複数のデジタル変調基準サブキャリアを含むラジオ信号をコヒーレントトラッキングする方法が提供される。この方法は、基準サブキャリア上で送信されるシンボルを受信し、基準サブキャリアのシンボルを既知の基準系列共役と結合して複数のサンプルを発生させ、これらのサンプルにメディアンフィルタリングを施してフィルタリング済みサンプルを発生させ、複数の基準サブキャリアにわたり各基準サブキャリアのサンプルを平滑化して各サブキャリアのコヒーレント基準信号推定値を発生させるステップより成る。
本発明は、別の局面において、少なくとも1つのデジタル変調基準キャリアを含むラジオ信号をコヒーレントトラッキングする受信機を包含する。この受信機は、ラジオ信号を受信する入力と、複数のデジタル変調基準サブキャリアを含むラジオ信号のコヒーレントトラッキングを、基準サブキャリア上で送信されるシンボルを受信し、基準サブキャリアシンボルを既知の基準系列共役と結合して複数のサンプルを発生させ、サンプルにメディアンフィルタリングを施してフィルタリング済みサンプルを発生させ、複数の基準サブキャリアにわたり各基準サブキャリアのサンプルを平滑化して各サブキャリアのコヒーレント基準信号推定値を発生させることにより行うプロセッサとより成る。
本発明はまた、少なくともデジタル変調基準キャリアを含むラジオ信号のコヒーレントトラッキング方法であって、基準キャリアを復調して複素コヒーレント基準利得を発生させ、複素コヒーレント基準利得に影響を与える過渡現象を検出し、過渡現象の近くの複素コヒーレント基準利得を調整して調整済み複素コヒーレント基準利得を発生させるステップより成るコヒーレントトラッキング方法を包含する。
本発明はさらに、少なくとも1つのデジタル変調キャリアを含むラジオ信号をコヒーレントトラッキングする受信機であって、ラジオ信号を受信する入力と、基準キャリアを復調して複素コヒーレント基準利得を発生させ、複素コヒーレント基準利得に影響を与える過渡現象を検出し、過渡現象の近くの複素コヒーレント基準利得を調整して調整済み複素コヒーレント基準利得を発生させるプロセッサとより成る受信機を包含する。
本発明は、さらに別の局面において、ノイズがガウスのようなノイズサンプルの間にインパルスのようなインパルスを含むことがある時ラジオ信号中のシンボルのノイズ分散を推定する方法であって、入力サンプルとコヒーレント基準サンプルを加算してエラーサンプルを発生させ、エラーサンプルの自乗を計算し、ガウスのようなノイズサンプルの自乗とインパルスノイズのサンプルの自乗を分離し、エラーサンプルの自乗に非線形フィルタリングを施して長期間平均したガウスのようなノイズの分散と短期インパルスノイズの分散の和を表すノイズ分散推定値を発生させるステップより成る推定方法を提供する。
図1は、本発明を適用可能なハイブリッドFM IBOC波形50のスペクトルを示す概略図である。この波形は放送チャンネル54の中央に位置するアナログ変調信号52と、上側波帯58の第1の複数の等間隔直交周波数分割多重化サブキャリア56と、下側波帯62の第2の複数の等間隔直交周波数分割多重化サブキャリア60とを含む。デジタル変調サブキャリアは、所要チャンネル信号マスクに従うようにアナログ変調キャリアより低い電力レベルで放送される。デジタル変調サブキャリアは分割されて区分を形成するが、種々のサブキャリアを基準サブキャリアと称す。1つの周波数区分は、18個のデータサブキャリアと1個の基準サブキャリアを含む19個のOFDMサブキャリアのクループである。
ハイブリッド波形は、アナログFM変調信号にデジタル変調プライマリ・メイン・サブキャリアを加えたものである。デジタル信号はハイブリッド波形のアナログFM信号の両側にあるプライマリ・メイン(PM)側波帯において送信される。各側波帯の電力レベルはアナログFM信号の全電力よりもかなり低い。アナログ信号はモノラルまたはステレオであり、下位通信許可権(SCA)チャンネルを含んでもよい。
サブキャリアは等間隔の周波数位置にある。サブキャリアの位置に−546乃至+546の番号を付す。図1の波形において、サブキャリアは+356から+546及び−356から−546の位置にある。この波形は通常、全デジタル波形への変換前の初期の移行時に使用される。
各プライマリ・メイン側波帯は10個の周波数区分より成り、これらはサブキャリア356乃至545または−356乃至−545の間に割り当てられる。プライマリ・メイン側波帯に含まれるサブキャリア546及び−546はさらに別の基準サブキャリアである。各サブキャリアの振幅は振幅スケール係数によりスケーリング可能である。
ハイブリッド波形において、デジタル信号はアナログFM信号の両側のプライマリ・メイン(PM)側波帯において送信される。各側波帯の電力レベルはアナログFM信号の全電力よりもかなり小さい。アナログ信号はモノラルまたはステレオでよく、下位通信許可権(SCA)チャンネルを含む。
図2は本発明を適用可能な拡張ハイブリッド波形のスペクトルを示す概略図である。拡張ハイブリッド波形では、デジタル容量を増加するためにハイブリッド側波帯の帯域幅がアナログFM信号の方へ拡張することができる。各プライマリ・メイン側波帯の内側端縁部に割り当てられたこの別のスペクトルはプライマリ拡張(PX)側波帯と呼ぶ。
この拡張ハイブリッド波形は、図2に示すように、ハイブリッド波形にあるプライマリ・メイン側波帯にプライマリ拡張側波帯を付加することにより生じる。サービスモードに応じて、各プライマリ・メイン側波帯の内側端縁部に1個、2個または4個の周波数区分を付加することができる。
図2は、拡張ハイブリッドFM IBOC波形70の概略図である。拡張ハイブリッド波形は、ハイブリッド波形のプライマリ・メイン側波帯にプライマリ拡張側波帯72、74を付加することにより生じる。サービスモードに応じて、各プライマリ・メイン側波帯の内側端縁部に1個、2個または4個の周波数を付加することが可能である。
拡張ハイブリッド波形は、アナログFM信号にデジタル変調プライマリ・メイン・サブキャリア(サブキャリ+356乃至+546及び−356乃至−546)と、プライマリ拡張サブキャリアの一部または全部(サブキャリア+280乃至+355及び−280乃至−355)を付加したものである。この波形は通常、全デジタル波形への変換前の初期の移行時に使用される。
各プライマリ・メイン側波帯は、10個の周波数区分と、サブキャリア356乃至546または−356乃至−546にまたがる別の基準サブキャリアを含む。上側のプライマリ拡張側波帯は、サブキャリア337乃至355(1つの周波数区分)、318乃至355(2つの周波数区分)または280乃至355(4つの周波数区分)を含む。下側のプライマリ拡張側波帯は、サブキャリア−337乃至−355(1つの周波数区分)、−318乃至−355(2つの周波数区分)または−280乃至−355(4つの周波数区分)を含む。各サブキャリアの振幅は振幅スケール係数によりスケーリング可能である。
図3は、本発明を適用可能な全デジタル波形のスペクトルを示す概略図である。図3は全デジタルFM IBOC波形80の概略図である。全デジタル波形は、アナログ信号を無効にし、プライマリ・デジタル側波帯82、84の帯域幅を完全に拡張し、アナログ信号が明け渡したスペクトルに低電力のセカンダリ側波帯86、88を付加することにより構成される。図示の実施例の全デジタル波形は、サブキャリア位置−546乃至+546にデジタル変調サブキャリアを含むが、アナログFM信号はない。
10個のメイン周波数区分の他に、全デジタル波形の各プライマリ側波帯には全部で4個の拡張周波数区分が存在する。各セカンダリ側波帯は、10個のセカンダリ・メイン(SM)周波数区分と、4個のセカンダリ拡張(SX)周波数区分を含む。しかしながら、プライマリ側波帯とは異なり、セカンダリ・メイン周波数区分はチャンネルの中央近くにマッピングされており、拡張周波数区分は中央から離れた所にある。
各セカンダリ側波帯はまた、12個のOFDMサブキャリア及び基準サブキャリア279及び−279を含む小さなセカンダリ保護(SP)領域90、92をサポートする。これらの側波帯は、アナログまたはデジタル干渉波による影響を受ける可能性が最も少ないスペクトル領域に位置するため「保護」側波帯と呼ばれる。別の基準サブキャリアがチャンネルの中心(0)に配置されている。SP領域は周波数区分を含まないため周波数区分の順番とは無関係である。
各セカンダリ・メイン側波帯は、サブキャリア1乃至190または−1乃至−190にまたがる。上側セカンダリ拡張側波帯はサブキャリア191乃至266を含み、上側セカンダリ保護側波帯はサブキャリア267乃至278に別の基準サブキャリア279に付加したものを含む。下側セカンダリ拡張側波帯はサブキャリア−191乃至−266を含み、下側セカンダリ保護側波帯はサブキャリア−267乃至−278に加えて別の基準サブキャリア279を含む。全デジタルのスペクトルの周波数の広がりは全部で369,803Hzである。各サブキャリアの振幅は振幅スケール係数によりスケーリング可能である。セカンダリ側波帯の振幅スケール係数はユーザーにより選択可能である。セカンダリ側波帯に適用するために4つのうちの任意の1つを選択できる。
これら3種類の波形は全て現在割り当てられているスペクトル放射マスクに合致する。デジタル信号は直交周波数分割多重化方式(OFDM)により変調される。OFDMはデータ流により同時に送信される多数の直交サブキャリアを変調する並列変調方式である。OFDMは本来的に柔軟性があり、論理チャンネルの種々のサブキャリア群へのマッピングが容易である。
OFDMサブキャリアは複数の周波数区分に編成される。図4は周波数区分配列の第1のタイプを示す概略図である。図5は周波数区分配列の第2のタイプを示す概略図である。各周波数区分は、図4(配列A)及び図5(配列B)に示すように18個のデータサブキャリアと1個の基準サブキャリアより成る。基準サブキャリア(配列AまたはB)の位置はスペクトル内のその周波数区分の位置により異なる。
信号処理はデジタル音声放送システムの送信機においてプロトコルレイヤーで実行される。制御及び情報信号は放送側でIBOC信号を発生するためにプロトコルスタックの種々のレイヤーを通る。受信機は対応のプロトコルレイヤーの信号を処理する。
メインプログラムサービスは、アナログ送信及びデジタル送信の両方において既存のアナログラジオプログラミングフォーマットを保持する。さらに、メインプログラムサービスは音声プログラミングと直接相関するデジタルデータを含むことができる。
プロトコルデータユニット(PDA)は対等なレイヤー間で(例えば、送信側のレイヤーnから受信側のレイヤーnへ)交換される。プロトコルスタックの任意のレイヤーnの基本的な目的は、送信機のレイヤーn+1により提供されるPDUを受信システム上の対等なレイヤーn+1へ運ぶことである。レイヤーn+1のPDUペイロードは、レイヤーn+1のプロトコル制御情報(PCI)及びその上のレイヤー(n+2)のPDUより成る。
この考え方をさらによく理解するために、送信側のレイヤーn+1からnへの情報の流れを考察する。レイヤーn+1のPDUはレイヤーnのサービスにより特定されるようにパッケージにする必要がある。そのパッケージをサービスデータユニット、SDUと呼ぶ。レイヤーnのSDUは、レイヤーn+1のPDUに、レイヤーnのSDU制御情報(SCI)を加えたものである。レイヤーn+1はレイヤーnのSDUを発生させ、それをレイヤーnのサービスアクセスポイントを介してレイヤーnへ送る。
レイヤーnは、SDUを受けると、レイヤーn+1のPDUと、SCIの受信情報を含むことがあるそれ自身のプロトコル制御情報(SCI)を取って、レイヤーnのPDUを作成する。その後、レイヤーnのPDUは受信システムの対等なレイヤーに送られるが、そこでのプロセスは情報がプロトコルレイヤーを上昇する時は本質的に逆である。従って、各レイヤーは対等なPDUを抽出し、SDUの形の残りの情報を次のレイヤーに送る。
レイヤーL1は、信号がアンテナを介して送信するために準備される物理的レイヤーを表す。レイヤーL2はレイヤーL1に結合されている。各周波数区分について、データサブキャリアd1乃至d18はL2のPDUを運ぶが、基準サブキャリアはL1のシステム制御信号を運ぶ。サブキャリアは中心周波数の0から割当てられたチャンネル周波数の各端部における±546まで番号が付けられている。
各周波数区分内にある基準サブキャリアとは別に、サービスモードに応じて最大5個の別の基準サブキャリアがサブキャリア番号−546、−279、0、279及び546の所に挿入されている。その結果、基準サブキャリアはスペクトル全体にわたって規則的に分布するようになる。表示の便宜のために、各基準サブキャリアには0と60の間で唯一無二の番号が割り当てられる。図6には下側波帯の全ての基準サブキャリアが示されている。図7には上側波帯の全ての基準サブキャリアが示されている。これらの図は基準サブキャリアの番号とOFDMサブキャリアの番号の間の関係を示す。
図1−3は、ある特定の重要なOFDMサブキャリアのサブキャリア番号及び中心周波数を示す。サブキャリアの中心周波数はそのサブキャリア番号にOFDMサブキャリアの間隔Δfを乗算することにより計算できる。サブキャリア0の中心は0Hzにある。これに関連して、中心周波数は無線周波数(RF)割当チャンネルの中心である。例えば、プライマリ・メイン上側波帯の境界は、中心周波数がそれぞれ129,361Hz及び198,402Hzであるサブキャリア356及び546である。プライマリ・メイン側波帯の周波数スパンは69,041Hz(198,402−129,361)である。
図8はシステム制御処理部のブロック図である。システム制御チャンネル(SCCH)は基準サブキャリアのフィールドを用いて制御及びステータス情報を運ぶ。さらに、「逆」と表示される数ビットのシステム制御データ系列は、プライマリ逆制御データインターフェイス及びセカンダリ逆制御データインターフェイスを介してL1の上方のレイヤーから制御される。サービスモードは論理チャンネルの許容可能な全ての構成を決定する。
図8に示すように、上方のレイヤーの指示の下で、システム制御処理部は、各基準サブキャリアに向けられる一連のビット(システム制御データ系列)を編成し、差動符号化する。OFDMスペクトル全体にわたり最大で61個の基準サブキャリア0乃至60が分布している。
図8に示すように、システム制御処理部はレイヤー2からSCCHを介して入力を受ける。システム制御入力を用いることにより、システム制御データ系列アセンブラ100は61個の基準サブキャリアの各々についてTbにわたりシステム制御ビット系列を作成する。差動符号化器102はその後、各ビット系列を時間について差動符号化する。その結果得られる出力は大きさが固定された32×61の行列Rである。Rの行はTbについてのOFDMのシンボルの数に対応し、列がOFDMシンボルあたりの活動状態にある基準サブキャリアの最大数に相当する。行列RはレートRbでのOFDMサブキャリアのマッピングに利用可能である。さらに、システム制御処理部はSCCHを介してレートRbでレイヤー2へL1のブロックカウントを与える。
システム制御データ系列アセンブラは、レイヤー2から全制御情報を収集し、一部のレイヤー制御情報と共に61個の32ビットシステム制御データ系列の行列rを作成する。rの行には番号0乃至31が、列には0乃至60が付けられている。rの各行は、各基準サブキャリアにつき1ビットのシステム制御データ系列を含み(差動符号化前)、同じOFDMシンボルで送信される。行0が最初に埋められる。rの任意所与の列は32個のOFDMシンボルにわたり単一の基準サブキャリアのシステム制御データ系列を含む。
図9はプライマリ基準サブキャリアシステム制御データ系列104を示す概略図である。システム制御データ系列は種々のシステム制御コンポーネントを表すビットフィールドより成る。プライマリ側波帯に位置する基準サブキャリアはセカンダリ側波帯に位置する基準サブキャリアとは異なるフィールドを有する。プライマリ・メイン基準サブキャリアの情報はプライマリサービスに限り適用され、セカンダリ基準サブキャリアの情報はセカンダリサービスに限り適用される。プライマリ基準サブキャリアシステム制御データ系列を図9に示すが、これを表1において定義する。ビット31乃至0がrの行0乃至31にそれぞれマッピングされる。セカンダリ基準サブキャリアも同様に定義される。
表1 プライマリシステム制御データ系列ビットマップ
図10は差動符号化器106のブロック図である。32×61の行列rの各列のビット(システム制御データ系列アセンブラにより編成されている)は、図10に従って差動符号化され、同じオーダーで行列Rに出力される。概念的に、このプロセスは61個の並列差動符号化器としてみることができる。個々の差動符号化器について、rの単一列jのビットがi=0...31で順次処理される。1つのシステム制御データ系列ビットは一度に1つの差動符号化器に入力される。このビットは前に蓄積された出力ビットR[1][j]にモジュロ2加算され、最も最近の出力ビットR[i][j]が形成される。その結果得られる出力ビット流は入力ビットが1になる度に極性を反転させる。各差動符号化器の初期状態は0である。
基準サブキャリアは、送信前に差動符号化される反復性の32ビットBPSKタイミング系列で変調される。基準サブキャリアは多数の目的を達成するが、それらは、(1)捕捉時におけるサブキャリアあいまい性の解消、(2)後でコヒーレント検波を行うための局部位相基準、(3)チャンネル状態情報(CSI)を推定するための局部ノイズ及び/または干渉サンプル、及び(4)周波数及びシンボルトラッキングのための位相誤差情報である。BPSKタイミング系列の差動符号化により、残りのサブキャリアにつき必要とされるコヒーレント基準を確立する前にBPSKタイミング系列を検知できる。その後、差動検波パターンを用いて基準サブキャリアからデータ変調分を除去すると、基準の局部位相についての情報と共にノイズまたは干渉サンプルが残る。これは後で軟判定復号のために必要とされるCSIの推定に使用する。
図11はコヒーレント基準/CSI機能の高レベルブロック図である。ブロック同期パターンの11個の同期ビットは残り21ビットの値にかかわらず各ブロックの境界を一義的に画定するに十分である。BPSKは差動検波QPSKと比べてノイズ及びチャンネル毀損に対する耐性が高いため基準サブキャリアにつき選択される。さらに、全ての基準サブキャリアにわたるBPSKタイミング系列の冗長性により、最も厳しい干渉及びチャンネル条件の下でもロバスト性の高い基準が得られる。BPSKタイミング系列の変数フィールド(ハイブリッド/デジタル、スペア、ブロックカウント及びモード)は、エラー保護のためだけでなく差動符号化による各変数フィールドの終端における位相基準の変動をなくすためにパリティチェックされる。同じBPSKタイミング系列(2ビット基準サブキャリアのIDフィールドは例外として)は、全ての基準サブキャリア位置で冗長的に送信され、ブロックカウントフィールドに画定されたインターリーバーのブロックと同時的である。
コヒーレント基準/CSIモジュールはデータサブキャリアをコヒーレント検波するための位相基準を発生し、その結果得られた軟判定を現在のチャンネル状態に応じて適宜重み付けする。複素重み付けされた軟判定は、その後、スケーリングを施され、制限され、そして適当なデインターリーバー行列に蓄積されてビット処理モジュールへ出力される。
重み付けされた軟判定の大きさはトラッキング制御モジュールのための1組の同期重みを形成するために時間にわたり平滑化される。さらに、誤差のあるシンボルトラッキング状態を検出するために完全精度浮動小数点軟判定値もトラッキング制御モジュールへ送られる。
図12はコヒーレント基準/CSI機能の詳細ブロック図である。位相等化モジュールから各OFDMシンボル時間、上側プライマリ、下側プライマリ及びセカンダリ位相等化周波数領域シンボルが受信される。各シンボルは多数の基準及びデータサブキャリアより成る。基準サブキャリアはコヒーレント位相基準及びCSI重みを発生するために使用されるが、これらの重みはその後データサブキャリアに適用されてビット処理及びトラッキング制御に使用される軟判定値を発生させる。さらに、CSI重みはトラッキング制御モジュールの同期重みを発生するために使用される。コヒーレント基準/CSIモジュールは、フレーム同期/システム制御モジュールがサブフレーム(L1ブロック)の境界の位置を検知するまで実行されない。
図12の詳細ブロック図は、コヒーレント基準/CSIモジュールが7つの主要な機能コンポーネントより成ることを示す:
a.基準サブキャリアデータの除去110、
b.基準サブキャリアの推定112、
c.ノイズ分散の推定114、
d.コヒーレント位相基準の重み付け116、
e.同期重みの発生118、
f.基準サブキャリアの補間120、
g.軟判定制御122である。
これらの機能コンポーネントの動作及び相互作用を以下において簡単に要約する。フレーム同期/システム制御モジュールからの符号化システム制御データ系列を用いて、基準サブキャリアデータ除去コンポーネントは受信OFDMシンボルの各位相等化基準サブキャリアからデータを分離する。基準サブキャリアから変調分を除去することにより、コヒーレント検波のための受信信号の位相の正確な推定が可能となる。
その後、データが分離された基準サブキャリアは基準サブキャリア推定コンポーネントによる時間と周波数におけるフィルタリングを施される。フィルタリング済みの各基準サブキャリアの大きさはその平均信号電力の推定値を与えるが、その角度は復調済みOFDMデータサブキャリアのコヒーレント検波に必要なコヒーレント位相基準を与える。
ビタビ復号器の性能を最適化するには、復調済みの各復調OFDMサブキャリアの大きさをその信号対ノイズ比の推定値により重み付けする必要がある。この「CSI推定値」はコヒーレント位相基準重み付けコンポーネントにより計算され適用される。信号電力推定値はフィルタリング済みの各基準サブキャリアの大きさにすぎず、各基準サブキャリアのノイズ電力推定値はノイズ分散推定コンポーネントにより与えられる。コヒーレント位相基準重み付けコンポーネントは、フィルタリング済み基準サブキャリアをそれらの対応ノイズ分散推定値で割算して、各基準サブキャリアのCSI重み付けされたコヒーレント位相基準を形成する。
その後、基準サブキャリア補間コンポーネントにより、CSI重み付けされたコヒーレント位相基準がデータサブキャリアに適用される。このコンポーネントは基準サブキャリアのコヒーレント位相基準の間で補間を行い、補間された基準を対応のデータサブキャリアに適用する。その結果得られる浮動小数点軟判定値がエラーのあるシンボルトラッキング状態を検出するためにトラッキング制御モジュールへ送られる。さらに、軟判定制御コンポーネントは浮動小数点軟判定値をスケーリングし、量子化して、ビット処理及びBERモジュールへ出力するために適当なインターリーバー行列に配置する。
同期重み発生コンポーネントは、CSI重み付けコヒーレント位相基準の大きさを計算し、それらの基準を時間にわたり平滑化して、トラッキング制御へ送り、同期重みとして使用する。
プライマリ及びセカンダリ側波帯は共に主要な機能コンポーネントにより処理される。コヒーレント基準/CSIモジュールへの入力は、等化済みシンボル、符号化済みシステム制御データ系列、区分グループ、CSI遅延バッファ情報、同期ステータス及びシステム制御データである。
等化済みシンボルはコヒーレント位相基準及びCSI重みの発生に使用されるが、これらは出力軟判定値を発生するためにデータサブキャリアに適用される。各OFDMシンボル時間、上側プライマリ等化済みシンボル及び下側プライマリ等化済みシンボルは位相等化モジュールから送られる。さらに、位相等化モジュールはまた、OFDMシンボルレートRs(344.53125Hz)でセカンダリ等化済みシンボルを送る。各上側または下側プライマリシンボルは267個の複素サンプルより成る。各セカンダリシンボルは559個の複素サンプルより成る。
符号化されたシステム制御データ系列は等化済みシンボルにおいてデータを基準サブキャリアから分離するために使用される。フレーム同期/システム制御モジュールはプライマリ及びセカンダリ符号化システム制御データ系列をコヒーレント基準/CSIモジュールへ運ぶ。各基準サブキャリア識別(RSID)値につき1個のプライマリ及び4個のセカンダリ系列が運ばれる。各系列はそのシンボルレートで単一の値を与える。
コヒーレント基準/CSIモジュール中の機能コンポーネントにより全側波帯が同様に処理されるが、それらが作用するサブキャリアはサービスモードにより異なることがある。区分グループは所与のシンボル内に埋め込まれる周波数区分を識別する。それは何れのプライマリ拡張区分及び何れのセカンダリ側波帯が処理のために利用可能であるかを示す。シンボル時間毎に復調エグゼクティブから単一の区分グループ値が運ばれる。
CSI遅延バッファ情報は22シンボルCSI遅延サーキュラーバッファの最後の要素のアドレスにすぎない。このバッファは入力等化シンボルをそれらに対応するCSI重み付けコヒーレント位相基準と整列させる。CSI遅延バッファ情報はサーキュラーバッファのポインタを包むために使用される。CSI遅延バッファ情報入力は2つあるが、1つはプライマリ側波帯のものであり、もう1つはセカンダリ側波帯のものである。各入力はシンボルレートで単一の値を与える。
同期ステータスは2つのフラッグよりなるが、1つはフレーム同期/システム制御モジュールからのもので有効なブロックカウントを示し、もう1つは復調エグゼクティブからのもので入力等化シンボルがそれらのCSI重み付けコヒーレント位相基準と適正に整列できるようにするため十分に遅延されていることを示す。2つの同期ステータス値はシンボル時間毎に運ばれる。
フレーム同期/システム制御モジュールにより運ばれるシステム制御データは、プライマリサービスモード、セカンダリサービスモード及びブロックカウントを含む。サービスモードは軟判定制御コンポーネントにより出力軟判定値の位置及び数を決定するために使用される。ブロックカウントは現在のL1ブロックのインデックスを示すが、これを軟判定制御コンポーネントが用いて軟判定値をいつ適当なデインターリーバー行列に差し向けることができるかをチェックする。3つのシステム制御データ値がシンボル時間毎に運ばれる。
コヒーレント基準/CSIモジュールの出力は、デインターリーバー行列、デインターリーバースタートフラッグ、プライマリ完全精度軟判定値及び同期重みである。シンボル時間毎にコヒーレント基準/CSIモジュールは量子化された軟判定値をプライマリ及びセカンダリデインターリーバー行列へ差し向ける。軟判定値及びそれらの行先であるデインターリーバー行列の数はサービスモードにより決定される。L1ブロック毎に、デインターリーバー行列内の全ての軟判定値が復調エグゼクティブによりビット及びBERモジュールへ送られる。
基準サブキャリアデータ除去コンポーネントは、フレーム同期/システム制御モジュールからの符号化システム制御データ系列を用いて変調分を入力位相等化基準サブキャリアから分離する。これがコヒーレント検波のために受信信号の正確な位相推定を可能にする。
基準サブキャリアは最初に入力位相等化サブキャリアから抽出される。下側プライマリ側波帯は基準サブキャリア0乃至14含み、セカンダリ側波帯は基準サブキャリア15乃至45を含み、上側プライマリ側波帯は基準サブキャリア46乃至60を含む。
基準サブキャリアからの変調分の除去は、基準サブキャリアデータの複素共役に4つの符号化システム制御データ系列のうちの1つからの複素データ値を乗算することにより行われる。下式は各OFDMシンボル内の各基準サブキャリアの作用を示す。
上式において、yは分離基準サブキャリアの複素データ値、xは入力基準サブキャリアの複素データ値、nは符号化システム制御データの系列番号(0,1,2または3)及びp
nは適当なシステムデータ制御値である。
量(1+j・p
n)はノイズによる影響を受けない2つのBPSKコンスタレーション点を表す。
各システム制御データ系列からの単一の値が各OFDMシンボル時間に受信される。フレーム同期/システム制御モジュールから受信される4つの符号化制御データ系列は、4つの可能な基準サブキャリアID(RSID)番号で変調される。基準サブキャリアデータ値は同じRSIDを共有するシステム制御データ値により乗算される。
基準サブキャリアデータ除去動作は、上側プライマリについて図13に示されている。それ以外の側波帯の基準サブキャリアデータ除去動作も同様な態様で実行される。
基準サブキャリア推定コンポーネントは、データを分離された基準サブキャリアに時間と周波数の両方においてフィルタリングを施す。フィルタリング済みの各基準サブキャリアの大きさによりその平均信号電力が推定されるが、その角度によりそのコヒーレント位相基準が推定される。
データを分離された基準サブキャリアは最初に11タップ型時間領域FIRフィルタを通す。各基準サブキャリアは別々にフィルタリングを受けるため、上側及び下側プライマリ側波帯の両方につき事実上15個の並列なフィルタが存在し、また、セカンダリ側波帯について31個の並列フィルタが存在する。その結果得られる時間についてフィルタリングを施された基準サブキャリアは、縦続接続された4個の3タップ型FIRフィルタにより周波数においてフィルタリングを施される。各ステージは、次のステージへ進む前に単一のOFDMシンボル内の全ての基準サブキャリアについて実行される。外側の基準サブキャリアのフィルタメモリを充填するために、エンドポイント(区分グループにより決定される)を複製する必要がある。図14及び15はそれぞれプライマリ及びセカンダリ側波帯の基準サブキャリア推定プロセスの詳細ブロック図を示す。
図14はプライマリ側波帯基準サブキャリア推定部のブロック図である。図15はセカンダリ側波帯基準サブキャリア推定部のブロック図である。時間領域フィルタリング動作はOFDMシンボルnの各基準サブキャリアにつき以下のように行われる。
y[n]はOFDMシンボルnの時間フィルタリング済み出力基準サブキャリア、x[n]はOFDMシンボルnの分離済み入力基準サブキャリア、h[k]はFIRフィルタの係数配列であり、kはフィルタ加算インデックスである。OFDMシンボルについて、全ての基準サブキャリアが以下の4つの式を順次実行することにより周波数フィルタリングされる。
上式において、y[m]は時間フィルタリングされた入力基準サブキャリア、h[k]はFIRフィルタの係数配列、kはフィルタ加算インデックスである。上式において、mは基準サブキャリアのインデックスを表し、特定の側波帯のその範囲は区分グループの関数である。さらに、a[m]、b[m]、c[m]、d[m]はそれぞれFIRフィルタの第1、第2、第3及び最後のステージの出力である。
周波数フィルタリング動作において、側波帯の第1及び最後の基準サブキャリアはそれぞれ、第1及び最後のサブキャリアのフィルタリングのためにフィルタのメモリを充填するべく各フィルタ段の最初及び最後に反復される。上側プライマリ側波帯では、以下の基準サブキャリアが区分グループの関数として複製される。即ち、基準サブキャリア60は複製されて全ての区分グループの余分のメモリ場所に配置され、基準サブキャリア50は区分グループ「Etend0」のための基準サブキャリア49の位置に配置され(サービスモードMP1)、基準サブキャリア49は複製されて区分グループの「Etend1」のための基準サブキャリア48の位置に配置され(サービスモードMP2)、基準サブキャリア48は複製されて区分グループ「Etend2」のための基準サブキャリア47の位置に配置され(サービスモードMP3)、そして基準サブキャリア46は複製されて区分グループ「Etend4」の余分のメモリ場所に配置される(サービスモードMP4、MP5、MP6及びMP7)。それ以外の側波帯のフィルタリングは同様に実行される。
ノイズ分散推定コンポーネントは各基準サブキャリアのノイズ電力推定値を計算する。このノイズ電力推定値は分離及びフィルタリング済みの基準サブキャリアをCSI推定値で重み付けするためにコヒーレント位相基準重み付けコンポーネントにより使用される。
基準サブキャリア推定コンポーネントからのフィルタリング済みサブキャリア(信号)は、それらに対応する遅延及び分離済み基準サブキャリア(信号及びノイズ)から減算することにより、プライマリ及びセカンダリ側波帯の各基準サブキャリアの複素ノイズ推定値(信号プラスノイズ−信号=ノイズ)を形成する。その後、複素ノイズ推定値の自乗に周波数及び時間フィルタリングを施して、各基準サブキャリアの平均ノイズ分散推定値を発生させる。
大きさを自乗する動作は全ての基準サブキャリアのノイズ値について行われ、ノイズ分散サンプルを発生させる。このノイズ分散サンプルはその後、基準サブキャリアを推定するために周波数フィルタリングを施される。周波数フィルタリング済みノイズ分散推定値はその後、IIRノイズ推定フィルタへ送られる。上側及び下側プライマリ側波帯の両方のための合計15個の別個のIIRフィルタと、セカンダリ側波帯のための31個の別のIIRフィルタ(各基準サブキャリアノイズ分散サンプルにつき1個)が存在する。IIRフィルタは単位利得、2極、高損失の積分器であり、入力ノイズ分散サンプルを平均する。それらはOFDMシンボル時間毎にただ1回実行される。各基準サブキャリアの平均ノイズ分散推定値はフィルタから出力される。
図16及び17はそれぞれ、プライマリ及びセカンダリ側波帯のノイズ分散推定プロセスの詳細ブロック図である。図16はプライマリ側波帯ノイズ分散推定部のブロック図、図17はセカンダリ側波帯ノイズ分散推定部のブロック図である。
OFDMシンボルnの各基準サブキャリアの減算及び大きさ自乗動作を下式で説明する。
上式において、z[n]はノイズ分散サンプル、y[n]はフィルタリング済み基準サブキャリア、x[n−5]は基準サブキャリア推定コンポーネントにおいて時間領域FIRフィルタの遅延を補償するために5つのシンボルにより遅延された分離済み基準サブキャリアである。
周波数フィルタリング動作は基準サブキャリア推定コンポーネントに使用されるものと同一である。IIRフィルタリング動作はOFDMシンボルnにおいて各基準サブキャリアにつき以下のように行われる。
上式において、σ
2[n]はOFDMシンボルnの出力ノイズ分散推定値、v[n]は周波数フィルタリング済み入力ノイズ分散推定値である。下記のフィルタ係数はα=1/16である2極高損失積分器に基づき計算される。
コヒーレント位相基準重み付けコンポーネントはCSI重みを計算して、これを各フィルタリング済み基準サブキャリアに適用する。各基準サブキャリアの信号対ノイズ比を推定するこれらのCSI重みは最終的に各データサブキャリアに適用され、ビタビ復号器の性能を改善する。フィルタリング済み基準サブキャリアの大きさは信号電力を表すため、CSI重みは各フィルタリング済み基準サブキャリアをその対応するノイズ分散推定値で割算するだけで計算され、適用される。その結果得られる複素基準サブキャリアの大きさがCSI重みであり、角度はコヒーレント位相基準である。このコンポーネントの実施例を以下において説明する。
フィルタリング済み基準サブキャリアは、ノイズ分散推定コンポーネントにおいてIIRフィルタリの遅延を補償するために16個のシンボルだけ遅延される。0による割算を防止するために、最初にノイズ分散推定値に小さなバイアスが加えられる。遅延及びフィルタリング済み基準サブキャリアはその後、それらに対応するノイズ分散推定値の逆数で重み付けされ、プライマリ及びセカンダリ側波帯の各基準サブキャリアのCSI重み付けコヒーレント位相基準を発生させる。
図18は基準サブキャリアのCSI重み付けを示すブロック図である。CSI重み付け動作は以下に示すようにOFDMシンボルのnの基準サブキャリアについて行われる。
上式において、w[n]はOFDMシンボルnのCSI重み付けされた出力基準サブキャリア、σ
2[n]は入力ノイズ分散推定値、x[n−16]は遅延及びフィルタリング済み入力基準サブキャリア、ε=10
-11は0による割算を防止するために加えられるバイアスである。CSI重み付け動作は全ての側波帯につき同一である。
同期重みは、信号フェージング効果を除去するために長期間にわたり平均されたCSI重みにすぎない。トラッキング制御モジュールはこれらの同期重みを用いてそのシンボルトラッキングループのトラッキング補正値を形成する。
同期重みは、プライマリ側波帯における各CSI重み付け及びフィルタリング済み基準サブキャリアの大きさを計算し、その結果をIIRフィルタで平滑化することにより各OFDMシンボルについて発生される。合計30個の別個のIIRフィルタ(各基準サブキャリアにつき1個)が存在する。IIRフィルタは単位利得、2極及び高損失の積分器であり、入力CSI重みを長い持続時間にわたり平均する。それらはOFDMシンボル時間につき1回実行される。
30個の同期重みは全て、拡張側波帯を埋めないサービスモードでも常に発生される。これは、拡張サブキャリアが存在しなくてもCSI重み(従って同期重み)が自動的に最小限に抑えられるため受け入れ可能である。
図19は同期重み発生部のブロック図である。OFDMシンボルの各CSI重み付けプライマリ基準サブキャリアの大きさの複素量は以下のように計算される。
上式において、x
i及びx
qはCSI重み付け及びフィルタリング済み入力基準サブキャリアの実数及び虚数部分であり、wはそれに関連のCSI重みである。
IIRフィルタリング動作はOFDMシンボルnの各プライマリ基準サブキャリアにつき以下のように行われる。
上式において、y[n]はOFDMシンボルnの特定の基準サブキャリアに関連する出力同期重みであり、w[n]は入力CSI重みである。下記のフィルタの係数は、α=1/128である2極高損失積分器に基づき計算される。
同期重み発生動作はプライマリ側波帯についてのみ行われる。
基準サブキャリア補間コンポーネントはCSI重み付けコヒーレント位相基準を各データサブキャリアに適用する。コヒーレント位相基準は、基準サブキャリアのコヒーレント位相基準間で補間を行うことにより各データサブキャリアにつき発生される。その結果得られるデータサブキャリアのコヒーレント位相基準はその後、対応のデータサブキャリアにより乗算されて、コヒーレント検波、CSI重み付けされた複素軟判定値を発生させる。
プライマリ側波帯について、CSI重み付け及びフィルタリング済み基準サブキャリアは、補間係数が19である周波数領域フィルタを通す。この補間フィルタは全ての有効な基準サブキャリアにわたって「スライド」する37タップ型FIRフィルタである。補間フィルタは時間フィルタリング動作をしないため、単一のOFDMシンボルからのデータに対してのみ作用する。
補間プロセスは、最初に各フィルタリング済み基準の間の場所に18個の複素0を挿入して、補間係数を19にする。さらに、第1の基準サブキャリアの前と、最後の基準サブキャリアの後に18個の0を付加することによりフィルタを適切に初期化する。そうすると、FIRフィルタは0を詰め込んだデータに作用する。周波数にわたり「スライド」するため、フィルタ内には一度にせいぜい2つの基準(0でない入力)が存在する。フィルタが1つの基準を中心とする時、そのフィルタ内にはただ1つの基準が存在し、それは中央タップに整列する。この場合、フィルタは入力基準サブキャリアをただ戻すだけであり、このサブキャリアは後で除去される。
図20はプライマリ側波帯の基準サブキャリアの補間を説明する概略図である。セカンダリ側波帯の補間フィルタリングも同じような態様で行われる。
1つのシンボルがフィルタリングを施されると、出力から基準サブキャリアが除去され、各データサブキャリアのCSI重み付けコヒーレント位相基準だけが残される。その後、補間済み位相基準がそれらに対応する等化データサブキャリアにより乗算され、出力軟判定値が作成される。複素乗算の前に、位相等化済みデータサブキャリアを補間済み位相基準と適切に整列させる必要がある。これは位相等化済みデータサブキャリアを21シンボルだけ遅延させることにより行う。この遅延により、基準サブキャリアの時間領域FIRフィルタにより導入される遅延(5シンボル)と、ノイズ分散推定IIRフィルタにより導入される遅延(16シンボル)の全部の遅延が補償される。
図21は基準サブキャリア補間プロセスのブロック図である。補間フィルタリング動作はOFDMシンボル内の各サブキャリアnにつき以下のように行われる。
上式において、x[n+k−(K−1)/2]はOFDMサブキャリアn+k−(K−1)/2の0充填入力であり、y[n]はOFDMサブキャリアnの補間済みコヒーレント位相基準であり、h[k]はFIRフィルタの係数配列であり、kはフィルタ加算インデックスである。フィルタのタップ数Kはセカンダリ保護側波帯では25、他の全ての側波帯では37である。
チャンネルにわたる損失を最小限に抑えるために、コヒーレント検波QPSKサブキャリアシンボルにつき最大比率の結合(MRC)を行う重み付けによる軟判定ビタビ復号法が用いられる。干渉波及び信号波レベルは選択的フェージングによりサブキャリア(周波数)及び時間にわたって変化するため、ビタビ復号のブランチメトリックとして使用される軟シンボルの重み付けを適応的に調整するには適時のCSIが必要である。CSI推定法は、100MHz周辺のFMバンドにおいて最大車両速度につき最大約13Hzとなるフェージング帯域幅に配慮するように設計する必要がある。数マイクロ秒の遅延の広がりが一般的であるが、一部の環境ではそれより大きい広がりが測定されている。基準サブキャリアから位相基準及びCSIの両方を推定する方法を図21において説明する。このCSI重みはMRCのための振幅重み付けをチャンネル位相誤差の位相訂正と組み合わせたものである。
図21のCSI復元法の動作は、サブキャリアの周波数及びOFDMシンボルのシンボルタイミングの捕捉及びトラッキングを想定している。周波数及びシンボルタイミングの捕捉技術はサイクリックプレフィックスの特性を利用する。周波数及びシンボルのトラッキングは時間または周波数(サブキャリア)にわたりシンボルからシンボルへの位相ドリフトを観察することにより行われる。
周波数とシンボルタイミングの両方を捕捉した後、差動検波したBPSK系列をブロック同期パターンと相互相関することによりBPSKタイミング系列のブロック同期パターンへの同期が試みられる。トレーニングサブキャリアの位置が最初は知られていないと仮定すると、差動検波は全てのサブキャリアにわたって行われる。既知のブロック同期パターンと各サブキャリアの検出ビットとの相互相関が行われる。ブロック同期パターンの11ビット全てがマッチしたことが検出されるとサブキャリア相関が宣言される。サブキャリアの相関数がしきい値基準(例えば、19個のサブキャリアの倍数だけ離隔した4つのサブキャリア相関)を満たすかまたはそれを超えると、ブロック同期(及びサブキャリアあいまい性の解消)が確立される。
ブロック同期が確立された後、BPSKタイミング系列の変数フィールドを復号することができる。これらの変数フィールドの差動検波ビットは、これらのサブキャリアまたはビットの一部が毀損状態にあっても復号が可能なようにトレーニングサブキャリアにわたり多数決方式で判定される。各モデムフレーム内の16個のブロックには0から15の番号が逐次的に付されている。そのため、ブロックカウントは決して15を超えず、このため、ブロックカウントフィールドのMSBは常に0にセットされる。モデムフレームの同期はブロックカウントフィールドを知ることにより確立される。
この信号をコヒーレント検波するにはコヒーレント位相基準が必要である。BPSKタイミング系列からの復号化された情報を用いてトレーニングサブキャリアから変調分を除去すると、局部位相基準及びノイズに関する情報が残る。図26を参照して、バイナリ(±1)タイミング系列の変調分は、受信したトレーニングサブキャリアに同期、復号及び再び差動符号化したBPSKタイミング系列を乗算することにより、それらの受信タイミングサブキャリアから最初に除去される。その結果得られるシンボルをFIRフィルタにより時間にわたり平滑化すると、局部位相及び振幅の複素共役推定値が得られる。この値を遅延させ、ノイズ分散の逆数の推定値を乗算する。このノイズ分散値は、局部位相及び振幅の平滑化された推定値を適当な時間整列の後入力シンボルから減算し、複素ノイズサンプルを自乗しフィルタリングを施した後、その逆数を0で割算しないような保護を施して近似することにより推定される。このCSI重みは隣接するトレーニングサブキャリアの対間の18個のサブキャリアにわたり補間される。その後、その結果得られたCSI局部重みをデータを有する対応の局部シンボルの乗算に用いる。
11タップ型FIRフィルタは、各サブキャリア位置で複素コヒーレント基準αを推定するために使用される。タップの多い大きいFIRフィルタを用いると信号の統計量が定常状態にある時推定誤差が減少するが、ハイウェイの最高速度では信号のドップラー効果による変化をトラッキングするにはその帯域幅は小さすぎるであろう。従って、テイパーしたガウスのような対称的なインパルス応答を有する11個のタップを備えたものが適当である。この対称的FIRはフィルタは、そのスパンにわたる一部が線形の(ほぼ)チャンネルフェージング特性ではバイアス誤差が0であるその線形位相特性のためにIIRフィルタの代わりに使用される。FIRフィルタのこの平滑化されたコヒーレント基準信号出力は、遅延された入力サンプルから減算すると瞬時ノイズサンプルが得られる。これらのノイズサンプルは自乗され、IIRフィルタにより処理されると、ノイズ分散の推定値σ2が生じる。このフィルタの帯域幅はノイズ分散の一般的により正確な推定値を発生させるためにFIRフィルタよりも狭い。フィルタ遅延にマッチさせるための適当なサンプル遅延を施した後、シンボル重みα*/σ2を各サブキャリアにつき計算する。これらの値はより正確な推定値を得るために各OFDMシンボルにつきサブキャリアにわたって平滑化及び補間される。この重みは各OFDMシンボルにつき一義的であり、各サブキャリアは後続のビタビ復号器のブランチメトリックを形成するシンボルの局部(時間及び周波数)推定値及び重みを与える。
上述したシステムは固定アンテナを備えた車両に適応するように設計されていた。チャンネル状態情報(CSI)の捕捉、トラッキング、推定及びコヒーレント動作のための基準サブキャリアの多数の役割について説明した。このシステムは、ハイウェイ速度の車両に配慮してフェージング帯域幅を有するFM放送バンド(88−108MHz)でのコヒーレント動作をするように設計された。種々のコヒーレントトラッキングパラメータは帯域幅が予想最大ドップラー帯域幅(ほぼ13Hz)に近いフィルタを用いて推定される。固定アンテナでは、トラッキングアルゴリズムへの入力信号の関連トラッキング統計量はドップラー帯域幅より大きくないレートで変動すると想定される。しかしながら、車両の窓にダイバーシティ切換アンテナを使用すると、デジタル信号のコヒーレントトラッキングにあたり厳しい過渡現象が導入され、これがデジタル性能を劣化させる。かかるアンテナス切換ダイバーシティの一例は米国特許第6,633,258号に記載されている。
ダイバーシティアンテナ切換装置は、車両の前方または後方の窓ガラス内に通常配置される多数のアンテナ素子(例えば、2乃至4個)を有する。これらの素子はダイバーシティ切換モジュールに接続され、このモジュールは素子のうちの1個または素子の組み合わせを動的に選択して受信機にRFアンテナ信号を与える。図22はダイバーシティスイッチの構成を示す機能図である。多数の素子200、202、204、206がダイバーシティ切換モジュール208に接続される。このダイバーシティ切換モジュールは制御信号を受ける入力210を有する。制御信号はブロック212で示す推定しきい値と比較され、制御信号と比較結果が増幅器214に入力される。スイッチ制御器216は増幅器出力に応答してアンテナスイッチ218を制御する。これによりアンテナのうちの1つが受信機のアンテナ入力220に接続される。
ダイバーシティ切換モジュールは受信機からの信号をモニターして何時切換を行うかを決定する。典型的なモジュールの「ブラインド切換」アルゴリズムは受信機からの平均IF信号レベルに応じて切換しきい値を確立する。IF信号がこのしきい値以下に減少すると、スイッチは良好な信号が得られるという予想の下に別の素子を盲目的に選択する。新しい信号がしきい値より大きければ、スイッチは新しい素子の選択を維持し、そうでなければダイバーシティ切換モジュールは最小時間休止した後別の素子を選択する。このプロセスは切換モジュールが継続的にそのしきい値を更新することにより継続する。
図22は一般的なダイバーシティアンテナ切換装置の機能図である。ダイバーシティ切換アルゴリズムの動作の元となる理論は種々のアンテナ素子はそれらの瞬時フェージング状態が異なるという事実に基づく。マルチパスのフェージングにより、受信アンテナ素子にそれぞれ異なる時間に到達する信号の多数の通路(マルチパス)が加算される。例えば、100MHzの波長はほぼ10フィートである。2つの信号パスの到達時間に一波長または10ナノ秒(10フィートの伝播差)の時間差がある場合、信号は同相で加算される。同様に、2つのパスが半波長の時間差でアンテナ素子に到達する場合、位相のずれた信号が加算された相殺される。この加算または相殺は移動中の車両では動的に行われるが、ドップラー帯域幅はBW=fc*speed/cにより近似される(fcはキャリア周波数、speedは車両速度、cは光速)。ドップラー帯域幅は典型的なハイウェイの速度でほぼ10Hzである。従って、1つのアンテナ素子の信号ベクトル(大きさ/位相の複素バージョン)はこの例ではほぼ10Hzのレートで変動する。コヒーレント信号のトラッキングを維持するには、基準信号及びチャンネル状態のコヒーレントトラッキングを10Hzの帯域幅に適応させる必要がある。
車両の典型的なアンテナ素子はどちらかと言えばそれぞれ独立の瞬時フェージング状態を経験することがある(素子の間隔及びマルチパスの方向によるが)。例えば、1つの素子がフェージング0の状態にある時、別の素子は最大値にある。数個の素子を有する車両では、この素子がフェージングを経験している(信号が相殺される)間、別の素子が十分に大きい信号を受ける可能性がある。多素子FMダイバーシティアンテナ装置の典型的な素子の瞬時フェージング状態にはどちらかと言えば相関関係があるが、所望のダイバーシティ利得を達成して性能が改善されるほど十分な相関関係があるわけではない。図23はアンテナ素子がシンボル100個毎に切換られるノイズのないフェージング信号の実数成分226及び虚数成分228を示すグラフである。
この例では、ダイバーシティ切換モジュールの切換時間は10μ秒のオーダーであるが、最小休止時間は10ミリ秒のオーダーであると想定することができる。10μ秒の切換時間は復調されたFM信号には何の音声的効果を及ぼさない。しかしながら、信号のフェージングが回避されるためFMダイバーシティによる全体的な改善はかなりのものになりうる。しかしながら、切換による過渡現象はコヒーレントトラッキング済みデジタル信号に悪影響を与える。本発明の目的は、ダイバーシティアンテナ切換装置の切換による過渡現象に対処するコヒーレントトラッキング法を見つけることである。
この問題は下記のように要約可能である。アンテナモジュールの切換によりコヒーレント信号にステップ状の過渡現象が発生するが、この過渡現象の直前または直後の信号はほぼコヒーレントである。このステップ状過渡現象に対して有限インパルス応答(FIR)のフィルタリングを施すと、推定コヒーレントチャンネル基準αに歪みが生じ、FIRフィルタの長さ(11タップ)に等しいスパンのサンプルが影響を受ける。コヒーレントチャンネル基準のこの歪みによりこの基準を入力サンプルから減算して得たノイズサンプルの大きさが増加する。ノイズは過渡現象の近辺で増加するが、無限インパルス応答(IIR)フィルタはこのノイズのピークをIIRフィルタのスパンにわたり押し広げる。これには過渡現象のすぐ近くのノイズの分散を過小評価する一方、過渡現象のすぐ近くにないIIRフィルタの時間スパンにわたるノイズの分散を過大評価する効果である。歪んだコヒーレントチャンネル基準とノイズ分散誤差との両方がデジタル信号の劣化に寄与する。
図24は、信号ノイズ比が10dBのシンボル200の所の過渡現象の近辺で切換られるフィルタリング済みコヒーレント基準フェージング信号の実数成分と虚数成分を示すグラフである。図24はスイッチのステップ状過渡現象の近辺における推定コヒーレント基準信号を示す。実線230及び232は平滑化された複素チャンネル利得値(α)であり、基準信号が過渡現象の近辺で歪んでいる場合の11タップ型FIRフィルタの効果を示す。FIRフィルタは切換による過渡現象の両側においてサンプルの補間を滑らかにする(歪ませる)効果を有する。鎖線234及び236はその過渡現象を経験するシンボルだけが影響を受ける場合のコヒーレント信号のよりよい推定値を示す。
図25はノイズ推定値(信号ノイズ比が20dB)に対する切換による過渡現象の影響を示す曲線である。ライン240はIIRフィルタへのノイズサンプル入力であり、ライン242はフィルタリングを施した出力である。入力ノイズサンプル(自乗)は過渡現象の直近で増加するとして示すことができる。これは実際には、11タップ型FIRフィルタによるコヒーレントチャンネル基準の歪みに起因する。IIR出力はノイズのピークに応答するが、これらのピークは過渡現象にとって局部的に抑制され、しかしながら、IIRフィルタの持続時間にわたり押し広げられる。局部的なノイズの分散の推定におけるこれらのエラーはデジタル性能の劣化に寄与する。
その解決法は以下のように要約可能である。前に図24に示したように、切換による過渡現象の両側(時間について)においてコヒーレントトラッキングを行うことができる。コヒーレント推定フィルタは過渡現象をまたぐ信号サンプルを使用できないため、トラッキングフィルタは何れかの時間方向において過渡現象までの(それを含まない)信号サンプルだけを使用することができる。
ステップ状過渡現象によるエラーを訂正する1つの可能な方法は信号の過渡現象の時間位置を同定することを含む。切換の瞬間を受信機モデムに明示的に伝えることが理論上可能であるはずであるが、これは実用的でない。モデムコヒーレントトラッキングアルゴリズム内で過渡現象を高い信頼度で検出するのが好ましい。過渡現象が発生した所のシンボルを除き、その過渡現象のすぐ近くでほぼコヒーレントなトラッキングを行うように過渡現象の近くでコヒーレントトラッキングアルゴリズムを修正することが可能である。ノイズ分散推定値のエラーはコヒーレントチャンネル基準のエラーによることを留意するのは価値あることである。
過渡現象検出アルゴリズムの複雑さ及び過渡現象の誤検出による劣化により非常に単純なアルゴリズムの開発が促され、その結果性能が向上した。
平均的な白色ガウスノイズ(AWGN)チャンネルでは、コヒーレントチャンネル基準及びノイズ推定値に線形フィルタリングを施すとほぼ最適の結果が得られる。このタイプの線形フィルタ及びフィルタの時間スパンはフェージング統計量、及び、さらに詳しくは対象となるパラメータの自動相関関数に依存する。最初の設計では、推定誤差(分散)の減少と、フェージングにおけるパラメータをトラッキングする推定値のすばやさとの間において合理的な妥協をはかるものとしてハイウェイ速度でのこの自動相関関数を近似する対称的な11タップ型FIRフィルタが選択された。位相が線形なことはノイズでは問題ではないため、IIRフィルタを用いてノイズの分散を推定した。これらの推定フィルタは共に、選択性フェージング環境に配慮した実効周波数スパンを用いて(周波数自動相関)サブキャリアにわたりさらなる周波数フィルタリングを行うことにより増強された。これらのフィルタはAWGNチャンネル、フェージングにおいてよい結果を生じ、フェージングダイナミックスより遅いはずであるかなり遅い自動利得制御(AGC)機能を想定している。図26はコヒーレント基準及びノイズ推定部のブロック図である。
一部の自動車用受信機は、ダイバーシティ切換アンテナ及び高速AGCを使用する。コヒーレント基準及びノイズ推定フィルタはこれらの用途にはもはや適していない。さらに、第1番目の隣接するFM信号からの干渉波はAWGNでなく、インパルスのような特性に近いため、推定フィルタ技術を適当に修正することにより幾分か改善することが可能である。過渡現象の検出及びそれに続くコヒーレント基準の調整をノイズ推定の修正と共に行ってこの問題を解決することができる。
線形フィルタによるフィルタリング(FIRまたはIIR)でなくてメディアンフィルタによるフィルタリングが推定パラメータのステップ状変化を保持しながら推定ノイズを減少させ、また、インパルスノイズの影響を減少させる方法であることがよく知られている。このメディアンフィルタによるフィルタリングを過渡現象の検出及びコヒーレント基準の調整に置き換えると便利である。メディアンフィルタの一部の重要な特性を受信機システムへの使用が好適なことを示すために以下において分析し説明する。
メディアンフィルタの1つの重要な特性はコヒーレント基準及びノイズの推定誤差の分散を減少させることである。この減少は最初のフィルタに匹敵し、さらに所与の数のサンプル(フィルタタップ)を有する任意のフィルタ(線形または非線形)について推定誤差が最も少ないクラメール・ラオの限界に匹敵する。この推定誤差はこのケースではAWGNノイズだけにあてはまる。
コヒーレント基準信号の推定に使用される最初の11タップ型FIRフィルタを最初に分析する。この11個のフィルタタップは、和が1で、直流利得が1となるように規準化される。図27は単一の基準サブキャリアのコヒーレント基準を推定するための11タップ型FIRフィルタを示すグラフである。
基準サブキャリアにわたる推定値の平滑化に使用されるフィルタを次に説明する。このフィルタは9個のタップ(実効)を有し、これらは和が1で、直流利得が1となるように規準化される。上方または下方のデジタル側波帯の端縁部のサブキャリアに近い所でのフィルタリングはエンドポイントにおけるフィルタスパンが打ち切られるため正確でない。このフィルタを図28に定義するが、図28は基準サブキャリアの周波数にわたって使用されるフィルタのグラフを示す。
推定誤差の減少を次に比較する。AWGNにより毀損されたパラメータが一定であると仮定して、入力サンプルの分散に対するフィルタ出力サンプルの分散の比率は下記の規準化されたフィルタ係数の自乗の和に等しい。
11タップ型FIRフィルタの分散の減少は0.127、即ち約−9dBである。同様に、周波数にわたる9タップ型FIRフィルタの減少は0.196、即ち約−7dBである。これらのフィルタのエラー減少性能をメディアンフィルタ及びクラメール・ラオの限界に匹敵させることができる。
AWGNにより毀損された一定の(Nタップを有するフィルタのスパンにわたり)パラメータαのサンプルについて、対数公算関数は下記の通りである。
そして、その結果得られる、AWGNにおける一定のパラメータのクラメール・ラオの限界はただ下記のようになる。
そうすると、N個のタップを有するフィルタの理論的な最小分散値はただ入力分散値をタップ数で割算したものである。これは、タップの重みを等しく(均一に)すると最小分散値の推定値が得られることを示唆するが、これはフェージングにはうまく働かない。図29はコヒーレント基準信号の推定誤差の減少に対するフィルタタイプの影響を示すグラフである。
メディアンフィルタはエラー分散の増加がAWGNにおけるクラメール・ラオの限界に比べて約2dBであるが、実際の釣鐘型のFIRフィルタは同数のタップについてメディアンフィルタに近い性能を与える。ガウスノイズよりも後部を鋭く切り取った、あるいはよりインパルス状のノイズ分布では、メディアンフィルタの性能は増加するが線形フィルタの性能は同じである。例えば、ラプラスノイズでは、メディアンフィルタの性能は同数のパットを有する線形フィルタと比べてエラー分散を減少させる3dBも良いものである。もちろん、この新しいケースのクラメール・ラオの限界は均一タップ型FIRフィルタではもはや到達できない。
AWGNにおけるこれらのフィルタによる性能劣化は、各シンボルの検出時に実際のシンボルノイズ分散にわたるさらに別のノイズ(推定エラー分散)を計算することにより近似可能である。9タップ型周波数スパンフィルタは時間においてメディアンフィルタとして働く11タップ型FIRとは独立に使用される。9タップ型周波数フィルタは切換によるステップ応答(時間)に影響を与えない。最初の11タップ型FIRフィルタ及び7タップ及び5タップ型メディアンフィルタの損失を表2に示す。
図30はコヒーレント基準信号のフィルタリングにつき11タップ型FIRフィルタとメディアンフィルタとを比較したグラフである。メディアンフィルタを用いるとAWGN性能の損失が小さくなると予想されるが、アンテナ切換のステップ応答の改善が図30のグラフから明白である。ステップ応答は過渡現象の検出を必要とせずとも有意に改善されることに注意されたい。図31は新しいコヒーレント基準及びノイズ推定処理部の機能図であるが、11タップ型FIRフィルタが5タップ型メディアンフィルタに置き換えられている。
図31の機能及びアルゴリズムを次に簡単に説明する。図示のプロセスの目標はコヒーレントチャンネルの複素利得の推定値(「a」値)をノイズまたは干渉波の推定値と共に提供することである。これらの推定値は移動中の自動車のようなモバイル環境において経験する動的な選択性フェージングチャンネルに配慮して時間と周波数(サブキャリア位置)において局部的である。これらの推定値は、上述したように受信され復調された信号から分離されている基準サブキャリアシンボルから抽出され、ライン250上にSr,n複素値として入力される。これらのシンボルの変調に使用されるデータは既に知られており、第1の共役乗算演算(乗算器252により示す)でこれらのシンボルから除去され、ライン254上に瞬時複素チャンネル利得値a2r,nを与える。その後メディアンフィルタによる時間フィルタリング256がアンテナ切換によるステップ状変化を維持しながらノイズを減少させ、ライン258上に中間値a1r,nを発生させる。これらの中間値は、ブロック260に示すように基準サブキャリアにわたりさらに周波数フィルタリングを施され(平滑化)、最終的な複素チャンネル利得値ar,nを発生させる。これらの利得値ar,nは、QAMシンボル復調のために従来の態様でデータを有するシンボルについて信号コンスタレーションを処理する(ブランチメトリック情報を等化し与える)ためにこのアルゴリズムの外側で使用される。
このプロセスにおける次のステップは、これらの複素チャンネル利得値のそれぞれに関連するノイズを推定することである。瞬時ノイズサンプルは、加算点262に示すようにar,n-2値を適当な遅延を施されたノイズの多い対応の入力サンプルa2r,n-2から減算することにより推定される。ブロック264に示すように、大きさが自乗された値はこれらの複素ノイズサンプルから計算されて、ライン266上に瞬時ノイズ分散推定値varn-2を与える。これらの瞬時ノイズ分散サンプルは局部的な(時間と周波数)ノイズの正確でない推定値であり、有用なノイズ分散推定値を発生させるための処理およびフィルタリングが必要である。これらの瞬時ノイズ分散推定値の誤差を減少させるために簡単な時間及び周波数におけるフィルタリングが通常使用されるであろうが、このタイプのフィルタリングはフェージング、AGC作用及びアンテナ切換によるステップ状変化に起因するノイズの変化に事実上適応しない。従って、メディアンフィルタ268を用いてこれらの瞬時分散サンプルを時間フィルタリングすることによりサンプルvarfltn-16を発生させ、従来型フィルタリング(線形IIRまたはFIRフィルタ270)を用いて周波数(サブキャリア)にわたりさらに平滑化して上述の複素チャンネル利得推定値と同様な態様で最終的な分散推定値σ2 r,n-16を発生させる。アンテナ切換により生じる比較的大きなノイズインパルスを捕捉するために別のフィードフォーワードパス272が設けられている。これらの値(ブロック274で示すように係数0.5によりスケーリングされている)がメディアンフィルタによる推定値を超える場合、ブロック276に示す最大選択機能によりこれらの大きな値が周波数平滑フィルタへ出力するために選択される。その後、これらの値はブロック278で示すように基準サブキャリアにわたり平滑化される。これは大きなノイズインパルスのこの知識を利用するブランチメトリックを後で形成するにあたり重要である。
上述したコヒーレント基準推定におけるアルゴリズムの改善の分析およびシミュレーションは分析されシミュレーションされるケースにとって充分うまくいくように思える。これらのケースは、ドップラー帯域幅がハイウェイ速度と調和し、ノイズが信号対ノイズ比で0dBのように小さい、フラットな選択性フェージングチャンネルを含む。しかしながら、インパルスノイズ、または新しいコヒーレント基準処理では完全に抑制されない残留過渡現象のような他のチャンネル状態を考察する必要がある。この場合、調整されたコヒーレント基準値xは適当であるが、ノイズ分散推定値は毀損されているであろう。ノイズインパルスはインパルスが発生したところのシンボルについては大きい場合があるが、IIRフィルタはインパルスの瞬間にこのノイズ分散値を抑制し、ノイズ推定値をIIRフィルタのインパルス応答時間にわたり分散させる。この場合、IIRパスと並列に(適当な遅延の整合を行うことにより)大きいノイズサンプルをフィードフォーワードするのが好ましい。ノイズパルスがIIRフィルタ出力より十分に大きいシンボルについては、それらのシンボルのノイズ分散推定値を求めるためにこのノイズパルスを用いる必要がある。これらのノイズパルスにフィードフォーワードパスが用いられると、これらのサンプルについてIIRフィルタに流れ込むエネルギーを減少させてノイズの局部ピークがIIRフィルタのスパンに広がらないようにする必要がある。ノイズ分散推定におけるノイズのピークを取り扱うこのプロセスの幾つかの変形例を考慮するのは容易である。
ノイズ分散推定プロセスは、切換による過渡現象に対する性能を改善し、高速のAGCに適応するように修正される。最初のノイズ推定プロセスは、パラメータがa=1/16(複素チャンネル利得の添字を付したar,n値の表示と混合すべきでない)である2極IIRフィルタを用いていた。このフィルタのインパルス応答のピークは8個のサンプル(シンボル)だけ遅延した所にあったが、減衰尾部はそれよりも非常に長くステップ遅延が16サンプル(シンボル)に近い値になった。図32は新しい修正によりIIRフィルタのパラメータがa=1/8に変化することを示す。ノイズの推定に対する他の修正例は周波数フィルタリングをIIRフィルタの前からIIRフィルタの後に移すことを含む。IIRフィルタの前には7タップ型メディアンフィルタがあり、このIIRフィルタは過剰ノイズフィードフォーワードパスを含む。これらの新しい付加部分は受信機のフロントエンドまたはIF部における高速のAGC機能に配慮すると共に切換による過渡現象及びインパルスのようなノイズにより良く対処するように設計される。
7タップ型メディアンフィルタは、線形IIRによるフィルタリング及び周波数にわたる(基準サブキャリア)フィルタリングの前にノイズが自乗されたサンプルを予め処理するために使用される。この場合、メディアンフィルタはノイズを自乗したサンプルの非対称確率密度関数(pdf)の性質による分散のバイアスをかけた推定値を発生させる。このバイアスはノイズ推定プロセスにおいて後続の動作のために調整可能である。詳述すると、メディアンフィルタへの各入力サンプルxは平均が0のガウスノイズサンプルの1対の(複素)自乗の和よりなると想定される(x=v
2+w
2)。ノイズサンプルu及びvのガウスpdfは下記の通りである。
xの累積分布関数は以下のように変数を変化させ積分を行うと見つけられる。
その場合、xの電力密度関数(pdf)がP(x)を微分することにより抽出される。
xの中央値は下式においてmedxを解くことにより見つけられる。
中央値の推定バイアス係数は平均値に対する中央値の比率として見つけることができる。
従って、中央値はガウスノイズの分散を係数ln(2)だけ過小評価する。このバイアスはノイズ分散推定プロセスにおいて平均推定値にとって代わる時に考慮する必要がある。
中央値バイアス係数によるノイズ推定値のスケーリングは、ビタビ復号器に提供される全てのシンボルの全てのノイズ推定値が同じ係数でスケーリングされる場合は一般的に問題とならないであろう。しかしながら、フィードフォーワード過剰ノイズ推定パスはスケーリングが問題になる一例にすぎない。さらに、ブランチメトリックの形成(例えば、固定小数点量子化及びけたあふれ)における非線形性も影響を及ぼす場合がある。
分散推定プロセスにおけるIIRフィルタの時定数を減少する効果について次に説明する。2極IIRフィルタの各出力サンプルy
nは新しい入力サンプルx
nと前の2つの出力との関数である。
フィルタ式の直流利得は1であり、そのインパルス応答(時間)はパラメータaに依存する。インパルス応答(モード)のピークはグループ遅延の半分の時間で生じるが、グループ遅延はステップ応答時間をよく示すものである。平均遅延及びモード遅延はパラメータaの関数として計算可能である。図32及び33はa=1/16及びa=1/8についてIIRフィルタのインパルス及びステップ応答を示す。図32はIIRフィルタのインパルス応答のグラフであり、図33はIIRフィルタのステップ応答のグラフである。
フィルタの実効遅延は少なくともモード遅延であって、グループ遅延より小さいものであってはならない。この遅延はブランチメトリックの形成にあたりノイズ推定値を適用する時に適切に補償する必要がある。
ガウスノイズの抑制能力は、入力から出力へのノイズ推定値の分散の減少が規準化されたフィルタ係数(直流利得=1)の自乗の和に等しいFIRフィルタと同じ態様で評価することができる。この分散の減少はノイズ電力の分散の減少でなくてノイズ分散の推定値のエラー分散に関連があることに注意されたい。IIRフィルタでは、この計算は連続スペクトルに近づく大きなNの限界をとった後、パーセバルの理論を適用することにより、フィルタのインパルス応答のz変換に対して実行すると便利である。IIRフィルタのz変換は下記の通りである。
入力から出力サンプルへの分散減少係数は下記のように計算できる。
限界において、加算は下記のように積分することができる。
そうすると、分散減少係数は積分した後のIIRフィルタパラメータαの関数となることがわかる。
IIRフィルタにより得られるAWGNの分散の減少を図34においてパラメータaに対してプロットした。図34はIIRフィルタパラメータaの関数としてノイズ推定値の誤差が減少する態様を示すグラフである。
周波数にわたるフィルタリングによりAWGNについてさらに7dBノイズが減少する。AWGN定常チャンネルでは、ノイズ推定誤差を減少させるにはIIRの時定数は長い方がよいが、切換による過渡現象があり、そして/またはAGCが高速である非定常チャンネルでは時定数は短い方が好ましいであろう。本発明のシステムでは、7タップのメディアンフィルタの後にa=1/8のIIRフィルタを設けた方がa=1/16のIIRフィルタを一個用いる最初の設計より好ましい。この新しいフィルタリングによると、定常AWGNチャンネルにおける劣化が最小限に抑えられると共にAGCが高速でダイバーシティアンテナ切換の過渡現象が存在してもフェージングにおける性能が有意に改善される。単一のIIRフィルタと周波数フィルタに生じるノイズ推定誤差はフィルタへの単一のノイズサンプル入力の分散よりほぼ22dB良好である。このため、フィルタ入力のノイズ分散の標準偏差が約8%、あるいは8%のノイズ分散推定誤差が生じる、即ち、150個のノイズサンプルにわたり平均したものと等化となる。これはビタビ復号器により使用されるブランチメトリックがAWGNにおいてほぼ0.33dBだけ劣化するのと同じ効果がある。縦続7タップ型メディアンフィルタはこの誤差をさらに減少させるが、AWGNにおけるこの効果の計算は容易でない。これはa=1/16の元のモデムにおけるほぼ0.16dBの劣化に匹敵する。しかしながら、新しいノイズの推定に対する動機は非AWGN状態のためのものである。
純粋なAWGNチャンネルでは最適な受信機はフィードフォーワード過剰ノイズパスを決して選択せず、最適なノイズフィルタは線形(例えば、IIRまたはFIR)であって、長期間のスパンを有する。この過剰ノイズパスは、インパルスのようなノイズまたは切換による過渡現象などによるコヒーレント基準誤差を取り扱うためのみに提供される。これらのケースでは、過剰ノイズパスはIIRフィルタにより与えられる長期間の分散推定値を汚染することなく、時々生じる大きなノイズバーストの効果を緩和する。フィードフォーワード過剰ノイズパスはG*ln(2)によりスケーリングされ、ノイズ入力サンプルの一部が平均値を超え、ノイズ推定パスにおいて「SELECT MAX INPUT」機能により選択される。スケーリングが小さければ過剰ノイズパスの選択はそれほど頻繁でなく、AWGNケースの損失は最小限に抑えられるであろう。過剰パスが選択される確率は過剰サンプルが平均値を超える(正確な平均フィルタを想定して)確率にほぼ等しい。
過剰パスの選択によるノイズ推定分散の平均増加係数(dB)は下記のように計算可能である。
図35は過剰パスを選択する確率及び平均ノイズ分散推定値の増加に対する過剰利得値G*ln(2)の影響を示すグラフである。G*ln(2)=0.5の値は過剰ノイズ利得について合理的妥協をした値であることが実験的に確かめられている。この値はAWGNケースの最小損失を与えるが、切換による過渡現象による損失を最小限に抑える効果がある。さらに、AGCが高速であり、そして/または第1の隣接するFM干渉波がある場合の性能が改善される。
残留コヒーレント推定誤差とノイズ分散推定値の両方に対する修正の効果を図36乃至40に示す。図36は最初の11タップ型FIRフィルタと、a=1/16の最初のIIRノイズ推定フィルタとによるノイズ推定値(信号対ノイズ比10dB)に対する切換による過渡現象の影響を示すグラフである。図37は最初の11タップ型FIRフィルタと、a=1/8に修正されたIIRノイズ推定フィルタとによるノイズ推定値に対する切換による過渡現象の影響を示すグラフである。図38は最初の11タップ型FIRフィルタによるノイズ分散の修正が適用された時のノイズ推定値に対する切換による過渡現象の影響を示すグラフである。図39は5タップ型メディアンフィルタと、a=1/8に修正されたIIRノイズ推定フィルタとによるノイズ推定値(信号対ノイズ比10dB)に対する切換による過渡現象の影響を示すグラフである。図40はノイズ分散修正が適用された時の5タップ型メディアンフィルタによるノイズ推定値に対する切換による過渡現象の影響を示すグラフである。
修正の種々の部分を導入すると図37乃至40のグラフが得られるが、図40は全ての修正の最終結果を示す。図36はコヒーレント基準ノイズ及びノイズ推定誤差の点の最初のモデムの性能を示す。この図はノイズの推定において捕捉されない切換の過渡現象による比較的高い値のノイズを示す。このノイズのピークは過小評価され、ピーク近くの推定値はIIRフィルタの平滑化により過大評価される。
図37はIIRフィルタの時定数の減少により小さな改善が得られることを示す。図38は過渡現象による実際のノイズは依然として大きいがノイズの推定に有意の改善が得られることを示す。図39はノイズの推定では過渡現象によるピークは捕捉されないが5タップ型メディアンフィルタを使用するとコヒーレント基準のノイズ過渡現象に有意な改善が得られることを示す。
図40は、ノイズの推定により短い過渡現象の持続時間が捕捉されるがコヒーレント基準ノイズの減少に至る全ての改善を示す。ノイズ分散推定値にはグラフから幾分ノイズが多いように思えるが、パラメータの選択によりテストされるシナリオ範囲にわたって最良の性能の妥協が得られた。
本発明は、HDラジオシステムのFMハイブリッドモードについてFMダイバーシティアンテナ切換装置が遭遇する切換による過渡現象に対処するための改良である。これらの改良はコヒーレントトラッキング及びノイズ分散推定アルゴリズムの修正を含む。新しいアルゴリズムは典型的なハイウェイ速度でのフラットで選択性のあるフェージング及びレイリーのフェージングにおいて分析されシミュレーションされた。これらのシミュレーションはコヒーレントトラッキング性能及びノイズ推定が良好なことを示す。これらの改良により高速AGC、ダイバーシティアンテナ切換、第1の隣接するFM干渉波及び極限的な選択性フェージング環境において有意に良好な性能が提供された。
新しい基準受信機のソフトウェア(ダイバーシティアンテナ切換を取り扱うように改良された)の実験室でのテストが完了している。最終的なバージョンは一部の重要なフェージング及び干渉波の環境において受け入れ可能な性能を与えるように思える。図41はSRFフェージングにおける性能を示し、図42はUFフェージングにおける性能を示す。
図43は本発明による信号処理が可能なラジオ受信機314のブロック図である。HDラジオ信号はアンテナ316で受信される。バンドパスプレセレクトフィルタ318は周波数fcの所望の信号を含む対象となる周波数バンドを通過させるが、周波数(fc−2fif)(下側波帯のインジェクション局部発振器)のイメージ信号をリジェクトする。低ノイズ増幅器320はこの信号を増幅する。増幅された信号はミキサー322において、同調可能な局部発振器326によりライン324に供給される局部発振器信号floと混合される。これによりライン328上に和信号(fc+flo)と差信号(fc−flo)が生じる。中間周波数フィルタ330は中間周波数信号fifを通過させ、対象となる変調信号の帯域幅の外側の周波数成分を減衰させる。アナログ−デジタルコンバータ332はクロック信号fsを用いてライン334上にレートfsのデジタルサンプルを発生させるように動作する。デジタルダウンコンバータ336はその信号の周波数シフト、フィルタリング及びデシメーションを行ってライン338、340上に低サンプリングレートの同相及び直角位相信号を発生させる。そして、デジタル信号プロセッサ342は上述したコヒーレントトラッキングを含むさらに別の信号処理を行ってライン344上に出力装置346のための出力信号を発生させる。
図44は基準サブキャリアから位相基準とCSIの両方を推定する別の方法を示す。図44に示すように、基準サブキャリアにより運ばれる複素トレーニングシンボルはライン348上に入力され、ブロック350に示すようにそれらのシンボルの複素共役が取り出される。複素共役は乗算器354によりライン352上の既知のトレーニング系列と乗算される。これにより、受信トレーニングサブキャリアに同期、復号及び再差動符号化されたBPSKタイミング系列が乗算され、受信トレーニングサブキャリアからバイナリ(±1)タイミング系列変調分を除去される。その結果ライン356上に生じるシンボルを有限インパルス応答(FIR)フィルタ358により処理して時間にわたり平滑化し、ライン360上に局部位相及び振幅の複素共役推定値を発生させる。この値を時間遅延362により遅延した後、乗算器366によりライン364上のノイズ分散値の逆数の推定値により乗算する。ノイズの分散はライン360上の局部位相及び振幅の平滑化された推定値を加算点370において入力シンボルから減算する(遅延手段168により与えられる適当な時間調整の後)ことにより推定される。その後、ブロック372で示すようにその結果を自乗し、ブロック374で示すように複素ノイズサンプルにフィルタリングを施す。その逆数はブロック376で示すように近似される(0による割算に対する保護)。このCSI重みはブロック378で示すように隣接するトレーニングサブキャリア対の間において18個のサブキャリアにわたり補間してライン380上に局部CSI重みを発生させる。その後、CSI重みは、ブロック384で示すように適当な遅延を与えられた後、ライン382上で受信される対応の局部データシンボルに乗算するために使用される。その後、乗算器386はライン388上に軟判定出力を発生させる。
図44において、トレーニングシンボルを運ぶラインをTで、データを運ぶラインをDで示す。さらに、フィルタ374の遅延は下記の通りである。
これらの式は時定数βを有する2極IIRフィルタに関する。IIRフィルタは入力サンプル「x」と、前の出力サンプルから平滑化された出力サンプル「y」を計算する。
CSI重みは最大比の組み合わせ(MRC)のための振幅の重み付けをチャンネル位相誤差のための位相の訂正と組み合わせる。このCSI重みは時間と周波数にわたって動的であり、各QPSKシンボルにつき推定される。
上式において、α*はチャンネル利得の複素共役の推定値、τ2はノイズの分散の推定値である。
図44のCSI復元方法の動作は、サブキャリアの周波数及びOFDMシンボルのシンボルタイミングの捕捉及びトラッキングを想定している。周波数及びシンボルタイミングの捕捉技術はサイクリックプレフィックスの特性を利用する。周波数及びシンボルトラッキングは時間または周波数(サブキャリア)にわたりシンボルからシンボルへの位相ドリフトを観察することにより行われる。
周波数とシンボルタイミングの両方を捕捉した後、BPSKタイミング系列のブロック同期パターンへの同期は差動検波したBPSK系列をブロック同期パターンと相互相関することにより試みられる。差動検波はトレーニングサブキャリアの位置が最初わからないと仮定して全てのサブキャリアにわたって行われる。既知のブロック同期パターンと各サブ゛キャリアの検出されたビットとの相互相関が行われる。ブロック同期パターンの11個全てのビットのマッチングが検知されるとサブキャリアの相関が宣言される。サブキャリアの相関数がしきい値基準(例えば、19個のサブキャリアの倍数だけ離隔した4つのサブキャリア相関)を満足するかまたはそれを超えるとブロック同期(そしてサブキャリアあいまい性の解消)が確立される。
ブロック同期が確立された後、BPSKタイミング系列の変数フィールドを復号することができる。これらの変数フィールドの差動検波ビットは、トレーニングサブキャリアまたはビットのうちの一部が毀損している時でも復号が可能なようにトレーニングサブキャリアにわたって多数決方式で判定される。各モデムフレーム内の16個のブロックには順次0から15の番号が付されている。そうすると、ブロックカウントフィールドの最上位(MSB)は、ブロックカウントは決して15を超えないため常に0にセットされる。モデムフレームの同期がブロックカウントフィールドを知ることにより確立される。
この信号のコヒーレント検波を行うにはコヒーレント位相基準が必要である。BPSKタイミング系列からの復号情報を用いることによりトレーニングサブキャリアから変調分を除去すると、局部位相基準及びノイズに関する情報が残る。図44を参照して、バイナリ(±1)タイミング系列変調分は、受信したトレーニングサブキャリアに同期、復号及び再差動符号化したBPSKタイミング系列を乗算することにより受信トレーニングサブキャリアから最初に除去される。その結果得られるシンボルをFIRフィルタを用いて時間にわたり平滑化すると局部位相及び振幅の複素共役推定値が得られる。この値を遅延し、ノイズ分散の逆数の推定値に乗算する。ノイズ分散は局部位相及び振幅の平滑化された推定値を入力シンボルから減算し(適当な時間調整を行った後)、複素ノイズサンプルを自乗し、フィルタリングを施した後、その逆数を(0による割算に対する保護)近似することにより推定される。このCSI重みは隣接するトレーニングキャリア対の間において18個補間される。その結果得られるCSI重みを用いて対応の局部データシンボルを乗算する。
一実施例において、図44のローパスフィルタ358は11タップ型FIRフィルタである。この11タップ型FIRフィルタは各シンボル時間につき各基準サブキャリア位置において複素コヒーレント基準利得αを動的に推定するために使用される。11タップ型FIRフィルタによる時間フィルタリング及びそれに続くサブキャリアのフィルタリングは時間と周波数の両方にわたりQPSKシンボル位置についてコヒーレント基準利得αの局部推定値を計算するために実行される。タップの多い大型のFIRフィルタの使用により信号統計量が定常状態にあると推定誤差が減少するが、その帯域幅は最大のハイウェイ速度で信号にドップラー効果により導入される変化を追跡するには小さすぎるであろう。従って、テイパーのあるガウスのような対称的なインパルス応答を有する11タップ型が適当である。対称的なFIRフィルタは、フィルタのスパンにわたり一部がほぼ線形なチャンネルフェージング特性ではバイアスエラーがゼロであるその線形位相特性によりIIRフィルタの代わりに使用される。FIRフィルタのこの平滑化コヒーレント基準信号出力を遅延された入力サンプルから減算して瞬時ノイズサンプルを発生させる。これらのノイズサンプルをIIRフィルタ374により自乗し処理してノイズ分散の推定値α2を得る。このフィルタはノイズ分散の一般的により正確な推定値を得るためにFIRフィルタよりも狭い帯域幅を有する。フィルタ遅延にマッチさせるための適当なサンプル遅延の後、シンボル重みα*σ2を各サブキャリアについて計算する。これらの値を各OFDMシンボルについてサブキャリアにわたり平滑化し補間してより正確な推定値を得る。この重みは各OFDMシンボルにつき一義的であり、各サブキャリアは後続のビタビ復号器のためのブランチメトリックを形成するシンボルの局部(時間及び周波数)推定値及び重みを与える。
図44のシステムは固定アンテナを有する車両に配慮した設計であった。チャンネル状態情報(CSI)の捕捉、トラッキング、推定及びコヒーレント動作のための基準サブキャリアの多数の役割について説明した。このシステムはハイウェイ速度での車両に配慮してフェージング帯域幅を有するFM放送バンド(88−108MHz)におけるコヒーレント動作を行わせるように設計されていた。種々のコヒーレントトラッキングパラメータは予想される最大のドップラー帯域幅(ほぼ13Hz)に近似する帯域幅を有するフィルタを用いて推定される。固定アンテナでは、トラッキングアルゴリズムへの入力信号の関連あるトラッキング統計量はドップラー帯域幅よりも大きくないレートで変化すると想定する。
IBOC HDラジオ受信機はダイバーシティアンテナ切換装置と組み合わせて用いることができる。しかしながら、ダイバーシティ切換アンテナを使用するとデジタル信号のコヒーレントトラッキングにより厳しい過渡現象が導入され、これがデジタル性能を劣化させる。
本明細書で用いる用語QPSKシンボルの「複素コヒーレント基準利得(α)」(動的であるため時間/周波数位置に依存する)をαと定義する。これは複素項であり、それに関連するシンボルの利得及び位相を表す実数成分と虚数成分を含む。この値は上述した処理及びフィルタリングにより推定される。複素コヒーレントチャンネル基準信号xnは任意1つのOFDMシンボル時間にわたる全ての基準サブキャリアにわたるαの複合値である。
この例のために、ダイバーシティ切換モジュールの切換時間は10マイクロ秒のオーダーであり、一方、最小休止時間は10ミリ秒のオーダーであると想定することができる。10マイクロ秒の切換時間は復調されたFM信号には何の音声上の影響を及ぼさないが、信号のフェージングが回避されるためFMダイバーシティによる全体的な改善は実質的なものでありうる。しかしながら、切換による過渡現象はコヒーレントトラッキングを受けるデジタル信号に悪い影響を与える。図23に示すように、アンテナモジュールの切換によりコヒーレント信号にステップ状の過渡現象が生じるが、その過渡現象の直前または直後の信号はほぼコヒーレントである。ステップ状の過渡現象にわたってFIRフィルタによりフィルタリングを行うと、コヒーレントチャンネル基準推定値αが歪み(図44で示す)、FIRの長さ(11タップ)に等しいサンプルのスパンが影響を受ける。コヒーレントチャンネル基準のこの歪みにより入力サンプルからこの基準を減算して得たノイズサンプルの大きさが増加する。ノイズは過渡現象の近辺で増加するが、IIRフィルタはこのノイズのピークをIIRフィルタのスパンにわたって分散させる。これは過渡現象のすぐ近くではノイズの分散を過小評価する効果があるが、過渡現象のすぐ近くでないIIRフィルタの時間スパンにわたるノイズの分散を過大評価する効果がある。歪んだコヒーレントチャンネル基準及びノイズ分散誤差は共にデジタル信号の劣化に寄与する。本発明はダイバーシティアンテナ切換装置において切換による過渡現象に対処するコヒーレントトラッキング法を提供する。
図45はノイズ推定値(信号対ノイズ比が20dB)に対する切換による過渡現象の影響を示すグラフである。ライン438はIIRフィルタへのノイズサンプル入力であり、ライン440はフィルタリング済み出力である。入力ノイズサンプル(自乗済み)は過渡現象のすぐ近くで増加することがわかる。これは実際、11タップ型FIRフィルタによるコヒーレントチャンネル基準の歪みによるものである。IIR出力はノイズのピークに応答するが、これらのピークは過渡現象に対して局部的に抑制されるものの、IIRフィルタの持続時間にわたって分散される。局部ノイズ分散推定のこれらの誤差はデジタル性能の劣化に寄与する。
図46は、本発明に従ってコヒーレント基準が固定された状態のノイズ推定値(信号対ノイズ比が20dB)に対する切換による過渡現象の影響を示すグラフである。ライン442はIIRフィルタへの入力であり、ライン444はフィルタリング済み出力である。図46は図45と同じシナリオである。しかしながら、コヒーレントチャンネル基準は本発明に従って訂正される。IIRフィルタによるフィルタリングまたはノイズ分散の推定に関しては何の変化もない。
コヒーレントトラッキングは図24に示すように切換による過渡現象の両側(時間)で行うことができる。図47はコヒーレントチャンネル基準信号の発生を説明する機能ブロック図である。多数の基準サブキャリアからの復調された複素シンボルはライン450、452、454上に入力される。これらの複素シンボルはミキサー458、460、462において既知の基準系列共役456と結合され、基準サブキャリアシンボルからデータが除去される。FIRフィルタ464、466、468はノイズを減少させるために各複素サブキャリア利得値にフィルタリングを施す。FIRフィルタは例えば7タップ型フィルタでよい。ブロック470は、推定値のノイズをさらに減少させるためにサブキャリア利得値が基準サブキャリアにわたり平滑化されることを示す。これにより、ライン472、474、476上に各サブキャリアのコヒーレントチャンネル基準利得が生じる。これらのコヒーレントチャンネル基準利得は加算点478で加算され、ライン480上に複合コヒーレントチャンネル基準信号xnを発生させる。
コヒーレント推定フィルタは過渡現象にまたがる信号サンプルを使用できないため、トラッキングフィルタは何れかの時間方向から過渡現象に至るまで(過渡現象は含まない)の信号サンプルだけを利用することができる。信号の過渡現象の時間位置を識別する必要がある。理論的には受信機のモデムへ切換の瞬間を明確に伝えることができるはずであるがこれは一般的に実際的でない。モデムがコヒーレントトラッキングアルゴリズム内で過渡現象を高い信頼度で検知するのが好ましい。コヒーレントトラッキングアルゴリズムは、過渡現象が生じるところのシンボルを除き過渡現象のすぐ近くにおいてほぼコヒーレントなトラッキングを行うように過渡現象の近くで修正することができる。ノイズ分散推定値の誤差がコヒーレントチャンネル基準の誤差によることを知るのは価値がある。従って、ノイズ分散推定値はコヒーレントチャンネル基準が正確であれば修正の必要はない。
アンテナ素子の切換によるステップ状過渡現象を「ブラインド」即ち、盲目的に検出する必要がある。盲目的な検出とは、アルゴリズムが復調されたモデムシンボルを観察するが、ダイバーシティ切換モジュールにおいて始動される切換時間を直接知らないことを言う。この方法は、図47にxで表示し、この説明ではOFDMシンボルレート(即ち、約344.5OFDMシンボル/秒)である平滑化されたコヒーレント基準信号トラッキングサンプル(αの複素フィルタリング済み値)の処理を含む。複素チャンネル利得値αは各OFDMシンボルにつきxの複合複素値を発生させるために全ての基準キャリアにわたり集合される。
過渡現象(約30マイクロ秒の持続時間を持つことがあり得る)はシンボル時間と比べると非常に短く、この過渡現象はただ1つのシンボルの間に生じると仮定する。過渡現象の両側のシンボルは過渡現象により有意に毀損された状態にあり、コヒーレントトラッキング及び推定には使用できない。しかしながら、過渡現象からFIRのスパンの半分以内(例えば、11タップ型FIRフィルタでは5サンプル、7タップ型FIRフィルタでは3サンプル以下)の所にあるシンボルはコヒーレント基準を推定するフィルタリングによる影響を受ける。これは、過渡現象の影響が及ぶスパンを最小限にするためにFIRフィルタが実際に11タップから7タップに減少された場合のxの複素実数及び虚数成分(実線部分)を示す図24に明確に示されている。FIRフィルタを7タップに減少するとノイズにわたりフィルタ利得をわずかに減少させる効果があるが、過渡現象に対する応答が改善される。
図46は、コヒーレント基準がαについて過渡現象の前の値から過渡現象の後の値に移行する場合の過渡現象の±3シンボル内のコヒーレントトラッキングの歪みを示す。過渡現象を検出する1つの方法は過渡現象を検出すべき問題のシンボルの両側におけるxのサンプルの仮説試験を含む。換言すれば、過渡現象をシンボル位置nで検出すべき場合、サンプルx
n-1とx
n+1を観察する。この仮説試験は連続する各シンボル位置につき継続され、後で調整される信号処理アルゴリズムにおいて適当な遅延を施すことによりxの過去及び将来のサンプルを観察できると仮定する。x
n-1及びx
n+1の値が十分に異なる(即ち、非コヒーレントである)時過渡現象が検出されると仮定する。この差の幾つかの検出形式を分析し、シミュレーションしフェージングチャンネルにおいて比較した。複素値の単なる差(x
n-1−x
n+1)またはこの差の大きさ|x
n-1−x
n+1|は、この差はその瞬間に信号の大きさによりスケーリングされ、その差のピークを示さないため過渡現象の位置を捕捉するには不十分である。しかしながら、この差は、過渡現象が存否を試験するためにピークが検出された後その大きさにより逆方向にスケーリングすることができる。種々の検出基準の形式は有効でありうるが、この例ではそれらの大きさの自乗をその大きさの代わりに用いて平方根の計算を回避する。過渡現象の位置を検出する以下の3つのステップより成るアルゴリズムがノイズの多いフェージングチャンネルにおいて有効であることが判明しており、サンプルx
nの系列につき比較的簡単に計算できる。
ピーク及び過渡現象の検出式はxの将来の値を含むため、diffsqを次の2つの式の前に1サンプル計算すると便利である。thresの典型的な値は0.05である。図48及び49は過渡現象検出出力の一例を示す。図48は800個のOFDMシンボルについての過渡現象アルゴリズムの結果を示す。図49はシンボル200近くの過渡現象検出アルゴリズムの結果を示す。これらの図はフィルタリング済みチャンネルコヒーレント基準αの実数値484及び虚数値482と、過渡現象検出時のインパルス486を示す過渡現象検出結果とを示す。図49はシンボル200の周りのレンジを拡大したものである。しきい値が性能に与える影響が最小である過渡現象にまたがる小さな差には敏感でないため過渡現象がシンボル600において検出されなかったことを注意されたい。しかしながら、このしきい値の値は信号対ノイズ比が約0dBまでの値でよく働く。
過渡現象を高い信頼度で検出できることになった以上、次のステップは過渡現象のすぐ近くにおいてコヒーレント基準サンプルαを調整することである。比較的簡単な解決法は過渡現象が検出されるシンボルを含む過渡現象に近いαの値を無視することである。これらの値をFIRフィルタによる影響のない最も近いαの値(7タップ型FIRフィルタでは4サンプル)により置き換える。これにより図24に示す鎖線グラフの結果が出る。検出された過渡現象の近くの系列の一例を表3に示す。表3は過渡現象がシンボル位置nで検出される場合のαの入力値及びαの訂正出力値を示す。この入力サンプルはシンボルとして次々に移動される。しかしながら、αの訂正出力系列は上述したようにFIRフィルタによる歪みを最小限に抑えるように調整される。
表3.シンボル位置nにおいて検出された過渡現象の近くにおける
複素チャンネル利得α(各基準キャリアの)の訂正
適当な論理とx個のサンプルのスパンのバッファを有する簡単なアルゴリズムを用いて表3の結果を得ることができる。αに用いる7タップ型FIRフィルタでの動作は下記の通りである。過渡現象が問題のシンボルの前方の3つのシンボル(例えば、n−3乃至n−1)内で検出されると、現在のαの値を使用せずに過渡現象の4シンボル前方のαの値(αn-4)を用いる。同様に、過渡現象が過去の3つのシンボル(例えば、n+1乃至n+3)で検出された場合、現在のαの値を用いずに過渡現象の4シンボル後のαの値を用いる。この現在のシンボルが検出された過渡現象の位置(例えばn)である場合、過渡現象の両側の±4シンボルのαof個のサンプルの平均(αn-4+αn+4/2)を用いる。そうでなければ、αno現在の入力値(例えば、n−5乃至n−4及びn+4乃至n+5)を用いる。もちろん、このアルゴリズムの詳細部分を異なるFIRフィルタスパンに適用するために調整することが可能である。図50は、検出された過渡現象の近くのコヒーレントチャンネル利得値αの訂正を示す機能図である。図50において、各サブキャリアのまだ訂正されていないコヒーレントチャンネル利得はライン500、502、504上に入力される。これらの入力は加算点506で加算されライン508上に複合コヒーレントチャンネル基準を発生させる。過渡現象検出器510は複合コヒーレントチャンネル基準中において過渡現象を検出する。その後、まだ訂正されていないコヒーレントチャンネル利得はブロック512に示すように検出された過渡現象の近くで調整される。これによりライン514、516、518上に各基準サブキャリアの訂正済みコヒーレントチャンネル利得が発生する。
改良型アルゴリズムの分析及びシミュレーションは分析及びシミュレーションしたケースにとって十分にうまく働くように思える。これらのケースは、ドップラー帯域幅がハイウェイ速度に調和しノイズが信号対SN比で0dBのような小さい、フラットで選択性のフェージングを含む。しかしながら、他のチャンネル状態を考察する必要がある。例えば、インパルスのようなノイズは過渡現象を誤って検出する原因となりうる。この場合、xの調整済みコヒーレント基準値を用いるのが適当である。しかしながら、ノイズ分散推定値は毀損される。ノイズインパルスはそれが発生する所のシンボルでは非常に大きいが、IIRフィルタがインパルスの瞬間にこのノイズ推定値を抑制し、IIRフィルタのインパルス応答時間にわたりこのノイズ推定値を分散させる。この場合、大きいノイズサンプルをIIRパスと並列に(マッチングのための適当な遅延を施すことにより)フィードフォーワードするのが好ましいであろう。ノイズパルスがIIRフィルタの出力と比べて十分大きいシンボルでは、このノイズパルスを用いてそれらのシンボルのノイズ分散推定値を求める必要がある。これらのノイズパルスにフィードフォーワードパスを用いる場合、これらのサンプルについてIIRフィルタへ入るエネルギーは局部ノイズピークがIIRフィルタのスパンにわたって広がらないように減少させる必要がある。ノイズ分散推定値におけるノイズのピークを取り扱うためにこのプロセスの幾つかの変形例を考察するのは容易である。インパルスのようなノイズに配慮してノイズ分散の推定を行う1つのかかる変形例を図51に示す。図51において、各基準サンプルの入力がライン520上に供給され、加算器220において基準サンプルαnに加算される。ノイズ分散サンプルはブロック524に示すように推定誤差を減少させるために基準サブキャリアにわたりフィルタリングを施される。その後、ブロック526に示すようにフィルタリング済み分散サンプルを用いてノイズ分散を計算する。これによりライン528上に分散var0nが生じ(var0n=min(2*varIIRn-1+ε、varn))、またライン530上にvarln が生じる(varln=max(0.05*varn−varIIRn-1)。その後、var0n の分散がブロック532においてフィルタリングを施され、var1nはブロック534に示すように遅延を施される。フィルタリング済みvar0nと遅延済みvar1n は加算器536で加算されて、ライン538上にノイズ分散推定出力を発生させる。フィルタ532の出力varIIRnはライン540においてブロック524へフィードバックされる。
上述したアンテナ切換のための過渡現象検出方法はまたインパルスノイズに対しても効果がある。過渡的ノイズ値がたまたま小さい切換による過渡現象のケースとは異なりインパルスノイズは大きい場合がある。また、時として、切換による過渡現象は検出されないことがあり、この場合αの値にエラー(小さい)が生じるが、その近く(±3シンボル)のところのノイズが増加してインパルスノイズと同じ効果を持つことがある。インパルスのようなノイズのこのようなケースではノイズ分散推定フィルタは多数のシンボル(例えば64個)にわたってインパルスノイズを平滑化するため、インパルスの瞬間におけるノイズは過小評価されるが±32個のOFDMシンボル内のノイズはノイズサンプルが不鮮明になることにより過大評価される。これによるビタビ復号器へ供給される軟シンボルに劣化が生じる。従って、これらのインパルスのようなノイズの場合の性能を改善するためにノイズ分散推定にこの調整を加えることができる。この新しいノイズ分散推定値は長期間のガウスのようなノイズの分散と短期間のインパルスのようなノイズの分散を加算したものよりなる。
図51を参照して、var0値は後でノイズ分散推定値を推定するためにIIRフィルタへ加えられる通常のノイズ分散サンプルである。varサンプルは通常のガウスのような自乗ノイズサンプル(var0)と、インパルスのような自乗ノイズサンプル(var1)とを表すようにより分けられる。IIRフィルタは通常のガウスノイズの分散を推定するが、フィルタリングを施されていない遅延パスはインパルスノイズ分散サンプルをフィードフォーワードする。ノイズサンプルvarが現在のIIRフィルタ出力の合理的な範囲内にある時、var0の値はvarに、またvar1は0にセットされる。ノイズ値が現在のフィルタ出力に比べて異常に大きい時、これは長期フィルタに入力すべきでないインパルスのようなノイズサンプルである可能性が高い。この場合、var0の値は制限され、それと同時に過剰な値の一部が項var1に配置される。var1の値はIIRフィルタ遅延にマッチするように適当な遅延を与えられる。その結果、インパルスノイズサンプルは適当な瞬間において適当に推定され、このノイズは図52に示すように多数のサンプルにわたって広がらず、インパルスノイズがシンボル600の周りで捕捉される図46の結果よりも改善される。
図52はノイズ分散の修正が行われる時のノイズ推定値(信号対ノイズ比が20dB)に対する切換による過渡現象の影響を示すグラフである。ライン550はシンボルのノイズ分散であり、ライン552はフィルタリング済み出力である。シンボル位置600における過渡現象はシンボル600のすぐ近くの増加したノイズ分散により適当に調整される。
本発明はまた、大部分がガウスのようなノイズサンプルの中でノイズが幾らかのインパルスのようなサンプルを含む場合がある時シンボルのノイズ分散を推定する方法を提供する。エラーサンプルの自乗の非線形フィルタリング法であり、この非線形フィルタリング法は、コヒーレント基準値と新しいシンボル値との間のエラーサンプルの自乗を計算し、通常のガウスのようなノイズサンプル(自乗済み)がフィルタ(例えばFIRまたはIIRフィルタ)を通される非線形フィルタリング技術を用いることによりガウスのようなノイズの分散を推定し、それと共にインパルスのようなノイズサンプル(自乗済み)がフィルタ出力に加算されて(フィルタ遅延にマッチさせるために適当な遅延を施した後)長期間平均したガウスのようなノイズの分散と短期間のインパルスノイズ分散の和を表す新しいノイズ分散を発生させるステップより成る。
この方法はさらに、ガウスのような自乗済みノイズサンプルとインパルスのようなノイズサンプルをより分け、そのサンプルをフィルタの現在の平均ノイズ分散推定値の倍数(ステップ状過渡現象に対処するため定数を加えたもの)と比較することにより新しい入力ノイズ(自乗済み)サンプルがそれぞれインパルスのようであるか否かを判定し、その後、この値を長期間のガウスのようなノイズの分散の推定に用いられるフィルタに入力することを含む。
本発明はダイバーシティアンテナブラインド切換装置と共に自律的に使用されるコヒーレントアルゴリズムトラッキングの改良を提供する。これらの同じ改良は隣接するFMアナログ干渉波からのような非ガウスノイズまたはインパルスノイズによる劣化を緩和することもできる。
本発明を幾つかの例により説明した、当業者にとって説明した実施例を頭書の特許請求の範囲に示す本発明の範囲から逸脱することなく種々の形で変形できることが明らかであろう。