JP2007512225A - 脳標的ステロイド薬剤供給系用の経粘膜剤形 - Google Patents

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Abstract

ステロイド薬剤供給軽のシクロデキストリンとの本質的に飽和した複合体の経粘膜剤形に処方された薬剤組成物と、その使用方法を開示する。

Description

本発明は経粘膜剤形に処方されたステロイド類のための薬剤供給系となるシクロデキストリン複合体と、この薬剤供給系の経粘膜生物学的利用能を高める方法に関する。
脳を標的とする薬剤供給系(CDS, chemical delivery system)は、薬物を供給するだけでなく、薬物をその作用部位の標的に導くための、逐次的な代謝を利用した合理的な薬物設計手法となっている。ジヒドロピリジン▲⇔▼ピリジニウム塩型のレドックス系は以前から提案されており、エストラジオールやテストステロンのようなステロイド系性ホルモンやデキサメタゾンのような抗炎症性ステロイドを含む、多くの薬物に適用されてきた。
このレドックス系によれば、中枢に作用する薬物[D]を、この薬物中の反応性官能基(例えば、ヒドロキシル官能基)を介して、第四級キャリア[QC]+に結合させる;生成した[D−QC]+を次いで化学的に還元して、類脂質のジヒドロ形態[D−DHC]にする。[D−DHC]をin vivo投与すると、これは急速に脳を含む全身に分配される。ジヒドロ形態[D−DHC]は、その後にその場で酸化されて(NAD▲⇔▼NADH系により)、理想的には不活性の元の[D−QC]+第四級塩になる。これは、そのイオン性で親水性という性質のために身体の全身循環系からは急速に排出されるが、血液脳関門によりその脳からの排出は阻止される。こうして脳内に「閉じ込められた」[D−QC]+は酵素変化よって薬物種[D]の持続した供給を行ってから、その正常な排出が起こる。適正に選択されたキャリア[QC]+も脳から急速に排出される。[D−QC]+は全身循環系からは容易に排出されるため、少量の薬物[D]だけが脳内で放出されることになる。総合的な結果は標的薬物種の脳特異的徐放となる。例えば、Bodorの米国特許第4,479,932号;第4,540,564号;第4,480,921号;及び第4,990,837号を参照。
Figure 2007512225
上記構造式で示される化合物17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール(E2−CDSとしても知られる)は、上記特許に記載された、エストラジオール用に開発された1つの具体的なCDSである。この場合、エストラジオールの親油性の17−ジヒドロトリゴネリンエステル、即ち、E2−CDS、は親水性のトリゴネリネートエステル(E2−Q)+に酵素転化され、これがBBBの特性のために脳内に特異的に保持される。親水性の(E2−Q)+形態は、こうして脳内に「閉じ込められ」、エストラーゼにより徐々に持続して加水分解されてエストラジオール(E2)になる。身体の残りの部分での同様のE2−CDS→E2+転化が末梢の排出を加速し、標的化を向上させる。
ジヒドロピリジン▲⇔▼ピリジニウム塩型レドックスキャリア系はラボ試験において脳への薬物標的化において顕著な成功を達成した。この成功は、もちろん、ジヒドロピリジン含有誘導体の高度の親油性によって脳への浸透が可能となることに部分的には基づいていた。同時に、親油性が高まることから、これらの誘導体を注射用の水溶液剤として処方することは実際上不可能となる。さらにDMSOのような有機溶媒中においても、それらは注射後に溶液から沈殿する傾向を示し、特に高濃度の場合や、殊に注射部位又は肺の中でそうである。目立つほどの結晶化を示さない場合でも、このレドックス誘導体はしばしば、脳内で所望の濃度を示すだけでなく、初期肺中濃度もまた望ましくない高濃度となることがある。さらに、ジヒドロピリジン含有誘導体は、乾燥状態でも酸化並びに水の付加に非常に敏感であるので、安定性の問題もある。
シクロデキストリンは環式α−(1→4)結合D−グルコピラノース単位からなる環式オリゴ糖である。6〜8単位のシクロデキストリン類はそれぞれα−β−及びγ−シクロデキストリンと呼ばれている。単位の数は、シクロデキストリン類を特徴づけるコーン形状のキャビティの大きさを決め、このキャビティ内に薬物が入り込んで包接化し、安定な複合体を形成することがある。1又は2以上のヒドロキシル基がエーテル基又は他の基で置換されたα−、β−及びγ−シクロデキストリンの数多くの誘導体が公知である。これらの化合物は従って公知の複合体形成剤であり、製薬分野では水不溶性薬物と包接複合体を形成して、それらを水性媒質中に可溶性にするためにこれまでも使用されてきた。
シクロデキストリンとの複合体形成は、上述したレドックス誘導体に伴う各種の問題点に対する解決手段を与えることが見出されてきた。これらの問題点は、Bodorの米国特許第5,002,935号;第5,017,566号;第4,983,586号;及び第5,024,998号で扱われている。特に、第5,002,935号及び第5,017,566号は、β−及びγ−シクロデキストリンのヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル、グルコシル、マルトシル及びマルトトリオシル誘導体と、脳標的薬物供給用のジヒドロピリジン▲⇔▼ピリジニウム塩型レドックス系の還元型の生酸化性で血液脳関門透過性の類脂質形態との包接複合体を記載しており、これらの複合体は上記レドックス系を特に酸化に対して安定化させる手段を提供する。レドックス包接複合体はまた、その系の投与後の肺内での初期薬物濃度を低下させる手段ともなり、毒性の低下につながる。特定の場合には、複合体形成によりレドックス系の水溶性の実質的な向上もまた生ずる。
この複合体に対して想定された投与経路は、経口、バッカル、舌下、局所(眼科用を含む)、直腸、膣、鼻並びに非経口(静脈内、筋肉内及び皮下を含む)を含むと言われている。しかし、上記特許には、非経口投与の場合を除いて具体的な処方組成物は全く開示されていない。E2−CDSとの具体的な複合体は記載され詳細に例示されている。第5,002,935号及び第5,017,566号の両方の図1は、水中でのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)の濃度が増大するほどE2−CDSの溶解度が増大することを示す相溶解度図である。その直線は1:1複合体の形成を示している。
Brewster et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 77, No. 11, 1988年11月, 981-985も参照。この論文は、E2−CDS及び多くの異なるシクロデキストリンによる研究を記載し、その図1は、高いHPβCD濃度における1:2複合体の生成も示すようである。また、Brewster et al.による経口使用の可能性に関するE2−CDSとのカルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリンの使用についての予備的研究についての報告:「脳標的性エストロゲンE2−CDSのカルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリンの使用による改善された経口生物学的利用能」、第8回国際シクロデキストリンシンポジウムの講演集、ブダペスト(ハンガリー): 3-30〜4-02, 1996, de Sante編(パリ)も参照。
ジヒドロピリジンレドックスキャリア薬物で最も研究されているのは上述したエストラジオールに対する供給系、E2−CDSであると思われる。E2−CDSは、男性性機能障害の治療(Andersonら米国特許第4,863,911号)及び体重コントロール(Bodorら米国特許第4,617,298号)、並びに脳特異的ステロイドデプリベーション(剥奪又は枯渇)症候群(のぼせ等)及び受胎調節(避妊)又は子宮内膜症及び前立腺肥大症のような性腺ステロイド依存性疾患の治療のためのゴナドトロピン分泌の慢性的低減(Bodorら米国特許第4,617,298号の第46欄に記載)を含む、多くの用途についてこれまでに示唆されてきた。
これらの従来の研究は、1回の選択されたE2−CDSの用量から極めて長期作用する効果(1カ月オーダー)を生ずるE2−CDSの能力に集中していた。これは、1カ月に1回の投与が、殊に女性の避妊の目的にとっては、特に好都合であると思われたために、投薬の目的には非常に望ましいと考えられたからである。末梢エストロゲンの初期の高濃度は懸念材料ではなかった。それらの濃度は、等モル量の従来のエストロゲンが生ずる濃度よりも低かったし、LH低下も等モル量の従来のエストロゲンで得られるものと同等であったためである。ラットでは、1カ月の活性を与えるために3mg/kgの用量のE2−CDSが典型的には使用された。この量は、ヒトで匹敵すると予想されるmg/kg量の一般に10倍である。即ち、女性では0.3mg/kg量が匹敵する結果を与えると予想された。
2−CDSの初期の研究の概観については、Brewster et al., Rev. Neurosci. 2, 241-285 (1990)を参照。彼らは、ヒトへのバッカル投与も最終的には可能かもしれないことを示唆している。他に、Brewster et al., J. Pharm. Sci. 77: 981-985 (1988); Estes et al., Life Sciences 40, 1327-1334 (1987); Anderson et al. Life Sciences 42, 1493-1502 (1988);及びRabimy et al., Maturitas 13, 51-63 (1991)も参照。
より低い用量も、安全性の確保のために必要であったため、女性での毒性試験の一部として含まれていた。しかし、閉経後の女性において効果的にLHを抑制し閉経後症候群を長期に治療するには投与量として約0.3mg/kgが必要であると予想されていた。
男性でも、従来の研究は、1回の選択されたE2−CDSの用量から極めて長く作用する効果(1カ月オーダー)を生ずるE2−CDSの能力に集中していた。これは、1カ月に1回の投与が特に好都合であると思われたために、投薬の目的には非常に望ましいと考えられた。男性性機能障害に関する上述したAndersonらの米国特許は、去勢された雄性ラットにおいて、3mg/kg−i.v.E2−CDSの量が1カ月の期間の活性を与えるのに典型的に使用されたことを示した。この量は、マウント(背乗り)行動を刺激し、イントロミッション(挿入)行動を増大させ、そしてマウント潜伏時間と挿入潜伏時間を共に低減させた。結論は、E2−CDSが男性性行動の準備的成分の強力で長期作用の刺激剤であることであった。Andersonらの米国特許は、末梢アンドロゲン応答性組織の欠乏もしくは障害が問題ない場合にはE2−CDS単独の使用を示唆した。そうでない場合には、テストステロンのようなアンドロゲンと一緒の投与を示唆した。3mg/kgのそのような量は、ヒトで匹敵すると予想されるmg/kg量の一般に10倍である。即ち、男性では0.3mg/kg量が匹敵する結果を与えると予想された。他に、Brewster et al., Rev. Neurosci. 2, 241-285 (1990)を参照。
2−CDSの作用の持続期間を考慮すると、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのような適当なシクロデキストリンとのその複合体の例えば非経口又はさらにはバッカル処方組成物をヒトに月に1回投薬することは、実用化が不可能ではないと考えられた。
しかし、最近になって、プロゲスチンと組み合わせたエストロゲンによる閉経後の女性の治療が虚血性心疾患からの保護や健康に関係する生活の質の改善を与えるという、一般に容認されてきた考えが正しくないことがわかってきた。エストロゲンへの恒常的な増大した末梢露出は、実際に、乳ガン、虚血性心疾患及び肺塞栓症を含む多くの病的状態に至ることがある; Beral et al., Lancet, 360 (9337), 942-944 (2002)。以前の予想とは異なり、ホルモン代替療法(HRT)は虚血性心疾患の発病率を低下させない; Low et al., Am. J. Med. Sci. 324(4), 180-184 (2002)。閉経後の女性におけるエストロゲン+プロゲスチンの組み合わせの、ウィメンズ・ヘルス・イニシアティブ(Women’s Health Initiative)試験は、湿潤性乳ガン、脳卒中及び心臓発作の危険性の許容できない増大のため予定より早く中止された: Rossouw et al., J. Am. Med. Assoc. 288, 321-333 (2002)。
最近の研究では、エストロゲンへの増大した末梢露出は一般に男性でも望ましくないことが示されている。
従って、E2−CDSは、その治療機能をなお達成するが、エストロゲンへの末梢露出を有意に増大させない経路で供給することができるようになるまでは、その完全な潜在能力を実現することができないことは明らかである。もちろん、エストロゲン類、プロゲスチン類又はアンドロゲン類であろうと、他の性ホルモンの薬剤供給系についても事情は同様であると予想されよう。即ち、それらが許容できるほど低い末梢ホルモン濃度を維持する有効量で供給することができれば、それらの有用性はより大きくなるであろう。同じことは、抗炎症性ステロイドに対する薬剤供給系にも言える。文献の報告では、薬剤供給系の投与は、それらの誘導に使われたステロイドそのものよりずっと低い末梢ホルモン濃度を与えることが示されているが、報告されている末梢濃度は著しい量であって、望ましい濃度よりは高い。
薬物の経口及び経粘膜供給は、多様な理由、真っ先に患者の服薬遵守性、又はコストもしくは治療上の観点から、非経口供給より好ましいことが多い。経口及び経粘膜の剤形の範囲内では患者の服薬遵守性が高められ、ヘルスケア提供者の訪問回数、又は注射の苦痛やある種の活性薬物に伴う長い点滴時間が軽減される。ヘルスケアのコストがエスカレートする状況では、非経口投与のコストに対する経口又は経粘膜投与に伴うコスト低減は重要となる。非経口投与のコストがずっと高くなるのは、ヘルスケア提供者のセッティングにおいてその薬物をヘルスケアの専門家が投与する必要があることと、そのような投与に伴う全ての付き添い者のコストも含むからである。
さらに、本例の場合、長期間にわたる末梢ステロイド濃度の著しい上昇を避ける必要性という治療上の観点は、実際上経口又は経粘膜供給によってのみ満たすことができる。しかし、経口供給は、E2−CDS又は他のジヒドロピリジンレドックスキャリア化合物類については実際的ではない。例えば、E2−CDSのジヒドロトリゴネリネート部分は胃腸液内では不安定性を示し、水の付加及び/又は酸化から始まる複数の分解生成物になる。
他方、経粘膜供給はこの種の薬物に対してこれまで全く最適化されることがなかった。特に、本技術分野は、E2−CDS及び他のステロイド−CDS薬物の経粘膜投与特に適合した剤形及び/又は投与計画、即ち、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら非経口投与から可能な所定の治療効果を達成するための、口−胃を経るのではなく、鼻、口、膣又は直腸の窩洞(キャビティ)を裏層する被蓋粘膜を介した投与を特に意図した剤形及び投与計画、を示唆することはなかった。
上述した通り、バッカル投与はステロイド−CDS薬物の包接複合体についてこれまでも示唆されたことがあり、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)とのE2−CDS複合体は実際に臨床試験においてバッカル投与に対して処方されたことがあるが、E2−CDS/HPβCD複合体に対してこれまでに記載されたバッカル剤形やバッカル投与計画には、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら所定の治療効果を達成したものがなかった。
さらに、本技術分野は、複合体を経粘膜剤形として投与することにした時に生物学的利用能及び患者間のばらつきに関して複合体形成の利益を如何にして最大化又は向上させることについても示唆していない。
ここに、過剰のシクロデキストリンは、S−CDS−シクロデキストリン複合体を含む経粘膜剤形からのステロイド系性ホルモン又は抗炎症性ステロイド用の薬剤供給系(S−CDS)の吸収を阻害し、飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体の経粘膜剤形は、経口及び/もしくは経粘膜生物学的利用能を向上させ、並びに/又はS−CDSの患者間及び/もしくは患者内のより低いばらつきを達成し、並びに/又は許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持すると思われる。
本発明は、複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない経粘膜剤形に処方された、本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を含む薬剤組成物を提供する。複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。本発明の特定の態様では、薬剤組成物は、複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない経粘膜剤形に処方された、本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を含んでいる。本組成物は、それが直腸、膣、頬又は鼻の粘膜と接触した時にその最高の熱力学的活性状態でS−CDSを提供する。
本発明はまた、S−CDSの経粘膜生物学的利用能を高める方法であって、それを必要とする個体に、本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を、複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない経粘膜剤形に処方して含む薬剤組成物を投与することからなる方法もまた提供する。この方法の特定の態様では、投与した組成物が、本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を、複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない経粘膜剤形に処方して含み、複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
本発明はさらに、経粘膜剤形からのステロイド系性ホルモン又は抗炎症性ステロイドのための薬剤供給系(S−CDS)の該S−CDSによる治療を必要とする哺乳動物における生物学的利用能を高める方法を提供する。この方法は、(a) 選択した量のS−CDSとの複合体形成と複合体中の該選択した量の保持とに必要なシクロデキストリンの最小量を決定し;(b) 水性媒質中で該選択した量に等しいか、それより過剰量のS−CDSを該最小量のシクロデキストリンと混合し;(c) 複合体形成媒質から、存在すれば複合体を形成していないS−CDSを除去し;(d) 得られた溶液から水を除去して乾燥状態の飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を得;(e) 該乾燥状態の本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を、複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含有していない経粘膜剤形に処方し(製剤化し);そして(f) 該剤形を経粘膜的に哺乳動物に投与する、ことを含む。
この方法の特定の態様では、工程(e) は、該乾燥状態の本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を、複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない経粘膜剤形に処方することを含み、複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
本発明はさらに、哺乳動物に本発明の組成物を投与することにより、哺乳動物におけるS−CDSの投与に応答した症状を治療することも提供する。S−CDS応答性症状の徴候を治療するための投与及びS−CDSの経粘膜生物学的利用能の増大を目的とする本発明の薬剤組成物の製造へのS−CDSの使用も提供される。
以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより本発明とそれに伴う多くの利点のより完全な理解がより容易に得られよう。
本明細書及び特許請求の範囲を通して、下記の定義及び一般説明が適用されうる。
本書で言及した特許、公開出願及び科学文献は当業者の知識を確立するものであり、それらの全体をそれらが具体的かつ個々に援用することが表示されているものと同じ扱いで本書に援用される。本書で引用した文献と本明細書の具体的記載との間の不一致は、後者の方を選んで解決するものとする。同様に、技術分野で理解されている単語又は語句の定義と本明細書に具体的に記述されている単語又は語句の定義との間の不一致も後者の方を選んで解決するものとする。
ここで使用した「複合体」なる用語は、ステロイド系CDS分子の疎水性部分(典型的にはステロイドの環系の部分)がシクロデキストリン分子の疎水性キャビティ内に挿入された包接複合体(包接化合物)を意味する。例えば、E2−CDSとHPβCDの場合、1:1複合体ではステロイドの芳香族性A環が包接されると考えられる。より高いHPβCD濃度では、E2−CDS:HPβCDの1:2複合体が生成し、第二のHPβCD分子がE2−CDS分子のジヒドロニコチネート基と相互作用しうる。
本書において、請求項の連結句又は本文のいずれにあろうと、「〜を含有する」又は「〜を含む」なる語句は、オープンエンド(非制限型)の意味を有すると解釈されるべきである。即ち、これらの語句は「〜を少なくとも有する」又は「〜を少なくとも含んでいる」なる語句と同義であると解釈されるべきである。方法に関して使用される場合、「〜を含む」なる語句は、その方法が少なくとも列挙された工程を包含するが、追加工程も包含しうることを意味する。組成物に関して使用される場合、「〜を含有する」なる語句は、その組成物が少なくとも列挙された特色又は成分を含んでいるが、追加の特色又は成分も含みうることを意味する。
「〜から本質的になる」又は「本質的に〜からなる」なる語句は、部分排他的意味を有する。即ち、これらの語句は、方法又は組成物の本質的特徴を実質的に変化させるような工程又は特色もしくは成分、例えば、本明細書に記載した組成物の所望の特性を著しく妨げるような工程又は特色もしくは成分、を含むことを許さない。即ち、方法又は組成物は、明記された工程又は材料並びに本発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しないものに制限される。
本発明の基本的かつ新規な特色は、複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない経粘膜剤形の飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体の提供であり、この複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すか、並びに/又は改善された生物学的利用能を与えるか、並びに/又は投与後の患者間及び/もしくは患者内のばらつきを低下させるのに有効な量である。
本発明の特定の態様では、その基本的かつ新規な特色は、複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない経粘膜剤形の飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体の提供であり、この複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すか、並びに/又は特に向上した生物学的利用能を与えるか、並びに/又は投与後の患者間及び/もしくは患者内のばらつきを低下させるのに有効な量である。
別の態様において、その基本的かつ新規な特色は、17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル又はカルボキシメチルエチル誘導体との実質的に飽和した複合体の無水処方組成物であって、該化合物を約0.01〜2.0mg含有する処方組成物を含む、バッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチの提供である。
「〜から成る」及び「から成る」は排他的用語であり、列挙された工程又は特色もしくは成分しか含むことを許さない。
本明細書で用いた単数形での記載は、記載内容が明らかにそうではない場合を除いて、それが言及する用語の複数形も包含する。
「約」なる用語は、ほぼ、およそ、略、又は前後を意味するとして本明細書で使用される。「約」なる用語が数値範囲に関して使用される場合、それは記載された数値範囲の上下の境界を拡張することによりその範囲を緩和する。一般に、「約」又は「ほぼ」なる用語が本明細書において使用された場合、数値範囲は記載の値の上下に20%の変動率で緩和される。
シクロデキストリン中でのS−CDSの複合体に関して用いた場合の「飽和した」なる用語は、その複合体がS−CDSで飽和していること、即ち、その複合体が、使用した複合体形成条件下で所定量のシクロデキストリンと複合体形成することができる最大量のS−CDSを含んでいることを意味する。この情報を得るには、後でより詳しく説明するように相溶解度の検討を使用することができる。(複合体形成条件についても後でより詳しく説明する。)或いは、飽和複合体は、選択したシクロデキストリンの水溶液に、(複合体を形成していないS−CDSの)沈殿が生成するまでS−CDSを単に添加することにより経験的に到達することもできる。最後に、沈殿を除去し、得られた溶液を凍結乾燥すると、乾燥状態の飽和複合体が得られる。
「本質的に飽和した」におけるような「本質的」なる用語は、複合体80〜100%、好ましくは90〜100%が飽和形態にあることを意味する。
「実質的に含んでいない」又は「実質的に全部」におけるような「実質的」なる用語は、正確に計算された量の20%以内を意味する。「複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない」なる文章の場合、複合体中のS−CDSを保持するのに必要なシクロデキストリンの最小量は、後でより詳しく説明するように相溶解度の検討から得ることができる。シクロデキストリンの実際の量は、その最小量のプラスマイナス20%以内、好ましくはその最小量のプラスマイナス10%以内、さらにより一層好ましくはその最小量のプラスマイナス5%以内とすべきであり、複合体中に薬物の少なくとも90%又はそれ以上、好ましくは少なくとも95%又はそれ以上の薬物を保持すべきである。他方、一方、「複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない」なる文章を使用した場合には、上述したのより少ない量のシクロデキストリンを利用してもよく、また、より多い量のS−CDSを結果として複合体形成していない形態で剤形中に存在させてもよい。これは、複合体形成反応に濃縮度のより低いシクロデキストリン溶液を使用するか、及び/又は後で示唆する温度範囲の上限で複合体形成を行うことにより起こりうる。しかし、複合体中に実質的に全部のS−CDSを保持するのに十分なシクロデキストリンを使用し、こうして剤形中の複合体形成していないS−CDSの量を最小限にすることが特に有利であると考えられる。
「患者間のばらつき」なる用語は、薬物を投与する複数の患者の間でのばらつきを意味する。「患者内のばらつき」なる用語は、異なる時点で投与した時に単独の患者により経験するばらつきを意味する。
本明細書において用いた場合、ある変数についての数値範囲の記述は、その範囲内の任意の値に等しいその変数で本発明を実施できることを意味するものである。従って、本来的に離散(不連続)の変数の場合、その変数は、その数値範囲の終端点を含む範囲内の任意の整数値に等しい値をとることができる。また、本来的に連続的な変数の場合、その変数は、その数値範囲の終端点を含む範囲内の任意の実数値に等しい値をとることができる。1例として、0〜2の値であると記載された変数は、本来的に離散の変数である場合は0、1又は2であることができ、本来的に連続する変数の場合には、0.0、0.1、0.01、0.001、又は任意の他の実数であることができる。
明細書及び特許請求の範囲において、単数形は、記載内容が明らかにそうではない場合を除いて、そのものの複数形をも包含する。ここで用いた「又は」や「もしくは」なる語は、具体的にそうではないことが指示されていない限り、「いずれか一方」という「排他的」意味ではなく、「及び/又は」、「及び/もしくは」という「包括的」意味で使用される。
ここで用いた技術及び科学用語は、特に指示しない限り、本発明が属する技術分野の当業者が普通に理解する意味である。本明細書では当業者に公知の各種の方法及び材料への言及がなされる。薬理学の一般原理を説明する標準的な参考文献としては、Goodman 及びGilman著The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第10版, McGraw Hill社、ニューヨーク(2001)が挙げられる。
ここで用いた「S−CDS」なる用語は、ステロイド系性ホルモン又は抗炎症性ステロイド用の脳特異的薬剤供給系である薬物を意味する。これは、多様な種類の中枢作用性医薬用の脳特異的薬剤供給系を記述する、本技術分野で使用されている「CDS」よりは狭い定義である。しかし、それは、本発明が関係する薬物を言及するための有用な略記法である。より具体的には、本発明を記述するのに用いた「S−CDS」なる用語は、次の(I)式で示される化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩を意味する。
Figure 2007512225
式中、
(a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系女性ホルモンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
Figure 2007512225
式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
(b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
(c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味である。
上の各式において、nは一般には1又は2であるが、多くの具体的態様ではnは1である。R1、R’、R’’又はR’’’がC1〜C7アルキルである場合、それはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルもしくはヘプチル又はその分岐鎖異性体のいずれかであることができる。R1又はR’’’がC7〜C10アラルキルである場合、それは−(C1〜C3アルキレン)フェニル、典型的にはベンジルである。多くの具体的態様において、[DHC]は、(A)式においてR1がメチルであるものである。[DHC]が(B)式のものである場合、R3は典型的には−CH2−であり、Xは典型的には−CONH2又は−COOR’’’であり、ここでR’’’は典型的にはメチル又はエチルである。
Dが上記(a)に定義されたようなステロイド系女性ホルモンの残基である場合、それは上に定義した構造要件を有するステロイド系エストロゲン又はステロイド系プロゲスチン(黄体ホルモン)である。そのようなエストロゲンとしては、例えば、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストロン、エストラジオール3−メチルエーテル、安息香酸エストラジオール及びメストラノールが挙げられる。そのようなプロゲスチンとしては、例えば、ノルエチンドロン、エチステロン、ノルゲストレル及びノルエチノドレルが挙げられる。Dが上記(a)に定義されるような残基である一般式(I)の化合物の例として下記が挙げられる。
Figure 2007512225
Figure 2007512225
Figure 2007512225
Figure 2007512225
Dが上記(a)のように規定される化合物は、本技術分野に記載された方法及びそれに類似する方法により製造することができる。例えば、Bodorの米国特許第4,900,837号及び第5,017,566号並びにそこに引用された文献を参照。
例えば、[DHC]が上記(A)である場合、該薬物のヒドロキシ基を塩化ニコチノイルと反応させ、生成したニコチネートを次いで、例えばヨウ化メチルで第四級化し、得られた第四級塩をその後、例えばジチオン酸ナトリウムで還元する。こうして1,4−ジヒドロピリジン誘導体が生成するが、少量の1,6−ジヒドロピリジン及び1,2−ジヒドロピリジン化合物も反応混合物中に生成している。1,6−及び1,2−ジヒドロピリジン誘導体はホウ水素化ナトリウム還元を用いると主成分として生成させることができる。いずれにしても、1,4−、1,6−及び1,2−ジヒドロピリジン誘導体はいずれもin vivoで同じ第四級形態、即ち、最終的に活性薬物、例えば、エストラジオールを放出する脳内に閉じ込められた形態、に酸化される。
[DHC]が上記(B)である場合、薬物中のヒドロキシ基を塩化ブロモアセチルと反応させて−OHを−OCOCH2Br基に転化させることができる。その化合物を次いでニコチン酸エステル又はアミドと反応させて対応する第四級塩を生成させることができ、それを次いで還元すると目的化合物が得られる。
Dが上記(a)に規定された通りである一般式(I)の好ましい化合物は上でE2−CDSと表示されている化合物である。
Dが上記(b)に規定される抗炎症性ステロイドの残基である場合、それは、例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、コルチゾン、フルメタゾン、フルプレドニゾロン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、コルトドキソン、フルドロコルチゾン、フルアンドレノリド又はパラメタゾンの残基である。Dが(b)に規定されるような残基である一般式(I)の化合物の例としては下記が挙げられる。
Figure 2007512225
Figure 2007512225
Dが上記(b)のように規定される化合物は、本技術分野に記載された方法及びそれに類似する方法により製造することができる。例えば、Bodorの米国特許第4,880,921号及び第5,017,566号並びにそこに引用された文献を参照。Dが上記(a)に規定されるような残基であるステロイドに対して上に概説した手順も参照。
Dが上記(b)に規定される通りである一般式(I)の好ましい化合物は、上でデキサメタゾン−CDS又はDEX−CDSと表示される化合物である。
Dが上記(c)のように規定される化合物は、本技術分野に記載された方法及びそれに類似する方法により製造することができる。例えば、Bodorの米国特許第4,479,932号;第4,900,837号及び第5,017,566号並びにそこに引用された文献を参照。Dが上記(a)に規定されるような残基であるステロイドに対して上に概説した手順も参照。Dが上記(c)に規定される通りである一般式(I)の好ましい化合物は、下記のものである。
Figure 2007512225
Dが上記(c)に規定される通りである一般式(I)の好ましい化合物は上でT−CDS1と表示されている化合物である。
次に本発明の具体的態様について詳しく説明する。以下ではこれらの具体的態様に関して本発明を説明するが、本発明をそのような具体的態様に限定する意図はないことは理解されよう。それどころか、特許請求の範囲により規定される本発明の技術思想及び範囲内に含まれうるような代替、変更よび均等態様を包含するものである。本明細書では、多くの具体的説明は本発明の完全な理解を与えるために述べるものである。本発明はこれらの具体的説明の一部又は全てを持たずに実施することもできる。他の場合には、本発明を不必要に不明確にしないように、周知の方法操作については詳細には説明しなかった。
本発明により望ましい薬物動態特性を達成するのに有用な組成物、並びに薬剤組成物の製造及び使用方法が提供される。かかる組成物は、S−CDSがその最高の熱力学的状態にあるシクロデキストリン及びS−CDSの各溶液は、それらが通過して吸収される粘膜(鼻、直腸、舌下、膣、又は特に頬の)に供給されると、より高い生物学的利用能並びに/又はより低い患者間及び/もしくは患者内ばらつきにより反映されるような、改善されたS−CDS吸収を伴い、許容できる低い末梢ステロイド濃度を保持するように投与用量を低下させることができるという確信から生まれたものである。
本発明を制限することを望むのではないが、溶解すると(体液のような液体との接触により)、過剰のシクロデキストリンを含有していない本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体の乾燥組成物は、S−CDSが最高熱力学的活性(HTA, highest thermodynamic activity)の状態にある局所的に本質的に飽和したS−CDS溶液を形成し、こうして吸収を助長すると考えられる。本質的に飽和した水溶液中での複合体の解離により生成した遊離S−CDSは、より安定した活性レベルをとろうとし、もし過剰のシクロデキストリンが存在していたなら、S−CDSはシクロデキストリンとの再複合体形成によってより大きな安定性をとろうとするであろう。シクロデキストリンの量を、投与剤形が複合体中にS−CDSを保持するのに必要な量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含まないように制限することにより、局所的に飽和した溶液中のS−CDSがシクロデキストリンと再化合することが容易ではなくなる。そのため、このS−CDSは、鼻、頬、舌下、膣又は直腸粘膜を通って吸収されることによって、より低い熱力学的活性/より多いな安定性の状態をとろうとする。
この手法は、とりわけ、恐らく過剰のシクロデキストリンの存在により生ずる恐れのあるS−CDS吸収の阻害を回避又は最小限にすることにより、生物学的利用能を増大させると考えられる。過剰シクロデキストリンが多量に存在すると、溶液状態のS−CDSはシクロデキストリンと再化合することが予測されよう。これは最適の生物学的利用能を達成しない。なぜなら、薬物がその治療機能を達成すべきなら、S−CDSはそれを封じ込めている複合体から出て行くことが必須であるからである。
以上を考慮すると、固体経粘膜剤形で最適の薬剤組成物を製造するには、S−CDSがHTA状態にある剤形を粘膜で体液と接触させて、局所的に本質的に飽和したS−CDS溶液を放出するようにこれらの剤形を処方すべきである。このような局所的に本質的に飽和した溶液をin vivoで供給するには、固体剤形中に使用すべきシクロデキストリンに対するS−CDSの最適比率(この比率を本発明ではHTA比と呼ぶ)をまず確定することが重要である。バッカル(経頬)剤形の場合、最小量の水に本質的に飽和した複合体を溶解し、この溶液を口腔前庭(頬内窩洞)に置くことにより作られた非常に濃厚な溶液が同じ効果を達成することができる。
HTA比は経験的(実験的)に決定され、所定量のシクロデキストリンと複合体形成することができる最大量のS−CDSに対応する、特定のシクロデキストリンに対するS−CDSの比率であると規定される。HTA比は、変化する濃度のシクロデキストリン溶液により可溶化することができるS−CDSの飽和濃度を求めるための相溶解度検討のような実験方法を用いて求めることができる。この方法は、飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体が形成される濃度を決めるものである。
相溶解度グラフ上のある点により表示されるモル比は、一定条件下で複合体中に薬物を保持するのに必要な最小量のシクロデキストリンのモル数を示すことに注意されたい。これをその後に重量比に換算してもよい。例えば、S−CDSの実質的に全部を飽和複合体中に保持するのにあるシクロデキストリンのあるモル数が必要であることを相溶解度図が示す場合、S−CDSのモル数にその分子量を乗じ、シクロデキストリンのモル数にその分子量を乗じて、それらの積に比にたどり着くと、それが適当な最適化された重量比となる。相溶解度の検討は、S−CDS−シクロデキストリン複合体の性質についての情報、例えば、複合体が1:1複合体(薬物1モルとシクロデキストリン1モルとの複合体)又は1:2複合体(薬物1モルとシクロデキストリン2モルとの複合体)であるか、も提供する。
本発明によれば、固定された変動因子としてシクロデキストリン又はS−CDSのいずれかを使用して出発することができ、それに過剰の他方の成分を添加して、多様なHTAデータ点(飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を意味する)を同定し、得られたHTA線を引く。
典型的には、複合体形成を促進することが経験的に判明している条件下でシクロデキストリン濃度が既知の水溶液にS−CDSを添加する。例えば、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンについては約25%、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンについては約33〜40%の濃厚溶液が1態様において特に有利である。一般に、複合体形成は室温で行われるが、若干の加熱(約50℃まで、さらにや60℃まで)も採用しうる。その後、過剰のS−CDS(存在すれば)を除去し、次に複合体中のS−CDS濃度を測定する。測定した濃度は、そのシクロデキストリン濃度に対するS−CDS飽和濃度を表す。
このプロセスを異なる既知濃度のシクロデキストリンについて、いくつかのデータ点が得られるまで反復する。各データ点は、ある既知濃度のシクロデキストリン中に溶解したS−CDSの飽和濃度を表す。これらのデータ点を次いで、使用した各種シクロデキストリン濃度に対するS−CDSの飽和濃度を示すようにプロットする。得られたグラフが相溶解度図であり、これを使用して、ある組み合わせの複合体形成条件下で飽和S−CDS−シクロデキストリン複合体を形成するための使用したシクロデキストリンの任意の特定濃度に対するS−CDSの飽和量を決めることができる。
当業者なら、飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体が生成する濃度(従って、HTA比もまた)を、多様な代替方法によっても求めることができることを理解しよう。従って、このような濃度を求めるのに適した本技術分野で公知の任意の方法が本発明の範囲内である。
本発明の範囲内のシクロデキストリンは、天然シクロデキストリンのα−、β−、及びγ−シクロデキストリン、並びにそれらの誘導体、特に1又は2以上のヒドロキシ基が、例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキシアルコキシアルキル、アルキルカルボニルオキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル又はヒドロキシ−(モノもしくはポリアルコキシ)アルキル基で置換され、各アルキル又はアルキレン部分の炭素数が好ましくは6以下である誘導体を包含する。
置換シクロデキストリン類は一般に、例えば1〜14、好ましくは4〜7といった、さまざまな置換度で得ることができる。置換度はシクロデキストリン分子上の概略平均置換基基数であり、例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン分子の場合ヒドロキシプロピル基の概略個数である。そのようなさまざまな置換度の全てが本発明の範囲内である。
本発明で使用できる置換シクロデキストリン類としては、例えば、米国特許第3,459,731号に記載されているようなポリエーテル類が挙げられる。置換シクロデキストリン類の別の例としては、1又は2以上のシクロデキストリンヒドロキシ基の水素がC1-6アルキル、ヒドロキシ−C1-6アルキル、カルボキシ−C1-6アルキル又はC1-6アルコキシカルボニル−C1-6アルキル基で置換されたエーテル類、又はそれらの混合エーテル類が挙げられる。特に、このような置換シクロデキストリン類は、1又は2以上のシクロデキストリンヒドロキシ基の水素がC1-3アルキル、ヒドロキシ−C2-4アルキル又はカルボキシ−C1-2アルキルで置換されたエーテル、より特にはメチル、エチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、カルボキシメチル又はカルボキシエチルで置換されたエーテルである。混合エーテルの例としては、O−カルボキシメチル−O−エチル−β−シクロデキストリン(カルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリンとも呼ばれる)並びにカルボキシメチルエチル−γ−シクロデキストリンのような類似の混合エーテルを挙げることができる。
「C1-6アルキル」なる用語は、メチル、エチル、1−メチルエチル、1,1−ジメチルエチル、プロピル、2−メチルプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を包含する意味である。
本発明での使用が考えられる別のシクロデキストリン類として、グルコシル−β−シクロデキストリン及びマルトシル−β−シクロデキストリンが挙げられる。本発明において特に有用であるものに、M. Nogradi (1984)がCyclodextrins of the Future, Vol. 9, No. 8, p. 577-578に記載したようなジメチル−β−シクロデキストリン、ランダムメチル化β−シクロデキストリン、並びにヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、及びヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリンのようなポリエーテル類、さらにはスルホブチルエーテル類、特にβ−シクロデキストリンスルホブチルエーテルがある。
単純シクロデキストリン類に加えて、分岐シクロデキストリン類及びシクロデキストリンポリマーも使用できる。他のシクロデキストリン類は、例えば、Chemical and Pharmaceutical Bulletin 28: 1552-1558 (1980); 薬業時報 No. 6452 (1983年3月28日); Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 19: 344-362 (1980); 米国特許第3,459,731号及び第4,535,152号;欧州特許公開EP0149197A及びEP0197571A;PCT国際特許公開WO90/12035;並びに英国特許公開GB2,189,245号に記載されている。
本発明に係る組成物に使用するためのシクロデキストリン類を記載し、かつシクロデキストリン類の製造、精製及び分析の指針を与える他の文献として下記を挙げることができる:Cyclodextrin Technology, Jozsef Szejtli, Kluwer Academic Publishers (1988), 製薬におけるシクロデキストリン類の章; Cyclodextrin Chemistry, M. L. Bender et al, Springer-Verlag, ベルリン (1978); Advances in Carbohydrate Chemistry, Vol. 12, M. L. Wolfrom編, Academic Press, ニューヨーク「シャーディンガーデキストリン類」の章、 Dexter French、 pp. 189-260; Cyclodextrins and their Inclusion Complexes, J. Szejtli, Akademiai Kiado, ブダペスト, ハンガリー (1982); I. Tabushi, Acc. Chem. Research, 1982, 15, pp. 66-72; W. Sanger, Angewandte Chemie, 92, p. 343-361 (1981); A. P. Croft et al., Tetrahedron, 39, pp. 1417-1474 (1983); Irie et al, Pharmaceutrical Research, 5, pp. 713-716 (1988); Pitha et al, Int. J. Pharm. 29, 73 (1986); 米国特許第4,659,696号及び第4,383,992号;独国特許DE3,118,218号及びDE3,317,064号;並びに欧州特許EP0094157A。β−及びγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル化誘導体を記載した特許としては、Pithaの米国特許第4,596,795号及び第4,727,064号並びにMullerの米国特許第4,764,604号及び第4,870,060号並びにMullerらの米国特許第6,407,079号が挙げられる。
S−CDS(例、E2−CDS、DEX−CDS又はテストステロン−CDS1)との複合体形成に特に興味あるシクロデキストリン類としては下記が挙げられる:β−及びγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、例えば、ヒドロキシエチルもしくはヒドロキシプロピル、誘導体;β−又はγ−シクロデキストリンのカルボキシアルキル、例えば、カルボキシメチルもしくはカルボキシエチル、誘導体;β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル;カルボキシメチルエチル−β−もしくはγ−シクロデキストリン;ジメチル−β−シクロデキストリン;並びにランダムメチル化β−シクロデキストリン。2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(HPγCD)、ランダムメチル化β−シクロデキストリン、ジメチル−β-シクロデキストリン、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン(CMβCD)、カルボキシメチル−γ−シクロデキストリン(CMγCD)、並びにカルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリンが特に興味があり、中でも、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン及びカルボキシメチル−γ−シクロデキストリンである。
本発明に使用するための本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体の組成物は、本明細書に説明し、かつ例示するように、液体環境中で複合体形成に有利となる条件下で製造することができる。得られた液体調製物を次いで、固体経粘膜剤形として投与するのに適した乾燥形態に転換することができる。
本明細書に記載したような組成物を調製するのに多様な手法が本技術分野で利用可能であることは当業者なら認めるであろう。ここに例示する1つの利用可能な手法は、シクロデキストリン水溶液にS−CDSを添加し、この複合体形成媒質を好ましくは攪拌しながら室温以下の温度に平衡を達成するのに十分な時間(例、約4〜24時間)保持し、蒸発乾固し、残渣に水を加えて水溶液化し、複合体形成していないS−CDSが存在すれば、例えば濾過又は遠心分離により分離し、そして得られた本質的に飽和した溶液を凍結乾燥して、固体の本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を形成する、という工程を含む。
凍結乾燥は、最初の凍結段階、次の第1乾燥段階及び最後の第2乾燥段階という3つの基本段階からなる。凍結乾燥は、Xiaolin (Charlie) Tang及びMichael J. PikalがPharmaceutical Research, Vol. 21, No. 2, 2004年2月、 191-200 (ここにその全体を援用し、準拠する) に記載した原理に従って最適化することができる。
本発明に係る薬剤組成物は、1又は2以上の賦形剤又は他の薬学的に不活性な成分を任意成分として含有していてもよい。しかし、本発明の利点の1つは、ここに記載したS−CDS薬物形態を、錠剤又はパッチといった特定の形態の賦形及び製造に必要な最小量の賦形剤を用いて製造することができることである。賦形剤は、S−CDS、シクロデキストリン又は複合体形成を阻害しないものから選択することができる。
剤形は、場合により、周知の薬剤に許容されるキャリア、希釈剤、結合剤、滑剤、崩壊剤、捕捉剤(スカベンジャ)、香味料、着色剤及び賦形剤の任意のものと共に薬剤に許容されるビヒクル中に処方することもできる(Handbook of Pharmaceutical Excipients, Marcel Dekker Inc., ニューヨーク及びバーゼル(1988); Lachman et al.編, The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, 第3版, (1986); Lieberman et al.編, Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker Inc., ニューヨーク及びバーゼル(1989); 及びThe Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第3版, American Pharmaceutical Association and Pharmaceutical Press, 2000を参照; また、Remingtons’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, Gennaro, Mack Publishing Co., イーストン, ペンシルベニア州(1990)及びRemington: The Scienece and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams & Wislkins (1995)も参照)。
単純な固体経粘膜剤形は、本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を少量(例、約1重量%)の適当な結合剤又は滑剤(ステアリン酸マグネシウムのような)と共に圧縮したものからなる。すばやい溶解を助け、そして良好な口内感触を付与するために、ソルビトールを複合体並びにステアリン酸マグネシウムに添加してもよい。
特定の態様では、本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体をS−CDSの経粘膜、特にバッカル投与のために使用する。「バッカル」なる用語は、頬の粘膜を通過させて薬物を血液流に送給することを意味する。
ここで用いた「粘膜」とは、鼻、口、膣又は直腸の窩洞を裏層する上皮膜を意味する。ここで用いた粘膜(投与もしくは供給)及び経粘膜(投与もしくは供給)は相互置換可能な意味で使用される。経粘膜供給法及び剤形は本技術分野では周知である。これらはバッカル及び舌下錠剤、ロジンジ剤、粘着性パッチ、ゲル剤、溶液剤もしくはスプレイ剤(粉末、液体もしくはエアゾール)、並びに座剤もしくはフォーム剤(直腸もしくは膣投与用)を包含する。
経粘膜剤形が液体である場合、それは、本質的に飽和した複合体を最小量の水に溶解させる、例えば、500mgの本質的に飽和したHPβCDとの複合体を0.5mLの水に溶解させる(50%w/w溶液)、又は500mgの本質的に飽和したγCD複合体を1.0mLの水に溶解させる、ことにより得ることができる。数滴のそのような溶液を頬内窩洞に挿入し、そこに約2分間保持して、頬の粘膜を通して吸収させることができる。ただし、固体経粘膜剤形の方が一般に液体剤形より好ましい。
場合によっては、溶解度を高めるか、もしくは浸透を増強させる(例えば、ミクロ環境の変性により)ための各種の賦形剤及び添加剤を添加するか、或いは供給系と粘膜組織との接触を改善するための粘膜付着性賦形剤を添加することにより、粘膜吸収をさらに高めることができる。
バッカル薬物供給は、バッカル投薬単位を、薬物治療を受ける個体の下歯肉とそれに向かい合う口内粘膜との間に置くことにより行うことができる。バッカル薬物投与に適した賦形剤又はビヒクルを使用することができ、それには本技術分野で公知の任意のそのような材料、例えば、任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などで、無毒かつ組成物の他の成分と有害な相互作用をしないものが含まれる。
固体投薬単位は、所定の時間をかけて徐々に溶解するように作製することができ、それにより頬面窩洞の唾液中の実質的に飽和した薬物溶液が生成して、粘膜を通るS−CDS(例、E2−CDS、DWX−CDS又はT−CDS1)の吸収が可能となる。この場合、薬物供給は本質的に所定の時間の間ずっと行われる。
バッカル投薬単位は、製造を容易にするために、ステアリン酸マグネシウム等の滑剤をさらに含有していてもよい。バッカル投薬単位中に含有させうる追加の成分としては、それらに限られないが、香味料、浸透向上剤、希釈剤、結合剤などが挙げられる。バッカル投薬単位の残部は、生体浸食性のポリマーキャリア、並びに望ましいかもしれない任意の賦形剤、例えば、結合剤、崩壊剤、滑剤、希釈剤、香味料、着色剤など、並びに/又は追加の有効成分を含有しうる。
バッカルキャリアは、投薬単位が必要な時間、即ち、S−CDSが頬粘膜に供給されるべき時間、について頬粘膜に付着するのを確保するのに十分な粘着性を有するポリマーを含むことができる。また、ポリマーキャリアは次第に「生体浸食性」である。即ち、ポリマーは水分と接触すると所定の速度で加水分解する。薬剤に許容され、適度の粘着性と所望の薬物放出プロファイルの両方を与え、かつ投与されるS−CDS及びバッカル投薬単位中に存在しうる任意の他の成分と適合性を有する任意のポリマーキャリアを使用することができる。一般に、ポリマーキャリアは、頬粘膜の濡れた表面に付着する親水性(水溶液及び水膨潤性)ポリマーを包含する。
本発明で有用なポリマーキャリアの例としては、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、例えば、例えば、「カーボマー」と呼ばれるもの(例、カーボポールTM)が挙げられる。他の適当なポリマーとしては、それらに限られないが、加水分解ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド(例、Sentry PolyoxTM)、ポリアクリレート(例、GantrezTM)、ビニルポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン、デキストラン、グアーガム、ペクチン、デンプン、並びにヒドロキシプロピル・メチルセルロース(例、MethocelTM)、ヒドロキシプロピルセルロース(例、KlucelTM)、ヒドロキシプロピルセルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系ポリマーが挙げられる。
投薬単位は、S−CDS−シクロデキストリン複合体だけは含有する必要がある。しかし、1種もしくは2種以上の上記キャリア並びに/又は1種もしくは2種以上の追加成分を含有することが一般に望ましい。例えば、投薬単位の製造プロセスを容易にするために滑剤を含有しうる。滑剤はまた崩壊速度(erosion rate)及び薬物流束(drug flux)を最適化することもある。滑剤が存在する場合、それは投薬単位の0.01〜約2wt%程度、好ましくは約0.01〜1.0wt%の量となろう。適当な滑剤としては、それらに限られないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク、水素化植物油及びポリエチレングリコールが挙げられる。いずれにしても、S−CDS(例えば、(例、E2−CDS、DWX−CDS又はT−CDS1)は、例えば、β−もしくはγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキルもしくはカルボキシアルキルもしくはカルボキシメチルエチル誘導体、ランダムメチル化β−もしくはγ−シクロデキストリン、又はスルホブチルβ−もしくはγ−シクロデキストリンとの複合体、好ましくは本質的に飽和した複合体として、バッカル剤形に混入されることになる。
本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体はまた、本発明に従って膣又は直腸投与用の座剤又はフォーム剤の形態で投与することもできる。この種の組成物の製造は、周知の方法により、例えば、座剤の場合には、常温では固体であるが、膣又は直腸温度では液体となり、従って膣内又は直腸内で融解して薬物を放出する適当な非刺激性の賦形剤又は結合剤と飽和した複合体とを混合することにより行うことができる。このような材料としてはカカオバター及びポリエチレングリコールを挙げることができる。伝統的な結合剤及びキャリアとしては、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセライド[例、PEG1000(96%)及びPEG4000(4%)]が挙げられる。かかる座剤は約0.5〜10wt/wt%、好ましくは約1〜2wt/wt%の範囲で有効成分を含有する混合物から形成してもよい。
鼻腔内用に対しては、粉末スプレー剤、懸濁ゲル剤又は軟膏を利用することができ、好ましくは本質的飽和した複合体の粉末形態である。
また、ヒトに使用する場合には、有利には崩壊時間が約15〜30分のバッカル剤形、特にバッカル錠剤もしくはカシェ剤(オブラート剤)もしくはディスク剤、又はバッカルパッチ(薬物は頬粘膜に付着した側のみから放出され、反対側は不透過性であるもの)が、容易に自己投与できるにもかかわらず、S−CDSが頬粘膜から血液流中に直接浸透していくので、経口剤形より良好な生物学的利用能を与える点で特に有利である。(もちろん、シクロデキストリン誘導体は吸収されない。)キャリア部分、例えば、E2−CDSのジヒドロトリゴネリネート部分は胃腸液中では不安定性を示し、水の付加及び/又は酸化から始まる複数の分解生成物を生ずる。バッカル供給はまた、薬物の肝臓ファーストパス(first pass)代謝も避ける。バッカル投与用の処方組成物は好ましくは貯蔵安定性の理由から無水である。
本発明の特に有利な態様では、バッカル投与はナガイらの米国特許第4,226,848号及び第4,250,163号(これら両者をここに援用し、準拠する)の発明を利用することができる。即ち、下記成分を含有する頬粘膜粘着性錠剤を本発明での使用のために処方してもよい:(a) 約50〜95重量%のセルロースエーテル及び約50〜95重量%のアクリル酸のホモもしくはコポリマー又はその薬剤に許容される塩を含有する水膨潤性で粘膜粘着性のポリマーマトリックス、並びに(b) それに分散させた、選択したシクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリン、スルホブチル−βもしくはγ−シクロデキストリン又はランダムメチル化β−シクロデキストリン、との本質的に飽和した複合体の形態の適当な量のS−CDS(例、E2−CDS)。理想的には、貯蔵安定性のために錠剤は無水である。
「治療(に)有効(な)量」又は「有効量」又は「治療応答を引き出すのに有効な量」なる用語は、追求される治療効果を達成するのに有効な投与量での治療を意味するものとして使用する。追求される治療効果は、無論、複合体中のS−CDSが供給しようとするステロイドの具体的種類、特にそのステロイドがエストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン又は抗炎症剤のいずれであるかに依存する。
複合体中のS−CDSがエストロゲンを供給するものである場合、例えば、S−CDSがE2−CDSである場合、有効量、即ち治療有効量は、許容できる低い末梢エストロゲン濃度を維持しながら有益なCNS関連エストロゲン性作用(エストロゲン効果)を生ずるのに十分なS−CDSの量となろう。
複合体中のS−CDSがプロゲスチンを供給するものである場合、有効量、即ち治療有効量は、許容できる低い末梢プロゲスチン濃度を維持しながら有益なCNS関連プロゲスチン性作用を生ずるのに十分なS−CDSの量となろう。
複合体中のS−CDSが抗炎症性ステロイドを供給するものである場合、例えば、S−CDSがデキサメタゾン−CDSである場合、有効量、即ち、治療有効量は、許容できる低い末梢抗炎症性ステロイド濃度を維持しながら有益なCNS関連抗炎症効果を生ずるのに十分なS−CDSの量となろう。
経粘膜剤形中に存在させる複合体中のS−CDSの正確な量は、選択したS−CDS−シクロデキストリン複合体の種類、その剤形を投与する個体の体重及び状態、選択した経粘膜剤形の種類並びにその剤形を投与するための医学的条件により変動しよう。比較的低い末梢ステロイド濃度を維持する必要性から、本発明の剤形は、従来の教えに基づいて予測されるよりずっと少ない投与量でより頻繁に投与される。
また、当業者は、本発明により投与されるS−CDSの治療有効量を、微調整により、及び/又は他の有効成分と共に本発明に係るS−CDSを投与することにより、加減することができることは理解しよう。従って、本発明は、投与/治療を、所定の哺乳動物に特異的な具体的緊急性に合うように調整するための方法も提供する。治療有効量は、例えば、比較的少ない量から始めて、有益効果の評価を同時に行いながら量を段階的に増加させることにより、経験的に容易に決定することができる。
更年期又は閉経後の女性に使用するためのエストロゲン−CDS、例えば代表的なE2−CDSの場合、適当なバッカル剤形は、約0.5〜2.0mgのE2−CDSのようなエストロゲン−CDSを含有させた選択したシクロデキストリン中のエストロゲン−CDSの実質的に飽和した複合体を含む無水処方組成物を含有する。このようなエストロゲン−CDSを次のような目的で毎日又は隔日(1日おき)に投与することができる:閉経後の症状、特にのぼせ(顔面潮紅)、膣萎縮、膣乾燥/潤滑不足、寝汗、不眠、抑うつ、神経質症、尿失禁、いらつき及び不安といった血管運動性症状の軽減のため;女性の性機能障害、特に性的欲求能動低下型の女性性機能障害もしくは性的疼痛(性交痛)型女性性機能障害を含むものの治療のため;又は骨粗鬆症もしくは例えばアルツハイマー病といった認識障害の治療もしくは進展の遅延化/防止のために、特に治療を更年期の初期又は閉経後初期に開始した場合。この用量は、約0.01mg/kg又はそれ以下という少量である。投薬の量及び頻度は、平均定常状態末梢エストラジオール濃度が約50〜60pg/mL以上に上昇しないようにしながら、これらの1又は2以上の症状が軽減するように調節される。E2−CDSのようなエストロゲン−CDSの場合、更年期又は閉経後の女性に使用するには、これらは許容できる低い末梢エストロゲン濃度であると考えられる。好ましくは、平均定常状態末梢エストラジオール濃度が約40pg/mL以上に上昇しないように、さらには約20pg/mL以下になるようにし、及び/又はそのような女性における平均ピークエストラジオール末梢濃度(投与後まもなく到達する)は約70〜90pg/mL又はそれ以下とするのが好ましい。
出産可能な年齢の女性、並びに受胎調節(避妊)もしくは減量もしくは子宮内膜症のような性腺ステロイド依存性疾患の治療のためにゴナドトロピン分泌の慢性的低減が望まれている女性の場合には、より年齢層の若い女性では普通であるように、より高い末梢ステロイド濃度でも本発明の目的にとって十分に低いと考えられる。それでも、バッカル剤形で約0.5〜2mgのエストロゲン−CDSと同様の日用量が想定される。
ヒトの男性に使用するためのエストロゲン−CDS、例えばE2−CDSの場合、1日当たり約0.01〜0.5mgのエストロゲン−CDSが存在する選択したシクロデキストリン中のE2−CDSのようなエストロゲン−CDSの実質的に飽和した複合体の無水処方組成物を含有する適当なバッカル剤形を、勃起障害、男性オルガスム障害、性的欲求の抑止もしくは能動低下並びにプリアピスムのような男性の性機能障害の症状を軽減するために、症状が減少するまで必要な期間、例えば、男性では約2〜7日間投与することができ、症状が再発した場合には毎日又は隔日の投与を再開する。生物学的利用能が約30%であると仮定して、このバッカル用量の実際に利用可能な用量は1日当たりわずか約0.003〜0.015mgという計算になり、これを70〜80kgの平均体重で割ると、男性の用量は約0.0000375〜0.00021mg/kg又はそれ以下となる。
いずれにしても、投薬量及び投薬頻度は、平均末梢エストラジオール濃度を男性の正常濃度以上に実質的に上昇させることのないように、即ち、平均末梢エストラジオール濃度を正常濃度の約10〜15%高い値以上には上昇させないようにする。これらは男性における許容できる低い末梢エストロゲン濃度であると一般に考えられるものである。これは今度は末梢エストラジオール濃度によって射精が阻害されるのを防止するので、男性の性行動の準備及び完了の両側面が改善されることになる。
前立腺ガンの治療のためのE2−CDSのようなエストロゲン−CDSの場合、末梢エストラジオール濃度を低く抑える要請を生命の危険性がある重篤な病気を治療する必要性とバランスさせる必要があり、1日当たり約0.5mgといったより高い用量をより高頻度、例えば、毎日、投与することも許容されることがある。
ある特定の側面において、β−もしくはγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、カルボキシアルキルもしくはカルボキシメチルエチル誘導体との化合物17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(1)−トリエン−3−オール、即ち、E2−CDSの実質的に飽和した複合体の無水処方組成物を含有するバッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチがここに提供される。これは、該化合物約0.01〜2.0mgとそのための頬に許容されるビヒクルとを含有する。約0.01mgから0.5mg未満までのE2−CDSを含有するバッカル剤形は主に男性用であり、一方、約0.5〜2.0mgのE2−CDSを含有するものは主に女性用である。シクロデキストリンが、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのようなヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンのような)、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシエチル−β−シクロデキストリン、カルボキシエチル−γ−シクロデキストリン又はカルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリンであるバッカル剤形が特に興味あるものである。
ここで用いた「治療」とは、本発明に従って治療されていない個体の症状に比べた、本発明の化合物が投与された個体における症状の軽減、防止、発現阻止、抑制、緩和及び/又は逆転を意味する。ここに説明した複合体、組成物、剤形及び方法が、その後の治療法を決めるために熟練医療関係者(医師又は獣医師)による連続的臨床評価と併存しながら使用すべきものであることを医療関係者は理解しよう。そのような評価は、ある特定治療の用量を増加、減少もしくは継続のいずれにするか、並びに/又は投与モードの変更を評価するのを助けたり、知らせることになる。
本発明の方法は、本発明の方法の利益を享受できる任意の個体/患者に使用するためのものである。従って、本発明によれば、「個体」並びに「患者」又は「女性哺乳動物」なる用語は、ヒト並びにヒト以外の個体、特に家畜動物(家庭及び農場動物)、動物園動物並びに稀少もしくは絶滅危惧もしくは高価な哺乳動物種を包含する。
ここで用いて「女性の性機能障害」とは、次の4つの広いカテゴリーを含む:性的欲求障害、性的覚醒障害、オルガスム障害、及び性的疼痛障害。この4つのうち、最も一般的であるのは性的欲求能動低下(抑制)障害(HSDD, Hypoactive sexual desire disorder)である。HSDDとは、個人的窮迫を引き起こすような、性行為に対する性的想像、思考並びに/又は欲求もしくは受容性の永続的又は反復した不足(又は不存在)であると規定される。HSDDは、他の病因にも増して、とりわけ身体の病気、ホルモン異常又は性欲に影響する薬物の服用により生ずることがある。閉経後の女性では、性機能障害は、膣の乾燥/潤滑不足及びその結果起こる性交時の疼痛(それは性的欲求の低下に密に関連することがある)をといった閉経のエストロゲン剥奪に伴う症状に密接に関係すると共に、それらの症状を含みうる。寝汗、のぼせ、不眠、抑うつ、神経質症、尿失禁、いらつき及び不安といった他の閉経後の症状も性的欲求の低下に関連する可能性がある。
「男性の性機能障害」としては、概して、勃起障害、男性オルガスム障害、性的欲求の抑止もしくは能動低下並びにプリアピスムが挙げられる。性的欲求の抑止もしくは能動低下とは、性行為に対する欲求もしくは興味の低下を意味し、身体の病気、抑うつ、ホルモン異常又は性欲に影響する薬物の服用を含む多様な原因から生ずることがある。
男性の性行動は、準備行動(proceptive behavior)と完了行動(consummatory behavior)とからなる。準備行動は、受容する女性の存在の知覚及び膣に陰茎を挿入することができる身体の配置(マウンティング)を含む。このあとの行動、挿入、並びにそれに必要な陰茎の勃起と最終的な射精は男性の性行為の完了成分である。射精に至るには上述した行動のすべてが必要である。完了行動の障害も存在している場合には、準備行動だけの障害を治療するのは十分ではない。
ここに用いた「末梢エストラジオール濃度」とは、毎日又は隔日に1回のスケジュールでの反復投薬を用いた治療期間を通して得られる血清エストラジオール濃度を意味する。ここで用いた「定常状態末梢エストラジオール濃度」とは、毎日又は隔日に1回のスケジュールでの反復投薬を用いた治療期間を通して得られる血清エストラジオール濃度であって、最初の投与から約1〜2時間の範囲内で得られる初期ピーク濃度を除外した血清エストラジオール濃度を意味する。
アンドロゲン−CDS、例えば、代表的なT−CDS1の場合、適当なバッカル剤形は、約1.0〜5.0mgの選択したアンドロゲン−CDS、例えば、T−CDS1を含有する選択したシクロデキストリン中のT−CDS1又は他のアンドロゲン−CDSの実質的に飽和した複合体の無水処方組成物を含む。副作用を最小限にするために女性に投与する場合には、上と同じかより少ない投与量が適当となりうる。このような投与量は、これまで雌性ラットに投与されてきたT−CDS1約28mg/kgの投与量に比べて極めて少ない量であり;Bodor et al., J. Pharm. Sci., Vol. 73, No. 3, 385-389 (1984年3月)を参照;又はBodor米国特許第5,017,566号に記載の去勢雄性ラットにHPβCD中で静脈内投与された11.9mg/kgと比べても非常に少ない量である。
このようなアンドロゲン−CDSは、性機能不全症、停留睾丸、男性更年期、胸部充血、乳ガン及び月経困難症の治療に約1〜15mg/日、好ましくは約3〜8mg/日の合計日用量で投与することができる。アンドロゲン−CDSの場合、「許容できる低い末梢ステロイド濃度」は、男性のインポテンス及び無精子症並びに女性の男性化といった著しい末梢アンドロゲン性副作用を生じない量、即ち、約150ng/mL以下の血漿テストステロン濃度である。
抗炎症性ステロイド−CDS、例えば、代表的なDEX−CDSの場合、適当なバッカル剤形は、約2.5〜20mgのDEX−CDS又は他の適当な抗炎症性ステロイド−CDSを含有する選択したシクロデキストリン中のDEX−CDSのような抗炎症性ステロイド−CDSの実質的に飽和した複合体の無水処方組成物を含む。このような抗炎症性ステロイド−CDSは、例えば、脳手術の後又は外傷性脳損傷もしくは脳腫瘍の場合の、脳の炎症又は浮腫の治療において毎日又は隔日に投与することができる。患者が手術後のある期間バッカル錠剤を使用することができないか、又は他の理由で意識不明である場合には、バッカルパッチ(薬物は頬粘膜に付着した側のみから放出され、反対側は不透過性であるもの)を使用して薬物を供給することもできる。即ち、このように患者には24時間といった長時間にわたって約5〜20mgの薬物を投与するために持効性のバッカルパッチが使用される。
上記の投与量は文献記載の投与量、即ち,Anderson et al., Neuroendocrinology, 50,9-16 (1989)に記載されているような成熟雄性ラットへの10mg/kg、に比べて極めて低い量である。抗炎症性ステロイド−CDSの場合、「「許容できる低い末梢ステロイド濃度」は、肝細胞肥大、アジソン病様症候群、肝腫、肝細胞変性及び壊死といった著しいグルココルチコイド末梢副作用を生じない量である。
本発明の実施には当業者に公知の任意の適当な材料及び/又は方法を利用することができる。しかし、好ましい材料及び方法を説明する。以下の説明及び実施例で言及した材料、試薬等は、特記しない限り、市販供給源から入手可能である。
下記の実施例は本発明のいくつかの好適態様をさらに例示するものであるが、本質的に制限するものではない。当業者であれば、ここに説明した具体的な物質及び操作に等価の多くのものを通常の範囲内の実験を用いて認識し、又は確認することができるであろう。
実施例1
相溶解度の検討
相溶解度の検討は次のようにして実施される。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(HPγCD)又はカルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリンの各種濃度のシクロデキストリン溶液に、少量のエタノール中の過剰のS−CDS(E2−CDS、DEX−CDS又はT−CDS1)を添加し、下記実施例2、3又は4に記載したように複合体化(複合体形成)させる。過剰の未溶解のS−CDSが存在すれば、濾過により除去する。このプロセスを、シクロデキストリンの異なる既知濃度で、いくつかのデータ点が得られるまで繰り返す。これらのデータ点を次いでグラフにプロットする。各データ点は、選択したシクロデキストリンの特定の濃度と複合体形成することができる選択したS−CDSの最大量を表す。即ち、各点は、飽和したS−CDS/シクロデキストリン複合体を表す。データ点により作られた線上の点がHTA比を表す。この線上の任意の点が、特定かつ唯一の飽和したS−CDS/シクロデキストリン複合体を表す。当業者なら、既知濃度のS−CDS溶液に過剰のシクロデキストリンを添加しても同じ結果が出てくることを理解しよう。
選択したシクロデキストリンのモル濃度に対する選択したS−CDSのモル濃度をプロットし、グラフとして提示すると、プロットされた線は、試験条件に対するその薬物の最大可溶化、即ち、選択したシクロデキストリンの濃度に対する選択したS−CDSの濃度のHTA比を表す。プロットされた各線より上の領域は過剰の不溶性S−CDSが存在する条件を表す。プロットされた各線より下の領域は、シクロデキストリンが複合体を溶液状態に保持するのに必要な量より過剰である条件を表す。
このプロットはまた、ある特定量のその薬物をその飽和した複合体を保持するのにどれだけの量の追加のシクロデキストリンが必要であるかも示す。プロットはまた、その線の傾きにより、薬物:シクロデキストリンの1:1複合体又は1:2複合体のいずれが生成しているのか、即ち、薬物1分子がシクロデキストリン1分子と複合体化している(1:1複合体)か、あるいは薬物1分子がシクロデキストリン2分子と複合体化している(1・2複合体)(この場合は2分子のシクロデキストリンが薬物分子を本質的に包囲して保護する)のかを示すことができる。
シクロデキストリン濃度が高いE2−CDSとヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)の場合、複合体はたいてい1:2複合体である。2分子のHPβCDは、高いシクロデキストリン濃度では互いに水素結合して、それらの間のキャビティ内にE2−CDS分子を取り込んでいると考えられる。これは、まず1:1複合体が生成し、次いで第2のHPβCD分子が1:1複合体中のHPβCDとH結合して1:2複合体を形成するという段階的プロセスであると考えられる。もちろん、1:1複合体と1:2複合体の混合物が得られることもよくあるが、1:2複合体が優勢であることが有利である。高めのHPβCD濃度で生成した1:2複合体は1:1複合体より強力な複合体であるので、そのような1:2複合体が粘膜で体液中に薬物を放出する時に生成した飽和溶液中のE2−CDSは、1:1複合体から放出されたE2−CDSに比べて、より一層不安定である、即ち、より一層高い熱力学的活性を有し、粘膜を介した薬物のより一層大きな動きに利する。E2−CDSとHPγCDとの場合も同様である。
図1は、E2−CDSとヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの代表的な相溶解度図である。これは、Bodor米国特許第5,017,566号及びBrewster et al., J. Pharm. Sci. 77: 981-985 (1988) に含まれているデータに基づく。データ点は、20%w/vで6.73mg/mL及び40%w/vで16.36mg/mL(どちらもBrewster et alから)並びに60%w/vで30.19mg/mL(上記米国特許から)である。全てのデータは平均置換度7のHPβCDに対するものであり、適切な分子量を用いてモルスケールに換算した。
より一般的には、E2−CDS又は他のS−CDSの相溶解度図は、過剰のE2−CDSを各種濃度の水中の選択したシクロデキストリンに加えた懸濁液を攪拌することにより得ることができる。場合によっては、溶解を促進するため少量のエタノールを用いることができる。
実施例2
2−CDSのHPβCDとの約3%複合体の調製
2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)(Cerestar、置換度4.5)232gを脱イオン水465mL(ASTMタイプI)に溶解して約33%w/vの溶液を形成する。炭酸ナトリウム1%溶液でpHを8.4〜9.6に調整する。溶液をアルゴンの通気により脱気する。20〜25℃で攪拌とアルゴンバブリングを続けながら、E2−CDS(7.5g)のエタノール(188mL)溶液をゆっくり滴下する。各滴下後に溶液が透明になるまで時間をとる。滴下には約4時間かかり、最後にはより遅くなる。透明な溶液が生成する。溶液を回転蒸発器で蒸発乾固する(浴温35℃)。残渣を水にとり、計算によりシクロデキストリン溶液の初期濃度を求める。この溶液をアルゴンで覆いながら、47mm、0.45μmのナイロン66製メンブランフィルターを通して濾過する。濾液を凍結乾燥し、得られた固体をブレンダーで粉砕し、233g)をジャーに移し、分析する。この複合体は1グラム当たり約29〜32mgのE2−CDSを含有するはずである。E2−CDSはHPLCで少なくとも97%のクロマトグラフィー純度を有すべきである。複合体形成の収率(E2−CDS基準)は82〜96%となるはずである。
上記手順に従って、但し上記のE2−CDSの代わりにT−CDS1又はDEX−CDSを使用すると、それぞれT−CDS1又はDEX−CDSのHPβCDとの凍結乾燥非晶質複合体を与える。
実施例3
2−CDSのHPγCDとの約2.5%複合体の調製
2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン(HPγCD)(Wacker, Cavasol W8HP)45gを脱イオン水135mL(DIUF)に溶解して約25%w/vの溶液を形成する。炭酸ナトリウム1%溶液でpHを8.4〜9.6に調整する。溶液をアルゴンの通気により脱気する。20〜25℃で攪拌とアルゴンバブリングを続けながら、E2−CDS(1.5g)のエタノール(3mL)溶液をゆっくり滴下する。各滴下後に溶液が透明になるまで時間をとる。滴下には約4時間かかり、最後にはより遅くなる。透明な溶液が生成する。溶液を回転蒸発器で蒸発乾固する(浴温35℃)。残渣を水にとり、計算によりシクロデキストリン溶液の初期濃度を求める。この溶液を、アルゴンで覆いながら、47mm、0.45μmのナイロン66製メンブランフィルターを通して濾過する。濾液を凍結乾燥し、得られた固体をブレンダーで粉砕し、60メッシュのふるいを通過させる。得られたオフホワイト色の非晶質固体の複合体(約42g)をジャーに移し、分析する。この複合体は1グラム当たり約20〜25mgのE2−CDSを含有するはずである。E2−CDSはHPLCで少なくとも97%のクロマトグラフィー純度を有すべきである。複合体形成の収率(E2−CDS基準)は82〜96%となるはずである。
上記手順に従って、但し上記のE2−CDSの代わりに等価量のT−CDS1又はDEX−CDSを使用すると、それぞれT−CDS1又はDEX−CDSのHPγCDとの凍結乾燥非晶質複合体を与える。
実施例4
2−CDSのCMEβCDとの複合体の調製
方法1:
100mgのE2−CDS及び500mgのO−カルボキシメチル−O−エチル−β−シクロデキストリン(CMEβCD)を10mLのエタノールに溶解し、この溶液を1時間超音波処理する。その後、溶媒を除去し、残渣を水にとり、濾過し、凍結乾燥する。得られた複合体は1グラム当たり約25mgのE2−CDSを含有するはずである。
方法B:
2gのCMEβCDをpH9.0の0.10Mホウ酸緩衝液20mLに溶解する。pHは1N水酸化ナトリウム溶液で調整する。その後、エタノール2mLに150mgのE2−CDSを溶解し、得られた溶液をシクロデキストリン溶液に添加する。アルゴン下、0℃で3時間攪拌し、溶媒を減圧除去し、残渣をpH9のホウ酸緩衝液にとり、凍結乾燥する。
上記方法はいずれも、例えば、DEX−CDS及びT−CDS1といった他のステロイド−CDSのCMEβCDとの類似の複合体の形成にも適合させることができる。
実施例5
臨床試験用のバッカル錠剤の製造
本発明に従って、E2−CDSを経粘膜供給するための臨床試験に使用されるバッカル錠剤が設計された。経粘膜供給は、水の付加及び/又は酸化から出発する複数の分解物の生成並びに肝臓ファーストパス代謝を生ずることになる胃腸液中でのE2−CDSの不安定さを回避する。経粘膜吸収は、本発明のHPβCD中E2−CDSの飽和した複合体(例えば、上記実施例2において調製されたような)から最小限の添加剤を用いた処方で非常に有効である。プラシーボも臨床試験用に調製された。
Figure 2007512225
DEX−CDSもしくはT−CDS1のような他のステロイド−CDS並びに/又はHPγCD、CMEβCDもしくは本明細書に記載したその他のシクロデキストリンのような他のシクロデキストリンを含有する同様のバッカル錠剤を調製することもできる。
卵巣摘出後の雌性ラットの性行動の検討
原理説明
去勢はラットにおける性行動の終止を引き起こすが、去勢した雌性ラットの性的活動性をエストラジオールの投与により回復させることができる。
雌性ラットにおいて、エストラジオールは視床下部及び視索前野に作用して、雌の生殖行動の重要な1要素であって、性的に能動的な雄に対する交尾を可能にするための雌の特徴的な姿勢であるロードシス(前湾姿勢)の発現を調節する。ここで用いた「ロードシス」とは、生殖力適格性のある雄からの十分な刺激に応答して雌性四足動物が行う脊柱の背屈を意味する。エストラジオールは、普通の生化学的経路上で収束しうる複数の分子ターゲットに作用して、前湾姿勢の発現を調節する知覚及び神経化学的な合図の統合を確保する。そのため、前湾姿勢が、卵巣摘出した雌性ラットにおける雌の性的機能回復の指標並びに雌の性機能障害症状の緩和に対する適切な指標として選択された。
血中の黄体形成ホルモン(LH)は、エストラジオールのCNS効果を反映するバイオマーカーである。エストロゲンは黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の分泌を減少させ、従ってLHの分泌を低減させる。そのため、それぞれE2−CDSの中枢及び末梢効果を測定するためにLH及びエストラジオールの濃度を調査した。
実験の設計
ハンガリー、ゴドロのCharles River Hungary Ltd.からの成熟雌性Sprague Dawleyラット(220〜250g)を用いた。動物は、逆転された明/暗サイクルを用いて、人口照明による明14時間、暗10時間のサイクルで環境調節された室内(23∀2EC、即ち、23±2℃、湿度50〜60%)で集団ケージ(1ケージに4匹)にて飼育された。食物と水は随意に摂取可能であった。
最低5日間の順化期間の後、動物をエーテル麻酔下で卵巣切除し、次いで試験まで3週間そのままにして回復させた(再回復期)。全動物が欧州共同体評議会指示(86/609/EEC)のガイドラインに従って扱われ、試験はInstitutional Animal Care Commission(動物養育委員会)により許可された。
安息香酸エストラジオール及びプロゲステロンは、ハンガリー、ブダペストのSigma Chemical Co., Inc.から入手した。2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは米国インディアナ州、ハモンドのCeresar Inc.から購入した。安息香酸エストラジオールを40w/v%2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)溶液に溶解し、27w/v%HPβCD溶液で希釈した(0.29mg/kgが0.3mg/kgのE2−CDSのそれに等モルである)。HPβCDとの3%複合体としてのE2−CDS(E2−CDS−CD)を蒸留水に溶解し、27%HPβCD溶液で希釈した。E2−CDS−CDは上記実施例2の手順を用いて、米国フロリダ州アラチュアのAlchem Laboratories Corporationにより合成された。
行動試験
手術から回復した後、卵巣摘出した雌性ラットを4群に分け、次のように、尾部静脈からのボーラス(大量)注射により毎日1回5日間の静脈内治療を行った:(1)対照、27%HPβCD溶液、(2)27%HPβCD溶液に溶解した0.003mg/kgのE2−CDS、(3)27%HPβCD溶液に溶解した0.01mg/kgのE2−CDS、及び(4)27%HPβCD溶液に溶解した0.03mg/kgのE2−CDS。最低数の卵巣切除雌性ラット(8〜12匹)を1群当たりに使用した。E2−CDS又はHPβCD(対照)による静脈内治療は、体重100g当たり0.05mLの量で行動観察の初日の2日前に開始して5日間毎日行った。
安息香酸エストラジオール(EB)の検討は、予め卵巣切除された雌を、3週間の休息期間の後で、新たにランダム化して実施した。動物(1群当たり7〜11匹)を、E2−CDSに適用されたプロトコルと同様に、連続5日間毎日1回0.003、0.01及び0.03mg/kgの安息香酸エストラジオールで静脈内治療した。安息香酸エストラジオールは40%HPβCD中に溶解し、27%HPβCD溶液で希釈した(0.29mg/kgの原液がE2−CDSのそれに等モルである)。
行動試験は暗サイクル中にアクリルガラス観察ケージ内で行った。行動観察中は、ほの暗い赤色灯だけを点灯した。
試験する1匹の雌より5分前に、経験のある活発な1匹の雄性ラットを観察ケージに入れた。各雌を、試験期間当たり引き続く10回のマウント行動時間の間、或いは最長で10分間観察し、前湾姿勢(ロードシス)応答の回数を記録した。ロードシス指数(LQ)は、性的受容性に及ぼすエストロゲンの効果を表示し、次式により算出される:
LQ=100×前湾姿勢の回数/10回のマウント。
各雌の性行動の観察は、E2−CDSの場合は、22日間毎日実施した。EBの場合には、10日間毎日観察を実施した。
0、3、7、10、12、15及び18日目に血液検体を採取して、LH及びエストラジオールの濃度を測定した。クエン酸塩添加血液検体を軽いエーテル麻酔下で眼窩後洞穿刺により採取した。検体を4EC(EC=℃)で1時間保管した後、1000gで10分間遠心分離した。血漿を分離し、分析するまで−80ECで保管した。個々の検体からの血漿LH濃度を、イタリー、ローマのAmersham Pharmacia Biotechから入手した2抗体ラジオイムノアッセイキットにより測定した。血漿エストラジオール濃度は、BioChem Immuno Systemから入手した2抗体I125アイソトープ-RIAキットにより測定した。検出限界は15pg/mLであった。
行動変化をマン・ホイットニー(Mann-Whitney)U検定(Siegel, Nonparametric Statistics for the Behavioral Sciences, ニューヨーク; McGraw-Hill Book Company, Inc. 1956)を用いて解析した。フィッシャー(Fischer)精度検定をパーセント比較のために使用した(Zar, Biostatistical Analysis, Prentice Hall, Inc., ニュージャージー州、エングルウッド・クリフズ、1974)。血清LHデータは、各回及び各治療群ごとに、分散分析(ANOVA)とその後のボンフェローニ(Bonferroni)事後検定(posthoc test)により解析した。血漿LH及びエストラジオール濃度は、コンピュータ化標準曲線プログラムであるプリズム(Prism)ソフトウェア(バージョン3.0、Graph Pad、米国カリフォルニア州サンディエゴ)により評価した。
結果
図2〜6は、得られた結果を示す。図2において、データは1群当たり8〜12匹での平均値∀SE(標準偏差)(∀=±)であり、マン・ホイットニーU検定を用いて、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。図3において、データは、1群当たり7〜11匹での平均値∀SEであり、***及び***は図2について述べた通りの意味である。図2及び図3に示したデータは、同用量のE2−CDSと安息香酸エストラジオール(E2−Benz)の効果をより容易に比較するように図4に再編成されている。図5及び6では、データは1群当たり7〜12匹での平均値∀SEであり、ANOVAとの後のボンフェローニ事後検定を用いて、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
0.03mg/kgの用量では、E2−CDSと安息香酸エストラジオールの両方でロードシス指数LQが著しく増大した。E2−CDSの場合、図2に示すように、この効果は3日目から18日まで間続いた。安息香酸エストラジオールからの効果は、より顕著性が低く、3日目から8日目までしか続かなかった。図3を参照。図3並びに図4の最初の部分に見られるように、安息香酸エストラジオールからのLQ値はE2−CDSについて得られたものの約1/3であった。E2−CDS及び安息香酸エストラジオール治療後のLQの最大値はそれぞれ73及び27.3であった。
0.01mg/kgの用量では、E2−CDSは5日目から11日目までLQを著しく増大させた。この増大は、その後は統計学的には有意ではないものの15日目まで続いた。この用量の安息香酸エストラジオールは、LQを3日目から10日目までいくらか増大させた(E2−CDSに比べて約1/3)が、この効果は統計学的には有意ではなかった。図2、3、及び図4の第2部分を参照。
0.003mg/kgの用量では、この用量の試験化合物はどちらもロードシス指数をいくらか増大させたが、これらの効果は統計学的には有意ではなかった(安息香酸エストラジオールは3〜7日目;E2−CDSは3〜18日目)。図2、3、及び図4の第3部分を参照。
図5は、血漿LH濃度が試験したE2−CDSの全用量水準、即ち、0.003、0.01及び0.03mg/kgで抑制されたことを示す。0.03mg/kgという低い静脈内用量ですら、血漿LH濃度は18日目まで統計学的に有意な程度に抑制された。0.003mg/kgという非常に低い用量でも、血漿LH濃度の抑制は15日目まで持続した。これに対して、図6に示すように、安息香酸エストラジオールの試験した全用量のどれでも、統計学的に有意なLH抑制を示さなかった。
以上の試験は、E2−CDSがラットの雌の性的機能を回復できることを示し、適切な末梢エストロゲン濃度を維持しながらこれまで可能と考えられていたより低い用量で、女性(ヒト)を含む雌へのその投与により雌性の性機能障害の症状を軽減することができることを意味する。
臨床試験
最近、閉経後の女性に2.5mg又は5mgの用量のE2−CDSを1回バッカル投与する臨床試験においてE2−CDSが検討された。それよりさらに最近には、閉経後の女性のフェーズI臨床試験において、2.86mgのE2−CDSバッカル供給錠剤の二種類の異なる投与計画が安全性とホルモン濃度への影響に対して評価された。被験者は、12名の健康な閉経後のボランティアであり、6名ずつの2群に分けられた。A群では、女性に10日間毎日1回投与し(10回の投与);B群では隔日に1回13日間投与した(7回の投与)。両群において、血清の総エストラジオール及び遊離エストラジオール、エストロン、LH、FSH、プロラクチン、SHBG及びテストステロンの測定を治療期間中は一定間隔で、及び最終投与から72時間後に行い、さらに1日目と最終投与から72時間後に尿エストロンの濃度及び2−OHE1/16−OHE1の比を求めた。結果の簡単な評価は次の通りである。
結果
1.溶解
2−CDSをヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとの飽和した複合体としてバッカル供給形態(バッカル錠剤)で投与した。バッカル溶解時間(従って「頬内滞留時間」)の中間値は11分13秒(最小1分12秒、最大23分03秒)であった。この溶解時間は患者にとって好都合である。
2.エストラジオール(E2
2.86mgのE2−CDSの投与後、最初の24時間の間の血清中のE2の最大濃度(Cmax)は102±20.2pg/mLであり(被験者12、この被験者はその後も他の全ての被験者より非常に高い濃度を示した)、このピークには1.2±0.4時間で到達した。被験者12を除外したCmaxは97.8±20.0pg/mLであった。平均45分の溶解速度をもつバッカル供給形態を使用したより初期の臨床試験における平均Cmaxは、2.5mgのE2−CDS後に2時間のTmaxで153.4pg/mLであった。この差異に対する1つの説明は、これらの2つの異なる試験で使用した2つの処方組成物の溶解(従って頬内滞留)時間の差であるかもしれない。
どちらの投与計画(毎日1回に対する隔日に1回)も、次回のE2−CDSの投与前に常に測定したトラフ(谷底部)血清エストラジオール濃度(CTR)における蓄積、即ち、増大を生じなかった。しかし、反復投与中に確立された血清濃度は2つの投与計画の間で違っていた。定常状態で、毎日投与の群では95.3±76.6pg/mLのE2 CTRmaxに達した(被験者12の値を除外すると、この濃度は65.2±23.2pg/mLである)。隔日の投与計画ではE2の定常状態CTRmax血清濃度は26.4±9.8pg/mLであった。
試験後(最終投与の72時間後)、E2濃度はそれぞれ隔日投与群では11.5±2.7pg/mL、毎日1回投与群では36.8±54.6pg/mLであった。毎日1回投与群で、この試験後の値は被験者12の値を除外すると12.5±6.5pg/mLとなろう。
3.エストロン(E1
1は、E2と共に最初の24時間の間及び試験後(即ち、最終投与の72時間後)に測定した。試験後の値は毎日1回投与計画群及び隔日投与計画群でそれぞれ47.5±49.7pg/mL(被験者12を除外:27.8±12.8pg/ml)及び31.4±9.4pg/mLであった。反復投与中、蓄積を伴わないE2に似たトラフ濃度パターンがE1についても両方の投与計画群において予想されうる。即ち、定常状態濃度は隔日投与群より毎日1回投与群の方がいくらか高くなるであろう。
4.LH抑制
最初の24時間、LHの最大減少はA群及びB群において、それぞれベースラインから13.8±4.9及び12.7±6.8IU/mLであった(A群がやや高いベースライン値を示した)。これはベースラインからのLH濃度の35〜40%の減少に対応する。最大LH抑制はA群及びB群においてそれぞれ投与後7.3±5.3時間及び7.3±2.7時間に現れた。試験後(最終投与から72時間後)では、LH濃度はスクリーニング/ベースライン値から、もはや異なることはなかった。投与後最初の24時間の間だけ24時間のLH抑制プロファイルを決定したが、各投与日についても同様の1日LH抑制パターンを予測することができる。血液検体は、それぞれA群(毎日1回)では3〜11日目について、そしてB群(隔日)では3、5、7、9、11、13日目について、追加の投与前LH測定のために利用可能である。
5.FSH抑制
A群及びB群において投与後最初の24時間の間にそれぞれ15%及び16%のFSH濃度の抑制が観察された。最大抑制はA群及びB群において投与後それぞれ13.2±5.7及び11.8±5.8時間で起こった。LHとは異なり、試験後のFSH濃度はスクリーニング/ベースライン値をなお下回っていた(14〜25%だけ)。FSH抑制の作用速度はLH抑制のそれとは異なっているようである。FSH抑制はE2−CDSの投与後よりゆっくり現れ、FSHは試験の全期間にわたって、最終投与から72時間後でも、いくらか抑制されたままである。追加の投与前ホルモン濃度測定のための血液検体が、A群及びB群において、それぞれ3〜11日目及び3、5、7、9、11、13日目について利用可能である。2.5mgのE2−CDSを投与した以前の臨床試験における投与後の最初の24時間における最大FSH抑制の程度(12.5%)は、今回の2回目の試験で投与された用量がやや多い(2.86mg)ことを考慮すると、本試験における程度と同様であった。
6.プロラクチン
プロラクチンの平均ベースライン濃度はA群がB群より高かった。また、A群の13日目の平均濃度はB群の16日目より高かった。ベースラインに比べたプロラクチン濃度の上昇は、試験の最後まででA群及びB群においてそれぞれ29.8%及び16%であった。2つの群の間での差は統計学的には有意ではなかった。
7.SHBG(性ホルモン結合グロブリン)
A群(13日目)及びB群(16日目)のSHBG濃度は1日目のベースラインよりそれぞれ22.2%及び41.2%高かった。両群の間での統計学的な差は実証されなかった。
8.テストステロン
1日目でテストステロンの血清濃度はA群とB群の両方で減少した。平均AUC24は、A群及びB群においてベースラインAUC24(=C0 *24)よりそれぞれ31.1%及び23.0%だけ低かった。1日目の血清テストステロン濃度は、A群及びB群でそれぞれ22.5±21.0及び24.0±14.0ng/dLから1.3±1.9及び4.0±3.9ng/dLへと減少した。これらの1日目の最小テストステロン濃度に到達するまでの時間は、A群及びB群でそれぞれ6.5±11.7及び7.3±11.3時間であった。最終投与用量から72時間後、テストステロン濃度は回復し、A群及びB群でそれぞれ14%及び28%だけベースライン値より若干高くなった。しかし、2群の間の差はどのパラメータでも統計学的有意差には達しなかった。
9.尿エストロン(E1)及び2−OHE1/16−OHE1(2−ヒドロキシエストロン/16−ヒドロキシエストロン)
尿は、両群にて1日目の24時間並びにそれぞれ10日目(A群)及び13日目(B群)の一晩(8時間)採取して、排尿エストロン(E1)、2−OHE1、16−OHE1及び2−OHE1/16−OHE1の比を求めた。1日目における24時間尿中のE1類の平均量及びE1/クレアチンの比は両群において非常に似ていた。A群の10日目における8時間尿中の平均量及び2−OHE1/16−OHE1の比は、B群における13日目よりやや高いように見えた。従って、A群における10日目−1日目の平均量(8時間の採尿時間に調整した値)の差及び平均比の差は、B群における13日目−1日目の対応する差より高くなった(0.15vs0.05)。比の差は統計学的有意差に近づいた(p=0.077)。最終投与日(それぞれA群では10日目、B群では13日目)に、2−OHE1の平均量は、A群及びB群の1日目のその値(8時間の採尿期間に調整した値)よりそれぞれ4.46倍及び2.34倍高くなった。しかし、尿中16−OHE1の量の増大は、1日目の8時間に調整した値に比べて、治療期間の最後にA群及びB群でそれぞれ2.48倍及び1.26倍高くなっただけであった。治療期間中、2−OHE1/16−OHE1の比はA群及びB群でそれぞれ63.6%及び54.7%増大した。
10.安全性及び耐薬性
4名に被験者に合計7件の有害事象(AE)が経験された。AEの内訳は、SGOT及びCPK濃度の増大(1人1症例ずつ)、頭痛(2症例)並びに1人1症例ずつの舌炎、吐き気及び嘔吐であった。全てのAEが軽度又は中度であり、重度のAEは認められなかった。試験薬物との関係は1症例の舌炎において相当の因果関係があると判断された。他のAEはいずれも試験薬物に相当の原因があるとは考えられなかった。異常な実験の知見は偶発的な外傷の結果であり、値は7日後には正常に戻った。1例のAE(頭痛)は500mgのパラセタモールの1回投与による治療を要した。全てのAEが後遺症を伴わず解消した。
結論
この臨床試験の目的は、反復投与試験中の血清ホルモン濃度(焦点は血清E2濃度)についてのPKデータを集めることであった。2.86mgのE2−CDSを毎日1回(A群)又は隔日に1回(B群)バッカル投与した。定常状態濃度(それぞれA群では被験者12を除外すると65.2±23.2pg/mL、B群では26.4pg/mL)に達した後、トラフE2濃度は時間と共に増大せず、2つの群のいずれでも蓄積の徴候はなかった。時間、即ち、A群の7〜11日目の間及びB群の5、7、9、11及び13日目を含む被験者*時間相互作用の有意な効果を示さなかったE2トラフ濃度反復測定ANOVA(分散分析)に基づくと、定常状態E2トラフ濃度はB群及びA群でそれぞれ5日目及び7日目に到達したと結論づけることができる。A群において到達した定常状態末梢E2濃度は、臨床効果、即ち、血管運動及び尿性器症状の軽減が予想されるような範囲内(65.2±23.2pg/mL)で安定した。しかし、血管運動症状のメカニズムは大部分CNS媒介であることを念頭におき、さらにE2がBBBの後方に捕捉された不活性なE2+前躯体から放出されてすぐ脳からしたたり出るという臨床前知見に基づくと、B群でもより低い末梢トラフE2濃度で臨床効果が予測される。
実際面からは、隔日の投与計画は患者にとって複雑であるかもしれない。これに対し、より低い用量(0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0mg)での毎日1回投与も閉経後の症状、特に血管運動及び尿性器症状の改善、並びに女性の性機能障害、特に性的欲求欠陥もしくは性的疼痛の障害を抱える場合、の効果的な治療に十分となるはずである。また、エストロゲン/プロゲスチン併用剤、例えば、PremproTM、又は経口避妊薬の調剤に典型的に使用されているものに似た4週間錠剤パックをいずれの場合にも使用することができよう。隔日投与計画では、E2−CDSバッカル錠剤とプラシーボ錠剤とを交互に置くことにより患者に対して単純化される。
わずかな有害事象の発生のうち1つだけが試験薬物に相当の原因があると判断されたことは、バッカル投与錠剤の形態のE2−CDSの優れた安全性及び耐薬性を証明する。尿中2−OHE1/16−OHE1比の増大という知見は、乳ガンの危険性に関しても良好な安全性プロファイルを示すものである。文献からのデータは、尿中2−OHE1/16−OHE1比が低いことは乳ガンの危険性が高いことの重要なバイオマーカーであることを一貫して証明したきた。E2−CDSによる治療は乳ガンの危険性を増大させるような方向にE2及びE1の代謝を変化させることはなく、逆に有益な方向に上記比率を変化させる。代謝産物プロファイルは、有害ではなく保護的である。これらの代謝産物が同じエストロゲン性受容体に対して競合するため、量の増えた「良い代謝産物」(2−OHE1)によって、「悪い代謝産物」(16−OHE1)がエストロゲン受容体を占拠して胸部上皮細胞内での突然変異に至ることのある細胞事象を開始させる可能性が低減する。
フェーズII臨床試験(第一薬効試験又は概念証明試験)は準備中である。この新たな臨床試験は、HPβCDと複合体形成し、バッカル経路で供給されたE2−CDS(EstredoxTM)の効果を主に評価するために計画されたものである。薬物は、12週の治療期間中、3種類の用量水準(0.5mg/日、1.0mg/日及び2.0mg/日)で、毎日1回(QD)投与され、中度から重度の閉経後血管運動症状に罹患している患者において「顔面潮紅毎日重み付き重篤度スコア(DWSS,hot flash daily weighted severity score)により測定された顔面潮紅(のぼせ、ほてり)の回数と重篤度(ひどさ)に対してプラシーボと比較する。
評価される二次パラメータは、この患者の集団における閉経等級スケール(MRS, Menopause Rating Scale)質問票から算出されるスコアに対するプラシーボ対照治療効果である。バッカル処方錠剤の治療遵守性及び許容性も試験の二次パラメータとして評価されよう。バッカル錠剤の崩壊時間は1日目、28日目及び26日目に記録されよう。治療前後の安全性指数もまた評価され、その指数としては、生命徴候(バイタルサイン)によるによる検診、鬱血パラメータを含む日常安全性検査、有害事象の観察もしくは報告、血清FSH、LH、プロラクチン、SHBG、E2、E1、尿中E1、及び尿中2−OHE1/16−OHE1比といった中枢エストラジオール作用のバイオマーカーとしてのホルモンレベル、TVSにより評価される子宮内膜厚み、Pap(パパニコロー)スミア、膣の細胞検査(成熟指数)及びpH、ピペル(Pipelle)による子宮内膜吸引、並びに胸部検査を含むであろう。
この試験の主な目的は、中度から重度の血管運動症状(顔面潮紅)に罹患している外来の閉経後の女性における12週間の治療期間中の顔面潮紅の回数及び重篤度に及ぼす、0.5、1.0及び2.0mgE2−CDS/日の用量でのQD EstredoxTMバッカル錠剤の効果をプラシーボと比較して評価することである。
二次的な目的は、事前に得たMRS質問票のスコアに及ぼす12週の治療中(第4週及び第8週)並びに治療後の3種類の用量のEstredoxTM(0.5、1.0及び2.0mgE2−CDS/日)のプラシーボ対照効果の評価を含む。バッカル錠剤の治療遵守性及び許容性も測定されることになり、錠剤崩壊時間が3回の機会(1、28及び56日目)に記録されることになる。
EstredoxTM治療の安全性は、バイタルサイン、鬱血パラメータを含む日常検査、並びに血清FSH、LH、プロラクチン、SHBG、及びE1と一緒のE2、尿中E1、並びに尿中2−OHE1/16−OHE1比といった中枢エストロゲン作用を確認するためのバイオマーカーを、12週間の治療期間中(ただし、プロラクチン、SHBG及び尿は4週目及び8週目)及び治療後に測定することにより求めることになる。患者はまた、TVSによる子宮内膜厚み、Papスミア、膣の細胞検査(成熟指数)及びpH、ピペルによる子宮内膜吸引、並びに胸部検査(マンモグラフィー及び超音波)を含む詳しい婦人科検査も2回、即ち、治療前及び後(0週目及び12週目)受けることになる。
これは、4種類の治療群に1つに同じ人数でランダムに割り当てられた80名の外来閉経後女性患者によるフェーズIIの複数医療機関にまたがる反復投与二重盲検プラシーボ対照用量範囲試験となる。登録されうるのは、子宮が無傷で、現状でエストロゲン、又はエストロゲン−プロゲストゲン(ET/EPT)、フィトエストロゲン、又は選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)療法を受けていない患者である。患者が以前にET/EPT、フィトエストロゲン又はSERM療法を受けていた場合には、試験への可能な被検候補者の登録の前に適当な洗浄(ウオッシュアウト)期間をとることになろう。
患者はまず2週間の無治療の導入段階に入り、その間に患者は顔面潮紅の回数と重篤度を記録するために日記をつけることが求められる。1週間あたり50回より多い(平均で毎日7回超)中度〜重度の顔面潮紅を体験する患者だけが、本試験の治療段階への登録に対する適格者となる。適格な患者は4つの治療群の1つに同数ずつランダムに割り当てられる。全ての治療群の患者が、二重盲検法で、プラシーボバッカル錠剤1錠又は0.5、1.0若しくは2.0mgE2−CDS/日の用量の同一のEstredoxTMバッカル錠剤1錠のいずれかを試験の各朝に毎日1回(QD)、84日間、絶食条件下で受けることになる。
バッカル錠剤の崩壊時間は、試験1、28及び56日目に、患者が試験担当者の面前で錠剤を所定部位に自己投与する時に記録する。治療期間中、患者は顔面潮紅の回数及び重篤度を記録し続ける。治療の28日及び56日後(4週及び8週後)にMRS質問票スコアの暫定の査定と遵守性及び有害事象の評価を行う。これらの中間訪問時に、ある種の鬱血パラメータの測定並びに血清ホルモン濃度(E2、E1、FSH、LHのみ)のために採血も行う。12週の治療期間は85日目の終了訪問中に完全に評価される。
このように、本発明に係るE2−CDSの経粘膜投与は、E2−CDSによる女性の閉経後症状の治療に有効であるとこれまで予測されてきた量より少ない用量で、閉経後症状の有効な治療を含む女性の性機能障害の有効な治療を提供することができる。性的欲求障害又は性的疼痛障害のような女性の性機能障害の他の側面の治療に対しては具体的な投薬法は未だかって提案されたことがない。事実、女性の性機能障害のこれらの側面の治療はこれまで提案されたことがなく、関連する動物試験もE2−CDSの文献にこれまで記載されたことがない。
さらに、E2−CDSの文献はLH濃度の実質的かつ長期の抑制を強調している。しかし、LH阻害は避妊のようなエストロゲンのある種の用途にとってはより重要であるかもしれないが、LH抑制と性機能障害の治療との間に直接的な関係があるようには考えられない。本発明に従って性機能障害の各種側面の治療に対して女性に有効に投与されうる低レベルのE2−CDSは、特に予想外である。0.5〜2.0mgのバッカル日用量は、生物学的利用能が約30%であると仮定して計算すると、実際に利用可能な用量としてはわずか0.15〜0.6mg/日になり、これを平均60〜70kgの体重で割ると、女性における用量は約0.0025〜0.01mg/kg又はそれ以下になる。これは、長期間LHを有効に抑制し、閉経後症状を治療するのに必要とこれまで考えられてきた用量よりはるかに少ない。もちろん、投薬量は選択した特定の経粘膜経路及び選択した経路にあてはまる生物学的利用能により変動しよう。
本発明に従った投与により軽減される具体的な症状としては、特に性的欲求能動低下型又は性的疼痛障害型の女性の性機能障害、並びに閉経後の女性におけるこれらの障害に結びつく症状(加齢に関係するものと、他のエストロゲン枯渇(剥奪)の原因(手術など)とを問わない)が挙げられる。これらの症状としては、膣の乾燥/潤滑不足及びその結果起こる性的疼痛、寝汗及びのぼせといった血管運動症状、不眠、抑うつ、神経質症、尿失禁、いらつき及び不安、さらには性的疼痛の恐怖が挙げられ、これらすべてが性的欲求低下障害と関係する可能性がある。もちろん、骨粗鬆症及びアルツハイマー病といった更年期又は閉経後のエストロゲン枯渇に関連する他の症状も、本発明により提供される低用量のE2−CDS処方組成物の投与により軽減することが予測される。
そして、このような投薬量は、末梢エストロゲン濃度を、標準的なHRT療法により生ずるような閉経前の濃度に比べて、一定して高濃度を与えることはない。むしろ、E2−CDSは、平均定常状態末梢エストラジオール濃度を約50〜60pg/mL以上に上昇させない量で上述した症状を軽減するのに有効であると考えられる。実際、有効経粘膜投薬レベルは、そのような平均末梢エストラジオール濃度が40pg/mLを超えない、さらには20pg/mL以下となり、平均ピークエストラジオール末梢濃度が70〜90pg/mL以上にならず、又はさらにはより低くなるように選択しうる。本発明にとって、1回の高用量よりは反復した低用量を使用して、エストロゲン露出を最小限にするために、平均末梢エストラジオール濃度が十分に低く(定常状態で50〜60pg/mL、40〜50pg/mL、20pg/mL又はそれ以下)、ピーク濃度で平均約70〜90pg/mLを超えないようにすることが重要である。
睾丸摘出後の雄性ラットの性行動の検討
原理説明
去勢はラットにおける性行動の終止を引き起こすが、去勢した雄性ラットの性的活動性をエストラジオールの投与により回復させることができる。このことは、Andersonらの米国特許第4,863,911号において去勢雄性ラットへのE2−CDSの投与について既に示されている。そこに記載された試験では、3mg/kgの1回静脈内用量で、E2−CDSは、雄による雌の追いかけを増大させ(即ち、マウント及び挿入の潜伏時間を減少させ)、かつ交尾行動の開始を増大させ(マウント及び挿入回数を増大させ)ることにより、28日間ラットの男系性行動を改善することが認められた。
これらのデータは、E2−CDSが男系性行動の準備的成分の強力な長期作用刺激剤であることを示唆した。しかし、エストラジオールは射精を妨害することがあり、Andersonらの上記特許及びE2−CDSに関する他の刊行物は、E2−CDS投与から生ずるエストラジオール濃度の問題を、そのような濃度が勃起機能を含む雄性の性機能障害のすべての側面の治療に及ぼす可能性のある影響に関して取り組むことはしていない。さらに、E2−CDSの文献において雄性に使用された薬物は長期にわたって血清中に許容できない高いエストラジオール濃度を生ずることが今明らかになっている。
血中の黄体形成ホルモン(LH)は、エストラジオールのCNS効果を反映するバイオマーカーである。エストロゲンは黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の分泌を減少させ、従ってLHの分泌を低減させる。そのため、E2−CDSの中枢及び末梢効果を測定するためにそれぞれLH及びエストラジオールの濃度を調査した。
実験の設計
ハンガリー、ゴドロのCharles River Hungary Ltd.からの成熟雄性Sprague Dawleyラット(300〜400g)を用いた。動物は、逆転された明/暗サイクルを用いて、人口照明による明14時間、暗10時間のサイクルの環境調節された室内(23∀2EC)において集団ケージ(1ケージに4匹)で飼育された。体重200〜250gの雌性ラットを試験48時間前にエストラジオール(50μg/匹)及び実験4時間前にプロゲステロン(0.5mg/匹)の皮下注射により受容状態にした。これらのホルモンはひまわり油に溶解した。
次に説明する基底行動の確認の後、選択した動物を1回の腹側中央切開により睾丸摘出し、再飼育した。
睾丸摘出術から回復した動物を反復試験した後、ラットを4群に分け、次のいずれかの1つで、1回の尾部静脈注射により静脈内治療を行った:1群:対照(27%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、2群:0.03mg/kgのE2−CDS、3群:0.3mg/kgのE2−CDS、及び4群:3mg/kgのE2−CDS。
メイティング(つがい化)は暗サイクル中にほの暗い赤色灯だけを点灯した室内においてアクリルガラス観察ケージ内で行った。雄は雌より5分前に観察ケージに入れた。
その後、下記のパラメータを測定した:
マウント潜伏時間(ML):雌の導入から最初のマウント(背乗り行動)又は挿入までの時間;
挿入潜伏時間(IL):雌の導入から最初の挿入(イントロミッション)までの時間;及び
射精潜伏時間(EL):最初の挿入から射精までの時間。
ILが15分を超えた時には、その回は陰性(ネガティブ)であると考えた。ELは、去勢の結果をチェックして、15分より長い射精潜伏時間を示した動物だけを選択するようにするために測定しただけであった。
基底行動を確認するために、各雄を4回の連続かつ一貫した行動パターンが得られるまで5日毎に試験した。この予備試験は、約4週間続けた。試験した動物のほぼ半数が睾丸摘出に適していると見なされた。
睾丸摘出からの治癒後28日目に動物を再び試験し(0日目)、4つの実験群に分けた。試験には15分より長い射精潜伏時間を示した動物だけを含めた。
雄の性行動の試験は、薬物の投与から3、7、14、21、28、35及び42日後又は効果が消失するまで、即ち、2つの引き続く試験中に群の間で統計学的に有意な差が認められなくなるまで、行った。
行動パターン及び関連する時間を熟練した観察者が手動で記録した。
各試験日の後、各動物からの血液検体を軽いエーテル麻酔下で眼窩後洞から採取して、血清LH及びエストラジオールの濃度をそれぞれ2抗体及びI125アイソトープ-RIAキットを用いて測定した。
安息香酸エストラジオール及びプロゲステロンは、それぞれハンガリー、ブダペストのRichter Pharmaceuticals, Ltd.及びハンガリー、ブダペストのSigma Chemical Co., Inc.から入手した。2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは米国インディアナ州、ハモンドのCeresar Inc.から購入した。HPβCDとの3%複合体としてのE2−CDS(E2−CDS−CD)を蒸留水に溶解し、27%HPβCD溶液で希釈した。E2−CDS−CDは、上記実施例2の手順を用いて、米国フロリダ州アラチュアのAlchem Laboratories Corporationにより合成された。
行動試験
睾丸摘出術から4週間後、各群のラットを尾部静脈注射により下記の薬物用量のいずれかで治療した:0.03、0.3、及び3mg/kgのE2−CDS。血液検体を軽いエーテル麻酔下で眼窩後洞穿刺により採取した。検体を4ECで1時間保管した後、1000gで10分間遠心分離した。血漿を分離し、分析するまで−80ECで保管した。個々の検体からの血漿LH濃度を、イタリー、ローマのAmersham Pharmacia Biotechから入手した2抗体ラジオイムノアッセイキットにより測定した。血漿エストラジオール濃度は、BioChem ImmunoSystemから入手したI125アイソトープラジオイムノアッセイキットにより測定した。LH及びエストラジオールの濃度は、プリズムソフトウェア(バージョン3.0、Graph Pad、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてコンピュータ化標準曲線プログラムによりにより算出した。検出限界は15pg/mLであった。
行動変化をマン・ホイットニーU検定(Siegel, Nonparametric Statistics for the Behavioral Sciences, ニューヨーク; McGraw-Hill Book Company, Inc. 1956)を用いて解析した。フィッシャー精度検定をパーセント比較のために使用した(Zar, Biostatistical Analysis, Prentice Hall, Inc., ニュージャージー州、エングルウッド・クリフズ、1974)。血清LHデータは、各回及び各治療群ごとに、分散分析(ANOVA)とその後のボンフェローニ(Bonferroni)事後検定(posthoc test)により解析した。血漿LH及びエストラジオール濃度は、コンピュータ化標準曲線プログラムであるプリズムソフトウェア(バージョン3.0、Graph Pad、米国カリフォルニア州サンディエゴ)により評価した。
結果
図7〜14は、得られた結果を示す。図7〜12において、データは1群当たり8〜12匹での平均値∀SEであり、適当にフィッシャー精度検定又はマン・ホイットニーU検定を用いて(図7及び8ではフィッシャー精度検定、図9〜12ではマン・ホイットニーU検定)、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。図13では、各点は、8〜13匹のラットから得られた検体の平均値∀SEMを表す。
睾丸摘出術は、挿入反応の減少(図8)よりマウント反応の減少(図7)により効果が少ないことが認められた。E2−CDSは、0.3mg/kgの用量で7日目までに、3.0mg/kgの用量では14日目及び21日目までに、100%の動物においてマウント動作を回復させた。挿入動作は3.0mg/kgの用量で14日目から28日目にかけて統計学的に有意なように改善された。
マウント頻度は、0.3及び3.0mg/kgの用量では7日目に、3.0mg/kgの用量では14、21及び28日目に著しく増大した(図9)。マウント潜伏時間は0.3及び3.0mg/kgの用量について7日目から28日目にかけて急激に減少した(図10)。
統計学的に有意な挿入頻度の増大と挿入潜伏時間の減少が、3.0mg/kgの用量で14、21及び28日目に観察された(図11及び12)。
このように、雄性ラットにおける交尾行動の試験した指標の回復に及ぼすE2−CDSの効果は0.3及び3.0mg/kgの用量で28日目まで有意であった。0.03mg/kgの用量は統計学的に有意な効果はなかった。
未去勢のラットの血漿LH濃度は1.1∀0.15ng/mLであった。両側睾丸摘出術の4週間後、LH濃度は8.13ng/mLに増大した。試験したE2−CDSの最低用量(0.03mg/kg静脈内)では、血漿LH濃度は低下しなかった。0.3mg/kg静脈内の用量では、標記化合物がLH濃度を1、3及び7日目に有意に減少させた。15日目までに対照動物と治療動物との間にLH濃度の有意差がなくなった。試験したE2−CDSの最高用量(3mg/kg静脈内)では、LH濃度は28日間を通して有意に抑制された(図13)。
エストラジオール濃度は0.03及び0.3mg/kg静脈内の用量のE2−CDSで治療された動物では検出限界を下回っていた。試験した最高用量(3mg/kg静脈内)では、エストラジオール濃度は治療後1日目に258∀19pg/mLであった。この用量では、このホルモン濃度は、3日目に165∀14pg/mLまで39%減少し、7日目には61∀7.7pg/mLまで減少した。次に14日目に試験した時には、試験した最高投与についてもエストラジオール濃度が検出限界を下回った。次の表5参照。これは、Andersonらの米国特許で使用したE2−CDSの投薬レベル(ラットへの3mg/kgの1回静脈内投与)が長期にわたって許容できないほど高い末梢エストラジオール濃度を生じたらしいことを確認し、このAndersonらの米国特許及びE2−CDSの文献に記載されているデータとも一致する。この濃度は射精を妨害するのに十分な高さであると予測される。
Figure 2007512225
上述した試験を、0.03mg/kgの1回静脈内注射の投与、及び0.01mg/kgの用量の10日間の毎日注射投与を用いて繰り返した。E2−CDS原液溶液(40%)は27%HPβCD溶液中で希釈した。
0.03mg/kg群では静脈内薬物投与から1、3、7、14及び21日後に、0.01mg/kg×10日群では初回の静脈内薬物投与から1、3、7、14及び21日後に、E2−CDS治療群の交尾行動をHPβCD対照群のそれと比較した。
0.01mg/kgの用量の10日間の投与は14日目までに有意な効果を生じた。この用量は、対照群に比べて動物の67%においてマウント動作を、また50%において挿入動作を回復させた(図14及び15)。マウント頻度は有意に増大した(図16)。マウント潜伏時間及び挿入潜伏時間は共に有意に減少した(図17及び18)。挿入頻度は有意には増大しなかった(図19)。それまで良好な動作を示した1匹の動物がエーテル麻酔下で7日目に死んだ。
0.03mg/kgの1回用量は性的活発さを改善したが、それはどの観察項目においても統計学的には有意ではなかった。
血漿LHも測定した。反復実験では、血漿LH濃度は0.01mg/kgの用量(10日間の毎日注射)で3日目から14日目まで有意に低減した。0.03mg/kgの用量(1回注射)では、血漿LH濃度は3日目だけに有意に低減した。反復実験の結果は、図20に見ることができる。
反復実験の最後に、動物に過剰の麻酔を施し、前立腺と両精嚢を取り出し、それらの重量を測定した。相対的な前立腺及び精嚢重量を次の表6にまとめて示す。
Figure 2007512225
0.03mg/kg(1回投与)及び0.01mg/kg(10日間毎日)の静脈内用量のE2−CDSで治療した全ての動物においてエストラジオール濃度は検出限界を下回っていた。次の表7を参照。
Figure 2007512225
上記試験は、E2−CDSがラットにおける雄の性的機能を回復させることができることを示し、男性を含む雄の性機能障害の症状がこれまで可能と考えられてきたのよりずっと低い用量でのその投与によって、適度な末梢エストロゲン濃度を維持しながら軽減することが可能であることを意味している。女性での臨床試験が、E2−CDSの低用量のバッカル投与を動物試験データと相関させることができることを実際に示しており、男性に対してもこの雄性ラットにおける動物試験データに基づいて適当なバッカル投薬量を算出することが可能である。
本発明に従ってE2−CDSを投与すると、これまで提案されてきた月に1回の1回投与療法ではなく、この化合物の低用量を反復使用することにより、男性の性機能障害に対するE2−CDSによる男性の治療のためにこれまで有効であると予想されてきたのよりはるかに低い経粘膜用量で、男性の性機能障害の有効な治療が可能であり、それにより末梢エストラジオール濃度の上昇が最小限になるか、回避される。また、男性の性機能障害を有効に治療するために血清LHを著しく減少させるような高い投薬量を使用する必要がなくなる。
これらの目的で男性に有効に投与することができる低いE2−CDSレベルは、特に予想外のものである。例えば、雄性ラットにおける0.01〜0.001mg/kg静脈内に匹敵する用量、即ち、男性では0.01〜0.5mgのバッカル日用量が想定される。生物学的利用能がほぼ30%であると仮定して、このバッカル用量から実際に利用されうる用量を計算すると、1日にわずか0.003〜0.015mgとなり、これを平均70〜80kgの体重で割ると、男性における用量は約0.0000375〜0.00021mg/kg又はそれ以下となる。
治療は、毎日1回又は隔日に1回、症状が減少するのに必要な期間、一般に男性では約2〜7日間続けられ、症状が再発した場合には治療を再開する。もちろん、投薬量は投薬経路及び選択した経路にあてはまる生物学的利用能により変動しよう。いずれにしても、本発明に従ってE2−CDSを投与する方法は、雄性における平均末梢エストラジオール濃度を平均正常濃度より高レベルに実質的に上昇させることのないように、即ち、平均末梢エストラジオール濃度を正常濃度より約10〜15%以上高く上昇させないような投薬量及び投薬頻度で利用することになろう。これは今度は末梢エストラジオール濃度によって射精が阻害されるのを防止するので、雄性の性行動の準備及び完了の両側面が改善されることになる。
ストレス誘発によるACTH及びコルチコステロン放出の抑制の検討
原理説明
デキサメタゾン(DEX)及び脳増強デキサメタゾンレドックス供給系(上記ではDEX−CDSと表示)の抗炎症効果を評価するために試験を行った。ストレスにより誘発されたACTH及びコルチコステロンの抑制能力が試験物質の抗炎症作用の指標である。
材料及び方法
体重300〜325gの成熟雄性Sprague Dawleyラット(Charles River Breeding Laboratories、マサチューセッツ州ウイルミンゴン)を本試験での使用に選んだ。ラットは人口照明による明12時間/暗12時間の環境調節された室内(23℃)において、ワイヤー底のケージで個別に飼育された。動物は実験開始前にこの照明サイクルに10日間保持した。ピュリーナ社( Purina)のキャットフードと水を随意に与えた。
各ラットに、(1)10mg/kg体重のDEX−CDS、(2)等モル量の7.65mg/kg体重のDEX、又は(3)5mL/kgの量の薬物ビヒクル、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)、を1回の尾部静脈注射により投与した。その後、ラットを、ストレス無し、或いは0、1、3、5又は7日目に5分又は15分の軽拘束ストレスの条件にさらした。各実験群は6匹から構成された。軽拘束試験では、ラットを左右又は前後方向の制限された動きを可能にする個々のワイヤーメッシュ製ケージに入れた。ストレス無しの対照ラットはそれらのケージから優しく取り出し、直ちに致死させた。全動物をストレス時間の終了後直ちに断頭により致死させた。EDTAを入れた氷冷試験管に胴部血液を素早く採取し、低温遠心分離により血漿を分離し、ラジオイムノアッセイまで−80℃で保管した。
血漿ACTHは、2抗体法を用いたラジオイムノアッセイ(Diagnostic Products Corp、カリフォルニア州ロスアンジェルス)により2回測定した。アッセイ内の変異係数は8.25%であった。このアッセイの感度限界は17pg/mL血漿であった。
血漿コルチコステロンは、2抗体法を用いたラジオイムノアッセイ(Cambridge Medical Tech, Inc.、マサチューセッツ州ビレリカ)により2回測定した。アッセイ内の変異係数は<2.63%であり、アッセイ間の変異係数は7.1%であった。このアッセイの感度限界は0.39ng/mL血漿であった。
平均値間の差の有意性を、分散分析(Anova)及びスチューデント−ニューマン−ケウルス(Student-Newman-Keuls)検定により求めた。全試験で確率レベルは0.05であった。
結果
薬物ビヒクルのみを投与されたラットで得られたベースラインACTH濃度は24.7±1.2pg/mLであった。5分の拘束ストレス時間はこれらのACTH濃度を94.2±5.7pg/mLに増大させた。図21の上部に示すように、DEX−CDS又はDEXのいずれかの1回の静脈内注射は1日目及び3日目のACTHのストレス関連上昇を阻止した。DEXで治療された動物では、5分のストレス時間に応答したACTHは3日目までに対照レベルまで戻った。DEX−CDSで治療されたラットでは、ACTH上昇の抑制は5日目まで続いた。
15分間のストレス試験では、ビヒクルのみのラットでは15分間のストレスを受けた時に167±17.8pg/mLのACTH濃度を示した。一方、ストレス無しのACTH濃度(26.0±1.8pg/mL)は5分間試験で認められたものと違わなかった。図21の下部に示すように、DEX又はDEX−CDSはいずれも3日目でACTHのストレス関連上昇を阻止した。他方、図示のように、DEXは5日目及び7日目ではACTHのストレス関連上昇を抑制しなかったが、DEX−CDSは少なくとも7日間はACTHの上昇を抑制した。
血清コルチコステロン濃度は15分間ストレス試験において測定され、結果を図22に示す。コルチコステロン濃度15分間の拘束ストレスの後、33.3±1.4ng/mLから63.1±3.1ng/mLに89%の増加率で上昇した。DEXは3日目にコルチコステロン濃度を55%抑制したが、その後はコルチコステロンの有意な抑制において有効ではなかった。これに対して、DEX−CDSはストレスに対するコルチコステロン応答を、3、5及び5日目にそれぞれ33%、37%及び56%有意に抑制した。
これらの結果は、DEX−CDSの1回投与がACTHのストレス誘発上昇と、付随するコルチコステロンの上昇をデキサメタゾンそれ自体より長期間にわたって抑制することができることを示している。別の試験で、デキサメタゾンそれ自体で治療した後より、DEX−CDSで治療した後の方がデキサメタゾンの脳内濃度が高く、末梢濃度が低いことが示された。E2−CDSと同様に、DEX−CDSはラットにおける静脈内試験において長期作用性ステロイドであることが見出された。従って、女性におけるE2−CDSの臨床試験は、DEX−CDSの経粘膜投与に対する適切な投薬量が、ラット試験におけるより高頻度(毎日又はより頻繁)で約5〜20mgといった低用量を用いて、副腎萎縮、アジソン病様症候群及び肝臓に対する抗インスリン作用、肝臓変性及び壊死といった典型的な副作用を低下させながら、脳浮腫の治療に対する静脈内ラットストレス試験から外挿により決定できることを示唆していると考えられる。
当業者には明らかなように、本発明は、その技術思想又は必須の特徴から逸脱せずに上に具体的に開示したもの以外の形態で具体化することもできる。従って、上述した本発明の特定の態様は、制限ではなく例示と考えるべきものである。本発明の範囲は以上の説明に制限されるのではなく、特許請求の範囲に記載されている通りである。
シクロデキストリン(CD)モル濃度の変化をエストラジオール−CDS、即ち、17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール(E2−CDS)の変化に対してプロットした、相溶解度試験の結果を示すグラフであり、( )はヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを示す。 卵巣を摘出した雌性ラットに0.003mg/kg( )、0.01mg/kg( )及び0.03mg/kg( )の変化するE2−CDS用量並びに対照ビヒクルであるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)溶液( )を5日間毎日静脈内(i.v.)注射した後の経過日数(観察は最初の投与後3日目から開始)に対するロードシス(前湾姿勢)指数(応答率)のプロットである。 卵巣摘出雌性ラットに0.003mg/kg(△)、0.01mg/kg( )及び0.03mg/kg( )の変化する安息香酸エストラジオールの用量並びに対照ビヒクルであるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)溶液(〜)を5日間毎日静脈内(i.v.)注射した後の経過日数(観察は最初の投与後3日目から開始)に対するロードシス指数(応答率)のプロットである。 図2及び3と同じ用量についての経過日数に対する前彎症率(応答率)を、E2−CDSと安息香酸エストラジオールの同じ用量で比較するようにグループ分けして示す、3つのプロット群である。 卵巣摘出雌性ラットに0.003mg/kg( )、0.01mg/kg( )及び0.03mg/kg( )の変化するE2−CDS用量並びに対照を5日間毎日1回尾部に静脈内注射した後の経過日数(観察は最初の注射後3日目から開始)に対する血漿LH濃度(ng/mL)のプロットである。 卵巣摘出雌性ラットに0.003mg/kg( )、0.01mg/kg( )及び0.03mg/kg( )の変化する安息香酸エストラジオールの用量並びに対照を5日間毎日1回尾部に静脈内注射した後の経過日数(観察は最初の注射後3日目から開始)に対する血漿LH濃度(ng/mL)のプロットである。 未去勢(無傷)の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)、0.3mg/kg(右下がり斜線の棒)及び3.0mg/kg(黒色の棒)の変化するエストラジオール−CDS(E2−CDS)の用量並びに対照ビヒクルであるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)溶液(白色の棒)を1回静脈内(i.v.)注射した後の0、3、7、14、21、28及び35日目におけるマウンティング行動(応答率)に及ぼす影響を示す棒グラフである。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)、0.3mg/kg(右下がり斜線の棒)及び3.0mg/kg(黒色の棒)の変化するE2−CDS用量並びに対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)を1回静脈内(i.v.)注射した後の0、3、7、14、21、28及び35日目におけるイントロミッション行動(応答率)に及ぼす影響を示す棒グラフである。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)、0.3mg/kg(右下がり斜線の棒)及び3.0mg/kg(黒色の棒)の変化するE2−CDS用量並びに対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)を1回静脈内(i.v.)注射した後の0、3、7、14、21、28及び35日目におけるマウンティング頻度に及ぼす影響を示す棒グラフ及び付表である。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)、0.3mg/kg(右下がり斜線の棒)及び3.0mg/kg(黒色の棒)の変化するE2−CDS用量並びに対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)を1回静脈内(i.v.)注射した後の0、3、7、14、21、28及び35日目におけるマウンティング潜伏時間(分)に及ぼす影響を示す棒グラフ及び付表である。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)、0.3mg/kg(右下がり斜線の棒)及び3.0mg/kg(黒色の棒)の変化するE2−CDS用量並びに対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)を1回静脈内(i.v.)注射した後の0、3、7、14、21、28及び35日目におけるイントロミッション頻度に及ぼす影響を示す棒グラフ及び付表である。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)、0.3mg/kg(右下がり斜線の棒)及び3.0mg/kg(黒色の棒)の変化するE2−CDS用量並びに対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)を1回静脈内(i.v.)注射した後の0、3、7、14、21、28及び35日目におけるイントロミッション潜伏時間(分)に及ぼす影響を示す棒グラフ及び付表である。 睾丸を摘出(去勢)した雄性ラットに0.03mg/kg(×)、0.3mg/kg( )及び3.0mg/kg( )の変化するE2−CDS用量並びに対照ビヒクルHPβCD( )を1回静脈内(i.v.)注射した後35日間の経過日数に対する血漿LH濃度(ng/mL)のプロットである。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)のE2−CDSを1回だけi.v.投与した場合、0.01mg/kg(横線の棒)のE2−CDSを1日に1回ずつ10日間i.v.投与した場合、及び対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)の0、1、3、7、14及び21日目におけるマウンティング行動(応答率)に及ぼす影響を示す棒グラフである。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)のE2−CDSを1回だけi.v.投与した場合、0.01mg/kg(横線の棒)のE2−CDSを1日に1回ずつ10日間i.v.投与した場合、及び対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)の0、1、3、7、14及び21日目におけるイントロミッション行動(応答率)に及ぼす影響を示す棒グラフである。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)のE2−CDSを1回だけi.v.投与した場合、0.01mg/kg(横線の棒)のE2−CDSを1日に1回ずつ10日間i.v.投与した場合、及び対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)の0、1、3、7、14及び21日目におけるマウンティング頻度(マウント回数)に及ぼす影響を示す棒グラフ及び付表である。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)のE2−CDSを1回だけi.v.投与した場合、0.01mg/kg(横線の棒)のE2−CDSを1日に1回ずつ10日間i.v.投与した場合、及び対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)の0、1、3、7、14及び21日目におけるマウンティング潜伏時間(分)に及ぼす影響を示す棒グラフ及び付表である。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)のE2−CDSを1回だけi.v.投与した場合、0.01mg/kg(横線の棒)のE2−CDSを1日に1回ずつ10日間i.v.投与した場合、及び対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)の0、1、3、7、14及び21日目におけるイントロミッション潜伏時間(分)に及ぼす影響を示す棒グラフ及び付表である。 未去勢の雄性ラット及び去勢した雄性ラットに0.03mg/kg(左下がり斜線の棒)のE2−CDSを1回だけi.v.投与した場合、0.01mg/kg(横線の棒)のE2−CDSを1日に1回ずつ10日間i.v.投与した場合、及び対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)の0、1、3、7、14及び21日目におけるイントロミッション頻度(イントロミッション回数)に及ぼす影響を示す棒グラフ及び付表である。 睾丸を摘出(去勢)した雄性ラットに0.03mg/kg(×) のE2−CDSを1回だけi.v.投与した場合、及び0.01mg/kg(横線の棒)のE2−CDSを1日に1回ずつ10日間i.v.投与した場合、並びに対照ビヒクルHPβCD(白色の棒)の、14日間の経過日数に対する血漿LH濃度(ng/mL)のプロットである。 デキサメタゾン[DEX(□)]又は9−フルオロ−11β,17−ジヒドロキシ−16α−メチル−21−{[(1−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]オキシ}プレグナ−1,4−ジエン−3−オン[DEX−CDS(■)]のラットへの1回のi.v.注射が5分間ストレス試験(上部)又は15分間ストレス試験(下部)に供した時のACTHのストレス誘導上昇の阻害率に及ぼす影響を示すプロットである。 図21に関して述べた15分ストレス試験について、コルチコステロン濃度のストレス誘導上昇の抑制率(%)を示すプロットである。

Claims (65)

  1. 本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を経粘膜剤形に処方して含む薬剤組成物。但し、S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系女性ホルモンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    該組成物は複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでおらず、複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  2. 本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を経粘膜剤形に処方して含む薬剤組成物。但し、S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系女性ホルモンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    該組成物は複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでおらず、複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  3. 本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体が固体経粘膜剤形に処方されている、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 固体経粘膜剤形が固体バッカル剤形である、請求項3に記載の組成物。
  5. nが1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. [DHC]が式(A)のものであり、R1がメチルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. [DHC]が式(B)のものであり、R3が−CH2−であって、Xが−CONH2又はCOOR’’’であり、ここでR’’’がメチル又はHである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  8. Dがステロイド系エストロゲンの残基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. エストロゲンがエストラジオール、エチニルエストラジオール、エストロン、エストラジオール3−メチルエーテル、安息香酸エストラジオール又はメストラノールである、請求項8に記載の組成物。
  10. エストロゲンがエストラジオールである請求項9に記載の組成物。
  11. S−CDSが、17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール、17β−[(1−メチル−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール及び17β−[(1−メチル−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オールよりなる群から選ばれる、請求項10に記載の組成物。
  12. Dがステロイド系プロゲスチンの残基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
  13. プロゲスチンがノルエチンドロン、エチステロン、ノルゲストレル又はノルエチノドレルである、請求項12に記載の組成物。
  14. Dが抗炎症性ステロイドの残基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
  15. 抗炎症性ステロイドがデキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、コルチゾン、フルメタゾン、フルプレドニゾロン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、コルトドキソン、フルドロコルチゾン、フルアンドレノリド又はパラメタゾンである、請求項14に記載の組成物。
  16. 抗炎症性ステロイドがデキサメタゾンである請求項15に記載の組成物。
  17. S−CDSが、9−フルオロ−11β,17−ジヒドロキシ−16α−メチル−21−{[(1−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]オキシ}プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン、9−フルオロ−11β,17−ジヒドロキシ−16α−メチル−21−{[(1−メチル−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]オキシ}プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン及び9−フルオロ−11β,17−ジヒドロキシ−16α−メチル−21−{[(1−メチル−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]オキシ}プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンよりなる群から選ばれる請求項16に記載の組成物。
  18. Dがステロイド系アンドロゲンの残基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
  19. ステロイド系アンドロゲンがテストステロン又はメチルテストステロンである、請求項18に記載の組成物。
  20. S−CDSが、17β−{[(3’’−カルバモイル−1’,4’−ジヒドロピリジニル)アセチル]オキシ}アンドロスト−4−エン−3−オン又は17β−[(1,4−ジヒドロ−1−メチル−3−ピリジニルカルボニル)オキシ]アンドロスト−4−エン−3−オンである、請求項19に記載の組成物。
  21. シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシエチル−β−シクロデキストリン、カルボキシエチル−γ−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、カルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチルエチル−γ−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン又はランダムメチル化β−シクロデキストリンである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
  22. シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン又はカルボキシメチル−γ−シクロデキストリンである、請求項21に記載の組成物。
  23. 処方組成物が無水である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
  24. シクロデキストリンに対するS−CDSの適当なモル比がシクロデキストリンの変動する濃度中でのS−CDSの実質的に飽和した複合体に対する相溶解度図上に位置する点に対応する、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
  25. バッカル錠剤、バッカルカシェ剤(オブラート剤)又はバッカルパッチの剤形に処方された、請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物。
  26. 17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル又はカルボキシメチルエチル誘導体との実質的に飽和した複合体の無水処方組成物であって、該化合物を約0.01〜2.0mg含有する処方組成物を含む、バッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチ。
  27. シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシエチル−β−シクロデキストリン、カルボキシエチル−γ−シクロデキストリン又はカルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリンである、請求項26に記載のバッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチ。
  28. 17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル又はカルボキシアルキル誘導体との実質的に飽和した複合体の無水処方組成物であって、該化合物を約0.01mg以上、0.5mg未満含有する処方組成物を含む、バッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチ。
  29. 17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル又はカルボキシアルキル誘導体との実質的に飽和した複合体の無水処方組成物であって、該化合物を約0.5〜2.0mg含有する処方組成物を含む、バッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチ。
  30. シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン又はヒ
    ドロキシエチル−γ−シクロデキストリンである、請求項28又は29に記載の錠剤、カシェ剤又はパッチ。
  31. シクロデキストリンが、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン又は2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンである、請求項30に記載の錠剤、カシェ剤又はパッチ。
  32. シクロデキストリンが、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシエチル−β−シクロデキストリン又はカルボキシエチル−γ−シクロデキストリンである、請求項28又は29に記載の錠剤、カシェ剤又はパッチ。
  33. シクロデキストリンが、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン又はカルボキシメチル−γ−シクロデキストリンである、請求項32に記載の錠剤、カシェ剤又はパッチ。
  34. S−CDSの経粘膜生物学的利用能を高める方法であって、それを必要とする個体に、本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を経粘膜剤形に処方して含む薬剤組成物を経粘膜投与することからなる方法。但し、該組成物は複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでおらず、該S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系女性ホルモンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  35. S−CDSの経粘膜生物学的利用能を高める方法であって、それを必要とする個体に、本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を経粘膜剤形に処方して含む薬剤組成物を経粘膜投与することからなる方法。但し、該組成物は複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでおらず、該S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系女性ホルモンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  36. 本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体が固体経粘膜剤形に処方されている、請求項34又は35に記載の方法。
  37. 固体経粘膜剤形が固体バッカル剤形である、請求項36に記載の方法。
  38. nが1である、請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
  39. [DHC]が式(A)のものであり、R1がメチルである、請求項34〜38のいずれか1項に記載の方法。
  40. [DHC]が式(B)のものであり、R3が−CH2−であって、Xが−CONH2又はCOOR’’’であり、ここでR’’’がメチル又はHである、請求項34〜38のいずれか1項に記載の方法。
  41. Dがステロイド系エストロゲンの残基である、請求項34〜40のいずれか1項に記載の方法。
  42. エストロゲンがエストラジオールである請求項41に記載の方法。
  43. S−CDSが、17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール、17β−[(1−メチル−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール及び17β−[(1−メチル−1,6−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オールよりなる群から選ばれる、請求項42に記載の方法。
  44. Dが抗炎症性ステロイドの残基である請求項34〜40のいずれか1項に記載の方法。
  45. 抗炎症性ステロイドがデキサメタゾンである請求項44に記載の方法。
  46. S−CDSが、9−フルオロ−11β,17−ジヒドロキシ−16α−メチル−21−{[(1−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3−イル)カルボニル]オキシ}プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンである、請求項45に記載の方法。
  47. シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシエチル−β−シクロデキストリン、カルボキシエチル−γ−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル、カルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチルエチル−γ−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン又はランダムメチル化β−シクロデキストリンである、請求項34〜46のいずれか1項に記載の方法。
  48. シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン又はカルボキシメチル−γ−シクロデキストリンである、請求項47に記載の方法。
  49. 処方組成物が無水である、請求項34〜48のいずれか1項に記載の方法。
  50. シクロデキストリンに対するS−CDSの適当なモル比がシクロデキストリンの変動する濃度中でのS−CDSの実質的に飽和した複合体に対する相溶解度図上に位置する点に対応する、請求項34〜49のいずれか1項に記載の方法。
  51. バッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチの剤形に処方される、請求項34〜50のいずれか1項に記載の方法。
  52. 17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物の経粘膜生物学的利用能を高める方法であって、それを必要とする個体に、該化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル又はカルボキシメチルエチル誘導体との実質的に飽和した複合体の無水処方組成物であって、該化合物約0.01〜2.0mgを含有する処方組成物を含む、バッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチをバッカル投与することからなる方法。
  53. シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、カルボキシメチル−γ−シクロデキストリン、カルボキシエチル−β−シクロデキストリン、カルボキシエチル−γ−シクロデキストリン又はカルボキシメチルエチル−β−シクロデキストリンである、請求項52に記載の方法。
  54. シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン又はカルボキシメチル−γ−シクロデキストリンであり、該化合物の量が約0.5〜2.0mgである、請求項53に記載の方法。
  55. シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、カルボキシメチル−β−シクロデキストリン又はカルボキシメチル−γ−シクロデキストリンであり、該化合物の量が約0.01mg以上、0.5mg未満である、請求項53に記載の方法。
  56. 複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない、経粘膜剤形の処方組成物中の本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を、S−CDSの経粘膜生物学的利用能を高めるために使用すること。但し、該S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系女性ホルモンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  57. 複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない、経粘膜剤形の処方組成物中の本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を、S−CDSの経粘膜生物学的利用能を高めるために使用すること。但し、該S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系女性ホルモンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  58. 17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル又はカルボキシメチルエチル誘導体との実質的に飽和した複合体を、該化合物の経粘膜生物学的利用能を高めるために、約0.01〜2.0mgの該化合物を含む実質的に飽和した複合体の無水処方組成物を含むバッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチの製造に使用すること。
  59. ステロイド系エストロゲン、ステロイド系プロゲスチン、抗炎症性ステロイド又はステロイド系アンドロゲンに反応性の状態の症状の治療を必要とする個体における該症状の治療方法であって、経粘膜剤形に処方された本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を含む薬剤組成物のそれぞれエストロゲン性、プロゲスチン性、抗炎症性又はアンドロゲン性有効量を該個体に経粘膜投与することを含む方法。但し、該組成物は、複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでおらず、該S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系エストロゲン又はステロイド系プロゲスチンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  60. ステロイド系エストロゲン、ステロイド系プロゲスチン、抗炎症性ステロイド又はステロイド系アンドロゲンに反応性の状態の症状の治療を必要とする個体における該症状の治療方法であって、経粘膜剤形に処方された本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を含む薬剤組成物のそれぞれエストロゲン性、プロゲスチン性、抗炎症性又はアンドロゲン性有効量を該個体に経粘膜投与することを含む方法。但し、該組成物は、複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでおらず、該S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系エストロゲン又はステロイド系プロゲスチンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  61. ステロイド系エストロゲンに反応性の状態の症状の治療を必要とする女性の該症状の治療方法であって、17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル又はカルボキシメチルエチル誘導体との実質的に飽和した複合体の無水処方組成物であって、該化合物を約0.5〜2.0mg含有する処方組成物を含む、バッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチを該女性にバッカル投与することを含む方法。
  62. ステロイド系エストロゲンに反応性の状態の症状の治療を必要とする男性の該症状の治療方法であって、17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル又はカルボキシメチルエチル誘導体との実質的に飽和した複合体の無水処方組成物であって、該化合物約0.01mg以上、0.5mg未満を含有する処方組成物を含む、バッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチを該男性にバッカル投与することを含む方法。
  63. ステロイド系エストロゲン、ステロイド系プロゲスチン、抗炎症性ステロイド又はステロイド系アンドロゲンに反応性の状態の症状の治療における投与のために、複合体中のS−CDSの量を最大限にするのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない、経粘膜剤形の処方組成物中の本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を使用すること。但し、該S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系エストロゲン又はステロイド系プロゲスチンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  64. ステロイド系エストロゲン、ステロイド系プロゲスチン、抗炎症性ステロイド又はステロイド系アンドロゲンに反応性の状態の症状の治療における投与のために、複合体中にS−CDSの実質的に全部を保持するのに必要な最小量より過剰のシクロデキストリンを実質的に含んでいない、経粘膜剤形の処方組成物中の本質的に飽和したS−CDS−シクロデキストリン複合体を使用すること。但し、該S−CDSは下記一般式(I)の化合物又はその無毒な薬剤に許容される塩であり:
    Figure 2007512225
    式中、
    (a) Dは1又は2個の反応性ヒドロキシル官能基を有するステロイド系エストロゲン又はステロイド系プロゲスチンの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は17β−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは水素原子1個が欠けている該官能基の数に等しい正の整数であり;そして[DHC]は下記一般式(A)又は(B)の基であり、
    Figure 2007512225
    式中、点線はジヒドロピリジン環の4又は5位のいずれかでの二重結合の存在を意味し;R1はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり; R3はC1〜C3アルキレンであり;Xは−CONR’R’’であり、ここでR’及びR’’は同一でも異なっていてもよく、それぞれH又はC1〜C7アルキルであり、又はXは−COOR’’’であり、ここでR’’’はC1〜C7アルキル又はC7〜C10アラルキルであり;(A)のカルボニル基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し、そして(B)のX基はジヒドロピリジン環の2、3又は4位に結合し;
    (b) Dは少なくとも1個の反応性ヒドロキシル官能基を有する抗炎症性ステロイドの残基であり、1つのかかるヒドロキシル基は21−ヒドロキシ置換基であり、該残基は少なくとも1つの反応性ヒドロキシル官能基からの水素原子1個の欠如を特徴とするものであり;そしてn及び[DHC]は上記と同じ意味であり;又は
    (c) Dは反応性17β-ヒドロキシル官能基を有するステロイド系アンドロゲンの残基であり、該残基は17β-ヒドロキシル官能基から水素原子1個が欠けたものであり;nは1であり;そして[DHC]は上記と同じ意味であり;
    複合体中のS−CDSの量は、許容できる低い末梢ステロイド濃度を維持しながら治療応答を引き出すのに有効な量である。
  65. ステロイド系エストロゲンに反応性の状態の症状の治療において投与するために、17β−[(1−メチル−1,4−ジヒドロ−3−ピリジニル)カルボニルオキシ]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オール化合物とβ又はγ−シクロデキストリンのヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル又はカルボキシメチルエチル誘導体との実質的に飽和した複合体を、約0.01〜2.0mgの該化合物を含む該実質的に飽和した複合体の無水処方組成物を含むバッカル錠剤、バッカルカシェ剤又はバッカルパッチの製造に使用すること。
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