JP2007527398A - 肺細菌感染症の治療および予防のための吸入可能なアズトレオナムリシナート製剤 - Google Patents

肺細菌感染症の治療および予防のための吸入可能なアズトレオナムリシナート製剤 Download PDF

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Abstract

エアロゾルまたは乾燥粉末製剤として送達されるアズトレオナムリシナートの濃縮製剤を用いて、大腸菌、肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、緑膿菌、インフルエンザ菌、プロテウス・ミラビリス、腸内細菌腫、セラチア・マルセスセンスによって生じる感染症のみならず、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび多剤耐性緑膿菌によって生じる感染症の治療に適した、グラム陰性菌によって生じる肺細菌感染症の治療のための方法と組成物。アズトレオナムリシナートを製造するための製法。

Description

本発明は、グラム陰性菌(例えば大腸菌(Escherichia coli)、腸内細菌種(Enterobacteria species)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(K. oxytoca)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、セラチア・マルセスセンス(Serratia marcescens)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、バーコルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(tenotrophomonas maltophilia)、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス (Alcaligenes xylosoxidans))によって生じる肺細菌感染症の治療に適する、新しく、安全で、非刺激性で、生理的に適合する吸入可能なアズトレオナムリシナート製剤に関するものである。特に、本発明は、グラム陰性菌のバーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび他の抗生物質を用いた治療に抵抗性の多剤耐性緑膿菌によって生じる、急性および慢性肺細菌感染症の治療および予防の適した、α‐またはβ‐アズトレオナムに由来する、吸入可能なアズトレオナムリシナート製剤に関するものである。
吸入可能なアズトレオナムリシナート製剤は、エアロゾルまたは吸入可能な乾燥粉末として送られる。エアロゾル投与のために、約1〜約250mgのアズトレオナムリシナートが生理溶液約1〜約5ml中、または4.5〜7.5のpHを有する他の水溶液に溶けており、アズトレオナムリシナート溶液を所定の大きさの粒子に粉砕することが可能なネブライザーを使用することによって、主に1〜5μの間の質量媒体平均直径を有するエアロゾルの形で、肺気管支内に供給される。この新しい製剤と噴霧ネブライザーを組み合せることで、アズトレオナムリシナート投与量の約50%を気道に供給することができる。吸入可能な乾燥粉末を供給するために、アズトレオナムリシナートは約1〜5μの大きさへと凍結乾燥、製粉、または噴霧乾燥される。乾燥粉末製剤、またはエアロゾル投与のために再構成されたアズトレオナムリシナート固形物は、長い品質保持期限および保存性を有する。
さらに、本発明は、製造方法、およびα−アズトレオナムリシナートの大量製造に関するものである。
背景および関連開示
多種多様なグラム陰性菌が重症肺感染症を引き起こす。これらの細菌の多くは、通常用いられる抗生物質や特異的な抗生物質に対して耐性を示すか、耐性を示すようになってきており、新しい種類の抗生物質を用いた治療を必要とする。グラム陰性菌によって生じる肺感染症は、例えば嚢胞性線維症やHIVの患者、気管支拡張症の患者または機械的人工換気を行っている患者のような、免疫防御反応が衰えた患者には特に危険である。
重症細菌気道感染症、特に基礎疾患を有する患者の肺炎において現在認められた治療には、しばしば2、3通りの組み合わせで使われるさまざまな静脈内抗生物質投与が含まれる。これらの薬剤の大部分は適切ではなく、利用可能でなく、経口投与または噴霧投与のいずれかがFDAに認可されていない。場合によっては、有効な全身静脈内投与量または経口的投与量は、ぎりぎりもしくは完全に有毒な量となってしまうので、しばしば肺感染症の治療のために申し分のない十分な量の抗生物質の使用を妨げる。
したがって、これらの細菌感染症の治療のためには、全身に多量の抗生物質を投与するよりはむしろ、気道の気管支内のスペースにより少量の抗生物質を狙って投与することを可能にするような、これらの抗生物質の別形式の投与ルートを有することが望ましい。
加えて、慢性的に病気の患者は、一般的に用いられる抗生物質に対してほとんど耐性を示す細菌や、または、特定の抗生物質の長期使用に伴い、しばしばその種の抗生物質に対する強い耐性を示すようになった細菌によって生じる感染症にしばしば影響される。例えば、嚢胞性線維症患者において緑膿菌が慢性的に肺に定着すると、高い死亡率の主な原因となる。定着すると、慢性肺感染症を根絶するのは、不可能でないにしても非常に難しい。60%以上の嚢胞性線維症患者では緑膿菌株に定着されており、その緑膿菌株は、例えばピペラシリン、チカルシリン、メロペネム、ネチルミシンのような標準的および特化した抗生物質には大部分抵抗性を示し、アズロシリン、シプロフロキサシン、チメンチンおよびセフタジジムにわずかに感受性を持つにすぎない。連続的に使われた場合、多くの株は、トブラマイシンおよびコリスチンに対しても抵抗性となることが示されてきた。
しばしば、嚢胞性線維症および他の慢性肺感染症患者において、長期にわたる抗生物質療法の後、経口投与、静脈内投与、および吸入投与された抗菌剤に対して本質的に耐性を示す生物との重複感染がおこる。4つの最も一般的な薬剤耐性生物は、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび多剤耐性緑膿菌である。
バーコルデリア・セパシアに感染した嚢胞性線維症患者は、緑膿菌に感染した嚢胞性線維症患者と比較して、死亡率が増加する。Am. J. Respir. Crit. Care Med., 160: 5, 1572-7 (1999) の例に述べられているように、嚢胞性線維症患者の一部では、バーコルデリア・セパシアは速やかに死をもたらしうる。
抗生物質への高度の抵抗性はバーコルデリア・セパシアのほとんどの株で見られており、治療上の選択肢が非常に制限されている (Clinics Chest Med. , 19: 473-86 (Sept. 1998) ) 。さらに、緑膿菌とは異なり、バーコルデリア・セパシアは嚢胞性線維症患者の間で流行性に広がる可能性があり、したがって、バーコルデリア・セパシアに感染したいかなる患者も通常は他の患者から隔離される。これによって、これらの患者の看護と関連して付加的な経費が生じ、また、患者にとって心理的に苦痛をもたらす可能性もある。さらにまた、大部分の肺移植センターは、バーコルデリア・セパシアに感染した患者には肺移植を施行しないだろう (Clinics Chest Med., 19: 473-86 (Sept. 1998) ) 。従って、嚢胞性線維症患者は、バーコルデリア・セパシア感染をしばしば死刑宣告とみなしている。
バーコルデリア・セパシアは、アズトレオナムリシナートを含めて、通常さまざまな抗生物質の非経口投与に抵抗性であり、5%の分離株のみがそのような治療に感受性を示す (Antimicrob. Agents Chemother., 34: 3,487-8 (Mar. 1990) ) 。従って、バーコルデリア・セパシア感染症の有効な治療法を有すれば、有益となるであろう。
トブラマイシンに本質的に抵抗する他のグラム陰性菌もまた、嚢胞性線維症患者の看護を難しいものにしうる。これらの細菌には、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスがある。これらの感染症に対する抗生物質療法もまた、通常効果がないか、薬剤耐性の急速な出現を導く。それゆえ、これらの感染症の全ての治療に成功を収めるには、これらの分離株の検体を実験室へ送り、複雑な抗生物質の相乗効果を調べて各々の患者の適切な治療を決定することが要求される (Ped.Pulmon., S17 : 118-119 (1998)) 。それゆえ、これらの珍しいが困難な細菌感染症の治療法を供給することはまた有益となるであろう。
同様に、トブラマイシンを含む大多数の抗生物質に対して抵抗性を示す、すなわち、高い最小発育阻止濃度(MIC)を有するような緑膿菌株へ感染することは、肺機能が減少することを予測し、肺移植の適応外になる可能性もある (Clinics Chest Med. , 19: 535-54 (Sept 1998)) 。
バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび多剤耐性緑膿菌による肺感染症に対する既存の抗生物質療法は、効果がないか、または薬剤耐性の急速な出現を導く。
アズトレオナムはグラム陰性菌に対して良好な生物的活性を有する合成抗生物質であって、β型に由来するアズトレオナムのアルギニン塩は以前は細菌感染症の静脈内治療のために使われていた。しかしながら、グラム陰性菌によって生じる感染症を治療するためには1日につき1000〜4000mgという大量の静脈内投与を必要とするという低い有効性のために、また吸入の目的には適さない塩誘導体化のために、アズトレオナムの使用は高度に制限される。アズトレオナムは、トブラマイシンまたは他の抗生物質で治療された患者における、相互補間的治療のための選択肢となる抗生物質であるにもかかわらず、大量の服用量が要求されることと、アルギニン塩に直面する困難さのために、この種の治療は現実的ではない。
アズトレオナムは、現在、アルギニン塩としてのみ利用可能である。アルギニンは、肺に有毒であることが示されており、肺組織への刺激、炎症、気管支痙攣および咳を引き起こすので、エアロゾル投与による供給に適していない。従って、アズトレオナム・アルギニン塩は、合衆国および他の場所で、吸入用の用途が承認されていない。
しかしながら、アズトレオナムが吸入によって治療上有効な濃度で肺に直接送られ得る場合、そして、アズトレオナム・アルギニンに伴う問題が、異なったより安全で生理的に許容される塩誘導体を供給することによって、解決されうる場合、グラム陰性菌によって生じる肺細菌感染症の治療のための抗生物質として、アズトレオナムは治療の選択肢の薬剤になりうる。
吸入によるアズトレオナムの有効な投与は、吸入使用ができる、安全で、生理的に許容される、安定した製剤が不足しているために、更に難しくなる。生理的に許容される塩であることに加えて、この種の製剤は、吸入可能な粒子としての特定の大きさの範囲、特定のpH範囲および特定の塩分濃度など、いくつかの基準を満たさなければならない。エアロゾルが5μより大きい質量媒体平均直径(MMAD)を有する多数の粒子を含む場合、これらは上気道に沈着し、気道の気管支内の感染部位に到達する抗生物質の量は減少してしまう。同様に、強酸性および強アルカリ性、または低張性または高張性の条件では、気管支痙攣および咳などの呼吸上の合併症を引き起こし、薬剤の吸入を妨げる。
従って本発明の第一の目的は、特にバーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス及び多剤耐性緑膿菌によって引き起こされたものなど、肺のグラム陰性菌感染症の治療のために、肺へアズトレナムを有効に送るための適切な吸入可能なアズトレナム製剤を供給することであって、それは純粋な濃縮アズトレナムリシナート塩を吸入するための、安全で生理的に許容される有効な製剤を供給することによって行なわれ、このアズトレナム製剤は十分だが約75mg/mlの濃度を超えないアズトレナムリシナートを含み、そして、このアズトレナム製剤は、噴流(jet)、超音波または噴霧ネブライザーを用いた噴霧化によって、1〜5μ範囲以内の粒子サイズのエアロゾルへと効率的にエアロゾル化されるか、もしくは乾燥粉末として投与され、どちらの方法でも嚢胞性線維症の患者や、感染、炎症、他の基礎疾患のために肺機能が悪化した患者があまり痛みを感じない。大量にα−アズトレオナムからα−アズトレオナムリシナートを製造する製法を提供することは、本発明のもう一つの目的である
要約
本発明の一態様は、エアロゾル化アズトレオナムリシナートの吸入によって、グラム陰性菌によって生じる肺感染症を治療するための方法である。
本発明の別の態様は、グラム陰性菌によって生じる肺細菌感染症の治療のための方法であって、前記方法は約1〜250mgのアズトレオナムリシナートを含む乾燥粉末形態もしくはエアロゾルとして、吸入可能な濃縮した純粋なアズトレオナムリシナートを投与することからなり、前記アズトレオナムリシナートは、吸入可能な乾燥粉末の形態か、約0.1〜0.9%の塩化物もしくは他の陰イオンを含むpH4.5〜7.5の噴霧可能な溶液約1〜5ml中に溶けた形で、それらを必要とする患者の気道の肺気管支内へ投与されて、それは典型的には、一日当たり350mg以下で、決して1日当たり750mgは越えないようなアズトレオナムリシナートの1日量を1日1回ないし数回、約1〜5μの質量媒体平均直径を有するエアロゾルの噴霧療法によって行なわれる。
本発明の更に別の態様は、乾燥粉末の形態ないしエアロゾルの形で吸入することで気道の肺気管支内へと送られるような、吸入可能なアズトレオナムリシナート製剤を使用することによって、大腸菌、腸内細菌種、肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ(K. oxytoca)、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、セラチア・マルセスセンス、インフルエンザ菌、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、そして多剤耐性緑膿菌によって生じる肺細菌感染症を治療するための方法である。
本発明の他の態様は、約75mg/mlのアズトレオナムリシナートから構成される吸入可能な薬学的に許容される組成物であって、前記組成物はグラム陰性菌によって生じる肺細菌感染症の治療に適しており、前記アズトレオナムリシナートまたは、前記アズトレオナムリシナートの薬学的に許容される塩の吸入可能な乾燥粉末または噴霧可能な溶液として調製される。
本発明のさらに別の態様は、約25〜90mg/mlを含むエアロゾル化アズトレオナムリシナート製剤であって、好ましくは75mg/mlのアズトレオナムリシナートが、標準ないし希釈生理食塩水、または他の水溶液の約1〜5mlに溶解し、pHは4.2〜7.5である。
本発明のさらに別の態様は、標準の生理食塩水の1/10〜1/2に希釈された生理食塩水、もしくは塩酸塩や他の陰イオンを含む他の水溶液に溶けている、約1〜250mgのアズトレオナムリシナートから構成される製剤であって、前記製剤はpH5.5〜7.0であり、質量媒体平均直径が主に1〜5μであるエアロゾルが、約1〜5mlの溶液に溶けた形で送られ、そして、前記製剤は、噴流(jet)、噴霧、電子、または超音波ネブライザーを用いて噴霧される。
本発明のさらに別の態様は、約1〜200mgのα−アズトレオナムリシナートから構成される乾燥粉末製剤であって、前記製剤は1〜5μの質量媒体平均直径の粒子からなる細粉へと凍結乾燥、製粉、噴霧乾燥、または析出され、1日当たり750mg/日を上回らずに1日につき1回〜4回投与される乾燥粉末の吸入のために使用される。
本発明のさらに別の態様は、溶媒1mlにつき約75mgのアズトレオナムを含むような、バルク溶液または凍結乾燥された純粋なα−アズトレオナムリシナートを製造するための製造方法である。
本発明の他の態様は、α−アズトレオナムからβ−アズトレオナムに変換する必要なしに、α−アズトレオナム型α−アズトレオナムリシナートを調製するための製造工程であって、この結果生じるα−アズトレオナムリシナートはよりよい安定性、高い純度、よりよい収率を有する。
本発明の別の態様は、乾燥粉末または凍結乾燥粉末の形のα−アズトレオナムリシナートと希釈液が使用時まで別々になっているような、二部分再構成システムである。
定義
本願明細書において用いられた場合、以下を意味する。
"MMAD"とは、質量媒体平均直径を意味する。
"標準生理食塩水"とは、0.9%(w/v)NaClを含む水溶液を意味する。
"希釈生理食塩水"とは、0.9%(w/v)NaClを含む標準生理食塩水を約0.1%から約0.8%までのより低い濃度に希釈したものを意味する。
"1/2標準生理食塩水"または"1/2NS"とは、標準生理食塩水を0.45%(w/v)NaClを含む半分の濃度に希釈したものを意味する。
"1/4標準生理食塩水"または"1/4 NS"とは、標準生理食塩水を0.225%(w/v)NaClを含む1/4の濃度に希釈したものを意味する。
"1/10標準生理食塩水"または"1/10 NS"とは、標準生理食塩水を0.09%(w/v)NaClを含む1/10の濃度に希釈したものを意味する。
"CF"とは嚢胞性線維症を意味する。
“主に”とは、少なくとも70%、望ましくは90%の粒子サイズが1〜5μの間にあることを意味する。
"生理的に許容される溶液"とは、1/10NSから1NSの間に希釈された生理食塩水または、約31〜154mMの塩化物ないし、等濃度の臭素かヨウ素から構成される他の水溶液を意味する。
"組成物"とは、医薬品添加物、希釈剤、等張液、緩衝剤などの他の成分を付加的に含むような製剤を含む、α−またはβ−アズトレオナムリシナートを意味する。
"製剤"とは、例えば、溶液または乾燥粉末の噴霧化を含むα−またはβ−アズトレオナムリシナートのエアロゾル投与など、特別な使用のために調製された特別な組成物を意味する。
"アズトレオナムリシナート組成物"、"アズトレオナムリシナート製剤"、または"アズトレオナムリシナート"とは、指示された量のα−またはβ−アズトレオナムリシナート塩からなる組成物ないし製剤を意味する。従って、例えば、アズトレオナムリシナートがアズトレオナムを含まない塩基のモル量から構成される場合、それはリシンの1.8倍のモル量を含むことになる。具体的にα−またはβ−アズトレオナムリシナートと指定されない限りは、α−およびβ−アズトレオナムリシナートのいずれもが"アズトレオナムリシナート"という用語に含まれるよう意図されていると理解してよい。
"濃縮されたアズトレオナムリシナート"とは、1mlの希釈液中にアズトレオナムリシナートが75mg以上となるように希釈することを可能にするような形態へと濃縮されたα−またはβ−アズトレオナムリシナートを意味する。
"α型のアズトレオナム"または"α−アズトレオナム"とは、アズトレオナムのα位の立体化学的異性体を意味する。アズトレオナムのα型は、アズトレオナムのβ型、γ型およびδ型と識別可能である。各々の型は、異なる化学的物理学的特性(例えば安定性、結晶点、および回折曲線)を有するようである。これらの二つの型の相違は、例えば米国特許4,946,838に記載されている。αまたはβアズトレオナム・アルギニン塩については、欧州特許出願0 297 580 B1に記載されている。α、β、γおよびδアズトレオナムおよびそれらの化学的物理学的特性は、米国特許4,826,973に記載されている。
"α−アズトレオナムリシナート組成物"または"α−アズトレオナムリシナート製剤"とは、指示された量のα−アズトレオナムリシナート塩からなる組成物ないし製剤を意味する。このα−アズトレオナムリシナート組成物は、典型的には、注射用の水1ml中に、約50〜約300mgの無水α−アズトレオナムおよび約35mg〜約420mgのリシン一水和物を含有しうる。
"凍結乾燥物"とは、α−アズトレオナムリシナートバルク溶液を凍結乾燥する過程によって得られる、α−アズトレオナムリシナートの乾燥残留物を意味する。
発明の詳細な説明
本発明は、特に調製された吸入可能なアズトレオナムリシナート、特にα‐アズトレオナムリシナートはグラム陰性菌によって生じる肺感染症の治療のために有効であるという発見に関するものである。
従って、本発明は、アンピシリン耐性および他のペニシリダーゼ産生株をも含めた、大腸菌、腸内細菌種、肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、セラチア・マルセスセンス、インフルエンザ菌によって生じる肺細菌感染症のみならず、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび多剤耐性緑膿菌などのより珍しい細菌によって生じる肺細菌感染症に対する吸入可能な組成物および治療法に関するものである。アズトレオナムリシナートは、乾燥粉末またはエアロゾル溶液の吸入によって、患者の気道の気管支内のスペースに送られる。
肺細菌感染症の治療の本方法は、特に嚢胞性線維症や気管支拡張症の患者、および人工呼吸器管理下の肺炎患者の治療に適しているが、しかしながら、それはまた、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび多剤耐性緑膿菌または他のグラム陰性菌によって生じる感染症により複雑化した他の状態の治療にも有効である。
本発明は、このように、グラム陰性菌(特に他の抗生物質に耐性を示すグラム陰性菌)によって生じる肺細菌感染症の治療に適した、新しく、有効で、安全で、非刺激性で、生理的に適合する吸入可能なアズトレオナムリシナート組成物に関するものである。アズトレオナムリシナートの吸入可能な製剤は、急性および慢性肺感染症の治療および予防に適している。吸入可能な製剤は、エアロゾルとして、または吸入可能な乾燥粉末として送られる。エアロゾル投与のために、アズトレオナムリシナートが塩化物イオン、臭素イオン、またはヨウ素イオンを含む、4.2〜7.5のpHを有する水溶液の約1〜約5mlという最小限の容積中に溶けており、アズトレオナムリシナート溶液を必要とされる大きさの粒子にエアロゾル化することが可能なネブライザーを使用することによって、主に1〜5μの間の質量媒体平均直径を有するエアロゾルの形で、肺気管支内に送られる。
別の態様においては、本発明は、α‐アズトレオナムに由来するアズトレオナムリシナートは、β-アズトレオナムに由来するアズトレオナムリシナートと比較して、より良好な特性を有し、吸入可能な製品のためのアズトレオナムリシナート塩の調製により適しているという発見に関するものである。アズトレオナムリシナートを調製するためにα‐アズトレオナムを用いると、製造過程および、より高純度でより良好な安定性を有する製品という結果の両方において、明示可能な効果を生じる。
今までは、α-アズトレオナムは、安定なβ‐アズトレオナムを調製するためにのみ適した不安定な中間型であって、治療上役立つアズトレオナム・アルギニンを調製するためにはα-アズトレオナムをβ‐アズトレオナムへと転換することが要求されたという観点で、純粋で安定なα-アズトレオナムリシナートを調製するための製法は斬新である。
現在までに、本発明の製法に従って調製された、α‐アズトレオナムに由来するアズトレオナムリシナートは、β-アズトレオナムに由来するアズトレオナムリシナートと比較して、より純度の高い製品をもたらすことが発見された。α‐アズトレオナムリシナートを調製するためにα-アズトレオナムを用いることは、凍結乾燥製品または乾燥粉末製品の製造過程において、明白な効果を提供し、より高純度でより安定性の高い製品を生むという成果をもたらす。
I .吸入投与ためのアズトレオナムリシナート
アズトレオナムは、(Z)-2- [ [ [ (2-アミノ-4-チアゾリル) [ [ (2S, 3S) -2-メチル-4-オキソ-1-スルホ-3-アゼチジニル] カルバモイル] メチレン] アミノ] オキシ]- 2-メチルプロピオン酸という化学名で知られる化合物である。
アズトレオナムは、大部分のグラム陰性菌に対して抗菌活性を有する周知の合成抗生物質である。アズトレオナムはモノバクタム系であり、そのためユニークな一環のβラクタム核を有しており、従って、他のβラクタム系抗生物質(例えばペニシリン、セファロスポリン、セファマイシン)とは構造的に異なる。環の第1位のスルホン酸置換基は、βラクタム部分を活性化する。第3位のアミノチアゾリル・オキシム側鎖および第4位のメチル基は、特定の抗菌スペクトラムとβラクタマーゼの安定性をもたらす。
アズトレオナムは化学的に公知であり、α、β、γ、およびδ型として利用可能である。AZACTAM(登録商標)という商標名で知られるアズトレオナム・アルギニン塩は、β型に由来する。AZACTAM(登録商標)(注射用アズトレオナム・アルギニン、USP)は、DURA Pharmaceuticals, Inc. , San Diego, Californiaから商業上入手可能であり、アズトレオナム・アルギニン塩を活性成分として含有しており、現在、筋肉内注射および静脈内注射の用途のみでFDAに承認されている(PDR, pg. 1159 (2001))。
A.アズトレオナム・アルギニン塩の不都合な点
現在では、唯一の市販されているアズトレオナム(AZACTAM)は、エアロゾルの形でヒトの患者の肺へ投与されると、肺の炎症を引き起こすことが明らかとなったアルギニンを含んでいる。嚢胞性線維症患者において、潜在的なエアロゾル化粘液溶解薬として使用された時、それは肺の炎症、気管支痙攣および刺激作用を引き起こした。Pediatrics, 55: 96- 100 (1975)に記載されている研究は、アルギニンは酸化窒素ラジカルを生成する基質であると同定し、アルギニンを患者の吸入に使用しないよう勧めている。
酸化窒素ラジカルはスーパーオキシドアニオンと反応してペロニトリルとなるが、それ自体が組織にとって有毒であり、さらに反応して、高度に反応性が高くて有毒なヒドロキシル・ラジカルとなる。本発明が治療することを試みる嚢胞性線維症および他の疾患に対し、炎症は重大な障害となることを考慮すると、アルギニン塩の使用は、この目的にそぐわず、むしろ患者の状態を改善するよりむしろ悪化させてしまうため適切ではない。
PNAS(14:6338-6342の(1991))にて発表されているように、アルギニンは肺の免疫複合体による損傷において重要な基質となる。静脈内投与の後に見られる希釈効果と比較して、エアロゾル投与は肺でのエアロゾル化薬剤の濃度を濃縮してしまうため、アズトレオナム・アルギニン塩のエアロゾル投与は、嚢胞性線維症患者や肺感染症で苦しんでいる患者にとって、有益であるというよりはむしろ有害である。さらに、それは、アズトレオナムの作用を弱めておよび/または無効にする。
アズトレオナム・アルギニンはアルギニン塩として調製されるため、吸入投与およびエアロゾル投与は合衆国で適切でない、もしくは認められていない。従って、気道の気管支内のスペースへのエアロゾル投与に利用可能な製剤を含む、周知のアズトレオナムまたはアズトレオナムリシナートは存在しない。
アズトレオナム・アルギニンを断続的に嚢胞性線維症の患者に送達する唯一の試みは、Spanish Annals on Pediatrics, 40: No. 3 (1994)に記載されており、これは、CR60 System 22 unitのネブライザーを用いて、1日に2回、21日間にわたって、500〜1000mgのAZACTAM USP アルギニン塩を断続的に投与された嚢胞性線維症患者において、非盲検試験(open label trial)で行われた。この研究の目的は、多剤耐性緑膿菌でなく、アズトレオナム感受性の緑膿菌を治療することであった。バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび他のグラム陰性菌によって生じる感染症を治療するという努力はなされなかった。
これらの見解に基づけば、アズトレオナムの安全な吸入可能な形態を提供するためには、吸入投与による肺感染症の治療のために、明らかに他のアズトレオナム塩が必要とされる。
アズトレオナムリシナート、特にα‐アズトレオナムに由来するアズトレオナムリシナートは、いかなる望ましくない反応をも引き起こすことなく吸入する目的において、薬学的に最も許容されることがわかった。
より好ましい薬学的に許容されるアズトレオナムリシナート塩は、α‐またはβ‐アズトレオナムとリシンとの反応に由来する。
B. α‐およびβ‐アズトレオナムリシナート
以前は、リシナートではない、アズトレオナム・アルギニンおよび他の塩類を調製するには、ほぼアズトレオナムのβ型のみが関連していた。アズトレオナムのα型は、以前は、治療組成物の調製のためには不安定で使用不可能であるとみなされていた。一方で、β‐アズトレオナムは安定な型であると考えられており、仮にもα‐アズトレオナムが使用される場合、初めにβ‐アズトレオナムに変換された。
米国特許4,946,838は、α‐アズトレオナムはアズトレオナムの不安定な形であり、いかなる治療用製品を調製するのに用いる前に、β‐アズトレオナムに変換されねばならないという、最新の決定的な証拠を示している。
a. α‐およびβ‐アズトレオナムの安定性
アズトレオナムの安定性は、無水の非晶形および結晶形、または、水和および溶媒和した結晶形のいずれかの形で存在することができる。無水形および水和形は、一定の温度や湿度の条件の下で相互変換し、両方とも不安定である。固体の状態では、無水結晶および溶媒和した形は、相互転換をせず良好な安定性を示す。しかしながら、水分を放出する医薬品添加物が存在する場合には、無水の結晶形は、水分含量と温度に依存して、ある程度までは急速に分解する。
α‐およびβ‐アズトレオナム化合物の安定性は、さまざまな温度におけるその喪失量によって決定される。従来の技術は、α‐アズトレオナムがアズトレオナムの不安定な型であるという一般的な考えを支持している。従来の技術報告によると、1週間貯蔵すると、α‐アズトレオナムは室温では約1%減少する一方、80℃での減少量は80%に達する。対照的に、β-アズトレオナムは、12ヶ月貯蔵すると、−20℃〜40℃の温度では、不純度の増加は2%以下であり、効力は3.0〜3.5%だけ減少する。これらの結果に基づいて、β-アズトレオナムは、より良好でより安定した化合物であるように思われるだろう。
しかしながら、本発明の製法に従って調製されるα‐アズトレオナムリシナートは、より少ない不純物を含み、より良好な安定性を有しており、従って、より純粋で安定な化合物であることがわかった。
2. α‐およびβ‐アズトレオナムの純度
吸入可能な製品の調製のために、有効成分は比較的純粋でなくてはならず、あるいは、気管支痙攣、炎症、刺激または咳を実際に引き起こすか、または潜在的に引き起こすであろう不純物を除去するために精製されなければならない。従って、吸入のためのアズトレオナムは、純粋な形態で調製されるか、または精製されなければならない。
吸入製剤中の不純物の種類および程度は、薬剤の長期の安定性や最終産物の品質保持期限にとって重要であり、明確な影響を及ぼす。
従来の技術によれば、α‐アズトレオナムの結晶形は、安定なβ‐アズトレオナムに変換されねばならない不安定な中間型であるとみなされている。この種の変換は、α‐アズトレオナムを、通常はエタノールである有機溶媒から非常に安定なβ‐アズトレオナムへと再結晶化することによって成し遂げられる。しかしながら、再結晶化工程の結果として、再結晶化されたβ‐アズトレオナムは、典型的には1〜2%の残存有機溶媒および他の不純物を含有する。これらの不純物が存在すると、吸入投与による送達において、β-アズトレオナムはより不安定になる。
α‐アズトレオナムからβ‐アズトレオナムを調製する再結晶化の製法は、溶剤としてエタノールを利用する。しかしながら、この製法を使用すると、調製されたβ‐アズトレオナム中に、5,000〜10,000ppmの残存エタノールが残ることになる。FDAは、エタノールの許容含量を5000ppm未満に制限している。そのうえ、β‐アズトレオナム中に残存エタノールが存在すると、時間が経つとともに、エチルエステルが産生されてしまうが、それは望ましくなく、α‐アズトレオナムには存在しない不純物である。
本発明を展開する過程で、バルク溶液、またはエアロゾル投与ないし噴霧療法のためのアズトレオナムリシナートの凍結乾燥形態を調製するために、以前は不安定であると考えられていたα‐アズトレオナムは、実はアズトレオナムリシナートの製造のための出発原料としてより好ましい形態であることが予想外に分かった。β‐アズトレオナムと比較すると、α‐アズトレオナムリシナートは不純物の含量が少ないと分かった。加えて、その作製のための方法は、より容易で、より速く、残留不純物を残してしまうような有機溶媒の使用を必要としない。
本発明の製法に従って調製されるα‐アズトレオナムリシナートは、不純物および異物の相当量を含まない、実質的に純粋な化合物である。
3. α‐およびβ‐アズトレオナムの溶解度
製薬上吸入可能な製品の調製のためには、今回のケースではアズトレオナムである活性成分の水または水性溶媒への溶解度が重要である。
β-アズトレオナムは比較的水に不溶性であり、リシン塩を調製する過程の溶解段階において、水や他の水性溶媒と混ざると、沈殿して特殊な物質となり、凝集してしまう。この種の沈殿および凝集は不純物の増加につながっており、少なくとも部分的には、開環(open-chain)求核性環を開放することによって生じている。水分が存在する場合、および、さまざまな温度と湿度の条件の下では、開環(open-chain)求核性環の開放が予測できないほど進み、化合物の不安定性がより高くなるという結果を生じる。実験データは、β‐アズトレオナムとリシン塩との反応によって生じる初期の不純物の濃度は1%以内であり、FDAの許可する不純物濃度に近いことを示している。
一方で、α‐アズトレオナムとリシン塩との直接の反応によって生成したα‐アズトレオナムリシナートの不純物濃度は0.1%未満である。
本発明の製法に従って調製されるα-アズトレオナムリシナートは、生理食塩水または水などの水性溶剤に容易に溶解可能な純粋な化合物である。
4. α‐およびβ‐アズトレオナムの特性の比較
バルク溶液および吸入投与のためのα‐およびβ‐アズトレオナムリシナートの凍結乾燥製剤ないし乾燥粉末を製造する過程において用いられる、α‐およびβ‐アズトレオナムの特性および安定性が決定され、以下の観察がなされた。
吸入投与のためのアズトレオナムリシナートを調製するためには、出発化合物であるα‐またはβ‐アズトレオナムが水に溶けやすく、処理可能な範囲の生理的pHを有することが重要である。
a. β‐アズトレオナム
上記の要件に関して研究すると、フリーズドライおよび凍結乾燥(lyophilization)のためのバルク溶液の製造の間、β‐アズトレオナムは、内因性のpH値では直ちに重合および退色し始めてしまい、水中に懸濁できないことがわかった。温度と関係なく、50〜150mg/mlの範囲の濃度で水に溶けたβ‐アズトレオナムは、15分以内にゲル化する。これは、リシン溶液をβ-アズトレオナムに加えるという反応を使用する可能性を取り除いてしまう。従って、β‐アズトレオナムリシナートを調製するための他の唯一の可能性は、β-アズトレオナムをリシン溶液に加えることのみである。
β-アズトレオナムをリシン溶液に加える過程では、β-アズトレオナム溶液をリシン溶液に加える前に、β-アズトレオナムが急速に溶解できるよう、非常に薄い装置(high sheer equipment) で処理する必要がある。いずれにせよ、高いpH(約10)のリシン溶液を用いることによって、短期間の内に、β-アズトレオナム中に、本願明細書において不純物B(impurity B)と呼ばれる一定の不純物を含む製剤が、有意に増えてしまう。
上記の方法によって、比較的高いが許容範囲内の不純物濃度のβ‐アズトレオナムリシナート塩を製造できるという結果になったにもかかわらず、調製する製法は、β-アズトレオナムをリシン溶液に急速に加える必要があるため、可能ではあるものの、商業規模でβ‐アズトレオナムリシナートを生産するにはさほど実用的ではないとわかった。両方の溶液、すなわちβ-アズトレオナムおよびリシン溶液は、独立して、特別な装置を用いて配慮して扱われる必要がある。β-アズトレオナム溶液は、リシン溶液に速やかに添加するための特別な投薬装置だけでなく、β-アズトレオナムを混合し、溶液中に維持するために高剪断ミキサーを必要とする。
b. α‐アズトレオナム
一方で、α‐アズトレオナムは容易に水に懸濁して均一なスラリーを形成することが可能であり、酸性のpHを有するため安定性も高まる。従って、リシン溶液をα‐アズトレオナムのスラリーに加えることによって、塩を容易に形成することができる。このステップは、塩を生成する間にpHをモニタリングすることを可能にし、そして、製剤はpH 6未満(形成されたα‐アズトレオナムリシナートの十分な安定性を提供するpH範囲)に容易に保たれうる。非常に薄いミキサー(high sheer equipment) 、投薬装置またはいかなる他機器も必要としない。
c. α‐およびβ‐アズトレオナムの相違
α‐およびβ‐アズトレオナムとの重要な相違は、水への溶解度である。α‐アズトレオナムは、わずかに酸性のpHにおいて水溶性であるが、β‐アズトレオナムは、内因性のpH値では水に不溶性で溶解できない。
β‐アズトレオナムは、高剪断混合装置の介入なしに水と混合すると、重合し、凝集し、凝固する。α‐アズトレオナムは水に容易に溶解でき、スラリーを形成する。
加えて、β-アズトレオナムはリシン溶液に加えられなければならないのに対して、リシン溶液はα‐アズトレオナムスラリーに加えることが可能である。
β‐アズトレオナムを水に溶解し、リシン溶液に加えるためには、混合装置および投与装置と、急速に混合することが必要とされる。α-アズトレオナムは6未満のpHで容易に水に溶け、実質的に全くpHを変えずにリシン溶液をα‐アズトレオナムに加えることが好都合なことに可能であるため、α‐アズトレオナムを水に溶解するためには装置を必要としない。
d.製造オプションの評価
吸入投与のためのアズトレオナムリシナートを調製するための製造オプションを評価するために、バルク溶液、乾燥粉末および凍結乾燥物を製造するための出発原料として、α-アズトレオナムおよびβ-アズトレオナムが使われた。バルク溶液を製造するために使用する手順は、2つの明らかな可能性を示す。
1)α‐またはβ-アズトレオナムをリシン溶液に加えること;そして、
2)リシン溶液をβ‐アズトレオナム溶液またはα‐アズトレオナムスラリーに加えること。
後述する分析結果は、リシン溶液をα‐アズトレオナムの結晶形に加えると、大規模な製造のために最も応用自在な処理オプションを提供することを示唆する。
C. アズトレオナムリシナートの調製のための製造工程の開発
吸入投与のためのアズトレオナムリシナートを大規模に製造するための、運用可能で実用的な方法を開発するというもともとの目的に従って、α‐およびβ‐アズトレオナムが共に調査された。
1. 材料
使用する全ての材料は市販である。α‐アズトレオナムはEutical SpAから入手した。β‐アズトレオナムは、Teva社(イスラエル)から入手した。リシン一水和物は、MerckKGaAから購入した。水は逆浸透圧法によって浄化された。
2. 方法
バルク溶液を調製し、最終的には凍結乾燥されたアズトレオナムリシナートを調製するための製法工程を開発し最適化するために、2つの製造工程を用いた。
2つの製法とは、適切な量のα‐またはβ‐アズトレオナムがリシン溶液に加えられる製造工程Iと、リシン溶液をα‐またはβ‐アズトレオナムに加える製造工程IIである。
有効な吸入可能なアズトレオナム製品のために、バルク溶液は約75mg/mlのアズトレオナムリシナートを含む必要があることは、前もって決定されていた。従って、アズトレオナム、リシンおよび水の必要量は、バルク溶液中で75.0mg/mlという最適なアズトレオナム濃度、およびアズトレオナムとリシンが1.4対1という比を達成するように計算された。バルク溶液は約pH4.8のpHを有する必要がある。試験するために用意されたバルク溶液のバッチサイズは200mlであった。
通常は、バルク溶液の製造および塩を形成する工程は、工程の全体にわたって温度を制御するために、二重被覆ガラスフラスコ内で実行された。バルク溶液は、以下の手順に従って製造された。
3. 製造工程
a) 製造工程I
製造工程Iは4つのステップからなる。
ステップ1)リシン一水和物の必要量を量り、マグネチックスターラを用いて逆浸透圧法で得た純水の適量中に溶解し、次に、室温(20±2℃)で、0.22μmの濾過膜を通して濾過した。
ステップ2)リシン一水和物が完全に溶解した後、リシン溶液を二重被覆ガラスフラスコに接続された冷却クーラーを用いて、2〜8℃とした。温度は、溶液中の温度プローブで制御した。
ステップ3)75mg/mlの濃度とするための、α‐またはβ‐アズトレオナムの必要量を、リシン溶液中へ、絶えず攪拌および混合しながら加えた。混合には、マグネチックスターラとUltra Turrax(11,000回転数/分、30秒)を共同して用いた。予備実験は、β‐アズトレオナムの場合、マグネチックスターラ単独の使用が不満足な結果につながることを示した。これは、マグネチックスターラの混合強度が低いため、β‐アズトレオナムの粒子がフラスコの壁に付着したり、凝集体を形成したりすることを阻止できないという事実による。
ステップ4)α‐またはβ‐アズトレオナムを加えた後、完全に溶解するまで混合を続けた(粒子状物質のない帯黄色の溶液となる)。塩に転換する間、製剤の温度およびpHを常にモニターした。
b) 製造工程 II
製造工程IIは3つのステップからなる。
ステップ1)マグネチックスターラを使用し、2〜8℃の純水の計算量のうち50%を用いて、α‐またはβ‐アズトレオナムのスラリーを形成した。
ステップ2)リシン一水和物の必要量を、アズトレオナムスラリーと同じ温度の残りの水に溶かし、常に攪拌しながらゆっくりとスラリーへ加えた。添加する速度は、塩に転換する間、pHを6未満に保つような速度とした。
ステップ3)アズトレオナムが完全に溶解するまで、攪拌を続けた。粒子状物質のない黄色溶液になったら、アズトレオナムが完全に溶解したものとした。
c) pHおよび温度の測定
水中に溶解したα‐およびβ‐アズトレオナムのpH値は異なるため、両工程を評価する間、pHおよび温度を追跡した。
試験溶液の温度およびpH値は、ガラス電極のついた電子pHメータによって評価した。各組の測定の前に、pHメータは、4.0および10.0のpH値を有する適切な標準液を用いて較正した。測定は、各実験において選択された温度で行った。塩生成の間、バルクのpHおよび温度は、5秒ごとに自動的に記録した。
75mg/mlのα‐アズトレオナムリシナート溶液のpHの温度依存性を決定するために、α‐またはβ‐アズトレオナムリシナートのバルク溶液は、2℃〜20℃の範囲の様々な温度で製造された。
d) 凍結乾燥
製造過程IまたはIIに従って調製されるα‐およびβ‐アズトレオナムのバルク溶液は凍結乾燥され、そして、各々のバルク溶液および凍結乾燥物中の不純物の程度が決定された。この目的のために、バルク溶液の1mlの一定量を、ガラス製凍結乾燥バイアルに懸濁し(バイアルにつき1.0mlのバルク溶液)、以下の条件に従って凍結乾燥した。
凍結乾燥器の棚(shelves)は、バイアル中のバルク溶液を急速凍結することを可能にする動作が開始する前に、予め0℃に冷却した。バルク溶液を含む凍結乾燥バイアルは、凍結乾燥器の予め冷却された棚に置かれた。それから、凍結乾燥器内部を、バイアル中のバルク溶液サンプルが凍ってしまう温度であるマイナス38℃に冷却し、凍結乾燥機の温度をマイナス38度に保ち、3時間以内に一定の速度になるようバキュームを0.08mbarに調製した。それから、凍結乾燥器の温度を15分以内にマイナス25度へと上げ、約11時間維持した。それから、バキュームを0.047mbaとした。温度を3時間以内に5℃に上げて、12時間維持した。12時間5度とした後に、バキュームを取り除き、バイアルを閉じて圧縮した。このプロセスのパラメーターは図1に表されており、凍結乾燥における時間経過、棚の温度、およびバキュームの圧力を示している。
e.不純物の分析
製造されたバルク溶液および凍結乾燥物の不純物プロファイルは、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)で測定された。
HPLCは移動相Aおよび移動相Bを用いて実行された。移動相Aはアンモニア・ギ酸エステル・バッファー(pH 3.0)およびメタノールから構成された(94対6)。移動相Bは、55対45の比率のアンモニア・ギ酸エステル・バッファー(pH 3.0)とメタノールから構成された。不純物の検出のための基準として使用する基準物質は、アズトレオナム、開放環のアズトレオナム、アズトレオナムのE異性体、(Z)-2-(aminothiazole-4-yl)-2-(t-butoxycarbonyl) isopropacyimino acetic acid (ATBA)、2-mercapto-benzothiazole (MBTA)、およびt-butyl-aztreonam (t-butyl ATR)であった。標準液は、不純物の原液として調製されて、アズトレオナムリシナートのサンプルと並列に実行された。
HPLCの条件は、150×3mmのカラム(4um)、カラム温度30℃、サンプル温度10℃、流速0.6ml/分、注入量40ul、検出波長270ナノメートル、実行時間40分であった。
さまざまな濃度のアズトレオナムまたはアズトレオナムリシナートを含む、アズトレオナムバルク溶液または凍結乾燥されたサンプルの両方について、不純物の存在を調査した。
α‐およびβ‐アズトレオナムの不純物および分解産物は、RP‐HPLCによって分離され、270ナノメートルのUV検出によって検出された。定量化が実行されて、0.1%以上の積分されたピークの全てを面積%として表現した。
α‐およびβ‐アズトレオナムリシナート両方の不純物プロファイルは、グラフの形で図2〜5に示されている。
4.2つの製造工程の評価
2つのアズトレオナムの型につき、リシナート塩への変換、および選択された工程の純度と安定性に対する影響について、2つの製造工程によって評価した。
a.塩への変換
α‐またはβ‐アズトレオナムのリシン塩への変換は、上述のように、使用する製造工程だけでなくアズトレオナムの出発形態に依存する。
α‐アズトレオナムはどちらの製造工程とも適合することがわかった。これは、α‐アズトレオナムは凝固することなく水中に懸濁されうるという事実に起因しているが、凝固はβ‐アズトレオナムで観察される問題点である。β‐アズトレオナムは水に加えられた時にほとんど直ちに凝固するので、リシン溶液を加えた時の塩への変換はより長くかかり、β‐アズトレオナムは比較的高い程度で分解してしまうのが観察された。表1に、塩への変換のステップに関する調査結果を要約する。
Figure 2007527398

ATRとは、アズトレオナムの略語として使われている。
結果は、α‐アズトレオナムを使用するとき、より単純な製造工程IIを、影響を受けることなく、リシン塩を製造するために利用できることを示している。出発のアズトレオナムがβ‐アズトレオナムであるときは、塩への変換のために製造過程IIを用いる必要がある。製造工程IIをβ‐アズトレオナムリシナートの調製のために使用すると、不純で不安定なアズトレオナムリシナートが生じてしまう。一方で、製造過程IIはより複雑で高価な装置を必要とし、そして、不純物が存在するために、特にアズトレオナムリシナートを大量生産規模で調製するときに、より詳細な検証作業をすることも必要となる。
b.バルク溶液中のアズトレオナム含有量
75.0mg/mlのアズトレオナム濃度で開始した場合の、工程IおよびIIによって調製されたバルク溶液中の、製造開始直後のアズトレオナム含有量は、表2に要約されている。
Figure 2007527398

アズトレオナム含有量は、1つの溶液につき2回の注入の平均値である。
表2に示されているように、製造工程Iを用いると、どちらのアズトレオナム形態でも、少ししか喪失しないことが観察された。製造工程IIを用いると、α‐アズトレオナムは、製造工程Iによって調製されたバルク溶液中の量と同じ量が存在している。しかしなから、表2に示す結果は、製造工程IIに従うと、β‐アズトレオナムは有意に減衰することを示唆する。これは少なくとも部分的に、製造工程IIの間に観察される、β‐アズトレオナムの凝固に起因するが、製造工程IIでは、水に溶解するとすぐに、β‐アズトレオナムの総表面積が減少し、同じ条件の下でのα‐アズトレオナムと比較して、塩への変換および溶解が遅い。pHに依存するβ‐アズトレオナムの分解反応が生じる。この現象は、すでに指摘したように、pH 6.0未満のpHで水に容易に溶解するα‐アズトレオナムにおいては観察されない。上述の通り、水に溶解したα‐アズトレオナムは、大きな表面積を有する、均質なスラリーを形成する。
c.凍結乾燥
凍結乾燥されたα‐アズトレオナムおよびβ‐アズトレオナムの調製のために使用される、凍結乾燥の条件は、アズトレオナムの両方の型に適していた。
凍結乾燥の操作の間、2つのアズトレオナムの型において有意差は見られなかった。全ての凍結乾燥された残留物は湿っていない状態では均質に見え、縮退し焼結している領域が凍結乾燥バイアルの底に観察された。さらにまた、バイアルの壁にアズトレオナム粒子は見られず、凍結乾燥法の間、十分な温度、圧力およびランピング率がもたらされたことを示していた。凍結乾燥されたアズトレオナムの両方の溶解速度は、凍結乾燥された残留物が共に、溶剤(0.17%の食塩水/1.0ml)を追加した後1秒未満で再構成されるという、非常に良好なものだった。
選択された凍結乾燥サイクルは、0.3〜0.5%との間という概して低い水分含量を有する凍結乾燥物をもたらす。最終的な凍結乾燥されたアズトレオナムリシナートの水分含量は、安定性における問題なく、約2.0%まで増やすことが可能であったので、サイクルの継続時間を約30時間までさらに短くすることができた。
表3は、2つの凍結乾燥物の水分含量の要約である。
Figure 2007527398

凍結乾燥物中の水分含量は、バッチあたり3つのバイアルの平均値である。
両方のアズトレオナムリシナート凍結乾燥物の水分含量は、アズトレオナムリシナート安定性に影響を及ぼしうる、許容可能なレベルの水(2.0%)より十分に少なかった。
工程IおよびIIによって調製されるアズトレオナムリシナートの両方の型を凍結乾燥した後の、凍結乾燥バイアル中のアズトレオナム含量は、表4に要約されている。
Figure 2007527398

アズトレオナム含量は、3つのバイアルの平均値である。
表2に示したバルク溶液の結果から予想される通り、製造工程IIに従って作ったβ‐アズトレオナムから生じた凍結乾燥物は、75.0mgよりずっと少ない量のアズトレオナムを含む。製造工程IIの間に、β‐アズトレオナムでは、約12%という有意な喪失があった。凍結乾燥プロセスから得られた結果は、凍結乾燥の操作の間に、いずれのアズトレオナムにおいても、有意な喪失がおこらないことを示唆する。表2に示す量と比較して、表4において観察されるアズトレオナムの量の減少が少ないのは、調剤の作業、および分析前の濾塊の再構成に起因する。従って、凍結乾燥サイクルおよびそのランピング率は、バルク溶液/バイアルの連結にとって妥当なものとみなされうる。
d. α‐およびβ‐アズトレオナムの全不純物の分析
2つのアズトレオナムの型の全不純物の分析は、図2〜5および表5に示される。
図2は、アズトレオナムの活性製薬成分(API)と比較した、製造工程Iによって製造されたα‐アズトレオナムリシナートのバルク溶液および凍結乾燥物の不純物分析を示す。図2の最後のカラムに示すように、α‐アズトレオナムリシナートにおいて観察される全不純物は、APIでは0.280%、バルク溶液では0.332%、そして凍結乾燥物中の全不純物は面積として0.436%に達した。
図3は、APIと比較した、製造工程Iによって製造されたβ‐アズトレオナムリシナートのバルク溶液および凍結乾燥物の不純物分析を示す。図3の最後のカラムに示すように、全不純物は、APIでは0.370%、β‐アズトレオナムのバルク溶液では0.295%、そして凍結乾燥物中の不純物は面積として0.457%であった。
α‐およびβ‐アズトレオナムの観察された不純物の濃度は、どちらのアズトレオナム型でもほぼ等しかった。
図4は、製造工程IIによって製造されたα‐アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物の不純物分析を示す。図4に示すように、API中に存在する全不純物は0.280%、バルク溶液中では面積として0.328%、そして凍結乾燥物中の全不純物は面積として0.471%であった。
図5は、製造工程IIによって製造されたAPIと比較した、β‐アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物の不純物分析を示す。図5に示すように、APIにおいて検出された不純物は0.370%であり、それは図2,3および4において検出された濃度に大体対応している。β‐アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物において検出された不純物の濃度は極めて高かった。製造工程IIによって産生されたβ‐アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物は共に、バルク溶液中には面積として15, 812%、凍結乾燥物中には面積として15,867%を含んでいた。
α‐アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物において観察された全不純物量と比較して、β‐アズトレオナム中の不純物の濃度は、凍結乾燥物ではほぼ34倍も高く、バルク溶液では48倍も高かった。
表5は、α‐およびβ‐アズトレオナムリシナートのバルク溶液および凍結乾燥物中に存在する不純物の濃度について得られたデータの要約である。
Figure 2007527398

不純物は、面積の百分率として表されている。
活性製薬成分(API)としてα‐アズトレオナムを使用すると、製造工程IIとIIの間に有意差は認められない。バルク溶液は約0.33面積%の不純物濃度を有しており、APIに対して約0.04〜0.05%増加していることを表す。凍結乾燥物は約0.45面積%の全不純物を有しており、APIに対して約0.08〜0.12%増加していることを表す。上述の製造工程IおよびIIを使用してα‐アズトレオナムリシナートを製造した後では、大部分の各不純物は0.1%の濃度以下であり、従ってどちらの製法とも、α‐アズトレオナムリシナートを製造するために好都合にも使用できる可能性があることを強調することが重要である。0.1%というFDAの報告している制限を用いるとき、α‐アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物は、たった0.1%の不純物濃度を有することになるであろう。これは、AZACTAM(登録商標、商業的に入手可能なアズトレオナム・アルギニン)で見られる不純物濃度(全不純物を1.6%含有する)よりも有意に低い。
β‐アズトレオナムリシナートは、製造工程Iに従うことで、α‐アズトレオナムリシナートからうまく製造することができ、バルク溶液中の全不純物は約0.3%であり、凍結乾燥物中では約0.45%である。これは、APIに対して約0.1%増加していることを表す。しかしながら、β‐アズトレオナムを調製するために製造工程IIを用いた場合は、バルク溶液中の不純物濃度は約15.8%である。凍結乾燥の後、不純物濃度は不変のままである。不純物プロファイルの分析は、β-アズトレオナム中の不純物濃度が高くなるのは、共にβ‐アズトレオナムリシナートの塩への変換過程で生じる、不純物Bおよび第二の未知の不純物が産生するためであることを示している。β‐アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物で典型的に見られる他の全ての不純物は、やはり0.1%未満にとどまっていた。
これらの結果は、製造工程IIはβ‐アズトレオナムリシナートを調製するための最適な製法ではないことを示唆する。製造工程IIを用いると不純物が高度に増加するだけでなく、バルク溶液を生産するための専用の製造手順および高価な装置を必要とする。しかしながら、β‐アズトレオナムリシナートが望まれるときは、許容可能な程度の不純物を含む製品を調製するのに、製造過程Iが非常に適している。
これらの結果からわかるように、α‐アズトレオナムリシナートを製造するには、α‐アズトレオナムはβ‐アズトレオナムに対して大いに優勢である。α‐アズトレオナムは容易に水に懸濁し、特別な装置を必要とすることなく均一な懸濁液を形成することが可能であり、リシン溶液をα‐アズトレオナムに加えることを可能にする。
従って、α‐アズトレオナムリシナートを約75mg/ml含むバルク溶液および凍結乾燥物は、直接的で、実用的で、敏速で、簡単で、安価な方法で製造されうる。
D. α-アズトレオナムリシナートの優位性
アルギニンを含むアズトレオナムは吸入に適していないので、他の酸付加塩を調製して試験した。アズトレオナムリシナート、特にα‐アズトレオナム型に由来するアズトレオナムリシナートが、約75mg/mlの量の乾燥粉末またはエアロゾル化凍結乾燥物として、噴霧療法によって投与されるときに、吸入の目的のために薬理学的に最も安全で、許容可能で、有効であるとわかった。
α‐およびβ‐アズトレオナムを取り扱う従来の方法は、α‐アズトレオナムをβ‐アズトレオナムに転換することを必要とした。アズトレオナムリシナートを最終的な製品として産生するためには、そのような変換のステップは、もしもバルク又は凍結乾燥されたアズトレオナムリシナートを産生するために用いるのならば、比較的水に不溶性で約2.3のpHを持つβ‐アズトレオナムを、約10のpHを持つリシン塩と反応させることを必然的に必要とした。リシン塩の成分をβ‐アズトレオナムに加えると、生理的に許容されるpHとなるまでアズトレオナム酸を滴定する間、過剰なイオン交換が発生する。加えて、この反応は、アズトレオナムのβ‐ラクタム環の下開環形成を伴う、望ましくない副反応がおこるという結果につながり、さらにはβ‐アズトレオナムリシナートがより高い不純度、不安定性および望ましくないほど高い浸透圧を有することにつながる。
高い浸透圧は、吸入可能なアズトレオナムにとって望ましくない。吸入製剤の浸透圧が高いと、吸入に対して患者は気管支痙攣や咳という反応を引き起こしてしまうため、吸入可能なアズトレオナム製剤は、浸透圧の程度および範囲が非常に限定されている必要がある。
本発明において、好ましい薬学的に許容されるアズトレオナムリシナート塩は、最初にα‐アズトレオナムをβ‐アズトレオナムに変換させる必要はなく、α‐アズトレオナムとリシンの直接的な反応によって生じる。
α‐アズトレオナムをβ‐アズトレオナムに変換させずに、α‐アズトレオナムに由来するα‐アズトレオナムリシナートを生産することは、いかなる従来技術によっても開示または示唆されていない斬新な製法である。
バルク溶液または凍結乾燥されたα‐アズトレオナムリシナートを製造するための現在開示されている方法は、α‐アズトレオナムは、水に可溶化されて攪拌されると、直ちに乳濁液または滑らかなスラリーを形成するという発見に基づいている。スラリーに対してリシン塩溶液を滴定すると、非晶形のα‐アズトレオナムリシン塩が迅速に形成されるという結果になる。この塩は、凍結乾燥されたβ‐アズトレオナムリシナートと同様の安定特性を有するが、しかしながら、β‐アズトレオナムリシナート産生の過程で観察される、不純物の有害な増加は伴わない。リシンとの反応、凍結乾燥、およびα‐アズトレオナムリシナートの乾燥によって、求核性環の開放は生じず、それゆえ、α型から生じる最初の不純物濃度は0.1%未満であり、実質的に、FDAの不純物許容濃度に対する許容値未満である。
従って、α‐アズトレオナムリシナートの形成のためにα‐アズトレオナムを直接用いることによって、得られた製品の最初の不純物濃度ははるかに低く、より高い安定性を有し、時間の経過と共に分解する量もより少なくなり、それゆえ、より長い品質保持期限を有するようになる。
α‐アズトレオナムからα‐アズトレオナムリシナートを調製するための現在の製法において、個々の構成要素の比率、および反応混合液のpHは、一定の基準まで滴定される。製造工程IIを用いると、滴定の工程によってα‐アズトレオナムリシナート中の残余のエタノールは100ppm未満であることが確証され、β‐アズトレオナムリシナートの製造と比較すると、その製造においては、同じ反応ボリュームにおいて最大10,000ppmの残余のエタノールが検出された。これらの濃度は、α‐アズトレオナムリシナート調製において観察された濃度のほぼ100倍である。そのうえ、α‐アズトレオナムを用いることで、β‐アズトレオナム形態において検出される別の不純物であるエチルエステルの生成も除去される。
2つの製剤の安定性に関して、安定性を促進する条件は、β‐アズトレオナムは、初めは0.9%の開環が30日で2%を超えて分解するのに対し、α‐アズトレオナムは、同じ試験条件の下で、初めは0.06%であり90日で1.2%のみが分解する。
従って、α‐アズトレオナムの使用および製造工程IIを用いたα‐アズトレオナムリシナートの調製は、よりよいpHプロファイルを有し、不純物含有量がより少なく、浸透圧が望ましい程度まで減少したより安定な製品を生みだす。
E. α-アズトレオナムリシナートを製造するための製法
α‐アズトレオナムに由来するα‐アズトレオナムリシナートを産生するために、3つの潜在的な技術が開発された。第1の技術は、リシン塩のα‐アズトレオナムへの滴定に関わるものである。第2の技術は、アズトレオナムが凍結乾燥器内でリシンと結合されたときに、合成の終点において、未処理のα‐アズトレオナムを吸引乾燥することに関わるものである。第3の技術においては、α‐アズトレオナムリシナートが直接産生される。第3の技術は、α‐アズトレオナムおよびリシンをバルク固体へと噴霧乾燥し、最終産物としてアズトレオナムリシナートを生産することに関わるものである。これらの技術の全ては、α‐アズトレオナムのβ‐アズトレオナムへの変換を回避する。
α‐アズトレオナムに由来するアズトレオナムリシナートを調製するための、現在より好まれている製法は、α‐アズトレオナムを水中に可溶化し、続いてリシン水溶液をα‐アズトレオナムに滴定してリシン塩を形成することから構成される。混合物はそれから凍結乾燥されるか、噴霧乾燥される。
現在の製法は、α‐アズトレオナムリシナートの望ましいpHプロファイルを達成するために滴定を好都合にも使用することによって、β‐ラクタム環の切断を阻止するが、これはβ‐アズトレオナムリシン塩の調製のために用いられる技術とは相反するものである。α‐アズトレオナムに由来するα‐アズトレオナムリシナートを調製のために本願明細書において開示される技術のいずれにおいても、β‐アズトレオナムに由来するβ‐アズトレオナムリシナートを生産する時に生じる全ての問題点だけでなく、β‐アズトレオナムへの変換もが阻止されている。
e.α-アズトレオナムリシナートの製造工程
1mlの水または他の水性溶媒あたり約75mgのα‐アズトレオナムを含むα‐アズトレオナムリシナートのバルク溶液を調製するための製造工程は、既に述べた製造工程IIに基本的に基づいている。この製法は、表6において以下に一覧を示されている構成要素の反応を含む。
Figure 2007527398
1リットルのα‐アズトレオナムリシナートを調製するために、75グラムのα‐アズトレオナムおよび52.5グラムのリシン1水和物が1リットルの注射用蒸留水に溶解される。α‐アズトレオナムリシナートを大量に調製するには、これらの量を適切に増加すればよい。
具体的には、バルク溶液を調製するための製法工程は以下の通りである。ほぼ400mlの注射用蒸留水(WFI)は撹拌槽に加え、撹拌槽を2〜8℃の間の温度に冷やし、52.5グラムのリシン一水和物を水に加える。温度は、2〜8度の間に維持する。それから混合物を透明になるまで攪拌する。溶液を、注射用蒸留水を用いて500mlの体積とする。
別に、400mlの注射用蒸留水を第2の撹拌槽に加え、2〜8℃の間の温度に冷やし、急速に攪拌し10℃以下の温度に保つように冷却しながら、75グラムの無水α‐アズトレオナムを冷却した水に懸濁する。典型的には最高で15%の水分を含む可能性がある、α‐アズトレオナムの実際の量は、無水α‐アズトレオナム75グラムに対応するような量に調節する。それから、温度を常に10℃以下に保ちpHを6.0と等しいかそれ以下としながら、リシン溶液の計算量を比較的短期間である約1〜15分にわたって、望ましくは約6分以内に、アズトレオナム懸濁液中へ滴定する。溶液のpHを測定し、リシン一水和物溶液を最終的に4.8±0.5のpHとなるように、必要に応じて調製する。溶液の体積は注射用蒸留水を用いて調節し、そして透明になるまで攪拌する。リシン溶液およびα‐アズトレオナム溶液の最終的な体積は合わせて1リットルでなければならない。
pHおよび分析評価結果が明細書記載の範囲中であることを確かめた後に、溶液を蠕動ポンプを用いて、プレフィルター(好ましくは0.45μmのプレフィルター)、2つの付加的なフィルター(好ましくは約0.1〜約0.3μmの大きさで、好ましくは0.22μmの親水性Millidisk 40カートリッジフィルター)を通し、濾過された(0.22μm)窒素フローの下に維持されている収容容器へと濾過する。最後の(0.22μm)フィルターの完全性(integrity)は、濾過した後に試験した。収容容器は、10℃以下の温度に維持した。濾過後のサンプルの、α‐アズトレオナムリシナートの量、汚染、密度および外観について検査した。
α‐アズトレオナムリシナートのバルク溶液の外観は、粒子状物質のない帯黄色の溶液であった。バルク溶液のpHは4.82であった。粘性、表面張力および浸透圧は、それぞれ、1.55mPas、67.11mN/mおよび410mOsmol/kgであった。全不純物は0.328%であった。
濾過された溶液を、1mL±10%の充填容積で琥珀色のガラス製バイアルに満たす。充填容積は15分ごと点検される。バイアルには開放位置に残されるストッパーを備えており、凍結乾燥器に置かれる。
凍結乾燥は3つの段階によって遂行されるが、典型的な凍結乾燥条件は表7にまとめられている。
Figure 2007527398
あるいは、凍結乾燥サイクルは、異なる状況(例えば表8に記載されている条件)の下で実行されうる。
Figure 2007527398
凍結乾燥の第二サイクルにおいて、第2の乾燥終了後、バイアルは、凍結乾燥器の中で減圧下で密封される。
凍結乾燥プロセスにおけるいかなるバリエーションも、本発明の範囲内にあることを意図されていると理解されるべきである。
製造工程の全体にわたって、水分含量および目視検査が実行される。凍結乾燥後、バイアルは完全にストッパーで密封されて、アルミニウム製の圧着キャップを取り付けられる。キャッピングおよび密閉処理の間、バイアルは、15分ごとに効果的にキャッピングされているかを視覚的に点検される。
凍結乾燥されたバイアルは、凍結乾燥された製品の安定性において最適な温度である、約−20〜8℃の間の温度に保たれて保管される。加えて、この温度は、製造の間に製品の安定性を維持するための最適な温度であることがわかった。
α‐アズトレオナムリシナートを製造するために使用する製造工程IIは上述されており、不純物のプロファイルは図4に図示されている。製法IIに従ってα‐アズトレオナムリシナートを大量に製造する間に観察される全不純物は、APIにおいてみられる不純物よりもわずかに多いのみである。具体的には、不純物Bの極微量(0.014%)のみがα−アズトレオナムリシナート製品で検出され、アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物と比較して、その特定の不純物は5倍の減少を示す。
α‐アズトレオナムリシナートの凍結乾燥物の外観は、粒子状物質のない帯黄色の溶液であった。凍結乾燥物のpHは4.78であった。粘性、表面張力および浸透圧は、それぞれ、1.5mPas、70.34mN/mおよび430mOsmol/kgであった。全不純物は、0.471%であった。これらの結果は、α‐アズトレオナムリシナートの製造バッチの3回の独立した実行において再現性があった。
製造工程IIが吸入用の目的のためのα−アズトレオナムリシナートを製造するための最適な条件を示すことを確認するために、pH、温度およびバルク溶液濃度の効果についての調査が実行された。更に、希釈された製品と同様、凍結乾燥された製品の安定性も評価された。
b. pHおよび温度の効果の評価
α−アズトレオナムおよびβ−アズトレオナムの相違において、pH値は非常に重要な役割を果たしていたため、α‐アズトレオナムリシナートを製造するための製造工程を最適化するために、pHおよび温度の効果が評価された。
簡潔には、20℃でpH 4.8のα‐アズトレオナムリシナート(75mg/ml)を10℃〜2℃まで冷却し、5秒ごとにpHを測定した。10℃または2℃という温度まで冷却することによるα−アズトレオナムリシナートのバルク溶液のpHに対する重大な影響はなかった。従って、製造工程は2〜20℃の間の温度で都合よく実行されうるが、しかしながら2〜8℃において最適に実行されうる。
加えて、すでに記載したように、α−アズトレオナムは重合、変色、凝固およびゲル化せずに容易に水中に溶解可能であり、製法の途中で高いpH値になるという問題に直面することなく、リシン溶液をα−アズトレオナム溶液に加えることが可能である。
アズトレオナムの安定性はpHに独立している。アズトレオナムの安定性は、pH 4.2および7の間のpH範囲において最大であり、最適なpHの範囲は4.6〜4.8の間である。上述の通り、α‐アズトレオナムのpHは、最適pH範囲に入る。
c. 不純物のプロファイルに対するバルク溶液の影響
エアロゾル剤中のアズトレオナム量の最適な濃度は約75mg/mlであるが、このような濃度は、異なる状況での治療において異なる可能性がある。製造工程を最適化するために、凍結乾燥の過程、凍結乾燥の間に除去される水の量、および、製品が貯蔵される凍結乾燥バイアルの形状と大きさによって規定される制約に関して、バルク溶液中のアズトレオナム濃度の変化が調査された。
通常は、低濃度では生理的に不安定な製品となり、バルク溶液中の活性成分の化合物の濃度が高いことは、全体の乾燥過程にとって有害となりうる。バイアルの形状および大きさは、バルク溶液の容積およびその中の有効成分の濃度に影響を及ぼす。
25、37.5、および75mg/mlのα‐アズトレオナムリシナートのバルク溶液の不純物の濃度を調査すると、37.5mg/mlの濃度において最も純粋なバルク溶液が得られた。しかしながら、75mg/mlの濃度のα‐アズトレオナムは不純物濃度がわずかに高いだけであることがわかり、そして、この不純物濃度は約0.1%または0.1%未満の不純物という許容される濃度であり、そして、最も重要なことに、薬剤濃度は吸入製品のために必要とされる活性化合物の必須量を満たした。
d. α‐アズトレオナムの安定性
α−アズトレオナムは、βーアズトレオナムと比較して、より高純度、より良好な安定性、およびより長い品質保持期限を有するアズトレオナムリシナートの製造を可能にする。
α‐アズトレオナムは、より水中に懸濁しやすく、残存エタノール量(100ppm)がβ-アズトレオナム(10,000ppm)の場合より少ないという利点がある。この特性は、塩への転換の間に生じる全不純物の量が少ないという結果になる。製造工程の初めにα−またはβ−アズトレオナムを用いると、同じような類似する最終薬剤製品である非晶形のアズトレオナム塩が結果として生じるが、しかしながら、各々の不純度と安定性は異なったものになる。
β-アズトレオナムを用いて2つのロットの製剤が生産され、α-アズトレオナムを用いて1つのロットの製剤が生産された。製剤の3つのロットについて、製品製造時の安定性(初期の全不純物)、および5℃に冷蔵して貯蔵した時の、製造後6ヶ月時の製品の安定性(6ヶ月時の全不純物)を評価した。ロットにおける全不純物の結果は、表8に記載されている。
Figure 2007527398
β−アズトレオナムから生産された製剤(アズトレオナムリシナート)の初期の全不純物は、HPLCで測定すると、それぞれ1.23%および1.27%であり、一方で、α‐アズトレオナムから生産された製剤の初期の全不純物は0.65%であった。5℃で6ヵ月貯蔵した後では、β-アズトレオナムリシナートの全不純物は、それぞれ1.47%および1.35%であり、一方で、α‐アズトレオナムリシナートの全不純物は0.84%であった。
投与時の最終産物の不純物の望ましい制限値は2%であるため、α−アズトレオナムリシナートは安定した製品を作るためのより良好な候補であり、従って、β−アズトレオナムリシナートも許容される不純物濃度を有するにもかかわらず、より好ましい型は、β−アズトレオナムリシナートよりも長い品質保持期限を有する製品をもたらす。
e. 希釈されたα−アズトレオナムの安定性
吸入可能なα‐アズトレオナムリシナートは、1つの形式では噴霧可能な溶液として投与されるので、溶液の安定性が決定された。
この趣旨で、バルク溶液から取り出されたα‐アズトレオナムリシナートのサンプルは、1対250の比率で緩衝液で希釈された。時刻ゼロ(新たに調整した時刻)、1、3、6および12時間の時点においてサンプルは調査され、不純物プロファイルが決定された。
α‐アズトレオナムリシナートの希釈されたサンプルは、12時間という期限に向かうにつれて不純物がごくわずかに増加するのみで、12時間にわたって安定であることがわかった。
これらの発見は、希釈された状態でのα‐アズトレオナムリシナートは良好な安定性を示すことと、凍結乾燥された製品を吸入用製品として使用する前に希釈しても、α‐アズトレオナムリシナートは急速には分解しないことを示している。
a. 凍結乾燥されたα−アズトレオナムリシナートの再構成
凍結乾燥されたα‐アズトレオナムリシナートから再構成されたサンプルの、不純物プロファイルが決定された。
この目的のために、凍結乾燥物は0.17%生理食塩水1mlによって再構成され、外観、pH、粘性、表面張力、浸透圧および全不純物が決定された。
α‐アズトレオナムリシナートの凍結乾燥物の外観は、粒子状物質のない帯黄色の溶液であった。凍結乾燥物のpHは4.78であった。粘性、表面張力および浸透圧は、それぞれ、1.5±0.16mPas、70.34±0.2mN/mおよび430mOsmol/kgであった。全不純物は、0.601%であった。
吸入可能な製品の浸透圧は極めて重要である。高い浸透圧は、呼吸器感染症の患者の症状を悪化させてしまうため、吸入可能なアズトレオナムにとって望ましくない。吸入製剤の浸透圧が高いと、吸入に対して患者は気管支痙攣や咳という反応を引き起こしてしまうため、吸入可能なアズトレオナム製剤は、浸透圧の程度および範囲が非常に限定されている必要がある。
従って、凍結乾燥α−アズトレオナムリシナート、および再構成された凍結乾燥α‐アズトレオナムリシナートが約400〜550mOsml/kgの範囲という許容される浸透圧を有することは、非常に重要である。
図6は、APIと比較して、α‐アズトレオナムリシナートのバルク溶液、凍結乾燥物および再構成された凍結乾燥物の不純物プロファイルをグラフを用いて図示している。
図6からわかるように、API、バルク溶液および凍結乾燥物の不純物プロファイルは図4に示すプロファイルと同等のものであった。再構成された凍結乾燥物は、再構成された凍結乾燥物中の不純物濃度において、約0.471%から約0.601%まで、全体としてわずかだが有意ではない上昇を示した。
F. アズトレオナムリシナートの薬理学的活性
アズトレオナムリシナートは、緑膿菌を含めたグラム陰性好気性病原体の広いスペクトラムに対して、in vitroにおいて強力かつ特異的な活性を示す。アズトレオナムリシナートの殺菌作用は、ペニシリン結合タンパク質3(PBP3)に対するアズトレオナムリシナートの高い親和性に起因する、細菌の細胞壁合成の抑制の結果として生じる。
アズトレオナムリシナートは、大多数のβ−ラクタム系抗生物質とは異なり、βーラクタマーゼ活性を誘発せず、そして、その分子構造のために、大部分のグラム陰性菌およびグラム陽性菌によって産生されるβーラクタマーゼ(例えばペニシリナーゼおよびセファロスポリナーゼ)による加水分解に対して高度の耐性を示す。従って、アズトレオナムリシナートは、β−ラクタマーゼによって加水分解される抗生物質に耐性を示すグラム陰性好気性生物に対して、特に効果的である。
アズトレオナムリシナートは、ヒトの血清が存在する場合でも、嫌気性の条件でも、in vitroにおいて6〜8の範囲のpHにおいて抗菌活性を保つ。アズトレオナムリシナートはin vitroで活性があり、実験動物モデルにおける、および臨床的な、以下にあげる生物のほとんどの株の感染において効果的である;大腸菌、腸内細菌種、肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、セラチア・マルセスセンス、インフルエンザ菌および硝酸菌種(Nitrobacter species)、そして、セファロスポリン、ペニシリン、およびアミノグリコシドのようなほかの抗生物質に多剤耐性の細菌も含む。
現在では、FDAがアズトレオナム・アルギニン塩の使用を認可している唯一の感染症は、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、プロテウス・ミラビリス、腸内細菌種およびセラチア・マルセスセンスによって生じる感染症である。
現在では、珍しい高度の耐性株(たとえば、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、および多剤耐性緑膿菌)のみならず、全ての上記の細菌株は、望ましくは約75mg/ml、望ましくは1日につき1回または2回投与、そして1日の全服用量は750 mg/dayを超えない、アズトレオナムリシナートを約1〜約250mgの間の低用量で用いた毎日の治療によってうまく根絶されることが発見された。
II.アズトレオナムリシナートの吸入可能な組成物
本発明は、エアロゾル投与または乾燥粉末として、気道の気管支内スペースへアズトレオナムリシナートを効率的に投与するのに適した、濃縮された吸入可能なα−またはβ−アズトレオナムリシナート(好ましくはα−アズトレオナムリシナート)組成物に関するものである。
本発明は、最も好ましくは、噴霧、噴流(jet)、超音波、加圧、振動多孔性プレートまたは同等のネブライザーによる、または主にアズトレオナムリシナート・エアロゾルまたは1〜5μの乾燥粉末粒子を産生する乾燥粉末吸入器による、エアロゾル投与のための濃縮アズトレオナムリシナート製剤に適している。この粒子サイズは、細菌感染症を治療するために、気管支内スペースにアズトレオナムリシナートを有効に送達するために必要である。
A.エアロゾル化アズトレオナムリシナートの組成物
エアロゾル投与のためのアズトレオナムリシナートの組成物は、エアロゾル化アズトレオナムリシナートを気道の肺気管支内スペースへ有効に供給するために調製される。
エアロゾル製剤は、1回の吸入投与あたり、総量約1〜約5mlの、水溶性の生理的に許容される溶液として投与される。本発明の方法に従って調製され投与されると、治療上有効な量のアズトレオナムリシナートが、細菌性肺感染症を治療するのに十分な量として感染部位に到達する。
この新規の水溶性製剤と、噴霧、噴流(jet)、加圧、振動性多孔性プレートまたは超音波ネブライザーを組み合わせることで、ネブライザーに依存して、投与されたアズトレオナムリシナートの量のうち、少なくとも約20〜約90%、典型的には約70%を気道に送ることが可能になる。
製剤は、約1〜250mg(より好ましくは約25〜約90mg/ml、最も好ましくは約75mg/ml)の、最小限だが効果的な量のアズトレオナムリシナートを含み、一定の塩分濃度と一定のpHを持った生理的に許容される希釈液の最小限の可能体積中で調製され、患者に良好な認容性を示すが、気管支痙攣、炎症または咳のような二次的な望ましくない副作用の発症を最小限に抑えるようなアズトレオナムリシナートのエアロゾルを生成することを可能にするように調製されている。
エアロゾル化アズトレオナムリシナート製剤の第一の要件は、その安全性および有効性である。付加的な利点は、より低いコスト、製造上の便宜、製品の純度、使用上の実用性、長い品質保持期間、エアロゾルという手段での貯蔵および操作が挙げられる。エアロゾル化アズトレオナムリシナートのおけるこれらの必要条件は、一定の塩分濃度を含み、一定のpHの範囲を有する製剤によって満たされることが現在ではわかっている。
1.アズトレオナムリシナートの投薬量
アズトレオナムリシナートは比較的短い寿命を有する。半減期は約1-2時間であり、10〜12時間以内にアズトレオナム投薬量の全量が除去される。従って、細菌性肺感染症を効果的に治療するためには、肺においてアズトレオナムリシナートの抗菌作用のある濃度を維持するために充分な量の薬剤を供給する、治療上の投薬計画を必要とする。従って、この投薬計画は、1日につき1回から数回、好ましくは2〜4回、吸入可能なアズトレオナムリシナートを投与することを必要とする。患者の便宜性のためにもっとも好まれる投薬計画は1日につき1回または2回であるが、しかしながら、アズトレオナムリシナートが細菌に対して示す特定の効果のために、そして、約12時間という比較的短い寿命のために、気管支内のスペースから細菌を完全に根絶するためには、1日につき2回以上投薬することがしばしば要求される。
それゆえ、1日につき少なくとも2回、時には3〜4回、例外的には1日につき4回以上、エアロゾル化された、または乾燥粉末のアズトレオナムリシナートの治療上有効な最低量を投与することが好ましい。それゆえ、アズトレオナムリシナートまたはその塩の投薬量は、一回の投薬量につき1〜250mg、最も好ましくは、1mlにつき約75mgのアズトレオナム、が調整されるように設定される。
通常は、1回の治療上有効な投薬用は、1〜250mg、より好ましくは25〜90mgのアズトレオナムリシナートであり、少なくとも約50%〜70%の効力のアズトレオナムリシナートを気管支内のスペースへ供給するような手段によって、同等量が投与される。従って、約250mgの投薬量の場合、125mgのアズトレオナムリシナートが各投与において供給される。肺に到達した100〜250mgのアズトレオナムリシナートは、細菌を根絶するのに有効であることがわかった。どのような場合であれ、1回の投与量は250mgを上回ってはならない。この量以上になると、エアロゾル投与は難しく、薬剤は沈殿しがちになり、そして、エアロゾルによる投与のためにはより多くの量が必要になり、最大の効率で、治療量の薬剤を投与するという本発明の目的にそぐわない。
投与されたアズトレオナムリシナートの効果的な投薬量、および各々の患者の治療のために使用する投薬計画の決定は、治療に対する個々の患者の反応性に依存している。最終的な決定要因は、エアロゾル状投与後の、喀痰中のアズトレオナムリシナートの予想濃度である。1mlの喀痰中のアズトレオナムリシナートの最適範囲は、いかなる時点においても500〜200μg/mlの範囲であることである。このように、投与の頻度は、投与されたアズトレオナムリシナートの効果と相関している。
エアロゾル化アズトレオナムリシナートの効果は、静脈内投与されたアズトレオナムリシナートと比較すると驚くほど高い。許容投薬量の最大値である2000mg投与後の血清ピーク濃度は、喀痰中ではたったの242μg/mlという結果になる。このような静脈内投与後6時間での濃度は16μg/mlの範囲であるとわかったが、これは耐性のない緑膿菌に対するMICである。
少ないけれども効果的な量のアズトレオナムリシナートを、非侵襲的に肺に直接投与することを可能にするような、アズトレオナムリシナート投与のための新しい方法は、アズトレオナム投与の既存の方法と比較して大きく改良されている。
2.アズトレオナムリシナート製剤に対するpHの効果
アズトレオナムリシナートのエアロゾルを調製するために用いられる溶液または希釈剤は、4.2〜7.5、好ましくは5.5〜7.0という限られたpH範囲を有する。
製剤のpHは、エアロゾル化アズトレオナムリシナートの投与における、重要な特徴となる。酸性または塩基性のいずれかである場合、エアロゾルは気管支痙攣または咳を引き起こしうる。pHの安全な範囲は相対的なものであり、いくらか酸性のエアロゾルに耐容性である患者もいる一方で、特に嚢胞性線維症または他の基礎疾患を有する場合、気管支痙攣が生じる患者もいる。4.5未満のpHを有するいかなるエアロゾルも、通常は気管支痙攣を誘発する。4.5〜5.5のpHを有するエアロゾルは、時々気管支痙攣を引き起こす。アズトレオナムリシナートのエアロゾルの試験によって、5.5〜7.0のpHを有する噴霧可能なアズトレオナムリシナート製剤は、良好な耐容性を示し安全であることが発見された。体の組織はアルカリ性のエアロゾルを緩衝できないため、7.5より大きなpHを有するいかなるエアロゾルも回避されるだろう。4.5以下および7.5以上に調製されたpHを有するエアロゾルは、高度の気管支痙攣、咳および炎症性反応を伴う肺刺激を引き起こす。
患者の気管支痙攣、咳または炎症の回避するためのみならず、これらの理由により、エアロゾル製剤の最適pHは、pH5.5〜pH7.0との間であると決定された。
従って、アズトレオナムリシナートのエアロゾル製剤は、4.5〜7.5の間のpHに調製されており、より好ましいpH範囲は約5.5〜7.0である。最も好ましいpH範囲は、5.5〜6.5である。
3.アズトレオナムリシナート製剤に対する塩分濃度の効果
急性または慢性気管支感染症の患者、特に嚢胞性線維症または気管支拡張症の患者は、さまざまな化学薬品に対する感受性が高まり、気管支痙攣、喘息、または咳の偶発率が高い。気道は、低張性または高張性、および酸性またはアルカリ性の条件、そして例えば塩化物のような、パーマネントイオン(permanent ion)の存在に対して特に敏感である。これらの条件における不均衡、またはある値以下の塩化物の不足は、吸入可能な製剤を用いた治療の大きな障害となる、気管支痙攣や炎症性のイベントおよび/または咳をもたらす。これらの状態は共に、気管支内のスペースにエアロゾル化アズトレオナムリシナートを効果的に供給することを妨げる。炎症を起こした気道の臨床症状は、極めて望ましくないものである。
明らかに、アズトレオナムリシナートにおいて、健康な肺においてみられる生理的条件を満たし模倣するように、ある程度の浸透圧を与えることなく、単に水性溶媒を使用することは可能ではない。従って、エアロゾル化アズトレオナムリシナートをうまく有効に供給するためには、一定量の塩化物または他の陰イオンが必要とされるが、しかし、その量は、他の化合物のエアロゾルにおいて供給され典型的に使用される量よりもはるかに少ない。
気管支痙攣または咳の反射は、同じ浸透圧のエアロゾル投与のための希釈剤には反応しないが、希釈剤の浸透圧が特定の範囲においてあるとき、十分に制御され、および/または抑制されうる。安全で気道耐性を有するアズトレオナムリシナートの噴霧化においての好適な溶液は、31mM〜300mMの塩化物濃度の範囲を有し、全体で50〜550mOsm/kgの浸透圧を有する。所与の浸透圧は気管支痙攣を制御し、パーマネント陰イオン(permeant anion)としての塩化物の濃度は咳を制御する。この点に関しては、塩化物イオンは臭素イオンまたはヨウ素イオンによって置換されうる。なぜなら、共にパーマネント陰イオンだからである。加えて、重炭酸塩は、塩化物イオンと、完全にまたは部分的に置換されうる。標準生理食塩水(NS)は154mMの塩化物を含むが、31mMの塩化物は約0.2倍生理食塩水に相当する。
従って、本発明のアズトレオナムリシナートのエアロゾル製剤は、1mlの生理食塩水、またはより好ましくは約1/10生理食塩水(NS)〜約最大1NSの希釈生理食塩水、より好ましくは約1/10〜1/4NS、すなわち1/10〜1/4の生理食塩水の中に溶解している、約1〜約90mg、好ましくは約75mgのアズトレオナムから構成される。アズトレオナムリシナートは、0.9%の塩化ナトリウムを含む生理食塩水である標準生理食塩水よりも薄い溶液に溶けているときに肺に効果的に到達すること、そして、1/4N生理食塩水以下の塩化物イオン濃度が、アズトレオナムリシナートの気管支内のスペースへの供給を可能にし、保証することが発見されている。
1mLにつき約50mgのアズトレオナムリシナートを含む、0.2NSのアズトレオナムリシナート製剤は、約290mOsm/lの浸透圧を有する。この浸透圧は、肺細菌感染症に苦しむ患者、さらには嚢胞性線維症または気管支拡張症の患者への投与に適切なエアロゾルの安全な範囲内にある。
50mg/mLのアズトレオナムリシナートを含む1/10〜1/4 NS溶液を使用するさらなる特徴および利点は、結果として生じるエアロゾル製剤は、標準生理食塩水に溶解したアズトレオナムリシナートと比較して、原子、噴流(jet)または超音波のネブライザーによって非常に効率よく噴霧されることである。本願明細書において記載されている通りに調製されたアズトレオナムの供給ははるかにより効率的であるので、はるかに少ない量のアズトレオナムリシナートが、肺のグラム陰性細菌を完全に根絶するために必要である。アズトレオナムを噴霧化しようというたった1つの以前の試みにおいて、どうも効果的であることを示した1000〜4000mgのアズトレオナムどころではなく、本発明に従ったアズトレオナムリシナートの調整は、好ましくは噴霧、噴流(jet)、電子、または超音波ネブライザーによって供給される、最大5mlの体積中に溶けたわずか1mg/ml、そして最大でも50mg/ml未満のアズトレオナムリシナートによる治療を可能にする。
4.噴霧可能なアズトレオナムリシナート製剤
アズトレオナムリシナートの噴霧可能な製剤は、0.09%〜0.9%という低濃度の塩化物イオンを含む約1〜5mlの水性溶媒に溶解した、約1〜約250mgのアズトレオナムリシナート、より好ましくは約25〜約90mg/mlとなるように調整され、最も好ましくは約75mg/mlのアズトレオナムリシナートから構成されており、4.2〜7.5の間に調整されたpHを有しており、前記製剤は、噴霧、噴流(jet)、電子、または超音波ネブライザーによって供給される。
アズトレオナムリシナートの最も好まれるエアロゾル製剤は、標準生理食塩水の1/4(0.225%)または1/10分の1(0.09%)に好適には希釈された、約1〜5mlの生理食塩水に溶解した75mg/mlのアズトレオナムリシナートから構成され、5.5〜7.0の間に調整されたpHを有しており、1〜5μの質量媒体平均直径を有するエアロゾル粒子の噴霧療法によって供給されるが、ここで前記製剤は、噴霧、噴流(jet)、電子、または超音波ネブライザーによって噴霧される。アズトレオナムの投薬量は、アズトレオナム成分にのみ関連して再計算される。
パリ社(PARI, Starnberg Germany)から市販されているパリ社Eフローネブライザーを使用して、75mg/mlのアズトレオナムリシナート溶液のうち1mlを供給する時間は、90mg/mlのアズトレオナムリシナート溶液の場合4分であるのと比較して、3分である。75mg/mlの場合は1分あたり25mg供給され、90mg/ml溶液の場合は1分あたり22.5mgの供給されるのと比較して速い。供給時間は、患者の視点からすれば重要であり、コンプライアンスを改善するので、75mg/mlの製剤は90mg/mlの製剤よりも速く供給されるという発見は、予想外であると同時に重要である。90mg/mlは、1mlの溶液に溶かすことができるアズトレオナムリシナートの最大濃度である。
さらに、溶解可能な濃度の最大値、すなわち90mg/mlは、75mg/mlの濃度ほど良好には噴霧しないことが発見された。さらなる調査の結果、このことは各々の濃度における溶液の粘度に起因する可能性があると判断された。
アズトレオナムの濃度 アズトレオナムの粘度
75mg/ml 1.48±0.1 mPas
90 mg/ml 1.7±0.03 mPas
これらの発見は直感に反したものであり、驚くべきことに、より低い濃度の薬剤、すなわち、75mg/mlの製剤が、吸入によるアズトレオナムリシナートの最も効果的な供給において、最良の用量であることを示している。
5.乾燥粉末、エアロゾルおよびエアロゾル懸濁液
本発明による製剤は、乾燥粉末、エアロゾル、または水性溶媒中のリポソームないし他の微細粒子のエアロゾル懸濁液として調製されるアズトレオナムリシナートを含む。製剤は、良好な認容性を示すように設計されており、1〜5μの範囲の呼吸に適する大きさのエアロゾル粒子へと、確実に十分に霧状にされることが可能である。
用量は、コロニー形成を防ぎ、そして/または一連の感受性グラム陰性生物によって生じる高度の肺感染症を治療するための、最も活性のある形のアズトレオナムリシナートを必要量含み、しかしその量を超えないように設計されている。
患者は、噴霧化された溶液のpH、浸透圧およびイオン含量に影響を受けうる。従って、これらのパラメータは、アズトレオナムリシナートの化学的性質と適合性を有し、さらに患者にとって耐容性を有するように調整されている。
本発明の製剤は、感染の際に細菌が存在する終末細気管支と呼吸細気管支、およびコロニー形成の際に細菌が存在するより太い気道へ到達することが可能となるような粒子サイズへと主に噴霧化される。
アズトレオナムリシナートを気道の肺気管支内のスペースへエアロゾル粒子として効率的に供給するためには、主に1〜5μの質量媒体平均直径を有するエアロゾルの製剤が必要である。気管支内細菌感染症の治療と予防のために調製され供給される量のアズトレオナムリシナートは、肺の表面を効率的に標的としなければならない。前記製剤は、アズトレオナムリシナートの有効量を感染部位に供給することが可能な、最少の考えられる噴霧可能な容積を有していなければならない。加えて、前記製剤は、気道の機能性に悪影響を与えないであろう条件を規定しなければならない。従って、前記製剤は、望ましくない反応を回避すると共に、製剤の有効な供給を可能にするような条件の下で調製された、十分な量の薬剤を含まなければならない。本発明による新規の製剤は、これらの必要条件のすべてを満たす。
吸入可能なアズトレオナムリシナートを供給する1つの方法は、吸入可能な乾燥粉末という手段よるものである。
本発明のアズトレオナムリシナートは、エアロゾル送達に代わる手段として、乾燥粉末吸入器または定量吸入器を用いて、気管支内スペースへ細かく粉砕されたアズトレオナム粉末を効果的に送るための乾燥粉末製剤として気管支内へ投与されうる。
乾燥粉末製剤は、集団として(on a mass basis)乾燥粉末吸入器を用いて乾燥粉末の形のアズトレオナムリシナートを送るという、このような代替手段を可能にするような潜在能力を有する。十分に効力のあるアズトレオナムリシナート製剤は、乾燥粉末吸入器または定量吸入器によって好都合に送達されうる乾燥粉末を供給する。吸入可能な乾燥粉末を送達するために、アズトレオナムリシナートは製粉、沈殿、噴霧乾燥、または別の方法で処理されて約1〜5μの粒子サイズにされる。
乾燥粉末製剤は、約20〜200mg、好ましくは10〜100mgのアズトレオナムリシナートから構成される。
本発明の乾燥粉末製剤のために、実施例6に記載の、媒体製粉(media milling)、ジェット製粉(jet milling)、噴霧乾燥または分子析出技術(particle precipitation techniques)によって、アズトレオナムリシナートは1〜5μの範囲の質量媒体平均直径を有する粒子へと製粉される。
簡潔に言うと、噴霧乾燥において、アズトレオナムのα型が水中に懸濁され、撹拌され、冷却される。水中に溶解したL-リシンは、両方の成分がほぼ完全に溶解するまで、約3〜約10分以上、好ましくは約6分にわたって、ゆっくりと加えられる。溶液は、木炭を用いて精製され、濾過される。その後、例えばBuchi Mini Spray Dryer B-191のような、適切な噴霧乾燥装置を用いて、溶液は噴霧乾燥される。
粒子サイズの決定は、多段階アンダーソン・カスケードインパクタ(multi-stage Anderson cascade impactor)、または他の適切な方法によってなされる。サーモ・アンダーソン8段階ノンバイアブル・カスケードインパクタ(Thermo Andersen Eight Stage Non-Viable Cascade Impactor )は、定量吸入器および乾燥粉末吸入器の中のエアロゾルのための特徴的な装置として、アメリカ薬局方第601章において、具体的に例証されている。8段階カスケードインパクタは、9.0マイクロメートルから0.4マイクロメートル(28.3L/分で)のエアロゾルを分類することを可能にする、8つのジェット段階を利用しており、空気中の粒子が、ステンレス製鋼鉄の密着面(stainless steel impaction surfaces)または種々の濾過メディア基板(filtration media substrate)に衝突することを可能にする。最終的なフィルターは、0.4未満の全ての粒子を集める。
媒体製粉は、薬剤物質を、例えばステンレス鋼またはセラミック・ボールを含む製粉器の中に入れ、所望の薬剤の粒子サイズ範囲となるまで物質を回転するか、ひっくりかえすことによって得られる。媒体製粉の有利な点は、大きさのコントロールの良好性、製品サイズの範囲の狭さ、高い効率の回収率、そして容易に計算可能な製法である。不利な点は、数時間から数日という長い製造工程時間、媒体製粉が完成時に製品から分離されなくてならないという必要条件、そして製品が媒体と汚染する可能性である。
ジェット製粉は、粒子が互いに衝突し、所望のサイズの微粒子が製粉器から回収されるよう、極めて高圧の空気流を使用する。有利な点は、製造工程が速いこと、およびエネルギー移動が少ないことであり、薬剤製造の間の温度の上昇が少ないという結果になる。ジェット製粉工程は数秒から数分で完了する。ジェット製粉の不利な点は、典型的収率が50〜80%の回収率であり、収率および収集効率がより低い点である。
噴霧乾燥は、吸入可能な乾燥粉末を調整するのに役立つもう一つの技術である。噴霧乾燥は、アズトレオナムリシナート溶液の細かい霧を支持材の上に吹き付け、粒子を乾燥させることを含む。粒子はその後収集される。噴霧乾燥は、化学的な本質を劣化させる傾向が最も少ないという利点を有する。薬剤の溶解性を減少させるような共溶媒を、単一の薬剤の溶液へと加えることは、溶液の沈殿という結果になる。充分な共溶媒が加えられると、薬剤の溶解性は、濾過または遠心分離によって収集されうる、固体の薬剤粒子が形成されるようなポイントへと至る。析出は高い再現性があり、高い回収収率を有し、低温条件の下でも実行可能であるため、分解を減少させる。
乾燥粉末吸入および定量吸入は、治療を受ける患者の肺に、少なくとも約10mg、より好ましくは約25〜約100mgのアズトレオナムリシナートが到達するという結果を投与量がもたらすときに、より実用的である。通常は約70%である乾燥粉末送達装置の効率に依存して、典型的な有効乾燥粉末用量のレベルは、約20〜約60mgのアズトレオナムリシナートという範囲で減少する。従って、通常は、一呼吸以上の薬剤が必要とされる。
この態様において、本発明は、乾燥粉末の形か、主に1〜5μの範囲の粒子サイズに製粉されるか又は他の方法によって調製された定用量形態の薬剤粒子の形の、純粋なアズトレオナムリシナートの十分によく効く製剤を提供する。乾燥粉末を希釈するか、エアロゾル容器を充満するというような、いかなる更なる処理をも必要としないので、この種の製剤は実際的で便利である。更に、それは、十分に小さく、完全に持ち運び可能であり、例えば、噴流(ジェット)ネビライザーにおいて必要とされる空気圧縮機を必要としないような装置を利用している。加えて、乾燥粉末製剤は、エアロゾル投与のための液体のアズトレオナムリシナート製剤よりも長い品質保持期限を有する。アズトレオナムリシナートは、噴霧可能な溶液へと再構成されると、室温では、モノバクタム環の加水分解のために、限られた品質保持期限しか有さない。アズトレオナムリシナート乾燥粉末にはこの問題がない。
従って、乾燥粉製剤は、希釈やその他の処理を必要とせず、エアロゾル・ネブライザーにより必要とされる空気圧縮機を必要としないため、携帯使用に実用的で便利である。
いかなる乾燥吸入器のみならず、吸入可能な乾燥粉末を調製する適切な全ての技術、およびそれらのありとあらゆる改良点は本発明の範囲であることが意図されている。
B.安定性、品質保持期限および貯蔵
前記製剤の安定性は、有効な製剤にとってもう1つの非常に重要な問題である。もしも薬剤がエアロゾル投与される前に分解する場合、より少ない量の薬剤しか肺に到達せず、従って治療効果を弱める。さらに、貯蔵されたアズトレオナムリシナートが分解することによって、患者にとって耐容性の低い物質が生じる可能性がある。
乾燥した形態のアズトレオナムリシナートは、少なくとも2年の品質保持期限を有する。アズトレオナム遊離塩基、または水性溶媒中のアズトレオナムリシナートの長期的安定性は、商業的に許容されるだろう十分に長い品質保持期限を提供することができない可能性がある。従って、溶液製剤は、適当な希釈剤からアズトレオナムリシナートの分離を必要とする可能性がある。このため、前記製剤は、乾燥形態において供給されることが好ましく、下記の通りに、投与する前に再構成されうる。
従って、エアロゾル投与のための製剤は、2つの別々の成分として供給されることが好ましく、片方の成分は、0.1〜0.9N生理食塩水、重炭酸塩、注射用水または任意の同等の水性溶媒のような、適切な希釈剤を含むアズトレオナムリシナートを含む。前記製剤は、投与する前に直ちに再構成される。この処置により、水性溶媒中のアズトレオナムリシナートの長期的安定性に関連した困難を回避する。
本発明によれば、エアロゾル投与のためのアズトレオナムリシナートは、吸入治療の前に再構成されるような乾燥粉末としての使用を意図された、凍結乾燥された調剤の形で調製されることが望ましい。前記のアズトレオナムリシナート製剤は、乾燥粉末として送られるか、または再構成のうえ送られる凍結乾燥粉末として、または凍結溶液かリポソーム懸濁液として、または微粒子として、無菌的に調製されうる。前記製剤の貯蔵における適合性は、エアロゾル投与に適した、調製されたアズトレオナムリシナートを確実に再構成することを可能にする。
c.吸入用製剤−包装
本発明の製剤は、いくつかの成分を含む包装の形で、患者に投与するために包装される。
典型的な製剤包装は、2つの別に包装された成分からなる:凍結乾燥されたアズトレオナムリシナート粉末、および噴霧投与による投与の前に粉末を再構成するための無菌希釈生理食塩水である。
各々のバイアルは、アズトレオナムリシナートとして、標示量のアズトレオナム(75mg)およびリジン(47mg)の90〜110%を含む。アズトレオナムおよびリジンはイオン性塩を形成し、直ちに生理食塩水に溶ける。希釈剤は、0.17%塩化ナトリウム吸入剤溶液(0.17mg/ml NaCl)の無菌の1mlのバイアルである。
0.17%NaClをもちいて再構成した後、溶液のpHは4.2〜7.0、浸透圧は350〜500mOsmol/kgとなる。アズトレオナムに関連した不純物は、以下のとおりである:開環アズトレオナム、脱スルホン化アズトレオナム、アズトレオナムのE異性体およびt−ブチル−アズトレオナム。全不純物は1%未満である。各々の既知の混入物は0.2%未満である。未知の不純物は0.1%未満である。現在USPのモノグラフが存在しないリシン一水和物を除き、全ての成分は、USPの必要条件を満たす。製剤は、保存剤を含まない。
c.吸入法によるアズトレオナムリシナートの投与
アズトレオナムリシナートは、現在利用できない。
A.吸入投与の2つの様式
吸入可能なアズトレオナムリシナートの投与は、アズトレオナムリシナート・エアロゾル、または吸入可能な乾燥アズトレオナムリシナート粉末のいずれかによってなされる。
吸入法によって送られる、本発明に従ったアルギニンを含まない製剤は、緑膿菌、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、プロテウス・ミラビリス、腸内細菌種、セラチア・マルセスセンス、および、さらに重要なのは、抗生物質耐性の、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび多剤耐性緑膿菌などの、全ての感受性グラム陰性菌によって引き起こされる呼吸器感染症を安全に治療することが示された。
B.投与の頻度
上記の細菌によって生じる肺感染症の治療は、吸入可能なアズトレオナムリシナートを1日につき1〜数回、好ましくは1〜2回供給するような治療の投薬計画によってなされる。患者の便宜性という点で最も好まれる投薬計画は、1日に1回又は2回であるが、しかしながら、アズトレオナムリシナートが細菌に対して示す特異的な効果のために、そして約12時間という比較的短い寿命のために、気管支内スペースから細菌を完全に根絶するためにはより頻回の服用がしばしば必要となる。
高度に肺機能が傷害された患者においては、投薬頻度は1日につき約12回にまで増やすことが可能であり、治療効果のある濃度を肺において維持するために必要な量のアズトレオナムリシナートのみを毎回供給することとなる。
アズトレオナムリシナートは、抗生物質の局所の濃度が、細菌の最小発育阻止濃度を超えるときに限り、細胞壁を溶解することによって細菌を殺す(Med. Clinics N. Am. , 79: 4,733-743(1995))。粘液線毛活動によって抗生物質は気道から比較的迅速に除去されるため、1につき3、4回以上患者にアズトレオナムリシナートを投与することにより、1、2回のみ薬剤を投与するとき比較して、より低い投与量でより高い効力が得られる。この趣旨で、吸入法によって送られるアズトレオナムリシナートの量は、静脈内投与されるアズトレオナム・アルギニンの量、またはアズトレオナム・アルギニンをエアロゾル投与によって送達しようという上述の1つの試みにおいて使用される量より、少なくとも4倍は少なく、1000倍も少ない可能性もあり、上述の1つの試みは、500〜1000mgが1日に2回投与され、総量が5歳未満の子供では1000mg、5歳以上の人では2000mgとなるというものである。
現在のアズトレオナムリシナートの一日量は、2mgと少ないかもしれない。典型的な上限は、2〜4回の投与により送られる、1日につき500mgのアズトレオナムリシナートである。極端なケースにおいては、1日につき3、4回以上のエアロゾル投与によって送られる、最高750mg/日にまで投薬量を増やすことができる。エアロゾル投薬量の典型的かつ好適な範囲は、20〜200mgを1日2回投与、または10〜100mgを1日3、4回投与することである。最適な投薬量は、75mg/mlの1日2回以上投与である。
アズトレオナムリシナートのエアロゾル投与では、噴霧、噴流(jet)、超音波、電子、または他の同等なネブライザーを用いて、エアロゾル化アズトレオナムリシナートを投与する。噴霧、超音波、電子ネブライザーのような携帯型ネブライザーは、外来治療で好まれる。圧縮器を有するジェットネブライザーは、アズトレオナムリシナート製剤を非常に効率よく霧状にするが、病院および診療所での使用により適切である。
吸入可能なアズトレオナムリシナートの第2の投与様式である、乾燥粉末吸入は、アズトレオナムリシナート乾燥粉末製剤を利用している。この種の製剤は、細かく粉砕されたアズトレオナムリシナートを気管支内スペースへ直接送ることからなる。この場合、アズトレオナムリシナートは、乾燥粉末または定量吸入器を使用して、気管支内スペースへ送られる。エアロゾルの代わりの投与様式として、集団として(on a mass basis)測定されたアズトレオナムリシナートの効力は、アズトレオナムリシナート粉末の吸入を可能にする。投与された量が100mg未満である時、乾燥粉末吸入は最も有効で、実用的で、経済的である。従って、投薬頻度は、通常は1日につき3、4回であるが、投薬計画は患者の必要や状態に依存するため、1, 2回または4回を超える投薬計画も含まれる。
本発明は、主に1〜5μの範囲の粒子サイズへと製粉または噴霧乾燥されたアズトレオナムリシナート粒子を、定量を吸入することによって乾燥粉末の形で送達される、十分に効力のあるアズトレオナムリシナート製剤を供給することである。このような乾燥粉末の送達は、送達の過程を単純化するため、携帯吸入においても可能であり特に好ましい。乾燥粉末を希釈したり、粉末を溶媒と混合したりするなどの、さらなる処理を全く必要としないため、このような送達は便利である。さらに、乾燥粉末吸入は、十分に小さく、完全に持ち運びが可能で、例えば、噴流(ジェット)ネブライザーにおいて必要とされる空気圧縮機を必要としない装置を利用している。加えて、乾燥粉末製剤は、エアロゾル投与のための液体アズトレオナムリシナート製剤よりもさらに長い品質保持期限を有する。
エアロゾルおよび乾燥粉末のアズトレオナムリシナートの投薬計画は、通常は1〜4回、または非典型的な場合では1日につき4回を超える、エアロゾル又は乾燥粉末の投与からなる。
例えば、高度に障害のある嚢胞性線維症患者は、一度に1回の吸入にしか耐えられないかもしれないが、アズトレオナムリシナートが肺で十分な濃度となるよう、2、3または4時間ごとに、この少量のアズトレオナムリシナートの吸入を繰り返すことは可能かもしれない。
IV. エアロゾル化されたアズトレオナムリシナートの送達装置
この発明の第1の必要条件は、アズトレオナムリシナートを気道の気管支内スペースへ、最も経済的な方法で効率的に送ることである。従って、本発明は、活性薬剤、すなわち、噴霧投与されるアズトレオナムリシナートの、少なくとも30〜50%、好ましくは70〜90%が治療上の効果を示す場所へと実際に到達することを必要とする。
A. ネブライザー
上述した本発明の組成物は、噴霧化によって発生するエアロゾルの効果的な送達のために必要とされる条件を満たすという条件の下で、治療上有効な量の薬剤を送達することを可能にする、溶液中に調製された薬剤を提供する。従って、アズトレオナムリシナート製剤をエアロゾル化する装置(ネブライザー)は、本発明の非常に重要な部分となる。
現在、商業的に入手可能なネブライザーの型はかなり多い。それらの全てが本発明の実用化に適しているわけではない。
ネブライザーは、主に1〜5μの質量媒体平均直径を有するアズトレオナムリシナート・エアロゾルの形成を可能にするという根拠の下で、最初に選択された。送達された量のアズトレオナムリシナートは、気管支内感染症、特に感受性細菌によって生じる気管支内感染症の治療および予防において有効でなければならない。従って、選択されたネブライザーは、治療効果があり患者に良好な耐容性を示すアズトレオナムリシナート・エアロゾルの生成を可能にするように調整された、塩分、浸透力およびpHを有する製剤を効率よくエアロゾル化できなくてはならない。ネブライザーは、最少の可能なエアロゾル化可能体積を有する製剤を処理可能で、さらに、アズトレオナムリシナートの有効量を感染部位に送ることも可能でなければならない。加えて、エアロゾル化された製剤は、気道の機能性を損なってはならず、望ましくない副作用を最小限に抑えなくてはならない。
ある種のネブライザーでは、治療上効果のある量の薬剤を、小さく一様な粒子サイズのエアロゾルへと霧状にすることができないことはよく知られている。アズトレオナムリシナートを有効に送達するための、薬剤を気管支内スペース、すなわち感染部位に送達するために必要なMMADを有するエアロゾル化された粒子の範囲は、1〜5μの間である。多くの商業的に入手可能なネブライザーは、少なくとも10%の量を気管支内のスペースへ送達することを目的として、大量の溶液をエアロゾル化することが可能であり、5μを超える大きなエアロゾル粒子を約90%以上生成してしまい、このうち50〜100μの範囲の粒子がとても多い。これらのネブライザーは、本発明によるアズトレオナムリシナートの送達にとって非効率的で適切ではない。
治療上効果的であるためには、大多数のエアロゾル化されたアズトレオナムリシナート粒子は、1〜5μよりも大きな質量媒体平均直径(MMAD)を有してはならない。エアロゾルが5μより大きなMMADを有する粒子を多数含む場合、これらは上気道に沈殿し、下気道の感染部位に到達する抗生物質の量を減少させてしまう。
すでに、2種類のネブライザー、つまり噴流(ジェット)ネブライザーと超音波ネブライザーは、1〜5μのサイズを有するエアロゾル粒子を生成して送ることができることが示されている。これらの粒子サイズは、緑膿菌、大腸菌、腸内細菌種、肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ(K. oxytoca)、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、セラチア・マルセスセンス、インフルエンザ菌、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、そして、多剤耐性緑膿菌のようなグラム陰性細菌によって生じる肺細菌感染原因の治療のために最適である。しかしながら、特別に調製された溶液が用いられない限り、治療効果を得るための十分な量の薬剤を投与するために、通常はこれらのネブライザーはより多くの体積を必要とする。従って、特別に調製されたアズトレオナムリシナートなしでは、アズトレオナムリシナートの効果的な送達は成し遂げられない。
本発明を実用化するのに適するネブライザーは、少ない体積の製剤を、効率的に、すなわち主に1〜5μの範囲の粒子サイズのエアロゾルへと、霧状化できなければならない。本出願において、主に(Predominantly)とは、生成した全エアロゾル粒子のうち少なくとも70%、好ましくは90%以上が1〜5μの範囲であることを意味する。
噴流(ジェット)および超音波ネブライザーは、粒子サイズが1〜5μの間の粒子を生成し送達することができる。噴流(ジェット)ネブライザーは、水溶性アズトレオナムリシナート溶液のエアロゾル液滴への空気圧による破砕を利用している。超音波ネブライザーは、圧電性結晶による水溶性アズトレオナムリシナート溶液の剪断を利用している。
しかしながら、通常は、臨床での条件下では噴流(ジェット)ネブライザーはわずか約10%の効率であり、超音波ネブライザーは約5%の効率しかない。従って、ネブライザー中に入っている大量の薬剤にもかかわらず、肺に沈殿し吸収される量は、この10%のうちの一部にすぎない。
アズトレオナムリシナートの送達に適切で好適なネブライザーの一つのタイプは噴霧ネブライザーであり、液体貯蔵容器が流体中で隔膜および吸入/呼気弁と接している。アズトレオナムリシナート製剤の投与のために、1〜5mlの製剤が貯蔵容器中に入れられ、選択的に1〜5μの粒子サイズの噴霧エアロゾルを生産する、エアロゾル発生器が作動する。
本発明を実用化するのに適した典型的な霧状化装置として、噴霧ネブライザー、改良された噴流(ジェット)ネブライザー、超音波ネブライザー、電子(electric)ネブライザー、振動する多孔性プレートネブライザー、および、特定のpH、浸透圧および塩分濃度をもつ特定の製剤中のかなり濃縮された少量の薬剤を処理するために改良された、加圧された乾燥粉末吸入器が挙げられる。最も好ましいネブライザーは、本発明の要件を満たすように改良された、PCT/US00/29541に記載されているPARI吸入用ネブライザーである。
B. 乾燥粉末吸入器
乾燥粉末は、乾燥粉末を直接肺に送る装置を使用して、それ自体が投与される。
乾燥粉末吸入器には2つの主要なデザインがある。1つのデザインは、薬剤のリザーバーが装置内に配置され、患者が吸入用チャンバーに1回分の薬剤を加えるような計量装置(metering device)である。第2のデザインは、毎回の個々の服用量が別々の容器で製造される、工場定量装置(factory-metered device)である。両システムは、1〜5μの質量媒体直径の小さい粒子へ薬剤を調製することに依存しており、通常は、より大きな添加剤粒子(通常は直径100μのラクトース分子)との共製剤を含む。薬剤粉末は吸入用チャンバーに入れられ(計量装置、または工場で定量された用量の破砕のいずれかによる)、患者の吸気フローが粉末の装置から口腔への移動を加速する。粉末の経路が非層状のフローであるという特徴は、賦形薬剤が凝集して分解する原因となり、大きな賦形剤粒子の塊は咽喉の後部での嵌入の原因となり、より小さな粒子は肺の深くにおいて沈殿する。
乾燥粉末吸入器の現在の技術は、最大積載質量の上限が粉末約100mgというものである。水溶液中のアズトレオナムリシナートは、加水分解がおこるために長期的には安定ではないため、乾燥粉末吸入器技術がアズトレオナムリシナート乾燥粉末の好ましい運搬媒体となることを可能にしている。
C. エアロゾルまたは乾燥粉末の粒子サイズ
アズトレオナムリシナートのエアロゾル製剤の粒子サイズは、本発明の最も重要な観点のうちの1つである。粒子サイズが5μよりも大きい場合、粒子は上気道に沈殿する。エアロゾルの粒子サイズが1μよりも小さい場合は、気管支内スペースで沈殿はしないが、肺胞へと送達され続け、全身血液循環へと移行する可能性がある。
噴流(ジェット)ネブライザーは、液体溶液をエアロゾル液滴に破砕するために、空気圧を利用する。超音波ネブライザーは、液体を小さなエアロゾル液滴に剪断する、圧電性結晶によって作動する。加圧された噴霧化システムは、溶液を加圧下で小さな孔へと押し込み、エアロゾル液滴を生成する。振動する多孔性プレート装置は、液体の流れを適当な液滴サイズへと剪断するために急速な振動を利用する。しかしながら、これらの装置はpHおよび塩分濃度に影響されるため、一部のアズトレオナムリシナート製剤のみが効率的に噴霧化される。
乾燥粉末吸入器において、上述のアズトレオナム乾燥粉末は1〜100mgから投薬量で調製され、好ましくは1〜5μのサイズを有する粒子として、10〜50mgの乾燥粉末が直接使用される。
D. アズトレオナムリシナート噴霧療法の有効性
ネブライザーの取捨選択は、吸入可能なアズトレオナムリシナートの送達効率に大きな影響を与える。
アズトレオナムリシナートのエアロゾル化製剤および霧状化装置の組み合わせは、薬剤投与の効率および速度を有意に高める。たとえば、現在では、例えばトブラマイシンのような他のエアロゾル化された薬剤の投与の平均時間は、1回量につき15〜20分である。この治療のために必要な時間は、患者にとって重大な負担を表しており、BID投薬計画のコンプライアンスを減少させることに貢献する。
さらにまた、トブラマイシン投与のために使用するネブライザーシステムは、新しい噴霧化装置よりも効率が悪い。肺におけるトブラマイシンの全沈殿量は、12〜15%の範囲である。投与された薬剤のほぼ30%は治療終了後ネブライザーの中に留まり、エアロゾル化された部分のうち、約30%は下気道に到達するには大きすぎるか小さすぎる粒子として放出される。
新しい噴霧ネブライザーは、8〜10μl/秒、または0.48〜0.60ml/分の出力であり、PARI LC plusネブライザーによって例示される従来のネブライザーよりも、2〜4倍も速く薬剤を送達することができる。さらに、新しい噴霧ネブライザーは、投与量の約90%をエアロゾル化することが可能であり、85%以上のエアロゾル粒子が下気道へ沈着するために必要なサイズ範囲を有する。その結果、噴霧ネブライザー用いて特別に設計されたアズトレオナムリシナート製剤を投与すると、気道への局所的な到達がかなり改善され、送達に必要とされる時間はより短くなり、アズトレオナムリシナート溶液の最終濃度に依存して、治療時間はわずか3〜4分へと短縮される。
V. 支持する実験的研究
緑膿菌は、嚢胞性線維症(CF)患者の慢性気管支感染症の最も一般的な原因である。この感染症は、これらの患者の罹患率および死亡率の主要な原因となる。エアロゾルの霧として吸入される抗生物質の局所的な使用は、CF患者に対して重要な恩恵を与えることが示されてきた。カルベニシリン、ゲンタマイシン、チカルシリン、トブラマイシン、コリスチンを含む薬剤を用いた、エアロゾル化された抗生物質による治療は長年行なわれてきたが、アズトレオナムでは行なわれてこなかった。
CF患者の治療において最も広く使われているエアロゾル化された抗生物質はトブラマイシンであり、肺機能および他の臨床的パラメーターにおいてかなりの改良をもたらす。喀痰が存在しない場合、in vitroで、トブラマイシンはほとんどの緑膿菌生物に対して活性がある。しかしながら、喀痰がある場合には、トブラマイシンの生物活性は、かなり減少する。
アズトレオナムは、緑膿菌を含む多くの好気性グラム陰性細菌に対して優れた活性を示すモノバクタム系抗生物質である。それは、種々の重症感染症の非経口的治療において現在承認されており、CF患者の肺機能の増悪を制御するために広く使われてきた。アズトレオナムは、アミノグリコシド抗生物質であるトブラマイシンおよびゲンタマイシンに類似した抗菌スペクトラムを有する。緑膿菌を含む多くの好気性グラム陰性細菌に対するその優れた活性は、肺機能の増悪に対する治療のための、単独療法としての、および他の抗生物質との併用療法としての静脈内投与を含めた、CF患者の間での広範囲にわたる用途につながった。これらの研究は、肺機能および臨床スコアにおける改善と同時に、細菌量や白血球数の減少を示した。加えて、アズトレオナムは、一般的に用いられるアミノグリコシド系抗生物質に対して本質的に耐性を示す病原体である、バーコルデリア・セパシアを制御する潜在能力があることが示された。
アズトレオナムが緑膿菌および他の細菌感染症の治療において成功をおさめるかどうかを決定するために、喀痰またはムチンの存在下で、拮抗されたアズトレオナム生物活性がin vitroで調査された。実験条件は、実施例8に記載されている。
これらの研究の結果は図7〜9に記載されており、ムチンまたはCFの喀痰の有無による、抗生物質のアズトレオナム(図7および8)およびトブラマイシン(図9)の濃度に違いによる抗生物質死滅曲線を表している。ムチンは、喀痰のタンパク質結合成分のモデルである。
図7は、ブタの胃のムチンの非存在下(図7A)および存在下(図7B)での、緑膿菌に対するアズトレオナムリシナートの活性を示す。アズトレオナムリシナートは、以下のMICの倍数の最終濃度となるように加えられた:0.0(◆), 0.1(□), 1.0(黒四角), 10(◇)
図7に示すように、ブタの胃のムチンなしの曲線(図7A)と、ブタの胃のムチンありの曲線(図7B)はほとんど同一であり、ムチンによって抗生物質は測定可能な抑制を受けないことを示している。
図8は、嚢胞性線維症(CF)の喀痰の存在下および非存在下での、緑膿菌に対するアズトレオナムリシナートの活性を示す。アズトレオナムリシナートは、以下のMICの倍数の最終濃度となるように加えられた:0.0(◆), 0.1(□), 1.0(黒四角), 10(◇)
図8に示すように、CFの喀痰なしの曲線(図8A)と、喀痰ありの曲線(図8B)はほぼ同一であり、CFの喀痰によって抗生物質は測定可能な抑制を受けないことを示している。
ムチンに結合し、喀痰およびムチンによって阻害されることが知られているトブラマイシンは、比較をする目的で、同一のアッセイでムチン存在下または非存在下で試験された。
図9は、ムチンの非存在下(図9A)および存在下(図9B)での、緑膿菌に対するトブラマイシンの活性を示す。トブラマイシンは、以下のMICの倍数の最終濃度となるように加えられた:0.0(◆), 0.1(□), 1.0(黒四角), 10(◇)
図9は、ブタのムチンの、トブラマイシン活性を抑制する能力を示す。ムチンが存在しない場合、トブラマイシンは効果的に緑膿菌を殺し、MICの10倍の濃度で加えられると、1時間当たりlog7もコロニー数を減少させた。対照的に、ムチンが存在する場合には、等濃度のトブラマイシンは、1時間ではごく少量、4時間でlog3〜4のみという、はるかに少ない量しか殺さなかった。MICの1倍の濃度では、トブラマイシンは、ムチンが存在しない場合は4時間でlog7の緑膿菌を殺したが、ムチンが存在する場合には、4時間でlog1未満しか殺さなかった。
CFの喀痰もブタの胃のムチンも、このアッセイの条件の下では、アズトレオナムの活性を有意に抑制しなかった。得られた緑膿菌死滅曲線は、喀痰またはムチンが存在しない対照群とほぼ同一であった。予想通り、MICより少ない量のアズトレオナムが加えられると(図7〜9の上側の曲線)、緑膿菌の成長がおこったが、その一方で、MIC以上の量のアズトレオナムが存在すると(下側の曲線)、緑膿菌は効果的に殺された。
この結果は、CF喀痰およびブタの胃のムチンによって阻害されることが知られている抗生物質である、トブラマイシンにおける結果と対照的である。ムチンをトブラマイシンへ追加すると、タイミングや使用した抗生物質の濃度に依存して、最高でlog4も殺菌効果が減少した。これらの結果は、CF患者の肺において予期される結果を解釈するためのモデルとしての、ムチン抑制アッセイの有効性を確証する。
これらの結果は、少なくともトブラマイシンほどは、アズトレオナムは嚢胞性線維症患者の喀痰によって阻害されず、吸入法によって投与されるとき、第1または第2の補完的治療として抑制されないことを示している。このことは、緑膿菌を根絶するためにより多くの抗生物質が利用できるため、嚢胞性線維症または他の患者における呼吸器感染症の治療において、アズトレオナムはトブラマイシンよりも好ましい可能性があることを示唆する。
VI. 肺細菌感染症の治療
本発明は、緑膿菌、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、プロテウス・ミラビリス、腸内細菌種、セラチア・マルセスセンスによって生じる急性または慢性肺細菌感染症、および抗生物質耐性のバーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、そして、多剤耐性緑膿菌によって生じる感染症の有効な治療法および予防法を提供する。
A. 吸入治療の2つの様式
肺感染症の治療法は、エアロゾルまたは乾燥粉末のいずれかによる、吸入可能な形でのアズトレオナムリシナートを1日につき数回投与することからなる。アズトレオナムリシナートの1日量は1〜500mg/日であり、例外的に最高750mg/日までとすることができ、エアロゾルでは1〜50mg/mlの濃度で投与され、乾燥粉末では1日につき2〜200mgの用量が、1回の治療につき1〜100mgの用量で投与される。アズトレオナムリシナート投薬量および投薬頻度は、細菌感染症の種類、その重症度、患者の年齢、患者の状態などに依存する。肺の空気容量が減弱している嚢胞性線維症患者の場合には、より低い用量を用いて投薬する頻度がより高くなる。
肺感染症の治療に適する乾燥粉末製剤は、気管支内スペースにアズトレオナムリシナートを有効に送達するために必要な質量媒体平均直径である、1〜5μの粒子サイズを有する、1〜200mg、好ましくは約10〜100mgの、非晶形または結晶の状態の粉末から構成される。乾燥粉末製剤は、1日に1〜4回以上、好ましくは1日に2回送達される。乾燥粉末製剤は、温度に安定であり、生理的に許容されるpHである4.2〜7.5、好ましくは5.5〜7.0のpHを有し、5年以上の品質保持期限を有する。
B. 化膿性肺疾患の患者における感染症の治療
本発明のエアロゾル療法は、特に化膿性肺疾患の患者の治療に役立ち、嚢胞性線維症、気管支拡張症の患者および人工呼吸器管理をされている患者の治療にとりわけ適している。
以前は、嚢胞性線維症のエアロゾル治療(ATCF)において、吸入された抗生物質は、慢性肺感染症に苦しむ嚢胞性線維症(CF)患者に対してそのような治療の有意な利点を示した。
合衆国において、この件に関し、最も広く使われ成功している薬剤はトブラマイシンであり、肺機能および他の臨床パラメーターにおいてかなりの改善をもたらすことが示されてきた。
現在、嚢胞性線維症、気管支拡張症または他の化膿性肺疾患において、グラム陰性菌によって生じる肺感染症、とりわけ抗生物質耐性のバーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、および多剤耐性緑膿菌によって生じる肺感染症の治療に対して、吸入可能なアズトレオナムリシナートは成功をもたらすことが発見された。
実施例2に述べられているように、これらの多剤耐性細菌感染症をエアロゾル化されたアズトレオナムリシナートによって治療することで、細菌の根絶に成功してきた。
この種の治療は、単独で有効であるか、または例えば、長期間使用するとトブラマイシンに対する耐性が生じるという結果になるトブラマイシンのような他の抗生物質との補完的治療となる。トブラマイシンを用いた治療とアズトレオナムリシナートを用いた治療期間との間をあけると、そのような耐性は生じないか、あるいは減少する。
C. 嚢胞性線維症の治療における現在のエアロゾル化された抗生物質の限界
現在のところ、アミノグリコシド系のトブラマイシンは、エアロゾルとしての投与をFDAが認可する唯一の抗生物質である。しかしながら、エアロゾル化トブラマイシンを投与された嚢胞性線維症患者が得た利益にもかかわらず、その用途はいくらか制限されている。
第一に、肺機能増悪を制御するためにアミノグリコシドを頻繁に使用すると、耐性をもつ緑膿菌株が選択的に生育してしまう。このような生物が広く出現することは、CF集団においては、増大する危機とみなされる。例えば、第3相トブラマイシン臨床試験のために、69の異なるCFセンターから選別された患者の21%は、トブラマイシンに対して耐性を示す分離株(MIC > 16μg/ml)を有した。したがって、多くの臨床医は、さらなる耐性化を促し、静脈注射療法の効果を減弱させてしまうのを恐れて、慢性的抑制的治療としてこのエアロゾル化アミノグリコシドを処方するのを嫌う。このような、治療によって生じる耐性の危険性を減らすために、トブラマイシンによる治療は、28日投薬し28日休薬するサイクルに制限されている。
第二の制限は、エアロゾル化トブラマイシンは、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、およびバーコルデリア・セパシア(後者は嚢胞性繊維症患者にとって重大な脅威として広く認識されている)のような、いくつかの本質的にトブラマイシン耐性である細菌に対して活性を欠くということである。Am. J.Respir. Crit. Care Med., 60:1572-157 (1999)に記載されているように、バーコルデリア・セパシアに感染した嚢胞性線維症患者では死亡率が増加し、多くの患者は急速に致死的な経過をたどる。加えて、バーコルデリア・セパシアは、嚢胞性線維症患者の間での伝染性流行を招きうる伝染性感染症である。従って、バーコルデリア・セパシアに感染した患者は、他の患者から隔離されなければならない。
エアロゾル化アズトレオナムリシナートは、アミノグリコシドに対する耐性を誘導せず、嚢胞性線維症患者において見られる耐性病原体に対して優れた活性を示す。
エアロゾル化アズトレオナムリシナートは、トブラマイシンに取って代わることが可能であるか、あるいは28日間のトブラマイシン休薬期間においてトブラマイシンの代替治療および断続的な治療として使用されることが可能であり、これは、トブラマイシンに対する永続的な耐性の出現を予防するために必要である。
アズトレオナムリシナートは、多剤耐性緑膿菌を含む多くの好気性グラム陰性細菌に対する優れた活性を有する抗生物質である。アズトレオナムリシナート活性のスペクトラムはアミノグリコシド系抗生物質であるトブラマイシンおよびゲンタマイシンのスペクトラムに類似しており、その抗緑膿菌活性はセフタジジムに匹敵し、いくつかの観点ではトブラマイシンよりも優れている。例えば、アズトレオナムリシナートはCF患者喀痰によって阻害されないため、CF患者喀痰にかなり阻害されてしまうトブラマイシンよりもはるかに強力な薬剤となる。
アズトレオナムリシナートは、入院患者において頻繁に生じる、治療により出現するβ‐ラクタム系抗生物質に対する高い耐性の源となる、大部分の細菌のβ−ラクタマーゼによる破壊に耐える。
グラム陰性菌、特に緑膿菌に対するアズトレオナムリシナートの活性と、その優れた安全性プロファイルとは協同して、嚢胞性線維症患者の間で生じる慢性肺感染症の治療に用いられるアミノグリコシドの良い代替物となる。今までは、CF患者に対するアズトレオナムリシナートの臨床における使用は、肺機能増悪に対する治療のための単独療法として、または他の抗生物質と併用して、アズトレオナムを静脈内投与することからなっていた。
D. エアロゾル化された抗生物質としてのアズトレオナムリシナートの利点
アズトレオナムリシナートは、CF患者に対するエアロゾル投与をとても魅力的なものとするいくつかの特徴を備えている。
これらの特徴うち第1の特徴は、その作用機序に由来しており、アミノグリコシド系抗生物質とは異なり、ペニシリン結合タンパク質3(PBP3)に対して選択的に結合し、その後に細菌の細胞壁合成を妨害する。アズトレオナムリシナートの作用機序はトブラマイシンの作用機序とは異なるため、アズトレオナムリシナートの使用は、アミノグリコシド耐性緑膿菌株出現の原因とはならない。
アズトレオナムリシナートのエアロゾル化製剤の第2の利点は、トブラマイシン耐性、および多剤耐性の緑膿菌に対する活性である。第2相トブラマイシン試験に登録された患者からの分離株を調べると、トブラマイシンのMICが16μg/mlより大きい分離株のほぼ75%は、アズトレオナムリシナートに対して感受性であった。
第3の特徴は、エアロゾル化アズトレオナムリシナートは、非経口的投与の場合のアズトレオナムリシナート濃度に対して耐性であると考えられている、本質的にトブラマイシンに耐性の生物(特にバーコルデリア・セパシア)を制御できるということである。
VII. アズトレオナムの抗菌活性
多剤耐性の緑膿菌株、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリアおよびアルカリゲネス・キシロースオキシダンスに対する、エアロゾル化アズトレオナムの抗菌活性を試験するために、吸入可能なアズトレオナムにおいて得られる濃度に対応する濃度の、アズトレオナムのin vitroでの活性が、嚢胞性繊維症患者の臨床分離株に対して試験された。
本発明によるアズトレオナム・エアロゾルの送達は、喀痰中のアズトレオナムが、500〜最高8,000μg/ml、平均濃度約2,000μg/mlに達するようなアズトレオナム濃度を実現する。これらの濃度は、製剤、およびエアロゾル投与のために使用するネブライザーの両方に依存する。特定のネブライザーを用いると、アズトレオナムの濃度は、5,000μg/mlの平均濃度に達しうる。
in vitroで決定された試験された細菌の感受性は、吸入されたアズトレオナム・エアロゾルまたは乾燥粉末の臨床的有効性を予測する。
アズトレオナムは、抗生物質の局所的な濃度が細菌の最小発育阻止濃度を上回る限りは、細胞壁を溶解することで細菌を殺す(Med. Clinics N. Am., 79: 4,733-743, (1995) )。
バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリアおよびアルカリゲネス・キシロースオキシダンスの臨床分離株に対する、アズトレオナム高濃度のin vitroでの活性が、シアトル(ワシントン)のチルドレンズ・ ホスピタル&リージョナル・メディカル・センター (Children's Hospital and Regional Medical Center)で試験された。試験は、2〜2048μg/mlまでのアズトレオナムの2倍液体微量希釈トレイ上で行われた。グラム陽性生物である黄色ブドウ球菌が、ネガティブコントロールして使われた。
試験のために用いる詳細な手順は、実施例1に記載されている。結果を表9に示す。
Figure 2007527398
試験において、各々のマイクロウェルプレートは、2倍希釈の、2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256, 512, 1024および2048μg/mlの濃度のアズトレオナムを含んでいた。マイクロウェルを含む各々のプレートは、1つの生物由来の1つの分離株を試験するために用いられた。
表は、アズトレオナムに対する感受性、すなわち抗生物質による成長の抑制能を試験された、様々な種の細菌を示しており、括弧の中の数は各々の種の分離株の数を示す。"MIC 範囲"と表記された列は、試験された分離株で見られた感受性の下限値と上限値の範囲を示す。MIC50と表記された列は、最も感受性が高い50%の分離株における、感受性のレベルの中央値を示す。MIC90と表記された最後の列は、最も感受性が高い90%の分離株における、感受性のレベルの中央値を示す。
表9は、嚢胞性線維症患者から得られる臨床分離株に対して、アズトレオナムのin vitroでの比較活性の結果を示す。
このデータを解釈するために、細菌の成長を阻止するために必要とされるアズトレオナム濃度を表す値を、他のルートからの投与によって得られるアズトレオナム濃度と比較する。このように、アズトレオナムの静脈内投与において、静脈内投与量の許容上限値である2gのアズトレオナムを投与後の血清濃度は、血清濃度のピークが256μg/mlであり、その後急速に減少する。投与後6時間では、血清中のアズトレオナム濃度は、16μg/mlの範囲である。安全上の理由で、静脈内用のアズトレオナム・アルギニンは、6時間ごとにのみ投与されうる。16μg/mlというMIC50を有する緑膿菌は考えられる例外であるが、他の全ての生物は、静脈内投与のアズトレオナムに大部分は耐性を示す。なぜなら、それらの生物の耐性の濃度は、静脈内投与後のアズトレオナムの喀痰の血清濃度のピーク値(256μg/ml)さえも超えてしまうためである。しかしながら、細菌の耐性は薬剤濃度と相関を示すので、エアロゾル投与においては、ピークの濃度は少なくとも500〜2000μg/mlの範囲でなくてはならない。このような範囲は、アズトレオナムの投薬量および本発明の製剤を、本発明による有効なネブライザーと組み合わせることで達成される。喀痰中の500〜2000μg/mlの濃度では、本発明に従ったエアロゾル療法は、黄色ブドウ球菌(Staphyloccocus aureus)を除き、グラム陰性細菌によって生じる大部分の気管支内感染症、特に、表9にあげた細菌によって生じる気管支内感染症を治療することが可能である。
エアロゾル投与の後に得られる嚢胞性線維症患者の喀痰中のアズトレオナムが高濃度になることにより、吸入可能なアズトレオナムによる緑膿菌の治療によって、ほとんどの緑膿菌分離株を根絶するということが、MIC50およびMIC90によって示された。バーコルデリア・セパシア分離株において得られたデータは、少なくとも半分の患者は、細菌の根絶を伴うこのような治療に反応することが期待されうることを示唆した。十分に高い濃度のアズトレオナムが肺に到達すると、このパーセンテージはより高くなることが期待される。現在、バーコルデリア・セパシア感染症は、ほとんど治療不可能な状態と見なされているので、吸入可能なアズトレオナムを用いた、エアロゾルによる治療は初めて文書化された有効な治療法である。
文献においては、バーコルデリア・セパシアがアズトレオナムを用いた治療に感受性を示すという表示がないため、これらの研究において得られた結果は驚異的で予想外である。データは、ステノトロフォモナス・マルトフィリアおよびアルカリゲネス・キシロースオキシダンスの分離株の中には、高濃度のアズトレオナムに反応するものもあることを示している。
本発明によるアズトレオナムの吸入法は、アズトレオナム濃度が喀痰中で2000〜5,000μ/mlにまで達することを可能にする。エアロゾル投与によって達成される喀痰中のアズトレオナム濃度は、CF患者において、他の方法では治療不可能な感染症の原因となる生物を抑制するために必要な濃度を上回る。
さらにまた、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリアおよびアルカリゲネス・キシロースオキシダンスのいずれか、およびそれらの任意の組み合わせの全ての患者に対して、吸入法によって送達されたアズトレオナムは、非経口的投与または吸入法によって全身投与された他の抗生物質と共に、そのような治療の相乗効果に寄与する。吸入可能なアズトレオナムと他の抗生物質との組み合わせは、多剤耐性の細菌株を治療するための、他の治療法を提供する。
本願明細書において記載されている研究は、エアロゾル投与後に達成されるアズトレオナムの濃度は、CF患者の喀痰から分離されたバーコルデリア・セパシア、および、他の抗生物質による治療に大部分耐性を示す他の細菌に対して、活性を有することを証明した。
グラム陽性細菌である、黄色ブドウ球菌で観察されるMIC50およびMIC90は、高濃度のアズトレオナムは、このグラム陽性細菌に対していくらか活性を有したことを示している。しかしながら、黄色ブドウ球菌に対してかなりの効果を示す他の薬剤は多く存在するため、これらの発見は大きな意義を有さない。
VIII. 安全性および臨床試験
特別な注意を要する感染症は、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス、のみならず多剤耐性緑膿菌によって生じ、それらを含む感染症である。最も臨床上重要な感染症は前者である。
エアロゾル投与のために適切に調製されたアズトレオナムリシナートが、これらの珍しいが非常に耐性の強い細菌株を治療するために有効になりうるかを決定するために、いかなる治療にも反応しない重症バーコルデリア・セパシア感染症の嚢胞性線維症患者において、エアロゾル化アズトレオナムリシナートを用いた治療が始められ、試験された。エアロゾル化アズトレオナムリシナートによって得られた臨床治療および結果は、実施例2に記載されている。
アズトレオナムリシナート製剤の安全性は、ヒトおよびビーグル犬の両方においても研究された。これらの研究の条件は、見本11および12に記載されている。
両方の研究の結果は、吸入用のアズトレオナムリシナート製剤の安全性を裏付ける。アルギニンを含む製剤と比較すると、この新規の製剤は、ヒトにおいて安全であり(実施例10)、28日間のイヌの研究で示されているように、ヒトの用量の最高200倍まで、イヌにおいて安全である(実施例11)。増加した安全性は、アズトレオナムリシナートの有用性を両方の例において確立する。
両方の研究から得られた安全性についての結果は、試験の間に重大な有害事象は記録されなかったことと、有害事象のために試験から脱落した被験者はいなかったことを示している。全体では、服用後の有害事象は、7人の被験者で7例報告された。複数の被験者によって経験されるような有害事象は1つもなかった。1つの薬剤関連有害事象が、95mgおよび190mgの吸入アズトレオナム服用群の各々で起こり(それぞれ、頭痛およびめまい)、2つの薬剤関連有害事象が、285mgの吸入アズトレオナム服用群で起こった(味覚障害、すなわち、不快な味覚、および咳)。1つの有害事象はグレード2の重症度であり(頭痛)、残りの有害事象はグレード1の重症度であった。全ての有害事象は、試験が終了する前におさまった。咳の有害事象は試験投薬の中断につながったが、被験者は試験を継続し、全ての試験評価を完了した。
服用後の肺機能のいかなるパラメーターにおいても、ベースラインからの顕著な平均値の変化はなかった。プラセボを服用した1人の被験者は、FEV1がベースラインから15%以上減少した(+30分)。これは有害事象として記録されたが、試験投薬と関連があるとは見なされなかった。
評価された血液学的または凝固系のいかなるパラメーターにおいても、ベースラインからの顕著な平均値の変化はなかった。
プラセボまたは吸入アズトレオナムを90mg、190mg、または285mg服用した被験者において、収縮期および拡張期血圧、脈拍数、口腔体温、呼吸数、またはパルスオキシメトリーにおいて、ベースラインからの顕著な平均値の変化はなかった。任意のこれらのパラメーターにおける個々の被検者の値は、有害事象として報告されなかった。
評価された心電図上のいかなるパラメーターにおいても、ベースラインからの顕著な平均値の変化はなく、心電図上の個々の被検者の値は、有害事象として報告されなかった。服用後のいかなる身体診察においてもベースラインからの変化は指摘されなかった。
結論として、本試験で、95mg、190mgおよび285mgの服用量を投与されたとき、吸入アズトレオナムは、概して安全で、良好な耐容性を示した。
アズトレオナムで治療をうけた被験者において、FEV1における臨床的に有意な変化(ベースラインからの15%以上の減少として定義された)はなかった。プラセボで治療をうけた1人の被験者では、FEV1がベースラインから15.58%減少した。これは、治療に関連があるとは見なされない有害事象として報告された。治療に関連すると見なされるような、(平均値または個々の値のいずれかの)他のいかなる安全性測定値においても、臨床的に有意な変化はなかった。
第2の研究の目的は、吸入ルートによって28日間反復投与した後の、ビーグル犬におけるエアロゾル化アズトレオナムリシナート製剤の耐性および毒性を評価することと、14日の回復期の後の、任意の効果の可逆性を評価することであった。吸入暴露は、超音波ネブライザーから受動的に呼吸しているイヌにおいて、閉鎖式フェイスマスク・システムを用いて行われた。
研究が遂行された条件は実施例11に記載されている。
この研究の全体の結果は、霧状化されたアズトレオナムリシナートの吸入は安全であり、体重、食品消費、検眼鏡所見、ECG測定値、実験室での検査、または器官重量に対する有害事象徴候や治療関連効果は観察されなかったことを示している。
アズトレオナムを用いた治療に起因するとみなせるような剖検所見または組織学的所見はなかった。予想されたヒトの服用量は75mgで、平均体重は75kgであるため、安全域はヒトの用量の200倍も高い可能性がある。
有用性
本願明細書において開示される治療法および吸入可能なアズトレオナムリシナート組成物は、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロースオキシダンスおよび多剤耐性緑膿菌によって生じる気道感染症の治療、およびグラム陰性細菌によって生じる他の肺感染症の治療に適している。
実施例1
嚢胞性線維症患者からの分離株のin vitroでの試験
本実施例は、嚢胞性線維症患者から得られた細菌分離株のin vitroでの研究のために用いた手順を記載する。
−70℃で保存されていた、CF患者からの気道での細菌分離株(144個)を、5%血液寒天培地上で、37度で、連続して二晩継代することによって培養した(Remel, Lenexa, KS)。
最小発育阻止濃度(MIC's)は、以下のステップにより決定した:
抗菌剤の好気性細菌に対するMIC試験
1. MICトレイを室温とした。
2. 18〜24時間培養した生物を3.0mlの生理食塩水へ接種し、McFarland Standard (1.5 x108CFU/ml) の0.5倍に等しい混濁度へと試験した。これは、OD600の80〜88%の透過率に相当する。
3. 準備して15分以内に、調整された接種菌の懸濁液の100mlを、無菌水の希釈液2.9mlへと移すことによって希釈した。
4. 懸濁液を穏やかに転倒混和し、初めに100μlが含まれている各々のMICウェルへ10mlを分注した。各々のウェルの最終濃度は、5×105 CFU/mlまたは5×104 CFU/ウェルに等しかった。
5. トレイを16〜20時間、37℃で好気的に培養した。全ての培養物において同じ培養温度を維持した。微量希釈トレイは、4個より多くは積み重ねなかった。
6. 成長が容易には観察できないか、肉眼でうっすらと見える程度のときに、最初のウェルとして抗菌のエンドポイントを測定し記録した。
7. 微量希釈トレイを、2〜2048mg/mlのアズトレオナムリシナートの2倍濃度系列で満たした。各々のマイクロウェルプレートは、以下の量のように、アズトレオナムリシナートの2倍希釈系列とした:2、4、8、16、32、64、128、256、512、1024および2048μg/ml。マイクロウェルを含有する各々のプレートは、1つの生物の1つの分離株を試験するために用いた。
8. 結果を測定し記録した。
実施例2
バーコルデリア・セパシアの患者の臨床治療
本実施例は、耐性バーコルデリア・セパシアに苦しむ嚢胞性線維症患者に対するエアロゾル化アズトレオナムによる治療の有効性に関する初めての発見について記載する。
患者は、嚢胞性線維症および末期肺疾患を有する20歳の女性であった。彼女は、全ての既知の静脈内、経口および吸入用抗生物質に対して耐性となってしまった、バーコルデリア・セパシアによる肺感染症と診断されていた。彼女は、2つの文書化された遺伝的に異なるバーコルデリア・セパシア株を有した。このため、この患者は肺移植の候補者となることを拒否された。
この患者は、200mg/mlのアズトレオナムからなる本発明の製剤を与えられ、3〜5mlの希釈剤としてこの製剤を用い、空気圧縮機を動力源とし呼吸により増強される噴流(ジェット)ネブライザー中でこの製剤を使用し、1日に2回治療をうけるよう指示された。このタイプのネブライザーは、ネブライザー中に入れられた量の約10〜20%しか肺へ送達しないが、しかし、それは家庭での治療のために患者が利用できる唯一のネブライザーであった。
1日につき2回の治療を連続的に3ヶ月続けた後、肺感染症の治療は成功し、バーコルデリア・セパシアの証拠は検出されなかった。患者は、感染症が治癒したとみなされて、結局、肺移植の手術に成功した。
移植後の強力な免疫抑制療法にもかかわらず、術後のバーコルデリア・セパシアの再燃や再発はなかった。
Clinics Chest Med., 19: 473-86, (Sept.1998) に記載されているように、さらに効率の悪いネブライザーによって送達された、より古い世代の商業的に利用可能なアズトレオナム・アルギニンを以前に使用しても緑膿菌を根絶できなかったため、これらの発見は驚異的なものであった。そのなかに記載されている試験においては、アズトレオナムに対してなんらかの耐性が出現した時点で、著者はこれらの患者を治療し続けることよりもむしろ、治療を止めた。以前の仕事は、この治療が、バーコルデリア・セパシア、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、X. キシロースオキシダンス(X. xylosoxidans)および多剤耐性緑膿菌を含む他のグラム陰性細菌の治療に効果的である可能性があることは、試験したり推測したりしなかった。
特にこの患者の場合のように、感染がよく定着している時にはバーコルデリア・セパシアの根絶は極めて珍しい出来事であるという点で、上述の患者の治療において得られた結果はさらに驚異的なものである。
実施例3
アズトレオナムリシナートの乾燥粉末の調製
本実施例は、吸入可能な乾燥粉末を含むアズトレオナムリシナートを調製するために使用する方法および手順を提供する。
本発明の乾燥粉末調製において、精製されたアズトレオナムリシナートは、媒体製粉、ジェット製粉、噴霧乾燥または分子析出技術によって1〜5μの範囲の質量媒体平均直径を有する粒子へと製粉される。
粒子サイズの決定は、多段階アンダーソン・カスケードインパクタ(multi−stage Anderson cascade impactor)を用いてなされる。
媒体製粉は、薬剤を、例えばステンレス鋼またはセラミック・ボールを含む製粉器の中に入れ、所望の薬剤の粒子サイズ範囲となるまで物質を回転するかひっくりかえすことによって得られる。
ジェット製粉は、粒子が互いに衝突し、所望のサイズの微粒子が製粉器から回収されるよう、極めて高圧の空気流を使用する。
噴霧乾燥は、薬剤の溶液の細かい霧を支持材の上に吹き付け、粒子を乾燥させることによって得られる。粒子はその後収集される。
分子析出は、共溶媒を噴霧乾燥された粒子へ加えることによって得られる。薬剤の溶解性は、固体の薬剤粒子が形成されるようなポイントへと低下する。粒子は、濾過または遠心分離によって収集される。析出は高い再現性があり、低温条件の下でも実行可能であるため、分解を減少させるという利点を有する。
実施例4
乾燥粉末吸入器
本発明の定量および乾燥粉末の製剤は、定量吸入器または乾燥粉末吸入器において直接用いることが可能である。
定量吸入器は以下の3つの構成要素からなる:推進薬剤の懸濁液、正確に定量された体積の推進剤懸濁液を送達するようデザインされた計量バルブ、および定量された用量を送達する噴霧開口部を含有する経口アダプタから構成される容器。休止位置において、バルブの計量チャンバは、充填溝または開口部を介して、薬剤懸濁液のリザーバに接続している。バルブが下降すると同時にこの充填溝は密封され、計量チャンバは、経口アダプタにある噴霧開口部およびバルブステムにある開口部を介して、大気圧へさらされる。このように急速に圧力が減少することにより、推進剤は一瞬で沸騰し、計量チャンバから急速に膨張する混合物が放出される。それから、液体と蒸気の混合物は、バルブステムおよび経口アダプタの内部容積によって構成される膨張チャンバへと入る。この混合物はさらに膨張し、それ自体の圧力の下で噴霧ノズルから放出される。噴霧開口部から流出する際に、推進剤の蒸気中に埋もれている液体リガメントは、空気力学的な力によってばらばらになる。現段階で、液滴は通常直径20〜30μであって、2相の気液混合物の音の速度(ほぼ30メートル/秒)で移動している。液滴の白雲が噴霧ノズルから移動するにつれて、液滴は周囲から空気を取り込んで減速するが、その一方で、推進剤は蒸発によって消滅し、ついに、空気を取り込んだ液滴は残余直径を有するようになる。
この時点で、この粒子/液滴は、界面活性剤でおおわれた粉末薬剤の核から構成される。懸濁した物質の濃度および大きさに従い、粉末薬剤の核は、個々の薬剤粒子または凝集物のいずれかから構成される。現在では、定量吸入器の技術は、80〜100μgの薬剤の塊を送達するよう最適化されており、1mgの薬剤が送達可能な最大値である。
乾燥粉末送達の代替のルートは、乾燥粉末吸入器によるものである。乾燥粉末吸入器には2つの主要デザインがあり、薬剤のリザーバが装置内に配置されており、患者が吸入用チャンバに装置の1回分用量を"積む"計量装置のデザインと、毎回の個々の用量が別々の容器内で製造される工場定量装置である。両システムは、1〜5μの質量媒体直径の小さい粒子へ薬剤を調製することに依存しており、通常は、より大きな添加剤粒子(通常は直径100μのラクトース分子)との共製剤を含む。薬剤粉末は吸入用チャンバに入れられ(計量装置、または工場で定量された用量の破砕のいずれかによる)、患者の吸気フローが、装置から口腔への粉末の移動を加速する。粉末の経路が非層状のフローであるという特徴は、賦形薬剤が凝集して分解する原因となり、大きな賦形剤粒子の塊は咽喉の後部での嵌入の原因となり、一方で、より小さな粒子は肺の深くで沈殿してしまう。乾燥粉末吸入器の現在の技術は、最大積載質量の上限が約50mgの粉末(そのうち、通常、薬剤は質量の部分的な要素である)というものである。共通して使用される賦形剤はラクトースであるが、現在の場合のアズトレオナムはアミノ酸のリシンと反応し、この種の反応はより良好な粉末形成およびより安定した粉末製剤をもたらす。
乾燥粉末吸入法および定量吸入法のための、有効な用量レベルのアズトレオナムリシナート抗生物質は、少なくとも約25mg、より好ましくは約50〜約100mgのアズトレオナムリシナートを、治療を受ける患者の肺に送るという結果をもたらす。乾燥粉末送達装置の効率に依存して、本発明における使用に適切な乾燥粉末製剤は、約1.0〜約250mg、好ましくは約10〜約100mgの、無晶形または結晶の状態の粉末からなり、気道内のスペースに抗生物質を効率的に送るために必要な質量媒体平均直径である、1〜5μの粒子サイズを有する。
実施例5
アズトレオナムリシナート粉末の調製
本実施例は、アズトレオナムリシナート粉末を調製するために使用された手順を記載する。
氷浴中で冷やされた、100mlのMeOH中の10g(23mmol)のアズトレオナムリシナートの溶液へ、1N水酸化ナトリウム溶液の液滴を23ml(23mmol, 1.0eq)加えた。結果として生じた溶液を30分以上かけて室温へと温め、次に溶媒を減圧下で除去した。ジエチルエーテル(50ml)を加えると、スラリーが凝集した。このステップを4回繰り返し、白色粉末としてアズトレオナムリシナート塩が10.1g(96%)の収量で得られた。
実施例6
アズトレオナムリシナートの製剤および噴霧乾燥
アズトレオナム(15%の水分を含有する29.4gのα−アズトレオナムであり、無水物25.0gに相当)を水(190ml)中に懸濁して急速に攪拌し、砕氷浴で冷却した。L-リシン(17.7gの無水物を40mlの室温の水に溶解した)を乳白色の懸濁液へと6分以上かけて滴定し、pH4.34とした。アズトレオナムリシナート溶液の総量はほぼ270mlであり、帯黄色から薄茶色であった。約1gの木炭を、攪拌している溶液に加え、その後濾過した。アズトレオナムリシナート溶液を、2〜10℃に保った。噴霧乾燥が完了し、22.2g(56%)の収量でアズトレオナムリシナートが得られた。以下に、噴霧乾燥のための最適化されていない方法を例示する:
吸気孔を135℃に設定する。
吸引機は90%(100%の値は35立方メーター/時間)とする。
ポンプは34%(100%の値は1500ml/時間)とする。
アルゴン流はノズルにおいて初期は400l/時間とし、操業の中間で600/時間にまで増加する。
レシーバのフラスコ温度は35〜40℃とする。
実施例7
ネブライザーの試験
本実施例は、各人において用いる用量を決定するための、臨床的条件におけるネブライザーの試験について記述する。
噴霧、超音波または噴流(ジェット)ネブライザーを用いたエアロゾル投与が完了した10分後の喀痰において、500μg/ml〜2,000μg/mlの喀痰中濃度を達成するために必要とされる、エアロゾル製剤中のアズトレオナムリシナートの濃度を決定するために、臨床研究が実施される。
この研究において、嚢胞性線維症患者は、各々のネブライザーから、75mgのアズトレオナムリシナート(1/4 NS中に溶けた75mg/mlの溶液の1ml)の倍数で順次増量した用量を投与される。服用は、少なくとも2日空けるが5日以上は空けない。血清および喀痰におけるピークの濃度を評価する。
実施例8
喀痰阻害活性の試験
本実施例は、喀痰またはブタの胃のムチンに対する、アズトレオナムリシナートおよびトブラマイシンの阻害活性を試験するために用いた条件について記載する。
試薬
別段に記載する場合を除き、 全ての化学製品はSigma Chemical社(ミズーリ州セントルイス)から購入し、全ての溶液は無菌脱イオン水中で調製した。
アズトレオナム(アザクタム(商標登録))は、Elan社(Elan Biopharmaceuticals)から入手した。アズトレオナムリシナートは、ワシントン州シアトルにあるCorus製薬会社(Corus Pharma)で調製された。アズトレオナムおよびアズトレオナムリシナートの作業用原液を無菌脱イオン水中で調製し、直ちに使用した。
培地
PML社からミュラーヒントンIIブロス(cation adjusted Mueller Hinton broth; CAMHB)を購入し、緑膿菌の研究用成長培地、および成長培地の評価として用いた。
喀痰
喀痰は、サンプル収集前の少なくとも48時間、他のいかなる抗菌性薬剤の投与も受けていない、CFの小児および成人から得た。喀痰は、紫外線照射下で、4時間、磁気攪拌器で攪拌することによって殺菌した。無菌性は、1列の培地につき10mLのCAMHBに100μLの喀痰を接種し、一晩培養することによって試験した。結果として生じる培養物について混濁度を調べ、無菌性を確かめるために100mμLをルーリア寒天上で平板培養した。使用時まで、喀痰サンプルは-20℃で冷凍保存した。
生物
新鮮な継代培養された緑膿菌PA27853株を、各々の実験において使用した。冷凍庫中のストックを、ルーリア寒天プレート(シグマL-3522)上で37℃で一晩培養した。単一のコロニーを釣菌し、5mlのCAMHBに接種して、250回転数/分で振盪しながら37℃で16時間培養した。この一晩培養した培養物を、新鮮なCAMHB中、または10%(w/v)のブタの胃のムチン(Sigma M-1778)か1%の無菌されたCF喀痰を補充した新鮮なCAMHB中へと1対1万の比率で希釈し、その後オートクレーブした。
死滅曲線
緑膿菌(初めの密度は106 CFU/ml未満)を一晩培養し、1対1万の比率でブロス中へ希釈した。希釈液をそれぞれ4つのチューブ(1チューブにつき10ml)に分け、抗生物質をPA27853株のMIC(標準的な方法で測定すると、アズトレオナムでは4μg/ml、トブラマイシンでは1.56μg/ml)の0、0.1、1および10倍の最終濃度となるように加えた。各々のチューブを、250回転数/分で37℃で振盪培養した。1時間毎に、サンプルをチューブから取り除き、希釈し、定量化するためにルーリア寒天培地上で平板培養した。プレートを37℃で一晩培養し、コロニーを手で計数した。
実施例9
臨床試験プロトコル
本実施例は、臨床試験のために使用され、およびPARI電子ネブライザーによって嚢胞性線維症患者投与されたアズトレオナムリシナート製剤の、投薬量を増やすことによる薬物動態学を比較するために使用されたプロトコルについて記載する。
この研究の第1の目的は、エアロゾルによって送達される、試験された用量レベルのうち、どれが十分な量のアズトレオナムリシナートを送達でき、CF 患者において噴霧完了10分後に測定したときに、喀痰でのアズトレオナムリシナートの濃度の平均ピーク値が1000μg/mg以上に達しうるかを決定することであった。
第2の目的は、喀痰での平均ピーク濃度が1000μg/mg以上になるために必要とされる、アズトレオナムリシナートの濃度は、安全で、患者にとって耐容性が良好であるかどうかを決定することであった。
研究のデザイン
これは、非盲検、多施設、ランダム化、用量拡大研究であった。
各々の治療群は、異なった用量を服用した。2つの治療群は、同じアズトレオナムリシナート製剤を送達した。
1. 75mg/mlのアズトレオナムリシナート溶液1.0ml
2. 75mg/mlのアズトレオナムリシナート溶液2.0ml
3. 75mg/mlのアズトレオナムリシナート溶液3.0ml
有効性および安全性の評価
この研究において、評価された有効性および安全性のパラメータは以下のようであった:
有効性は、噴霧化が完了して10分後に喀痰中のアズトレオナムリシナートの濃度を測定することによって、各々のネブライザー毎に決定した。喀痰中の平均濃度が1000μg/mgであれば十分であるとみなした。
安全性のパラメータが評価された:
1. 異なる用量のレベルで、エアロゾル化アズトレオナムリシナートを投与する間に発生する、治療関連有害反応の発生率。
2. 薬剤投与時の急性気管支痙攣。
3. アズトレオナムリシナートの体循環系への吸収。
各々の患者は、ランダムな順番で少なくとも1回の投与を受けた。各回のエアロゾル投与には、最低48時間の間隔をあけた。喀痰のサンプルは、アズトレオナムリシナートの濃度を測定するために、ベースライン時、およびエアロゾル薬剤投与後1、2、4および6時間後に収集された。血清のサンプルは、アズトレオナムリシナートの濃度を測定するために、ベースライン時、およびエアロゾル薬剤投与後1、2、4および6時間後に収集された。
気道刺激および急性気管支痙攣を、エアロゾル投与前および投与完了後30分後に、直ちに呼吸機能を測定することによって評価した。30分時の呼吸機能試験において、努力性呼出一秒量(FEV1)が15%を超えて減少すれば、気管支痙攣の証拠とみなされる。
この研究の更なる目的は、噴霧完了10分後に測定した時に、少なくとも85%のCF 患者において、喀痰でのアズトレオナムリシナートの濃度の平均ピーク値が1000μg/mg以上に達するために十分な量のアズトレオナムリシナート硫酸塩を、試験されたPARI電子ネブライザーは、どんな用量の時にエアロゾル化できるのかを決定することと、喀痰での濃度の平均ピーク値が1000μg/mg以上に達するために必要とされるアズトレオナムリシナート濃度は、安全で患者に良好な耐容性を示すかどうかを決定することであった。安全性は、急性気管支痙攣がないこと、および全身への吸収が最低限であることとして定義される。
患者の治療
嚢胞性線維症(CF)を基礎疾患として有する全ての患者は、加入時にこのプロトコルにおいて明記されている組み入れ/除外基準によって確認されており、研究への登録に適格だった。参加しているCFセンターの調査官が、組み入れ基準の全ておよび除外基準のうちの1つを満たす患者を選択した。
参加基準を満たした場合、適格患者は研究の日に研究センターへ入院し、エアロゾル療法を受けた。
身体検査は、最初のエアロゾル治療の前にのみ、医師または研究センター(RC)の看護師によって実施される。
バイタルサイン、身長、体重、酸素測定、現在の呼吸状態の評価および簡単な病歴聴取を行った。喀痰および血清サンプルを、アズトレオナムリシナート濃度のベースライン値を測定するために収集した。
患者は、エアロゾル投与の間、背中を伸ばして座っていて、鼻クリップを使用する。
エアロゾル治療を完了するのに必要とした全時間および吸入数を記録した。
投与期間中に呼吸困難または過剰な咳嗽を原因として患者が必要とした休憩時間の数だけでなく、喘鳴または呼吸困難のいかなる所見も記録された。
エアロゾル療法を完了した後直ちに、被験者は30mlの標準生理食塩水で口をすすぎ、5〜10秒間うがいをして、すすぎ液を吐き出した。これを繰り返して3回すすいだ。
喀痰標本は、口腔をすすいだ10分後、およびエアロゾル薬剤投与完了後2時間の時点で収集された。
血清は、アズトレオナムリシナートの濃度を決定するために、エアロゾル薬剤投与完了後1時間および2時間の時点で収集された。
呼吸機能は、エアロゾル薬剤投与完了後30分の時点で検査した。
本研究における最後のエアロゾル治療に引き続いて、患者は、呼吸機能を測定した後に、簡単な身体検査を受けた。
実施例 10
安全性臨床試験
本実施例は、アズトレオナムリシナートを用いた安全性臨床試験で使用された臨床プロトコルについて記載する。
完成品の名称:吸入用アズトレオナム
活性成分の名称:アズトレオナムリシナート
これは、健常な男性および女性のボランティアにおける、吸入されたアズトレオナムリシナートの安全性および忍容性を評価するための、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であった。
第1の目的は、男性および女性のボランティアにおいて、3つの増量した用量の吸入用アズトレオナムの安全性および認容性を決定することであった。
方法
被験者は、投薬の最高21日前に試験への組み入れについて審査され、滞在1日目に認容性が確認された。被験者は、投薬前日(-1日目)の朝に病院に入院した。95mg、190mgおよび285mgの吸入用アズトレオナムの投与を受ける3つの各々の治療群の中で、被験者は、積極的治療群(6人の被験者)またはプラセボ群(2人の被験者)にランダムに割り当てられた。95mgおよび190mgの群から得られた、盲検の安全性についてのデータが評価された場合にだけ、それぞれ、190mgおよび285mgの用量へと進展した。1日目の朝に、被験者は、自分に割り当てられた試験医薬品を、eFlow(登録商法)IMP ネブライザー(PARI社)を用いた吸入によって、自己投与した。被験者は、服用後24時間は病院内に留まり、経過観察のために服用後3日目に戻った。安全性は、試験全体にわたってモニターされた。
被験者の数
24人の被験者(8人の被験者ずつ3つの群)が採用され、24人が安全性の分析に組み入れられた。
組み入れのための診断および大基準
被験者は、男性または女性の非喫煙者であり、年齢は18〜55歳であり、肥満度指数が18〜28kg.m-2である50〜100kgの体重であり、クームス試験陰性であり、そして、努力性呼出一秒量(FEV1)が予測正常値の少なくとも80%あった。
投与の試験製品、用量および形態
被験者は、プラセボ(1、2または3mlの0.9%無菌生理食塩水;フェニックス製薬会社(Phoenix Pharma)製)を、eFlow(登録商法)IMP ネブライザー(PARI社)を用いて気道へ自己投与した。
安全性
有害事象、検査データ(血液学、臨床化学、クームス試験、凝固および妊孕性のある女性に対する妊娠検査)、尿検査、バイタルサイン、心電図、身体検査(胸部聴診を含む)および肺機能検査。
安全性の結果
重大な有害事象は試験の間記録されず、有害事象のために試験から脱落した被験者はいなかった。
実施例 11
ビーグル犬での安全性研究
本実施例は、ビーグル犬での安全性研究のために使用された条件について記載する。
Figure 2007527398
本研究の試験前および回復相の間、動物は毎日少なくとも1回、なんらかの有害事象がないかをモニターされた。治療期間中は、全ての動物は、暴露前の時点、暴露中は連続的に、そして暴露後1〜2時間の時点において、なんらかの有害事象がないかを試験された。体重は週1回記録されたが、摂食量は研究期間の終わりまで毎日モニターされた。
指定された動物では、試験前に1回、治療の4週目の間、および14日の回復期の終わり頃に、検眼鏡による検査が施行された。心電図は試験前に1回、治療の2日目および28日目に記録し、指定された動物では14日の回復期の終わり頃に記録した。
ルーチンの血液学、臨床化学および尿検査の調査用の血液および尿のサンプルは、全ての動物から試験前に1回と治療の4週目の間に採取し、指定された動物では14日の回復期の終わり頃にも採取した。毒性力学分析用の血液サンプルを、グループ2, 3, 4の全ての動物から、暴露1日目および27日目に、以下の標的時点において収集した:服用前、服用直後(immediately post dose; IPD)および、服用後0.25, 0.5, 1, 2, 4, 6, 8, 24時間。グループ1の動物からは、服用前および服用直後にサンプルを収集した。毒性力学分析用の尿サンプルを、全ての動物から、暴露1日目および27日目に、24時間にわたって収集した。
28/29日の治療期間の完了時または14日の回復期に、全ての動物は、器官重量の記録を伴う詳細な剖検を受けた。組織の総合的なリストについて、顕微鏡的な評価を行った。
全体の推定平均値は、グループ 1, 2, 3および4において、それぞれ、0、53.0、94.3および194.7 mg.kg-1.日-1の用量(肺での推定平均用量は、0, 10.6, 18.9および38.9 mg.kg-1.日-1)であった。粒子サイズ分布の測定値は、アズトレオナムエアロゾルはイヌの呼吸に適することを示唆した。
本願明細書において記載されている治療は、有害反応のいかなる徴候に対しても安全な方法であった。
実施例12
α−アズトレナムリシナート塩の調製
本実施例は、α‐アズトレオナムリシナート塩を調製するために使用される手順について記載する。
α‐アズトレオナム(15%の水分を含有する29.4gであり、無水物25.0gに相当)を水(190ml)中に懸濁して急速に攪拌し、砕氷浴で冷却した。L-リシン(17.7gの無水物を40mlの室温の水に溶解した)を乳白色の懸濁液へと6分以上かけて滴定し、pH4.34とした。アズトレオナムリシナート溶液の総量はほぼ270mlであり、帯黄色であり、粒子状物質は全くなかった。約1gの木炭を、攪拌している溶液に加え、その後濾過した。このα‐アズトレオナムリシナート溶液を2℃で保存した。
実施例13
α−アズトレオナムリシナートの噴霧乾燥
本実施例は、α−アズトレオナムリシナートの噴霧乾燥のために使用された条件について記載する。
α−アズトレオナムリシナートの噴霧乾燥は、α−アズトレオナムリシナート溶液の細かい霧を支持材の上に吹き付け、真空下で乾燥させることによって得られた。乾燥粒子が収集され、22.2g(56%)の収量のα−アズトレオナムリシナートが得られた。
噴霧乾燥のための最適化された方法
吸気孔を135℃に設定する。
吸引機は90%(100%の値は35立方メーター/時間)とする。
ポンプは34%(100%の値は1500ml/時間)とする。
アルゴン流はノズルにおいて初期は400l/時間とし、操業の中間で600/時間にまで増加する。
レシーバのフラスコ温度は35〜40℃とする。
図1は、凍結乾燥されたα−アズトレオナムリシナートを製造するために使用する凍結乾燥法のパラメーターを示す模式図である。 図2は、製造工程Iに従って調製されたα−アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物の不純物分析について、アズトレオナムを含まない酸(活性製薬成分(API)と表現されている)と比較して示したグラフである。 図3は、製造工程Iに従って調製されたβ−アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物の不純物分析について、アズトレオナムを含まない酸(活性製薬成分(API)と表現されている)と比較して示したグラフである。 図4は、製造工程IIに従って調製されたα−アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物の不純物分析について、アズトレオナムを含まない酸(活性製薬成分(API)と表現されている)と比較して示したグラフである。 図5は、製造工程IIに従って調製されたβ−アズトレオナムのバルク溶液および凍結乾燥物の不純物分析について、アズトレオナムを含まない酸(活性製薬成分(API)と表現されている)と比較して示したグラフである。 図6は、製造工程IIに従って調製されたα−アズトレオナムのバルク溶液、凍結乾燥物、および再構成された凍結乾燥物の不純物分析について、アズトレオナムを含まない酸(活性製薬成分(API)と表現されている)と比較して示したグラフである。 図7は、ブタの胃のムチンの非存在下(Figure7A)および存在下(Figure7B)での、緑膿菌に対するアズトレオナムリシナートの活性を示す。アズトレオナムリシナートは、以下のMICの倍数の最終濃度となるように加えられた:0.0(◆), 0.1(□), 1.0(黒四角), 10(◇)。図7A ムチン非添加; 図7B ムチン添加 図8は、嚢胞性線維症(CF)の喀痰の存在下および非存在下での、緑膿菌に対するアズトレオナムリシナートの活性を示す。アズトレオナムリシナートは、以下のMICの倍数の最終濃度となるように加えられた:0.0(◆), 0.1(□), 1.0(黒四角), 10(◇)。図8A 喀痰非添加; 図8B 喀痰添加 図9は、ムチンの非存在下および存在下での、緑膿菌に対するトブラマイシンの活性を示す。トブラマイシンは、以下のMICの倍数の最終濃度となるように加えられた:0.0(◆), 0.1(□), 1.0(黒四角), 10(◇)。図9A ムチン非添加; 図9B ムチン添加

Claims (44)

  1. 以下の工程:
    a) 約1〜約250mgのアズトレオナムリシナートを含む濃縮された吸入可能なアズトレオナムリシナート製剤を調製する工程であって、前記アズトレオナムリシナートは、吸入可能な乾燥粉末の形態のアズトレオナムリシナートであるか、または約0.1〜0.9%の塩酸塩またはその等価物を含む噴霧可能な溶液の約1〜約5ml中に溶けた約1〜約250mgのアズトレオナムリシナートまたはその薬学的に許容される塩である、上記工程;および
    b) 約1〜約5μの間の質量媒体平均直径を有するエアロゾルの噴霧投与によって、前記アズトレオナムリシナート乾燥粉末または噴霧可能な溶液を、それらを必要とする患者の気道の肺気管支内スペースに送達する工程、
    から構成される、グラム陰性菌によって生じる肺感染症の治療方法。
  2. 乾燥粉末または溶液が1日に2回以上送達される場合、アズトレオナムリシナートの全量が1日につき750mg以下であるという条件の下で、前記製剤が一日に1〜12回送達される請求項1記載の方法。
  3. グラム陰性菌は、バーコルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、アルカリゲネス・キシロースオキシダンス(Alcaligenes xylosoxidans)、および多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)である請求項2記載の方法.
  4. アズトレオナムリシナートは乾燥吸入可能粉末として投与されるα−アズトレオナムリシナートであって、該乾燥粉末が主として約1〜約5μの大きさを有し、該乾燥粉末は乾燥粉末吸入器、または定量吸入器、または噴霧可能な溶液として送達される請求項3記載の方法。
  5. 1日2回、約10〜約200mgのα−アズトレオナムリシナートの吸入可能乾燥粉末を投与することからなる請求項4記載の方法。
  6. 1日2回または3回、約50〜約100mgのα−アズトレオナムリシナートの吸入可能乾燥粉末を投与することからなる請求項5記載の方法。
  7. 前記噴霧可能な溶液は、約0.09〜約0.9%の塩化物を含む約0.1〜約0.9%の生理食塩水の約1〜約5ml中に溶けている、約5〜約250mgのアズトレオナムリシナートである請求項6記載の方法。
  8. 前記噴霧可能な溶液は、約75mg/mlのα−アズトレオナムリシナートからなり、pHは約4.2〜7.5であり、約0.1〜約0.45%の塩化物を含む生理食塩水である、請求項7記載の方法。
  9. 前記噴霧可能な溶液が約5.5〜7のpHを有する請求項8記載の方法。
  10. 前記噴霧可能な溶液が、噴流(jet)、電子、超音波または噴霧ネブライザーによって送られる、請求項9記載の方法。
  11. 単位容量当たり約1〜250mgのアズトレオナムリシナートを含む吸入可能な薬学的に許容される組成物であって、前記組成物はグラム陰性菌によって生じる肺細菌感染症の治療に適しており、前記アズトレオナムリシナートは吸入可能な乾燥粉末として調製された当モル量のアズトレオナムおよびリシンからなる前記組成物。
  12. アズトレオナムリシナートの乾燥粉末が、製粉、噴霧乾燥または分子析出によって、約1〜約5μの質量媒体平均直径を有する粉末へと調製される、請求項11記載の組成物。
  13. アズトレオナムリシナートは、約0.09〜約0.9%の塩化物、または同等の臭素あるいはヨウ素を含む生理溶液の約1〜約5ml中に溶けているα−アズトレオナムリシナートであって、噴霧可能な溶液は約4.2〜7.5のpHを有する、請求項12記載の組成物。
  14. α−アズトレオナムリシナートは、約0.1〜約0.45%の塩化ナトリウムに希釈された生理食塩水中に溶けており、前記噴霧可能な溶液は約5.5〜7のpHを有する、請求項12記載の組成物。
  15. α−アズトレオナムリシナート乾燥粉末を再構成するための別々に製剤された希釈液からなり、α−アズトレオナムリシナートの用量が75mg/mLの希釈液である、請求項14記載の組成物。
  16. 以下の工程:
    a) 水中に、等モル量のαまたはβアズトレオナム、および等モル量のリシンを別々に溶かす工程、
    b) アズトレオナムが溶解するまで、前記リシンを用いて前記アズトレオナムを滴定する工程、および、
    c) 木炭または濾過を用いて、前記アズトレオナムリシナート溶液を精製する工程、
    から構成される、αまたはβアズトレオナムリシナートの製造方法。
  17. 前記の精製されたアズトレオナムリシナートをフリーズドライまたは凍結乾燥する、請求項16記載の製造方法。
  18. 乾燥粉末として調製されたアズトレオナムリシナートが2.0%より低い不純物を含み、少なくとも2年間安定である請求項17記載の製造方法。
  19. アズトレオナムリシナートが、約75mgのアズトレオナムに対して約47mgのリシンを含み、そして、前記アズトレオナムリシナートがエチルエステルの混入物質やエチルアルコールの残留物を実質的に含まず、そしてチェイン・オープニング・サイド反応(chain opening side reaction)によって作られる異物の量は減少している、請求項18記載の製造方法。
  20. 前記アズトレオナムリシナートが、注射用の水1ml中に、約50mg〜約300mgの無水α−アズトレオナムリシナートと約34mg〜420mgのリシン一水和物を含む、請求項18記載の製造方法。
  21. 以下の工程:
    a) α−アズトレオナムとリシンの両者を同モル量で、α−アズトレオナム溶液とリシン溶液とを別々に調製する工程:および、
    b) 前記α−アズトレオナムを前記リシンと反応させて、α−アズトレオナムリシナートとする工程、
    から構成される、 バルク溶液と凍結乾燥されたα−アズトレオナムリシナートの製造方法。
  22. 前記リシン溶液をα−アズトレオナム溶液中へと滴定し、α−アズトレオナムリシナート混合液を生成する、請求項21記載の製造方法。
  23. 木炭または濾過を用いて、前記α−アズトレオナムリシナートを精製する、請求項22記載の製造方法。
  24. 前記α−アズトレオナムリシナート混合液がpH4.0〜6.0である、請求項23記載の製造方法。
  25. 前記α−アズトレオナムリシナート混合液が減圧乾燥またはフリーズドライされる、請求項24記載の製造方法。
  26. 前記α−アズトレオナムリシナート混合液が凍結乾燥される(lyophilized)、請求項24記載の製造方法。
  27. 前記アズトレオナムリシナート混合液が、注射用の水1ml中に、約75mgの無水α−アズトレオナムと約52.5mgのリシン一水和物を含む、請求項26記載の製造方法。
  28. 前記アズトレオナムリシナート混合液が、注射用の水1ml中に、約50〜約300mgの無水α−アズトレオナムと約35〜約420mgのリシン一水和物を含む、請求項26記載の製造方法。
  29. 乾燥粉末のα−アズトレオナムリシナートが2.0%より低い不純物濃度を有し、少なくとも2年間、前記の不純物濃度2.0%を保つ安定性を有する、請求項28記載の製造方法。
  30. α−アズトレオナムリシナートがエチルエステルの混入物質やエチルアルコールの残留物を実質的に含まず、そしてチェイン・オープニング・サイド反応(chain opening side reaction)によって作られる異物の量が2.0%以下に減少している、請求項28記載の製造方法。
  31. 不純物が約0.1%のレベルに低下した、請求項30記載の製造方法。
  32. 前記α−アズトレオナムが、前記リシンと凍結乾燥器中で結合して反応する、請求項21記載の製造方法。
  33. 前記α−アズトレオナムと前記リシンが、バルク固体のα−アズトレオナムリシナートへと噴霧乾燥される、請求項21記載の製造方法。
  34. グラム陰性菌によって生じる肺感染症の治療のための、精製されたα−アズトレオナムリシナート。
  35. 1mlの溶媒につき約75mgのα−アズトレオナムを含む溶液中の、請求項34記載のα−アズトレオナムリシナート。
  36. 前記α−アズトレオナム溶液が凍結乾燥されている、請求項35記載のα−アズトレオナムリシナート。
  37. 約0.1〜約0.9%の塩化物またはその等価物を含む、約1〜約5mlの噴霧可能な溶液中に溶解している、請求項36記載のα−アズトレオナムリシナート。
  38. 約1〜約5μの質量媒体平均直径を有するエアロゾルの形態である、請求項37記載のα−アズトレオナムリシナート。
  39. 吸入可能な乾燥粉末として投与され、前記乾燥粉末が主に約1〜約5μの粒子サイズを有し、そして、該乾燥粉末は乾燥粉末吸入器または定量吸入器によって送達される、請求項34記載のα−アズトレオナムリシナート。
  40. 前記溶液が、約75mg/mlの溶媒からなり、pHは約4.0〜6.5であり、生理食塩水の内容は約0.1〜約0.45%の塩化物である、請求項39記載のα−アズトレオナムリシナート。
  41. 前記溶液が、約5.5〜6のpHを有し、約400〜約550 mOsm/kgの浸透圧を有する、請求項39記載のα−アズトレオナムリシナート。
  42. 1mlの用量につき約75mgのα−アズトレオナムリシナートを含む、吸入可能な薬学的に許容される組成物であって、グラム陰性菌によって生じる肺細菌感染症の吸入可能な治療に適している前記組成物。
  43. α−アズトレオナムリシナートが、約1〜約5μの質量媒体平均直径を有する粉末へと噴霧乾燥された、請求項42記載の組成物。
  44. α−アズトレオナムリシナートが約1〜5mlの生理食塩水の噴霧可能な溶液中に溶解しており、そして、前記噴霧可能な溶液は約4.2〜約7のpHを有する、請求項43記載の組成物。
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