図1を参照すると、本明細書では、例えば動脈のグラフトであるがこれに限定されない概して筒状である管12の壁11及び例えば心臓の壁であるがこれに限定されない脈管16の壁14で表される2つの組織片間の吻合を行う装置が示されている。ファスナ10により達成される吻合は、細管12と脈管16との間に縫合糸を使用しない接続をもたらす。望ましくは、ファスナ10は細管12及び脈管16の壁14を互いの方向へバイアスし、これにより細管12と脈管16との間に漏れのない接続を確立させる。さらに、脈管16の壁14に対する細管12の連続バイアスは、細管12と脈管16との間の生物学的結合の形成を促進する。
さらに図1を参照すると、ファスナ10は縦軸20を有する環18を有する。環18は、第1のフィンガ・セット24と第2のフィンガ・セット26との間を環状に伸長する概してアコーデオン形である「ジグザグ」の正弦形または蛇行形中央部分22を有する。このジグザグ形状は、ファスナ10が円筒形の場合の応力を拡張された領域全体に分配することによりその製造における最終形状を呈する能力を促進させる。中央部分22は、この「ジグザグ」以外の形状を保有して構成されてもよく、対称または非対称の何れか、または中実の環状材料バンドとして形成されてもよいことは認識されるべきである。
好適には、環18は、ファスナ10と細管12及び脈管16の少なくとも一方との接合を容易にする複数のタング28を有する。バイアスされない状態では、タング28は中央部分22から半径方向の外側へ伸長し、本図では中央部分22によって確立される複数の谷間30の各々から半径方向へ伸長するものとして示されている。但し、タング28が意図されるアプリケーションにより所望される通りに選択される谷間30から伸長するように形成されてもよいことは、認識されるべきである。また、タング28は、所望により谷間30以外に環18上の他の場所から伸長するように形成されてもよい。
製造された最終形状では、第1のフィンガ・セット24は環18から概して軸方向の一方へ180度の曲りに向かって伸長し、縦軸20へと半径方向の内側へ伸長した後に自由端32に至る。第2のフィンガ・セット26は、環18から概して第1のフィンガ・セット24とは反対である軸方向のもう一方へ180度の曲りに向かって伸長し、縦軸20から概して半径方向の外側へ伸長した後に自由端34に至る。中央部分22は概してほぼ円筒形状のままであるが、個々のフィンガ・セット24、26における曲りは、図1、3及び6において最もよく分るように軸方向断面において概してS字形であるファスナを画定するファスナ10の概して弓形である、または曲がった部分を画定する。但し、フィンガ24、26及び中央部分22が上述のもの以外の異なるジオメトリを有するように形成されてもよいことは認識されるべきであり、例えばフィンガ24は概して鉤形の形状を画定する複数の段階的直線部分を保有してもよく、中央部分22は弓形の形状を有して形成されてもよい。
第1のフィンガ・セット24は、第1の伸長された、またはバイアスされた概して線形形状または少なくとも部分的に平坦にされた形状と、少なくとも部分的に概して半径方向の内側に縦軸20へ向かって伸長する第2の引き戻された、またはバイアスされない少なくとも部分的に弓形、鉤形、渦巻形または他の非線形である形状との間で動作可能または曲がることが可能であり、使用に際して細管12に貫入する。第2のフィンガ・セット26は、第1の伸長された、またはバイアスされた概して線形形状または少なくとも部分的に平坦にされた形状と、少なくとも部分的に概して半径方向の外側へ縦軸20から伸長する第2の引き戻された、またはバイアスされない少なくとも部分的に弓形、鉤形、渦巻形または他の非線形である形状との間で動作可能または曲がることが可能であり、使用に際して脈管16の壁14に貫入する。
第1のフィンガ・セット24は、好適には例えば細管12及び脈管16等の組織片の貫通を容易にする先端を画定する自由端32で終わる内面36と外面38とを有する。第1のフィンガ・セット24がそのバイアスされかつ概して平坦にされた形状(図8)にあるとき、外面38は概して縦軸20とは反対側に面し、内面36は概して縦軸20の方向に面する。望ましくは、第1のフィンガ・セット24は各々ベベル40を有し、よってそのバイアスされた形状にあるとき、ベベル40は各自由端32から外面38の少なくとも一部に沿って概して縦軸20から離れて伸長する。
第2のフィンガ・セット26は、好適には例えば細管12及び脈管16等の組織片の貫通を容易にする先端を画定する自由端34で終わる内面42と外面44とを有する。第2のフィンガ・セット26がそのバイアスされた形状(図8)にあるとき、内面42は概して縦軸20の方向に面し、外面44は概して縦軸20とは反対側に面する。望ましくは、第2のフィンガ・セット26は各々、自由端34から内面42の少なくとも一部に沿って概して縦軸20の方向へ伸長するベベル46を有する。
第1及び第2のフィンガ・セット24、26は、円周方向で互いにオフセットするように、概して互いに食違った関係に構成される。フィンガ24、26は、フィンガ24、26をそのバイアスされた位置へ押しやる、または伸長させる力が除かれるとそのバイアスされない、概して弓形または鉤形である形状へと自動的に戻るように、弾力のある材料で構成される。望ましくは、ファスナ10を製造する際に形状記憶合金を使用し、これにより、第1及び第2のフィンガ・セット24、26にその弾力のある特性を与える。例示的な材料の幾つかとしては、ニチノール、MP35N、タンタル、タングステン、プラチナ、304ステンレス鋼及び意図されるアプリケーション用に所望される他のステンレス鋼が含まれるがこの限りではない。
ファスナ10は、望ましくは例えば先に挙げた材料のうちの1つによる薄い平坦な材料シートから製造される。ファスナ10の構成に使用される材料の厚さは、材料の弾性に大きく依存する。望ましくは、フィンガ24、26がそのバイアスされた第1の位置にあるとき、上記選択される材料は弾力のある変形状態のままであり、これによりフィンガ24、26をその第2のバイアスされない位置へ戻らせる。先に挙げた材料のうちの1つが使用されれば、約0.0001”乃至0.0150”の厚さが使用されるが、使用される材料によって最大厚さが変わる可能性のあることは理解されるべきである。図2から最もよく分るように、シートからは概して平坦な環状パターンが構成され、上記パターンは、半径方向の内側へ互いの方向へと伸長する第1のフィンガ・セット24を有し、第2のフィンガ・セット26は半径方向の外側へ互いから離れて伸長する。タング28は第1のフィンガ・セット24の各々の間に示されていて、第1のフィンガ・セット24と同じ全体的方向へ伸長している。この製造方法は、例えば光化学エッチング、レーザ切断、ダイ・パンチング、放電加工(EDM)及び所望される他の工法である、但しこれらに限定されない様々な工法を組み込んでもよい。第1及び第2のフィンガ・セット24、26が互いに異なる長さを有して構成されてもよいこと、または個々のフィンガ・セット24、26内のフィンガが互いに異なる長さを有してもよいこと(図示されていない)は理解されるべきである。第1及び第2のフィンガ・セット24、26の少なくとも一方内のフィンガに異なる長さを組み入れることにより、フィンガ24、26は、ファスナ10の縦軸20に対して傾斜角で配向される組織片へ付着されてその内部へと伸長することができる。接合される2つの組織片が互いに傾斜角を成す場合が多い末端側面の吻合を行う場合、これは特に重要である。
組織とファスナ10との結合を容易にするために、好適には、特に内面36、42及び外面38、44である平坦な環状パターンの両側は表面組織を供給され、または例えば化学エッチングもしくはミード・ブラスト等のプロセスを使用して概して約30乃至60RMSの表面仕上げを有するように粗くされる。粗い表面を生成することにより、組織とファスナ10との活着はよくなる。
図2Aに示すように、望ましくは、ファスナ10がその最初に構成される平坦な形状をしている間、第1のフィンガ・セット24上にはベベル40が形成される。第1のフィンガ・セット24上にベベル40を形成する間、平坦な環状パターンは1対の概して平坦なダイまたはプレート47、49間に置かれる。各プレート47、49は各々、貫通孔51、53と第1のフィンガ・セット24とを軸55に沿って互いに同心的にアラインすると第1のフィンガ・セット24が半径方向へ貫通孔51、53の内側へ伸長できるように寸法取りされた貫通孔51、53を有する。プレート47は、ベベル40を形成する間に第1のフィンガ・セット24が偏向することを可能にするカウンタボア59を有する。
第1のフィンガ・セット24上へのベベル40の形成において、ファスナ10は、例えばホーニング・ロッド57である、但しこれに限定されない研削ツールがプレート47、49の貫通孔51、53を介して矢印Aが表示する方向へ通り、第1のフィンガ・セット24の自由端32へ係合するように、プレート47、49間に保持される。従って、ホーニング・ロッド57が第1のフィンガ・セット24に係合するにつれて、フィンガは概して矢印Aの方向へ、カウンタボア59内へと偏向する。このようにして、材料は第1のフィンガ・セット24から除去され、ベベル40が形成される。ホーニング・ロッド57は、プレート47、49の貫通孔51、53を介して軸方向へ通されることに加えて、軸55を中心として回転されることも可能であり、第1のフィンガ・セット24の各々の上に均一なベベル40を形成することが容易にされる点は認識されるべきである。
図2Bに示すように、望ましくは、ファスナ10がその最初に構成される平坦な形状をしている間、第2のフィンガ・セット26上にはベベル46が形成される。第2のフィンガ・セット26上にベベル46を形成する間、平坦な環状パターンは1対の概して平坦なダイまたはプレート61、63間に置かれる。各プレート61、63は各々、ファスナ10がプレート61、63間に保持された状態で外径65、67と第2のフィンガ・セット26とを軸69に沿って互いに同心的にアラインすると第2のフィンガ・セット26がそこから半径方向の外側へ伸長できるように寸法取りされた外径65、67を有する。プレート61は、ベベル46を形成する間に第2のフィンガ・セット26が偏向することを可能にする窪んだ表面73を有する。
第2のフィンガ・セット26上へのベベル46の形成において、ファスナ10は、例えばホーニング・シリンダ71である、但しこれに限定されない研削ツールが、概してホーニング・ロッド57が通過する矢印Aの方向とは逆の矢印Cが表示する方向へ通って第2のフィンガ・セット26の自由端34へ係合することができるように、プレート61、63間に保持される。ホーニング・シリンダ71は、直径がプレート61、63の外径65、67より大きく、第2のフィンガ・セット26の外径より小さい穴75を有する。従って、ホーニング・シリンダ71が第2のフィンガ・セット26上を通過するにつれて、穴75は第2のフィンガ・セット26の自由端34に係合し、フィンガ26は概して矢印Cの方向へ、窪んだ表面73へ向かって偏向する。このようにして、材料は第2のフィンガ・セット26から除去され、ベベル46が形成される。
次に、図2に示すような平坦な環状パターンは、成形された合せ面を有する嵌め合いダイ・セット91(図2C)間で弾力により変形される。ダイ91の成形面は、図1及び3において最もよく分るように、ファスナ10のバイアスされない最終形状をもたらすことに適するジオメトリを有して構築される。ダイ・セット91は、ここでは上側のダイ93、下側のダイ95及び中間のダイ対97、99とを保有して表示されている。図2Dに示すように、平坦な環状パターンはまず中間のダイ97、99間に置かれる。次に、中間のダイ95、99が合わされて概してファスナ10の中央部分22が形成される。図2Eに示すように、次には上側及び下側のダイ93、95が中間のダイ97、99と接触され、第1及び第2のフィンガ・セット24、26が各々形成される。望ましくは、上側及び下側のダイ93、95は各々、第1及び第2のフィンガ・セット24、26を受容する窪んだ環状部分101、103を有する。さらに、ダイ91を正しくアラインして合わせることを容易にするために、ダイ91は、ダイ97を除いて、互いに同心的にアラインされるとガイドロッド107を受容するように寸法取りされた貫通孔105を有する。
変形されたパターンは、弾力により変形されたパターンに制御された熱処理プロセスを加えることにより、ダイ91の成形面に一致して保持される。熱処理プロセスの間、変形されたパターンは、例えばニチノールでは約932゜F、MP35Nでは約800乃至1200゜Fである材料の臨界温度まで上昇され、次に、好適には水中で急冷されてダイの外面に合わせて保持される。熱処理プロセスが終了すると、第1のフィンガ・セット24はそのバイアスされない概して弓形の形状に成形されて少なくとも部分的に縦軸20の方へ概して半径方向の内側へと伸長し、第2のフィンガ・セット26はそのバイアスされない概して弓形の形状に成形されて少なくとも部分的に縦軸20から概して半径方向の外側へ伸長する。さらに、タング28は、中央部分22から半径方向の外側へ、かつ概して縦軸20を横断して伸長するバイアスされない形状を呈して形成される。ダイ91は、ダイ91を損傷させることなく熱処理プロセスを受けることを許容する高温ツールスチールから構築されることは認識されるべきである。
従ってファスナ10は、概して平坦な材料片として始まり、概して円筒形であるファスナ10を生成するための二次溶接または他のタイプの結合プロセスを必要とすることなく中央部分22から伸長する弓形の第1及び第2のフィンガ・セット24、26を有する継目のない環18へと変形される。方向性がオフセットされたフィンガ24、26を有する中央部分22のほぼ蛇行する形状またはアコーデオン形状は、弾力性のある材料に、屈曲しかつ図2に示すような概して平坦な材料片から図1及び3において最もよく分るような概してファスナ10の円筒形である形状まで本質的にアコーデオンのように展開する能力を与える。その結果、例えば溶接または概して平坦である材料シートから概して円筒形であるファスナを生成するために典型的に使用される他の結合プロセスである二次製造作業を省くことにより、効率のよい製造及びコスト低減が達成される。この効率のよい製造は、能率化されたプロセス、プロセスに必要な床面積の縮小、製造時間の短縮及び溶接または結合材を使用して材料を接合するプロセスに固有の潜在的欠陥をなくすことによる廃物の低減をもたらすことは認識されるべきである。また、ファスナ10がその結着性を維持するための溶接継手を組み込むことなく単一の材料片として加工されることにおいて、より信頼性の高い製品が製造されることも認識されるべきである。
ファスナ10をその最終ジオメトリに形成するに当たって、ファスナ10は、好適にはファスナの表面からあらゆる不純物を除去する不動態化処理を受ける。不動態化は、電解研磨法、化学的不動態化または選択的抽出処理として知られるハイブリッド技術によって達成されてもよい。電界研磨表面処理は、DC電源と共に還元酸環境を使用する。電解研磨処理は、ファスナ10の表面から不純物を、ファスナ10の還元酸環境及びDC電源への暴露時間に依存して約20乃至30オングストロームの深度まで除去する。化学的不動態化処理は、例えばファスナ10がフッ化水素酸(HF)及び硝酸(HNO3)の溶液中に一定時間浸漬される酸洗い、キラント不動態化(クエン酸)及び特別に調製された抽出化学反応が電気分解と共に使用される選択的抽出といった様々な方法で実行されることが可能である。選択的抽出技術は、鉄、ニッケル、アルミニウム(研磨残渣)及びこれらに類似するもの等の即溶解する不活性の膜汚染物のみを除去する。ファスナ材料の表面処理に際しては、望ましくは、プラズマ・クリーニング処理を使用してファスナ10を清浄化する。
プラズマ・クリーニング処理は、ファスナ材料の外面に残っている全ての異物を除去する。使用してもよいプラズマ・クリーニング機構の幾つかは、例えば誘導結合型バレル炉及び容量結合型パラレルプレート炉である。
ファスナ10の表面クリーニングに当たっては、好適には表面を少なくとも部分的にバイオ接着剤で被覆し、ファスナ10、細管12及び脈管16間の固有結合の形成を促進させる。バイオ接着剤は、例えば患者の血液から生成される血小板ゲルである患者自身の血液の副正物であってもよい。その他、例えばカルシウムを含む、但しこれに限定されない生体適合性接着剤を使用してもよい。この同じバイオ接着剤は、ファスナ10を細管12及び脈管16へ付着させる場合にも導入してよいが、これについては後に詳述する。ファスナ10がバイオ接着剤で被覆されると、概してファスナ10の使用準備が整う。使用に際してファスナ10は、以後配置ツール48と称する装置によって配置される。
図5乃至14に示すように、配置ツール48はハウジング50と、プランジャ52(図4)と、マンドレル54とを有する。ハウジング50は、内壁56及び内壁56から半径方向の外側に離隔して配置される外壁58を含む概して円筒である側壁と、概して環状であるベース60とを有する。図6乃至17において最もよく分るように、内壁56、外壁58及びベース60は少なくとも部分的に中空チャンバ62を画定する。ベース60のほぼ反対側では、環状のフランジ64がハウジング50の上面66から半径方向の外側へ伸長している。内壁56は概して円筒である通路70を画定する外面68を有し、通路70は軸方向へ突き出して後に詳述するように使用に際して第1及び第2のフィンガ・セット24、26の双方を十分に包囲する。望ましくは、円筒通路70は、後に詳述するように、プランジャ52の円筒通路70内への挿入を容易にするために、フランジ64に隣接する円筒通路から半径方向の外側へ伸長する面取りされた表面72で終わる。ベース60は、チャンバ62内へ伸長しかつこれと連絡する真空溝74を有する。望ましくは、真空溝74はベース60を中心として周方向へ伸長し、または少なくともベース60の外周の大部分を中心として伸長する。真空溝74は、周方向に離隔された断続的な溝を有し、これにより一連の不連続性真空溝(図示されていない)が供給されるように構築されてもよいことは認識されるべきである。真空溝74は、真空溝74がハウジング50の端78に隣接する延長された、または拡張された部分76を有するように、断面が概してL字形であるように表示されている。真空溝74は、固着プロセスの間にハウジング50と脈管16との嵌め合い接触を維持することを容易にする。
図5に示すように、ハウジング50の細管12上への配置及び細管12からの取り外しを容易にするために、好適には、ハウジングはハウジング50の片側に沿って、ハウジング50を二枚貝のように開けることができるようにするヒンジ81を有する。ハウジング50の概してヒンジ81とは反対の側面は、ハウジング50の両半分がヒンジ81を中心として旋回できるようにする分離可能なスプリット83を有する。チャンバ62は、ハウジング50の各半分に分離された個々の半分を保有して示され、各半分はヒンジ81及び1対の隔壁89で他方から分離される。図5Aに示すように、ある代替実施形態(同様の機能を説明する場合は先の実施形態に類似する参照番号を使用している)におけるハウジング50'は、先の実施形態におけるハウジング50から隔壁89を取り除くことにより概してハウジング50'の外周に渡って連続するチャンバ62を組み込むことができる点は認識されるべきである。また、スプリット83に沿って生じる真空の空気漏れを防止するために、分離可能なスプリット83に沿って嵌り合う半分同士の間には適切な機密シールが確立されることも理解されるべきである。シールは、シーム83に沿った両半分の壁56、58間の精密な嵌め合い係合の結果として形成される場合もあれば、シーム83に沿って例えばゴムシールまたは高分子シール(図示されていない)である別のシールが組み込まれる場合もある。また、ヒンジ81は、ハウジング50、50’の別々の半分同士の完全な分離を可能にする機械的蝶番、一体蝶番、ダブテール機構であっても、壁56、58の一部に沿ってハウジング50、50’を開放できるようにする他の任意のピボットまたは分離機構であってもよいことは認識されるべきである。
望ましくは、ハウジング50、50’は、内壁及び外壁56、58間を伸長してチャンバ62を通過する注入導管80を有する。注入導管80は、チャンバ62から分離されて内壁56により画定される円筒通路70へ通じる、通路70内へバイオ接着剤を注入するための通路82を画定する。ファスナ10上へバイオ接着剤を均一に分布することを容易にするために、好適には、ハウジング50、50’は内壁56内に形成される環状の溝85を有する(図5)。
ハウジング50、50’は、各々図5及び5Aに示すように、ハウジング50の場合は1対の真空導管84として、かつハウジング50'の場合は単一の真空導管84として示される、外壁58を介して伸長してチャンバ62に通じる真空導管84を有する。真空導管84には、チャンバ62を真空に引き、これにより真空溝74を介してベース60内に吸込みを生成するために真空ポンプ(図示されていない)を接続してもよい。従って、真空が引かれると、真空溝74を介する吸引が、後に詳述するように真空が停止されるまで脈管16の壁14をハウジング50、50’の端78へしっかりと保持する。ハウジング50、50’は互いに類似した機能を有し、よって議論を省くために以後はハウジング50を参照するが、これはハウジング50'にも等しく当てはまることは認識されるべきである。
配置ツール48のマンドレル54は、概して円筒である壁88により少なくとも部分的に画定される概して中空であるチャンバ87を画定する本体86を有する。壁88は、ハウジング50の円筒通路70内に受容されるように、かつまた壁88の外面90とハウジング50の内壁56により画定される外面68との間にプランジャ52及びバイアスされた直線形状のファスナ10を受け入れるように寸法取りされる。壁88は、好適には、壁88から概して横断方向へ自由端92に対して軸方向に離隔されて、または埋め込まれて伸長する環状シート94を備える上部自由端92を有する。シート94は、図10乃至13において最もよく分るように、壁88から側方へ細管12の壁11の厚さ(t)を収容するに足る距離だけ伸長し、実行される外科処置の性質に依存して一定範囲の細管厚さを収容するように寸法取りされることが可能である。シート94は、望ましくは、シートを介して伸長してチャンバ87に通じ、概してハウジング50のベース60内の真空溝74と同様の形状である真空溝96を有する。真空溝96は、好適には、シート94の上面100に形成される広げられた部分98を有する。広げられた部分98は、ファスナ10を細管12内へ配置する間に、細管12とシート94とを嵌め合い接触状態に維持することを容易にする。望ましくは、シート94の上面100から軸方向の上向きに位置決めプラグ102が伸長する。位置決めプラグ102は、位置決めプラグ102の外面104が外面104と壁88のシート94から上方へ自由端92まで伸長する部分との間に少なくとも部分的に環状の溝106(図6乃至13)を画定するように、概して壁88と同心である。位置決めプラグ102は概して円錐形状であって外面104により画定される外径を有し、図9乃至13において最もよく分るように、細管12の通路105を受け入れかつ通路105内に嵌るように寸法取りされる。
望ましくは、位置決めプラグ102は概して中空であってチャンバ87の少なくとも一部を画定し、上記中空部分はシート94から軸方向へ伸長する壁108により画定される。壁108は、望ましくは、シート94から概して垂直に少なくとも短距離を伸長し、シート94に隣接して位置決めプラグ102の概して円筒である部分110を画定する。円筒部分110は、好適にはチャンバ87に通じる真空溝112を有し、真空溝112は概して真空溝74、96に類似して成形される。真空溝112は、望ましくは、ファスナ10を細管10内へ配置する間に細管12と位置決めプラグ102とを嵌め合い接触状態に維持することを容易にするために、壁108の外面104内へ伸長する広げられた部分113を有する。真空溝112は、好適には、ファスナ10を細管12内へ配置する間に外面104と境を接する細管12を均一に保持するために、円筒部分110の外周沿いに断続的かつ等間隔で配置される。円筒部分110の外周沿いに組み込まれる真空溝112の数は任意であってもよく、所望に応じて位置決めプラグ102を通じて追加の真空溝またはポートを形成してもよいことは認識されるべきである。
マンドレル54の概して円筒である壁88は、もう一方の端114で概してテーパ状である壁116に移行し、概して円筒である壁88から半径方向の内側へマンドレル54の縦軸118に向かって伸長する。テーパ状の壁116は、ネックダウン式の概して円筒である吸込ノズル120へと収束する。吸込ノズル120は、マンドレル54内に真空を生成すべく真空ポンプ(図示されていない)へ機能的に接続されるように寸法取りされる。吸込ノズル120を介して吸込が行われると、テーパ状の壁116、概して円筒である壁88、シート94及び位置決めプラグ102によって少なくとも部分的に画定されるチャンバ87内に真空が生成される。従って、真空溝96、112を介して細管12をシート94及び位置決めプラグ102の外面104に係合された状態に維持する吸引力が生成され、ファスナ10の細管12への付着が容易にされる。
図4において最もよく分るように、プランジャ52は、縦軸126を画定しかつ壁124の端130から軸方向へ伸長する複数の配置用の脚128を有する概して円筒である壁124を有する。プランジャ52は、壁124の他端134に隣接する配置用のリング132を有する。配置用のリング132は、ユーザにリング132を掴んで脚128をハウジング50の通路70内へ押し込む能力を与えることによりハウジング50内へのプランジャ52の挿入を容易にし、かつまたユーザがリング132を押してファスナ10を脈管16内へ配置できるようにすることでハウジング50に対するプランジャ52の移動を容易にする。
配置用の各脚128は、好適には、配置用の各脚128の自由端138に隣接して内部を概して側方へ伸長する切欠き136を有する。切欠き136は同じ概して周方向に面し、プランジャ52をその縦軸126を中心として回転させてタング28を切欠き136内へ係合させることによりファスナ10から横方向の外側へ伸長するタング28を受け入れるように寸法取りされる。切欠き136内においてタング28の位置が合うと、ファスナ10はプランジャ52の押し引きによってハウジング50及びマンドレル54に対して軸方向へ移動されることが可能であり、ファスナ10の各々細管12及び脈管16内への配置が容易にされる。
プランジャ52はその軸方向の長さに沿って開放されることが可能であり、望ましくは、壁124の一部に沿ってヒンジ140を有する。ヒンジ140は、プランジャ52が壁124の少なくとも一部に沿って分かれることを可能にし、ファスナの脈管16内への配置に際して細管12からプランジャ52を取り外すことを容易にする。ヒンジ140は、プランジャ52の別々の半分同士の完全な分離を可能にする機械的蝶番、一体蝶番、ダブテール機構であっても、壁124の一部に沿ってプランジャ52を二枚貝のように開放できるようにする他の任意の機構であってもよいことは認識されるべきである。
細管12を脈管16へ付着させる場合、図6乃至17において最もよく分るように、ファスナ10は、これらの図ではプランジャ52が既にハウジング50の円筒通路70内へ挿入された状態で示されている配置ツール48へと装着される。プランジャ52はファスナ10をハウジング50内へ装着した後にハウジング50内へ装着されてもよいが、プランジャ52に対してファスナ10を装着するこの方法は本明細書では示されていないことは認識されるべきである。
図6において最もよく分るように、ハウジング50内へのファスナ10の装着を容易にするために、ファスナ10は、そのバイアスされない形状でハウジング50のベース60に隣接して円筒通路70と概して同心的に配置される。次に、マンドレル54及び特に位置決めプラグ102が、ファスナ10を位置付けてハウジング50内へ装入するために第1のフィンガ・セット24により画定される概して円筒である開口141(図6参照)内へ配置される。
図7に示すように、マンドレル54はハウジング50及びプランジャ52に対して軸方向へ移動され、ファスナ10をさらにハウジング50及びプランジャ52内へと装着する。マンドレル54が軸方向にハウジング50及びプランジャ52内へと移動するにつれて、ファスナ10上のタング28は、好適には配置用の脚128の切欠き136内へ受容される(図6A及び7A参照)。タング28が切欠き136内に完全に合わなければ、プランジャ52をその縦軸126を中心に回転させて切欠き136をタング28に係合させてもよい。
図8に示すように、マンドレル54はさらに、マンドレル54の円筒壁88の端114がハウジング50の端78と同一平面になるまで、または同一線上に位置するまでハウジング50及びプランジャ52内を軸方向へ装入される。さらに、プランジャ52は、第1及び第2のフィンガ・セット24、26がハウジング50内に完全に受容されるように、かつ第2のフィンガ・セット26の自由端34が概してマンドレル54の端114及びハウジング50の端78と同一平面になるように、または同一線上に位置するように、軸方向及びマンドレル54と同方向へ移動される。プランジャ52の軸方向動作は、タング28と配置用の脚128内の切欠き136との係合を介してファスナ10による軸方向の合同動作を生じさせることは認識されるべきである。従って、ファスナ10は、バイアスされた線形形状でマンドレル54の円筒壁88の外面90とハウジング50の内壁56の外面68との間に配置されたその第1及び第2のフィンガ・セット24、26を有する。従って、マンドレル54の外面90は、第1及び第2のフィンガ・セット24、26の双方を支持するに足る程度に軸方向へ突き出し、フィンガ24、26をそのバイアスされた線形形状に維持することは理解されるべきである。
ファスナ10が配置ツール48内に完全に装着された状態で、細管12を導入する前に、好適には、ファスナ10の被覆に使用されるものに類似するバイオ接着剤が、ファスナ10及び特には第1及び第2のフィンガ・セット24、26の外周上へバイオ接着剤が概して均等に分配されるように注入導管80を介して注入される。ファスナ10の外周上にバイオ接着剤が分配されると、図9に示すように、細管12を配置ツール48内へ受容すべく配置することができる。
図10に示すように、細管12は、肉厚(t)を有する細管12の端142がマンドレル54のシート94に接触するまでプランジャ52及びハウジング50内へと軸方向に移動される。望ましくは、細管12の端142はシート94へぴったりと嵌り、細管12の内面144の少なくとも一部分はマンドレル54の円筒部分110に接触する。
次に、吸込ノズル120に通じる真空ソースが起動されてマンドレル54のチャンバ87内に真空が生成され、これにより、マンドレル54のポート96、112内に吸引が生じる。従って、細管12の端142はシート94にしっかりと接触されて保持され、細管12の内面144は位置決めプラグ102の円筒部分110にしっかりと接触されて保持される。
図11乃至14に示すように、細管12が配置ツール48内に完全に受容されると、マンドレル54はハウジング50及びプランジャ52から離れて軸方向(矢印121の方向)に移動される。ポート96、112を介する吸引の結果、細管12はシート94及び円筒部分110に隣接したままであり、よって細管12はハウジング50及びプランジャ52に対してマンドレル54と共に移動する。従って、マンドレル54及び細管12が軸方向へ移動するにつれて、第1のフィンガ・セット24は円筒壁88の自由端92から外れ、これにより第1のフィンガ・セット24はバイアスが除去されてそのバイアスされない概して鉤形である形状に戻ることができる。第1のフィンガ・セット24は、そのバイアスされない概して鉤形である形状へと移動するにつれて半径方向の内側にファスナ10の縦軸20の方へとカールし、その際に細管12の外面145に穿孔し(図11参照)、これにより細管12の壁11へ付着する。望ましくは、細管12内の流体の流れを妨げないように、フィンガ24は壁11の内面144を穿孔しない。
第1のフィンガ・セット24が細管12に係合するにつれて、望ましくは、第1のフィンガ・セット24内のベベル40は第1のフィンガ・セット24によるそのバイアスされない概して弓形の形状への移動を容易にする。ベベル40の形状は、細管12の組織に穿孔するフィンガ24をそのバイアスされない概して鉤形である形状へと偏向させることにより、第1のフィンガ・セット24によるそのバイアスされない弓形の形状への戻りを容易にすることは認識されるべきである。マンドレル54及び細管12は、図13に示すように第1のフィンガ・セットが細管12に完全に係合されるまで、ハウジング50及びプランジャ52に対する軸方向移動を継続する。
第1のフィンガ・セット24が細管12に完全に係合すると、吸込ノズル120へ接続されている真空ソースは停止され、これによりチャンバ87内の真空が除去され、ポート96、112における吸引が除去される。従って、図14に示すように、マンドレル54は細管12から離れ、ハウジング50からの取り外しが可能になる。
図15に示すように、ファスナ10を脈管16の壁14へ付着するために、ハウジング50のベース60は壁14の外面146と嵌め合い接触の状態に置かれる。脈管16の壁14は、ハウジング50を壁14と嵌め合い接触の状態に置く前に壁14を介して適切なサイズの穴または開口148を形成して準備されていることは認識されるべきである。また、ハウジング50の円筒通路70は、望ましくは脈管16の壁14内の開口148に対して同心的に配置されることも認識されるべきである。ベース60が壁14に係合されると、真空導管84に接続されている真空ソースが起動されてチャンバ62内に真空が生成され(図中の矢印で表示)、これによりベース60内のポート74を介して吸引が生成される。従って、脈管16の壁14はベース60の端78に当たって平面接触状態に維持される。ハウジング50は脈管16の壁14に隣接したままであることから、ハウジング50が壁14と合同して動作する間、壁14は、心臓の壁の脈動の場合がそうであると予想されるように概して自由に動作する。従って、心臓は過度の制約なしに正常に機能して脈動することが可能であり、ハウジング50は外科処置を通して壁14と接触した状態に維持される。
図16に示すように、プランジャ52は次に脈管16の方へ、かつハウジング50に相対して軸方向に移動される。第2のフィンガ・セット26は、ハウジング50の端78から離れるにつれて半径方向の外側へ縦軸20からそのバイアスされない概して鉤形である形状へと移動する。第2のフィンガ・セット26の自由端34が脈管16の壁14に係合するにつれて、第2のフィンガ・セット26内のベベル46は、第1のフィンガ・セット24上のベベル40と同様にして第2のフィンガ・セット26によるそのバイアスされない概して鉤形である形状への移動を容易にする。ベベル40、46は、望ましくはフィンガ24、26によるそのバイアスされない概して弓形である形状への移動を容易にするために、その個々のフィンガ24、26の概して反対の両側に形成されることは認識されるべきである。
図17に示すように、プランジャ52が軸方向にその完全な組立て位置へと移動されると、第2のフィンガ・セット26は脈管16の壁14内に完全に係合されて固定される。細管12は、第1のフィンガ・セット24と細管12との係合の結果としてプランジャ52と合同で動作することは認識されるべきである。この後、プランジャ52はその縦軸126を中心として上記プランジャがタング28に係合されたときとは概して反対の方向へ回転されることが可能であり、これにより、配置用の脚128内の切欠き136がタング28から離れる。タング28が切欠き136から離れると、プランジャは、ハウジング50から完全に取り外されるまで軸方向へ脈管16から離れて移動されることが可能である。ハウジング50から取り外されると、プランジャ52は、ヒンジ140を介してプランジャ52の反対側の半分同士を分離して二枚貝のように開放されることが可能である。次にプランジャ52は、細管12から取り外されることが可能である。
次には、ハウジング50に通じる真空ソースが停止され、これによりハウジング50のチャンバ62内から真空が除去され、ポート74から吸引が除去される。従って、ハウジング50はその脈管16の壁14との接触係合から外され、ヒンジ81を中心とするハウジング50の開放により細管12から取り外されることが可能である。
ファスナ10を被覆しかつファスナ10の外周上に注入されるバイオ接着剤は、ファスナ10と、細管12と、脈管16との間の結合の形成を容易にすることは認識されるべきである。また、細管12及び脈管16は時間がたてば両者間に粘着性の生体結合を形成するが、ファスナ10は細管12と脈管16との接続を再保証する働きをすることも認識されるべきである。さらにファスナ10は、望ましくは、そのほぼ完全にバイアスされない形状においても僅かにバイアス力を与えて細管12の壁11を脈管16の壁14の方へ引き寄せようとし、これにより細管12と脈管16との間に漏れのない吻合が維持されることも認識されるべきである。
これまでに論じた実施形態は現時点で好適な構成を示す実施形態例であり、よって例示的であって限定を意図するものでない点は理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の請求の範囲によって定義される。