本発明は、抗原性または免疫原性作用物質と、少なくとも1種の賦形剤とを含む、皮内送達用の免疫原性組成物を包含し、該賦形剤は、抗原性または免疫原性の該作用物質に対する免疫応答を増強し、その結果、増強された免疫応答をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫原性組成物が、増強された免疫応答をもたらす。特定の作用機序に拘泥するものではないが、本発明の賦形剤を、本発明の方法に従う濃度および送達経路で投与すると、それらは、非特異的なアジュバント活性、すなわち、特定の細胞受容体を介してではなく、おそらくは機械的損傷の促進、軽度の刺激性の促進、または皮膚の伸長の促進を介した活性を示す。あるいは、特定の作用機序に拘泥するものではないが、賦形剤が被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達された後、それらは注射部位の皮内コンパートメントへの抗原提示細胞の補充をもたらす皮膚刺激物として作用し、したがって、アジュバントの役割を果たし、すなわち、免疫原性組成物への免疫応答を増強することができる。好ましくは、これらの方法で使用される賦形剤および本発明の免疫原性組成物は、これまではアジュバント活性に関連付けられていなかったものである。最も好ましくは、これらの方法で使用される賦形剤および本発明の免疫原性組成物は、これまでは皮内空間でのアジュバント活性に関連付けられていなかったものである。
本発明の方法および組成物は、(筋肉内送達および皮下送達を含めて)免疫原性組成物の他の従来の送達形態と比較して、増強された免疫応答、ならびに高い治療および予防上の有効性を与えるだけでなく、注射部位での刺激性の低減、当業者に公知であり本明細書で例示する方法による測定における高い平均力価の抗体産生、当業者に公知であり本明細書で例示する方法による測定における抗体価の中央値の上昇、当業者に公知であり本明細書で例示する方法による測定におけるセロコンバージョン率およびセロプロテクション (seroprotection)率の上昇、当業者に公知であり本明細書で例示する方法による測定における溶血の低減、保管および調製する間のゲル化の低減も与える。
本発明の免疫原性組成物中で使用してもよい賦形剤としては、安定化剤、保存剤、溶剤、界面活性剤もしくは洗剤、懸濁化剤、等張化剤(tonicity agent)、ビヒクルおよび増殖培地用の成分が挙げられるが、これらに限られない。本発明の免疫原性組成物中で使用してもよい賦形剤の非限定的なリストは、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、硝酸、酢酸ナトリウム、セルロース、木炭、ゼラチン、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、モノ−、ジ−、もしくはトリ−エタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トロラミン(trolamine)、窒素ガス、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、グリシン、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、一塩基性の酢酸ナトリウム、無水クエン酸ナトリウムもしくはクエン酸ナトリウム二水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、アムホテリシンB、安息香酸、メチル−、エチル−、プロピル−、もしくはブチル−パラベン、安息香酸ナトリウムおよびプロピオン酸ナトリウム、アミプリロース、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジンアルコール、ベータプロピオラクトン、塩化セチルピリジウム、クロロブタノール、クロルテトラサイクリン、EDTA、ホルムアルデヒド、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、ポリミキシンB、ストレプトマイシン、チメロサール、リン酸トリ−(n)−ブチル、ナイスタチン、水、アルコール、特にエチルアルコール、トウモロコシ油、綿実油、グリセリン、イソプロピルアルコール、鉱物油、オレイン酸、ピーナッツ油、精製水、注射用水、滅菌注射用水、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸マグネシウム、ノノキシノール10、オキストキシノール(oxtoxynol)9(Triton N−101)、ポロクサマー124、188(Lutrol F−68)、237、388、もしくは407(Lutrol F−127)などのポロクサマー、ポリソルベート20(「Tween(登録商標)」20)、ポリソルベート80(「Tween(登録商標)」80)、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノパルミテート、寒天、ベントナイト、カーボマー(例えば、カーボポル)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カオリン、メチルセルロース、トラガントおよびビーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチンもしくはメチルセルロース、デキストロース、グルコース、塩化ナトリウム、トウモロコシ油、鉱物油、ピーナッツ油、ゴマ油、静菌性塩化ナトリウム、静菌水、アミノ酸、バクトペプトン、ウシアルブミン、ウシ血清、卵タンパク質、ヒト血清アルブミン、マウス血清タンパク質、MRC−5細胞タンパク質、卵白アルブミン(ovalbumin)、ビタミン、酵母タンパク質、アポトランスフェリン、アプロチニン;ポリジメチルシロゾンなどの消泡剤、シリコン、フェチュイン(血清タンパク質)、グリコール酸(皮膚剥離剤)、過酸化水素(解毒剤)、ラクトース(増量剤)、マンノース、ならびに尿素である。
本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤の濃度は、使用する個々の賦形剤に応じて変わる。いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤の濃度は、0.000002%から58%(w/v)、および0.05%から10.0%(v/v)でもよい。別の実施形態では、使用する賦形剤の濃度は、少なくとも10%(w/v)、少なくとも15%(w/v)、少なくとも20%(w/v)、少なくとも25%(w/v)、または少なくとも30%(w/v)でもよい。別の実施形態では、賦形剤の濃度は、約30%(w/v)より高い。さらに別の実施形態では、賦形剤の濃度は、少なくとも0.1%(w/v)、少なくとも0.5%(w/v)、少なくとも1%(w/v)、少なくとも5%(w/v)、または少なくとも10%(w/v)である。賦形剤は、免疫原性組成物を調製および製造する際に使用してもよい。このような場合、組成物の製造または調製過程から残されたその賦形剤の残留濃縮物が、最終の免疫原性組成物中に存在することがある。これらの残留濃縮物は非常に少ないため、本発明の免疫原性組成物で観察されるアジュバント活性をもたらすことはできない。
皮内空間でのアジュバント特性を有する、本発明の方法および組成物で使用するための賦形剤は、当技術分野で公知であり本明細書で開示する標準方法による測定において、望ましい免疫強化および組織適合性特質を有する。本発明の好ましい賦形剤は、0.125を上回る勾配値(m)によって定義される、皮内空間における共通の作用プロファイルを有する。最適な作用プロファイルを決定するための例示的なプロファイルを図35に示す。勾配は、皮内コンパートメント内での組織の深さに関係するので、最大作用濃度の変化を特定する。詳細には、図35で示すように、第1および第2の賦形剤濃度と皮内コンパートメント内での第1および第2の組織の深さから勾配値を導く。皮内空間の第1の参照点は、賦形剤が2以下のドレイズ・スコアで免疫強化特性を示す、より浅部の送達である。第1の参照点での賦形剤濃度は、2以下のドレイズ・スコアを可能にする、最も浅い送達地点での最高濃度である。皮内空間の第2の参照点は、賦形剤が2以下のドレイズ・スコアで免疫強化特性を示す、最も深部の送達である。第2の参照点での賦形剤濃度は、2以下のドレイズ・スコアを可能にする、最も深い送達地点での最高濃度である。例えば、第1の送達地点と第2の送達地点の距離は、2mm離れることができ、詳細には、1mmおよび3mmの送達である。作用勾配(m)は、以下の式で記述することができる。
本発明は、皮内コンパートメントに送達されたときに、組成物がアジュバント活性および2以下のドレイズ・スコアを示すように、ある賦形剤を含む、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに投与するための組成物を包含する。
本発明はさらに、ある賦形剤を含む、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに投与するための組成物を包含し、該組成物の活性は、アジュバント活性を有し、かつ、ドレイズ・スコアが2以下である濃度で、該組成物が投与されたときの、0.125以上の勾配値として特徴付けることができ、該勾配値は被験体の皮膚の皮内コンパートメント内の第1および第2の組織の深さでの第1および第2の賦形剤濃度から導かれ、第1および第2の組織の深さは少なくとも2mm離れている。
いくつかの実施形態では、本発明の賦形剤の作用範囲、すなわち、該賦形剤が、ドレイズ・スコアを2以下としつつも皮内コンパートメントでのアジュバント活性を有する範囲は狭い。別の実施形態では、本発明の賦形剤の作用範囲、すなわち、該賦形剤が、ドレイズ・スコアを2以下としつつも、皮内コンパートメントでのアジュバント活性を有する範囲は広い。
本発明の免疫原性組成物中で使用してもよい抗原性または免疫原性作用物質としては、動物、植物、細菌、原生動物、寄生虫、ウイルス、またはそれらの組合せに由来する抗原が挙げられる。抗原性または免疫原性作用物質は、任意のウイルスのペプチド、タンパク質、ポリペプチド、またはウイルスに由来するそれらの断片でもよく、これらには、RSV−ウイルスタンパク質、例えば、RSV F糖タンパク質、RSV G糖タンパク質、インフルエンザウイルス・タンパク質、例えば、インフルエンザウイルス・ノイラミニダーゼ、インフルエンザウイルス赤血球凝集素、単純ヘルペスウイルス・タンパク質、例えば、例えばgB、gC、gD、gEを含む単純ヘルペスウイルス糖タンパク質が含まれるが、これらに限られない。本発明の組成物で使用するための抗原性または免疫原性作用物質は病原性ウイルスの抗原でもよく、該抗原としては、アデノウイルス科(例えば、マストアデノウイルス属およびアビアデノウイルス属)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、単純ヘルペスウイルス5型、単純ヘルペスウイルス6型)、レビウイルス科(例えば、レビウイルス属、腸内細菌ファージ(phase)MS2、アロレウイルス属)、ポックスウイルス科(例えば、チョルドポックスウイルス亜科、パラポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、スイポックスウイルス属、モルシポックスウイルス属、およびエントモポックスウイルス亜科)、パポーバウイルス科(例えば、ポリオーマウイルス属およびパピローマウイルス属)、パラミクソウイルス科(例えば、パラミクソウイルス属、パラインフルエンザウイルス1型、モビリウイルス属(例えば、麻疹ウイルス)、ルブラウイルス属(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス)、ニューモノウイルス亜科(pneumonovirinae)(例えば、ニューモウイルス属、ヒト呼吸器合胞体ウイルス)、メタニューモウイルス属(例えば、トリニューモウイルスおよびヒトメタニューモウイルス)、ピコルナウイルス科(例えば、エンテロウイルス属、ライノウイルス属、ヘパトウイルス属(例えば、ヒトA型肝炎ウイルス)、カルジオウイルス属、およびアフトウイルス属、レオウイルス科(例えば、オルトレオウイルス属、オルビウイルス属、ロタウイルス属、シポウイルス属、フィジーウイルス属、フィトレオウイルス属、およびオリザウイルス属)、レトロウイルス科(例えば、哺乳動物のB型レトロウイルス、哺乳動物のC型レトロウイルス、トリのC型レトロウイルス、D型レトロウイルス群、BLV−HTLVレトロウイルス)、レンチウイルス属(例えば、ヒト免疫不全ウイルス1型およびヒト免疫不全ウイルス2型)、スプマウイルス属、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルス)、トガウイルス科(例えば、アルファウイルス属(例えば、シンドビスウイルス)およびルビウイルス属(例えば、風疹ウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、ベシクロウイルス属、リッサウイルス属、エフェメロウイルス属、シトラブドウイルス属、およびネクレオラブドウイルス属)、アレナウイルス科(例えば、アレナウイルス属、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、Ippyウイルス、およびラッサ熱ウイルス)、ならびにコロナウイルス科(例えば、コロナウイルス属およびトロウイルス属)のようなものが含まれる。
あるいは、本発明の免疫原性組成物中の抗原性または免疫原性作用物質は、KS1/4汎性癌抗原、卵巣癌抗原(CA125)、前立腺酸性リン酸塩(prostatic acid phosphate)、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原p97、黒色腫抗原gp75、高分子量の黒色腫抗原(HMW−MAA)、前立腺特異的膜抗原、癌胎児性抗原(CEA)、多形上皮ムチン抗原、ヒト乳脂肪球抗原;CEA、TAG−72、CO17−1Aなどの結腸直腸腫瘍関連抗原;GICA19−9、CTA−1およびLEA、バーキット・リンパ腫抗原38.13、CD19、ヒトBリンパ腫抗原CD20、CD33;ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドGM3などの黒色腫特異的抗原、T抗原DNA腫瘍ウイルスやRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原を含むウイルスに誘導された腫瘍抗原などの腫瘍特異的移植型の細胞表面抗原(TSTA)、結腸のCEAなどの癌胎児性抗原αフェトプロテイン、膀胱腫瘍癌胎児性抗原、ヒト肺癌抗原L6、L20などの分化抗原、線維肉腫抗原、ヒト白血病T細胞抗原Gp37、ネオ糖タンパク質、スフィンゴ脂質、EGFR(上皮成長因子受容体)HER2の抗原(p185HER2)などの乳癌抗原、多形上皮ムチン(PEM)、悪性ヒトリンパ球抗原APO−1、胎児赤血球中や原始内胚葉中に存在するI抗原、成人赤血球や着床前胚中に存在するI抗原、胃腺癌中に存在するI(Ma)、乳房上皮中に存在するM18、M39、骨髄細胞中に存在するSSEA−1、結腸直腸癌中に存在するVEP8、VEP9、Myl、VIM−D5、D156−22;TRA−1−85(血液型H)、結腸腺癌中に存在するC14、肺腺癌中に存在するF3、胃癌中に存在するAH6、胎児性癌細胞中に存在するYハプテン、Ley;TL5(血液型A);A431細胞中に存在するEGF受容体、膵臓癌中に存在するE1系列(血液型B)、胎児性癌細胞中に存在するFC10.2、胃腺癌抗原、腺癌中に存在するCO−514(血液型Lea)、腺癌中に存在するNS−10;CO−43(血液型Leb);A431細胞のEGF受容体中に存在するG49、結腸腺癌中に存在するMH2(血液型ALeb/Ley)、結腸癌中に存在する19.9、胃癌ムチン、骨髄細胞中に存在するT5A7、黒色腫中に存在するR24、胎児性癌細胞中に存在する4.2、GD3、D1.1、OFA−1、GM2、OFA−2、GD2、およびM1:22:25:8; 4から8細胞期の胚中に存在するSSEA−3およびSSEA−4などの分化抗原、ならびに皮膚T細胞リンパ腫から得られるT細胞受容体由来ペプチドが含まれるが、これらに限られない。
本発明の免疫原性組成物で使用するための抗原性または免疫原性作用物質は、適切な条件のもとで被験体における免疫応答をもたらす任意の物質でもよく、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、脂質、核酸、および多糖が含まれるが、これらに限られない。本発明の免疫原性組成物中の抗原性または免疫原性作用物質の濃度は、当業者に公知の標準方法を用いて決定することができ、また、その抗原性または免疫原性作用物質の効力および性質に応じて変わる。本発明の送達系が増強されていることを考慮すると、抗原性または免疫原性作用物質の濃度は、好ましくは、代替の投与経路および代替組成物が使用されるときの従来の使用量より少ない。
本発明はさらに、皮内に免疫原性または抗原性作用物質と同時投与されたときに、その免疫原性または抗原性作用物質によって引き起こされる免疫応答を増強する、これまでどの組織空間においてもアジュバント活性に関連付けられたことがない、他の化合物または作用物質も包含する。本発明は、特に、これまで皮内コンパートメントにおけるアジュバント活性に関連付けられたことがない、化合物または作用物質を包含する。
本発明は、好ましくは直接かつ選択的に皮内コンパートメントを標的とすることにより、本明細書で記述および例示する本発明の免疫原性組成物を、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに皮内送達するための方法を包含する。本発明の免疫原性組成物は、参照によりその全体を本明細書に組み込む、1999年10月14日出願の特許文献2、2000年6月29日出願の特許文献3、2001年6月29日出願の特許文献4、2001年12月28日出願の特許文献5、2001年12月28日出願の特許文献6、2001年4月18日公開の特許文献7、2002年1月10日公開の特許文献8、2002年1月10日公開の特許文献9に開示されている皮内用の装置および方法のいずれかを用いて投与される。
組成物が被験体の皮膚を浸透して、皮内空間を通り過ぎてしまうことなくその範囲内の望ましい目的の深さまで到達する限り、本発明の免疫原性組成物を皮内空間に導く実際の方法は重要ではない。実際の最適な浸透の深さは、被験体の皮膚の厚さによって変動すると考えられる。たいていの場合は、皮膚の約0.5〜2mmの深さまで浸透する。個々の皮内用装置および送達方法に関わらず、皮内送達は、本発明の免疫原性組成物を、好ましくは、少なくとも0.3mmの深さ、より好ましくは少なくとも0.5mmから最大でも2.0mm以下、より好ましくは1.7mm以下の深さに送達することを対象にしている。いくつかの場合では、免疫原性組成物は、角質層のすぐ下で表皮および真皮上層を含む目的の深さ、例えば、約0.025mmから約2.5mmの深さまで送達される。皮膚の特定の細胞を標的とするために、好ましい目的の深さは、標的とされる個々の細胞および個々の被験体の皮膚の厚さに応じて変わる。例えば、ヒトの皮膚の皮膚空間にあるランゲルハンス細胞を標的とするためには、送達は、一部には、少なくとも、ヒトでは通常約0.025mmから約0.2mmの範囲である表皮組織の深さまで包含する必要があると考えられる。
本発明は、ある疾患または障害、特に感染性疾患または癌に関連する症状を治療、管理、または改善するために、本発明の免疫原性組成物を被験体、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトに投与することを含む、治療および予防の方法を提供する。被験体は、好ましくは、非霊長類、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、マウスや霊長類、例えば、カニクイザル(Cynomolgus)などのサルやヒトなどの哺乳動物である。好ましい実施形態では、被験体はヒトである。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、ワクチン組成物である。
本発明は、被験体、好ましくはヒトに1回量の本発明の組成物を皮内送達することを含む、免疫処置および/または被験体における免疫応答の促進のための方法を包含する。いくつかの実施形態では、本発明は、1回または複数回の追加免疫(booster immunization)を包含する。本発明の免疫原性組成物は、従来の免疫原性組成物(ワクチンなど)および投与計画でみとめられるよりも高いレベルまで抗体反応を促進および/または上方調節する際に特に有効である。本発明の免疫原性組成物は、免疫応答が望まれる抗原性または免疫原性作用物質に対して高速および高レベルの免疫を発達させるのに特に有利である。本発明の免疫原性組成物は、低用量の抗原性または免疫原性作用物質を用いて、防御レベルの全身免疫を実現することができる。いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、有効な免疫応答を得る際に、抗原性または免疫原性作用物質に対して従来使用された用量の60%、好ましくは50%、より好ましくは40%の用量の抗原性または免疫原性作用物質によって、増強された免疫応答をもたらす。好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、従来の送達形態、例えば、筋肉内送達および皮下送達と従来の組成物、すなわち、本発明の賦形剤を含まない組成物とを利用した場合における当技術分野で使用される従来の用量、すなわち非特許文献5で推奨されている用量より少ない用量の抗原性または免疫原性作用物質を含む。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、単回皮内投与後に治療上または予防上有効な免疫応答をもたらす。本発明の免疫原性組成物は、年1回の免疫処置用に皮内投与してもよい。
本発明の免疫原性組成物は、現在入手可能な製剤と比べて、より優れた治療有効性、安全性、および毒性プロファイルを有する。本発明の免疫原性組成物によって与えられる利益および利点は、一部には、特定の製剤、および皮膚の皮内コンパートメントを標的とする際のそれらの有用性に起因する。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、特に、免疫処置にうまく応答しない危険性の高い集団に対して、より強くより長く持続する防御を提供する。
本発明は、当技術分野で公知であり本明細書で記述する任意の標準方法を用いて、本発明の免疫原性組成物の有効性を決定するための方法を包含する。本発明の免疫原性組成物の有効性を決定するためのアッセイは、動物ベースのアッセイを含めて、in vitroベースのアッセイでもin vivoベースのアッセイでもよい。いくつかの実施形態では、本発明は、サンプル、例えば、本発明の免疫原性組成物を投与された被験体から得た血清における本発明の組成物の抗原性または免疫原性作用物質に対する体液性免疫応答を検出および/または定量化することを包含する。好ましくは、本発明の免疫原性組成物の体液性免疫応答は、対照製剤、例えば、抗原性または免疫原性作用物質のみを含む製剤を投与された同じ被験体から得た対照サンプルと比較される。
別の実施形態では、本発明は、細胞性免疫応答を測定することにより、本発明の組成物の有効性を決定するための方法を包含する。細胞媒介性免疫応答(cell−mediated immune response)を測定するための方法は当業者に公知であり、本発明の範囲に包含される。いくつかの実施形態では、被験体の免疫応答を定量化するために、T細胞免疫応答を測定してもよく、例えば、組織培養上清のELISA分析、ex vivo、またはin vitro培養期間後のフロー・サイトメトリーに基づく細胞の細胞内サイトカイン染色、およびサイトカインビーズアレイ(cytokine bead array)のフロー・サイトメトリーに基くアッセイを含め、これらに限らず当業者に公知の一般的な方法を用いてサイトカイン産生を測定できる。さらに別の実施形態では、本発明は、公知のCTL抗原決定基を用いた、クロム遊離アッセイ、フロー・サイトメトリーに基づく四量体または二量体染色アッセイを含め、これらに限らず当業者に公知の一般的な方法を用いてT細胞に特異的な応答を測定することを包含する。
本発明はさらに、抗原性または免疫原性作用物質に対する免疫応答を増強する化合物を同定する方法も包含する。一実施形態では、ある抗原性または免疫原性作用物質に対する免疫応答を増強する化合物を同定する方法は、免疫原性組成物を被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達するステップと、免疫応答を測定するステップとを含む。その際、その免疫原性組成物は、その免疫原性または抗原性作用物質とその化合物とを含み、免疫応答は、その抗原性または免疫原性作用物質を標的としている。本発明は、当業者には公知であり本明細書で開示する方法を用いて、体液性および/または細胞媒介性免疫応答を決定することにより、免疫応答のレベルを測定することを包含する。免疫応答レベルを測定した後、そのレベルを標準レベルと比較する。測定されたレベルの上昇は、その化合物がアジュバントであることを示唆する。
特定の実施形態では、ある抗原性または免疫原性作用物質免疫原性を高める化合物を同定するための方法は、(a)免疫原性または抗原性作用物質と前記化合物とを含む免疫原性組成物を、第1被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達するステップと、(b)第1被験体の血清から得たサンプル中の抗体反応を測定するステップと、(c)免疫原性または抗原性の作用物質を含むが前記化合物を含まない免疫原性組成物を、第2被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達するステップであって、第1被験体と第2被験体は同じ種であるステップと、(d)第2被験体の血清から得たサンプル中の抗体反応を測定するステップと、(e)第1被験体から得られる反応が、第2被験体から得られる反応より大きいかどうかを決定し、第1被験体から得られるサンプルでの反応が第2被験体と比べて大きい場合は、本発明の組成物で使用してもよい賦形剤としてその化合物を特徴付けるステップと、(f)候補の調製物が微細針を通過するかどうかを実証するステップと、(g)アジュバント特性を与える作用物質の濃度が、許容されるドレイズ・スコアを与える濃度であることを実証するステップとを含む。抗原性または免疫原性作用物質と共に被験体の皮膚の皮内コンパートメントに同時投与したときに、その抗原性または免疫原性作用物質に対する増強された免疫応答を誘発するために、本発明のスクリーニング方法によって同定した化合物を使用することができる。詳細には、これらの化合物は、ワクチン組成物中で使用することができる。
本発明はさらに、本明細書で記述する皮内投与装置および本発明の免疫原性組成物を含むキットも包含する。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の免疫原性組成物を含む医薬品パックまたはキットを提供する。特定の実施形態では、本発明は、本発明の免疫原性組成物の成分、例えば、抗原性または免疫原性作用物質、賦形剤のうちの1種または複数を詰めた1つまたは複数の容器を含むキットを提供する。別の特定の実施形態では、キットは、2つの容器を含み、1つには抗原性または免疫原性作用物質が入っており、他方には、賦形剤が入っている。医薬品もしくは生物学的製剤の製造、使用、もしくは販売を規制する行政機関により規定された書式の通知書を、これらの容器と一緒にすることができる。この通知書は、ヒトに投与するために製造、使用、販売することをその機関に承認されていることを示すものである。
5.1 免疫原性組成物
本発明の免疫原性組成物は、好ましくは選択的かつ特異的に、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに抗原性または免疫原性作用物質を標的送達するように設計されている。いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、皮膚の皮内コンパートメントを直接に対象としている。本発明の免疫原性組成物は、抗原性または免疫原性作用物質と、少なくとも1種の賦形剤とを含み、該賦形剤は、皮内コンパートメントの免疫細胞などの免疫細胞に対する抗原性または免疫原性の提示および/または有効性を向上させ、その結果、免疫応答の増強をもたらす。本発明の免疫原性組成物は、細胞媒介性および/または体液性の免疫応答を増強することができる。本発明の皮内用ワクチン製剤によって調節できる細胞媒介性免疫応答には、例えば、Th1もしくはTh2のCD4+Tヘルパー細胞に媒介される応答、またはCD8+細胞障害性Tリンパ球の媒介による応答が含まれる。
本発明の免疫原性組成物中で使用してもよい賦形剤には、安定化剤、保存剤、溶剤、界面活性剤もしくは洗剤、懸濁化剤、等張化剤、ビヒクル、および増殖培地用の成分が含まれるが、これらに限られない。本発明の組成物および方法で使用してもよい賦形剤の例は、本明細書のセクション5.1.1で開示され、また、実施例6.1〜6.3で例示される。本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤の濃度は、使用する個々の賦形剤に応じて変わる(セクション5.1.1および実施例6.1〜6.3を参照)。いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤の濃度は、0.000002%から58%(w/v)、および0.05%から10%(v/v)でもよい。別の実施形態では、使用する賦形剤の濃度は、少なくとも10%(w/v)、少なくとも15%(w/v)、少なくとも20%(w/v)、少なくとも25%(w/v)、または少なくとも30%(w/v)でもよい。別の実施形態では、賦形剤の濃度は、約30%(w/v)より高い。さらに別の実施形態では、賦形剤の濃度は、少なくとも0.1%(w/v)、少なくとも0.5%(w/v)、少なくとも1%(w/v)、少なくとも5%(w/v)、または少なくとも10%(w/v)である。賦形剤は、免疫原性組成物を調製および製造する際に使用してもよい。このような場合、組成物の製造または調製過程から残されたその賦形剤の残留濃縮物が、最終の免疫原性組成物中に存在することがある。これらの残留濃縮物は非常に少ないため、本発明の免疫原性組成物で観察されるアジュバント活性をもたらすことはできない。
いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、1種または複数の添加剤を含み、これには、従来のアジュバント、従来の賦形剤、安定化剤、浸透促進剤、および粘膜付着剤もしくは生体接着剤が含まれるが、これらに限られない。従来の賦形剤は、希釈剤またはビヒクルとして組成物中に加えられるほぼ不活性な物質である。あるいは、従来の賦形剤は、組成物に形または硬度を与えるために使用してもよい。このような従来の賦形剤の例は、当業者には公知であり、本発明の範囲に包含される(例えば、参照によりその全体を本明細書に組み込む非特許文献6参照)。従来のアジュバントとは、組成物中の有効成分の抗原性を高めるために組成物に加えられる物質、例えば、抗原性または免疫原性作用物質が吸着される無機物懸濁液、あるいは、鉱物油中に抗原性作用物質が乳濁化されている油中水型乳剤(例えば、フロイント不完全アジュバント)であり、該鉱物油中には、抗原性作用物質の抗原性をさらに高めるためにマイコバクテリアの死菌を含める場合もある。
別の実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、任意の適切な希釈剤または賦形剤を含めて、1種または複数の他の製薬上許容される担体をさらに含んでもよい。好ましくは、製薬上許容される担体は、それ自体では、生理反応、例えば、免疫応答を誘導しない。最も好ましくは、製薬上許容される担体は、有害または望まれない副作用を全く生じず、かつ/または、過度の毒性を生じない。本発明の免疫原性組成物に使用するための製薬上許容される担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、無菌の等張性水性緩衝液、およびそれらの組合せ物が挙げられるが、それらに限らない。製薬上許容される担体、希釈剤、および賦形剤の追加の例は、参照により本明細書にその全体を組み込む非特許文献6で提供されている。
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでもよい。本発明の免疫原性組成物は、再構成(reconstitution)に適した凍結乾燥粉末などの固体、溶液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放製剤、または散剤でもよい。
本発明の免疫原性組成物は、皮内送達に適した任意の形態でもよい。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、安定な製剤である。すなわち、抗原性または免疫原性作用物質の分解および/または凝集は最小限から検出不可能なレベルしか起こらず、また、生物活性、例えば、抗原性作用物質の抗原性および免疫原性を損なわずに、より長期間、保管することができる。
5.1.1 賦形剤
本発明は、一部には、1種または複数の賦形剤と組み合わせて抗原性または免疫原性作用物質を皮内に送達すると、その抗原性または免疫原性作用物質に対する免疫応答が増強されるという本発明者らの予想外の発見に基づいている。本明細書では、別段の指定が無い限り、「賦形剤」という用語は、組成物の目的であるところの薬理活性および生物活性をそれ自体は有さず、また、本発明に従って皮膚の皮内コンパートメントに投与したときにそのような薬理活性または生物活性を直接増強することも、あるいは変えることも、本発明の前には知られていなかった、薬剤組成物中の成分または添加剤を意味する。本発明の方法で使用される賦形剤は、予め選択された賦形剤である。本明細書では、「予め選択された」賦形剤は、本発明の方法に従って被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達されたときにアジュバント活性を有する、従来の賦形剤、従来型ではない賦形剤、および他の任意の賦形剤を包含する。これらの賦形剤は、抗原性または免疫原性作用物質と共に皮内コンパートメントに同時投与されたときに、アジュバントの役割を果たすこと、すなわち、賦形剤を含まない組成物を投与された被験体と比較して、そのような組成物を投与された被験体における抗原性または免疫原性作用物質に対する免疫応答を増強することが、予想外に発見された。好ましくは、本発明の免疫原性組成物および方法で使用される賦形剤は、これまではアジュバント活性に関連付けられていなかったものである。最も好ましくは、本発明の免疫原性組成物および方法で使用される賦形剤は、これまでは皮内コンパートメントでのアジュバント活性に関連付けられていなかったものである。
本発明の免疫原性組成物は、様々な利点の中でも特に、IMを含む従来の送達形態と比べて、より平均の高い血清抗体反応、より高い抗体力価、より高いセロコンバージョン率およびセロプロテクション率をもたらす。このようなパラメータの測定は、当業者のレベルの範囲内であり、これらの方法を本明細書で例示する。
特定の作用機序に拘泥するものではないが、本発明の賦形剤を本発明の方法に従う濃度および送達経路で投与すると、それらは、非特異的なアジュバント活性、すなわち、特定の細胞受容体を介してではなく、おそらくは機械的損傷の促進、軽度の刺激性の促進、または皮膚の伸長の促進を介した活性を示す。あるいは、特定の作用機序に拘泥するものではないが、賦形剤が本発明に従った濃度で被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達された後、それらは注射部位の皮内コンパートメントへの抗原提示細胞の補充をもたらす皮膚刺激物として作用し、したがって、アジュバントの役割を果たし、すなわち、免疫原性組成物への免疫応答を増強することができる。
本明細書では、賦形剤が刺激物として作用するとき、それは、接触部位での化学作用により皮膚組織に対する可逆性で無症候性の炎症効果を引き起こすものの、腐食性ではない。注射部位での炎症効果は、注射部位への血液流入を伴い、はれ、発赤、熱、および/または疼痛によって特徴付けることができる。当業者なら、例えば、参照により本明細書にその全体を組み込む非特許文献10に開示されている方法を用いて、ある賦形剤が皮膚刺激物であるかどうか決定することができる。6 CFR 1500.41によれば、16 CFR 1500.41の方法により4時間曝露させて、または他の適切な技術により、シロウサギの無傷の皮膚上で化学物質を試験したときに、5以上の実験的スコアをもたらす場合、その化学物質は皮膚刺激物である。好ましくは、本発明の方法で使用される賦形剤は、5以下のスコア、より好ましくは4以下のスコア、最も好ましくは3以下のスコアを有する。本発明の賦形剤が皮膚刺激物として特徴付けられるとき、皮膚刺激性を低減させるために、皮膚刺激物ではない1種または複数の他の賦形剤を免疫原性組成物中で使用してもよい。特定の実施形態では、免疫原性組成物、例えばワクチンを被験体の皮膚、例えば動物の皮内コンパートメントに送達した後で、本発明のその免疫原性組成物が皮膚刺激性をもたらすかどうかを決定するために、免疫処置から1時間以内、24時間後、さらに21日後に、注射部位を視覚的にアッセイする。何時間かたてば消える最初の「水ぶくれ」以外のすべての観察結果に注目する。特定の実施形態では、DNA免疫原性作用物質、例えば、pDNA−HAを被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達したとき、免疫処置(初回抗原刺激または追加免疫)から1時間以内、24時間後、追加免疫直前の21日目、追加免疫の24時間後、追加免疫の21日後(実際にはスケジュールの42日目)に注射部位をアッセイする。
賦形剤は、通常、それらの機能によってサブクラスに分類される。本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、1種または複数の機能を有してもよい。賦形剤のいくつかのサブクラスは、当技術分野で公知であり、本発明に包含される。例えば、参照により本明細書にその全体を組み込む非特許文献11を参照。例えば、賦形剤は、安定化剤、保存剤、溶媒、界面活性剤もしくは洗剤、懸濁化剤、等張化剤、またはビヒクルとして分類することができる。ワクチンの場合、免疫原の増殖を促進または維持するのに使用される増殖培地用の成分が、賦形剤として通常使用される。いくつかの賦形剤は、複数の機能を有し、複数の目的に使用することができる。これらのサブクラスは利用可能なすべての賦形剤の包括的なリストではなく、したがって、他のタイプの賦形剤も本発明の免疫原性組成物および方法に従って使用できることが、当業者には明らかであろう。賦形剤の追加の部類および例は、参照により本明細書にその全体を組み込む非特許文献12に提供されている。
いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、安定化剤である。本明細書では、安定化剤とは、薬剤組成物の安定性を高める化学物質である。本明細書では、安定な組成物とは、抗原性または免疫原性作用物質の分解および/または凝集が最小限から検出不可能なレベルしか起こらず、また、生物活性、例えば、抗原性作用物質の抗原性および免疫原性を損なわずに、より長期間、保管することができる組成物を指す。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による評価において、2℃〜8℃、好ましくは4℃の温度範囲で少なくとも2年間、安定性を示す。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、前述した所定の期間の保管後、抗原性または免疫原性作用物質の凝集および/または分解が低レベルから検出不可能なレベルしか起こらない。好ましくは、前述した所定の期間の保管後、HPSECによる測定において、抗原性または免疫原性の分子の5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、最も好ましくは0.5%以下しか凝集体を形成せず、分解しない。最も好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、当技術分野で公知の標準方法による評価において、前述した条件下での長期間の保管中に抗原性または免疫原性作用物質の生物活性の損失をほとんど全く示さない。本発明の免疫原性組成物は、上記に定義した期間の保管後に、保管前の最初の生物活性の80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、99%超、または99.5%超を保持している。
賦形剤が組成物を安定させる機序によって、安定化剤をさらに、酸性化剤もしくはアルカリ化剤、吸着剤、空気置換剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、または湿潤剤に分類することができ、これらはすべて、本発明の範囲に包含される。本明細書では、酸性化剤は、組成物中の有効成分、すなわち、そうしないとアルカリ条件では不安定である、抗原性または免疫原性作用物質に対して酸性媒体を提供することによって、薬剤組成物を安定させる。酸性化剤の例としては、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、硝酸、および酢酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限られない。アルカリ化剤は、組成物中の有効成分、すなわち、酸性環境では不安定である、抗原性または免疫原性作用物質に対してアルカリ性媒体を提供することによって、組成物を安定させる。アルカリ化剤の例としては、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、モノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびトロラミンが挙げられるが、これらに限られない。
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、吸着剤である。本明細書では、吸着剤は、物理的および/または化学的手段によって他の分子をその表面に接着または吸着させることができる作用物質である。吸着剤の例としては、セルロース、木炭、およびゼラチンが挙げられるが、これらに限られない。さらに特定の実施形態では、本発明の賦形剤はゼラチンである。好ましくは、ゼラチンは、組成物の約0.01から約2重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約0.03から約0.6重量/体積パーセントの濃度で投与される。別の特定の実施形態では、ゼラチンは、約0.0から0.225重量/体積%の濃度で投与される。
いくつかの実施形態では、本発明は、抗酸化剤である賦形剤を包含する。特定の作用機序に拘泥するものではないが、抗酸化剤は、酸化を抑制し、したがって、酸化プロセスによる組成物の変質を防止することによって、薬剤組成物を安定させる。本発明の免疫原性組成物中で使用するための抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限られない。
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は抗酸化剤である。さらに特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、亜硫酸水素ナトリウムである。好ましくは、亜硫酸水素ナトリウムは、組成物の約0.1から約8.0重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約0.3から約3.0重量/体積パーセントの濃度で使用される。
本発明はさらに、緩衝剤である賦形剤も包含する。特定の作用機序に拘泥するものではないが、緩衝剤は、例えば、希釈または酸もしくはアルカリの添加をした際のpHの変化に対する耐性を与えることによって、薬剤組成物を安定させる。本発明の免疫原性組成物で使用してもよい緩衝剤の例としては、グリシン、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、一塩基性の酢酸ナトリウム、および無水クエン酸ナトリウムもしくはクエン酸ナトリウム二水和物が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明はさらに、本発明の免疫原性組成物で使用するためのキレート剤も企図する。特定の作用機序に拘泥するものではないが、キレート剤は、1種または複数の金属、例えば重金属との安定で水溶性の複合体を形成させることによって、薬剤組成物を安定させる。重金属は、通常、プロテアーゼの酵素活性において重要である。すなわち、キレート剤は、酵素活性に必要とされる金属を隔離することによって、プロテアーゼの活性を制限する。本発明の組成物で使用してもよいキレート剤の例としては、エデト酸二ナトリウムおよびエデト酸が挙げられるが、これらに限られない。
いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、湿潤剤である。湿潤剤は、水分を保持することによって調製物の乾燥を防止する作用物質である。本発明の免疫原性組成物で使用してもよい湿潤剤の例としては、グリセリン、プロピレングリコール、およびソルビトールが挙げられるが、これらに限られない。特定の実施形態では、本発明の賦形剤は湿潤剤である。さらに特定の実施形態では、本発明の賦形剤はソルビトールである。好ましくは、ソルビトールは、組成物の約1から約100重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約2.5から約70重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約5から約20重量/体積パーセントの濃度で投与される。
本発明はさらに、保存剤である賦形剤も包含する。特定の作用機序に拘泥するものではないが、保存剤は、薬剤組成物における外来生物の増殖を防止する物質である。保存剤としては、例えば、抗真菌剤、すなわち、真菌の増殖を防止する作用物質、および、抗菌剤、すなわち、ウイルスを含めて微生物の増殖を防止する作用物質が挙げられる。本発明の免疫原性組成物および方法で使用してもよい抗真菌剤の例としては、アムホテリシンB、安息香酸、メチル−、エチル−、プロピル−もしくはブチル−パラベン、安息香酸ナトリウム、およびプロピオン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限られない。パラベンの場合、それらを組み合わせて使用すると有効性が通常高められることは周知である。本発明の免疫原性組成物および方法で使用してもよい抗菌剤の例としては、それだけには限らないが、アミプリロース、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ベータプロピオラクトン、塩化セチルピリジウム、クロロブタノール、クロルテトラサイクリン、EDTA、ホルムアルデヒド、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、ポリミキシンB、ストレプトマイシン、チメロサール、リン酸トリ−(n)−ブチルが挙げられるが、これらに限られない。
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、抗真菌剤である。さらに特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、アムホテリシンBである。好ましくは、アムホテリシンBは、約0.5から約600ng/mL、より好ましくは、約30から約100ng/mLの濃度で使用される。さらに別の実施形態では、アムホテリシンBは、約0.1ng/200μLから1200ng/200μLの濃度で使用される。本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、両性またはポリエン系の抗生物質でもよい。本発明の免疫原性組成物で使用してもよい両性の抗生物質の例としては、アムホテリシンBおよびナイスタチンが挙げられるが、これらに限られない。
別の特定の実施形態では、本発明の組成物で使用する賦形剤は、抗菌剤である。さらに特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、アミプリロースまたはリン酸トリ−(n)−ブチルである。好ましくは、アミプリロースは、0.1から約0.9%(w/v)の濃度で使用される。好ましくは、リン酸トリ−(n)−ブチルは、0.04から約0.325%(w/v)の濃度で使用される。
本発明は、溶剤、すなわち、本発明の組成物を調製する際に別の医薬物質を溶解させるのに使用される作用物質である賦形剤を包含する。抗原性または免疫原性作用物質を溶解させるのに溶剤を使用してもよい。本発明の免疫原性組成物で使用する溶剤は、水性でも非水性でもよい。いくつかの実施形態では、本発明の組成物で補助溶剤が使用される。例えば、水およびアルコールである。注射用組成物を調製する場合、滅菌した溶剤を使用することが好ましい。本発明の免疫原性組成物で使用してもよい溶剤の例としては、アルコール、特にエチルアルコール、トウモロコシ油、綿実油、グリセリン、イソプロピルアルコール、鉱物油、オレイン酸、ピーナッツ油、精製水、注射用水、および滅菌注射用水が挙げられるが、これらに限られない。
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、溶剤である。さらに特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、エタノールである。他の特定の実施形態では、エタノールは、組成物の約0.01から約2.0体積/体積パーセント、好ましくは、組成物の約0.05から約0.45体積/体積パーセントの濃度で使用される。いくつかの特定の実施形態では、エタノールの濃度は、より深い皮内部分、例えば、1mmを超える深さの地点で、2.0%(v/v)でもよい。
本発明はさらに、本発明の免疫原性組成物で使用するための賦形剤として、界面活性剤、すなわち、表面活性剤を包含する。特定の作用機序に拘泥するものではないが、界面活性剤は、表面または界面に吸着し、表面または界面の張力を低減させる。湿潤剤、洗剤、または乳化剤として界面活性剤を使用してもよい。
本発明の組成物で使用してもよい界面活性剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸マグネシウム、ノノキシノール10、オキストキシノール(oxtoxynol)9(TritonN−101);ポロクサマー124、188(Lutrol F−68)、237、388、もしくは407(Lutrol F−127)などのポロクサマー、ポリソルベート20(Tween 20)、ポリソルベート80(Tween 80)、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノパルミテート、およびTritonX−100が挙げられるが、これらに限られない。
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、界面活性剤である。さらに特定の実施形態では、本発明の賦形剤は、Lutrol F 127、TritonN−101、TritonX−100、Tween 20、またはTween 80である。
本発明は、本発明の方法に従ってIDコンパートメントに送達されたときにアジュバントとして機能する、非イオン性の界面活性剤賦形剤を包含する。特定の作用機序に拘泥するものではないが、皮内コンパートメントにおいてアジュバント特性をもたらすこのような洗剤の濃度範囲は、それら洗剤が一般のワクチン製造目的に使用された文献で報告されている広範な範囲とは対照的に、狭い。好ましい作用濃度は、針の深さに応じて変わる(1.00mm対1.5mm対2.0mm対3.00mm)。本発明は、アジュバント特性が示されるが、組織刺激性は回避または最小化され、毒性を持たず組織を損傷しない範囲での非イオン性の界面活性剤賦形剤の使用を包含する。最も好ましい実施形態では、このような賦形剤がIDコンパートメントに送達されたとき、例えば、(当業者には公知であり、本明細書で例示する方法により)セロコンバージョンの促進、平均抗体力価の上昇、または抗体力価の中央値の上昇によって測定される、増強された免疫応答がある。非イオン性の界面活性剤は、しばしば、濃縮された液状原液として市販されている。Sigma−Aldrich社の製品:カタログ番号T−6878、303135、P−8074、P7949、または、同様の濃度および純度の製品が本発明を実施する際に有用である。
特定の好ましい実施形態では、Triton N−101が、組成物の単位体積当たり約0.05から約5重量パーセント、より好ましくは、組成物の約0.1から約1.5重量/体積パーセントの濃度で使用される。本発明は、より深い皮内部分、例えば、2.5mmより深い地点で、5%もの濃度でTriton N−101を使用することを包含する。
特定の好ましい実施形態では、Triton X−100が、組成物の約0.00003から約5重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約0.0001から約0.0009重量/体積パーセントの濃度で使用される。本発明は、より深い皮内部分、例えば、2.5mmより深い地点で、5%もの濃度でTriton X−100を使用することを包含する。
特定の好ましい実施形態では、Tween 80が、組成物の約0.03から約3重量/体積(w/v)パーセント、または、約0.03から約5%(w/v)、0.01から約10%(w/v)、より好ましくは、組成物の約0.1から約0.9重量/体積パーセントの濃度で使用される。別の好ましい特定の実施形態では、Tween 80は、製剤が皮膚の皮内コンパートメントの深さ2mm以内の場所に送達されるとき、約1.1〜2.0%(v/v)の濃度で使用される。さらに別の好ましい特定の実施形態では、Tween 80は、製剤が皮膚の皮内コンパートメントの2mm以上の深さまで送達されるとき、約1.1〜5.0%(v/v)の濃度で使用される。より詳細には、Tweenは、1.0〜1.5mmの深さでは1.1から2.5%(v/v)、1.6〜2mmの深さでは1.1から5.0%(v/v)、2.1〜2.5mmの深さでは1.1から7.5%(v/v)、2.6〜3mmの深さでは1.1から10.0%(v/v)で使用される。
特定の好ましい実施形態では、Tween 20は、約0.003から0.03%(w/v)、約0.003から0.3%(w/v)、および、0.003から3.0%(w/v)の濃度で使用される。v/vで表すと、好ましい実施形態では、Tween 20は、約0.003から0.03%(v/v)、0.003から0.3%(v/v)、および、約0.003から3.0%(v/v)の濃度で使用される。
別の特定の実施形態では、ソルビトールは、製剤が皮膚の皮内コンパートメントの深さ2mm以内の場所に送達されるとき、約2.0から10%(w/v)の濃度で使用される。さらに別の好ましい特定の実施形態では、ソルビトールは、製剤が皮膚の皮内コンパートメントの深さ2mm以上の場所に送達されるとき、約2から20%(w/v)の濃度で使用される。界面活性剤は、通常、免疫原性組成物、特にワクチンの調製および製造に使用される。このような場合、組成物の製造または調製過程から残されたその界面活性剤の残留濃縮物が、最終の免疫原性組成物中に存在することがある。これらの残留濃縮物は非常に少ないため、本発明の免疫原性組成物で観察されるアジュバント活性をもたらすことはできない。このような界面活性剤の例は、オクチルまたはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、「Triton(登録商標)」シリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、「Tween(登録商標)」シリーズ)、ポリオキシエチレンのエステルまたはエーテル;t−オクチルフェノキシポリオキシエタノールを含めてオクチルフェノキシポリオキシエタノールおよびポリオキシエチレンソルビタンエステル;ならびに、ポロキシエチレン(poloxyethylene)ソルビタンモノオレエートを含めてポリオキシエチレンソルビタンエステル、Triton X−45、Triton X−102、Triton X−114、Triton X−165、Triton X−205、Triton X−305、Triton N−57、Triton N−101、Triton N−128、Breij35、Laureth−9、Steareth−9、Tween 80(登録商標)である(界面活性剤の一覧については、例えば、参照により本明細書にその全体を組み込む非特許文献13参照)。
本発明は、懸濁化剤である、本発明の免疫原性組成物で使用するための賦形剤を包含する。特定の作用機序に拘泥するものではないが、懸濁化剤は、例えば、溶解できないビヒクル中に分散された粒子の沈降速度を低下させることによって、組成物の粘度を高める。本発明の組成物で使用してもよい懸濁化剤の例としては、寒天、ベントナイト、カーボマー(例えば、カーボポル)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カオリン、メチルセルロース、トラガント、およびビーガムが挙げられるが、これらに限らない。
一実施形態では、本発明の賦形剤は懸濁化剤である。さらに特定の実施形態では、本発明の賦形剤はゼラチンまたはメチルセルロースである。好ましくは、メチルセルロースは、組成物の約0.02から約0.5重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約0.06から約0.18重量/体積パーセントの濃度で使用される。
本発明は、本発明の組成物で使用するための賦形剤として等張化剤を包含する。等張化剤は、生理的液体に類似した浸透圧特質を有する溶液を提供するため、本発明の免疫原性組成物において特に望ましく、したがって、本発明の注射用組成物に最適である。本発明の免疫原性組成物で使用してもよい等張化剤の例としては、デキストロース、グルコース、および塩化ナトリウムが挙げられるが、これらに限らない。
本発明はさらに、ビヒクルである賦形剤も包含する。本明細書ではビヒクルは、薬剤組成物中の物質の運搬剤である。ビヒクルは、経口および非経口投与用の様々な組成物を調製する際にしばしば使用される。本発明の方法および免疫原性組成物で使用するためのビヒクルは、水性のビヒクルでも油性のビヒクルでもよい。本発明の免疫原性組成物で使用してもよいビヒクルの例としては、トウモロコシ油、鉱物油、ピーナッツ油、ゴマ油、静菌性塩化ナトリウム注射液、および静菌水が挙げられるが、これらに限らない。
本発明の免疫原性組成物中の賦形剤として増殖培地成分を使用してもよい。増殖培地成分は、組成物がワクチンであるときに、特に有用である。本発明の免疫原性組成物および方法で使用してもよい増殖培地成分の例としては、アミノ酸、バクトペプトン、ウシアルブミン、ウシ血清、卵タンパク質、ヒト血清アルブミン、マウス血清タンパク質、MRC−5細胞タンパク質、卵白アルブミン、ビタミン、および酵母タンパク質が挙げられるが、これらに限らない。
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、増殖培地成分である。さらに特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物中の賦形剤は、バクトペプトンである。好ましくは、バクトペプトンは、組成物の約0.03から約3重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約0.1から約1.5重量/体積パーセントの濃度で使用される。
本発明は、特に皮内コンパートメントにおいて、アジュバント活性を有することが知られていなかった他の化合物または作用物質を包含する。これらの化合物の例としては、血清タンパク質(例えば、アポトランスフェリン、フェチュイン)、アプロチニン、グリコール酸(皮膚剥離剤)、マンノース、ならびに尿素が挙げられるが、これらに限らない。任意の追加のタンパク質は、本発明の方法に従って使用され皮膚の皮内コンパートメントに送達されるときに、アジュバント活性を有することができる。追加のタンパク質は、DNA免疫原に対するアジュバントとして特に有用である。尿酸など尿素系の化合物は、本発明に従って作用することが予想される。
特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、アポトランスフェリン、アプロチニン、フェチュイン、グリコール酸、マンノース、または尿素である。好ましくは、尿素は、組成物の約0.02から約40重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約0.2から約20重量/体積パーセントの濃度で使用される。好ましくは、アポトランスフェリンは、組成物1mL当たり約20μgから約1,800μg、より好ましくは、組成物1mL当たり約60μgから約600μgの濃度で使用される。好ましくは、アプロチニンは、組成物1mL当たり約1μgから約180μg、より好ましくは、組成物1mL当たり約5μgから約60μgの濃度で使用される。好ましくは、フェチュインは、組成物1mL当たり約0.05μgから約7.5μg、より好ましくは、組成物1mL当たり約0.2μgから約2.4μgの濃度で使用される。好ましくは、マンノースは、組成物1mL当たり約20μgから約1,800μg、より好ましくは、組成物1mL当たり約60μgから約600μgの濃度で使用される。好ましくは、グリコール酸は、組成物の約0.05から約3.0重量/体積パーセント、より好ましくは、組成物の約0.1から約1.0重量/体積パーセントの濃度で使用される。
さらに別の特定の実施形態では、本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、胆汁酸またはその誘導体であり、それには、デオキシコール酸塩(DOC)、コール酸、ケンデオキシコール酸塩(chendeoxycholic acid)、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸塩、およびウルソデオキシコール酸塩が含まれるが、これらに限らない。別の特定の実施形態では、デオキシコール酸塩は、製剤が皮膚の皮内コンパートメントの深さ2mm以内の場所に送達されるとき、約0.07から0.15%(w/v)、または、0.01から0.3%(w/v)の濃度で使用される。さらに別の好ましい特定の実施形態では、デオキシコール酸塩は、製剤が皮膚の皮内コンパートメントの深さ2mm以上の場所に送達されるとき、約0.07から0.15%(w/v)、または、0.01から0.6%(w/v)の濃度で使用される。より詳細には、1mmから1.5mmの深さでのDOCの好ましい範囲は、0.07から0.15%(w/v)であり、1.6mmから2mmの深さでのDOCの好ましい範囲は、0.07から0.3%(w/v)であり、2.1mmから2.5mmの深さでのDOCの好ましい範囲は、0.07から0.45%(w/v)であり、2.6mmから3.0mmの深さでのDOCの好ましい範囲は、0.07から0.6%(w/v)である。
本発明は、本明細書で定義し、図35で例示する所望の作用プロファイルに合致し、0.125以上の勾配値を有する任意の賦形剤を含む製剤を包含する。
本発明の免疫原性組成物で使用する賦形剤は、液体または固体の形態で存在することができる。さらに、単独でまたは他の賦形剤と組み合わせてこれらの賦形剤を使用できることは、当業者には容易に明らかであろう。特に、2種以上の賦形剤を組み合わせて使用して、相加効果または相乗効果を得ることができる。本発明の免疫原性組成物中の賦形剤の濃度は、本発明の方法に従って免疫原性組成物を調製する前に、その組成物の調製または製造過程から存在し得る賦形剤の残留濃度を含まない。
5.1.2 免疫原性または抗原性の作用物質
本発明の免疫原性組成物中で使用してもよい抗原性または免疫原性作用物質としては、動物、植物、細菌、原生動物、寄生虫、ウイルス、またはそれらの組合せに由来する抗原が挙げられる。本発明の免疫原性組成物で使用するための抗原性または免疫原性作用物質は、適切な条件のもとで被験体における免疫応答をもたらす任意の物質でもよく、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、脂質、核酸、および多糖を含むが、これらに限らない。
本発明の免疫原性組成物は、1種または複数の抗原性または免疫原性作用物質を含んでもよい。本発明の組成物で使用する抗原性または免疫原性作用物質の量は、抗原性または免疫原性作用物質の化学的性質および効力に応じて変動してもよい。通常、本発明の組成物中の抗原性または免疫原性作用物質の開始濃度は、従来の投与経路、例えば、筋肉内注射によって所望の免疫応答を誘発するのに従来使用されている量である。次に、当技術分野で公知であり本明細書で記述する標準方法による評価において、有効な防御免疫応答が実現されるように、例えば、希釈剤を用いて希釈することによって、本発明の組成物中の抗原性または免疫原性作用物質の濃度を調整する。
抗原性または免疫原性作用物質は、任意のウイルスのペプチド、タンパク質、ポリペプチド、またはウイルスに由来するそれらの断片でもよく、これには、RSVウイルスタンパク質、例えば、RSV F糖タンパク質、RSV G糖タンパク質、インフルエンザウイルス・タンパク質、例えば、インフルエンザウイルス・ノイラミニダーゼ;インフルエンザウイルス赤血球凝集素、単純ヘルペスウイルス・タンパク質、例えば、例えばgB、gC、gD、gEを含む単純ヘルペスウイルス糖タンパク質を含むが、これらに限らない。
本発明の免疫原性組成物で使用するための抗原性または免疫原性作用物質は、病原性ウイルスの抗原でもよく、例として、アデノウイルス科(例えば、マストアデノウイルス属およびアビアデノウイルス属)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、単純ヘルペスウイルス5型、単純ヘルペスウイルス6型)、レビウイルス科(例えば、レビウイルス属、腸内細菌ファージ(phase)MS2、アロレウイルス属)、ポックスウイルス科(例えば、チョルドポックスウイルス亜科、パラポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、スイポックスウイルス属、モルシポックスウイルス属、およびエントモポックスウイルス亜科)、パポーバウイルス科(例えば、ポリオーマウイルス属およびパピローマウイルス属)、パラミクソウイルス科(例えば、パラミクソウイルス属、パラインフルエンザウイルス1型、モビリウイルス属(例えば、麻疹ウイルス)、ルブラウイルス属(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス)、ニューモノウイルス亜科(pneumonovirinae)(例えば、ニューモウイルス属、ヒト呼吸器合胞体ウイルス)、メタニューモウイルス属(例えば、トリ・ニューモウイルスおよびヒト・メタニューモウイルス)、ピコルナウイルス科(例えば、エンテロウイルス属、ライノウイルス属、ヘパトウイルス属(例えば、ヒトA型肝炎ウイルス)、カルジオウイルス属、およびアフトウイルス属、レオウイルス科(例えば、オルトレオウイルス属、オルビウイルス属、ロタウイルス属、シポウイルス属、フィジーウイルス属、フィトレオウイルス属、およびオリザウイルス属)、レトロウイルス科(例えば、哺乳動物のB型レトロウイルス、哺乳動物のC型レトロウイルス、トリのC型レトロウイルス、D型レトロウイルス群、BLV−HTLVレトロウイルス、レンチウイルス属(例えば、ヒト免疫不全ウイルス1型およびヒト免疫不全ウイルス2型)、スプマウイルス属)、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルス)、トガウイルス科(例えば、アルファウイルス、例えば、シンドビスウイルス)およびルビウイルス属(例えば、風疹ウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、ベシクロウイルス属、リッサウイルス属、エフェメロウイルス属、シトラブドウイルス属、およびネクレオラブドウイルス属)、アレナウイルス科(例えば、アレナウイルス属、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、Ippyウイルス、およびラッサ熱ウイルス)、ならびにコロナウイルス科(例えば、コロナウイルス属およびトロウイルス属)を含むが、これらに限らない。
本発明の免疫原性組成物で使用する抗原性または免疫原性作用物質は、伝染性疾患の作用物質でもよく、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(GenBank 取得番号(Accession No.)J02132(非特許文献14、非特許文献15))、ヒト呼吸器合胞体ウイルスG糖タンパク質(GenBank 取得番号Z33429(非特許文献16、非特許文献17))、デング熱ウイルスのコアタンパク質、マトリックス・タンパク質、もしくは他の任意のタンパク質(GenBank 取得番号M19197(非特許文献18))、麻疹ウイルス赤血球凝集素(GenBank 取得番号M81899(非特許文献19))、単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質gB(GenBank 取得番号M14923(非特許文献20))、ポリオウイルスIVP1(非特許文献21)、HIVIのエンベロープ糖タンパク質(非特許文献22)、肝炎B表面抗原(非特許文献23、非特許文献24)、ジフテリア毒素(非特許文献25)、ストレプトコッカス24M抗原決定基(非特許文献26)、淋菌のピリン(非特許文献27)、仮性狂犬病ウイルスg50(gpD)、仮性狂犬病ウイルスII(gpB)、仮性狂犬病ウイルスgIII(gpC)、仮性狂犬病ウイルス糖タンパク質H、仮性狂犬病ウイルス糖タンパク質E、伝染性胃腸炎糖タンパク質195、伝染性胃腸炎マトリックスタンパク質、ブタ・ロタウイルス糖タンパク質38、ブタ・パルボウイルス・キャプシドタンパク質、セルプリナ・ヒオディセンテリアエ(Serpulina hydodysenteriae)防御抗原、ウシ・ウイルス性下痢糖タンパク質55、ニューカッスル病ウイルス赤血球凝集素−ノイラミニダーゼ、ブタ・インフルエンザウイルス赤血球凝集素、ブタ・インフルエンザウイルス・ノイラミニダーゼ、口蹄疫ウイルス、ブタ・コレラウイルス、ブタ・インフルエンザウイルス、アフリカ・ブタ・コレラウイルス、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス(例えば、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルスの糖タンパク質Eもしくは糖タンパク質G)、伝染性喉頭気管炎ウイルス(例えば、伝染性喉頭気管炎ウイルスの糖タンパク質Gもしくは糖タンパク質1)、ラクロス(La Crosse)ウイルスの糖タンパク質(非特許文献28)、新生子ウシ下痢ウイルス(非特許文献29)、ベネズエラ・ウマ脳脊髄炎ウイルス(非特許文献30)、プンタ・トロ(puntatoro)ウイルス(非特許文献31)、ネズミ白血病ウイルス(非特許文献32)、マウス乳癌ウイルス(非特許文献33)、B型肝炎ウイルス・コアタンパク質および/またはB型肝炎ウイルスの表面抗原もしくは断片またはそれらの派生物(1980年6月4日公開の特許文献10、非特許文献34、非特許文献35)、ウマ・インフルエンザウイルスもしくはウマ・ヘルペスウイルスの抗原(例えば、ウマ・インフルエンザウイルスA/Alaska91型ノイラミニダーゼ、ウマ・インフルエンザウイルスA/Miami63型ノイラミニダーゼ、ウマ・インフルエンザウイルスA/Kentucky81型ノイラミニダーゼ、ウマ・ヘルペスウイルス1型糖タンパク質B、およびウマ・ヘルペスウイルス1型糖タンパク質D、呼吸器合胞体ウイルスもしくはウシ・パラインフルエンザ(parainfluenza)ウイルスの抗原(例えば、ウシ呼吸器合胞体ウイルス結合タンパク質(BRSV G)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス融合タンパク質(BRSV F)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス・ヌクレオキャプシド・タンパク質(BRSV N)、ウシ・パラインフルエンザウイルス3型融合タンパク質、およびウシ・パラインフルエンザウイルス3型赤血球凝集素ノイラミニダーゼ)、ウシ・ウイルス性下痢ウイルスの糖タンパク質48もしくは糖タンパク質53を含むが、これらに限らない。
本発明の免疫原性組成物中の抗原性または免疫原性作用物質は、癌抗原でも腫瘍抗原でもよい。当業者には公知の任意の癌抗原または腫瘍抗原を、本発明の免疫原性組成物に従って使用してもよいが、これには、KS1/4汎性癌抗原、(非特許文献36、非特許文献37)、卵巣癌抗原(CA125)(非特許文献38)、前立腺酸性リン酸塩(acid phosphate)(非特許文献39)、前立腺特異的抗原(非特許文献40、非特許文献41)、黒色腫関連抗原p97(非特許文献42)、黒色腫抗原gp75(非特許文献43)、高分子量の黒色腫抗原(HMW−MAA)(非特許文献44、非特許文献45)、前立腺特異的膜抗原、癌胎児性抗原(CEA)(非特許文献46)、多形上皮ムチン抗原、ヒト乳脂肪球抗原;CEA、TAG−72(非特許文献47)、CO17−1A(非特許文献48)などの結腸直腸腫瘍関連抗原;GICA19−9(非特許文献49)、CTA−1およびLEA、バーキット・リンパ腫抗原38.13、CD19(非特許文献50)、ヒトBリンパ腫抗原CD20(非特許文献51)、CD33(非特許文献52);ガングリオシドGD2(非特許文献53)、ガングリオシドGD3(非特許文献54)、ガングリオシドGM2(非特許文献55)、ガングリオシドGM3(非特許文献56)などの黒色腫特異的抗原;T抗原DNA腫瘍ウイルスやRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原を含むウイルスに誘導された腫瘍抗原などの腫瘍特異的移植型の細胞表面抗原(TSTA)、結腸のCEAなどの癌胎児性抗原αフェトプロテイン、膀胱腫瘍癌胎児性抗原(非特許文献57)、ヒト肺癌抗原L6、L20などの分化抗原(非特許文献58)、線維肉腫抗原、ヒト白血病T細胞抗原Gp37(非特許文献59)、ネオ糖タンパク質、スフィンゴ脂質;EGFR(上皮成長因子受容体)HER2の抗原(p185HER2)などの乳癌抗原、多形上皮ムチン(PEM)(非特許文献60)、悪性ヒトリンパ球抗原APO−1(非特許文献61);胎児赤血球中や原始内胚葉中に存在するI抗原、成人赤血球や着床前胚中に存在するI抗原、胃腺癌中に存在するI(Ma)、乳房上皮中に存在するM18、M39、骨髄細胞中に存在するSSEA−1、結腸直腸癌中に存在するVEP8、VEP9、Myl、VIM−D5、D156−22;結腸腺癌中に存在するTRA−1−85(血液型H)、C14;肺腺癌中に存在するF3、胃癌中に存在するAH6、胎児性癌細胞中に存在するYハプテン、Ley;A431細胞中に存在するTL5(血液型A)、EGF受容体;膵臓癌中に存在するE1系列(血液型B)、胎児性癌細胞中に存在するFC10.2;腺癌中に存在する胃腺癌抗原、CO−514(血液型Lea);腺癌中に存在するNS−10;A431細胞のEGF受容体中に存在するCO−43(血液型Leb)、G49;結腸腺癌中に存在するMH2(血液型ALeb/Ley)、結腸癌中に存在する19.9;骨髄細胞中に存在する胃癌ムチン、T5A7;黒色腫中に存在するR24、胎児性癌細胞中に存在する4.2、GD3、D1.1、OFA−1、GM2、OFA−2、GD2、およびM1:22:25:8;4から8細胞期の胚中に存在するSSEA−3およびSSEA−4など、の分化抗原(非特許文献62)を含むが、これらに限らない。一実施形態では、抗原は、皮膚T細胞リンパ腫から得られるT細胞受容体由来ペプチドである(非特許文献63)。
本発明の免疫原性組成物中の抗原性または免疫原性作用物質は、免疫応答が望まれている対象のウイルスを含んでもよい。いくつかの場合では、本発明の免疫原性組成物は、組換えウイルスまたはキメラウイルスを含む。別の場合では、本発明の免疫原性組成物は、弱毒化されたウイルスを含む。組換えウイルス、キメラウイルス、および弱毒化ウイルスの作製は、当業者に公知の標準方法を用いて実施することができる。本発明はまた、本発明に従って調製される組換え生ウイルスワクチンまたは組換え不活化ウイルスワクチンも包含する。宿主中での増殖により、天然の感染症で起こる刺激に類似した種類および大きさの持続性の刺激が生じ、したがって、実質的で長期にわたる免疫が与えられるため、生ワクチンを好んで選んでもよい。このような組換え生ウイルスワクチン製剤の作製は、細胞培養または鶏胚の尿膜でのウイルスの増殖とそれに続く精製を含む従来の方法を用いて、遂行することができる。
組換えウイルスは、投与される被験体にとって非病原性のものでもよい。なお、遺伝的に改変したウイルスをワクチンにする目的で使用するには、これらの株が弱毒化する特質を有することが必要となる場合がある。トランスフェクション(transfection)のために使用する、鋳型への適切な突然変異(例えば、欠失)の導入により、弱毒化する特質を示す新規なウイルスを提供することができる。例えば、温度感受性または低温適応に関連付けられている特定のミスセンス突然変異を、欠失突然変異中に作製することができる。これらの突然変異は、低温感受性または温度感受性変異体に関連付けられている点突然変異(point mutations)より安定でなければならず、復帰突然変異頻度は極めて低くなければならない。
あるいは、本発明の組成物で使用するために、「自殺」特質を有するキメラウイルスを構築してもよい。このようなウイルスは、宿主内部で1回または数回しか複製を行わないはずである。ワクチンとして使用すると、この組換えウイルスは、限られた数の複製サイクルを経、十分なレベルの免疫応答を誘導するはずであるが、ヒト宿主中でそれ以上は広まらず、疾患を引き起こさないと考えられる。
あるいは、本発明に従って、不活化した(死滅させた)ウイルスを調製してもよい。不活化ワクチン製剤は、キメラウイルスを「殺す」ための従来技術を用いて調製することができる。不活化ワクチンは、それらの感染力が消滅しているという点で、「死んで」いる。理想的には、免疫原性に影響を及ぼさずに、ウイルスの感染力を消滅させる。不活化ワクチンを調製するために、キメラウイルスを細胞培養または鶏胚の尿膜で増殖させ、ゾーン超遠心分離によって精製し、ホルムアルデヒドまたはβ−プロピオラクトンで不活化し、プールしてもよい。
他のウイルス性または非ウイルス性の病原菌に由来する抗原を含めて、完全に外来の抗原決定基も、本発明の組成物で使用するためのウイルス中に人工的に組み込むことができる。例えば、HIV(gp160、gp120、gp41)などの無関係なウイルスの抗原、寄生虫抗原(例えば、マラリア)、細菌もしくは真菌の抗原、または腫瘍抗原を弱毒化した株に組み込むことができる。ワクチンを作製および製造するための方法は、当業者に公知であり、本発明の範囲内に包含される。通常、これらの方法は、発育鶏卵に接種すること、尿膜腔液を回収すること;例えば、ゾーン遠心分離、超遠心分離、限外ろ過、およびクロマトグラフィーを様々に組み合わせて用いて、ウイルス全体を濃縮、精製、および分離することを含む。これらの方法は、例えば、分離剤(splitting agents、例えば、非イオン性界面活性剤、胆汁酸およびその誘導体、アルキルグリコシドおよびその誘導体、アシル糖)、安定化剤、溶剤などとしての様々な化学物質の使用を包含する。このような場合、ワクチン組成物の製造または調製過程から残されたこれら化学物質の残留濃縮物が、最終の免疫原性組成物中に存在することがあるが、これらの残留濃縮物は、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達されたときにワクチン組成物のアジュバント活性を生じるには十分な量ではない。本明細書で指定する、本発明の賦形剤の濃度は、ワクチン組成物の調製または製造の間に存在することがあるこのような化学物質の残留濃度より高いことが強調されるべきである。
実質的に任意の異種遺伝子配列を、本発明の免疫原性組成物中で使用するためのキメラウイルス中に構築してもよい。好ましくは、異種遺伝子配列は、生体応答調節物質の役割を果たす、部分およびペプチドである。好ましくは、様々な任意の病原体に対する防御免疫応答を誘導する抗原決定基、または、中和抗体を結合する抗原を、キメラウイルスの一部分によって、またはそれらの一部として発現させてもよい。例えば、キメラウイルス中に構築することができる異種遺伝子配列としては、インフルエンザおよびパラインフルエンザ赤血球凝集素ノイラミニダーゼ、ならびにヒトPIV3のHNおよびF遺伝子などの融合糖タンパク質が挙げられるが、これらに限らない。さらに、キメラウイルスに組み込むことができる異種遺伝子配列としては、免疫調節活性を有するタンパク質をコードする配列が挙げられる。免疫調節タンパク質の例としては、サイトカイン、インターフェロン1型、γインターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン−1、−2、−4、−5、−6、−12、およびこれら作用物質のアンタゴニストが挙げられるが、これらに限らない。
他の異種配列は、腫瘍抗原に由来するものでもよく、得られたキメラウイルスを用いて、in vivoで腫瘍退縮をもたらす、腫瘍細胞に対する免疫応答を生じさせてもよい。本発明によれば、腫瘍関連抗原(TAA)を発現するように組換えウイルスを遺伝子改変してもよく、これには、T細胞によって認識されるヒト腫瘍抗原(例えば、参照によりその全体を本明細書に組み込む非特許文献64);gp100、MART−1/MelanA、TRP−1(gp75)、およびチロシナーゼを含むメラノサイト系タンパク質;MAGE−1、MAGE−3、BAGE、GAGE−1、GAGE−1、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV、p15など腫瘍特異的な共通範囲の広い抗原;β−カテニン、MUM−1、およびCDK4などの腫瘍特異的変異抗原;乳房、卵巣、子宮頸、および膵臓の癌腫、HER−2/neu、ヒト・パピローマウイルス属−E6、−E7、MUC−1に対する非メラノーマ抗原を含むが、これらに限らない。
本発明の免疫原性組成物で使用するための抗原性または免疫原性作用物質は、疾病管理センターによって特定されている選定物質および毒素のうちの1種または複数を含んでもよい。いくつかの場合では、本発明の免疫原性組成物中で使用するための選定物質は、ブドウ球菌(Staphyloccocal)エンテロトキシンB、ボツリヌス・毒素;炭そ菌(Anthrax)およびペスト菌(Yersinia pestis)に対する防御抗原から得られる1種または複数の抗原を含んでもよい。本発明の免疫原性組成物中で使用するための選定物質および毒素の非限定的な例を表1に示す。
5.1.3 インフルエンザウイルス抗原
本発明の皮内送達用の好ましいワクチン送達系は、インフルエンザウイルスワクチンであり、それらは、1種または複数のインフルエンザウイルス抗原を含んでもよい。好ましくは、本発明の皮内用ワクチン製剤で使用されるインフルエンザウイルス抗原は、表面抗原であり、赤血球凝集素およびノイラミニダーゼ抗原またはその組合せ物を含むが、これらに限らない。インフルエンザウイルス抗原は、インフルエンザワクチン製剤全体の一部分を構成してもよい。あるいは、インフルエンザウイルス抗原は、精製抗原またはほぼ精製された抗原として存在してもよい。インフルエンザウイルス抗原を単離および精製するための技術は当業者には公知であり、本発明において企図される。本発明の組成物で使用するのに適した赤血球凝集素/ノイラミニダーゼ調製物の例は、Evans Medical Limited社(United Kingdom、Merseyside、Speke)によって製造および販売されている製品「フルビリン(Fluvirin)」であり、例えば、参照により本明細書にその全体を組み込む非特許文献65も参照できる。
本発明の皮内用ワクチン製剤で有用なインフルエンザワクチンは、任意の市販のインフルエンザワクチン、好ましくは三価サブユニットワクチン、例えば、「フルゾン(FLUZONE)(登録商標)」弱毒化インフルエンザワクチン(Aventis Pasteur社、Swiftwater、PA)でもよい。好ましい実施形態では、インフルエンザワクチンを筋肉内送達するために使用される従来の用量より少ない量のインフルエンザワクチンを、皮内コンパートメントに送達することによって、等価な治療効果を実現する。本発明のインフルエンザワクチン製剤は、本明細書で開示し、本発明の方法によって特定される賦形剤を含む。皮内コンパートメントにこれらの製剤を送達すると、それらは、従来の送達形態または賦形剤を用いない場合と比べて、より高い抗体力価をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明のインフルエンザワクチン製剤は、従来の送達形態と比べて、または賦形剤を用いない場合と比べて、抗体力価を2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍増大させる。特定の実施形態では、皮内コンパートメントに送達された等量のFluzoneを比較すると、ソルビトールを添加したFluzoneは、ソルビトールなしでFluzoneが投与されたときに得られる血清力価の3倍の血清力価をもたらす(図12参照)。いずれかの作用機序に拘泥されるものではないが、このようなアジュバントに誘導された増強により、免疫原の濃度を減らすという選択肢が生じ、したがって、免疫原の量は、免疫応答の増強によって低減することができる。いくつかの実施形態では、免疫原の量は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低減される。
本発明で使用するインフルエンザワクチンは、当技術分野で公知の一般的な方法によって調製される、生きていないインフルエンザ抗原調製物、好ましくは、インフルエンザ成分(split influenza)またはサブユニット抗原調製物でもよい。最も好ましくは、本発明に従って使用するインフルエンザワクチンは、3価ワクチンである。本発明は、生きていないインフルエンザ抗原調製物、好ましくは、生きたウイルスから調製されるインフルエンザ成分調製物またはサブユニット抗原調製物を含むインフルエンザワクチン製剤を包含する。最も好ましくは、インフルエンザ抗原調製物は、インフルエンザ成分抗原調製物である。
本発明のインフルエンザワクチン製剤は、単一のウイルス株または複数の株に由来するインフルエンザウイルス抗原を含んでもよい。例えば、インフルエンザワクチン製剤は、最大3種またはそれ以上のウイルス株から得た抗原を含んでもよい。単に例にすぎないが、インフルエンザワクチン製剤は、インフルエンザBの1種または複数の株に由来する抗原と共に、インフルエンザAの1種または複数の株に由来する抗原を含んでもよい。インフルエンザ株の例は、インフルエンザA/Texas/36/91、A/Nanchang/933/95、およびB/Harbin/7/94の株である。
最も好ましい実施形態では、本発明のインフルエンザワクチン製剤は、弱毒化インフルエンザワクチンである、市販のインフルエンザワクチン「フルゾン(FLUZONE)(登録商標)」(Connaught Laboratories社、Swiftwater、PA)を含む。「フルゾン(FLUZONE)(登録商標)」は、1回用量当たり、インフルエンザA/Texas/36/91(NINI)、A/Beijing/32/92(H3N2)、およびB/Panama、45/90ウイルスをそれぞれのHAワクチン15μgを含む、3価のサブビリオンワクチンである。
好ましくは、本発明のインフルエンザワクチン製剤は、従来のワクチンより少量の赤血球凝集素を有し、また、より少ない体積で投与される。いくつかの実施形態では、インフルエンザ株当たりの赤血球凝集素の量は、約1〜7.5μg、より好ましくは約3μgまたは約5μgであり、筋肉内投与用の従来のワクチンで使用される赤血球凝集素の用量のそれぞれ約5分の1または3分の1である。
本発明によるインフルエンザワクチン製剤の1回量の体積は、0.025mLから1.0mL、より好ましくは約0.05mLまたは約0.25mLである。特定の実施形態では、本発明は、1回量の体積が100μLのインフルエンザワクチンを包含する。用量0.1mLは、従来の筋肉内投与用インフルエンザワクチン用量の体積の約5分の1である。皮内投与することができる液体の体積は、注射部位にある程度依存する。例えば、三角筋部分の場合、0.1mLが好ましい体積の最大値であるが、腰部分では、多量、例えば、約0.2mLを投与することができる。
インフルエンザワクチンの有効性の測定には、国際的な基準が適用されている。インフルエンザに有効なワクチンに関する、欧州連合の公認基準を以下の表に示す。理論上、欧州連合の条件を満たすため、すなわち、欧州連合での販売用に承認されるためには、インフルエンザワクチンは、ワクチン中に含まれるすべてのインフルエンザ株について、以下の表の基準のうちの1つを満たさなければならない。しかし、実際には、特に新しく販売される新ワクチンの場合は、基準のうちの少なくとも2つ以上、おそらくは3つすべてが、すべての株について満たされる必要がある。一部の状況では、2つの基準で十分としてもよい。例えば、3つの基準のうちの2つはすべての株が満たしているものの、第3の基準を満たしているのは一部の株であってすべての株ではない(例えば、3つの株のうちの2つ)場合は、許容してもよい。条件は、成人の集団(18〜60歳)の場合と高齢者集団(60歳超)の場合で異なる。
セロコンバージョン率は、各ワクチン株について、ワクチン接種後に血清の赤血球凝集素抑制(HI)力価が少なくとも4倍増大しているレシピエントの比率として定義される。変換係数は、各ワクチン株について、ワクチン接種後の血清HI力価の幾何平均の増加倍率として定義される。防御率またはセロプロテクション率は、ワクチン接種後の血清HI力価が1:40以上であるレシピエントの比率として定義されており、通常、防御を示唆するものとして認められている。
本発明のインフルエンザワクチン製剤は、そのワクチンがヨーロッパで認可されるように、本明細書で前述したインフルエンザワクチンのEU基準のうちの一部またはすべてを満たす。好ましくは、ワクチン中にあるインフルエンザのすべての株について、3つのEU基準のうちの少なくとも2つが満たされる。より好ましくは、少なくとも2つの基準がすべての株について満たされ、第3の基準は、すべての株によって、または、少なくとも1つの株以外のすべての株によって満たされる。より好ましくは、存在するすべての株が3つの基準すべてを満たす。好ましくは、本発明のインフルエンザワクチン製剤はさらに、現行のインフルエンザワクチンに対する連邦医薬品局(Feredal Drug Administration)および/またはアメリカ公衆衛生局(USPHS)の条件の基準の一部またはすべてを満たす。
5.2 免疫原性組成物の調製
5.2.1 皮内で免疫原性組成物の調製
本発明の免疫原性組成物は、安定で、滅菌した、注射可能な製剤を得る任意の方法によって調製してもよい。好ましくは、本発明の免疫原性組成物を調製する方法には、賦形剤の溶液を提供すること、抗原性または免疫原性を有する薬剤溶液を提供すること、該賦形剤の溶液と該抗原性または免疫原性を有する薬剤溶液とを合わせて接種物、例えば皮内コンパートメントに注射する溶液を形成することを含む。
1つの実施形態では、賦形剤は微粒子の形態であって、安定で、滅菌した、注射可能な製剤が形成されるように、抗原性または免疫原性を有する薬剤溶液に溶解してもよい。あるいは、抗原性または免疫原性を有する薬剤は微粒子であって、安定で、滅菌した、注射可能な製剤が形成されるように、賦形剤溶液に溶解してもよい。本発明の免疫原性組成物の性能を向上させるためには、抗原性または免疫原性を有する薬剤は、組成物全体に均一に分散されるべきである。
1つの実施形態では、賦形剤および抗原性または免疫原性を有する薬剤は、被験体に投与する前に混合される。あるいは、賦形剤および抗原性または免疫原性を有する薬剤は、送達装置の中で投与中に混合できる。
本発明の免疫原性組成物に用いられる、抗原性または免疫原性を有する薬剤の量は、用いられる抗原性または免疫原性を有する薬剤および特定の賦形剤の化学的性質および効能によって、変化させてもよい。一般に、本発明の組成物中の抗原性または免疫原性を有する薬剤の開始時の濃度は、例えば筋肉注射である従来の投与経路を用いて、望ましい免疫応答の誘発に従来用いられる量である。次に、抗原性または免疫原性を有する薬剤の濃度は、例えば希釈剤を用いた希釈によって、本発明の皮内ワクチン製剤の中で調製され、公知の従来技術および本明細書に記載の標準的方法を用いて評価したときに、防御効果のある免疫応答が得られるようにする。
本発明の免疫原性組成物に用いられる賦形剤の量は、用いられる賦形剤および特異的な抗原性または免疫原性を有する薬剤の化学的性質によって、変化させてもよい。賦形剤の好ましい濃度のいくつかが、上記5.1.1節に記載されており、一般的に、数多くの抗原性または免疫原性を有する薬剤と共に、効果的に用いることができる。しかし、通常の当業者は、個々の賦形剤および抗原性または免疫原性を有する薬剤に依存して、従来技術で知られる方法はもちろんのこと、抗原性または免疫原性を有する薬剤の有効量決定のための上記に記載された方法と実質的に同一の方法を用いて、賦形剤の量を調整してもよいことを理解するであろう。
本発明の免疫原性組成物は、ユニット剤型(unit dosage forms)として調製することができる。バイアル毎のユニット用量は、0.1mLから1mL、好ましくは0.1から0.5mLの製剤を含んでもよい。ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物のユニット剤型は、50μLから100μL、150μLから200μL、または250μLから500μLの製剤を含んでもよい。これらの調製物は、必要なら各バイアルに滅菌希釈剤を添加することによって望ましい濃度に調整できる。本発明の免疫原性組成物は、望ましい免疫応答の誘発に一層効果的であり、したがって、皮内へ送達する総容量は、従来用いられる量よりも少なくてもよい。
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物の成分(例えば抗原性または免疫原性を有する薬剤や賦形剤)は、別々に、または共に混合したユニット剤型として供給され、例えば凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物を、活性物質(例えば抗原性または免疫原性を有する薬剤)の量を表示したアンプルや小袋などの密封シール容器に入れて供給される。他の実施形態では、滅菌希釈剤のアンプルを、投与前に成分を混合してもよいように提供できる。具体的な実施形態では、賦形剤を、投与直前に抗原性または免疫原性を有する薬剤と混合してもよい。もう1つの具体的な実施形態では、賦形剤を、投与中に皮内送達装置の中で、抗原性または免疫原性を有する薬剤と混合してもよい。
また、本発明は、成分量を表示したアンプルや小袋などの密封シール容器に包装した免疫原性組成物をも提供する。免疫原性組成物は、1つの実施形態では液体として、もう1つの実施形態では密封シール容器に入れた、凍結乾燥滅菌粉末または水不含濃縮物として供給され、例えば、水または生理食塩水で再構成して、被験体に投与するための適切な濃度にすることができる。他の実施形態では、免疫原性組成物は、成分の量および濃度を表示した密封シール容器に入れて、液体剤型で供給される。本発明の免疫原性組成物は、安定で、滅菌された注射可能な製剤が得られる方法のいずれによって調製してもよい。
本発明の免疫原性組成物には、抗原性または免疫原性を有する薬剤を被験体の皮膚の皮内コンパートメントへと皮内送達するための特別の有用性がある。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、参照によりその全体を本明細書に組み込む、1999年10月14日出願の特許文献2、2000年6月29日出願の特許文献3、2001年6月29日出願の特許文献4、2001年12月28日出願の特許文献5、2001年12月28日出願の特許文献6、または2001年4月18日公開の特許文献7、2002年1月10日公開の特許文献8、および2002年1月10日公開の特許文献9に開示された皮内装置および方法のいずれを用いても投与される。
本発明の免疫原性組成物は、被験体の皮膚の皮内スペースに侵入するが貫通することはないように、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに投与される。免疫原性組成物は、好ましくは皮内スペースの1.0から3.0mmの深度に、最も好ましくは1.0から2.0mmの深度に投与される。皮内送達用の本発明の免疫原性組成物は、例えばワクチン製剤を筋肉注射する従来の投与方式に比べ、無痛かつより侵襲の少ない投与方式を提供し、したがって、例えば被験体の協力という観点から、より好都合である。
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、例えば凍結乾燥粉末から再構成された後12時間以内に、好ましくは6時間以内に、5時間以内に、3時間以内に、または1時間以内に投与される。好ましい実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、被験体に皮内投与するために、皮内投与の直前に調製、すなわち抗原性または免疫原性を有する薬剤は、賦形剤と混合される。
本発明の免疫原性組成物には、本発明の方法によって投与するときに、短期および/または長期の毒性がほとんどないかまたは全くない。ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物には、皮内に投与したときに、注射部位に望ましくない反応がある。例えば皮膚炎症、腫脹、発赤、壊死、皮膚過敏などの反応である。これらの具体的な実施形態では、既に用いられている賦形剤以外の1つまたは複数の賦形剤を、本発明の免疫原性組成物に用いるが、これは、注射部位での望ましくない反応を除去または軽減する。他の実施形態では、本発明の免疫原性組成物には、皮内投与されたときに、注射部位での望ましくない反応がない。
5.2.2 免疫原性を有する表皮用組成物の調製
本発明の免疫原性を有する表皮用組成物は、先行技術で知られ、参照によりその全体を本明細書に組み込む、それぞれ2001年10月29日出願の特許文献11、2001年11月27日出願の特許文献12、および2000年5月22日出願の特許文献13、2002年10月29日出願の特許文献14に開示された、安定で、滅菌された製剤が得られるいずれの方法で調製してもよい。組成物はとりわけ乾燥粉末、ゲル、溶液、懸濁液、およびクリームの形態で供給できる。
免疫原性を有する表皮用組成物は、薬学的に許容されるいずれの形態で皮膚の皮内コンパートメントの中に供給してもよい。1つの実施形態では、免疫原性を有する表皮用組成物を、皮膚に塗布し、次に、皮膚および組成物の上を、研磨装置で相互に移動または擦過させる。望ましい結果を得るために、最小限の擦過量で使用することが好ましい。選択された組成物のための適切な擦過量を決定することは、従来技術の範囲内である。もう1つの実施形態では、免疫原性組成物は、送達装置を適用する前に、研磨面に乾燥形態で塗布してもよい。この実施形態では、再構成用の液体を送達部位の皮膚に塗布し、再構成用の液体部位の皮膚に、製剤をコートした研磨装置をあてがう。次にこれを、免疫原性組成物が皮膚表面上にある再構成用の液体の中に溶解して研磨と同時に送達されるように、皮膚上で相互に移動または研磨をする。あるいは、再構成用の液体は、研磨装置の中に含ませ、研磨するために装置を皮膚にあてがっている際に、免疫原性組成物を溶解するために放出させてもよい。ある種のワクチン製剤も、ゲル形態で研磨装置にコートしてもよいことが見いだされている。
5.3 免疫原性組成物の投与
5.3.1 皮内投与法
本発明は、本明細書に記載し実証した本発明の免疫原性組成物を、被験体の皮膚の皮内コンパートメントへ、好ましくは直接かつ選択的に標的とする皮内コンパートメントを標的として皮内送達する方法を包含する。一旦、免疫原性組成物を、上記5.2節に記載した方法によって調製したならば、一般に、接種物は皮内送達のための例えばシリンジである注射装置に移し入れられる。好ましくは、接種物は、調製後1時間以内に被験体の皮膚の皮内コンパートメントに投与される。本発明の免疫原性組成物は、参照によりその全体を本明細書に組み込む、1999年10月14日出願の特許文献2、2000年6月29日出願の特許文献3、2001年6月29日出願の特許文献4、2001年12月28日出願の特許文献5、2001年12月28日出願の特許文献6、または、2001年4月18日公開の特許文献7、2002年1月10日公開の特許文献8、および2002年1月10日公開の特許文献9に開示された皮内装置および方法のいずれを用いても投与される。典型的な装置を、図12から14に示す。
具体的な実施形態では、本発明は、図12から14に開示される薬物送達装置を包含する。図12から14は、図12から14に示される、皮内注射をすることを目的とした本発明の方法を実施するために用いることができる薬物送達装置の例を示す。図12から14に示された装置10は、シリンジ外筒60に装着することができる針組立体20を含む。他の形態の送達装置には、参照によりその全体を本明細書に組み込む特許文献15、特許文献16、および特許文献17に開示されたタイプのペン(pen)を含めて用いてもよい。針組立体20には、針カニューレ24を補助するハブ22が含まれる。リミッター(limiter)26は、図13に示される最良のもののように、リミッター26が針カニューレ24を広く包み込むことができるように、リミッター26には少なくともハブ22の一部が差し込まれる。
ハブ22の一端30は、シリンジのレシーバ32に固定可能である。本発明によって皮内送達される物質を含むために、設計した針組立体と共に、さまざまな型のシリンジを用いることができ、いくつかの例を下記に示す。ハブ22の反対端は、好ましくはリミッター26の内側の接合部表面36にはめ込まれる延長部34を含む。好ましくは、複数のリブ38がリミッター26上に提供されることによって、全体的完全性を与え、針組立体20の操作が容易になる。部品の大きさを適切に設計することによって、針24の前端すなわち針24の先端40と、リミッター26上の皮膚接触面42との間の距離「d」をしっかりと制御できる。距離「d」は、好ましくはおよそ0.5mmからおよそ3.0mmの範囲にあり、最も好ましくは約1.5mm±0.2mmから0.3mmである。針カニューレ24の前端40が、皮膚接触面42を超えて範囲内の距離だけ伸長するとき、針は動物の典型的真皮層からさらに深く侵入し得ないため、皮内注射が確実となる。一般に皮膚外層である表皮は、厚さが50から200μmであり、皮膚の内層で厚い層である真皮は、厚さが1.5から3.5mmである。真皮層の下は、順に皮下組織(下皮層と呼ばれることもある)および筋肉組織である。
図13に最適に示されるように、リミッター26には、針カニューレ24の前端40が中を突き通る開口部44が含まれる。開口部44と前端40との寸法の関係は、特定状況の必要に応じて調整することができる。明示された実施形態では、皮膚接触面42は平面的または平坦かつ連続して、針組立体20を動物の皮膚に対して安定に設置することを提供する。具体的には示されていないが、一般的に平面的な皮膚接触面42に、リブ形の凸部または溝形の凹部のどちらか一方が含まれることは、針先端40に対する安定性の向上あるいは針保護体(needle shield)の装着を容易にするためには好都合であろう。さらに、リミッター26の側部に沿うリブ38は、皮膚接触面42の表面を超えて伸長してもよい。
皮膚接触面42の形や輪郭に関わらず、好ましい実施形態には、被験体の皮膚に対してインジェクターの安定性を増すのに十分なほどに、おおむね平面的で平坦な皮膚接触表面領域が含まれる。最も好ましい配列では、皮膚接触面42によって、インジェクターを皮膚表面に対して、おおむね垂直方向に保持することが容易となり、皮膚に注射する最中の加圧が容易となる。したがって好ましい実施形態では、リミッターの外形寸法または外径は少なくとも5mmである。主要な外形寸法は、適用上および包装上の制限によるものであり、使い易い直径は15mm以下であり、さらに好ましくは11〜12mmである。
図12および13は、ハブ22がリミッター26と分離した、2部品の組立体を示すにもかかわらず、本発明に関連して使用するための装置は、そのような配置に限定されないことに留意することは重要である。ハブ22およびリミッター26をプラスチック素材の単一部品から一体化して成形することは、図12および13に示される例の代案である。さらに、組立に際して、針組立体20を単一部品ユニットとできるように、図12に示される位置のリミッター26にハブ22を接着または別の方法で固定することができる。
ハブ22およびリミッター26を有すると、皮内針の製造を実用的なものとする上で、有利となる。好ましい針の太さは、小径の皮下注射針であり、通常30ゲージまたは31ゲージとして知られる。そのように径が小さい針は、動物の真皮層を超えて必要以上に侵入することを回避するために十分なだけ針を短くしようという課題を提起する。リミッター26およびハブ22によって、全長が、針の有効長よりはるかに長い針24の利用が容易となり、この針は注射の際に各組織に侵入する。本明細書によって設計された針組立体を用いることで、製造能力を高めることができる。製造および組立の過程で、より長い針を取り扱うことができる一方で、皮内注射を達成する目的のために、短針を利用する利点も得ることができるからである。
図13は、シリンジ60などの薬剤容器に固定されて装置10を形成する針組立体20を示す。おおむね円筒状のシリンジ本体62は、従来技術で知られるプラスチックまたはガラスで製造できる。シリンジ本体62は、注射の間に投与されるべき物質を入れるための貯蔵部(reservoir)64を提供する。プランジャ棒66には、従来技術で知られるように、一方の端に手動のフランジ68があり反対側の端にストッパー70がある。プランジャ棒66を貯蔵部64の中を通して手動で動かすことによって、貯蔵部64の中の物質が、針の端40から、所望のように押し出される。
ハブ22は、公知のさまざまな方法で、シリンジ本体62に固定することができる。一例では、ハブ22の内側と、シリンジ本体62の出口部分の外側72との間に締りばめ(interference fit)が提供される。別の実施例では、従来のルアーフィット配置によって、ハブ22をシリンジ60の一端に固定することが提供される。図14から理解できるように、そのように設計された針組立体は、従来の多様な型のシリンジに容易に適用することができる。
本発明によって、特別にかつ選択的に、好ましくは直接的に皮内スペースを標的とすることで、本明細書に記載された免疫原性組成物の臨床的有用性および治療上の有効性が改良される。本発明の免疫原性組成物は、皮内スペースにボーラス法(bolus)または点滴によって送達してもよい。本発明の組成物の免疫原性を、本発明の賦形剤によって高めることは別に、皮内コンパートメントを標的として選択的に標的とすることによって、本発明の免疫原性組成物を送達することは、皮膚内に存在する免疫細胞、例えば抗原提示細胞に対して免疫原性または抗原性を有する薬剤の利用能を改善し、免疫原性組成物に対する抗原特異的な免疫応答を達成する。好ましくは、本発明の方法によって、皮内経路を経由して投与される免疫原性組成物の用量を少なくすることを可能にする。
皮内投与方法には、正確に皮内スペースを標的とするために、極微針を基本とする注射または注入のシステムあるいは他のいずれかの方法を含む。皮内投与方法には、極微小装置に基づいた注射方法だけではなく、液体や粉末の皮内スペースへの無針(needless or needle−free)でのバリスティック・インジェクション(ballistic injection)、マンツー型(Mantoux−type)皮内注射、極微小装置を介した強化イオノトフォレーシス(enhanced ionotophoresis)、および液体、固形物、または他の投与形態での皮膚内直接埋め込みなどの他の送達方法も包含する。
本発明の免疫原性組成物は、マンツー型皮内注射を用いて被験体の皮膚の皮内コンパートメントに投与してもよい(例えば、参照により本明細書に組み込む非特許文献66参照)。具体的には、免疫原性組成物は、下記の具体的な方法を用いて、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達してもよい。具体的な実施形態では、上記の5.3節に開示した方法によって調製した本発明の免疫原性組成物を、例えば、20ゲージの針を装着したラテックスを含まないシリンジに吸引し、シリンジ装填後に皮内投与用の30ゲージの針に交換する。被験体、例えば、マウスの皮膚に、針の斜端を上向きにして、可能な最も浅い角度で近づけ、皮膚はきつく引き寄せる。次に注射量を5〜10秒の間でゆっくりと押し込み、典型的な「水疱」を形成させ、その後針をゆっくりと引き抜く。好ましくは、1カ所のみの注射位置を用いる。さらに好ましくは、注射量は100μL以下である。これは、注射量が多いと、周囲の組織スペース、例えば皮下スペースへの漏出量が増加するという事実があることが理由の一つである。
本発明は、従来の注射針、カテーテル、またはよく知られた型の極微小針で、単一の針または多数の配列針を採用した使用を包含する。好ましい実施形態では、配列針が、より大容量を皮内コンパートメントに送達するために用いられる。例えば、より大量の注射容量、例えば500μLを同時に数カ所に分割することができ、これによって、皮内コンパートメントを超えることなく、より多量の導入を許容する。本明細書で使用される用語「針(単数、needle)」および「針(複数、needles)」は、針類似構造物すべての包含を意図したものである。本明細書で使用される用語「極微小針(microneedles)」は、そのような構造物が事実上円筒型であるとき、約30ゲージより小さく、一般には約31から50ゲージの構造物の包含を意図したものである。したがって、極微小針という用語が包含する非円筒型の構造物には、直径に類似するものがあり、角錐、長方形、八角形、くさび形、および他の幾何学上の形を含む。
本発明の免疫原性組成物の皮内送達には、バリスティック液体注射装置(ballistic fluid injection devices)、粉体ジェット送達装置、圧電、電動、電磁補助送達装置、ガス補助送達装置を用いてもよく、これは皮膚に直接侵入し、本発明のワクチン製剤を、表皮スペース内の標的部位に直接送達する。
皮内スペースを標的として、本発明の免疫原性組成物を送達する実際の方法は、皮内スペース内の所望の標的深度へ、そこを貫通せずに被験体の皮膚に侵入する限り、決定的なものではない。実際の侵入最適深度は、被験体の皮膚厚によって異なる。大半の場合、皮膚の0.5〜2mmの深度に侵入する。ある特定の皮内装置や送達方法とは無関係に、皮内送達では、本発明の免疫原性組成物を、好ましくは少なくとも0.3mm、さらに好ましくは少なくとも0.5mmから2.0mm以内まで、さらに好ましくは1.7mmまでの深さを標的とする。
ある場合には、免疫原性組成物を、角質層直下で、表皮および真皮上部を含む標的深度、例えば約0.025mmから約2.5mmの標的深さに送達する。皮膚の中の特定細胞を標的とするためには、好ましい標的深度は、標的とした特定細胞と特定被験体の皮膚厚とによって異なる。例えば、ヒト皮膚の表皮スペースにあるランゲルハンス細胞を標的とするためには、少なくとも一部は表皮性組織を包含して、ヒトでは具体的には約0.0025mmから約0.2mmの深さ範囲を包含して送達される必要がある。
免疫原性組成物が全身循環を必要とする場合には、好ましい標的深さは、少なくとも約0.4mm、より好ましくは少なくとも約0.5mmであって、約2.5mm以下まで、より好ましくは2.0mm以下まで、最も好ましくは1.7mm以下までとの間である。
本発明の実施に有用な皮内投与方法は、被験体、好ましくは動物、最も好ましくはヒトに対して、免疫原性組成物をボーラス法または点滴によって送達することのいずれも含む。ボーラス用量は、比較的短時間で、一般には約10分未満で単一容量ユニットが送達される単一用量である。注入投与(infusion administration)は、定速または可変の選択した速度で、比較的より長い時間で、一般的には約10分を超えて液体を投与することを含む。
免疫原性組成物の皮内スペースへの皮内送達は、ワクチン製剤を送達するために、加圧なしで、または他の駆動方法を適用することなく受動的に、および/または加圧して、または他の駆動方法を適用して能動的に行ってよい。好ましい圧力発生手段の例には、ポンプ、シリンジ、高分子弾性体の膜、ガス圧、圧電、電動、電磁ポンプ、またはBellevilleのバネもしくはワッシャー、あるいはその組合せを含む。所望により、本発明の免疫原性組成物の送達速度は、圧発生手段によって変化制御してもよい。
本発明によって送達または投与する免疫原性組成物は、薬学的に許容される希釈剤または溶剤、懸濁液、ゲル;超微粒子またはナノ微粒子などの懸濁または分散した微粒子中の前記組成物溶液を含み、in situに形成される前記組成物のベヒクルももちろん含む。
本発明は、本発明の免疫原性組成物が標的とする送達深さを変化させることを包含する。免疫原性組成物が標的とする送達深さは、開業医が手動で、または所望の深さに到達したことを示す表示器による補助の下に、またはその補助なしで、制御してもよい。しかし、本発明に従って用いられる装置は、好ましくは、所望の皮内スペース内の深さでの皮膚侵入を制御する構造上の手段を有する。送達標的深さは、参照によりその全体を本明細書に組み込む、1999年10月14日出願の特許文献2、2000年6月29日出願の特許文献3、2001年6月29日出願の特許文献4、2001年12月28日出願の特許文献5、2001年12月28日出願の特許文献6、または、2001年4月18日公開の特許文献7、2002年1月10日公開の特許文献8、および2002年1月10日公開の特許文献9に記載のいずれの方法を用いて変化させてもよい。
本発明の免疫原性組成物の投与量は、該組成物中に含まれる抗原性または、免疫原性を有する薬剤によって決まる。免疫原性を有する該組成物の投与量は、従来技術で知られた標準的な免疫学的方法を用いて、例えば、まず予防的または治療的な免疫応答を引き起こすための有効用量を同定すること(例えば抗原特異的免疫グロブリンの血清力価を測定すること)によって、対照製剤(例えば抗原性および免疫原性を有する薬剤からなるのみで、本明細書に開示された賦形剤を含まない薬剤)と比較することで決定できる。
好ましくは有効投与量は、ヒトでの使用に先だって動物モデルで決定される。さらに好ましくは、最適投与量は、その皮膚厚がヒトの皮膚に似た動物で、例えばブタで決定される。
また、本発明の免疫原性組成物を、ある投与計画で投与してもよく、例えば初回に免疫原性組成物を投与し、続いて追加免疫投与(booster administration)する投与計画で投与してもよい。一定の例では、免疫原性組成物の2回目の投与は、初回投与後の2週から1年、好ましくは1カ月から6カ月の間の任意の時期に投与される。さらに、3回目の用量は、2回目の用量投与後の3カ月から2年またはさらに長期の後に、好ましくは初回投与後の4から6カ月後、あるいは6カ月から1年後に投与してもよい。一定の例では、追加抗原免疫(booster immunization)は必要ではない。
5.3.2 表皮投与
表皮投与方法は、表皮コンパートメントを正確に標的とするために、参照によりその全体を本明細書に組み込む、2001年10月29日出願の特許文献11、2001年11月27日出願の特許文献12、2000年5月22日出願の特許文献13、および2002年10月29日出願の特許文献14それぞれに開示された従来技術で知られた方法および装置のいずれをも含む。本発明は、表皮スペースを正確に標的とするための微小研磨装置を包含する。これらの装置は、中空または中空ではない微小突出部を有してもよい。微小突出部は、全長約500μmまでを有することができる。最適な微小突出部は、全長約50から500ミクロンを有する。好ましくは微小突出部は、全長50から300ミクロンまで、さらに好ましくは全長150から250ミクロンの範囲で、最も好ましくは全長180から220ミクロンを有することができる。
本発明の方法で使用してもよい微小研磨装置は、好ましくは、図15から20に例示した装置などの皮膚を研磨することができる装置である。好ましい実施形態では、本装置は皮膚を研磨することができ、それによって角質層に侵入するが、角質層を貫通することはない。
本明細書で使用されるように、「侵入(penetrating)」は、角質層に入るものの、角質層を完全に貫通して隣接層にはいることはないことを指す。これは、角質層に、完全に侵入して皮膚の下層との接触面を曝すことができないというものではない。一方、貫通(piercing)は、角質層を完全に貫通して角質層の下の隣接層に入ることを指す。本明細書で使用されるように、用語「研磨(abrade)」は、少なくとも角質層の一部を除去して、皮膚の過剰な炎症を引き起こすことも感染性生物に対する皮膚の障壁を弱めることもなく、皮膚の透過性を上昇させることを指す。本明細書で使用されるように用語「擦過」は、例えば、削ることや擦ることによって皮膚の外層を破壊し、角質層の破壊部分が得られることを指す。これは、角質層を通る別々の穴を生じさせて穴の間には非破壊の角質層の領域がある「穴を穿つ(puncturing)」こととは対照的である。
好ましくは、本発明の方法に従った表皮送達のために使用される装置は、角質層に侵入するが貫通しない。本発明の方法を使用して投与される組成物は、研磨の前に、研磨と並行して、または研磨後に、皮膚に塗布してよい。
具体的な実施形態では、本発明は、患者の皮膚に免疫原性組成物を送達するための方法であって、患者の皮膚の外層または微小擦過器2(図15B参照)を製剤でコートするステップ、および微小擦過器2を患者の皮膚上で動かして、製剤が患者の生きた表皮内に入ることができるように、十分な溝を残した擦過を提供するステップを含む方法を包含する。微小擦過器2の構造設計に起因するが、微小擦過器2の先端によって、まず患者の皮膚が引き伸ばされ、次に微小擦過器2の上部表面での擦過により外側の防御製剤が患者の体内に入るようになる。皮膚の外側の防御層を初回擦過した後に、微小擦過器2の後縁(trailing)および先端は、研磨された部分の表面をこすって製剤を皮膚の擦過部分に作用させ、これによって製剤の薬効作用が改善できる。図15B、16A、および16Bに示すように、微小擦過器2は、研磨表面5をその上に装着できる台座4を含む。あるいは、研磨表面は台座と一体化し、2構成要素からなる単一部品に加工してもよい。好ましくは、台座4は、固体で成形した部品である。1つの実施形態では、台座4は、上方に湾曲して最上部で先端を切り取ったマッシュルーム様の頭頂部4bと共に構成される。台座4の最上部は、おおむね平坦で、その上に装着するかまたはそれと一体化した研磨面5がある。あるいは、先端を切り取った最上部は、研磨表面5を受けるためのくぼみを有してもよい。実施形態すべてで、研磨表面5には、先端を切り取った最上部の上方に伸びた微小突出部を配列した台が含まれる。微小擦過器の他の実施形態では、ハンドル、台座、および研磨表面は、相互に一体化して3構成要素からなる単一の装置として加工してもよい。微小擦過器2は、研磨表面5が被験体の外側防御皮膚または角質層を開くことができるように十分な圧力をかけて、被験体の皮膚上を移動させることによって、微小擦過器2を被験体に適用する。台座に適用した内向きの圧力によって、微小擦過器2が被験体の皮膚に押しつけられる。したがって、マッシュルーム様の頭頂部4bの傾度は、微小擦過器2の使用中に、塗布した物質の、表面4c上への流れ出しの防御に十分であることが好ましい。下記に記載するように、研磨表面5には、微小突出部の配列を含む。
ハンドル6が、台座4に装着または台座4と一体化されている。図16Aに示すように、ハンドルの上端6aは、台座4の円周側壁の内側4aに、スナップ式か摩擦式かのどちらか一方で取り付けてもよい。あるいは、図15Aおよび16Aに示されるように、ハンドル6は、台座4の下方側4aに接着(例えばエポキシ)してもよい。あるいは、ハンドルと台座は2つの構成要素からなる単一部分として、合わせて加工(例えば射出成形)してもよい。ハンドルは、台座より直径が小さくてもよく、台座と同様の直径であってもよい。台座4の下方側4cは、マッシュルーム様頭頂部4bと同一平面上にあっても、それを超えて突き出していてもよい。ハンドル6の下端6bは、ハンドル6のシャフト6cより幅広くてもよく、シャフトと同様の直径でもよい。下端6bは、薬物を投与し微小擦過器2を操作している使用者のための親指置き(thumb rest)として役立つ窪み6dを含んでもよい。さらに、突出部8が、ハンドル6の外側に作られ、使用者が患者の皮膚に向かって、または皮膚上全域に動かすときに、ハンドルをしっかりと握る補助となる。
図16B中の図15Bの断面図に示されるように、下端6bは円筒状であってもよい。微小擦過器2は、図16Aに示すように透明な素材で作ってもよい。窪み6dは、微小擦過器2の使用者が同様に握るのを支援するために、円筒状の下端6bの両側に配置される。それは、微小擦過器2の移動が、手または指によって提供されるということである。台座4はもちろんのこと、微小擦過器のハンドル6も、好ましくはプラスチックまたは同様の材料から型に入れて作られる。微小擦過器2は、1人の患者に使用した後に、微小擦過器および研磨表面全体を廃棄できるように、廉価に製造するのが好ましい。
研磨表面5は、患者の皮膚全域で微小擦過器2を移動させたとき、得られた擦過部が角質層に侵入できるようにデザインする。研磨表面5は、患者の生きた表皮への送達が望まれる製剤でコートしてもよい。
望まれる擦過度を達成するために、微小擦過器2は患者皮膚全体を少なくとも一度移動させるべきである。患者の皮膚は、互い違いの複数の方向に研磨されてもよい。本発明による微小擦過器の構造設計によって、製剤はより効率的に吸収され、それによって、患者の皮膚に塗布するか、または研磨表面5をコートする製剤を少なくすることが可能となる。研磨表面5は、患者へと送達することが望まれる製剤でコートしてもよい。1つの実施形態では、製剤は、研磨表面5上に置いた粉剤であってもよい。別の実施形態では、送達すべき製剤は、患者の皮膚上に微小擦過器2を適用して移動させる前に、患者の皮膚上に直接塗布してもよい。
図17に言及すると、本発明の微小研磨装置10は、研磨表面支持体の底部から伸びている多数の微小突出部14を有する、実質的に平坦な本体、または研磨表面支持体12を含む。該支持体には、通常、表面を微小研磨装置の台座に装着させるための十分な厚みがあり、それによって図15B、16A、および16Bに示されるように装置の操作が容易となる。あるいは、異なったハンドルまたは把持装置が、研磨表面支持体12の最上端表面に、装着または一体化できる。研磨表面支持体12の寸法は、微小突出部の全長、所与の範囲での微小突出部の数、および患者に投与される製剤の量によって変化させることができる。一般に、研磨表面支持体12は、表面範囲が約1から4cm2である。好ましい実施形態では、研磨表面支持体12は、表面範囲が約1cm2である。
図17、18A、18B、および19に示すように、微小突出部14は、研磨表面支持体12の表面から突出し、研磨表面支持体12の平面に対して実質的に垂直である。図示した実施形態では、微小突出部は多数の行列に配置され、好ましくは一定の距離を保って配置される。微小突出部14は、通常は側面16が先端18に向かって伸びたピラミッド形である。図示されるように、側面16は、断面を見るとおおむね窪んだ外形を有し、研磨表面支持体12から先端18に向かって伸びる曲面を形成する。図示した実施形態では、微小突出部には、実質的に形と寸法とが等しい4つの側面16がある。図18Bおよび19に示すように、微小突出部14の各側面16は、隣り合った側面と接した側面縁線が向かい合わせにあり、研磨表面支持体12から外側に突き出ている擦過縁線22を形成する。擦過縁線22は、通常、側面16の形状に相応するおおむね三角形または台形をした擦過表面を画定する。別の実施形態では、微小突出部14は、より少数または多数の側面によって形成できる。
微小突出部14は、好ましくは、鈍先端18で終了する。先端18は、通常、実質的に平坦で支持体14に並行である。先端が平坦なとき、微小突出部の全長は皮膚に侵入せず、したがって微小突出部の全長は、前記微小突出部が前記皮膚に侵入する全深さよりも長い。先端18は、好ましくは、明確な鋭い縁線20を形成し、該縁線で側面16と交わる。縁線20は、研磨表面支持体12に対して実質的に平行に伸び、さらに擦過縁線を画定する。別の実施形態では、縁線20は、側面16から先端18へと滑らかに移行するように心持ち丸くすることができる。好ましくは、微小突出部は、形が円錐台または角錐台である。
微小研磨装置10および微小突出部は、投与物質と反応しないプラスチック素材から作ることができる。好適なプラスチック素材の非包括的リストには、従来技術で知られる、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、およびポリカーボネートが含まれる。あるいは、微小突出部は、ステンレス・スチール、タングステン・スチール、ニッケル合金、モリブデン、クロム、コバルト、チタン、およびそれらからの合金等、またはシリコン、セラミック、およびガラス・ポリマーなどの他の素材から作ることができる。金属製微小突出部は、従来技術で知られる、シリコンウェハーのフォトリトグラフ・エッチングまたはダイアモンド・チップを取り付けた擦過器を使用したマイクロマシニング技術(micromachining)と同様のさまざまな技術を用いて製造することができる。微小突出部は、従来技術で知られる標準的な技術を用いたシリコンウェハーのフォトリトグラフ・エッチングによっても製造することができる。微小突出部は、例えば、参照により本明細書に組み込む、2002年7月12日出願の特許文献18に記載されるように、射出成形過程を通してプラスチックで製造することができる。
微小突出部の全長および厚さは、投与される特定物質と装置の適用部位における角質層の厚さとに基づいて選択される。好ましくは、微小突出部は、角質層に侵入するが、実質的には角質層を貫通することも突き抜けることもない。微小突出部は、全長約500ミクロンまでの全長を有することができる。好適な微小突出部は、全長約50から500ミクロンである。好ましくは、微小突出部は、全長約50から約300ミクロンであって、さらに好ましくは約150から250μmの範囲にあり、最も好ましくは180から220ミクロンである。図示した実施形態の微小突出部は、おおむね錐体形であり、装置面に対して垂直である。これらの形は、擦過が望む深さで行われることを保証する上で特に有利である。好ましい実施形態では、微小突出部は中空でない部材である。別の実施形態では、微小突出部は中空であることができる。
図16および18に示すように、微小突出部は、好ましくは均等に離れて行列状に配置され、擦過中に、皮膚に接触して角質層に侵入するための配列を形成する。微小突出部の間の配置は、皮膚表面上または皮膚組織内のいずれかに投与される物質によって変化させることができる。一般に、微小突出部の列は、1ミリメートル(mm)毎に約2から約10個の密度を提供するように配置される。行または列は通常、1mm2毎に約4から約100個の微小突出部の密度を提供するような配列中の微小突出部の配置と実質的に同等の距離を離して配置される。別の実施形態では、微小突出部は、円形に並べてもよい。さらに別の実施形態では、微小突出部は、ランダムに並べてもよい。行および列に並べたとき、微小突出部の中心間の距離は、好ましくは微小突出部の全長の少なくとも2倍である。1つの好ましい実施形態では、微小突出部の中心間の距離は、全長110ミクロンの微小突出部の少なくとも2倍である。微小突出部の全長の3、4、5倍およびさらに大きい倍数までのより幅広い配置も含まれる。さらに、上記のように、微小突出部の立体配置は、微小突出部の高さを、それらの突出部が皮膚に侵入する深さより高くできるようにすることができる。三角錐台または角錐台をした微小突出部の平坦な上部表面は、幅が通常10から100、好ましくは30から70、最も好ましくは35から50ミクロンである。
皮膚上の送達部位を調製する方法では、微小擦過器を患者の皮膚28に対して所望の場所に置く。微小研磨器を皮膚に対して穏やかに押しつけ、次に皮膚の上または全域にわたって移動させる。微小擦過器の1回の動きの全長は、所望の送達範囲によって規定される所望の送達部位の大きさによって変化させることができる。送達部位の寸法は、意図した結果を達成するために選択され、送達される物質およびその物質の形態によって変化させることができる。例えば、送達部位は、発疹や皮膚病を治療するために広い範囲を蔽うことができる。通常、微小擦過器を2から15センチメートル(cm)移動させる。本発明のある実施形態では、微小擦過器を動かして、約4cm2から約300cm2の表面積を有する研磨部位を生じさせる。
次に微小研磨装置を皮膚から持ち上げて研磨範囲を露出し、研磨範囲に、適切な送達装置、貼付剤または局所製剤を適用してもよい。あるいは、投与物質を擦過の前または同時のどちらかで皮膚表面に塗布してもよい。
角質層の擦過の程度は、移動中に適用される圧力および微小擦過器の繰り返し数によって決まる。1つの実施形態では、微小擦過器を1回目の通過の後に皮膚から持ち上げて、実質的に同じ場所と位置である開始位置に戻し置く。次に微小擦過器は同一方向に同一距離で2回目の移動をさせる。別の実施形態では、1回目の通過の後に、微小擦過器を皮膚から持ち上げずに、同じ部位の全域を互い違いの方向に繰り返し移動させる。通常微小擦過器を2回またはそれ以上通過させる。
さらなる実施形態では、望ましい物質の送達を高めるために、好適な深さまでの角質層の研磨に十分な時間、微小擦過器を、格子状パターン、円形パターン、または他のパターンで、同一方向にのみ前後に動かすことができる。微小擦過器を皮膚28の全域で直線的に1方向に移動させることによって、組織の一部が除去されて、頂点27によって隔てられた溝26が、皮膚28に形成される。これは、図16に示すように微小突出部の各列に実質的に対応する。微小突出部の縁線20、22、および鈍先端18は、皮膚に単純に切る動作というよりむしろ、角質層の一部を除去して溝(groove or furrow)を形成するための、擦過や研磨の動作を提供する。微小突出部14の鈍先端18の縁線20は、溝26の底部の組織の一部を剥離しかつ除去させ、開放状態にし、それによって物質が溝に入って身体に吸収される。好ましくは、微小突出部14は、角質層に侵入し、かつ研磨範囲に塗布した物質を吸収させて患者に疼痛や不必要な不快感を引き起こすことがない、十分な深さを持った溝26を形成するために十分な全長がある。好ましくは、溝26は、角質層を貫通はしないが、角質層を通ることができる。角錐形をした微小突出部14の縁線22は、研磨表面支持体12から先端18へと伸びた、擦過縁線を形成する。研磨表面支持体12に隣接する縁線22は、溝26の間の皮膚が形成する頂点27を擦過かつ研磨する微小突出部の間にある擦過表面を形成する。溝の間に形成された頂点27は、通常少々研磨されている。
従来技術で知られる、擦過によって角質層を破壊するための任意の装置を、本発明の方法に用いることができる。これには、例えば、微小短針または微小突出部が配列した微小電気機械(MEMS)装置、サンドペーパー様の装置、擦過器および類似装置が含まれる。それによって、本発明の皮内ワクチン製剤を皮内スペースを標的として送達する実際の方法は、それが被験体の皮膚の所望の標的深さに侵入する限り、決定的ではない。最初に論じた微小擦過器は、本製剤を0.0から0.025mmの皮膚深さに、好ましくは角質層を超えない深さに貯留させる。
5.4 治療上の有効性の評価
本発明は、従来技術で知られる標準方法または本明細書に記載した標準方法のいずれかを用いて、本発明の免疫原性組成物の有効性を評価するための方法を包含する。本発明の免疫原性組成物の有効性を評価するためのアッセイは、in vitroに基づいたアッセイまたはin vivoに基づいたアッセイであってもよく、動物に基づいたアッセイを含む。ある実施形態では、本発明は、ある検体(例えば、本発明の免疫原性組成物を投与された被験体から得られた、血清または粘膜洗い液)における、抗原性および免疫原性を有する本発明の組成物である薬剤に対する体液性免疫応答を検出することおよび/または計測することを包含する。好ましくは、免疫原性を有する本発明の組成物の体液性免疫応答を、本発明の製剤の投与前または対照製剤(例えば抗原性および免疫原性を有する薬剤のみを含む製剤)を個々に投与した後に、同一の被験体から得られた対照検体と比較する。
本発明の方法は、皮膚コンパートメント(表皮および皮内のコンパートメントを含む)に、免疫原性組成物を送達するための、最適なパラメーターを決定することのできる基本原理およびガイドラインを提供する。該最適なパラメーターにおいて、従来の送達形態(筋肉内送達および皮下送達を含む)を用いて同一の製剤を送達したときに比較して、賦形剤がアジュバントとしての最適な性質を示し、かつ本発明の製剤の有効性が高められる。本発明は、本発明の製剤をスクリーニングして、アジュバント性を有するような皮内コンパートメントの最適深さに送達するための最適濃度範囲にする方法を提供し、以下の特性の1つまたは複数を結果として得た。ドレイズ・スコア法(標準的なドレイズ・スコア法による分析については下記の表を参照)などの可視化方法を用いて、皮膚反応を分析する従来の方式を用いて決定・評価した、皮膚炎症性を示さない最小量;従来技術で知られる標準法を用いて決定した溶血が見られない最小量、および;セロコンバージョンの亢進および/または抗体力価の上昇によって測定された免疫応答の亢進である。
ある実施形態では、本発明は、検体中にある、本発明の免疫原性組成物の抗原性または免疫原性を有する薬剤、に対する体液性免疫応答を検出することおよび/または計測することを包含し、該検体、たとえば血清は、本発明の免疫原性組成物を投与した被験体から得られたものである。本発明の免疫原性組成物の体液性免疫応答を、対照製剤を投与された同一の被験体から得られた対照検体と比較する。該対象薬剤は、たとえば、抗原性および免疫原性を有する薬剤をのみ含む製剤である。
体液性免疫応答を測定するためのアッセイは、従来技術で良く知られている(例えば、非特許文献67参照)。体液性免疫応答は、従来技術で知られる標準的方法を用いて検出および/または定量してもよく、該標準方法としては、ELISAアッセイを含むが、これに限定されるものではない。体液性免疫応答は、本発明の免疫原性組成物で治療された被験体の、血清中にある抗原性および免疫原性を有する薬剤を、特異的に認識する抗体の、治療されていない被験体の抗体量に対する相対量を、検出および/または定量することによって測定してもよい。ELISAアッセイは、本発明の組成物で治療した被験体から得られる検体中の総抗体量の定量のために用いることができる。他の実施形態では、従来技術で知られた方法を用いた、中和エピトープに対する、特異的抗体のアイソタイプおよび特異的抗体の濃度を決定するために、ELISAアッセイを用いてもよい。
ELISAに基づいたアッセイは、抗原を調製すること、その抗原で96ウェルのマイクロ・タイター・プレートをコートすること、抗原特異的抗体を含む検体と対照検体を添加すること、酵素(例えば西洋わさびペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)と結合した、被検検体および対照検体中の抗体に、特異的な検出抗体を加えること、一定時間インキュベーションすること、ならびに呈色基質で抗原の存在を検出することを含む。当業者は、検出されるシグナルを増強するための改良ができるパラメーターに関して、熟知しているであろうし、従来技術で知られたELISA法での他の改変ももちろん熟知しているであろう。ELISA法に関するさらなる論議は、例えば、非特許文献68を参照できる。
免疫原性組成物が、インフルエンザ抗原を含む場合には、インフルエンザ抗原に対する抗体反応を検出および/または定量するための従来技術で知られた方法は、いずれも本発明の方法に含まれる。インフルエンザ抗原に対する抗体反応を決定する例示的な方法には、以下を含んでもよい。すなわち、インフルエンザ抗原をマイクロタイタープレート(Nuncプレート)のコートに使用する。;プレートに本発明のインフルエンザワクチン製剤で治療した被験体の血清を添加する。;プレートに抗血清(二次抗体を含む)を添加して十分な時間インキュベーションし、複合体、すなわち血清中の抗体と抗血清との複合体を形成させる。次に複合体を、従来技術の標準法を用いて検出する。インフルエンザに特異的な抗体反応を測定するための典型的なアッセイは、参照によりその全体を本明細書に組み込む非特許文献69、非特許文献70、非特許文献71、非特許文献72、非特許文献73、非特許文献74、非特許文献75などを参照できる。
さらに、ワクチン製剤にインフルエンザ抗原が含まれるとき、赤血球凝集活性によって抗体量を検出および/または計量のための従来技術で知られた方法はいずれも、本発明に包含される。赤血球凝集抑制アッセイは、インフルエンザウイルスの赤血球凝集能と凝集を抑制する特異的HA抗体の能力とに基づいている。従来技術で知られる赤血球凝集抑制アッセイはいずれも、参照によりその全体を本明細書に組み込む非特許文献76、非特許文献77に開示されており、本発明の方法に包含される。
典型的な赤血球凝集抑制アッセイには、以下が含まれる。すなわち、本発明のインフルエンザワクチン製剤で治療した被験体の血清を、マイクロタイタープレートに添加する。;プレートに8HA単位のHI−抗原調製物を添加する。;プレートを穏やかに叩いて混合物を十分に混合して、4℃で約1時間インキュベートする。;赤血球懸濁液、例えば0.5%ニワトリ赤血球をマイクロタイタープレートに添加し、プレートを穏やかに叩いて内容物を十分に混合する。;プレートを、細胞対照がボタン状の正常な沈降(the button of normal settling)を示すまで4℃でさらにインキュベートする(対照はPBSを含むのみ)。好ましくは、血清検体をノイラミニダーゼや過ヨウ素酸カリウムなどの阻害剤で処理し、血清因子による非特異的凝集抑制を阻害する。HI価は、赤血球凝集を完全に阻止する最も高い希釈倍率と定義する。これは、プレートを傾けて、対照細胞と同じ速度で流れる細胞の涙型をした流れを観察することによって決定する。
本発明は、本発明の組成物の有効性を、細胞媒介免疫応答を測定することによって決定する方法を包含する。細胞媒介免疫応答を測定する方法は、当業者に知られており、本発明に包含される。ある実施形態では、T細胞の免疫応答は、被験体の免疫応答を計量して測定してもよく、例えば当業者に知られた通常の方法を用いてサイトカイン産生を測定することによって測定してもよく、該通常の方法としては、組織培養上清でのELISA、生体外またはin vitroでの培養期間の後の細胞について、フロー・サイトメトリー法に基づく細胞内サイトカイン染色を行うこと、およびサイトカイン・ビーズ・アレイ(cytokine bead array)によるフロー・サイトメトリーを基本とするアッセイをすることを含んでいるが、これに限定されるものではない。さらに別の実施形態では、本発明はT細胞に特異的な反応を、従来技術で知られた通常の方法を用いて測定することを包含し、該通常の方法には、クロムに基づく放出アッセイ、既知のCTL抗原決定基を用いたフロー・サイトメトリー法に基づく四重染色または二重染色アッセイを含むが、これに限定するものではない。
5.5 予防および治療における使用
本発明は、本発明の免疫原性組成物を、被験体に投与することを含む予防および治療の方法を提供し、該被験体は、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトであり、該方法により、疾患や傷害、特に感染症や癌に随伴する症状を、治療し、扱い、または緩和する。被験体は、好ましくは、例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、マウスといった非霊長類、および例えばカニクイザル(Cynomolgous)などのサルやヒトなどの哺乳動物である。好ましい実施形態では、被験体はヒトである。好ましくは、本発明の免疫原性組成物は、ワクチン製剤である。
本発明は、被験体において、免疫および/または免疫応答を刺激するための方法を包含し、本発明の組成物の単一用量を、好ましくはヒトである被験体に皮内送達することを含む。ある実施形態では、本発明は、1回または複数回の追加抗原免疫を包含する。本発明の免疫原性組成物は、抗体反応を、従来の免疫原性組成物(ワクチンなど)や従来の投与計画で認められるものより高いレベルに、刺激することおよび/または高く調整する(up−regulating)ことにおいて、特に効果的である。例えば、本発明の免疫原性組成物は、IgM、IgG、および/またはIgAなどの1つまたは複数の抗体クラスの生成を含む抗体反応を誘導してもよい。最も好ましくは、本発明の免疫原性組成物(ワクチン製剤を含む)は、少なくとも1つの病原体から被験体を防御する全身性の免疫応答を刺激する。本発明の免疫原性組成物(ワクチン製剤を含む)は、全身性、局所的、または粘膜性の免疫あるいはそれらの組合せの免疫を提供してもよい。
5.5.1 対象疾患
本発明は、好ましくはヒトである被験体における感染性疾患を、治療および/または予防するためのワクチンの皮内送達システムを含む。本発明の方法によって治療または予防することができる感染性疾患は、、感染性病原体によって引き起こされ、これにはウイルス、細菌、真菌、原生動物、蠕虫、および寄生虫を含むが、これらに限定されるものではない。
ヒトで発見され、本発明のワクチン送達システムによって治療することができるウイルスの例には、以下を含むが、これに限定されるものではない。レトロウイルス科(例えばHIV−1などのヒト免疫不全ウイルス(HTLV−III、LAVまたはHTLV−III/LAV、あるいはHIV−III;およびHIV−LPなどの他の単離ウイルスも参照));ピコルナウイルス科(例えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒト・コクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(例えば胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えばウマ脳炎ウイルス、ルベラウイルス);フラビウイルス科(例えばデングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱ウイルス);コロナウイルス科(例えばコロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば水疱口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えばエボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えばパラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸性シンシチアル・ウイルス);オルソミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルス);ブンガウイルス科(例えばハンターンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス);アレナウイルス科(例えば出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えばレオウイルス、オルビウイルス、およびロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポーバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(アデノウイルスの大半);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型、バリセラ・ゾスターウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(例えばアフリカ・ブタコレラ・ウイルス);ならびに未分類のウイルス(例えば海綿状脳症の病因学的病原体、デルタ肝炎病原体(B型肝炎ウイルスの欠損種と思われる)、非A非B型肝炎の病原体(クラス1=内因的に媒介、クラス2=非経口的に媒介、例えばC型肝炎);ノーウォークウイルスおよび関連ウイルス、ならびにアストロウイルスである。
動物およびヒトで感染症を生じ、本発明の送達システムと方法とを用いて、治療および/または予防することができるレトロウイルスは、単純レトロウイルスおよび複合レトロウイルスのいずれも含む。単純レトロウイルスは、B型レトロウイルス、C型レトロウイルス、およびD型レトロウイルスのサブグループを含む。B型レトロウイルスの例は、マウス乳癌ウイルス(MMTV)である。C型レトロウイルスは、サブグループC型のグループA(ラウス肉腫ウイルス(RSV)、トリ白血病ウイルス(ALV)、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)を含む)およびC型のグループB(マウス白血病ウイルス(MLV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネズミ肉腫ウイルス(MSV)、ギボン白血病ウイルス(GALV)、脾臓壊死ウイルス(SNV)、細網組織増殖症ウイルス(RV)、およびサル肉腫ウイルス(SSV))を含む。D型レトロウイルスは、Mason−Pfizerサルウイルス(MPMV)およびサル1型レトロウイルス(SRV−1)を含む。複合レトロウイルスは、レンチウイルス、T細胞白血病ウイルス、およびフォーミーウイルスのサブグループを含む。レンチウイルスは、HIV−1を含むが、HIV−2、SIV、ビスナウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、およびウマ伝染性貧血症(EIAV)を含む。T細胞白血病ウイルスは、HTLV−1、HTLV−II、サルT細胞白血病ウイルス(STLV)、およびウシT細胞白血病ウイルス(BLV)を含む。フォーミーウイルスは、ヒト・フォーミーウイルス(HFV)、サル・フォーミーウイルス(SFV)、およびウシ・フォーミーウイルス(BFV)を含む。
脊椎動物の抗原であるRNAウイルスの例には、以下を含むが、これに限定されるものではない。レオウイルス科の構成ウイルスで、オルソレオウイルス属(哺乳動物およびトリのレトロウイルス双方の多様な血清型のもの)、オルビウイルス属(ブルータングウイルス、ユーギナンギーウイルス(Eugenangee virus)、ケメロボ・ウイルス(Kemerovo virus)、アフリカ・ウマ病ウイルス、およびコロラドダニ熱ウイルス)、ロタウイルス属(ヒト・ロタウイルス、ネブラスカ・ウシ下痢症ウイルス、ネズミ・ロタウイルス、サル・ロタウイルス、ウシまたはヒツジのロタウイルス、トリ・ロタウイルス);ピコルナウイルス科構成ウイルスで、エンテロウイルス属(ポリオウイルス、コクサッキーウイルスのA型およびB型、ヒト細胞病原性腸内孤児(ECHO)ウイルス、A型肝炎ウイルス、サル・エンテロウイルス、ネズミ脳脊髄炎(ME)ウイルス、ネズミ・ポリオウイルス、ウシ・エンテロウイルス、ブタ・エンテロウイルス、カルジオウイルス属(脳心筋炎(EMC)ウイルス、メンゴウイルス)、ライノウイルス属(少なくとも113の亜型を含むヒト・ライノウイルス;他のライノウイルス)、アプソ(Aptho)ウイルス属(足口病(FMDV))を含み;カルシウイルス科でブタ小水疱性発疹ウイルス、サン・ミゲール・アシカウイルス、ネコ・ピコルナウイルス、およびノーウォークウイルスを含み、トガウイルス科でアルファウイルス属(東部ウマ脳炎ウイルス、セムリキ・フォレストウイルス、シンドビスウイルス、チクングンヤウイルス、オニョン−ニョンウイルス、ロス・リバーウイルス、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊が媒介する、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー・バレー脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、中央ヨーロッパ・ダニ媒介ウイルス、極東ダニ媒介ウイルス、キャサヌール・フォレストウイルス、跳躍病ウイルス、ポワサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(ルベラウイルス)、ペスティウイルス属(粘膜病ウイルス、ブタ・コレラウイルス、ボーダー病ウイルス)を含み;ブンヤウイルス科で、ブンヤウイルス属(ブンヤムウェラ・ウイルスおよび関連ウイルス、カリフォルニア脳炎グループウイルス)、フレボウイルス属(サンドフライ熱シチリアウイルス(Sandfly fever Sicilian virus)、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、ナイロビ・ヒツジ病ウイルス)、およびウウク・ウイルス(Uuku virus)属(ウウクニエミ(Uukuniemi)ウイルスおよび関連ウイルス)を含み;オルソミクソウイルス科でインフルエンザウイルス属(A型インフルエンザウイルス、多くのヒト亜型);ブタ・インフルエンザウイルス、トリおよびウマのインフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス(多くのヒト亜型)、およびC型インフルエンザウイルス(可能な他の属)を含み;パラミクソウイルス科でパラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス1型、センダイウイルス、血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型から5型、ニューカッスル病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス)、モルビリウイルス属(麻疹ウイルス、亜急性硬化性汎脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、リンダーペストウイルス)、ニューモウイルス属(呼吸性シンシチアルウイルス(RSV)、ウシ呼吸性シンシチアルウイルス、およびネズミのニューモニア・ウイルス);フォレストウイルス、シンドビスウイルス、チクングンヤウイルス、オニョン−ニョンウイルス、ロス・リバーウイルス、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊が媒介する、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー・バレー脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、中央ヨーロッパダニ媒介ウイルス、極東ダニ媒介ウイルス、キャサヌール・フォレストウイルス、跳躍病ウイルス、ポワサン・ウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(ルベラウイルス)、ペスティウイルス属(粘膜病ウイルス、ブタコレラウイルス、ボーダー病ウイルス)を含み;ブンヤウイルス科で、ブンヤウイルス属(ブンヤムウェラウイルスおよび関連ウイルス、カリフォルニア脳炎グループウイルス)、フレボウイルス属(サンドフライ熱シチリアウイルス(Sandfly fever Sicilian virus)、リフトバレー熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、ナイロビ・ヒツジ病ウイルス)、ウウクウイルス(Uuku virus)属(ウウクニエミ(Uukuniemi)ウイルスおよび関連ウイルス)を含み;オルソミクソウイルス科でインフルエンザウイルス属(A型インフルエンザウイルス、多くのヒト亜型);ブタ・インフルエンザウイルス、トリおよびウマのインフルエンザウイルス;B型インフルエンザウイルス(多くのヒト亜型)、およびC型インフルエンザウイルス(可能な他の属)を含み;パラミクソウイルス科でパラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス1型、センダイウイルス、血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス2型から5型、ニューカッスル病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス)、モルビリウイルス属(麻疹ウイルス、亜急性硬化性汎脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、リンダーペストウイルス)、ニューモウイルス属(呼吸性シンシチアルウイルス(RSV)、ウシ呼吸性シンシチアルウイルス、およびネズミのニューモニアウイルス)を含み;ラブドウイルス科でベシクロウイルス属(VSV)、チャンディプラウイルス、フランダース−ハート・パークウイルス(Flanders Hart−Park virus))、リサウイルス属(狂犬病ウイルス)、ウオ・ラブドウイルス、および可能性のある2つのラブドウイルス(マールブルグウイルスおよびエボラウイルス)を含み;アレナウイルス科で、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCM)、タカリベウイルス複合体(Tacaribe virus complex)、およびラッサウイルスを含み;コロナウイルス科で、感染性気管支炎ウイルス(IBV)、ネズミ肝炎ウイルス、ヒト腸コロナウイルス、およびネコ感染性腹膜炎(ネコ・コロナウイルス)を含む。
脊椎動物の抗原であるDNAウイルスの実例は、以下を含むが、これらに限定されるものではない。ポックスウイルス科で、オルソポックスウイルス属(バリオラ・メジャー(Variola major)、バリオラ・マイナー(Variola minor)、サル痘(Monkey pox Vaccinia)、牛痘、バッファロー痘(Baffalopox)、ウサギ痘、マウス痘)、レポリポックスウイルス属(粘液腫、線維腫)、禽痘属(鶏痘、他のトリ・ポックスウイルス)、カプリポックスウイルス(羊痘、山羊痘)属、スイポックスウイルス属(豚痘)、パラポックス属(伝染性膿皮製皮膚炎ウイルス、偽牛痘ウイルス、ウシ丘疹性口炎ウイルス)を含み;イリドウイルス科(アフリカ・ブタ熱ウイルス、カエルウイルス2およびカエルウイルス3、ウオ・リンフォシスティスウイルス);ヘルペスウイルス科で、アルファ−ヘルペスウイルス(単純ヘルペス1型および2型、バリセラ−ゾスター、ウマ流産ウイルス、ウマ・ヘルペスウイルスの2型および3型、偽狂犬病ウイルス、ウシ感染性結膜炎ウイルス(infectious bovine keratoconjunctivitis virus)、ウシ感染性鼻気管炎ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、感染性喉頭気管炎ウイルス)、ベータ−ヘルペスウイルス(ヒト・サイトメガロウイルスならびにブタ、サル、および齧歯類のサイトメガロウイルス);ガンマ−ヘルペスウイルス(エプスタイン−バールウイルス(EBV)、マレック病ウイルス、ヘルペス・サイミリ、ヘルペスウイルス・アテレス(Herpes ateles)、ヘルペスウイルス・シルビラグス(Herpesvirus sylvilagus)、モルモット・ヘルペスウイルス、ルッケ腫瘍ウイルス(Lucke tumor virus))を含み;アデノウイルス科で、マストアデノウイルス属(ヒトのサブグループA、B、C、D、E、および非グループのもの、サル・アデノウイルス(少なくとも23の血清型)、感染性イヌ肝炎、;ならびにウシ、ブタ、ヒツジ、カエル、および多くの他種のアデノウイルス、トリ・アデノウイルス属(トリ・アデノウイルス);ならびに培養不能なアデノウイルスを含み、パポーバウイルス科でパピローマウイルス属(ヒト・パピローマウイルス、ウシ・パピローマウイルス、ウサギ・ショープ・パピローマウイルス、および他種のさまざまな病原性パピローマウイルス)、ポリオーマウイルス属(ポリオーマウイルス、サル空胞形成病原体(SV−40)、ウサギ空胞形成病原体(RKV)、Kウイルス、BKウイルス、JCウイルス、およびリンパ親和性パピローマウイルスなどの他の霊長類ポリオーマウイルス)を含み;パルボウイルス科で、アデノ関連ウイルス属、パルボウイルス属(ネコ汎白血球減少症、ウシ・パルボウイルス、イヌ・パルボウイルス、アリューシャン・ミンク病ウイルス等)を含む。最後に、DNAウイルスは、クールーおよびクロイツフェルト−ヤコブ病ウイルスならびに慢性感染性のニューロパシー病原体などの上記の科に属さないウイルスを含んでもよい。
本発明の方法によって、治療または予防ができる細菌感染や細菌感染症は、マイコバクテリア(例えば結核菌(Mycobacteriua tuberculosis)、ウシ結核菌(M.bovis)、トリ結核菌(M.avium)、癩菌(M.leprae)、またはアフリカ菌(M.africanum)、リケッチア、マイコプラズマ、クラミジア、およびレジオネラなどのその生活環において細胞内段階を有する細菌を含むが、これに限定されるものではない。他の予期される細菌感染症は、以下の細菌によって引き起こされるが、これに限定されるものではない。グラム陽性細菌(例えばリステリア(Listeria);炭疽菌(Bacillus anthracis)などのバチルス(Bacillus)、エリジペロリクス種(Erysipelothrix))、グラム陰性細菌(例えばバルトネラ(Barutonella)、ブルセラ(Burucella)、カンピロバクター(Campylobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、大腸菌(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、ヘモフィルス(Hemophilus)、クレブシェラ(Klebsiella)、モルガネラ(Morganella)、プロテウス(Proteus)、プロビデンシア(Providencia)、シュードモナス(Pseudomonas)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、シゲラ(Shigella)、ビブリオ(Vibrio)、およびエルシニア(Yersinia)種)、スピロヘータ(Spirochete)菌(例えばライム病を引き起こすライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)を含むボレリア(Borrelia)種、嫌気性菌(例えば放線菌(Actinomyces)種およびクロストリジウム(Clostridium)種)、グラム陽性および陰性の球菌、腸球菌(Enterococcus)種、連鎖球菌(Streptococcus)種、肺炎球菌(Pneumococcus)種、ブドウ球菌(Staphylococcus)種、ナイセリア(Neisseria)種である。感染性細菌の具体例には、以下を含むが、これに限定されるものではない。ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyroris)、ライム病ボレリア(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella phneumophilia)、結核菌(Mycobacteria tuberculosis)、トリ結核菌(M.avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラレ(M.intracellulare)、マイコバクテリウム・カンサイ(M.kansaii)、マイコバクテリウム・ゴルドナエ(M.gorconae)、ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、アガラクシア連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)(B群レンサ球菌)、ビリダンス・連鎖球菌(Streptococcus viridans)、フェカリス連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ウシ連鎖球菌(Streptococcus bovis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、ジフテリア菌(corynebacterium diphtheriae)、エリジペロスリクス・ルシパシア(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidium)、トレポネーマ・ペルテヌェ(Treponema pertenue)、レプトスピラ(Leptospira)、リケッチア(Rickettsia)、およびアクチノミセス・イスラエリー(Actinomyces israelli)。
本発明の方法によって治療または予防することができる真菌症には、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、スポロトリクム症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症、ヒストプラスマ症、ブラストミセス症、接合菌症、およびカンジダ症が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法によって治療または予防できる寄生虫性疾患は、アメーバ症、マラリア、リーシュマニア、コクシジア、ランブル鞭毛虫症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、トリパノゾーマ症を含むが限定されるものではない。さらに包含されるのは、回虫症、鉤虫症、鞭虫症、糞線虫症、イヌ回虫症、旋毛虫症、糸状虫症、フィラリア、およびイヌ糸状虫症などのさまざまな寄生虫による感染症を含むが、これらに限定されるものではない。さらに包含されるのは、住血吸虫症、肺吸虫症、および肝ジストマ症などのさまざまな吸虫類による感染症を含むが、限定されるものではない。これらの疾患を引き起こす寄生虫は、細胞内にいるかまたは細胞外にいるかに基づいて分類することができる。本明細書で用いられる「細胞内寄生生物(intracellular parasite)」は、全生活が細胞内にある寄生生物である。ヒトの細胞内寄生生物の例には、リーシュマニア種、プラスモジウム種、トリパノゾーマ・クルシ(Torypanosoma cruzi)、トキソプラズマ・ゴンジ、バベシア種、およびトリキナ・スピラリス(Trichinella spiralis)が含まれる。本明細書で用いられる「細胞外寄生生物(extracellular parasite)」は、全生活が細胞の外にある寄生生物である。ヒトに感染できる細胞外寄生生物は、エントアメーバ・ヒストリテカ、ジアルディア・ランブリア、エンテロキトズーン・ビエネウシ(bieneusi)、ネグレリア、およびアカントアメーバを含み、大部分のヘルミンス(Helminths)ももちろん含む。さらにもう1つのクラスの寄生生物が、主に細胞外にあるが、その生活環の重要な段階で細胞内に無条件に存在すると定義される。そのような寄生生物を、本明細書では「無条件細胞内寄生生物(obligate intracellular parasite)」と呼ぶ。これらの寄生生物は、それらの生活の大半またはそれらの生活の一部でのみ細胞外環境で過ごすことができるが、それらはすべて、その生活環のうちで少なくとも1つの無条件の細胞内段階を有する。この後者の範疇の寄生生物には、ローデシア・トリパノゾーマおよびガンビア・トリパノゾーマ、イソスポラ種、クリプトスポリジウム種、エイメリア種、ネオスポラ種、サルコシスチス種、およびシストゾーマ種を含む。
また、本発明は、癌を、治療および/または予防するワクチン組成物を包含し、この癌には、新生物、腫瘍、転移、または制御できない細胞成長を特徴とする任意の疾患や障害を含むが、これらに限定されるものでは。例えば、上記5.1.2節に列挙した癌および腫瘍の抗原と関係がある癌および腫瘍は、これらに限定するものではないが、本発明のワクチン組成物を用いて治療および/または予防できる。
5.6 賦形剤を同定するためのスクリーニング法
本発明は、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達したときに、免疫原性または抗原性を有する薬剤の免疫原性を高める化合物を同定する方法を、さらに包含する。ある実施形態では、免疫原性または抗原性を有する薬剤の免疫原性を、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達したときに高める化合物を同定する方法は、そのような化合物の安定性の測定を含む。具体的な実施形態では、候補の化合物または薬剤は、免疫原性組成物を調製するために、免疫原性または抗原性を有する薬剤とさまざまな比率で結合され、得られた組成物では、免疫原性または抗原性を有する薬剤のみの場合との相対的な不安定性の兆候が、実時間および加速下での試験でモニターされる。本組成物の安定性は、当業者に知られ、かつ本明細書に開示した方法を用いて評価してもよい。
他の実施形態で、被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達したときに、免疫原性または抗原性を有する薬剤の免疫原性を高める化合物を同定する方法は、候補化合物を被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達することを含む。ある実施形態では、候補化合物は、さまざまな濃度で皮内コンパートメントへと送達され、任意の毒性の兆候を、当業者に知られた標準的な方法を用いてモニターする。動物での前治験において免疫原性または抗原性を有する薬剤の分解および/または毒性に寄与しない候補化合物の濃度を、次に免疫原性または抗原性を有する薬剤と組み合わせ、本明細書に開示し例示した方法を用いて、被験体の皮膚の皮内コンパートメントでのアジュバント特性を評価する。アジュバント特性は、5.4節に開示される、体液性または細胞性に基づいたアッセイまたは当業者に知られた他の方法のどれを用いてアッセイしてもよい。
別の実施形態では、そのような化合物を同定するために、免疫原性または抗原性を有する薬剤を、候補化合物と共に被験体の皮膚の皮内コンパートメントに投与し;投与で得られる免疫応答を測定する;免疫原性または抗原性を有する同一薬剤を、候補化合物なしで第2の被験体、好ましくは同一種である第2の被験体の皮内コンパートメントに投与する;2度目の投与で得られる免疫応答を当業者に知られた方法を用いて測定し;1度目および2度目の投与の免疫応答を比較する。2度目の投与の免疫応答が1度目の投与より大きい場合は、その成分がアジュバント活性を有する優位化合物であるとみなす。
免疫原性または抗原性を有する薬剤を候補化合物の存在下または無存在下に投与して得られる、被験体の免疫応答は、当業者に知られた方法または本明細書に開示された方法のどれを用いて測定してもよい。免疫応答を測定するアッセイは、in vitroでのアッセイまたはin vivoでのアッセイであってよく、動物に基づいたアッセイを含む。本発明は、体液性に基づく免疫応答および細胞性に基づく免疫応答を、当業者に知られ、かつ上記5.4節に記載した、標準的方法を用いて測定することを包含する。好ましくは、本発明のスクリーニングアッセイは、高速大量処理手段(high throughput manner)で実施する。
具体的な実施形態では、免疫原性または抗原性を有する薬剤の免疫原性を高める化合物を同定する方法は、(a)免疫原性組成物を、第1の被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達すること、ここで該免疫原性組成物は免疫原性または抗原性を有する薬剤および本化合物を含み、(b)第1の被験体の血清から得られる検体の免疫応答を測定すること、(c)免疫原性組成物を、第2の被験体の皮膚の皮内コンパートメントに送達すること、ここで該免疫原性組成物は、免疫原性または抗原性を有する薬剤を含むが本化合物は含まず、第1および第2の被験体は同一種である、(d)第2の被験体の血清から得られた検体の免疫応答を測定すること、および(e)第1の被験体から得られる免疫応答が、第2の被験体から得られる免疫応答より大きいかどうかを評価することを含む。第1の被験体から得られる応答が、第2の被験体より大きいのなら、その化合物を本発明の組成物に用いてもよい賦形剤であるとみなす。本発明のスクリーニング方法によって確認される化合物は、免疫原性または抗原性を有する薬剤を患者の皮膚の皮内コンパートメントに併用投与したときに、免疫原性または抗原性を有する薬剤の免疫応答を高めるために用いることができる。具体的には、これらの化合物はワクチン組成物に用いることができる。
本明細書に記載したアッセイで用いられる化合物は、化合物ライブラリーの一部であることができる。具体的な実施形態では、化合物は、化合物の組合せライブラリーから選択される。具体的な実施形態では、化合物は、核酸、脂質、糖を含む有機ポリマーの組合せライブラリーから選択され、具体例としては糖タンパク質などのハイブリッド分子ペプチドがあるが、これに限らない。また、本発明は、特許文献19(その内容を、参照によりその全体を本明細書に組み込む)に認められる類の、非有機化合物のライブラリーおよび方法を包含し、これらは、数多くの候補化合物を扱うために用いることができる。ある実施形態では、化合物はプール単位で(in pools)スクリーニングされる。一旦、活性のあるプールが確認されたなら、該プールの個々の化合物を個別にアッセイする。ある実施形態では、プールの大きさは、少なくとも2つ、少なくとも5つ、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、または少なくとも500の化合物である。
5.7 キット
さらに、本発明は、皮内投与装置および本明細書に記載した免疫原性組成物を含むキットを含む。ある実施形態では、本発明は、本発明の免疫原性組成物を含む、医薬パックまたはキットも提供する。具体的な実施形態では、本発明は、本発明の免疫原性組成物の1つまたは複数の成分(例えば抗原性または免疫原性を有する薬剤である賦形剤)を1つまたは複数の容器に充填したキットを提供する。さらに、もう1つの実施形態では、予め充填した容器には、さらに皮内送達装置が含まれる。もう1つの具体的な実施形態では、キットは2つの容器を含み、うち1つは抗原性または免疫原性を有する薬剤を含み、もう1つは賦形剤を含む。そのような容器と共に、製薬学的および生物学的な製剤の製造、使用、または販売を規制する政府機関が既定する形式の注意書きを入れることができ、その注意書きは、ヒトに投与するために、製造、使用、および販売することがその機関によって承認されたことを示す。
本発明の実施態様を、以下の実施例によって示すが、これらに限定されるものではない。
6.1 フルゾン(登録商標)投与による免疫応答
6.1.1 フルゾン(登録商標)接種物の調製
さまざまな製剤の調製に先だって、賦形剤ストック液すべてのpHを、中性pHすなわち7.0から7.4であるかを調べた。溶液のpHは、必要に応じて希釈したHClまたはNaOHを用いて中性に調整した。賦形剤ストック液すべてを、0.2μmのGelman Acrodisc PFシリンジフィルター#4187を通して滅菌した。
マウスの試験では、Aventis製のフルゾン(登録商標)YR02/03 175μLおよび表1に表示した終濃度の賦形剤を添加することによって、接種物を調製した。ハンクスの平衡塩類溶液(HBSS)を用いて最終容量を700μLとした。接種対照は、HBSSをフルゾン(登録商標)175μLに添加し、最終容量を700μLとして調製された。調製した接種物100μLを用いて各動物に接種した。非免疫対照は、免疫前に動物から採血した。各マウスに接種容量当たり25μlの商用ワクチンを投与した場合、総接種容量当たり、モルモットには50μL、ラットには10μLおよび100μL容量の商用ワクチンを投与した。
6.1.2 投与
接種物を、調製後1時間以内にBalb/cマウスに注射した。接種に用いたマウスは、Charles River Laboratoriesより入手され、4から8週齢であった。マウスを、注射直前にConair電気カミソリを用いて乾式剃毛した。接種約15分前に、各マウスに、鎮痛用のケタミン/キシラジン/アセプロマジンのカクテルを腹腔内注射した。背部の低位から中位を注射に用いた。ラットは、ブラウンノルウェー系、モルモットはハートレー系であった。両者とも一般的に200gおよびそれ以上であった。
各マウスに対する接種物を、20ゲージ針(BD カタログ305179)を装着した、ラテックスを含まない1mLシリンジ(BD カタログ309628)に吸い上げた。シリンジに装填後、20ゲージ針を皮内(ID)投与用の30ゲージ針に交換した。マンツー法でのID投与は、初期に用いられ、そこでは皮膚をきつく引っ張り、可能な最も浅い角度で、針の斜端を上向きにして近づける。次に注射量分を5から10秒の間でゆっくりと押し込み、典型的な「水疱」を形成させ、その後針をゆっくりと引き抜いた。周囲の組織スペースへの接種物の漏出を抑えるために、注射は1回のみで、注射位置当たりの注射量は100μLに維持した。注射量は、後の試験では時折増加させた。より大きな齧歯類での試験では、商用ワクチンの割合を上げるために、より大量の全接種容量を動物に投与したが、1カ所当たりの容量は100μLを超えなかった。後のマウスの試験では、1.0mmx34ゲージ針を用いたより効果的なID送達が用いられ、1カ所当たりの最大注射容量は50μLであった。またモルモットおよびラットでの投与が、1.0mmx34ゲージ針を用いて実施され、最大注射部位容量は50μLであった。すべての試験で、免疫は1回のみであった。21日後に1回採血した。投与直後、接種後24時間、および3週間後の採血時に、動物の局所的および系統的な毒性の兆候をモニターした。投与部位の毒性が、マウス、ラット、モルモット、およびブタにおいて、送達範囲1.0から3mmでモニターされた。局所的または系統的な毒性の兆候は、動物で認められなかった。
6.1.3 ELISAアッセイ
フルゾン(登録商標)に対する抗体反応が、インフルエンザ抗原(インフルエンザAPR834の精製/不活化物2mg/mLをCharles River SPAFASから、またはさらにニューカレドニア型、パナマ型、もしくはB香港型の溶解物をBiodesign社から入手)をマイクロタイタープレート(MaxiSorp(登録商標)表面の96ウェルNunc Immunoプレート(登録商標))上にコートして、測定された。コート溶液は、炭酸塩緩衝液(Sigma Chemical Co.カタログ C3041)中のインフルエンザタンパク質約3.8μg/mLであった。コート抗原は、Nuncプレート上に37℃で1時間置いた。コート溶液を廃棄し、ブロッキング液(Tween 20を含むリン酸緩衝塩液(PBS−TW20);Sigma Chemical Co.カタログ P−3563)および5%w/vのスキムミルクに置き換えた。ブロッキング液は、プレート表面上に37℃で2時間置いた。次にブロッキング液を廃棄した。
プレート表面を、PBS−TW20で2回洗浄し、対照群の血清を添加した。特定群の動物すべての血清は、個々にまたはプールとしてアッセイしてもよい。
1次抗体を、コートかつブロックしたプレート上で1時間インキュベートし、その後プレートをPBS−TW20で3回洗浄した。抗マウス西洋わさびペルオキシダーゼ結合体プール(conjugate pool)のカクテルはSigma A4416、Southern Biotech 1090−05、Southern Biotech 1070−05、Southern Biotech 1080−05、およびSouthern Biotech 1100−05からなり、これを添加した。結合体物はすべて、最終カクテル中で1:15000の希釈率であった。西洋わさびペルオキシダーゼの2次抗体のカクテルは、プレート上に37℃で1時間インキュベートした。次にプレートをPBS−TW20で3回洗浄した。
発色のために、TMB基質であるSigma T−8665を添加し、暗所で30分間発色させた。発色を0.5モル濃度の硫酸を添加して停止させ、プレートを、TECAN SUNRISEプレートリーダー上、450nmで読み取った。
6.1.4 結果
図1から5、21、23、26、28、31、および32に示すように、本明細書に列挙した賦形剤のいずれかを含む接種物では、フロゾン(登録商標)のみを含む接種物または非免疫対照(事前採血)に比べ、より大きな免疫応答が得られた。この結果は、明らかに、これらの賦形剤が、抗原性または免疫原性を有する薬剤と共に被験体の皮内コンパートメントに投与されたときに、アジュバントとして作用できることを示す。
6.2 インフルエンザの血球凝集素をコードする配列を含むプラスミドDNA投与による免疫応答
6.2.1 接種物の調製
さまざまな製剤の調製に先だって、賦形剤ストック液すべてのpHを、中性pHすなわち7.0から7.4であるかを調べた。溶液のpHは、必要に応じて希釈したHClまたはNaOHを用いて中性に調整した。賦形剤ストック液を、0.2μmのGelman Acrodisc PFシリンジフィルター#4187を通して滅菌した。
接種物は、インフルエンザの血球凝集素をコードする配列を含むプラスミドDNA(pDNA−HA)350μgおよび表2に表示した終濃度の賦形剤を添加することによって、調製された。ハンクスの平衡塩類溶液(HBSS)を用いて最終容量を700μLとした。接種対照は、HBSSをpDNA−HA350μgに添加し、最終容量を700μLとして調製された。調製した接種物100μLを用いて各動物に接種した。非免疫対照は、免疫前に動物から採血した(事前採血)。pDNAの免疫原性研究は、Balb/cマウスでのみ実施した。
6.2.2 投与
接種物を、調製後1時間以内にBalb/cマウスに注射した。接種に用いたマウスは、Charles River Laboratoriesより入手され、4から8週齢であった。マウスは、注射直前にConair電気カミソリを用いて乾式剃毛した。接種15分前に、各マウスに、鎮痛用のケタミン/キシラジン/アセプロマジンのカクテルを腹腔内注射した。背部の低位から中位を用いて注射した。
各接種物を、20ゲージ針(BD カタログ305179)を装着した、ラテックスを含まない1mLシリンジ(BD カタログ309628)に吸い上げた。シリンジに装填後、20ゲージ針を皮内(ID)投与用の30ゲージ針に交換した。マンツー法でのID投与を用い、そこでは皮膚をきつく引っぱり、可能な最も浅い角度で、針の斜端を上向きにして近づける。次に注射量分を5から10秒の間でゆっくりと押し込み、典型的な「水疱」を形成させ、その後、針をゆっくりと引き抜いた。接種物が周囲の組織スペースへと漏出することを抑えるために、1回のみ注射し、注射量は100μLを維持した。
動物では、局所および系統的な毒性の兆候を、初回投与(抗原接種)直後、抗原接種後24時間、追加抗原刺激後24時間、21日目の1回目の処理・採血時に、それぞれモニターした。追加抗原刺激後3週間の42日目の、2回目かつ最後の検血の採血時に、再び動物をモニターした。動物における、局所および系統的な毒性の兆候は認められなかった。
6.2.3 DNAの免疫原性試験のためのELISAアッセイ
pDNA−HAを含むさまざまな接種物に対する抗体反応が、インフルエンザ抗原(インフルエンザAPR834の精製/不活化物2mg/mLをCharles River SPAFASから入手)をマイクロタイタープレート(MaxiSorp(登録商標)表面の96ウェルNunc Immunoプレート(登録商標))上にコートすることによって測定された。コート液は、炭酸塩緩衝液(Sigma Chemical Co.カタログ C3041)中のインフルエンザタンパク質3.8μg/mLであった。コート抗原は、Nuncプレート上に37℃で1時間置いた。コート溶液を廃棄し、ブロッキング液(PBS−TW20)および5%w/vのスキムミルクに置き換えた。ブロッキング液は、プレート表面上に37℃で2時間置いた。次にブロッキング液を廃棄した。
プレート表面を、PBS−TW20で2回洗浄し、試験/対照群の血清を添加した。特定群のマウスすべての血清をたくわえてプールとした。このプールとした血清を1:123および1:370の希釈率でアッセイした。
1次抗体を、コートかつブロックしたプレート上で1時間インキュベートし、その後プレートをPBS−TW20で3回洗浄した。抗マウス西洋わさびペルオキシダーゼの結合体プールのカクテルは、Sigma A4416、Southern Biotech 1090−05、Southern Biotech 1070−05、Southern Biotech 1080−05、およびSouthern Biotech 1100−05からなり、これを添加した。結合体物はすべて、最終カクテル中で1:15000の希釈率であった。西洋わさびペルオキシダーゼ2次抗体のカクテルを、プレート上に37℃で1時間インキュベートした。次にプレートをPBS−TW20で3回洗浄した。
発色のために、TMB基質であるSigma T−8665を添加し、暗所で30分間発色させた。発色を0.5モル濃度の硫酸を添加して停止し、プレートを、TECAN SUNRISEプレートリーダー上、450nmで読み取った。
6.2.4 結果
図6から11に示すように、本明細書に列挙した賦形剤のいずれかを含む接種物すべてで、pDNA−HAのみを含む接種物または非免疫対照(事前採血)に比べ、動物からの免疫応答が増加した。この結果は、これらの賦形剤が、抗原性または免疫原性を有する薬剤と共に皮内コンパートメントに投与されたときに、アジュバントとして作用できることを明らかに示す。1回目の試験採血を分析した後にアジュバント活性を有することが示された薬剤もあり、2回目の試験採血を分析した後に示された薬剤もあった。
6.3 マウスで実施した初回投与範囲の確認試験
フロゾン(登録商標)とさまざまな賦形剤とを含む接種物が調製され、上記6.1.1から2節に記載された方法と実質的に同一のものを用いて動物に皮内投与された。接種物は、各接種物がフロゾン(登録商標)と異なる量の1つの賦形剤とを含むように調製された。免疫応答を、上記6.1.3節と実質的に同一の方法を用いて測定した。結果を表3に示す。
6.3.1.1 マウス、ラット、およびモルモットで用いた赤血球凝集抑制アッセイ
トリ赤血球の調製:トリ赤血球(cRBC、5mL包装)が、Charles River Laboratories(カタログ#S8776)より入手された。cRBCを4つの50mL Falcon(登録商標)Blue Max(商標)ポリエチレン製コニカルチューブに均等に分注し、1500rpmで5から7分間、4℃で遠心した。配送用の緩衝液をcRBCから除去した。NaCl溶液(0.9%)を5mLずつ(in 5ml increments)、cRBC沈殿物上に添加し、沈殿物を再び懸濁した。1回目の洗浄後の2本からの再懸濁した沈殿物を、合わせ混合し、容量をNaCl溶液(0.9%)で45mLに調製した。混合物を1500rpmで5から7分間4℃で遠心し、上清を廃棄した。再びNaCl溶液(0.9%)を5mLずつ、cRBC沈殿物上に添加し、沈殿物を再び懸濁した。2回目の洗浄後の2本から再懸濁した沈殿物を、合わせ混合し、容量をNaCl溶液(0.9%)で45mLに調製した。混合物を1500rpmで5から7分間4℃で遠心し、上清を廃棄した。10%のcRBC液が、最後の沈殿物を開始時の10倍容量に懸濁することによって、調製された。
HA含有量の検証のためのインフルエンザ抗原作業ストック(Working stock)の検定:HA抑制アッセイを実施する前に、ウイルス溶解液の作業ストックのHA力価を検証しなければならない。作業ストックは、50μL当たり8HAであるべきである。新鮮な0.5%cRBC試薬が毎日調製される。8HAと仮定した作業ストックを得るためのウイルス溶解液の所定の希釈を実施した。NaCl溶液(0.9%)を用いて希釈液を調製した。
NaCl溶液(0.9%、50μl)を、Falcon(登録商標)のU底、低蒸発フタ付きの96ウェル組織培養未処理プレートのウェル中に分注した。8HA/50μLと仮定した作業ストック(100μL)を、「開始ウェル」である1行または1列に分注した。ストックの半量(50μL)を、開始ウェルから2番目のウェルに移し、1:2希釈液とした。1:2希釈法を用いて手順を繰り返し、一連の希釈が完了するまで継続した。完全希釈セットは、0.0625HAから8HAを含むウェルであった。cRBC試薬(0.5%、50μL)を、ある量のHAを含む各ウェルに分注し、本アッセイ物を、プレートを揺らさないことを確実にして、室温で45分インキュベートさせた。
解説−cRBCは、希釈液中に存在するウイルス溶解液HAが赤血球凝集を確実にするには少なすぎるなら、ウェル中に沈む。部分的または完全にウェル底へ沈降したcRBCが含むウェルはどれでも陰性である。溶液中でcRBCが完全に懸濁液である最後のウェルが、ウイルス溶解液ストックのHA力価である。したがって、ストックが真に50μL当たり8HAであるなら、再検定にあたって最後の陽性ウェルは1HAを含む。
HAIによるHA特異的抗体力価の測定:血清を採取し、被験検体として用いた。新鮮なcRBC試薬は毎日調製された。NaCl溶液(0.9%)をFalcon(登録商標)のU底、低蒸発フタ付きの96ウェル組織培養未処理プレートのウェルに添加した。ウイルス溶解液ストック(8HA/50μL)がウェルに添加された。適当量の被験血清が、1行または1列の「開始ウェル」に添加され、血清希釈液(50μL)を、開始ウェルから次のウェルに移すことによって一連の希釈を実施し、1:2希釈液とした。完了したときに、ウェルは一連の希釈液および一定量のウイルス溶解抗原液を含み、それはウェル当たり4HAであった。cRBC試薬(0.5%、50μL)を、陰性対照を含む各ウェルに分注したが、この陰性対照はHAを含まなかった。本アッセイ物を、プレートを揺らさないよう確実にし、室温で45分インキュベートさせた。評価のために、プレートを70度で5分間傾け、照明箱上で観察した。
HAIアッセイが、A−ニューカレドニア型(H1N1)、A−パナマ型(H3N2)、もしくはB−香港型の抗原を、単一の試験抗原かつ3価のプールとして実施された。
6.4 実施濃度の確認およびTween(その関連化合物)の利点
これらの試験の目的は、非イオン性界面活性剤洗剤および関連化合物を含むワクチン製剤の皮内コンパートメント送達に対する、最適濃度範囲を決定することである。これらの試験は、非イオン性界面活性剤賦形剤が、本発明の方法によってIDコンパートメントに送達されたときに、アジュバントとして作用することを示す。実施濃度は針の深さ(1.00mm対1.5mm対2.0mm対3.00mm)と共に変化する。各界面活性剤は、アジュバント特性が発揮され、かつ組織刺激が回避または最小化(ドレイズ・スコア≦2)される実施範囲が異なる。文献に引用された、そういった薬剤の数多くの濃度範囲は、製造を目的としている。そのような薬剤の製造濃度は、IDコンパートメントに送達されたときに、実際、毒性があり組織を損傷する。他の場合には、その濃度が低すぎて、アジュバント様の効果を有さない。本明細書において、Tween 80および他のサーファクタントは、不可逆的な組織損傷は回避しつつも、セロコンバージョン、平均力価を上昇させることが示された。
6.4.1 結果
Tween 80はセロコンバージョンを上昇させる。:上記の記載の方法を用いたとき、5%のTween 80は、図21の100%セロコンバージョンを引き起こした。試験ではBalb/cマウスを用いた。セロコンバージョンの上昇は、PR8を試験抗原としたELISAアッセイの使用によって認められた。動物には、フルゾン+Tween 80をID経路で投与し、補足なしでフルゾンをIM経路で投与した場合と対比した。ID群は、IM群より優れていた。
Tween 80は平均力価を上昇させる。:図21に示すように、5%Tween 80を補足してID送達されたフルゾンは、平均力価が1:1395であったが、補足せずにIM送達されたフルゾンは、平均力価が1:605であった。t−検定を適用し、p値は0.05未満であったので、有意な変化であることが示される。ID接種物は、標準的なシリンジおよび針を用いたID−マンツー型で送達された。議論した免疫応答のデータはすべて、Balb/cマウスで作製した。
Tween 80の皮膚適合性:ブタの皮膚適合性試験が、全長1.5mm、31ゲージの微小医療用の針を用いて実施された。Tween 80は、皮内コンパートメントに十分に許容された(図22)。この実験では、ブタは5%v/vのTween 80のみと5%v/vのTween 80を補足したフロゾンとを投与された。ドレイズ・スコアはすべて、投与1時間後で許容可能(≦2)であった。
Tween 80は、IMと比較してID送達の性能を上昇させる。:3価のワクチンと共にID送達されたTween 80(0.9%v/v)では、IM送達される商用3価ワクチンに比べ、より高い平均力価、より高い力価中央値、およびより高いセロコンバージョンが得られた(図23)。0.9%v/v Tween 80は、免疫上昇という点では極めてよく作用したが、この濃度は時折作用しないこともある。図23でIDでのデータ作製に用いた微小医療用針は、34ゲージx1mmの針であった。マウスモデルを用いた。
Tween 80の実施濃度 対 他の界面活性剤の実施濃度:ソルビトールおよびTween 80などのソルビトール誘導体は、皮膚適合性のプロファイルが異なり、特にIDスペースでは異なる。したがって、各薬剤の機能範囲は、別々に決定しなければならない。例えばこの試験で示されるように、1から2mmの深さに送達したとき、10%w/vのTween 80はあまり許容されていないが、10%w/vのソルビトールは十分に許容される(図24)。投与後20から24時間に、10%w/vのTween 80は、初期水疱にわたる中等度から重症の紅斑を有するが、10%w/vのソルビトールでは、針の侵入部位での軽度の紅斑を生じるのみである。本試験はヨークシャーブタで実施した。
Tween 80の実施範囲は組織の深さによって変化する。:この実験では、Tween 80は異なった皮膚適合プロファイルを示し、針の深さと共に変化した。具体的には、投与後20から24時間でのヨークシャーブタのデータは、2%Tween 80溶液が、1.0mm、1.5mm、2.0mm、および3.0mmの針で送達されたときに、どのように許容されたかを示した(図25)。投与後約20から24時間で、3mmでの送達では、皮膚で良い結果が得られ、ドレイズ・スコアは0.0であった。特定濃度のTween 80に対する皮膚反応は、深さと共に改善した。これらの試験によって、注射が浅くなるほど、視認可能な炎症が増すことが示された。
Tween 80で選ばれた濃度によって、溶血が回避される。:界面活性剤/洗剤はRBCを溶血できる。5.0%のTween 80を含む200μL用量を6回投与したヨークシャーブタの血液を採取した。全身循環から即座に採取した血液では、溶血は認められなかった。本試験では31ゲージx1.5mmの針を用いた。
Tween 80は、用量を節減する、ID送達の特徴を高め、セロプロテクションとセロコンバージョンを上昇させる。:商用ワクチン製剤に、賦形剤であるTween 80を添加することは、微小針でID送達するときに、アジュバント様の特性を提供する。
ブラウンノルウェー(BN)ラット、雌(n=10/群)を、微小針(34ゲージ針を3.5インチ長のカテーテルに挿入して突き出る針全長を1.0mmとする)を用いたID送達によって免疫した。微小針によるID送達は、ラットの低背部の両側に、手動で100μLを2回ボーラス注入することからなり、各ボーラス注入では、1ccの接着シリンジを用いて、約10秒間の時間で注入した。ラットを、2003/2004期のフルゾン(Aventis Pasteur、Swiftwater、PA)の2つの異なる用量のどちらか一方で免疫した。すなわち、ラット当たり計9μg(高用量)または0.9μg(低用量)の血球凝集素(HA)について、ワクチン中の各インフルエンザ株(A/ニューカレドニア/20/99 H1N1、A/パナマ/2007/99 H3N2、およびB/香港/1434/2002)が3μgまたは0.3μgのHAである。
ラットは、免疫後21日に採血し、それらの血清で、血球凝集抑制(HAI)アッセイを用いて中和抗体力価をアッセイし、ELISA法でインフルエンザ特異抗体をアッセイした。いずれのアッセイも、フルゾン製剤においてインフルエンザH3N2株に対する免疫応答を性格付けるために、実施された。
フルゾンに賦形剤Tween 80を添加することは、微小針によってID送達したときにアジュバント様効果を提供する。H3N2株に対するアッセイ時に、ID投与された、低用量および高用量のフルゾンのいずれにも、5%Tween 80を添加することによって、フルゾンのみをID送達したときに得られた値より、平均HAI力価が5倍、平均ELISA力価が15倍までに上昇した(表4)。また、Tween 80の添加によって、セロプロテクション率が、ID低用量群では30%から90%に、およびID高用量群では90%から100%に上昇した。同様に、セロコンバージョン率は、低用量ID群では90%から100%に上昇し、高用量ID群では100%で変化しなかった(表4)。ID送達およびTween 80のこの組合せは、インフルエンザワクチンに対して明白な応答を強く示さない人間集団、例えば高齢者、幼児、および易感染性の人に対して、特別の利点がある。
Tween 80によって高められた、3価の試験抗原に対する血球凝集素特異力価:ハートレーモルモットを用いた試験では、5.0%v/vTween 80を補足したフルゾン接種物が、ID送達された。補足皮内製剤は、ID送達したフルゾン(単独)およびIM送達したフルゾン(単独)より優れていた。血清検体は、既述のHAI方法によってアッセイした。3価試験抗原は、ニューカレドニア、パナマ、およびB−香港の抗原を含んだ。3価試験抗原は、等部のHAで構成された。結果を図31に示した。この試験では、34ゲージの1.0mm針を用いた。
Tween 80が、選ばれた賦形剤プロファイルに適合する。:図35は、皮内組織に対して、本発明によって選択された賦形剤を示す。Tween 80は、図中で傾きが0.125より大きい「賦形剤A」と同様のプロファイルを有する。そこでTween 80の5%v/v溶液は、1.0mm深さでの最大実施濃度であり、3mm深さで10%v/vも首尾よく用いることができる。
デオキシコール酸塩
DOCによって高められた、3価の試験抗原に対する血球凝集素特異力価:ハートレーモルモットを用いた試験では、フルゾン接種物は、0.1%w/vデオキシコール酸ナトリウムが補足され、ID送達された。補足されたID製剤は、ID送達したフルゾン(単独)およびIM送達したフルゾン(単独)より優れていた。血清検体は、既述のHAI方法によってアッセイした。3価試験抗原は、ニューカレドニア、パナマ、およびB−香港の抗原を含んだ。3価試験抗原は、等部のHAで構成された。結果を図32に示した。この試験では、34ゲージの1.0mm針を用いた。
DOCによるセロコンバージョンの上昇:ウイルス分解剤(virus splitting agent)であるデオキシコール酸塩が、IDスペースへと送達されたとき、それは、図28に示されるように免疫増強特性を示した。ここで3価ワクチンのフルゾンを、DOC抜きでIM送達したが、免疫後21日に動物5頭中1頭のみでセロコンバージョンした。しかし、同図は、DOCを補足したフルゾンをID経路で投与した動物5頭中5頭でセロコンバージョンしたことを示す。0.1%のデオキシコール酸ナトリウムを含むID製剤は、力価の最適中央値を実現した。この試験はBalb/cマウスで実施された。
組織深さと共に変化するDOC実施範囲:3価のワクチンと濃度変化させたデオキシコール酸塩とを含む接種物が、ヨークシャー・ブタにおいて皮膚適合性に対して評価された。0.05%および0.1% +/− 3価ワクチンを含む接種物は、1.5mm深さでよく作用した(図29)。以前の試験(データは示さない)では、0.5%w/vおよびさらに濃い濃度のデオキシコール酸塩は、1.5mm深さでは許容されなかった。この点では、1.5mm送達に対する好ましい範囲は0.07から0.15%w/vであり、2番目に良い範囲は0.01から0.3%w/vにわたると期待される。Tweenに対して記載したように、濃度の上限は注射深さの深まりと共に上昇させることができる。例えば3mmでの投与では、0.6%w/vまで、またはそれより濃いデオキシコール酸塩が許容される。
実施濃度の確認および他の賦形剤での利点の特定
これらの試験の目的は、ワクチン製剤送達に対する濃度範囲を含んだ最適なパラメーターを決定することであって、該ワクチン製剤には、従来の製造過程で用いられる賦形剤が含まれる。該賦形剤としては、安定剤や防腐剤などがあり、例えばゼラチンおよびアムホテリシン−B、バクト・ペプトン(培地中の成分)およびリン酸トリブチル(分解(splitting agent)剤と共に用いられる希釈剤)がある。時折これらの薬剤の残余量が最終ワクチン製剤に持ち越され、予想外の特性を有することができる。
6.4.2 ゼラチン
アジュバント特性および良好な流動性を持つゼラチン製剤:ゼラチンの好ましい範囲は、0.01から0.225%w/vと決定された。高濃度のゼラチンは、室温で、そして特に冷蔵温度で固化する。これは、国家管理グレード(national formulary grade)のゼラチン(ブタ由来)で作業した際に認められた。0.225%w/vのゼラチンは、容易に34ゲージの針を通過し、1から3mm組織深saでよく許容された。
ゼラチンはセロコンバージョンおよび中央値を上昇させる.
0.45%w/vで用いられるゼラチンは、標的抗原の免疫原性を高める。図26は、ゼラチンを含む皮内製剤が、筋肉内製剤より優れていることを示す。ゼラチンを補足したフルゾン3価製剤が、ID送達され、フルゾン単独がIM送達された。ELISAアッセイを用い、試験抗原はPR8であった。動物モデルはBalb/cマウスであり、針は34ゲージの1mmであった。
6.4.3 アムホテリシンB:
Amp−Bの皮膚適合性:ヨークシャー・ブタの試験では、動物は、総用量600ng/100μLまたは1200ng/100μLを許容した。ドレイズ・スコア分析から明らかなように(図27)、Amp−Bは、単独またはフルゾンワクチンとの混合物として評価したときに、よく許容された。分析は1.5mm深さで実施した。
6.4.4 バクトペプトン
ペプトンは視認できる炎症を軽減する。
もう1つの予想外の結果は、賦形剤が、ワクチンそれ自体と希釈剤とが原因となる炎症を沈静化することであった。バクトペプトン賦形剤は、投与部位で見られることが多い炎症を、遮蔽することが示された。図30に示されるように、ハンクスの緩衝塩類液(希釈剤)のみで軽度の炎症を引き起こすことがある。賦形剤であるバクトペプトンは、添加されたときに沈静作用があり、これによってドレイズ・スコアが低下する。陽性特性は、バクトペプトンが1.5%w/vで用いられたときに特に明らかである。実験は、ヨークシャー・ブタで実施し、組織深さは1.5mmであった。
6.5 さまざまな賦形剤でのドレイズ・スコア法
さまざまな賦形剤に対するドレイズ・スコアの紅斑を、上記5.4節で記載した手法を用いて決定した。1つの試験では、Tween 80(5%)、デオキシコール酸塩(0.1%)、D−ソルビトール(5%)、またはルトロール(15%)を、抗原抜きで、ハートレー・モルモットに、34ゲージの1.0mm針を用いて投与した(注射当たり50μL)。図33に示すように、DOCを除く賦形剤すべてが、特定の濃度においてモルモットで合理的によく許容された。但し、DOCだけは許容可能なドレイズ・スコア値の丁度上の皮膚反応を生じた。デオキシコール酸塩を、この濃度で信頼性よく使用するためには、より深く投与する必要がある。左から右へと、投与直後の読み取り、1時間後の読み取り、および24時間後の読み取りである。
もう1つの試験では、Tween 80(5%)、デオキシコール酸塩(0.1%)、D−ソルビトール(5%)、またはルトロール(15%)を、抗原抜きでヨークシャー・ブタに、31ゲージの1.5mm針を用いて投与した(注射当たり200μL)。図34に示すように、DOCを除く賦形剤すべてが、指定の濃度においてブタで合理的に許容された。但し、DOCだけは、許容可能なドレイズ・スコア値の丁度上の皮膚反応を生じた。デオキシコール酸塩を、この濃度で信頼性よく使用するためには、より深く投与する必要がある。1時間後の読み取り(左)、および24時間後の読み取り(右)である。
本発明は特定の実施形態に関して記載されているが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲を逸脱することなく、さまざまな改変と改良とがなされてもよいことが当業者には明らかである。