JP2007517522A - HIVgp41HR2由来の合成ペプチド、およびヒト免疫不全ウイルスの伝播を阻止する治療におけるその使用 - Google Patents

HIVgp41HR2由来の合成ペプチド、およびヒト免疫不全ウイルスの伝播を阻止する治療におけるその使用 Download PDF

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Abstract

HIV gp41 HR2の天然配列に基づいた合成ペプチドを提供するが、ただし、合成ペプチドは、(a)ヘリックス促進アミノ酸、または(b)ヘリックス促進アミノ酸と荷電アミノ酸(合成ペプチド中にイオン対を形成させるために導入される)の組合せ、を含む複数のアミノ酸置換を有し、かつ合成ペプチドは、複数のアミノ酸置換を含まないアミノ酸配列を有するペプチドと比較して、予測し得ない改善された生物学的活性を示す。さらに、合成ペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにHIVの標的細胞への伝播を阻止するための、またはHIVの標的細胞への伝播を阻止する組成物としての、上記合成ペプチドの使用方法も提供する。

Description

本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp41のHR2領域に由来する合成ペプチド、ならびにHIVの標的細胞への伝播を阻止するための抗ウイルス剤としての抗レトロウイルス療法におけるその使用に関する。さらに特定すると、本発明は、予測し得ない改善された生物学的活性をもたらす(天然の配列に対して)複数のアミノ酸置換を含むペプチドのファミリーを包含する。
HIVが細胞に感染するプロセスは細胞膜とウイルス膜の間で融合が起こるためであることは、現在よく知られている。このプロセスの一般に容認されたモデルは、ウイルスエンベロープの糖タンパク質複合体(gp120/gp41)が標的細胞の膜上にある細胞表面受容体と相互作用するというものである。gp120が細胞受容体(例えば、CCR-5またはCXCR-4のようなケモカイン共受容体と組み合わされたCD4)に結合した後、gp120/gp41複合体の立体的構造変化が誘導され、gp41が標的細胞に入り込んで膜融合を媒介できるようになる。
gp41のアミノ酸配列および様々なHIV株間でのその変異はよく知られている。図1には、一般的に認められたgp41の機能性ドメインの模式図が示してある(アミノ酸配列番号はHIV株によりわずかに変化しうることに注意されたい)。融合ペプチド(融合を引き起こすドメイン)は標的細胞膜への挿入と該細胞膜の破壊に関与していると考えられる。膜貫通ドメイン(膜貫通アンカー配列を含む)はこのタンパク質のC-末端に位置している。融合ペプチドと膜貫通アンカーの間には2つの明確に区別される領域が存在しており、これらはヘプタッドリピート(heptad repeat: HR)領域として知られるものであるが、各領域は複数のヘプタッドを有している。HR1領域(HR2領域より当該タンパク質のN-末端に近い)は、一般に、gp160のアミノ酸配列の約545から約595までのアミノ酸残基を含むものとして記載されている。しかし、gp160のアミノ酸の番号付けは、そのアミノ酸配列が推定されたウイルス株により変化する。HR1領域を含むアミノ酸配列とHR2領域を含むアミノ酸配列は、それぞれ、HIV-1エンベロープタンパク質において高度に保存されている。HR2領域は、一般に、gp160のアミノ酸配列の約628から約678までの位置のアミノ酸を含むものとして記載されている。図1にさらに示すように、HR領域は複数の7アミノ酸残基のストレッチ、すなわち「ヘプタッド」(各ヘプタッド中に「a」から「g」と称する7個のアミノ酸)を有し、「a」位置と「d」位置のアミノ酸はおおむね疎水性である。さらに、各HR領域には8アミノ酸配列(イソロイシンまたはロイシンのいずれかで始まり、これらのいずれかで終わる)からなるロイシンジッパー様モチーフ(ロイシンジッパー様リピートともいう)が1つ以上存在する。たいていの場合、HR2領域はただ1つのロイシンジッパー様モチーフを持つが、HR1領域は5つのロイシンジッパー様モチーフを持っている。これらのアミノ酸配列の構成は、gp41のコイルドコイル構造の形成と、HR領域由来のペプチドのコイルドコイル構造の形成に係っている。一般に、コイルドコイルは2本以上のヘリックスがオリゴマーを形成する際に互いの回りに巻きついたものとして知られている。コイルドコイルの特質は、第1(「a」)と第4(「d」)の位置に疎水性残基を優先的に有し、多くの場合第5(「e」)と第7(「g」)の位置に荷電残基を有するアミノ酸のヘプタッドリピートであり、「a」位置と「d」位置のアミノ酸がオリゴマーの状態と鎖の方向性に影響を与える主要な決定因子である。
HIV gp41のHR1領域またはHR2領域の天然配列由来のペプチド(それぞれ「HR1ペプチド」または「HR2ペプチド」)は、in vitroアッセイとin vivo臨床試験のどちらにおいてもHIVの宿主細胞への伝播を阻止することが見出された (例えば、Wildら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:9770-9774; 本譲受人にライセンスが与えられた米国特許第5,464,933号および同第5,656,480号; ならびにKilbyら, 1998, Nature Med. 4:1302-1306を参照されたい。さらに、例えば、本譲受人に譲渡された米国特許第6,258,782号および同第6,348,568号も参照されたい。)。より詳細には、DP178(T20、エンフュービルタイド(enfuvirtide)、およびFuzeon(登録商標)としても知られる; 配列番号1)、T651(配列番号2)、T649(配列番号3)により代表されるHR2ペプチドは、それぞれ0.5ng/ml(HIV-1LAIに対するEC50; 例えばLawlessら, 1996, Biochemistry, 35:13697-13708を参照)、5ng(IC50; HIV-1IIIB)、および2ng(IC50; HIV-1IIIB)の効力で標的細胞への感染を阻止した。T651(配列番号2)とT649(配列番号3)のそれぞれのアミノ酸配列は米国特許第6,479,055号(本譲受人に譲渡された)に開示されている。さらに、臨床試験により次のことが明らかになった。すなわち、HIV感染個体を、T20(配列番号1)を含む抗ウイルス剤の治療レジメンで処置すると、そのような処置個体では、T20を含まないことを除いて同じ治療レジメンで処置された個体と比べて、HIV-1ウイルス負荷量が顕著に減少し、また、循環CD4+細胞集団が著しく増加した。
HIV由来HR2ペプチドの生物学的活性を改善する試みがなされている。例えば、生物学的活性が低い(IC50が>500μM)短鎖(14アミノ酸)のHIV由来HR2ペプチドのヘリックスの立体構造を安定化させるために、ヘリックスに好都合な非天然アミノ酸(すなわち、α-アミノイソ酪酸)置換のペプチド配列中での使用と、化学架橋剤(すなわち、ジアミノアルカン架橋剤)の使用がそれぞれ採用された (Siaら, 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:14664-14669)。作製されたペプチドのあるものは、ほんの4倍から15倍ほどの効力(例えば、阻害活性)増加の生物学的活性を示したものの、他のものは阻害活性をまったく示さなかった (Siaら, 2002, 前掲)。したがって、この方法ではすでに生物学的活性の低い阻害剤(IC50が>500μM)のほんのわずかな活性増加が達成されたにすぎなかった。さらに、Siaらは、当技術分野で現在考えられていること、すなわち、ヘリックス性と生物学的活性との間には相関関係がないということ、を確認した。例えば、ヘリックス含有量が最も高いペプチドは、多くの場合、HIVにより誘発される膜融合の最も弱い阻害剤である。
HIV由来HR2ペプチドの生物学的活性を改善する別の試みでは、i,i+4配置(3個のアミノ酸がGluをLysから分離している)のペプチド「C34」のアミノ酸配列のさまざまな位置でグルタミン酸とリシンを置換して、(i位置とi+4位置の)GluとLysの間にイオン対が形成されるようにした (Otakaら, 2002, Angew. Chem. Int. Ed. 41:2938-2940)。GluとLysのさまざまな組合せにおいて、GluとLysの間でのイオン対形成を促進するために(すなわち、6〜10のi,i+4配置を含む可能性として示される)、10アミノ酸から17アミノ酸までの範囲の置換が加えられた。得られた3種類のペプチド(配列番号96〜98)(ヘリックス内塩橋を形成しうる)は増大したヘリックス性を示し、約20〜30%の増加と測定された(表2参照)。しかし、これら3種類のペプチドの生物学的活性は、親ペプチド(これに上記置換が導入された)と比較して、阻害活性(EC50、MAGIアッセイを用いた抗HIV活性; Otakaら, 2002, 前掲)の増加をまったく示さなかったか、せいぜい3倍の増加にとどまった。
他の抗レトロウイルス剤について実証されているように、HIVでは治療中に突然変異が起こることがあり、かかる突然変異はT20(配列番号1)のような融合阻害剤ペプチドを用いた薬物療法に対する感受性を低減させる。こうして、生物学的活性の向上した融合阻害剤としての更なる化合物が必要とされている。HR2領域由来の合成ペプチドの場合には、そのような向上した生物学的活性としては、限定するものではないが、以下が含まれる:既知のHR2ペプチドに耐性を示すHIV株に対して、さらに特定すると、配列番号2〜4のペプチドのいずれか1つ以上に耐性を示すHIV株に対して、阻害活性の約100〜1,000倍増加(その由来となる基本(天然)HR2配列からなるペプチドと比較)。
発明の概要
本発明は、配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つ以上の基本アミノ酸配列(「基本配列」)から誘導された合成ペプチドに関し、該合成ペプチドは、基本配列中のアミノ酸を置き換えて、複数のアミノ酸を付加する点で基本配列と相違しており、該合成ペプチドは、その由来となった基本配列と比較して、予測し得ない改善された生物学的活性を示し、またヘリックス性(helicity)の増加をさらに含むことができる。
gp41のHR2領域に由来する合成ペプチドを提供するが、そのような合成ペプチドは、それぞれが配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つ以上の基本配列を含むものの、1個以上のヘリックス促進アミノ酸を含む複数のアミノ酸置換を(基本配列と比較して)さらに含む点で基本配列と相違しており、該合成ペプチドは、基本配列と比較して、予測し得ない改善された生物学的活性を示し、またヘリックス性の増加をさらに含んでいてもよい。ヘリックス促進アミノ酸による前記複数の置換は、その由来となった基本配列の長さに応じて、約5〜15アミノ酸の範囲であってよく、さらに特定すると、本発明の合成ペプチドを製造するために、基本配列のアミノ酸の約5〜50%を1個以上のヘリックス促進アミノ酸で置換することができる。
配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つ以上の基本配列を含む合成ペプチドを提供するが、前記合成ペプチドは以下の点で基本配列と相違する:(a)1個以上のヘリックス促進アミノ酸を含む複数のアミノ酸置換が存在する;(b)複数の荷電アミノ酸が、合成ペプチドのアミノ酸配列中に複数のイオン対を形成するように反対に荷電したアミノ酸から離れて(好ましくは、i,i+4配置および/またはi,i+3配置で)配置されている;(c)改善された生物学的活性を示す。合成ペプチド中のイオン対の数は約3〜10の範囲であることが好ましい。さらに、合成ペプチドは、その由来となった基本配列と比較して、ヘリックス性の増加を含むことが好ましい。1個以上のヘリックス促進アミノ酸および複数個の荷電アミノ酸を含む複数のアミノ酸置換は、その由来となった基本配列の長さに応じて、約5〜25アミノ酸の範囲でありうる。さらに特定すると、基本配列のアミノ酸の約5〜60%をヘリックス促進アミノ酸と荷電アミノ酸の組合せで置換すると、本発明の合成ペプチドが得られる。
配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つ以上の基本配列から誘導された合成ペプチドを提供するが、該合成ペプチドは、(a)ヘリックス促進アミノ酸、および(b)イオン対の形成のために反対に荷電したアミノ酸間に(好ましくは、i,i+3配置および/またはi,i+4配置で)導入される複数個の荷電アミノ酸、を1個以上含む(その由来となった基本配列のアミノ酸配列と比較して)複数のアミノ酸置換を有し、しかも該合成ペプチドは改善された生物学的活性を有する。さらに、合成ペプチドは、その由来となった基本配列と比較して、ヘリックス性の増加を含んでいてもよく、また、約36〜75℃の範囲のTm(融解温度)で測定したとき安定性を示す。ヘリックス促進アミノ酸と荷電アミノ酸を含む複数のアミノ酸置換は、基本配列の長さに応じて、約5〜25アミノ酸の範囲でありうる。さらに特定すると、基本配列のアミノ酸の約5〜60%をヘリックス促進アミノ酸と荷電アミノ酸の組合せで置換すると、本発明の合成ペプチドが得られる。
本発明の合成ペプチドはさらに、以下で詳しく述べるように、N-末端基、C-末端基、またはN-末端基とC-末端基の両方を含むことができる。
HIV感染の治療における活性治療物質としての本発明の合成ペプチドの使用を提供する。さらに、HIVの治療を含む治療用の医薬を製造するための本発明の合成ペプチドの使用も提供する。
また、本発明によれば、HIVの細胞への伝播を阻止するための方法も提供され、該方法は、細胞の存在下で該ウイルスに、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の本発明の合成ペプチドを接触させることを含んでなる。さらに、該ウイルスおよび細胞に、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の合成ペプチドを添加することを含んでなる、HIVの細胞への伝播を阻止する方法も提供する。さらに、HIV融合(例えば、HIVによる標的細胞への感染の際に、HIV gp41がウイルス膜と細胞膜との融合を媒介するプロセス)を阻止するための方法も提供され、該方法は、細胞の存在下で該ウイルスに、HIV膜融合を阻止するのに有効な濃度の本発明の合成ペプチドを接触させることを含んでなる。これらの方法を使用してHIVに感染した個体を治療することができる。上記の、および他の本発明の構成ならびに効果は、添付の図面を参照することにより、以下の発明の詳細な説明から明らかとなろう。
発明の詳細な説明
定義
用語「個体」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、哺乳類を意味し、好ましくはヒトをさす。
用語「標的細胞」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、HIVが感染することのできる細胞を意味する。好ましくは、該細胞は1個のヒト細胞であるか、または複数個のヒト細胞であり、さらに好ましくは、HIVが膜融合を含むプロセスを介して感染することのできるヒト細胞である。
「製薬上許容される担体」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、担体が添加される活性成分(例えば、本発明の合成ペプチド)の生物学的活性を著しく変えることのない担体を意味する。当業者には知られているように、適当な製薬上許容される担体は、水、緩衝水、食塩水、0.3%グリシン、水性アルコール、水性等張緩衝液を含むがこれらに限らない1種以上の物質を含んでいてもよく、さらに、水溶性ポリマー、グリセロール、ポリエチレングリコール、グリセリン、油、塩類(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウムなど)、リン酸塩、炭酸エステル、脂肪酸、糖類、多糖類、糖タンパク質(安定性を高めるため)、賦形剤、ならびに防腐剤および/または安定剤(貯蔵寿命を延ばすため、または組成物の製造および分配に必要かつ好適であるため)のような1種以上の物質を含んでいてもよい。好ましくは、担体は静脈内、筋肉内、皮下または非経口投与に適しているものである。
「アミノ酸」とは、本発明の合成ペプチドに関して本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、少なくとも1つの遊離アミン基と少なくとも1つの遊離カルボキシル基をもつ分子をさすものとする。アミノ酸は2個以上の遊離アミン基、または2個以上の遊離カルボキシル基をもっていてもよく、さらにアミン基やカルボキシル基以外の遊離の化学反応性基(例えば、ヒドロキシル、スルフヒドリルなど)を1個以上含んでいてもよい。アミノ酸は天然アミノ酸(例えば、L-アミノ酸)、非天然アミノ酸(例えば、D-アミノ酸)、合成アミノ酸、修飾アミノ酸、アミノ酸誘導体、アミノ酸前駆体、および保存的置換でありうる。当業者であれば、ペプチドに組み込まれるアミノ酸の選択が、抗ウイルス性ペプチドに要求される特定の物理的、化学的または生物学的性質に幾分なりとも左右されることを理解するであろう。かかる性質はヘリックス性(より詳しく本明細書で説明する)および抗ウイルス活性(本明細書でより詳しく説明する)を測定することにより決定される。例えば、当業者は、合成ペプチドのアミノ酸が1個以上の天然の(L)-アミノ酸と非天然の(D)-アミノ酸を含みうることを本明細書の記載から認識するであろう。好適なアミノ酸は、その好適なアミノ酸以外のアミノ酸を除外するために使用することができる。
「ヘリックス促進アミノ酸」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、そのようなヘリックス促進アミノ酸を含むアミノ酸配列のαヘリックス形成を促進する性向が高いアミノ酸をさすものとする。当技術分野で知られているように、ヘリックス促進アミノ酸には、天然アミノ酸、例えばグルタミン酸、アラニン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、イソロイシン、リシン、アルギニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、およびトリプトファン、ならびに非天然アミノ酸、例えばアミノ酪酸(例:α-アミノイソ酪酸)が含まれる。これらのヘリックス促進アミノ酸に関して、ヘリックス性向の順序(最も大きい/より高いから、より小さい/より低い順)は、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、リシン、アルギニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ヒスチジン、およびトリプトファンである。したがって、本発明によれば、合成ペプチドは、その由来となった基本配列と比較して、複数のアミノ酸置換を含み、ここでアミノ酸置換は、合成ペプチドのアミノ酸配列のある位置に、その合成ペプチドの由来となった基本配列のアミノ酸配列の対応する位置にあるアミノ酸と比べて、より高いヘリックス性向を有するヘリックス促進アミノ酸を含んでいる。別の実施形態では、荷電されていないヘリックス促進アミノ酸を基本配列中の荷電アミノ酸の代わりに使用する。「ヘリックス促進」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、慣例的に、1つ以上のアミノ酸置換がペプチドのヘリックス性への寄与に及ぼす効果、さらに詳しくは、当技術分野で知られているような1以上のαヘリックスの安定化、つまりヘリックス性の増加、として観察される効果をさしている。
本発明の合成ペプチドのアミノ酸配列に関して、「保存的置換」とは、合成ペプチドが予測し得ない改善された生物学的活性(本明細書中でより詳しく説明する)を依然として示す(保存している)ような、合成ペプチドの配列中の1つ以上のアミノ酸置換をさすために、本明細書および特許請求の範囲で以後用いる語句である。当技術分野で公知のように、「保存的置換」は上記の作用により定義され、置換されるアミノ酸と実質的に同じ電荷、サイズ、親水性、および/または芳香族性を有するアミノ酸の置換を含む。そのような置換は、限定するものではないが、グリシン-アラニン-バリン; イソロイシン-ロイシン; トリプトファン-チロシン; アスパラギン酸-グルタミン酸; アルギニン-リシン; アスパラギン-グルタミン; およびセリン-トレオニンを含むことが当業者に公知である。そのような置換はまた、HIVの実験室用の各種分岐株および/または臨床分離株に見られるような、配列番号2のさまざまなアミノ酸位置の多型(図2に示す)を含んでいてもよい。
「天然配列」とは、HIV gp41のHR2領域のアミノ酸配列に関して本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、実験室用のHIV株および/またはHIV臨床分離株に見られる天然に存在する配列を意味する。かかる配列はGenBankのような公開遺伝子データベースから容易に入手可能である。限定ではなく例として、かかる天然配列のいくつかを図2に示してあるが、ここには配列番号2で表されるアミノ酸配列のさまざまなアミノ酸位置の置換例(例えば、多型)が示される。
「基本配列」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、本発明の合成ペプチドの由来となった天然配列(または天然配列からなるペプチド)をさす。したがって、例えば、合成ペプチドは、基本配列のアミノ酸配列の一部を含むという点で基本配列に由来するが、さらに、合成ペプチドは、(a)合成ペプチドのアミノ酸配列への複数のヘリックス促進アミノ酸、または(b)合成ペプチドのアミノ酸配列へのヘリックス促進アミノ酸と荷電アミノ酸(イオン対を形成させるため)の組合せ、のいずれかの導入により、そのようなアミノ酸が導入されていない基本配列と比較して、予測し得ない改善された生物学的活性が付与されるという点で基本配列と相違する。
「反応性官能価」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、共有結合を形成することができる、および/または保護的である(例えば、ペプチド誘導体をそれら自体との反応または他の分子との反応から保護する)化学基または化学成分を意味する。化学基に関して、反応性官能価は、以下の基を含むがそれらに限定されないグループを構成することが当業者には知られている:マレイミド、チオール、カルボキシ、ホスホリル、アシル、ヒドロキシル、アセチル、疎水性基、アミド、ダンシル、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、スルホ、スクシンイミド、チオール反応性基、アミノ反応性基、カルボキシル反応性基など。例えば、合成ペプチドのアミノ末端の化学反応性をブロックするために該ペプチドのN-末端アミノ酸に付加される化学基にはN-末端基が含まれる。ペプチドのアミノ末端を保護するためのそのようなN-末端基は当技術分野で周知であり、限定するものではないが、低級アルカノイル基、アシル基、スルホニル基、およびカルバメート形成基が含まれる。好ましいN-末端基として、アセチル、Fmoc、およびBocが挙げられる。例えば、合成ペプチドのカルボキシ末端の化学反応性をブロックするために該ペプチドのC-末端アミノ酸に付加される化学基にはC-末端基が含まれる。ペプチドのカルボキシ末端を保護するためのそのようなC-末端基は当技術分野で周知であり、限定するものではないが、エステルまたはアミド基が含まれる。化学成分はリンカーを含みうる。リンカーは2つの異なる分子を機能的に連結する分子架橋として作用する化合物または成分をさすことが知られている(例えば、リンカーのある部分が本発明のペプチドと結合し、リンカーの別の部分が巨大分子キャリアーまたは標的細胞へのHIV伝播を阻止することが知られている別の抗ウイルス性ペプチドと結合する)。2つの異なる分子は段階的にリンカーに連結することができる。リンカーは、それが分子架橋としての目的にかなうかぎり、特定のサイズまたは組成に限定されない。リンカーは、限定するものではないが、化学鎖、化合物(例えば、試薬)などを含むことが当業者に知られている。リンカーとして、ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロ二官能性リンカーは、当業者に周知であり、第1分子と特異的に連結する第1の反応性官能価を有する一端と、第2分子と特異的に連結する第2の反応性官能価を有する他端とを含む。当業者には、ホモ官能性とヘテロ官能性の両方の種々の二官能性もしくは多官能性試薬(例えば、Pierce Chemical社(Rockford, Ill.)のカタログに記載されているもの)またはマレイミドを本発明に関してリンカーとして使用しうることが明らかだろう。連結すべき分子、連結を行う条件などの要因に応じて、リンカーの長さおよび組成は、生物学的機能の安定性の保存、特定の化学的および/または温度パラメーターに対する抵抗性の保存、ならびに十分な立体選択性またはサイズの保存といった性質を最適化するように変えることができる。例えば、リンカーは、HIV融合および標的細胞へのHIV伝播のいずれかまたは両方の阻害剤として機能する本発明のペプチド(これにリンカーが連結される)の能力を著しく妨害してはならない。好ましい反応性官能価は、その好ましい反応性官能価以外の反応性官能価を除外するために使用することができる。
「巨大分子キャリアー」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、本発明の1つ以上のペプチドに(例えば、化学的にまたは組換え手段により)連結、結合または融合される分子を意味し、それにより該分子は該1つ以上のペプチドに安定性を付与することができるか、該1つ以上のペプチドの生物学的安定性を高めることができるか、または該分子が存在しない該ペプチドと比べて該1つ以上のペプチドの血清半減期を増大させる(例えば、該1つ以上のペプチドの体内残留を長引かせる)ことができる。そのような巨大分子キャリアーは当技術分野で周知であり、例えば、血清タンパク質、ポリマー、炭水化物、および脂質-脂肪酸コンジュゲートが含まれるが、これらに限らない。巨大分子キャリアーとして通常用いられる血清タンパク質としては、限定するものではないが、トランスフェリン、アルブミン(好ましくはヒト)、免疫グロブリン(好ましくはヒトIgGまたは1本以上のその鎖)、またはホルモンが挙げられる。巨大分子キャリアーとして通常用いられるポリマーとしては、限定するものではないが、ポリリシンもしくはポリ(D-L-アラニン)-ポリ(L-リシン)、またはポリオールが挙げられる。好ましいポリオールは水溶性のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり、直鎖または分枝鎖でありうる。好適なポリオールとしては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびPEG-PPGコポリマーが挙げられる。好適なポリオールは、平均分子量が約1,000ダルトンから約20,000ダルトンまでの範囲から選ばれるPEGである。用いることができる他の種類の巨大分子キャリアー(一般的には20,000より高い分子量を有する)は当技術分野で公知である。
本発明のペプチドに関して「合成」とは、本明細書および特許請求の範囲で以後用いるとき、該ペプチドが化学合成、組換え発現、より大きい分子の生化学的もしくは酵素的断片化、より大きい分子の化学的切断、前記方法の組合せ、または一般的に、当技術分野の他のいずれかの方法で製造され、単離されることを意味する。「単離された」とは、ペプチドに関して用いるとき、合成ペプチドがペプチドそのものの一体的構造の一部となっていない成分を実質的に含まないことを意味し、例えば、組換え法で製造したときには細胞性物質や培養培地を実質的に含まず、また、化学合成したときまたは生化学的もしくは化学的方法を用いて製造したときには化学的前駆物質または他の化学物質を実質的に含まないことを意味する。
「イオン対」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、アミノ酸配列中の反対に荷電したイオン間(例えば、2つの反対に荷電したアミノ酸間)の単純な静電相互作用をさしている。反対に荷電したそれぞれのイオンはアミノ酸の側鎖上にある。さまざまなタイプのイオン対のうち、「塩橋」(salt bridge)は、核磁気共鳴や当技術分野で公知の他の標準方法で測定したとき、(当技術分野で公知のように)接近した空間関係にあるイオン対である。好ましい具体例では、イオン対は、ヘリックスを形成する際にアミノ酸配列中に含まれる、連続した配列中の3個のアミノ酸(すなわち、i,i+4配置)または2個のアミノ酸(すなわち、i,i+3配置)によって互いに離れている2つの反対に荷電したアミノ酸残基により形成される。こうして、正に荷電したアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)は負に荷電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)とイオン対を形成することができる。したがって、例えば、ある実施形態では、合成ペプチドは基本配列から誘導されるが、ただし、(基本配列中にある)中性(電荷)アミノ酸または負に荷電したアミノ酸の代わりに、正に荷電したアミノ酸を合成ペプチドの対応する位置に配置して、負に荷電したアミノ酸とのイオン対が(例えば、i,i+3配置またはi,i+4配置で)形成されるようにする。別の実施形態では、合成ペプチドは基本配列から誘導されるが、ただし、(基本配列中にある)中性(電荷)アミノ酸または正に荷電したアミノ酸の代わりに、負に荷電したアミノ酸を、正に荷電したアミノ酸とのイオン対が(例えば、i,i+3配置またはi,i+4配置で)形成されるようなアミノ酸配列中の位置で合成ペプチドに含める。さらに別の実施形態では、負に荷電したアミノ酸と正に荷電したアミノ酸の両方を、合成ペプチド中にイオン対が形成されるような配置で合成ペプチド中に含めるが、そのイオン対は合成ペプチドの由来となった基本配列中には存在しない。
「改善された生物学的活性」とは、本発明の合成ペプチドに関して本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、(a)合成ペプチドの抗ウイルス活性(例えば、IC50で測定されるか、または抗ウイルス力を測定するための当技術分野で標準的な他の測定法で測定される)が、その由来となった基本配列の抗ウイルス活性と比較して、基本配列の抗ウイルス活性への感受性の低下(「耐性」)を示すHIV株に対して増加しているか、または(b)合成ペプチドの抗ウイルス活性が、その由来となった基本配列の抗ウイルス活性と比較して、基本配列の抗ウイルス活性に耐性を示すHIV株に対して増加しており、かつ合成ペプチドの薬物動態特性(例えば、曲線下面積(Area Under the Curve: AUC)、生物学的半減期および/またはクリアランスのような1以上のパラメーターで測定されるか、あるいは薬物動態特性を測定するための当技術分野で標準的な他の測定法で測定される)が、その由来となった基本配列の薬物動態特性と比較して、向上していることを意味する。そのような改善された生物学的活性は予測し得ないと考えられる。ある実施形態では、改善された生物学的活性は、基本配列に耐性を示すウイルス分離株(突然変異株)に対して、基本配列で認められるものより抗ウイルス活性が増加していること(好ましくは、活性が20倍以上高いこと)を含んでなる。より好ましい実施形態では、そのような改善された生物学的活性は、基本配列に耐性を示すウイルス分離株に対して0.500μg/ml以下のIC50を含んでなる。さらに好ましくは、合成ペプチドの前記IC50はナノグラム/mlまたはピコグラム/mlの範囲にある。本発明の好適な実施形態では、基本配列は配列番号2、配列番号3、配列番号4、およびこれらの組合せからなる群より選択されたアミノ酸配列からなる。基本配列に耐性を示すウイルス分離株に対する合成ペプチドの改善された生物学的活性はまた、T20(配列番号1)に耐性のHIV分離株に対する予測し得ない改善された抗ウイルス活性にも関係しうる、ことに留意することが重要である。合成ペプチドは、その由来となった基本配列と比較して、その合成ペプチドが、(a)より長い生物学的半減期(t 1/2)、および(b)生物学的クリアランス(Cl)の減少、の1つ以上を備えている場合に、改善された薬物動態特性を有する。好ましい実施形態では、合成ペプチドは一般的に、その由来となった基本配列と比較して、クリアランスを30%以上減少させることができ、これについては本明細書中の実施例で詳しく示すことにする。別の好ましい実施形態では、合成ペプチドは一般的に、その由来となった基本配列と比較して、生物学的半減期を5倍以上増加させることができ、これについては本明細書中の実施例で詳しく示すことにする。
「薬物動態特性」とは、本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、時間の経過とともに全身的に利用される医薬組成物中の有効成分(例えば、合成ペプチド類似体)の全量を意味する。薬物動態特性は、投与後の合成ペプチド類似体の経時的全身濃度を、合成ペプチド単独(すなわち、それにアミド形成アミノ酸が機能的に結合されていない)の投与後の薬物動態特性と比較してまたは比較せずに、測定することにより確認することができる。例として、薬物動態特性は曲線下面積(AUC)、生物学的半減期、および/またはクリアランスによって表される。AUCは時間に対する全身有効成分濃度の積分値であり、質量×時間/体積の単位で表される。ある用量の有効成分を投与した後、投与時間から有効成分が体内に残存しなくなる時間までのAUCは、個体が有効成分(および/または有効成分の代謝産物)に曝されている時間の指標となる。クリアランスは用量/AUCと定義され、体積/重量/時間の単位で表される。
「安定性」とは、本発明の合成ペプチドに関して本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、該ペプチドのαヘリックスのコイルドコイル構造の安定性をさす。当業者には知られているように、安定性は当技術分野で公知の標準方法で測定することができ、例えば、ペプチドの融解温度(「Tm」)を測定する(例えば、本明細書中の実施例1を参照のこと)。好ましい実施形態では、合成ペプチドの由来となった基本配列に対して、本明細書に記載するような複数のアミノ酸置換を含む合成ペプチドはより大きな安定性を示し、これは、合成ペプチドの由来となった基本配列の融解温度と比較して、合成ペプチドの融解温度が高いことを観察することによって確認される。そのような1以上のアミノ酸置換には次のものが含まれる:適切な位置(例えば、ヘリックス性向のより低い側鎖を置換するため)へのヘリックス促進アミノ酸の導入、またはコイルドコイルの安定化に役立つ1以上のヘプタッドリピートへのヘリックス促進アミノ酸と荷電アミノ酸(イオン対を形成させるため)の導入。
「同一性パーセント」とは、本発明の配列に関して本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、本発明の配列(比較される配列、以後「比較配列」という)を、記載されたまたは参照の配列(「参照配列」)と比較することを意味し、同一性パーセントは以下の式に従って決定される:
同一性%=[1-(xC/yR)] x 100
ここで、xCは、比較配列と参照配列とのアライメントの長さにわたる参照配列と比較配列の間の差異の数であり、その際、(a)比較配列と比較して、アライメントされて一致する塩基またはアミノ酸をもたない参照配列中のそれぞれの塩基またはアミノ酸、(b)参照配列中のそれぞれのギャップ、および(c)参照配列中のアライメントされた塩基またはアミノ酸と異なる比較配列中のアライメントされたそれぞれの塩基またはアミノ酸、が差異を構成し;yRは、比較配列の長さにわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数であり、その際、アライメントの結果として参照配列中に導入されたギャップも塩基またはアミノ酸として数えられる。2つの予め決められた配列間のアライメントのための方法およびソフトウェアは当技術分野で周知である。こうして、例えば、参照配列は配列番号5〜98のいずれか1つのアミノ酸配列を有する合成ペプチドであり、比較配列は同一性パーセントを求めるために参照配列と比較される合成ペプチドである。
「治療」または「療法」という用語は、HIV感染に関して本明細書および特許請求の範囲で互換的に用いられ、合成ペプチド(または活性薬物として合成ペプチドを含む組成物)を用いて、HIV感染と関連した1以上のプロセス、またはそのような治療もしくは療法の治療効果(例えば、「治療的適用」)を確認するための指標として用いられる1以上のパラメーターもしくはエンドポイントに影響を与えうることを意味する。例えば、合成ペプチドを用いて以下のプロセスの1つ以上を阻害することができる:HIVの標的細胞への伝播、HIVと標的細胞との融合(「HIV融合」)、ウイルスの侵入(感染プロセスの間にHIVまたはその遺伝物質が標的細胞に侵入するプロセス)、および合胞体の形成(例えば、HIV感染細胞と標的細胞の間)。HIV感染の治療または療法での薬物の効力を評価するための、一般に用いられる一次エンドポイントはウイルス抑制(体液または組織中のウイルス負荷を測定するための当技術分野で公知の方法で確認される)であり、一般に用いられる二次エンドポイントは血流中を循環するCD4+細胞の数の増加である。いずれもHIVの標的細胞への伝播を抑制する測定可能な効果である。したがって、合成ペプチドはウイルス抑制および/または循環CD4+細胞の相対数の増加を含む治療的適用に影響を及ぼすために使用することができる。
本発明の合成ペプチドは以下の区別される機能的特徴を有する。
A. 配列
本発明の合成ペプチドは、HIV-1 gp41のHR2領域の天然配列に由来するものであり、さらに特定すると、配列番号2、3または4のいずれか1つ以上を基本配列として含んでなる。しかし、合成ペプチドは(該合成ペプチドの由来となった基本配列の対応する位置と比べて)合成ペプチドのアミノ酸配列中に複数のアミノ酸置換を含むことで基本配列と相違している。こうしたアミノ酸置換は、合成ペプチドの由来となった基本配列と比較して、予想し得ない改善された生物学的活性をもたらし、さらにヘリックス性の増加を含んでいてもよい。ある実施形態において、合成ペプチドは以下の点で基本配列と相違する:(a)基本配列のアミノ酸の約5〜50%がヘリックス促進アミノ酸で置換される(例えば、ヘリックス性向のより低いアミノ酸の代わりに、ヘリックス性向のより高いアミノ酸が付加されるか、または荷電アミノ酸の代わりに非荷電のヘリックス促進アミノ酸が付加される)、(b)改善された生物学的活性を有する。そのような合成ペプチドは、以下の合成ペプチドにより例示される。すなわち、配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5と90%同一であるアミノ酸配列を有し、かつ(i)合成ペプチドの由来となった基本配列の対応するアミノ酸位置に複数のヘリックス促進アミノ酸が付加されており、(ii)改善された生物学的活性を有することで基本配列と相違している合成ペプチドである。別の実施形態では、合成ペプチドは2つ以上の置換(1つのヘプタッドの「a」位置と、異なる(好ましくは、隣接する)ヘプタッドの「d」位置での置換を少なくとも含む)を有し、その結果、驚いたことに、その合成ペプチドの由来となった基本配列と比較して改善された生物学的活性を有するものである。さらに好ましくは、ヘリックス促進アミノ酸で置換される基本配列の「a」および「d」位置の総数は2〜5の範囲である。好適な実施形態において、その合成ペプチドの由来となった基本配列と比較して1〜3個の追加のロイシンジッパー様モチーフを形成させるために、ヘリックス促進アミノ酸はロイシンもしくはイソロイシンのいずれか、またはロイシンとイソロイシンの組合せである。かかる合成ペプチドは配列番号82、84、85、86および87により例示される。
別の実施形態において、合成ペプチドは以下の点で基本配列と相違する:(a)基本配列のアミノ酸の約5〜60%が、(i)ヘリックス促進アミノ酸および(ii)荷電アミノ酸残基で置換され、その結果、その合成ペプチドの由来となった基本配列中には存在しなかった複数のイオン対が合成ペプチド中に(より好ましくは、合成ペプチドが約3〜10のイオン対を含む配置で)形成される、(b)改善された生物学的活性を有する。合成ペプチドは以下の合成ペプチドにより例示される。すなわち、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号83、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、および配列番号95からなる群より選択されるアミノ酸配列;あるいは、配列番号6〜81、83、および88〜95のいずれか1つ以上と少なくとも90%同一であり、かつ(i)合成ペプチドの由来となった基本配列の対応するアミノ酸位置と比較して、複数個のヘリックス促進アミノ酸の付加、(ii)合成ペプチドの由来となった基本配列の対応する位置と比較して、複数個の荷電アミノ酸の付加、および(i
ii)改善された生物学的活性、を有することで基本配列と相違するアミノ酸配列;を有する合成ペプチドである。本発明の合成ペプチドは配列番号96〜98のいずれのアミノ酸配列でもない。好ましい合成ペプチドは、その好ましい合成ペプチド以外の合成ペプチドを除外するために用いられる。
別の実施形態では、置換を行った基本配列に加えて、本発明の合成ペプチドは以下の1つ以上をさらに含みうる:合成ペプチドの由来となった基本配列のN-末端(例えば、基本配列に対応するN-末端アミノ酸)への追加的な1〜約20個のアミノ酸の付加;合成ペプチドの由来となった基本配列のN-末端(例えば、基本配列のN-末端と内側)からの約1〜10個のアミノ酸の欠失;合成ペプチドの由来となった基本配列のC-末端(例えば、基本配列に対応するC-末端アミノ酸)への追加的な1〜約20個のアミノ酸の付加;および合成ペプチドの由来となった基本配列のC-末端(例えば、基本配列のC-末端と内側)からの約1〜10個のアミノ酸の欠失。この実施形態の例としては、限定するものではないが、配列番号14〜23、37〜49、63、64、66、68、69、72〜75、78、80、および88が挙げられる。
本発明を具体的に説明するために、基本配列(配列番号2、3および4)は下記のアミノ酸配列(配列番号3)を共有する:
WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLEL
ある実施形態において、合成ペプチドは、その由来となった基本配列と比較して、基本配列中に存在するアミノ酸(例えば、ヘリックス性向のより低いアミノ酸、または荷電アミノ酸)を置換する複数のヘリックス促進アミノ酸の付加を含み、その結果として改善された生物学的活性を有する合成ペプチドが得られる。
そのような置換の例として以下のものが含まれるが、ここで、アミノ酸位置の下の「h」は、配列番号3の対応するアミノ酸位置に、荷電アミノ酸(例えば、グルタミン酸)またはヘリックス性向のより低いアミノ酸(ヘリックス性向がないと考えられるアミノ酸を含むが、それに限らない)の代わりにヘリックス促進アミノ酸が付加されていることを示す。
Figure 2007517522
例(b)〜(d)に関して、合成ペプチドは2つ以上の置換(1つのヘプタッドの「a」位置と、異なる(好ましくは、隣接する)ヘプタッドの「d」位置での置換を少なくとも含む)を有し、その結果、驚いたことに、その合成ペプチドの由来となった基本配列と比較して改善された生物学的活性を有する。さらに好ましくは、ヘリックス促進アミノ酸で置換される基本配列の「a」および「d」位置の総数は2〜5の範囲である。好適な実施形態において、その合成ペプチドの由来となった基本配列と比較して1〜3個の追加のロイシンジッパー様モチーフを形成させるために、ヘリックス促進アミノ酸はロイシンもしくはイソロイシンのいずれか、またはロイシンとイソロイシンの組合せである。
別の実施形態において、本発明の合成ペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列からなる基本配列と比較して(例えば、基本配列中のアミノ酸を置換する)複数の付加的アミノ酸を有し、限定するものではないが、以下のもののいずれか1つ以上を含む。ここで、アミノ酸位置の下の「c」は、適切に離れて配置された反対に荷電したアミノ酸(すなわち、付加されるアミノ酸と反対の電荷)とイオン対を形成させるために、配列番号3の対応するアミノ酸位置に、非荷電アミノ酸の代わりに荷電アミノ酸が付加されていることを示し、アミノ酸位置の下の「h」は、配列番号3の対応するアミノ酸位置に、荷電アミノ酸(例えば、グルタミン酸)またはヘリックス性向のより低いアミノ酸(ヘリックス性向がないと考えられるアミノ酸を含むが、それに限らない)の代わりにヘリックス促進アミノ酸が付加されていることを示す。
Figure 2007517522
* は、ヘリックス促進アミノ酸または荷電アミノ酸のいずれかで置換され得るアミノ酸位置を表す。
荷電した(ここで「+」は正に荷電したことを表し、「−」は負に荷電したことを表す)アミノ酸(「c」で示す)で置換した後にアミノ酸位置に形成され得るイオン対の例は、限定するものではないが、以下のいずれか1つ以上を含む。
Figure 2007517522
したがって、好ましい実施形態では、本発明の合成ペプチドは(その由来となった基本配列と比較したとき)、(a)基本配列の対応する位置がヘリックス促進アミノ酸を欠いている該位置に、2個以上で14個以下のヘリックス促進アミノ酸、および(b)基本配列の対応する位置が荷電アミノ酸を欠いている該位置に、2個以上で10個以下の荷電アミノ酸、をもつアミノ酸配列を有する。
B. ヘリックス性
ヘリックス性は生物物理学的パラメーターである。基本配列からなるペプチドのヘリックス性は、一般的に、円二色性(本明細書の実施例1参照)で評価して、約9%〜10%の範囲にある。本発明の合成ペプチドは、一般的に約25%〜100%、好ましくは約48%〜85%の範囲のヘリックス性を有する。
C. サイズ
本発明の合成ペプチドは、約15アミノ酸以上で約60アミノ酸以下の長さの配列であってよく、好ましくは、約28アミノ酸以上で約38アミノ酸以下の長さの配列である。本発明の合成ペプチドは配列番号2、配列番号3もしくは配列番号4、またはその一部のいずれか1つ以上から誘導され(例えば、少なくとも連続したアミノ酸残基の連続配列を含み)、合成ペプチドの由来となった基本配列の対応する位置のアミノ酸とは異なるいくつかのアミノ酸(アミノ酸の置換)を含む合成ペプチドが包含される。(合成ペプチドの由来となった基本配列のアミノ酸配列と比較したときの合成ペプチドの)アミノ酸配列の差異は、本明細書においてより詳細に説明する生物物理学的パラメーター(例えば、ヘリックス性および安定性)ならびに生物学的(例えば、抗ウイルス)パラメーターに影響を及ぼすことが見出された。合成ペプチドはさらに、その由来となった基本配列と比較して、1つ以上の保存的置換を含んでいてもよい。また、やはり本明細書において詳細に説明するように、本発明の合成ペプチドは巨大分子キャリアーをさらに含んでいてもよい。
D. 改善された生物学的活性
改善された生物学的活性を示すことは、本発明の合成ペプチドのそれぞれの重要な特性である。生物学的活性の改善は次のような理由のために予測し得ないことであった。これまで逆転写酵素阻害剤やプロテアーゼ阻害剤のような抗レトロウイルス剤のクラス(通常、クラスは作用機構に関係する)では、単純なウイルス突然変異(たつた1個またはそれ以上のアミノ酸残基の突然変異)により、そのようなウイルス突然変異体に対する抗レトロウイルス剤のクラスの効力の低下または消失(該クラスに対する「耐性」)が生じることがある。例えば、単一の突然変異、特にHIV-1逆転写酵素フィンガーサブドメインの連結ループのコドン(例えば、コドン69またはコドン151)の突然変異は、すべてのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤に対する広範な交差耐性と関連している。非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)は化学的に多岐にわたっているが、単一の突然変異(逆転写酵素の疎水腔(hydrophobic cavity)またはNNRTI結合部位にあると考えられるアミノ酸103での突然変異)はNNRTIに対する広範な交差耐性をもたらす。プロテアーゼ阻害剤(PI)は構造上多様であるにもかかわらず、このクラスのあらゆるメンバーに対して交差耐性を保持しているHIV-1株が出現した。より詳細には、HIVプロテアーゼにおける限られた数の突然変異(例えば、アミノ酸10での置換とアミノ酸90での置換の組合せ、またはこれらの置換のほかに他の突然変異の存在)がPIに対する広範な交差耐性をもたらす。したがって、当業者であれば、gp41アミノ酸配列(例えば、HR1領域)における単一のまたは限られた数の突然変異は、HIV gp41由来の広範なクラスの融合阻害剤ペプチド(例えば、本発明の合成ペプチドを含む)に対する耐性を付与するであろうと予想したはずである。かかる予想からしてみれば、本発明に従ってアミノ酸配列が改変された、HR2領域由来の合成ペプチドが、HIV gp41の天然配列由来のペプチドに対してウイルスを耐性にするウイルス突然変異に抗して、改善された生物学的活性(すなわち、抗ウイルス効力の増加)を示しうるということは予期せざる結果である。例えば、本発明の合成ペプチドは、HIV-1 gp41の天然配列由来のペプチド(例えば、基本配列またはT20(配列番号1))に耐性を示すウイルスに対して、それが0.3μg/ml以下、好ましくは0.10μg/ml未満のIC50を示す場合に、予想し得ない改善された生物学的活性を有する。かくして、本発明の合成ペプチドは配列番号96、97または98のいずれからなるものでもない。
さらに、好ましい実施形態において、本発明の合成ペプチドは、HIV-1 gp41の天然配列由来のペプチド(例えば、合成ペプチドの由来となった基本配列)に耐性を示すウイルスに対して抗ウイルス活性の増加を示し、同時に、合成ペプチドの由来となった基本配列と比較して改善された薬物動態特性を有する。例えば、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列からなる基本配列に関して、クリアランス値(L/K/hrで表す)は、本明細書に記載の方法で測定して、それぞれが0.30を上回る。比較のために同じ測定方法を用いると、本発明の合成ペプチドは約0.005〜0.07の範囲のクリアランス値(L/K/hrで表す)を有する。こうして、好ましくは、改善された薬物動態特性はクリアランスの30%以上の減少により説明される。別の例では、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列からなる基本配列に関して、生物学的半減期(本明細書中では「末端排泄半減期」または「t 1/2」ともいう;時間(hr)またはその分数で表す)は、本明細書に記載の方法で測定して、それぞれが0.50hr未満である。比較のために同じ測定方法を用いると、本発明の合成ペプチドは約3hrから20hrを超える範囲の生物学的半減期を有する。かくして、合成ペプチドの改善された薬物動態特性は、生物学的半減期の5倍以上の増加、好ましくは生物学的半減期の10倍以上の増加、さらに好ましくは生物学的半減期の30倍以上の増加により説明される。
E. 安定性
安定性はタンパク質およびペプチドの分野でよく知られている生物物理学的パラメーターである。当業者には公知であるように、安定性を測定するための各種の方法が存在する。好ましい実施形態では、本発明の合成ペプチドは約25℃〜約75℃、より好ましくは約36℃〜約65℃の範囲の融解温度(「Tm」)により表される安定性を有する。
本明細書中でさらに詳しく説明するように、合成ペプチドは(例えば、C-末端またはN-末端のいずれか、あるいはその組合せ(C-末端とN-末端の両方)に存在する)1個以上の反応性官能価、製薬上許容される担体、巨大分子キャリアー、およびこれらの組合せからなる群より選択される成分をさらに含んでいてもよい。
本発明について以下の実施例で具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
以下の実施例では、種々の生物物理学的パラメーターと生物学的パラメーターとを評価した。これらのパラメーターを決定するための一般的な方法論は次のとおりである。
ペプチド(合成ペプチドと基本配列を含む)はペプチド合成機を用いて標準的な固相合成法とFMOCペプチド化学により合成した。この実施例では、合成ペプチドは反応性官能価をさらに含んでいてもよい。すなわち、大部分がN-末端をアセチル基で、および/またはC-末端をアミド基でブロックされるか、N-末端またはC-末端にリンカーを含んでいた。樹脂から切り離した後、ペプチドを沈殿させ、沈殿物を凍結乾燥させた。次いで、ペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィーで精製し、ペプチドの正体をエレクトロスプレー質量分析により確認した。
ヘリックス性は円二色性(「CD」)で次のように評価した。簡単に説明すると、熱電式温度コントローラーを備えた分光計を用いてCDスペクトルを得た。25℃で、200nmから260nmまでの0.5nmステップ、バンド幅1.5nm、典型的な平均時間4秒/ステップを用いてスペクトルを得た。セル/バッファーブランクを差し引いた後、保存的ウィンドーサイズで三次最小二乗多項式フィットを用いてスペクトルを滑らかにしてランダム残基を得た。得られたままの楕円率の値を標準方法で平均残基楕円率に変換し、波長(200nm〜260nm)対 [θ] x 10-3 (deg cm2/d mol)をプロットした。次に、ヘリックス性のパーセント値を標準方法で算出した(通常は10μM、25℃でのヘリックス性%として表される)。熱安定性の評価は、1分の平衡化時間をはさんで、温度を2℃ずつ上げたときの222nmでのCDシグナルの変化をモニタリングすることにより行った。各サンプル(例えば、合成ペプチド)の安定性(Tm値で表される)は、温度遷移の一次導関数の最大値に相当する温度である。
本発明の合成ペプチドの抗ウイルス活性(例えば、1つの尺度は標的細胞へのHIVの伝播を阻止する能力である)を判定するために、HIV gp41のHR領域由来のペプチドを用いて作成されたデータにより示されているin vitroアッセイを用いて、in vivoで認められる抗ウイルス活性を予測した。より詳細には、in vitro感染力アッセイ(「Magi-CCR5感染力アッセイ」;例えば、米国特許第6,258,782号参照)を用いて観察された抗ウイルス活性は、同じHIV gp41由来ペプチドについてin vivoで観察された抗ウイルス活性とよく相関することが示された(例えば、Kilbyら, 1998, Nature Med. 4:1302-1307を参照されたい)。これらのアッセイでは、指示細胞株MAGIまたはCCR5を発現する派生株cMAGIを用いて、感染性ウイルス力価の減少が評価される。両細胞株ともHIV-LTRにより駆動されるβ-ガラクトシダーゼレポーター遺伝子の発現をトランス活性化するHIV-1 tatの能力を利用している。β-galレポーターは核に局在するように改変されており、β-gal基質を用いて感染の2,3日以内に核の強い染色として検出することができる。こうして、染色に先だつ感染が1ラウンドのみである場合、染色された核の数は、そのチャレンジ接種物中の感染性ビリオンの数に等しいと解釈することができる。感染細胞の数をCCDイメージャーで数えると、一次分離株と実験室適応分離株のどちらにおいても、ウイルス投入量とイメージャーで可視化した感染細胞の数との間に直線的相関が存在する。MAGIおよびcMAGIアッセイでは、感染力価の50%低下(Vn/Vo = 0.5)が重要な意味をもち、抗ウイルス活性を評価するための一次カットオフ値を提供する(「IC50」は、感染性ウイルス力価の50%低下をもたらす活性成分の濃度として定義される)。抗ウイルス活性について試験されるペプチドは、様々な濃度へと希釈した後、48ウェルのマイクロタイタープレートのウェルあたり約1500〜2000個の感染細胞となるように調整したHIV接種物に対して2回または3回反復で試験する。ペプチド(各希釈率のもの)をcMAGIまたはMAGI細胞に添加し、続いてウイルス接種物を添加した。24時間後、感染および細胞-細
胞融合の阻害剤(例えば、T20)を添加して第2ラウンドのHIV感染と細胞-細胞ウイルス伝播を防止した。細胞を2日間以上培養してから固定して、HIV感染細胞を検出するためにX-gal基質を用いて染色した。それぞれのペプチド希釈物と対照について感染細胞の数をCCDイメージャーで数え、その後IC50を算出した(μg/mlで表される)。
基本配列からなるペプチドの抗ウイルス活性に耐性を示すウイルスは標準的な実験室方法で作出することができる。基本的には、IC50およびIC90を計算した後、細胞を培養(その後細胞を分割する時を含む)下でウイルスおよびペプチド(例えば、IC90に近い濃度)と混合した。この培養物を維持し、合胞体が存在するようになるまでモニタリングする。この第1ラウンドの培養から回収したウイルスを、第2ラウンドの培養で細胞に感染させるのに使用するが、その際、第1ラウンドの培養で用いた濃度より高い濃度(2〜4倍)でペプチドを存在させる。第2ラウンドの培養を維持し、ペプチドの抗ウイルス活性に耐性を示すウイルスの存在についてモニタリングする。(ウイルス分離株に対するペプチドの予め決められたレベルのIC50での)ペプチドの抗ウイルス活性に耐性を示すウイルス分離株を最終的に生成させるために、更なるラウンドの培養が必要となるかもしれない。
薬物動態特性を決定するために、合成ペプチドまたはその由来となった基本配列をカニクイザル(Macaca fasicularis)に静脈内投与した(当技術分野で知られているように、薬物動態特性を決定するために他の動物モデルを使用してもよい)。投与後のさまざまな時点で血液サンプルを抜き取って、遠心分離により血漿を分離した。エレクトロスプレー正イオンモードにてLC-MS(液体クロマトグラフィー/質量分析)で分析するまで血漿サンプルを凍結保存した。合成ペプチドまたは基本配列はC18 HPLCカラムから10mM酢酸アンモニウムのバッファー(pH6.8)中のアセトニトリルの勾配を用いて溶出した。分析時に、血漿サンプルを2または3倍容の0.5%ギ酸含有アセトニトリルにより除タンパク処理した。サンプルと同時にカニクイザル血漿サンプルでの較正標準を2通り調製し、合成ペプチドまたは基本配列を含むサンプルの前後に分析した。薬物動態特性は一重指数関数的または二重指数関数的数学モデルを用いて血漿濃度-時間データから計算した。モデルは非線形最小二乗最適化により誘導された。濃度の1/C2加重を用いた。以下の方程式を用いて血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)、全身クリアランス(Cl)、および末端排泄半減期(t 1/2)を算出した。
AUC = A/-a + B/-b
ここで、AおよびBは切片であり、aおよびbはそれぞれ分配相と排泄相を説明する指数方程式の速度定数である。一重指数モデルを用いた場合は、「A」と「a」の特性を排除した。
Cl = 用量/AUC (L/K/hrで表される)
t 1/2 = -0.6903/b (hrで表される)
実施例2
本発明の一実施形態では、合成ペプチドのアミノ酸配列の由来となった基本配列と比較して、1個以上のヘリックス促進アミノ酸を含む複数のアミノ酸が付加されている、合成ペプチドを合成した。配列番号5のアミノ酸配列をもつ合成ペプチドにより例示されるとおり、本発明の合成ペプチドは、配列番号4からなる基本配列に対して複数のヘリックス促進アミノ酸置換を含むように合成した。表1を参照すると、本発明の合成ペプチドと配列番号2または配列番号4の基本配列を有するペプチドとが、本明細書の実施例1に記載した方法論を用いて測定される生物物理学的パラメーターと生物学的パラメーターについて比較されている。抗ウイルス活性により評価される生物学的活性を測定するために、配列番号2または配列番号4の基本アミノ酸配列を有するペプチドの抗ウイルス活性に耐性を示すウイルス突然変異株を利用した(耐性のウイルス分離株は表1とその後の表では「RY」と表示される)。
表1を参照すると、本発明の合成ペプチドは、その由来となったHR2の天然配列(例えば、配列番号2または配列番号4の基本配列のいずれか1つ)のペプチドと比較して、(a)ヘリックス性の増加(例えば、約3倍〜約5倍またはそれ以上の増加)を示し、かつ(b)基本配列のいずれか1つ(例えば、配列番号2または4)を有するペプチドに耐性を示すウイルス(例えば、ウイルス分離株HIV RY)に対して、抗ウイルス活性の顕著な増加(予測し得ない改善された生物学的活性)を示す。
Figure 2007517522
実施例3
別の実施形態では、配列番号2〜4の基本配列のいずれか1つ以上に存在するアミノ酸の代わりに、ヘリックス促進アミノ酸と荷電アミノ酸(複数のイオン対を形成させるため)を含むアミノ酸の付加を含んでなる合成ペプチドを製造した。詳しく説明するために、配列番号6〜81および83〜95のいずれか1つを有するアミノ酸配列により例示される合成ペプチドを製造して、本明細書の実施例1に記載の方法を用いて評価した。表2においては、これらの合成ペプチドと、HR2領域の天然配列に由来するペプチド(基本配列、配列番号4)および配列番号96〜98のようなi,i+4配置からなる置換のみを有する(すなわち、いかなるヘリックス促進アミノ酸の付加も有しない)ペプチドとが、本明細書の実施例1で詳しく説明した方法を用いて、生物物理学的パラメーターと生物学的パラメーターについて比較された。
Figure 2007517522
Figure 2007517522
表2を参照すると、本発明の合成ペプチドは、その由来となったHR2の天然配列のペプチド(例えば、配列番号2〜4の基本配列のいずれか1つ)と比較したとき、基本配列のいずれか1つ(例えば、配列番号2または4)を有するペプチドに耐性を示すウイルス(例えば、ウイルス分離株HIV RY)に対して、抗ウイルス活性の顕著な増加(予測し得ない改善された生物学的活性)を示す。さらに、合成ペプチドは、基本配列のいずれか1つ(例えば、配列番号2または4)と比較して、ヘリックス性の増加(例えば、約3倍〜約5倍またはそれ以上の増加)を示しうる。
表2を参照すると、別の好ましい実施形態では、本発明の合成ペプチドは、その由来となったHR2の天然配列のペプチド(例えば、配列番号2〜4の基本配列のいずれか1つ)と比較して、追加的に(例えば、ヘリックス性の増加および予測し得ない改善された生物学的活性を示すことに加えて)かつ優先的に、例えば約25℃〜約75℃の範囲、より好ましくは約36℃〜約65℃のTmにより測定されるような、安定性を示す。
表1および表2は、本発明による合成ペプチドの予測し得ない改善された生物学的活性を示しており、これらは、(a)合成ペプチドの由来となった基本配列の活性に耐性を示すHIV株に対する合成ペプチドの抗ウイルス活性を測定して、(b)該合成ペプチドが、その由来となった基本配列の活性に耐性を示すHIV株に対して、0.10μg/ml未満のIC50により測定されるような、抗ウイルス活性を有することを証明する、ことにより評価される。そのような予測し得ない生物学的活性の別の証明においては、本発明の合成ペプチドを用いて、in vitroで耐性ウイルスを発生させようとした。こうして、例えば、合成ペプチドに耐性のウイルスを発生させることがより困難であることの証明は、HR2由来の天然配列および/または基本配列と比較して、そのような合成ペプチドが予測し得ない改善された生物学的活性を有することの証拠となる。
実施例1で説明した方法を用いて、配列番号9および配列番号10のアミノ酸配列を有する合成ペプチドを、耐性HIVを発生させるように計画した実験において、配列番号2の基本配列を有するペプチドと比較した。1組の実験では、HIV感染細胞のin vitro培養物を個々の合成ペプチドまたは基本配列のいずれかの存在下で継代させて、HIV感染細胞とインキュベートしたペプチドの10μg/ml〜20μg/mlの濃度で耐性を示すHIV分離株の出現の終点に到達させようとした。こうして、一般的には、IC50とIC90の間の濃度の合成ペプチドまたは基本配列から開始して、HIV感染細胞をin vitroで培養し、2〜3日ごとに分割し、分割中に合成ペプチドまたは基本配列を添加してHIV感染細胞を一定量の合成ペプチドまたは基本配列の存在下で維持した。合成ペプチドまたは基本配列の低レベルの濃度で耐性分離株が発生したら(細胞変性効果/合胞体形成により測定した;1継代とみなした)、その継代から生じた耐性分離株を細胞に感染させた後、該細胞をより高濃度(例えば、先の継代で用いた濃度の2〜3倍)の合成ペプチドまたは基本配列の存在下で、耐性HIV分離株が出現するまで培養した。この手順を終点に達するまで繰り返した。終点に達するまでに要した継代数および培養日数(成功した各継代(生存能のあるウイルスが生じた場合)の日数と、成功した全継代に要した合計日数)を確定する。説明した各基本配列または合成ペプチドについての結果の平均をとった。表3に示すとおり、予想外にも、終点を表す耐性HIV分離株を出現させるために、基本配列と比較して、本発明の合成ペプチドの存在下では(かりに出現するにしても)著しく多くの継代(表3、「継代数」)および継代日数(表3、「日数」)を必要とした。表3に示した結果は、合成ペプチドの由来となった基本配列と比較して、合成ペプチドによって実証された予測し得ない改善された生物学的活性のもう一つの指標となる。
Figure 2007517522
実施例4
この実施例では、本発明の合成ペプチドの薬物動態特性がその由来となった基本配列と比較して改善されていることを説明する。実施例1に詳しく記載した薬物動態特性の評価方法を用いて、配列番号2または配列番号3からなる基本配列の薬物動態特性と比較したときの合成ペプチドの代表の薬物動態特性を表4に示す。
Figure 2007517522
表4に示すとおり、合成ペプチドは、その由来となった基本配列と比較して、1以上の薬物動態特性(例えば、クリアランスとt 1/2のいずれかまたは両方)において観察されるように、顕著な薬物動態特性の改善を示した。好ましくは、改善された薬物動態特性はクリアランスの30%以上の減少により示される。好ましくは、合成ペプチドの改善された薬物動態特性は生物学的半減期の5倍以上の増加、好ましくは生物学的半減期の10倍以上の増加、さらに好ましくは生物学的半減期の30倍以上の増加により示される。
実施例5
本発明は、HIV(予想外にも、合成ペプチドの由来となった基本配列に耐性を示す分離株を含む)の標的細胞への伝播を阻止する能力により証明される抗ウイルス活性を保持する本発明の合成ペプチドを提供する(表1および2を参照)。さらに、本発明の合成ペプチドの用途を提供する。例えば、本発明の合成ペプチドはHIV感染の治療法において治療用活性物質として使用することができる。また、本発明の合成ペプチドはHIV治療を含む治療的適用において用いる医薬の製造に使用することができる。加えて、本発明の合成ペプチドは、その治療的適用(例えば、治療される個体におけるHIVウイルス負荷量の低減、および/またはCD4+細胞集団の増加)を含めて、HIVの治療に使用することができる。ある実施形態では、HIV感染個体を治療する方法は、該個体を治療するのに有効な量の、または所望の治療的適用を達成するのに有効な量の合成ペプチド(治療用活性物質として合成ペプチドを含有する組成物/医薬を含む)を該個体に投与することを含んでなる。後者に関して、(ウイルス負荷量および/またはCD4+細胞数のパラメーターの測定からの)基底値は合成ペプチドで治療する前の臨床サンプルより得られる。合成ペプチドで治療を開始した後には1以上の臨床サンプルを取得して、そのようなサンプルからパラメーター(「検査値」)を測定する。基底値と検査値を比較して、合成ペプチドによる治療から所望の治療的適用が達成されたかどうかを判定する(例えば、検査値と基底値との差が、所望の治療的適用が達成されたことの指標となりうる)。
別の実施形態では、HIVの標的細胞への伝播を阻止する方法が提供され、この方法は、該ウイルスと該細胞に、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の本発明の合成ペプチドを添加することを含んでなる。別の実施形態では、細胞の存在下でHIVを、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の本発明の合成ペプチドと接触させることを含んでなる、HIVの細胞への伝播を阻止する方法が提供される。さらに、細胞の存在下でHIVを、HIV融合(HIVによる標的細胞の感染の間にHIV gp41がウイルス膜と細胞膜との融合を媒介するプロセス)を阻止するのに有効な量の本発明の合成ペプチドと接触させることを含んでなる、HIV融合の阻止方法が提供される。これらの方法を用いて、HIVに感染した個体を(治療的に)処置したり、(例えば、薬物の使用を介して、またはリスクの高い性行動を介して)HIVに新たに曝されたまたは曝されるリスクが高い個体を(予防的に)処置することができる。したがって、例えばHIV-1感染個体の場合には、有効量は治療される個体においてHIVウイルス負荷量を低減させるのに(単独でおよび/または投薬レジメンと連携して)十分な用量であろう。当業者には公知のように、HIVウイルス負荷量を測定するための標準方法がいくつかあり、かかる方法には、限定するものではないが、末梢血単核細胞の定量的培養によるもの、血漿HIV RNAの測定によるもの、および当技術分野で公知の標準方法を用いた核酸増幅を含む定量方法によるウイルス核酸の測定によるものが含まれる。CD4+細胞レベル(「CD4+細胞数」)を測定する方法は当技術分野で標準的である。かかる方法として、限定するものではないが、フローサイトメトリー、イムノアッセイ、磁気分離とその後の細胞カウント、免疫細胞化学、および免疫染色が挙げられる。HIV感染およびAIDSの様々なステージの指標となるHIVウイルス負荷量およびCD4+細胞数の標準は当技術分野でよく知られている。そのような標準の入手先のひとつに疾病コントロールセンター(Centers for Disease Control)がある。
本発明の合成ペプチドは1回の投与にて、間欠的に、定期的に、または連続的に投与することができ、かかる投与については、ウイルス負荷量および/または合成ペプチドの血中濃度をモニターするなどの方法を用いて医師が決定することができる。合成ペプチドを含む製剤に応じて、また、合成ペプチドが巨大分子キャリアーをさらに含むかどうかに応じて、本発明の合成ペプチドは1日1回もしくは複数回、1週間定期的に、または1ヵ月間定期的に投与することができる。さらに、本発明の合成ペプチドは、HIV治療に用いられる1種以上の別の抗ウイルス薬を含有する組合せ剤または治療レジメンの一成分として使用したとき(例えば、同時に使用したとき、または一方の薬物の定期的投与と別の薬物の定期的中止で使用したとき)、HIVの標的細胞への伝播を阻止する相乗的効果または相加的治療効果を示すことができる。そのような別の抗ウイルス薬としては、限定するものではないが、HIV侵入阻害剤(例えば、他のHIV融合阻害剤(T20、T1249など)、CCR5阻害剤、レトロサイクリンなど)、HIVインテグラーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤(例えば、ヌクレオシドまたは非ヌクレオシド)、プロテアーゼ阻害剤、ウイルス特異的転写阻害剤、ウイルスプロセシング阻害剤、HIV成熟阻害剤、ウリジンリン酸化酵素の阻害剤、HIVワクチンなどが挙げられ、当技術分野で周知である。
例えば、ある好ましい実施形態では、本発明による1種以上の合成ペプチドを含む抗ウイルス剤の組合せを用いることができ、結果的に治療の効力が高まり、ウイルスが抗ウイルス薬に対して耐性になる可能性が少なくなる。抗ウイルス剤の組合せは現在承認されているかまたは将来的に承認されうる(HIV感染の治療に有用な)抗ウイルス剤の有効量から調製することができ、かかる抗ウイルス剤としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:アバカビル(abacavir)、AZT、デラビリジン(delaviridine)、ddC、ddI、エファビレンツ(efavirenz)、FTC、GS 840、HBY097、3TC、ネビラピン(nevirapine)、d4T、FLT、エムトリシタビン(emtricitabine)、アムプレニビル(amprenivir)、CGP-73547、CGP-61755、DMP-450、インジナビル(indinavir)、ネルフィナビル(nelfinavir)、PNU-140690、リトナビル(ritonavir)、サクイナビル(saquinavir)、テリナビル(telinavir)、テノフォビル(tenofovir)、アデフォビル(adefovir)、アタザナビル(atazanavir)、ロピナビル(lopinavir)、VX 478、PRO-542、ならびにベツリンおよびジヒドロベツリン誘導体(例えば。PA-457)。本発明の合成ペプチドと併用することができる、これらの例示的抗ウイルス剤の有効投与量は当技術分野で公知である。そのような組合せ薬剤は、当業者には明らかなように、投与経路および所望する薬理作用に応じて、1以上の経路で連続的にまたは同時に投与しうるいくつかの抗ウイルス剤を含んでいてもよい。
本発明の合成ペプチドの有効投与量は当業者によく知られた方法で決定することができ、例えば、効力、生物学的半減期、バイオアベイラビリティー、および毒性を測定することで決定しうる。好ましい実施形態では、当業者によく知られたルーチンなin vitroおよびin vivo実験からのデータを用いて、当業者が有効な合成ペプチド投与量範囲を決定する。例えば、本明細書に記載するような、抗ウイルス活性のin vitro感染性アッセイは、当業者がある量のウイルス感染性を阻止する(例えば、50%阻止、IC50; または90%阻止、IC90)のに必要な合成ペプチドの平均阻止濃度(IC)を決定することを可能にする。その後、適切な用量が1以上の標準的動物モデルからの薬物動態データを用いて当業者により選択され、こうして予め決められたIC値に等しいかまたはそれを超える合成ペプチドの最小血漿濃度(C[min])が得られる。投与量範囲は一般的に、選ばれる投与経路およびその製剤の処方に依存するが、本発明の合成ペプチドの代表的な投与量範囲は、0.1μg/kg(体重)以上で10mg/kg(体重)以下の範囲であり、好ましくは約0.1〜100μg/kg(体重)の投与量範囲、より好ましくは約10mg〜250mgの合成ペプチド投与量である。例えば、本発明の合成ペプチドが巨大分子キャリアー(合成ペプチド単独の場合よりも長く血液中で活性状態を保持させる、すなわち、より長い循環血漿濃度を達成させる)をさらに含む場合は、その製剤中の合成ペプチドの量を、巨大分子キャリアーを含まない製剤中の合成ペプチドの量と比べて少なくすることができ、また、巨大分子キャリアーを含まない製剤よりも少ない頻度で投与することができる。
医薬を含めて、本発明の組成物(例えば、合成ペプチド、好ましくは製薬上許容される担体および巨大分子キャリアーの1種以上を含有)は、活性薬剤を標的細胞(HIVが感染できる細胞)に到達させる手段であれば、どのような手段で個体に投与してもよい。こうして、本発明の組成物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下注射もしくは注入、皮内、またはインプラント)、鼻腔内、肺内、膣内、直腸内、舌下、または局所投与経路を含めて、どのような適当な方法でも投与することができ、それぞれの投与経路に適した剤形に製剤化することができる。具体的な投与経路は、例えば個体の医療歴(そのような投与により認められたまたは予想される副作用を含む)および投与される合成ペプチドの処方(例えば、合成ペプチドがさらに含みうる製薬上許容される担体および/または巨大分子キャリアーの性質)に依存するであろう。最も好ましくは、投与は注射(例えば、静脈内または皮下手段を使用)により行われるが、連続注入(例えば、徐放装置または浸透圧ポンプのようなミニポンプなどを使用)によっても行うことができる。製剤は本発明の合成ペプチドを含み、さらに製薬上許容される担体および巨大分子キャリアーの1種以上を含むものであり、送達部位、投与方法、投薬レジメン、および医療従事者に公知の他の要因にも依存しうる。好ましい製剤は、本発明の合成ペプチドが1種以上の薬剤、薬物、反応性官能価、巨大分子キャリアー、または(特に合成ペプチドを個体に投与した後に)その代謝/分解を抑制または遅延もしくは遅滞させる製薬上許容される担体と組み合わされているか、またはこれらをさらに含むものである。例を挙げると、本発明の合成ペプチドが酵素(例えば、吸収前の消化酵素、血液中に存在するタンパク質分解酵素など)による加水分解から保護されている注射製剤、徐放製剤、および経口製剤がここに包含される。さらに、製剤は本明細書中で詳しく説明した本発明の合成ペプチドをコードするヌクレオチド配列(投与されると、当技術分野で周知の技法および発現ベクターを用いて対象の細胞内で発現される)を含んでいてもよい。
実施例6
当業者には明らかなように、本発明の合成ペプチドのそれぞれのアミノ酸配列に基づいて、そのような合成ペプチドをコードするポリヌクレオチドを合成もしくは構築することができ、また、製造の手段としておよび/または標的細胞へのHIVの伝播を阻止する方法(例えば、遺伝子治療または細胞治療の手段として該ポリヌクレオチドをin vivoで導入することによるin vivo生産)のために、組換えDNA法によりそのような合成ペプチドを製造することができる。当業者には明らかなように、2以上のポリヌクレオチド配列が本発明の合成ペプチドをコードすることができ、そのようなポリヌクレオチドは、合成ペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸をコードすることが知られているトリプレットコドン、3番目の塩基の縮重、および発現を望む宿主細胞(例えば、原核または真核生物種など)に好適なトリプレットコドン使用頻度の選択に基づいて合成することができる。限定ではなく説明のみのために、配列番号2の基本配列をコードするポリヌクレオチドが配列番号99として提供され、当業者には明らかなように、そこからのコドン使用頻度が本発明の合成ペプチドをコードするポリヌクレオチドに一般的に当てはまるだろう。こうして、例えば、配列番号2に関する配列番号99を用いて、当業者は配列番号5をコードするポリヌクレオチドを容易に構築することができるだろう(例えば、説明例として配列番号100を参照のこと)。同様に、別の例として、この情報から当業者は配列番号11をコードするポリヌクレオチドを容易に構築することができるだろう(例えば、説明例として配列番号101を参照のこと)。しかしながら、もとのコドンと同じアミノ酸をコードする異なるコドンを代わりに使用できることが理解されよう。さらに、当業者には明らかなように、コドン使用頻度は細菌発現のために好適なコドン使用頻度間で、または哺乳動物発現系での発現に好適なコドン使用頻度間でわずかに変化しうる。好ましい実施形態では、本発明の合成ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号5〜98からなる群より選択される合成ペプチドをコードする核酸配列を含むか、または配列番号5〜98のいずれか1つ以上と少なくとも90%(例えば、以上)の同一性を有し、かつ(i)合成ペプチドの由来となった基本配列の対応するアミノ酸位置と比較して複数個のヘリックス促進アミノ酸の付加、または合成ペプチドの由来となった基本配列の対応するアミノ酸位置と比較して複数個のヘリックス促進アミノ酸の付加および合成ペプチドの由来となった基本配列の対応するアミノ酸位置と比較して複数個の荷電アミノ酸の付加、ならびに(ii)予想し得ない改善された生物学的活性、によって基本配列と相違するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
ある実施形態では、本発明の合成ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する原核生物発現ベクター、ならびに合成ペプチドの組換え生産のためのその使用が提供される。一例として、合成ペプチドが細菌宿主細胞において産生される場合、それが合成ペプチドの精製を容易にする配列との融合タンパク質として産生されるように、該ポリヌクレオチドを原核生物発現ベクター内に位置づけることができる。例えば、発現が望まれるペプチドとの融合タンパク質の一部として、発現に用いる原核細胞の細胞質に見出せる封入体の生産を促進する配列、および/またはそのような配列を含む融合タンパク質の精製を容易にする配列があり、当業者には公知である。封入体は、変性剤および分画(例えば、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなど)を含む当技術分野で公知の方法を用いて、原核生物の細胞成分から分離することができる。もう一つの例では、以下のようなベクターが市販されており、タンパク質またはペプチドとして発現させるべき対象の核酸配列をベクターに挿入し、発現の際に、その遺伝子産物が複数の末端ヒスチジン残基(「Hisタグ」)を含むようにする。かかるタグは当技術分野で標準的な方法を用いて遺伝子産物を精製するのに利用される。
当業者には明らかなように、本発明の合成ペプチドをコードする核酸配列はプラスミドまたはプラスミド以外のベクターに挿入することができ、その他の発現系を使用してもよく、そのような発現系としては、限定するものではないが、バクテリオファージベクターもしくはコスミドDNAで形質転換された細菌、酵母ベクターを含む酵母、真菌ベクターを含む真菌、ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系、プラスミドもしくはウイルス発現ベクターが導入された(例えば、トランスフェクトされた)または組換えウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系が挙げられる。成功を収める合成ペプチドの発現には、合成ペプチドのコード配列を含む組換えDNA分子またはベクターそれ自体のいずれかが、発現に用いる特定の宿主系に適合しかつそれによって認識される転写・翻訳に必要な制御エレメントを含むことが必要である。分子生物学の分野で公知の方法(上記の方法を含む)を用いて、ベクターまたはコード配列を含む組換えDNA分子に各種のプロモーターおよびエンハンサーを組み込み、合成ペプチドの発現を高めることができる。ただし、合成ペプチドの増加した発現が用いた特定の宿主細胞系と適合する(例えば、該細胞系に対して無毒である)必要がある。当業者には明らかなように、プロモーターの選択は用いる発現系に依存する。プロモーターの強度(すなわち、転写を促進する能力)は様々である。一般的に、クローン化された遺伝子を発現させるためには、強力なプロモーターを使って高レベルの遺伝子転写と遺伝子産物への発現を得ることが望ましい。例えば、大腸菌を含む宿主細胞系において高レベルの転写が観察されている、当技術分野で知られた細菌、ファージまたはプラスミドのプロモーターとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、P.sub.RおよびP.sub.Lプロモーター、lacUV5、ompF、bla、lppなどがあり、合成ペプチドをコードする挿入ヌクレオチド配列の転写を得るために使用することができる。哺乳動物発現系用の発現ベクター中で一般的に用いられる哺乳動物プロモーターは、哺乳動物ウイルス遺伝子由来のプロモーターである。例としては、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーターが挙げられる。
合成ペプチドの発現が宿主細胞に致死的であったり、有害であったりする場合には、宿主細胞系/株および発現ベクターを、プロモーターの作用が特異的に誘導されるまで抑制されるように選択することができる。例えば、特定のオペロンでは、挿入DNAの効率のよい転写のために特定の誘導物質を添加することが必要である(例えば、lacオペロンはラクトースまたはイソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(「IPTG」)の添加により誘導される;trpオペロンは、トリプトファンが培地中に存在しないときに誘導される;テトラサイクリンはtet感受性プロモーターをもつ哺乳動物発現ベクターにおいて使用される)。こうして、合成ペプチドの発現は、形質転換もしくはトランスフェクトされた細胞を、コード配列からの発現を制御するプロモーターが誘導されない条件下で培養することにより制御することができ、その後、細胞が増殖培地中で適当な密度に達したとき、コード配列から発現されるようにプロモーターを誘導することができる。効率的な遺伝子転写またはメッセージ翻訳のための他の制御エレメントとして、エンハンサー、転写もしくは翻訳開始シグナル、転写終結およびポリアデニル化配列などが含まれることは、当技術分野で周知である。
実施例7
別の好ましい実施形態では、本発明の合成ペプチドは巨大分子キャリアーをさらに含む。そのような巨大分子キャリアーとして、限定するものではないが、血清タンパク質(全タンパク質、またはその大部分)、ポリマー、炭水化物、脂質-脂肪酸コンジュゲート、脂肪酸などが含まれることは、当技術分野で周知である。巨大分子キャリアーとして一般的に用いられる血清タンパク質には、トランスフェリン、アルブミン、免疫グロブリン(好ましくは、IgGまたは1本以上のその鎖)、またはホルモンが含まれるが、これらに限定されない。血清タンパク質は好ましくはヒトタンパク質であり、さらに好ましくは組換えヒトタンパク質である。巨大分子キャリアーとして一般的に用いられるポリマーには、ポリリシンもしくはポリ(D-L-アラニン)-ポリ(L-リシン)、またはポリオールが含まれるが、これらに限定されない。好適なポリオールは水溶性のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり、直鎖または分枝鎖でありうる。適当なポリオールとしては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびPEG-PPGコポリマーが挙げられる。
ある例では、巨大分子キャリアーを合成ペプチドとコンジュゲートさせることができる。例えば、ポリオールを使用する場合は、一般的に、ポリオールをカップリング剤と反応させて誘導体化し、1つ以上の末端反応性基をもつ「活性型」ポリオールを形成させる。この反応性基は、当技術分野で標準的な方法を用いて、合成ペプチドの反応性官能価(例えば、好ましくは遊離アミン基)との反応に使用される。かかる反応性基としては、限定するものではないが、ヒドロキシ基、アミノ基、アルデヒド基などが挙げられる。用いるポリオールは直鎖状または分枝鎖状のポリオールを含みうる。別の例では、本発明の合成ペプチドを合成するとき、その合成プロセスの最後の工程でマレイミド基を(例えば、3-マレイミドプロピオン酸の付加、洗浄、その後のマレイミド基を含む合成ペプチドの樹脂からの切り離しからなる固相合成の工程によって)付加する。こうした方法は当技術分野で公知である(例えば、WO 00/69902参照)。その後、合成ペプチドを個体に(好ましくは、非経口的に)投与すると、その合成ペプチドが血液成分(好ましくは血清タンパク質、さらに好ましくはアルブミン)のような巨大分子キャリアーとコンジュゲートするようになる。別の例では、組換えヒトタンパク質(例えば、アルブミン、トランスフェリン、免疫グロブリンなど)を荷電させ(「カチオン化」させ)、次いで当技術分野で公知の標準的なカップリング剤を用いて(例えば、N-スクシンイミジルS-アセチルチオ-アセテートを用いて)チオレート化(thiolated)する。荷電させた後チオレート化した組換えヒトタンパク質を、当技術分野で公知の標準カップリング試薬を用いて(m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて)、アビジンにカップリングさせる。その後、得られたアビジン化ヒトタンパク質を、当技術分野で標準的な方法を用いて、予めビオチン化しておいた合成ペプチドと反応させる。かくして、その結果は巨大分子キャリアーに連結された合成ペプチドである。
別の例では、巨大分子キャリアーを合成ペプチドと共に、例えば融合タンパク質の一部として、遺伝的に発現させることができる。例えば、アルブミンをコードするDNA配列を、リンカーをコードするDNA配列と本発明の合成ペプチドをコードするDNA配列と一緒にベクターにクローン化して、得られる遺伝子産物が、アルブミンと、アルブミンのC-末端、N-末端、またはC-末端とN-末端の両方に連結された合成ペプチドと、を含むアルブミン融合タンパク質となるようにする。そのようなベクターおよび発現系(好ましくは、酵母発現用)は当技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,728,553号および同第5,965,386号参照)。有用な酵母プラスミドベクターは概して市販されており(例えば、pRS403-406系列およびpRS413-416系列)、酵母選択マーカー(例えば、his3、trp1、leu2、ura3など)を組み込んでいる。アルブミン-合成ペプチド融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む酵母発現用の発現ベクターは、以下の配列を含む発現カセットを含みうる:酵母プロモーター(例えば、Sacchromyces PRB1プロモーター)、発現された遺伝子産物の分泌を促進する分泌リーダーをコードする配列(例えば、天然のヒトアルブミン分泌リーダーおよび/または酵母由来の分泌リーダーでありうる)、ヒトアルブミンをコードする配列(例えば、Genbankで開示されているもの)、リンカーをコードする配列(例えば、5〜20個のアミノ酸、より好ましくはグリシンとセリンを含むアミノ酸、のストレッチを含むリンカー)、合成ペプチドをコードするポリヌクレオチド、および転写ターミネーター(例えば、Saccharomyces ADH1)。当業者には明らかなように、合成ペプチドがアルブミン融合タンパク質のN-末端領域にくるようにしたい場合には、合成ペプチドをコードするポリヌクレオチドがプロモーターとヒトアルブミンをコードするDNAとの間に配置されるだろう。その後、得られた発現ベクターを用いて酵母を形質転換するが、組換え生産の培養条件ならびに組換え産物の精製は当技術分野で公知の方法を用いて行いうる。こうして、巨大分子キャリアーをさらに含む合成ペプチドを得ることができる。
説明例として、本発明の合成ペプチドを含む融合タンパク質を製造した。当技術分野で公知の標準方法を用いて、マルトース結合タンパク質(「MBP」)と切断可能なリンカーと合成ペプチド(配列番号11)を含む融合タンパク質(配列番号103)をコードするポリヌクレオチド(配列番号102)を含有する発現ベクターを構築した。得られた発現ベクターを宿主発現系としての大腸菌株に形質転換し、形質転換細胞を増殖させた後、当技術分野で公知の標準方法を用いて細菌培養物にIPTGを添加することで融合タンパク質の発現を誘導した。誘導済みの細菌細胞をミクロフルイダイザー(microfluidizer)で溶菌し、溶菌液を当技術分野で公知の標準方法で遠心して細菌破片を取り除いた。次に、清澄化した溶菌液を、融合タンパク質と(MBP部分を介して)結合するアミロース樹脂を充填したカラムによるクロマトグラフィーにかけた。カラムを洗浄した後、マルトース含有溶液で融合タンパク質を溶出させた。単離された合成ペプチド含有融合タンパク質を実施例1で説明した方法を用いて抗ウイルス活性について試験したところ、HIV-1に対して抗ウイルス活性(例えば、HIV IIIBに対するIC50が<0.10μg/ml)を示した。
本発明の具体的な実施形態の上記記載は説明のために詳述されたものである。かかる記載および説明から、当業者であれば、現在の知識を踏まえて、基本的な概念を逸脱することなく様々な適用例のために本発明を容易に改変し、かつ/また、適合させることができよう。したがって、そのような改変および/または適合は添付の特許請求の範囲および意味に含まれるものとする。
図1は、ヘプタッドリピート1領域(HR1)およびヘプタッドリピート2領域(HR2)をgp41の他の機能性領域と共に示したHIV gp41の模式図である。HIVLAI HR1およびHR2に対応する典型的なペプチド配列を説明のために示してある。アミノ酸残基は、HIVLAI株のgp160におけるそれらの位置に従って番号付けされている。 図2は、種々の実験室株と臨床分離株から確認された、HIV gp41のHR2領域の配列番号2内に含まれる多型を比較したものであり、ここでは、アミノ酸配列の変異を一文字アミノ酸コードで示してある。

Claims (34)

  1. 配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つ以上の基本配列に由来するアミノ酸配列を含む合成ペプチドであって、該合成ペプチドは基本配列と比較して複数のアミノ酸置換をさらに有し、該アミノ酸置換が1個以上のヘリックス促進アミノ酸と複数個の荷電アミノ酸を含んでなり、該荷電アミノ酸は、合成ペプチドのアミノ酸配列中の反対に荷電したアミノ酸とのイオン対を形成させるために導入されたものであり、該合成ペプチドは基本配列と比較して改善された生物学的活性を示し、改善された生物学的活性が、(a)基本配列に耐性のHIV株に対する抗ウイルス活性の増加、および(b)改善された薬物動態特性、のうち1つ以上を含む、上記合成ペプチド。
  2. 配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つ以上の基本配列に由来するアミノ酸配列を含む合成ペプチドであって、該合成ペプチドは、基本配列中のアミノ酸を置換するために、複数個のアミノ酸が付加されていることで基本配列と相違しており、該複数個のアミノ酸がヘリックス促進アミノ酸を含み、該合成ペプチドは基本配列と比較して改善された生物学的活性を示し、改善された生物学的活性が、(a)基本配列に耐性のHIV株に対する抗ウイルス活性の増加、および(b)改善された薬物動態特性、のうち1つ以上を含む、上記合成ペプチド。
  3. 配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つ以上の基本配列に由来するアミノ酸配列を含む合成ペプチドであって、該合成ペプチドは、(a)(i)1個以上のヘリックス促進アミノ酸、および(ii)合成ペプチドにおいて複数のイオン対を形成する複数個の荷電アミノ酸、を含む複数のアミノ酸置換、ならびに(b)改善された生物学的活性を示すこと、により基本配列と相違しており、改善された生物学的活性が、(a)基本配列に耐性のHIV株に対する抗ウイルス活性の増加、および(b)改善された薬物動態特性、のうち1つ以上を含む、上記合成ペプチド。
  4. 配列番号2、配列番号3または配列番号4の1つ以上の基本配列に由来するアミノ酸配列を含む合成ペプチドであって、該合成ペプチドは、(a)(i)1個以上のヘリックス促進アミノ酸、および(ii)イオン対を形成するように反対に荷電したアミノ酸から離れて配置された複数個の荷電アミノ酸、を含む、基本配列中のアミノ酸を置換するための複数個のアミノ酸の付加、ならびに(b)改善された生物学的活性を示すこと、により基本配列と相違しており、改善された生物学的活性が、(a)基本配列に耐性のHIV株に対する抗ウイルス活性の増加、および(b)改善された薬物動態特性、のうち1つ以上を含む、上記合成ペプチド。
  5. 配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、または配列番号95のいずれか1のアミノ酸配列を有する合成ペプチド。
  6. 基本配列の約5〜50%がヘリックス促進アミノ酸で置換される、請求項1、2、3または4に記載の合成ペプチド。
  7. 基本配列の約5〜60%がヘリックス促進アミノ酸と荷電アミノ酸の組合せで置換される、請求項1、3または4に記載の合成ペプチド。
  8. イオン対がi,i+4配置、i,i+3配置、またはこれらの組合せからなる群より選択される配置である、請求項1、3または4に記載の合成ペプチド。
  9. 合成ペプチドが基本配列のヘリックス性と比較して増大したヘリックス性を有する、請求項1、2、3または4に記載の合成ペプチド。
  10. 合成ペプチドが基本配列の安定性と比較して増大した安定性を有する、請求項1、2、3または4に記載の合成ペプチド。
  11. 合成ペプチドの由来となった基本配列のN-末端に付加された追加の1〜約20個のアミノ酸、合成ペプチドの由来となった基本配列のN-末端からの約1〜10個のアミノ酸の欠失、合成ペプチドの由来となった基本配列のC-末端に付加された追加の1〜約20個のアミノ酸、および合成ペプチドの由来となった基本配列のC-末端からの約1〜10個のアミノ酸の欠失、のうち1つ以上をさらに含む、請求項1、2、3、4または5に記載の合成ペプチド。
  12. 1以上の反応性官能価、製薬上許容される担体、巨大分子キャリアー、およびこれらの組合せからなる群より選択される成分をさらに含む、請求項1、2、3、4または5に記載の合成ペプチド。
  13. 1以上の反応性官能価、製薬上許容される担体、巨大分子キャリアー、およびこれらの組合せからなる群より選択される成分をさらに含む、請求項11に記載の合成ペプチド。
  14. HIV感染の治療における治療用活性物質としての請求項1、2、3、4または5に記載の合成ペプチドの使用。
  15. 合成ペプチドがHIV感染の治療用の1種以上の追加の抗ウイルス剤を含む治療レジメンの一部として用いられる、請求項14に記載の合成ペプチドの使用。
  16. HIVの治療を含む治療的適用のための医薬の製造における請求項1、2、3、4または5に記載の合成ペプチドの使用。
  17. 請求項11に記載の合成ペプチドおよび製薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
  18. 請求項12に記載の合成ペプチドを含有する医薬組成物。
  19. 配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、または配列番号95のいずれか1つをコードするヌクレオチド配列。
  20. HIVを、細胞の存在下で、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の請求項1、2、3、4または5に記載の合成ペプチドと接触させることを含んでなる、HIVの細胞への伝播を阻止する方法。
  21. HIVを、細胞の存在下で、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の請求項11に記載の合成ペプチドと接触させることを含んでなる、HIVの細胞への伝播を阻止する方法。
  22. HIVを、細胞の存在下で、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の請求項12に記載の合成ペプチドと接触させることを含んでなる、HIVの細胞への伝播を阻止する方法。
  23. HIVと細胞に、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の請求項1、2、3、4または5に記載の合成ペプチドを添加することを含んでなる、HIVの細胞への伝播を阻止する方法。
  24. 合成ペプチドを治療レジメンの一成分として添加する、請求項23に記載の方法。
  25. HIVと細胞に、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の請求項11に記載の合成ペプチドを添加することを含んでなる、HIVの細胞への伝播を阻止する方法。
  26. 合成ペプチドを治療レジメンの一成分として添加する、請求項25に記載の方法。
  27. HIVと細胞に、HIVによる細胞感染を阻止するのに有効な量の請求項12に記載の合成ペプチドを添加することを含んでなる、HIVの細胞への伝播を阻止する方法。
  28. 合成ペプチドを治療レジメンの一成分として添加する、請求項27に記載の方法。
  29. HIVを、細胞の存在下で、HIV融合を阻止するのに有効な量の請求項1、2、3、4または5に記載の合成ペプチドと接触させることを含んでなる、HIV融合の阻止方法。
  30. HIVを、細胞の存在下で、HIV融合を阻止するのに有効な量の請求項11に記載の合成ペプチドと接触させることを含んでなる、HIV融合の阻止方法。
  31. HIVを、細胞の存在下で、HIV融合を阻止するのに有効な量の請求項12に記載の合成ペプチドと接触させることを含んでなる、HIV融合の阻止方法。
  32. HIVに感染した個体を治療する方法であって、治療される個体において、HIVのウイルス負荷量の減少、循環CD4+細胞集団の増加、およびこれらの組合せからなる群より選択される治療的適用を達成するのに有効な量の請求項1、2、3、4または5に記載の合成ペプチドを該個体に投与することを含んでなる、上記方法。
  33. HIVに感染した個体を治療する方法であって、治療される個体において、HIVのウイルス負荷量の減少、循環CD4+細胞集団の増加、およびこれらの組合せからなる群より選択される治療的適用を達成するのに有効な量の請求項11に記載の合成ペプチドを該個体に投与することを含んでなる、上記方法。
  34. HIVに感染した個体を治療する方法であって、治療される個体において、HIVのウイルス負荷量の減少、循環CD4+細胞集団の増加、およびこれらの組合せからなる群より選択される治療的適用を達成するのに有効な量の請求項12に記載の合成ペプチドを該個体に投与することを含んでなる、上記方法。
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