JP2007520622A - ポリマーゲルを制御および形成するための系および方法 - Google Patents

ポリマーゲルを制御および形成するための系および方法 Download PDF

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Abstract

好ましい態様において、本発明は、化学的架橋または照射なしに、望ましい物理的性質を有するビニルポリマーヒドロゲルを制御的に作製する方法を提供する。ゲル化プロセスは、例えばゲル化剤を有して得られるビニルポリマー混合物の温度を制御するか、または不活性ゲル化剤複合物中に入れられた活性成分を用いることにより調節される。好ましい態様によると、ビニルポリマーヒドロゲルの製造方法には、第一溶媒に溶解されたビニルポリマーを含んでなるビニルポリマー溶液を用意し、ビニルポリマーの物理的会合の融点より高い温度にビニルポリマー溶液を加熱して、ビニルポリマー溶液をゲル化剤と混合し(得られる混合物はビニルポリマー溶液より高いフローリー相互作用パラメーターを有している)、ビニルポリマー溶液およびゲル化剤の混合物のゲル化を誘導し、粘弾性溶液を形成するためにゲル化速度を制御し(作業性は既定期間中維持される)、それにより望ましい物理的性質を有するビニルポリマーヒドロゲルを作製するステップを含んでいる。別の好ましい態様において、本発明は、作業性が既定期間中維持される粘弾性溶液の制御的ゲル化により作製される、物理的に架橋されたヒドロゲルを提供する。他の面において、本発明は、ビニルポリマーヒドロゲルを形成する、ディスペンサーおよび一回用容器ハウジング部品を含有した、椎間円板または関節化接合部を修復する際に使用のキットを提供する。

Description

関連出願との相互参照
本出願は、2004年2月4日付で出願された国際特許出願No.PCT/US04/03135および2004年2月4日付で出願されたUS特許出願No.10/771,852の一部継続であり、後者は2003年7月31日付で出願されたUS特許出願No.10/631,491の一部継続であり、これは2002年8月2日付で出願されたUS仮出願No.60/400,899の利益を主張しており、上記出願の全内容を引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
発明の背景
背景技術
下部背痛は米国で6500万人以上罹患し、これらのうち推定1200万人が変形性円板疾患に起因している。背中は、その複雑な構造により、損傷および疾患を特に受けやすい。脊椎は、脊椎円板で離された椎骨の柱から構成される、関節骨および軟骨の複雑な構造である(図1)。これらの脊椎円板は、脊柱に沿い伝えられる負荷を緩和および分散させる、介在クッションとして作用している。
椎間円板の異方性構造は、複雑な脊椎負荷を和らげるために必要とされる適切な機械的性質を効率的に実現している。髄核と呼ばれる内部粘弾性物質が、全円板断面の20〜40%を占めている。その核は通常70〜90重量%の水を含有している。その核は水を核へ誘引する親水性プロテオグリカンから構成されることにより、その核は脊椎にかかる圧縮負荷を支える0.1〜0.3MPaの浸透膨潤圧を生み出している。その核は、線維輪と呼ばれる高度構築外部コラーゲン層で側部に圧迫されている(図1)。髄核はいつも圧縮下にあり、線維輪はいつも張力下にある。それは円板断面の全面積のわずか1/3であるが、その核は円板に加わる全負荷の70%を支えている。椎間円板は加齢で弾性低下し、その核が水分を失うと、ほとんどの中年成人で硬質ゴムの弾性に達してしまう。この水損失は円板の大きさも縮小させて、その性質を損なう。
変形性円板疾患の際、髄核は応力下で歪められ、線維輪から外に髄の一部を突出させて、周囲神経に圧力を加える。この工程がヘルニアと呼ばれる。髄の一部が失われると、円板の損傷は不可逆的になることが多い。円板傷害の大部分は腰椎領域で生じ、疾患の最も多い部分はL4/L5およびL5/S1で生じる。
椎弓切除(ヘルニア円板の一部‐典型的には髄核の外科切除)が局所神経組織にかかる圧力を軽減するために行われる。核の負荷耐性能が物質の損失で減少するとすれば、このアプローチは明らかに短期的解決法である。これにもかかわらず、200,000例を超える椎弓切除が毎年70〜80%の成功率で行われている。
関節固定または融合が、変形性円板疾患を外科的に治療する上でより永久的な方法である。融合は内部固定してまたは内部固定なしで行われる。内部固定は次第に普及したが、この技術は合併症を伴う。骨折、神経損傷および骨粗鬆症が、内部固定融合をうけた患者で観察された。骨が融合する能力は患者毎に異なり、平均の成功確率は75〜80%である。脊椎融合は剛性を生じ、脊椎の動きを減少させる。加えて、融合は脊椎の隣接椎骨に応力もかけ、これが隣接円板の疾患を加速させて、背中の追加手術に至ることがある。
うまく設計された人工円板は消耗した円板の代わりとなり、脊椎の隣接レベルで生じる問題から患者を守れる。いくつかの人工円板補綴具が先行技術で提案されてきた。これら補綴具の多くは、核および線維輪を含めて、円板の完全交換を試みていた。椎間円板が多方向負荷をうける複雑な関節であるとすれば、天然円板の関節化および機械的挙動を模倣した補綴具のデザインは並外れて困難である。例えば、体があおむけであれば、第三腰椎円板にかかる圧縮負荷は300Nであり、直立姿勢で700Nに、次いで20°前かがみになると1200Nに上昇する。加えて、6N‐mのモーメントが多くの場合に5°以内の回転で屈曲および伸展時にかかる。十分な安全性のために、円板全体の好ましい圧縮強度は4MN/mである。
完全円板交換で出会う最も多い体験は、SB Charite III補綴具で得られるものである。この補綴具は1987年からヨーロッパで広く用いられるようになり、3000人を超える患者に移植されてきた。二枚のコバルトクロム終板間に置かれたポリエチレンスペーサーでSB IIIが設計されている。二年間の追跡研究によると、患者で良い臨床的成功を示した。他の研究は、二枚のチタンプレートに取り付けられた、カーボンブラックで強化されたポリオレフィンコアからなる、完全円板補綴具に関するものであった。予備結果は有望なものでなく、芯が二つのインプラントに割れたからである。
上記例は双方とも、人工円板の開発に相当な商業的努力が払われていることを示すのに役立つ。しかしながら、双方の場合とも、これら部品とヒト椎間円板との機械的等価性にやや疑問があり、長期臨床予後はなお不明瞭である。
椎間円板の完全交換の代わりとして、髄核が単独で交換され、線維輪はそのまま残しておく。線維形成がそのままであれば、それはさほど侵襲性でないため、このアプローチは有利であり、その輪はその自然の線維長および線維張力に戻れる。その核と置き換わるには、天然核と性質が似た物質を見つけ出すことが望まれる。先行技術では、空気、生理食塩水またはチキソトロピーゲルで満たされた嚢胞について記載している。漏出を防ぐため、嚢胞を形成する膜物質は不透過性でなければならないが、これは円板腔中への体液の自然拡散を抑制し、必要栄養素への接近を妨げる。
より自然な円板交換物質を得るため、いくつかの研究グループが髄核で可能な交換材としてポリマーヒドロゲルを研究していた。ヒドロゲルは髄核にとり良い類似物であり、それらが典型的には良い粘弾性を有して、良い機械的挙動を示せるからである。加えて、それらは多量の自由水を含有しているため、ヒドロゲルから作製された補綴具を圧縮下で変形させ、天然髄核と同様に、弾性の損失なく周期的負荷に対処しうる。これら物質の水透過性は、円板腔中への体液および栄養素の拡散も可能にする。この孔構造の制御、ひいてはインプラントの全部分への栄養素の接近の制御は、将来の補綴インプラントにとり重要かもしれない。
その他は、超高分子量ポリエチレン線維製のジャケットに包まれたポリアクリロニトリル‐ポリアクリルアミドマルチブロックコポリマーの使用について研究していた。これらの系は水中でそれら重量の80%まで吸収する。ポリビニルアルコール(PVA)とPVAおよびポリビニルピロリドン(PVP)の共重合体は、天然円板と類似した機械的性質の補綴具を生み出した。これらの物質は、他の医療器具で臨床的成功を収めるという、追加の利点を有している。PVAから形成されるゲルは、凍結‐融解工程または外部架橋剤により通常作製される。加えて、ヒドロゲルベース核は、移植後にゆっくり拡散する治療薬を含有しうる。これらの物質に関する臨床データは現在入手できないが、死体関節での生体力学試験では天然円板と類似した機械的性質を示した。
発明の概要
好ましい態様において、本発明はビニルポリマーのゲル化動態を制御する方法を提供する。これらの方法は、好ましい態様において、化学的架橋または照射なしに、望ましい物理的性質を有するビニルポリマーヒドロゲルを制御下で作製する。ゲル化工程は、例えばゲル化剤を含有して得られるビニルポリマー混合物の温度を制御するか、または不活性ゲル化剤複合物に入れられた活性成分を用いることにより調節される。
好ましい態様には、例えば、その場で作製される補綴具の最少侵襲外科移植を用いた髄核増大のための、注入性ヒドロゲルを含む。
好ましい態様において、本発明は一回用容器中に活性ゲル化剤およびビニルポリマーの溶液を入れる。一部の好ましい態様では、活性ゲル化剤およびビニルポリマーの溶液が一回用容器の単一チャンバーに混合物として存在する。他の好ましい態様では、活性ゲル化剤およびビニルポリマーの溶液が一回用容器の個別チャンバー中で未混合である。
典型的には、特定の活性ゲル化剤およびビニルポリマー、活性ゲル化剤およびビニルポリマー溶液の量と、活性ゲル化剤およびビニルポリマーの割合は、既定のゲル化速度、作業時間、化学的性質、物理的性質および獲得ヒドロゲルの体積を生じるように選択される。活性ゲル化剤およびビニルポリマー溶液が一回用容器の個別チャンバー中に未混合で入れられる態様の際、一回用容器内における個別チャンバーの体積および配置は、既定のゲル化速度、作業時間、化学的性質、物理的性質および獲得ヒドロゲルの体積を生じる上で必要とされる活性ゲル化剤およびビニルポリマー溶液の量と活性ゲル化剤およびビニルポリマーの割合を用意できるように選択される。エラストマーポリマー溶液は、典型的には適切な大きさの針またはカニューレで送出される。
典型的には、活性ゲル化剤およびビニルポリマーの溶液が一回用容器の個別チャンバー中に未混合で入れられる態様の際、活性ゲル化剤およびビニルポリマーの溶液は、混合工程で得られた粘弾性ポリマー溶液を送出するステップに際して混合される。物質がバレルから押し出される際、得られる混合物が少くとも適度に混合されて、最終有効活性ゲル化剤濃度を有するよう保証するため、それは適切な(静的または動的な)混合装置に通される。
好ましい態様で、本発明は、加水分解ビニルポリマー溶液を用意し、活性ゲル化剤を用意し、活性ゲル化剤を加水分解ビニルポリマー溶液と混合し、活性ゲル化剤と加水分解ビニルポリマー溶液との混合物を少くとも部分的に囲まれた空間へ送出し、空間内でヒドロゲルを形成するように送出混合物をゲル化させるステップを含んだ、ヒドロゲル成分を形成する方法を提供する。好ましい態様で、活性ゲル化剤を加水分解ビニルポリマー溶液と混合するステップは、粘弾性ポリマー溶液を生じる。
ある好ましい態様では、活性ゲル化剤を加水分解ビニルポリマー溶液と混合するステップは、活性ゲル化剤と加水分解ビニルポリマー溶液との混合物を空間へ送出するステップに際して行われる。他の好ましい態様では、活性ゲル化剤を加水分解ビニルポリマー溶液と混合するステップは、得られた粘弾性ポリマー溶液を空間へ送出するステップの前に行う。
別の好ましい態様で、本発明は、加水分解ビニルポリマー溶液を用意し、活性ゲル化剤を用意し、活性ゲル化剤を加水分解ビニルポリマー溶液と混合し、該混合物からヒドロゲルを形成させ、粘弾性ポリマー溶液を形成させるためにヒドロゲル架橋の融点より高い温度にヒドロゲルを加熱し、粘弾性ポリマー溶液を少くとも部分的に囲まれた空間へ送出し、空間内でヒドロゲルを形成するように送出混合物をゲル化させるステップを含んだ、ヒドロゲル成分を形成する方法を提供する。ある好ましい態様で、ヒドロゲルを加熱するステップは、熱源との直接または熱源との間接接触による伝導で行われる。他の好ましい態様では、ヒドロゲルを加熱するステップは、赤外線またはマイクロ波のヒドロゲルによる吸収により行われる。好ましくは、粘弾性ポリマー溶液は約50℃以下の温度で送出される。更に好ましくは、粘弾性ポリマー溶液は約40℃以下の温度で送出される。最良には、粘弾性ポリマー溶液が脊椎動物の体腔へ送出される場合、粘弾性ポリマー溶液は体腔周辺組織の正常体温の数℃以内の温度で送出される。例えば、粘弾性ポリマー溶液がヒトの体腔へ送出される場合、粘弾性ポリマー溶液は約34〜40℃、好ましくは約37℃の温度で送出される。場合により、送出系および粘弾性ポリマー溶液の温度を制御することは、溶媒質、ひてはゲル化の工程を制御するために用いられる。粘弾性ポリマー溶液は送出前に室温以下に冷却してもよい。
通常、送出された混合物は空間と同化する。空間は天然構造または製作構造、例えば型により囲まれる。空間が型で囲まれると、ヒドロゲル成分が射出成形により作られる。ある態様では、粘弾性ポリマー溶液の注入前に空間の内表面が活性ゲル化剤で被覆され、こうして端部で速やかなゲル化を行わせ、ひいてはゲル化に際してビニルポリマー溶液分の容積(bulk)を保護する“膜”を形成させる。
天然構造で囲まれた空間として、地質学的形成、植物、動物コロニー内の空間および動物体内の空洞がある。動物体腔には、天然空洞、潜在的空間および発育不全、病状または外傷により生じた空洞がある。好ましい態様では、粘弾性溶液が脊椎動物の体に存在する実際のまたは潜在的な空間へ注入される。特に好ましい態様では、粘弾性溶液が椎間円板または関節化接合部、例えば股または膝へ注入される。ある好ましい態様では、粘弾性溶液が椎間円板の髄核内の空間へ注入される。他の好ましい態様では、粘弾性溶液が関節化接合部、例えば股または膝内の空間へ注入される。別の好ましい態様では、粘弾性溶液が実際のまたは潜在的な皮下空間へ注入される。形成されたヒドロゲル成分は組織の嵩高をもたらすか、または構造成分として働く。
ある態様で、空洞空間の内表面は空洞を内張り(lines)する薄い同化膜またはバリヤで被覆され、こうしてそれがゲル化するとビニルポリマー溶液を保護し、ひいてはゲル化に際してビニルポリマー溶液分の容積(bulk)を保護する“膜”を形成する。一部の態様で、内張り(lining)膜はPVA、適切には本発明の方法で形成されるヒドロゲルを含んでなる。ある態様で、膜は水に対して透過性または半透過性である。場合により、PVA膜は過剰のゲル化剤を含有し、そのため膜との接触で送出粘弾性ポリマー溶液のゲル化を行わせ、実質的に連続した物質を形成する。他の態様では、骨ロウ、好ましくはフェノール系溶媒中の骨ロウの薄層であるバリヤで、空洞が内張り(lining)される。一般的には、ゲル化が実質的に完了するまで、空洞の内張り(lining)はポリマー溶液中で諸成分の損失を防ぐ何らかの成分を含有しうるが、最適には内張り(lining)はビニルポリマーを制御的に会合させる成分またはそれらの混合物を含有してもよい。成分は類似したまたは異なる性質(例えば、溶媒活性、拡散、生分解性、粘度)を有するように選択される。適切には、成分は水溶性バイオポリマーまたはポリマー、好ましくはポリエーテル、更に好ましくはポリ(エチレングリコール)である。
ポリ(エチレングリコール)がゲル化剤として用いられる場合、ポリ(エチレングリコール)は約100〜20000g/mol、好ましくは約200〜2000g/molの範囲内で平均分子量を有する。ポリ(エチレングリコール)は典型的には約1〜50wt%、好ましくは約5〜40wt%の範囲内で存在する。一般的には、適切なゲル化剤はPVAにとり不良なまたは劣った溶媒であるが、水で容易に溶媒和され、水と混合されると、優先的に水を吸収して、PVAにとり劣った溶媒となる。
本発明の好ましい態様によるヒドロゲルは、関節腔で、対象の領域、例えば脊椎表面と同化する。本発明の現場ゲル化法で形成された負荷耐性ヒドロゲルは、例えば線維輪に与えるダメージを最少に抑える。好ましい態様によると、ビニルポリマーヒドロゲルの作製方法には、第一溶媒に溶解されたビニルポリマーを含んでなるビニルポリマー溶液を用意し、ビニルポリマーの物理的会合の融点より高い温度にビニルポリマー溶液を加熱して、ビニルポリマー溶液をゲル化剤と混合し(ビニルポリマーと混合された得られる溶媒およびゲル化剤混合物は、溶媒およびビニルポリマー単独より高いフローリー相互作用パラメーターを有している)、ビニルポリマー溶液およびゲル化剤の混合物のゲル化を誘導し、粘弾性溶液を形成するためにゲル化速度を制御し(作業性は既定期間中維持される)、それにより望ましい物理的性質を有するビニルポリマーヒドロゲルを作製するステップを含んでいる。別の好ましい態様で、本発明は、作業性が既定期間中維持された粘弾性溶液の制御的ゲル化により作製される、物理的に架橋されたヒドロゲルを提供する。他の面において、本発明は、ビニルポリマーヒドロゲルを形成する成分およびディスペンサーを含有した、椎間円板または関節化接合部を修復する際に使用するキットを提供する。
ある好ましい態様で、ビニルポリマー溶液を用意するステップは、典型的には、第一溶媒にビニルポリマーを溶解させるステップを含む。ビニルポリマー溶液をゲル化剤と混合するステップは、ビニルポリマーの物理的会合の融点より高い温度にビニルポリマー溶液を加熱するステップの先でもまたは加熱するステップの後でもよい。
望ましい物理的性質として、典型的には、光透過性、重量膨潤比、剪断モジュラス、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的モジュラス、圧縮モジュラス、架橋および孔径のうち少くとも一つを含む。好ましい態様で、望ましい物理的性質は物理的架橋である。
好ましい態様で、ビニルポリマーはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、ビニルポリマーは約50〜約300kg/mol分子量の高度加水分解ポリビニルアルコールである。好ましい態様で、ビニルポリマーは約100kg/mol分子量の高度加水分解ポリビニルアルコールである。典型的には、ビニルポリマー溶液は該溶液の重量ベースでポリビニルアルコールの約1〜約50重量%溶液である。好ましい態様で、ビニルポリマー溶液は該溶液の重量ベースでポリビニルアルコールの約10〜約20重量%溶液である。
ある好ましい態様で、典型的には、得られるゲルの物理的または化学的性質を変えるために、粘弾性溶液をゲル化剤と更に接触させるステップを該方法は含む。この方法は、例えば体腔内の適所、例えば椎間円板内の空間でゲルを維持するために、ゲルの物理的性質に局所変化をもたらす上で適している。
好ましい態様で、第一溶媒は脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C‐Cアルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、ゲル化剤はビニルポリマーより可溶性である。ある好ましい態様では、ビニルポリマーがゲル化剤の水溶液中に導入される。
典型的には、ビニルポリマー溶液およびゲル化剤の混合物のフローリー相互作用パラメーターは0.25〜1.0である。好ましい態様で、混合物のフローリー相互作用パラメーターは少くとも0.5、更に好ましくは約0.25〜約0.5である。
典型的には、ゲル化剤は塩、アルコール、ポリオール、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液およびそれらの混合物からなる群より選択される。好ましい態様で、ゲル化剤はコンドロイチン硫酸、ダルマタン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸およびそれらの混合物からなる群より選択される。他の好ましい態様で、ゲル化剤はビグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカンおよびそれらの混合物からなる群より選択される。別の好ましい態様で、ゲル化剤はアルカリ金属塩、最も好ましくは塩化ナトリウムである。
ゲル化剤は乾燥固体または溶液として加えられる。例えば、固体NaClがビニルポリマーの水溶液へ加えられるか、または約1.5〜約6.0モル、更に好ましくは約2.0〜約6.0モルの塩化ナトリウム水溶液としてビニルポリマーの水溶液へ加えられる。別の好ましい態様で、ゲル化剤はメタノール、エタノール、i‐プロパノール、t‐プロパノール、t‐ブタノールおよびそれらの混合物からなる群より選択されるアルコールの水溶液である。
ゲル化剤は、ビニルポリマー溶液と混合される際、活性型または不活性型で存在する。好ましい態様で、粘弾性溶液のゲル化を誘導するステップには、ゲル化剤を活性化するステップを含む。好ましくは、不活性ゲル化剤は制御可能な誘因事象により活性化される。
ある好ましい態様で、不活性ゲル化剤は高分子であり、活性ゲル化剤は高分子の開裂により放出された高分子の断片を含んでなる。一部の態様で、高分子の開裂は酵素開裂である、好ましい高分子は選択酵素の生理学的基質である。好ましい態様で、高分子はコンドロイチン硫酸、ダルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸およびそれらの混合物からなる群より選択され、酵素はコンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼB、精巣ヒアルロニダーゼ、ヒアルロンリアーゼ、ヘパリナーゼI/IIIおよびそれらの混合物からなる群より選択される。他の好ましい態様で、高分子はビグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベルシカン、ニューロカン、ブレビカンおよびそれらの混合物からなる群より選択され、酵素は例えば限定されずにアグレカナーゼおよびそれらの混合物を含めた群から選択される。
他の態様で、高分子は熱変性し得るものでもよい、このような態様で、好ましい高分子はコラーゲンである。一方、高分子の開裂は電磁線または微粒子線の照射による。
別の好ましい態様で、不活性ゲル化剤は小胞、リポソーム、ミセルまたはゲル粒子中に封鎖された不良溶媒である。一部の好ましい態様で、リポソームは光誘発性ジプラスマローゲンリポソームである。代わりの好ましい態様で、リポソームは哺乳動物の体温付近で相転移を受ける。好ましくは、リポソームはジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジミリストイルホスファチジルコリンの混合物を含むが、それに限定されない。
別の好ましい態様で、不活性ゲル化剤はゲル粒子と会合され、哺乳動物の体温付近で相転移をうけると活性型で存在する。このような態様において、ゲル粒子は適切にはポリ(N‐イソプロピルアクリルアミド‐コアクリル酸)、N‐イソプロピルアクリルアミド、ヒアルロン酸、プルロン酸およびそれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含んでなる。他の好ましい態様で、ゲル粒子は分解を受けるとその内容物を放出する。
典型的には、注入、成形または圧延を含めた、粘弾性溶液の更なる加工に必要な作業性の十分な期間を用意するために、ゲル化の速度が制御される。好ましい態様では、粘弾性溶液が哺乳動物の体で実際のまたは潜在的な空間へ注入される。特に好ましい態様では、粘弾性溶液が椎間円板または関節化接合部、例えば股または膝へ注入される。ヒドロゲルは、注入部位で全体の物理的性質またはその局所物理的性質により体腔内に留められる。好ましい態様で、望ましい局所物理的性質は注入部位近くでゲル化剤の更なる追加により調節できる。他の好ましい態様で、注入部位または体腔の他の欠陥部を密閉、補強または閉鎖する既知医療器具の使用により、ヒドロゲルは体腔内に留められる。適切なこのような器具は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる公開国際特許出願WO01/12107およびWO02/054978で開示されている。
他の好ましい態様では、加工するステップが熱傷または創傷を覆うことを含む。
本発明の好ましい態様は、ゲルを作製してゲルの性質を制御する方法を提供する。本発明の好ましい態様によると、ゲルを作製する方法では、ビニルポリマー溶液を形成するためにビニルポリマーを第一溶媒に溶解しゲル化を行わせるため、ある体積の第二溶媒にビニルポリマー溶液を導入するが、ここで第二溶媒は処理温度で第一溶媒より高いフローリー相互作用パラメーター(Flory interaction parameter)を有している。フローリー相互作用パラメーター(χ)は無次元であり、例えば温度、濃度および圧力に依存する。溶媒は低χ値を有するかまたはそれより高いχ値を有する溶媒として特徴付けられ、ここでχ=0はモノマーと類似した溶媒に相当する。高いχ値を有する溶媒は、ある温度でゲル化処理を行わせる溶媒として特徴付けられる。シータゲルは、本発明によると、ゲル化を行わせるために十分なフローリー相互作用パラメーターを有した第二溶媒を用いることにより形成される。
好ましくは、好ましい態様で用いられる第二溶媒は、0.25〜1.0の範囲内でフローリー相互作用パラメーターを有する。典型的には、第一および第二溶媒の特徴は、室温または哺乳動物の体温で好ましい態様の方法を用いられるように選択される。本発明の方法により作製されるゲルは物理的架橋を有し、化学的架橋剤を実質的に含まない。好ましい態様で、ビニルポリマーはポリビニルアルコールである。
一部の態様では、浸漬溶媒(第二溶媒)で前記ビニルを接触させ、第一溶媒と接触させる複数回のサイクルが行われる。一方、該方法では少くとも一回の凍結‐融解サイクルにゲルを付してもよい。そのためポリビニルアルコール(PVA)ヒドロゲルはシータゲルおよびクリオゲルのいずれでもよい。部分的ゲル化はどちらかの方法で行われ、次いで他方を用いて終了されるか、または二方法間で入れ換えてもよい。
ここでの例および説明はビニルポリマー、特にPVAヒドロゲルに向けられているが、後でフローリー相互作用パラメーターに関して記載されているように、適切な種類の状態図を有するポリマーを用いて、同様にシータゲルが作製される。機械力がゲル化処理に際してゲルに加えられてもよく、それがゲル化する様式を変えて、代わりに配向ゲル化を生じる。
いくつかの態様で、ビニルポリマーは約50〜約300kg/mol分子量の高度加水分解ポリビニルアルコールである。他の態様で、ビニルポリマーは約100kg/mol分子量の高度加水分解ポリビニルアルコールである。ビニルポリマー溶液は該溶液の重量ベースでポリビニルアルコールの約1〜約50重量%溶液である。好ましくは、ビニルポリマー溶液は該溶液の重量ベースでポリビニルアルコールの約10〜約20重量%溶液である。
第一溶媒は、下記のように、ゲル化を行わせるには十分でない低χ値を有する溶媒、即ちポリマー要素とそれに隣する溶媒分子との相互作用のエネルギーが、ポリマー‐ポリマーと溶媒‐溶媒対との相互作用のエネルギーの平均を超える溶媒の群から選択される。いくつかの態様で、第一溶媒は脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C‐Cアルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群より選択されるが、それらに限定されない。
一般的に、浸漬溶液は、ゲル化を行える高いまたは十分なχ値を有する溶媒を含んでなる。一部の好ましい態様で、浸漬溶液はアルカリ金属の塩、典型的には塩化ナトリウムの水溶液である。他の態様で、浸漬溶液はC‐Cアルコールの水溶液、典型的にはメタノール、エタノール、i‐プロパノール、t‐プロパノール、t‐ブタノールおよびそれらの混合物からなる群より選択されるアルコールの水溶液である。ある態様で、浸漬溶液はメタノールの水溶液である。
一般的に、本発明のビニルポリマーゲルは、凍結‐融解ゲル化の実施が困難または不可能な状況下の際、フィルター、微小流体器具または薬物放出構造のような適用により、その場で作製しうる。
ある態様で、ビニルポリマー溶液は少くとも二つの側面と膜を有するチャンバーに入れられる。膜は、小分子および溶媒へ接近しながら、ビニルポリマーを含有する性質を有している。
一部の態様で、ビニルポリマー溶液は少くとも二種の異なる浸漬溶媒、典型的には第一浸漬溶媒および第二浸漬溶媒から膜により隔離されている。一部の態様で、第一浸漬溶媒は塩化ナトリウム約1.5〜約6.0モルの水溶液である。一部の態様で、第二浸漬溶媒は塩化ナトリウム約2.0〜約6.0モルの水溶液である。他の態様で、第一浸漬溶媒は塩化ナトリウムの1.5モル水溶液であり、第二浸漬溶媒は塩化ナトリウム約2.0〜約6.0モルの水溶液である。このような態様では、化学ポテンシャルの勾配が少くとも二種の異なる浸漬溶媒間でビニルポリマー溶液に形成される。ある態様では、化学ポテンシャル勾配が約4mol.cm−1のビニルポリマー溶液で形成される。
一般的に、ビニルポリマー溶液で形成される化学ポテンシャル勾配に相当する性質の勾配が、ビニルポリマーゲルで形成される。典型的には、該性質は光透過性、膨潤比、剪断モジュラス、負荷モジュラス、損失モジュラス、貯蔵モジュラス、動的モジュラス、圧縮モジュラス、架橋および孔径のうち少くとも一つである。
一部の態様で、物理的性質の空間勾配を調節する時間パターンで、一方または双方の浸漬溶媒が変えられる。このような時間サイクルは、非均質ゲルを得るために、拡散時間より短い時間スケールで行われる。こうして、端部または末端領域で類似組合せの性質および中心領域で他の組合せの性質、例えば中心領域と比較して末端領域で大きな架橋性をもつように、ゲルが作製される。浸漬溶媒の時間サイクルは、フィルターの作製に関して、ゲルの構造、例えば孔径を変えるためにも用いられる。このようなフィルターでは、小さな局所的に異なる孔径が、ある形のクロマトグラフィー(サイズ排除)または孔径制御を要するいずれか他の濾過向けに有用である。
ヒアルロン酸、ポリアクリル酸および治療剤のようなイオンまたは非イオン種に限定されないが、それらを含めた追加の化合物も、物理的架橋ゲルに混合できる。
ある態様で、本発明は、ヒドロゲルが約14〜約21%で物理的に架橋された、塩化ナトリウム約2〜約3モル中の浸漬でゲル化された少くとも約10重量%のポリ(ビニルアルコール)溶液を含んでなる物理的架橋ヒドロゲルを提供する。このような態様で、最終ゲルは約12〜約29%のポリ(ビニルアルコール)を含んでなる。
本発明の好ましい態様は、機械的性質の少くとも一つの勾配を有したビニルポリマーゲルを含んでなる製品も提供する。PVAシータゲルは、組織の交換、修復または増強用の生体適合性負荷耐性または非負荷耐性物質として用いられる。一般的に、PVAクリオゲルが用いられる用途では、PVAシータゲルがPVAクリオゲルに置き換われる。
ある態様では、ポリビニルポリマーヒドロゲルを含んでなるワンピース補綴椎間円板が作製され、ワンピース補綴椎間円板の機械的性質の分布は天然椎間円板の髄核および線維輪の組合せの機械的性質の空間分布に近い。
高圧縮PVAシータゲルは、NaCl含有の逆浸透膜にPVAを入れ、次いでNaClの外部濃度を非常に高くしてPVA/NaClを圧縮することにより作製される。水が逆浸透膜を出て高圧でPVAをゲル化させると、NaCl濃度が上昇する。PVAの濃度は逆浸透膜内でNaCl対PVAの比率により変えられる。
好ましい態様では、攪拌下のゲル化で、または浸漬溶液のような架橋溶媒中に流体の小滴を落とすことにより、ゲルミクロ微粒子が得られる。
好ましい態様では、ゲル上にまたは薬物放出中心にパターン(“空間(empty spaces)”)を“刻印する(imprint)”ように分解する(または吸着されない)粒子で、ゲルが埋め込まれる。様々な分子量の中性荷電ポリマーの埋込みは、ゲルの“空間を満たす”ために用いられる。これらのポリマーは処理後に除去可能であり、制御された孔構造を残す。凍結‐融解サイクルに感受性の物質も封入できる。高圧縮で特別な反発を示すように帯電しているが、高塩中で崩壊する粒子またはポリマーで、ゲルが埋め込まれてもよい。このような埋込み粒子は、ある様式(例えば、触媒作用)で活性となるものである。ヒドロキシアパタイト粒子または他の骨誘導粒子、物質および類似の部分が、可能な軟骨交換で骨内成長を促進するために埋め込める。
好ましい態様で、ポリ(ビニルアルコール)ゲルは、成長因子、フィブロネクチン、コラーゲン、ビンクリン、ケモカインおよび軟骨含有治療剤のような生物活性化合物を含有および放出するために用いられる。US特許5,260,066および5,288,503の治療剤の配合に関する開示は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。治療剤または薬物のような含有化合物は、骨、血管および神経のような正常組織または腫瘍の局部成長を調節するために、経時的に放出される。
浸漬溶媒の時間調節によると、薬物および他の生物活性分子を含有および放出するために適した構造および物理的性質で、好ましい態様に従いシータゲルを生じる。ある態様では、高度に架橋された外部膜が形成され、薬物/活性剤を含有した内層は弱く架橋されるだけである。このような態様で、外部膜は速度制限要素であり、一定の放出速度を有している。そのため、好ましい態様による薬物放出は、PVA架橋で空間勾配を制御することにより調整可能な放出特性を含んでいる。
ある態様で、本発明はヒドロゲルの機械的性質および構造を制御可能に調節する方法を提供する。好ましい態様で、本発明は天然構造における機械的性質の現存勾配と、より密接に合うこのような性質の一以上の勾配を有する製品を提供する。ある態様で、本発明は天然構造の機械的挙動を模倣した補綴ヒドロゲル製品を提供する。好ましい態様で、本発明は天然椎間円板でみられる機械的性質の勾配を模倣したポリビニルアルコール補綴椎間円板を提供する。他の好ましい態様で、本発明は天然椎間円板の髄核および線維輪の機械的性質の空間分布を模倣したワンピース補綴椎間円板を提供する。
好ましい態様で、微粒子もゲルへ加えてよい。前記のように、微粒子は制御された孔構造を作るために加えられる。更に、他の好ましい態様によると、微粒子は特殊なナノ構造ゲルを得るために加えられる。粒子は荷電でもまたは非荷電でもよく、PVA結晶を粒子の表面で核形成させる。加えられる粒子には、例えばシリカ、粘土(clay)、ヒドロキシアパタイト、二酸化チタンまたは多面オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)のような無機または有機コロイド種があるが、それらに限定されない。
他の好ましい態様によると、荷電効果を発揮させてゲルの圧縮モジュラスを変える、好ましくは圧縮モジュラスを増加させるために、粒子が加えられる。この態様では、粒子を加えたシータゲルを用いうる。塩溶液でゲルを圧縮すると、荷電を遮蔽しながら粒子を密に詰め込んだ構造が生じる。例えば脱イオン(DI)水で再水和させると、荷電フィールドは広がり、ゲルに張力がかかる。これは、例えば高荷電微粒子負荷下で、ゲルを軟骨の物理的性質に近づける。
他の好ましい態様によると、例えば耐磨耗性のような機械的性質を付与するために、微粒子がゲル構造に加えられる。硬化ガラス(シリカ)または異なる粘土(clays)の添加は、ゲルに耐磨耗性を付与する。
本発明の他の好ましい態様によると、ゲルを作製してゲルの性質を制御するための方法では、ビニルポリマー溶液を形成するために第一溶媒を用い、その後でゲル化を行わせるため、ある体積の第二溶媒を導入し、次いでゲルを制御可能に構築するために脱水を促すことにより、前記のようにシータゲルを形成する。この方法は、ゲルの均一な構築と、PVAシータゲルの物理的架橋の均質化をもたらす。この構造は、PVA溶媒対のシータ点より高いフローリー相互作用パラメーターを有する溶媒中に含有PVA溶液を浸漬し、次いでPVA溶媒対のシータ点より低いフローリー相互作用パラメーターを有する他の溶媒中に含有PVAを浸漬することにより得られる。ゲルにとり望ましい相互作用パラメーターに達するまで、フローリー相互作用パラメーターを連続的に減少させながら、本処理が続けられる。
本発明の好ましい態様による他の方法では、塩濃度の変化がゲルの拡散工程より遅いかまたはそれとに等しくなるように、脱イオン水への濃NaCl溶液の徐々の添加により類似範囲の電解質濃度で徐々に変化する溶媒質に、PVA溶液が付される。
本発明の他の好ましい態様によると、PVA溶液はゲルを特定形状に固定するために少くとも一回の凍結‐融解サイクルに付され、次いで望ましい最終フローリーパラメーターに達するまで、継続的に高いフローリー相互作用パラメーターの一連の溶液に浸される。一方、PVA溶液は2M NaClの溶液に浸漬された後で、一回以上の凍結‐融解サイクルに付される。
ある好ましい態様では、ナノ粒子がPVAの溶液中に分散される。溶媒には、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、または溶液調製に際してPVA溶媒対のシータ点より低いフローリー相互作用パラメーターを示すいずれか他の溶液がある。次いで、PVA/ナノ粒子混合物が少くとも一回の凍結‐融解サイクルに付される。凍結‐融解サイクル後に、PVA/ナノ粒子混合物の更なる物理的架橋を誘導するために、PVA/溶媒対のシータ点に近いまたはそれより高いフローリー相互作用パラメーターを有する溶媒に、ゲル化PVAが浸漬される。
本発明の態様の他の面では、ポリマー分子が相互作用するように変えることで、ポリマーゲルのゲル化速度を制御する方法を更に提供する。ゲル化速度を制御することにより、時間の“時間枠(window)”は、例えばゲル化PVA溶液の流れに依存する注入、成形またはいずれか他の加工ステップで、比較的遅くゲル化するPVA溶液で操作または作業することを可能にしている。好ましい態様で、ゲル化PVA溶液は、PVA生成物を形成させるために、その場で体腔およびゲルのような対象領域中に注入される。好ましい体腔には、関節内の髄核および正常または病的空隙がある。
好ましい態様では、ポリマー、好ましくはPVAをその結晶化温度以上に保つことで、ゲル化速度が制御され、そのため溶媒質が不良でもゲル化を防げる。他の好ましい態様では、良から不良へ変えるように誘引される第二溶媒を用いることで、ゲル化速度が制御される。一部の好ましい態様で、溶媒の質はミセルの破壊により変えられる。他の好ましい態様で、溶媒の質は高分子量分子の切断により変えられる。別の好ましい態様では、不良溶媒がゲル化処理を加速する処理温度と併用される。
ポリマーゲルを制御および形成するための系および方法の前記および他の特徴および利点は、添付図面で説明されているように、系および方法の好ましい態様のより詳しい以下の記載から明らかとなり、ここで同一の参照符合は異なる図でも同一部分に関する。図面は必ずしも一定尺度でなく、代わりに本発明の原理を説明するに際しては強調が置かれている。
発明の具体的説明
本発明の好ましい態様は、例えば椎間円板補綴具としての使用に適した生体適合性物質を得るために、化学的架橋または照射なしでの均一PVAヒドロゲルの作製に向けられている。更に、本発明の好ましい態様は、制御可能な潜在的に広範囲の機械的性質を有するように具体的用途向けに設計でき、かつ構造的および物理的性質の勾配で工学処理しうる、新しい種類のPVAヒドロゲルをもたらす、PVAゲルを作製する方法を含んでいる。
ここで用いられている“シータ溶媒”とは、シータ状態にあるポリマーの溶液をシータ温度で生じる溶媒に関する。シータ溶媒は、単独溶媒または二種溶媒の混合物、溶媒および非溶媒の混合物から、またはElias,H.G.,”Theta Solvents”,Brandrup,J.and E.H.Immergut,Polymer Handbook,3rd Ed.,John Wiley and Sons,New York,1989で記載されているようなコソルベンシーの場合には二種非溶媒の混合物からでも構成され、上記文献は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
ここで用いられている“ゲル化”とは、PVAの結晶化による永続的物理的架橋の形成に関する。これは、ポリマーが会合する箇所とゲル化が関係して、永続的結合を形成する結晶化で後続される必要がない、という一部の文献とは対照的である。
ここで用いられている“会合”とは、他の種類のすぐ近くよりもむしろ、それ自体に類似した環境下で存在することをポリマー(または他の種類)が“好む”、熱力学的にまたは溶媒で駆動される工程に関する。ポリマーのこの会合は局所的な“相分離”に必ず至るが、これは不均質溶液となることもまたは不均質溶液とならないこともある。
特定の理論に拘束されないが、シータ溶媒を用いてスピノダル分解メカニズムにより溶液中のポリ(ビニルアルコール)ポリマー鎖を直ぐ近くに引き寄せることが、溶解に抵抗性の物理的会合の形成を生じている、と考えられる。ここで用いられているスピノダル分解とは、密度または組成の微小変動に対して不安定である、均質、過飽和溶液(固体または液体)中のクラスター化反応に関する。したがって、溶液は自然に二相へ分かれるが、これは小さな変動で始まり、核形成バリヤなしにギブズエネルギーの減少で進行する。
本発明で用いられる方法論は、ゲル化を行わせてPVA鎖を物理的に会合させるために十分なχ値を有する溶媒の制御された使用を用いて、PVAヒドロゲルを作製する。PVAの無作為な“破壊”を防ぐためには、溶媒質が慎重に制御され、特に大きな成分では、溶媒“フロント”が制御的にPVA溶液へ入ることが重要である。例えば、NaCl/脱イオン(DI)水およびメタノール/脱イオン水溶液が、PVAに関するそれらの“シータ”値に近い温度および濃度で、PVAの物理的会合とそれに続くゲル化を行わせるために用いられた。こうして形成されたゲルはここでは“シータゲル”と呼ばれる。
一般的に、溶媒質を制御することにより、比較的遅くゲル化するPVA溶液で操作または作業しうる時間の“時間枠(window)”を作り出せる。この操作には、注入、成形またはいずれか他の考えられる加工方法があるが、それらに限定されない。
該方法は、(タンパク質、ペプチド、多糖、遺伝子、DNA、DNAのアンチセンス、リボザイム、ホルモン、成長因子、広範囲の薬物と、CAT、SPECT、X線、フルオロスコピー、PET、MRIおよび超音波用の造影剤を含む)物質の制御的送出、股、脊椎、膝、肘、肩、手首、手、足首、足および顎用の負荷耐性インプラントの作製、(アクティブバンデージ、経上皮薬物送達器具、スポンジ、抗接着物質、人工硝子体液、コンタクトレンズ、乳房インプラント、ステントおよび負荷耐性でない人工軟骨(即ち、耳および鼻)を含む)様々な他の医療インプラントおよび器具の作製、機械的性質または構造の(単一または多数)勾配が必要な何らかの用途を含めた、医学、生物および工業分野向け物質の作製に適用可能である。
ゲル形成のメカニズムは、溶液のPVAに富む領域で水素結合により媒介された結晶化で後続されるスピノダル分解処理であると通常考えられている、相分離を含んでいる。溶媒の選択は凍結‐融解処理に影響を与えることが知られている。溶媒の凍結点より低く溶液の温度を降下させることなくPVAをゲル化させるために、一部の溶媒が用いうることも知られている。DMSO、エチレングリコール(EG)、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)およびゼラチンのような溶媒が、環境温度でPVAをゲル化させるために用いられてきた。本発明の好ましい態様には、PVA溶液をゲル化させる手段として塩の使用と、ゲル化処理に際して溶媒質を操作および制御する有用性を含む。
良溶媒中で理想的なポリマー鎖は、沈降に至る会合挙動を有しない。溶媒質がシータ状態以下に落ちると、最終的にポリマーが相分離するまで、鎖は好んで会合し始める。理想的なポリマーでは、熱力学(溶媒)力で得られるもの以外で、ポリマー鎖に別な相互作用力はなく、そのため標準的な可逆的状態図が当てはまる。しかしながら、PVAでは、鎖の局所結晶化をもたらす、水素結合により駆動される強い結合力がある。この結晶化は、溶媒が“良”である場合でも生じうる。良溶媒の化学ポテンシャルは会合を促進しないが、無作為な熱運動が鎖を簡単に接触させて、場合によってはこの“溶媒力”に打ち勝つ。この点で、条件が正しければ、PVAの場合のように、鎖は結晶化し始める。結晶化を開始させるこの初期接触速度は溶媒質に依存する。したがって、溶媒質が低下すると、PVA鎖会合の確率は高まるが、これは溶媒質により定まる鎖どうしの親和性により駆動されるからである。結果として、温度の操作で観察されたように、溶媒質の変化速度は重要である。この処理は溶媒質に関連しているため、それは温度、濃度および圧力に依存する。したがって、PVAのゲル化は時間、更に重要には、会合“時間”と相分離“時間”との競合に依存するに違いない。この競合は実験で観察され、冷却速度および溶媒に応じた異なる初期ゲル構造、およびPVAゲルの熟成(aging)をもたらす。
したがって、制御された溶媒添加によるかまたは温度、圧力またはいずれか他の関連パラメーターにより溶媒質を制御すると、この会合の速度を制御しうる。結果的に、溶媒が不良でないため結晶化が起きる前にポリマーが溶液から降下するよう保証しながら、鎖の接近を促すことにより会合速度を加速させられるほど劣るように、系の溶媒質を制御することを望むようになる。ゲル形成の最適条件は、χ=0.25〜0.5の範囲内となるようであるが、これらの値以外でも、ゲルを得ることは可能である。これら競合効果のバランスをとると、なお流体でありながら急速にゲル化する、ポリマー/溶媒溶液が得られる。
溶媒質が温度または圧力の制御で変わる単独溶媒の場合、スピノダル分解相転移は溶媒質の低下により加速される。三元ブレンドの場合、PVAが(連続)水/溶媒Bブレンドで不完全に溶媒和され、そのため単独溶媒系として理想的なメカニズムで相が分離する、あるいはPVAおよび溶媒Bの双方が水で溶媒和されるが、互いに異なる混和性を有しているからである、として相分離は理解できる。したがって、これらの物質は二元ブレンドのように挙動し、そのため相分離する。概念的にわずかに異なるが、結果はほぼ同一である。不良溶媒となる二種良溶媒の挙動はコノンソルベンシーとして知られている。このアプローチは、諸成分を外的に混合し、次いで空洞のような対象領域へPVA溶液を注入して、そこでそれがゲル化しうる能力を付与する。PVAを注入してその場でゲル化を誘導しうるこの能力は、椎間円板(IVD)の核交換または増強に特に適しているが、それは必要な熱力学的性質を有したものであれば第二溶媒は何でもよいからである。この第二溶媒は、長鎖ポリマー、タンパク質または他の複合分子、またはそれらの水溶液、例えばポリエチレンオキシド(PEO)、グリコサミノグリカン(GAG)またはゼラチン、または単純な分子、例えば塩のような単純イオン種、例えばNaCl、または短鎖分子、例えばポリ(エチレングリコール)、例えばPEG400、グリセリンまたはアミノ酸、例えばセリンまたはグリシンである。高分子量種は溶媒としては通常特徴付けられないが、基礎理論は、フローリーにより記載されているように、溶媒分子の長さに関して何も区別していないが、溶媒/ポリマー対に関する最終相互作用パラメーターは溶媒の大きさにより影響される。
PVAは、長時間かけて脱イオン(DI)水中、室温で会合することが知られている。これは97℃の純水中PVAのシータ転移以下であれば効果的である。ここで用いられているような凍結‐融解処理およびシータゲル処理の双方で生成する微結晶は、60℃付近で融解ピークを有している。加えて、PVAに関するほとんどの研究では、PVAが十分に“溶解”されることを保証するため、少くとも80℃の高温を要する。これらの観察は、この温度以上でPVAはもはや結晶化しうる能力を有さず、そのため溶媒質に関して理想ポリマーのように挙動することを示唆している。結果的に、この臨界融解温度以上の溶液にPVAを溶解させられるならば、結晶化、ひいてはゲル化はないが、単純な会合により、沈降または相分離がありうることが、ここでは理解される。用いられる溶媒が不良であれば、熱力学的効果で会合が少しある(ひいては不均質沈降が生じうる)が、PVAヒドロゲルを特徴付ける不可逆的ゲル化はありえない。しかしながら、温度が低下すると、結晶化が生じ、系がゲル化し始める。しかしながら、このゲル化結晶化はなお速度制限されており、そのためこの温度以下で、不良溶媒中であっても、溶液を作業可能な状態にしておける。ポリマー鎖の衝突を促すことで、混合はこのゲル化速度に影響を与える。
一般的に、物理的架橋ポリ(ビニルアルコール)ゲルは、ポリ(ビニルアルコール)溶液の“シータ”濃度に近い濃度で、以下で第二溶媒と呼ばれる、ゲル化に十分なχ値を有する溶媒と接触することによりゲル化されるポリ(ビニルアルコール)水溶液(溶液の重量で1〜50%PVA)から調製される。
本発明は、化学的架橋剤、照射または熱サイクルを用いず、ポリ(ビニルアルコール)ヒドロゲルを作製する方法を提供する。好ましい態様で、好ましくは均質な物理的架橋構造を作るようにPVA溶液中への第二溶媒(NaClまたはメタノール)の拡散を制御することにより、溶媒質は制御される。
本方法では、PVAを会合させるために、便宜的にフローリー相互作用パラメーターで表示される、溶媒質が異なる溶媒での制御的変化を用いている。化学的架橋剤は用いられないため、ゲルは実質的に化学的架橋剤を含まず、そのため熱サイクルに付されたPVAクリオゲルのように生体適合性になりやすい。脱イオン水中で平衡化後におけるゲル中NaClの残渣は、その濃度が確実に生理的関連値以下であるため、無害になりやすい。
図2は、フローリー相互作用パラメーターχに関する第一溶媒と第二溶媒との関係を示している。図2は、所定温度時におけるフローリー相互作用パラメーターχとポリマーの濃度(Φ)との関係のグラフ図である。横座標は、χ=0.25の際、ゲル化を行わせるために十分な第一溶媒中のポリマー溶液(下)と第二溶媒中のポリマー溶液(上)を分けている。矢印および菱形は、溶媒一を溶媒二で取り替えることにより得られたχに及ぼす効果を示している。
当然ながら、溶媒は、フローリー相互作用パラメーターχを用いて規定されるように、“良”でもまたは“不良”でもよい。χに関して、これらの溶解(solvency)性は概算で良溶媒の場合でχ<0.5および不良溶媒の場合でχ>0.5であり、ここでχ=0.5の条件は“シータ”溶媒を規定する。良‐不良溶媒転移はステップ変化ではなく、代わりに選択溶媒中ポリマー溶解度の逐次変動である。結果的に、溶媒質の変化は、溶液が十分に希薄であれば鎖内相互作用で、または鎖間相互作用により、ポリマー相互の親和性を変える。ポリマー溶解度に及ぼす溶媒質変化の効果は、実験データで、または理論的に式1で示される:
v=(1−2χ)a (1)
上記においてvは単鎖の排除体積であり、χはフローリー相互作用パラメーターであり、aはモノマー体積である。したがって、シータ点は、鎖が非摂動である際、v=0またはχ=0.5の場合である。v<0の場合、相分離が起こり、ほぼ純粋な溶媒とポリマーに富む相との間で平衡化がある。しかしながら、ここで記載されたポリマーの大きな大きさにより、溶媒相中にポリマーが常に少し存在し、同様にポリマーに富む相で常に適量の溶媒が存在している。溶媒は単一の化学種でも、または低分子量化合物に必ずしも限定されない種の混合物でもよい。
PVA相はスピノダル分解処理で分離すると、通常考えられている。この式に速度依存性効果はないが、スピノダル分解処理が特徴的速度を有し、本発明の態様で利用されるのは速度効果のバランスであることに留意せよ。水中PVAの場合、フローリー相互作用パラメーターは濃度に弱く依存性であるが、約5%より多いポリマー体積分率の場合χ>0.5である。PVAゲルは溶媒より高い相互作用パラメーターを有するが、ゲルの分子量または架橋密度にχの依存性はない。
好ましい態様で、第二溶媒のχは第一溶媒(溶解PVA溶媒)のχより正でなければならず、好ましくは0.25〜2.0の範囲内である。好ましくは、第一溶媒のχは0.0〜0.5の範囲内である。一般的に、加工時の温度は、PVA溶液の凍結点のすぐ上から、処理で形成される物理的架橋の融点までである。好ましい範囲は約0〜約40℃である。χは温度および濃度と関連していることに留意せよ。好ましい態様で、PVA溶液(第一溶媒)のχに関する時間および空間的変化は、他の混和性溶液(第二溶媒を含む)との接触により制御され、そこでは第二溶媒が第一溶媒を修飾する。
化学的架橋剤および照射処理の必要性がなくなることにより、埋込み成分に大きな多様性をもたらす。例えば、多くの生物活性物質は化学的架橋剤および照射に対して高度に非抵抗性である。加えて、一般的に凍結‐融解処理は生物活性成分にとり優しいが、凍結できない、または不凍液として作用し、そのため凍結を妨げる、と認識されているポリマー、バイオポリマーまたは細胞も確かに存在している。
これらのシータゲルを作製するために用いられる方法は、競合クリオゲルで可能なものより、広範囲の物性および最終ゲルの物理的構造で大きな制御をもたらしやすい。ある適用で、熱サイクルに付されたPVAゲルと比べたシータゲルの利点が、以下で略記されている。
クリオゲルはそれらの最終性質に関してかなり低い決定力を有しているが、それは各熱サイクルがゲルの物性に劇的な変化を生じさせるからである。シータ値を通り過ぎると、溶媒の濃度が膨潤比に単調な減少をもたらすことを、得られたシータゲルは証明している(図7参照)。極限架橋密度が溶媒濃度で得られる決定力に比例して調整可能であることが望まれる。例えば、NaClに浸漬された10%PVA溶液の場合、最終ゲル中PVAの重量%は約7%/モルNaClの割合で変わる。
本発明の好ましい態様では、約1〜約50重量%PVAの(溶液の重量ベースで)開始重量を有したゲルを提供する。好ましい態様で、重量%は最終ゲルで約12〜約29%PVA範囲であり、ここで用いられる浸漬溶液は約2.0〜約3.0M NaCl(水溶液)であった。最終PVA重量%のこの範囲は、熱サイクルに付されたPVAで得られるものに匹敵する。(6.0Mを超える)高NaCl溶液の場合、最終ゲルのPVA%はNaCl濃度に従い単調的に増加する。空間的性質で滑らかな勾配を示すPVAシータゲルが得られることがわかった。対照的に、性質の勾配はクリオゲルの場合には容易に形成されない。代わりに、通常のアプローチは、溶解PVAで結合され、次いで再びサイクルに付されねばならない、独立した積重ねラメラの配列を作製することである。このような配列でモジュラスの明確な差異は、望ましくない機械的性質および不均質な界面を有した物質を作り出す。好ましい態様で、機械的性質で滑らかな勾配を有するPVAシータゲルは、十分な圧縮強度を有する中心低モジュラス“髄”およびクリープおよび望ましくない歪みを最少化する高モジュラス周辺“輪”をもった、補綴椎間円板を作製するために用いられる。
モジュラス増加はイオン種の配合により行える。NaCl中で得られるシータゲルの場合、歪可変圧縮モジュラスのゲルを作製するために、天然(ヒアルロン酸)または合成(PAA)ポリマーを含有させることが可能である。強NaCl中におけるPVA/PAA溶液のゲル化はPAAでイオン変化を遮蔽し、その一方でPVAが崩壊PAA周囲で架橋される。脱イオン水中での再平衡化はPAAの膨張を可能にし、PVAマトリックスにプレストレスを与える。得られた構築体は、配合PAAに対する固定電荷の反発により、非常に異なる機械的圧縮モジュラスを有するようになる。
動物に移植される際には、PVAは宿主生体応答をほとんどまたは全く発現させないことが、当業界で知られている。この理由から、薬物送達、細胞封入、人工涙液、人工硝子体液、コンタクトレンズを含めた様々な生物医学用途で、および更に最近では神経カフとしてPVAが用いられている。しかしながら、PVAは、主にその低モジュラスおよび不良磨耗特性により、負荷耐性生体物質としての使用が通常考えられなかった。椎骨インプラントが耐えねばならない負荷はほどほどに高く(圧縮時4MPa程度)、高い圧縮モジュラスを要する。インビボで、椎間円板にかかる圧縮軸負荷は、線維輪にかかる円周方向引張負荷へ、髄核により移転される。椎間円板の機能にその全体で置き換われるいかなる生体物質も、類似した異方性性質を保有していなければならない。
全体強度を改善するために、PVAモジュラスおよび磨耗特性は化学的または物理的架橋の形成により高められる。化学剤(例えば、ポリアルデヒド)の添加、照射または凍結‐融解サイクルによりPVAを架橋させると、PVAゲルの耐久性を改善することが示された。しかしながら、化学添加物は望まれない残留反応種を残すことがあり、これは最終生成物を移植体に適さないものとし、一方照射はマトリックスに封入された生物活性物質に悪影響を及ぼすことがある。そのため、凍結‐融解サイクルによる広範囲な物理的架橋の形成は、化学的または照射誘導架橋により生じる悪影響なしに、PVAの耐久性を実質的に改善した。最近の研究では、凍結‐融解サイクルにより生じる物理的架橋が、関節軟骨または椎間円板のような負荷耐性構造の生体適合性交換用に適したモジュラスを有する生体物質を生み出せることを示唆している。
ポリマーの溶媒和および“シータ”点
溶液中のポリマーは永久力学運動の複雑な分子である。理想的ポリマー鎖の立体配置は通常“乱歩(random walk)”として記載され、該分子は単純さにより自由に結合して自由に動けると思われている。この挙動はガウス分布の球状形態をとるポリマーをもたらす。実際には、鎖はそれに作用してその形状および挙動を規定するいくつかの力を有している。自由溶液中で、鎖は系の温度から生じるブラウンゆらぎからランダム運動に付される。同時に、鎖がそれ自体(それは長く伸びた分子であるため)およびその周囲とどのように相互作用するかで生じる力が存在する。
ポリマーが溶液で容易に溶媒和される(即ち、それがゲル化に十分なχ値を有しない第一溶媒中に存在している)ならば、溶媒に曝されるポリマー鎖の量を最大化しようとして、それは膨潤する。第一溶媒では、ポリマー要素とそれに隣接する溶媒分子との相互作用のエネルギーは、その開示が引用することにより本明細書の開示の一部とされるFlory,P.J.,Principles of Polymer Chemistry,page 424,Cornell University Press,1953で記載されているように、ポリマー‐ポリマーおよび溶媒‐溶媒対間の相互作用のエネルギーの平均を超えている。鎖は今度は摂動状態にあり、隣接鎖との接触に抵抗し、同様に機械的圧縮および変形に抵抗する。溶解力(solvency)が変わると、この膨潤立体配置は溶媒の質が落ちるにつれて崩壊する。
シータ点において、溶媒質は、無作為なブラウン運動が鎖を理想的ガウス分布に十分に保てるようである。この臨界閾値以下では、鎖セグメントは溶媒分子よりもむしろ各々の隣に存在しやすく、鎖は収縮する(即ち、ゲル化に十分なχ値を有する第二溶媒)。フローリー相互作用パラメーターχは無次元であり、温度、圧力などに依存する。第一溶媒は低χを有し、一方第二溶媒は高いχを有し、約χ=0.5で転移する。χ=0の場合はモノマーと非常に類似した溶媒に相当する。格子モデルで、これは、格子上に様々な鎖パターンで会合したエントロピーから自由エネルギーが全部生じている場合である。このような場合に、温度は構造に影響を有さず、溶媒は“無熱”であると言われる。無熱溶媒は良溶媒の特に簡単な例である。ほとんどの場合に、パラメーターχはde Gennes,P.G.,Scaling Concepts in Polymer Physics,First ed.p.72:Cornell University Press(1979)で記載されているように正(positive)である。溶媒質が十分に不良であれば、鎖は完全に溶液から沈降する。この効果は溶液の温度の操作によっても得られる。
ポリマー溶液の濃度が十分に高ければ、鎖間相互作用および鎖内相互作用を行わせる第二溶媒で第一溶媒の少くとも一部を置き換えることにより、溶媒質の調節が行われる。物理的架橋が起きると、自由ポリマーを自然に膨潤させる良溶媒の後の存在は物理的架橋と平衡に保たれる。鎖間会合で、ポリマー鎖は今度は、ある係留点で拘束される。結果的に、ポリマーが溶媒和および伸張されると、それは更に変形して、強制的に張力が加わる。ゲルに興味深い機械的挙動性を与えているのは、ポリマー鎖の溶媒和と変形鎖のこの張力との競合である。加えて、ある条件下でポリマー鎖はイオン化されて、結果的に電荷を生じる。同様の電荷の隣接は、静電反発により更なる膨潤をもたらす。これが、天然軟骨(コラーゲンおよびグリコサミノグリカン)にその高いモジュラスおよび高い吸湿性を付与する仕組みの一部である。
PVAのゲル化メカニズム
PVAポリマーの溶液の凍結‐融解サイクルは、物理的架橋の形成(即ち、ポリマー鎖の“会合”による弱い結合)をもたらす。こうして形成されたPVAヒドロゲルは“クリオゲル”と呼ばれ、例えばUS特許No.6,231,605および6,268,405で記載されており、それらの開示は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。重要なことに、PVAクリオゲルを作製するために利用される技術は、化学的架橋剤または照射の導入を必要としない。したがって、クリオゲルは低衝撃または配合生物活性分子で容易に作製される。しかしながら、配合分子はゲルを作製するために要求される凍結‐融解サイクルに耐えられるものに限定される。そのため、得られる物質は移植後、別々に機能する生物活性成分を含有しうる。PVAクリオゲルは(後で記載される提示PVA“シータゲル”のように)高度に生体適合性でもある。それらは(少くとも部分的にそれらの低い表面エネルギーにより)非常に低い毒性を示し、不純物をほとんど含有せず、それらの水分は80〜90wt%で組織と釣り合わせられる。
凍結‐融解サイクルでPVAのゲル化を駆動させる正確なメカニズムに関しては、なお多少の論争がある。しかしながら、凍結‐融解サイクルに際して生じる物理的架橋を説明するために三つのモデルが提案された{1)直接的な水素結合、2)直接的な微結晶形成、および3)液‐液相分離に続くゲル化作用}。初めの2ステップは、ゲルが核形成および成長(NG)相分離で生成することを示し、一方第三のオプションはスピノダル分解(SD)相分離としての処理を想定している。水素結合は中心点(nodes)を形成し、微結晶形成は大きなポリマー結晶を形成する。しかしながら、これら双方の作用は比較的小さな架橋の中心点(nodes)で密に繋がれた架橋を形成する。この観察はPVAのゲル化作用に関する研究で支持されている。他方でスピノダル分解は、ポリマーに富むおよびポリマーに乏しい領域中へのポリマーの再分配、次いでより距離の離れた架橋をもたらすゲル化処理を行わせる。スピノダル分解による相分離は架橋後におけるPVAの機械的性質の改善に関与しやすく、ポリマー溶液の急冷により生じる、と考えられている。凍結処理に際して系はスピノダル分解をうけ、それによりポリマーに富むおよび乏しい相が均質溶液中で自然に出現してくる。ある温度で急冷されたPVA(一般的にはポリマー)の状態図が2つの共存濃度相を有しうることから、この処理が生じる。したがって、ポリマーに富む相が高度に濃縮され、PVAの自然(弱い)ゲル化を高める。
クリオゲルの場合、物理的特性は未架橋ポリマーの分子量、水溶液の濃度、凍結の温度および時間、および凍結‐融解サイクルの回数に依存する。そのため、クリオゲルの性質は調節しうる。しかしながら、物性は凍結‐融解ステップ毎に劇的に変わるため、最終ゲルの性質に対する制御はやや制限される。記載されたシータゲルは、PVAクリオゲルで現在得られる機能性の範囲を広げている。
一般的に、PVAクリオゲルのモジュラスは凍結‐融解サイクルの回数に応じて増加する。ある実験シリーズで、熱サイクルに付されたPVAクリオゲルは1〜18MPa範囲の圧縮モジュラスおよび0.1〜0.4MPa範囲の剪断モジュラスを有していた。Stammen,J.A.,et al.,Mechanical properties of a novel PVA hydrogel in shear and unconfined compression Biomaterials,2001,22:p.799-806。
クリオゲルが化学的でなく物理的手段で架橋されると、それらの構造安定性に少し関心がもたれる。水溶液中PVAのモジュラスは一定温度において蒸留水中の浸漬時間に応じて増加する。40日間行われたある実験で、モジュラスは50%増加した。推測するには、水性熟成(aging)に際して、可溶性PVAの損失と同時に強度の増加は、ポリマー鎖の超分子充填(packing)の程度に関する増加の結果である。凍結‐融解ゲル化PVAの長期貯蔵効果に関して、このデータにおいて十分密接な関係がある。
経時的なポリマーの損失の効果と、それがどのように局所宿主生物環境に衝撃を与えるかを理解することも重要である。この例では、クリオゲルは凍結‐融解サイクルに一度だけ付されたが、他は何回かの凍結‐融解サイクル後にPVA溶解を示したことに留意すべきである。一般的に、反復負荷サイクル(疲労)下でPVAクリオゲルモジュラスの安定性に関する情報はほとんどない。
予想されるように、PVAクリオゲルの膨潤はいつの時点でも凍結‐融解サイクルの回数を増やすと減少し、これはPVAゲルの高密度化を示しているが、おそらく高い架橋密度のためである。長期になると、ゲル化後および静的条件下で、極限膨潤比は減少し、一方モジュラスは経時的に増加してくる。
凍結‐融解処理では、PVA溶液の相分離を行わせるために温度が用いられ、こうしてPVAでゲル化作用を高めている(室温でも、PVAの溶液は経時的に弱くゲル化し始めることに留意すべきである。)。
溶媒質はポリマーに対する溶媒の温度および化学的双方の相互作用と関連しており、フローリー相互作用パラメーターχで便宜上表わされる。好ましい態様では、温度以外の一部処理による溶媒質の操作で、ゲル化処理にかなり大きな制御を施しながら、ほぼ室温で該方法を実施できる。特に、PVA用の水性ベース溶媒を用いることにより、系はPVAに埋め込まれた物質に及ぼす衝撃を最少に抑えられるように選択でき、ゲルの最終構造に細かな空間および時間的制御を施せる。特定の溶媒で、第一から第二溶媒への転移を規定する(ひいては相分離を駆動する)臨界パラメーターは、シータ温度として知られている。例示リストは下記表1で掲載されている。
Figure 2007520622
物理的に架橋されたPVAゲルは、脱水と組み合わされた熱サイクル(必ずしも凍結は含まない)でも得られる。このようなゲルは、可能性として、負荷耐性向け(即ち、人工関節軟骨)の使用に適している。この熱サイクルに付されたPVAの物性の試験から、該物質は堅い単相生体物質(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))より均質に応力を分配し、同等の人工関節軟骨負荷で難なく潤滑膜間隙を保持できることがわかった。該物質は薄膜で1〜1.5MPaの圧力を支持および分配した。一時的負荷試験で、PVAはほぼ5MPaの負荷について耐え分配した。
様々な条件下で熱サイクル脱水PVAの耐磨耗性を更に試験する研究が行われた。一方向ピン・オン・ディスク(アルミナに対する)実験でみられた磨耗率はUHMWPEの場合に匹敵した(この試験はおそらく生物学的インプラントで行う上で最も適しているというわけではない)。しかしながら、往復試験で、磨耗率は18倍まで大きくなった。耐磨耗性を改善するために、ガンマ線(50kGyを超える線量)で更に架橋された高分子量のPVAが試験された。このような処理は磨耗率を著しく(UHMWPEの場合の約1/7まで)減少させた。しかしながら、照射および熱の双方で架橋されたPVAの場合、磨耗率は反対表面が高い硬度を有する用途に向いていないようである。加えて、照射はゲルに加えられる生物活性物質に悪影響を与える。
好ましい態様による方法として以下がある。
PVA溶液:10%溶液を得るために、PVA(100kg/mol;99.3+%加水分解、JT Baker)20gを90℃で脱イオン水180gに1〜2時間かけて溶解させた。20%溶液を得るために、PVA30gを脱イオン水180gに溶解させ、水60gが蒸発して20%PVAの最終溶液となるまで、溶液を継続的に攪拌した。
PVAゲル化:10〜20重量%のPVA溶液4〜5mlを分子量カットオフ3500ドルトンの前湿潤Slide-A-Lyzer Dialysisカセット(Pierce,Rockford,IL)中へ注入した。次いで10%PVA溶液を1.5M、2.0M、2.5Mまたは3MのNaCl水溶液に浸漬した。20%PVA溶液は3.0M NaClに浸漬した。ゲル化効果がNaCl/水性溶媒依存性でないことを証明するために、透析器カセット中の10%PVA溶液を50/50メタノール/水溶液に浸漬した。3日後、10%PVA溶液を含有したカセットのすべてをそれら各々の溶媒から取り出した。次いでゲルをカセットから取り出し、少くとも5日間、DI水に入れて、初期PVA結晶を溶解させ、20%PVA溶液を含有したカセットを3日後に取り出した。PVAゲルをカセットから取り出し、一部をDI水中で貯蔵した。残留PVAゲルを3M NaCl溶液に戻した。6および12日後に、20%PVAゲルの一部を取り出し、更に試験する前に少くとも5日間、DI水中に入れた。
定量的特徴
ゲルの構造に及ぼす浸漬溶液モル濃度および浸漬時間の効果を定量するために、示差走査熱量測定(DSC)、重量膨潤比分析および動的機械分析(DMA)を該サンプルで行った。
示差走査熱量測定:機器、例えばTA Instruments Q1000(TA Instruments,New Castle,DE)を用いて、DSCサーモグラムを得た。選択された湿潤PVAゲルサンプル5〜15mgを5日後に脱イオン水貯蔵物から取り出し、吸取り乾燥させ、アロダイズド(alodized)アルミニウムハーメチックパンにクリンプした。走査は5℃から120℃まで5℃/minで行った。基準(典型的には約40℃)から出発して基準(典型的には約90℃)へ戻る線形積分を用いて、ゲル物理的架橋の融解に関する全エンタルピー変化を評価した。DSC分析後、ハーメチックパンを穿刺し、秤量し、脱水のため真空オーブンに入れた。2日間の脱水後、パンを再秤量して、原サンプルのPVA%を求めた。
重量膨潤比:各サンプルからPVAゲルのサンプルを5日後に脱イオン水貯蔵物から取り出し、ティッシュペーパーで吸取り、真空オーブン中で2日間かけて脱水させた。ゲル中水の質量対、ゲル中PVAの質量の比率として重量膨潤比を計算した。
動的機械分析:硬化溶媒質の効果を試験するために、Perkin-Elmer TMA 7(Perkin Elmer,NJ)を用いて10%PVA 3M NaClおよび2M NaClサンプルで動的機械分析を行った。硬化溶媒で熟成(aging)の効果を試験するために、DMAを20% 3M NaCl 3日間および12日間サンプルでも行った。サンプルを方形に切り、250mN(10%サンプル)または1000mN(20%サンプル)の静的負荷による非拘束圧縮で試験した。貯蔵(および10%サンプルの損失モジュラス)を室温のにおいて1〜2Hzの周波数スイープで調べた。
好ましい態様で、溶液中でポリ(ビニルアルコール)ポリマー鎖を(スピノダル分解作用で)極めて接近させると、溶解に抵抗する物理的会合の形成をもたらす。PVAヒドロゲルを作製するこの方法論では、ゲル化を行わせてPVA鎖を物理的に会合させるために十分なχ値を有する第二溶媒の制御された使用を用いる。溶媒質が慎重に制御され、特に大きな成分では、溶媒“フロント”が制御的にPVA溶液に入ることが重要である。NaCl/脱イオン水およびメタノール/脱イオン水溶液が、PVAに関するそれらの“シータ”値に近い濃度で、PVAの物理的会合とそれに続くゲル化を行わせるために用いられた。こうして形成されたゲルは“シータゲル”と呼ばれる。
ヒドロゲルの物理的外観は、PVA溶液が浸漬される溶液のモル濃度に依存する。図3は、“シータ”濃度に近いNaCl溶液への暴露時におけるPVAヒドロゲルのゲル化の進行を示している。暴露時間が増すと、PVA溶液はシータ濃度および温度またはそれ以上の溶液の際、堅く不透明になる。シータ濃度よりかなり低い溶液の場合は、ゲル化がほとんどまたはゲル化が全く見られない。50/50の水/メタノール溶液中へのPVA溶液の浸漬も、均一PVAヒドロゲルのゲル化をもたらした。
図3は1日間(上)および3日間(下)の硬化溶液浸漬後における透析器カセット中の10%PVA溶液を示している。左から右へ:1.5M NaCl、2.0M NaClおよび3.0M NaCl。1.5M溶液はPVAをゲル化せず、2.0M溶液および3.0M溶液はPVAをゲル化する。サンプルが時間と共に圧縮されると、カセットの端部から2.0Mゲルの漸次的不透明化および3Mゲルの収縮があることに注目せよ(矢印で示されている)。
図4は、3日間にわたり3.0Mおよび2.0M溶液へ曝された10%PVA間の差異を示している(写真撮影後に脱イオン水中で平衡化)。PVAゲルは、3.0M(各対の左像)および2.0M(右像)NaCl浸漬溶液への浸漬により得られた。ゲルが均一で不透明であることに注目せよ。3.0M NaClに曝されたゲルはさほど膨潤せず、脱イオン水で平衡化後は更にコンパクトである。得られたヒドロゲルは均一で不透明である。2.0M NaClに曝されたPVAは、3.0M NaClに曝されたものより高度に水和されている。膨潤性の増加は、物理的架橋の密度が2M NaCl溶液に曝されたゲルで低いことを示している。そのため、こうして形成されたゲルは、機械的性質に関して“調整可能”である。更に、該方法を用いて空間的NaCl濃度の操作によりゲル勾配が作られる。
図5は、空間的変動NaCl濃度に曝された10%PVA溶液から形成されたヒドロゲルを示している。ゲルの半透明性および膨潤比双方の変動に注目せよ。ゲルの不透明部分を3.0M NaClに曝し、一方透明部分をシータ濃度(室温で2.0M)より低い濃度に曝した。勾配を形成しうる能力は、硬質外層(線維輪)および軟質中心(髄核)の全円板交換核形成と関連している。
示差走査熱量測定
熱サイクルに付されたPVAゲルの場合、30〜90℃間の吸熱量は、熱処理で形成された物理的架橋を壊すために必要なエネルギーを表わす。好ましい態様によるPVAシータゲルでも、類似の吸熱量が存在した。図6は、熱サイクルに付されたPVAクリオゲルおよび3.0M NaCl中で形成されたPVAヒドロゲルのDSCサーモグラムを比較している。転移は類似した融解吸熱量を有しており、事実上同温度で生じている。
この吸熱転移のエンタルピー変化は、溶液条件の結果としてゲル中架橋の量の良い指標を与えている。例えば10%PVA溶液の場合、NaClの2.0M溶液で3日間の浸漬後に得られたエンタルピー変化は16.9J/gであった。対照的に、同様の初期PVA溶液は3M溶液中で3日間後に19.9J/gのエンタルピー変化を示した。この結果は、溶液濃度および浸漬時間の双方がゲル中物理的架橋の量に正の影響を与えることを示している。
重量膨潤比
好ましい態様で、溶媒中NaClのモル濃度を増すと、単位質量当たりでヒドロゲル中に存在するPVAの量を増加させる。図7は、(脱イオン水で十分に平衡化された)ゲル中PVAの%と、それらが硬化された溶液のモル濃度との関係を示している。PVAは透析カセット中でしっかり保持されていないため、それはゲル化処理に際してPVAにかかる局所力の影響下で自由に膨張または収縮する。したがって、PVAゲルが崩壊したら、最終PVA濃度が初期PVA溶液のものを超えることが可能である。図8は、様々なNaClモル濃度の溶液中で硬化されたPVAに関する重量膨潤比を示している。20%PVA溶液の場合、膨潤比およびPVA%の3日値は、10%PVA溶液の場合(グラフには示されていない。)に匹敵した。3M NaClで12日間の浸漬(および脱イオン水で5日間の平衡化)後、20%PVA溶液は29%PVAであるゲルを形成した。
動的機械分析
好ましい態様で、溶液条件および熟成(aging)の時間はゲルの可視構造およびそれらの熱的性質に著しい効果を有している。双方の効果は、機械的性質にも同様に影響があるらしいことを示唆している。この推測はサンプルの質的試験により支持されたが、より厳格な分析のために機械的試験がDMAを用いてサンプルで行われた。図9および10は、サンプル3つから得られたデータを表わしている。図9は、サンプルの複素モジュラスが(すべての他の溶液条件を一定に保つと)熟成(aging)で増加することを示している。実際に、モジュラスのこの増加は最終PVAゲルの高密度化とも並列している。図10は、(再びすべての他のパラメーターを一定に保つと)溶液モル濃度の変化に応じたモジュラスの変化を試験している。この図10では、溶液モル濃度が増加すると、貯蔵(即ち、弾性成分)モジュラスが鋭く上昇し(室温で2M NaClはほぼシータ溶媒であることを思い出してほしい)、一方損失(即ち、制動)モジュラスはほとんど影響されない、という明らかな示唆がある。
各熱サイクルがゲルの物性に劇的な変化を与えることから、クリオゲルはそれらの最終性質に関して相当低い決定力を有している。“シータ”値を通り過ぎると、溶媒の濃度が膨潤比に単調な減少をもたらすことを、得られたシータゲルは証明している(図7参照)。そのため、極限架橋密度が溶媒濃度で得られる決定力に比例して微調整しうる。例えば、NaClに浸漬された10%PVA溶液の場合、最終ゲル中PVAの重量%は約7%/モルNaClの割合で変わる。
好ましい態様では、空間的性質で滑らかな勾配を示すPVAシータゲルが得られる。勾配性質はクリオゲルの際、容易に形成されない。代わりに、通常のアプローチは、溶解PVAで結合され、次いで再びサイクルに付されねばならない、独立した積重ねラメラの配列を作製することである。このような配列でモジュラスの明確な差異は、望ましくない機械的性質および不均質な界面を有した物質を作り出す。好ましい態様には、機械的性質で滑らかな勾配を可能にする技術から効果をもたらす複合線維輪/髄核インプラントを含み、そこで中心低モジュラス“髄”は十分な圧縮強度を呈し、高モジュラス周辺“輪”は、ずれ(creep)および望ましくない歪みを最少に抑える。
モジュラス増加、イオン種の配合
NaCl中で得られるシータゲルの場合、歪可変圧縮モジュラスのゲルを作製するために、天然(ヒアルロン酸)または合成(PAA)ポリマーを含有させることが可能である。強NaCl中におけるPVA/PAA溶液のゲル化はPAAのイオン変化を遮蔽し、その一方でPVAが崩壊PAAの周囲で架橋される。脱イオン水中での再平衡化はPAAの膨張を可能にし、PVAマトリックスにプレストレスを与える。得られた構築体は、配合PAAに対する固定電荷の反発により、非常に異なる機械的圧縮モジュラスを有するようになる。
勾配シータゲルの作製
他の好ましい態様では、勾配シータゲルを得るために、100kg/molPVAの10%、20%および30%溶液を前記のように調製する。透析器カセットを半分に割り、10%PVA溶液で満たされた1×1×1cmプレキシガラスボックスの片側に各半分を取り付ける。密閉されたボックスを温度制御“Ussing”型チャンバーに入れ、そこで一定の4モルNaCl濃度差に付した(図10参照)。ゲルの更なる変化が有意でない日数後、勾配ゲルをチャンバーから取り出し、更なる試験の前に脱イオン水中へ5日間入れる。得られたゲルは下記のように試験する。
他の態様では、空間的勾配が濃度の時間的変動を用いて得られる。高度架橋が生じる周辺領域より柔らかい内部領域を有するゲルを得られるように、チャンバー中の濃度は時間的に調節できる。
チャンバー100は、ゲル160を含有したカートリッジ140を含んでいる。チャンバーは、2種の浸漬溶媒112および122を含むサブチャンバーまたは領域に分けられる。好ましい態様で、溶媒は同濃度を有している。他の好ましい態様では、ゲルに空間的勾配を生じさせる異なる濃度を浸漬溶媒が有している。膜150、154は、浸漬溶媒をビニルポリマー溶液中へ選択的に流入させる透過膜である。膜130はいかなる溶媒の流れに対しても不透過性バリヤを形成する。
脱水
本発明の好ましい態様は、ゲルを制御可能に構築することに向けられている。具体的な態様では、円滑な脱水を促して、PVAシータゲルの物理的架橋を均質化させるために、先の溶液より高いフローリー相互作用パラメーターを各々有した一連の溶液または円滑に変化する溶媒質の浴に、PVAのゲルまたは溶液が浸漬される。これは、直接的な浸漬溶液との接触による表面でのPVAの局所的“クラッシュ・アウト(crashing out)”を防ぐ。ここで用いられている“クラッシュ・アウト(crashing out)”という用語は、フローリー相互作用パラメーターによる沈降に似た現象と関連している。フローリー相互作用パラメーターがシータ点より高いために、ポリマー鎖は溶媒の代わりにそれら自身と会合しやすく、そのため沈降またはクラッシュ・アウト(crashing out)する。
ある好ましい態様で、PVA溶媒対のシータ点より高いフローリー相互作用パラメーターを有する溶媒中に含有PVA溶液をまず浸漬することにより、シータゲルが得られる。ある期間の後、PVA溶媒対のシータ点より低いフローリー相互作用パラメーターを有する他の溶媒中に含有PVAが浸漬される。最終ゲルで望ましい相互作用パラメーター値に達するまで、フローリー相互作用パラメーターが連続的に減少する溶媒へ含有PVAを浸漬しながら、本処理は続けられる。
本発明の好ましい態様に従いシータゲルを形成するための方法は、DIへの含有5〜20%PVAの浸漬、次いで2.0M NaClで1時間〜1日間の浸漬、次いで3.0M NaClで1時間〜1日間の浸漬、次いで4.0M NaClで1時間〜1日間の浸漬、次いで5.0M NaClで1時間〜1日間の浸漬からなる。
他の好ましい態様では、塩濃度の変化がゲル中への拡散処理より遅いかまたはそれと等しくなるように、DI水浴への濃NaCl溶液の徐々の添加により類似範囲の電解質濃度で徐々に変化する溶媒質に、PVA溶液が付される。
好ましい態様による方法は、1.5M NaCl、1Lに含有5〜20%PVAを浸漬し、0.0038M/minの割合で電解質濃度を上げるために0.5ml/minの割合で6M NaClを加え、約12時間後に5M NaClに達することからなる。
他の態様で、PVA溶液はゲルを特定形状に固定するために一回または多数回の凍結‐融解サイクルに付される。次いで望ましい最終フローリーパラメーターに達するまで、継続的に高いフローリー相互作用パラメーターを有する一連の溶液にそれが浸漬される。
好ましい態様による方法は、5〜20%PVAをDIに溶解し、該溶液を凍結‐融解サイクル(約1〜8サイクル)に付し、次いで1時間〜1日間にわたり、得られたゲルを2.0M NaClに浸漬することからなる。該方法では更に、PVAゲルを3.0M NaClに1時間〜1日間浸漬し、次いで4.0M NaClに1時間〜1日間浸漬し、次いで5.0M NaClに1時間〜1日間浸漬させる。
代わりの好ましい態様で、ゲルを形成するための方法は、5〜20%PVAをDIに溶解し、NaClをPVA溶液に加えてPVA溶液中で0.01〜2M NaCl濃度とし、次いでPVA/NaCl溶液を1〜8回の凍結‐融解サイクルに付すことからなる。
ナノ構造
ポリビニルアルコールゲルは、化学的架橋または照射の使用なしに適度に堅くできる、極めて生体適合性の物質である。しかしながら、PVAの物性は、例えば人工関節軟骨または椎間円板のような負荷耐性用の物質の要件に合わない。本発明の好ましい態様によるポリマー系のナノ構造の向上は、負荷耐性整形外科器具用として既にほぼ適しているPVAゲルが、このような適用向けに使用可能な候補となることを示している。
ナノ構造ポリビニルアルコールシータおよびヒドロゲル‐粒子:ポリマー物質への粒子の添加により、ニートポリマーの処方と比べて、得られる物質の機械的および熱的性質を改善しうる。最近、ポリマーへのナノ粒子の添加は物性で類似の向上をもたらすが、但しミクロンサイズ粒子で必要なものよりかなり低い微粒子濃度で済むことが示された。これは特に、物性が表面積に依存している場合に当てはまる。好ましい態様によると、ポリビニルアルコールシータゲルまたはヒドロゲルを強化するために、非荷電ナノスケール粒子または均一なまたは空間的に様々な表面電荷を有する荷電ナノスケール粒子の、ゲル化前における溶液中への分散は、最終ゲルの機械的および熱的性質を向上させる。ナノスケール粒子は、適正に分散されると、本発明の好ましい態様に従い、PVA鎖をそれらの表面に吸着させることによる物理的架橋用の規則的核形成部位を形成する。ゴム強化プラスチックの場合のように、これらのナノ粒子も応力集中部分として作用し、こうしてゲルを強化させる。PVAゲルの性質を向上させるナノスケール粒子は、例えば、粘土(clays)(例えば、限定されないが、ラポナイト、モンモリロナイト)、ヒュームドシリカ、二酸化チタンまたはヒドロキシアパタイトである。ポリマーの末端グラフト化のような表面処理および修飾も、本発明の好ましい態様に従い粒子がポリマーゲルマトリックスと相互作用する様式を調整する。これらの粒子は、例えば成長を促すまたは炎症を抑制する薬物を放出しうるように、生物学的に活性でもよい。ナノ構造は本発明の好ましい態様によるシータゲルに限定されない。しかしながら、本発明の好ましい態様によるシータゲルは、デバイ長さが使用溶液と比べて減少した溶液条件下において、荷電粒子周辺で物理的架橋の形成を行える。そのため、低い電解質濃度の使用溶液でゲルが置き替えられた際には、粒子は静電力により相互作用し、PVA凍結‐融解ゲルと比較されるような圧縮強度をPVAシータゲルに加える。
ある態様で、ナノ粒子はPVAの溶液中へ分散される。溶媒として、水、DMSO、メタノール、または溶液調製に際してPVA溶媒対のシータ点より低いフローリー相互作用パラメーターを示すいずれか他の溶液がある。次いで、PVA/ナノ粒子混合物が少くとも一回の凍結‐融解サイクルに付される。凍結‐融解サイクル後に、PVA/ナノ粒子混合物の更なる物理的架橋を誘導するために、PVA/溶媒対のシータ点に近いまたはそれより高いフローリー相互作用パラメーターを有する溶媒に、ゲル化PVAが浸漬される。
本発明の好ましい態様による方法は、DI中5〜20%PVAを1〜10%ヒュームドシリカと混合し、溶液を凍結‐融解(1〜8サイクル)し、次いで1時間〜5日間にわたり2〜5M NaClに浸漬することからなる。
他の態様で、PVA/ナノ粒子混合物は、PVA/ナノ粒子混合物の物理的架橋を誘導するために、PVA/溶媒対のシータ点に近いまたはシータ点より高いフローリー相互作用パラメーターを有する溶媒への浸漬によりゲル化される。凍結‐融解サイクルはこの態様で不要である。
本発明の好ましい態様による方法は、DI中5〜20%PVAを1〜10%ヒュームドシリカと混合し、次いで1時間〜5日間にわたり2〜5M NaClに浸漬することからなる。
他の態様では、前記の二例から得られた複合ゲルが、更なる凍結‐融解サイクルに付される。
他の態様では、ナノ粒子を含有したPVA溶液またはゲルが、前記のような脱水手順に付される。本発明の好ましい態様による方法は、DI中5〜20%PVAを1〜10%ヒュームドシリカと混合し、1〜8サイクルの凍結‐融解に溶液を付し、次いで2.0M NaClに1時間〜1日間浸漬し、次いで3.0M NaClに1時間〜1日間浸漬し、次いで4.0M NaClに1時間〜1日間浸漬し、次いで5.0M NaClに1時間〜1日間浸漬させることからなる。
ナノ構造ポリビニルアルコールシータゲルおよびクリオゲル‐官能基化分子添加物:ゲル化前におけるPVA溶液への粒子の添加は、ゲルの熱的および機械的性質の向上をもたらせる。しかしながら、物理的架橋を促進するように官能基化され、同時に応力集中部分として作用しうる、分子添加物の種類がある。多面オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)は、ポリマー物質の機械的性質を向上させうる。POSS分子は官能基化させうるため、PVA鎖と会合して鎖間架橋を高め、応力集中部分として作用するように、それらは調整しうる。それらの極めて小さな大きさおよび多数の官能基は、ナノ粒子播種より良い結果を出す可能性を有している。
前記のシータゲルまたはクリオゲルを得るための方法のすべてが、分散された官能基化POSS分子を含有する溶液に適用される。ある好ましい態様で、負荷電酸素基を呈するように官能基化されたPOSSは、水素結合を促すために用いうる。官能基化されたPOSSはPVA水溶液中へ分散され、シータまたは凍結‐融解ゲル化(0.01mM〜1M オクタTMA POSS(テトラメチルアンモニウム塩)および溶液中5〜20%PVA)に付される。
他の好ましい態様で、アルコール基を呈するように官能基化されたPOSSは、PVA中へ分散され、シータまたは凍結‐融解ゲル化(0.01mM〜1M オクタヒドロキシプロピルジメチルシリルPOSSおよび溶液中5〜20%PVA)に付される。
他の態様で、少くとも一つのPVA鎖および少くとも一つのカルボキシルまたはサルフェート基を呈するように官能基化されたPOSSは、極めて親水性で丈夫な人工軟骨を作製するために用いられる。好ましいPOSS構築物はPOSSの反対側に少くとも一つのPVA鎖を有し、そこでは六つの残留官能基がサルフェートまたはカルボキシル基を呈している。この構造は、調整可能な性質のある人工軟骨を作製するために、シータゲル処理または凍結‐融解でPVAゲル網状構造に“綴じ合わされる”。
図12は、PVAゲルが5M NaCl中で3日間の浸漬により形成された、本発明の好ましい態様によるPVAゲル構造の急速凍結デープエッチ(QFDE)像を示している。バーは100nmを表わす。QFDEはゲル構造をその水和状態に保つ。
図13Aおよび13Bは各々、本発明の好ましい態様に従い、プレキシガラス管を10%PVA溶液で満たし、一回の凍結‐融解サイクル(−21℃で8時間、室温で4時間)を行い、次いで3M NaCl浴に少くとも3日間浸漬し、次いで空気中で60時間脱水し、脱イオン(DI)水に戻すことにより調製された、PVA勾配ヒドロゲルの横断面の断面および拡大図である。図13Aおよび13Bは、空気中脱水により誘導されたPVA中放射状勾配の存在を示している。
図14は、本発明の好ましい態様に従い、透析カートリッジを10%PVA溶液で満たし、次いで片側で3M NaClおよび他の側で6M NaClを有するチャンバーに3日間浸漬することにより調製された、PVA勾配ヒドロゲルの断面図を示している。図15は、透析カートリッジを10%PVA溶液で満たし、次いで片側で3M NaClおよび他の側で6M NaClを有するチャンバーに3日間浸漬することにより調製された、6M NaCl側における図14のPVA勾配ヒドロゲルの横断面の拡大図を示している。図14および15は、ほとんど変化のないNaCl溶液勾配により誘導されたPVA中直線勾配の存在を示している。
図16〜19は、本発明の好ましい態様によるナノ構造PVAヒドロゲルを示している。更に詳しくは、図16は、本発明の好ましい態様に従い、10%PVAの溶液および2重量%ラポナイトクレーを混合し、一回の凍結‐融解サイクルに付し、次いで4M NaCl溶液に少くとも3日間曝すことにより調製された、ナノ構造PVAヒドロゲルを示している。
図17は、本発明の好ましい態様に従い、10%PVAの溶液および4重量%のシリカを混合し、pH=3に滴定し、一回の凍結‐融解サイクルに付し、次いで4M NaCl溶液に少くとも3日間曝すことにより調製された、ナノ構造PVAヒドロゲルを示している。
図18は、本発明の好ましい態様に従い、10%PVAの溶液および4重量%のシリカを混合し、pH=10に滴定し、一回の凍結‐融解サイクルに付し、次いで4M NaCl溶液に少くとも3日間曝すことにより調製された、ナノ構造PVAヒドロゲルを示している。
図19は、本発明の好ましい態様に従い、水中で10%PVAの溶液および0.001MオクタTMA POSSを混合し、次いで一回の凍結‐融解サイクルに付すことにより調製された、ナノ構造PVAヒドロゲルを示している。
図20は、本発明の好ましい態様によるハイブリッドおよびコントロールPVAゲルに関する貯蔵モジュラスをグラフで示している。該グラフは、pH=10を有する4%シリカ/PVAナノ構造ゲル(サンプル番号1)、pH=3を有する4%シリカ/PVAナノ構造ゲル(サンプル番号2)、2%ラポナイト/PVAナノ構造ゲル(サンプル番号3)、0.001M、10%PVA+オクタTMA POSS(サンプル番号4)およびコントロールゲル(サンプル番号5)に関するDMA試験の結果である。すべてのゲルを一回の凍結‐融解サイクルに付し、次いで3M NaCl溶液に3日間浸漬した。DMA試験前に、サンプルをDI水中で少くとも24時間平衡化させた。
本発明の態様は、制御的にゲル化する作業可能流体を得るための、ビニルポリマー、特にポリビニルアルコールの溶液中でフローリー相互作用パラメーターの制御された操作のための方法を提供する。溶媒条件の制御でゲル化速度の制御を行えることから、PVA溶液が部分的にゲル化するだけであるために最終ゲル化前に前駆ゲルの操作または作業を行える期間を得られる。この期間中、PVA溶液は実質的に流体であり、注入、ポンプ輸送、成形できるか、またはいずれか他の操作可能な加工処理を受けることができる。結晶化率、結晶の大きさ、自由体積および機械的性質に制限されないが、それらを含めたヒドロゲルの最終性質は、初期ビニルポリマー濃度、最終混合物中ゲル化剤濃度(即ち、最終溶媒質)、加工温度および混合操作により影響される。
本方法のある好ましい態様が図21Aで示されている。図21Aは、ビニルポリマーおよび第一溶媒を混合するステップ402、ステップ404でゲル化剤をビニルポリマー溶液に混合する、ステップ406でビニルポリマーの融点より高い温度に混合物を加熱することによりビニルポリマー物理的会合のゲル化を防ぐことを含んだ、PVAヒドロゲルを形成する方法400のフローチャートを示している。更に詳しくは、この温度はビニルポリマーで形成される物理的会合の融点より高い。代わりの態様で、ステップ406はステップ404より先である。方法400は更に、本方法の好ましい態様に従い、ビニルポリマー溶液のゲル化を誘導するステップ408、ステップ410で一時的作業可能粘弾性溶液を形成する、例えば、温度、圧力および濃度勾配のうち少くとも一つを調節することにより、ステップ412で粘弾性溶液のゲル化速度を制御または調節する、ステップ414でヒドロゲルを形成することを含んでいる。
図21Bは、本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および提供する方法のフローチャートを示している。これらの方法は、溶媒質を調節することでビニルポリマーベースヒドロゲルを製造することに向けられている。該方法は、例えば80℃以上、所望濃度でビニルポリマーを水に溶解するステップ424を含んでいる。次のステップは、ステップ426で粉末としてまたはステップ430で溶液としてゲル化剤の調製を含む。ゲル化剤はステップ428で自然に液体であってもよい。次のステップ432は、ビニルポリマー溶液へ加えられた際に、次の混合物の臨界シータ条件に近い(それより上または下である)十分な濃度でゲル化剤を用意する。次いで、該方法は、ゲル化剤およびビニル溶液が別々に保存されるステップ434、シリンジまたはポンプのようなチャンバー二以上の器具中へ諸成分を入れるステップ436、および混合装置により体内の空洞のような対象領域へポリマー溶液を注入するステップ438を含んでいる。溶液はステップ410で実質的に混合されて対象領域へ到達する。
ステップ432後の方法400は、代わりに、ビニル溶液を混合しながらゲル化剤を加えるステップ442、溶液が均質になるまでそれが混合されるステップ444、およびビニルポリマー溶液がなお流体かつ作業可能状態にあるステップ446を含んでもよい。方法400は、ポリマー溶液をシリンジまたはポンプへ入れるステップ448、次いで溶液が実質的に結晶化する前に体内の対象領域へ溶液を注入するステップ450を含む。代わりに、ステップ446後、方法400は、特定使用向けに成形された型にポリマー溶液を入れるステップ452、またはポリマー溶液を吹込成形して薄いヒドロゲル膜を形成させるステップ454、またはポリマー溶液をシリンジまたはポンプへ入れるステップ456を含む。次いで、溶液を対象領域へ注入するステップ458、および溶媒質を低下させるようにゲル化剤を誘引するステップ460が後に続く。ステップ462が加工ステップ440、450、452、454または460各々の後に続き、上記加工ステップ後で実質的に生じるゲル化剤の永続的結晶化を含んでいる。
いくつかの態様で、ビニルポリマーは約50〜約300kg/mol分子量の高度加水分解ポリビニルアルコールである。ビニルポリマー溶液は、該溶液の重量ベースでポリビニルアルコール約1重量%(wt%)〜約50wt%である。好ましい態様で、ビニルポリマー溶液は該溶液の重量ベースでポリビニルアルコールの約10〜約20重量%溶液である。
第一溶媒は、ゲル化を行わせるには十分でない低χ値を有する溶媒の群から選択される。いくつかの好ましい態様で、第一溶媒は脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C‐Cアルコールの水溶液およびそれらの混合物を含めた群から選択されるが、それらに限定されない。
第二溶媒、ゲル化剤は、ゲル化剤およびビニル溶液で得られる混合物のχ値を特定温度でχ>0.5に高める性質を有した溶媒の群から選択される。いくつかの態様で、ゲル化剤は、例えばアルカリ塩、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、オリゴマー長さ炭化水素、例えばポリオール、好ましくはポリエチレングリコール、酵素開裂性バイオポリマー、UV開裂性ポリマー、コンドロイチン硫酸、デンプン、ダルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ビグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカン、ペルレカン、フィブロモジュリン、ベルシカン、ニューロカン、ブレビカン、光誘発性ジプラスマローゲンリポソーム、アミノ酸、例えばセリンまたはグリシン、グリセロール、糖またはコラーゲンを含めた群から選択されるが、それらに限定されない。ゲル化剤は固体の形でまたは水溶液として加えられる。
ある好ましい態様では、高温、好ましくはビニルポリマーの融点以上に保たれたビニルポリマーの溶液と混合されることによりゲル化剤が加えられる。融点は示差走査熱量測定(DSC)で適切に調べられる。PVAについて図6で示された点線曲線に関して、高温とは、少くとも57℃より高い、好ましくは80℃より高い、更に好ましくは90℃より高い。一般的に、図6のような示差走査熱量測定結果のグラフ図に関して、最も好ましい高温は融点より高い温度で曲線の直線部分に存在している。
得られた混合物は、それが混合および冷却すると、スピノダル分解を受け始める。混合物は体腔中へ注入され、そこでそれは時間をかけて負荷耐性ゲルを形成する。
ある好ましい態様で、PVA、水および第二または第三成分の全混合物の溶媒質は0.25<χ<0.8、好ましくは0.3<χ<0.5範囲のフローリー相互作用パラメーターを有している。
本発明の好ましい態様は、髄核増強または交換と、例えば膝または股のような関節化接合部で負荷耐性表面の増強を含めた、整形外科療法で用いられる注入用ヒドロゲルを提供する。膝または股増強の場合、関節軟骨の部分的損失による痛みがあるが、全膝または股交換用の候補者ではない患者に対して、注入用ヒドロゲルが早期介在療法に用いられる。
注入用ヒドロゲルは、組織の交換、修復または増強用の非負荷耐性向けにも用いられる。それは熱傷または創傷用の保護コーティングとしても局所的に用いられる。本発明の好ましい方法は、組織で小さな点検口(access holes)が必要とされる最少侵襲向けに特に適している。点検口(the access holes)は約1〜10mmの直径を有し、例えば線維輪、骨組織、軟骨または他の組織に置かれるが、それらに限定されない。
他の好ましい態様で、ゲル化剤は高温に保たれたビニルポリマーの混合溶液へ加えられる。得られた混合物は、それが混合および冷却されると、スピノダル分解を受け始める。次いで、射出または圧縮成形、吹込成形、圧延またはいずれか他の適切な加工処理のような従来の加工手段を用いてヒドロゲル器具を製造するために、この混合物が用いられる。次いでこの器具は、負荷耐性器具、またはある他の非負荷耐性器具、例えば神経カフ、または薬物放出系の一部として移植される。この器具は保護ヒドロゲル膜またはシーリング剤として非生物学的用途でも用いられる。
他の態様で、ビニル溶液およびゲル化剤は前混合されないが、混合を促進する湾曲路を有した混合チャンバーから管を通って同時注入される。前駆ヒドロゲルは、適切なディスペンサーを用いて目標箇所へ直接注入される。図28Aは、ステップ602で第一ディスペンサーのチャンバーにビニルポリマーおよび第一溶媒を供給し、ステップ604で第二ディスペンサーのチャンバーにゲル化剤を入れ、ステップ606で混合チャンバーでビニルポリマー溶液およびゲル化剤を混合して、ビニルポリマーの融点より高い温度に混合物を加熱するステップ608を含んだ、PVAヒドロゲルを形成する方法600のフローチャートを示している。次いで、該方法は、本発明の好ましい態様に従い、ステップ610で混合物を分配し、ステップ612で空洞のような対象領域へ混合物を送出し、およびステップ614で混合物のゲル化を誘導してPVAヒドロゲルを形成させる。ある態様で、ビニルポリマーおよび第一溶媒を供給するステップは、ビニルポリマーおよび第一溶媒を混合するステップを含む。同様に、ある態様で、第二ディスペンサーのチャンバーにゲル化剤を入れるステップは、ゲル化剤および第二溶媒を混合するステップを含む。
図28Bは、代わりの好ましい態様に従いPVAヒドロゲルを形成する方法620のフローチャートを示している。この方法620は図28Aに関して示された方法600と類似しているが、しかしながら第一ディスペンサーのチャンバーでポリマー中、物理的会合の融点より高い温度にポリマー溶液を加熱するステップ(ステップ626)は、混合チャンバーでビニルポリマー溶液およびゲル化剤を混合するステップ(ステップ628)より先である。
図28Aおよび28Bのフローチャートに関して記載されているようにゲル化を誘導するステップは、特にビニルポリマー溶液およびゲル化剤の混合物の温度を結晶化温度(物理的会合の融点)以下に下げる、温度の調節を含んでいる。代わりの好ましい態様で、ゲル化を誘導するステップは、不活性ゲル化剤複合物からの活性ゲル化剤の放出を含む。不活性ゲル化剤複合物には、例えば酵素開裂性ポリマー、熱変性ポリマー、熱/化学的/光/誘発リポソームまたはヒドロゲル、熱誘発不可逆性結晶物質、例えばデンプン、および分解性ポリマーがあるが、それらに限定されない。
図28Cは、本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成するための方法650のフローチャートを示している。該方法650はステップ652でビニルポリマーおよび第一溶媒を混合する。該方法650は、マルチバレルシリンジの一バレルへ溶液を注ぐステップ654、ステップ656でマルチバレルシリンジの他のバレルへゲル化剤を注ぎ、ステップ658でバレルの温度をビニルポリマーの物理的会合の融点以上に上げ、ステップ660でバレルを遠心し、ステップ662で湾曲路を有するカニューレのような静止混合物から対象領域、例えば関節腔へ混合物を注入することを含んでいる。
方法650は、代わりの態様で、ゲル化剤をビニルポリマー溶液中へ混合するステップ666、ステップ668でシリンジバレル中へ溶液を注ぎ、ステップ670でビニルポリマー物理的会合の融点以上にバレルの温度を上げ、ステップ672でバレルを遠心し、ステップ674で対象領域へカニューレまたはシリンジ針から溶液を注入することを含んでいる。ステップ674の前に、シングルバレルは室温で貯蔵でき、該条件下でビニルポリマー溶液がゲル化する。バレルは80℃以上に再加熱して、ゲルを再融解させることができ、ステップ674で対象領域へ注入される。こうして、方法650の各ステップは椎間円板系用の髄核増強物のような物質を提供しうるのである。このゲルは好ましい態様によると関節腔または対象領域と同化してくる。
更に、方法650は、異なる態様として、ステップ662、674で対象領域へのゲル化剤の注入後に、下記ステップ、即ちステップ664で円板増強用の閉鎖器具を挿入するか、またはステップ676で濃ゲル化剤を関節腔の開口中へ注入してゲル化速度および最終機械的性質を局所的に向上させること、または更に操作を要しないステップ678を含んでいる。後のステップ664、676は、例えば円板系で線維輪の増強を図れる。
図29A〜29Fは、本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法700を概略で示している。該方法は、図29Aで、容器AおよびBの内容物が合わされる三つの無菌容器または二つの容器で用意される系を含んでいる。図29Bで示されているように、無菌カートリッジはPVA、溶媒一(水)およびゲル化剤を各々含有している。二種の成分が80℃より高い温度で密閉容器中で混合される。次いで、諸成分が図29Cで示されているようなシングルバレルホルダー704に移され、図29Dで泡を除くために温度を維持しながら遠心される。図29Eで示されているように、ノズルまたはシリンジ針がシングルバレルホルダーに装着され、次いでこれは機械的または電気的に作動(徐々に動く(ratcheted))して混合溶液を送出しうるプランジャーシステムに組み立てられる。上記のように、混合された溶液は作業不能になる前に短時間流動する。
図30A〜30Fは、本発明の代わりの好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。図30Aで示されているように、容器AおよびBの内容物が合わされる三つの無菌容器または二つの容器でヒドロゲル系が用意される。無菌カートリッジはPVA、溶媒一およびゲル化剤を各々含有している。図30Bで示されているように、PVA溶液が混合および加熱され、ゲル化剤も容器Cで加熱される。次いで、図30Cで示されているように、高温を維持しながらツインバレルシステムの別々なチャンバーに諸成分が入れられる。次いでバレル系が遠心および/または真空脱気され、静止ミキサーノズルから注入される。図30Eで示されているように、ノズルまたはシリンジ針が装着され、機械的または電気的に作動(徐々に動く(ratcheted))して混合溶液を送出しうるプランジャーシステムに組み立てられる。混合された溶液は作業不能になる前に短時間流動する。
図31A〜31Eは、本発明の態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための、代わりの好ましい方法を概略で示している。この態様は単一カートリッジで用意されるヒドロゲル系を含んでいる。図31Aで示された無菌ダブルバレルカートリッジは、一方でPVAおよび溶媒一、他方でゲル化剤を含有している。図31Bで示されているように、溶液中でPVAを再融解させるためにカートリッジが加熱される。次いで、図31Cで示されているように、系が遠心および/または真空脱気され、静止ミキサーノズルから注入される。図31Dで示されているように、ノズルまたはシリンジ針が装着され、機械的または電気的に作動(徐々に動く(ratcheted))して混合溶液を送出しうるプランジャーシステムに組み立てられる。混合された溶液は作業不能になる前に短時間流動する。
図32Aは、本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを供給するためのディスペンサー800を概略で示している。該ディスペンサーは、第一チャンバー810、第二チャンバー812、第一チャンバーピストンロッド814、第二チャンバーピストンロッド816、ハウジング818、可動レバー820、固定ハンドル822、混合チャンバー830、混合チャンバー取付具832、分配管834、分配管取付具836、分配管開口部838、温度コントローラー850、コネクター852、混合チャンバーヒーター/クーラー854、チャンバーヒーター/クーラー856、および分配混合物860を含んでいる。好ましい態様で、ビニルポリマー溶液およびゲル化剤は、好ましくは第一チャンバー810および第二チャンバー812に各々前充填された、前混合滅菌溶液として供給される。ヒーター/クーラー854および856は、抵抗加熱、誘導加熱、ウォータージャケットまたはペルティエ効果加熱/冷却素子を含有しうる。温度コントローラー850はディスペンサー800と一体でも、またはコネクター852で接続された別々のユニットでもよい。全体ディスペンサー800は滅菌、前充填され、一回用とされる。
図32Bは、一回用容器808の態様を概略で示している。ディスペンサー802の遠位部分は、一回用容器808を収容するように適合化されている。一回用容器808は、分配チャンネル835と流体連絡した混合チャンバー830と流体連絡する、第一チャンバー810および第二チャンバー812を有している。第一および第二チャンバーは同一でも、または示されているように、大きさが異なり、特定種類および濃度のビニルポリマーおよびゲル化剤と適合するように異なる直径を有してもよい。第一チャンバーピストンロッド814および第二チャンバーピストンロッド816はディスペンサー802の一部であり、分配に際する制御的駆動メカニズムと機能的に接続されて、第一チャンバーピストン848および第二チャンバーピストン849と接触している。
ディスペンサーハウジング818は、第一チャンバー810および第二チャンバー812を包囲するチャンバーヒーター/クーラー856、混合チャンバー830を包囲する混合チャンバーヒーター/クーラー854、および分配チャンネル835を包囲する分配チャンネルクーラー840を含んでいる。分配管834は分配管取付具836を介して分配チャンネル835と連絡している。
好ましい態様で、ビニルポリマー溶液およびゲル化剤は、一回用容器808の、好ましくは第一チャンバー810および第二チャンバー812に各々前充填された、前混合滅菌溶液として供給される。典型的には、第一チャンバー810および第二チャンバー812は、ビニルポリマー溶液およびゲル化剤の変質または汚染を防ぐために、遠位シール844および近位シール846で密閉される。ヒーター/クーラー854および856は、抵抗加熱、誘導加熱、ウォータージャケットまたはペルティエ効果加熱/冷却素子を含有しうる。分配チャンネルクーラー840はウォータージャケットまたはペルティエ効果冷却素子を含有し、粘弾性ポリマー溶液の送出温度を制御するために用いうる。一回用容器808は、典型的には滅菌、前充填され、一回用とされる。ディスペンサー802は一回用でもまたは滅菌可能でもよく、多数の一回用容器の内容物を分配するためにも用いうる。
他の好ましい態様では、得られた注入ゲルが経時的に放出しうる封入薬物を含有するように、薬物はビニルポリマー溶液またはゲル化剤と混合させうる。
更に他の好ましい態様では、少量のラジカルスカベンジャーが約1〜1000ppmの濃度でビニルポリマー溶液へ加えられる。ラジカルスカベンジャーは当業者に公知の一般的なラジカルスカベンジャーでよく、ビタミンEおよびヒドロキノン類を含む。ラジカルスカベンジャーの目的は、使用前に物質を滅菌するために用いられる、電離線、ガンマまたは電子ビーム(e‐ビーム)の作用を最少に抑えるためである。照射は、溶液の濃度に依存して、PVA溶液で架橋または分断を行わせる。
他の態様で、ヒドロゲルの最終機械的性質は、ビニルポリマー溶液の初期出発濃度および最終混合物中ゲル化剤の濃度を変えることにより調整できる。
他の一連の態様で、PVAのゲル化を行わせうる条件の作出には、前記の単独ゲル化剤またはその組合せを含めた活性成分または封鎖物質の内部放出を要する。PVAに対する溶媒のシータ点を変えるために、またはPVAに対する溶媒のコノンソルベンシーを変えるために、“活性”分子種の封鎖に基づく潜在的方法が存在する。このような作用は、封鎖された活性分子種を急速に放出させて、溶解力(solvency)の局所変化を行わせるように働く。十分な封鎖部分が系に分布していれば、溶解力(solvency)の全体的変化を行わせることが可能である。このような方法は、PVAを特に活性なゲル化剤と混合することに伴う沈降問題を軽減させるように働く。リポソーム封鎖、ポリマー封鎖、結晶封鎖、ゲル封入および分解性封入を含めた適切な封鎖系が利用しうる。
好ましい態様で、リポソーム封鎖は外部環境からそれらの内容物を隔離するために脂質小胞を用いている。この系は多糖およびタンパク質ヒドロゲルの急速ゲル化を誘導するために成功して用いられてきた。脂質小胞は、熱または光誘発方法でそれらの内容物を放出するように誘導できる。好ましい態様で、本発明に従い調製されたPVA溶液のゲル化は、適切な誘因の適用後に加速される。適切な誘因として、体温に加熱されたゲル/リポソーム組成物がある。本発明の好ましい態様で、PVA水溶液は、NaClの放出を誘導するために必要な場合より低い温度で、濃NaCl溶液または固体NaClを含有した熱誘発性リポソームの懸濁物と混合される。37℃または37℃付近で体腔のような対象領域への注入時に、リポソームは含有NaClを放出し、溶液のフローリーパラメーターを変えて、PVAのゲル化を行わせる。他の態様では、他の適切なゲル化剤がPVAのゲル化速度に影響を及ぼすために脂質小胞中に封鎖できる。
他の好ましい態様で、封鎖系は多数の小さな断片へのポリマーの開裂によるポリマーの束一的活性の増加に基づいている。一部の複雑なポリマー系では、原分子、例えばコラーゲンより可溶性である断片を分解で生じる。小さく、より活性な成分のこのような増加は、PVAのゲル化を誘導するように溶液全体の溶解力(solvency)を変化させる。適切なポリマー封鎖系(およびそれらの酵素開裂相補体)の一部例が下記表で掲載されているが、それらに限定されない。表は包括的なものではないが、しかしながらポリマー封鎖概念には、すべてのポリマー、特に生体適合性ポリマーまたはバイオポリマー、およびそれらの具体的ポリマー分解メカニズムを含めているつもりである。別の態様では、ゲル化剤の誘発性開裂を生じさせる適切な酵素を封鎖するために誘発リポソームを用いて、上記二アプローチが組み合わされる。
ある態様では、十分に形成された精製I型コラーゲンフィブリルがコラーゲンの変性温度より低い温度でPVA溶液と混合される。コラーゲンフィブリルの変性を誘導するために溶液が加熱され、そのことが可溶性ゼラチン分子をPVA中へ放出させ、PVAの相対溶解度を変え、可能性としてPVAゲル化を誘導するようになる。
Figure 2007520622
他の好ましい態様において、封鎖方法では、不可逆的に融解されて結晶成分の活性に大きな変化をもたらすことがある結晶で、活性部分の閉じ込めを要する。ある好ましい態様で、結晶成分は、グルコースの直線および分岐多量体であるアミラーゼ分子、アミロペクチン分子またはそれらの混合物を含んでなるデンプンである。デンプン粒子は、結晶および非結晶領域を通常含んでなる。溶液中で加熱時にデンプン粒子は水をすぐに吸収し、糊化時にデンプン粒子は高度に浸透活性になる。室温に戻した際、デンプンは糊化するが、再結晶化しない。そのため、PVAは結晶デンプン顆粒と有効に混合されて、PVAが可溶性である溶液を形成しうる。しかしながら、デンプンの糊化点以上での加熱および再冷却時に、溶媒とそれより吸湿性である糊化デンプンとの競合により、PVAはゲル化される。
他の態様で、封鎖方法は適切な誘因(例えば、限定されないが、pH、イオン濃度、温度、照射)で封入内容物を放出するゲルベースカプセルを要する。別の態様で、封鎖方法は分解性マトリックスに活性分子を捕捉させる。好ましい態様で、適切な生分解性ポリマーはポリ(L‐ラクチド)、ポリ(D,L‐ラクチド)、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)、ポリ(ε‐カプロラクトン)、ポリ酸無水物、ポリ(β‐ヒドロキシブチレート)、ポリ(オルトエステル)およびポリホスファゼンに限定されないが、それらを含めた群から選択される。
一般的に、好ましい態様による適切なゲル化剤は、水溶性である溶質であり、PVAより高い親和性を水に対して有している。好ましい態様では、固体ゲル化剤またはゲル化剤の水溶液がPVA水溶液に加えられる。典型的には、約1〜約50重量%PVA範囲のPVA溶液が、脱イオン水を加温するために混合しながら所望量のPVAを加えることにより調製される。例えば、20重量%PVA溶液は、ボルテックス(vortex)ミキサー(VWR BRAND)を用いて最少15分間かけて継続攪拌しながら90℃より高い温度に水浴で加熱された脱イオン水80gにPVA(100kg/mol;99.3+%加水分解;JT Baker)20gを溶解させることにより調製される。得られたPVA溶液は十分溶解および融解された際、実質的に透明であった。場合により鉱油保護層下で、蒸発を避けるためにカバー付き容器に溶液を入れた。
ある好ましい態様で、ホットプレート上50℃で攪拌しながら分子量400ポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10重量%PVA溶液6.0gへ徐々に加え、次いでジャーを振盪した。加えていくと最初に不均質溶液を作った後、物質は均質化し、急速に不透明化した。最終ゲルは(重量で)8%PVA、19%PEG400および73%水であった。図22A〜22Dは、混合の終了後四種の時間経過時の生成物を示している(図22A:0分、図22B:15分後、図22C:2時間後(鉱油保護層下)、および図22D:1日後(ジャーの外))。
ある好ましい態様で、PVAヒドロゲルは10wt%PVA水溶液35.6gを水性5.1M NaCl 18.7gへ混合しながら加えることにより調製し、得られた混合物を強く振盪した。溶液は一時的に不均質であったが、その後滑らかで透明になった。16時間経過すると、溶液は徐々に不透明になり、ゲル化した。最終ゲルは7wt%PVA、8wt%NaClおよび85wt%水であった。図23A〜23Eは調製されたPVAヒドロゲルを表わし、カバー付き皿および軟質バッグへ注いだ後五種の時間経過時の生成物を示している(図23A:0分、図23B:20分後、図23C:1時間後、図23D:2時間後、および図23E:17時間後)。円形状が容易に形成されるほど長く溶液が流体であったことに注目せよ。溶液は軟質バッグ中でも成型され(cast)、変形性環境下で空間充填用の能力を証明した。
他の態様では、10wt%PVA水溶液を4:1比エポキシ接着剤ガン(3M)の大きなバレルへ入れた。分子量400g/molのポリ(エチレン)グリコールを小さなバレルへ入れた。得られたブレンドを室温に保たれた型の中へ3インチ静止混合ノズル(3M)から送出した。得られた混合物は8wt%PVA、20wt%PEG400および72wt%水を有していた。得られた混合物は送出に際して不均質にゲル化することが観察されたが、時間と共に均質な不透明ゲルとなった。
別の好ましい態様で、PVAヒドロゲルは、約95℃で10wt%PVA水溶液にNaClを加え(図24A)、混合しながら2M NaClの最終濃度を作ることにより調製した。約15分後、得られた溶液は滑らかで均質であった(図24B)。得られたPVA溶液を2つのジャーに注ぎ、一方は室温で平衡化させ(図24C:15分後、図24E:1時間後)、他方は削氷(図24D:15分後、図24F:1時間後)上に置いた。溶液は初めに濁っていたが、均質であった。1時間後、室温で冷却されたゲルはやや濁っていたが、氷冷ゲルは主に透明であった。
次いで二サンプルを室温で貯蔵した。一ヶ月後に得られた最終ゲルは有意な離液を示し、見たところ同一であったが、急冷物質はかなり速く不透明化したようである。
図25A〜25Fは、貯蔵後における図24A〜24FのPVAヒドロゲルを示している。(図25A:室温で1時間冷却および室温で12時間貯蔵)、(図25B:氷上で1時間冷却および室温で12時間貯蔵)、(図25C:室温で1時間冷却および室温で1ヶ月間貯蔵)、(図25D:氷上で1時間冷却および室温で1ヶ月間貯蔵)、(図25E:図25CのPVAゲル、離液により放出された水を示せる向き)、および(図25F:図25DのPVAゲル、離液により放出された水を示せる向き)。
好ましい態様で、本発明は、関節の負荷耐性表面間にその場で形成されたポリマークッションを設けることによる、関節疾患の早期治療のための方法を提供する。ある好ましい態様で、PVAクッションは、大腿骨頭を脱臼させ、関節内の露出空洞をPVAおよびゲル化剤の流体液で満たし、大腿骨頭を元に戻し、PVA溶液をその場でゲル化させることにより、股関節内においてその場で形成される。図26A〜26Dで示された例において、約95℃で水浴で加温された20wt%PVA水溶液に適度な速度で乾燥NaClを加え、継続的に混合しながら2.1M NaClの最終濃度を得た。1分後、得られた溶液は滑らかで展性であり、タフィーに似ていた。得られた溶液をミキサーから取り出し、全股交換(THR)システムの冷却ポリエチレンライナーに入れた。THR関節のマッチングコバルト‐クロムボールをライナーソケットへ嵌め込み、室温で1時間放置した。次いで型を脱イオン水へ更に1時間入れ、ボールをポリ(エチレン)ライナーから取り外した。この時点で、PVAの薄く均質で実質的に無傷の半球体を得た。図26Aは、全股交換関節の冷却ポリエチレンライナーおよびマッチングボールにより形成された型を示している。図26Bは、冷却ポリエチレンライナーをPVA溶液で満たし、マッチングボールを適所に置いた後の型を示している。図26Cは、空気中室温で1時間、次いで脱イオン水中室温で1時間後におけるポリエチレンライナー中の成形PVAを示している。図26Dは、ポリエチレンライナーから取り出された成形PVA生成物を示している。
ゲル化のメカニズムは化学的に非特異的であるため、PVAを自己会合させるのに十分な浸透活性を有した事実上いかなる溶質も用いることが可能である。別の好ましい態様では、PVAゲルを形成するためにゲル化剤として天然生体適合性物質を用いることにより、コノンソルベンシーが利用された。ポリビニルアルコールのゲル化を誘導するために、コンドロイチン硫酸(CS,Now Foods Bloomingdale,IN)を用いた。10wt%PVA水溶液を調製し、使用時まで60℃で貯蔵した。第一の例では、加温コンドロイチン硫酸溶液(〜80℃)を加温PVA溶液に加えて、5wt%PVA、7wt%CS混合物を得た。室温への冷却時に、混合物は安定に存続する弱いゲルを2日間かけて形成した(図27A)。第二の例では、CS600mgを60℃で10wt%PVA溶液10mlへ継続攪拌しながら直接加えた。先の例と比較して、混合物は数分以内でかなり堅いゲルを形成し、安定に存続した(図27B)。典型的に関節腔で存在する生体適合性物質を用いてPVAのゲル化を誘導することの成功は、現場関節修復または増強の可能性を示唆している。
別の例では、ヒトの血流中に存在する一般アミノ酸、セリンを脱イオン水に溶解させて、30wt%水溶液を得た。次いでPVA溶液およびセリン溶液を90℃未満で等体積で合わせ、完全に混合して、10%PVA、15%セリンおよび75%水の溶液を得た。溶液は高温時にしばらく流体のままだったが、冷却するとそれは次第にゲル化して、約1時間後にゲルを生じた。
好ましい態様において、ビニルポリマー溶液には、その全体の開示が引用することにより本明細書の開示の一部とされる欧州特許明細書EP1229873B1で記載されているように、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン(PVP)またはPVPのコポリマーのようなビニルポリマーの混合物があるが、それらに限定されない。
好ましい態様において、ビニルポリマー溶液には、相対的溶媒質の操作により物理的会合を形成する成分の混合物もある。
好ましい態様で、ビニルポリマー溶液は、荷電または非荷電粘土(clay)またはシリカのようなナノおよびミクロ微粒子、および/または前記されたPOSSのようなナノ構造官能基化分子を含めた、ナノまたはミクロ構造剤を含有してもよい。これらのナノまたはミクロ微粒子は、ゲル化処理を加速または増強させる核形成部位を提供する。本発明の好ましい態様は、ビニルポリマー溶液中で適切な大きさの粒子により形成される核形成部位がゲル化を増加させて、望ましい機械的性質のゲルをもたらす、というこの認識から効果を発揮している。
損傷した椎間円板の修復
好ましい態様で、本発明の方法およびディスペンサーは損傷した椎間円板の修復に用いられる。図33は2つの椎骨を通る中央矢印方向断面900の概略図であり、各椎骨は椎体920および棘突起922を有する、椎間円板910を囲む2つの椎体は線維輪912、髄核914およびヘルニア領域916を含んでなる、向きが記載されているのは、垂直軸930、前後軸932およびヘルニア領域916への後部アクセス路を示す矢印938である。図34は損傷した椎間円板910の横断面940の略図であり、隣接椎骨の棘突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、および欠陥部918から突出したヘルニア領域916を示している。
簡単には、損傷した椎間円板は、ヘルニア領域を丁寧に切除し、本発明のビニルポリマーヒドロゲルの粘弾性溶液を注入して髄核物質の一部または実質的全部を取り替え、前記の方法によりビニルポリマーヒドロゲルのゲル化速度を制御し、注入部位を閉じることにより修復される。ビニルポリマーヒドロゲルの粘弾性溶液は、ヘルニア部位の線維輪の欠陥箇所および/または線維輪の他の箇所に注入できる。注入部位および欠陥部は、前記のように、現場でゲル化剤の更なる適用で、ヒドロゲルの局所物理的性質を変えることにより閉じられる。一方、注入部位および欠陥部は、体腔の注入部位または他の欠陥部を密閉、補強または閉鎖する公知の医療器具の使用により密閉および補強できる。適切なこのような器具は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる公開国際特許出願WO01/12107およびWO02/054978で開示されている。
図35は、本発明の好ましい態様による損傷した椎間円板910の修復方法におけるステップの図であり、横断面960、隣接椎骨の棘突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、およびゲル化剤およびビニルポリマーの粘弾性混合物952を分配する、欠陥部918に導入された分配管934を示している。好ましい態様で、ヒドロゲルの局所物理的性質は、所望量のゲル化剤およびビニルポリマーの粘弾性混合物の分配後に、同一分配管934からゲル化剤の追加により調整される。追加のゲル化剤は、ビニルポリマー溶液と初めに混合されるゲル化剤と同一でもまたは異なってもよい。
代わりの態様では、ゲル化剤の追加によりヒドロゲルの局所物理的性質を変える代わりに、補強するためにシーラーが用いられる。図36は、本発明の好ましい態様による損傷した椎間円板910の修復におけるステップの概略図であり、横断面962、隣接椎骨の棘突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、欠陥部918、ゲル化剤およびビニルポリマーの混合物952、シーラント970、固定具918、固定具送達機器950を示している。シーラント970は、シーラント970周辺で欠陥部918からの流体および他の物質の通過を妨げるように形成される物質から構成される。シーラント970は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、膨張ポリテトラフルオロエチレン(e‐PTFE)、NYLONTM、MARLEXTM、高密度ポリエチレンおよび/またはコラーゲンに限定されないが、それらを含めた様々な物質のうち一種または数種から構成される。引用することにより本明細書の開示の一部とされるWO02/054978参照。シーラント970の配置後、固定具918、例えば縫合糸または軟組織アンカーが固定具送達機器950を用いて取り付けられる。
代わりの態様では、バリヤが用いられる。図37は、本発明の好ましい態様による損傷した椎間円板910の修復におけるステップの概略図であり、横断面962、隣接椎骨の棘突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、欠陥部918、ゲル化剤およびビニルポリマーの混合物952、バリヤ974、固定具972および固定具送達機器950を示している。バリヤ974は好ましくは性質上柔らかく、DACRONTMまたはNYLONTM、合成ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、PVA線維のような織込物質から構成でき、e‐PTFEのような膨張物質でもよい。一方、バリヤ974はコラーゲンのような生物学的物質であってもよい。バリヤ974は、例えばバルーンまたは親水性物質のように膨張性でもよい。WO02/054978参照。バリヤはインビトロで製造されたPVAヒドロゲルの薄膜でもよい。
適宜に、本発明の粘弾性溶液は欠陥部以外の部位に導入される。図38Aは、本発明の好ましい態様による損傷した椎間円板910の修復におけるステップの概略図であり、横断面968、隣接椎骨の棘突起922および横突起924、線維輪912、脊髄942の輪郭、欠陥部918、髄核で既に占められた空間を実質的に満たすゲル化剤およびビニルポリマーの混合物952、バリヤ976、および分配管934を示している。
図38Bは、本発明の好ましい態様による損傷した椎間円板910の修復方法におけるステップの図であり、横断面969、隣接椎骨の棘突起922および横突起924、線維輪912、髄核914、脊髄942の輪郭、ゲル化剤およびビニルポリマーの粘弾性混合物952を分配する、欠陥部918に導入された分配管934、および冷却プローブ934を示している。このような好ましい態様で、ゲル化剤およびビニルポリマーの粘弾性混合物のゲル化は、冷却プローブ936を用いて温度を調整することにより制御される。冷却プローブ936は分配管934と接触して、場合によりそれに取り付けられても、または別々に独立して設置されてもよい。冷却プローブ936が分配管934と接触している一部の態様では、接触エリアが断熱されて、冷却効果がプローブ936の先端に局在化しているため、送出箇所でヒドロゲルのゲル化を促進する。他の態様では、接触エリアが断熱されていないため、ゲル化剤およびビニルポリマーの粘弾性混合物の送出温度およびゲル化の制御を行える。
ある好ましい態様で、ビニルポリマーはPVAであり、ゲル化剤はポリエチレングリコールである。全関連重量分率のPVAを調製するための操作は類似している。各成分の濃度は水成分のみに対して測定された重量%である。例えば、重量で20重量%PVA溶液を得るために、継続的に攪拌するためにボルテックス(vortex)ミキサー(VWR International,West Chester,PA)を用いて最少15分間かけて水浴中90+℃で脱イオン水80gにPVA(100kg/mol、99.3+%加水分解、Mallinckrodt Baker Inc.,Phillipsburg,NJ)20gを溶解させた。PVAが十分に溶解および融解されると、溶液は実質的に透明であった。溶液の蒸発は適切なカバーの使用で最少に抑えられた。
様々な濃度のPVA(水に対して3、5、7.5および10重量%)の溶液をゲル化剤として20%ポリエチレングリコール(400g/mol、水に対する重量%)でゲル化させた。ゲルを秤量し、脱水し、脱水されたゲルを秤量することにより、最終ゲルのPVA分を重量測定した。一般的に、更なる架橋で最終ゲル中更に多量のPVAを生じる。低い出発PVA濃度の際は、出発濃度とはまさに非依存性のヒドロゲルを生じ、一方10%出発溶液から形成されたヒドロゲルは比較的高い最終PVA分を有していた。
Figure 2007520622
図39は、様々な濃度(水成分に対して3、5、7.5および10重量%)のPVAから調製され、ゲル化剤として20%ポリエチレングリコール(400g/mol、水に対する重量%)でゲル化された、PVAヒドロゲルを含有しているバイアルの群1000を示している。3重量%PVA1002、5重量%PVA1004および7.5重量%PVA1006から形成されたヒドロゲルは、最終ヒドロゲル中で類似したPVA濃度と一致する、類似した不透明度を示した(上記表3参照)。対照的に、10重量%PVA1008から形成されたヒドロゲルはそれより不透明に見え、最終ヒドロゲル中で比較的高いPVA濃度を有していた(上記表3参照)。
ゲル化動態に及ぼす出発PVA濃度の効果を研究した。ゲル化剤ポリエチレングリコール(400g/mol、出発PVA溶液中、水に対して25重量%の最終濃度)を、水に対して10、15、20および25重量%PVAの水中出発濃度を有するポリビニルアルコール(100,000g/mol)の水溶液へ混合しながら加えた。ポリエチレングリコールをPVA溶液中、水に対して25重量%の最終濃度まで加えた。溶液が最初に濁った時点、溶液が不透明に思えた時点、溶液が流動を止めた時点、および溶液が物理的に固体となった時点を求めることにより、溶液のゲル化時間を実験で測定した。高濃度になるほど、速いゲル化を生じた(ポリエチレングリコールとの混合開始から分で測定された時間)。
Figure 2007520622
ゲル化動態に及ぼす出発ゲル化剤濃度の効果も研究した。水に対して10重量%のポリビニルアルコール(100,000g/mol)溶液を様々な濃度のポリエチレングリコール(400g/mol)と混合して、下記表5で示されているようなPVA溶液の水成分に対する最終PEG濃度を得た。溶液が最初に濁った時点、溶液が不透明に思えた時点、溶液が流動を止めた時点、および溶液が物理的に固体となった時点を求めることにより、溶液のゲル化時間を実験で測定した。高濃度になるほど、速いゲル化を生じた(分で測定された時間)。高濃度のPEGゲル化剤になるほど、堅いヒドロゲルを形成することが観察された。
Figure 2007520622
上記で詳しく説明されているように、活性ゲル化剤の溶媒質は、PVA鎖が水性環境とどのように相互作用するかを決定している。ポリマー鎖と水性環境との相互作用を測定するための一般技術から、溶媒中ヒドロゲルの膨潤を調べている。“良”溶媒はヒドロゲルを膨潤させ、”不良”溶媒はヒドロゲルを収縮させる。10%PVA凍結‐融解ゲルを標準技術を用いて得た。次いで、このヒドロゲルを様々な濃度の分子量数PEGおよびNaClの溶液に入れた。得られたデータが図40で示されている。図40は、10%PVA凍結‐融解ゲルが様々な濃度の分子量数PEG(白三角=200g/mol、黒丸=400g/mol、白四角=600g/mol、黒三角=1000g/mol、黒菱形=1500g/molおよび黒四角=20,000g/mol)とNaClの溶液(白丸)に入れられた、研究の結果のグラフ図である。プロットの左側に伸びる曲線は、活性成分が同様の膨潤(ひいては溶媒質)挙動を得る上で少ない質量で済むことを示している。
一定の膨潤比がPEGデータから求められると、相当濃度対PEG分子量が得られる。図41は、PEG400の20重量%溶液と効果が同等となる、所定分子量のPEGの濃度を示すためにプロットされた、図40の研究の結果のグラフ図である。
ある好ましい態様では、フルオロスコピー、CTまたはX線技術のような診断放射線学技術を用いて実施または評価される操作でその可視性を高めるために、放射線不透過物質がヒドロゲルに加えられる。適切な放射線不透過化合物には、バリウム、ビスマス、臭素、ヨウ素、ヨウ化物、銀、タンタル、トリウム、チタン、タングステン、ジルコニウムおよびそれらの混合物を含有した無機または有機化合物がある。例示される無機放射線不透過化合物には、硫酸バリウム、酸化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、次炭酸ビスマス、次硝酸ビスマス、三酸化ビスマス、ヨウ化銀、酸化トリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムおよびそれらの混合物がある。例示される有機放射線不透過化合物には、ジアトリゾエート類、例えばジアトリゾ酸ナトリウムおよびジアトリゾ酸メグルミン、ヨウ素化有機化合物、例えばイオベンザム酸、イオカルム酸、イオセタム酸、イオジパミド、イオジキサノール、イオヘキソール、イオプロミド、イオパミドール、イオタラメート、イオベルゾール、イオキサグレート、メトリザミドおよびそれらの混合物がある。ある好ましい態様で、放射線不透過剤はビニルポリマー溶液およびゲル化剤と混合されて、ゲル化時に放射線不透過ヒドロゲルを生じる。他の態様で、ヒドロゲルはヨウ化カリウムのような無機イオンの第一溶液で負荷され、次いで硝酸銀のような無機イオンの第二溶液と接触され、それによりヒドロゲル内のその場で放射線不透過粒子を沈降させる。Horak,D.,et al.,Radiopaque poly(2-hydroxyethyl mathacrylate)particles containing silver iodide complexes tested on cell culture.Biomaterials.1998 Jul,19(14):1303-7参照。一方、ハロゲン化鎖エクステンダーも当業界で知られている技術を用いてポリマーマトリックスへ配合してよい。Horak,D.,et al.,New radiopaque polyHEMA-based hydrogel particles.J.Biomed.Mat.Res.,1997,34:183-188参照。
本発明のある好ましい態様では、放射線不透過ヒドロゲルを次のように調製した。上記技術を用いてPVA水溶液(水成分に対して10重量%)を硫酸バリウム(出発PVA溶液中の水に対して10重量%の最終濃度)およびポリエチレングリコール(400g/mol、出発PVA溶液中の水に対して25重量%の最終濃度)と混合し、混合物をシリンジへ入れた。混合物を完全にゲル化させた。次いで、シリンジを95℃の温度に加熱した。次いで、得られた液体溶液を上記のような本発明の方法に従いブタ椎間円板の髄核の空洞中へ注入した。物質をゲル化させて、X線撮影で視覚化しうる放射線不透過ヒドロゲルを得た。図42は、ブタ脊柱の一部の放射線写真1100の一部であり、隣接椎骨の椎体1102、1104に挟まれた椎間円板910を示し、椎間円板910の空の核腔中へ注入された、上記のように硫酸バリウムで調製された放射線不透過ヒドロゲル1120を示している。図43は、ブタ脊柱の切開部分の写真1200であり、椎間円板910、線維輪912、空の髄核腔1212、および空の核腔1212から取り出されて外科用メス1202に載せられた、硫酸バリウムで調製された放射線不透過ヒドロゲル1120の形態(cast)を示している。
本発明の他の好ましい態様では、上記プロトコールで硫酸バリウムの代わりに10wt%のヨウ素を用いることで放射線不透過ヒドロゲルを調製した。ヨウ素がヒドロゲルから拡散するまで、得られたヒドロゲルは一時的に放射線不透過性である。
別の態様で、ヒドロゲルは異なる分子量のPVAを含有しうる。例えば、水中PVAの20重量%溶液が等量の高分子量PVA(100,000g/mol)および低分子量PVA(20,000g/mol)を水と混合することにより調製される。次いで、このPVA溶液は、ヒドロゲルを形成するために、異なる分子量ポリエチレングリコール(400〜1500g/mol)の混合物であるゲル化剤を加えることによりゲル化される。
別の態様で、本発明はヒト患者で行われる整形外科処置のような脊椎動物の治療用薬剤の製造向けに適した放射線不透過ヒドロゲルを提供する。一般的には、PVA水溶液(5〜50wt%)が調製され、上記の技術を用いて高温で所望濃度(5〜50wt%)でポリエチレングリコール(50〜10,000g/molの分子量範囲)のようなゲル化剤と混合され、次いでシリンジのような送出器具中へ入れられる。送出器具は、好ましくは、ビニルポリマーおよびゲル化剤用の一回用容器を含んでなる。好ましくは、硫酸バリウムのような無機放射線不透過剤またはイオプロミド(N,N′‐ビス(2,3‐ジヒドロキシプロピル)‐2,4,6‐トリヨード‐5‐〔(メトキシアセチル)アミノ〕‐N‐メチル‐1,3‐ベンゼンジカルボキサミド,ULTRAVIST,Berlex,Montville,NJ)のような有機放射線不透過剤も室温へ冷却する前に溶液へ加えられる。送出器具は、使用時までゲル化剤を失わないように密閉される。
混合物が冷却され、ゲルを形成させる。好ましくは、ゲルは室温または室温より低い温度で所望期間(1時間〜1ヶ月間)熟成(aging)される。次いで、ゲルは電離線(例えば、ガンマまたは電子ビーム)で滅菌される。
送出器具の使用前、または供給時に、一回用容器は、ゲルを融解させてエラストマーポリマー溶液を形成するために加熱される。典型的には適切な大きさの針またはカニューレからの注入により、エラストマーポリマー溶液が対象者の体腔へ送出される。好ましくは、エラストマーポリマー溶液は、一回用容器と針またはカニューレとの間に存在する熱だめに流して、融解ゲルを60℃未満、好ましくは50℃以下、更に好ましくは約37℃に冷却させる。最適には、エラストマーポリマー溶液は体腔周辺組織の温度の数℃以内の温度で送出される。一部の態様で、エラストマーポリマー溶液は約25℃未満、更に好ましくは約10℃未満の温度で送出される。
好ましい態様で、ヒドロゲル混合物は、体腔、例えば大腿骨頭および寛骨臼間の髄核内または膝の半月板領域内の空洞、心臓の壁、神経組織、肩、肘、足首、手首、指および足指の関節腔、乳房および頭蓋に注入される。
他の態様では、PVA水溶液(5〜50wt%)が調製され、好ましくは上記のような放射線不透過剤と混合される。好ましい態様で、PVA混合物は、少くとも二つのチャンバーを有し、送出器具、例えば二重バレルシリンジの少くとも一部を含んでなる、一回用容器のチャンバーへ入れられる。ゲル化剤は一回用容器の他のチャンバーへ入れられる。次いで、送出器具が電離線(例えば、ガンマまたは電子ビーム)で滅菌される。
送出器具の使用前、または送出器具の供給時に、一回用容器は加熱される。二成分、PVA混合物およびゲル化剤が混合され、適切な大きさの針またはカニューレから体腔へ送出される。好ましくは、PVA混合物をゲル化剤と混合してエラストマーポリマー溶液を形成させるために、加熱されたPVA混合物およびゲル化剤が送出器具と針またはカニューレとの間に存在する混合器具へ流される。混合器具は、加熱混合物融解ゲルを60℃未満、好ましくは50℃以下、更に好ましくは約37℃に冷却させる熱だめとしても作用しうる。最適には、エラストマーポリマー溶液は体腔周辺組織の温度の数℃以内の温度で送出される。二重バレルシリンジが用いられるならば、二重バレルシリンジにおけるバレルの直径は、PVA溶液と混合されたゲル化剤で所望濃度を得られるように大きさで分けしてもよい。
別の態様では、PVA水溶液(5〜50wt%)が調製され、上記の技術を用いて高温で所望濃度(5〜50wt%)でポリエチレングリコール(50〜10,000g/molの分子量範囲)のようなゲル化剤と混合され、次いでシリンジのような送出器具または一回用容器中へ入れられる。好ましくは、個別成分が適切な手段、例えば照射、エチレンオキシドまたは当業者に公知の他の方法により予め滅菌される。次いで、ゲルを形成させるために混合物が冷却される。好ましくは、室温まで冷却する前に放射線不透過剤も溶液へ加えられる。送出器具は、使用時までゲル化剤を失わないように密閉される。好ましくは、ゲルは室温または室温より低い温度で所望期間(1時間〜3ヶ月間)熟成(aging)される。
他の態様では、PVA水溶液(5〜50wt%)が調製され、好ましくは上記のような放射線不透過剤と混合される。好ましい態様で、PVA混合物は、少くとも二つのチャンバーを有し、送出器具、例えば二重バレルシリンジの少くとも一部を含んでなる、一回用容器のチャンバーへ入れられる。ゲル化剤は一回用容器の他のチャンバーへ入れられる。次いで、送出器具は電離線(例えば、ガンマまたは電子ビーム)で滅菌される。送出器具の使用前、または供給時に、一回用容器が加熱される。二成分、PVA混合物およびゲル化剤が混合され、適切な大きさの針またはカニューレから体腔へ送出される。好ましくは、PVA混合物をゲル化剤と混合してエラストマーポリマー溶液を形成させるために、加熱されたPVA混合物およびゲル化剤が送出器具と針またはカニューレとの間に存在する混合器具に流される。
他の態様において、エラストマーポリマー溶液を送出する方法は、体腔内へ入れた後その場でエラストマーポリマー溶液を冷却するステップを更に含んでもよい。エラストマーポリマー溶液が注入された後で、狭い熱だめまたは“冷却プローブ”が外科的点検口(access holes)、例えばインプレース(in-place)カニューレに入れられる。この冷却プローブは体外の熱だめに接続された熱伝導ロッドでも、またはそれは所望の温度で塩水のような流体を含有する薄いステンレス鋼管のような、流体用の循環システムの一部でもよい。この冷却プローブは、空洞中の全ビニルポリマー溶液が60℃未満、好ましくは50℃以下、更に好ましくは約37℃、最適には体腔周辺組織の温度の数℃以内の温度に冷却されるよう保証する上で十分長く適所に維持される。他の態様で、冷却プローブは、37℃未満、更に好ましくは20℃未満、更に好ましくは5℃未満にポリマー溶液を冷却させるために用いられる。
請求項は、その効果に言及していない限り、記載された順序または要素に限定されると読むべきではない。したがって、下記請求項およびその相当物の範囲および精神内に属するすべての態様が、発明として請求される。
図1Aおよび1Bは、椎骨の横突起、棘突起および椎体、脊髄および脊髄神経、および椎間円板の髄核を示した、脊椎解剖構造の概略図である。椎間円板の線維輪は、側、前および後面で髄核を取り囲んでいる。 図2は、本発明の好ましい態様による、所定温度時におけるフローリー相互作用パラメーターχとポリマーの濃度(Φ)との関係のグラフ図である。横座標は、χ=0.25の際、第一溶媒中のポリマー溶液(下)と第二溶媒中のポリマー溶液(上)を分けている。矢印および菱形は、溶媒一を溶媒二で取り替えることにより得られたχに及ぼす効果を示している。 図3は、本発明の好ましい態様による、1日間(上)および3日間(下)の硬化溶液浸漬後における透析器カセット中の10%PVA溶液を示している。左から右へ:1.5M NaCl、2.0M NaClおよび3.0M NaCl。1.5M溶液はPVAをゲル化せず、2.0M溶液および3.0M溶液はPVAをゲル化させる。サンプルが時間と共に圧縮されると、カセットの端部から2.0Mゲルの漸次的不透明化および3Mゲルの収縮があることに注目せよ(矢印で示されている)。 図4は、本発明の好ましい態様による均一シータゲルを示している。PVAゲルは、3.0M(各対の左像)および2.0M(右像)NaCl硬化溶液への浸漬により生成した。ゲルが均一で不透明であることに注目せよ。3.0M NaClに曝されたゲルはさほど膨潤せず、脱イオン水で平衡化後は更にコンパクトである。 図5は、空間的変動NaCl濃度に曝された10%PVA溶液を用いた、本発明の好ましい態様による勾配ゲルの例を示している。ゲルの半透明性および膨潤比双方の変動に注目せよ。 図6は、本発明の好ましい態様に従い熱サイクルに付されたPVAクリオゲルおよび“シータゲル”で得られた結果を比較している、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示している。実線は3.0M NaClに3日間浸漬された10%PVAを示している。点線は0.02℃/minの加温割合で10℃から−20℃への熱サイクルに4回付された10%PVAを示している。 図7は、本発明の好ましい態様に従い、異なるモル濃度の浸漬溶液中でゲル化された後、脱イオン水で十分に平衡化されたPVAヒドロゲル中PVAパーセント間の関係をグラフで示している。連結点は、3日間浸漬された10%PVAの測定値を表わし、単一点は3M NaClに12日間浸漬された20%PVA溶液の初期溶液を表わしている。20%PVA溶液の場合、膨潤比およびPVA%の3日値は、10%PVA溶液の場合(グラフには示されていない。)に匹敵した。3M NaClで12日間の浸漬(および脱イオン水で5日間の平衡化)後、20%PVA溶液は29%PVAであるゲルを形成した。 図8は、本発明の好ましい態様に従い、異なるモル濃度の浸漬溶液中でゲル化された後、脱イオン水で十分に平衡化されたPVAヒドロゲルの重量膨潤比をグラフで示している。連結点は、3日間浸漬された10%PVAの測定値を表わし、単一点は3M NaClに12日間浸漬された20%PVA溶液の初期溶液を表わしている。20%PVA溶液の場合、膨潤比およびPVA%の3日値は、10%PVA溶液の場合(グラフには示されていない。)に匹敵した。 図9は、本発明の好ましい態様による、熟成(aging)時間に対する3M NaCl、20%初期PVA濃度および1N静荷重時のPVAシータゲルの動的モジュラスを示している。 図10は、本発明の好ましい態様による、溶液モル濃度(2Mおよび3M NaCl)に対する20%初期PVA濃度および0.25N静荷重時のPVAシータゲルの複素モジュラス(貯蔵(G′)および損失(G″)モジュラス)を示している。 図11は、本発明の好ましい態様に従い、勾配ゲル160を作るために用いられた“Ussing”型チャンバーの概略図である。 図12は、PVAゲルが5M NaCl中で3日間の浸漬により形成された、本発明の好ましい態様によるPVAゲル構造の急速凍結デープエッチ(QFDE)像を示している。バーは100nmを表わす。 図13Aおよび13Bは各々、本発明の好ましい態様に従い、プレキシガラス管を10%PVA溶液で満たし、一回の凍結‐融解サイクル(−21℃で8時間、室温で4時間)を行い、次いで3M NaCl浴に少くとも3日間浸漬し、次いで空気中で60時間脱水し、脱イオン(DI)水に戻すことにより調製された、PVA勾配ヒドロゲルの横断面の断面および拡大図である。 図14は、本発明の好ましい態様に従い、透析カートリッジを10%PVA溶液で満たし、次いで片側で3M NaClおよび他の側で6M NaClを有するチャンバーに3日間浸漬することにより調製された、PVA勾配ヒドロゲルの断面図を示している。 図15は、透析カートリッジを10%PVA溶液で満たし、次いで片側で3M NaClおよび他の側で6M NaClを有するチャンバーに3日間浸漬することにより調製された、6M NaCl側における図14のPVA勾配ヒドロゲルの横断面の拡大図を示している。 図16は、本発明の好ましい態様に従い、10%PVAの溶液および2重量%ラポナイトクレーを混合し、一回の凍結‐融解サイクルに付し、次いで4M NaCl溶液に少くとも3日間付すことにより調製された、ナノ構造PVAヒドロゲルを示している。 図17は、本発明の好ましい態様に従い、10%PVAの溶液および4重量%のシリカを混合し、pH=3に滴定し、一回の凍結‐融解サイクルに付し、次いで4M NaCl溶液に少くとも3日間付すことにより調製された、ナノ構造PVAヒドロゲルを示している。 図18は、本発明の好ましい態様に従い、10%PVAの溶液および4重量%のシリカを混合し、pH=10に滴定し、一回の凍結‐融解サイクルに付し、次いで4M NaCl溶液に少くとも3日間付すことにより調製された、ナノ構造PVAヒドロゲルを示している。 図19は、本発明の好ましい態様に従い、水中で10%PVAの溶液およびオクタテトラメチルアンモニウム多面オリゴマーシルセスキオキサン(オクタTMA POSS)を混合し、次いで一回の凍結‐融解サイクルに付すことにより調製された、ナノ構造PVAヒドロゲルを示している。 図20は、本発明の好ましい態様によるハイブリッドおよびコントロールPVAゲルに関する貯蔵モジュラスをグラフで示している。 図21Aは、本発明の好ましい態様に従いPVAヒドロゲルを形成する方法のフローチャートを示している。 図21Bは、本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および提供する方法のフローチャートを示している。 図22A〜22Dは、本発明の好ましい態様に従い分子量400ポリ(エチレングリコール)(PEG400、Sigma Aldrich)1.4gを10wt%PVA水溶液6gへ混合しながら加えることにより調製されたPVAヒドロゲルを示し、混合の終了後の四種の時間経過時の生成物を示している(図22A:0分、図22B:15分後、図22C:2時間後(鉱油保護層下)、および図22D:1日後(ジャーの外))。 図23A〜23Eは、本発明の好ましい態様に従い10wt%PVA水溶液35.6gを水性5.1M NaCl 18.7gへ混合しながら加え、得られた混合物を強く振盪することにより調製されたPVAヒドロゲルを示し、カバーされた皿および軟質バッグへ注いだ後の五種の時間経過時の生成物を示している(図23A:0分、図23B:20分後、図23C:1時間後、図23D:2時間後、および図23E:17時間後) 図24A〜24Fは、本発明の好ましい態様に従い、約95℃で10wt%PVA水溶液にNaClを混合しながら加え(図24A)、2M NaClの最終濃度を作る(図24B)ことにより調製された、PVAヒドロゲルを示している。15分間混合した後、得られた混合液の一部を2つの容器に注ぎ、室温(図24C:15分後、図24E:1時間後)または削氷(図24D:15分後、図24F:1時間後)上で冷却させた。 図25A〜25Fは、貯蔵後における図24A〜24FのPVAヒドロゲルを示している。(図25A:室温で1時間冷却および室温で12時間貯蔵)、(図25B:氷上で1時間冷却および室温で12時間貯蔵)、(図25C:室温で1時間冷却および室温で1ヶ月間貯蔵)、(図25D:氷上で1時間冷却および室温で1ヶ月間貯蔵)、(図25E:図25CのPVAゲル、離液により放出された水を示せる向き)、および(図25F:図25DのPVAゲル、離液により放出された水を示せる向き)。 図26A〜26Dは、本発明の好ましい態様に従い、95℃で10wt%PVA水溶液にNaClを混合しながら加え、2.1M NaClの最終濃度を作ることにより調製されたPVAヒドロゲルを示している。図26Aは全股交換関節の冷却ポリエチレンライナーおよびマッチングボールにより形成された型を示している。図26Bは冷却ポリエチレンライナーをPVA溶液で満たし、マッチングボールを適所に置いた後の型を示している。図26Cは空気中室温で1時間、次いで脱イオン水中室温で1時間後におけるポリエチレンライナー中成形PVAを示している。図26Dはポリエチレンライナーから取り出された成形PVA生成物を示している。 図27A〜27Bは、本発明の好ましい態様に従い調製されたコンドロイチン硫酸(CS)を配合したPVAヒドロゲルを示している。図27Aは約80℃の加温CS溶液を約60℃の10wt%PVA水溶液へ加えて5wt%PVA、7wt%CS混合物を得ることにより形成されたPVAヒドロゲルを示し、図27BはCS約600mgを10wt%PVA水溶液10mlへ加えることにより形成されたPVAヒドロゲルを示している。 図28Aは、本発明の好ましい態様に従いPVAヒドロゲルを形成するための方法のフローチャートを示している。 図28Bは、本発明の好ましい態様に従いPVAヒドロゲルを形成するための方法のフローチャートを示している。 図28Cは、本発明の好ましい態様に従いPVAヒドロゲルを形成するための方法のフローチャートを示している。 本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の代わりの好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の代わりの好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の代わりの好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の代わりの好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の代わりの好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 本発明の代わりの好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 図31A〜31Eは、本発明の代わりの好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを形成および分配するための方法を概略で示している。 図32Aは、本発明の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを供給するためのディスペンサーを概略で示している。 図32Bは、本発明の他の好ましい態様に従いビニルポリマーヒドロゲルを供給するためのディスペンサーを概略で示している。 図33は、二つの椎骨および椎間円板が目に見えている、機能性脊椎ユニットの一部の中央矢印方向断面図を示している。 図34は損傷した椎間円板の横断面を表わし、隣接椎骨の棘突起および横突起、線維輪および髄核を示している。 図35は、本発明の好ましい態様に従い損傷した椎間円板を修復するための方法で、ゲル化剤およびビニルポリマーの混合物を分配するステップについて示している。 図36は、本発明の好ましい態様に従い損傷した椎間円板を修復するための方法におけるステップを表わし、特にゲル化剤およびビニルポリマーの混合物、シーラント、固定具および固定具デリバリー機器を示している。 図37は、本発明の好ましい態様に従い損傷した椎間円板を修復するための方法におけるステップを表わし、特にゲル化剤およびビニルポリマーの混合物、バリヤ、固定具および固定具デリバリー機器を示している。 図38Aは、本発明の好ましい態様に従い損傷した椎間円板を修復するための方法におけるステップを表わし、特に、髄核で既に占められている空間を実質的に満たすゲル化剤およびビニルポリマーの混合物、バリヤおよび分配管を示している。 図38Bは、本発明の好ましい態様に従い損傷した椎間円板を修復するための方法でゲル化剤およびビニルポリマーの混合物を分配するステップを表わし、分配管934に隣接する冷却プローブ936を示している。 図39は、様々な濃度(水成分に対して3、5、7.5および10重量%)のPVAから調製され、ゲル化剤として20%ポリエチレングリコール(400g/mol、水に対する重量%)でゲル化された、PVAヒドロゲルを含有しているバイアルの群1000を示している。3重量%PVA1002、5重量%PVA1004および7.5重量%PVA1006から形成されたヒドロゲルは、最終ヒドロゲル中で類似したPVA濃度と一致する、類似した不透明度を示した(表3参照)。対照的に、10重量%PVA1008から形成されたヒドロゲルはそれより不透明にみえ、最終ヒドロゲル中で比較的高いPVA濃度を有していた(表3参照)。 図40は、10%PVA凍結‐融解ゲルが様々な濃度の分子量数PEG(白三角=200g/mol、黒丸=400g/mol、白四角=600g/mol、黒三角=1000g/mol、黒菱形=1500g/mol、および黒四角=20,000g/mol)とNaClの溶液(白丸)に入れられた、研究の結果のグラフ図である。プロットの左側における曲線は、活性成分が同様の膨潤(ひいては溶媒質)挙動を得る上で少ない質量で済むことを示している。 図41は、PEG400の20重量%溶液と効果が同等となる、所定分子量のPEGの濃度を示すためにプロットされた、図40の研究の結果のグラフ図である。 図42は、ブタ脊柱の一部の放射線写真1100の一部であり、隣接椎骨の椎体1102、1104に挟まれた椎間円板910を示し、椎間円板910の空の核腔中へ注入された放射線不透過ヒドロゲル1120を示している。 図43は、ブタ脊柱の切開部分の写真1200であり、椎間円板910、線維輪912、空の髄核腔1212、および空の核腔1212から取り出されて外科用メス1202に載せられた放射線不透過ヒドロゲル1120の外観を示している。

Claims (52)

  1. 少くとも1つのチャンバーを有した一回用容器と、
    第一溶媒に溶解されたビニルポリマーを含んでなるビニルポリマー溶液を含有した第一チャンバーと、そして
    ゲル化剤とを含んでなり、
    ここで前記ゲル化剤と前記ビニルポリマー溶液との混合は、ビニルポリマー溶液より高いフローリー相互作用パラメーターを有した混合物を生じるものであることを特徴とする、製品。
  2. 前記第一チャンバーが、第一溶媒に溶解されたビニルポリマーを含んでなるビニルポリマー溶液とゲル化剤との混合物を含有している、請求項1に記載の製品。
  3. 前記ゲル化剤を含有した第二チャンバーを更に含んでなる、請求項1に記載の製品。
  4. 前記第一チャンバーおよび前記第二チャンバーと機能的連絡して流出口を有する第三チャンバーを更に含んでなり、前記第一チャンバーからのビニルポリマー溶液および前記第二チャンバーからのゲル化剤が第三チャンバーで混合されて、混合物が第三チャンバーの流出口から出ていく、請求項3に記載の製品。
  5. 前記ビニルポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  6. 前記ビニルポリマーが約50〜約300kg/mol分子量の高度加水分解ポリビニルアルコールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  7. 前記ビニルポリマーが約100kg/mol分子量の高度加水分解ポリビニルアルコールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  8. 前記ビニルポリマー溶液が、該溶液の重量ベースで約1〜50重量%ポリビニルアルコールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  9. 前記ビニルポリマー溶液が、該溶液の重量ベースで約10〜20重量%ポリビニルアルコールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  10. 前記ビニルポリマー溶液と接触するときに、前記ゲル化剤が活性である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  11. 前記ビニルポリマー溶液と接触するときに、前記ゲル化剤が不活性である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  12. 前記ビニルポリマー溶液および前記ゲル化剤の混合物のフローリー相互作用パラメーターが0.25〜1.0の範囲である、請求項2または4に記載の製品。
  13. 前記ビニルポリマー溶液および前記ゲル化剤の混合物のフローリー相互作用パラメーターが約0.25〜約0.5である、請求項2または4に記載の製品。
  14. 前記ビニルポリマー溶液および前記ゲル化剤の混合物のフローリー相互作用パラメーターが少くとも約0.5である、請求項2または4に記載の製品。
  15. 前記第一溶媒が、脱イオン水、ジメチルスルホキシド、C‐Cアルコールの水溶液およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  16. 前記ゲル化剤が、塩、アルコール、ポリオール、ポリエーテル、アミノ酸、糖、タンパク質、多糖、それらの水溶液およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  17. 前記ゲル化剤が、コンドロイチン硫酸、ダルマタン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン硫酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  18. 前記ゲル化剤が、ビグリカン、シンデカン、ケラトカン、デコリン、アグレカンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  19. 前記ゲル化剤がアルカリ金属塩である、請求項16に記載の製品。
  20. 前記アルカリ金属塩が塩化ナトリウムである、請求項19に記載の製品。
  21. 前記ゲル化剤が、塩化ナトリウム約1.5〜約6.0モルの水溶液である、請求項20に記載の製品。
  22. 前記ゲル化剤が、メタノール、エタノール、i‐プロパノール、t‐プロパノール、t‐ブタノールおよびそれらの混合物からなる群より選択されるアルコールの水溶液である、請求項16に記載の製品。
  23. 前記ゲル化剤がポリエーテルである、請求項16に記載の製品。
  24. 前記ゲル化剤が、約100〜20,000Daの平均分子量を有するポリエチレングリコールおよびそれらの混合物である、請求項23に記載の製品。
  25. 前記ゲル化剤が、PEG100、PEG200、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG20000およびそれらの混合物からなる群より選択されるポリエチレングリコールである、請求項23に記載の製品。
  26. 前記ビニルポリマーが放射線不透過物質を更に含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品。
  27. 請求項1〜4のいずれか一項に記載された製品を収容するように適合化されたディスペンサー。
  28. 請求項1〜4のいずれか一項に記載された製品を加熱するように更に適合化された、請求項27に記載のディスペンサー。
  29. 第一溶媒に溶解された加水分解ビニルポリマーを用意し、
    活性ゲル化剤を用意し、
    活性ゲル化剤を加水分解ビニルポリマーと混合し、そして
    混合物からヒドロゲルを形成させる、
    ステップを含んでなるヒドロゲル成分を形成させる方法。
  30. 粘弾性ポリマー溶液を形成させるためにヒドロゲル中架橋の融点より高い温度にヒドロゲルを加熱し、
    粘弾性ポリマー溶液を少くとも部分的に囲まれた空間へ送出し、そして
    空間内でヒドロゲルを形成するように送出混合物をゲル化させる、
    ステップを更に含んでなる、請求項29に記載の方法。
  31. 前記ヒドロゲルを加熱するステップが、熱源との直接または間接接触による伝導で行われる、請求項30に記載の方法。
  32. 前記ヒドロゲルを加熱するステップが、赤外線またはマイクロ波のヒドロゲルによる吸収で行われる、請求項30に記載の方法。
  33. 前記粘弾性ポリマー溶液が約50℃以下の温度で送出される、請求項30に記載の方法。
  34. 前記粘弾性ポリマー溶液が約40℃以下の温度で送出される、請求項30に記載の方法。
  35. 前記空間が脊椎動物の体腔である、請求項30に記載の方法。
  36. 前記空間が型である、請求項30に記載の方法。
  37. 前記粘弾性ポリマー溶液が前記空間と同化する、請求項30に記載の方法。
  38. 前記粘弾性ポリマー溶液が、前記体腔周辺組織の正常体温の数℃以内の温度で送出される、請求項35に記載の方法。
  39. 前記粘弾性ポリマー溶液が約34〜40℃の温度で送出される、請求項35に記載の方法。
  40. 前記空間が椎間円板内にある、請求項35に記載の方法。
  41. 前記空間が関節化接合部内にある、請求項35に記載の方法。
  42. 前記空間が実際のまたは潜在的な皮下空間である、請求項35に記載の方法。
  43. 前記ビニルポリマーが放射線不透過物質を更に含んでなる、請求項29に記載の方法。
  44. 前記ビニルポリマー溶液が、分子量の異なるビニルポリマーの混合物を含有している、請求項29に記載の方法。
  45. 前記粘弾性ポリマー溶液が、より速いゲル化を誘導して閉鎖プラグを形成するように、送出入口部位で局所的に冷却される、請求項30に記載の方法。
  46. 前記冷却が、粘弾性ポリマー溶液を冷却プローブと接触させることにより行われる、請求項45に記載の方法。
  47. 前記囲まれた空間の壁が、該壁でビニルポリマー溶液の速いゲル化を誘導するように前処理される、請求項30に記載の方法。
  48. 前記前処理が、前記囲まれた空間の壁を冷却プローブで冷却するか、または冷塩水で流水洗浄することによる、請求項47に記載の方法。
  49. 前記前処理が、前記囲まれた空間の内壁をゲル化剤で被覆することからなる、請求項47に記載の方法。
  50. 前記囲まれた空間中の液体ビニルポリマー溶液が、注入後に中心から局所的に冷却される、請求項30に記載の方法。
  51. 前記冷却が、粘弾性ポリマー溶液を冷却プローブと接触させることにより行われる、請求項50に記載の方法。
  52. バリヤ物質が、ヒドロゲルからゲル化剤の拡散を遅らせるために、前記囲まれた空間に置かれる、請求項30に記載の方法。
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