JP2007515249A - 低プロファイル吸収性ステント - Google Patents

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Abstract

配向された吸収性材料を含み、該材料は、配向状態においては非配向状態におけるヤング率及び引っ張り強さより大きいヤング率及び引っ張り強さを有することを特徴とする、低プロファイル吸収性ステントが開示される。低プロファイル吸収性ステントは、約2〜300GPaのヤング率及び/又は50〜200MPaの引っ張り強さを持つ吸収性材料を有する。本発明の吸収性材料は、引っ張り強さ及びヤング率が非配向材料より大きく、低プロファイルステント設計を可能にするように、配向させる。低プロファイル吸収性ステントを製造する方法も開示される。本方法は、吸収性材料を含む押出材を準備し、該押出材に分子整列を生じさせて配向押出材を形成し、該配向押出材からステントを形成するステップを含む。吸収性材料の押出材は、シート状、管状、又は他の何らかの形状のものとすることができる。シート状押出材は、分子整列を生じさせるために一軸延伸又は二軸延伸される。管状押出材は、分子整列を生じさせるためにブロー成形される。

Description

本発明は、吸収性ステントの分野に関する。特に、本発明は、低プロファイルを有する吸収性ステント及びその製造プロセスに関する。
ステントは、医学界において、弱くなった血管又は閉鎖しやすい血管などの身体内腔を支持することが可能な装置として受け入れられてきた。典型的には、ステントは、閉塞/狭窄した血管を部分的に拡張して、ステントを送達し配置できるように血管形成措置が行われた後に、患者の血管内に挿入される。血管形成を行うのに用いたカテーテルを患者から除去した後に、送達カテーテルの遠位端が小口径の送達形状に維持された管状ステントが、血管を通して狭窄範囲の部位に誘導される。狭窄部位において位置決めされると、ステントは、送達カテーテルから解放され、半径方向に拡張して血管の内表面に接する。拡張ステントは、足場状の支持構造を与えて、ステントによって係合された血管領域の開通性を維持し、それにより血流を促進する。医師は、拡張前措置を行わずに、ステントを病巣に直接配置することを選ぶこともできる。この手法は、送達能力の高いステント、すなわち低プロファイルで柔軟性の高いステントを必要とする。
様々な種類の血管内ステントが提案され、再狭窄を防ぐための手段として用いられてきた。典型的なステントは、動脈内腔を開放させておくことができる管状の装置である。1つの例として、動脈血管内に永久的に埋め込むように設計された金属ステントが挙げられる。金属ステントは、低プロファイルと高強度とを併せ持つ。しかしながら、金属ステントがあるにもかかわらず、再狭窄の発生が見られる場合もある。さらに、埋め込まれたステントが、望ましくない局所血栓症の原因であると認められた場合もある。これに対処するために、一部の患者は、局部血栓症又は再狭窄を予防するために抗凝血薬及び抗血小板薬を投与されるが、これは、血管形成治療を長引かせ、その費用を増加させる。
永久埋め込み型金属ステントの使用に関する懸念に対処するために、数多くの非金属ステントが設計されてきた。Ryanらの米国特許第5,984,963号は、時間の経過と共に患者の体内で分解する吸収性ポリマで作られた高分子ステントを開示する。WOLFFらの米国特許第5,545,208号は、内腔に挿入して再狭窄を制限するための高分子人工器官を開示する。人工器官は、該人工器官が吸収されるにつれて放出される再狭窄制限薬を担持する。しかしながら、吸収性ポリマの使用は、バルーン血管形成に関連する術後の問題を解決する際に高分子ステントの効果を制限するという欠点を有する。
高分子ステントは、典型的には、生体吸収性ポリマから作られる。吸収性ステントを作るのに典型的に用いられる材料及びプロセスは、同じ大きさの金属ステントと比較して引っ張り強さが小さい低弾性率のステントをもたらす。吸収性ステントの機械的強度が制限されることにより、ステントが挿入された後にステントの反動が生じる可能性がある。これは、内腔面積の減少につながり、したがって血流の減少につながる場合がある。最悪の場合には、血管が完全に再閉塞することがある。反動を防止するために、高分子ステントは、(高プロファイルにつながる)より太い支柱を持つように、又は機械的特性を改善する複合材料として、設計されてきた。比較的太い支柱の使用によって、高分子ステントはより堅くなり、反動を起こしにくくなるが、動脈内腔のかなりの部分が、ステントによって占有される可能性がある。このことが、ステントの送達をより困難なものとし、内腔を通る流れの面積を減少させる可能性がある。より大きな支柱面積はまた、血管壁の損傷レベルを高め、これが、再狭窄すなわち血管の再閉塞の発生率をより高めることにつながる場合がある。
金属ステントを十分に代替し、かつ、血管形成の補助として用いることができる吸収性ステントを開発するために、多くの研究が行われてきた。しかしながら、引っ張り強さが大きく、高弾性率で、低プロファイルの吸収性ステントを作る材料及びプロセスについての必要性が、依然として存在する。
ステント作成に用いられる吸収性材料に分子整列又は分子配向を導入することによって、特性が強化された低プロファイル吸収性ステントを作成できることが分かった。したがって、本発明は、配向吸収性材料の形態を制御する方法、及び配向吸収性材料を含む低プロファイルステントを製造する方法に関する。
本発明の1つの実施形態は、配向された吸収性材料を含み、該材料は、配向状態においては、同一の吸収性材料の非配向状態におけるヤング率より大きいヤング率を有することを特徴とする、低プロファイル吸収性ステントに関する。代替的に、前述の材料は、配向状態においては、同一の吸収性材料の非配向状態におけるヤング率及び引っ張り強さより大きいヤング率及び引っ張り強さを有する。本発明の吸収性ステントは、約2GPaより大きく、好ましくは約2〜300GPaの範囲のヤング率を有する吸収性材料を含むものとして作られる。代替的に、吸収性ステントは、約50MPaより大きい引っ張り強さと、約2GPaより大きいヤング率とを有し、好ましくは、約50〜200MPaの引っ張り強さと、約2〜300GPaのヤング率とを有する材料を含むものとして作られる。本発明のステントは、必要に応じて、生理活性薬剤、可塑剤、及び調整剤のうちの1つ又はそれ以上をさらに含む。
別の実施形態においては、本発明は、低プロファイル吸収性ステントを製造する方法に関する。本方法は、吸収性材料を含む押出材を準備し、該押出材に分子整列を生じさせて配向押出材を形成し、該配向押出材からステントを形成することを含む。吸収性材料の押出材は、シート状、管状、又は他の何らかの形状のものとすることができる。シート状押出材は、分子整列を生じさせるために一軸延伸又は二軸延伸される。管状押出材は、分子整列を生じさせるためにブロー成形される。管状押出材は、テーパーダイ上に引き出すこともできる。
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものであり、特許請求の範囲に記載の本発明をさらに説明することを意図している。
ここで詳細に本発明の実施形態に言及することとし、その例は、添付図面において明らかにされる。
本発明の実施形態は、配向状態におけるヤング率が同一の吸収性材料の非配向状態におけるヤング率より大きい配向吸収性材料を含む低プロファイル吸収性ステントに関する。代替的に、前述の材料は、配向状態におけるヤング率及び引っ張り強さが、同一の吸収性材料の非配向状態におけるヤング率及び引っ張り強さより大きい。ここでは、吸収性は、時間の経過と共に溶解する材料を意味するように用いられる。溶解のプロセスは、分解、溶解によるか、又は、ステント材料が溶けて身体に吸収される他の何らかの手段によるものとすることができる。本発明の吸収性ステントは、生体吸収性、又は代替的には、生体分解性である。本発明の吸収性ステントは、約2GPaより大きいヤング率を有する材料を含む。好ましくは、約2〜300GPaのヤング率を有する材料を含む吸収性ステントが作られる。
ここで用いられる場合には、ヤング率としても知られる弾性率という用語は、単位歪みあたりの応力である。弾性率は、材料の剛性の大きさである。当業者に知られたいずれかの方法を用いて、弾性率を測定することができる。例えば、弾性率は、当該技術分野で周知の方法に従って、張力テスタを用いて測定することができる。代替的には、当業者に周知のように、動的機械分析装置(DMA)を用いて剪断弾性率を測定し、それをヤング率に転換することができる。
引っ張り強さは、引っ張り又は伸張応力に耐えるポリマの能力の大きさである。本発明の吸収性ステントは、約50MPaより大きい引っ張り強さと、約2GPaより大きいヤング率とを有する材料を含む。好ましくは、約50〜200MPaの引っ張り強さと、約2〜300GPaのヤング率とを有する材料を含む吸収性ステントが作られる。引っ張り強さは、当業者に知られたいずれかの方法で測定することができる。1つの例は、(ASTM International、West Conshohocken、PA、19428から入手可能な)試験方法ASTM−D638−72である。
本発明の吸収性ステントは、低プロファイルを有する。低プロファイルであることによって、施術者がステントを様々な身体内腔で用いることが可能になる。例えば、本発明のステントは、動脈及び静脈などの血管内に用いることができる。さらに特定的には、ステントを用いることができる血管は、心臓血管、神経血管、及び末梢血管を含む。一例として、心臓血管内に用いるための本発明の吸収性ステントは、約0.3mmより薄い壁厚又は支柱厚を有する。或いは、壁厚又は支柱厚は、約0.05〜0.25mmであり、或いは0.08〜0.15mmである。末梢血管内に用いるためのステントは、同一か又はより厚い厚さを有するものとすることができる。神経血管内に用いるためのステントは、同一か又はより薄い厚さを有するものとすることができる。
本発明の吸収性ステントは、配向吸収性材料を含む。配向という用語は、当業者に周知であり、ここでは、分子整列が材料に導入されたことを意味するように用いられる。分子配向又は分子整列は、材料の結晶相及び非晶相に導入することができる。分子配向又は分子整列は、材料の機械的特性を向上させる。例えば、材料に分子整列を導入することによって、材料のヤング率及び引っ張り強さが大きくなる。したがって、本発明の1つの態様は、吸収性材料に分子整列を生じさせて、非配向材料より大きいヤング率及び引っ張り強さを有する配向材料を作る方法に関する。本発明の材料は、非配向材料と比較してより大きいヤング率及び引っ張り強さを有する限り、いかなるレベルの配向又は分子整列を有するものとすることもできる。配向吸収性材料の機械的特性の向上によって、反動抵抗が大きく、かつ、低プロファイルを有するステントを作ることが可能になる。当業者に知られたいずれかの方法を用いて、分子整列を測定することができる。例えば、X線分析を用いて、材料における分子整列の程度又は量を求めることができる。代替的には、当業者に周知のように、フーリエ変換赤外(FTIR)分光が用いられる。
本発明において用いるための材料は、いずれかの吸収性材料を含む。1つの例においては、材料は吸収性ポリマを含む。本発明において用いるための吸収性ポリマは、ポリエステル、ポリアンヒドリド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、多糖類、ポリアミン、ポリリン酸塩、ポリホスホン酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリスルホンアミド、ポリホスファゼン、ハイドロゲル、ポリラクチド、又はポリグリコリドを含むが、これらに限定されるものではない。吸収性ポリマの具体例は、フィブリン、コラーゲン、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシビュートリック酸)、ポリ(d−乳酸)、ポリ(dl−乳酸)、ポリ(l−乳酸)(PLLA)、ポリ(ラクチド/グリコール)コポリマ、ポリ(ヒドロキシ吉草酸塩)、ポリ(ヒドロキシ−吉草酸塩−コ−ヒドロキシブチラート)、若しくは他のPHA、又は、例えばタンパク質細胞マトリックス、植物、及び炭水化物誘導体(糖)といった他の吸収性材料を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の吸収性ポリマは、ホモポリマ、コポリマ、又は、2又はそれ以上のホモポリマ若しくはコポリマの混合物とすることができる。本発明の吸収性ポリマは、いかなる分子構造を有するものとすることも可能であり、直鎖状、分岐状、超分岐状、又は樹状とすることができ、好ましくは、直鎖状又は分岐状である。
吸収性ポリマは、該吸収性ポリマを含む材料が、約2〜300GPaのヤング率及び/又は約50〜200MPaの引っ張り強さを有する限り、いかなる分子量のものとすることもできる。ポリマの分子量は、得られるステントの機械的特性をもたらす。吸収性ポリマは、単一の繰り返し単位から、約1千万の繰り返し単位までの範囲に及ぶものとすることができる。より具体的には、吸収性ポリマは、約10ダルトンから約100,000,000ダルトンの分子量を有するものとすることができる。吸収性ステントは、ある範囲の分子量、又は、特定の範囲の組み合わせの分子量を有するポリマ化合物を含むものとすることができる。本発明の吸収性ステントは、単一のポリマ、又は代替的には、2又はそれ以上の異なるポリマの混合物を含む。本発明において用いるための吸収性ポリマの具体的な好ましい例は、約100,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有する直鎖状ポリ(l−乳酸)及びポリ(グリコール酸)を含むが、これらに限定されるものではない。
吸収性ステントは、必要に応じて、可塑剤をさらに含む。可塑剤は、ここでは、ポリマの曲げ弾性率を低下させることができるいずれかの材料を意味するように用いられる。可塑剤は、ポリマの形態に影響を与え、溶融温度及びガラス転移温度に影響を及ぼすことができる。可塑剤の例として、有機及び無機小分子、(約50,000より小さい分子量を有する)オリゴマ及び低分子量ポリマ、超分岐ポリマ、並びに、デンドリマを挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的な例として、エチレン・グリコール、ジエチレン・グリコール、トリエチレン・グリコール、エチレン・グリコールのオリゴマ、2−エチルヘキサノール、イソノニル・アルコール、イソデシル・アルコール、ソルビトール、マンニトール、PEG−500とPEG−1000とPEG−2000とを含むポリエチレン・グリコールのオリゴマなどのオリゴマ・エーテル、並びに、他の生体適合性可塑剤が挙げられる。
吸収性ステントは、必要に応じて、調整剤をさらに含む。調整剤は、ここでは、ポリマ及びステントの特性に影響を与えるためにポリマに添加されるいずれかの材料を指すように用いられる。本発明において用いるための調整剤の例として、吸収性充填剤、酸化防止剤、着色剤、架橋剤、及び衝撃力調整剤が挙げられる。薬剤は、生理活性化合物及び分子である。
吸収性ステントは、必要に応じて、生理活性薬剤をさらに含む。薬剤は、ステントが吸収されるにつれて身体内腔に取り込まれることになる。本発明において用いられる薬剤は、抗血小板剤、カルシウム作用薬、カルシウム拮抗薬、抗血液凝固剤、抗分裂剤、酸化防止剤、代謝拮抗剤、抗血栓剤、抗炎症剤、増殖抑制薬、脂質低下薬、及び血管新生因子を含むが、これらに限定されるものではない。具体的な例は、グルココルチコイド(例えばデキサメタゾン、ベタメタゾン)、フィブリン、ヘパリン、ヒルジン、トコフェロール、アンジオペプチン、アスピリン、ACE阻害剤、増殖因子、及びオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されるものではない。
分子配向又は分子整列は、材料の分解速度にも影響を与え、したがって、生物学的薬剤の溶出速度又は放出に影響を与える可能性がある。材料に分子整列を導入することによって、薬剤の溶出速度が向上し、患者に対してより制御された投薬が可能になる。
本発明の吸収性ステントは、いかなる形、形状、又は構造を有するものとすることもできる。当業者であれば、本発明は、いずれか1つの種類のステントに限定されるものではなく、様々なステント設計に適用できることが分かる。一例として、本発明は、米国特許第6,613,079号、米国特許第6,331,189号、米国特許第6,287,336号、米国特許第6,156,062号、米国特許第6,113,621号、米国特許第5,984,963号、米国特許第5,843,168号に開示されるステント設計に適用可能であり、これらは引用によりここに組み込まれる。
別の実施形態においては、本発明は、低プロファイル吸収性ステントを製造する方法に関する。本方法は、吸収性材料を含む押出材を準備し、該押出材に分子整列を生じさせて配向押出材を形成し、該配向押出材からステントを形成することを含む。
材料を押し出して押出材を形成するプロセスは、当業者に周知である。当業者に知られたいずれかの押出方法を用いて、押出材を準備することができる。押出材はいかなる形又は大きさのものとすることもでき、具体的な例はシート及び管を含むが、これらに限定されるものではない。
シート状の押出材は、当業者に知られたいずれかの押出方法によって作ることができる。1つの例では、まず吸収性材料を準備し、それを他の任意の材料、例えば、可塑剤、薬剤、及び調整剤と混合して、材料混合物を作る。次いで、その混合物を押し出す。混合物は、フラット・ダイを通してキャスティング・ロール上に押し出すか、環状ダイを通してサイジング・マンドレル上に押し出すか、カレンダ加工プロセスにおいては2つ又はそれ以上のロールの間に押し出すか、又は、他の何らかの押し出しプロセスによって押し出すことができる。ダイ及びロールの温度は、独立に変化させて制御することができ、ダイ又はロールの温度は、材料混合物のガラス転移温度又は溶融温度より低くないことが好ましい。押出温度は、押し出される材料によって決まる。例えば、ポリ(l−乳酸)は、約75〜250℃の温度で、ダイを通して押し出されるか、又はロール間でカレンダにかけられる。別の例においては、ポリ(グリコール酸)は、約75〜250℃の温度で、ダイを通して押し出されるか、又はロール間でカレンダにかけられる。このプロセスによって、シート状の押出材が得られる。押出プロセスの際に用いられる具体的な押出方法及びパラメータは、当業者に明らかであろう。
次いで、分子整列が、押し出されたシートに導入される。当業者に知られたいずれかの整列方法を用いて、シートに分子整列を導入することができる。1つの具体的な例は、制御された温度及び制御された速度で、押し出されたシートを延伸することである。温度及び速度は、結果として押し出されたシートに分子整列を導入するあらゆる温度及び速度とすることができる。好ましくは、温度は、材料のガラス転換温度と溶融温度との間である。いずれかの方法を用いて、シートを延伸することができる。例えば、ドイツのSchweinbach所在のBrucknerから入手可能なLab Stretcher Karo IV(登録商標)などの機械が用いられる。延伸プロセスは、一軸方向又は二軸方向に行うことができる。一軸延伸は、実質的に一軸分子配向を生成し、一方、二軸延伸は、二軸分子配向を生成する。二軸延伸は、順番に、あるいは同時に、行われる。シート厚などといったバルクシートの特性もまた、延伸プロセスの際に制御される。好ましくは、シートは、引っ張り強さ及び弾性率を延伸方向に最大限に増加させるために、一軸方向に延伸される。延伸率は、延伸されたシートと延伸されていないシートと間の相対的な引き延ばしの程度を測定する。本発明においては、延伸率は、約1.5から約10までの範囲とすることができる。延伸率が大きいほど分子整列の量は多くなり、したがって、吸収性材料の引っ張り強さ及び弾性率は大きくなる。分子整列の量は、延伸前に、延伸中に、及び延伸後に、監視することができる。配向のレベルを監視するいずれかの方法を用いることができる。例えば、当業者に周知のように、FTIRが用いられる。このプロセスによって、シート状の配向押出材が得られる。
管状の押出材は、当業者に知られたいずれかの押出方法によって作ることができる。本発明において用いるための押出機の例は、管状の押出材を作る単軸スクリュー押出機及び二軸スクリュー押出機を含む。押出温度は、押し出される材料によって決まり、材料のガラス転移温度を超えるものとすべきである。例えば、ポリ(l−乳酸)は、約75〜250℃の温度で押し出される。別の例においては、ポリ(グリコール酸)は、約75〜250℃の温度で押し出される。管状押出材は、適当な浴液内で、又は空気中で、冷却することができる。管状押出材は、縦軸を有する中空円筒形状の管である。
次いで、押し出された管に分子整列が導入される。当業者に知られたいずれかの方法を用いて、管に分子整列を導入することができる。1つの具体的な例は、概ねガラス転移温度と溶融温度の間の温度で管をブロー成形することによって、半径方向の分子整列を導入することを含む。例えば、ポリ(l−乳酸)を含む管状押出材は、約75〜250℃の温度で、半径方向に拡張されるか又はブロー成形される。別の例においては、ポリ(グリコール酸)を含む管状押出材は、約75〜250℃の温度で、半径方向に拡張されるか又はブロー成形される。管状押出材をブロー成形するいずれかの方法を用いて、分子整列を生じさせることができる。1つの例においては、管状押出材をブロー成形機に置いて、半径方向に拡張させる。適当な媒体を用いて、押出材を拡張させる。適当な媒体は、気体又は液体とすることができ、又は、媒体を介在させずに機械的に拡張を行うことができる。押出材における分子整列は、拡張量又は延伸率に関連する。拡張量が大きいほど分子整列の量は多くなり、引っ張り強さ及び弾性率は大きくなる。
管状押出材に分子整列を生じさせる別の方法は、テーパーダイ上に管を引き出すことを含む。引き出しは、いずれの温度でも行うことができるが、材料のガラス転移温度と溶融温度の間の温度が好ましい。ダイのテーパーの角度が、延伸率したがって管の分子配向のレベルを制御する。テーパーの角度を大きくすることによって、配向のレベルが高くなる。本発明においては、引き出し後の材料が引き出し前の材料より大きいヤング率を有する限り、いかなるテーパー角度を用いることもできる。本発明においては、管状押出材は、ここで説明されたいずれかの方法を用いて、約1.5〜10の間の延伸率まで拡張される。
配向押出材を用いて、低プロファイル吸収性ステントを作る。当業者に知られているいずれかの方法を用いて、ステントを作ることができる。例えば、配向シートを用いて、ラチェット機構を備えるステントを設計することができる。いかなる種類のラチェット機構を用いることもできる。本発明において用いるためのラチェット機構の一例は、米国特許第5,984,963号に開示される。別の例においては、配向シートを用いて、らせん状のステントを設計することができる。本発明において用いるためのらせん状ステントの一例は、米国特許第6,156,062号に開示される。ラチェット機構は、予成形されたダイを用いることによるレーザ加工プロセス、又は当業者に知られた他のいずれかの方法を用いて、配向シートに導入することができる。ラチェット機構を組み込むために上述した同じ方法を用いて、ロック機構をステントに組み込むこともできる。ラチェット機構及びロック機構は、低プロファイル吸収性ステントの反動抵抗を大きくするのにさらに役立つ。さらなる例においては、低プロファイル吸収性ステントは、配向管状押出材から形成される。ステントは、当業者に知られたいずれかの方法を用いて形成することができ、例えば、管は、望ましい形状にレーザ加工される。
本発明の吸収性材料における分子整列の使用は、特定のステント設計に必要な押出材(例えば、シート又は管)の厚さを減少させるのに役立つ。これは、その結果、支柱の厚さを減少させる。支柱の厚さの減少により、高い強度及び反動抵抗を維持したままステント形状全体が小さくなる。
当業者であれば、特許請求の範囲において定められる本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更が可能であることが分かるであろう。したがって、本発明の広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれかに限定されるものではなく、特許請求の範囲及びそれらの均等のみに従って定められるべきである。

Claims (34)

  1. 配向された吸収性材料を含み、前記吸収性材料は、配向状態においては、同一の吸収性材料の非配向状態におけるヤング率より大きいヤング率を有することを特徴とする、低プロファイル吸収性ステント。
  2. 前記吸収性材料は、約2GPaより大きいヤング率を有することを特徴とする、請求項1に記載のステント。
  3. 前記吸収性材料は、配向状態においては、同一の吸収性材料の非配向状態におけるヤング率及び引っ張り強さより大きいヤング率及び引っ張り強さを有することを特徴とする、請求項1に記載のステント。
  4. 前記吸収性材料は、約2GPaより大きいヤング率と、約50MPaより大きい引っ張り強さとを有することを特徴とする、請求項3に記載のステント。
  5. 前記吸収性材料は、約2〜300GPaのヤング率と、約50〜200MPaの引っ張り強さとを有することを特徴とする、請求項4に記載のステント。
  6. 管状の本体を有することを特徴とする、請求項1に記載のステント。
  7. 前記吸収性材料は、生体吸収性又は生体分解性であることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
  8. 前記吸収性材料は、ポリエステル、ポリアンヒドリド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、多糖類、ポリアミン、ポリリン酸塩、ポリホスホン酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリスルホンアミド、ポリホスファゼン、ハイドロゲル、ポリラクチド、ポリグリコリド、タンパク質細胞マトリックス、又は、これらの共重合体ブレンド若しくは重合体ブレンドであることを特徴とする、請求項1に記載のステント。
  9. 前記吸収性材料は、
    フィブリン、コラーゲン、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシビュートリック酸)、ポリ(dl−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、ポリ(ラクチド/グリコール)共重合体、ポリ(ヒドロキシ吉草酸塩)、ポリ(ヒドロキシ−吉草酸塩−コ−ヒドロキシブチラート)であることを特徴とする、請求項8に記載のステント。
  10. 生理活性薬剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のステント。
  11. 前記薬剤は、抗血小板剤、カルシウム作用薬、カルシウム拮抗薬、抗血液凝固剤、抗分裂剤、酸化防止剤、代謝拮抗剤、抗血栓剤、抗炎症剤、増殖抑制薬、脂質低下薬、血管新生因子、グルココルチコイド、デキサメタゾン、ベタメタゾン、フィブリン、ヘパリン、ヒルジン、トコフェロール、アンジオペプチン、アスピリン、ACE阻害剤、増殖因子、又は、オリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項10に記載のステント。
  12. 可塑剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のステント。
  13. 前記可塑剤は、エチレン・グリコール、ジエチレン・グリコール、トリエチレン・グリコール、2−エチルヘキサノール、イソノニル・アルコール、イソデシル・アルコール、ソルビトール、マンニトール、PEG−500、PEG−1000、又は、PEG−2000であることを特徴とする、請求項12に記載のステント。
  14. 吸収性調整剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のステント。
  15. 前記吸収性調整剤は、充填剤、酸化防止剤、着色剤、架橋剤、及び、衝撃力調整剤であることを特徴とする、請求項14に記載のステント。
  16. 低プロファイル吸収性ステントを製造する方法であって、
    (a)吸収性材料を含む押出材を準備し、
    (b)前記押出材に分子整列を生じさせて配向押出材を形成し、
    (c)前記配向押出材から前記ステントを形成する、
    ステップを含むことを特徴とする方法。
  17. 前記吸収性材料は、ポリエステル、ポリアンヒドリド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、多糖類、ポリアミン、ポリリン酸塩、ポリホスホン酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリスルホンアミド、ポリホスファゼン、ハイドロゲル、ポリラクチド、ポリグリコリド、タンパク質細胞マトリックス、又は、これらの共重合体ブレンド若しくは重合体ブレンドであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  18. 前記ステントは生理活性薬剤を含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  19. 前記押出材はシートであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  20. 分子整列を生じさせる前記ステップは、前記シートを延伸させるステップを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
  21. 前記シートは、前記吸収性材料のガラス転移温度と溶融温度との間の温度で延伸されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
  22. 前記シートは、一軸延伸されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
  23. 前記シートは、二軸延伸されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
  24. 前記シートは、順次的に二軸延伸されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
  25. 前記シートは、同時に二軸延伸されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
  26. 前記押出材は、縦軸を有する中空円形状の管であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  27. 分子整列を生じさせる前記ステップは、前記管をブロー成形するステップを含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
  28. ブロー成形する前記ステップは、前記管を機械的に拡張させるステップを含むことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
  29. ブロー成形する前記ステップは、前記吸収性材料のガラス転移温度と溶融温度との間の温度で前記管をブローするステップをさらに含むことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
  30. 分子整列を生じさせる前記ステップは、前記管をテーパーダイ上に引き出すステップを含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
  31. 前記引き出すステップは、前記吸収性材料のガラス転移温度と溶融温度との間の温度で前記管を引き出すステップをさらに含むことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
  32. 前記ステップ(b)は、約1.5〜10の延伸率まで前記押出材に分子整列を生じさせるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  33. 形成する前記ステップは、前記配向押出材を機械加工するステップを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  34. 機械加工する前記ステップは、前記配向押出材をレーザ加工するステップを含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
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