA21−DAFvにより攻撃された12個のインビトロ培養物のすべてが、細胞死で終わる丸い表現型(細胞傷害作用の特徴)を示したことが明らかにされた。対照的に、細胞傷害作用が、CVA21の親株により攻撃された12個のうちの7個のみのガン性細胞株について観測されただけであった(図17)。CVA21−DAFvの腫瘍崩壊能力の定量化により、CVA21−DAFvが、12個の試験されたインビトロ培養物のすべての、10TCID50/mlを超える力価での溶解性感染を支援し、一方、CVA21親株は12個のうちの7個のみのガン性細胞株(2/3の乳ガン細胞株、1/3の卵巣ガン細胞株、2/3の前立腺ガン細胞株および2/3の結腸ガン細胞株)で著しい溶解性感染(>10TCID50/ml)を誘導したことが明らかにされた(図18)。無視できるほどの量の表面ICAM−1を発現する細胞株(ZR−75−1、DOV13、OAW−42、LNCaPおよびHCT116)はCVA21の親株の複製を支援せず、その一方で、これらの細胞株には、CVA21−DAFvが容易に感染したことが観測された。ICAM−1ではなく、表面DAFの存在のみが、生物選抜されたCVA21−DAFvによる溶解性感染のために要求されるので、従って、この株は、より広範囲の様々なヒトガン性細胞株を殺すことにおいて、明らかに、CVA21親株よりも効果的である。
V.CVA21−DAFvによるヒト前立腺移植移植片のインビボ腫瘍崩壊
インビボデータにより、CVA21−DAFvが、ICAM−1および/またはDAFを細胞表面に発現するヒトガン性細胞を特異的かつ効果的に標的化することが明らかにされた。ガン性細胞の集団の観測されたインビトロ腫瘍崩壊がインビボでの抗ガン治療としてのCVA21−DAFvを予測するかどうかを調べるために、本発明者らは、前立腺腫瘍異種移植片に対するCVA21−DAFvの治療効果を評価した。事前に形成されたPC3前立腺異種移植片(50mm〜100mm)を有するSCIDマウスに、CVA21−DAFv、CVA21親株またはPBSの単回静脈内服用量を与え、腫瘍負荷量を42日の期間にわたって評価した(図19)。CVA21−DAFvまたはCVA21親株のいずれかにより処置されたマウスの腫瘍体積における著しい減少がウイルス投与後11日もの早期に観測された。倫理的理由のために、PBSにより処置されたマウスはウイルス処置後14日で安楽死させられた;それらの腫瘍負荷量が、大学の動物倫理委員会により課された上限に達したからであった。類似する血清中のウイルス量(約10TCID50/ml〜10TCID50/ml)が、溶解性ウイルス感染性アッセイによって測定されたとき、CVA21−DAFv処置マウスおよびCVA21親株処置マウスの両方について観測された(データは示されず)。これらの結果は、CVA21−DAFvが、ヒト前立腺異種移植片の腫瘍負荷量を減少させることにおいてCVA21親株と同じくらい効果的であることを明らかにしている。
考察
I.エンテロウイルスカプシドの相互作用
CVA21のプロトタイプ株による増殖性細胞感染が、表面発現したDAFおよびICAM−1との異なった相互作用によって媒介される。これに関連して、DAFは、カプシドの立体配座変化および細胞進入を誘導するICAM−1とのその後の相互作用のためにCVA21を細胞表面に隔離するように機能する。しかしながら、多数のインビトロ細胞継代が受容体使用法のこのパターンに寄与するか否かに関する疑問は、さかんに議論されているテーマである。特に、DAF結合表現型は、系統発生的に関連したプロトタイプA群のコクサッキーウイルスA13、A15、A18およびA20(これらもまたICAM−1を細胞内在化受容体として用いる)は表面発現のDAFに結合しないことを考慮すれば、ほとんど推測の域であった。従って、様々な研究が、CVA21プロトタイプ株KuykendallのDAF結合表現型がCVA21の低いインビトロ継代培養された臨床単離体において保存されていたか、または、単に細胞培養における多数回の継代の人為的結果にすぎなかったかを観測するために着手された。
本明細書中に示される放射能標識ウイルス結合アッセイは、CVA21の3つの臨床単離体がプロトタイプCVA21株(Kuykendall)と類似する受容体付着パターン(これは、DAFまたはICAM−1のいずれかに独立的に結合することができることによって特徴づけられる)を示したことを示している(図1)。DAFまたはICAM−1のいずれかに向けられたMAb遮断はウイルスの結合を完全に阻害することができないこと(図2)は、両方の受容体がCVA21の臨床単離体の付着/感染プロセスにおいて不可欠な役割を果たしていることを示している。一方、DAFおよびICAM−1の高レベル同時発現の環境でのCVA21結合への研究は、2つの受容体が個々に発現された環境での場合よりも、ウイルス結合の程度が低下することを明らかにしている(図3)。これらの発見は、多数の受容体の高レベル同時発現が、実際には、最適な溶解性感染に対して阻害的であるかもしれないことを示唆している。宿主細胞表面に同時発現したとき、DAFおよびICAM−1が非常に接近することは、受容体結合部位の利用性の低下を引き起こす立体的な障害を生じさせることが考えられる。このことが当てはまるならば、宿主細胞における両受容体の高レベル発現は、増大した付着レベルと必ずしも相関しない一方で、これら2つの異なる細胞受容体の発現レベルが1つのウイルスについて異なっている環境は潜在的に好都合であるかもしれないことが推論され得る。そのような環境は、DAFの発現が遍在的であり、かつ、ICAM−1(その内因性の発現レベルは比較的低く、適切なサイトカインによる誘導を待っている)よりも著しく高いレベルにあるヒト腸管の粘膜表面において生じる可能性がある。
本研究の予想外の発見は、低い継代の臨床CVA21単離体が、抗体架橋の非存在下でのDAF結合を介するだけでRD細胞に溶解的に感染することによって、DAF相互作用をより機能的な役割で利用することができることであった(図4)。これらの新規な発見に対する1つの考えられる説明は、臨床CVA21単離体のウイルスカプシドは、プロタイプ株よりも実質的な様式でDAFを架橋することができ、それにより、抗DAF Mabの人為的な架橋作用と類似する機構でウイルスの内在化を可能するということである(図4)。同様に、受容体使用法の違いが、CVB3プロトタイプと、低い継代の臨床単離体との間で観測されている。より近年には、種々のαインテグリンの利用における変動が口蹄疫ウイルス(FMDV)の研究室株および現場株の間で報告されており、ウイルス単離体がその細胞受容体について変化した親和性を示し得ることが明らかにされている。
本発明において、本発明者らは、ICAM−1の非存在下において、MAb架橋のDAFがプロトタイプ株および臨床CVA21株の両方についての機能的な内在化受容体として役立ち得ることを確認している(図4)。MAbにより架橋されたDAFにより媒介されるCVA21の進入が、ICAM−1とのウイルス相互作用の期間中に用いられるクラスリン被覆ピット進入経路とは対照的に、小胞を介して生じることが以前から提案されている。架橋されたDAFを含有する小胞を介するCVA21進入の仮説は、MAbによりクラスター化されたDAFが小胞への補充の後で食作用を受けることを示す証拠によって裏付けられる。小胞媒介によるCVA21進入におけるDAF相互作用についての可能な役割が、脂質ラフト(raft)および/または小胞を介するEV11のDAF結合性株の細胞内在化の最近の報告によって確認されている。
哺乳動物の身体中におけるDAFの広範囲の発現は、適合可能な利点を、DAFについてより大きい親和性を示し、かつ、この受容体を内在化のために利用することができるウイルスに提供する。そのようなウイルスは、ヒトの身体中を移動するための容易に利用可能なビヒクルをDAF結合ウイルスに提供する赤血球におけるDAFの発現のために、他の株と比較して、増大した病原性を有する場合がある。興味深いことに、分極した上皮細胞におけるコクサッキーウイルスのB3単離体およびB5単離体の連続した継代培養(この場合、それらの生来的な内在化受容体(コクサッキーウイルスおよびアデノウイルスの受容体)が、密になった細胞−細胞接合部に位置し、DAFが先端表面に位置する)により、DAF結合性の変化体が選択された。このことは上皮細胞粘膜表面のDAF感染のための重要な役割を示唆している。
カプシドの構造的タンパク質をコードするゲノムのP1領域の遺伝子分析により、数多くの違いが推定アミノ酸配列において臨床CVA21単離体およびプロトタイプ株の間で検出された(図5)。認められたコード変化はどれも、以前に決定されたICAM−1フットプリントにマッピングされず、また、そのような違いは、VP1全体、VP2全体およびVP3全体に散らばっていた。ICAM−1フットプリントを構成する残基は、VP2におけるアミノ酸168を除いて、プロトタイプKuykendall株およびすべての臨床単離体の両方で保存されていた(図5)。VP2の168位において、このアミノ酸置換はValからAlaへであり、ICAM−1結合部位の立体配座において保存されており、潜在的にはあまり重要でない。DAFのみを発現するRD細胞において著しい溶解活性を示したが、その活性が残りの臨床単離体ほど大きくない臨床単離体#272101は、プロトタイプ株に対してすべての臨床単離体の間で認められた14個のコード変化のうちの13個を有した。他の臨床単離体と比較して#272101におけるさらに9個のさらなる変化の存在は、#275238および#2727598の単離体によって示される強化されたDAF使用表現型に何らかのタイプの抑制を及ぼしているかもしれない。DAFおよびICAM−1がともに高い環境での高まったDAF使用表現型を有する臨床CVA21単離体の反復されたインビトロ細胞継代培養は、機能的なDAF相互作用を低下させることの犠牲のもとで、強化されたICAM−1使用法を有するビリオンの生物選抜のための圧力を及ぼしているかもしれない。そのようなビリオン集団が生じることは、変化した受容体使用表現型に関わる重要なP1アミノ酸変化の特定をもたらし得る。
単離体#272101の低下したDAF使用法に対する1つの考えられる説明が、そのDAF結合表現型を失っている生物選抜されたEV11変化体が特異的なアミノ酸変化をVP1のBCループおよびVP2のパフ領域に有していたという報告から提供される。本発明者らの配列分析では、そのような特異な違いが#272101のVP1のBCループおよびVP2のパフ領域に存在し、他のCVA臨床単離体の同じカプシド領域には存在しないことが明らかにされた(図5)。結論であることが示されていないが、ウイルスの付着/細胞進入の環境において、すべての臨床単離体およびプロトタイプの間におけるこれらの認められた13個のアミノ酸変化は、強化されたDAF使用表現型の発達においてある役割を潜在的に果たしているかもしれない。しかしながら、本研究では検討されていないが、細胞溶解性感染を媒介することにおけるウイルスゲノムの他の領域(例えば、5’非翻訳領域)に存在するさらなる変化の関与を退けることができない。
しかしながら、DAF/EV7、DAF/CVB3相互作用およびDAF/CVA21相互作用の間における著しい違いは、DAFのSCR2、SCR3またはSCR4がEVおよびCVBの結合に関与し、その一方で、sDAFのSCR1がCVA21の付着に関与することである。EV7、CVB3およびCVA21のカプシドの間における全体的な構造的類似性を考えると、CVA21のカプシド上にそれら自身の異なった結合部位を有する2つの異なった受容体(すなわち、DAFおよびICAM−1)のN末端ドメインの関与が感染期間中の任意の段階で存在し得ることが提案される。しかしながら、EV7/CVB3の結合におけるDAFのSCR2〜SCR4の関与は、さらなる受容体(例えば、CVB3の場合におけるCARなど)との相互作用が、ウイルスのカプシドにおける特異的なDAF結合エピトープへの接近の妨害を最小限に抑えるために、DAFとの相互作用の後で存在し得ることを示唆している。わずかな違いが、ICAM−1陰性のRD細胞に溶解的に感染することができる臨床単離体に対して、プロトタイプ株のVP1の遊走において検出されることはかなり注目されるかもしれない。同様に、CVB3プロトタイプの変化体(CB3−RD)(これはRD細胞における連続した継代培養の後で得られた)は、プロトタイプに対して変化したVP1移動度を示し、親株と比較した場合、DAFに対する変化した受容体特異性と相関していた。
まとめると、示された研究における結果は、その細胞受容体に対する臨床単離体の全体的な結合能力がプロトタイプ株に対して保存されているが、かなり異なった違いが、これらの受容体を利用する臨床CVA21単離体の能力において存在するようであることを示している。CVB3の現場株と同様に、臨床CVA21単離体は、ヒトにおける継代の結果としてであることが最も可能性が高いと考えられるが、細胞溶解性感染におけるDAFの増大した使用を容易にする表現型を有する。CVA21が宿主細胞の付着および/または感染のためにDAFおよびICAM−1の両方を利用することができることは、個々および/または多数の受容体使用法を可能にし、それにより、ウイルスの組織親和性を拡大し、かつ、増殖性感染の機会を著しく増大させる有利な表現型が保存されていることを示唆する。
II.コクサッキーウイルスA21変化体の生物選抜および分子的特長づけ
多くの他のエンテロウイルスについてそうであるように、DAFはCVA21のプロトタイプ株に対する付着受容体として使用され、だが、ICAM−1が増殖性CVA21感染のためには要求される。本研究では、本発明者らは、ICAM−1陰性細胞においてインビトロで生物選抜されたCVA21の変化体で、変化および拡大した細胞親和性を獲得しているそのような変化体を記載する(図6および図7)。本明細書中に示される放射能標識ウイルス結合アッセイでは、ICAM−1陰性RD細胞における多数回の継代培養にもかかわらず、CVA21−DAFvが、ICAM−1のN末端ドメインまたはDAFのSCR1のいずれかに独立して結合する能力を保持していたことが示される(図7)。極めて高レベルの表面発現したDAFの環境(すなわち、最大レベルの発現について選択されたCHO−DAF細胞)では、親株およびCVA21−DAFvはともに、類似するレベルでDAFに結合し、一方、CVA21−DAFvのみが、内因性DAFの著しく少ない表面発現を示したRD細胞およびDOV13細胞に付着した。以前の研究と一致して、抗DAF SCR3mAbによるDAFのmAb架橋は、DAF発現のRD細胞およびDOV13細胞に対する親株CVA21の結合を著しく増大させ、また、ICAM−1の非存在下での溶解性感染を促進させた(図7)。しかしながら、mAb架橋されたRD細胞およびDOV13細胞に対するCVA21−DAFvによるウイルス結合または溶解性感染の増大は何ら観測されなかった。この発見は、親株との比較で、生物選抜されたCVA21−DAFvがDAFとのその相互作用を最適化していること、および、そのような相互作用はDAFのmAb架橋によってさらに強化されないことを示唆する。親株CVA21のビリオンがエピトープ競合の抗DAF SCR1mAbとのインキュベーション時において表面発現のDAFからCVA21−DAFvよりも容易に追い出されることを示すデータは、親株と比較して、CVA21−DAFvの強化されたDAF結合表現型の仮説をさらに裏付けている(図8)。
CVA21プロトタイプ株に対するDAFの役割は、ウイルスを感染性の状態で保ち、これにより、進入受容体(ICAM−1)との相互作用を待つことであり、また、DAFだけへの直接的な結合はCVA21プロトタイプ株による増殖性感染を開始させないことが主張されている。トランスフェクションされたCHO細胞の表面におけるDAFまたはICAM−1の高レベルの表面発現(図7)にもかかわらず、親株CVA21またはCVA21−DAFvによる検出可能な細胞感染を観測することができなかった(データは示されず)。しかしながら、CVA21−DAFvによる強化されたDAF使用法を裏付ける証拠が、高いウイルス投入量でさえ、抗DAF SCR1mAb遮断だけによって完全に阻止され得るICAM−1陰性RD細胞およびDOV13細胞の溶解性感染によって提供される(図9)。このことは、DAFおよびICAM−1の同時発現の多受容体環境(この場合、DAFおよびICAM−1の両方に対するmAbが、感染を完全に阻止するために要求される)で使用されたときにCVA21プロトタイプ株について同じmAbによって観測された部分的な阻止とは対照的である。これらの発見は、CVA21−DAFvが表面DAFを機能的な細胞受容体として用いるという仮説を裏付けている。CVA21−DAFvによる感染が、エンテロウイルスの感染に対する阻害的影響を示すことが以前に示された濃度と同程度である濃度でsDAFによって開始されたという観測結果により、RD細胞のCVA21−DAFv感染におけるDAFの役割の重要性がさらに強調される(図9)。加えて、生物選抜プロセス期間中において、CVA21−DAFvが、ICAM−1の非存在下での細胞内在化に関与する別の、未だ特定されていない二次的な細胞受容体を使用するために順応しているという可能性に反論する証拠が得られている。親株CVA21のDAF結合表現型と比較して、CVA21−DAFvの強化されたDAF結合表現型(図7および図8)は、RD細胞においてだけでなく、DAFを発現する卵巣ガン細胞(DOV13)においてもまた、増大した細胞溶解性感染に転換されるようである(図7)。
数多くの異なった違いが、DAFに対する多くのヒトエンテロウイルスの結合相互作用において存在する。CVB3、EV7およびEV12のビリオンにおけるDAF結合部位が二十面体の2回対称軸でのカプシドの谷の外側に位置することが主張されている。EV11もまた、カプシドの谷の外側でDAFと相互作用する一方で、DAF結合フットプリントがビリオンの5回軸の近くに位置することが主張されている。DAFに付着するヒトエンテロウイルスのなかで、エンテロウイルス70およびCVA21のみがDAFのN末端のSCR1ドメインに結合し、残るDAF結合性エンテロウイルスは中央のドメイン(SCR2〜SCR4)と相互作用する。DAFに対するエンテロウイルス結合が谷の外側に位置するという事実に加えて、これらの相互作用は、細胞感染またはA粒子の形成をもたらさないことが報告されている。EV11の場合、それについてのDAF結合が定量的に評価されているが、DAFとの相互作用は親和性が低く、このことは、類似する親和性であるが、より遅い速度論を有するライノウイルス3に対する谷結合性ICAM−1分子の相互作用とは対照的である。
CVA21−DAFvが、強化されたDAF結合表現型を示しているにもかかわらず、カプシドコード領域における2個のアミノ酸だけが親株とは異なる。生物選抜プロセス期間中において、CVA21−DAFvは、ICAM−1と結合する能力を保持していた(図7)。従って、驚くべきことではないが、認められたカプシド変異はどれも、以前に決定されたICAM−1結合フットプリント(これは、北側および南側の谷の縁に広がることが主張されている)に位置していなかった。CVA21−DAFvの認められた変異は、VP2のEFループと、VP1およびVP3のC末端とによって取り囲まれるVP3のαらせん(CDループ)においてカプシドの谷の外側に位置することが予測される(図10)。2つの変異が、VP1のR270およびVP3のH329との相互作用を介してVP1およびVP3のC末端と非常に接近していることが予測される。CVA21−DAFvのVP3における認められた変異は、EV12の表面におけるDAF結合フットプリントに対応する、VP3のαらせんと、VP1のC末端領域との立体配座を強化することに関与しているかもしれないことが提案される。そのような立体配座変化はCVA21−DAFvカプシドとDAFとの間においてより良好な接触をもたらす。DAFと、CVA21−DAFvビリオンの2回軸凹部との間での増大した親和性はVP3のH96およびA101の存在に起因するという仮説は、抗DAF SCR1mAbによる攻撃によって、CVA21−DAFvを表面発現のDAFから追い出すことが親株ビリオンよりも困難であることの発見と一致する(図8A)。CVA21の低い継代の臨床単離体(これはDAFのmAb架橋およびICAM−1発現の非存在下でDAF発現RD細胞に様々な程度で溶解的に感染することができる)はまた、VP3のH96変異をコードしているが、CVA21−DAFvで認められたA101変異をコードしていない。比較において、プロトタイプCVA21株はVP3のR96をコードする。表面DAFに付着する放射能標識CVA21−DAFvビリオンの強化された能力は、他のウイルスゲノム領域の関与ではなく、むしろ、カプシドコード領域内の変異を反映する。
プロトタイプCVA21による架橋DAF媒介による細胞溶解性感染が、ICAM−1の相互作用を介して媒介される細胞溶解性感染よりも遅い速度で生じ、この場合、細胞進入が、異なる進入機構を介して生じることが示唆される。プロトタイプCVA21の架橋されたDAFにより媒介される進入は、検出可能なA粒子の形成を伴うことなく生じており、小胞(EV1、および、EV11のDAF結合性株の進入において最近になって関係づけられた新規な進入経路)を伴うことが主張される。EV1が細胞表面上のその受容体α2β1に付着することにより、インテグリンのクラスター化がもたらされ、また、そのような付着は、架橋されたDAFを介するプロトタイプCVA21媒介による進入と類似する様式でのウイルスの進入を容易にすることが示唆される。mAb架橋の後、DAFはより有利な立体配座で細胞表面に提示され、それにより、細胞をプロトタイプCVA21による感染に対して感受性にすることが主張される。表面DAFに対するCVA21−DAFvの結合はA粒子の検出可能な形成の非存在下で生じるようである(図8B)。この発見に対する1つの考えられる説明は、低い継代の臨床CVA21単離体(これもまたVP3のH96残基を有する)について以前に主張されたのと類似する様式で、CVA21−DAFvビリオンがDAFを効果的に架橋し、かつ、それにより、mAbを架橋する人為的な作用に関連した機構によって細胞内への進入を獲得し得るということである。細胞表面から溶出された検出可能なCVA21−DAFvのA粒子が明らかに存在しないことは、A粒子が形成されていないことを証明していない。A粒子は、その後の脱外皮事象が160S粒子から135S粒子への最初のDAF媒介による変換よりも速い速度で生じるならば蓄積しない。EV1(これはα2β1インテグリンを細胞進入のために使用する)はカプシドの谷においてα2β1インテグリンの機能的なα2lドメインに結合する。古典的な谷結合性の受容体であるにもかかわらず、α2lとのEV1の相互作用は、ポリオウイルスに対するポリオウイルス受容体の可溶性形態の結合およびライノウイルスに対するICAM−1の結合とは対照的に、ウイルスの脱外皮をもたらさない。しかしながら、α2β1発現細胞とEV1との間での相互作用はビリオンの立体配座変化を媒介することが示唆されており、しかし、さらなる細胞分子がEV1の脱外皮のために必要とされるかどうかは明らかでないままである。同様の様式で、さらなる細胞タンパク質がCVA21−DAFvの脱外皮のために必要とされること、または、ウイルスのカプシドにおける変異の存在がカプシドを脱安定化させ、それにより、受容体媒介による立体配座変化の必要性を回避し得るかどうかは除外することができない。
CVA21−DAFvが、表現型および組織起源が異なる2つのガン性細胞株(RDおよびDOV13)に溶解的に感染することができることにより、機能的な受容体としてのDAFの獲得された使用が、生物選抜プロセスで用いられた特定の細胞基質に限定されないことが強調される。DAFおよび他の補体調節タンパク質の発現が、補体媒介による攻撃から細胞を保護するために、正常な細胞に対して、異なる起源の多くの腫瘍細胞の表面で高まっている。表面発現したDAFとの特異的なカプシド相互作用を介するCVA21−DAFv媒介による腫瘍崩壊(これは、強化されたDAF結合表現型に起因する)は、いくつかのヒト悪性腫瘍の根絶において潜在的に効果的であり得ることが示唆される。この方法を裏付けとして、悪性メラノーマ細胞の表面にともに過剰発現されるICAM−1およびDAFを介して標的化されるメラノーマ腫瘍の根絶において効果的であるCVA21のプロトタイプ株の成功した適用がある。本研究の大きな発見は、ウイルスの生物選抜は、腫瘍を標的化する新規な腫瘍崩壊性エンテロウイルスの開発における直接的な遺伝子操作に対する実用的な代替法であり得るということである。
III.コクサッキーウイルスA21−DAFにより媒介される細胞感染性
DAFとのエンテロウイルスの相互作用はプロトタイプおよび臨床単離体の間では異なるようである。ICAM−1発現および抗体により架橋されたDAFの非存在下では、CVA21の臨床単離体は、様々な程度ではあるが、おそらくは特異的なウイルスカプシド相互作用を介してDAFを架橋することによって宿主細胞の溶解性感染を達成する。しかしながら、DAFの相互作用がエンテロウイルスの数多くの臨床単離体について詳しく記載されているにもかかわらず、溶解性感染時におけるDAFについての直接的な機能的役割は今も明らかにされていない。エンテロウイルス−DAFの相互作用を調べる多くの研究から得られた一般的な総意は、DAFがウイルス隔離受容体として機能し、それにより、さらなる機能的な内在化受容体に対するウイルス提示を高めるということである。
本研究では、本発明者らは、DAF結合性のエコーウイルスおよびコクサッキーB群ウイルスとは異なり、CVA21がDAFのN末端のSCRに結合することを確認している(図11)。DAFからのCVA21の溶出に対する生物物理学的パラメーター(例えば、時間、温度およびpHなど)の影響を検討する研究では、CVA21粒子がDAFから比較的迅速に溶出されること、および、この溶出が、温度およびpHの増大に対して影響されやすいことが強調される(図12)。ICAM−1からのCVA21の溶出は、DAFから溶出されたビリオンと比較した場合、ウイルス感染性における劇的な減少によって特徴づけられる(図13および図14)。ICAM−1から溶出されたCVA21ビリオンは、受容体結合が、ビリオンを、結合させることができないままにし、かつ、溶解性感染を開始させることができないままにしておくことの結果として、不可逆的なカプシド立体配座変化を受ける。対照的に、mAb架橋DAFとのCVA21の相互作用はA粒子の形成を生じさせない。受容体結合時における非感染性A粒子への立体配座変化は数多くのピコルナウイルス(例えば、PV、主要群のHRVおよびCVB3など)について特徴的である。DAFから溶出された粒子が依然として感染性を保ち続けることができることは、最も可能性のあることには、DAFがCVA21カプシドの立体配座変化を誘導することができないことの結果である。DAFを発現するCHO細胞から溶出されたCVA21粒子は、感染性の160S粒子と類似する沈降係数をスクロースグラジエントにおいて有し、これに対して、ICAM−1を発現するCHO細胞から溶出されたCVA21粒子は、135Sの変化した粒子の沈降係数により近い低下した沈降係数を示した。DAF相互作用の後におけるCVA21感染性の維持は、ICAM−1結合に関与する領域と比較して、ビリオンカプシドの異なる領域がDAF結合に関与することの結果としてであり得る。CVA21の谷がICAM−1に対する付着部位であり、一方、DAFは、カプシドのより容易に接近可能な2回軸凹部において結合することが主張される(これは、極低温電子顕微鏡観察による再構成を使用してEV7について最近において確認された提案である)。同様に、EV11はまた、谷の外側のカプシドの領域でDAFと結合することが主張されている。しかしながら、この場合、結合は、二十面体の5回軸を伴うことが提案されている。これらの発見は、2回軸凹部における結合がカプシド立体配座における検出可能な変化の引き金にはならないことが主張されているので、DAFが主に細胞付着に関与するという理論を裏付けている。
エンテロウイルスのカプシドに対するDAF結合の性質は、非常に速い解離速度定数の結果のために親和性が低いことが示唆される。対照的には、類似する構造のウイルスカプシドとのICAM−1の相互作用は、親和性が同程度であるが、比較的接近しにくい部位(カプシドの谷)に対する結合と一致する著しくより遅い速度論を有する。DAFに結合したビリオンが、その受容体結合エピトープについて競合するmAbにさらされている間に、ICAM−1に結合したビリオンよりも容易に追い出されるという発見は、結合がDAFよりもICAM−1に対して厳格であることを示唆する。従って、DAFに結合したCVA21のmAb媒介による追い出しにおける明らかな違いは、カプシド表面における受容体結合部位の個々の存在位置に対する相対的な接近のためであり得ることが示唆される(すなわち、ウイルスDAF結合のより容易な解離は2回軸凹部における強化されたmAb接近性に起因し、ウイルスICAM−1結合の困難な解離はカプシドの谷に対するmAbの制限された接近に起因する)。
DAFとのCVA21相互作用の可逆性が、CVA21が(ICAM−1陰性細胞において)DAFに結合し、かつ、引き続き24時間まで感染性の状態に留まることができることによって強調された。感染性の保持は、DAF結合のビリオンが、遅れたICAM−1発現とともに提示されたとき、細胞進入およびその後の溶解性感染を受けることを可能にしていた(図15)。細胞病理学における検出可能な変化がない場合、RD細胞の単層物、および、アデノ−CD36により形質導入されたRD細胞の単層物における比較的高いレベルの感染性CVA21(図15C)が研究期間中を通して持続した;DAFに結合した残存するウイルス接種物が感染性を保持しているためであることが最も考えられる(図13および図14)。あるいは、強化されたDAF使用表現型を有し、これにより、DAFの架橋を可能にし、かつ、その後の遅い感染を開始させるCVA21プロトタイプ調製物内のビリオンの亜集団の存在のためであり得る(これは、CVA21の臨床単離体について以前に記載された発見である)。
CVA21がDAFを付着受容体として使用することができ、かつ、非常に感染性の能力を保持することができることは、哺乳動物の身体中におけるDAFの広範囲にわたる分布(特に赤血球における分布)を考えた場合、極めて好都合な機構である。この環境において、DAFを発現する赤血球は、感染性ウイルスが赤血球表面から離れ、溶解性感染のためにICAM−1発現細胞と相互作用することができる身体中を通るすぐに使用される輸送ビヒクルをウイルスに提供する。ICAM−1の細胞表面発現が炎症性サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子(TNF)−αおよびインターロイキン(IL)−1βなど)の存在下で高められる。天然のヒトライノウイルスの感染期間中に、感染細胞は、周りの細胞における強化されたICAM−1発現を媒介するそのようなサイトカインを放出する。
本明細書中に示されたデータでは、CVA21の溶解性感染の期間中におけるDAFの主要な役割が、隔離受容体として作用し、これにより、ウイルスを、ICAM−1相互作用を介する細胞進入のための機会を待つ感染性の状態で保つことであることが確認される。CVA21が、結合および溶出の比較的短い循環によって示されるように、細胞感染期間中に何度も、DAFと結合し、また、DAFから溶出することが最も起こり得る。本発明者らは、DAFからの溶出が、増殖性感染をより後の段階で開始するCVA21の能力にとって有害でなく、実際には、このウイルスが少なくとも2つの異なった機構によって宿主細胞進入を達成することの機会を増大させることを示唆する。第1に、ウイルスは、受容体結合能力と、従って、細胞感染性とを依然として保持しながらDAFに結合し、かつ、溶出することができる。第2に、CVA21はDAFに結合し、かつ、ウイルスの内在化およびその後の溶解性感染を可能にするために同じ細胞または近接する細胞における著しいレベルのICAM−1発現を利用できることを待つことができる。ウイルスの進化および病理発生の両方の観点で、DAFに結合することができることは、細胞感染性を最大にすることにおいてCVA21のプロトタイプ株および他のDAF結合性のエンテロウイルスについて最も好都合であると見なされるに違いない(これは、毒性の臨床CVA21単離体において保持され、かつ、強化さえされる表現型である)。
IV.コクサッキーウイルスA21のDAF変化体(CVA21−DAFv)によるヒト乳ガン細胞、前立腺ガン細胞、結腸ガン細胞および卵巣ガン細胞のインビトロ溶解
本発明で示される研究では、インビトロ選択法によって単離されたCVA21−DAFvによる特異的な腫瘍崩壊能力が記載される。12個のヒトガン性細胞株の集団を使用して、本発明者らは、この生物選抜された株が、試験されたすべての腫瘍由来細胞株に迅速に感染することを明らかにしている。対照的に、CVA21−DAFvが得られたCVA21親株は、試験された12個のガン性細胞株のうちの7個において腫瘍崩壊を媒介しただけであった。重要なことは、CVA21−DAFvの優れた腫瘍崩壊活性が、親株CVA21と比較した場合、この生物選抜された株が生じたRD細胞に限定されず、試験された多様な組織起源の他のヒトガン細胞株の大部分で観測された(図18)。CVA21−DAFvが、ICAM−1の存在を細胞進入のために必要とする親株CVA21との比較で、試験された非常に多数の腫瘍細胞株に溶解的に感染するという本発明者らの観測結果は大きな臨床的影響を有し得る。ヒトの充実性腫瘍は、一般には、密に詰まった細胞の大きな塊であるが、その細胞はICAM−1を必ずしも発現していない場合がある。さらに、ICAM−1の発現は、前立腺ガン細胞の転移の潜在的可能性と相関することが示されている。すなわち、ICAM−1は、転移性があまりないLNCaP細胞と比較して、転移性がより大きい細胞株のDU145およびPC3において発現している。本発明者らの研究において、本発明者らは、LNCaP細胞がCVA21の親株による感染に対して抵抗性であるが、この細胞株、ならびに、DU145およびPC3は、CVA21−DAFvの生物選抜された株によって溶解されることを示している。
V.CVA21−DAFvによるヒト前立腺異種移植片のインビボ腫瘍崩壊
CVA21−DAFvは、CVA21親株よりも広範囲の様々なガン性細胞株に対する腫瘍崩壊活性を示したが、生物選抜された株の1回だけの服用は、腫瘍負荷量をインビボヒト前立腺異種移植片モデルにおいて減少させることにおいて同等に効果的であった。まとめると、本明細書中に示される証拠は、CVA21−DAFvが、数多くの不均一なガンタイプについてのバイオ治療剤としての大きな効力で使用される潜在的可能性を有することを明らかにしている。
要約
CVA21の低い細胞培養継代による臨床単離体は、DAF結合表現型を伴って、ICAM−1に加えてDAFと結合することが示されており、従って、このことは、細胞培養における多数回の継代培養から獲得されているとは考えられない。エンテロウイルスの感染におけるDAFのより機能的な役割についてのますますの証拠が、抗DAFmAb架橋または表面発現したICAM−1の非存在下でDAF発現細胞に溶解的に感染する能力を有するそのような臨床CVA21単離体の強化されたDAF使用表現型によって明らかにされている。
本発明者らは、ICAM−1陰性の横紋筋肉腫(RD)細胞に溶解的に感染させるために生物選抜されたCVA21の変化体(CVA21−DAFv)の受容体使用法の性質を調べた。本発明者らは、DAFを発現するRD細胞における多数回の継代培養の後で、CVA21−DAFvが、ICAM−1と結合する潜在的能力を保持しながら、親株と比較して、DAFに結合する強化された能力を示すことを示した。RD細胞の溶解性感染が、抗DAF SCR1mAb遮断によって完全に無効にされた。このことは、DAFだけとの相互作用により、溶解性感染が媒介されることを示唆している。CVA21−DAFvの細胞相互作用の分子的基礎のより良い理解を得ることを目指して、CVA21−DAFvのカプシドコード領域のヌクレオチド配列を決定し、親株CVA21のヌクレオチド配列と比較した。配列比較により、DAFとの強化されたウイルスカプシド相互作用を付与することが予測される、CVA21−DAFvのVP3における2つの特異なアミノ酸置換の存在が明らかにされた。
数多くの変化および/または改変が、広く記載された本発明の精神または範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態において示されたように本発明に対して行われ得ることが当業者によって理解される。従って、本発明の実施形態は、すべての点で、限定としてではなく、例示として見なさなければならない。
抗ICAM−1 MAbの存在下および非存在下における(A)DAF発現CHO細胞および(B)ICAM−1発現CHO細胞に対する、[35S]−メチオニン標識されたCVA21プロトタイプ(Kuykendall)および3つのCVA21臨床単離体(#272101、#275238および#272598)の結合を示す。 抗DAF SCR1 MAb処理、抗ICAM−1ドメイン1 MAb処理および/またはPI−PLC処置の存在下におけるHeLa細胞に対する、[35S]−メチオニン標識されたCVA21プロトタイプ(Kuykendall)(A)および臨床単離体#272101(B)の結合を示す。 DAFまたはICAM−1のいずれかを単独または組合せで発現するCHO細胞に対する、[35S]−メチオニン標識されたCVA21プロトタイプ(Kuykendall)および3つのCVA21臨床単離体(#272101、#275238、#272598)の結合を示す。 抗DAF MAbのIA10(SCR1)、VIIIA7(SCR2)、IH4(SCR3)およびIIH6(SCR4)の存在下におけるCVA21プロトタイプ(Kuykendall)および臨床単離体(#272101、#275238、#272598)によるICAM−1陰性RD細胞の溶解性感染を示す。 プロトタイプCVA21Kuykendall株および臨床単離体(#272101、#275238および#272598)についての、VP1、VP2およびVP3のカプシドタンパク質の多配列アラインメントを示す。 CVA21親株およびCVA21−DAFvによるSkMel28細胞およびRD細胞の感染。(A)RD細胞およびSkMel28細胞におけるICAM−1発現およびDAF発現のフロ−サイトメトリー分析。実線のヒストグラムはコンジュゲートのみの結合を表し、点線のヒストグラムは抗ICAM−1mAbの結合を表し、抗DAFmAbの結合が黒塗りのヒストグラムによって示される。(B)96ウエルプレートにおけるSkMel28細胞およびRD細胞の単層物をCVA21親株およびCVA21−DAFvの10倍希釈物とインキュベーションした。72時間のインキュベーションの後、単層物を固定し、クリスタルバイオレット溶液により染色した。+は、顕微鏡検査によって検出されたCPEを示す。(C)RD細胞上におけるCVA21−DAF変化体と比較したときの、SkMel28細胞上におけるCVA21親株およびCVA21−DAFvの代表的なプラーク形態を示す。 CVA21−DAFvの結合および溶解性感染に対する抗DAFmAbおよび抗ICAM−1mAbの影響。(A)CHO細胞、CHO−DAF細胞、CHO−ICAM−1細胞およびDOV13細胞におけるDAFおよびICAM−1の表面レベルのフローサイトメトリー分析。実線のヒストグラムはコンジュゲートのみの結合を表し、点線のヒストグラムは抗ICAM−1mAbの結合を表し、抗DAFmAbの結合が黒塗りのヒストグラムによって示される。CHO細胞、CHO−ICAM−1細胞、CHO−DAF細胞およびDOV13細胞における表面発現したICAM−1(B)およびDAF(C)に対する放射能標識ウイルスの結合を液体シンチレーション計数によって測定した。結果が三連のサンプル+SDとして表される。(D)RD細胞およびDOV13細胞のCVA21溶解性感染に対するDAFのmAb架橋の影響を示す。 DAFからのCVA21−DAFvの溶出。(A)表面のDAFに対するCVA21親株およびCVA21−DAFvの結合の厳格さ(stringency)の比較。CHO−DAF細胞を放射能標識ウイルスと4℃で2時間インキュベーションし、その後、細胞に結合しているウイルスを、氷上で1時間、様々な濃度の抗DAF SCR1mAb(IA10)により溶出した。上清を、溶出されたウイルスのレベルについてモニターした。結果が、細胞から溶出された放射能標識ウイルスの%として表される。(B)DAF結合CVA21−DAFvビリオンおよびICAM−1結合CVA21−DAFvビリオンの沈降を示す。 抗DAF SCR1mAbおよび可溶性DAF(sDAF)によるCVA21−DAFv溶解性感染の阻害。(A)RD細胞のコンフルエント単層物を、CVA21−DAFvによる感染の前に抗DAF SCR1mAbのIA10とインキュベーションした。37℃で24時間インキュベーションした後、細胞を細胞溶解について調べ、写真撮影した。(B)CVA21−DAFvをsDAF(85μg/ml)と37℃で1時間インキュベーションし、RD細胞の単層物に加えた。 CVA21の予測される受容体−ウイルス結合表面の詳細図。(A)VP1が黄色で描かれ、VP2がピンク色で描かれ、VP3がマゼンダ色で描かれる等表面(isosurface)として示される1つのCVA21プロトマーの上面図。数字は、二十面体の5回軸、3回軸および2回軸の対応する位置を示す。相互作用するICAM−1分子およびDAF分子がウォーム描図として示され、DAFがコムギ色で、谷と結合しているICAM−1が緑色で示される。CVA21親株におけるVP3のR96残基の位置(空間充填モデル)がVP1のC末端ループによって部分的に覆われ、かつ、アルギニン側鎖における1つの窒素原子(星印の隣の青色表面)だけをウイルスの表面から見ることができる。(B)上記のように着色されたタンパク質と、空間充填モデルにおいて強調されるVP3のR96残基およびE101残基とを伴うCVA21プロトマーの側面図を示す。 キメラなDAF/CD46受容体に対する放射能標識CVA21の結合。(A)野生型DAF分子、野生型CD46分子およびDAF/CD46キメラ分子の概略図。(B)DAFの個々のSCRおよびCD46に向けられたmAbの結合のフローサイトメトリー分析。抗DAFmAbは、IA10(SCR1)、IH4(SCR3)、IIH6(SCR4)であり、抗CD46mAb(SCR1)はMCI20.6であった。適切なmAbとのインキュベーションの後、細胞をPBSにより洗浄し、PBSにおけるヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)フラグメント(DAKO A/S、デンマーク)の100μlに再懸濁し、氷上で20分間インキュベーションした。細胞を上記のように洗浄およびペレット化し、PBSに再懸濁し、FACStar分析装置(Becton Dickenson、Sydney、オーストラリア)を使用してDAFおよびCD46の発現について分析した。(C)DAF分子、CD46分子またはキメラなDAF/CD46分子を発現するCHO細胞に対する放射能標識CVA21の結合。細胞を約2x10cpmの35S標識されたCVA21と37℃で1時間インキュベーションし、その後、PBSにより4回洗浄した。細胞に結合したCVA21の量を液体シンチレーションによって測定した。 時間、温度、および、インキュベーション媒体のpHに応答したDAF発現CHO細胞からのCVA21溶出。(A)CVA21を、細胞表面に発現したDAFに4℃で結合させ、温度を37℃に上げることによって2時間後に、さらに0分間、1分間、5分間、15分間、30分間および60分間にわたって溶出させた。溶出されたCVA21のレベルを液体シンチレーション計数によって求めた。(B)CVA21を、細胞表面に発現したDAFに4℃で2時間結合させ、その後、適切な温度でさらに30分間インキュベーションすることによって溶出させた。(C)CVA21を、細胞表面に発現したDAFに4℃で2時間結合させ、その後、適切なpHの媒体においてさらに30分間インキュベーションすることによって溶出させた。 DAFおよびICAM−1から溶出された後におけるCVA21の感染性。(A)細胞表面に発現したDAFおよびICAM−1に対する4℃での[35S]−メチオニン標識CVA21の結合のレベル、および、37℃でのインキュベーションの後におけるそれぞれの受容体からの放射能標識ウイルスの溶出のレベル。結合した[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを1450Microbeta TRILUX(Wallac、Turku、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定した。結果が三連のサンプル+SDとして表される。(B)細胞表面に発現したDAFおよびICAM−1への結合、そして、それらからの溶出の後におけるCVA21によるRD−ICAM−1細胞の溶解性感染を示す。 架橋されたDAFからの溶出の後におけるCVA21の感染性。(A)RD細胞における細胞表面に発現したICAM−1(RD−ICAM−1)およびRD細胞におけるmAb架橋DAFからの[35S]−メチオニン標識CVA21の0℃および37℃での溶出。溶出された[35S]−メチオニン標識ウイルスのレベルを1450Microbeta TRILUX(Wallac、Turku、フィンランド)での液体シンチレーション計数によって測定した。結果が、三連のサンプルから溶出されたパーセントウイルス+SDとして表される。(B)コントロールのCVA21と比較される、ICAM−1およびmAb架橋DAFに対する結合、そして、それらからの溶出の後におけるCVA21によるRD−ICAM−1細胞の溶解性感染。細胞の生存をクリスタルバイオレット/メタノール溶液による染色によって四連のウエルから定量化し、染色された細胞単層物の相対的な吸光度をマルチスキャン酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダー(Flow Laboratories、McLean、Virginia、米国)で540nmにおいて読み取った。50パーセントのエンドポイント力価を、図13に記載されるように計算した。(C)ICAM−1または架橋DAFに対するCVA21結合の厳格さ。RD−ICAM−1細胞またはDAF架橋のRD細胞[抗DAF SCR3(IH4)mAbとプレインキュベーションされたRD細胞]を約2x10cpmの35S標識されたCVA21と0℃で2時間インキュベーションした。 ICAM−1発現の遅れた誘導の後におけるRD細胞のCVA21誘導による溶解性感染。(A)アデノウイルスにより形質導入されたICAM−1発現の経時変化。RD細胞を、ヒトICAM−1のcDNAを含有する組換えアデノウイルスの2.5x10TCID50/mlによる形質導入によりヒトICAM−1を発現させるために誘導した。細胞を、抗ICAM−1ドメインmAb(IH4)を使用してアデノウイルス接種後の様々な時間でICAM−1の発現についてフローサイトメトリーによって評価した。(B)モック形質導入後24時間、あるいは、ヒトのICAM−1cDNAまたはCD36cDNAを含有する組換えアデノウイルスによる形質導入の後24時間での、DAF、ICAM−1およびCD36の表面発現を示すRD細胞のフローサイトメトリー分析。黒塗りのヒストグラムはDAF発現を表し、一方、ピンク色のヒストグラムはICAM−1発現を表し、青色のヒストグラムはCD36発現を表す。ICAM−1cDNAまたはCD36cDNAを含有する組換えアデノウイルスを、Adeno−questキット(Quantum Biotechnologies Inc)を製造者の説明書に従って使用して構築した。(C)24時間後までのICAM−1の遅れた発現を介するRD細胞のCVA21溶解性感染。RD細胞を、DAFに対するCVA21(moi=1.0TCID50)の結合の後0時間、6時間および24時間で、ICAM−1cDNAまたはCD36cDNAを含有する組換えアデノウイルスの2.5x10TCID50/mlによる形質導入によりICAM−1受容体またはCD36受容体を発現させるために誘導した。非形質導入のRD細胞がコントロールとして役立った。四連のウエルからの細胞生存をクリスタルバイオレット/メタノール溶液による染色によって定量化し、染色された細胞単層物の相対的な吸光度をマルチスキャン酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダー(Flow Laboratories、McLean、Virginia、米国)で540nmにおいて読み取った。50パーセントのエンドポイント力価を、ReedおよびMuenchの方法を使用して計算した。この場合、吸光度がウイルス非含有コントロール−3倍の標準偏差よりも小さいならば、ウエルは陽性としてスコア化された。(D)CVA21により誘導される溶解性感染を示す。 乳ガン、卵巣ガン、前立腺ガンおよび結腸ガンの細胞株における受容体発現を示す。 CVA21−DAFvによるインビボ腫瘍崩壊。ヒトの乳ガン細胞、卵巣ガン細胞、前立腺ガン細胞および結腸ガン細胞のインビトロ培養物のCVA21−DAFv誘導による感染の顕微鏡写真を示す。 ヒトの乳ガン細胞株、卵巣ガン細胞株、前立腺ガン細胞株および結腸ガン細胞株におけるCVA21−DAFvの腫瘍崩壊能力の定量化を示す。 CVA21−DAFvによるヒト前立腺異種移植片のインビボ腫瘍崩壊。2x10個のPC3細胞を注入した後、脇腹で成長している皮下のPC3腫瘍(約50mm〜100mm)を有するSCID(重症複合免疫不全)マウスに、単回用量のCVA21親株、CVA21−DAFvまたはPBSによる静脈内注射を与えた。 CVA21#272598単離体のカプシドコード領域の配列。(A)ヌクレオチド配列。 CVA21#272598単離体のカプシドコード領域の配列。(B)翻訳されたアミノ酸配列。 CVA21#275238単離体のカプシドコード領域の配列。(A)ヌクレオチド配列。 CVA21#275238単離体のカプシドコード領域の配列。(B)翻訳されたアミノ酸配列。 CVA21#272101単離体のカプシドコード領域の配列。(A)ヌクレオチド配列。 CVA21#272101単離体のカプシドコード領域の配列。(B)翻訳されたアミノ酸配列。 CVA21−DAFvのカプシドコード領域の配列。(A)ヌクレオチド配列。 CVA21−DAFvのカプシドコード領域の配列。(B)翻訳されたアミノ酸配列。

Claims (41)

  1. 細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されている選択されたピコルナウイルス。
  2. 選択されたピコルナウイルスは細胞上の崩壊促進因子(DAF)を介して細胞に溶解的に感染することができる請求項1に記載のピコルナウイルス。
  3. ピコルナウイルスは、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルス、未分類のエンテロウイルス、ライノウイルス、パラエコーウイルス、ヘパトウイルスおよびカルジオウイルスを含むエンテロウイルスのプロトタイプ株および臨床単離株からなる群から選択される請求項1に記載のピコルナウイルス。
  4. ピコルナウイルスはコクサッキーウイルスである請求項1に記載のピコルナウイルス。
  5. コクサッキーウイルスはA型である請求項4に記載のピコルナウイルス。
  6. コクサッキーウイルスはコクサッキーウイルスA21である請求項4に記載のピコルナウイルス。
  7. ピコルナウイルスはエコーウイルスである請求項1に記載のピコルナウイルス。
  8. エコーウイルスは、エコーウイルスの6型、7型、11型、12型、13型または29型である請求項7に記載のピコルナウイルス。
  9. ピコルナウイルスはポリオウイルスである請求項1に記載のピコルナウイルス。
  10. ポリオウイルスは、ポリオウイルスの1型、2型または3型である請求項9に記載のピコルナウイルス。
  11. ピコルナウイルスはライノウイルスである請求項1に記載のピコルナウイルス。
  12. ライノウイルスはライノウイルスの主要群またはライノウイルスの非主要群のメンバーである請求項11に記載のピコルナウイルス。
  13. ピコルナウイルスは、ICAM−1を有しない細胞に溶解的に感染することができないピコルナウイルスを、ICAM−1を有しないDAF発現細胞株において継代培養し、ICAM−1を有しない細胞に溶解的に感染することができる選択されたピコルナウイルスを回収することによって生物選抜される請求項1に記載のピコルナウイルス。
  14. ピコルナウイルスは、例えば、部位特異的変異誘発、または、ICAM−1への接近が抗ICAM−1抗体の使用によって阻止される細胞における継代培養などによって変化され、または変異され、または改変される請求項1に記載のピコルナウイルス。
  15. 選択されたピコルナウイルスは、野生型ウイルスと比較して、1つまたは複数のカプシドタンパク質において変化を有する請求項1に記載のピコルナウイルス。
  16. ピコルナウイルスは、VP1、VP2およびVP3から選択されるカプシドタンパク質において変化を含むコクサッキーウイルスである請求項15に記載のピコルナウイルス。
  17. 変異が、VP3のR96H、VP3のE101A、VP3のA239S、VP2のS164LおよびVP2のV209の1つまたは複数から選択される請求項16に記載のピコルナウイルス。
  18. 選択されたピコルナウイルスは、配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される核酸配列によってコードされるカプシドタンパク質を含む請求項1に記載のピコルナウイルス。
  19. 細胞は新生物である請求項1に記載のピコルナウイルス。
  20. 新生物は、DAFを発現する新生物である請求項19に記載のピコルナウイルス。
  21. 新生物は、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、メラノーマ、前ガン性細胞、食道ガン、乳ガン、脳ガン、卵巣ガン、胃ガンおよび腸ガンからなる群から選択される請求項20に記載のピコルナウイルス。
  22. 細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されたピコルナウイルスから由来する核酸分子。
  23. 核酸分子は一本鎖RNAまたは相補的DNAである請求項22に記載の核酸分子。
  24. 細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染することができるピコルナウイルスを生物選抜するための方法であって、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染することができないピコルナウイルスを十分な数の継代培養にわたって好適な細胞株において培養すること、および、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染することができるピコルナウイルスを選択することを含む方法。
  25. 細胞株は、横紋筋肉腫、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、メラノーマ、前ガン性細胞、食道ガン、乳ガン、脳ガン、卵巣ガン、胃ガンおよび腸ガンなどのヒトのガンから選択される請求項24に記載の方法。
  26. 細胞株は、ICAM−1を発現しないDAF発現細胞株である請求項25に記載の方法。
  27. 請求項24に記載の方法から得られるピコルナウイルス。
  28. 細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されたピコルナウイルスを好適な医薬的に許容され得る賦形剤または希釈剤と一緒に含有する医薬組成物。
  29. 細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができるピコルナウイルスのウイルス核酸分子を好適な医薬的に許容され得る賦形剤または希釈剤と一緒に含有する医薬組成物。
  30. 新生物に罹患している哺乳動物における新生物を治療するための方法であって、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されたピコルナウイルスの効果的な量を、新生物の細胞のウイルス媒介による腫瘍崩壊を生じさせる条件のもとで哺乳動物に投与することを含む方法。
  31. 新生物は、DAFを発現する新生物である請求項30に記載の方法。
  32. 新生物は、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、メラノーマ、前ガン性細胞、食道ガン、乳ガン、脳ガン、卵巣ガン、胃ガンおよび腸ガンからなる群から選択される請求項30に記載の方法。
  33. 新生物に罹患している哺乳動物における新生物を治療するための方法であって、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されたピコルナウイルスから由来する核酸分子の効果的な量を、新生物の細胞のウイルス媒介による腫瘍崩壊を生じさせる条件のもとで哺乳動物に投与することを含む方法。
  34. 新生物は、DAFを発現する新生物である請求項33に記載の方法。
  35. 新生物は、肺ガン、前立腺ガン、結腸直腸ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、副腎ガン、肝臓ガン、白血病、メラノーマ、前ガン性細胞、食道ガン、乳ガン、脳ガンおよび卵巣ガンからなる群から選択される請求項33に記載の方法。
  36. 治療方法または処置方法における、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されたピコルナウイルスの使用。
  37. 治療方法または処置方法における、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に伝染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されているピコルナウイルスから誘導された核酸分子の使用。
  38. 細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されている選択されたピコルナウイルスの使用であって、哺乳動物における新生物を治療するための医薬品の製造における使用。
  39. 哺乳動物における新生物を治療するためにウイルスを生じさせるための接種物を哺乳動物に適用するためのアプリケーターであって、アプリケーターは、接種物が哺乳動物と接触させられ得るように接種物を含浸させた領域を含み、かつ、ウイルスは、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的には非存在下で細胞に溶解的に感染するか、または、細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されている選択されたピコルナウイルスであるアプリケーター。
  40. ここに規定されるCVA21−DAFvの形の単離されている選択されたピコルナウイルス。
  41. ここに規定されるCVA21#272101,275238および272598からなる群から選択されたCVA21形の単離されている選択されたピコルナウイルス。
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