JP2001517494A - 組織エンジニアリングのための改良されたヒドロゲル - Google Patents

組織エンジニアリングのための改良されたヒドロゲル

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JP2001517494A JP2000512578A JP2000512578A JP2001517494A JP 2001517494 A JP2001517494 A JP 2001517494A JP 2000512578 A JP2000512578 A JP 2000512578A JP 2000512578 A JP2000512578 A JP 2000512578A JP 2001517494 A JP2001517494 A JP 2001517494A
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cells
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ボーランド,カーミット・エム
チョウ,タオ
ネルソン,ゴードン・ピー
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リプロジェネシス・インコーポレーテッド
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、架橋するとヒドロゲルを形成する生物分解性の生物学的適合性ポリマーを含んだ、動物の体内に埋め込むのに使用するための組成物を提供する。好ましい態様においては、ポリマーが多価イオンによって、さらに好ましくは多価イオンの易溶性塩と多価イオンの難溶性塩によって架橋され、これらの成分が、ある程度架橋した注入可能なヒドロゲルを形成する混合物として組み合わされ、混合物のコンシステンシーが、ある程度架橋したヒドロゲル混合物を動物の体内に埋め込むのに適しており、このとき埋め込まれたある程度架橋したヒドロゲルが、その場で充分に架橋したヒドロゲルを形成する。本混合物は、多価架橋用イオンの結合に関して生物学的適合性ポリマーと競争する生物学的適合性の金属イオン封鎖剤をさらに含有するのが好ましい。本発明の組成物は、生きた細胞を含んでも含まなくてもよい。本発明はさらに、本発明の組成物を、所望により生きた細胞を含有する埋め込み物として、動物の体内に埋め込むための方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本特許出願は、出願番号PCT/US97/22859、ならびに米国特許出
願第08/762,733号、第60/051,084号、および第60/059
,558号の一部継続出願であり、各出願を参照として本明細書中に特に含める 。
【0002】
【発明の背景】
発明の分野 本発明は、インビボにて新たな組織をつくり出すために、粒子、アルギン酸塩
、細胞、および/またはヒドロゲル粒子の懸濁液を埋め込む方法に関する。
【0003】 関連技術の概説 からだの外形が異常である場合、それが外傷性のものであろうと、先天的なも
のであろうと、あるいは審美的なものであろうと、矯正するためには現時点にお
いては侵襲性の外科的手法が必要とされる。さらに、追加物を必要とする肢体変
形部に対しては、異物形成術による人工装具の使用を必要とする場合が多いが、
こうした人工装具は感染や突出という問題を孕んでいる。特定の用途における組
織バルクを得るのにコラーゲンペーストが使用されており〔たとえば、括約筋欠
損による内因性失禁を矯正するのに‘コンチゲン(Contigen)’が使用されてい
る〕、またはテフロン(Teflon)(登録商標)ペースト(尿管膀胱逆流、声帯麻
痺)なども使用されている。しかしながら、コラーゲンはインビボにて急速に(
6〜12ヶ月)分解することが明らかになっており、バルクを保持するためには
何回も処置を施さねばならず、したがって、たとえば頭蓋や顔面の変形部の矯正
に対しては満足できるものとは言えない。同様に、他の配合物におけるアルギン
酸塩も、インビボではわずか一ヶ月で分解を起こすことが示されている。テフロ
ンペースト粒子は、注入部位から、おそらくは脳のほうに優先的に移動すること
が示されている。
【0004】 生物学的適合性ポリマーを骨格として使用する組織エンジニアリング(tissue engineering)の技術は、頭蓋顎顔面の外科医術において現在使用されている人
工装具材料の代替物をつくり出す手段として、ならびに病んだ組織、欠損を起こ
した組織、または傷ついた組織に置き換わるための器官同等物を形成させるため
の手段として研究されている。組織エンジニアリングは、単離した細胞(isolat
ed cells)と生物学的適合性ポリマーとで形成される構成物から新しい組織を形
態形成させることを含む。細胞をポリマーマトリックスに接着させ、そしてこれ
を埋め込んで軟骨性構造物を形成させることができる。こうした処置は、Vacant
iらによる米国特許第5,041,138号に記載のように、埋め込む前にマトリ ックスを造形して所望の解剖学的構造物とし、そしてこの造形されたマトリック
スを外科的に埋め込むことによって果たすことができる。
【0005】 部位特異的で制御された寸法をもつ頭蓋・顔面の骨格に追加の自原的な軟骨ま
たは硬骨を供給する簡単な方法が見いだされれば、外科的な外傷が少なくなり、
同種異系移植片または異物形成術による人工装具の必要性がなくなる。所望の部
位への注入または簡単な施用によって移植することができれば、また多数の単離
した細胞を植え付けさせることができれば、大規模な外科手術を行わずに自原性
組織で頭蓋・顔面の骨軟骨の骨格を増強することができる。さらに、単離した細
胞をうまく埋め込むことができれば、細胞の組織培養が増大する可能性が高まる
【0006】 多数の単離細胞を植え付けることができ、また大規模な外科手術を行わずに自
原性組織で頭蓋・顔面の骨軟骨の骨格を増強することができる、注入による移植
は、明らかに望ましい技術である。しかしながら、知られているように、解離し
た細胞(dissociated cell)を皮下または体のある領域(たとえば腹膜など)内
に注入することは成功していない。細胞は、おそらくは食作用と細胞の死滅によ
って比較的速やかに除去される。
【0007】 細胞−ポリマー構成物がより侵襲性の低い形で供給され、そしてその供給部位
に保持されることによるシステムへ組織エンジニアリング技術を広げるべく、形
成外科等の分野への組織エンジニアリングの応用可能性が検討されている。解離
した細胞と生物学的適合性ポリマーとのヒドロゲル形態の混合物は、細胞組織と
非細胞物質を含んだ軟骨性構造物(分解を起こし、これを除去すると、自然に生
成する組織または軟骨と組織学的に且つ化学的に同じ組織または軟骨が残る)と
を形成させるのに使用されている。生物学的適合性で生物分解性のヒドロゲルを
徐々に重合させることが、多数の単離細胞を患者の体内に供給して器官同等物ま
たは組織(たとえば軟骨)をつくり出す手段として有用であることが示されてい
る。ゲルは、組織の植え付けを促進し、新しい細胞が成長するための三次元テン
プレートをもたらすと考えられ、またこうして得られる組織は、組成および組織
学において自然に生成する組織と同様である。
【0008】 細胞−ポリマー構成物をつくり出すのに固体ポリマー系を使用する場合とは異
なり、重合してゲル支持マトリックス(a gel support matrix)を形成する液体
組成物は、要求される再構成または増強に適うようにより簡単に造形および成形
することができる。液体ポリマー系はさらに、注入可能な供給物として使用でき
る可能性が高く、こうした注入可能な供給物は、切り開いて行う埋め込みの場合
よりはるかに侵襲性が低い。植え付けと軟骨の形成を促進させるために、多数の
単離軟骨細胞を供給する手段における成分としてアルギン酸カルシウムゲルが提
唱されている。これら初期の研究では、国際特許公報WO94/25080に記
載のように、徐々に重合するアルギン酸カルシウムゲルを配合すること、また新
しい軟骨を生成させるべく多数の軟骨細胞を注入によって供給するためにこれら
のゲルを使用することに重点が置かれた。
【0009】 ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)を患者の尿道下の部位に注入したと
き、尿管膀胱逆流の内視鏡による処置が1981年に初めて導入された。10年
以上の後には、理想的な注入可能物質に関して研究が続けられている。離れた器
官に粒子が移動するということで、ポリテトラフルオロエチレンペーストの使用
に関して関心が高まった。埋め込み物の体積損失のために再処置が高い割合で必
要となることから、コラーゲンの有用性が制約される。理想的な埋め込み物質は
非移動性であって、非抗原性であって、内視鏡的に供給されるものでなければな
らないし、またその体積を維持するものでなければならない。この目標に向かっ
て、インビトロおよびインビボでの軟骨細胞の影響を調べるべく長期間にわたっ
て研究を行った結果、生物分解性のポリマーであるアルギン酸塩を軟骨細胞と一
緒に埋め込むと、アルギン酸塩は、インビボにおける軟骨構成物の注入供給と保
全のための合成基質(a synthetic substrate)として作用することがわかり、 この系を、豚をサンプルとして尿管膀胱逆流の治療に関して試験した。しかしな
がら、この系の挙動は満足できるものではなかった。
【0010】 細胞を含有する注入可能な組成物は、適切な細胞を培地M199中に懸濁させ
、そしてこの細胞懸濁液を等量の2%アルギン酸ナトリウム溶液と混合し、次い
で固体の硫酸カルシウム粉末を加えることによりアルギン酸塩の架橋を開始させ
て、ヒドロゲルを形成させることによって製造されている。このような組成物は
典型的に、ヒドロゲル中に1%のアルギン酸ナトリウムを含有し、不溶性の硫酸
カルシウムは、懸濁液1ml当たり約200mgの量にて存在する。細胞懸濁液
から得られる組成物中に少量の塩化カルシウムを加えてもよいが、通常は最終懸
濁液において1ml当たり0.1mg未満である。経験によれば、このような懸 濁液は、時間オーダーの潜伏期間を有し、次いで粘度が急激に増大して、粘度増
大の30分以内に比較的硬い、場合によっては脆いゲルを生成する。
【0011】 しかしながら、上記ヒドロゲル−細胞懸濁液のコンシステンシーは、注入を必
要とする患者の体内への注入に使用するには全く満足できるものではない。場合
によっては、ヒドロゲル−細胞懸濁液は、患者の体内に注入する前に硬化する。
このようなゲルは、既知形状の構造的欠損を矯正するための、患者の体内に埋め
込むための予備形成構造物を製造するのに有用であるが、予備形成構造物を受け
入れるための充分なサイズのキャビティを切り開くために大規模な外科手術を必
要とする。一方、ある種のヒドロゲル−細胞懸濁液は、体の所望の場所に注入す
るまで低い粘度を保持するが、このような懸濁液は、患者のそのときに存在して
いるキャビティまたはスペースを想定している。このようなゲルは、はっきりし
た構造が存在しない場合には使用することができない。したがって、患者の体内
に埋め込まれたときに、その形状を保持するための充分なコンシステンシーを有
し、埋め込みに必要な外科手術の程度が最小限に抑えられるよう注入可能特性を
維持するようなヒドロゲル−細胞懸濁液が求められている。特に、臨床試験にお
いてその使用が許容されない、現在の注入可能な軟骨配合物の欠点としては、(
a)組織面(tissue plane)を分かつのに粘度が不充分であること、および注入
しても血管外に遊出しないこと;(b)注入が行えるだけの充分に高い粘度を達
成する前に必要とされる時間が長いこと;および(c)配合時の成分の分配がよ
くないためにロット間の性能が一定しないこと;などが挙げられる。
【0012】
【発明の概要】
本発明の目的は、外科的部位に注入することができ、注入後の所望形状を想定
していて、注入後において所望形状を保持するような組成物を提供することにあ
る。具体的に言えば、本発明の目的は、注入時においてポリテフ(POLYTEF)( 登録商標)テフロンペーストと類似のコンシステンシーを有していて、適切な施
用を可能にするに足る時間にわたって当該コンシステンシーを保持するような埋
め込み可能な組成物を提供することにある。
【0013】 本発明の他の目的は、所望の部位から移動せず、重力に抗してその形状を保持
し、そして注入用カニューレを介してのポンプ輸送を含めた幾つかの手段によっ
て特定の領域に施用できるような埋め込み物を提供することにある。これらの目
的および他の目的は、以下に記載の実施態様の1つ以上によって満たされる。
【0014】 1つの態様においては、本発明は、生物学的適合性ポリマー(好ましくは、あ
る程度硬化した安定なヒドロゲルを形成するポリマー)を含む、動物の体内に注
入するための組成物を提供する。動物体内への注入に使用されるので、組成物は
インビトロにて塊状物に形成されたときに、重力に等しい力を受けても流動に
抵抗するペーストであるのが好ましい。一般には、本発明の注入可能なペースト
は、30ミクロン〜500ミクロンの範囲の線寸法を有する異形ヒドロゲル粒子
で主として構成される懸濁物であり、このとき前記注入可能なペーストが少なく
とも0.1kgf/cm2のゲル強度を有し、粒子形態ヒドロゲル(hydrogel in
the particles)が少なくとも3kgf/cm2のゲル強度を有する。このような
組成物は、脆いヒドロゲルを形成させ、そしてこのヒドロゲルをオリフィスに強
制的に通す(これによってヒドロゲルが破砕されて異形粒子が形成される)こと
によって製造することができる。このようにして得られる組成物(粒子を含有す
る)は、動物体内において組織面を分かつに足るコンシステンシーを保持するペ
ーストであり得る。
【0015】 好ましい態様においては、本発明の組成物中の生物学的適合性ポリマーはアル
ギ酸塩またはアルギン酸塩タイプの物質であり、さらに好ましくは、本発明の組
成物が多価金属カチオンの易溶性塩と多価カチオンの難溶性塩とをさらに含む。
易溶性塩と難溶性塩は、どちらもカルシウム塩であってよい。これとは別に、易
溶性塩が塩化カルシウムを含むことができ、難溶性塩が、銅カチオン、カルシウ
ムカチオン、アルミニウムカチオン、マグネシウムカチオン、ストロンチウムカ
チオン、バリウムカチオン、錫カチオン、二官能有機カチオン、三官能有機カチ
オン、および四官能有機カチオンからなる群から選ばれるカチオンと、低分子量
ジカルボン酸イオン、サルフェートイオン、およびカルボネートイオンからなる
群から選ばれるアニオンとを含むことができる。特に好ましい実施態様において
は、難溶性塩が硫酸カルシウムであって、混合物が塩化カルシウム/硫酸カルシ
ウムを0.001〜100(好ましくは0.0075〜1.0)の重量比にて含有 する。本発明の組成物は、少なくとも0.5重量%のアルギン酸塩と、アルギン 酸塩1g当たり少なくとも約0.001gの塩化カルシウムとを含有するのが好 ましい。他の好ましい態様においては、本発明の組成物は、カルシウムイオンの
結合に対してアルギン酸塩と競争する金属イオン封鎖剤をさらに含み、このとき
金属イオン封鎖剤はホスフェートアニオンを含んでよい。
【0016】 ヒドロゲルを形成する生物学的適合性ポリマーを含んだ本発明の注入可能な組
成物は、所望により生きた細胞(たとえば軟骨細胞、軟骨を形成する他の細胞、
骨芽細胞、硬骨を形成する他の細胞、筋細胞、線維芽細胞、および器官細胞)を
さらに含んでよい。典型的には、細胞は、解離細胞および/または細胞凝集物で
ある。
【0017】 他の態様においては、本発明は、ヒドロゲルを形成することのできる生物学的
適合性ポリマー(あるいは、ポリマーは、幾らか架橋させた予備形成のヒドロゲ
ルとして供給してもよい)と、当該ヒドロゲルを強制的に通して、これにより幾
らか架橋させたヒドロゲルを破砕させるオリフィス(一般には、オリフィスは、
シリンジニードルまたはカニューレの一部を構成している)とを含む、本発明の
方法において使用するためのキットを提供する。1つの実施態様においては、本
発明は、動物体内への注入に適したある程度硬化したヒドロゲル組成物(インビ においてはヒドロゲルが充分に硬化する)を調製するためのキットを提供し、
このとき前記キットは、(1)多価カチオンで架橋させるとヒドロゲルを形成す
ることができる生物学的適合性ポリマー、(2)多価金属カチオンの易溶性塩、
および(3)多価カチオンの難溶性塩を含む。好ましい態様においては、キット
は、(1)二価カチオンによって架橋させるとヒドロゲルを形成するポリマー、
好ましいポリマーはアルギン酸塩である;(2)二価金属カチオンを含有する易
溶性塩、好ましい易溶性塩は塩化カルシウムである;ならびに(3)銅カチオン
、カルシウムカチオン、アルミニウムカチオン、マグネシウムカチオン、ストロ
ンチウムカチオン、バリウムカチオン、錫カチオン、二官能有機カチオン、三官
能有機カチオン、および四官能有機カチオンからなる群から選ばれるカチオンと
、低分子量ジカルボン酸イオン、サルフェートイオン、およびカルボネートイオ
ンからなる群から選ばれるアニオンとを含んだ難溶性塩、好ましい難溶性塩は硫
酸カルシウムである;を含む。本発明のキットは、構成成分(所望により、哺乳
類動物細胞の懸濁液を含む)を組み合わせたときに、組み合わされた構成成分が
30分以内に、ポリマーを1.5%の濃度にて、易溶性塩を1.5mg/Lの濃度
にて、そして難溶性塩を15mg/Lの濃度にて含有する、注入に適したある程
度硬化したヒドロゲルを形成し、そしてさらに、前記のある程度硬化したヒドロ
ゲルが、少なくとも4時間にわたって実質的な粘度変化を受けない、というよう
に構成成分を提供する。
【0018】 キットの構成成分は、別個の容器に収容されていてもよいし、あるいはキット
において構成成分の2種以上が組み合わされていてもよい。所望により、バイオ
ポリマーと塩の少なくとも1種は粉末形態をとってよく、また好ましい態様にお
いては、バイオポリマー粉末と塩粉末が1つの容器中に組み合わされる。難溶性
塩とバイオポリマーがどちらも粉末形態であって、且つ1つの容器中に組み合わ
されるのがさらに好ましい。他の態様においては、キットは、カルシウムイオン
の結合に対してアルギン酸塩と競争する金属イオン封鎖剤をさらに含み、このと
き金属イオン封鎖剤は別個の容器に収容されていてもよいし、あるいは1種以上
の他の成分と組み合わせてもよい。
【0019】 さらに他の態様においては、本発明は、解剖学的欠損の部位にて動物体内に本
発明の組成物を埋め込むことを含む、解剖学的欠損の治療を必要とする動物にお
ける解剖学的欠損を治療するための方法を提供する。1つの態様においては、解
剖学的欠損の治療を必要とする動物における解剖学的欠損を治療するための本発
明の方法は、(1)生物分解性で生物学的適合性のある程度硬化したヒドロゲル
を調製する工程、このとき前記のある程度硬化したヒドロゲルが生きた細胞を所
望により含有してもよい;(2)ヒドロゲルを加圧下にてオリフィスに通すこと
によってヒドロゲルを破砕して、ヒドロゲル粒子を含有する懸濁液を得る工程;
および(3)前記懸濁液を欠損部位にて動物体内に埋め込む工程、このとき埋め
込み後の前記ヒドロゲル懸濁液が、組織を取り囲むことによる線維形成反応と埋
め込み物の血管新生を引き起こす;を含む。これとは別に、解剖学的欠損の治療
を必要とする動物における解剖学的欠損を治療するための本発明の方法は、(1
)バイオポリマーまたは所望により生きた細胞を含有する変性バイオポリマーを
含んだ生物学的適合性ヒドロゲルを調製する工程;(2)ヒドロゲルを加圧下に
てオリフィスに通して、組織面を分かつに足るコンシステンシーを有する流動性
組成物を得る工程;および(3)前記流動性組成物を欠損部位にて動物体内に埋
め込む工程;を含む。
【0020】 他の実施態様においては、本発明は、ある程度硬化した生物学的適合性ヒドロ
ゲルの粒状懸濁液を調製する工程、および前記ヒドロゲル懸濁液を欠損部位にて
動物体内に埋め込む工程を含む、解剖学的欠損の治療を必要とする動物における
解剖学的欠損を治療するための方法を提供し、このとき前記ヒドロゲルは、ほぼ
無傷ではあるが幾らか架橋させたゲル(たとえば、ゲル強度=6.59kgf/ cm2)として供給され、22−ゲージのカニューレを介して10ml/分の割 合で注入すると、ゲル強度が低下する(たとえば、ゲル強度=0.231kgf /cm2)。この方法において使用される組成物は、室温にてある程度硬化した ヒドロゲルを形成し、このヒドロゲルは、動物体内への注入に適していて、注入
後にインビボにて十分に硬化する。
【0021】 好ましい実施態様おいては、本発明は、容易に得られる架橋用カチオン源(一
般には塩化カルシウムの形で)を、好ましくは約15分にて生物学的適合性のア
ニオンポリマー(たとえばアルギン酸塩)を反応開始させ、ある程度の架橋を起
こさせて濃厚ペーストのコンシステンシーを付与するに足るレベルにて提供する
。アルギン酸塩は、配合物中の全ての水を、弱く架橋したゲル中に組み込むに足
る量にて存在するのがさらに好ましい(典型的には、このような注入可能な細胞
懸濁液中には約0.5%以上のアルギン酸塩が存在する)。このような配合物は 、操作場面での迅速な使用に対し、手順の完了を可能にするだけの時間にわたっ
て良好な“注入可能”コンシステンシーを保持しつつ速やかに硬化する。ある程
度架橋したヒドロゲルは、24時間以上にわたってこのコンシステンシーを保持
するのが好ましい。ヒドロゲルの調製を可能にし、そしてある程度架橋した状態
での上市を可能にするに足る時間にわたって、コンシステンシーが比較的安定で
あるのがさらに好ましい。一般に、注入される懸濁液は、注入されたときに組織
をより容易に分かつ濃厚なコンシステンシーを有し、注入部位からの管外遊出を
起こしにくい。
【0022】 好ましい実施態様においては、本発明は、生物分解性で生物学的適合性のポリ
マー(典型的には、多価イオンによって架橋させるとヒドロゲルを形成し、多価
イオンは多価イオンの可溶性塩の形態をとっているのが好ましい)と多価イオン
の難溶性塩とを含有する懸濁液を、欠損部位にて動物体内に埋め込むことによっ
て、動物における解剖学的欠損を治療するための方法を提供する。これらの成分
は、混合物が、ある程度硬化した注入可能なヒドロゲルを形成するよう組み合わ
され、ある程度硬化したヒドロゲルが、所望のサイズと形状をもつ埋め込み物を
その場で形成し、そのサイズと形状を埋め込み後のある時間にわたって保持し、
そして動物の細胞がヒドロゲル埋め込み物を侵して、硬化したヒドロゲルと実質
的に同じ形状を有する線維細胞塊(a fibrous cell mass)を形成する。
【0023】 さらに他の態様においては、本発明は、解剖学的欠損部位にて動物体内に、ア
ルギン酸塩、変性アルギン酸塩、合成アルギン酸塩、または半合成アルギン酸塩
から選ばれるアルギン酸塩タイプの物質を含んだ組成物を埋め込むことによって
、解剖学的欠損の治療を必要とする動物における解剖学的欠損を治療する方法を
提供する。この組成物におけるアルギン酸塩タイプの物質は、本発明に関して記
載のような注入に対して充分な粘度を有する、キャリヤーの中に配合される非架
橋の物質またはわずかに架橋した物質であってもよいし、あるいはアルギン酸塩
タイプの物質は、アルギン酸塩タイプの物質を含有する組成物が本明細書に記載
の注入に適したものである限り、後述の架橋を含めたいかなる公知の方法にて架
橋されていてもよい。
【0024】
【発明の詳細な記述】
本明細書に開示の生物学的適合性ポリマーで一部が構成された粒子を含むデバ
イスを埋め込むと、埋め込み物中への線維組織の内方成長が引き起こされ、この
内方成長により、機械的に安定な三次元組織マトリックスが形成され、この三次
元マトリックスが、スペースを占める軟質組織と同等の特性をもつ別個のマスを
もたらす、ということを本発明者らは見いだした。本発明は、タンパク質または
ポリペプチドではない生物学的適合性ポリマーを含む複数の粒子で本質的に構成
される、動物の体内に埋め込むことのできるデバイスを提供する。埋め込むと、
デバイスを構成している別個のポリマー粒子が集まって、適切な粒子表面特性と
共に、埋め込まれたデバイス中への線維組織の内方成長を引き起こすに足る粒子
間スペースを有するようになる。埋め込まれたデバイスは、注入後に、線維組織
の内方成長を可能にするに足る時間にわたって、所望の形状と場所を保持するに
足るコンシステンシーを有する。
【0025】 典型的には、本発明のデバイスは、力を加えたときに塑性変形を受け、また力
を取り除いたときにその形状を保持する変形可能なマスである。本発明のデバイ
スは、その形状が重力によって変形を受けないか、あるいは少なくとも、ごくわ
ずかな程度にしか変形されない(すなわち、実質的に同じ形状が保持される)の
が好ましい。本発明のデバイスは、カニューレを介して体内へ注入するのに適し
ており、注入されると、デバイスは、軟質組織において組織面を分かつに足るコ
ンシステンシーを有する。注入されると、デバイスは、それが配置されたのと実
質的に同じ場所に留まり、また実質的に同じサイズと形状を保持する(すなわち
、形状とサイズのごくわずかな変化は起こることがあるけれども、埋め込んだ部
位からの粒子の移動は殆どあるいは全くない)。注入によって埋め込まれようと
、内視鏡的外科手術によって埋め込まれようと、あるいは他の手段によって埋め
込まれようと、埋め込まれたデバイスは、動物の体内に別個の埋め込まれたマス
をもたらす。このことは、埋め込み物が、動物の組織中への分散または循環とは
全く異なって、動物の体内に所定の三次元形状と所定の場所を有することを意味
している。別個のマスは機械的に安定であり、このことは、長時間(3〜6ヶ月
またはそれ以上)にわたって実質的に同じ場所に実質的に同じ三次元形状を保持
するということを意味している。
【0026】 本発明のデバイスは複数の分離した粒子を含み、これらの粒子は凝集状態のデ
バイスを形成する。適切なポリマー、および本発明の粒子とデバイス形成するた
めの方法について以下に説明するが、適切な粒子とデバイスを形成するための他
の方法は、本発明の開示内容を考察すれば当業者には明らかであり、これらの方
法も本発明の範囲内に含まれる。組織エンジニアリングに使用するのに適した生
物学的適合性ポリマーはよく知られており、これらポリマーのいずれもが、本発
明のデバイスにおいて使用することができる。ヒドロゲルを形成するポリマーが
下記にて詳細に説明されており、幾つかの用途に対してはこのようなポリマーが
好ましいが、デバイスを構成する粒状凝集物が本明細書に記載の組織の内方成長
を促進する限り、ヒドロゲルの形態をとらない生物学的適合性粒子も使用するこ
とができる。粒子は一般に、生物学的適合性で緩衝剤処理した水溶液、血液、リ
ンパ液、等張性の塩水、間質性液体、細胞培養培地、または動物体内への注入に
適した他の液体であってよい連続相の中に分散される。粒子を配合できる適切な
連続相が、ヒドロゲルとの使用に関して下記に説明されており、このような組成
物はさらに、非ヒドロゲル粒子と共に使用することもできる。
【0027】 本発明のデバイス中の粒子は生物分解性であってよいが、デバイスの全ての用
途にとって必要であるわけではない。1つの態様においては、本発明のデバイス
は、生物分解性ではない粒子を含み、埋め込み後において、内方成長した組織が
、その粒子を取り囲む天然コラーゲンマトリックスを生成して、コラーゲンマト
リックス(内方成長した組織の細胞を保持していても、保持していなくてもよい
)内に粒子で構成される軟質組織様マス(a soft-tissue-like mass)が形成さ れる。他の態様においては、インビトロの細胞培養において、固定依存性細胞を
固定するための適切な表面をもたらすことが見いだされているポリマーを、本発
明の粒子に使用することができる。しかしながら、ポリペプチドポリマー(たと
えばGAX−コラーゲン)だけを含んだ粒子は、GAX−コラーゲン粒子が、経
時にてインビボでタンパク質が分解するために安定な三次元マスをもたらさない
ことが見いだされているので適切ではない。注入可能なテフロンペーストは、ペ
ースト物質中への線維組織の内方成長を引き起こさないことが見いだされている
ので、本発明の考慮外である。
【0028】 本明細書に記載のデバイスは所望のコンシステンシーを有することが大切であ
る。デバイスは一般に、本明細書に記載の通りの粒子含有混合物で構成されてい
て、わずかな力で変形し得るが、好ましい態様においては、デバイスは、重力の
下で実質的に同じ三次元形状のままである。デバイスのコンシステンシーについ
ては、たとえば、デバイスが注入されたときの組織面の分離に関して後述されて
おり、コンシステンシーはさらに、注入後に埋め込み物を同じ場所に保持するの
にある役割を果たす。言うまでもないが、連続相の粘度がデバイスのコンシステ
ンシーに影響を及ぼす。しかしながら、本発明のデバイスのコンシステンシーは
、粒子のサイズ、粒子対連続相の比(すなわち、混合物における粒子濃度)、お
よび粒子間の相互作用(ある程度は粒子濃度に依存する)に対する依存性がより
高い。所望のコンシステンシーを有する注入可能混合物の製造については、ヒド
ロゲル粒子に関して後述してあり、当業者であれば、本発明の開示内容を考察し
て、非ヒドロゲル粒子を使用して通常の最適化手順により、類似のコンシステン
シーを有する混合物を容易に製造することができる。
【0029】 本発明は、組織エンジニアリングの応用において動物の体内に埋め込むことの
できる改良された組成物、およびこのような組成物を注入によって動物の体内に
埋め込むための方法を提供する。1つの実施態様においては、本発明の組成物は
、生物学的適合性ポリマーをヒドロゲルの形態にて含む。本発明の組成物は、埋
め込もうとする物質に生きた細胞を加えなくても使用することができ、この場合
、取り囲んでいる組織の細胞によって、時間の経過とともに埋め込み物が侵され
て、最初の埋め込み物の形状を有する細胞性マス(a cellular mass)を生成す る。あるいは、組成物が注入によって埋め込まれる領域に他の細胞タイプを導入
するために、生きた細胞を組成物中に組み込むこともできる。
【0030】 本発明の特定の実施態様は、動物において長期間にわたって持続する組織様バ
ルク(tissue-like bulk)の生成に関するものであり、この組織様物質は、ある
種の軟質組織の特性によく似ることがある。本発明に関して記載の組成物を注入
して、損傷、外科手術、または遺伝奇形による組織空隙の実際的な矯正をもたら
すだけの充分に長い期間にわたって持続する持続性塊状物質を得ることができる
。本発明の組成物は、切開によっても注入によっても施用することができ、そし
て施用後に造形することができる。注入された物質は形状を保持し、その後の線
維芽細胞の増殖とゆるやかな結合組織の侵襲により、存在している空隙を矯正し
、ヒドロゲル組成物を、注入によって配置された場所に保持するよう、血管化組
織が生成する。施用したゲル物質がゆるやかな結合組織によって侵襲されて、所
望の体積と形状を保持する。導入された物質とそれにより起こる線維流入は、 ンビボ にて長時間持続する。
【0031】 本発明のゲルは、線維形成反応(fibrotic response)を刺激する性質を示す 。本明細書に記載のように、アルギン酸塩ゲルを皮下部位に注入すると、注入さ
れたゲルフラグメントの中や周囲にてゆるやかな結合組織の侵入が促進される。
こうした反応により、結合組織は最終的には、ゲル物質を注入したときにつくり
出されるバルクの相当部分を占めるようになる。本発明の適切な組成物は、典型
的には、生物学的適合性ポリマーで構成される異形粒子をヒドロゲルの形態で含
有する注入可能なペーストである。この懸濁液は、注入されたときに組織を分か
つだけの、また注入部位からの管外遊出を防ぐだけの充分なコンシステンシー(
粘度)を保持する。線維形成反応を刺激するというゲル懸濁液の特性には、粒子
のサイズが関与していること、また線維形成反応の刺激および注入部位における
埋め込み物の固定の双方に対しては、粒子のヒドロゲル特性が重要であるという
ことが考えられる。
【0032】 本発明の組成物はチキソトロープ性であるのが好ましい。言い換えると、ヒド
ロゲルはある程度硬化しており(弱く架橋している)、その結果ヒドロゲルは幾
らか変形に抵抗する。しかしながら、力を増大させると、組成物は流体の挙動を
示すようになる。好ましい態様においては、脆いヒドロゲルを形成させ、次いで
たとえば、このヒドロゲルを適切なサイズのオリフィスに強制的に通すことによ
って破砕して、所望の寸法の異形粒子を形成させる。こうして得られるヒドロゲ
ル粒子の懸濁物は、重力に抗してその形状を保持する。本発明の懸濁物は、それ
自体の上に積み重ねて、他の支持体がなくても実質的に同じ形状を保持するマウ
ンド(a mound)を形成することができる。このようにして得られるペーストの ブロックまたはマウンドは、プレート上の少量の練り歯磨きのように流動しにく
いが、端部は幾らか丸みを帯びると思われる。
【0033】 本発明のヒドロゲルは、オリフィス(たとえば、シリンジニードルやカニュー
レ)に強制的に通したときに破砕する脆性物質であるのが好ましい。硬化したヒ
ドロゲルのコンシステンシーは、条件が変わると変化することがある。たとえば
、カルシウムイオンの濃度が増大すると、アルギン酸塩に対する架橋の程度が高
くなり、また温度が上昇すると、プルロニックス(PLURONICS)(商標)ヒドロ ゲル等の架橋が増大する。いったんゲル化すると、本発明のある程度硬化したヒ
ドロゲルは安定であり、重力に等しいかそれ未満の力に抗して少なくとも2時間
(さらに好ましくは少なくとも24時間、そしてしばしば数週間)その形状を保
持する。破砕されたヒドロゲルは、サイズがオリフィスサイズと圧力の関数であ
る異形粒子の懸濁液となる。典型的には、サイズは30μm〜500μmの範囲
であり、好ましくは40μm〜300μmの範囲である。適切なオリフィスサイ
ズと注入圧力は、当業者であれば決定することができ、また効果的な粒子サイズ
は、実施例6に記載のように線維形成反応をモニターすることによって確定する
ことができる。
【0034】 ヒドロゲルをシレンジバレルの内部でを硬化させることができ、シリンジプラ
ンジャーに圧力を加えることにより、組成物がシリンジから強制的に流れ出る。
典型的な配合物においては、組成物をある程度硬化させることができ、次いで2
2−ゲージカニューレに、高粘度流体として10ml/分の割合で、組成物中に
組み込むことのできるいかなる細胞にもひどい損傷を与えることなく強制的に通
すことができる。適切な配合物においては、カニューレに通した後に、組成物は
ポリテフペーストと同等のコンシステンシーを有する。たとえば、組成物は、2
5℃にて少なくとも15,000cPsの実測粘度を有するペーストであってよ く、組成物が細胞を含有する場合、組成物を22−ゲージカニューレを通して1
0ml/分の割合で注入すると、細胞は実質的に損傷を受けない(すなわち、細
胞個体群の生存度が25%以上低下する)。
【0035】 注入後の埋め込み物における細胞の持続性と生存能力ならびに線維形成反応は
、走査型電子顕微鏡法、組織学、および放射性同位元素による定量分析を使用し
て評価することができる。細胞の機能は、上記の方法と機能アッセイ(function
al assays)とを併用して調べることができる。標識グルコースを使用する研究 およびタンパク質アッセイを使用する研究を行って、ポリマー骨格上の細胞マス
を定量することができる。次いで、細胞マスについてのこれらの研究を細胞機能
の研究と関連づけて、適切な細胞マスはどのようなものかを決定することができ
る。軟骨細胞の場合、機能は、取り囲んだ付着組織に対する適切な構造的支持体
をとなりうる軟骨マトリックス成分(たとえば、プロテオグリカンやコラーゲン
)の合成であると定義される。
【0036】 本発明のバイオポリマー含有組成物は、ヒドロゲルの形態、またはヒドロゲル
粒子の水性懸濁液の形態で製造され、使用される。本発明のヒドロゲル組成物は
一般に、水性媒体(通常は、1種類以上の医薬用として許容しうる塩を含む)お
よび所望により他の成分を含有する。たとえば、バイオポリマーがアルギン酸塩
であるときは、アルギン酸塩の架橋を開始させてある程度硬化したヒドロゲルを
形成するに足る量の多価イオンを含有する溶液と、アルギン酸塩(たとえば、可
溶性のアルギン酸ナトリウム)の溶液とを混合することによって、ヒドロゲルを
形成することができる。塩の量と種類は変動できるが、組成物を動物の組織中に
注入する場合は、一般には、溶質の種類と溶質の濃度は、動物に対する過度のス
トレスを避けるよう選定される。ヒドロゲルが生きた細胞も含有する場合、組成
物の他の成分と生きた細胞とが適合性でなければならず、組成物が、細胞の成長
と維持にとって有益な因子を含有するのが好ましい。
【0037】 ポリマー 組織エンジニアリングに使用するのに適した生物学的適合性ポリマーはよく知
られており、これらポリマーのいずれも、本発明のデバイスに使用できる。ヒド
ロゲルを形成するポリマーが下記にて詳細に説明されており、このようなポリマ
ーは幾つかの用途に対して好ましい。しかしながら、デバイスを構成する粒状凝
集物が、本明細書に記載のように組織の内方成長を促進する限り、ヒドロゲルの
形態をとっていない生物学的適合性粒子も使用することができる。
【0038】 本発明の埋め込み物に使用される好ましいポリマー物質は、ヒドロゲルを形成
するものでなければならない。ヒドロゲルとは、有機ポリマー(天然または合成
)を、共有結合、イオン結合、または水素結合を介して架橋させて、三次元の開
放格子構造(水分子を捕捉してゲルを形成する)が造られるときに形成される物
質であると定義される。ヒドロゲルを形成させるのに使用できる物質の例として
は、アルギン酸塩等の多糖類、カラゲーナン、ポリフォスファジン、およびポリ
アクリレート(これらはイオン的に架橋させる)、あるいはプルロニックス(Pl
uronics)(商標)やテトロニックス(Tetronics)(商標)のポリエチレンオキ
シド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー等のブロックコポリマー(
これらはそれぞれ温度またはpHによって架橋させる)などがある。
【0039】 一般には、これらのポリマーは、少なくともある程度は水溶液(たとえば水、
緩衝剤で処理した塩溶液、または水性アルコール溶液)に対して可溶性であり、
ポリマーは、荷電した側基またはその一価のイオン性塩を含んでもよい。カチオ
ンと反応することができる酸性側基をもったポリマーの例としては、ポリ(ホス
ファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸とメタク
リル酸とのコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、およびスルホン化ポリマー(たと
えばスルホン化ポリスチレン)などがある。アクリル酸もしくはメタクリル酸と
ビニルエーテルモノマーもしくはビニルエーテルポリマーとの反応によって形成
される酸性側基を有するコポリマーも使用することができる。酸性基の例として
は、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ化)アルコール
基、フェノール性OH基、および酸性OH基などがある。
【0040】 アニオンと反応することができる塩基性側基をもったポリマーの例としては、
ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルイミダゾール)
、およびある種のイミノ置換されたポリホスファゼンなどがある。主鎖の窒素ま
たはイミノ側基から、ポリマーのアンモニウム塩または第四アンモニウム塩を形
成させることもできる。塩基性側基の例としては、アミノ基とイミノ基がある。
【0041】 ポリホスファゼンは、交互に存在する単結合と二重結合によって隔離された窒
素とリンからなる主鎖を有するポリマーである。各リン原子は2つの側鎖(“R
”)に共有結合されている。ポリホスファゼンにおける反復構造単位は下記のよ
うな一般構造(I)
【0042】
【化1】
【0043】 (式中、nは整数である)を有する。 架橋させるのに適したポリホスファゼンは、酸性であって、しかも二価または
三価のカチオンと塩ブリッジを形成することができる多くの側鎖基を有する。好
ましい酸性側基の例は、カルボン酸基とスルホン酸基である。加水分解に対して
安定なポリホスファゼンは、二価または三価のカチオン(たとえばCa2+または
Al3+)によって架橋されるカルボン酸側基を有するモノマーから形成される。
イミダゾール基、アミノ酸エステル基、またはグリセロール側基を有するモノマ
ーを組み込むことによって、加水分解によって分解するポリマーを合成すること
ができる。たとえば、ポリアニオン性のポリ[ビス(カルボキシラートフェノキ
シ)]ホスファゼン(PCPP)を合成することができ、本物質は、水性媒体中
にて室温以下の温度で、溶解している多価カチオンにより架橋してヒドロゲルマ
トリックスを形成する。
【0044】 生物侵食性の(bioerodible)ポリホスファゼンは、少なくとも2つの異なっ たタイプの側鎖、すなわち多価カチオンにより塩ブリッジを形成することができ
る酸性側基、およびインビボの条件下にて加水分解する側基(たとえば、イミダ
ゾール基、アミノ酸エステル基、グリセロール基、およびグルコシル基)を有す
る。本明細書で使用している“生物侵食性ポリマー”または“生物分解性ポリマ
ー”とは、一旦約25℃〜38℃の温度を有するpH6〜8の生理学的溶液にさ
らされると、所望の用途(通常はインビボ治療)において受け入れ可能な期間内
(約5年未満、最も好ましくは約1年未満)に溶解または分解するポリマーを意
味している。側鎖が加水分解を起こす結果、ポリマーが侵食される。加水分解性
側鎖の例としては、基がアミノ結合を介してリン原子に結合している非置換およ
び置換のイミダゾールとアミノ酸エステルがある(両方のR基がこの様式で結合
しているポリホスファゼンポリマーはポリアミノホスファゼンとして知られてい
る)。ポリイミダゾールホスファゼンの場合、ポリホスファゼン主鎖上の“R”
基の幾つかはイミダゾール環であり、環窒素原子を介して主鎖中のリンに結合し
ている。他の“R”基は、加水分解に関与しない有機残基(たとえば、メチルフ
ェノキシ基、またはAllcockらの科学論文「 Macromolecules 10:824-830(1977) 」に示されている他の基)であってよい。
【0045】 種々のタイプのポリホスファゼンを合成および分析するための方法が、Allcoc
k.H.R.らによる「Inorg. Chem. 11, 2584(1972)」;Allcockらによる「Macromol ecules 16, 715(1983)」;Allcockらによる「Macromolecules 19, 1508(1986)」
;Allcockらによる「Biomaterials, 19, 500(1988)」;Allcockらによる「Macro molecules 21, 1980(1988)」;Allcockらによる「Inorcr. Chem. 21(2), 515521
(1982)」;Allcockらによる「Macromolecules 22, 75(1989)」;Allcockらによ る米国特許第4,440,921号, 第4,495,174号, および第4,880,622号;Magillらに よる米国特許第4,946,938号;およびGrollemanらによる「J. Controlled Releas e 3, 143(1986)」(これら文献の開示内容を参照により本明細書に含める)に記
載されている。
【0046】 上記その他のポリマーの合成法は当業者には公知である。たとえば、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts ,
E.Goethals, editor(ペルガモンプレス、エルムズフォード、NY 1980)を参照
のこと。多くのポリマー〔たとえばポリ(アクリル酸)〕が市販されている。
【0047】 荷電した側基を有する水溶性ポリマーは、反対電荷の多価イオン(ポリマーが
酸性側基を有する場合は多価カチオン、あるいはポリマーが塩基性側基を有する
場合は多価アニオン)を含有する水溶液とポリマーとを反応させることによって
架橋される。ポリマーと酸性側基とを架橋させてヒドロゲルを形成させるための
好ましいカチオンは、銅イオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、マグ
ネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、および錫イオン等の
二価カチオンおよび三価カチオンであるが、二官能、三官能、または四官能の有
機カチオン(たとえば、R3+−/∧∧/-+NR3等のアルキルアンモニウム塩 )も使用することができる。これらカチオンの塩の水溶液をポリマーに加えて、
高度に膨潤した軟質のヒドロゲルと膜を形成させる。カチオンの濃度が高くなる
ほど、あるいは原子価が高くなるほど、ポリマーの架橋の程度は大きくなる。0
.005Mという低い濃度でポリマーを架橋させることがわかっている。これよ り高い濃度は、塩の溶解性のために制限される。
【0048】 ポリマーを架橋してヒドロゲルを形成させるのに好ましいアニオンは二価と三
価のアニオンであり、たとえば低分子量ジカルボン酸(たとえばテレフタル酸)
、サルフェートイオン、およびカルボネートイオンなどがある。これらアニオン
の塩の水溶液をポリマーに加えて、カチオンに関して説明したように、高度に膨
潤した軟質のヒドロゲルと膜を形成させる。生物学的適合性ポリマーと架橋剤は
、生理学的に適合性のいかなる溶媒にも溶解させることができる。たとえば、通
常の細胞培養培地M−119が代表的な溶媒として使用される。
【0049】 種々のポリカチオンを使用して錯体を形成させ、これによってポリマーヒドロ
ゲルを半透性の表面膜に安定化させることができる。使用できる物質の例として
は、塩基性の反応性基(たとえば、アミン基やイミン基)を有していて、3,0 00〜100,000の好ましい分子量を有するポリマー(たとえば、ポリエチ レンイミンやポリリシン)がある。これらの物質は市販されている。ポリカチオ
ンの1種としてはポリ(L−リシン)があり、合成ポリアミンの例としてはポリ
エチレンイミン、ポリ(ビニルアミン)、およびポリ(アリルアミン)がある。
さらに、多糖類やキトサン等の天然ポリカチオンもある。
【0050】 ポリマーヒドロゲル上の塩基性表面基との反応によって半透膜を形成させるの
に使用できるポリアニオンとしては、アクリル酸、メタクリル酸、およびアクリ
ル酸の他の誘導体のポリマーおよびコポリマー;SO3H側基をもつポリマー( たとえばスルホン化ポリスチレン);ならびにカルボン酸基を有するポリスチレ
ン;などがある。
【0051】 本発明の範囲内にて埋め込み物に使用できるポリマーとしてはさらに、適切な
条件下にて、本明細書に記載のヒドロゲルとレオロジー的に類似のヒドロゲルを
形成する他の天然バイオポリマー、合成バイオポリマー、または変性バイオポリ
マーがある。適切なバイオポリマーの選択は、本明細書に記載のヒドロゲル特性
を考慮すれば当業者にとっては容易であり、本明細書に記載のアッセイおよび試
験におけるポリマーの性能に基づいて適否を確認することができる。このような
ポリマーは生物学的適合性でなければならず、数日間、数週間、または数年間に
わたって非生物分解性であっても、あるいは生物分解性であってもよい。適切な
バイオポリマーとしては、たとえば変性アルギン酸塩および他の変性バイオポリ
マーなどがあり、たとえば「Putnam A.J.とMooney D.J.(1996), "Tissue engine
ering using synthetic extracellular matrices", Nature Medicine, 2(7):824
-826, (1996)」;「Mooney, D.J.(1996), "Tissue engineering with biodegrad
able polymer matrixes", in Bajpai, Praphulla K(Ed), Proc. South. Biomed.
Eng.Conf., 15th, IEEE, NY, 1996」;および「Wong, W.H.とD.J.Mooney,"Synt
hesis and properties of biodegradable polymers used to as synthetic matr
ices for tissue engineering", in Atala, et al., eds., Synthetic Biodegra
dable Polymer Scaffolds (Tissue Engineering), Birkhauser, 1997, ISBN:081
7639195」を参照のこと。
【0052】 アルギン酸塩バイオポリマー組成物 好ましい実施態様においては、本発明の方法は、酸性バイオポリマーの多価カ
チオン架橋によるヒドロゲルの形成を含み、このとき多価カチオンの有効性は、
可溶性カチオンが架橋において吸収されるにつれて可溶性カチオンを補充するた
めの難溶性塩の溶解によって制御される。多価カチオンの一部は易溶性塩の形で
供給され、充分有効に作用するが(“速い”架橋用)、一方、完全な架橋のため
に必要な多価カチオンの他の部分は、難溶性塩の形で供給される(“遅い”架橋
用イオン)。この実施態様に対する好ましいポリマーはアルギン酸塩である。し
かしながら、本発明の方法は種々の酸性ポリマー(たとえば、バイオポリマーで
あるκ−カラゲーナン)にも適用することができる。下記にて説明しているよう
に、アルギン酸塩は、あらゆる適切なポリマーのうちで代表的なものであると考
えるべきである。
【0053】 好ましいバイオポリマー(アルギン酸塩)と共に使用するための好ましい多価
イオンはカルシウムである。本明細書では、架橋用カチオンを供給するための複
数種のカチオン供給源(カチオン供給源は、異なった溶解性を有するよう選択さ
れる)を使用してゲル化特性と最終的なゲル特性を制御するための代表的な架橋
剤としてカルシウムとカルシウム塩を使用して、本発明の方法を説明する。当然
のことながら、同様に挙動する他の多価イオンも本発明の範囲内である。本発明
によって提供される組成物はさらに、多価カチオンに対する可溶性緩衝系(カチ
オンが二価または三価の金属イオンであるとき、通常はリン酸塩)を含有する。
リン酸塩は金属に対してアルギン酸塩と競争し、したがって組成物中のアルギン
酸塩の架橋は、組成物の成分を混合したときに、限定された量の有効カチオンに
関してアルギン酸アニオンとホスフェートアニオンとの間の競争によって妨げら
れる。
【0054】 代表的な実施態様においては、生物学的適合性の酸性バイオポリマーであるア
ルギン酸塩を、半量未満の易溶性塩化カルシウムと過半量の難溶性硫酸カルシウ
ムによって架橋させる。ヒドロゲルを形成する組成物は、可溶性カルシウムイオ
ンの濃度を緩衝し、アルギン酸塩の完全な架橋を妨げるよう、ホスフェートアニ
オンを比較的高い濃度にて含有する。一旦、組成物が所望の部位に注入されると
、取り囲んでいる生物学的液体中への拡散によってホスフェートアニオンが希釈
され、可溶性カルシウムイオンの濃度が局所的に増大する。可溶性カルシウムイ
オンの濃度が増大するにつれて、アルギン酸塩においてさらなるカルシウム架橋
が形成され、ヒドロゲルが硬化する。ホスフェートアニオンまたは他の類似系(
たとえば、可溶性カチオンの濃度を類似の仕方で緩衝する生物学的に適合性の金
属イオン封鎖剤)で緩衝することによって、類似の金属イオンに対しても同様の
効果を得ることができる。
【0055】 アルギン酸塩は、海草から得られるポリマンヌロン酸塩とポリグルクロン酸塩
のストレッチ(stretches)のコポリマーである。適切なアルギン酸塩は市販の 供給源から得られる。個々のアルギン酸塩調製物は、カルシウムの結合〔マンヌ
ロン酸塩:グルクロン酸塩(M/G)比の関数である〕に関して決定可能な能力
(a determinable capacity)を有する。マンヌロン酸塩残基とグルクロン酸塩 残基との間の比を変えることにより生じる影響が、米国特許第4,950,600
号(該特許を参照により本明細書に含める)に記載されている。高度に精製され
た適切なアルギン酸塩は35/65のM/G比を有する。
【0056】 アルギン酸塩を、水中にて室温で二価カチオンでイオン的に架橋して、ヒドロ
ゲルマトリックスを形成させることができる。こうした温和な条件のために、ア
ルギン酸塩は、ハイブリドーマ細胞封入(hybridoma cell encapsulation)(た
とえば、Limによる米国特許第4,352,883号に記載)に対して最も広く使 用されているポリマーである。Limの方法においては、封入しようとする生物学 的物質を含有している水溶液を水溶性ポリマーの溶液中に懸濁させ、この懸濁液
を液滴に形成し、この液滴を、多価カチオンと接触させることによって別個のマ
イクロカプセルに形づくり、次いでマイクロカプセルの表面をポリアミノ酸で架
橋して、封入された物質の周りに半透膜を形成させる。
【0057】 組織エンジニアリングに対しては、細胞の懸濁液(たとえば、ヒドロゲル形成
を開始させるためにカルシウム塩が加えられる、アルギン酸塩中の軟骨細胞)を
含めて、ヒドロゲル形態における細胞/ポリマー系が使用される。これらの系の
代表的なものは軟骨細胞/アルギン酸カルシウム溶液であり、これは、先ず最初
に単離細胞の懸濁液とアルギン酸ナトリウム溶液(たとえば、0.1MのK2HP
4と0.135MのNaCl中、pH7.4)とを混合して、1.0%アルギン 酸塩溶液中20×106細胞/mLの細胞密度(本来のウシ関節軟骨の細胞密度 の約50%の細胞密度)にすることによってつくり出される。軟骨細胞−アルギ
ン酸ナトリウム懸濁液は、使用するまで氷上にて4℃で貯蔵することができ、注
入の前に、低温の軟骨細胞−アルギン酸塩溶液の各1ミリリットルに0.2gの 滅菌処理したCaSO4粉末を加える。
【0058】 硫酸カルシウムを架橋用イオンの供給源として使用した配合物のゲル形成特性
に関する研究(たとえば実施例1を参照)から、このような配合物が、人体温度
にてわずか16分でゲル化できるが、室温では容易にゲル化しないことがわかる
。アルギン酸塩/細胞懸濁液の温度が、ゲルの形成が適度な時間で(すなわち、
操作室において時間ではなく分のオーダーにて)開始される温度にまで上昇する
と、組成物のコンシステンシーが注入に適したものになるわずか数分の時間帯が
存在する。配合物が室温でゲル化できない場合は、注入前に配合物をインキュベ
ートするための加熱装置を使用する必要がある。さらに、CaSO4粒子の周り にゲルが形成されるために混合上および注入上の問題が生じる。ゲルの形成は、
溶液を介してのCa2+の移動を妨げ、またアルギン酸塩で封入されたCaSO4 のクロットを形成することによって、シリンジカニューレを介しての注入を妨げ
る。したがって、懸濁液中のより速やかにゲル化する領域によってつくり出され
る塊を取り除くために、シリンジにフィルターを取り付けなければならない。こ
れらの特徴は、配合物の臨床用途における複雑さを増大させ、供給特性とゲル化
特性においてロット対ロットの一貫性を達成するのを困難にする。
【0059】 混合物を加熱する要件と、注入シリンジにフィルターを加える要件を不要にす
るために、本発明者らは、組織エンジニアリングにおいて使用される注入可能な
ヒドロゲルのための新しい配合物を開発した。この配合物は、ゲル形成の促進、
およびゲル懸濁液の注入適性の長時間化をもたらし、したがってより一定した性
能が得られるようになる。
【0060】 注入したときに組織面を分かつに足るコンシステンシーを速やかに生成させる
ために、また注入カニューレが閉塞されるという問題を避けつつ管外遊出を防ぐ
ために、本発明は、架橋用多価カチオンの2つの供給源(すなわち、完全に利用
可能なカチオンを供給する半量未満の第1のカチオン供給源と、ゲルが形成され
るにつれて架橋用イオンの遅速放出をもたらす過半量の第2のカチオン供給源)
を含有するヒドロゲル形成組成物を提供する。第1のカチオン供給源は、水に対
する溶解性が高い塩(すなわち、100ml当たり少なくとも1gの、好ましく
は30g/100mlの、さらに好ましくは少なくとも60g/100mlの溶
解度を有する塩)である。特に好ましいのは、塩化カルシウムのようなカルシウ
ム塩である。第2のカチオン供給源は難溶性の塩(すなわち、1g/100ml
未満の、好ましくは0.5g/100ml未満の、さらに好ましくは0.3g/1
00ml未満の溶解度を有する塩)である。特に好ましいのは、硫酸カルシウム
のようなカルシウム塩である。低温水と高温水(100℃)に対する硫酸カルシ
ウム二水和物(CaSO4・2H2O)の溶解度は、それぞれ2.41mg/ml および2.22mg/mlである。それぞれ塩化カルシウムと硫酸カルシウムに 類似した水溶性を有する多価カチオンのいかなる2種の塩も、本発明での使用に
適している。どちらか一方の塩だけでも、充分に硬化したアルギン酸塩ヒドロゲ
ルを生成するに足る架橋用カチオンを供給するけれども、2種の塩を使用すると
、架橋作用がある時間にわたって広がりをもつようになり、これによりある程度
硬化したヒドロゲル(弱く架橋したヒドロゲル)が、カニューレを介しての注入
に適切なコンシステンシーである時間帯が広がる。
【0061】 塩化カルシウムは、溶解性が高いので、アルギン酸塩のゲル化を迅速化するた
めの好ましい“速い”Ca2+供給源である。同等の溶解性を有する他のカルシウ
ム塩も、同様の仕方で作用する。CaCl2単独でも作用するかどうかを検討す るために実験を行った。1.0〜6.6mg/mlの濃度範囲を調べ、CaCl2 ・2H2Oの濃度が3.3mg/mlに等しいかそれを超えるときは、アルギン酸
塩溶液とCaCl2溶液との界面にてアルギン酸塩が直ちにゲル化するが、アル ギン酸塩を1.5%(w/v)の最終濃度で使用した場合に、CaCl2・2H2 Oの濃度が2.7mg/mlに等しいかそれ未満であるときには全くゲル化しな いので、CaCl2単独はヒドロゲルを架橋させるのに適切ではない、というこ とがわかった。アルギン酸塩の濃度と所望のゲル強度に依存して、CaCl2は 0.5mg/ml〜3.0mg/mlの範囲であってよい。
【0062】 代表的なアルギン酸ナトリウムと化学量論的に反応させるのに必要なCaSO 4 ・2H2Oの量は、アルギン酸塩1mg当たり0.309mgである。硫酸カル シウム架橋による公知の代表的な処方は、アルギン酸ナトリウム1mg当たり2
0mgのCaSO4・2H2O粉末(すなわち、必要とされる量の約65倍)を使
用する。しかしながら、CaSO4粒子の周りにゲルが形成される(このため、 溶液を介してのCa2+の移動が妨げられ、またアルギン酸塩で封入されたCaS
4のクロットを形成することによりシリンジカニューレを介しての注入が妨げ られる)ために混合および注入上の問題が生じる。
【0063】 受け入れ可能なコンシステンシーを有する均一なゲルが必要な時間にて得られ
るような比率が好ましい。CaSO4/CaCl2の好ましい比は、ポリマーの種
類(たとえば、アルギン酸塩に対するM/G比)、ゲル化のための必要な時間、
および必要な組織強度などに依存する。例として、アルギン酸塩1g当たり0. 309gのCaSO4・2H2Oを結合できるアルギン酸ナトリウムの場合、Ca
Cl2・2H2O/CaSO4・2H2O/アルギン酸塩の比は1:10:10であ
り、ある特定量のリン酸塩が配合物中に存在するのが好ましい。
【0064】 適切な組成物は、室温にて約14分で受け入れ可能なコンシステンシーをもつ
ゲルを生成するような比率を有する。アルギン酸塩30mg当たり約3mgの塩
化カルシウムと30mgの硫酸カルシウムを供給するCaSO4/CaCl2比が
、アルギン酸塩と共に使用するのに適しており、このときアルギン酸塩は、アル
ギン酸ナトリウム1g当たり0.309gのCaSO4・2H2Oを結合する。異 なったカルシウム結合能力をもつアルギン酸塩に対する化学量論は、当業者であ
れば容易に決定することができ、難溶性塩と易溶性塩との類似のモル比を算出し
て、これら代替塩の適切な量を決定することができる。アルギン酸塩のM/G比
により、Ca結合能力が決まる。アルギン酸塩、易溶性塩、難溶性塩、および所
望により使用される可溶性金属イオン封鎖剤の相対量は、重力に抗して形状を保
持するが、少なくとも4時間(こうした時間は、混合物を室温でインキュベート
するための時間である)にわたって注入カニューレを閉塞させることなく注入で
きるようなゲルを混合物が20分以内に形成するような量である。
【0065】 前述したように、遅速溶解性のカチオン源だけを使用した配合物では、不溶塩
のアルギン酸塩で封入された塊と、集めて注入することのできるさらなる液体部
分とに成分の分割をもたらす。このような生成物は、コンシステンシーの点で再
現性が低く、充分に特性決定することができず、充分に制御することができず、
あるいは所定の範囲の性質を有する最終配合物が得られるよう修正を加えること
ができない。速やかに溶解するカチオン源だけを使用すると、カチオンが混合物
全体に分配できないとしても、同様に成分の分割がもたらされ、十分に架橋した
ゲルの部分が生成され、簡単には注入されなくなる。難溶性多価カチオン源と易
溶性多価カチオン源の両方を加えることにより、これらの問題を回避し得る。し
かしながら、過剰のカチオン結合能力を与えるカチオン封鎖性アニオンの存在下
にて、アルギン酸塩と2種のカチオン源とを混合すると、従来のゲルを凌ぐ改良
(極めて均一な混合、品質の一定した懸濁液の生成、全体にわたって制御された
均一な特性、したがって完全に注入可能である)を示す最終組成物が得られると
いうことを見いだした。
【0066】 したがって本発明によるヒドロゲル形成組成物は、所望により、バイオポリマ
ーに対して利用可能な量の架橋用カチオンを緩衝する成分を含有する。緩衝成分
は通常、ホスフェートアニオン等のアニオン封鎖剤である。アルギン酸塩の速や
かで完全な架橋を、Ca2+の結合においてアルギン酸塩と競争する配合物中のP
4アニオンによって防止する(これによってゲル化の速度が大幅に低下する) 。ホスフェートアニオンは一般には約0.1Mにて存在するが、リン酸塩の濃度 は、ゲル化時間を制御するために0.03M〜0.3Mの範囲で変えてもよい。カ
ルシウムに関してアルギン酸塩と競争する、したがってアルギン酸塩で封入され
た塩粒子の形成を同様の仕方で防止する他の生物学的に適合性の金属イオン封鎖
剤も、本発明の範囲内である。
【0067】 過剰のカチオン結合能力、および利用可能なカチオンに対するアニオンとアル
ギン酸塩との間の競争により、懸濁液全体にわたっての利用可能カチオンの完全
な分布が可能となる。こうして得られる生成物は完全に均一であり、一貫して得
られ、従来の試験プロトコルによって特性決定することができ、生成物の損失を
起こすことなく用途に対して完全に利用することができ、また所望の特性(たと
えば粘度、ゲル強度、およびゲル化時間など)を付与するよう調節することもで
きる。ミキシングでの均一性は、異なったミキシング形式(たとえば試験管での
渦巻混合もしくは手混合、磁気攪拌機、機械的攪拌機、およびミキシングシリン
ジ内での混合)においても示される。
【0068】 アルギン酸塩の分解速度についてはあまり報告されておらず、たとえば、分解
速度は架橋の方法、アルギン酸塩の種類、および施与の部位に依存する。アルギ
ン酸塩ゲルの特定の配合物は、多糖類を認識する酵素がないために人体中で徐々
に分解される。さらに、アルギン酸塩を種々の試剤により変性および/または架
橋して、その分解速度を高めたり又は低下させたりすることができる。アルギン
酸塩は、組織の空間もしくは空隙に注入または施用することのできる弱いゲルを
生成するよう、2種のカルシウム供給源を使用して架橋することができ、また所
望の形状に適合するように造形または成形することができる。適切な組成物の製
造(但し、本発明の配合物においては、細胞の添加を省略することができること
を除いて)については、米国特許出願08/762,733(該特許出願の全開 示内容を参照により本明細書に含める)に詳細に説明されている。
【0069】 アルギン酸塩の分解特性と本明細書に記載の配合物に対する線維形成反応とが
相俟って、本発明により、注入時の寸法を保持して移動しない持続性の組織様バ
ルクが得られる。この組織様バルクは、従来の組織バルク化剤(tissue bulking
agents)に比べて大幅に長い期間にわたって持続することができる。特に有益 な特徴は、種々の寸法のニードルを介してこの物質を注入することができ、した
がってわずかな外科的な処置で、細胞検査的または内視鏡的な用途が可能である
、ということである。
【0070】 細胞の供給源 本発明の組成物を使用して、多数の細胞を効率的に移動させるための、また新
しい組織もしくは組織同等物をつくり出す上で移植物の植え付けを促進するため
の三次元骨格内に、複数種の細胞タイプ(遺伝学的に変化させた細胞を含めて)
を供給することができる。本発明の組成物はさらに、宿主免疫システムを排除す
ることによって新しい組織もしくは組織同等物を成長させつつ、細胞移植物の免
疫保護(immunoprotection)に対しても使用することができる。
【0071】 本明細書に記載のように埋め込むことができる細胞の例としては、軟骨細胞お
よび軟骨を形成する他の細胞、骨芽細胞および硬骨を形成する他の細胞、筋細胞
、線維芽細胞、ならびに器官細胞などがあり、そしてさらに増殖した個体群の単
離された幹細胞がある。本明細書にて使用されている“器官細胞”としては、肝
細胞、膵島細胞、腸起源の細胞(cells of intestinal origin)、腎臓から誘導
される細胞、および主として合成・分泌するように、あるいは物質を代謝するよ
うに作用する他の細胞などがある。
【0072】 注入可能なヒドロゲル中に包み込もうとする細胞は、ドナーから、ドナーから
の細胞の細胞培養物から、あるいは樹立した細胞培養物ラインから直接得ること
ができる。好ましい実施態様においては、細胞がドナーから直接得られ、洗浄さ
れ、そしてポリマー物質と組み合わせて直接埋め込まれる。細胞物質は、解離し
た単一細胞であっても、細かく切り刻んだ組織(すなわち、凝集細胞の塊)であ
っても、あるいは解離細胞からインビトロで生成される細胞凝集物であってもよ
い。細胞は、組織培養に関与する当業者に公知の手法を使用して培養することが
できる。
【0073】 注入後における細胞の持続性と生存能力は、走査電子顕微鏡法、組織学、およ
び放射性同位体による定量分析を使用して評価することができる。埋め込まれた
細胞の機能は、上記手法と機能アッセイとの組合せを使用して決定することがで
きる。たとえば、肝細胞の場合、インビボでの肝臓機能の研究は、カニューレを
受容者の通常の胆管中に配置することによって行うことができる。次いで胆汁を
増分ずつ採取することができる。胆汁色素は、誘導体化されていないテトラピロ
ールを調べる高速液体クロマトグラフィーによって、あるいはジアゾ化されたア
ゾジピロールエチルアントラニレートとの反応(P−グルコロニダーゼによる処
理を施す場合と、そうでない場合)によりアゾジピロールに転化させた後の薄層
クロマトグラフィーによって分析することができる。ジ抱合(diconjugated)ビ
リルビンと単抱合(monoconjugated)ビリルビンも、抱合胆汁色素をアルカリメ
タノール分解した後の薄層クロマトグラフィーによって調べることができる。一
般には、機能化用移植肝細胞(functioning transplanted hepatocytes)の数が
増大するにつれて、抱合ビリルビンのレベルが増大する。血液サンプルに対して
単純な肝臓機能試験を行うこともできる(たとえばアルブミンの産生)。
【0074】 埋め込み後の細胞機能の程度を調べる必要があるときは、器官の機能について
の類似の実験を当業者に公知の方法を使用して行うことができる。たとえば、膵
臓の膵島細胞を、肝細胞を埋め込むのに特異的に使用される器官に同様の仕方で
供給して、糖尿病を治療するためのインシュリンを適切に分泌させることにより
グルコースの調節を達成することができる。他の内分泌組織も埋め込むことがで
きる。標識グルコースを使用する研究とタンパク質アッセイを使用する研究を行
って、ポリマー骨格上の細胞マスを定量することができる。細胞マスについての
これらの研究を細胞機能の研究と相関づけて、適切な細胞マスとはどのようなも
のであるかを決定することができる。軟骨細胞の場合、機能は、取り囲んでいる
付着組織のための適切な構造支持体をもたらすことのできる軟骨マトリックス成
分(たとえば、プロテオグリカンやコラーゲン)を合成することであると定義さ
れる。
【0075】 軟骨細胞の前駆体細胞、または軟骨細胞に分化する能力をもつ多能性幹細胞か
ら誘導される細胞も、軟骨細胞の代わりに使用することができる。例としては、
分化して軟骨細胞を形成する線維芽細胞または間葉性幹細胞がある。本明細書に
記載の“軟骨細胞”は、このような軟骨細胞の前駆体細胞も含む。
【0076】 混合プロトコル 反応してある程度硬化したコンシステンシーを有するヒドロゲルを形成する成
分に関して、これらを加える順序は種々異なってもよい。典型的には、アルギン
酸塩(所望によりアニオン封鎖剤を含む)を1つ以上の工程でカチオン供給源と
混合する。一般には、生物分解性の液状ポリマー(アルギン酸塩)が使用される
。アルギン酸塩は、引き続き多価イオンの塩と混合すると、制御された速度で固
化するように設計されている。個々の成分のレベルの変動、またはミキシングと
インキュベートの条件は、(a)注入される物質のコンシステンシーを制御する
ように;(b)注入可能なコンシステンシーを達成するのに必要とされる時間を
制御するように;そして(c)インビボにて最終的なゲルの特性を制御して、適
切な組織と寸法の保持が果たされるよう、受け取る組織部位の特定の要件に適合
するように変えることができる。
【0077】 個々の成分のレベル(単独または併用の場合)は、(a)注入と施用に対する
特定の要件;(b)埋め込み物の適切な植え付け、および最終的に得られるゲル
と置換組織の必要な特性と機能の創造に対する特定の要件;あるいは(c)配合
物の製造、分配、および患者への施用に対する特定の要件;に適合するよう、施
用の前と後で配合物に異なった特性を付与するように変えることができる。たと
えば、緻密な組織(たとえば、筋肉や粘膜下組織)中にヒドロゲル配合を注入す
るには、物質の管外遊出を防ぐために高い粘度を必要とする。粘度を変えること
は、単独の場合も併用の場合も、多くのメカニズムによって達成することができ
る。たとえば、(1)原料(たとえば、低粘度、中粘度、または高粘度のアルギ
ン酸塩)の粘度を選択することによって;(2)ゲルを濃縮することによって(
たとえば、0.3%〜3.0%の範囲のアルギン酸塩を使用して、広い範囲のゲル
粘度を達成することができる);(3)部分架橋の程度を制御するために、ある
量の易溶性多価カチオン源を使用することによって;あるいは(4)カチオンの
結合に関してアルギン酸塩と競争するように与えられるアニオンのレベルを調節
することによって;粘度の変化を達成することができる。異なった細胞タイプに
よる埋め込み物を適切に侵入させるために、あるいはつくり出そうとする所望の
代替組織の特性により、配合物成分を変更することが必要となる場合がある。た
とえば、堅く引き締まっていて緻密な組織(たとえば、肝臓や軟骨)をつくり出
すには、より長いポリマー鎖長またはより高い濃度のゲルが必要となる(たとえ
ば、>1.5%のアルギン酸塩および/またはグルクロン酸含量の高いアルギン 酸塩)。
【0078】 注入前における配合物の注入適性と特性の持続時間を制御できれば、本発明に
したがった製造、分配、および治療への施用を行いやすくなるであろう。最終配
合物の作用時間(working time)、すなわち、物質が注入可能なコンシステンシ
ーへと硬化していくのに必要とされる時間は、種々の方法(たとえば、温度調節
による方法の他に、供給する易溶性カチオンの量および/またはカチオンの結合
を完全に起こさせるために供給するアニオンのレベルを調節する方法)によって
制御することができる。たとえば、注入可能なコンシステンシーの持続時間は、
34〜38℃で数分の作用時間、あるいは4〜8℃で1ヶ月以上の作用時間が可
能になるよう、温度により制御することができる。温度は、ゲルの形成速度に極
めて重要な役割を果たす。温度の上昇が起こると(たとえば、温度が37℃の組
織中に物質を注入したとき)、物質は十分に架橋したヒドロゲルへと硬化してい
く。実施例1に示されているように、CaSO4・2H2Oのレベルが0.1x( すなわち、配合されたバッチにおいて20mg/ml)のとき、ある程度硬化し
たゲルは、体温にて32分で硬化し、少なくとも90分にわたって注入適性を保
持する。この37℃におけるCaSO4という最良のシナリオはさらに、注入可 能なコンシステンシーに達するためには長すぎる時間を必要とし、所望されるシ
ナリオより複雑且つ不安定である。
【0079】 カチオン供給源は、ゲル化とゲル特性を制御するように選択することができ、
そしてさらに分解を制御するように組み合わせることもできる。本発明の組成物
(速やかな架橋剤供給源と遅い架橋剤供給源とを含む)は、硫酸カルシウム単独
の場合の配合物と比較して、より速い粘度上昇、および十分に架橋する前のより
長い時間をもたらすことができる。特に好ましい態様においては、ある程度硬化
したヒドロゲルを形成する混合物は、充分な量のホスフェートアニオンをさらに
含む。一般には、リン酸塩の濃度は約0.1モル濃度である。
【0080】 アルギン酸塩の濃度を増大させることも、ゲルがより多くの水を保持するのに
有効であり、この結果、より濃厚なペーストとより高強度のゲルが得られ、そし
てさらにゲルの形成が促進される。ヒドロゲルを形成する最終的な細胞含有懸濁
液において、好ましいアルギン酸塩のレベルは、少なくとも0.75%であり、 さらに好ましくは1.5%〜2.5%で最高3.0%までである。
【0081】 本発明の好ましい実施態様においては、酸性バイオポリマーはアルギン酸ナト
リウムであり、易溶性塩は塩化カルシウムであり、そして難溶性塩は硫酸カルシ
ウムである。アルギン酸塩は、溶液の少なくとも0.75重量%(好ましくは約 1.5%)の量にて存在する。易溶性塩は10〜15mMのカルシウムイオンを もたらし、また難溶性塩は、完全に溶解すれば約8倍多いカルシウムイオンをも
たらすような量にて、アルギン酸塩溶液中に分散される粉末として供給される。
言い換えると、カルシウムは、2種の塩(1重量部対10重量部の塩化カルシウ
ムと硫酸カルシウム)による二価金属架橋剤として供給される。ヒドロゲル懸濁
液を製造する好ましい方法においては、9部の2%アルギン酸溶液を2部の適切
な細胞懸濁液媒体(たとえばM−199)と混合し、次いで1.8%の無水塩化 カルシウムを含有する同じ細胞懸濁液媒体1部に18%の硫酸カルシウムを懸濁
させたものを、アルギン酸塩−塩化カルシウム混合物に加える。最終混合物を十
分に混合し、組織への注入に使用する。全ての成分を混合して15分以内に、粘
度の速やかな増大が起こると考えられる。本混合物のコンシステンシーは、混合
物が重力に抗してその形状を保持するのに足るものでなければならないが、室温
で少なくとも24時間にわたって注入可能のままである。
【0082】 注入可能な用途に対する好ましい粘度は意図する用途によって異なるが、(a
)配合物のリザーバー(たとえば、シリンジのサイズ、ピストンの直径、適切な
“タッチ”に必要とされる抵抗、あるいは施用速度);(b)施用デバイス(カ
テーテルまたはニードルの長さ、直径、組成);(c)受け入れる組織の耐分割
性;および(d)要求される分配のタイプ(たとえば、硬骨または器官への局所
施用、管外遊出を起こさないで組織内へ注入すること);を含んだパラメーター
をバランスさせた粘度である。
【0083】 本明細書に開示の組成物を調製および注入する際に使用するためのキットも、
本発明の範囲内である。このようなキットは、組成物の成分を1個以上の容器中
に入れた形で含み、配合物リザーバー(たとえば、ミキシング容器またはシリン
ジ)および/またはゲル破砕用オリフィス(たとえば、カニューレまたはシリン
ジニードル)を含んでよい。
【0084】 治療用途 一般には、ヒドロゲル溶液が患者の部位に直接注入され、これによってヒドロ
ゲルが埋め込み物を形成し、取り囲んだ組織からの線維形成反応を引き起こす。
線維形成反応によって形成されるゆるやかな結合組織がヒドロゲル粒子を所定の
場所に保持し、組織の形成に伴って血管化が起こり、したがって埋め込み時に確
定された体積を占める、軟質組織コンシステンシーの血管化マスが生成する。こ
のようなヒドロゲル埋め込み物は、三次元の組織欠損を再構成するようにその場
で埋め込み物を成形することも含めて、種々の再構成手順に対して使用すること
ができる。
【0085】 これとは別に、本発明のヒドロゲル組成物中に細胞を組み込んで、これを患者
の部位に直接注入することができ、このときヒドロゲルは、細胞をその中に分散
させた状態のマトリックスに硬化する。これとは別に、細胞をバイオポリマー溶
液中に懸濁させ、これを所望の解剖学的形状を有する硬質もしくは中空の金型中
に流入または注入し、次いでこれを硬化させて、患者に埋め込むことのできる、
細胞がその中に分散した状態のマトリックスを形成させることができる。埋め込
み後、最終的にはヒドロゲルが分解し、生成した組織だけが残る。このようなヒ
ドロゲル−細胞混合物は、三次元の組織欠損を再構成するための細胞埋め込み物
の注文成形、予備挿入された中空金型もしくは中空骨組みの充填、ならびに組織
の大まかな埋め込みを含めて、種々の再構成手順に対して使用することができる
。本発明の組成物に使用するこのような埋め込み物も本発明の範囲内である。
【0086】 軟骨細胞、好ましくは自家移植の軟骨細胞を、生物分解性で生物学的適合性の
液状ポリマー物質(たとえば、インビボで固化させることのできるアルギン酸塩
)または他のキャリヤーと混合して細胞懸濁液を形成させる、という場合の尿管
膀胱逆流および失禁の治療について説明してきた。本発明のヒドロゲル懸濁液は
、逆流が起きている領域、あるいはバルク化剤が必要とされる領域に、尿の通過
時にわたって必要な制御をもたらす組織バルクの形成を引き起こすのに効果的な
量にて注入することができる。本発明の懸濁液は、生物分解性の液状ポリマー(
たとえば、グルクロン酸とマンヌロン酸とのコポリマーであるアルギン酸塩)を
含有しており、カルシウム塩と接触したときに制御された速度で固化するように
設計されている。ヒドロゲル組成物は、欠損を矯正するための組織様バルクを形
成する所望の部位に注入される。本発明のヒドロゲル組成物はさらに細胞(たと
えば、取り囲んでいる組織からの細胞侵入を補うための軟骨細胞)を含んでよい
。本発明の細胞懸濁液は、採取し、合流するよう成長させ、必要に応じて通過し
、次いで生物分解性の液状ポリマー(たとえば、グルクロン酸とマンヌロン酸と
のコポリマーであるアルギン酸塩)と混合した軟骨細胞を含有しており、カルシ
ウム塩と接触したときに制御された速度で固化するように設計されている。細胞
をヒドロゲル形成組成物と混合し、次いで増殖して欠損を矯正する所望の部位に
注入する。自家移植の軟骨細胞が好ましい。なぜなら、自家移植の細胞を使用す
る場合、こうした治療法はFDAの認可を必要としないからである。
【0087】 弱く架橋したポリマー物質(たとえばアルギン酸塩)をベースとするヒドロゲ
ルは、欠損を矯正する膀胱粘膜(たとえば、尿が通過するときに必要な制御を可
能にする)の隆起を起こさせるのに効果的な量にて欠損領域に注入することがで
きる。この場合も、生物分解性ポリマーが、ヒトにおける組織構造を保持するた
めの注入可能な埋め込み物に対する合成基質として作用する。アルギン酸塩懸濁
液は膀胱鏡によって簡単に注入することができ、また形成される組織は尿管膀胱
逆流を矯正することができ、閉塞症は起こらない。
【0088】 逆流を内視鏡的に治療するための理想的な注入可能物質は、非抗原性で、非移
動性で、しかも体積安定性の天然のバルク化剤でなければならない。この処置は
、外来患者ユニットにて短時間のマスク麻酔(a mask anesthetic)を施して1 5分以内に行うことができ、入院の必要は全くない。膀胱の排液も膀胱周囲の排
液も行う必要がない。処置全体が内視鏡的に行われ、膀胱が外科的に侵入されな
いので、手術後の不快感は全くない。患者は、殆どすぐに通常の活動レベルに戻
ることができる。
【0089】 本明細書に記載のゲル物質は、製造工場にて無菌の成分から配合し、別々のユ
ニット(組み合わせて、最終的なゲル物質を形成させることができる)として、
あるいは最終的な架橋生成物を含有する予備装入シリンジ(a pre-loaded syrin
ge)として医師に供給することができる。声帯麻痺や軟質組織の損傷空隙等の用
途に対しては、このゲル物質を使用して、従来の組織バルク化剤(たとえば、コ
ラーゲンペーストやテフロンペースト)に置き換えることができる。
【0090】
【実施例】
本発明のより深い理解を容易にするために、以下に幾つかの実施例を記載する
。しかしながら、本発明の範囲が、これらの実施例に開示されている特定の態様
に限定されることはない。これらの実施例は単に例示のために挙げたものである
【0091】 実施例1. ゲル化時間に及ぼす硫酸カルシウム濃度の影響 本実験は、塩化カルシウムが存在しないときに、硫酸カルシウムの濃度を変化
させた場合の影響を示している。配合物の他の成分の含量を変えずに、0℃、3
7℃、および室温(23℃)にて硫酸カルシウムのレベルを0.02g/ml( 0.1x)から0.2g/ml(1.0x)まで変えた。アルギン酸ナトリウム〔 プロノバ(Pronova)社から市販のUPMVPグレード品、35/65のM/G 比〕を0.1モル濃度のリン酸塩緩衝液(pH=7.4、0.79%の塩化ナトリ ウムを含有)中2%溶液として調製した。アルギン酸ナトリウム溶液をM199
細胞培地で1:1に希釈し、硫酸カルシウム粉末を20mg/ml〜200mg
/mlの範囲の量にて加えた。混合した後、サンプル溶液を氷浴温度(0℃)、
室温(R.T.)、または体温(37℃)にて保持した。アリコートをマイラーシ
ート(a mylar sheet)上に注入することにより、各サンプルをゲルの形成に関 して定期的に試験した。
【0092】 得られた結果を表Aに示す。ゲルを形成するための時間(xで表示)、および
注入がブロックされるようになるまでの時間(Bで表示)も示されている。表A
からわかるように、塩化カルシウムが存在しない場合、氷浴に対してはゲルの形
成が全く観察されなかった。室温では、70分〜100分の間でゲルの形成が起
こり、当該時間の20分以内にヒドロゲルの注入がブロックされた。37℃の場
合は、硫酸カルシウムの濃度に応じて32分〜16分で初期ゲル化が起こり、一
般には、初期ゲル化から15分以内に注入がブロックされた。
【0093】 実験により、0℃では120分後にゲル化は起こらなかった(nc)ことがわ
かる。室温の場合、ゲル化は0.2x処方に対しては90分で、または1.0x処
方に対しては70分で始まった。体温の場合、ゲル化は1.0x処方に対しては 16分で始まり、またゲルの硬化時間は、硫酸カルシウムの濃度の低下と共に殆
ど直線的に減少した。硫酸カルシウム架橋によるヒドロゲル配合物は、体温にお
いては16分でゲル化できるけれども、注入に対してはわずか数分にすることが
可能であり、この場合、送達特性とゲル化特性においてロット対ロットのコンシ
ステンシーを達成するために、シリンジに加熱装置とフィルターを取り付ける必
要がある。これらの要件の両方とも、配合物の臨床施用において複雑さを増すこ
とになる。温度は、ゲル形成速度に対してきわめて重要な役割を果たす。表Aか
ら、0.1xのCaSO4・2H2Oレベル(すなわち、配合バッチ中60mg) においては、ゲルは体温にて32分で硬化することができ、少なくとも90分に
わたって注入適性を保持する。それでも、37℃でのCaSO4というこの最良 のシナリオは、注入までに長すぎる時間を必要とし、所望されるより複雑且つ不
安定である。
【0094】
【表1】
【0095】 注: x=架橋あり、B=ブロック、nc=架橋なし、R.T.=室温。 CaS
4粒子によってニードルがブロックがされ、これらの粒子の周りにゲルが形成 された。各サンプルは、pH7.4の緩衝液中2%アルギン酸ナトリウムを1.5
ml、M199媒体(細胞なし)を1.5ml、および表記の量のCaSO4粉末
を含有する。ミキシング前は物質を氷上にて貯蔵する。ミキシング後、サンプル
を表記の温度で貯蔵し、表記の時間にてマイラーシート上に注入する。
【0096】 実施例2. 塩化カルシウムと硫酸カルシウムとの混合物 好ましい配合物においては、アルギン酸ナトリウムをpH7.4のK2HPO4 緩衝液中に溶解する。細胞をM199媒体中に加え、次いでこれをアルギン酸塩
溶液中に懸濁させる。硫酸カルシウム粉末を1.5mlのバイアル中に貯蔵する 。塩化カルシウムを18mg/mlの濃度にてM199媒体中に溶解し、別のバ
イアル中に貯蔵する。施用においては、CaCl2溶液をCaSO4粉末と混合し
、次いでアルギン酸塩と混合し、シリンジ中に入れ、約15分保持する。これで
配合物はいつでも注入できる状態になる。
【0097】 渦巻形成による試験管混合のほかに、本配合物をシリンジ混合した実験でも同
じゲル化特性を示した。配合物に軟骨細胞を加えて実験を行った結果、室温にて
14分で適切にゲル化し、2時間以上にわたって注入適性を保持した。後者の実
験は、配合物がその注入適性を2週間以上にわたって保持できることを示してい
る。表2に本配合物中の成分を列記する。
【0098】
【表2】 表1.配合物中の成分 物質 作用濃度 量 最終濃度 アルギン酸塩1 20mg/mL 2.25mL 15mg/mL M199中の細胞 1億2千万/mL 0.5mL 2千万/mL CaSO4・2H2O 粉末 45mg 15mg/mL CaCl2・2H2O2 18mg/mL 0.25mL 1.5mg/mL 1 使用するアルギン酸塩は、UPMVGグレード、K2HPO4緩衝液中に溶解。
【0099】 2 CaCl2はM199媒体中に溶解させる。 実施例3. ゲル化時間に及ぼす温度の影響 塩化カルシウム/硫酸カルシウム塩混合物と混合したときに、アルギン酸がゲ
ル化するのに必要な時間は、温度によって異なる。アルギン酸ナトリウム(プロ
ノバ社から市販のUPMVGグレード品)を、0.1モル濃度のリン酸塩緩衝液 (pH=7.4、0.79%の塩化ナトリウムを含有)中の2%溶液として調製し
た。2.25mlのアルギン酸塩溶液を0.5mlのM199細胞培地と混合した
。この混合物に、1ml当たり18mgの塩化カルシウムを含有する細胞培地0
.25mlと懸濁させた硫酸カルシウム粉末45mgとを加えた。ミキシング後 、各サンプルを表記の温度に保持し、ゲルの形成に関して定期的に試験した。2
つのサンプルにてゲルの形成が検出されたときの温度を下記の表に示す。室温(
20〜30℃)では、13〜30分でゲルが形成された。37℃では、ゲルの形
成に7〜8分を要した。
【0100】
【表3】 表2. 種々の時間におけるゲル化時間 温度(℃) ゲル化時間(分) 50 5, 6 40 7, 7 37 7, 8 35 9, 9 30 13, 14 25 17, 18 20 28, 30 15 53, 54 10 120, 115 5 240, 240 0 120<t<19時間 実施例4. 注入可能なアルギン酸ゲルの形成 混合物中の種々の成分のわずかな濃度変化に対するゲル形成時間の感受性を下
記のように試験した。アルギン酸ナトリウムの溶液、塩化カルシウムの溶液、お
よび硫酸カルシウムの溶液を実施例1と2に記載のように調製した。但し、1種
以上の他の成分の量をベース値の±16%で変化させた。ミキシング後にサンプ
ルを室温で保持し、ゲルの形成に関して定期的に試験した。
【0101】 ゲル形成のための時間、およびコンシステンシーが注入に対して適切である時
間を表3に示す。各成分の量を、ベース値に対してはMとして、ベース値より1
6%高い値に対してはHとして、そしてベース値より16%低い値に対してはL
として示している。これらパラメーターの変動範囲内で、ゲル化時間は18分±
約15%であり、この範囲内での特定成分の変動の影響は殆どないことがわかる
。これら溶液はいずれも約20分以内にゲル化したけれども、アルギン酸塩ゲル
のコンシステンシーは、その後24時間以上にわたって注入可能であった。同様
の方法で調製した配合物のサンプルは、配合後1ヶ月以上にわたって適切な注入
適性を示した。
【0102】
【表4】
【0103】 実施例5. CaSO4粉末とCaCl2/CaSO4混合物の比較 2種の配合物のゲルとゲル化プロセスを定量的に特性決定するために、また最
終的なゲルの強度を定性的に測定するために本実験を行った。上記実験中、ゲル
化とゲルが硬化するのに必要な時間を目視観察によって調べた。粘度計を使用す
ることによって、アルギン酸塩がゲル化を開始するときの粘度変化を直接測定す
ることができ、またゲルの相対強度を定性的に測定することもできる。
【0104】 CaSO4粉末によってゲル化されるアルギン酸塩を実施例1に関して記載の ように調製し、またCaCl2/CaSO4混合物によってゲル化されるアルギン
酸塩を実施例2に関して記載のように調製した。CaCl2/CaSO4サンプル
はシリンジ混合で調製し、CaSO4粉末サンプルは渦巻形成混合法で調製した 。シリンジ混合は、簡単に行える非常に単純な方法であり、極めて安定した生成
物が得られる。シリンジ混合はさらに、認可された生物医学的デバイスの使用が
可能であり、生成物を環境暴露から隔離するための閉じた系をもたらす。5℃、
25℃、および37℃の温度における、2つの系のゲル化進行に沿った粘度変化
を測定し、その結果が図1〜図3にプロットされている。
【0105】 室温では、CaCl2/CaSO4サンプルは13分で注入可能な設定点11 注入可能な設定点: 崩壊することなく積み重ねることのできるゲルのコンシス
テンシー)にまでゲル化された一方、CaSO4単独のサンプルでは56分まで ゲルが硬化しなかった。ゲル化前のCaCl2/CaSO4サンプルの粘度は約6
65cPであり、またCaSO4単独のサンプルは202cPである。前者の粘 度は後者の約3.3倍である。アルギン酸塩がゲル化を開始すると、その粘度が 突然上昇し、極めて高い値に達する(図1)(2分で1100cPから30,0 00cPへ上昇する)。ゲル化後、CaCl2/CaSO4サンプルの粘度はCa
SO4単独のサンプルの粘度の約2倍である(約40,000cP対20,000 cP)。
【0106】 両方の配合物のゲル化は体温において加速される。CaCl2/CaSO4サン
プルは4分でゲル化を開始し、CaSO4単独のサンプルは13分でゲル化を開 始する。ゲル化前の粘度は、CaCl2/CaSO4サンプルとCaSO4単独の サンプルに対し、37℃においてそれぞれ約520cPおよび135cPである
。初期粘度がより低いのは、温度がより高いためである。ゲル化後、CaCl2 /CaSO4サンプルの粘度は16,600cP(CaSO4単独配合物より約1 0倍高い)に達し(図2)、このことは、CaCl2とCaSO4を混合すること
により、埋め込み用途においてより良好な組織分離が可能となるより高強度のゲ
ルが得られることを示している。
【0107】 より低い温度においては、急激にゲル化が遅くなる。同様に、CaCl2/C aSO4サンプルは、5℃においては全ての時間ポイントにてCaSO4単独配合
物より高粘度である(図3)。
【0108】 CaSO4単独配合物と比較すると、CaCl2とCaSO4との混合物により 、(1)3〜4倍高い初期粘度;(2)注入可能なコンシステンシーに達するの
にはるかに短い時間;および(3)ゲル化後におけるより高い粘度(したがって
より良好な組織分離);がもたらされる。
【0109】 実施例6. 組織相容性および注入適性という特性を有するアルギン酸塩ゲル の組成物を例示するために行われた実験 下記の表4に記載の成分を含有する組成物を調製した。この組成物は、ミキシ
ングの直後においては約1000Cpの粘度を示した。ミキシング後約15分で
ゲル化が起こり、もとのままに見えるが弱く架橋したゲル(モジュラス=6.5 9kgf/cm2)を生成した。22−ゲージニードルを介して注入すると、ゲ ルは不規則形状のピース(“クランブル(crumbles)”)に破砕され、その結果
ゲル強度が低下した(モジュラス=0.231kgf/cm2)。
【0110】 この物質を普通のマウスの皮下部位に注入し、埋め込み物を6ヶ月間にわたっ
てモニターした。埋め込み物の組織学的試験により、クランブルは、50ミクロ
ンから500ミクロンの範囲の寸法を有することが観察された。埋め込み物の初
期体積は6ヶ月間にわたって持続した。時間の経過に沿った組織学的試験は、ク
ランブルを包み込んでいる宿主からのゆるやかな結合組織の形成を示しており、
このことは、ここに記載の組成を有するアルギン酸塩ゲルを皮下部位に注入する
と、注入されたゲルフラグメントの中および周囲においてゆるやかな結合組織の
侵入が促進されるということを示している。このゲルは線維反応を刺激するとい
う特性を示し、この反応によって、結合組織は最終的には、ゲル物質の注入でつ
くり出されたバルクの相当部分を占めるようになる。
【0111】
【表5】
【0112】 理解を深めるため、例示および特定の実施態様に関連させた実施例によって本
発明を幾らか詳細に説明してきたが、他の態様、利点、および変形は、本発明が
関係する当業者にとっては明らかであろう。上記の説明と実施例は例示のための
ものであって、本発明の範囲がこれらの説明と実施例によって限定されることは
ない。医学、再建手術、細胞培養、および/またはこれらの関連分野における当
業者にとっては明らかであるような、本発明を実施するための上記態様の変形も
本発明の範囲内であり、本発明の範囲は特許請求の範囲のみによって限定される
【0113】 本明細書に記載の全ての文献および特許出願は、本発明が関係する当業者の技
術のレベルを示している。個々の文献または特許出願が、特異的および個別的に
参照によって本明細書に含められるとしても、全ての文献および特許出願は、同
じ程度に参照によって本明細書に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、それぞれ硫酸カルシウム粉末と塩化カルシウム/硫酸カ
ルシウムで架橋されたアルギン酸塩に対する、25℃でのゲル形成の時間的進行
を示している。
【図2】 図2は、それぞれ硫酸カルシウム粉末と塩化カルシウム/硫酸カ
ルシウムで架橋されたアルギン酸塩に対する、37℃でのゲル形成の時間的進行
を示している。
【図3】 図3は、それぞれ硫酸カルシウム粉末と塩化カルシウム/硫酸カ
ルシウムで架橋されたアルギン酸塩に対する、5℃でのゲル形成の時間的進行を
示している。
【手続補正書】
【提出日】平成12年12月7日(2000.12.7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HU ,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR, KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL ,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK, SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,U Z,VN,YU,ZW (72)発明者 ネルソン,ゴードン・ピー アメリカ合衆国マサチューセッツ州02760, ノース・アッテンボロ,マウント・ホー プ・ストリート 939 (72)発明者 オムステッド,ダニエル・アール アメリカ合衆国マサチューセッツ州07120, アクトン,ジェイ・レイン 2 Fターム(参考) 4C081 AB01 AB11 AC03 AC06 BA12 BA13 BA16 BB07 BB08 BC02 CA052 CA062 CA082 CA152 CA182 CA242 CC02 CC05 CD041 CD042 CD132 CD142 CD34 CE08 CE11 CF21 DA12 DA13 DC13 EA03 EA05

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 部分的に硬化した安定なヒドロゲルを形成する生物学的適合
    性ポリマーを含む動物体内注入用組成物。
  2. 【請求項2】 前記組成物が、ブロックに形成したときに重力に等しい力を
    受けても流動に抵抗するペーストであって、動物体内への注入に適したペースト
    である、請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 前記注入可能なペーストが本質的に、30ミクロン〜500
    ミクロンの直径を有する異形ヒドロゲル粒子の懸濁物からなる、請求項2記載の
    組成物。
  4. 【請求項4】 前記注入可能なペーストが少なくとも0.1kgf/cm2
    ゲル強度を有し、前記粒子形態ヒドロゲルが少なくとも3kgf/cm2のゲル 強度を有する、請求項3記載の組成物。
  5. 【請求項5】 前記組成物が、脆いヒドロゲルを形成させることによって、
    そしてこのヒドロゲルをオリフィスに強制的に通してヒドロゲルを破砕し、これ
    により異形粒子を形成させることによって製造され、動物体内の組織面を分離す
    るに足るコンシステンシーを保持する前記粒子を含有する、請求項1記載の組成
    物。
  6. 【請求項6】 前記生物学的適合性ポリマーがアルギン酸塩である、請求項
    1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 【請求項7】 多価金属カチオンの易溶性塩と多価カチオンの難溶性塩とを
    さらに含む、請求項6記載の組成物。
  8. 【請求項8】 前記の易溶性塩と難溶性塩がいずれもカルシウム塩である、
    請求項7記載の組成物。
  9. 【請求項9】 前記易溶性塩が塩化カルシウムであり、そして前記難溶性塩
    が、銅カチオン、カルシウムカチオン、アルミニウムカチオン、マグネシウムカ
    チオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン、錫カチオン、二官能有機
    カチオン、三官能有機カチオン、および四官能有機カチオンからなる群から選ば
    れるカチオンと、低分子量ジカルボン酸イオン、サルフェートイオン、およびカ
    ルボネートイオンからなる群から選ばれるアニオンとを含む、請求項7記載の組
    成物。
  10. 【請求項10】 前記難溶性塩が硫酸カルシウムであり、前記混合物が塩化
    カルシウム/硫酸カルシウムを0.0075〜1.0の重量比にて含有する、請求
    項9記載の組成物。
  11. 【請求項11】 前記混合物が、少なくとも0.5重量%のアルギン酸塩と 、アルギン酸塩1g当たり少なくとも約0.001gの塩化カルシウムとを含有 する、請求項9記載の組成物。
  12. 【請求項12】 カルシウムイオンの結合に対してアルギン酸塩と競争する
    金属イオン封鎖剤をさらに含む、請求項9記載の組成物。
  13. 【請求項13】 前記金属イオン封鎖剤がホスフェートアニオンを含む、請
    求項12記載の組成物。
  14. 【請求項14】 前記組成物が生きた細胞をさらに含む、請求項1〜13の
    いずれか一項に記載の組成物。
  15. 【請求項15】 前記細胞が、軟骨細胞、軟骨を形成する他の細胞、骨芽細
    胞、硬骨を形成する他の細胞、筋細胞、線維芽細胞、および器官細胞からなる群
    から選ばれる、請求項14記載の組成物。
  16. 【請求項16】 前記細胞が、解離細胞および細胞凝集物からなる群から選
    ばれる、請求項14〜15のいずれか一項に記載の組成物。
  17. 【請求項17】 解剖学的欠損の部位にて動物体内に請求項1〜16のいず
    れか一項に記載の組成物を埋め込むことを含む、解剖学的欠損の治療を必要とす
    る動物における解剖学的欠損を治療するための方法。
  18. 【請求項18】 生物分解性で生物学的適合性のある程度硬化したヒドロゲ ルを調製する工程、このとき前記のある程度硬化したヒドロゲルが生きた細胞 を所望により含有してもよい; ヒドロゲルを加圧下にてオリフィスに通すことによってヒドロゲルを破砕し て、ヒドロゲル粒子を含有する懸濁液を得る工程;および 前記懸濁液を欠損部位にて動物体内に埋め込む工程、このとき埋め込み後の 前記ヒドロゲル懸濁液が、組織を取り囲むことによる線維形成反応と埋め込み 物の血管新生を引き起こす; を含む、解剖学的欠損の治療を必要とする動物における解剖学的欠損を治療する
    ための方法。
  19. 【請求項19】 バイオポリマーまたは所望により生きた細胞を含有する変 性バイオポリマーを含んだ生物学的適合性ヒドロゲルを調製する工程; ヒドロゲルを加圧下にてオリフィスに通して、組織面を分かつに足るコンシ ステンシーを有する流動性組成物を得る工程;および 前記流動性組成物を欠損部位にて動物体内に埋め込む工程; を含む、解剖学的欠損の治療を必要とする動物における解剖学的欠損を治療する
    ための方法。
  20. 【請求項20】 二価カチオンによって架橋させるとヒドロゲルを形成する ポリマー、前記ポリマーはアルギン酸塩であるのが好ましい; 二価金属カチオンを含有する易溶性塩、前記易溶性塩は塩化カルシウムであ るのが好ましい;および 銅カチオン、カルシウムカチオン、アルミニウムカチオン、マグネシウムカ チオン、ストロンチウムカチオン、バリウムカチオン、錫カチオン、二官能有 機カチオン、三官能有機カチオン、および四官能有機カチオンからなる群から 選ばれるカチオンと、低分子量ジカルボン酸、サルフェートイオン、およびカ
    ルボネートイオンからなる群から選ばれるアニオンとを有する難溶性塩、前記難
    溶性塩は 硫酸カルシウムであるのが好ましい; を含み、このとき上記の各成分は、哺乳類細胞の懸濁液と混合したときに、前記
    ポリマーを1.5%の濃度にて、前記易溶性塩を1.5mg/Lの濃度にて、およ
    び前記難溶性塩を15mg/Lの濃度にて含む、注入に適したある程度硬化した
    ヒドロゲルを30分以内に形成するように供給され、そしてさらに、前記のある
    程度硬化したヒドロゲルが、少なくとも4時間にわたって実質的な粘度変化を受
    けない、インビボ においては充分に硬化するような、動物体内への注入に適したある程度
    硬化したヒドロゲル溶液を調製するためのキット。
  21. 【請求項21】 (a) 多価カチオンで架橋させるとヒドロゲルを形成す ることができる生物学的適合性ポリマー; (b) 多価金属カチオンの易溶性塩;および (c) 多価カチオンの難溶性塩; を含む、動物体内に注入するための請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成
    物を調製するためのキット。
  22. 【請求項22】 (a) 多価カチオンで架橋させるとヒドロゲルを形成す ることができる生物学的適合性ポリマー; (b) 多価金属カチオンの易溶性塩;および (c) 多価カチオンの難溶性塩; を含み、このとき前記生物学的適合性ポリマーと前記難溶性塩が粉末形態をとっ
    ていて、所望により単一の容器中に収容されている、 動物体内に注入するための請求項6〜11のいずれか一項に記載の組成物を調製
    するためのキット。
  23. 【請求項23】 カルシウムイオンの結合に対してアルギン酸塩と競争する
    金属イオン封鎖剤をさらに含む、請求項22記載のキット。
  24. 【請求項24】 分離していて非タンパク質の複数の生物学的適合性ポリマ
    ー粒子を含んだ、動物体内への注入に適した埋め込み可能なデバイスであって、
    動物体内に埋め込まれたときに、埋め込まれたデバイスの粒子間スペースへの線
    維組織の内方成長を可能にするに足る時間にわたって実質的に同じ場所に留まる
    、前記埋め込み可能なデバイス。
  25. 【請求項25】 前記デバイスが、埋め込まれる前に生物細胞を実質的に含
    まない、請求項24記載のデバイス。
  26. 【請求項26】 前記生物学的適合性ポリマー粒子が、アルギン酸塩、変性
    アルギン酸塩、合成アルギン酸塩、または半合成アルギン酸塩を含む、請求項2
    4記載のデバイス。
  27. 【請求項27】 解剖学的欠損の部位にて動物体内に請求項24に記載のデ
    バイス埋め込む工程を含む、動物における解剖学的欠損を治療するための方法で
    あって、このとき埋め込まれたデバイス中に線維組織が成長し、そして線維組織
    の細胞が死滅し、埋め込まれたデバイスの三次元形状に実質的に類似した三次元
    形状を有するコラーゲンマトリックスが残る、前記方法。
  28. 【請求項28】 複数の分離したポリマー粒子を含有する注入可能な分散液
    を含み、動物において分離した塊体を供給するための埋め込み可能なデバイスで
    あって、このとき動物体内に注入した後に、前記粒子が表面特性を有し、前記分
    散液が、埋め込み物中への線維組織の内方成長を引き起こして機械的に安定な三
    次元組織マトリックスをもたらすに足る粒子間スペースを有し、前記分散液が注
    入後に、前記線維組織の内方成長を可能にするに足る時間にわたって所望の形状
    と位置を保持するに足るコンシステンシーを有する、前記埋め込み可能なデバイ
    ス。
  29. 【請求項29】 分離していて非タンパク質の複数の生物学的適合性ポリマ
    ー粒子を含んだ、細胞を含有しない注入可能なペーストを無菌容器中に収容した
    キットであって、このとき前記ペーストにおける粒子の表面特性と粒子間スペー
    スが、前記ペーストを動物体内に埋め込んだときに、線維組織の内方成長を引き
    起こすのに足る表面特性および粒子間スペースである、前記キット。
  30. 【請求項30】 解剖学的欠損の部位にて動物体内に、アルギン酸塩、変性
    アルギン酸塩、合成アルギン酸塩、または半合成アルギン酸塩から選ばれるアル
    ギ酸塩タイプの物質を含んだ組成物を埋め込む工程を含む、解剖学的欠損の治療
    を必要とする動物における解剖学的欠損を治療するための方法。
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