JP2007505634A - Rna干渉を用いる合成致死スクリーニング - Google Patents
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Abstract
本発明は、ある薬剤、例えばある薬物の効果と相互作用する、例えばモジュレートするある細胞型の細胞の1以上の遺伝子を同定する方法を提供する。例えば、同定された遺伝子は、ある薬物に対する耐性または感受性を与える、すなわち、薬物の効果を低減または増強することができる。本発明はまた、キネシン様運動タンパク質をコードするKSPと合成致死相互作用を示す遺伝子としてSTK6およびTPX2を提供するとともに、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/またはSTK6もしくはTPX2遺伝子産物の活性をモジュレートすることにより疾患、例えば、癌を治療する方法および組成物を提供する。本発明はまた、DNA損傷に対する細胞応答に関わる遺伝子、ならびにそれらの治療上の用途を提供する。
Description
本出願は、それぞれ参照により本明細書にその全文が組み入れられる2004年3月17日出願の米国仮特許出願第60/554,284号、2004年2月27日出願の米国仮特許出願第60/548,568号、および2003年9月22日出願の米国仮特許出願第60/505,229号の米国特許法35U.S.C.§119(e)のもとでの優先権を主張する。
1.発明の分野
本発明は、相互作用スクリーニング、例えば、RNA干渉を用いる致死/合成致死スクリーニングを実施するための方法および組成物に関する。本発明はまた、KSP、キネシン様運動タンパク質と合成致死相互作用を示す遺伝子およびその治療用途にも関する。本発明はまた、DNA損傷に対する細胞応答、およびその治療用途にも関わる。
本発明は、相互作用スクリーニング、例えば、RNA干渉を用いる致死/合成致死スクリーニングを実施するための方法および組成物に関する。本発明はまた、KSP、キネシン様運動タンパク質と合成致死相互作用を示す遺伝子およびその治療用途にも関する。本発明はまた、DNA損傷に対する細胞応答、およびその治療用途にも関わる。
2.発明の背景
RNA干渉(RNAi)は哺乳動物細胞において遺伝子発現を抑制する強力な方法であり、科学界に大きな反響を呼び起こした(Couzin, 2002, Science 298: 2296-2297;McManusら, 2002, Nat. Rev. Genet. 3,737-747;Hannon, G. J. , 2002, Nature 418, 244-251;Paddison ら, 2002, Cancer Cell 2, 17-23)。RNA干渉は線虫C.エレガンス(C. elegans)からヒトへの進化を通して保存されていて、細胞をRNAウイルスによる侵入から保護する機能を有すると考えられている。細胞がdsRNAウイルスに感染すると、dsRNAはダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII型酵素に認識されて切断の標的となる。ダイサーはRNAを21ntの短い2本鎖(siRNAまたは短い干渉RNAとも呼ばれ、19ntの完全な対のリボヌクレオチドとそれぞれの鎖の3'末端上の不対ヌクレオチド2個とで構成される)に「切り刻む(dice)」。この短い2本鎖は、RISCと呼ばれる多重タンパク質複合体と会合し、そしてこの複合体をsiRNAと配列類似性をもつmRNA転写物に向かわせる。その結果、RISC複合体中に存在するヌクレアーゼはそのmRNA転写物を切断し、それにより遺伝子産物の発現を無効にする。ウイルス感染の場合、この機構はウイルス転写物を破壊し、従ってウイルス合成を阻止する。siRNAは2本鎖であるので、いずれの側の鎖もRISCと会合して配列類似性をもつ転写物のサイレンシングを指令することができる。
RNA干渉(RNAi)は哺乳動物細胞において遺伝子発現を抑制する強力な方法であり、科学界に大きな反響を呼び起こした(Couzin, 2002, Science 298: 2296-2297;McManusら, 2002, Nat. Rev. Genet. 3,737-747;Hannon, G. J. , 2002, Nature 418, 244-251;Paddison ら, 2002, Cancer Cell 2, 17-23)。RNA干渉は線虫C.エレガンス(C. elegans)からヒトへの進化を通して保存されていて、細胞をRNAウイルスによる侵入から保護する機能を有すると考えられている。細胞がdsRNAウイルスに感染すると、dsRNAはダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII型酵素に認識されて切断の標的となる。ダイサーはRNAを21ntの短い2本鎖(siRNAまたは短い干渉RNAとも呼ばれ、19ntの完全な対のリボヌクレオチドとそれぞれの鎖の3'末端上の不対ヌクレオチド2個とで構成される)に「切り刻む(dice)」。この短い2本鎖は、RISCと呼ばれる多重タンパク質複合体と会合し、そしてこの複合体をsiRNAと配列類似性をもつmRNA転写物に向かわせる。その結果、RISC複合体中に存在するヌクレアーゼはそのmRNA転写物を切断し、それにより遺伝子産物の発現を無効にする。ウイルス感染の場合、この機構はウイルス転写物を破壊し、従ってウイルス合成を阻止する。siRNAは2本鎖であるので、いずれの側の鎖もRISCと会合して配列類似性をもつ転写物のサイレンシングを指令することができる。
特定の遺伝子のサイレンシングは、ヒトゲノムデータを利用して遺伝子機能を解明し、薬物標的を同定し、そしてさらに特定の治療薬を開発する可能性を約束するものである。これらの応用の多くは、意図する標的に対するsiRNAの高度の特異性を想定している。siRNA配列との部分的同一性を含む転写物によるクロスハイブリダイゼーションは、標的遺伝子だけでなく意図しない転写物のサイレンシングを反映する表現型を誘発しうる。これは表現型に示される遺伝子の同定を困惑させうる。多数の文献報告はsiRNAの優れた特異性を主張し、siRNAとのほぼ完全な同一性の必要性を示唆する(Elbashirら, 2001. EMBO J. 20:6877- 6888;Tuschlら, 1999, Genes Dev. 13:3191-3197;Hutvagnerら, Sciencexpress 297:2056-2060)。最近の報告は、siRNAが標的とする転写物の切断に完全な配列相補性が必要である一方、マイクロRNA(microRNA)の方法においては、部分的相補性によって転写物分解なしの転写抑制が得られることを示唆する(Hutvagnerら, Sciencexpress 297:2056-2060)。
siRNAとmiRNAを含む小さい調節性RNAの生物学的機能は十分分かっていない。よくある質問の1つは、これらの2つのクラスの調節性RNAの異なるサイレンシング経路を決定する機構に関するものである。miRNAはゲノムから発現される調節性RNAであり、前駆体ステム-ループ構造物からプロセシングされて標的mRNAの3'UTRの配列と結合する1本鎖核酸を生じる(Leeら, 1993, Cell 75:843-854;Reinhartら, 2000, Nature 403:901-906;Leeら, 2001, Science 294:862-864;Lauら, 2001, Science 294:858-862;Hutvagnerら, 2001, Science 293:834-838)。miRNAは部分的にだけ相補性をもつ転写物配列と結合し(Zengら, 2002, Molec. Cell 9:1327-1333)、そして定常状態RNAレベルに影響を与えることなく翻訳を抑制する(Leeら, 1993, Cell 75:843-854;Wightmanら, 1993, Cell 75:855-862)。miRNAとsiRNAは両方ともダイサーによるプロセシングを受けて、RNA誘導性サイレンシング複合体の成分と会合する(Hutvagnerら, 2001, Science 293:834-838;Grishokら, 2001, Cell 106:23-34;Kettingら, 2001, Genes Dev. 15:2654- 2659;Williamsら, 2002, Proc. Nntl. Acad. Sci. USA 99:6889-6894;Hammondら, 2001, Science 293:1146-1150;Mourlatosら, 2002, Genes Dev. 16:720-728)。ある最近の報告(Hutvagnerら, 2002, Sciencexpress 297:2056-2060)は、miRNA経路対siRNAを介する遺伝子調節がただ標的転写物との相補性の程度によって決定されると想定している。mRNA標的と部分的同一性しかもたないsiRNAは、miRNAと同様にRNA分解をトリガーするよりもむしろ翻訳抑制の機能を果たしうると推測される。
siRNAとshRNAはin vivoで遺伝子をサイレンシングするために利用できることも分かっている。siRNAとshRNAをin vivoで遺伝子をサイレンシングするのに利用できるということは、治療用途向けのsiRNAを選択および開発できる可能性があるということである。最近の報告は、siRNAの治療応用の可能性を強調している。Fas介在性アポトーシスが広範囲の肝疾患で示唆されていて、この場合、肝細胞のアポトーシス死を抑制することにより生命を救うことができる。Song(Songら, 2003, Nat. Medicine 9,347-351)は、Fas受容体を標的とするsiRNAをマウスの静脈内に注射した。マウス肝細胞のFas遺伝子はmRNAおよびタンパク質レベルでサイレンシングされ、アポトーシスを予防し、そしてマウスを肝炎誘導性肝障害から保護した。従って、Fas発現のサイレンシングは、肝細胞を細胞傷害性から保護することにより肝傷害を予防する治療を約束するものである。他の例としては、TNF-aを標的とするsiRNAをマウスの腹腔内に注射した。リポ多糖誘導性TNF-a遺伝子発現が抑制され、これらのマウスは敗血症から保護された。まとめると、これらの結果は、siRNAがin vivoで機能しうること、そして治療薬としての可能性を有することを示唆する(Sorensenら, 2003, J. Mol. Biol. 327,761-766)。
MartinezらはRNA干渉を利用して選択的に発癌性突然変異を標的とすることができると報じた(Martinezら, 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:14849-14854)。この報文において、点突然変異を含有するp53のR248W突然変異体の領域を標的とするsiRNAは突然変異体p53の発現をサイレンシングするが、野生型p53をサイレンシングしないことが示された。
Wildaらは、M-BCR/ABL融合mRNAを標的とするsiRNAを用いて、白血病細胞中のM-BCR/ABL mRNAおよびM-BRC/ABL腫瘍性タンパク質を枯渇させることができると報じた(Wildaら, 2002, Oncogene 21:5716-5724)。しかし、この報文はまた、siRNAとイマチニブ、小分子ABLキナーゼチロシンインヒビターとの白血病細胞への併用は、アポトーシスの誘導をさらに増加しなかったことも示した。
米国特許第6,506,559号は、細胞内の標的遺伝子の発現を抑制するためのRNA干渉方法を開示する。この方法は、2本鎖領域中に標的遺伝子中のある配列と同一である配列を有する、部分的にまたは全て2本鎖のRNAを、細胞中にまたは細胞外環境中に導入することを含む。標的配列と比較して挿入、欠失および一点突然変異をもつRNA配列も発現抑制に有効であることが見出された。
米国特許出願公報第US 2002/0086356号は、21-23ヌクレオチド(nt)長さのRNAセグメントを用いる、ショウジョウバエにおけるin vitro系でのRNA干渉を開示する。特許出願公報は、これらの21-23nt断片を精製してショウジョウバエ抽出物に戻して加えると、これらは、長いdsRNAの不在のもとで、配列特異的RNA干渉を媒介することを教示する。特許出願公報はまた、同じかまたは類似した性質の化学合成したオリゴヌクレオチドを用いて、哺乳動物細胞の特定のmRNAを標的として分解できることも教示する。
PCT公報WO 02/44321は、19-23nt長さの2本鎖RNA(dsRNA)が、配列特異的な転写後の遺伝子サイレンシングをショウジョウバエにおいてin vitro系で誘導することを開示する。PCT公報は、長いdsRNAからRNaseIII様プロセシング反応により作製された短い干渉RNA(siRNA)または化学的に合成されたオーバーハング3'末端をもつsiRNA2本鎖は、ライセート中で効率的な標的RNA切断を媒介し、そして切断部位はガイドするsiRNAが広がる領域の中心近くに位置することを教示する。PCT公報はまた、dsRNAプロセシングの方向が、産生したsiRNA複合体によりセンスまたはアンチセンス標的RNAを切断できるかどうかを決定するという確証も与えている。
米国特許出願公報第US 2002/016216号は、ストリンジェントな条件下で標的遺伝子のヌクレオチド配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む2本鎖RNA(dsRNA)を標的遺伝子の発現を減弱するのに十分な量だけ細胞中に導入することにより、培養細胞中の標的遺伝子の発現を減弱する方法を開示する。
PCT公報WO 03/006477が開示する遺伝子操作されたRNA前駆体は、細胞中で発現されると細胞によりプロセシングされて標的をもつ小干渉RNA(siRNA)を産生し、このsiRNAは標的となる遺伝子を細胞自体のRNA干渉(RNAi)経路を利用して(特定のmRNAを切断することにより)選択的にサイレンシングする。PCT公報は、これらの遺伝子操作されたRNA前駆体をコードする核酸分子を細胞中にin vivoで適当な調節配列とともに導入することにより、遺伝子操作されたRNA前駆体の発現を、時間的かつ空間的に、すなわち、特定の時間におよび/または特定の組織、器官もしくは細胞中に、両方とも選択的に制御できることを教示する。
本明細書における考察または引用をかかる参照が本発明の先行技術であることを承認するものであると解釈してはならない。
3.発明の概要
本発明は、遺伝子またはその産物と、薬剤、例えば薬物および/または他の遺伝子またはその産物との間の相互作用、例えば致死/合成致死相互作用を、RNA干渉を用いて同定するための方法および組成物を提供する。本発明はまた、STK6キナーゼもしくはTPX2とキネシン様運動タンパク質(KSP)インヒビターとの間の合成致死相互作用を利用して癌を治療する方法および組成物も提供する。本発明はまた、DNA損傷に対する細胞応答に関わる遺伝子およびその治療用途も提供する。
本発明は、遺伝子またはその産物と、薬剤、例えば薬物および/または他の遺伝子またはその産物との間の相互作用、例えば致死/合成致死相互作用を、RNA干渉を用いて同定するための方法および組成物を提供する。本発明はまた、STK6キナーゼもしくはTPX2とキネシン様運動タンパク質(KSP)インヒビターとの間の合成致死相互作用を利用して癌を治療する方法および組成物も提供する。本発明はまた、DNA損傷に対する細胞応答に関わる遺伝子およびその治療用途も提供する。
一態様においては、本発明は、その産物がある細胞型の細胞に対するある薬剤の効果をモジュレートする遺伝子を同定する方法を提供する。本発明の方法は、(a)多数の1以上の上記細胞型の細胞のグループを上記薬剤と接触させるステップであって、それぞれの上記1以上の細胞のグループは多数の異なる小干渉RNA(siRNA)のなかからの1以上の異なるsiRNAを含み、上記細胞型の細胞において上記1以上の異なるsiRNAは同じ遺伝子を標的とし、そして上記多数の異なるsiRNAはそれぞれ異なる遺伝子を標的とするsiRNAを含むことを特徴とする上記ステップ;(b)それぞれの上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果を、上記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較するステップ;ならびに(c)ある遺伝子を、もし上記遺伝子を標的とする上記1以上の異なるsiRNAを含む上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果が、上記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して異なれば、その産物が上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果をモジュレートする上記遺伝子として同定するステップを含む。一実施形態においては、上記多数のsiRNAの1以上を含むそれぞれの上記細胞のグループを、上記接触ステップの前に上記1以上のsiRNAを用いるトランスフェクションによって取得する。一実施形態においては、接触させるステップ(a)をそれぞれの上記1以上の細胞のグループに対して別々に行う。
特定の実施形態において、本発明は、その産物がある細胞型の細胞に対するある薬剤の効果をモジュレートする遺伝子を同定する方法であって、(a)多数の1以上の上記細胞型の細胞のグループのそれぞれを多数の異なる小干渉RNA(siRNA)のなかからの1以上の異なるsiRNAを含む組成物を用いてトランスフェクトするステップであって、上記細胞型の細胞において上記1以上の異なるsiRNAは同じ遺伝子を標的とし、そして上記多数の異なるsiRNAはそれぞれ異なる遺伝子を標的とするsiRNAを含むことを特徴とする上記ステップ;(b)上記多数の1以上の細胞のグループのそれぞれを上記薬剤と接触させるステップ;(c)それぞれの上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果を、上記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを用いてトランスフェクトされてない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較するステップ;および(d)ある遺伝子を、もし上記遺伝子を標的とする上記1以上の異なるsiRNAを含む上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果が、上記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して異なれば、その産物が上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果をモジュレートする上記遺伝子として同定するステップを含む方法を提供する。
上記1以上の異なるsiRNAを含むそれぞれの上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果は、上記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して増強することができる。あるいは、上記1以上の異なるsiRNAを含む上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果は、上記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して低減することができる。
好ましくは、薬剤は、上記多数のsiRNAにより標的とされた上記異なる遺伝子のいずれか以外のある遺伝子、またはそのコードされたタンパク質に対して作用する。好ましくは、多数のsiRNAは上記異なる遺伝子の少なくとも1つを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで上記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される。さらに好ましくは、多数のsiRNAは上記異なる遺伝子の少なくとも2つの異なる遺伝子のそれぞれを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで上記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される。さらにより好ましくは、多数のsiRNAは上記異なる遺伝子のそれぞれを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで上記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される。
好ましくは、多数の異なる遺伝子の少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはそれぞれに対する2種類以上の異なるsiRNAは同じ標的遺伝子を標的とする2、3、4、5、6および10種類の異なるsiRNAを含む。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAの全siRNA濃度は、個々に用いるときの単一siRNAの濃度、例えば100nMとほぼ同じである。好ましくは、1以上のsiRNAの全濃度は意図する標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度である。最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを5%、10%または20%を超えて増加することのない濃度である。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAはそれぞれのsiRNAを等しい比率で含む。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAはそれぞれのsiRNAを5%、10%、20%または50%未満だけお互いに異なる比率で含む。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAの少なくとも1つは、1以上のsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成する。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中のいずれのsiRNAも、1以上のsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成しない。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を含む1以上のsiRNAの組成は、1以上のsiRNAがいずれかの標的としない遺伝子(off-target gene)の30%、20%、10%または5%、1%、0.1%または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。他の実施形態においては、1以上のsiRNA中のそれぞれのsiRNAは、個々に用いるときの最適濃度より低い濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中の少なくとも1つのsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに少なくとも30%、50%、75%、80%、85%、90%または95%のサイレンシングを達成するのに有効であるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中のそれぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときにその遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独で使用したときに標的遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシングを引き起こす。
一実施形態においては、上記細胞型は癌細胞型である。他の実施形態においては、上記効果は増殖抑制効果である。特定の実施形態においては、上記薬剤はKSPインヒビターである。好ましい実施形態においては、上記異なる遺伝子は少なくとも5、少なくとも10、少なくとも100、または少なくとも1,000種類の異なる遺伝子を含む。一実施形態においては、上記異なる遺伝子は異なる内在性遺伝子である。
他の態様においては、本発明はある細胞型の細胞において一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子を同定する方法を提供する。その方法は、(a)多数の1以上の上記細胞型の細胞のグループをある薬剤と接触させるステップであって、上記薬剤が上記一次標的遺伝子の発現および/または上記一次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートし、それぞれの上記細胞のグループは多数の異なるsiRNAのなかの1以上の異なるsiRNAを含み、上記細胞型の細胞において上記1以上の異なるsiRNAは同じ遺伝子を標的とし、そして上記多数の異なるsiRNAはそれぞれ異なる二次遺伝子を標的とするsiRNAを含むことを特徴とする上記ステップ;(b)それぞれの上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果を、上記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較するステップ;ならびに(c)ある遺伝子を、もし上記遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを含む上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果が上記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して異なれば、上記細胞型の細胞中の上記一次標的遺伝子と相互作用する上記遺伝子として同定するステップを含む。一実施形態においては、上記多数のsiRNAの1以上を含むそれぞれの上記細胞のグループを、上記接触のステップの前に上記1以上のsiRNAによるトランスフェクションによって取得する。
特定の実施形態においては、本発明はある細胞型の細胞において一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子を同定する方法であって、(a)多数の1以上の上記細胞型の細胞のグループのそれぞれを多数の異なる小干渉RNA(siRNA)のなかからの1以上の異なるsiRNAを含む組成物を用いてトランスフェクトするステップであって、上記細胞型の細胞において上記1以上の異なるsiRNAは同じ遺伝子を標的とし、そして上記多数の異なるsiRNAはそれぞれ異なる遺伝子を標的とするsiRNAを含む上記ステップ;(b)上記多数の1以上の上記細胞型の細胞のグループを薬剤と接触させるステップであって、;上記薬剤が上記一次標的遺伝子の発現および/または上記一次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートすることを特徴とする上記ステップ;(c)それぞれの上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果を、上記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較するステップ;および(d)ある遺伝子を、もし上記遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを含む上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果が、上記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して異なれば、上記細胞型の細胞中の上記一次標的遺伝子と相互作用する上記遺伝子として同定するステップを含む上記方法を提供する。
一実施形態においては、上記薬剤は上記一次標的遺伝子を標的としてサイレンシングするsiRNAを含む。他の実施形態においては、上記薬剤は上記一次標的遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む。ある好ましい実施形態においては、上記異なるsiRNAのそれぞれは上記一次標的遺伝子を標的とする。ある好ましい実施形態においては、上記異なるsiRNAの全siRNA濃度は個々に用いるときの単一siRNAの濃度、例えば、100nMとほぼ同じである。好ましくは、上記異なるsiRNAの全濃度は一次標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度である。最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、最適濃度はさらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを5%、10%または20%を超えて増加することのない濃度である。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAはそれぞれのsiRNAを等しい比率で含む。他の好ましい実施形態においては、異なるsiRNAはそれぞれのsiRNAを5%、10%、20%または50%未満だけお互いに異なる比率で含む。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの少なくとも1つが異なるsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成する。他の好ましい実施形態においては、異なるsiRNAのいずれのsiRNAも全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成しない。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を含む異なるsiRNAの組成は、異なるsiRNAがいずれかの標的としない遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%、1%、0.1%または0.01%未満引き起こすように選ばれる。他の実施形態においては、それぞれのsiRNAは個々に用いるときの最適濃度より低い濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、少なくとも1つのsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに少なくとも30%、50%、75%、80%、85%、90%または95%のサイレンシングを達成するのに有効で
あるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、それぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときにその遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独で使用した時に標的遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する一方、全siRNAは一緒に標的遺伝子のサイレンシングの少なくとも80%または90%を引き起こす。さらに他の実施形態においては、上記薬剤は上記一次標的遺伝子がコードするタンパク質のインヒビターを含む。
あるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、それぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときにその遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独で使用した時に標的遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する一方、全siRNAは一緒に標的遺伝子のサイレンシングの少なくとも80%または90%を引き起こす。さらに他の実施形態においては、上記薬剤は上記一次標的遺伝子がコードするタンパク質のインヒビターを含む。
上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果は、上記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して増強することができる。あるいは、上記1以上の細胞のグループに対する上記薬剤の効果は、上記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して低減することができる。
好ましくは、多数のsiRNAは上記異なる二次遺伝子の少なくとも1つを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで上記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される。さらに好ましくは、多数のsiRNAは、上記異なる二次遺伝子の少なくとも2つの異なる遺伝子のそれぞれを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで上記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される。さらにより好ましくは、多数のsiRNAは、上記異なる二次遺伝子のそれぞれを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで上記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される。
好ましくは、多数の異なる遺伝子の少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはそれぞれに対する1以上の異なるsiRNAは、同じ標的遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む。ある好ましい実施形態においては、同じ遺伝子を標的とする1以上のsiRNAの全siRNA濃度は、個々に用いるときの単一siRNAの濃度、例えば、100nMとほぼ同じである。好ましくは、1以上のsiRNAの全濃度は意図する標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度である。最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを5%、10%または20%を超えて増加することのない濃度である。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAはそれぞれのsiRNAを等しい比率で含む。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAはそれぞれのsiRNAを5%、10%、20%または50%未満だけお互いに異なる比率で含む。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAの少なくとも1つが1以上のsiRNAの全siRNAの90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成する。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中のいずれのsiRNAも、1以上のsiRNAの全濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成しない。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を含む異なるsiRNAの組成は、1以上のsiRNAがいずれかの標的としない遺伝子の30%、20%、10%または5%、1%、0.1%または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。他の実施形態においては、1以上のsiRNA中のそれぞれのsiRNAは個々に用いるときの最適濃度より低い濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中の少なくとも1つのsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに少なくとも30%、50%、75%、80%、85%、90%または95%のサイレンシングを達成するのに有効であるsiRNAの濃度より
低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中のそれぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときにその遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独で使用したときに標的遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシング引き起こす。
低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中のそれぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときにその遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独で使用したときに標的遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシング引き起こす。
一実施形態においては、それぞれの上記1以上の細胞のグループを、上記接触のステップの前に上記1以上の異なるsiRNAを用いるトランスフェクションにより取得する。他の実施形態においては、一次標的はKSPである。好ましい実施形態においては、上記異なる二次遺伝子は少なくとも5、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1,000、少なくとも5,000種類の異なる遺伝子を含む。一実施形態においては、上記異なる二次遺伝子は異なる内在性遺伝子である。一実施形態においては、上記細胞型は癌細胞型である。
さらに他の態様においては、本発明は、癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、上記哺乳動物にSTK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の治療上十分な量を投与することを含み、上記哺乳動物にKSPインヒビターの治療上十分な量を投与することを含む療法で上記哺乳動物を処置することを特徴とする上記方法を提供する。本発明はまた、癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、上記哺乳動物に、i)STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の治療上十分な量、およびii)KSPインヒビターの治療上十分な量を投与することを含む上記方法を提供する。一実施形態においては、上記薬剤は上記癌細胞中の上記STK6もしくはTPX2遺伝子の発現を低減する。ある好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記STK6もしくはTPX2遺伝子を標的とするsiRNAを含む。他の実施形態においては、哺乳動物はヒトであり、ここでsiRNAは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択することができる。他の好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記TPX2遺伝子を標的とするsiRNAを含む。他の実施形態においては、哺乳動物はヒトであり、ここでsiRNAは配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択することができる。
他の実施形態においては、本発明は癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、上記哺乳動物に、i)STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する第1の薬剤の治療上十分な量、およびii)KSP遺伝子の発現および/またはKSP遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する第2の薬剤の治療上十分な量を投与することを含む上記方法を提供する。ある好ましい実施形態においては、第1の薬剤は上記STK6もしくはTPX2遺伝子を標的とするsiRNAであり、そして上記第2の薬剤は上記KSP遺伝子を標的とするsiRNAを含む。他の好ましい実施形態においては、上記哺乳動物はヒトであり、ここで上記siRNAは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される。他の好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記TPX2遺伝子を標的とするsiRNAを含む。他の実施形態においては、哺乳動物はヒトであり、ここでsiRNAは配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択することができる。
さらに他の実施形態においては、本発明はKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を評価する方法であって、上記細胞中のSTK6もしくはTPX2遺伝子の発現レベルを測定することを含み、所定の閾値を越える上記発現レベルは上記細胞が上記KSPインヒビターの増殖抑制効果に耐性があるのを示すことを特徴とする上記方法を提供する。ある好ましい実施形態においては、上記STK6もしくはTPX2遺伝子の発現レベルは、それぞれ上記STK6もしくはTPX2遺伝子中のヌクレオチド配列を含む1以上のポリヌクレオチドプローブを用いて上記STK6もしくはTPX2遺伝子の発現レベルを測定することを含む方法により決定する。上記1以上のポリヌクレオチドプローブはマイクロアレイ上のポリヌクレオチドプローブであってもよい。
さらに他の実施形態においては、本発明はKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を評価する方法であって、上記細胞中のSTK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の存在量のレベルを測定することを含み、所定の閾値を越える上記タンパク質の存在量の上記レベルは上記細胞が上記KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性があると示すことを含む上記方法を提供する。本発明はまた、KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を評価する方法であって、上記細胞中のSTK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性のレベルを測定することを含み、所定の閾値レベルを越える上記活性レベルは上記細胞が上記KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性があるのを示すことを特徴とする上記方法を提供する。ある好ましい実施形態においては、上記細胞はヒト細胞である。
さらに他の実施形態においては、本発明はKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節する方法であって、上記細胞を、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する上記薬剤の十分な量と接触させることを含む上記方法を提供する。本発明はまた、哺乳動物におけるKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節する方法であって、上記哺乳動物に、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する上記薬剤の治療上十分な量の薬剤を投与することを含む上記方法を提供する。本発明はさらに、細胞の増殖を調節する方法であって、上記細胞をi)STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の十分な量;およびii)KSPインヒビターの十分な量と接触させることを含む上記方法を提供する。好ましくは、薬剤は上記細胞における上記STK6もしくはTPX2遺伝子の発現を低減する。ある好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記STK6遺伝子を標的とするsiRNAを含む。他の好ましい実施形態においては、上記細胞はヒト細胞であり、ここで上記siRNAは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される。他の好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記TPX2遺伝子を標的とするsiRNAを含む。他の実施形態においては、細胞はヒト細胞であり、ここでsiRNAは配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択することができる。
さらに他の実施形態においては、本発明は、KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節することができる薬剤であって、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートできることを特徴とする上記薬剤を同定する方法であって、上記薬剤の存在のもとでの上記STK6もしくはTPX2遺伝子を発現する細胞に対する上記KSPインヒビターの抑制効果を上記薬剤の不在のもとでの上記STK6もしくはTPX2遺伝子を発現する細胞に対する上記KSPインヒビターの抑制効果と比較することを含み、上記KSPインヒビターの上記抑制効果に差があれば上記薬剤は上記細胞の上記KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性を調節することができると同定することを特徴とする上記方法を提供する。
本発明はまた、KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節することができる薬剤であって、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートできることを特徴とする上記薬剤を同定する方法であって、(a)上記STK6もしくはTPX2遺伝子を発現する第1の細胞を上記KSPインヒビターと上記薬剤の存在のもとで接触させ、そして第1の増殖抑制効果を測定するステップ;(b)上記STK6もしくはTPX2遺伝子を発現する第2の細胞を上記KSPインヒビターと上記薬剤の不在のもとで接触させ、そして第2の増殖抑制効果を測定するステップ;ならびに(c)上記ステップ(a)と(b)で測定した上記第1と第2の抑制効果を比較するステップを含み、上記第1と第2の抑制効果に差があれば、上記薬剤は上記KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節することができると同定することを特徴とするステップを含む上記方法を提供する。ある好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記STK6もしくはTPX2遺伝子の発現を低減する分子である。他の好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記STK6遺伝子を標的とするsiRNAを含む。さらに他の好ましい実施形態においては、上記細胞はヒト細胞であり、ここで上記siRNAは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される。他の好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記TPX2遺伝子を標的とするsiRNAを含む。他の実施形態においては、細胞はヒト細胞であり、ここでsiRNAは配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択することができる。
さらに他の態様においては、本発明は、細胞中にSTK6もしくはTPX2遺伝子を標的とする1以上の異なる小干渉RNA(siRNA)を含む細胞を提供する。細胞はヒト細胞であってもよい。細胞はまたマウス細胞であってもよい。一実施形態においては、上記細胞はヒト細胞であり、そして上記1以上の異なるsiRNAのそれぞれは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される。他の実施形態においては、細胞はヒト細胞であり、ここで上記siRNAは配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択することができる。一実施形態においては、上記細胞は上記1以上の異なるsiRNAの組成物を用いてトランスフェクションにより作製され、上記組成物の全siRNA濃度は上記STK6もしくはTPX2遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、上記最適濃度はさらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、上記最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加させることのない濃度である。一実施形態においては、それぞれの上記異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである。一実施形態においては、上記異なるsiRNAのそれぞれの濃度はお互いに50%未満、20%未満、または10%未満だけ異なる。他の実施形態においては、上記組成物中のいずれのsiRNAも上記異なるsiRNAの上記全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない。他の実施形態においては、上記組成物中の少なくとも1つのsiRNAは、上記異なるsiRNAの上記全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する。他の実施形態においては、上記組成物中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度は、上記組成物が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。
さらに他の態様においては、本発明はKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を診断するためのマイクロアレイを提供する。マイクロアレイは1以上のポリヌクレオチドプローブを含み、それぞれの上記ポリヌクレオチドプローブはSTK6もしくはTPX2遺伝子中のヌクレオチド配列を含む。
さらに他の態様においては、本発明は、KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を診断するためのキットを提供する。キットは1以上の容器中に1以上のポリヌクレオチドプローブを含み、それぞれの上記ポリヌクレオチドプローブはSTK6もしくはTPX2遺伝子中のヌクレオチド配列を含む。本発明はまた、KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節する薬剤をスクリーニングするためのキットを提供する。キットは1以上の容器中に、(i)上記細胞中にSTK6もしくはTPX2遺伝子を標的とする1以上の異なる小干渉RNA(siRNA)を含む細胞;および(ii)KSPインヒビターを含む。さらに他の態様においては、本発明は、癌を有する哺乳動物を治療するキットであって、1以上の容器中に(i)STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または上記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の十分な量;および(ii)KSPインヒビターを含む上記キットを提供する。
本発明において、KSPインヒビターは、2003年6月12日に出願されたPCT出願PCT/US03/18482に記載の、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンであってもよい。
本発明はまた、ある細胞型の細胞中の一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子を同定する方法を提供する。本発明の方法は、(a)1以上の上記細胞型の細胞をある薬剤と接触させるステップであって、上記薬剤は二次標的遺伝子の発現および/または上記二次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートすること、および上記1以上の細胞は上記一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現することを特徴とする上記ステップ;(b)上記クローンの上記1以上の細胞に対する上記薬剤の効果を、上記第1のsiRNAを発現しない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較するステップ;ならびに(c)もし上記第1のsiRNAを発現する上記1以上の細胞に対する上記薬剤の効果が上記第1のsiRNAを発現しない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して異なれば、上記二次標的遺伝子を上記細胞型の細胞中の上記一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子として同定するステップを含む。
特定の実施形態においては、本発明の方法は、(a)上記一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現する上記細胞型の細胞のクローンを作製するステップ;(b)上記クローンの1以上の細胞を、二次標的遺伝子の発現および/または上記二次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートする薬剤と接触させるステップ;(c)上記クローンの上記1以上の細胞に対する上記薬剤の効果を、上記第1のsiRNAを発現しない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較するステップ;および(d)もし上記第1のsiRNAを発現する上記1以上の細胞に対する上記薬剤の効果が上記第1のsiRNAを発現しない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して異なれば、上記二次標的遺伝子を上記細胞型の細胞中の上記一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子として同定するステップを含む。
いくつかの実施形態においては、上記第1のsiRNAを発現する上記1以上の細胞に対する上記薬剤の効果は、上記第1のsiRNAを発現しない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して増強される。いくつかの他の実施形態においては、上記第1のsiRNAを発現する上記1以上の細胞に対する上記薬剤の効果は、上記第1のsiRNAを発現しない上記細胞型の細胞に対する上記薬剤の効果と比較して低減される。一実施形態においては、上記薬剤は上記二次標的遺伝子のインヒビターである。上記薬剤の効果は、上記細胞型の細胞の、ある薬物、例えば、DNA損傷剤、例えば、トポイソメラーゼIインヒビター、例えば、カンプトセシン、トポイソメラーゼIIインヒビター、例えば、ドキソルビシン、DNA結合剤、例えば、シスプラチン、代謝拮抗薬、または電離放射線に対する感受性の変化であってもよい。
他の実施形態においては、上記薬剤は上記二次標的遺伝子を標的としかつサイレンシングする1以上の第2のsiRNAを含む。好ましくは、上記1以上の第2のsiRNAは少なくともk種類の異なるsiRNA、例えば、少なくとも2、3、4、5、6および10種類の異なるsiRNAを含む。ある好ましい実施形態においては、1以上の第2のsiRNAの全siRNA濃度は、個々に用いるときの単一siRNAの濃度、例えば、100nMとほぼ同じである。好ましくは、1以上の第2のsiRNAの全siRNA濃度は意図する二次標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度である。最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを5%、10%または20%を超えて増加することのない濃度である。ある好ましい実施形態においては、1以上の第2のsiRNAはそれぞれのsiRNAを等しい比率で含む。他の好ましい実施形態においては、1以上の第2のsiRNAはそれぞれのsiRNAを5%、10%、20%または50%未満だけお互いに異なる比率で含む。ある好ましい実施形態においては、1以上の第2のsiRNAの少なくとも1つが、1以上の第2のsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成する。他の好ましい実施形態においては、1以上の第2のsiRNA中のいずれのsiRNAも1以上の第2のsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成しない。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を含む1以上の第2のsiRNAの組成は、1以上の第2のsiRNAがいずれかの的はずれの遺伝子(off-target gene)の30%、20%、10%または5%、1%、0.1%または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。他の実施形態においては、1以上の第2のsiRNA中のそれぞれのsiRNAは、個々に用いるときの最適濃度より低い濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、1以上の第2のsiRNA中の少なくとも1つのsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに少なくとも30%、50%、75%、80%、85%、90%または95%のサイレンシングを達成するのに有効であるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、1以上の第2のsiRNA中のそれぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときにその遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは、単独で用いるときに二次標的遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは二次標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシングを引き起こす。
一実施形態においては、上記細胞型は癌細胞型である。他の実施形態においては、上記一次標的遺伝子はp53である。
ある好ましい実施形態においては、本方法のステップ(b)-(d)を多数の異なる二次標的遺伝子のそれぞれに対して繰り返す。多数の二次標的遺伝子は少なくとも5、10、100、1,000、および5,000種類の異なる遺伝子を含むことができる。
本発明はまた、癌を有する哺乳動物を治療する方法を提供する。本方法は、上記哺乳動物に遺伝子の発現および/または上記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の治療上十分な量を投与することを含み、上記哺乳動物に1以上のDNA損傷剤を含む組成物の治療上十分な量を投与することを含む療法で上記哺乳動物を処置することを特徴とする。一実施形態においては、本発明は癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、上記哺乳動物にi)遺伝子の発現および/または上記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の治療上十分な量、およびii)1以上のDNA損傷剤を含む組成物の治療上十分な量を投与することを含む上記方法を提供する。
好ましくは、上記薬剤は上記癌細胞中の上記遺伝子の発現を低減する。ある好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記遺伝子を標的とするsiRNAを含む。特定の実施形態においては、上記遺伝子はEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、CHEK1またはBRCA2である。薬剤はまた、上記癌細胞の細胞中の上記遺伝子の発現を増強する薬剤であってもよい。1以上のDNA損傷剤は、トポイソメラーゼIインヒビター、例えば、カンプトセシン、トポイソメラーゼIIインヒビター、例えば、ドキソルビシン、DNA結合剤、例えば、シスプラチン、代謝拮抗薬、または電離放射線を含むことができる。
本発明はまた、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対するある細胞の感受性を評価する方法を提供する。本方法は上記細胞中の転写物レベルを測定するステップを含み、所定の閾値レベルより低い上記転写物レベルは、上記細胞が上記DNA損傷剤の増殖抑制効果に感受性があると示すことを特徴とする。DNA損傷剤は、トポイソメラーゼIインヒビター、例えば、カンプトセシン、トポイソメラーゼIIインヒビター、例えば、ドキソルビシン、DNA結合剤、例えば、シスプラチン、代謝拮抗薬、または電離放射線であってもよい。ある好ましい実施形態においては、上記遺伝子はEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、CHEK1またはBRCA2である。ある好ましい実施形態においては、上記遺伝子の上記転写物レベルは、それぞれが上記遺伝子中のヌクレオチド配列を含む1以上のポリヌクレオチドプローブを用いて上記遺伝子の転写物レベルを測定することを含む方法により決定することができる。一実施形態においては、上記1以上のポリヌクレオチドプローブはあるマイクロアレイ上のポリヌクレオチドプローブである。
他の実施形態においては、本発明はDNA損傷剤の増殖抑制効果に対するある細胞、例えば、ヒト細胞の感受性を評価する方法を提供する。本方法は上記細胞中のある遺伝子がコードするあるタンパク質の存在量のレベルを測定するステップを含み、上記タンパク質の存在量の上記レベルが所定の閾値レベルより低ければ、上記細胞は上記DNA損傷剤の増殖抑制効果に対して感受性のあると示すことを特徴とする。本発明はまた、ある細胞、例えば、ヒト細胞の、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する感受性を評価する方法であって、上記細胞中のある遺伝子がコードするあるタンパク質の活性のレベルを測定するステップを含み、上記活性レベルが所定の閾値レベルより高ければ、上記細胞が上記DNA損傷剤の増殖抑制効果に対して感受性のあると示すことを特徴とする上記方法を提供する。DNA損傷剤はトポイソメラーゼIインヒビター、例えば、カンプトセシン、トポイソメラーゼIIインヒビター、例えば、ドキソルビシン、DNA結合剤、例えば、シスプラチン、代謝拮抗薬、または電離放射線であってもよい。ある好ましい実施形態においては、上記遺伝子はEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、CHEK1またはBRCA2である。
本発明はまた、DNA損傷に対する細胞の感受性を調節する方法を提供する。本方法は、上記細胞をEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または上記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の十分な量と接触させることを含む。本発明はまた、細胞の増殖を調節する方法であって、上記細胞をi)EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または上記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の十分な量;およびii)DNA損傷剤の十分な量と接触させることを含む上記方法を提供する。DNA損傷剤はトポイソメラーゼIインヒビター、例えば、カンプトセシン、トポイソメラーゼIIインヒビター、例えば、ドキソルビシン、DNA結合剤、例えば、シスプラチン、代謝拮抗薬、または電離放射線であってもよい。
一実施形態においては、上記薬剤は上記細胞中の上記遺伝子の発現を低減する。ある好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記遺伝子を標的とするsiRNAを含む。
他の好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む。ある好ましい実施形態においては、上記遺伝子を標的とする異なるsiRNAの全siRNA濃度は個々に用いるときの単一siRNAの濃度、例えば、100nMとほぼ同じである。好ましくは、異なる上記遺伝子を標的とするsiRNAの全濃度はその遺伝子をサイレンシングするための最適濃度である。最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを5%、10%または20%を超えて増加することのない濃度である。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAそれぞれのsiRNAを等しい比率で含む。他の好ましい実施形態においては、異なるsiRNAはそれぞれのsiRNAを5%、10%、20%または50%未満だけお互いに異なる比率で含む。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの少なくとも1つは異なるsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成する。他の好ましい実施形態においては、異なるsiRNAのいずれのsiRNAも全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成しない。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を含む異なるsiRNAの組成は、異なるsiRNAがいずれかの標的としない遺伝子の30%、20%、10%または5%、1%、0.1%または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。他の実施形態においては、異なるsiRNA中のそれぞれのsiRNAは個々に用いるときの最適濃度より低い濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNA中の少なくとも1つのsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに少なくとも30%、50%、75%、80%、85%、90%または95%のサイレンシングを達成するのに有効であるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、それぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%未満引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独に用いるときに標的遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%未満引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシングを引き起こす。
本発明はまた、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節することができる薬剤であって、EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または上記遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートできることを特徴とする上記薬剤を同定する方法であって、上記薬剤の存在のもとでの上記遺伝子を発現する細胞に対する上記DNA損傷剤の抑制効果を上記薬剤の不在のもとでの上記遺伝子を発現する細胞に対する上記DNA損傷剤の抑制効果と比較することを含み、上記DNA損傷剤の上記抑制効果に差があれば、上記薬剤を上記DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する上記細胞の感受性を調節することができると同定することを特徴とする上記方法を提供する。一実施形態においては、本発明はDNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節することができる薬剤であって、EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または上記遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートできることを特徴とする上記薬剤を同定する方法であって、(a)上記薬剤の存在のもとで上記遺伝子を発現する第1の細胞を上記DNA損傷剤と接触させて第1の増殖抑制効果を測定するステップ;(b)上記薬剤の不在のもとで上記遺伝子を発現する第2の細胞を上記DNA損傷剤と接触させて第2の増殖抑制効果を測定するステップ;ならびに(c)上記ステップ(a)と(b)で測定した上記第1と第2の抑制効果を比較して、上記第1と第2の抑制効果の間に差があれば、上記薬剤を上記DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節することができると同定することを特徴とするステップを含む上記方法を提供する。
好ましくは、上記細胞は一次標的遺伝子を標的とするsiRNAを発現する。一実施形態においては、上記一次標的遺伝子はp53である。
ある好ましい実施形態においては、上記薬剤は上記遺伝子の発現を低減する分子である。一実施形態においては、上記薬剤は上記遺伝子を標的とするsiRNAを含む。他の実施形態においては、上記薬剤は上記遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む。ある好ましい実施形態においては、上記遺伝子を標的とする異なるsiRNAの全siRNA濃度は、個々に用いるときの単一siRNAの濃度とほぼ同じ、例えば、100nMである。好ましくは、上記遺伝子を標的とする異なるsiRNAの全濃度はその遺伝子をサイレンシングするための最適濃度である。最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを5%、10%または20%を超えて増加することのない濃度である。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAはそれぞれのsiRNAを等しい比率で含む。他の好ましい実施形態においては、異なるsiRNAはそれぞれのsiRNAを5%、10%、20%または50%未満だけお互いに異なる比率で含む。ある好ましい実施形態においては、少なくとも1つの異なるsiRNAは、異なるsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成する。他の好ましい実施形態においては、異なるsiRNAのいずれのsiRNAも、全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成しない。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を含む異なるsiRNAの組成は、異なるsiRNAがいずれかの標的としない遺伝子の30%、20%、10%または5%、1%、0.1%または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。他の実施形態においては、異なるsiRNA中のそれぞれのsiRNAは個々に用いるときの最適濃度より低い濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNA中の少なくとも1つのsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに少なくとも30%、50%、75%、80%、85%、90%または95%のサ
イレンシングを達成するのに有効であるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、それぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときにその遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独に用いるときに標的遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシングを引き起こす。
イレンシングを達成するのに有効であるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、それぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときにその遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独に用いるときに標的遺伝子の30%、20%、10%または5%未満のサイレンシングを引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシングを引き起こす。
本方法においては、上記DNA損傷剤はトポイソメラーゼIインヒビター、例えば、カンプトセシン、トポイソメラーゼIIインヒビター、例えば、ドキソルビシン、DNA結合剤、例えば、シスプラチン、代謝拮抗薬、または電離放射線であってもよい。
本発明はまた、上記細胞中のEPHB3、WEE1、ELK1、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択されるある遺伝子を標的とする1以上の異なる小干渉RNA(siRNA)を含む細胞を提供する。一実施形態においては、上記1以上の異なるsiRNAは2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む。ある好ましい実施形態においては、1以上の異なるsiRNAの全siRNA濃度は、個々に用いるときの単一siRNAの濃度、例えば、100nMとほぼ同じである。好ましくは、1以上のsiRNAの全濃度は意図する標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度である。最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを5%、10%または20%を超えて増加することのない濃度である。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAはそれぞれのsiRNAを等しい比率で含む。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAはそれぞれのsiRNAを5%、10%、20%または50%未満だけお互いに異なる比率で含む。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAの少なくとも1つは1以上のsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成する。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNAのいずれのsiRNAも1以上のsiRNAの全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成しない。ある好ましい実施形態においては、異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を含む異なるsiRNAの組成は、1以上のsiRNAがいずれかの標的としない遺伝子の30%、20%、10%または5%、1%、0.1%または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。他の実施形態においては、1以上のsiRNA中のそれぞれのsiRNAは個々に用いるときの最適濃度より低い濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中の少なくとも1つのsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに少なくとも30%、50%、75%、80%、85%、90%または95%のサイレンシングを達成するのに有効であるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、1以上のsiRNA中のそれぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%未満引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは単独に用いるときに標的遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%未満引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシングを引き起こす。
本発明はまた、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を診断するためのマイクロアレイを提供する。マイクロアレイは1以上のポリヌクレオチドプローブを含み、ここで、それぞれの上記ポリヌクレオチドプローブはEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される1以上の遺伝子中のあるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする。
本発明はまた、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を診断するためのキットを提供する。本キットは1以上の容器中に1以上のポリヌクレオチドプローブを含み、ここでそれぞれの上記ポリヌクレオチドプローブはEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される1以上の遺伝子中のあるヌクレオチド配列を含むことを特徴とする。
本発明はまた、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節する薬剤をスクリーニングするためのキットを提供する。本キットは1以上の容器中に(i)上記細胞中のEPHB3、VVEE1、ELK1、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択されるある遺伝子を標的とする1以上の異なる小干渉RNA(siRNA)を含む細胞;および(ii)上記DNA損傷剤を含む。
本発明はまた、癌を有する哺乳動物を治療するキットであって、1以上の容器中に(i)EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または上記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する薬剤の十分な量;および(ii)DNA損傷剤を含む上記キットを提供する。
本発明のキットにおいては、DNA損傷剤はトポイソメラーゼIインヒビター、例えば、カンプトセシン、トポイソメラーゼIIインヒビター、例えば、ドキソルビシン、DNA結合剤、例えば、シスプラチン、または代謝拮抗薬であってもよい。
本発明はまた、ある薬物の処置に対するある細胞型の細胞の応答性を評価する方法であって、(a)1以上の上記細胞型の細胞を上記薬物と接触させるステップであって、上記1以上の細胞が一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現すること、および上記1以上の細胞を、1以上の二次標的遺伝子の発現および/または上記1以上の二次標的遺伝子がそれぞれコードする1以上のタンパク質の活性をモジュレートする組成物で処置することを特徴とする上記ステップ;(b)一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現しない1以上の上記細胞型の細胞を上記薬物と接触させるステップであって、上記1以上の細胞を、二次標的遺伝子の発現および/または二次標的遺伝子がコードするあるタンパク質の活性をモジュレートする上記薬剤で処置することを特徴とする上記ステップ;ならびに(c)ステップ(a)で測定した上記1以上の細胞に対する上記薬物の効果をステップ(b)で測定した上記1以上の細胞に対する上記薬物の効果と比較し、それにより上記薬物の処置に対する上記細胞の応答性を評価するステップを含む上記方法を提供する。一実施形態においては、本方法は多数の異なる二次標的遺伝子のそれぞれに対してステップ(a)-(b)を繰り返すステップ(d)をさらに含む。
特定の実施形態においては、本発明はある薬物の処置に対するある細胞型の細胞の応答性を評価する方法であって、(a)一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現する上記細胞型の細胞のクローンを作製するステップ;(b)上記第1のsiRNAを発現する上記クローンの1以上の細胞を上記薬物と接触させるステップであって、上記1以上の細胞を、ある二次標的遺伝子の発現および/または上記二次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートするある薬剤で処置することを特徴とする上記ステップ;(c)上記一次標的遺伝子を標的とする小干渉RNA(siRNA)を発現しない1以上の上記細胞型の細胞を上記薬物と接触させるステップであって、上記1以上の細胞をある二次標的遺伝子の発現および/または上記二次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートする上記薬剤で処置する上記ステップ;および(d)ステップ(b)で測定した上記1以上の細胞に対する上記薬物の効果をステップ(c)で測定した上記1以上の細胞に対する上記薬物の効果と比較し、それにより上記薬物の処置に対する上記細胞の応答性を評価するステップを含む上記方法を提供する。一実施形態においては、本方法は多数の異なる二次標的遺伝子のそれぞれに対してステップ(b)-(d)を繰り返すステップ(e)をさらに含む。
一実施形態においては、上記第1のsiRNAを発現する上記1以上の細胞に対する上記薬物の効果は上記第1のsiRNAを発現しない上記細胞型の細胞に対する上記薬物の効果と比較して増強される。他の実施形態においては、上記第1のsiRNAを発現する上記1以上の細胞に対する上記薬物の効果は上記第1のsiRNAを発現しない上記細胞型の細胞に対する上記薬物の効果と比較して低減される。
一実施形態においては、上記組成物は上記1以上の二次標的遺伝子の1以上のインヒビターを含む。ある好ましい実施形態においては、上記組成物は上記1以上の二次標的遺伝子を標的としかつサイレンシングする1以上の第2のsiRNAを含む。
一実施形態においては、上記1以上の第2のsiRNAは少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで上記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される。一実施形態においては、上記薬剤中の上記少なくともk種類の異なるsiRNAの全siRNA濃度は上記二次標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで上記最適濃度はさらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、上記最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である。他の実施形態においては、上記少なくともk種類の異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである。他の実施形態においては、上記少なくともk種類の異なるsiRNAのそれぞれの濃度は50%未満、20%未満、または10%未満だけお互いに異なる。さらに他の実施形態においては、上記薬剤中のいずれのsiRNAも上記異なるsiRNAの上記全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない。さらに他の実施形態においては、上記薬剤中の少なくとも1つのsiRNAが上記少なくともk種類の異なるsiRNAの上記全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する。さらに他の実施形態においては、上記薬剤中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度は、上記薬剤が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。
いくつかの実施形態においては、上記細胞型は癌細胞型であり、そして上記一次標的遺伝子はp53である。好ましい実施形態においては、上記多数の二次標的遺伝子は少なくとも5、10、100、1,000、および5,000からなる群から選択される数の異なる遺伝子を含む。
一実施形態においては、上記薬物はDNA損傷剤、例えば、トポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択されるDNA損傷剤である。特定の実施形態においては、上記DNA損傷剤はドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択される。
4.図面の簡単な説明
図面の簡単な説明は下記参照。
図面の簡単な説明は下記参照。
5.発明の詳細な説明
本発明は、相互作用、例えば、ある遺伝子またはその産物とある薬剤、例えば、ある薬物との間の致死/合成致死相互作用を、RNA干渉を用いて同定するための方法および組成物を提供する。本明細書で使用する用語「遺伝子産物」には、遺伝子から転写されたmRNAおよび遺伝子がコードするタンパク質が含まれる。本発明はまた、STK6キナーゼ(Aurora Aキナーゼとしても知られる)とKSP(キネシン様運動タンパク質、KNSL1またはEG5としても知られる)インヒビター(KSPi)との間の合成致死相互作用を利用して、癌を治療する方法および組成物を提供する。本発明の開示においては、KSPi、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-lH-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン
本発明は、相互作用、例えば、ある遺伝子またはその産物とある薬剤、例えば、ある薬物との間の致死/合成致死相互作用を、RNA干渉を用いて同定するための方法および組成物を提供する。本明細書で使用する用語「遺伝子産物」には、遺伝子から転写されたmRNAおよび遺伝子がコードするタンパク質が含まれる。本発明はまた、STK6キナーゼ(Aurora Aキナーゼとしても知られる)とKSP(キネシン様運動タンパク質、KNSL1またはEG5としても知られる)インヒビター(KSPi)との間の合成致死相互作用を利用して、癌を治療する方法および組成物を提供する。本発明の開示においては、KSPi、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-lH-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン
(本明細書に参照によりその全文が組み入れられる、2003年6月12日に出願されたPCT出願PCT/US03/18482を参照)をしばしば使用する。他のKSPiも本発明に使用することができる。かかる他のKSPiを利用する方法も本発明に包含されることを想定している。本発明はまた、DNA損傷応答遺伝子とDNA損傷剤の間の相互作用を利用して癌を治療する方法および組成物も提供する。
5.1.RNA干渉を用いて相互作用をスクリーニングする方法
本発明は、ある薬剤、例えば、ある薬物の効果と相互作用する、例えば、モジュレートするある細胞型の細胞中の1以上の遺伝子を同定する方法を提供する。本明細書で使用される「ある遺伝子のある薬剤または他の遺伝子との相互作用」には、遺伝子および/またはその産物と薬剤または他の遺伝子/遺伝子産物との相互作用が含まれる。例えば、同定された遺伝子はある薬物に対する耐性または感受性を与える、すなわち、その薬物の効果を低減または増強することができる。かかる遺伝子は、それぞれが多数の異なる遺伝子を標的とする多数の小干渉RNAを用いてその細胞型の細胞中の多数の異なる遺伝子をノックダウンし(ノックダウン細胞)、そして多数の異なる遺伝子のなかのどの遺伝子のノックダウンがその薬剤に対する細胞の応答をモジュレートするかを決定することにより同定することができる。一実施形態においては、そのノックダウンライブラリー中のそれぞれのノックダウン細胞が例えば、siRNAによりノックダウンされた異なる遺伝子を含むものである、多数の異なるノックダウン細胞(ノックダウンライブラリー)を作製する。他の実施形態においては、そのノックダウンライブラリー中のそれぞれのノックダウン細胞が例えば、異なる遺伝子を標的とするshRNAとsiRNAによりノックダウンされた2以上の異なる遺伝子を含むものである、多数の異なるノックダウン細胞(ノックダウンライブラリー)を作製する。一実施形態においては、ノックダウンライブラリーは、そのそれぞれが一次遺伝子を標的とするsiRNAを発現しかつ二次遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを用いてスーパートランスフェクトされている多数の細胞を含む。ノックダウン細胞はまた、他の方法、例えば、遺伝子またはその産物を標的とするアンチセンス、リボザイム、抗体、または小有機もしくは無機分子を用いることにより作製できることも当業者には明らかであろう。siRNAを利用するこれらの他の方法のいずれかを単独でまたは組み合わせて、本発明のノックダウンライブラリーを作製できることを想定している。siRNAサイレンシングのためのいずれの方法を使用してもよく、それには標的遺伝子のサイレンシングのレベルのチューニングを可能にする方法が含まれる。下記の第5.2.節に、使用することができる様々な方法を記載する。
本発明は、ある薬剤、例えば、ある薬物の効果と相互作用する、例えば、モジュレートするある細胞型の細胞中の1以上の遺伝子を同定する方法を提供する。本明細書で使用される「ある遺伝子のある薬剤または他の遺伝子との相互作用」には、遺伝子および/またはその産物と薬剤または他の遺伝子/遺伝子産物との相互作用が含まれる。例えば、同定された遺伝子はある薬物に対する耐性または感受性を与える、すなわち、その薬物の効果を低減または増強することができる。かかる遺伝子は、それぞれが多数の異なる遺伝子を標的とする多数の小干渉RNAを用いてその細胞型の細胞中の多数の異なる遺伝子をノックダウンし(ノックダウン細胞)、そして多数の異なる遺伝子のなかのどの遺伝子のノックダウンがその薬剤に対する細胞の応答をモジュレートするかを決定することにより同定することができる。一実施形態においては、そのノックダウンライブラリー中のそれぞれのノックダウン細胞が例えば、siRNAによりノックダウンされた異なる遺伝子を含むものである、多数の異なるノックダウン細胞(ノックダウンライブラリー)を作製する。他の実施形態においては、そのノックダウンライブラリー中のそれぞれのノックダウン細胞が例えば、異なる遺伝子を標的とするshRNAとsiRNAによりノックダウンされた2以上の異なる遺伝子を含むものである、多数の異なるノックダウン細胞(ノックダウンライブラリー)を作製する。一実施形態においては、ノックダウンライブラリーは、そのそれぞれが一次遺伝子を標的とするsiRNAを発現しかつ二次遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを用いてスーパートランスフェクトされている多数の細胞を含む。ノックダウン細胞はまた、他の方法、例えば、遺伝子またはその産物を標的とするアンチセンス、リボザイム、抗体、または小有機もしくは無機分子を用いることにより作製できることも当業者には明らかであろう。siRNAを利用するこれらの他の方法のいずれかを単独でまたは組み合わせて、本発明のノックダウンライブラリーを作製できることを想定している。siRNAサイレンシングのためのいずれの方法を使用してもよく、それには標的遺伝子のサイレンシングのレベルのチューニングを可能にする方法が含まれる。下記の第5.2.節に、使用することができる様々な方法を記載する。
一実施形態においては、本発明の方法は、多数のsiRNAの1つをそれぞれ含む多数のある細胞型の細胞を含んでなりかつ多数のsiRNAのそれぞれは細胞(すなわち、ノックダウン細胞)中の多数の異なる遺伝子の1つを標的としかつサイレンシング(すなわち、ノッキングダウン)するものである、siRNAノックダウンライブラリーを用いて実施する。siRNAを細胞中に導入するいずれの公知の方法をこの目的に用いてもよい。好ましくは、多数の細胞のそれぞれは別々に作製して維持し、別々に研究できるようにする。多数の細胞のそれぞれを次いである薬剤を用いて処置し、そして細胞に対するその薬剤の効果を決定する。次いでsiRNAによりサイレンシングされた遺伝子を含む細胞に対するその薬剤の効果を、siRNAを含まないその細胞型の細胞、すなわち、その細胞型の正常細胞に対する薬剤の効果と比較する。その薬剤に応答する変化を示すノックダウン細胞を同定する。かかるノックダウン細胞中の含まれるsiRNAによりサイレンシングされる遺伝子は、その薬剤の効果をモジュレートする遺伝子である。好ましくは、多数のsiRNAは、その細胞中の少なくとも5、10、100、または1,000種類の異なる遺伝子を標的としてサイレンシングするsiRNAを含む。ある好ましい実施形態においては、多数のsiRNAは内在性遺伝子を標的としかつサイレンシングする。
好ましい実施形態においては、ノックダウンライブラリーは、ノックダウンされた同じ遺伝子を有する多数の異なるノックダウン細胞を含む、例えば、それぞれの細胞は同じ遺伝子を標的としかつサイレンシングする異なるsiRNAを有する。ノックダウンされた同じ遺伝子を有する多数の異なるノックダウン細胞は、そのそれぞれがそのノックダウン遺伝子の異なる領域を標的とするsiRNAを含む少なくとも2、3、4、5、6または10個の異なるノックダウン細胞を含むことができる。他の好ましい実施形態においては、ノックダウンライブラリーは、ノックダウンライブラリー中に表される多数の異なる遺伝子のそれぞれに対して、多数の、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、または10個の異なるノックダウン細胞を含む。さらに他の好ましい実施形態においては、ノックダウンライブラリーは、ノックダウンライブラリー中に表される全ての異なる遺伝子のそれぞれに対して多数の、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、または10個の異なるノックダウン細胞を含む。
他の好ましい実施形態においては、ノックダウンライブラリーは、異なるノックダウン細胞のそれぞれが同じ遺伝子を標的としかつサイレンシングする2以上の異なるsiRNAを有する多数の異なるノックダウン細胞を含む。好ましい実施形態においては、それぞれの異なるノックダウン細胞は同じ遺伝子の異なる領域を標的とする少なくとも2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含むことができる。
ある好ましい実施形態においては、ある遺伝子のある薬剤との相互作用は、ノックダウンされた遺伝子を有する多数の異なるノックダウン細胞、例えば、同じ遺伝子を標的としかつサイレンシングする異なるsiRNAを有するそれぞれの細胞の免疫応答に基づいて評価される。多数の異なるsiRNAの応答を利用すれば、異なるsiRNAの標的とする(on-target)および標的としない(off-target)効果を確認することができる(例えば、2004年5月17日に出願されたJacksonらによる国際特許出願第PCT/US2004/015439号を参照)。
ある細胞型の細胞に対する薬剤の効果はノックダウン細胞においてその細胞型の正常細胞のそれと比較して低減されうる、すなわち、その遺伝子のノックダウンはその薬剤の効果を軽減する。かかる細胞においてノックダウンされた遺伝子は、その薬剤に対する感受性を与えると言われる。従って、一実施形態においては、本発明の方法はある薬剤に対する感受性を与える1以上の遺伝子を同定するために使用される。
ある細胞型の細胞に対する薬剤の効果はノックダウン細胞においてその細胞型の正常細胞のそれと比較して増強されうる。かかる細胞においてノックダウンされた遺伝子は、その薬剤に対する耐性を与えると言われる。従って、他の実施形態においては、本発明の方法はある薬剤に対する耐性を与える1以上の遺伝子を同定するために使用される。ある薬剤の効果の増強は相加性であってもまたは相乗性であってもよい。一実施形態においては、本発明は癌細胞中の抗癌薬、例えばKSPインヒビターの増殖抑制効果を調節および/または増強することができる1以上の遺伝子を同定する方法を提供する。
本発明の方法を用いて多数の異なる薬剤を評価することができる。例えば、後掲の第5.4.2.節に記載した多数の異なるDNA損傷剤に対する感受性を本発明の方法により評価することができる。ある好ましい実施形態においては、多数の異なる薬剤のそれぞれに対するノックダウンライブラリー中のそれぞれのノックダウン細胞の感受性を評価して、それぞれのノックダウン細胞に対するそれぞれの薬剤の効果の測定値を含む二次元応答性マトリックスを作製する。ある特定の遺伝子指数における遺伝子軸におけるカットは、異なる薬物に対する特定のノックダウン細胞(特定の遺伝子がノックダウンされた細胞)の応答プロファイルを与える。ある特定の薬物における薬物軸のカットは、その薬物に対する遺伝子応答性、すなわち、ノックダウンライブラリー中の異なるノックダウン細胞に対する薬物の効果の測定値を含むプロファイルを与える。表IIA-IICはシスプラチン(表IIA)、カンプトセシン(表IIB)、およびドキソルビシン(表IIC)に対する遺伝子応答性の例である。
本発明の方法を用いて、遺伝子の発現および/または遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する、例えば、抑制または増強する薬剤を用いることにより、異なる遺伝子間の相互作用を同定することができる。かかる薬剤の例としては、限定されるものでないが、遺伝子またはその産物を標的とするsiRNA、アンチセンス、リボザイム、抗体、および小有機または無機分子が挙げられる。かかる薬剤が標的とする遺伝子を一次標的と呼ぶ。かかる薬剤をノックダウンライブラリーと併用して、その薬剤に対する細胞の応答をモジュレートする遺伝子を同定することができる。一次標的はノックダウンライブラリーに表される多数の遺伝子のいずれか(二次遺伝子)と異なってもよい。その薬剤の効果をモジュレートするとして同定された遺伝子は、それ故に、一次標的と相互作用する遺伝子である。
ある好ましい実施形態においては、本発明は、二重siRNA手法を利用して異なる遺伝子間の相互作用を同定する方法を提供する。ある好ましい実施形態においては、二重RNAiスクリーニングは、一次標的遺伝子を破壊するshRNAのin vivo送達および二次標的遺伝子を標的とするsiRNAのスーパートランスフェクションを利用して達成する。この手法はマッチした(同質遺伝子の)培養細胞株対(+または−shRNA)を提供し、shRNAとsiRNAの間の競合を生じない。本方法において、短ヘアピンRNA(shRNA)は、導入された組換えベクターから発現され、一過的または安定的にゲノム中に組み込まれる(例えば、Paddisonら, 2002, Genes Dev 16:948-958;Suiら, 2002, Proc Natl Acad Sci USA 99:5515-5520;Yuら, 2002, Proc Natl Acad Sci USA 99:6047-6052;Miyagishiら, 2002, Nat Biotechnol 20:497-500;Paulら, 2002, Nat Blotechnol 20:505-508;Kwakら, 2003, J Phannacol Sci 93:214-217;Brummelkampら, 2002, Science 296:550-553;Bodenら, 2003, Nucleic Acids Res 31:5033-5038;Kawasakiら, 2003, Nucleic Acids Res 31:700-707を参照)。一次遺伝子を破壊するsiRNAはshRNAをコードするいずれかの好適なベクターにより(shRNA経由で)発現させることができる。ベクターはまた、クローンを選択するために用いることができるマーカーをコードしてもよく、クローン中のベクターまたはその十分な部分は宿主ゲノムに組み込まれてshRNAを発現する。いずれかの当技術分野で公知の標準的方法を用いてベクターを細胞中に送達することができる。一実施形態においては、shRNAを発現する細胞は、そのベクターを含有するプラスミドを用いて好適な細胞をトランスフェクトすることにより作製する。細胞を次いで好適なマーカーにより選択することができる。クローンを次いで拾い、ノックダウンについて試験する。ある好ましい実施形態においては、shRNAの発現は誘導プロモーターの制御下にあり、標的遺伝子のサイレンシングを所望のときにスイッチオン(turn on)できるようにする。siRNAの誘導発現は必須の遺伝子を標的とするために特に有用である。
一実施形態においては、shRNAの発現は調節されたプロモーターの制御下にあり、標的遺伝子のサイレンシングレベルのチューニングを可能にする。これによって標的遺伝子が部分的にノックアウトされた細胞に対するスクリーニングが可能になる。本明細書で使用する「調節されたプロモーター」は、適当な誘導剤が存在するときに活性化することができるプロモーターを意味する。「誘導剤(inducing agent)」は、調節されたプロモーターを活性化することにより転写を活性化するために利用できるいずれの分子であってもよい。誘導剤は、限定されるものでないが、ペプチドまたはポリペプチド、ホルモン、または有機小分子であってもよい。誘導剤の類似体、すなわち、誘導剤のように調節されたプロモーターを活性化する分子も利用することができる。異なる類似体により誘導される調節されたプロモーターの活性レベルは異なりうる、従って、調節されたプロモーターの活性レベルのチューニングにさらにフレキシビリティを持たせることができる。ベクター中の調節されたプロモーターは、当技術分野で公知のいずれかの哺乳動物転写調節系であってもよい(例えば、Gossenら, 1995, Science 268:1766-1769;Lucasら, 1992, Annu. Rev. Biochem. 61:1131;Liら, 1996, Cell 85:319-329;Saezら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:14512-14517;およびPollockら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13221-13226を参照)。好ましい実施形態においては、調節されたプロモーターは投与および/または類似体に応じた方法で調節する。一実施形態においては、調節されたプロモーターが応答する誘導剤の濃度を調節するステップを含む方法により、調節されたプロモーターの活性レベルを所望のレベルにチューニングする。誘導剤の特定の濃度を適用することにより得られる、調節されたプロモーターの活性の所望のレベルは、標的遺伝子の所望のサイレンシングレベルに基づいて決定することができる。
一実施形態においては、テトラサイクリン調節性遺伝子発現系を用いる(例えば、Gossenら, 1995, Science 268: 1766-1769;米国特許第6,004,941号を参照)。tet調節系は原核生物のtetリプレッサー/オペレーター/インデューサー系の成分を利用して真核生物細胞中の遺伝子発現を調節する。従って、本発明は1以上のtetオペレーター配列と連結したshRNAの発現を調節するtet調節系を利用する方法を提供する。本方法は、細胞中に、転写を活性化する融合タンパク質をコードするベクターを導入することに関わる。融合タンパク質は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体の存在のもとで、細胞内の転写を活性化する第2のポリペプチドと機能しうる形で連結されたtetオペレーター配列と結合する第1のポリペプチドを含む。テトラサイクリン、またはテトラサイクリン類似体の濃度をモジュレートすることにより、tetオペレーターと連結したshRNAの発現が調節される。
他の実施形態においては、エクジソン(ecdyson)調節遺伝子発現系(例えば、Saezら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:14512-14517を参照)、またはMMTVグルココルチコイド応答配列調節遺伝子発現系(例えば、Lucasら, 1992, Annu. Rev. Biochem. 61:1131を参照)を用いてshRNAの発現を調節することができる。
一実施形態においては、ピューロマイシン耐性マーカーをコードしかつH1(RNA Pol III)プロモーターからshRNA発現を駆動するpRETRO-SUPER(pRS)ベクターを使用する。pRS-shRNAプラスミドは当技術分野で公知のいずれかの標準の方法により作製することができる。一実施形態においては、pRS-shRNAは、選んだ遺伝子のライブラリープラスミドプールから、そのプールを用いて細菌を形質転換して目的のプラスミドだけを含有するクローンを探すことによって解きほぐす。好ましくは、19量体のsiRNA配列を、好適なフォワードおよびリバースプライマーとともに用いて配列特異的PCRを行う。プラスミドを配列特異的PCRにより同定し、そして配列決定により確認する。shRNAを発現する細胞は、好適な細胞をpRS-shRNAプラスミドを用いてトランスフェクトすることにより作製する。細胞は適当なマーカー、例えば、ピューロマイシンにより選択し、そしてコロニーが明確になるまで維持する。次いでクローンを拾ってノックダウンについて試験する。
他の実施形態においては、shRNAをプラスミド、例えば、pRS-shRNAにより発現させる。pRS-shRNAプラスミドによるノックダウンは、細胞をリポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトすることにより達成することができる。
ある好ましい実施形態においては、マッチした培養細胞株(+/−一次標的遺伝子)を、空pRSベクターまたはpRS-shRNAのいずれかを含有する安定なクローンを選択することにより作製する。
次いで二次標的遺伝子のサイレンシングを、作製したshRNA一次標的クローンの細胞を用いて行う。二次標的遺伝子のサイレンシングはRNA干渉のいずれかの公知の方法(例えば、第5.2.節を参照)を用いて行うことができる。例えば、二次標的遺伝子をsiRNAおよび/またはshRNAをコードするプラスミドを用いるトランスフェクションによりサイレンシングすることができる。一実施形態においては、作製したshRNA一次標的クローンの細胞を、二次標的遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを用いてスーパートランスフェクトする。一実施形態においては、二次遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを細胞中に直接トランスフェクトする。他の実施形態においては、二次遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを、1以上の好適なプラスミドを用いてshRNA経由で細胞中に直接トランスフェクトする。RNAをトランスフェクションおよびノックダウンの24時間後に収穫してTaqMan分析により試験することができる。ある好ましい実施形態においては、二次標的遺伝子の異なる配列領域を標的とする少なくともk(k=2、3、4、5、6または10)種類の異なるsiRNAを含有するsiRNAプールを用いて細胞をスーパートランスフェクトする。他の好ましい実施形態においては、2以上の異なる二次標的遺伝子を標的とする少なくともk(k=2、3、4、5、6または10)種類の異なるsiRNAを含有するsiRNAプールを用いて細胞をスーパートランスフェクトする。
ある好ましい実施形態においては、プールの全siRNA濃度は個々に用いるときの単一siRNAの濃度、例えば、100nMとほぼ同じである。好ましくは、siRNAのプールの全濃度は、意図する標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度である。最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である。一実施形態においては、最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを5%、10%または20%を超えて増加することのない濃度である。ある好ましい実施形態においては、プール中の異なるsiRNAの数およびそれぞれの異なるsiRNAの濃度を含む、プールの組成は、siRNAのプールがいずれかの標的としない遺伝子の30%、20%、10%または5%、1%、0.1%または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる。他の好ましい実施形態においては、異なるsiRNAのプール中のそれぞれの異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである。さらに他の好ましい実施形態においては、プール中の異なるsiRNAのそれぞれの濃度はお互いに5%、10%、20%または50%未満だけ異なる。さらに他の好ましい実施形態においては、少なくとも異なるsiRNAのプール中の1つのsiRNAはプール中の全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成する。さらに他の好ましい実施形態においては、異なるsiRNAのプール中のいずれのsiRNAもプール中の全siRNA濃度の90%、80%、70%、50%、または20%を超えて構成しない。他の実施形態においては、プール中のそれぞれのsiRNAは個々に用いるときの最適濃度より低い濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、プール中のそれぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いるときに少なくとも30%、50%、75%、80%、85%、90%または95%のサイレンシングを達成するのに有効であるsiRNAの濃度より低い濃度を有する。他の好ましい実施形態においては、プール中のそれぞれの異なるsiRNAは、他のsiRNAの不在のもとでまたはその遺伝子をサイレンシングするために設計された他のsiRNAの不在のもとで用いる
ときに遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%未満引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは、単独に用いるときに標的遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%未満引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシングを引き起こす。
ときに遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%未満引き起こす濃度を有する。ある好ましい実施形態においては、それぞれのsiRNAは、単独に用いるときに標的遺伝子のサイレンシングを30%、20%、10%または5%未満引き起こす濃度を有する一方、多数のsiRNAは標的遺伝子の少なくとも80%または90%のサイレンシングを引き起こす。
一実施形態においては、本発明は一次標的遺伝子と合成致死相互作用を表す1以上の遺伝子を同定する方法を提供する。本方法においては、その細胞型中の一次標的遺伝子のインヒビターである薬剤を用いてあるノックダウンライブラリーに対してスクリーニングする。薬剤の効果を増強すると同定された遺伝子は、従って、一次標的と合成致死相互作用を有する遺伝子である。ある好ましい実施形態においては、その薬剤は一次標的を標的としかつサイレンシングするsiRNAである。
細胞に対するある薬剤の効果を測定する方法は、評価する特定の効果に依存する。例えば、薬剤が抗癌薬であり、そして評価すべき効果がその薬物の増殖抑制効果であれば、MTTアッセイまたはalamarBlueアッセイを用いることができる(例えば、第5.2節を参照)。当業者は、評価すべき具体的な効果に基づいて当技術分野で公知の方法を選ぶことができるであろう。
他の実施形態においては、本発明は一次標的遺伝子およびサイレンシングされた二次標的遺伝子を有する細胞の増殖に対するある薬剤の効果を決定する方法を提供する。ある好ましい実施形態においては、マッチした培養細胞株(+/−一次標的遺伝子)を上に記載のように作製する。次いで両方の培養細胞株を、対照siRNA(例えば、ルシフェラーゼ)または二次標的遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを用いてスーパートランスフェクトする。細胞周期プロファイルを、その薬剤への曝露ありまたはなしで試験する。細胞周期分析は当技術分野で公知の標準的方法(第5.2.節、後掲を参照)を用いて行うことができる。一実施形態においては、それぞれのウエルからの上清を、トリプシン処理により収穫しておいた細胞と組み合わせる。次いで混合物を好適な速度にて遠心分離する。次いで細胞を氷冷70%エタノールを用いて好適な時間、例えば、〜30分間、固定する。固定した細胞を、PBSを用いて1回洗浄し、例えば、ヨウ化プロピジウム(10μg/ml)およびRNase A(1mg/ml)を含有するPBS 0.5mlに再懸濁し、そして好適な温度、例えば37℃にて、好適な時間、例えば30分間、インキュベートすることができる。フローサイトメトリー分析はフローサイトメーターを用いて行う。一実施形態においては、サブG1細胞集団を用いて細胞死を測定する。細胞中の一次標的遺伝子とサイレンシングされた二次標的遺伝子を有する細胞中のサブG1細胞集団の増加は、その薬剤の存在のもとでの一次と二次標的遺伝子の間の合成致死を示す。
特定の実施形態においては、本発明は、そのノックダウンが腫瘍細胞に対するKSPインヒビターの増殖抑制効果を増強する遺伝子を同定する方法を提供する。一実施形態においては、本方法を用いて、そのノックダウンがサブ最適濃度、すなわち、EC10より低い濃度のKSPiの存在のもとで腫瘍細胞増殖を抑制する遺伝子を同定した。一実施形態においては、次の11種類の遺伝子:CDC20、ROCK2、TTK、FZR1、BUB1、BUB3、BUB1B、MAD1L1、MAD2L1、DNCH1およびSTK6のそれぞれを標的とする3種類のsiRNAを含有するsiRNAノックダウンライブラリーを作製して使用した(表1を参照)。これらのsiRNAのそれぞれをHeLa細胞中に、<EC10濃度(25nM)のKSPi、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン(2003年6月12日に出願されたPCT出願PCT/US03/18482を参照)(EC50〜80nM)の存在または不在のもとでトランスフェクトし、そして細胞の応答を確認した。STK6に対する1つのsiRNA(STK6-1)が、KSPiの存在のもとで腫瘍細胞増殖の有意な抑制を示した。
増殖抑制活性をさらに3つのさらなるSTK6に対するsiRNAを用いて試験し、全てのsiRNAのSTK6サイレンシングおよび増殖抑制を誘導する能力を評価した。異なるsiRNAの間で、STK6サイレンシングのレベルと増殖抑制の間には良い相関があった(図1)。この相関は、増殖抑制が標的活性(すなわち、STK6破壊)に因ることを示唆した。次いでSTK6-1をルシフェラーゼを標的とする対照siRNA(ネガティブ対照)を用いて、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン(2003年6月12日に出願されたPCT出願PCT/US03/18482に記載)の存在または不在のもとで滴定した(図2)。KSPiを加えると、STK6-1用量反応曲線は〜5-10倍、左へシフトした。この濃度のKSPiはルシフェラーゼsiRNAにより引き起こされる細胞増殖に対する効果を増加しなかった。対照的に、細胞増殖に対してSTK6-1と類似の効果をもつPTENを標的とするsiRNAに対する用量反応曲線はKSPiによってシフトされなかった。STK6を標的とする他のsiRNAも細胞増殖に対するKSPiの効果を増強した。従って、STK6の破壊は細胞増殖に対するKSPiの効果を増強する。これに対するさらなる支持は、STK6に対するsiRNAとKSPの組み合わせを用いる研究により得られ(表1)、この組み合わせはいずれのsiRNA単独より大きい増殖抑制活性を示した。これらの実験に用いたKSPiの濃度はそれ自体では細胞増殖に影響を与えなかったので、STK6 siRNA活性に対するKSPiの効果は相加的というよりも相乗的であると思われた。
他の特定の実施形態においては、本発明はp53とCHEK1の間の合成致死を決定する方法を提供する。サイレンシングされたp53遺伝子を有する安定なクローンを作製した。pRS-TP53 1026 shRNAプラスミドはTP53のライブラリープラスミドプールから、細菌を上記プールを用いて形質転換して目的のプラスミドだけを含有するクローンを探すことによって解きほぐした。使用した配列は次の通りである:pRS-p53 1026 19量体配列:GACTCCAGTGGTAATCTAC(配列番号43);配列特異的PCR用のプライマー:フォワード:GTAGATTACCACTGGAGTC(配列番号44)、リバース:CCCTTGAACCTCCTCGTTCGACC(配列番号45)。プラスミドは配列特異的PCRにより同定し、配列決定により確認した。安定なp53-クローンは、HCT116細胞をFuGENE 6(Roche)を用いてそのpRS-TP53 1026プラスミドによりトランスフェクトすることにより作製した。細胞を10cmディッシュ中に分割し、48時間後に1 ug/ml ピューロマイシンを加え、そしてコロニーが明確になるまで(5-7日)維持した。クローンを96ウエルプール中に拾い、1ug/mlピューロマイシン中で維持し、そしてTaqMan分析によりTP53およびhGUSプレデベロップアッセイ試薬(Pre-Developed Assay Reagent)(Applied Biosystems)を用いて、ノックダウンについて試験した。pRS-TP53 1026プラスミドによる一過性ノックダウンを測定するために、HCT116細胞をリポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトし、そしてRNAを24時間後に収穫した。TP53転写物レベルをTaqMan分析により試験した。
大腸腫瘍培養細胞株HCT116から誘導された多重ピューロマイシン耐性TP53 shRNAクローン(pRS-p53)の分析は、様々な標的サイレンシングのレベルを示した(50%〜96%、TaqManによる測定値)。図3は、最高レベルのサイレンシングを示したクローンA5およびA11におけるTP53発現のレベルを示す。これらのクローンで達成されたTP53サイレンシングは、一過性トランスフェクションによるpRS-p53のHCT116細胞中への送達後24時間に観察されたレベルを超えた(図3)。トランスフェクション効率が一過性アッセイにおけるTP53 shRNAの有効性を限定する可能性がある。あるいは、より高いTP53サイレンシングのレベルを有する細胞はクローン増殖の間、増殖が有利である。STK6を標的とするshRNA(pRS-STK6:pRS-STK6 2178 19量体配列:CATTGGAGTCATAGCATGT(配列番号46))を用いて、安定なクローンにおけるある範囲のサイレンシングも観察した。しかし、これらのクローンはTP53培養細胞株で観察された高度のサイレンシングを達成しなかったし、サイレンシングは一過性アッセイで達成されたレベルより大きくなかった。これは、STK6は培養中の腫瘍細胞増殖にとって必須の遺伝子であるので、高度のSTK6サイレンシングに対する選択が行われたことを示しうる。
HCT116クローンA11のTP53サイレンシングがsiRNAと競合するかどうかを試験するために、このクローンの細胞を、CHEK1特異的siRNAのプールを用いてスーパートランスフェクトした。CHK1プールは次の3種類のsiRNAを含有する:CUGAAGAAGCAGUCGCAGUTT(配列番号99);AUCGAUUCUGCUCCUCUAGTT(配列番号98);およびUGCCUGAAAGAGACUUGUGTT(配列番号100)。このsiRNAプールは、TP53を標的とするsiRNAのサイレンシング活性を競合して低減することが分かっていた。siRNAを、オリゴフェクトアミン(Oligofectamine)(Invitrogen)を用いて、示したように10nMまたは100nMにてトランスフェクトした。CHK1プールについては、3種類のsiRNAを同時に、それぞれ33.3nM、全送達100nMにてトランスフェクトした。RNAをトランスフェクションおよびノックダウンの24時間後に収穫し、TaqMan分析によりCHK1またはTP53およびhGUSプレデベロップアッセイ試薬(Pre-Developed Assay Reagent)(Applied Biosystems)を用いて試験した。図4Aに示すように、shRNAとsiRNAプールはお互いの標的のサイレンシングを抑制しなかった。一過的にトランスフェクトされたsiRNAまたは同じ配列の安定して発現されたshRNAのいずれかの、公知の競合性siRNAによる抑制を次いで試験した。図4Bに示すように、KNSL1(KNSLI 210:GACCUGUGCCUUUUAGAGATT(配列番号47);KNSLI 211:GACUUCAUUGACAGUGGCCTT(配列番号48);KNSLI 212:AAAGGACAACUGCAGCUACTT(S配列番号49))を標的とする3つの個々のsiRNAは、同時トランスフェクトされたSTK6を標的とするsiRNAにより達成されるサイレンシングを競合して抑制した(左のバー)。対照的に、安定してトランスフェクトした培養細胞株の相同性STK6 shRNAによるサイレンシングは、競合するsiRNAを10倍高い濃度で加えたとき(中央および右のバー)ですらKNSLI siRNAのスーパートランスフェクションによる影響を受けなかった。これらの実験は、安定して発現されたshRNAと一過的にトランスフェクトされたsiRNAの間の競合は少ししかないことを示唆した。これは、別のmRNAを標的とする2つの異なるsiRNAが一緒にトランスフェクトされたときに、お互いに競合して使用したsiRNAの片方または両方の効果を低減するという観察と対照的である。pRSとpRS-p53 HCT116細胞を、〜800種類の遺伝子に対するsiRNAプールを用いて一過的にトランスフェクトし(実施例3を参照、後掲)、そして細胞に対する効果をAlamar Blue アッセイにより測定した。pRS細胞とpRS-p53細胞における〜800個のsiRNAプールに対する応答はほぼ同等であって、サイレンシングの競合抑制の徴候はないことが観察された。
次に、CHEK1 siRNAプールの、TP53 shRNAを安定して発現する細胞中のへのスーパートランスフェクションを評価して、これらの分子間の遺伝相互作用(SL)を研究するために利用できないかを確認した。マッチした培養細胞株+/−TP53発現物を、空pRSベクターまたはpRS-p53を含有するA549肺癌培養細胞株の安定なクローンを選択することにより作製した。後者の細胞はTP53 mRNAの>90%のサイレンシングを示した。次いで両方の培養細胞株を、対照ルシフェラーゼsiRNA(luc、100nM)またはCHEK1 siRNAプール(全100nM;3つのsiRNAをそれぞれ33nM)を用いてスーパートランスフェクトし、そしてこれらの細胞周期プロファイルをDNA損傷剤、ドキソルビシンへの曝露ありまたはなしで試験した(Dox、図5))。pRS-p53細胞の細胞周期プロファイルは、Dox不在のもとでのpRS細胞のプロファイルとそれほど異なるものではなかった。CHEK1 siRNAの一過性トランスフェクションもDox不在のもとでの細胞周期プロファイルに影響を与えなかった。しかし、Dox存在のもとでは、pRS-トランスフェクトされた細胞は、機能性TP53を発現する細胞に予想されるG1およびG2/M停止を表した。CHEK1 siRNAのスーパートランスフェクションは、G2チェックポイントのオーバーライドおよびG1でブロックされた細胞数の増加をもたらした。細胞はTP53機能を保持するので、細胞はG1で停止してS期に戻って進行することはなかった。
対照的に、pRS-p53細胞は、Dox処置に応答してG1で停止する能力を失い、主にG2で停止し、G1チェックポイントにおけるTP53の役割に一貫性があった。pRS-p53細胞の細胞周期プロファイルはluc siRNAのスーパートランスフェクションによって変化しなかった(図5)。luc siRNAがTP53応答の部分的回復(および対応するG1ピークの増加)すら引き起こすことができないのは、このsiRNAによるTP53サイレンシングおよび表現型の競合抑制が少ししかないことを示唆する。それ故に、CHEK1 siRNAプールによるTP53サイレンシングの競合抑制が存在するとは予想されなかった。実際、Dox処置に応答して、CHEK1を用いて一過的にトランスフェクトされたpRS-p53細胞は、その細胞周期プロファイルに、S期の細胞の画分の大きい増加とサブG1(死滅細胞)量のDNAを伴う著しい変化を示した。類似の知見はまた、pRSとpRS-p53で安定してトランスフェクトされたHCT116細胞にも観察された。従ってTP53が介在するG1チェックポイントとCHEK1が介在するG2チェックポイントの同時破壊は、TP53−細胞に致死性であるが、TP53+腫瘍細胞に致死性でない。
他の実施形態においては、本発明は、p53とBRCC複合体のメンバー、例えば、BRCA1、BRCA2、BARD1およびRAD51の間の合成致死を確認する方法を提供する。この実施形態においては、TP53を標的とする短いヘアピンRNA(shRNA)の安定な発現により作製されたTP53ポジティブおよびネガティブ細胞のマッチした対を用いた。TP53ポジティブまたはネガティブ細胞を、BRCA1またはBRCA2に対するsiRNAプールを用いてスーパートランスフェクトし、シスプラチンを用いて処置し、そしてAlamar Blueを用いて細胞増殖を分析した(図20)。TP53ネガティブ細胞のシスプラチンに対する感受性は、BRCA1またはBRCA2 siRNAを用いてトランスフェクトしたとき(IC50〜0.1nM)に、対照siRNAを用いてトランスフェクトしたとき(ルシフェラーゼ、IC50〜1nM)より〜10倍高かった。BRCA1またはBRCA2破壊後のシスプラチンに対する感作は、低いシスプラチン濃度においてより著しかった。TP53ポジティブ細胞は、BRCA1またはBRCA2破壊後のシスプラチンに対する感作がより低かった(IC50〜0.4nM)。このアッセイにおいて、BRCA1またはBRCA2破壊後のシスプラチンに対する感作はCHEK1の破壊後に見られる感作と量的に類似した(データは示してない)。BRCA1またはBRCA2破壊後のDNA損傷剤に対する感作も、細胞周期分析を用いて研究することができる。TP53ポジティブおよびネガティブ細胞を、BRCA1またはBRCA2に対するsiRNAプールを用いてスーパートランスフェクトし、いくつかのDNA損傷剤(シスプラチン、カンプトセシン、ドキソルビシンおよびブレオマイシン)の1つを用いて処置し、そしてフローサイトメトリーにより細胞周期分布を分析した。全事例において、TP53ネガティブ細胞は、BRCA1またはBRCA2破壊後に、DNA損傷に対して、ルシフェラーゼ-トランスフェクトした細胞より感受性があった(データは示してない)。これらの細胞のBRCA1破壊後のブレオマイシンに対する応答を図21に示した。BRCA1破壊は、TP53ネガティブのブレオマイシン処置後に、TP53ポジティブ細胞より多くのサブG1細胞(死滅細胞)を生じた。この結果は、TP53を欠く細胞はBRCA1破壊後にDNA損傷に対してより感受性が高いことを示す。
使用する培養細胞株はHeLa細胞、TP53ポジティブA549細胞またはTP53ネガティブA549細胞であってもよい。一実施形態においては、TP53ポジティブとネガティブ細胞のマッチした対を、TP53を標的とする短ヘアピンRNA(shRNA)の安定なトランスフェクションにより作製した(monthly highlt highlight, Nov. 2003)。細胞をsiRNAのプール(1遺伝子当たりsiRNA 3個のプール)100nMにて(それぞれのsiRNAを33nMにて)または単一siRNA 100nMにて用いてトランスフェクトした。次のsiRNAを使用した:Luc対照、BRCA1、BRCA2およびBARD1プール。これらのトランスフェクトされた細胞を次いで様々な濃度のDNA損傷剤を用いて処置した。細胞周期分析に用いたそれぞれの薬剤の濃度は次の通りである:HeLa細胞に対して、ドキソルビシン(10nM)、カンプトセシン(6nM)、シスプラチン(400ng/ml)、マイトマイシンC(40nM)、ブレオマイシン(100ng/ml);他の培養細胞株に対して、ドキソルビシン(200nM)、カンプトセシン(200nM)、シスプラチン(2ug/ml)、マイトマイシンC(400nM)、ブレオマイシン(5ug/ml)。
一実施形態においては、siRNAトランスフェクションを次の通り行った:トランスフェクションの1日前に、2000(または100)μlの選んだ培養細胞株、例えば、DMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)中でほぼ90%集密度まで増殖した子宮頚癌HeLa細胞(ATCC、Cat. No. CCL-2)を、6ウエル(または96-ウエル)組織培養プレートに45,000(または2000)細胞/ウエルにてまいた。それぞれのトランスフェクションに対して、OptiMEM(Invitrogen)70μlを20μMストックからのsiRNA(Dharmacon、Lafayette、CO)5μlと混合した。それぞれのトランスフェクションに対して、20μlのOptiMEM(Invitrogen)の一部分を5μlのオリゴフェクトアミン試薬(Invitrogen)と混合して5分間、室温でインキュベートした。次いでOptiMEM/オリゴフェクトアミン混合物25μlをOptiMEM/siRNA混合物75μlと混合し、そして15-20分間、室温にてインキュベートした。トランスフェクション混合物100(または10)μlを6-ウエル(または96-ウエル)プレートのそれぞれのウエル中にアリコートし、そして4時間37℃にて5%CO2のもとでインキュベートした。
4時間後、100μl/ウエルのDMEM/10%ウシ胎児血清をDNA損傷剤ありまたはDNA損傷剤なしでそれぞれのウエルに加え、上記のそれぞれの薬剤の最終濃度とした。プレートを37℃にて5%CO2のもとでさらに68時間インキュベートした。6-ウエルプレートからのサンプルを細胞周期プロファイルについて分析しかつ96-ウエルプレートからのサンプルを細胞増殖についてAlamar Blueアッセイを用いて分析した。
細胞周期分析のために、それぞれのウエルからの上清をトリプシン処理により収穫した細胞と組み合わせた。次いで混合物を1200rpmにて5分間遠心分離した。細胞を氷冷70%エタノールを用いて〜30分間固定した。固定した細胞をPBSを用いて1回洗浄し、ヨウ化プロピジウム(10μg/ml)およびRNase A(1mg/ml)を含有する0.5mlのPBSに再懸濁しそして37℃にて30分間インキュベートした。フローサイトメトリー分析はFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて行い、データはFlowJoソフトウエア(Tree Star、Inc)を用いて分析した。サブG1細胞集団を用いて細胞死を測定した。もし(siRNA+DMSO)サンプルと(Luc+薬物)サンプルからのサブG1集団の和が(siRNA+薬物)サンプルのサブG1集団より大きければ、本発明者らはsiRNAサイレンシングのDNA損傷に対する感作と定義する。
Alamar Blueアッセイについては、96-ウエルプレートから培地を除去し、そして10%(vol/vol)alamarBlue試薬(BioSource International、Inc)を含有する完全培地100uL/ウエルおよび1M Hepesバッファー組織培養試薬1/100容積を加えた。次いでプレートを1-4時間37℃にてインキュベートし、蛍光を544nmにて励起しかつ590nmにて発光をSPECTRAMax Gemini-Xs 分光蛍光光度計(Molceular Devices)により検出することにより測定した。蛍光シグナルをバックグラウンド(無細胞)に対して補正した。DNA損傷剤の存在のもとでの細胞応答(生存)を、DNA損傷剤の不在のもとでの対照細胞増殖の百分率として測定した。
5.2.RNA干渉と細胞アッセイのための方法および組成物
遺伝子サイレンシングのためのいずれかの標準的方法を本発明に用いることができる(例えば、Guoら, 1995, Cell 81:611-620;Fireら, 1998, Nature 391:806-811;Grant, 1999, Cell 96:303-306;Tabaraら, 1999, Cell 99:123-132;Zamoreら, 2000, Cell 101:25-33;Bass, 2000, Cell 101:235-238;Petcherskiら, 2000, Nature 405:364-368;Elbashirら, Nature 411:494-498;Paddisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:1443-1448を参照)。ある遺伝子を標的とするsiRNAは当技術分野で公知の方法により設計することができる(例えば、Jacksonらにより2004年5月17日に出願された米国仮特許出願第60/572,314号、およびElbashirら, 2002, Methods 26:199-213を参照、それぞれ本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)。
遺伝子サイレンシングのためのいずれかの標準的方法を本発明に用いることができる(例えば、Guoら, 1995, Cell 81:611-620;Fireら, 1998, Nature 391:806-811;Grant, 1999, Cell 96:303-306;Tabaraら, 1999, Cell 99:123-132;Zamoreら, 2000, Cell 101:25-33;Bass, 2000, Cell 101:235-238;Petcherskiら, 2000, Nature 405:364-368;Elbashirら, Nature 411:494-498;Paddisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:1443-1448を参照)。ある遺伝子を標的とするsiRNAは当技術分野で公知の方法により設計することができる(例えば、Jacksonらにより2004年5月17日に出願された米国仮特許出願第60/572,314号、およびElbashirら, 2002, Methods 26:199-213を参照、それぞれ本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)。
標的遺伝子に対して部分的配列相同性しか有しないsiRNAも使用することができる(例えば、Jacksonらにより2004年5月17日に出願された国際特許出願第PCT/US2004/015439号を参照、これは本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)。一実施形態においては、ある遺伝子の転写物の配列と同一である11-18個のヌクレオチドのセンス鎖コンティグヌクレオチド配列(contiguous nucleotide sequence)を含むが転写物の配列と全長相同性を有しないsiRNAを、その遺伝子をサイレンシングするために用いる。好ましくは、コンティグヌクレオチド配列はsiRNA分子の中央域にある。siRNA分子の中央域のコンティグヌクレオチド配列は3'末端に始まらないsiRNAのヌクレオチド配列のいずれの連続伸長部であってもよい。例えば、11個ヌクレオチドのコンティグヌクレオチド配列はヌクレオチド配列2-12、3-13、4-14、5-15、6-16、7-17、8-18、または9-19であってもよい。好ましい実施形態においては、コンティグヌクレオチド配列は11-16、11-15、14-15、11、12、または13個のヌクレオチドの長さである。
他の実施形態においては、ある遺伝子の転写物の配列と同一である9-18個のヌクレオチドの3'センス鎖コンティグヌクレオチド配列を含むが転写物の配列と全長相同性を有しないsiRNAを、その遺伝子をサイレンシングするために用いる。本出願においては、3' 9-18ヌクレオチド配列は第1対合塩基で始まるヌクレオチドのコンティグ伸長部である、すなわち、これは3'オーバーハングの2塩基を含まない。従って、ある特定のヌクレオチド配列がsiRNAの3'末端にあると表明するとき、3'オーバーハングの2塩基は考慮されない。好ましい実施形態においては、コンティグヌクレオチド配列は9-16、9-15、9-12、11、10、または9個のヌクレオチドの長さである。
当技術分野で公知のいずれかの方法を用いて、RNA干渉を行うことができる。一実施形態においては、遺伝子サイレンシングを、細胞にダイサー切断の産物を模擬するsiRNAを提供することにより誘導する(例えば、Elbashirら, 2001, Nature 411,494-498;Elbashirら, 2001, Genes Dev. 15,188-200を参照、これらの全ては参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。合成siRNA2本鎖はRISCと会合する能力を維持してmRNA転写物のサイレンシングを指令する。siRNAは化学的に合成するか、または組換えダイサーにより2本鎖RNAの切断から誘導することができる。当技術分野で公知の標準的方法を用いて、細胞をsiRNAによりトランスフェクトすることができる。
一実施形態においては、siRNAトランスフェクションを次の通り行う:トランスフェクションの1日前に、100μlの選んだ培養細胞株、例えば、DMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)中でほぼ90%集密度まで増殖した子宮頚癌HeLa細胞(ATCC、Cat. No. CCL-2)を、96-ウエル組織培養プレート(Corning、Coming、NY)に1500細胞/ウエルにてまく。それぞれのトランスフェクションに対して、OptiMEM(Invitrogen)85μlを20μMストックから連続希釈したsiRNA(Dharmacon、Denver)5μlと混合する。それぞれのトランスフェクションに対して、OptiMEM 5μlをオリゴフェクトアミン試薬(Invitrogen)5μlと混合して5分間室温にてインキュベートする。OptiMEM/オリゴフェクトアミン混合物10μlをOptiMEM/siRNA 混合物とともにそれぞれのチューブ中に配って、混合し、そして15-20分間室温にてインキュベートする。トランスフェクション混合物10μlを、96ウエルプレートのそれぞれのウエル中にアリコートし、4時間37℃および5%CO2にてインキュベートする。
他の遺伝子サイレンシングの方法はshRNA、すなわち短ヘアピンRNA(short hairpin RNA)(例えば、Paddisonら, 2002, Genes Dev. 16, 948-958;Brummelkampら, 2002, Science 296, 550-553;Sui, G.ら 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99,5515-5520を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)を導入することであり、このshRNAは細胞内でsiRNAにプロセシングされうる。この方法では所望のsiRNA配列を、プラスミド(またはウイルス)から介在ループ配列をもつ逆方向反復配列として発現させてヘアピン構造を形成させる。得られるヘアピンを含有するRNA転写物は、続いてダイサーによりプロセシングされてサイレンシングのためのsiRNAを産生する。プラスミドに基づくshRNAは細胞内で安定して発現することができるので、in vitroおよびin vivo両方の細胞内で、例えば動物内で長期間の遺伝子サイレンシングを可能にする(McCaffreyら 2002, Nature 418,38-39;Xiaら, 2002, Nat. Biotech. 20,1006-1010;Lewisら, 2002, Nat. Genetics 32, 107-108;Rubinsonら, 2003, Nat. Genetics 33,401- 406;Tiscorniaら, 2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 1844-1848を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。従って、一実施形態においては、プラスミドに基づくshRNAを使用する。
ある好ましい実施形態においては、shRNAは一過的にまたはゲノム中に安定的に組み込まれて導入され、組換えベクターから発現される(例えば、Paddisonら, 2002, Genes Dev 16:948-958;Suiら, 2002, Proc Natl Acad Sci USA 99:5515-5520;Yuら, 2002, Proc Natl Acad Sci USA 99:6047-6052;Miyagishiら, 2002, Nat Biotechnol 20:497-500;Paulら, 2002, Nat Biotechnol 20:505-508;Kwakら, 2003, J Phannacol Sci 93:214-217;Brummelkampら, 2002, Science 296:550-553;Bodenら, 2003, Nucleic Acids Res 31:5033-5038;Kawasakiら, 2003, Nucleic Acids Res 31:700-707を参照)。標的遺伝子を破壊するsiRNAは、shRNAをコードするいずれかの好適なベクターによって発現させることができる(shRNA経由で)。ベクターはまたマーカーをコードしてもよく、そのマーカーを利用してベクターまたはその十分な部分が宿主ゲノムに組み込まれてshRNAが発現されるクローンを選択することができる。いずれの当技術分野で公知の標準的方法を利用してベクターを細胞中に送達してもよい。一実施形態においては、shRNAを発現する細胞は、好適な細胞をベクターを含有するプラスミドによりトランスフェクトして作製する。細胞を次いで適当なマーカーにより選択することができる。クローンを次いで拾い、ノックダウンについて試験する。ある好ましい実施形態においては、shRNAの発現は誘導プロモーターの制御下にあり、標的遺伝子のサイレンシングを所望のときにスイッチオンすることができる。siRNAの誘導発現は必須の遺伝子を標的とするために特に有用である。
一実施形態においては、shRNAの発現は調節されたプロモーターの制御下にあり、標的遺伝子のサイレンシングレベルのチューニングを可能にする。これにより、標的遺伝子が部分的にノックアウトされた細胞に対するスクリーニングが可能になる。本明細書で使用する、「調節されたプロモーター」は、適当な誘導剤が存在するときに活性化できるプロモーターを意味する。「誘導剤」は、調節されたプロモーターを活性化することにより転写を活性化するために利用することができるいずれかの分子である。誘導剤は、限定されるものでないが、ペプチドまたはポリペプチド、ホルモン、または有機小分子であってもよい。誘導剤の類似体、すなわち、誘導剤と同じように、調節されたプロモーターを活性化する分子も使用することができる。異なる類似体により誘導される調節されたプロモーターの活性レベルは異なってもよく、このようにして調節されたプロモーターの活性レベルのチューニングのさらなるフレキシビリティが可能である。ベクター中の調節されたプロモーターは当技術分野で公知のいずれの哺乳動物の転写調節系であってもよい(例えば、Gossenら, 1995, Science 268:1766-1769;Lucasら, 1992, Annu. Rev. Biochem. 61:1131;Liら, 1996, Cell 85:319-329;Saezら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:14512-14517;およびPollockら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13221-13226を参照)。好ましい実施形態においては、調節されたプロモーターは投与量および/または類似体に依存する方法で調節される。一実施形態においては、調節されたプロモーターの活性レベルは、調節されたプロモーターが関わる誘導剤の濃度を調節することを含む方法により所望のレベルにチューニングされる。誘導剤の特定の濃度を適用することにより得られる調節されたプロモーターの活性の所望レベルは、標的遺伝子の所望のサイレンシングレベルに基づいて決定することができる。
一実施形態においては、テトラサイクリン調節性遺伝子発現系を用いる(例えば、Gossenら, 1995, Science 268:1766-1769;米国特許第6,004,941号を参照)。tet調節系は原核生物のtetリプレッサー/オペレーター/インデューサー系の成分を利用して真核生物細胞中の遺伝子発現を調節する。従って、本発明は1以上のtetオペレーター配列と連結したshRNAの発現を調節するtet調節系を使用する方法を提供する。本方法は、細胞中に、転写を活性化する融合タンパク質をコードするベクターを導入することに関わる。融合タンパク質は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体の存在のもとで細胞内で転写を活性化する第2のポリペプチドと機能しうる形で連結されたtetオペレーター配列と結合する第1のポリペプチドを含む。テトラサイクリン、またはテトラサイクリン類似体の濃度を調節することによりオペレーターと連結されたshRNAの発現を調節する。
他の実施形態においては、エクジソン(ecdyson)調節遺伝子発現系(例えば、Saezら, 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:14512-14517を参照)、またはMMTVグルココルチコイド応答配列調節遺伝子発現系(例えば、Lucasら, 1992, Annu. Rev. Biochem. 61:1131を参照)を用いてshRNAの発現を調節することができる。
一実施形態においては、ピューロマイシン耐性マーカーをコードしかつHI(RNA Pol III)プロモーターからshRNA発現を駆動するpRETRO-SUPER(pRS)ベクターを使用する。pRS-shRNAプラスミドは当技術分野で公知のいずれかの標準的方法により作製することができる。一実施形態においては、pRS-shRNAは、選んだ遺伝子のライブラリープラスミドプールから、そのプールを用いて細菌を形質転換して目的のプラスミドだけを含有するクローンを探すことによって解きほぐす。好ましくは、19量体のsiRNA配列を、好適なフォワードおよびリバースプライマーとともに用いて配列特異的PCRを行う。プラスミドを配列特異的PCRにより同定し、そして配列決定により確認する。shRNAを発現する細胞は、好適な細胞をpRS-shRNAプラスミドを用いてトランスフェクトすることにより作製する。細胞は適当なマーカー、例えば、ピューロマイシンにより選択し、そしてコロニーが明確になるまで維持する。次いでクローンを拾い、そしてノックダウンについて試験する。他の実施形態においては、shRNAをプラスミド、例えば、pRS-shRNAにより発現させる。pRS-shRNAプラスミドによるノックダウンは、Lipofectamien 2000(Invitrogen)を用いて細胞をトランスフェクトすることにより達成することができる。
さらに他の方法においては、siRNAを、動物、例えばヒトの器官または組織にin vivoで送達することができる(例えば、Songら 2003, Nat. Medicine 9, 347-351;Sorensenら, 2003, J. Mol. Biol. 327,761-766;Lewisら, 2002, Nat. Genetics 32,107-108を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。この方法においては、siRNAの溶液を動物中に静脈内に注入する。siRNAは次いで目的の器官または組織に到達し、そして動物の器官または組織中の標的遺伝子の発現を効果的に低減する。
当技術分野で公知のいずれかの好適な増殖または増殖抑制アッセイを、細胞増殖を試験するために利用することができる。ある好ましい実施形態においては、MTT増殖アッセイ(例えば、van de Loosdrechet,ら, 1994, J. Immunol. Methods 174:311-320;Ohnoら, 1991, J. Immunol. Methods 145:199-203;Ferrariら, 1990, J. Immunol. Methods 131:165-172;Alleyら, 1988, Cancer Res. 48:589-601;Carmichaelら, 1987, Cancer Res. 47:936-942;Gerlierら, 1986, J. Immunol. Methods 65:55-63;Mosmann, 1983, J. Immunological Methods 65:55-63を参照)を用いて細胞の増殖を抑制する1以上の薬剤の効果を試験する。細胞を1以上の候補薬の選んだ濃度を用いて選ばれた時間、例えば、4〜72時間、処置する。細胞を次いで好適な量の3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)とともに選んだ時間、例えば、1-8時間インキュベートすると、生存細胞はMTTを不溶性ホルマザンの細胞内沈着物に転化する。上清に含有される過剰のMTTを除去した後に、好適なMTT溶媒、例えば、DMSO溶液を加えてホルマザンを溶解する。生存細胞数に比例するMTTの濃度を、次いで例えば570nmにおける光学密度を定量することにより測定する。多数の異なる濃度の候補薬剤を試験することにより、50%抑制を引き起こす候補薬剤の濃度の決定が可能である。
他の好ましい実施形態においては、細胞増殖用alamarBlueアッセイを用いて細胞の増殖を抑制するために使用することができる1以上の候補薬をスクリーニングする(例えば、Pageら, 1993, Int. J. Oncol. 3:473-476を参照)。alamarBlueTMアッセイは細胞呼吸を測定してそれを生存細胞数の基準として用いる。増殖細胞の内部環境は非増殖細胞の内部環境より還元状態にある。例えば、NADPH/NADP、FADH/FAD、FMNH/FMN、およびNADH/NAFの比は増殖中、増加する。alamarBlueはこれらの代謝中間物により還元されうるので、細胞増殖をモニターすることができる。alamarBlueにより測定した処置サンプルの細胞数を、非処置対照サンプルの細胞数と比較して百分率で表すことができる。alamarBlue還元は吸収または蛍光分光法により測定することができる。一実施形態においては、alamarBlue還元を吸光により定量し、次式:
[式中、
λ1=570nm
λ2=600nm
(εredλ1)=155,677(570nmにおける還元されたalamarBlueのモル吸光係数)
(εredλ2)=14,652(600nmにおける還元されたalamarBlueのモル吸光係数)
(εoxλ1)=80,586(570nmにおける酸化されたalamarBlueのモル吸光係数)
(εoxλ2)=117,216(600nmにおける酸化されたalamarBlueのモル吸光係数)
(Aλ1)=570nmにおける試験ウエルの吸光度
(Aλ2)=600nmにおける試験ウエルの吸光度
(A'λ1)=570nmにおける、培地+alamarBlueを含有するが細胞は加えられてないネガティブ対照ウエルの吸光度
(A'λ2)=600nmにおける、培地+alamarBlueを含有するが細胞は加えられてないネガティブ対照ウエルの吸光度]
を用いて、還元百分率として計算する。好ましくは、バックグラウンドを越える還元%を決定するために、細胞を含有しないウエルの還元%をサンプルを含有するウエルの還元%から差引いた。
λ1=570nm
λ2=600nm
(εredλ1)=155,677(570nmにおける還元されたalamarBlueのモル吸光係数)
(εredλ2)=14,652(600nmにおける還元されたalamarBlueのモル吸光係数)
(εoxλ1)=80,586(570nmにおける酸化されたalamarBlueのモル吸光係数)
(εoxλ2)=117,216(600nmにおける酸化されたalamarBlueのモル吸光係数)
(Aλ1)=570nmにおける試験ウエルの吸光度
(Aλ2)=600nmにおける試験ウエルの吸光度
(A'λ1)=570nmにおける、培地+alamarBlueを含有するが細胞は加えられてないネガティブ対照ウエルの吸光度
(A'λ2)=600nmにおける、培地+alamarBlueを含有するが細胞は加えられてないネガティブ対照ウエルの吸光度]
を用いて、還元百分率として計算する。好ましくは、バックグラウンドを越える還元%を決定するために、細胞を含有しないウエルの還元%をサンプルを含有するウエルの還元%から差引いた。
細胞周期分析は、当技術分野で公知の標準的方法を用いて行うことができる。一実施形態においては、それぞれのウエルからの上清をトリプシン処理により収穫しておいた細胞と組み合わせる。次いで混合物を好適な速度にて遠心分離する。次いで細胞を例えば、氷冷70%エタノールを用いて好適な時間、例えば、〜30分間固定する。固定した細胞を、PBSを用いて1回洗浄し、そして例えば、ヨウ化プロピジウム(10μg/ml)およびRNaseA(1mg/ml)を含有するPBS 0.5ml中に再懸濁し、そして好適な温度、例えば37℃、好適な時間、例えば30分間インキュベートすることができる。フローサイトメトリー分析を、次いでフローサイトメーターを用いて行う。一実施形態においては、サブG1細胞集団を細胞死の基準として用いる。例えば、もしある薬剤を用いて処置したサンプルからのサブG1集団サンプルが、その薬剤を用いて処置しなかったサンプルからのサブG1集団サンプルより大きければ、その細胞はその薬剤に感作したと言う。
5.3.KSP相互作用遺伝子とその産物の用途
本発明は、KSPと相互作用する遺伝子(「KSP相互作用遺伝子」)、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子、その産物および抗体を、KSP相互作用遺伝子またはタンパク質と相互作用するタンパク質または他の分子を同定するために利用する方法および組成物を提供する。好ましい実施形態においては、本発明は、かかるKSP相互作用遺伝子としてSTK6もしくはTPX2遺伝子を提供する。本発明はまた、KSP相互作用遺伝子の発現を調節するかまたはKSP相互作用遺伝子またはタンパク質の他のタンパク質または分子との相互作用をモジュレートする薬剤をスクリーニングするために、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子、産物および抗体を利用する方法および組成物を提供する。本発明はさらに、細胞または生物内でKSPインヒビター(KSPi)の増殖抑制効果に対する耐性を調節する上でおよび/またはKSPインヒビターの増殖抑制効果を増強する上で有用な薬剤をスクリーニングするために、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子、産物および抗体を利用する方法および組成物を提供する。本発明はまた、KSP相互作用遺伝子が介在するKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性を診断し、そしてKSPインヒビターを用いる療法と一緒に疾患を治療するために、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子、産物および抗体を利用する方法および組成物を提供する。
本発明は、KSPと相互作用する遺伝子(「KSP相互作用遺伝子」)、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子、その産物および抗体を、KSP相互作用遺伝子またはタンパク質と相互作用するタンパク質または他の分子を同定するために利用する方法および組成物を提供する。好ましい実施形態においては、本発明は、かかるKSP相互作用遺伝子としてSTK6もしくはTPX2遺伝子を提供する。本発明はまた、KSP相互作用遺伝子の発現を調節するかまたはKSP相互作用遺伝子またはタンパク質の他のタンパク質または分子との相互作用をモジュレートする薬剤をスクリーニングするために、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子、産物および抗体を利用する方法および組成物を提供する。本発明はさらに、細胞または生物内でKSPインヒビター(KSPi)の増殖抑制効果に対する耐性を調節する上でおよび/またはKSPインヒビターの増殖抑制効果を増強する上で有用な薬剤をスクリーニングするために、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子、産物および抗体を利用する方法および組成物を提供する。本発明はまた、KSP相互作用遺伝子が介在するKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性を診断し、そしてKSPインヒビターを用いる療法と一緒に疾患を治療するために、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子、産物および抗体を利用する方法および組成物を提供する。
5.3.1.KSP相互作用遺伝子またはその産物と相互作用するタンパク質または他の分子を決定する方法
タンパク質-タンパク質相互作用を検出するのに好適ないずれかの方法を用いて、KSP相互作用タンパク質、例えば、STK6もしくはTPX2タンパク質の他の細胞タンパク質との相互作用を同定することができる。KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子と他の細胞分子の間の相互作用、例えば、KSP相互作用遺伝子とそのレギュレーターの間の相互作用はまた、当技術分野で公知の方法を用いて決定することもできる。
タンパク質-タンパク質相互作用を検出するのに好適ないずれかの方法を用いて、KSP相互作用タンパク質、例えば、STK6もしくはTPX2タンパク質の他の細胞タンパク質との相互作用を同定することができる。KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子と他の細胞分子の間の相互作用、例えば、KSP相互作用遺伝子とそのレギュレーターの間の相互作用はまた、当技術分野で公知の方法を用いて決定することもできる。
使用し得る伝統的方法には、免疫共沈降、架橋と勾配またはクロマトグラフィカラムを介する同時精製がある。これらの方法を利用するとKSP相互作用遺伝子産物と相互作用する細胞タンパク質の同定が可能になる。かかる細胞タンパク質を一旦単離すると、同定することができ、順に、標準の技法を一緒に用いてKSP相互作用遺伝子産物が相互作用するタンパク質を同定することができる。例えば、KSP相互作用遺伝子産物と相互作用する細胞タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部分を、Edman分解技法経由などの当業者に周知の技法を用いて確認することができる(例えば、Creighton, 1983,「タンパク質:構造と分子的原理(Proteins: Structures and Molecular Principles)」, W.H. Freeman & Co., N.Y., pp.34-49を参照)。得られるアミノ酸配列を手引きとして、かかる細胞タンパク質をコードする遺伝子配列をスクリーニングするために利用しうるオリゴヌクレオチド混合物を作製することができる。スクリーニングは、例えば、標準のハイブリダイゼーションまたはPCR技法により達成することができる。オリゴヌクレオチド混合物の作製およびスクリーニングの技法は周知である(例えば、Ausubel, 前掲、および「PCRプロトコル:方法および応用への手引き(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)」, 1990, Innis, M.ら, 編. Academic Press, Inc., New Yorkを参照)。
さらに、KSP相互作用タンパク質と相互作用する細胞タンパク質をコードする遺伝子を同時同定する方法を利用することができる。これらの方法としては、例えば、KSP相互作用タンパク質を周知のλgt11ライブラリーの抗体プロービングの技法と類似の方法で用いて、標識したKSP相互作用タンパク質により発現ライブラリーをプロービングする技法が挙げられる。
タンパク質相互作用をin vivoで検出する一方法、ツーハイブリッド系を詳しく記載するが、これは説明のためだけであって限定するものではない。この系の1つのバージョンは記載されていて(Chienら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:9578-9582)かつClontech(Palo Alto、CA)から市販されている。
手短に言えば、かかる系の利用は、2つのハイブリッドタンパク質をコードするプラスミドを構築する:1つは、KSP相互作用遺伝子産物と融合した転写アクチベータータンパク質のDNA結合ドメインから構成され、そして他の1つは、cDNAライブラリーの一部分としてこのプラスミド中に組み換えられたcDNAがコードする未知のタンパク質と融合した転写アクチベータータンパク質の活性化ドメインから構成される。DNA結合ドメイン融合プラスミドとcDNAライブラリーを、その調節領域が転写アクチベーター結合部位を含有するレポーター遺伝子(例えば、HBSまたはlacZ)を含有する酵母サッカロミセス・セレビジエ(Saccharonayces cerevisiae)の菌株中に形質転換する。いずれのハイブリッドタンパク質も単独ではレポーター遺伝子の転写を活性化することはできない:DNA結合ドメインハイブリッドは活性化機能を与えることができないしそして活性化ドメインハイブリッドはアクチベーター結合部位に局在することができないからである。2つのハイブリッドタンパク質の相互作用は機能性のアクチベータータンパク質を再構成し、レポーター遺伝子産物に対するアッセイによって検出されるレポーター遺伝子の発現をもたらす。
ツーハイブリッド系または関連する方法論を用いて、「ベイト(bait)」遺伝子産物と相互作用するタンパク質に対する活性化ドメインライブラリーをスクリーニングすることができる。例としてであって、限定するものではないが、KSP相互作用遺伝子産物をベイト遺伝子産物として用いることができる。全ゲノムまたはcDNA配列を活性化ドメインをコードするDNAと融合させる。このライブラリーとDNA結合ドメインと融合したベイトKSP相互作用遺伝子産物のハイブリッドをコードするプラスミドを酵母レポーター菌株中に同時形質転換し、そして得られる形質転換体をレポーター遺伝子を発現するものについてスクリーニングする。例えば、限定するものでなく、ベイトKSP相互作用遺伝子配列、例えばKSP相互作用遺伝子のコード配列を、GAL4タンパク質のDNA結合ドメインをコードするDNAと翻訳上融合するように、ベクター中にクローニングすることができる。これらのコロニーを精製し、レポーター遺伝子発現に関わるライブラリープラスミドを単離する。DNA配列決定を利用して次いでライブラリープラスミドによりコードされたタンパク質を同定する。
ベイトKSP相互作用遺伝子産物と相互作用するタンパク質を検出するための培養細胞株のcDNAライブラリーは、当技術分野で日常的に行われる方法を利用して作ることができる。本明細書に記載の特定の系によれば、例えば、そのcDNA断片を、GAL4の転写活性化ドメインと翻訳上融合するようにベクター中に挿入することができる。このライブラリーをベイトKSP相互作用遺伝子-GAL4融合プラスミドとともに、GAL4活性化配列を含有するプロモーターにより駆動されるlacZ遺伝子を含有する酵母菌株中に同時形質転換することができる。ベイトKSP相互作用遺伝子産物と相互作用する、GAL4転写活性化ドメインと融合したcDNAにコードされたタンパク質は、活性GAL4タンパク質を再構成し、それによりHIS3遺伝子の発現を駆動しうる。HIS3を発現するコロニーは、ヒスチジンを欠く培地に基づく半固体寒天を含有するペトリディッシュ上でそれらを増殖させて検出することができる。次いでcDNAをこれらの菌株から精製し、そしてこれらを用い、当技術分野で日常的に行われる技法を利用してベイトKSP相互作用遺伝子-相互作用タンパク質を産生させて単離することができる。
KSP相互作用遺伝子とそのレギュレーターの間の相互作用は、当技術分野で公知の標準的方法により確認することができる。
5.3.2.薬剤をスクリーニングする方法
本発明は、KSP相互作用タンパク質、例えば、STK6もしくはTPX2の発現を調節するかまたは他のタンパク質または分子との相互作用をモジュレートする薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
本発明は、KSP相互作用タンパク質、例えば、STK6もしくはTPX2の発現を調節するかまたは他のタンパク質または分子との相互作用をモジュレートする薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
5.3.2.1.スクリーニングアッセイ
次のアッセイは、KSP相互作用遺伝子または遺伝子産物と結合する、KSP相互作用遺伝子産物と相互作用する他の細胞タンパク質と結合する、KSP相互作用遺伝子産物の影響を受ける細胞構成成分、例えば、タンパク質と結合する、またはKSP相互作用遺伝子もしくは遺伝子産物の他の細胞タンパク質との相互作用に干渉する化合物と結合する化合物、およびKSP相互作用遺伝子の活性をモジュレートする(すなわち、STK6もしくはTPX2遺伝子発現のレベルをモジュレートするおよび/またはSTK6もしくはTPX2遺伝子産物の活性レベルをモジュレートする)化合物を同定するために設計した。さらに、KSP相互作用遺伝子調節配列(例えば、プロモーター配列)と結合する化合物を同定するアッセイ(例えば、Platt、K. A.、1994、J. Biol. Chem. 269: 28558-28562を参照、これは本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)およびKSP相互作用遺伝子の発現のレベルをモジュレートできるアッセイを利用することができる。化合物としては、限定されるものでないが、KSP相互作用遺伝子またはKSP相互作用遺伝子を含む経路に関わるいくつかの他の遺伝子の発現に影響を与えうる小有機分子、または他の細胞タンパク質が挙げられる。かかる細胞タンパク質を同定する方法は、先の第5.3.1.節に記載している。かかる細胞タンパク質はKSPインヒビターの増殖抑制効果の調節に関わりうる。さらに、これらの化合物の中には、KSP相互作用遺伝子の発現のレベルおよび/またはその遺伝子産物の活性に影響を与えかつKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性を調節するのに用いることができる化合物がある。
次のアッセイは、KSP相互作用遺伝子または遺伝子産物と結合する、KSP相互作用遺伝子産物と相互作用する他の細胞タンパク質と結合する、KSP相互作用遺伝子産物の影響を受ける細胞構成成分、例えば、タンパク質と結合する、またはKSP相互作用遺伝子もしくは遺伝子産物の他の細胞タンパク質との相互作用に干渉する化合物と結合する化合物、およびKSP相互作用遺伝子の活性をモジュレートする(すなわち、STK6もしくはTPX2遺伝子発現のレベルをモジュレートするおよび/またはSTK6もしくはTPX2遺伝子産物の活性レベルをモジュレートする)化合物を同定するために設計した。さらに、KSP相互作用遺伝子調節配列(例えば、プロモーター配列)と結合する化合物を同定するアッセイ(例えば、Platt、K. A.、1994、J. Biol. Chem. 269: 28558-28562を参照、これは本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)およびKSP相互作用遺伝子の発現のレベルをモジュレートできるアッセイを利用することができる。化合物としては、限定されるものでないが、KSP相互作用遺伝子またはKSP相互作用遺伝子を含む経路に関わるいくつかの他の遺伝子の発現に影響を与えうる小有機分子、または他の細胞タンパク質が挙げられる。かかる細胞タンパク質を同定する方法は、先の第5.3.1.節に記載している。かかる細胞タンパク質はKSPインヒビターの増殖抑制効果の調節に関わりうる。さらに、これらの化合物の中には、KSP相互作用遺伝子の発現のレベルおよび/またはその遺伝子産物の活性に影響を与えかつKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性を調節するのに用いることができる化合物がある。
化合物としては、限定されるものでないが、ペプチド、例えば、可溶性ペプチド、限定されるものでないがIg仕立ての(Ig-tailed)融合ペプチド、およびランダムペプチドライブラリーのメンバーを含む;(例えば、Lam, K.S.ら, 1991, Nature 354:82-84;Houghten, R.ら, 1991, Nature 354:84-86を参照)、およびD-および/またはL-コンフィギュレーションアミノ酸で作製されたコンビナトリアル化学誘導分子ライブラリー、ホスホペプチド(限定されるものでないが、ランダムまたは部分的に変性された、向性(directed)ホスホペプチドライブラリーのメンバーを含む;例えば、Songyang, Z.ら, 1993, Cell 72:767-778を参照)、抗体(限定されるものでないが、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラまたは1本鎖抗体、およびFAb、F(ab')2およびFAb発現ライブラリーフラグメント、およびそれらのエピトープ結合フラグメントを含む)、ならびに小有機または無機分子が挙げられる。
本明細書に記載のようなアッセイを介して同定された化合物は、例えば、KSP相互作用遺伝子産物の生物学的機能を調節するのに、およびKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性を改善するのにおよび/またはKSPインヒビターの増殖抑制効果を増強するのに有用でありうる。化合物の有効性を試験するアッセイは以下の第5.3.2.2.節において考察した。
本発明のKSP相互作用遺伝子産物と結合することができる化合物を同定するためのin vitro系を設計することができる。同定された化合物は、例えば、KSP相互作用遺伝子産物の野生型および/または変異体の活性をモジュレートするのに有用でありうるし、KSP相互作用遺伝子産物の生物学的機能を作り上げるのに有用でありうるし、正常なKSP相互作用遺伝子産物相互作用を破壊する化合物を同定するスクリーニングに利用しうるし、またはかかる相互作用をそれら自体が破壊しうる。
KSP相互作用遺伝子産物と結合する化合物を同定するために用いるアッセイの原理は、KSP相互作用遺伝子産物と試験化合物の反応混合物を調製し、2成分が相互作用しかつ結合する条件下で十分な時間をかけて複合体を生成させ、それを取り出すおよび/または反応混合物中で検出することに関わる。これらのアッセイは様々な方法で実施することができる。例えば、かかるアッセイを実施する1つの方法は、KSP相互作用遺伝子産物または試験物質を固相上に固着し、そして固相上に固着されたKSP相互作用遺伝子産物/試験化合物複合体を反応終期に検出することに関わりうる。かかる方法の一実施形態においては、KSP相互作用遺伝子産物を固体表面上に固着し、そして固着されてない試験化合物を直接または間接的に標識することができる。
実施に当たっては、マイクロタイタープレートを便宜上固相として利用することができる。固着される成分は非共有結合または共有結合により固定することができる。非共有結合は単に固体表面をタンパク質の溶液を用いてコーティングして乾燥することにより実施することができる。あるいは、固定すべきタンパク質に特異的な固定した抗体、好ましくはモノクローナル抗体を用いて、タンパク質を固体表面に固着することができる。上記表面は予め調製して貯蔵してもよい。
アッセイを実施するために、非固定成分を、固着された成分を含有するコーティングされた表面に加える。反応が完了した後に、生成したいずれかの複合体が固体表面上に固定されて残りうる条件下で、未反応成分を除去する(例えば、洗浄により)。固体表面上に固着された複合体の検出はいくつかの方法で実施することができる。先に非固定の成分が前標識されている場合、表面上に固定された標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。先に非固定の成分が前標識されてない場合、間接的標識を用いて、表面上に固着された複合体を検出することができる;例えば、先に非固定の成分に対して特異的な標識した抗体を用いる(抗体を、順に、直接的に標識するかまたは間接的に標識した抗Ig抗体を用いて標識することができる)。
あるいは、反応を液相で行い、反応生成物を未反応成分から分離し、そして複合体を検出することができる;例えば、KSP相互作用遺伝子産物または試験化合物に特異的な固定した抗体を用いて溶液中で生成したいずれかの複合体を固着し、そして可能性のある複合体の他成分に特異的な標識された抗体を用いて固着された複合体を検出する。
KSP相互作用遺伝子または遺伝子産物はin vivoで1以上の細胞内または細胞外分子、例えばタンパク質と相互作用しうる。かかる分子には、限定されるものでないが、先の第節5.3.1.に記載した方法を介して同定された核酸分子およびそれらのタンパク質が含まれうる。これを考察するために、かかる分子を本明細書では「結合パートナー」と呼ぶ。KSP相互作用遺伝子産物の結合を破壊する化合物は、KSP相互作用遺伝子産物の活性を調節するのに有用でありうる。KSP相互作用遺伝子産物の結合を破壊する化合物は、KSP相互作用遺伝子のレギュレーターの結合を調節することにより、KSP相互作用遺伝子の発現を調節するのに有用でありうる。かかる化合物には、限定されるものでないが、例えば、先の第5.3.2.1.節に記載したKSP相互作用遺伝子産物に接近しうる分子、例えばペプチドなどが含まれる。
KSP相互作用遺伝子産物とその細胞内または細胞外結合パートナーの間の相互作用に干渉する化合物を同定するために利用するアッセイ系の基本原理は、KSP相互作用遺伝子産物と結合パートナーを含有する反応混合物を調製し、両方が相互作用しかつ結合する条件下で十分な時間、複合体を生成させることに関わる。ある化合物を抑制活性について試験するには、反応混合物を試験化合物の存在および不在のもとで調製する。試験化合物は最初に反応混合物に含まれていてもよいし、またはKSP相互作用遺伝子産物およびその結合パートナーを付加した後のある時点で加えてもよい。対照反応混合物は試験化合物なしでまたはプラセボとともにインキュベートする。次いでKSP相互作用タンパク質と結合パートナーの間の複合体の生成を検出する。対照反応物中で複合体が生成するが試験化合物を含有する反応混合物中で生成しないことは、その化合物がKSP相互作用タンパク質と相互作用結合パートナーの相互作用に干渉することを示す。さらに、試験化合物および正常なKSP相互作用タンパク質を含有する反応混合物内での複合体生成を、試験化合物と突然変異KSP相互作用タンパク質を含有する反応混合物内での複合体生成と比較することもできる。この比較は、突然変異体の相互作用を破壊するが正常なKSP相互作用タンパク質の相互作用を破壊しない化合物を同定することが所望される場合に、重要でありうる。
KSP相互作用遺伝子産物と結合パートナーの相互作用に干渉する化合物のアッセイを不均一または均一フォーマットで実施することができる。不均一アッセイは、KSP相互作用遺伝子産物または結合パートナーを固相上に固着し、そして固相上に固着された複合体を反応終期に検出することに関わる。均一アッセイでは、全反応を液相中で行う。いずれの手法においても、反応物の添加順序を変えて試験する化合物について異なる情報を得ることができる。例えば、KSP相互作用遺伝子産物と結合パートナーの間の相互作用に、例えば、競合により干渉する試験化合物は、試験物質の存在のもとで反応を実施することにより;すなわち、試験物質を、KSP相互作用タンパク質および相互作用結合パートナーの前にまたはと同時に反応混合物に加えることにより同定することができる。あるいは、前生成した複合体を破壊する試験化合物、例えば、複合体からその成分の1つを置換える高い結合定数をもつ化合物を、複合体が生成された後に、試験化合物を反応混合物に加えることにより試験することができる。様々なフォーマットを以下に手短に記載する。
不均一アッセイ系では、KSP相互作用遺伝子産物または相互作用結合パートナーのいずれかを固体表面上に固着する一方、固着しない化学種を直接的にまたは間接的に標識する。実施においては、マイクロタイタープレートを便宜上使用する。固着される化学種は、非共有結合または共有結合により固定することができる。非共有結合は単に固体表面をKSP相互作用遺伝子産物または結合パートナーの溶液を用いてコーティングして乾燥することにより実施することができる。あるいは、固着する化学種に特異的な固定した抗体を用いて化学種を固体表面に固着することができる。表面は予め調製して貯蔵してもよい。
アッセイを実施するために、固定された化学種のパートナーを試験化合物と共にまたは無しでコーティングされた表面に曝す。反応が完了した後に、未反応成分を除去すると(例えば、洗浄により)、いずれかの生成した複合体が固体表面上に固定されて残りうる。固体表面上に固着された複合体の検出はいくつかの方法で実施することができる。非固定の化学種が前標識されている場合、表面上に固定された標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。非固定の化学種が前標識されてない場合、間接的標識を用いて、表面上に固着された複合体を検出することができる;例えば、最初に非固定の化学種に対して特異的な標識した抗体を用いる(抗体を、順に、直接的に標識するかまたは標識した抗Ig抗体を用いて間接的に標識することができる)。反応成分の添加順序に応じて、複合体生成を抑制するかまたは前生成した複合体を破壊する試験化合物を検出することができる。
あるいは、試験化合物の存在または不在のもとで、反応を液相で行い、反応生成物を未反応成分から分離し、そして複合体を検出することができる;例えば、結合成分の1つに特異的な固定した抗体を用いて溶液中で生成したいずれかの複合体を固着し、そして他のパートナーに特異的な標識された抗体を用いて固着された複合体を検出する。再び、液相への反応成分の添加順序に応じて、複合体生成を抑制するかまたは前生成した複合体を破壊する試験化合物を同定することができる。
本発明の代わりの実施形態においては、均一アッセイを用いることができる。この手法においては、KSP相互作用遺伝子産物またはその結合パートナーのいずれかが標識されているが標識が発生するシグナルは複合体生成により消光(quench)されることを特徴とする、KSP相互作用タンパク質と相互作用結合パートナーの前生成複合体を調製する(例えば、Rubensteinによる米国特許第4,109,496号を参照、この特許はこの手法をイムノアッセイの手法として利用する)。前生成複合体からの化学種の1つと競合して置換する試験物質を加えると、バックグラウンドを越えるシグナルが発生する。この方法で、KSP相互作用タンパク質/結合パートナー相互作用を破壊する試験物質を同定することができる。
特定の実施形態においては、固定するためのKSP相互作用遺伝子産物を、組換えDNA技法を用いて調製することができる。例えば、KSP相互作用遺伝子のコード領域をグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子と、pGEX-5X-lなどの融合ベクターを用いて融合し、得られる融合タンパク質においてその結合活性が維持されるようにすることができる。相互作用結合パートナーを当技術分野で日常的に行われる方法を用いて精製し、これを用いてモノクローナル抗体を惹起することができる。この抗体を、当技術分野で日常的に行われる方法により、例えば、放射性同位体125Iを用いて標識することができる。不均一アッセイにおいては、GST融合タンパク質、例えば、GST-STK6またはGST-TPX2融合タンパク質をグルタチオン-アガロースビーズに固着することができる。次いで相互作用結合パートナーを、試験化合物の存在または不在のもとで、相互作用と結合が起こり得る方法で加えることができる。反応の終期に未結合の物質を洗い落とし、標識したモノクローナル抗体を系に加え、そして複合成分と結合させることができる。KSP相互作用タンパク質と相互作用結合パートナーの間の相互作用は、グルタチオン-アガロースビーズと会合して残る放射能の量を測定することにより検出することができる。試験化合物による相互作用の抑制が成功すると、測定される放射能の低下が得られるであろう。
あるいは、融合タンパク質、例えば、GST-STK6遺伝子融合タンパク質および相互作用結合パートナーを、液中で固体グルタチオン-アガロースビーズの不在のもとで一緒に混合することができる。これらの化学種を相互作用させている間かまたは後に、試験化合物を加えることができる。次いでこの混合物をグルタチオン-アガロースビーズに加えることができ、そして未結合の物質を洗浄除去する。再び、KSP相互作用遺伝子産物/結合パートナー相互作用の抑制程度を、標識した抗体を加えてビーズに随伴する放射能を測定することにより検出することができる。
本発明の他の実施形態においては、KSP相互作用タンパク質の結合ドメインおよび/または相互作用結合パートナー(結合パートナーがタンパク質である場合)に対応するペプチド断片を、1つまたは両方が全長のタンパク質の代わりに用いて、これらの同じ技法を利用することができる。いくつかの当技術分野で日常的に実施される方法を利用して、結合部位を同定しかつ単離することができる。これらの方法は、限定されるものでないが、タンパク質の1つをコードする遺伝子の突然変異誘発および結合の破壊についての免疫共沈降アッセイでのスクリーニングを含む。複合体中の第2の化学種をコードする遺伝子の補償突然変異を次いで選択することができる。それぞれのタンパク質をコードする遺伝子の配列分析は、相互作用的な結合に関わるタンパク質の領域に対応する突然変異を明らかにしうる。あるいは、本節で先に記載した方法を用いて1つのタンパク質を固体表面に固着し、そしてトリプシンなどのタンパク分解酵素を用いて処理しておいたその標識した結合パートナーと相互作用させて結合させることができる。洗浄後、結合ドメインを含む短い標識したペプチドは固体材料と会合して残りうるので、単離してアミノ酸配列により同定することができる。また、一旦、結合パートナーをコードする遺伝子を得ると、短い遺伝子セグメントを遺伝子操作してタンパク質のペプチド断片を発現させることができ、次いでこれを結合活性について試験しかつ精製するかまたは合成することができる。
例えば、限定するものではないが、STK6もしくはTPX2遺伝子産物を、本節で先に記載のように、GST-STK6またはGST-TPX2融合タンパク質を作ってグルタチオンアガロースビーズと結合させることにより、固体材料に固着することができる。相互作用結合パートナーを35Sなどの放射性同位体を用いて標識し、そしてトリプシンなどのタンパク分解酵素を用いて切断することができる。次いで切断産物を、固着したGST-STK6またはGST-TPX2融合タンパク質に加えて結合させることができる。未結合ペプチドを洗い落とした後に、結合パートナー結合ドメインを示す標識した結合物質を溶出させて、精製し、そして周知の方法によりアミノ酸配列を分析することができる。このように同定されたペプチドは、合成的に作るかまたは組換えDNA技術を用いて適当な促進性タンパク質(facilitative protein)と融合することができる。
5.3.2.2.KSPインヒビターの増殖抑制効果を調節および/または増強する化合物のスクリーニング
KSP相互作用遺伝子の発現を調節するおよび/またはKSP相互作用タンパク質のその結合パートナーとの相互作用を調節するいずれかの薬剤、例えば、第5.3.2.1.節において同定された化合物、KSP相互作用タンパク質に対する抗体などをさらに、細胞内でKSPインヒビターの増殖抑制効果を調節および/または増強する能力についてスクリーニングすることができる。この目的に対しては当技術分野で公知のいずれかの好適な増殖または増殖抑制アッセイを利用することができる。一実施形態においては、候補薬剤およびKSPインヒビターを培養細胞株の細胞に適用し、そして増殖抑制効果の変化を確認する。好ましくは、増殖抑制効果の変化は、異なる濃度の候補薬剤を異なる濃度のKSPiと併用して測定し、50%抑制を引き起こす候補薬剤とKSPiの濃度、すなわちIC50の1以上の組み合わせを決定する。
KSP相互作用遺伝子の発現を調節するおよび/またはKSP相互作用タンパク質のその結合パートナーとの相互作用を調節するいずれかの薬剤、例えば、第5.3.2.1.節において同定された化合物、KSP相互作用タンパク質に対する抗体などをさらに、細胞内でKSPインヒビターの増殖抑制効果を調節および/または増強する能力についてスクリーニングすることができる。この目的に対しては当技術分野で公知のいずれかの好適な増殖または増殖抑制アッセイを利用することができる。一実施形態においては、候補薬剤およびKSPインヒビターを培養細胞株の細胞に適用し、そして増殖抑制効果の変化を確認する。好ましくは、増殖抑制効果の変化は、異なる濃度の候補薬剤を異なる濃度のKSPiと併用して測定し、50%抑制を引き起こす候補薬剤とKSPiの濃度、すなわちIC50の1以上の組み合わせを決定する。
ある好ましい実施形態においては、MTT増殖アッセイ(例えば、van de Loosdrechetら, 1994, J. Immunol. Methods 174:311-320;Ohnoら, 1991, J. Immunol. Methods 145:199-203;Ferrariら, 1990, J. Immunol. Methods 131:165-172;Alleyら, 1988, Cancer Res. 48:589-601;Carmichaelら, 1987, Cancer Res. 47:936-942;Gerlierら, 1986, J. Immunol. Methods 65:55-63;Mosmann, 1983, J. Immunological Methods 65: 55-63を参照)を利用して、KSPiと併用して細胞の増殖を抑制することができる候補薬剤をスクリーニングする。細胞を、選んだ濃度の候補薬剤とKSPiを用いて4〜72時間処置する。次いで細胞を好適な量の3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)とともに1-8時間インキュベートすると、生存細胞はMTTを不溶性ホルマザンの細胞内沈着物に転化する。上清に含有される過剰MTTを除去した後、好適なMTT溶媒、例えば、DMSO溶液を加えてホルマザンを溶解する。生存細胞数に比例するMTTの濃度を、次いで570nmにおける光学密度を定量することにより測定する。多数の異なる濃度の候補薬剤を試験して50%抑制を引き起こす候補薬剤とKSPi濃度の決定が可能になる。
他の好ましい実施形態においては、細胞増殖に対するalamarBlueアッセイを利用して、KSPiと併用して細胞の増殖を抑制することができる候補薬剤をスクリーニングする(例えば、Pageら, 1993, Int. J. Oncol. 3:473-476を参照)。AlamarBlueアッセイは前掲の第5.2.節に記載している。特定の実施形態においては、alamarBlueTMアッセイを実施して、KSP相互作用遺伝子を標的とするsiRNAのトランスフェクション滴定曲線が、選んだ濃度のKSPi、例えば25nMのKSPインヒビター、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンの存在によって変化するかかどうかを決定する。細胞をSTK6 siRNAを用いてトランスフェクトした。siRNAトランスフェクションの4時間後に、100μl/ウエルのDMEM/KSPiを伴うかまたは伴わない10%ウシ胎児血清を加えてプレートを37℃および5%CO2にて68時間インキュベートした。培地をウエルから取除いて100μl/ウエルDMEM/10%(vol/vol)alamarBlueTM試薬(Biosource International Inc., Camarillo, CA)および0.001容積の1M Hepesバッファー組織培養試薬(Invitrogen)を含有する10%ウシ胎児血清(Invitrogen)と置換えた。プレートを2時間37℃にてインキュベートした後、それらを570および600nm波長にてSpectraMax plusプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)上でSoftmax Pro 3.1.2ソフトウエア(Molecular Devices)を用いて読み取った。25nMの(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンを伴うまたは伴わないSTK6 siRNAの滴定を用いてトランスフェクトしたウエルに対する還元百分率を、ルシフェラーゼsiRNAでトランスフェクトしたウエルと比較した。KSPi無しの0nMルシフェラーゼsiRNAでトランスフェクトしたウエルに対する還元%の計算値を100%とみなした。
5.3.2.3.同定した化合物
スクリーニングで同定した化合物には、細胞内でKSP相互作用遺伝子の発現を選択的にモジュレートするおよびKSPインヒビターの増殖抑制効果を調節および/または増強する能力を実証する化合物が含まれる。これらの化合物としては、限定されるものでないが、siRNA、アンチセンス、リボザイム、3本らせん、抗体、およびポリペプチド分子、アプタマー、および小有機または無機分子が挙げられる。
スクリーニングで同定した化合物には、細胞内でKSP相互作用遺伝子の発現を選択的にモジュレートするおよびKSPインヒビターの増殖抑制効果を調節および/または増強する能力を実証する化合物が含まれる。これらの化合物としては、限定されるものでないが、siRNA、アンチセンス、リボザイム、3本らせん、抗体、およびポリペプチド分子、アプタマー、および小有機または無機分子が挙げられる。
スクリーニングにおいて同定した化合物には、他のタンパク質または分子と相互作用するKSPの相互作用をモジュレートする化合物が含まれる。一実施形態においては、スクリーニングにおいて同定した化合物はKSP相互作用タンパク質のその相互作用パートナーとの相互作用をモジュレートする化合物である。他の実施形態においては、スクリーニングにおいて同定した化合物は、SP相互作用遺伝子の転写レギュレーターとの相互作用をモジュレートする化合物である。
5.3.3.診断
様々な方法を使用して、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2の調節の欠陥からもたらされる細胞のKSPインヒビター、例えば、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-lH-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンの増殖抑制効果に対する耐性の診断および予後を評価し、かつKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性の素因を有する被験体を同定することができる。
様々な方法を使用して、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2の調節の欠陥からもたらされる細胞のKSPインヒビター、例えば、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-lH-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンの増殖抑制効果に対する耐性の診断および予後を評価し、かつKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性の素因を有する被験体を同定することができる。
一実施形態においては、本方法は、細胞内のKSP相互作用遺伝子の発現レベルを決定することを含み、ここで所定の閾値レベルを超える発現レベルはその細胞がKSPi耐性であることを示す。好ましくは、所定の閾値レベルはKSP相互作用遺伝子の正常発現レベルの少なくとも2倍、4倍、8倍、または10倍である。他の実施形態においては、本発明は、細胞内のKSP相互作用遺伝子がコードするタンパク質の存在量のレベルを決定することを含む細胞におけるKSPi耐性を評価する方法であって、所定の閾値レベルを越えるタンパク質の存在量のレベルは細胞がKSPi耐性であることを示す上記方法を提供する。さらに他の実施形態においては、本発明は、哺乳動物の細胞内のKSP相互作用遺伝子がコードするタンパク質の活性のレベルを決定することを含む、細胞におけるKSPi耐性を評価する方法であって、所定の閾値レベルを越える活性レベルは細胞がKSPi耐性であることを示す上記方法を提供する。好ましくは、存在量または活性の所定の閾値レベルはKSP相互作用遺伝子の存在量または活性の正常レベルの少なくとも2倍、4倍、8倍、または10倍である。
かかる方法は、例えば、KSP相互作用遺伝子ヌクレオチド配列およびKSP相互作用遺伝子産物に惹起されるそのペプチド断片を含む抗体などの試薬を利用することができる。具体的には、かかる試薬は、例えば、(1)KSP相互作用遺伝子中の突然変異の存在の検出、または正常発現レベルと比較したKSP相互作用遺伝子のmRNAの過剰または不足発現の検出;および(2)KSP相互作用タンパク質の正常発現レベルと比較したKSP相互作用遺伝子産物の過剰または不足存在量の検出に使用することができる。
本明細書に記載の方法は、例えば、少なくとも1つの本明細書に記載の特定のKSP相互作用遺伝子核酸または抗KSP相互作用タンパク質抗体試薬を含むプレパックされた診断キットを利用することにより実施することができ、これは、例えば、臨床環境において、KSP相互作用遺伝子に関係する障害または異常を示す患者を診断するのに好都合に用いることができる。
KSP相互作用遺伝子中の突然変異を検出するために、いずれかの有核細胞をゲノム核酸の出発供給源として用いることができる。KSP相互作用遺伝子の発現またはKSP相互作用遺伝子産物を検出するために、KSP相互作用遺伝子が発現されるいずれかの細胞型または組織を利用することができる。
核酸に基づく検出技法は、以下の第5.3.3.1節に記載されている。ペプチド検出技法は、以下の第5.3.3.2節に記載されている。
5.3.3.1.KSP相互作用遺伝子の発現の検出
KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2の細胞または組織内の発現、例えば、KSP相互作用遺伝子転写物の細胞レベルおよび/または突然変異の存在または不在は、いくつかの技法を利用して検出することができる。いずれかの有核細胞からの核酸をかかるアッセイの出発点として用いることができ、当業者に周知である標準の核酸調製方法により単離することができる。例えば、KSP相互作用遺伝子の発現レベルは、それぞれがKSP相互作用遺伝子中のヌクレオチド配列を含む1以上のポリヌクレオチドプローブを用いてKSP相互作用遺伝子の発現レベルを測定することにより決定することができる。特に好ましい本発明の実施形態においては、本方法を用いてヒトにおけるKSPiを用いる治療に対する癌の耐性を診断することができる。
KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2の細胞または組織内の発現、例えば、KSP相互作用遺伝子転写物の細胞レベルおよび/または突然変異の存在または不在は、いくつかの技法を利用して検出することができる。いずれかの有核細胞からの核酸をかかるアッセイの出発点として用いることができ、当業者に周知である標準の核酸調製方法により単離することができる。例えば、KSP相互作用遺伝子の発現レベルは、それぞれがKSP相互作用遺伝子中のヌクレオチド配列を含む1以上のポリヌクレオチドプローブを用いてKSP相互作用遺伝子の発現レベルを測定することにより決定することができる。特に好ましい本発明の実施形態においては、本方法を用いてヒトにおけるKSPiを用いる治療に対する癌の耐性を診断することができる。
DNAを生物学的サンプルのハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイに用いて、点突然変異、挿入、欠失および染色体再配列を含むKSP相互作用遺伝子の構造に関わる異常を検出することができる。かかるアッセイとしては、限定されるものでないが、サザン分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、DNAマイクロアレイ分析、およびPCR分析が挙げられる。
KSP相互作用遺伝子-特異的突然変異を検出するためのかかる診断法は、例えば、あるサンプル、例えば患者サンプルまたは他の適当な細胞供給源から得られる組換えDNA分子、クローニングされた遺伝子またはその縮重変異体(degenerate variant)を含む核酸を1以上の標識した核酸試薬と、これらの試薬のKSP相互作用遺伝子内のその相補性配列との特異的アニーリングに有利な条件下で、接触させてインキュベートすることに関わりうる。好ましくは、これらの核酸試薬の長さは少なくとも15〜30個のヌクレオチドである。インキュベーションの後、すべてのアニーリングされてない核酸を核酸:KSP相互作用遺伝子分子ハイブリッドから除去する。次いでハイブリッド化した核酸の存在を、もしかかる分子が存在すれば、検出する。かかる検出スキームを用いて、目的の細胞型または組織からの核酸を、例えば、膜、またはマイクロタイタープレートもしくはポリスチレンビーズ上のようなプラスチック表面などの固体支持体に固定することができる。この場合、インキュベーション後に、アニーリングしてない、標識された核酸試薬は容易に除去される。残る、アニーリングした、標識されたKSP相互作用遺伝子核酸試薬の検出を、当業者に周知の標準技法を用いて実施する。核酸試薬がアニーリングされたKSP相互作用遺伝子配列を、正常なKSP相互作用遺伝子配列から予想されるアニーリングパターンと比較して、KSP相互作用遺伝子突然変異が存在するかどうかを決定することができる。
患者サンプルまたは他の適当な細胞供給源中のKSP相互作用遺伝子特異的な核酸分子を検出するための代わりの診断法は、例えばPCRによるそれらの増幅(the experimental 実施形態 set forth in Mullis, K. B., 1987, U. S. Patent No. 4, 683, 202)とその後の当業者に周知の技法を用いる増幅された分子の検出に関わる。KSP相互作用遺伝子突然変異が存在するかどうかを確認する目的で、得られる増幅配列を、増幅される核酸がKSP相互作用遺伝子の正常コピーだけを含有する場合に予想される配列と比較することができる。
かかるハイブリダイゼーションおよび/またはPCR分析用に好ましいKSP相互作用遺伝子の核酸配列のなかには、KSP相互作用遺伝子スプライス部位突然変異の存在を検出しうる核酸配列がある。
さらに、周知の遺伝子型判定技法を実施してKSP相互作用遺伝子の突然変異を保有する個体を同定することができる。かかる技法としては、例えば、使用する特定の制限酵素の認識部位の1つにおける配列変化に関わる制限断片長多型(RFLP)の利用が挙げられる。
さらに、KSP相互作用遺伝子中の突然変異の同定に利用することができるDNA多型を分析するための改良法が記載されていて、この方法は、制限酵素切断部位間の短かい直列反復DNA配列(short tandemly repeated DNA)の可変数の存在を利用する。例えば、Weber(本明細書に参照によりその全文が組み入れられる米国特許第5,075,217号)は、(dC-dA)n-(dG-dT)n短直列反復配列のブロック中の長さ多型に基づくDNAマーカーを記載する。(dC-dA)n-(dG-dT)nブロックの平均分離は30,000〜60,000bpと見積もられる。このように密接して配置されたマーカーは高頻度の同時遺伝(co-inheritance)を示し、遺伝的突然変異、例えば、KSP相互作用遺伝子内の突然変異の同定、およびKSP相互作用における突然変異に関係する疾患と障害の診断に非常に有用である。
また、Caskeyら(本明細書に参照によりその全文が組み入れられる米国特許第5,364,759号)は、短いトリおよびテトラヌクレオチド反復配列を検出するためのDNA増殖アッセイを記載している。その方法は、KSP相互作用遺伝子などの目的のDNAを抽出するステップ、抽出したDNAを増幅するステップ、および反復配列を標識して個体のDNAの遺伝子型判定地図を作るステップを含む。
KSP相互作用遺伝子の発現レベルをアッセイすることもできる。例えば、KSP相互作用遺伝子を発現することが既知であるかまたは疑わしい、KSPi耐性を示す癌細胞型などの細胞型または組織からのRNAを、上記のようなハイブリダイゼーションまたはPCR技法を利用して単離しかつ試験することができる。単離した細胞は細胞培養からまたは患者から誘導することができる。培養から採取した細胞の分析は、細胞に基づく遺伝子療法技術の一部として使用する細胞の評価に、または、あるいは、KSP相互作用遺伝子の発現に対する化合物の効果を試験するために必要なステップでありうる。かかる分析は、KSP相互作用遺伝子の発現の活性化または不活性化を含む、KSP相互作用遺伝子の発現パターンの定量的および定性的態様の両方を示すことができる。
かかる検出スキームの一実施形態においては、cDNA分子を目的のRNA分子から合成する(例えば、RNA分子のcDNA中への逆転写により)。次いで、cDNA内の配列を、PCR増幅反応などの核酸増幅反応用のテンプレートとして用いる。この方法の逆転写および核酸増幅ステップにおける合成開始試薬として使用する核酸試薬(例えば、プライマー)は、KSP相互作用遺伝子核酸試薬のなかから選ばれる。かかる核酸試薬の好ましい長さは少なくとも9-30個のヌクレオチドである。増幅産物を検出するために、核酸増幅は放射標識されたまたは放射標識されてないヌクレオチドを用いて実施することができる。あるいは、十分な増幅産物を調製して、いずれかの好適な核酸染色法を利用することにより、例えば、標準の臭化エチジウム染色により可視化することができる。
さらに、かかるKSP相互作用遺伝子発現アッセイをin situで、すなわち、直接、生検または切除により得た患者組織の組織切片(固定したおよび/または凍結した)上で、核酸精製を必要としないで実施することも可能である。KSP相互作用遺伝子由来の核酸を、かかるin situ操作にプローブおよび/またはプライマーとして用いることができる(例えば、Nuovo, G. J., 1992,「PCR in situ ハイブリダイゼーション:プロトコルと応用(PCR In Situ Hybridization: Protocols And Applications)」, Raven Press, NYを参照)。
あるいは、もし十分な量の適当な細胞を得ることができれば、標準のノーザン分析を実施してKSP相互作用遺伝子のmRNA発現のレベルを決定することができる。
細胞または組織内のKSP相互作用遺伝子の発現、例えば、細胞のKSP相互作用転写物のレベルおよび/または突然変異の存在または不在はまた、DNAマイクロアレイ技法を用いて評価することもできる。かかる技法においては、それぞれKSP相互作用遺伝子の配列を含む1以上のポリヌクレオチドプローブを用いてKSP相互作用遺伝子の発現をモニタリングする。従って、本発明は、KSP相互作用遺伝子の配列を含むポリヌクレオチドを含むDNAマイクロアレイを提供する。
DNAマイクロアレイ技法のいずれかのフォーマットを本発明と一緒に利用することができる。一実施形態においては、スポットしたcDNAアレイを、cDNA断片のPCR産物、例えばKSP相互作用遺伝子の全長cDNA、ESTなどを好適な表面上に沈着させることにより調製する(例えば、DeRisiら, 1996, Nature Genetics 14:457-460;Shalonら, 1996, Genome Res. 6:689-645;Schenaら, 1995, Proc. Natl. Acad.Sci. U.S.A. 93:10539-11286;およびDugganら, Nature Genetics Supplement 21:10-14を参照)。他の実施形態においては、KSP相互作用遺伝子の配列と相補性のあるオリゴヌクレオチドを含有する高密度オリゴヌクレオチドアレイを、フォトリトグラフ技法により表面上にin situで合成する(例えば、Fodorら, 1991, Science 251:767-773;Peaseら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:5022-5026;Lockhartら, 1996, Nature Biotechnology 14:1675;McGallら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:13555-13560;米国特許第5,578,832号;第5,556,752号;第5,510,270号;第5,858,659号;および第6,040,138号を参照)。マイクロアレイ技術のこのフォーマットは、一塩基多型(SNP)の検出に特に有用である(例えば、Haciaら, 1999, Nat Genet. 22:164-7;Wangら, 1998, Science 280:1077-82を参照)。さらに他の実施形態においては、KSP相互作用遺伝子の配列と相補性のあるヌクレオチドを含有する高密度オリゴヌクレオチドアレイを、インクジェット技法により表面上にin situで合成する(例えば、1998年9月24日に公開されたBlanchard、国際特許公報WO 98/41531;Blanchardら, 1996, Biosensors and Bioelectronics 11: 687-690;Blanchard, 1998, in 「遺伝子工学の合成DNAアレイ(Synthetic DNA Arrays in Genetic Engineering)」, Vol.20, J.K. Setlow, 編, Plenum Press, New York, pp.111-123を参照)。さらに他の実施形態においては、電子式ストリンジェンシー制御を可能にするDNAマイクロアレイを、KSP相互作用遺伝子の配列を含むポリヌクレオチドプローブと併用することができる(例えば、米国特許第5,849,486号を参照)。
5.3.3.2.KSP相互作用遺伝子産物の検出
野生型または突然変異KSP相互作用遺伝子産物または保存された変異体またはそのペプチド断片に対して惹起される抗体を、本明細書に記載のKSPi耐性の診断薬および予後薬として利用することができる。かかる診断法を利用して、KSP相互作用遺伝子の発現レベルの異常、または構造の異常、および/またはKSP相互作用遺伝子産物の時間的な組織、細胞、または細胞下の位置を検出することができる。
野生型または突然変異KSP相互作用遺伝子産物または保存された変異体またはそのペプチド断片に対して惹起される抗体を、本明細書に記載のKSPi耐性の診断薬および予後薬として利用することができる。かかる診断法を利用して、KSP相互作用遺伝子の発現レベルの異常、または構造の異常、および/またはKSP相互作用遺伝子産物の時間的な組織、細胞、または細胞下の位置を検出することができる。
KSP相互作用遺伝子産物は細胞内遺伝子産物であるので、以下に記載の抗体およびイムノアッセイ法は、増殖性疾患などのKSP相互作用遺伝子の調節の欠陥から生じる障害の治療の有効性を評価する上でのin vitro応用に重要である。以下に記載したような抗体、または抗体のフラグメントを利用して治療用に可能性のある化合物をin vitroでスクリーニングして、KSP相互作用遺伝子発現およびKSP相互作用ペプチド産生に対するその効果を決定することができる。KSP相互作用の調節の欠陥に関係する障害に対して有利な効果を有する化合物を同定し、治療上効果的な用量を決定することができる。
in vitroイムノアッセイを利用して、例えば、KSP相互作用遺伝子の調節の欠陥に関係する障害に対する細胞に基づく遺伝子療法を試験することもできる。KSP相互作用ペプチドに対して惹起される抗体をin vitroで用いて、KSP相互作用ペプチドを産生するように遺伝子工学で処置した細胞において達成されたKSP相互作用遺伝子発現のレベルを決定することができる。本明細書に開示した確証はKSP相互作用遺伝子産物が細胞内遺伝子産物であることを示すので、かかる評価は、好ましくは、細胞ライセートまたは抽出物を用いて行う。かかる分析は、in vivoで治療上の効能を達成するために必要な形質転換細胞の数の決定、ならびに遺伝子置換プロトコルの最適化を可能にしうる。
分析すべき組織または細胞型には、一般的にKSPi耐性の癌細胞型などのKSP相互作用遺伝子を発現することが既知のまたは疑われるものが含まれる。本発明で用いるタンパク質単離方法は、例えば、本明細書に参照によりその全文が組み入れられる、HarlowおよびLane (Harlow, E.およびLane, D., 1988, 「抗体:実験室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記載の方法であってもよい。単離した細胞は患者由来の細胞培養から誘導することができる。培養から採取した細胞の分析を用いて、KSP相互作用遺伝子の発現に対する化合物の効果を試験することができる。
KSP相互作用遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片を検出するための好ましい診断法は、例えば、KSP相互作用遺伝子産物または保存された変異体またはペプチド断片を、抗KSP相互作用遺伝子産物に特異的な抗体とのそれらの相互作用により検出するイムノアッセイに関わりうる。
例えば、KSP相互作用タンパク質と結合する抗体、または抗体のフラグメントを用いて、KSP相互作用遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片の存在を定量的にまたは定性的に検出することができる。これは、例えば、光顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光定量による検出と結合した蛍光標識抗体を用いる免疫蛍光技法(本節の下記参照)により達成することができる。かかるKSP相互作用遺伝子産物が細胞表面上に発現される場合、かかる技法は特に好ましい。
さらに、本発明に有用である抗体(またはそのフラグメント)を組織学的に使用して、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡などでKSP相互作用遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片をin situで検出することができる。in situ検出は、組織学的標本を患者から取除いて、本発明の標識した抗体に適用することにより達成することができる。抗体(またはフラグメント)は好ましくは標識した抗体(またはフラグメント)を生物学的サンプル上にオーバーレイすることにより適用する。かかる方法を利用することにより、KSP相互作用遺伝子産物、または保存された変異体またはペプチド断片の存在だけでなく、試験組織内のその分布も決定することが可能である。当業者は、本発明を用いて、かかるin situ検出を達成するために、様々な組織学的方法(染色方法などの)のいずれかを修飾できることを容易に気付くであろう。
KSP相互作用遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片のイムノアッセイは、典型的には、サンプル、例えば生物学的液、組織抽出物、新しく収穫した細胞、または細胞培養中でインキュベートしていた細胞のライセートを、KSP相互作用遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片を同定することができる検出可能な標識された抗体の存在のもとでインキュベートするステップ、および当技術分野で周知のいくつかの技法のいずれかにより結合した抗体を検出するステップを含みうる。
生物学的サンプルを、ニトロセルロースなどの固体支持体もしくは担体、または細胞、細胞粒子もしくは可溶タンパク質を固定することができる他の固相支持体と接触させて、その上に固定することができる。次いで支持体を好適なバッファーを用いて洗浄し、次いで検出可能なように標識されたKSP相互作用遺伝子特異的抗体を用いて処理することができる。次いで固相支持体をバッファーを用いて2回目の洗浄を行って未結合の抗体を取除くことができる。固体支持体上の結合した標識の量を通常の方法で検出することができる。
「固相支持体または担体」は、抗原または抗体と結合することができるいずれかの支持体を意図する。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然のおよび修飾したセルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩(gabbro)、および磁鉄鉱(magnetite)が挙げられる。担体の性質は、本発明の目的に対してある程度可溶であってもまたは不溶であってもよい。支持体材料は、結合した分子が抗原または抗体と結合することができる限り、実質的にいずれの可能な構造形状を有してもよい。従って、支持体形状は、ビーズなどの球状、または試験管の内表面、もしくは棒の外表面のように、円筒状であってもよい。あるいは、表面は、シート、試験片、などのように平滑であってもよい。好ましい支持体としては、ポリスチレンビーズが挙げられる。当業者は抗体または抗原と結合する好適な担体を知っているか、または日常的な実験によって上記担体を確認することができるであろう。
抗KSP相互作用遺伝子産物抗体の所与のロットの結合活性は、周知の方法により決定することができる。当業者は、それぞれの決定のための操作しうるおよび最適の試験条件を日常的な実験により決定することができる。
KSP相互作用遺伝子ペプチドに特異的な抗体を検出可能なように標識できる方法の1つは、上記抗体を酵素と連結して酵素イムノアッセイ(EIA)に使用する方法である(Voller, A.,「酵素結合免疫吸着アッセイ(The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA))」, 1978, Diagnostic Horizons 2:1-7, Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, MD);Voller, A.ら, 1978, J. Clin. Pathol. 31:507-520;Butler, J. E., 1981, Meth. Enzymol. 73:482-523;Maggio, E. (編) , 1980, 「酵素イムノアッセイ(Enzyme Immunoassay)」, CRC Press, Boca Raton, FL,;Ishikawa, E.ら, (編) , 1981, 「酵素イムノアッセイ(Enzyme Immunoassay)」, Kgaku Shoin, Tokyo)。抗体と結合した酵素は、適当な基質、好ましくは色素生産性基質と反応して、例えば、分光光度的、蛍光光度的または、視覚的方法により検出することができる化学的部分を生成する。抗体を検出可能なように標識することができる酵素としては、限定されるものでないが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、塩基性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。検出は、酵素に対する色素生産性基質を用いる比色法により達成することができる。検出はまた、基質の酵素反応の程度を同様に調製した標準と比較して視覚的比較により達成することもできる。
検出はまた、様々な他のイムノアッセイのいずれかを用いることにより達成することもできる。例えば、抗体または抗体フラグメントを放射標識することにより、KSP相互作用ペプチドをラジオイムノアッセイ(RIA)を利用して検出することが可能である(例えば、参照により本明細書に組み入れられるWeintraub, B., 「ラジオイムノアッセイの原理、放射リガンドアッセイ技法の第7回訓練コース(Principles of Radioimmunoassay, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques)」, The Endocrine Society, March 1986を参照)。放射性同位体はγ線カウンターもしくはシンチレーションカウンターによりまたはオートラジオグラフィにより検出することができる。
抗体はまた、蛍光化合物を用いて標識することもできる。蛍光標識した抗体を適当な波長の光に曝すと、その存在を次いで蛍光によって検出することができる。最も普通に用いられる蛍光標識化合物のなかには、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒドおよびフルオレサミンがある。
抗体はまた、蛍光放出金属、例えば152Eu、または他のランタニド族を用いて検出可能なように標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレートグループを用いて抗体と結合させることができる。
抗体はまた、それを化学発光化合物とカップリングさせることにより検出可能なように標識することができる。化学発光タグ付き抗体の存在は、次いで化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することにより測定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマチックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
同様に、生物発光化合物を使用して本発明の抗体を標識することができる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加する生物系において見出される化学発光の1つの型である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することにより測定することができる。標識の目的用の重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
5.3.4.KSP相互作用遺伝子の発現を調節する方法
様々な治療手法を本発明に従って利用し、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2の発現をin vivoでモジュレートすることができる。例えば、siRNA分子を遺伝子操作して、これを用いてKSP相互作用遺伝子をin vivoでサイレンシングすることができる。アンチセンスDNA分子を遺伝子操作して、これを用いてKSP相互作用mRNAの翻訳をin vivoでブロックすることもできる。あるいは、リボザイム分子を、KSP相互作用mRNAをin vivoで切断して破壊するように設計することもできる。他の選択肢としては、KSP相互作用遺伝子の5'領域(コード配列の上流領域を含む)とハイブリダイズして3本らせん構造を形成するように設計したオリゴヌクレオチドを用いてKSP相互作用遺伝子の転写をブロックまたは低減することができる。所望であれば、オリゴヌクレオチドはまた、ネガティブレギュレーターの結合部位とハイブリダイズして3本らせん構造を形成し、ネガティブレギュレーターの結合をブロックしてKSP相互作用遺伝子の転写を増強するように設計することもできる。
様々な治療手法を本発明に従って利用し、KSP相互作用遺伝子、例えば、STK6もしくはTPX2の発現をin vivoでモジュレートすることができる。例えば、siRNA分子を遺伝子操作して、これを用いてKSP相互作用遺伝子をin vivoでサイレンシングすることができる。アンチセンスDNA分子を遺伝子操作して、これを用いてKSP相互作用mRNAの翻訳をin vivoでブロックすることもできる。あるいは、リボザイム分子を、KSP相互作用mRNAをin vivoで切断して破壊するように設計することもできる。他の選択肢としては、KSP相互作用遺伝子の5'領域(コード配列の上流領域を含む)とハイブリダイズして3本らせん構造を形成するように設計したオリゴヌクレオチドを用いてKSP相互作用遺伝子の転写をブロックまたは低減することができる。所望であれば、オリゴヌクレオチドはまた、ネガティブレギュレーターの結合部位とハイブリダイズして3本らせん構造を形成し、ネガティブレギュレーターの結合をブロックしてKSP相互作用遺伝子の転写を増強するように設計することもできる。
ある好ましい実施形態においては、siRNA、アンチセンス、リボザイム、および3本らせんヌクレオチドを、1以上のKSP相互作用タンパク質アイソフォーム(isoform)の翻訳または転写を抑制し、1以上の配列モチーフをKSP相互作用遺伝子と共有しうる他の遺伝子の発現に対して最小限の効果を与えるように設計する。これを達成するためには、使用するオリゴヌクレオチドをKSP相互作用遺伝子に対してユニークな関連配列に基づいて設計しなければならない。
例えば、限定するものではないが、オリゴヌクレオチドは、KSP相互作用遺伝子のヌクレオチド配列が他の遺伝子のヌクレオチド配列と最も相同的である領域内に入ってはならない。アンチセンス分子の場合、配列は先のリストから選ぶことが好ましい。また、配列の翻訳を阻止する標的mRNA配列との十分強いアニーリングを達成するために、配列は長さが少なくとも18個のヌクレオチドであることも好ましい(Izantら, 1984, Cell, 36:1007-1015;Rosenbergら, 1985, Nature, 313:703-706)。
「ハンマーヘッド」型のリボザイムの場合、リボザイムの標的配列を先のリストから選ぶことも好ましい。リボザイムは高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するRNA分子である。ハンマーヘッドリボザイムは、少なくとも標的RNAの一部および標的RNAを切断するように工夫された触媒領域に対してヌクレオチド配列が相補的であるハイブリッド形成領域を含む。ハイブリッド形成領域は9個以上のヌクレオチドを含有する。それ故に、本発明のハンマーヘッドリボザイムは、先のリストにある配列と相補的でありかつ長さが少なくとも9個のヌクレオチドであるハイブリッド形成領域を有する。かかるリボザイムの構築と作製は当技術分野で周知であり、Haseloffら, 1988, Nature, 334:585-591にもっと詳しく記載されている。
本発明のリボザイムはまた、RNAエンドリボヌクレアーゼ(以後、「Cech型リボザイム」と呼ぶ)、例えば、天然にテトラヒメナ(Tetrahymena Thermophila)中に存在し(IVS、またはL-19 IVS RNAとして知られる)、Thomas Cechと共同研究者(Zaug,ら, 1984, Science, 224:574-578;ZaugおよびCech, 1986, Science, 231:470-475;Zaug,ら, 1986, Nature, 324:429-433;University Patents Inc.による公開国際特許出願WO 88/04300;Beenら, 1986, Cell, 47:207-216)によって詳しく記載されているものも含む。Cechエンドリボヌクレアーゼは、標的RNA配列とハイブリダイズし、その後、標的RNAの切断が起こることを特徴とする8個の塩基対活性部位を有する。
ハイブリダイズしてKSP相互作用遺伝子の5'末端に3本らせん構造を形成して転写をブロックするために用いることができるオリゴヌクレオチドの場合、上記オリゴヌクレオチドは、その発現レベルに影響を与えるべきでない他の遺伝子に存在しないKSP相互作用遺伝子の5'末端の配列と相補的であることが好ましい。また、その配列はかかる他の遺伝子の配列とわずかでも相同的であるKSP相互作用遺伝子のプロモーターの領域を含まないことも好ましい。以上の化合物は、限定されるものでないが、送達ビヒクルとしてリポソームの使用を含む当技術分野で公知の様々な方法により投与することができる。裸のDNAまたはRNA分子も、それらが末端修飾による、環状分子の形成による、またはホスホチオネートおよびチオホスホリル修飾した結合を含む代わりの結合によるなどで分解に耐性のある形態であれば、利用することができる。さらに核酸の送達は、核酸分子がポリリシンまたはトランスフェリンとコンジュゲートしている促進輸送によるものであってもよい。核酸はまた、レトロウイルス、ワクシニア、AAV、およびアデノウイルスにより細胞中に輸送することもできる。
あるいは、かかるアンチセンス、リボザイム、3本らせん、またはKSP相互作用遺伝子核酸分子をコードするかまたは上記分子である組換え核酸分子を構築することができる。この核酸分子はRNAまたはDNAのいずれかであってよい。核酸がRNAをコードする場合、その配列は調節エレメントと機能しうる形で結合されていて所望のRNA産物の十分なコピーを産生することが好ましい。調節エレメントは配列の構成的なまたは調節された転写を可能にすることができる。in vivoで、すなわち、細胞または生物の細胞内で、1以上のRNAをコードする細菌プラスミドまたはウイルスRNAもしくはDNAなどのトランスファーベクターを細胞中にトランスフェクトすることができる(例えば、Llewellynら, 1987, J. Mol. Biol., 195:115-123;Hanahanら, 1983, J. Mol. Biol., 166:557-580を参照)。一旦細胞内に入ると、トランスファーベクターは複製し、そして細胞性ポリメラーゼにより転写されてRNAを産生するかまたは宿主細胞のゲノム中に組み込まれうる。あるいは、1以上のRNAをコードする配列を含有するトランスファーベクターを、マイクロインジェクションなどの顕微操作技法を用いて、トランスファーベクターまたはその一部が宿主細胞のゲノム中に組み込まれるように細胞中にトランスフェクトするかまたは細胞中に導入することができる。
RNAiを利用してKSP相互作用遺伝子の発現をノックダウンすることもできる。一実施形態においては、KSP相互作用遺伝子から転写されたmRNAの相同性領域とハイブリダイズする21-23個のヌクレオチドの2本鎖のRNA分子を用いてmRNAを分解し、それによりKSP相互作用遺伝子の発現を「サイレンシング」する。好ましくは、そのdsRNAはハイブリッド化領域、例えば、KSP相互作用遺伝子の配列をコードする配列と相補的である19個のヌクレオチドの2本鎖領域を有する。KSP相互作用遺伝子、例えば、ヒトSTK6もしくはTPX2遺伝子の適当なコード配列を標的とするsiRNAを本発明において利用することができる。例示の実施形態として、KSP相互作用遺伝子のコード領域を標的とする21個のヌクレオチドの2本鎖siRNAを、標準の選択ルールによって設計する(例えば、Elbashirら, 2002, Methods 26:199-213を参照、これは本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)。
siRNAを細胞中に導入するいずれかの標準方法を用いることができる。一実施形態においては、細胞をKSP相互作用遺伝子を標的とするsiRNAに提供することにより遺伝子サイレンシングを誘導することができる(例えば、Elbashirら, 2001, Nature 411, 494-498;Elbashirら, 2001, Genes Dev. 15, 188-200を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。siRNAは、化学的に合成するか、または組換え体ダイサーによる2本鎖RNAの切断から誘導することができる。KSP相互作用遺伝子サイレンシングのために2本鎖DNA(dsRNA)を誘導する他の方法は、shRNA、短いヘアピンRNAである(例えば、Paddisonら, 2002, Genes Dev. 16, 948-958;Brummelkampら, 2002, Science 296, 550-553;Sui, G.ら 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 5515-5520を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。本法においては、KSP相互作用遺伝子を標的とsiRNAは、プラスミド(またはウイルス)からヘアピン構造を形成する介在ループ配列をもつ逆方向反復配列として発現される。得られるヘアピンを含有するRNA転写物は続いてダイサーによりプロセシングされてサイレンシングのためのsiRNAを産生する。プラスミドに基づくshRNAは細胞内で安定して発現することができるので、in vitroおよびin vivo両方の細胞内で長期遺伝子サイレンシングを可能にする(McCaffreyら 2002, Nature 418,38-39;Xiaら, 2002, Nat. Biotech. 20,1006-1010;Lewisら, 2002, Nat. Genetics 32, 107-108;Rubinsonら, 2003, Nat. Genetics 33,401- 406;Tiscorniaら, 2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 1844-1848を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。KSP相互作用遺伝子を標的とするsiRNAはまた、哺乳動物、たとえばヒトの器官または組織へin vivoで送達することもできる(例えば、Songら 2003, Nat. Medicine 9, 347-351;Sorensenら, 2003, J. Mol. Biol. 327,761-766;Lewisら, 2002, Nat. Genetics 32,107-108を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。本法においては、siRNAの溶液を哺乳動物の静脈内に注入する。次いでsiRNAは目的の器官または組織に到達して哺乳動物の器官または組織中の標的遺伝子の発現を効果的に低減することができる。
5.3.5.KSP相互作用タンパク質の活性および/またはその経路を調節する方法
KSP相互作用タンパク質の活性はKSP相互作用タンパク質とその結合パートナーの相互作用をモジュレートすることにより調節することができる。一実施形態においては、薬剤、例えば、抗体、アプトマー、小有機または無機分子を用いてかかる結合パートナーの結合を抑制してKSPi耐性を調節することができる。他の実施形態においては、薬剤、例えば、抗体、アプトマー、小有機または無機分子を用いてKSP相互作用タンパク質調節経路中のタンパク質の活性を抑制し、そしてKSPi耐性を調節することができる。
KSP相互作用タンパク質の活性はKSP相互作用タンパク質とその結合パートナーの相互作用をモジュレートすることにより調節することができる。一実施形態においては、薬剤、例えば、抗体、アプトマー、小有機または無機分子を用いてかかる結合パートナーの結合を抑制してKSPi耐性を調節することができる。他の実施形態においては、薬剤、例えば、抗体、アプトマー、小有機または無機分子を用いてKSP相互作用タンパク質調節経路中のタンパク質の活性を抑制し、そしてKSPi耐性を調節することができる。
5.3.6.KSP相互作用遺伝子および/または遺伝子産物を標的とすることによる癌療法
KSP相互作用遺伝子またはタンパク質、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子またはタンパク質の発現および/または活性をモジュレートする上記の方法および/または組成物をKSPiと併用して、癌を有する患者を治療することができる。特に、KSP相互作用遺伝子またはタンパク質が介在するKSPi耐性を表す癌を有する患者を治療するために、本方法および/または組成物をKSPiと併用することができる。かかる療法を用いて治療することができる癌としては、限定されるものでないが、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫およびグリア芽細胞腫、小細胞肺癌、骨肉腫、膵癌、乳癌および前立腺癌、マウス黒色腫および白血病、ならびにB細胞リンパ腫が挙げられる。
KSP相互作用遺伝子またはタンパク質、例えば、STK6もしくはTPX2遺伝子またはタンパク質の発現および/または活性をモジュレートする上記の方法および/または組成物をKSPiと併用して、癌を有する患者を治療することができる。特に、KSP相互作用遺伝子またはタンパク質が介在するKSPi耐性を表す癌を有する患者を治療するために、本方法および/または組成物をKSPiと併用することができる。かかる療法を用いて治療することができる癌としては、限定されるものでないが、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫およびグリア芽細胞腫、小細胞肺癌、骨肉腫、膵癌、乳癌および前立腺癌、マウス黒色腫および白血病、ならびにB細胞リンパ腫が挙げられる。
好ましい実施形態においては、STK6もしくはTPX2が介在するKSPi耐性を表す癌を有する患者を治療するために、本発明の方法および/または組成物をKSPiと併用する。かかる実施形態においては、STK6もしくはTPX2の発現および/または活性をモジュレートして癌細胞にKSPiに対する感受性を付与し、それによりKSPi療法の効能を付与するかまたは増強する。
併用療法においては、KSPiの投与前、投与と同時に、または投与後に、本発明の1以上の組成物を投与することができる。一実施形態においては、本発明の組成物をKSPiの投与前に投与する。本発明の組成物とKSPiの投与の間の時間間隔は、当業者が手慣れた日常的実験により決定することができる。一実施形態においては、KSP相互作用タンパク質レベルが所望の閾値に到達した後にKSPiを与える。KSP相互作用タンパク質レベルは先に記載したいずれかの技法を用いることにより測定することができる。
他の実施形態においては、本発明の組成物を、KSPiと同時に投与する。
さらに他の実施形態においては、本発明の組成物の1以上をKSPiの投与後にも投与する。かかる投与は、KSPiの半減期が治療に用いる本発明の1以上の組成物の半減期より長いときにとりわけ有益である。
本発明の組成物とKSPiを投与する色々なタイミングのいずれの組み合わせを用いてもよいことは当業者に明白であろう。例えば、KSPiの半減期が本発明の組成物の半減期より長いとき、本発明の組成物をKSPiの投与前および後に投与することは好ましい。
本発明の組成物の投与の頻度または間隔は、先に記載の技法のいずれかにより測定することができるKSP相互作用タンパク質の所望のレベルに依存する。KSP相互作用タンパク質レベルが所望のレベルからより高くまたはより低く変化するとき、本発明の組成物の投与頻度を増加または低減することができる。
本発明の組成物を単独でまたはKSPiと一緒に投与することの効果または利益は、当技術分野で公知のいずれかの方法により、例えば、生存率、副作用、KSPiの必要投与量、またはそれらのいずれかの組み合わせを測定することに基づく方法により評価することができる。もし本発明の組成物の投与が、生存率を増加する、副作用を軽減する、KSPiの必要投与量を低減するなどの患者の1以上の利益を達成するのであれば、本発明の組成物はKSPi療法を増強したと言えるし、かつ本発明の方法は効能を有すると言える。
5.3.7.有糸分裂を標的とする他の薬剤と組み合わせてSTK6遺伝子を標的とすることによる癌療法
本発明者らはまた、STK6は有糸分裂を標的とする他の薬剤、例えばタキソールと相互作用することを発見した。図18は、STK6がHeLa細胞をタキソール治療に感作させることを示す。従って、本発明はまた、STK6発現および/または活性をモジュレートする上記の方法および組成物を、癌を有する患者を有糸分裂を標的とする他の薬剤、例えばタキソールと併用して治療するために提供する。特に、本発明の方法および/または組成物は、タキソールと併用して、STK6が介在するタキソール耐性を表わす癌を有する患者を治療することができる。かかる療法を用いて治療することができる癌としては、限定されるものでないが、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫およびグリア芽細胞腫、小細胞肺癌、骨肉腫、膵癌、乳癌および前立腺癌、マウス黒色腫および白血病、ならびにB細胞リンパ腫が挙げられる。
本発明者らはまた、STK6は有糸分裂を標的とする他の薬剤、例えばタキソールと相互作用することを発見した。図18は、STK6がHeLa細胞をタキソール治療に感作させることを示す。従って、本発明はまた、STK6発現および/または活性をモジュレートする上記の方法および組成物を、癌を有する患者を有糸分裂を標的とする他の薬剤、例えばタキソールと併用して治療するために提供する。特に、本発明の方法および/または組成物は、タキソールと併用して、STK6が介在するタキソール耐性を表わす癌を有する患者を治療することができる。かかる療法を用いて治療することができる癌としては、限定されるものでないが、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫およびグリア芽細胞腫、小細胞肺癌、骨肉腫、膵癌、乳癌および前立腺癌、マウス黒色腫および白血病、ならびにB細胞リンパ腫が挙げられる。
5.4.DNA損傷剤と相互作用する遺伝子および遺伝子産物およびそれらの用途
本発明は、疾患の治療において、DNA損傷剤と相互作用する遺伝子および遺伝子産物を利用する方法および組成物を提供する。かかる遺伝子をしばしば「DNA損傷応答遺伝子」と呼ぶ。かかる遺伝子によりコードされる遺伝子産物、例えば、タンパク質をしばしば「DNA損傷応答遺伝子産物」と呼ぶ。本発明はまた、これらの遺伝子およびそれらの産物を、上記遺伝子/遺伝子産物の発現/活性を調節するために、および/または上記遺伝子もしくはタンパク質と他のタンパク質または分子の相互作用をモジュレートする薬剤をスクリーニングするために使用する方法および組成物を提供する。本発明はさらに、これらの遺伝子およびそれらの産物を、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節するおよび/または細胞または生物中のDNA損傷剤の増殖抑制効果を増強するのに有用である薬剤をスクリーニングするために利用する方法および組成物を提供する。本発明はまた、これらの遺伝子およびそれらの産物を、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する耐性または感受性を診断するためにおよび1以上のDNA損傷剤を用いる療法と一緒に疾患を治療するために利用する方法および組成物を提供する。
本発明は、疾患の治療において、DNA損傷剤と相互作用する遺伝子および遺伝子産物を利用する方法および組成物を提供する。かかる遺伝子をしばしば「DNA損傷応答遺伝子」と呼ぶ。かかる遺伝子によりコードされる遺伝子産物、例えば、タンパク質をしばしば「DNA損傷応答遺伝子産物」と呼ぶ。本発明はまた、これらの遺伝子およびそれらの産物を、上記遺伝子/遺伝子産物の発現/活性を調節するために、および/または上記遺伝子もしくはタンパク質と他のタンパク質または分子の相互作用をモジュレートする薬剤をスクリーニングするために使用する方法および組成物を提供する。本発明はさらに、これらの遺伝子およびそれらの産物を、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節するおよび/または細胞または生物中のDNA損傷剤の増殖抑制効果を増強するのに有用である薬剤をスクリーニングするために利用する方法および組成物を提供する。本発明はまた、これらの遺伝子およびそれらの産物を、DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する耐性または感受性を診断するためにおよび1以上のDNA損傷剤を用いる療法と一緒に疾患を治療するために利用する方法および組成物を提供する。
5.4.1.DNA損傷剤と相互作用する遺伝子および遺伝子産物
本発明は、DNA損傷剤による細胞死滅を低減または増強することができる遺伝子を提供する。これらの遺伝子を後掲の第5.4.2節に記載したDNA損傷剤と併用することができる。これらの遺伝子の用途は後掲の第5.4.3節および第5.4.4節に記載した。
本発明は、DNA損傷剤による細胞死滅を低減または増強することができる遺伝子を提供する。これらの遺伝子を後掲の第5.4.2節に記載したDNA損傷剤と併用することができる。これらの遺伝子の用途は後掲の第5.4.3節および第5.4.4節に記載した。
一実施形態においては、本発明は、DNA損傷剤、例えば、cis、dox、またはcamptoによる細胞死滅を少なくとも1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、および1.9倍だけ低減または増強することができる遺伝子を提供する。ある好ましい実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングがDNA損傷剤による細胞死滅を少なくとも2.0倍だけ増強することができる次の遺伝子を提供する:BRCA2、EPHB3、WEE1、およびELK1。図8はBRCA2、EPHB3、WEE1、およびELK1のサイレンシングがDNA損傷剤による細胞死滅を少なくとも2.0倍だけ増強することを示す。本発明は、DNA損傷剤の投与に関わる療法と一緒に、かかる遺伝子の発現および/またはかかる遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する、例えば増強または低減することにより癌を治療する方法を提供する。
本発明はまた、DNA損傷剤の特定の型による細胞死滅を低減または増強することができる遺伝子を提供する。表IIAは、そのサイレンシングが、DNA主溝結合剤、例えば、DNA副溝結合剤;DNA架橋剤;インターカレート剤;およびDNAアダクツ形成剤などのDNA結合剤による細胞死滅を増強または低減する遺伝子を示す。一実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、DNA結合剤、例えば、cisによる細胞死滅を少なくとも1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、および1.9倍だけ、表IIAに掲げたように増強する遺伝子、例えば、遺伝子ID 752-806(1.5倍)、遺伝子ID 771-806(1.6倍)、遺伝子ID 784-806(1.7倍)、遺伝子ID 789-806(1.8倍)、および遺伝子ID 793-806(1.9倍)を提供する。ある好ましい実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、DNA結合剤、例えば、cisによる細胞死滅を少なくとも2倍だけ増強する次の遺伝子:BRCA1、BRCA2、EPHB3、WEE1、ELK1、RPS6KA6、BRAF、GPRK6、MCM3、CDC42、KIF2C、CENPE、CDC25B、およびC20orf97を提供する。他の実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、DNA結合剤、例えば、cisによる細胞死滅を少なくとも2倍だけ低減する次の遺伝子:PLKを提供する(図16を参照)。本発明は、DNA結合剤の投与に関わる療法と一緒に、かかる遺伝子の発現および/またはかかる遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する、例えば増強するかまたは低減することによる癌を治療する方法を提供する。
本発明はまた、Topo Iインヒビター、例えば、カンプトセシンによる細胞死滅を低減または増強することができる遺伝子を提供する。一実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、topo Iインヒビター、例えば、campto遺伝子による細胞死滅を少なくとも1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、および1.9倍だけ、表IIBに掲げたように増強する遺伝子、例えば、遺伝子ID 635-807(1.5倍)、遺伝子ID 673-807(1.6倍)、遺伝子ID 702-807(1.7倍)、遺伝子ID 727-807(1.8倍)、および遺伝子ID 749-807(1.9倍)を提供する。ある好ましい実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、Topo Iインヒビター、例えば、camptoによる細胞死滅を少なくとも2倍だけ増強する遺伝子、例えば、NM_139286、TOP3B、WASL、STAT4、CHEKI、BCL2、NM_016263、TOP2B、TGFBR1、MAPK8、RHOK、NM_017719、TERT、ANAPC5、NM_021170、SGK2、C20orf97、CSF1R、EGR2、AATK、TCF3、CDC45L、STAT3、PRKY、BMPR1B、KIF2C、PTTG1、NM_019089、FOXO1A、STK4、SRC、ELK1、NM_018492、RASA2、GPRK6、BLK、ABL1、HSPCB、PRKACA、CCNE2、CTNNBIP1、NM_013367、FRAT1、PIK3C2A、NM_017769、XM_170783、NM_016457、XM_064050、STK6、RALBP1、ELK1、NF1、STAT5A、WEE1、PTK6、RPS6KA6、BRCA1、EPHB3、およびBRCA2を提供する。他の好ましい実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、Topo Iインヒビター、例えば、camptoによる細胞死滅を少なくとも3倍だけ増強する遺伝子、例えば、XM_064050、STK6、RALBP1、ELK1、NF1、STAT5A、WEE1、PTK6、RPS6KA6、BRCA1、EPHB3、およびBRCA2を提供する。他の実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、Topo Iインヒビター、例えば、camptoによる細胞死滅を少なくとも2倍だけ低減する遺伝子、例えば、PLK、CCNA2、MADH4、NFKB1、RRM2B、TSG101、DCK、CDC5L、CDCA8、NM_006101、INSRを提供する。本発明は、Topo Iインヒビターの投与に関わる療法と一緒に、かかる遺伝子の発現および/またはかかる遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する、例えば増強するかまたは低減することにより癌を治療する方法を提供する。
本発明はまた、Topo IIインヒビター、例えば、ドキソルビシンによる細胞死滅を低減または増強することができる遺伝子を提供する。一実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、DNA結合剤、例えば、doxによる細胞死滅を少なくとも1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、および1.9倍だけ、表IICに掲げたように増強する遺伝子、例えば、遺伝子ID 657-830(1.5倍)、遺伝子ID 685-830(1.6倍)、遺伝子ID 723-830(1.7倍)、遺伝子ID 750-830(1.8倍)、および遺伝子ID 767-830(1.9倍)を提供する。ある好ましい実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、Topo IIインヒビター、例えば、doxによる細胞死滅を少なくとも2倍だけ増強する遺伝子、例えば、PTK2、KRAS2、BRA、FZD4、RASAL2、CENPE、CCNH、MAP4K3、MAP4K2、ERBB3、RHOK、MY03A、AXIN1、INPP5D、NM_018401、NEK1、TGFBR1、XM_064050、STAT4、MAP3K1、CCNE2、STK6、HDAC4、CTNNA1、EIF4EBP1、ACVR2B、CDC42、MAPK8、BLK、WEE1、KIF26A、TCF1、NM_019089、NOTCH4、HDAC3、PIK3CB、CCNG2、TLK2、XM_066649、MCM3、ELK1、PTK6、ABL1、FZD4、XM_170783、CHUK、SRC、NM_016263、およびC20orf97を提供する。他の好ましい実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、Topo IIインヒビター、例えば、doxによる細胞死滅を少なくとも3倍だけ増強する遺伝子、例えば、ELK1、PTK6、ABL1、FZD4、XM_170783、CHUK、SRC、NM_016263、およびC20orf97を提供する。他の実施形態においては、本発明は、そのサイレンシングが、Topo IIインヒビター、例えば、doxによる細胞死滅を少なくとも2倍だけ低減する遺伝子、例えば、PLKを提供する(図16を参照)。本発明は、Topo IIインヒビターの投与に関わる療法と一緒に、かかる遺伝子の発現および/またはかかる遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する、例えば増強するかまたは低減することにより癌を治療する方法を提供する。
ある好ましい実施形態においては、本発明は、DNA損傷剤によるp53-細胞の死滅を増強することができる遺伝子としてCHEK1、BRCA1、BARD1、およびRAD51を提供する。
他の好ましい実施形態においては、本発明は、DNA損傷剤による細胞の死滅を低減または増強することができる遺伝子としてWEE1を提供する。Wee1は分裂酵母シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces pombe)中に初めて同定されたネガティブ有糸分裂レギュレータータンパク質である(RussellおよびNurse, 1987 Cell 49:559-67)。Wee1-突然変異体は短いG2期を有し、野生型細胞の2分の1サイズで有糸分裂に入る(名称wee(小さい)の由来)。cdc25、有糸分裂インデューサーを過剰発現する細胞においては、wee1活性が早発性有糸分裂による死亡率(有糸分裂破局)を防止するために必要である。wee1のヒト相同体を、S. pompe温度依存性wee1-、cdc25過剰発現突然変異体(Igarashiら, 1991, Nature 353:80-83)のトランス補完(transcomplementation)によりクローニングした。分裂酵母中のヒトwee1の過剰発現は、細胞周期のG2-M移行の抑制から細長い細胞を作製する。このヒトWee1クローンはその酵母対照より有意に小さく、後にアミノ末端配列の一部分を失っていることが見出された(Watanabeら, 1995, EMBO 14:1878-91)。
単一コピーヒトwee1遺伝子は染色体11上に位置する(TaviauxおよびDemaille, 1993, Genomics 15:194-196)。wee1遺伝子は11エキソンをもつ16.96kbであり、4.23kb mRNA転写物をコードする。94kDaヒトWee1タンパク質は646個のアミノ酸を含む。Aceview、公けに利用しうる実験cDNAデータ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/IEB/Research/Acembly/av.cgi?c=locusid&org=9606&l=7465)の統合分析によれば、代わりのスプライシングにより産生される6つのより小さいWee1タンパク質アイソフォームが存在しうる。Wee1発現は、広範囲のヒト細胞、例えば、肺繊維芽細胞、胚繊維芽細胞、子宮頸癌HeLa細胞、大腸腺癌、膀胱癌(Igarashiら, 1991, Nature 353:80-83)、子宮、血管、肝臓、眼、脾臓、胆嚢、皮膚、軟骨、および様々な腫瘍培養細胞株に見出されている(UniGene, http://www.nobi.nlm.nih.gov/UniGene/)。Wee1様タンパク質も、マウス、ラット、線虫シー・エレガンス(C.elegans)、ショウジョウバエ(Drosophila)、および酵母(S. cervisiae)で同定されていて、マウスおよびラットでは最高の類似度(それぞれ89%および91%)を有する646個のアミノ酸のタンパク質である(UniGene)。全長ヒトWee1配列は高いPESTスコアをもつ5つの伸展部を有し、触媒キナーゼドメインがC末端に存在する(Watanabeら, 1995, EMBO 14:1878-91)。保存されたLysll4残基はWee1キナーゼ活性にとって重要であるらしい(McGowanおよびRussell, 1993, EMBO 12:75-85)。
他のWee1関係キナーゼが多数種において同定されている。アフリカツメガエルWee1は母性において発現される(卵母細胞)一方、Wee2は非分裂組織の接合体において発現される。脊椎動物においては、関係するMyt1はWee1と類似したリン酸化活性を有する(Kellogg, 2003, J. Cell Sci. 116:4883-4890に総括されている)。Wee1Bもヒトにおいて同定されていて、これは成熟卵母細胞中にほとんど独占的に発現される(Nakanishiら, 2000, Genes to Cells 5:839-847)。
Wee1は、タンパク質キナーゼのSer/Thrファミリーのファミリーに属する核チロシンキナーゼである。Wee1は、細胞周期のG2/M移行においてCdc2-サイクリンBキナーゼを抑制することにより有糸分裂前のDNA複製の完了を保証する。Cdc2のATP-結合部位におけるThr14およびTyr15残基のリン酸化はその活性を抑制し;Wee1チロシンキナーゼはN末端においてTyr15残基をリン酸化する。第2の関係タンパク質キナーゼ、Mik1(Myt1)はThr14およびTyr15の両方のCdc2をリン酸化する。Cdc2活性が有糸分裂への進行に必要である。重要なTyr15残基の脱リン酸化は、Wee1と反対に機能するCdc25により触媒される。Wee1活性とCdc25活性のバランスが有糸分裂に入ることを決定する(Kellogg, 2003, J. Cell Sci. 116:4883-4890;Pendergast, 1996, Curr. Opin. Cell Biol. 8:174-181に総括されている)。
Wee1活性は細胞周期中、高度に調節されている。SとG2期の間、Wee1活性は、タンパク質レベルの増加と平行して増加する。Wee1活性は、有糸分裂時にWee1の過剰リン酸化と分解の結果として抑制される(Watanabeら, 1995, EMBO 14:1878-91;McGowan and Russell, 1993, EMBO 12:75-85)。アフリカツメガエルと分裂酵母における最近の研究は、Cdk1(Cdc2)がWee1をリン酸化することができることを実証し、これは少量の有糸分裂Cdk1がWee1を不活性化し、次いで有糸分裂Cdk1の有意な増加をトリガーするポジティブ-フィードバックループモデルを示唆する。Tome-1も、Wee1をG2期のSCFによるタンパク分解の標的とすることにより有糸分裂に入ることを促進する。APCCDH1は、G1期中のTome-1およびサイクリンBの破壊により、S期におけるWee1の回復を可能にする(LimおよびSurana, 2003, Mol. Cell 11:845-851に総括されている)。
アポトーシスにおけるWee1の新しい役割も示唆されている。アフリカツメガエルのアポトーシスに関係するCrkはWee1とそのSH2ドメインを介して結合することができる。外因性Wee1はアフリカツメガエルタマゴのアポトーシスをCrkに依存する方法で加速した(Smithら, 2000, J. Cell Biol. 151:1391-1400)。これらのCrk-Wee1複合体は核エキスポート因子Crm1結合の不在のもとでも、哺乳動物細胞のアポトーシスを促進した(Smithら, 2002, Mol. Cell. Biol. 22:1412-1423)。HIVタンパク質R(Vpr)に関わる研究はアポトーシス事象におけるWee1にも関わりがあった(Yuan,ら, 2003, J. Virol. 77:2063-2070)。VprはCdc2不活性化と関連するG2停止を引き起こし、そしてG2停止を延長してアポトーシスに導く。Wee1は、Vpr誘導アポトーシスHeLa細胞およびγ線照射アポトーシスHeLa細胞において枯渇した。Wee1の過剰発現はVpr-誘導アポトーシスを減弱し、そしてsiRNAによるWee1の枯渇はアポトーシス死を誘導した。これらの研究におけるWee1レベルとアポトーシス事象の間の明らかな矛盾およびWee1によるアポトーシス誘導の機構は解明されてない。
細胞周期インヒビターの役割は、もしDNAが損傷していれば重要である。細胞分裂のブロックは、DNA修復の時間を与えて損傷DNAの複製と分離を最小限度に押さえる。遺伝完全性のための2つの細胞周期「チェックポイント」はG1期(DNA合成前)およびG2期(有糸分裂直前)に存在する。これらのチェックポイントの喪失は細胞の癌への進化を促進する(HartwellおよびKastan, 1994, Science 266:1821-8に総括されている)。
Wee1発現の欠陥はG2チェックポイントを撤廃して腫瘍細胞増殖を促進する。Wee1は大腸癌細胞において有意に抑制されることが分かっている(LeeおよびYang, 2001, Cell. Mol. Life Sci. 58:1907-1922による総括されている)。Wee1発現の不在はまた、非小細胞肺癌のより不満足な予後およびより高い再発と関連があった(Yoshidaら, 2004, Ann. Onco. 15:252-256)。
対照的に、Wee1レベルおよびキナーゼ活性はまた、肝細胞癌において周囲の硬変組織と比較して上昇した(Masakiら, 2003, Hepatology 37:534-543)。
あるいは、G2チェックポイントの撤廃はG1チェックポイント欠陥のある腫瘍細胞の化学療法を増強することができる。多くの腫瘍細胞は機能性p53遺伝子を欠き、G1チェックポイントを示さない。正常細胞が照射または化学療法からのDNA損傷後にG1にて停止しうる一方、癌細胞はDNA修復をG2チェックポイントに依存しうる。従って、G2チェックポイントの撤廃は正常細胞よりも癌細胞にとって有害でありうる。Wee1はCdc2のネガティブレギュレーターでありかつWee1はアポトーシスを減弱するので、Wee1を選択的に抑制する化合物の化学ライブラリースクリーニングを利用してG2チェックポイントを抑制する抗癌薬の検索が行われている(Wangら, 2001, Cancer Res. 61:8211-8217)。PD0166285 Wee1キナーゼインヒビターは、Cdc2リン酸化、G2停止の撤廃、およびp53突然変異培養細胞株の照射による感作死滅を実証する。一実施形態においては、本発明はPD166285をDNA損傷剤と併用して癌を治療する方法を提供する。
Wee1活性化はまた、慢性関節リウマチの病理にも関わる。リウマチ滑膜細胞の増殖は腫瘍様であり;細胞は豊富な細胞質、大きい核、および核型変化を有する。これらのトランスフォームした細胞はヒトRAおよび動物モデルの軟骨と細胞中に見出される。リウマチ滑膜細胞増殖は組織崩壊性かつ足場非依存性である。C-Fos/Ap-1転写因子はリウマチ滑膜において増加した。Kawasakiら(Kawasakiら, 2003, Onco. 22:6839-6844)は、Wee1がc-Fos/AP-1によりトランス活性化されること;c-FosとWee1はリウマチ滑膜細胞において骨関節炎細胞と比較して有意に増加することを実証した。これらの滑膜細胞も四倍性の増加を示した。Wee1の不活性化はRAで起こる関節破壊のいくつかを軽減することができる。
US20030087847 Alは、G2チェックポイントを撤廃する方法としてChk1活性を抑制する核酸分子および化学療法に選択的に敏感なP53欠失腫瘍を用いる方法を記載している。Chk1は、Cdc2のアクチベーターであるCdC25に対する抑制性残基をリン酸化する。EP1360281 A2は、wee1ヌクレオチドおよびアミノ酸配列、組換え体Wee1を発現する方法およびWee1活性をモジュレートする化合物を同定する方法を記載している。
他の好ましい実施形態においては、本発明は、DNA損傷剤による細胞死滅を低減または増強することができる遺伝子として、EPHB3を提供する。受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、細胞外リガンド結合ドメインと細胞内キナーゼドメインをもつ膜貫通タンパク質である。Eph受容体は14メンバーを伴うRTKの最大サブファミリーを含む。Eph受容体の細胞外部分の細胞外領域は、推定免疫グロブリン(Ig)領域(リガンド結合ドメイン)と続いてのシステインリッチ領域、および1回貫通膜セグメント近くの2つのフィブロネクチン型III反復配列から構成される(ConnorおよびPasquale, 1995 Oncogene 11:2429-2438;Labradorら, 1997, EMBO 16:3889-3897)。細胞質部分は、高度に保存されたチロシンキナーゼドメイン、フランキングする膜近傍領域およびそれほど保存されてないC末端尾部(不稔αモチーフ(sterile alpha motif)およびPDZ結合モチーフ)を含有する。Eph受容体はその細胞外ドメインの配列相同性に基づいて2グループに区分される。EphA受容体は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーにより細胞表面と繋がれたエフリンAリガンドと高親和性で相互作用する。EphB受容体は膜貫通エフリンBリガンドと優先的に結合する。それぞれのグループについて、受容体は1以上のリガンドと結合することができ、それぞれのリガンドは1以上の受容体と結合することができる。AとBサブグループ間の受容体-リガンドクロストークは少ない(OrioliおよびKlein, 1997 Trends in Genetics 13:354-359;Pasquale, 1997 Curr. Biol. 9:608-615に総括されている)。Eph受容体は、膜結合されたまたは人工的にクラスター化されたエフリンによってのみ活性化される一方、可溶リガンドは受容体と結合し、これらは決して受容体自己リン酸化をトリガーしない(Davisら, 1994 Science 266:816-819)。Eph受容体とエフリンは、これらが二方向シグナル伝達を媒介するという点でユニークである。その膜結合状態に応じて、Eph受容体とエフリンは長期的機能を有するというよりむしろ細胞対細胞相互作用を媒介すると考えれる。
Eph受容体の発現は明確であるがオーバーラップしていて、ユニークであるが重複性機能を示唆する。Eph受容体の発現は神経組織で最高であるが、多数の組織中で見出すことができる。発現は発生中の胚でより高いが、成人組織中にも存在する。受容体-リガンド相互作用はしばしば細胞反発作用をもたらし、そしてこの反発効果は、発生過程における軸索ガイダンス、シナプス形成、神経系のセグメントパターン形成、血管新生、および細胞遊走と関係付けられている。これらの受容体はまた、成人における神経細胞、血管新生、および腫瘍形成にも関わりうる(DodeletおよびPasquale, 2000 Oncogene 19:5614-5619;Zhou, 1998 Pharmacol. Ther. 77:151-181;Pasquale, 1997 Curr. Opin. Cell Biol. 9:608-615に考察されている)。細胞反発作用または脱接着は、Eph受容体と数多くのシグナル伝達分子、例えば、Nck、Ras-GAP、Src、SHEP1、およびSHP2の間の相互作用を介するようである(Wilkinson, 2001 Neurosci. Rev. 2:155-164)。
8種類のEphA受容体(EphA 1-8)と6種類のEphB(EphB 1-6)受容体が存在して、それらは全てほぼ1000個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする。Eph遺伝子は多数の種、例えば、ニワトリ、ラット、マウス、およびヒトにおいて同定されている。EphB3はHek2、Sek4、Mdk5、Cek10、またはTyro6としても知られ、リガンドのエフリンB 1-3と相互作用することができる(Pasquale, 1997, Curr. Opin. Cell Biol. 9:608-615)。EphB3配列は、異なる種のなかで高度に保存されている(>95%アミノ酸相同性)。単一コピー20.2kb EphB3遺伝子はヒト染色体3上に位置して16エキソンを有する。ヒトタンパク質は998個のアミノ酸(参照配列NM004443)から成る。高レベルのマウスEphB3転写物が胚発生を通しておよび成体脳、腸、胎盤、筋肉、心臓に、そしてそれらより低い濃度で肺および腎臓中に見出される(Ciossekら、1995 Oncogene 11:2085-2095)。EphB3転写物は成人ヒト脳、肺、膵臓、肝臓、胎盤、腎臓、骨格筋、および心臓に見出された(Bohmeら, 1993 Oncogene 8:2857-2862)。
EphB3スプライス変異体はニワトリ中に同定されていて、これは膜近傍ドメインに15個のアミノ酸挿入を有する(SajjadiおよびPasquale, 1993 Oncogene 8:1807-1813)。大きい4.8kb全長EphB3転写物に加えて、より小さい2.8kb、2.3kb、および1.9kb転写物がマウス組織中に見出された(Ciossekら, 1995 Oncogene 11:2085-2095)。ヒトEphB3中には、今までのところただ1つの転写物サイズだけが観察されている(Bohmeら, Oncogene 1993 8:2857-2862)。しかしあるヒトEphB2スプライス変異体が同定されていて、さらなる他のヒトEph受容体のアイソフォームが見出されうることを示唆する(Tangら, 1998 Oncogene 17:521-526)。
Eph受容体の相当な特徴付けが胚発生において行われている。Adamsら(Genes & Dev. 13:295-306)は、EphB3が卵黄嚢および発生中の胎児マウスの動脈および静脈に発現されことを示した。彼らはまた、EphB2/EphB3二重突然変異マウスが卵黄嚢血管新生の欠陥、心膜嚢の拡張、血管発生の欠陥、および頭、心臓、および体節の欠陥血管新生を示すことも実証した。Adamsらはまた、エフリンBリガンドがin vitroアッセイにおいて毛細管出芽を誘導できることも確認した。
EphB3欠損マウスは、脳交連(brain commissure)、特に2つの脳半球を連絡する脳梁(corpus callosum)の形成における受容体の関与を示唆する。さらに、EphB2/EphB3二重突然変異体は口蓋裂(cleft palate)を有し、顔面発生におけるそれらの関与を示唆する(Orioliら, 1996 EMBO 15:6035-6049)。
腸上皮内で、幹細胞は、それらが分化するとともに特定のパターンで移行する前駆体を産生する。腸上皮細胞におけるβ-カテニン/TCFの突然変異活性化はポリープ形成をもたらす。Batleらは、β-カテニン/TCFシグナル伝達事象は結腸直腸癌細胞におけるおよび陰窩-絨毛軸に沿ったEphB3発現を制御することを示した。EphB3ヌルマウスにおいては、通常、移動して腸陰窩の基底を占めるパネット細胞(Paneth cell)が陰窩全体にランダムに配置され、細胞集団の識別における欠陥を示唆する。さらにEphB2/EphB3二重突然変異体では、増殖細胞と分化型細胞が腸上皮内で混じり合っている(Batleら, 2002 Cell 111:251-263)。
EphB3発現はまた、成体マウス蝸牛(cochlea)にも見出されていて、末梢聴覚系における役割の可能性を示唆する。EphB3ノックアウトマウスは、野生型対照と比較して有意に低い歪成分耳音響放射(distortion-product otoacoustic emission)DPOAEレベルを示した(Howardら, 2003 Hear. Res. 178:118-130)。DPOAE測定値は外毛細胞(outer hair cell)のレベルにおける蝸牛機能を反映する。
Willsonらは、成体ラットの損傷した脊髄中の損傷部位におけるEphB3発現のアップレギュレーションを実証した(Willsonら, 2003, Cell Transpl. 12:279-290)。EphB3受容体の発現は、高レベルのエフリンBリガンドも有するCNS領域に共局在した。障害部位におけるEphB3受容体とリガンドの両方の相補的発現は損傷後の軸索再生を抑制する環境に寄与しうる。
EphB3は乳房および類表皮起源の腫瘍培養細胞株に検出されている(Bohmeら, 1993, Oncogene 8:2857-2862)。さらに、他のEph受容体の発現レベルは様々な腫瘍型においてアップレギュレーションされる(DodeletおよびPasquale, Oncogene 2000 19:5614-5619に総括されている)。いくつかの確証は、Eph受容体のアップレギュレーションは増殖を駆動するのでないらしく(Lhotak and Pawson, 1993, Mol. Cell. Biol. 13:7071-7079)むしろ高い発現は転移潜在能力と相関があるらしい(Andresら, 1994 Oncogene 1461-1467;Vogtら, 1998 Clin. Cancer Res. 4:791-797)ことを示唆する。
組織崩壊と異常な細胞接着は進行した腫瘍の特徴である。過剰発現Eph受容体は、腫瘍をエフリン活性化に対して高度に感受性とし、細胞接着、細胞運動性、および侵襲性の低減を促進することができる。Eph受容体は、インテグリン活性をモジュレートすることにより細胞-マトリックス付着に影響を与えることが見出されている。Maioら(2000 Nature Cell. Biol. 2:62-69)は、前立腺癌細胞上のエフリンA1リガンドによるEphA2の活性化は一過性でインテグリン介在細胞付着を抑制することを示した。さらに、初期アフリカツメガエル胚において、エフリンB1または活性化EphA4の異所的発現はカドヘリン依存性細胞接着を妨害した(Jonesら, 1998 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:576-581;Winningら, 1996 Dev. Biol., 179:309-319)。
Eph受容体と細胞骨格変化の間の関連、細胞運動性の重要な態様も確立されている。エフリンB2リガンドによるEphB4活性化はEphを発現する細胞においてRacが介在する細胞膜ラフリング(ruffling)を誘発する(Marstonら, 2003 Nat. Cell Biol. 5:879-888)。Wahlら(2000 J. Cell Biol. 149:263-270)はエフリンA5がRhoに依存する方式で神経成長円錐の崩壊を誘発することを実証した。RhoとRacの両方は腫瘍形成に関わる細胞変化と関係付けられている(Schmitzら, 2000 Exp. Cell Res. 261:1-12に総括されている)。Eph受容体によるこれらのシグナル伝達経路の活性化は腫瘍浸潤と転移に寄与しうる。
胚の血管発生および血管新生におけるEph受容体とそれらのリガンドの役割(Sullivan and Bicknell, 2003 Br. J. Cancer 89:228-231に総括されている)を考えると、これらの分子はまた、腫瘍の血管新生に寄与することにより腫瘍増殖にも関わりうる。Eph受容体リガンドは、内皮細胞の組織とアセンブリーの毛細管構造化を促進し、存在する血管からの毛細管出芽を誘発することが示されている(Danielら, 1996 Kidney Intl. Suppl. 57:S73-81;Pandeyら, 1995 Science 268:567-569)。分泌されたエフリンリガンドはまた、内皮細胞に対する拡散性化学誘引物質として作用しうるので;腫瘍細胞上に発現されたeph受容体は新入の内皮細胞から新血管の構築を手引きしうる(Pandeyら, 1995 Science 268:567-569)。
腫瘍細胞内のアップレギュレーション(Bohmeら, 1993 Oncogene 8:2857)および腫瘍血管新生と転移に関わる可能性があるとの理由で、EphB3は、癌診断または治療介入の魅力的な標的となりうる。可溶EphA-Fc受容体は、皮膚ウインドウアッセイ(cutaneous window assay)においておよびin vivoで4T1腫瘍細胞を注射したマウスにおいて腫瘍血管新生を抑制した(Brantleyら, 2002 Oncogene 21:7011-7026)。
あるいは、Eph受容体の血管新生特性の増強が冠状血管閉塞に対する治療などに所望される場合がありうる。
傷害を受けた脊髄におけるEphB3の発現はまた、CNS損傷に対する治療法の魅力的な標的を果たしうる。EphB3の細胞反発効果は傷害を受けた脊髄軸の再成長無能に寄与しうる。諸研究は、軸索再成長を抑制する他分子が抗体によりブロックされたときの、傷害を受けた脊髄の軸索再成長を実証している(Bregrnanら, 1995 Nature 378:498-501;GrandPreら, 2002 Nature 417:547-551)。
Eph受容体自己リン酸化は、ホスホチロシン結合ドメインのSH2をもつ他のシグナル伝達分子とのその後の相互作用にとって、重要な事象である(Brucknerら, 1998 Curr. Opion. Neuro. 8:375-382に総括されている)。
Binnsら(Binns,ら, 2000, Mol. Cell. Biol. 20:4791-4805)は、神経細胞上のEphB2のエフリン刺激を研究するための細胞アッセイ系を記載している。手短かに説明すると、EphB2を安定して発現するNG108-15培養細胞株(NG-EphB2WT細胞)を確立した。NG108-15細胞は、胚発生中にEphB2を発現する細胞型である運動ニューロンの特性を提供する。しかしNG108-15細胞はEphB2を内在性で発現しないしまたはエフリンBリガンドに応答しない。NG-EphB2WT細胞をFc-エフリンB1を用いて刺激すると、神経突起退縮および重合アクチン構造の分解をもたらす。野生型NG108-15細胞、および膜近傍モチーフでチロシンのフェニルアラニンへの置換(重要なリン酸化部位)を発現する細胞はリガンド刺激に応答する細胞骨格再構築を示さない。wtEphB2対EphB2(Y→F)形質転換細胞におけるチロシン残基のリン酸化における変化を、抗pTyr抗体によってもモニターした。EphB2受容体機能の低下はephシグナル伝達カスケードの一成分であるp62dokのリン酸化の低下ももたらした。
特許US6169167はまた、Hek4リガンドによるhek4活性化を、細胞-細胞自己リン酸化アッセイを用いて測定する方法も記載している。受容体-リガンド相互作用の後に、Hek4受容体を、Hek4 DNAを発現するCHO細胞のライセートから免疫沈降させる。ライセートを抗ホスホチロシン抗体によるウェスタンブロットにおいて用いる。
さらに他の好ましい実施形態においては、本発明はRAD51をDNA損傷剤による細胞死滅を低減または増強することができる遺伝子として提供する。哺乳動物細胞において、2本鎖DNA切断(DSB)は、非相同的末端接合(NHEJ)によりまたは相同的組換えにより修復することができる。NHEJは、テンプレートを使わない切断されたDNA末端の再ライゲーションに関わり、切断点における突然変異または欠失をもたらしうる。相同的組換えはテンプレート、無傷の姉妹2本鎖を必要とし、高信頼度の修復をもたらす。相同的組換えはまた、DNA中の停止したまたは切断された複製フォーク(stalled or broken replication fork)を修復することもできる。DSBの修復は、もしそのまま放置されるかまたは不正確に修復されれば機能障害またはアポトーシスが起こりうるので、致命的である。遺伝不安定性はまた腫瘍細胞の重要な特徴であるので、高い信頼性をもつ相同的組換え修復は得られない。相同的組換えの最初のステップである相同的対合と鎖交換は、RecA/Rad5lリコンビナーゼファミリーに属するタンパク質に関わる(BaumannおよびWest, 1998, Trends Biochem. Sci. 23:247-251;Henning and Sturzbecher, 2003, Toxicology 193:91-109に総括されている)。
大腸菌(E.coli)タンパク質RecAはDNA損傷に対するSOS応答のレギュレーターとして作用し、相同的対合と鎖交換を促進する(BaumannおよびWest, 1998, Trends Biochem. Sci. 23:247-251に総括されている)。DSB修復遺伝子rad51は酵母サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)中に同定されたものであり、recAと相同的である(Shinoharaら, 1992, Cell 69:457- 470)。rad51遺伝子はまた、ヒトおよびマウスからもクローニングされた(Yoshimuraら, 1993, Nucleic Acids Res. 21:1665;Shinoharaら, 1993, Nature Genet. 4:239-243)。単一コピーヒトrad51遺伝子は染色体15に位置する(Shinoharaら, 1993, Nature Genet. 4:239-243)。rad51遺伝子は339個のアミノ酸タンパク質をコードする10個のエキソンから成る。2つの哺乳動物Rad51タンパク質のアミノ酸配列は、酵母Rad51に対して83%相同的でありかつ大腸菌(E.coli)RecAタンパク質に対して56%相同的である。RecAとRad51の間の相同性領域には、組換え、UV耐性、およびオリゴマー形成のための機能性ドメイン(RecAの位置31-260)が含まれる(Yoshimuraら, 1993, Nucleic Acids Res. 21:1665;Shinoharaら, 1993, Nature Genet. 4:239-243)。マウスRad51転写物は胸腺、脾臓、精巣、および卵巣に高レベルで、かつ脳にそれより低いレベルで見出された(Shinoharaら, 1993, Nature Genet. 4:239-243)。Rad51発現はまた、細胞周期で調節されているらしく、SおよびG2期に転写アップレギュレーションされる(Flygareら, 1996, Biochim. Biophys. Acta 1312:231-236)。さらに、Rad51と20-30%同一性を有する5つのRad51パラログ体(XRCC2、XRCC3、Rad51B-D)が同定されている。これらのパラログ体はRad51フォーカス形成を促進しうる(ThompsonおよびSchild, 2001, Mutat. Res. 477:131-153に総括されている)。
Rad51は、DNAを包み込んで核タンパク質フィラメントを形成する長いらせんポリマーとして機能する。Rad51は、DSB部位の核溶解性切除により産生する1本鎖DNAと結合し、そしてこの相互作用はRad52により増強される。DSBの1つの切除された末端の相同的2本鎖中への侵入はRad51核タンパク質フィラメント内で起こり、ATP結合を必要とするが加水分解を必要としない。第2の切除された末端もRad51により捕捉される。侵入する切除された末端はDNA再合成のプライマーとして機能する。ホリデイ接合部(Holliday junction)分解とライゲーションにより、修復された2本鎖が分離される(West, 2003, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 4:435-445に総括されている)。Pellegriniら(2002, Nature 420:287-293)は、BRCA2中の保存された反復配列であるBRC4はRad51中のあるモチーフを模擬し、Rad51モノマーをオリゴマー化するための界面として作用することを報じている。このBRC4-Rad51複合体を介して、BRCA2はRad51核タンパク質フィラメントのアセンブリーを制御することができる。Rad51活性はまた、他の機構によっても調節される。P53は、Rad51が促進する相同的組換えをダウンレギュレーションすることが見出されている(Linkeら, 2003, Cancer Res. 63:2596- 2605;Yoonら, 2004, J. Mol. Biol. 336:639-654)。Rad54は2本鎖DNA(dsDNA)上に形成されたRad51核タンパク質フィラメントを分解し、かつDNA鎖交換反応中に重要であるRad51-dsDNAフィラメントのターンオーバーに関わりうることが見出されている。酵母において、Srs2は1本鎖DNA上のRad51フィラメント形成を破壊することにより組換えを抑制することが見出されている(Veauteら, 2003, Nature 423:309-312;Krejciら, 2003, Nature 423:305-309)。
Rad51のスプライス変異体は同定されている。一転写物(NM_133487)はエキソン4、5およびエキソン6の5'部分に対応する内部セグメントを欠いて、97個のアミノ酸の内部領域を欠くタンパク質を生じる。Genbank登録番号AY425955により同定された転写物も、精巣におけるさらなる末端切断スプライス変異体の存在を示唆する。Rad51スプライス変異体はまた、他の種、例えば、線虫C.エレガンス(C. elegans)に見出されている(Rinaldoら, 1998, Mol. Gen. Genet. 260:289-294)。
2つの研究は、Rad51 135C多型はBRCA2保有者における乳癌のリスクを有意に増強するが、BRCA1保有者については増強しないことを実証した(Levy-Lahadら, 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:3232-3236;Kadouriら, 2004, Br. J. Cancer 90:2002- 2005)。ミスセンス突然変異(Gln150Arg)が両側乳癌を有する2人の患者において報じられたが、他方、Rad51突然変異はほとんどの腫瘍において見出されなかった(Katoら, 2000, J. Hum. Genet. 45:133-137;Schmutteら, 1999, Cancer Res. 59:4564-4569)。Rad51ノックアウトマウスは胚発生中の初期に死亡するがヘテロ接合体は生存して繁殖性を有しており、そしてrad51-/-マウス培養細胞株を確立することができなかったことはこの遺伝子の必須な役割を示した(Tsuzukiら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:6236-6240)。Sonodaら(1998, EMBO J., 17:598-608)は、抑制プロモーターにより制御されたRad51トランスジーンを用いてrad5l-/-ニワトリBリンパ球DT40培養細胞株を作製した。DT40細胞におけるrad51トランスジーンの抑制は、高レベルの染色体破損、G2/M期における細胞周期停止、および細胞死をもたらした。いくつかの研究はまた、培養細胞株におけるRad51過剰発現も研究している。Vispeら(1998, Nucleic Acids Res. 26:2859-2864)は、CHO細胞におけるRad51過剰発現は、2つの隣接した相同的対立遺伝子の間の相同的組換えの20倍増加およびS後期/G2期の細胞周期における電離放射線耐性の増加をもたらした。Richardsonら(2004, Oncogene 23:546-553)による研究は、腫瘍細胞中のRad51レベルと腫瘍進行に伴う染色体不安定性の間の連結に対する確証を示す。マウスES培養細胞株におけるDSBの誘導中にRad51レベルが一過性で2-4倍アップレギュレーションされると、新規の組換え修復産物および異常な核型の世代が産生した。
腫瘍中のRad51レベルの上昇は報じられていて、Rad51アップレギュレーションは腫瘍進行に有利でありうることを示唆する。Maackeら(2000, Int. J. Cancer 88:907-913)はRad51過剰発現と乳癌類別(grading)の間の相関を報じた。Rad51の2-7倍増加はまた、広範囲の腫瘍培養細胞株においても、非悪性対照培養細胞株と比較して観察された。(Raderschallら, 2002, Cancer Res. 62:219- 225)。Rad51過剰発現はまた、ヒト膵臓腺癌組織サンプルの66%にも見出された(Maackeら, 2000, Oncogene19:2791-2795)。癌細胞におけるRad51過剰発現は、細胞をDNA損傷から保護するかまたはゲノム不安定性と多様性に寄与しうると推測される。Rad51の発現の上昇と組換えの増加はまた、ヒト繊維芽細胞の不死化中にも観察された(Xiaら, 1997, Mol. Cell Biol. 17:7151-7158)。
多数の研究が腫瘍耐性におけるRad51の機能的役割を示唆する。Hansenら(2003, Int. J. Cancer 105:472-479)は、Rad51レベルが小細胞肺癌(SCLC)細胞におけるエトポシド耐性と正の相関があることを実証した。さらに、センスまたはアンチセンス構築物を用いるRad51のダウンまたはアップレギュレーションは、SCLC細胞のエトポシド感受性を改変した。クロラムブシル治療はB-細胞慢性リンパ性白血病細胞中にRad51発現を誘導することが見出された(Christodoulopoulosら, 1999, Clin. Cancer Res. 5:2178-2184)。アンチセンスRad51オリゴヌクレオチドは、マウス胚皮膚培養細胞株および悪性神経膠腫の両方における照射によるDNA損傷を増強した(Takiら, 1996, Biochem. Biophys. Res. Commun. 223:434-438;Ohnishiら, 1998, Biochem. Biophys. Res. Commun. 245:319-324)。Rad51のリボザイムによるダウンレギュレーションも前立腺癌細胞の照射に対する感受性を増加した(Collisら, 2001, Nucleic Acids Res. 29:1534-1538)。BRCA2上のBRC反復配列との相互作用を介するRad51機能の破壊も、癌細胞を照射およびメタンスルホン酸メチル過敏症に導く(Chenら, 1999, J. Biol. Chem. 274:32931-32935;Chenら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5287-5292)。Slupianekら(2001, Mol. Cell 8:795-806)は、Rad51発現のBcr/Abl調節が骨髄細胞のシスプラチンおよびマイトマイシンC耐性にとって重要であることを示した。これらの研究は、Rad51が癌療法の有効性を改善するための魅力的な標的であることを示唆する。
5.4.2.DNA損傷剤
本発明はいずれかの公知のDNA損傷剤を用いて実施することができ、上記DNA損傷剤としては、限定されるものでないが、いずれかのトポイソメラーゼインヒビター、DNA結合剤、代謝拮抗薬、電離放射線、またはかかる公知のDNA損傷剤の2以上の組み合わせが挙げられる。
本発明はいずれかの公知のDNA損傷剤を用いて実施することができ、上記DNA損傷剤としては、限定されるものでないが、いずれかのトポイソメラーゼインヒビター、DNA結合剤、代謝拮抗薬、電離放射線、またはかかる公知のDNA損傷剤の2以上の組み合わせが挙げられる。
本発明と併用することができるトポイソメラーゼインヒビターは、トポイソメラーゼI(Topo I)インヒビター、トポイソメラーゼII(Topo II)インヒビター、または二重のトポイソメラーゼIおよびIIインヒビターであってもよい。topo Iインヒビターは、次のクラスの化合物のいずれに由来するものであってもよい:カンプトセシン類似体(例えば、カレニテシン(karenitecin)、アミノカンプトセシン、ルルトテカン(lurtotecan)、トポテカン、イリノテカン、BAY 56-3722、ルビテカン(rubitecan)、GI14721、エキサテカン(exatecan)メシラート、レベッカマイシン(rebeccamycin)類似体、PNU 166148、レベッカマイシン(rebeccamycin)、TAS-103、カンプトセシン(例えば、カンプトセシンポリグルタメート、カンプトセシンナトリウム)、イントプリシン(intoplicine)、エクテナサイジン743、J-107088、ピベンジモル(pibenzimol)。好ましいtopo Iインヒビターの例としては、限定されるものでないが、カンプトセシン、トポテカン(hycaptamine)、イリノテカン(イリノテカン塩酸塩)、ベロテカン(belotecan)、またはそれらの類似体または誘導体が挙げられる。
本発明と併用することができるtopo IIインヒビターは次のクラスの化合物のいずれに由来するものであってもよい:アントラサイクリン抗生物質(例えば、カルビシン(carubicin)、ピラルビシン、リポソームコハク酸ダウノルビシン、ダウノマイシン、4-ヨード-4-デオキシドキソルビシン、ドキソルビシン、n、n-ジベンジルダウノマイシン、モルホリノドキソルビシン、アクラシノマイシン抗生物質、ヅボリマイシン(duborimycin)、メノガリル(menogaril)、ノガラマイシン(nogalamycin)、ゾルビシン(zorubicin)、エピルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、デトルビシン(detorubicin)、アンナマイシン(annamycin)、7-シアノキノカルシノール、デオキシドキソルビシン、イダルビシン、GPX-100、MEN-10755、バルルビシン、KRN5500、エピポドフィロトキシン(epipodophyllotoxin)化合物(例えば、ポドフィリン、テニポシド、エトポシド、GL331、2-エチルヒドラジド)、アントラキノン化合物(例えば、アメタントロン、ビサントレン、ミトキサントロン、アントラキノン)、シプロフロキサシン、アクリジンカルボキサミド、アモナフィド、アントラビラゾール抗生物質(例えば、テロキサントロン、セドキサントロン(sedoxantrone)三塩酸塩、ピロキサントロン、アントラビラゾール、ロソキサントロン)、TAS-103、ホストリエシン、ラゾキサン、XK469R、XK469、クロロキノキサリンスルホンアミド、メルバロン(merbarone)、イントプリシン(intoplicine)、エルサミトルシン(elsamitrucin)、CI-921、ピラゾロアクリジン、エリプチニウム(elliptinium)、アムサクリン。好ましいtopo IIインヒビターの例としては、限定されるものでないが、ドキソルビシン(Adriamycin)、リン酸エトポシド(etopofos)、テニポシド、ソブゾキサン(sobuzoxane)、またはそららの類似体または誘導体が挙げられる。
本発明と併用することができるDNA結合剤には、限定されるものでないが、DNA溝結合剤、例えば、DNA副溝結合剤;DNA架橋剤;インターカレート剤;およびDNAアダクツ形成剤が含まれる。DNA副溝結合剤は、アントラサイクリン抗生物質、マイトマイシン抗生物質(例えば、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、KW-2149、マイトマイシンB、マイトマイシンA、マイトマイシンC)、クロモマイシンA3、カルゼレシン、アクチノマイシン抗生物質(例えば、カクチノマイシン(cactinomycin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、アクチノマイシンF1)、ブロスタリシン(brostallicin)、エチノマイシン(echinomycin)、ビゼレシン、デュオカルマイシン(duocarmycin)抗生物質(例えば、KW 2189)、アドゼレシン、オリヴォマイシン(olivomycin)抗生物質、プリカマイシン(plicamycin)、ジノスタチン(zinostatin)、ジスタマイシン(distamycin)、MS-247、エクテナサイジン(ecteinascidin)743)、アムサクリン、アントラマイシン(anthramycin)、およびピベンジモル(pibenzimol)、またはそれらの類似体もしくは誘導体であってもよい。
DNA架橋剤としては、限定されるものでないが、抗新生物アルキル化剤、メトキサレン、マイトマイシン抗生物質、ソラレンが挙げられる。抗新生物アルキル化剤は、
ニトロソウレア化合物(例えば、システムスチン(cystemustine)、タウロムスチン、セムスチン、PCNU、ストレプトゾシン、SarCNU、CGP-6809、カルムスチン、ホテムスチン、メチルニトロソウレア、ニムスチン、ラニムスチン、エチルニトロソウレア、ロムスチン、クロロゾトシン)、マスタード薬剤(例えば、窒素マスタード化合物、例えばスピロムスチン、トロフォスファミド、クロランブシル、エストラムスチン、2,2,2-トリクロロトリエチルアミン、プレドニムスチン、ノヴェムビシン(novembichin)、フェナメット(phenamet)、グルホスファミド(glufosfamide)、ペプチケミオ(peptichemio)、イホスファミド、デホスファミド(defosfamide)、窒素マスタード、フェネステリン(phenesterin)、マンノムスチン、シクロホスファミド、メルファラン、ペルホスファミド、メクロレタミンオキシド塩酸塩、ウラシルマスタード、ベストラブシル、DHEAマスタード、タリムスチン(tallimustine)、マホスファミド、アニリンマスタード、クロルナファジン;硫黄マスタード化合物、例えばビスクロロエチルスルフィド;マスタードプロドラッグ、例えばTLK286およびZD2767)、エチレンイミン化合物(例えば、マイトマイシン抗生物質、エチレンイミン、ウレデパ、チオテパ、ジアジクォン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ペンタメチルメラミン、アルトレタミン、カルジノフィリン(carzinophilin)、トリアジクォン、メツレデパ(meturedepa)、ベンゾデパ、カルボコン)、アルキルスルホン酸化合物(例えば、ジメチルブスルファン、Yoshi-864、インプロスルファン、ピポスルファン、トレオスルファン、ブスルファン、ヘプスルファム(hepsulfam))、エポキシド化合物(例えば、アナキシロン、ミトラクトール、ジアンヒドロガラクチトール(dianhydrogalactitol)、テロキシロン)、様々なアルキル化剤(例えば、イポメアノール(ipomeanol)、カルゼレシン、メチレンジメタンスルホン酸、ミトブロニトール、ビゼレシン、アドゼレシン、ピペラジンジオン、VNP40101M、アサリー(asaley)、6-ヒドロキシメチルアシルフルベン、E09、エトグルシド、エクテナサイジン(ecteinascidin)743、ピポブロマン)、白金化合物(例えば、ZD0473、リポソーム-シスプラチン類似体、サトラプラチン(satraplatin)、BBR 3464、スピロプラチン、オルマプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ロバプラチン、ゼニプラチン、イプロプラチン)、トリアゼン化合物(例えば、イミダゾールマスタード、CB10-277、ミトゾロミド、テモゾロミド、プロカルバジン、ダカルバジン)、ピコリン化合物(例えば、ペンクロメジン(penclomedine))、またはそれらの類似体もしくは誘導体であってもよい。好ましいアルキル化剤の例としては、限定されるものでないが、シスプラチン、ジブロモズルシトール、ホテムスチン、イホスファミド(ifosfamid)、ラニムスチン(ラノムスチン(ranomustine))、ネダプラチン(ラトプラチン(latoplatin))、ベンダムスチン(ベンダムスチン塩酸塩)、エプタプラチン(eptaplatin)、テモゾロミド(メタゾラストン(methazolastone))、カルボプラチン、アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン)、プレドニムスチン、オキサリプラチン(オキサラ白金(oxalaplatinum))、カルムスチン、チオテパ、ロイスルホン(ブスルファン)、ロバプラチン、シクロホスファミド、ビスルファン(bisulfan)、メルファラン、およびクロランブシル、またはそれらの類似体もしくは誘導体が挙げられる。
ニトロソウレア化合物(例えば、システムスチン(cystemustine)、タウロムスチン、セムスチン、PCNU、ストレプトゾシン、SarCNU、CGP-6809、カルムスチン、ホテムスチン、メチルニトロソウレア、ニムスチン、ラニムスチン、エチルニトロソウレア、ロムスチン、クロロゾトシン)、マスタード薬剤(例えば、窒素マスタード化合物、例えばスピロムスチン、トロフォスファミド、クロランブシル、エストラムスチン、2,2,2-トリクロロトリエチルアミン、プレドニムスチン、ノヴェムビシン(novembichin)、フェナメット(phenamet)、グルホスファミド(glufosfamide)、ペプチケミオ(peptichemio)、イホスファミド、デホスファミド(defosfamide)、窒素マスタード、フェネステリン(phenesterin)、マンノムスチン、シクロホスファミド、メルファラン、ペルホスファミド、メクロレタミンオキシド塩酸塩、ウラシルマスタード、ベストラブシル、DHEAマスタード、タリムスチン(tallimustine)、マホスファミド、アニリンマスタード、クロルナファジン;硫黄マスタード化合物、例えばビスクロロエチルスルフィド;マスタードプロドラッグ、例えばTLK286およびZD2767)、エチレンイミン化合物(例えば、マイトマイシン抗生物質、エチレンイミン、ウレデパ、チオテパ、ジアジクォン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ペンタメチルメラミン、アルトレタミン、カルジノフィリン(carzinophilin)、トリアジクォン、メツレデパ(meturedepa)、ベンゾデパ、カルボコン)、アルキルスルホン酸化合物(例えば、ジメチルブスルファン、Yoshi-864、インプロスルファン、ピポスルファン、トレオスルファン、ブスルファン、ヘプスルファム(hepsulfam))、エポキシド化合物(例えば、アナキシロン、ミトラクトール、ジアンヒドロガラクチトール(dianhydrogalactitol)、テロキシロン)、様々なアルキル化剤(例えば、イポメアノール(ipomeanol)、カルゼレシン、メチレンジメタンスルホン酸、ミトブロニトール、ビゼレシン、アドゼレシン、ピペラジンジオン、VNP40101M、アサリー(asaley)、6-ヒドロキシメチルアシルフルベン、E09、エトグルシド、エクテナサイジン(ecteinascidin)743、ピポブロマン)、白金化合物(例えば、ZD0473、リポソーム-シスプラチン類似体、サトラプラチン(satraplatin)、BBR 3464、スピロプラチン、オルマプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ロバプラチン、ゼニプラチン、イプロプラチン)、トリアゼン化合物(例えば、イミダゾールマスタード、CB10-277、ミトゾロミド、テモゾロミド、プロカルバジン、ダカルバジン)、ピコリン化合物(例えば、ペンクロメジン(penclomedine))、またはそれらの類似体もしくは誘導体であってもよい。好ましいアルキル化剤の例としては、限定されるものでないが、シスプラチン、ジブロモズルシトール、ホテムスチン、イホスファミド(ifosfamid)、ラニムスチン(ラノムスチン(ranomustine))、ネダプラチン(ラトプラチン(latoplatin))、ベンダムスチン(ベンダムスチン塩酸塩)、エプタプラチン(eptaplatin)、テモゾロミド(メタゾラストン(methazolastone))、カルボプラチン、アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン)、プレドニムスチン、オキサリプラチン(オキサラ白金(oxalaplatinum))、カルムスチン、チオテパ、ロイスルホン(ブスルファン)、ロバプラチン、シクロホスファミド、ビスルファン(bisulfan)、メルファラン、およびクロランブシル、またはそれらの類似体もしくは誘導体が挙げられる。
インターカレート剤は、アントラキノン化合物、ブレオマイシン抗生物質、レベッカマイシン(rebeccamycin)類似体、アクリジン、アクリジンカルボキサミド、アモナフィド、レベッカマイシン(rebeccamycin)、アントラビラゾール抗生物質、エチノマイシン(echinomycin)、ソラレン、LU79553、BWA773U、クリスナトールメシラート、ベンゾ(a)ピレン-7,8-ジオール-9,10-エポキシド、アコダゾール、エリプチニウム(elliptinium)、ピキサントロン(pixantrone)、またはそれらの類似体もしくは誘導体であってもよい。
DNAアダクツ形成剤としては、限定されるものでないが、エネジイン(enediyne)坑腫瘍抗生物質(例えば、ジンマイシンA(dynemicin A)、エスペラマイシンA1(esperamicin A1)、ジノスタチン(zinostatin)、ジンマイシン(dynemicin)、カリケマイシンγ11(calicheamicin γ1I))、白金化合物、カルムスチン、タモキシフェン(例えば、4-ヒドロキシ-タモキシフェン)、ソラレン、ピラジンジアゾヒドロキシド、ベンゾ(a)ピレン-7,8-ジオール-9,10-エポキシド、またはそれらの類似体もしくは誘導体が挙げられる。
代謝拮抗薬としては、限定されるものでないが、シトシン、アラビノシド、フロクスウリジン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、ゲムシタビン、およびメトトレキセート(MTX)が挙げられる。
電離放射線としては、限定されるものでないが、x線、γ線、および電子ビームが挙げられる。
5.4.3.DNA損傷応答遺伝子と相互作用するタンパク質または他の分子を決定する方法
タンパク質-タンパク質相互作用を検出するのに好適ないずれかの方法を用いて、DNA損傷応答タンパク質の他の細胞タンパク質との相互作用を同定することができる。DNA損傷応答遺伝子と他の細胞分子の間の相互作用、例えば、DNA損傷応答とそのレギュレーターの間の相互作用はまた、当技術分野で公知の方法を用いて決定することもできる。
タンパク質-タンパク質相互作用を検出するのに好適ないずれかの方法を用いて、DNA損傷応答タンパク質の他の細胞タンパク質との相互作用を同定することができる。DNA損傷応答遺伝子と他の細胞分子の間の相互作用、例えば、DNA損傷応答とそのレギュレーターの間の相互作用はまた、当技術分野で公知の方法を用いて決定することもできる。
使用しうる伝統的方法には、免疫共沈降、架橋と勾配またはクロマトグラフィカラムを介する同時精製がある。これらの操作を利用すると、DNA損傷応答遺伝子産物と相互作用する細胞タンパク質の同定が可能になる。一旦単離すれば、かかるタンパク質を同定することができ、順に、標準の技法を一緒に用いてDNA損傷応答遺伝子産物が相互作用するタンパク質を同定することができる。例えば、DNA損傷応答遺伝子産物と相互作用する細胞タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部分を、Edman分解技法などの当業者に周知の技法を用いて確認することができる(例えば、Creighton, 1983, 「タンパク質:構造と分子的原理(Proteins:Structures and Molecular Principles)」, W.H. Freeman & Co., N.Y., pp.34-49を参照)。得られるアミノ酸配列を手引きとして、かかる細胞タンパク質をコードする遺伝子配列をスクリーニングするために利用しうるオリゴヌクレオチド混合物を作製することができる。スクリーニングは、例えば、標準のハイブリダイゼーションまたはPCR技法により達成することができる。オリゴヌクレオチド混合物の作製とスクリーニングの技法は周知である(例えば、Ausubel、前掲、および「PCRプロトコル:方法と応用の手引き(PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications)」, 1990, Innis, M.ら, 編, Academic Press, Inc., New Yorkを参照)。
さらに、DNA損傷応答タンパク質と相互作用する細胞タンパク質をコードする遺伝子を同時同定する方法を使用することができる。これらの方法としては、例えば、周知のλgt11ライブラリーの抗体プロービングの技法と類似の方法で用いて、標識したDNA損傷応答タンパク質により発現ライブラリーをプロービングする技法が挙げられる。
タンパク質相互作用をin vivoで検出する一方法、ツーハイブリッド系を詳しく記載するが、これは説明のためだけであって限定するものではない。この系の1つのバージョンは記載されていて(Chienら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:9578-9582)かつClontech(Palo Alto、CA)から市販されている。
手短に言えば、かかる系の利用は、2つのハイブリッドタンパク質をコードするプラスミドを構築する:1つは、DNA損傷応答遺伝子産物と融合した転写アクチベータータンパク質のDNA結合ドメインから構成され、そして他の1つは、cDNAライブラリーの一部分としてこのプラスミド中に組み換えられたcDNAがコードする未知のタンパク質と融合した転写アクチベータータンパク質の活性化ドメインから構成される。DNA結合ドメイン融合プラスミドとcDNAライブラリーを、その調節領域が転写アクチベーター結合部位を含有するレポーター遺伝子(例えば、HBSまたはlacZ)を含有する酵母サッカロミセス・セレビジエ(Saccharonayces cerevisiae)の菌株中に形質転換する。いずれのハイブリッドタンパク質も単独ではレポーター遺伝子の転写を活性化することはできない:DNA結合ドメインハイブリッドは活性化機能を与えることができないしそして活性化ドメインハイブリッドはアクチベーター結合部位に局在することができないからである。2つのハイブリッドタンパク質の相互作用は機能性のアクチベータータンパク質を再構成し、レポーター遺伝子産物に対するアッセイによって検出されるレポーター遺伝子の発現をもたらす。
ツーハイブリッド系または関連する方法論を用いて、「ベイト(bait)」遺伝子産物と相互作用するタンパク質に対する活性化ドメインライブラリーをスクリーニングすることができる。例としてであって、限定するものではないが、DNA損傷応答遺伝子産物をベイト遺伝子産物として用いることができる。全ゲノムまたはcDNA配列を活性化ドメインをコードするDNAと融合させる。このライブラリーとDNA結合ドメインと融合したベイトDNA損傷応答遺伝子産物のハイブリッドをコードするプラスミドを酵母レポーター菌株中に同時形質転換し、そして得られる形質転換体をレポーター遺伝子を発現するものについてスクリーニングする。例えば、限定するものでないが、ベイトDNA損傷応答遺伝子配列、例えばDNA損傷応答遺伝子のコード配列を、GAL4タンパク質のDNA結合ドメインをコードするDNAと翻訳上融合するように、ベクター中にクローニングすることができる。これらのコロニーを精製し、レポーター遺伝子発現に関わるライブラリープラスミドを単離する。DNA配列決定を利用して次いでライブラリープラスミドによりコードされたタンパク質を同定する。
ベイトDNA損傷応答遺伝子産物と相互作用するタンパク質を検出するための培養細胞株のcDNAライブラリーは、当技術分野で日常的に実施される方法を利用して作ることができる。本明細書に記載した特定の系によれば、例えば、そのcDNA断片を、GAL4の転写活性化ドメインと翻訳上融合するようにベクター中に挿入することができる。このライブラリーを、ベイトDNA損傷応答遺伝子-GAL4融合プラスミドとともに、GAL4活性化配列を含有するプロモーターにより駆動されるlacZ遺伝子を含有する酵母菌株中に、同時形質転換することができる。GAL4転写活性化ドメインと融合しかつベイトKSP相互作用遺伝子産物と相互作用することを特徴とする、cDNAにコードされたタンパク質、活性GAL4タンパク質を再構築してそれによりHIS3遺伝子の発現を駆動しうる。HIS3を発現するコロニーは、ヒスチジンを欠くに基づく半固体寒天培地を含有するペトリディッシュ上でそれらを増殖させて検出することができる。次いでcDNAをこれらの菌株から精製し、そしてこれらを用い、当技術分野で日常的に行われる技法を利用してベイトDNA損傷応答遺伝子と相互作用するタンパク質を産生させて単離することができる。
DNA損傷応答遺伝子とそのレギュレーターの間の相互作用は、当技術分野で公知の標準的方法により決定することができる。
5.4.4.薬剤をスクリーニングする方法
本発明は、DNA損傷応答発現を調節するかまたはDNA損傷応答の他のタンパク質または分子との相互作用をモジュレートする薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
本発明は、DNA損傷応答発現を調節するかまたはDNA損傷応答の他のタンパク質または分子との相互作用をモジュレートする薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
5.4.4.1.スクリーニングアッセイ
以下のアッセイは、DNA損傷応答遺伝子または遺伝子産物と結合する化合物、DNA損傷応答遺伝子産物と相互作用する他の細胞タンパク質と結合する化合物、DNA損傷応答遺伝子産物の影響を受ける細胞成分、例えば、タンパク質と結合する化合物、または、DNA損傷応答遺伝子もしくは遺伝子産物と他の細胞タンパク質の相互作用に干渉する化合物とおよびDNA損傷応答遺伝子の活性をモジュレートする(すなわち、DNA損傷応答遺伝子発現のレベルをモジュレートするおよび/またはDNA損傷応答遺伝子産物活性のレベルをモジュレートする)化合物と結合する化合物を同定するために設計された。アッセイはさらに、DNA損傷応答遺伝子調節配列(例えば、プロモーター配列)と結合し(例えば、Platt、K. A.、1994、J. Biol. Chem. 269: 28558-28562を参照、これは本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)、DNA損傷応答遺伝子発現のレベルをモジュレートすることができる化合物を同定するアッセイに利用してもよい。化合物には、限定されるものでないが、DNA損傷応答遺伝子またはDNA損傷応答経路に関わるいくつかの他の遺伝子の発現に影響を与えることができる小有機分子、または他の細胞タンパク質が含まれる。かかる細胞タンパク質を同定する方法は先の第5.4.3.節に記載されている。かかる細胞タンパク質は、DNA損傷剤の増殖抑制効果の調節に関わることができる。さらに、これらの化合物の中には、DNA損傷応答遺伝子発現および/またはDNA損傷応答遺伝子産物活性のレベルに影響を与え、そしてDNA損傷剤の増殖抑制効果に対する耐性の調節に用いることができる化合物がある。
以下のアッセイは、DNA損傷応答遺伝子または遺伝子産物と結合する化合物、DNA損傷応答遺伝子産物と相互作用する他の細胞タンパク質と結合する化合物、DNA損傷応答遺伝子産物の影響を受ける細胞成分、例えば、タンパク質と結合する化合物、または、DNA損傷応答遺伝子もしくは遺伝子産物と他の細胞タンパク質の相互作用に干渉する化合物とおよびDNA損傷応答遺伝子の活性をモジュレートする(すなわち、DNA損傷応答遺伝子発現のレベルをモジュレートするおよび/またはDNA損傷応答遺伝子産物活性のレベルをモジュレートする)化合物と結合する化合物を同定するために設計された。アッセイはさらに、DNA損傷応答遺伝子調節配列(例えば、プロモーター配列)と結合し(例えば、Platt、K. A.、1994、J. Biol. Chem. 269: 28558-28562を参照、これは本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)、DNA損傷応答遺伝子発現のレベルをモジュレートすることができる化合物を同定するアッセイに利用してもよい。化合物には、限定されるものでないが、DNA損傷応答遺伝子またはDNA損傷応答経路に関わるいくつかの他の遺伝子の発現に影響を与えることができる小有機分子、または他の細胞タンパク質が含まれる。かかる細胞タンパク質を同定する方法は先の第5.4.3.節に記載されている。かかる細胞タンパク質は、DNA損傷剤の増殖抑制効果の調節に関わることができる。さらに、これらの化合物の中には、DNA損傷応答遺伝子発現および/またはDNA損傷応答遺伝子産物活性のレベルに影響を与え、そしてDNA損傷剤の増殖抑制効果に対する耐性の調節に用いることができる化合物がある。
化合物としては、限定されるものでないが、ペプチド、例えば、可溶性ペプチド、限定されるものでないがIg仕立ての(Ig-tailed)融合ペプチド、およびランダムペプチドライブラリーのメンバーを含む;(例えば、Lam, K.S.ら, 1991, Nature 354:82-84;Houghten, R.ら, 1991, Nature 354:84-86を参照)、およびD-および/またはL-コンフィギュレーションアミノ酸で作製されたコンビナトリアル化学誘導分子ライブラリー、ホスホペプチド(限定されるものでないが、ランダムまたは部分的に変性された、向性(directed)ホスホペプチドライブラリーのメンバーを含む;例えば、Songyang, Z.ら, 1993, Cell 72:767-778を参照)、抗体(限定されるものでないが、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラまたは1本鎖抗体、およびFAb、F(ab')2およびFAb発現ライブラリーフラグメント、およびそれらのエピトープ結合フラグメントを含む)、ならびに小有機または無機分子が挙げられる。
本明細書に記載のようなアッセイを介して同定された化合物は、例えば、DNA損傷応答遺伝子産物の生物学的機能を調節するのに、およびDNA損傷剤の増殖抑制効果に対する耐性を改善するのにおよび/またはDNA損傷剤の増殖抑制効果を増強するのに有用でありうる。化合物の有効性を試験するアッセイは、以下の第5.4.4.2.節において考察した。
本発明のDNA損傷応答遺伝子産物と結合することができる化合物を同定するためのin vitro系を設計することができる。同定された化合物は、例えば、野生型および/または突然変異体DNA損傷応答遺伝子産物の活性をモジュレートするのに有用でありうるし、DNA損傷応答遺伝子産物の生物学的機能を作り上げるのに有用でありうるし、正常なDNA損傷応答遺伝子産物相互作用を破壊する化合物を同定するスクリーニングに利用しうるし、またはかかる相互作用それ自体を破壊しうる。
DNA損傷応答遺伝子産物と結合する化合物を同定するために用いるアッセイの原理は、DNA損傷応答遺伝子産物と試験化合物の反応混合物を調製し、2成分が相互作用しかつ結合する条件下で十分な時間をかけて複合体を生成させ、それを取り出すおよび/または反応混合物中で検出することに関わる。これらのアッセイは様々な方法で実施することができる。例えば、かかるアッセイを実施する1つの方法は、DNA損傷応答遺伝子産物または試験物質を固相上に固着して、そして固相上に固着されたDNA損傷応答遺伝子産物/試験化合物複合体を反応終期に検出することに関わりうる。かかる方法の一実施形態においては、DNA損傷応答遺伝子産物を固体表面上に固着し、そして固着されてない試験化合物を直接または間接的に標識することができる。
実施に当たっては、マイクロタイタープレートを便宜上固相として利用することができる。固着される成分は非共有結合または共有結合により固定することができる。非共有結合は単に固体表面をタンパク質の溶液を用いてコーティングして乾燥することにより実施することができる。あるいは、固定すべきタンパク質に特異的な固定した抗体、好ましくはモノクローナル抗体を用いて、タンパク質を固体表面に固着することができる。表面はあらかじめ調製して貯蔵してもよい。
アッセイを実施するために、非固定成分を、固着された成分を含有するコーティングされた表面に加える。反応が完了した後に、生成したいずれかの複合体が固体表面上に固定されて残りうる条件下で、未反応成分を除去する(例えば、洗浄により)。固体表面上に固着された複合体の検出はいくつかの方法で実施することができる。先に非固定の成分が前標識されている場合、表面上に固定された標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。先に非固定の成分が前標識されてない場合、間接的標識を用いて表面上に固着された複合体を検出することができる;例えば、先に非固定の成分に対して特異的な標識した抗体を用いる(抗体を、順に、直接的に標識するかまたは間接的に標識した抗Ig抗体を用いて標識することができる)。
あるいは、反応を液相で行い、反応生成物を未反応成分から分離し、そして複合体を検出することができる;例えば、DNA損傷応答遺伝子産物または試験化合物に特異的な固定した抗体を用いて溶液中で生成したいずれかの複合体を固着し、そして可能性のある複合体の他成分に特異的な標識した抗体を用いて固着された複合体を検出する。
DNA損傷応答遺伝子または遺伝子産物はin vivoで1以上の細胞内または細胞外分子、例えば、タンパク質と相互作用しうる。かかる分子には、限定されるものでないが、先に第5.4.3.節で記載したような方法を介して同定される核酸分子およびタンパク質が含まれうる。これを考察するために、かかる分子を本明細書では「結合パートナー」と呼ぶ。DNA損傷応答遺伝子産物結合を破壊する化合物は、DNA損傷応答遺伝子産物の活性を調節するのに有用でありうる。DNA損傷応答遺伝子産物結合を破壊する化合物は、DNA損傷応答遺伝子のレギュレーターの結合を調節することなどにより、DNA損傷応答遺伝子の発現を調節するのに有用でありうる。かかる化合物には、限定されるものでないが、例えば、先の第5.4.4.1節に記載したような、DNA損傷応答遺伝子産物へ接近することができるペプチドなどの分子が含まれる。
DNA損傷応答遺伝子産物とその細胞内または細胞外結合パートナーの間の相互作用に干渉する化合物を同定するために用いるアッセイ系の基本原理は、DNA損傷応答遺伝子産物と結合パートナーを含有する反応混合物を調製し、両方が相互作用しかつ結合する条件下で十分な時間、複合体を生成させることに関わる。ある化合物を抑制活性について試験するために、反応混合物を試験化合物の存在および不在のもとで調製する。試験化合物は、最初に反応混合物中に含まれてもよいし、または、DNA損傷応答遺伝子産物およびその結合パートナーを加えた後のある時点で加えてもよい。対照反応混合物は、試験化合物なしでまたはプラセボとともにインキュベートする。次いでDNA損傷応答遺伝子タンパク質と結合パートナーの間のいずれかの複合体の生成を検出する。対照反応物中に複合体が生成するが、試験化合物を含有する反応混合物中に生成しないことは、化合物がDNA損傷応答遺伝子タンパク質と相互作用結合パートナーの相互作用を干渉することを示す。さらに、試験化合物と正常なDNA損傷応答遺伝子タンパク質を含有する反応混合物内での複合体生成を、試験化合物と突然変異DNA損傷応答遺伝子タンパク質を含有する反応混合物内の複合体生成と比較することもできる。この比較は、突然変異の相互作用を破壊するが正常なDNA損傷応答遺伝子タンパク質の相互作用を破壊しない化合物を同定することが所望される場合に重要でありうる。
DNA損傷応答遺伝子産物と結合パートナーの相互作用を干渉する化合物に対するアッセイは、不均一フォーマットまたは均一フォーマットで実施することができる。不均一アッセイは、DNA損傷応答遺伝子産物または結合パートナーのいずれかを固相上に固着し、そして反応終期に固相上に固着する複合体を検出することに関わる。均一アッセイでは、全反応を液相中で行う。いずれの手法においても、反応物の添加順序を変えて、試験する化合物に関する異なる情報を得ることができる。例えば、DNA損傷応答遺伝子産物と結合パートナーの間の相互作用を、例えば、競合により干渉する試験化合物は、反応を試験物質の存在のもとで実施することにより;すなわち、試験物質を反応混合物にDNA損傷応答遺伝子タンパク質と相互作用結合パートナーの前にまたは同時に加えることにより同定することができる。あるいは、前生成した複合体を破壊する試験化合物、例えば、複合体から成分の1つを置き換えるより高い結合定数をもつ化合物を、複合体が生成された後に、試験化合物を反応混合物に加えることにより試験することができる。様々なフォーマットを以下に手短に記載する。
不均一アッセイ系にでは、DNA損傷応答遺伝子産物または相互作用結合パートナーのいずれかを固体表面上に固着する一方、固着しない化学種を直接的にまたは間接的に標識する。実施においては、マイクロタイタープレートを便宜上使用する。固着される化学種は、非共有結合または共有結合により固定することができる。非共有結合は単に固体表面をDNA損傷応答遺伝子産物または結合パートナーの溶液を用いてコーティングして乾燥することにより達成することができる。あるいは、固着する化学種に特異的な固定した抗体を用いて化学種を固体表面に固着することができる。表面は予め調製して貯蔵してもよい。
アッセイを実施するために、固定された化学種のパートナーを試験化合物とともにまたはなしでコーティングされた表面に曝す。反応が完了した後に、未反応成分を(例えば、洗浄により)除去すると、いずれかの生成した複合体が固体表面に固定されて残りうる。固体表面上に固着された複合体の検出は色々な方法で実施することができる。非固定の化学種が前標識されている場合、表面上に固定された標識の検出は、複合体が形成されたことを示す。非固定の化学種が前標識されていない場合、間接的標識を用いて表面上に固着された複合体を検出することができる;例えば、最初に非固定の化学種に対して特異的な標識した抗体を用いる(抗体を、順に、直接的に標識するかまたは標識した抗Ig抗体を用いて間接的に標識することができる)。反応成分の添加の順序に応じて、複合体生成を抑制するまたは予め生成した複合体を破壊する試験化合物を検出することができる。
あるいは、試験化合物の存在または不在のもとで、反応を液相で実施し、反応生成物を未反応成分から分離し、そして複合体を検出することができる;例えば、結合成分の1つに特異的な固定した抗体を用いて溶液中で生成した複合体を固着し、そして他のパートナーに特異的な標識した抗体を用いて固着された複合体を検出する。再び、反応成分の液相への添加の順序に応じて、複合体生成を抑制するまたは予め生成した複合体を破壊する試験化合物を検出することができる。
本発明の代わりの実施形態においては、均一アッセイを用いることができる。この手法においては、DNA損傷応答遺伝子産物またはその結合パートナーのいずれかが標識されているが標識が発生するシグナルは複合体生成により消光(quench)されることを特徴とする、DNA損傷応答遺伝子タンパク質と相互作用結合パートナーの前生成複合体を調製する(例えば、Rubensteinによる米国特許第4,109,496号を参照、この特許はこの手法をイムノアッセイの手法として利用する)。前生成複合体からの化学種の1つと競合して置換する試験物質を加えるとバックグラウンドを超えるシグナルが発生しうる。この方法で、DNA損傷応答遺伝子タンパク質/結合パートナー相互作用を破壊する試験物質を同定することができる。
特定の実施形態においては、固定するためのDNA損傷応答遺伝子産物を、組み換えDNA技法を用いて調製することができる。例えば、DNA損傷応答コード領域をグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子と、pGEX-5X-lなどの融合ベクターを用いて融合させ、得られる融合タンパク質においてその結合活性が維持されるようにすることができる。相互作用結合パートナーを精製し、これを用いて、当技術分野で日常的に実施される方法を利用して、モノクローナル抗体を惹起させることができる。この抗体を、当技術分野で日常的に行われる方法により、例えば、放射性同位体125Iを用いて標識することができる。不均一アッセイにおいては、例えば、GST-DNA損傷応答融合タンパク質をグルタチオン-アガロースビーズに固着させることができる。次いで、相互作用結合パートナーを、試験化合物の存在または不在のもとで、相互作用および結合が起こり得る方法で加えることができる。反応の終期に、未結合の物質を洗い落とし、標識したモノクローナル抗体を系に加え、そして複合成分と結合させることができる。DNA損傷応答遺伝子タンパク質と相互作用結合パートナーの間の相互作用は、グルタチオン-アガロースビーズと会合して残る放射能の量を測定することにより検出することができる。試験化合物による相互作用の抑制に成功すると、測定放射能の低下が得られるであろう。
あるいは、GST-DNA損傷応答遺伝子融合タンパク質と相互作用結合パートナーを、液中で固体グルタチオン-アガロースビーズの不在のもとで一緒に混合することができる。これらの化学種を相互作用させている間かまたは後に、試験化合物を加えることができる。次いでこの混合物をグルタチオン-アガロースビーズに加えることができ、そして未結合の物質を洗浄除去する。再び、DNA損傷応答遺伝子産物/結合パートナー相互作用の抑制程度は、標識した抗体を加えてビーズに随伴する放射能を測定することにより検出することができる。
本発明の他の実施形態においては、DNA損傷応答タンパク質および/または相互作用結合パートナー(結合パートナーがタンパク質である場合)の結合ドメインに対応するペプチド断片を、1つまたは両方の全長タンパク質の代わりに用いて、これらの同じ技法を利用することができる。いくつかの当技術分野で日常的に実施される方法を利用して、結合部位を同定しかつ単離することができる。これらの方法は、限定されるものでないが、タンパク質の1つをコードする遺伝子の突然変異誘発および結合の破壊についての免疫共沈降アッセイでのスクリーニングを含む。複合体中の第2の化学種をコードする遺伝子の補償突然変異を次いで選択することができる。それぞれのタンパク質をコードする遺伝子の配列分析は、相互作用的結合に関わるタンパク質の領域に対応する突然変異を示しうる。あるいは、本節で先に記載した方法を用いて1つのタンパク質を固体表面に固着し、そしてトリプシンなどのタンパク分解酵素を用いて処理しておいたその標識した結合パートナーと相互作用させて結合させることができる。洗浄後、結合ドメインを含む短い標識したペプチドは固体材料と会合して残りうるので、単離してアミノ酸配列により同定することができる。また、一旦、結合パートナーをコードする遺伝子を得ると、短い遺伝子セグメントを遺伝子操作してタンパク質のペプチド断片を発現させることができ、次いでこれを結合活性について試験しそして精製するかまたは合成することができる。
例えば、限定するのではなく、DNA損傷応答遺伝子産物を、本節で先に記載のように、GST-DNA損傷応答融合タンパク質を作ってグルタチオンアガロースビーズと結合させることにより、固体材料に固着することができる。相互作用結合パートナーを35Sなどの放射性同位体を用いて標識し、そしてトリプシンなどのタンパク分解酵素を用いて切断することができる。次いで切断産物を、固着したGST-DNA損傷応答融合タンパク質に加えて結合させることができる。未結合のペプチドを洗い落とした後に、結合パートナー結合ドメインを示す標識した結合物質を溶出させて、精製し、そして周知の方法によりアミノ酸配列について分析することができる。このようにして同定したペプチドは、合成的に作るかまたは組換えDNA技術を用いて適当な促進性タンパク質(facilitative protein)と融合させることができる。
5.4.4.2.DNA損傷剤の増殖抑制効果を調節および/または増強する化合物のスクリーニング
DNA損傷応答遺伝子の発現および/またはDNA損傷応答タンパク質のその結合パートナーとの相互作用を調節するいずれかの薬剤、例えば、第5.4. 4. 1.節において同定された化合物、DNA損傷応答タンパク質に対する抗体などを、さらに細胞内のDNA損傷剤の増殖抑制効果を調節および/または増強するその能力についてスクリーニングすることができる。この目的に対しては当技術分野で公知のいずれかの好適な増殖または増殖抑制アッセイを利用することができる。一実施形態においては、候補薬剤およびDNA損傷剤を培養細胞株の細胞に適用し、そして増殖抑制効果の変化を測定する。好ましくは、増殖抑制効果の変化は、異なる濃度の候補薬剤を異なる濃度のDNA損傷剤と併用して測定し、50%抑制を生じる候補薬剤とDNA損傷剤の濃度、すなわち、IC50の1以上の組み合わせを決定する。
DNA損傷応答遺伝子の発現および/またはDNA損傷応答タンパク質のその結合パートナーとの相互作用を調節するいずれかの薬剤、例えば、第5.4. 4. 1.節において同定された化合物、DNA損傷応答タンパク質に対する抗体などを、さらに細胞内のDNA損傷剤の増殖抑制効果を調節および/または増強するその能力についてスクリーニングすることができる。この目的に対しては当技術分野で公知のいずれかの好適な増殖または増殖抑制アッセイを利用することができる。一実施形態においては、候補薬剤およびDNA損傷剤を培養細胞株の細胞に適用し、そして増殖抑制効果の変化を測定する。好ましくは、増殖抑制効果の変化は、異なる濃度の候補薬剤を異なる濃度のDNA損傷剤と併用して測定し、50%抑制を生じる候補薬剤とDNA損傷剤の濃度、すなわち、IC50の1以上の組み合わせを決定する。
ある好ましい実施形態においては、MTT増殖アッセイ(例えば、van de Loosdrechetら, 1994, J. Immunol. Methods 174:311-320;Ohnoら, 1991, J. Immunol. Methods 145:199-203;Ferrariら, 1990, J. Immunol. Methods 131:165-172;Alleyら, 1988, Cancer Res. 48:589-601;Carmichaelら, 1987, Cancer Res. 47:936-942;Gerlierら, 1986, J. Immunol. Methods 65:55-63;Mosmann, 1983, J. Immunological Methods 65:55-63を参照)を利用して、DNA損傷剤と併用して細胞の増殖を抑制することができる候補薬剤についてスクリーニングする。細胞を、選んだ濃度の候補薬剤とDNA損傷剤を用いて4〜72時間処理する。次いで細胞を好適な量の3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)とともに1-8時間インキュベートすると、生存細胞はMTTを不溶性のホルマザンの細胞内沈着物に転化する。上清に含有される過剰MTTを除去した後、好適なMTT溶媒、例えば、DMSO溶液を加えて、ホルマザンを溶解する。生存細胞数に比例するMTTの濃度を、次いで570nmの光学密度を定量することにより測定する。多数の異なる濃度の候補薬剤を試験して50%抑制を引き起こす候補薬剤とDNA損傷剤の濃度の決定を可能にする。
他の好ましい実施形態においては、細胞増殖に対するalamarBlueTMアッセイを利用して、DNA損傷剤と併用して細胞の増殖を抑制することができる候補薬剤をスクリーニングする(例えば、Pageら, 1993, Int. J. Oncol. 3:473-476を参照)。alamarBlueTMアッセイは細胞呼吸を測定し、それを生存細胞の数の物指として用いる。増殖細胞の内部環境は非増殖細胞の内部環境より還元状態にある。例えば、NADPH/NADP、FADH/FAD、FMNH/FMN、およびNADH/NAFの比は増殖中、増加する。alamarBlueはこれらの代謝中間物により還元されうるので、これを利用して細胞増殖をモニターすることができる。alamarBlueにより測定した処置サンプルの細胞数を、非処置対照サンプルの細胞数と比較して百分率で表すことができる。
特定の実施形態においては、alamarBlueTMアッセイを実施して、DNA損傷応答遺伝子を標的とするsiRNAのトランスフェクション滴定曲線が、選んだ濃度のDNA損傷剤、例えば、6-200nMのカンプトセシンの存在のもとで変化するかどうかを決定する。細胞を、DNA損傷応答遺伝子を標的とするsiRNAを用いてトランスフェクトした。siRNAトランスフェクションの4時間後に、100μl/ウエルのDMEM/DNA損傷剤伴うかまたは伴わない10%ウシ胎児血清を加えてプレートを37℃および5%CO2にて68時間インキュベートした。培地をウエルから取除いて、そして100μl/ウエルのDMEM/10%(vol/vol)alamarBlueTM試薬(Biosource International Inc., Camarillo, CA)および0.001容積の1M Hepesバッファー組織培養試薬(Invitrogen)を含有する10%ウシ胎児血清(Invitrogen)と置き換えた。プレートを2時間37℃にてインキュベートした後、それらを570および600nm波長にてSpectraMax plusプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)上でSoftmax Pro 3.1.2 ソフトウエア(Molecular Devices)を用いて読み取った。DNA損傷応答遺伝子を標的とするsiRNAの滴定によりトランスフェクトしたDNA損傷剤を伴うまたは伴わないウエルの還元百分率を、ルシフェラーゼsiRNAによりトランスフェクトしたウエルと比較した。DNA損傷剤を無しの0nMルシフェラーゼsiRNAでトランスフェクトしたウエルに対する還元%の計算値を100%とみなした。
5.4.4.3.同定した化合物
スクリーニングで同定された化合物には、細胞内でDNA損傷応答の発現を選択的にモジュレートするおよびDNA損傷剤の増殖抑制効果を調節および/または増強する能力を実証する化合物が含まれる。これらの化合物としては、限定されるものでないが、siRNA、アンチセンス、リボザイム、3本鎖らせん、抗体、およびポリペプチド分子、アプトマー、ならびに小有機または無機分子が挙げられる。
スクリーニングで同定された化合物には、細胞内でDNA損傷応答の発現を選択的にモジュレートするおよびDNA損傷剤の増殖抑制効果を調節および/または増強する能力を実証する化合物が含まれる。これらの化合物としては、限定されるものでないが、siRNA、アンチセンス、リボザイム、3本鎖らせん、抗体、およびポリペプチド分子、アプトマー、ならびに小有機または無機分子が挙げられる。
スクリーニングにおいて同定した化合物には、DNA損傷応答の他のタンパク質または分子との相互作用をモジュレートする化合物も含まれる。一実施形態においては、スクリーニングで同定した化合物は、DNA損傷応答タンパク質のその相互作用パートナーとの相互作用をモジュレートする化合物である。他の実施形態においては、スクリーニングで同定した化合物は、DNA損傷応答タンパク質の転写レギュレーターとの相互作用をモジュレートする化合物である。
5.4.5.診断
様々な方法を使用して、DNA損傷応答の調節の欠陥から生じる細胞のDNA損傷剤、例えば、カンプトセシン、シスプラチンまたはドキソルビシンの増殖抑制効果に対する耐性の診断および予後を評価し、かつDNA損傷剤の増殖抑制効果に対する耐性の素因を有する被験体を同定することができる。
様々な方法を使用して、DNA損傷応答の調節の欠陥から生じる細胞のDNA損傷剤、例えば、カンプトセシン、シスプラチンまたはドキソルビシンの増殖抑制効果に対する耐性の診断および予後を評価し、かつDNA損傷剤の増殖抑制効果に対する耐性の素因を有する被験体を同定することができる。
一実施形態においては、本方法は、細胞内のDNA損傷応答遺伝子の発現レベルを決定することを含み、ここで所定の閾値レベルを超える発現レベルはその細胞がDNA損傷剤耐性であることを示す。好ましくは、所定の閾値レベルはDNA損傷応答遺伝子の正常発現レベルの少なくとも2倍、4倍、8倍、または10倍である。他の実施形態においては、本発明は、細胞内のDNA損傷応答遺伝子がコードするタンパク質の存在量のレベルを決定することを含む細胞におけるDNA損傷剤耐性を評価する方法であって、所定の閾値レベルを超えるタンパク質の存在量のレベルは細胞がDNA損傷剤耐性であることを示す上記方法を提供する。さらに他の実施形態においては、本発明は、哺乳動物の細胞内のDNA損傷応答遺伝子がコードするタンパク質の活性のレベルを決定することを含む、細胞におけるDNA損傷剤耐性を評価する方法であって、所定の閾値レベルを超える活性のレベルは細胞がDNA損傷剤耐性であることを示す上記方法を提供する。好ましくは、存在量または活性の所定の閾値レベルはDNA損傷応答タンパク質の存在量または活性の正常レベルの少なくとも2倍、4倍、8倍、または10倍である。
かかる方法は、例えば、DNA損傷応答遺伝子ヌクレオチド配列およびそのペプチド断片を含むDNA損傷応答遺伝子産物に対する抗体などの試薬を利用することができる。具体的には、かかる試薬は、例えば、(1)DNA損傷応答遺伝子突然変異の存在の検出、または正常発現レベルと比較したDNA損傷応答遺伝子のmRNAの過剰または不足した発現の検出;および(2)正常DNA損傷応答タンパク質レベルと比較したDNA損傷応答遺伝子産物の過剰または不足した存在量の検出に使用することができる。
本明細書に記載の方法は、例えば、少なくとも1つの本明細書に記載の特定のDNA損傷応答遺伝子核酸または抗DNA損傷応答抗体試薬を含むプレパックされた診断キットを利用することにより実施することができ、これは、例えば、臨床環境においてDNA損傷応答に関係する障害または異常を示す患者を診断するのに好都合に使用することができる。
DNA損傷応答突然変異を検出するために、いずれかの有核細胞をゲノム核酸の出発供給源として用いることができる。DNA損傷応答遺伝子発現またはDNA損傷応答遺伝子産物を検出するために、DNA損傷応答遺伝子が発現されるいずれかの細胞型または組織を利用することができる。
核酸に基づく検出技法を以下の第5.4.5.1.節に記載した。ペプチド検出技法を以下の第5.4.5.2.節に記載した。
5.4.5.1.DNA損傷応答遺伝子の発現の検出
DNA損傷応答遺伝子の細胞または組織中の発現、例えば、DNA損傷応答転写物の細胞レベルおよび/または突然変異の存在または不在は、いくつかの技法を利用して検出することができる。いずれかの有核細胞からの核酸を、かかるアッセイ技法の出発供給源として用いることができ、そして当業者に周知である標準の核酸調製操作に従って単離することができる。例えば、DNA損傷応答遺伝子の発現レベルは、それぞれがDNA損傷応答遺伝子中のヌクレオチド配列を含有する1以上のポリヌクレオチドプローブを用いて、DNA損傷応答遺伝子の発現レベルを測定することにより決定することができる。特に好ましい本発明の実施形態においては、ヒトにおけるDNA損傷剤を用いる治療に対する癌の耐性を診断するために用いる。
DNA損傷応答遺伝子の細胞または組織中の発現、例えば、DNA損傷応答転写物の細胞レベルおよび/または突然変異の存在または不在は、いくつかの技法を利用して検出することができる。いずれかの有核細胞からの核酸を、かかるアッセイ技法の出発供給源として用いることができ、そして当業者に周知である標準の核酸調製操作に従って単離することができる。例えば、DNA損傷応答遺伝子の発現レベルは、それぞれがDNA損傷応答遺伝子中のヌクレオチド配列を含有する1以上のポリヌクレオチドプローブを用いて、DNA損傷応答遺伝子の発現レベルを測定することにより決定することができる。特に好ましい本発明の実施形態においては、ヒトにおけるDNA損傷剤を用いる治療に対する癌の耐性を診断するために用いる。
DNAを生物学的サンプルハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイに用いて、点突然変異、挿入、欠失および染色体再配列を含むDNA損傷応答遺伝子構造に関わる異常を検出することができる。かかるアッセイとしては、限定されるものでないが、サザン分析、1本鎖高次構造多型分析(SSCP)、DNAマイクロアレイ分析、およびPCR分析が挙げられる。
DNA損傷応答遺伝子-特異的突然変異を検出するためのかかる診断法は、例えば、サンプル、例えば、患者サンプルまたは他の適当な細胞供給源から得られる組換えDNA分子、クローニングした遺伝子またはそれらの縮重変異体を含む核酸を、組換えDNA分子、クローニングした遺伝子またはそれらの縮重変異体を含む1以上の標識した核酸試薬と、これらの試薬のDNA損傷応答遺伝子内の相補配列との特異的アニーリングにとって好都合な条件のもとで、接触させてインキュベートすることに関わりうる。好ましくは、これらの核酸試薬の長さは少なくとも15〜30個のヌクレオチドである。インキュベーションの後、全てのアニーリングされてない核酸を核酸:DNA損傷応答分子ハイブリッドから除去する。次いでハイブリッド化した核酸の存在を、もしかかる分子が存在すれば、検出する。かかる検出スキームを用いて、目的の細胞型または組織からの核酸を、例えば、膜、またはマイクロタイタープレートもしくはポリスチレンビーズ上のようなプラスチック表面などの固体支持体に固定することができる。この場合、インキュベーション後に、アニーリングされてない、標識した核酸試薬は容易に除去される。残る、アニーリングされ、標識したDNA損傷応答核酸試薬の検出は、当技術分野で周知の標準技法を用いて実施する。核酸試薬がアニーリングされたDNA損傷応答遺伝子配列を、正常なDNA損傷応答遺伝子配列から予想されるアニーリングパターンと比較して、DNA損傷応答遺伝子突然変異が存在するかどうかを決定することができる。
患者サンプルまたは他の適当な細胞供給源中のDNA損傷応答遺伝子に特異的な核酸分子を検出するための代わりの診断法は、例えば、PCR(Mullis, K.B., 1987, 米国特許第4,683,202号に説明された実験実施形態を参照)によるそれらの増幅と、次いで当業者に周知の技法を用いる増幅した分子の検出に関わりうる。DNA損傷応答遺伝子突然変異が存在するかどうかを決定する目的で、得られる増幅配列を、増幅される核酸がDNA損傷応答遺伝子の正常なコピーだけを含有する場合に予想される配列と比較することができる。
かかるハイブリダイゼーションおよび/またはPCR分析用に好ましいDNA損傷応答核酸配列のなかには、DNA損傷応答遺伝子スプライス部位突然変異の存在を検出しうる核酸配列がある。
さらに、周知の遺伝子型判定技法を実施してDNA損傷応答遺伝子の突然変異を保有する個体を同定することができる。かかる技法としては、例えば、使用する特定の制限酵素の認識部位の1つにおける配列変化に関わる制限断片長多型(RFLP)の利用が挙げられる。
さらに、DNA損傷応答遺伝子突然変異の同定に利用することができるDNA多型を分析するための改良法が記載されていて、この方法は、制限酵素切断部位間の短かい直列反復DNA配列(short tandemly repeated DNA)の可変数の存在を利用する。例えば、Weber(本明細書に参照によりその全文が組み入れられる米国特許第5,075,217号)は(dC-dA)n-(dG-dT)n短直列反復配列のブロック中の長さ多型に基づくDNAマーカーを記載する。(dC-dA)n-(dG-dT)nブロックの平均分離は30,000-60,000bpと見積もられる。このように密接して配置されたマーカーは、高頻度の同時遺伝(co-inheritance)を示し、遺伝的突然変異、例えば、DNA損傷応答遺伝子内の突然変異の同定、およびDNA損傷応答突然変異に関係する疾患および障害の診断に非常に有用である。
また、Caskeyら(本明細書に参照によりその全文が組み入れられる、米国特許第5,364,759号)は短いトリおよびテトラヌクレオチド反復配列を検出するDNA増殖アッセイを記載している。その方法は、DNA損傷応答遺伝子などの目的のDNAを抽出するステップ、抽出したDNAを増幅するステップ、および反復配列を標識して個体のDNAの遺伝子型地図を作成するステップを含む。
DNA損傷応答遺伝子の発現レベルを試験することもできる。例えば、DNA損傷応答遺伝子を発現することが既知であるかまたは疑わしい、DNA損傷剤耐性を示す癌細胞型などの細胞型または組織からのRNAを、先に記載したハイブリダイゼーションまたはPCR技法を利用して単離して試験することができる。単離した細胞は細胞培養または患者から誘導することができる。培養から採取した細胞の分析は、細胞に基づく遺伝子療法技術の一部として使用する細胞の評価に、または、あるいは、DNA損傷応答遺伝子の発現に対する化合物の効果を試験するために必要なステップでありうる。かかる分析はDNA損傷応答遺伝子発現の活性化または不活性化を含む、DNA損傷応答遺伝子の発現パターンの定量的および定性的態様の両方を示すことができる。
かかる検出スキームの一実施形態においては、cDNA分子を目的のRNA分子から合成する(例えば、RNA分子のcDNAへの逆転写により)。次いでcDNA内の配列を、PCR増幅反応などの核酸増幅反応用のテンプレートとして用いる。この方法の逆転写および核酸増幅ステップにおいて合成開始試薬として使用する核酸試薬(例えば、プライマー)は、DNA損傷応答遺伝子核酸試薬のなかから選ばれる。かかる核酸試薬の好ましい長さは少なくとも9-30個のヌクレオチドである。増幅産物を検出するために、核酸増幅は、放射標識したまたは放射標識してないヌクレオチドを用いて実施することができる。あるいは、十分な増幅産物を調製して、いずれかの好適な核酸染色法を利用することにより、例えば、標準の臭化エチジウム染色により可視化することができる。
さらに、かかるDNA損傷応答遺伝子発現アッセイをin situで、すなわち、直接、生検または切除により得た患者組織の組織切片(固定したおよび/または凍結した)上で、核酸精製を必要としないで実施することも可能である。DNA損傷応答遺伝子由来の核酸を、かかるin situ操作にプローブおよび/またはプライマーとして用いることができる(例えば、Nuovo, G. J., 1992,「PCR in situ ハイブリダイゼーション:プロトコルと応用(PCR In Situ Hybridization: Protocols And Applications)」, Raven Press, NYを参照)。
あるいは、もし十分な量の適当な細胞を得ることができれば、標準のノーザン分析を実施してDNA損傷応答遺伝子のmRNA発現のレベルを決定することができる。
細胞または組織内のDNA損傷応答遺伝子の発現、例えば、細胞のDNA損傷応答転写物のレベルおよび/または突然変異の存在または不在はまた、DNAマイクロアレイ技法を用いて評価することもできる。かかる技法においては、それぞれDNA損傷応答遺伝子の配列を含む1以上のポリヌクレオチドプローブを用いてDNA損傷応答遺伝子の発現をモニタリングする。従って、本発明は、DNA損傷応答遺伝子の配列を含むポリヌクレオチドを含むDNAマイクロアレイを提供する。
DNAマイクロアレイ技法のいずれかのフォーマットを本発明と一緒に利用することができる。一実施形態においては、スポットしたcDNAアレイを、cDNA断片のPCR産物、例えばDNA損傷応答遺伝子の全長cDNA、ESTなどを好適な表面上に沈着させることにより調製する(例えば、DeRisiら, 1996, Nature Genetics 14:457-460;Shalonら, 1996, Genome Res. 6:689-645;Schenaら, 1995, Proc. Natl. Acad.Sci. U.S.A. 93:10539-11286;およびDugganら, Nature Genetics Supplement 21:10-14を参照)。他の実施形態においては、DNA損傷応答遺伝子の配列と相補性のあるオリゴヌクレオチドを含有する高密度オリゴヌクレオチドアレイを、フォトリトグラフ技法により表面上にin situで合成する(例えば、Fodorら, 1991, Science 251:767-773;Peaseら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:5022-5026;Lockhartら, 1996, Nature Biotechnology 14:1675;McGallら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:13555-13560;米国特許第5,578,832号;第5,556,752号;第5,510,270号;第5,858,659号;および第6,040,138号を参照)。マイクロアレイ技術のこのフォーマットは、一塩基多型(SNP)の検出に特に有用である(例えば、Haciaら, 1999, Nat Genet. 22:164-7;Wangら, 1998, Science 280:1077-82を参照)。さらに他の実施形態においては、DNA損傷応答遺伝子の配列と相補性のあるヌクレオチドを含有する高密度オリゴヌクレオチドアレイを、インクジェット技法により表面上にin situで合成する(例えば、1998年9月24日に公開されたBlanchard、国際特許公報WO 98/41531;Blanchardら, 1996, Biosensors and Bioelectronics 11: 687-690;Blanchard, 1998, in 「遺伝子工学の合成DNAアレイ(Synthetic DNA Arrays in Genetic Engineering)」, Vol.20, J.K. Setlow, 編, Plenum Press, New York, pp.111-123を参照)。さらに他の実施形態においては、電子式ストリンジェンシー制御を可能にするDNAマイクロアレイを、DNA損傷応答遺伝子の配列を含むポリヌクレオチドプローブと併用することができる (例えば、米国特許第5,849,486号を参照)。
5.4.5.2.DNA損傷応答遺伝子産物の検出
野生型または突然変異DNA損傷応答遺伝子産物または保存された変異体またはそのペプチド断片に対して惹起される抗体を、本明細書に記載のDNA損傷剤耐性の診断薬および予後薬として利用することができる。かかる診断法を利用して、DNA損傷応答遺伝子発現レベルの異常、または構造の異常、および/またはDNA損傷応答遺伝子産物の時間的な組織、細胞、または細胞下の位置を検出することができる。
野生型または突然変異DNA損傷応答遺伝子産物または保存された変異体またはそのペプチド断片に対して惹起される抗体を、本明細書に記載のDNA損傷剤耐性の診断薬および予後薬として利用することができる。かかる診断法を利用して、DNA損傷応答遺伝子発現レベルの異常、または構造の異常、および/またはDNA損傷応答遺伝子産物の時間的な組織、細胞、または細胞下の位置を検出することができる。
本明細書に開示した確証はDNA損傷応答遺伝子産物が細胞内遺伝子産物であることを示すので、以下に記載の抗体およびイムノアッセイ法は、増殖性疾患などのDNA損傷応答遺伝子の調節の欠陥から生じる障害の治療の有効性を評価する上でのin vitro応用に重要である。以下に記載したような抗体、または抗体のフラグメントを利用して治療用に可能性のある化合物をin vitroでスクリーニングして、DNA損傷応答遺伝子発現およびDNA損傷応答ペプチド産生に対するその効果を決定することができる。DNA損傷応答の調節の欠陥に関係する障害に対して有利な効果を有する化合物を同定し、治療上効果的な用量を決定することができる。
In vitroイムノアッセイを利用して、例えば、DNA損傷応答遺伝子の調節の欠陥に関係する障害に対する細胞に基づく遺伝子療法を試験することもできる。DNA損傷応答ペプチドに対して惹起される抗体をin vitroで用いて、DNA損傷応答ペプチドを産生するように遺伝子工学で処置した細胞において達成されたDNA損傷応答遺伝子発現のレベルを決定することができる。本明細書に開示した確証はDNA損傷応答遺伝子産物が細胞内遺伝子産物であることを示すので、かかる評価は、好ましくは、細胞ライセートまたは抽出物を用いて行う。かかる分析は、in vivoで治療上の効能を達成するために必要な形質転換細胞の数の決定、ならびに遺伝子置換プロトコルの最適化を可能にしうる。
分析すべき組織または細胞型には、一般的にDNA損傷剤耐性の癌細胞型などのDNA損傷応答遺伝子を発現することが既知のまたは疑われるものが含まれる。本発明で用いるタンパク質単離方法は、例えば、本明細書に参照によりその全文が組み入れられる、HarlowおよびLane (Harlow, E.およびLane, D., 1988, 「抗体:実験室マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記載の方法であってもよい。単離した細胞は患者由来の細胞培養から誘導することができる。培養から採取した細胞の分析を用いて、DNA損傷応答遺伝子の発現に対する化合物の効果を試験することができる。
DNA損傷応答遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片を検出するための好ましい診断法は、例えば、DNA損傷応答遺伝子産物または保存された変異体またはペプチド断片を、抗DNA損傷応答遺伝子産物に特異的な抗体とのそれらの相互作用により検出するイムノアッセイに関わりうる。
例えば、DNA損傷応答タンパク質と結合する抗体、または抗体のフラグメントを用いて、DNA損傷応答遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片の存在を定量的にまたは定性的に検出することができる。これは、例えば、光顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光定量による検出と結合した蛍光標識抗体を用いる免疫蛍光技法(本節の下記参照)により達成することができる。かかるDNA損傷応答遺伝子産物が細胞表面上に発現される場合、かかる技法は特に好ましい。
さらに、本発明に有用である抗体(またはそのフラグメント)を組織学的に使用して、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡などでDNA損傷応答遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片をin situで検出することができる。in situ検出は、組織学的標本を患者から取除いて、それに本発明の標識した抗体を適用することにより達成することができる。抗体(またはフラグメント)は好ましくは標識した抗体(またはフラグメント)を生物学的サンプル上にオーバーレイすることにより適用する。かかる方法を利用することにより、DNA損傷応答遺伝子産物、または保存された変異体またはペプチド断片の存在だけでなく、試験組織内のその分布も決定することが可能である。当業者は、本発明を用いて、かかるin situ検出を達成するために、様々な組織学的方法(染色方法などの)のいずれかを修飾できることを容易に気付くであろう。
DNA損傷応答遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片のイムノアッセイは、典型的には、サンプル、例えば生物学的液、組織抽出物、新しく収穫した細胞、または細胞培養中でインキュベートしていた細胞のライセートを、DNA損傷応答遺伝子産物またはその保存された変異体またはペプチド断片を同定することができる検出可能な標識された抗体の存在のもとでインキュベートするステップ、および当技術分野で周知のいくつかの技法のいずれかにより結合した抗体を検出するステップを含みうる。
生物学的サンプルを、ニトロセルロースなどの固体支持体もしくは担体、または細胞、細胞粒子もしくは可溶タンパク質を固定することができる他の固相支持体と接触させて、その上に固定することができる。次いで支持体を好適なバッファーを用いて洗浄し、次いで検出可能なように標識されたDNA損傷応答遺伝子特異的抗体を用いて処理することができる。次いで固相支持体をバッファーを用いて2回目の洗浄を行って未結合の抗体を取除くことができる。固体支持体上の結合した標識の量を通常の方法で検出することができる。
「固相支持体または担体」は、抗原または抗体と結合することができるいずれかの支持体を意図する。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然のおよび修飾したセルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩(gabbro)、および磁鉄鉱(magnetite)が挙げられる。担体の性質は、本発明の目的に対してある程度可溶であってもまたは不溶であってもよい。支持体材料は、結合した分子が抗原または抗体と結合することができる限り、実質的にいずれの可能な構造形状を有してもよい。従って、支持体形状は、ビーズなどの球状、または試験管の内表面、もしくは棒の外表面のように、円筒状であってもよい。あるいは、表面は、シート、試験片、などのように平滑であってもよい。好ましい支持体としては、ポリスチレンビーズが挙げられる。当業者は抗体または抗原と結合する好適な担体を知っているか、または日常的な実験によって上記担体を確認することができるであろう。
抗DNA損傷応答遺伝子産物抗体の所与のロットの結合活性は、周知の方法により決定することができる。当業者は、それぞれの決定のための操作しうるおよび最適の試験条件を日常的な実験により決定することができる。
DNA損傷応答遺伝子ペプチドに特異的な抗体を検出可能なように標識できる方法の1つは、上記抗体を酵素と連結して酵素イムノアッセイ(EIA)に使用する方法である(Voller, A.,「酵素結合免疫吸着アッセイ(The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA))」, 1978, Diagnostic Horizons 2:1-7, Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, MD);Voller, A.ら, 1978, J. Clin. Pathol. 31:507-520;Butler, J. E., 1981, Meth. Enzymol. 73:482-523;Maggio, E. (編) , 1980, 「酵素イムノアッセイ(Enzyme Immunoassay)」, CRC Press, Boca Raton, FL,;Ishikawa, E.ら, (編) , 1981, 「酵素イムノアッセイ(Enzyme Immunoassay)」, Kgaku Shoin, Tokyo)。抗体と結合した酵素は、適当な基質、好ましくは色素生産性基質と反応して、例えば、分光光度的、蛍光光度的または、視覚的方法により検出することができる化学的部分を生成する。抗体を検出可能なように標識することができる酵素としては、限定されるものでないが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、塩基性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。検出は、酵素に対する色素生産性基質を用いる比色法により達成することができる。検出はまた、基質の酵素反応の程度を同様に調製した標準と比較して視覚的比較により達成することもできる。
検出はまた、様々な他のイムノアッセイのいずれかを用いることにより達成することもできる。例えば、抗体または抗体フラグメントを放射標識することにより、DNA損傷応答ペプチドをラジオイムノアッセイ(RIA)を利用して検出することが可能である(例えば、参照により本明細書に組み入れられるWeintraub, B., 「ラジオイムノアッセイの原理、第7回放射リガンドアッセイ技法訓練コース(Principles of Radioimmunoassay, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques)」, The Endocrine Society, March 1986を参照)。放射性同位体はγ線カウンターもしくはシンチレーションカウンターによりまたはオートラジオグラフィにより検出することができる。
抗体はまた、蛍光化合物を用いて標識することもできる。蛍光標識した抗体を適当な波長の光に曝すと、その存在を次いで蛍光によって検出することができる。最も普通に用いられる蛍光標識化合物のなかには、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒドおよびフルオレサミンがある。
抗体はまた、蛍光放出金属、例えば152Eu、または他のランタニド族を用いて検出可能なように標識することもできる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレートグループを用いて抗体と結合させることができる。
抗体はまた、それを化学発光化合物とカップリングさせることにより検出可能なように標識することができる。化学発光タグ付き抗体の存在は、次いで化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することにより測定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマチックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
同様に、生物発光化合物を使用して本発明の抗体を標識することができる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加する生物系において見出される化学発光の1つの型である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することにより測定することができる。標識の目的用の重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
5.4.6.DNA損傷応答遺伝子の発現を調節する方法
様々な治療手法を本発明に従って利用し、DNA損傷応答遺伝子の発現をin vivoでモジュレートすることができる。例えば、siRNA分子を遺伝子操作し、これを用いてDNA損傷応答遺伝子をin vivoでサイレンシングすることができる。アンチセンスDNA分子を遺伝子操作して、これを用いてDNA損傷応答mRNAの翻訳をin vivoでブロックすることもできる。あるいは、リボザイム分子を、DNA損傷応答mRNAをin vivoで切断して破壊するように設計することもできる。他の選択肢としては、DNA損傷応答遺伝子の5'領域(コード配列の上流領域を含む)とハイブリダイズして3本らせん構造を形成するように設計したオリゴヌクレオチドを用いてDNA損傷応答遺伝子の転写をブロックまたは低減することができる。オリゴヌクレオチドはまた、ネガティブレギュレーターの結合部位とハイブリダイズして3本らせん構造を形成し、ネガティブレギュレーターの結合をブロックしてDNA損傷応答遺伝子の転写を増強するように設計することもできる。
様々な治療手法を本発明に従って利用し、DNA損傷応答遺伝子の発現をin vivoでモジュレートすることができる。例えば、siRNA分子を遺伝子操作し、これを用いてDNA損傷応答遺伝子をin vivoでサイレンシングすることができる。アンチセンスDNA分子を遺伝子操作して、これを用いてDNA損傷応答mRNAの翻訳をin vivoでブロックすることもできる。あるいは、リボザイム分子を、DNA損傷応答mRNAをin vivoで切断して破壊するように設計することもできる。他の選択肢としては、DNA損傷応答遺伝子の5'領域(コード配列の上流領域を含む)とハイブリダイズして3本らせん構造を形成するように設計したオリゴヌクレオチドを用いてDNA損傷応答遺伝子の転写をブロックまたは低減することができる。オリゴヌクレオチドはまた、ネガティブレギュレーターの結合部位とハイブリダイズして3本らせん構造を形成し、ネガティブレギュレーターの結合をブロックしてDNA損傷応答遺伝子の転写を増強するように設計することもできる。
ある好ましい実施形態においては、siRNA、アンチセンス、リボザイム、および3本らせんヌクレオチドを、1以上のDNA損傷応答タンパク質アイソフォームの翻訳または転写を抑制し、1以上の配列モチーフをDNA損傷応答遺伝子と共有しうる他の遺伝子の発現に対して最小限の効果を与えるように設計する。これを達成するためには、使用するオリゴヌクレオチドをDNA損傷応答遺伝子に対してユニークな関連配列に基づいて設計しなければならない。
例えば、限定するものではないが、オリゴヌクレオチドは、DNA損傷応答遺伝子のヌクレオチド配列が他の遺伝子のヌクレオチド配列と最も相同的である領域内に入ってはならない。アンチセンス分子の場合、配列は先のリストから選ぶことが好ましい。また、配列の翻訳を阻止する標的mRNA配列との十分強いアニーリングを達成するために、配列は長さが少なくとも18個のヌクレオチドであることも好ましい(Izantら, 1984, Cell, 36:1007-1015;Rosenbergら, 1985, Nature, 313:703-706)。
「ハンマーヘッド」型のリボザイムの場合、リボザイムの標的配列を先のリストから選ぶことも好ましい。リボザイムは高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するRNA分子である。ハンマーヘッドリボザイムは、少なくとも標的RNAの一部および標的RNAを切断するように工夫された触媒領域に対してヌクレオチド配列が相補的であるハイブリッド形成領域を含む。ハイブリッド形成領域は9個以上のヌクレオチドを含有する。それ故に、本発明のハンマーヘッドリボザイムは、先のリストにある配列と相補的でありかつ長さが少なくとも9個のヌクレオチドであるハイブリッド形成領域を有する。かかるリボザイムの構築と作製は当技術分野で周知であり、Haseloffら, 1988, Nature, 334:585-591にさらに詳しく記載されている。
本発明のリボザイムはまた、RNAエンドリボヌクレアーゼ(以後、「Cech型リボザイム」と呼ぶ)、例えば、天然にテトラヒメナ(Tetrahymena Thermophila)中に存在し(IVS、またはL-19 IVS RNAとして知られる)、Thomas Cechと共同研究者(Zaug,ら, 1984, Science, 224:574-578;ZaugおよびCech, 1986, Science, 231:470-475;Zaug,ら, 1986, Nature, 324:429-433;University Patents Inc.による公開国際特許出願WO 88/04300;Beenら, 1986, Cell, 47:207-216)によって詳しく記載されているものも含む。Cechエンドリボヌクレアーゼは、標的RNA配列とハイブリダイズし、その後、標的RNAの切断が起こることを特徴とする8個の塩基対活性部位を有する。
ハイブリダイズしてDNA損傷応答遺伝子の5'末端に3本らせん構造を形成して転写をブロックするのに用いることができるオリゴヌクレオチドの場合、上記オリゴヌクレオチドは、他のDNA損傷応答に関係する遺伝子中に存在しないDNA損傷応答遺伝子の5'末端の配列と相補的であることが好ましい。また、その配列はかかる他DNA損傷応答に関係する遺伝子の配列とわずかでも相同的であるDNA損傷応答遺伝子プロモーターの領域を含まないことも好ましい。以上の化合物は、限定されるものでないが、送達ビヒクルとしてリポソームの使用を含む、当技術分野で公知の様々な方法により投与することができる。裸のDNAまたはRNA分子も、それらが末端修飾による、環状分子の形成による、またはホスホチオネートおよびチオホスホリル修飾した結合を含む代わりの結合によるなどで、分解に耐性のある形態であれば利用することができる。さらに核酸の送達は、核酸分子がポリリシンまたはトランスフェリンとコンジュゲートしている促進輸送によるものであってもよい。核酸はまた、レトロウイルス、ワクシニア、AAV、およびアデノウイルスなどの様々なウイルス担体のいずれかによって、細胞中に輸送することもできる。
あるいは、かかるアンチセンス、リボザイム、3本らせん、またはDNA損傷応答分子をコードするかまたは上記分子である組換え核酸分子を構築することができる。この核酸分子はRNAまたはDNAのいずれかであってよい。核酸がRNAをコードする場合、その配列は調節エレメントと機能しうる形で結合されていて所望のRNA産物の十分なコピーを産生することが好ましい。調節エレメントは配列の構成的なまたは調節された転写を可能にすることができる。in vivoで、すなわち、細胞または生物の細胞内で、1以上のRNAをコードする細菌プラスミドまたはウイルスRNAもしくはDNAなどのトランスファーベクターを細胞中にトランスフェクトすることができる(例えば、Llewellynら, 1987, J. Mol. Biol., 195:115-123;Hanahanら, 1983, J. Mol. Biol., 166:557-580を参照)。一旦細胞内に入ると、トランスファーベクターは複製し、そして細胞性ポリメラーゼにより転写されてRNAを産生するかまたは宿主細胞のゲノム中に組み込まれうる。あるいは、1以上のRNAをコードする配列を含有するトランスファーベクターを、マイクロインジェクションなどの顕微操作技法を用いて、トランスファーベクターまたはその一部が宿主細胞のゲノム中に組み込まれるように細胞中にトランスフェクトするかまたは細胞中に導入することができる。
RNAiを利用してDNA損傷応答遺伝子の発現をノックダウンすることもできる。一実施形態においては、DNA損傷応答遺伝子から転写されたmRNAの相同性領域とハイブリダイズする21-23個のヌクレオチドの2本鎖のRNA分子を用いてmRNAを分解し、それによりDNA損傷応答遺伝子の発現を「サイレンシング」する。好ましくは、そのdsRNAはハイブリッド化領域、例えば、DNA損傷応答遺伝子の配列をコードする配列と相補的である19個のヌクレオチドの2本鎖領域を有する。DNA損傷応答遺伝子、例えば、ヒトDNA損傷応答遺伝子の適当なコード配列を標的とするsiRNAを本発明において利用することができる。例示の実施形態として、DNA損傷応答遺伝子のコード領域を標的とする21個のヌクレオチドの2本鎖siRNAを、標準の選択ルールによって設計する(例えば、Elbashirら, 2002, Methods 26:199-213を参照、これは本明細書に参照によりその全文が組み入れられる)。
核酸を細胞中に導入するいずれかの標準方法を用いることができる。一実施形態においては、細胞をDNA損傷応答遺伝子を標的とするsiRNAに提供することにより遺伝子サイレンシングを誘導することができる(例えば、Elbashirら, 2001, Nature 411, 494-498;Elbashirら, 2001, Genes Dev. 15, 188-200を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。siRNAは、化学的に合成するか、または組換え体ダイサーによる2本鎖RNAの切断から誘導することができる。DNA損傷応答遺伝子サイレンシングのために2本鎖DNA(dsRNA)を誘導する他の方法は、shRNA、短いヘアピンRNAである(例えば、Paddisonら, 2002, Genes Dev. 16, 948-958;Brummelkampら, 2002, Science 296, 550-553;Sui, G.ら 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 5515-5520を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。本法においては、DNA損傷応答遺伝子を標的とsiRNAは、プラスミド(またはウイルス)からヘアピン構造を形成する介在ループ配列をもつ逆方向反復配列として発現される。得られるヘアピンを含有するRNA転写物は続いてダイサーによりプロセシングされてサイレンシングのためのsiRNAを産生する。プラスミドに基づくshRNAは細胞内で安定して発現することができるので、in vitroおよびin vivo両方の細胞内で長期遺伝子サイレンシングを可能にする(McCaffreyら 2002, Nature 418,38-39;Xiaら, 2002, Nat. Biotech. 20,1006-1010;Lewisら, 2002, Nat. Genetics 32, 107-108;Rubinsonら, 2003, Nat. Genetics 33,401- 406;Tiscorniaら, 2003, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100, 1844-1848を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。DNA損傷応答遺伝子を標的とするsiRNAはまた、哺乳動物、たとえばヒトの器官または組織へin vivoで送達することもできる(例えば、Songら 2003, Nat. Medicine 9, 347-351;Sorensenら, 2003, J. Mol. Biol. 327,761-766;Lewisら, 2002, Nat. Genetics 32,107-108を参照、これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。本法においては、siRNAの溶液を哺乳動物の静脈内に注入する。次いでsiRNAは目的の器官または組織に到達して哺乳動物の器官または組織中の標的遺伝子の発現を効果的に低減することができる。
5.4.7.DNA損傷応答タンパク質の活性および/またはその経路を調節する方法
DNA損傷応答タンパク質の活性はDNA損傷応答タンパク質とその結合パートナーの相互作用をモジュレートすることにより調節することができる。一実施形態においては、薬剤、例えば、抗体、アプトマー、小有機または無機分子を用いてDNA損傷応答結合パートナーの結合を抑制してDNA損傷剤耐性を調節することができる。他の実施形態においては、薬剤、例えば、抗体、アプトマー、小有機または無機分子を用いてDNA損傷応答タンパク質調節経路中のタンパク質の活性を抑制し、そしてDNA損傷剤耐性を調節することができる。一実施形態においては、キナーゼインヒビター、例えば、ハービマイシン、グリベック、ゲニステイン、ラベンダスチン、イレッサを用いてDNA損傷応答タンパク質キナーゼの活性を調節する。
DNA損傷応答タンパク質の活性はDNA損傷応答タンパク質とその結合パートナーの相互作用をモジュレートすることにより調節することができる。一実施形態においては、薬剤、例えば、抗体、アプトマー、小有機または無機分子を用いてDNA損傷応答結合パートナーの結合を抑制してDNA損傷剤耐性を調節することができる。他の実施形態においては、薬剤、例えば、抗体、アプトマー、小有機または無機分子を用いてDNA損傷応答タンパク質調節経路中のタンパク質の活性を抑制し、そしてDNA損傷剤耐性を調節することができる。一実施形態においては、キナーゼインヒビター、例えば、ハービマイシン、グリベック、ゲニステイン、ラベンダスチン、イレッサを用いてDNA損傷応答タンパク質キナーゼの活性を調節する。
5.4.8.DNA損傷応答遺伝子および/またはその産物を標的とすることによる癌療法
DNA損傷応答遺伝子またはタンパク質の発現および/または活性をモジュレートする上記の方法および/または組成物を、DNA損傷剤と併用して癌を有する患者を治療することができる。特に、DNA損傷応答が介在するDNA損傷剤耐性を表す癌を有する患者を治療するために、本方法および/または組成物をDNA損傷剤と併用することができる。かかる療法を用いて治療することができる癌としては、限定されるものでないが、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫およびグリア芽細胞腫、小細胞肺癌、骨肉腫、膵癌、乳癌および前立腺癌、マウス黒色腫および白血病、ならびにB細胞リンパ腫が挙げられる。
DNA損傷応答遺伝子またはタンパク質の発現および/または活性をモジュレートする上記の方法および/または組成物を、DNA損傷剤と併用して癌を有する患者を治療することができる。特に、DNA損傷応答が介在するDNA損傷剤耐性を表す癌を有する患者を治療するために、本方法および/または組成物をDNA損傷剤と併用することができる。かかる療法を用いて治療することができる癌としては、限定されるものでないが、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫およびグリア芽細胞腫、小細胞肺癌、骨肉腫、膵癌、乳癌および前立腺癌、マウス黒色腫および白血病、ならびにB細胞リンパ腫が挙げられる。
好ましい実施形態においては、DNA損傷応答が介在するDNA損傷剤耐性を表す癌を有する患者を治療するために、本発明の方法および/または組成物をDNA損傷剤と併用する。かかる実施形態においては、DNA損傷応答の発現および/または活性をモジュレートして癌細胞にDNA損傷剤に対する感受性を付与し、それによりDNA損傷剤療法の効能を付与するかまたは増強する。
併用療法においては、本発明の1以上の組成物を、DNA損傷剤の投与前、投与と同時に、または投与後に投与することができる。一実施形態においては、本発明の組成物をDNA損傷剤の投与前に投与する。本発明の組成物とDNA損傷剤の投与の間の時間間隔は、当業者が手慣れた日常的実験により決定することができる。一実施形態においては、DNA損傷応答タンパク質レベルが所望の閾値に到達した後にDNA損傷剤を与える。DNA損傷応答タンパク質レベルは先に記載したいずれかの技法を用いることにより測定することができる。
他の実施形態においては、本発明の組成物を、DNA損傷剤と同時に投与する。
さらに他の実施形態においては、本発明の組成物の1以上をDNA損傷剤の投与後にも投与する。かかる投与は、DNA損傷剤の半減期が治療に用いる本発明の1以上の組成物の半減期より長いときにとりわけ有益である。
本発明の組成物とDNA損傷剤を投与する色々なタイミングのいずれの組み合わせを用いてもよいことは当業者に明白であろう。例えば、DNA損傷剤の半減期が本発明の組成物の半減期より長いとき、本発明の組成物をDNA損傷剤の投与前および後に投与することは好ましい。
本発明の組成物の投与の頻度または間隔は、先に記載の技法のいずれかにより測定することができる所望のDNA損傷応答タンパク質レベルに依存する。DNA損傷応答タンパク質レベルが所望のレベルからより高くまたはより低く変化するとき、本発明の組成物の投与頻度を増加または低減することができる。
本発明の組成物を単独でまたはDNA損傷剤と一緒に投与することの効果または利益は、当技術分野で公知のいずれかの方法により、例えば、生存率、副作用、DNA損傷剤の必要投与量、またはそれらのいずれかの組み合わせを測定することに基づく方法により評価することができる。もし本発明の組成物の投与が、生存率を増加する、副作用を軽減する、DNA損傷剤の必要投与量を低減するなどの患者の1以上の利益を達成するのであれば、本発明の組成物はDNA損傷剤療法を増強したと言えるし、かつ本発明の方法は効能を有すると言える。
5.5.医薬製剤と投与経路
STK6遺伝子発現または遺伝子産物活性に影響を与えると確認された化合物を患者に治療上有効な用量だけ投与して、STK6の調節の欠陥に関係する障害を治療または改善することができる。治療上有効な用量は、細胞においてKSPi耐性の改善および/またはKSPインヒビターの増殖抑制効果の増強をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。
STK6遺伝子発現または遺伝子産物活性に影響を与えると確認された化合物を患者に治療上有効な用量だけ投与して、STK6の調節の欠陥に関係する障害を治療または改善することができる。治療上有効な用量は、細胞においてKSPi耐性の改善および/またはKSPインヒビターの増殖抑制効果の増強をもたらすのに十分な化合物の量を意味する。
5.5.1.有効な用量
かかる化合物の毒性および治療効力は、例えば、細胞培養または実験動物におけるLD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%に対する治療上有効な用量)を測定する標準製薬手順により決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数であって、比LD50/ED50として表現することができる。大きい治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いることはできるものの、かかる化合物が患部組織の部位を標的とする送達系を設計し、非感染細胞を損傷する可能性を最小化してそれによる副作用を軽減するよう注意しなければならない。
かかる化合物の毒性および治療効力は、例えば、細胞培養または実験動物におけるLD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%に対する治療上有効な用量)を測定する標準製薬手順により決定することができる。毒性と治療効果の間の用量比が治療指数であって、比LD50/ED50として表現することができる。大きい治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いることはできるものの、かかる化合物が患部組織の部位を標的とする送達系を設計し、非感染細胞を損傷する可能性を最小化してそれによる副作用を軽減するよう注意しなければならない。
細胞培養アッセイと動物研究から得たデータを、ヒトに用いる投与量の範囲を処方するのに利用することができる。かかる化合物の投与量は、好ましくはED5Oを含み、毒性が僅かしかまたは全く無い循環濃度の範囲内にある。投与量は採用する投与剤形および利用する投与経路に応じてこの範囲内で変化しうる。本発明の方法に用いるいずれかの化合物の治療上有効な用量は、最初、細胞培養アッセイから見積もることができる。ある用量を動物モデルにおいて処方し、細胞培養において決定したIC5O(すなわち、症候群の最大抑制半値(half-maximal inhibition)を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成することができる。かかる情報を利用してヒトにおいて有用な用量をさらに正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィにより測定することができる。
5.5.2.製剤と用途
本発明によって使用する医薬組成物は、通常の方法で1以上の生理学的に許容される担体または賦形剤を用いて製剤することができる。
本発明によって使用する医薬組成物は、通常の方法で1以上の生理学的に許容される担体または賦形剤を用いて製剤することができる。
従って、化合物および生理学的に許容される塩および溶媒和化合物は、吸入または吹送(口または鼻を介して)または経口、バッカル、非経口または直腸投与による投与用に製剤することができる。
経口投与用の医薬組成物は、慣用の方法により、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコールデンプンナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの製薬上許容される賦形剤を用いて調製した錠剤またはカプセルの剤形をとることができる。錠剤は当技術分野で周知の方法によりコーティングしてもよい。経口投与用の液製剤は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の剤形をとってもよいし、または水もしくは他の好適なビヒクルを用いて使用前に構成する乾燥製品として提供してもよい。かかる液製剤は、慣用の方法により、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油状エステル、エチルアルコールまたは分留植物油);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)などの製薬上許容される添加物を用いて調製することができる。製剤はまた、緩衝塩、香料、着色剤および甘味剤を適宜含有することができる。
経口投与用の製剤は、活性化合物を制御して放出するのに好適なように製剤することができる。
バッカル投与用の組成物は、慣用の方法で製剤した錠剤またはトローチ剤の剤形をとることができる。
本発明に従って使用する吸入投与用の化合物は、便宜上、エーロゾルスプレーで提供する形態で、加圧パックまたは噴霧器から、好適な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の好適なガスを使用して送達される。加圧エーロゾルの場合、投与量単位は一定量を送達するバルブを設けることにより決定することができる。吸入器または吹送器に使用する、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤とのパウダーミックスを含有するように製剤することができる。
化合物は、注入による、例えば、ボーラス注射または連続輸液による非経口投与用に製剤することができる。注入用の製剤は、単位投与量剤形、例えば、アンプルに入れてまたは多用量容器に入れて、保存剤を加えて提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁化液のような剤形をとってもよく、そして懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの製剤用薬剤を含有してもよい。あるいは、活性成分は、好適なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水を用いて、使用前に構成する粉末剤形であってもよい。
化合物はまた、例えば、ココアバターもしくは他のグリセリドなどの慣用の座剤基剤を含有する座薬または保持浣腸などの直腸組成物で製剤することもできる。
以上記載した製剤だけでなく、化合物はまた、デポー製剤として製剤することもできる。かかる長期間作用する製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内)によりまたは筋肉内注射により投与することができる。従って、化合物は、好適なポリマーまたは疎水性物質(例えば、許容される油中の乳濁化液として)またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体、例えば難溶性塩として製剤することができる。
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1以上の単位投与量を含有してもよいパックまたはディスペンサー装置で提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含んでもよい。パックまたはディスペンサー装置に投与の指示書を付随させてもよい。
5.5.3.投与経路
好適な投与経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、経皮、または腸投与;筋肉内、皮下、髄内注入、ならびにくも膜下腔内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注入を含む非経口送達が挙げられる。
好適な投与経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、経皮、または腸投与;筋肉内、皮下、髄内注入、ならびにくも膜下腔内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注入を含む非経口送達が挙げられる。
あるいは、化合物を全身にというよりむしろ局所に、例えば、化合物の罹患域中への直接注入を介して、しばしばデポーまたは徐放製剤で、投与することができる。
さらに、標的を定めた薬物送達系で、例えば、罹患細胞に特異的な抗体を用いてコーティングしたリポソームで薬物を投与することができる。リポソームは細胞を標的とするものであって細胞により選択的に摂取されうる。
5.5.4.包装
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1以上の単位投与量を含有するパックまたはディスペンサー装置に入れて提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔であってもよい。パックまたはディスペンサー装置は投与の指示書を付随させてもよい。適合しうる製薬担体中に製剤した本発明の化合物を含む組成物を調製し、適当な容器に入れ、そして治療の適応症のラベルを付すこともできる。ラベルに示される適応症としては、異常なまたは過剰なSTK6またはDNA損傷応答遺伝子の発現または活性を特徴とする疾患の治療が挙げられる。
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1以上の単位投与量を含有するパックまたはディスペンサー装置に入れて提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔であってもよい。パックまたはディスペンサー装置は投与の指示書を付随させてもよい。適合しうる製薬担体中に製剤した本発明の化合物を含む組成物を調製し、適当な容器に入れ、そして治療の適応症のラベルを付すこともできる。ラベルに示される適応症としては、異常なまたは過剰なSTK6またはDNA損傷応答遺伝子の発現または活性を特徴とする疾患の治療が挙げられる。
6.実施例
以下の実施例は本発明を説明する方法として提供するものであり、決して本発明を限定することを意図するものでない。
以下の実施例は本発明を説明する方法として提供するものであり、決して本発明を限定することを意図するものでない。
6.1.実施例1:STK6およびTPX2はKSPと相互作用する
本実施例は、KSP遺伝子のインヒビターと相互作用する遺伝子を求めて行なったsiRNAライブラリーのスクリーニングを説明する。CIN8はKSPのS.セレビジエ(S. cerevisiae)相同体である。CIN8の欠失突然変異体は生存可能であり、CIN8不在時に(存在時でなく)必須である多数の遺伝子が確認されている(Geiserら, 1997, Mol Biol Cell. 8:1035-1050)。類推により、これらの遺伝子のヒト相同体の破壊は、最適濃度以下のKSPiの存在時には不在時よりも、腫瘍細胞増殖に対してさらに破壊的でありうると理由付けた。CIN8と合成致死性であると報じられた11種の遺伝子(CDC20、ROCK2、TTK、FZR1、BUB1、BUB3、BUB1B、MAD1L1、MAD2L1、DNCH1およびSTK6)の相同体に対するsiRNAを含有するsiRNAライブラリーを、KSPインヒビター、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン(EC50〜80nM)の効果をモジュレートする遺伝子を求めて、スクリーニングした。11種の遺伝子を標的とするsiRNAの配列を表Iに掲げる。これらのsiRNAを、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンの<EC10濃度(25nM)の存在または不在のもとでHeLa細胞中にトランスフェクトした。表Iはまた、それぞれルシフェラーゼ、PTEN、およびKSPを標的とするsiRNAの配列も掲げる。
本実施例は、KSP遺伝子のインヒビターと相互作用する遺伝子を求めて行なったsiRNAライブラリーのスクリーニングを説明する。CIN8はKSPのS.セレビジエ(S. cerevisiae)相同体である。CIN8の欠失突然変異体は生存可能であり、CIN8不在時に(存在時でなく)必須である多数の遺伝子が確認されている(Geiserら, 1997, Mol Biol Cell. 8:1035-1050)。類推により、これらの遺伝子のヒト相同体の破壊は、最適濃度以下のKSPiの存在時には不在時よりも、腫瘍細胞増殖に対してさらに破壊的でありうると理由付けた。CIN8と合成致死性であると報じられた11種の遺伝子(CDC20、ROCK2、TTK、FZR1、BUB1、BUB3、BUB1B、MAD1L1、MAD2L1、DNCH1およびSTK6)の相同体に対するsiRNAを含有するsiRNAライブラリーを、KSPインヒビター、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン(EC50〜80nM)の効果をモジュレートする遺伝子を求めて、スクリーニングした。11種の遺伝子を標的とするsiRNAの配列を表Iに掲げる。これらのsiRNAを、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンの<EC10濃度(25nM)の存在または不在のもとでHeLa細胞中にトランスフェクトした。表Iはまた、それぞれルシフェラーゼ、PTEN、およびKSPを標的とするsiRNAの配列も掲げる。
siRNAトランスフェクションは次の通り実施した:トランスフェクションの1日前に、選んだ細胞、例えば、DMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)中でほぼ90%集密度まで増殖した子宮頚癌HeLa細胞(ATCC、Cat. No. CCL-2)の100μlを96-well組織培養プレート(Corning、Coming、NY)に1500細胞/ウエルでまいた。それぞれのトランスフェクションに対して、OptiMEM(Invitrogen)85μlを20μMストックから連続希釈した5μlのsiRNA(Dharrnacon、Denver)と混合した。それぞれのトランスフェクションに対して、OptiMEM 5μlをオリゴフェクトアミン試薬(Invitrogen)5μlと混合し、そして5分間室温にてインキュベートした。OptiMEM/オリゴフェクトアミン混合物10μlをOptiMEM/siRNA混合物とともにそれぞれのチューブに配って、混合し、そして15-20分間室温にてインキュベートした。トランスフェクション混合物10μlを96ウエルプレートのそれぞれのウエルにアリコートし、そして4時間37℃および5%CO2にてインキュベートした。
4時間後、25nMの(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン有りまたは無しのDMEM/10%ウシ胎児血清100μl/ウエルを加え、プレートを37℃および5%CO2にて68時間インキュベートした。alamarBlueアッセイを用いて細胞増殖を測定した(第5.2節を参照)。alamarBlueアッセイは細胞呼吸を測定し、測定値を生存細胞数の尺度として用いる。増殖している細胞の内部環境は増殖してない細胞の内部環境より還元性である。具体的には、NADPH/NADP、FADH/FAD、FMNH/FMN、およびNADH/NAFの比は増殖中に増加する。alamarBlueはこれらの代謝中間物により還元されうるので、細胞増殖をモニターするために利用することができる。本実施例においては、alamarBlueアッセイを実施して、STK6 siRNAトランスフェクション滴定曲線がKSPインヒビター(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンの存在によって変化するかどうかを次の通り決定した:トランスフェクションの72時間後、培地をウエルから取除き、10%(vol/vol)alamarBlue試薬(Biosource International Inc.、Camarillo、CA)および0.001容積の1M Hepesバッファー組織培養試薬(Invitrogen)を含有するDMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen)100μl/ウエルと置き換えた。プレートを2時間37℃にてインキュベートし、そしてプレートを570および600nm波長にてSpectraMax plusプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)上でSoftmax Pro 3.1.2ソフトウエア(Molecular Devices)を用いて読み取った。サンプルを含有するウエルの還元%を式1に従って計算した。細胞を含有しないウエルの還元%をサンプルを含有するウエルの還元%から差引いて、バックグラウンドレベルを超える還元%を決定した。(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン有りまたは無しのSTK6 siRNAの滴定を用いてトランスフェクトしたウエルの還元%をルシフェラーゼを標的とするsiRNAを用いてトランスフェクトしたウエルの還元%と比較した。(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミン無しのルシフェラーゼでトランスフェクトしたウエルに対する還元%の計算値を100%とみなした。
STK6を標的とする3種類のsiRNA(STK6-1、STK6-2、およびSTK6-3)は、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンの存在のもとで腫瘍細胞増殖の抑制を示した。3つのうち、STK6-1が最初のスクリーニングにおいて最強の増殖抑制活性を示した。この増殖抑制活性がsiRNAの標的を射た活性または外れた活性によるのかどうかを研究するために、STK6を標的とする3つのさらなるsiRNAを使って、全部で6個のsiRNAのSTK6サイレンシングおよび増殖抑制を誘発する能力を研究した。STK6サイレンシングのレベルと増殖抑制の間には良い相関があった(図1)。この相関は、増殖抑制が標的活性(すなわち、STK6破壊)によることを示唆した。次に、STK6-1およびルシフェラーゼに対する対照siRNA(ネガティブ対照)を、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンの存在または不在のもとで滴定した(図2)。KSPiを付加すると、STK6-1用量反応曲線は5-10倍左へシフトした。この濃度のKSPiは、ルシフェラーゼsiRNAにより引き起こされた細胞増殖に対する効果を増加しなかった。対照的に、細胞増殖に対してSTK6-1と類似の効果をもつPTENを標的とするsiRNA(表I)に対する用量反応曲線はKSPiによってシフトしなかった。STK6に対する他のsiRNAも細胞増殖に対するKSPiの効果を増強した。従って、KSPの破壊はSTK6 siRNAの細胞増殖に対する効果を増強する。さらに、これに対する支持が、siRNAのSTK6およびKSPとの組み合わせを用いる研究により得られ、いずれかのsiRNA単独の場合よりも大きい増殖抑制活性を示した。この実験に用いたKSPiの濃度はそれ自身で細胞増殖に影響を与えなかったので、KSPiのSTK6 siRNA活性に対する効果は、付加的というよりも相乗的であるらしい。
ヒトSTK6とKSPの間の相互作用は、アフリカツメガエルにおけるこれらの遺伝子の生理学的相互作用の確証(Gietら, 1999, J Biol Chem. 274:15005-5013)と一致する。特に、STK6とKSPのアフリカツメガエル相同体は紡錘体極に共存し、それらのタンパク質は免疫沈降による分子会合を示す。さらにKSPはSTK6の基質である。
STK6 siRNAによる増殖抑制は、この遺伝子が腫瘍細胞増殖に必須であることを示唆し、抗腫瘍標的としてのSTK6の研究を支持する。STK6のインヒビターとKSPiの間の合成致死相互作用を示すデータは、これらの化合物による併用療法はいずれかの化合物単独による両方よりもさらに効果的でありうることを示唆する。STK6はしばしば、不十分な予後を伴う乳癌を含むヒト腫瘍において過剰発現される(van't Veerら, 2002, Nature. 2002 415:530-536)。STK6の増幅はタキソールに対する耐性と関係づけられている(Anandら, 2003, Cancer Cell. 3:51-62)。KSPiとタキソールは両方とも同じ標的(紡錘体)に対して影響を与えるので、STK6の過剰発現も同様にKSPiの効力を低減しうる。この可能性はKSPiのインヒビターとSTK6の間の相互作用を示す結果と一致し、KSPiの臨床開発中に研究されるべきである。例えば、KSPiは不十分な予後を伴う乳癌において、これらの腫瘍がSTK6を過剰発現する傾向をもつので、最適に有効であり得ない。
図17は、KSPiに感作させる遺伝子を求めて行なったスクリーニング結果を示す。その結果は、TPX2もKSPと相互作用することを示す。TPX2のサイレンシングに用いたsiRNA配列も表Iに掲げる。
2つの問題がRNAi手法を用いる合成致死スクリーニングの可能性を制限してきた。第1に、合成致死の実証は、定義した遺伝子破壊により誘導される致死表現型が第1ヒット遺伝子喪失または突然変異により素因化された細胞において観察されること、しかし野生型対立遺伝子またはタンパク質だけを含有する細胞において観察されないことが必要である。従って、高度に制御された実験を行うために、第1ヒット遺伝子破壊を除くと同質遺伝子的(isogenic)であるマッチした培養細胞株対を用いて合成致死を試験することが望ましい。利用しうる腫瘍培養細胞株のほとんどについて、かかるマッチした培養細胞株対を利用することができなかった。第2に、二重siRNAトランスフェクションを利用して細胞内の2つの遺伝子破壊を作製する試みは、別個のmRNAを標的とするsiRNAはお互いに競合し、使用するsiRNAの片方もしくは両方の効力の効率を低減するという観察結果が妨げとなってきた。本実施例においては、二重RNAiスクリーニングが第1ヒット遺伝子を破壊するshRNAの安定したin vivo送達と第2遺伝子を標的とするsiRNAのスーパートランスフェクションを利用して達成することができるのを示した。この手法は、マッチした(同質遺伝子の)培養細胞株対(+または−shRNA)を提供しかつshRNAとsiRNAの間の競合を生じなかった。本実施例においては、短ヘアピンRNA(shRNAs)の安定した発現によりサイレンシングされた一次遺伝子標的をもつクローン培養細胞株を確立した。他の遺伝子を標的とするsiRNAを用いたこれらのクローンの一過性トランスフェクション(スーパートランスフェクション)はshRNAによる一次標的サイレンシングに大きな影響を与えなかったし、またsiRNAによる標的サイレンシングはshRNAによる影響を受けなかった。この手法を用いて、低濃度のDNA損傷剤ドキソルビシンの存在のもとでの、TP53(p53)とチェックポイントキナーゼCHEK1の間の合成致死を実証した。
RNA干渉は、一過性トランスフェクションを介する合成2本鎖小干渉RNA(siRNA)の送達を利用することによりまたは一過性で導入されたもしくはゲノム中に安定して組み込まれた組換えベクターからの短ヘアピンRNA(shRNAs)の細胞内発現により達成することができる(例えば、Paddisonら, 2002, Genes Dev 16:948-958;Suiら, 2002, Proc Natl Acad Sci USA 99:5515-5520;Yuら, 2002, Proc Natl Acad Sci USA 99:6047-6052;Miyagishiら, 2002, Nat Biotechnol 20:497-500;Paulら, 2002, Nat Biotechnol 20:505-508;Kwakら, 2003, J Pharmacol Sci 93:214-217;Brummelkampら, 2002, Science 296:550-553;Bodenら, 2003, Nucleic Acids Res 31:5033-5038;Kawasakiら, 2003, Nucleic Acids Res 31:700-707を参照)。ピューロマイシン耐性マーカーをコードしかつH1(RNA Pol III)プロモーターからshRNA発現を駆動するpRETRO-SUPER(pRS)ベクターを用いた。pRS-TP53 1026 shRNAプラスミドは、TP53に対するNKIライブラリープラスミドプールから、細菌を上記プールにより形質転換して目的のプラスミドだけを含有するクローンを探すことによって解きほぐした。使用した配列は次の通りである:pRS-p53 1026 19量体配列:GACTCCAGTGGTAATCTAC(配列番号43);配列特異的PCR用のプライマー:フォワード:GTAGATTACCACTGGAGTC(配列番号44)、リバース:CCCTTGAACCTCCTCGTTCGACC(配列番号45)。プラスミドは配列特異的PCRにより同定し、そして配列決定により確認した。安定なクローンは、HCT116細胞をFuGENE 6(Roche)を用いてpRS-TP53 1026プラスミドによりトランスフェクトすることによって作製した。細胞を10cmディッシュ中に分割し、48時間後に1ug/mlピューロマイシンを加え、そしてコロニーが明確になるまで(5-7日)維持した。クローンを96ウエルプール中に拾い、1ug/mlピューロマイシン中で維持し、そしてTaqMan分析により、TP53およびhGUSプレデベロップアッセイ試薬(Pre-Developed Assay Reagent)(Applied Biosystems)を用いてノックダウンについて試験した。pRS-TP53 1026 プラスミドによる一過性ノックダウンを測定するために、HCT116細胞をリポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトし、そしてRNAを24時間後に収穫した。TP53レベルをTaqMan分析により試験した。
大腸腫瘍培養細胞株HCT116から誘導された多重ピューロマイシン耐性TP53 shRNAクローン(pRS-p53)の分析結果は、標的サイレンシングの様々なレベル(50%〜96%)を示した。図3は、最高レベルのサイレンシングを示したクローンA5およびA11におけるTP53発現のレベルを示す。これらのクローンで達成されたTP53サイレンシングは、pRS-p53のHCT116細胞中への一過性トランスフェクションによる送達後24時間に観察されたレベルを超えた(図3)。トランスフェクション効率が一過性アッセイにおけるTP53 shRNAの有効性を限定する可能性がある。あるいは、より高いTP53サイレンシングのレベルを有する細胞はクローン増殖の間、増殖が有利である。また、STK6を標的とするshRNA(pRS-STK6:pRS-STK6 2178 19量体配列:CATTGGAGTCATAGCATGT(配列番号46))を用いて、安定なクローンにおけるある範囲のサイレンシングも観察した。しかし、これらのクローンは、TP53培養細胞株で観察された高度のサイレンシングを達成しなかったし、サイレンシングは一過性アッセイで達成したものより大きくなかった。これは、STK6は培養中の腫瘍細胞増殖にとって必須の遺伝子であるので、高レベルのSTK6サイレンシングに対する選択が行われたことを示しうる。
HCT116クローンA11のTP53サイレンシングがsiRNAと競合するかどうかを試験するために、このクローンの細胞をCHEK1-特異的siRNAのプールを用いてスーパートランスフェクトした。CHK1プールは、次の3種類のsiRNAを含有する:CUGAAGAAGCAGUCGCAGUTT(配列番号99);AUCGAUUCUGCUCCUCUAGTT(配列番号98);およびUGCCUGAAAGAGACUUGUGTT(配列番号100)。このsiRNAプールはTP53を標的とするsiRNAのサイレンシング活性を競合して低減することが分かっていた。siRNAをオリゴフェクトアミン(Invitrogen)を用いて、示したように10nMまたは100nMにてトランスフェクトした。CHK1プールについては、同時に、それぞれ3種類のsiRNAを33.3nM、全送達100nMにてトランスフェクトした。RNAをトランスフェクションおよびノックダウンの24時間後に収穫し、TaqMan分析により、CHK1またはTP53およびhGUSプレデベロップアッセイ試薬(Pre-Developed Assay Reagent)(Applied Biosystems)を用いて試験した。図4Aに示すように、shRNAとsiRNAプールはお互いの標的のサイレンシングを競合して抑制しなかった。次いで、一過的にトランスフェクトされたsiRNAまたは同じ配列の安定して発現されたshRNAのいずれかの、公知の競合性siRNAによる抑制を試験した。図4Bに示すように、KNSL1(KNSLI 210:GACCUGUGCCUUUUAGAGATT(配列番号47);KNSLI 211:GACUUCAUUGACAGUGGCCTT(配列番号48);KNSLI 212:AAAGGACAACUGCAGCUACTT(配列番号49))を標的とする3つの個々のsiRNAは、同時トランスフェクトされたSTK6を標的とするsiRNAにより達成されるサイレンシングを競合して抑制した(左のバー)。対照的に、安定してトランスフェクトした培養細胞株における相同性のSTK6 shRNAによるサイレンシングは、競合するsiRNAを10倍高い濃度で加えたとき(中央および右のバー)ですらKNSLI siRNAのスーパートランスフェクションによる影響を受けなかった。これらの実験は、安定して発現されたshRNAと一過的にトランスフェクトされたsiRNAの間の競合は少ししかないことを示唆した。pRSとpRS-p53 HCT116細胞を、〜800種類の遺伝子に対するsiRNAプールを用いて一過的にトランスフェクトし(実施例3を参照、後掲)、そして細胞に対する効果をAlamar Blueアッセイにより測定した。pRS細胞とpRS-p53細胞における〜800個のsiRNAプールに対する応答はほぼ同等であって、サイレンシングの競合抑制の徴候はないことが観察された。
次に、CHEK1 siRNAプールの、TP53 shRNAを安定して発現する細胞中のへのスーパートランスフェクションを評価して、これらの分子間の遺伝相互作用(SL)を研究するために利用できないかを確認した。この相互作用は先に推測していたが、その決定的な実証は試薬またはまたは標的としない効果を除外するのに十分な特異性をもつ遺伝子ノックアウトの不足により妨げられていた。マッチした培養細胞株+/−TP53発現物を、空pRSベクターまたはpRS-p53を含有するA549肺癌培養細胞株の安定なクローンを選択することにより作製した。後者の細胞はTP53 mRNAの>90%のサイレンシングを示した。両方の培養細胞株を次いで、対照ルシフェラーゼsiRNA(luc、100nM)またはCHEK1 siRNAプール(全100nM;3つのsiRNAをそれぞれ33nM)を用いてスーパートランスフェクトし、そしてこれらの細胞周期プロファイルをDNA損傷剤、ドキソルビシンへの曝露ありまたはなしで試験した(Dox、図5)。pRS-p53細胞の細胞周期プロファイルは、Dox不在のもとでのpRS細胞のプロファイルとそれほど異なるものではなかった。CHEK1 siRNAの一過性トランスフェクションもDox不在のもとでの細胞周期プロファイルに影響を与えなかった。しかし、Dox存在のもとでは、pRS-トランスフェクトされた細胞は、機能性TP53を発現する細胞に予想されるG1およびG2/M停止を表した。CHEK1 siRNAのスーパートランスフェクションは、G2チェックポイントのオーバーライドおよびG1でブロックされた細胞数の増加をもたらした。細胞はTP53機能を保持するので、細胞はG1で停止してS期に戻って進行することはなかった。
対照的に、pRS-p53細胞は、Dox処置に応答してG1で停止する能力を失い、主にG2で停止し、G1チェックポイントにおけるTP53の役割に一貫性があった。pRS-p53細胞の細胞周期プロファイルはluc siRNAのスーパートランスフェクションによって変化しなかった(図5)。luc siRNAがTP53応答の部分的回復(および対応するG1ピークの増加)すら引き起こすことができないのは、このsiRNAによるTP53サイレンシングおよび表現型の競合抑制が少ししかないことを示唆する。それ故に、CHEK1 siRNAプールによるTP53サイレンシングの競合抑制が存在するとは予想されなかった。実際、Dox処置に応答して、CHEK1を用いて一過的にトランスフェクトされたpRS-p53細胞は、その細胞周期プロファイルに、S期の細胞の画分の大きい増加とサブG1(死滅細胞)量のDNAを伴う著しい変化を示した。類似の知見はまた、pRSとpRS-p53で安定してトランスフェクトされたHCT116細胞にも観察された。従ってTP53が介在するG1チェックポイントとCHEK1が介在するG2チェックポイントの同時破壊は、TP53−細胞に致死性であるが、TP53+腫瘍細胞に致死性でない。
トランスフェクトされたsiRNAが安定して発現されたshRNAによるサイレンシングを競合抑制しなかったという知見は予想外であった。現在、何故siRNAはサイレンシングを競合して交差抑制するのにshRNAとsiRNAがそうしないのかは明らかでない。これは、これら2つの型のRNAが生化学的に異なるステップでRNAi経路に進入することを示唆しうる。
図15A-Cは細胞のDNA損傷に対する感受性に与えるCHEK1サイレンシングの結果を示す。15A:CHEK1サイレンシング/抑制はHeLa細胞をDNA損傷に感作させる。15B:CHEK1サイレンシング/抑制はp53-A549細胞を感作させる。15C:CHEK1サイレンシングはHREP細胞をドキソルビシンに感作させない。
6.3.実施例3:DNA損傷剤による細胞死滅を増強または低減する遺伝子
本実施例は、DNA損傷剤による細胞死滅を増強または低減する遺伝子を同定するための半自動化siRNAスクリーニングを説明する。半自動化プラットフォームは、小干渉RNA(siRNA)を用いる機能喪失RNAiのスクリーニングを可能にする。800個のヒト遺伝子を標的とするsiRNAのライブラリーを用いてDNA損傷剤、ドキソルビシン(Dox)、カンプトセシン(Campto)、およびシスプラチン(Cis)のエンハンサーを同定した。それぞれのスクリーニングにおいて、その破壊が細胞を化学治療薬による細胞死滅に感作させる多数の遺伝子(「ヒット」)を同定した(表IIIA-Cを参照)。これらのヒットのいくつか(例えばWEE1)は、一般的化学治療薬の活性を増強するための新しい標的を示唆する;他のヒット(BRCA1、BRCA2)は、遺伝的に確認されたこれらの遺伝子の突然変異により引き起こされた癌に対する新しい療法を示唆する。
本実施例は、DNA損傷剤による細胞死滅を増強または低減する遺伝子を同定するための半自動化siRNAスクリーニングを説明する。半自動化プラットフォームは、小干渉RNA(siRNA)を用いる機能喪失RNAiのスクリーニングを可能にする。800個のヒト遺伝子を標的とするsiRNAのライブラリーを用いてDNA損傷剤、ドキソルビシン(Dox)、カンプトセシン(Campto)、およびシスプラチン(Cis)のエンハンサーを同定した。それぞれのスクリーニングにおいて、その破壊が細胞を化学治療薬による細胞死滅に感作させる多数の遺伝子(「ヒット」)を同定した(表IIIA-Cを参照)。これらのヒットのいくつか(例えばWEE1)は、一般的化学治療薬の活性を増強するための新しい標的を示唆する;他のヒット(BRCA1、BRCA2)は、遺伝的に確認されたこれらの遺伝子の突然変異により引き起こされた癌に対する新しい療法を示唆する。
ヒト細胞の遺伝子スクリーニング用のためのsiRNA2本鎖ライブラリーを組み立てた。ライブラリーの1つのバージョンは、1種類の遺伝子当たり3個のsiRNAにより〜800種類の遺伝子を標的とするものである。このライブラリーを拡張して〜2,000種類の遺伝子を標的とするものに、さらに標的>7,000種類の遺伝子(2-3個のsiRNAs/遺伝子)を標的とするものにした。ライブラリーは「薬用ゲノム(druggable genome)」(すなわち、小分子を用いて従来、薬用されている遺伝子または遺伝子ファミリー)由来の遺伝子を標的とするsiRNAを含む。ライブラリーはまた、治療抗体に対する潜在標的の同定を容易にする「メンブラネオム(membraneome)」(細胞膜タンパク質)由来の遺伝子を標的とするsiRNAも含む。表IIIA-Cは本実施例に用いたsiRNAの部分の配列を掲げる。ライブラリーを用いる大規模siRNAスクリーニングを容易にするために、半自動化プラットフォームを開発した。同じ遺伝子を標的とする3つの異なるsiRNAを、トランスフェクション前にプールした(100nM全siRNA濃度)。全ライブラリーを細胞中に二重に、人ひとりで、4時間未満にトランスフェクトすることができる。それぞれのsiRNAプールを典型的に2-4回、単一の実験で試験し、それぞれの実験を一般的に少なくとも2回、通常は別の人により繰返した。別の日にまたは別の人が実施したスクリーニングの間の優れた再現性を達成した。
スクリーニングの目標は、細胞を通常使用される癌治療薬Dox、Campto、およびCisに感作させるための標的を同定することであった。Dox(アドリアマイシン)はトポイソメラーゼII(TopoII)の活性を抑制する。TopoIIは主に細胞周期のG2およびM期に機能し、DNA構造を分解して染色体の適当な詰め込みと分離を可能にするために重要である。CamptoはトポイソメラーゼI(TopoI)を抑制する。TopoIはS期に機能し、前進するDNAポリメラーゼ複合体のねじれ応力を軽減する。Camptoを複製中の細胞に加えると、複製フォークの停止とDNA鎖破損をもたらす。CisはDNAアダクツおよび鎖架橋を引き起こす。CisとCampto治療は両方とも、複製フォークの停止と恐らくはフォーク破損に導いて、dsDNA破損および細胞死に導く。
それぞれの薬剤を用いた一次スクリーニングをTP53が欠失しているHeLa細胞で実施した。HeLa細胞をsiRNAプールによりトランスフェクトし、そして4時間後に薬物を加えた。予備実験を実施して使用するそれぞれの薬物の濃度を決定した;典型的には、これは10%-20%増殖抑制(EC10またはEC20)を与えるのに必要な量であった。細胞+/−薬物の増殖をトランスフェクションの72時間後に試験した。
Cisを用いたスクリーニングの結果を図6に示す。表IIAは、400ng/mlと500ng/mlのcis濃度にわたって平均したシスプラチンによる感作倍数を示す。グラフは、薬物不在のもとでのsiRNAプールを用いてトランスフェクトした細胞に対する百分率増殖(対数目盛)(X軸)-対-薬物存在のもとでの百分率増殖(Y軸)を示す。そのノックダウンが薬物処置に感作させる遺伝子は対角線の下側に位置する一方、そのノックダウンが薬物に対する耐性を媒介する薬物は対角線の上側に位置する。BRCA2を標的とするsiRNAプールはCisに対して>10倍感作を引き起こした。BRCA1を標的とするsiRNAプールは>3倍感作を引き起こした。キナーゼWEE1およびEPHB3を標的とするsiRNAはCisに対して>3倍感作を引き起こした。15遺伝子の全ては>2倍感作を引き起こした。類似のスクリーニングで、DoxおよびCamptoスクリーニングのそれぞれにおいて薬物(表IIB-Cを参照)に対して>2倍感作を引き起こす〜50種類の遺伝子を同定した。異なる遺伝子セットの間の重複について以下に考察する。
このスクリーニングは薬物活性のエンハンサーを明らかにするために設計したことを指摘しておくことが重要である。使用した薬物濃度は細胞増殖に対しては極く僅かしか影響を与えないので、薬物活性のサプレッサーも細胞増殖に対して極く僅かしか影響を与えないであろう。従って、予想されるように、本発明者らは、その破壊が薬物活性を抑止する遺伝子を非常に少数しか観察しなかった。1つの注目すべき例外は、polo様キナーゼであるPLKを標的とするsiRNAはCisの存在のもとで活性が低いことであった。これは恐らく、DNA損傷とPLK破壊が両方とも細胞周期停止を引き起こすという事実を反映するのであろう。細胞周期停止が前者の処置により誘導されると、後者の処置は効果が低くなる。
異なる薬物に対する感作を引き起こす遺伝子間の重複を可視化するために、本発明者らは異なる薬剤に対する細胞増殖−/+薬物(感作倍数)の比を比較した(図7)。Dox対Cisに対する感作を引き起こす遺伝子の比較(図7、左)は、WEE1キナーゼなどのいくつかの遺伝子は細胞を両方の薬剤による死滅に感作させることを示した。対照的に、細胞のCisによる死滅に対する強い感作(>10倍)は、乳癌易罹患性遺伝子BRCA2を標的とするsiRNAについてだけ観察された。Campto対Cisに対する感作を引き起こす遺伝子の比較(図2、右)は、両方の治療による同じトップスコアの遺伝子(BRCA2、BRCA1、EPHB3、WEE1、およびELK1)を明らかにした。
WEE1破壊が3種の薬剤全てに対する感作を引き起こすという観察は、このキナーゼが全ての薬剤に共通するDNA損傷応答を調節することを示唆する。生化学的には、ヒトWEE1はDNA複製と有糸分裂の間の移行を、細胞形質で活性化したCDC2キナーゼから核を保護することにより調整する(Healdら, 1993, Cell 74:463- 474)。他の研究は、WEE1が細胞周期のG2期に機能するDNA修復チェックポイントの一成分であることを示唆する。ほとんどのヒト腫瘍はTP53欠失であるので、これらはTP53が調節するチェックポイントを欠き、主にG1期に機能し、従って、TP53を発現する(すなわち、正常チェックポイント重複を有する)正常組織より他のチェックポイントに大きく依存する。これらを併せて考えると、利用しうるデータは、その生存がG2チェックポイント整合性(integrity)に依存するTP53欠失腫瘍を治療するための治療標的を、WEE1が提供することを示唆する。実際、WEE1のある小分子インヒビターはTP53欠失細胞に対する放射線増感剤として作用することが報じられた(すなわち、細胞を照射誘導細胞死に感作させた)が、この化合物が与えた感作の程度は中度であった(Wangら, 2001, Cancer Res. 61:8211-7)。腫瘍細胞チェックポイント機能におけるこれらのスクリーニングで「ヒットしたもの」を、他の環境における:例えばDNA損傷剤の使用による、他の腫瘍型における、およびマッチした細胞+/−TP53機能についての細胞死滅に感作させる能力について試験した。
CisおよびCamptoに感作させる遺伝子の重複はこれらの薬物の作用機構と一致する。両方ともS期を標的とし、最終的には複製フォークの進行を停止し、dsDNA切断物を生成する。対照的に、Doxは主に細胞周期のG2/M期に機能する。従って、BRCA1およびBRCA2によるCisおよびCamptoの感作は、恐らくS期特異的機構に基づく感作を表わすのであろう。これらの結果は、DNA損傷経路におけるBRCA1およびBRCA2の役割についての新しいデータと一致する(D'Andreaら, 2003, Nat Rev Cancer 3:23-34)。実際、これらの遺伝子は今や、ファンコーニ(Fanconi)貧血に随伴する遺伝子により媒介されるDNA修復経路において機能することが公知であり;BRCA2はこれらの遺伝子の1つ、FANCD1と同一である。BRCA経路に欠陥を抱く細胞はCisに対する感受性が増加する(Taniguchiら, 2003, Nat Med. 9:568-74)。現在、BRCA突然変異による癌患者は、その遺伝子欠陥を標的とする療法を受けてないが、これらの患者における白金薬物を試験する努力が進められている(Couzin, 2003, Science 302:592)。
併せて考えると、これらのデータはsiRNAスクリーニングによって、ある特定のDNA損傷剤(すなわち、BRCA経路を欠失する腫瘍)に対する潜在的な「応答体」集団を同定したことを示唆する。最近まで、散発性腫瘍は一般的にBRCA遺伝子の変化を示さないので、ほんの一部分の乳腫瘍および卵巣腫瘍だけがBRCA遺伝子の生殖系列突然変異により引き起こされると考えられた。しかし、最近のデータは、散発性腫瘍内のBRCA経路の他のメンバーの遺伝子不活性化が、BRCA遺伝子自体の変化よりもっと広汎性でありうることを示す(Marsitら, 2004, Oncogene 23:1000-4)。将来、さらに大きいライブラリーを用いるsiRNAスクリーニングが、腫瘍におけるその破壊がDNA損傷剤に対する感受性の診断となる他の遺伝子を同定するのを助けることができよう。実際、多数の公知のおよび推測されるDNA損傷遺伝子が、拡張されたsiRNAライブラリー(例えば、BRCA経路中の他のファンコーニ貧血遺伝子を含む)において表わされている。適当に設計されたスクリーニングはまた、その腫瘍中にBRCA経路遺伝子破壊を有する患者に利益をもたらしうる他の分子標的を同定することもできる。
一次スクリーニングを次の通り実施した:ほぼ800種類の遺伝子に対するsiRNAを含有するsiRNAライブラリーを、シスプラチン(cis-ジアミンジクロロ白金)効果をモジュレートする遺伝子についてスクリーニングした。ライブラリーをsiRNAsのプール(1種類の遺伝子当たり3個のsiRNAのプール)を用いて100nMにて(それぞれのsiRNAを33nMにて)スクリーニングした。これらのsiRNAを、<EC25濃度(400ng/ml)のシスプラチンの存在または不在のもとでHeLa細胞中にトランスフェクトした。
siRNAトランスフェクションを次の通り実施した:トランスフェクションの1日前に、50μlの選んだ培養細胞株、例えば、DMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen, Carlsbad, CA)中でほぼ90%集密度まで増殖した子宮頸癌HeLa細胞(ATCC, Cat. No. CCL-2)を384ウエル組織培養プレートに450細胞/wellにてまいた。それぞれのトランスフェクションに対して、OptiMEM(Invitrogen)20μlを10μMストックからのsiRNA(Dharmacon、Lafayette、CO)2μlと混合した。それぞれのトランスフェクションに対して、20μlのOptiMEMの一部分をオリゴフェクトアミン試薬(Invitrogen)1μlと混合し、そして5分間室温にてインキュベートした。OptiMEM/オリゴフェクトアミン混合物20μlをOptiMEM/siRNA混合物とともにそれぞれの96ウエルプールのそれぞれのウエルに配って、混合し、そして15-20分間室温にてインキュベートした。トランスフェクション混合物5μlを384ウエルプレートのそれぞれのウエル中にアリコートし、そして4時間37℃および5%CO2にてインキュベートした。異なるsiRNAプールを含有する4枚の96ウエルプレートを、384ウエルプレートの四分円当たり1枚のプレートにて配給した。全ての液移送は96ウエルディスペンスヘッドを備えたBioMek FX液取扱い機(liquid handler)を用いて実施した。
4時間後、2400ng/mlのシスプラチン有りまたは無しのDMEM/10%ウシ胎児血清5μl/ウエルを加え、プレートを37℃および5%CO2にて68時間インキュベートした。alamarBlueアッセイを用いて細胞増殖を測定した(第5.4.2.2節を参照)。alamarBlueアッセイは細胞呼吸を測定し、測定値を生存細胞数の尺度として用いる。増殖している細胞の内部環境は増殖してない細胞の内部環境より還元性である。具体的には、NADPH/NADP、FADH/FAD、FMNH/FMN、およびNADH/NAFの比は増殖中に増加する。alamarBlueはこれらの代謝中間物により還元されうるので、細胞増殖をモニターするために利用することができる。トランスフェクションの72時間後、培地をウエルから取除き、10%(vol/vol)alamarBlue試薬(Biosource International Inc.、Camarillo、CA)および0.001容積の1M Hepesバッファー組織培養試薬(Invitrogen)を含有するDMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen)50μl/ウエルと置き換えた。プレートを2時間37℃にてインキュベートし、そしてプレートを励起波長545および発光波長590nmにてGemini EMマイクロプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)上でSoftmax Pro 3.1.2ソフトウエア(Molecular Devices)を用いて読み取った。細胞を含有しないウエルの相対蛍光単位を、色々なsiRNAプレートを用いてトランスフェクトしたウエルの相対蛍光単位から差引いて、バックグラウンドレベルを超える相対蛍光単位を決定した。シスプラチン有りまたは無しのsiRNAプレートを用いてトランスフェクトしたウエルに対する相対蛍光単位を、ルシフェラーゼを標的とするsiRNAを用いてトランスフェクトしたウエルの相対蛍光単位と比較した。シスプラチン有りまたは無しのルシフェラーゼsiRNAでトランスフェクトしたウエルの相対蛍光単位を100%とみなした。比較プロットを、薬物の不在のもとでのルシフェラーゼと比較した%増殖をX軸に、それに対して、薬物の存在のもとでのルシフェラーゼと比較した%増殖をY軸にプロットすることにより作製した。
二次スクリーニングを、HeLa細胞、A549-pRS細胞およびA549-C7細胞を用いて実施した。細胞を、siRNAsのプール(1種の遺伝子当たり3種のsiRNAのプール)を100nMにて(それぞれのsiRNAを33nMにて)用いて、または単一siRNAを100nMにて用いてトランスフェクトした。これらのsiRNAをHeLa細胞中に、様々な濃度のDNA損傷剤の存在または不在のもとでトランスフェクトした。それぞれの薬剤の濃度は次の通りである:HeLa細胞に対して、ドキソルビシン(10nM)、カンプトセシン(6nM)、シスプラチン(500ng/ml);他の培養細胞株に対して、ドキソルビシン(200nM)、カンプトセシン(200nM)、シスプラチン(4ug/ml)。
次のsiRNAを使用した:WEE1プール、EPHB3プール、CHUKプール、BRCA1プール、BRCA2プール、およびSTK6。使用したsiRNAの配列を表IIIAに掲げる。
siRNAトランスフェクションを次の通り行った:トランスフェクションの1日前に、2000μlの選んだ培養細胞株、例えば、DMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)中でほぼ90%集密度まで増殖した子宮頚癌HeLa細胞(ATCC、Cat. No. CCL-2)を、6ウエル組織培養プレートに45,000細胞/ウエルにてまいた。それぞれのトランスフェクションに対して、OptiMEM(Invitrogen)70μlを20μMストックからのsiRNA(Dharmacon、Lafayette、CO)5μlと混合した。それぞれのトランスフェクションに対して、20μlのOptiMEM(Invitrogen)の一部分を1μlのオリゴフェクトアミン試薬(Invitrogen)と混合して5分間、室温でインキュベートした。次いでOptiMEM/オリゴフェクトアミン混合物25μlをOptiMEM/siRNA混合物75μlと混合し、そして15-20分間、室温にてインキュベートした。トランスフェクション混合物100μlを6-ウエルプレートのそれぞれのウエル中にアリコートし、そして4時間37℃にて5%CO2のもとでインキュベートした。
4時間後、100μl/ウエルのDMEM/10%ウシ胎児血清をDNA損傷剤ありまたはDNA損傷剤なしでそれぞれのウエルに加え、上記のそれぞれの薬剤の最終濃度とした。プレートを37℃にて5%CO2のもとでさらに44時間または68時間インキュベートした。2時点(トランスフェクション後、48時間または72時間)からのサンプルを次いで細胞周期プロファイルについて分析した。
細胞周期分析のために、それぞれのウエルからの上清をトリプシン処理により収穫した細胞と組み合わせた。次いで混合物を1200rpmにて5分間遠心分離した。細胞を氷冷70%エタノールを用いて〜30分間固定した。固定した細胞をPBSを用いて1回洗浄し、ヨウ化プロピジウム(10μg/ml)およびRNase A(1mg/ml)を含有する0.5mlのPBSに再懸濁しそして37℃にて30分間インキュベートした。フローサイトメトリー分析はFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて行い、データはFlowJoソフトウエア(Tree Star、Inc)を用いて分析した。サブG1細胞集団を用いて細胞死を測定した。もし(siRNA+DMSO)サンプルと(Luc+薬物)サンプルからのサブG1集団の和が(siRNA+薬物)サンプルのサブG1集団より大きければ、siRNAは細胞をDNA損傷に感作させると言う。
図9-14は二次スクリーニングの結果を示す。図9A-9Cは、WEE1のサイレンシングがHeLa細胞をDox、Campto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させることを示す。図9D-9Iは、WEE1のサイレンシングがp53-A549細胞をDox、Campto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させるが、p53+A549細胞をかかるDNA損傷に感作させないことを示す。図10A-10Cは、EPHB3のサイレンシングがHeLa細胞およびp53-A549 C7ならびにそれより低い程度でp53+A549 pRS細胞をDox、Campto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させることを示す。図11A-11Cは、STK6のサイレンシングがHeLa細胞およびp53-A549 C7、ならびにそれより低い程度でp53+A549 pRS細胞をDox、Campto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させることを示す。図12A-12Cは、BRCA1のサイレンシングがHeLa細胞およびp53-A549 C7細胞をDox、Campto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させることを示す。BRCAのサイレンシングはまた、p53+A549 pRS細胞をCisにより誘導されるDNA損傷に低い程度で感作させるが、p53+A549 pRS細胞をDoxおよびCamptoにより誘導されるDNA損傷に感作させない。図13A-13Bは、BRCA2のサイレンシングがHeLa細胞およびp53-A549 C7細胞をDox、Campto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させることを示す。図13Cは、BRCA2のサイレンシングがp53+A549 pRS細胞をCisにより誘導されるDNA損傷に低い程度で感作させるが、doxおよびCamptoにより誘導されるDNA損傷に感作させないことを示す。図14A-14Bは、CHUKのサイレンシングがHeLa細胞をDox、Campto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させることを示す。図14Cは、CHUKのサイレンシングがp53-A549 C7細胞をCampto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させることを示す。図14Dは、CHUKのサイレンシングがp53+A549 pRS細胞をCampto、およびCisにより誘導されるDNA損傷に感作させないことを示す。
[表IIA]
[表IIB]
[表IIC]
[表IIIA]
[表IIIB]
[表IIIC]
6.4.実施例4:抗癌薬標的としてのBRCA1/BARD1 E3ユビキチンリガーゼ
実施例2および3はDNA損傷剤による細胞死滅を増強する遺伝子を同定するためのsiRNAスクリーニングを記載した。本実施例においては、HeLa細胞をシスプラチン有りまたは無しで処置し、そしてBRCC複合体のメンバーによる感作を研究した(図19)。その破壊が細胞をDNA損傷に感作させる遺伝子のなかで顕著なものはBRCA1、BRCA2、BARD1およびRAD51であり、全てDNA損傷後の細胞生存を増強するBRCC複合体のメンバーである(Dongら, Mol Cell. 2003 Nov;12 (5):1087-99)。BRCA1、BRCA2およびBARD1による感作は、シスプラチン濃度について用量依存性であるが、RAD51による感作は低シスプラチン濃度だけで見られる(図1)。他の実験において、BRCA1およびBRCA2の破壊は、HeLa細胞増殖のシスプラチン抑制に対するIC50濃度を>〜4倍低下した(データは示してない)ことが見出された。BRCA1、BRCA2およびBARD1 siRNAプールによるサイレンシングは〜85%-98%の範囲にあった(データは示してない)。表IVは本実施例において使用したBARD1およびRAD51のsiRNA配列を掲げる。
これらの知見は、BRCA1、BRCA2、BARD21およびRAD51遺伝子の産物が、DNA損傷後の細胞生存を増強するホロ酵素複合体(BRCC)と会合する(Dongら, Mol Cell. 2003 Nov;12 (5):1087-99)ことに注目すべきである。この複合体はE3 Ubリガーゼ活性を有し、そのほとんどはBRCA1/BARD1ヘテロダイマーとして回収することができる(Dongら, Mol Cell. 2003 Nov;12 (5):1087-99;Brzovicら, Nat Struct Biol. 2001 Oct;8 (10):833-7)。これらの知見は、BRCCが本発明者らのsiRNAスクリーニングにおいてシスプラチンに対する感受性を媒介することを強く示唆する。意外なことに、シスプラチン耐性を決定するのに関係するとされる他のマルチサブユニット複合体であるFANC複合体(FANCA、FANCC、FANCEおよびFANCF)のメンバーに対するsiRNAプール(Taniguchiら, Nat Med. 2003 May;9 (5):568-74)は、本発明者らのアッセイにおける感度を増加しなかった(データは示してない)。
BRCA1またはBRCA2破壊によるシスプラチンに対する感作が標的細胞中のTP53発現の存在または不在による影響を受けるかどうかを確認するために、TP53を標的とする短ヘアピンRNA(shRNAs)の安定な発現により作製したマッチした対のTP53ポジティブおよびネガティブ細胞(実施例2を参照)を用いた。TP53ポジティブまたはネガティブ細胞を、BRCA1またはBRCA2に対するsiRNAプールを用いてスーパートランスフェクトし、シスプラチンを用いて処置し、そしてAlamar Blueを用いて細胞増殖を分析した(図20)。TP53ネガティブ細胞は、BRCA1またはBRCA2 siRNAsを用いてトランスフェクトされると、シスプラチンに対して対照siRNA(ルシフェラーゼ、IC50〜1nM)より10倍高い感受性(IC50〜0.1nM)を示した。BRCA1またはBRCA2破壊後のシスプラチンに対する感作は、低シスプラチン濃度においてより顕著であった。TP53ポジティブ細胞は、BRCA1またはBRCA2破壊後にシスプラチンに対して感作させる程度が低かった(IC50〜0.4nM)。このアッセイにおいて、BRCA1またはBRCA2破壊後のシスプラチンに対する感作はCHEK1破壊後に見られた感作(データは示してない)と類似していた。BRCA1またはBRCA2破壊後のDNA損傷剤に対する感作はまた、細胞周期分析を用いても研究した。TP53ポジティブおよびネガティブ細胞を、BRCA1またはBRCA2に対するsiRNAプールを用いてスーパートランスフェクトし、いくつかのDNA損傷剤(シスプラチン、カンプトセシン、ドキソルビシンおよびブレオマイシン)の1つを用いて処置し、そしてフローサイトメトリーにより細胞周期分布を分析した。全事例において、TP53ネガティブ細胞はBRCA1またはBRCA2破壊後のDNA損傷に、ルシフェラーゼをトランスフェクトした細胞より感受性があった(データは示してない)。BRCA1破壊後のブレオマイシンに対する応答を図21に示す。BRCA1を破壊すると、TP53ネガティブのブレオマイシン治療後に、TP53ポジティブ細胞より多いサブG1細胞(死細胞)をもたらした。本発明者らはTP53を欠く細胞はBRCA1破壊後にDNA損傷に感受性がより高いと結論した。図22は、RAD51/ドキソルビシン相乗効果がTP53−細胞においてより大きいことを実証する。
本実施例で使用した培養細胞株は、HeLa細胞、TP53ポジティブA549細胞およびTP53ネガティブA549細胞であった。TP53ポジティブとネガティブ細胞のマッチした対を、TP53を標的とする短ヘアピンRNA(shRNA)の安定なトランスフェクションにより作製した(monthly highlt highlight, Nov. 2003)。細胞をsiRNAのプール(1遺伝子当たりsiRNA 3個のプール)100nMにて(それぞれのsiRNAを33nMにて)または単一siRNA 100nMにて用いてトランスフェクトした。次のsiRNAを本研究に使用した:Luc対照、BRCA1、BRCA2およびBARD1プール。これらのトランスフェクトされた細胞を次いで様々な濃度のDNA損傷剤を用いて処置した。細胞周期分析に用いたそれぞれの薬剤の濃度は次の通りである:HeLa細胞に対して、ドキソルビシン(10nM)、カンプトセシン(6nM)、シスプラチン(400ng/ml)、マイトマイシンC(40nM)、ブレオマイシン(100ng/ml);他の培養細胞株に対して、ドキソルビシン(200nM)、カンプトセシン(200nM)、シスプラチン(2ug/ml)、マイトマイシンC(400nM)、ブレオマイシン(5ug/ml)。
siRNAトランスフェクションを次の通り行った:トランスフェクションの1日前に、2000(または100)μlの選んだ培養細胞株、例えば、DMEM/10%ウシ胎児血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)中でほぼ90%集密度まで増殖した子宮頚癌HeLa細胞(ATCC、Cat. No. CCL-2)を、6ウエル(または96-ウエル)組織培養プレートに45,000(または2000)細胞/ウエルにてまいた。それぞれのトランスフェクションに対して、OptiMEM(Invitrogen)70μlを20μMストックからのsiRNA(Dharmacon、Lafayette、CO)5μlと混合した。それぞれのトランスフェクションに対して、20μlのOptiMEM(Invitrogen)の一部分を5μlのオリゴフェクトアミン試薬(Invitrogen)と混合して5分間、室温でインキュベートした。次いでOptiMEM/オリゴフェクトアミン混合物25μlをOptiMEM/siRNA混合物75μlと混合し、そして15-20分間、室温にてインキュベートした。トランスフェクション混合物100(または10)μlを6-ウエル(または96-ウエル)プレートのそれぞれのウエル中にアリコートし、そして4時間37℃にて5%CO2のもとでインキュベートした。
4時間後、100μl/ウエルのDMEM/10%ウシ胎児血清をDNA損傷剤ありまたはDNA損傷剤なしでそれぞれのウエルに加え、上記のそれぞれの薬剤の最終濃度とした。プレートを37℃にて5%CO2のもとでさらに68時間インキュベートした。6-ウエルプレートからのサンプルを細胞周期プロファイルについて分析しかつ96-ウエルプレートからのサンプルを細胞増殖についてAlamar Blueアッセイを用いて分析した。
細胞周期分析のために、それぞれのウエルからの上清をトリプシン処理により収穫した細胞と組み合わせた。次いで混合物を1200rpmにて5分間遠心分離した。細胞を氷冷70%エタノールを用いて〜30分間固定した。固定した細胞をPBSを用いて1回洗浄し、ヨウ化プロピジウム(10μg/ml)およびRNase A(1mg/ml)を含有する0.5mlのPBSに再懸濁しそして37℃にて30分間インキュベートした。フローサイトメトリー分析はFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて行い、データはFlowJoソフトウエア(Tree Star、Inc)を用いて分析した。サブG1細胞集団を用いて細胞死を測定した。もし(siRNA+DMSO)サンプルと(Luc+薬物)サンプルからのサブG1集団の和が(siRNA+薬物)サンプルのサブG1集団より大きければ、本発明者らはsiRNAサイレンシングのDNA損傷に対する感作と定義する。
Alamar Blueアッセイについては、96-ウエルプレートから培地を除去し、そして10%(vol/vol)alamarBlue試薬(BioSource International、Inc)を含有する完全培地100uL/ウエルおよび1M Hepesバッファー組織培養試薬1/100容積を加えた。次いでプレートを1-4時間37℃にてインキュベートし、蛍光を544nmにて励起しかつ590nmにて発光をSPECTRAMax Gemini-Xs 分光蛍光光度計(Molceular Devices)により検出することにより測定した。蛍光シグナルをバックグラウンド(無細胞)に対して補正した。DNA損傷剤の存在のもとでの細胞応答(生存)を、DNA損傷剤の不在のもとでの対照細胞増殖の百分率として測定した。
多数の機能がBRCA1に帰するとされているが、唯一公知の酵素機能はE3 Ubリガーゼ活性である。この活性はBARD1のBRCA1との会合により増強され、異例のユビキチンチンのK6結合を介するBRCAl/BARD1複合体の自己ユビキチン化をもたらす(Wu-Baerら, J Biol Chem. 2003 Sep 12;278 (37):34743-6;Chenら, J Biol Chem. 2002 Jun 14;277 (24):22085-92)。利用しうる確証は、E3 Ubリガーゼ活性がそのDNA修復機能に必要であることを示唆する。BRCA1 RINGドメイン内の癌素因化突然変異はそのUbリガーゼ活性を消滅するので、これらの突然変異体はBRCA1ヌルのヒト乳癌細胞のγ線照射過敏性を逆転できなくなる(Ruffnerら, Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Apr 24;98 (9):5134-9)。さらに、siRNAが媒介するBRCA1の破壊は、γ線照射細胞におけるDNA修復およびチェックポイント活性化の部位である核の巣(nuclear foci)中のポリユビキチン構造の堆積(deposition)をブロックする(Morrisら, Hum Mol Genet. 2004 Apr 15;13 (8):807-17)。BRCAが媒介するユビキチン結合(K6)は、プロテアソームによる分解のためにタンパク質をマーキングするユビキチン結合(K48)(Wu-Baerら, J Biol Chem. 2003 Sep 12;278 (37):34743-6;Morrisら, Hum Mol Genet. 2004 Apr 15;13 (8):807-17)と異なることに注意するのが重要である。K6結合の機能は現在未知であるが、シグナル伝達機能を果たしうるのであろう。
併せて考えると、これらの知見および文献の知見は、BRCA1 E3 Ubリガーゼ活性のインヒビターは有効な抗癌薬でありうることを示唆する、何故なら、上記インヒビターはDNA損傷剤の腫瘍細胞(そのほとんどはTP53ネガティブである)に対する治療ウインドウを、正常細胞(TP53ポジティブ)と比較して増強しうるからである。用量依存性のBRCA1レベルの「シスプラチンに対する感受性の増強」対「核の巣におけるポリユビキチンの堆積」に対する効果を研究してこれらの事象が因果関係で連結されているのかどうかの洞察を得た。BRCA1 E3 Ubリガーゼ活性の化学インヒビターも研究してDNA損傷の修復におけるユビキチン化の役割を確立した。
DNA損傷修復において役割を果たす他のE3 Ubリガーゼの存在を示唆する確証は、酵母における研究から得られ(Spenceら, Mol Cell Biol. 1995 Mar;15 (3):1265-73)、この研究はDNA損傷修復が非タンパク分解的特異性(K63結合)をもつUbリガーゼを必要とすることを示す。DNA損傷修復に関わるこれらの同定を促進するために、本発明者らは、BRCA1(RINGフィンガードメインリガーゼ)と類似のドメイン構造をもつ多重E3リガーゼに対するsiRNAを本発明者らのsiRNAライブラリーに加え、細胞をDNA損傷に感作させるsiRNAが本発明者らのライブラリースクリーニングにより明らかにされうることを期待している。
表IV BARD1およびRAD51のsiRNA 配列
[表IV]
7.引用文献
本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの個々の刊行物または特許または特許出願を特定してかつ個々に参照によりその全てがすべての目的のために組み入れられると示したのと同じ程度で、本明細書に参照によりその全てが全ての目的のために組み入れられる。
[表IV]
7.引用文献
本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの個々の刊行物または特許または特許出願を特定してかつ個々に参照によりその全てがすべての目的のために組み入れられると示したのと同じ程度で、本明細書に参照によりその全てが全ての目的のために組み入れられる。
当業者に明らかでありうるように、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修飾と改変を行うことができる。本明細書に記載した特定の実施形態は、例示としてのみ提供するものであって、本発明は添付した請求の範囲ならびにかかる請求が権利を有する同等物の全範囲によってのみ限定されるものである。
Claims (218)
- その産物がある細胞型の細胞に対するある薬剤の効果をモジュレートする遺伝子を同定する方法であって、(a)多数の1以上の前記細胞型の細胞のグループを前記薬剤と接触させるステップであって、それぞれの前記1以上の細胞のグループは多数の異なる小干渉RNA(siRNA)のなかからの1以上の異なるsiRNAを含み、前記1以上の異なるsiRNAは同じ遺伝子を標的とし、そして前記多数の異なるsiRNAは前記細胞型の細胞においてそれぞれ異なる遺伝子を標的とするsiRNAを含むステップ;(b)それぞれの前記1以上の細胞のグループに対する前記薬剤の効果を、前記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較するステップ;ならびに(c)ある遺伝子を、もし前記遺伝子を標的とする前記1以上の異なるsiRNAを含む前記1以上の細胞のグループに対する前記薬剤の効果が、前記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して異なれば、その産物が前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果をモジュレートする遺伝子として同定するステップを含む方法。
- 多数のsiRNAの1以上を含むそれぞれの細胞のグループを、接触ステップの前に1以上のsiRNAを用いるトランスフェクションによって取得する、請求項1に記載の方法。
- その産物がある細胞型の細胞に対するある薬剤の効果をモジュレートする遺伝子を同定する方法であって、(a)多数の1以上の前記細胞型の細胞のグループのそれぞれを多数の異なる小干渉RNA(siRNA)のなかからの1以上の異なるsiRNAを含む組成物を用いてトランスフェクトするステップであって、前記1以上の異なるsiRNAは同じ遺伝子を標的とし、そして前記多数の異なるsiRNAは前記細胞型の細胞においてそれぞれ異なる遺伝子を標的とするsiRNAを含むステップ;(b)前記多数の1以上の細胞のグループのそれぞれを前記薬剤と接触させるステップ;(c)それぞれの前記1以上の細胞のグループに対する前記薬剤の効果を、前記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを用いてトランスフェクトされてない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較するステップ;ならびに(d)ある遺伝子を、もし前記遺伝子を標的とする前記1以上の異なるsiRNAを含む前記1以上の細胞のグループに対する前記薬剤の効果が、前記異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して異なれば、その産物が前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果をモジュレートする遺伝子として同定するステップを含む方法。
- siRNAを含む1以上の細胞のグループに対する薬剤の効果を、異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して増強する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- siRNAを含む1以上の細胞のグループに対する薬剤の効果を、異なる遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して低減する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 薬剤が、多数のsiRNAにより標的とされた異なる遺伝子のいずれか以外の遺伝子、またはそのコードされたタンパク質に対して作用する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 多数のsiRNAは、異なる遺伝子の少なくとも1つを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで前記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
- 少なくとも1つの遺伝子を標的とする1以上の異なるsiRNAは、2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項7に記載の方法。
- 多数のsiRNAは、異なる遺伝子の少なくとも2つの異なる遺伝子のそれぞれを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで前記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
- 少なくとも2つの異なる遺伝子のそれぞれを標的とする1以上の異なるsiRNAは、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項9に記載の方法。
- 多数のsiRNAは、異なる遺伝子のそれぞれを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで前記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
- 異なる遺伝子のそれぞれを標的とする1以上の異なるsiRNAは、2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項11に記載の方法。
- 細胞型は癌細胞型である、請求項5に記載の方法。
- 細胞型は癌細胞型であり、そして効果は増殖抑制効果である、請求項13に記載の方法。
- 薬剤はKSPインヒビターである、請求項12に記載の方法。
- 多数の異なる遺伝子は少なくともN種類の異なる遺伝子を含み、ここでNは5、10、100、1,000、および5,000からなる群から選択される、請求項7〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 異なる遺伝子は異なる内在性遺伝子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- ある細胞型の細胞において一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子を同定する方法であって、(a)多数の1以上の前記細胞型の細胞のグループをある薬剤と接触させるステップであって、前記薬剤は前記一次標的遺伝子の発現および/または前記一次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートし、それぞれの前記細胞のグループは多数の異なるsiRNAのなかの1以上の異なるsiRNAを含み、前記細胞型の細胞において前記1以上の異なるsiRNAは同じ遺伝子を標的とし、そして前記多数の異なるsiRNAはそれぞれ異なる二次遺伝子を標的とするsiRNAを含むステップ;(b)それぞれの前記1以上の細胞のグループに対する前記薬剤の効果を、前記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較するステップ;ならびに(c)ある遺伝子を、もし前記遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを含む前記1以上の細胞のグループに対する前記薬剤の効果が前記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して異なれば、前記細胞型の細胞中の前記一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子として同定するステップを含む方法。
- 多数のsiRNAの1以上を含むそれぞれの細胞のグループを、接触のステップの前に1以上のsiRNAによるトランスフェクションによって取得する、請求項18に記載の方法。
- ある細胞型の細胞において一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子を同定する方法であって、(a)多数の1以上の前記細胞型の細胞のグループのそれぞれを、多数の異なる小干渉RNA(siRNA)のなかからの1以上の異なるsiRNAを含む組成物を用いてトランスフェクトするステップであって、前記細胞型の細胞において前記1以上の異なるsiRNAは同じ遺伝子を標的とし、そして前記多数の異なるsiRNAはそれぞれ異なる遺伝子を標的とするsiRNAを含むステップ;(b) 前記多数の1以上の前記細胞型の細胞のグループを薬剤と接触させるステップであって、前記薬剤は前記一次標的遺伝子の発現および/または前記一次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートするステップ;(c)それぞれの前記1以上の細胞のグループに対する前記薬剤の効果を、前記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較するステップ;ならびに(d)ある遺伝子を、もし前記遺伝子を標的とする1以上のsiRNAを含む前記1以上の細胞のグループに対する前記薬剤の効果が、前記異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して異なれば、前記細胞型の細胞中の前記一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子として同定するステップを含む方法。
- 薬剤は、一次標的遺伝子を標的としてサイレンシングするsiRNAである、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 薬剤は一次標的遺伝子のインヒビターである、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 1以上の細胞のグループに対する薬剤の効果を、異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して増強する、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 1以上の細胞のグループに対する薬剤の効果を、異なる二次遺伝子のいずれかを標的とするsiRNAを含まない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して低減する、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 多数のsiRNAは、異なる二次遺伝子の少なくとも1つを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで前記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
- 少なくとも1つの遺伝子を標的とする1以上の異なるsiRNAは2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項25に記載の方法。
- 多数のsiRNAは、異なる二次遺伝子の少なくとも2つの異なる遺伝子のそれぞれを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで前記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
- 少なくとも2つの異なる遺伝子のそれぞれを標的とする1以上の異なるsiRNAは2、3、4、5、6または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項27に記載の方法。
- 多数のsiRNAは、異なる二次遺伝子のそれぞれを標的とする少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで前記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
- 異なる遺伝子のそれぞれを標的とする1以上の異なるsiRNAは2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項29に記載の方法。
- 一次標的遺伝子はKSPである、請求項32に記載の方法。
- 多数の異なる遺伝子は少なくともN種類の異なる遺伝子を含み、ここでNは5、10、100、1,000、および5,000からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
- 異なる二次遺伝子は異なる内在性遺伝子である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 細胞型は癌細胞型である、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 組成物中の1以上のsiRNAの全濃度は、標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで最適濃度はさらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項8または26に記載の方法。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である、請求項35に記載の方法。
- 1以上のsiRNAのそれぞれの濃度はほぼ同じである、請求項35に記載の方法。
- 1以上のsiRNAのそれぞれの濃度は50%未満、20%未満、または10%未満だけお互いに異なる、請求項35に記載の方法。
- 組成物中のいずれのsiRNAも、1以上のsiRNAsの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項35に記載の方法。
- 組成物中の少なくとも1つのsiRNAは、1以上のsiRNAsの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項35に記載の方法。
- 組成物中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を、組成物が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ぶ、請求項8または26に記載の方法。
- 癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、前記哺乳動物にSTK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する治療上十分な量の薬剤を投与することを含み、前記哺乳動物に治療上十分な量のKSPインヒビターを投与することを含む療法を前記哺乳動物に施す方法。
- 癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、前記哺乳動物に、i)STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する治療上十分な量の薬剤、ならびにii)治療上十分な量のKSPインヒビターを投与することを含む方法。
- 薬剤は、癌細胞中のSTK6またはTPX2遺伝子の発現を低減する、請求項42または43に記載の方法。
- 薬剤は、STK6またはTPX2遺伝子を標的とするsiRNAを含む、請求項42または43に記載の方法。
- 薬剤は、STK6またはTPX2遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項45に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの全siRNA濃度は、STK6またはTPX2遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで前記最適濃度はさらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項46に記載の方法。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である、請求項47に記載の方法。
- それぞれの異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである、請求項47に記載の方法。
- 異なるsiRNAsのそれぞれの濃度は50%未満、20%未満、または10%未満だけお互いに異なる、請求項47に記載の方法。
- 薬剤中のいずれのsiRNAも異なるsiRNAの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項47に記載の方法。
- 薬剤中の少なくとも1つのsiRNAが、異なるsiRNAの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項47に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を、薬剤が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ぶ、請求項47に記載の方法。
- 哺乳動物はヒトであり、ここでsiRNAは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
- 癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、哺乳動物に、i)STK6もしくはTPX2遺伝子の発現および/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する第1の治療上十分な量の薬剤、ならびにii)KSP遺伝子の発現および/またはKSP遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する治療上十分な量の第2の薬剤を投与することを含む方法。
- 第1の薬剤は、STK6またはTPX2遺伝子を標的とするsiRNAを含み、そして第2の薬剤はKSP遺伝子を標的とするsiRNAを含む、請求項55に記載の方法。
- 第1の薬剤は、STK6またはTPX2遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項56に記載の方法。
- 第1の薬剤中の異なるsiRNAの全siRNA濃度は、STK6もしくはTPX2遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで前記最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項57に記載の方法。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である、請求項58に記載の方法。
- それぞれの異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである、請求項58に記載の方法。
- 異なるsiRNAsのそれぞれの濃度は50%未満、20%未満、または10%未満だけお互いに異なる、請求項58に記載の方法。
- 薬剤中のいずれのsiRNAも異なるsiRNAの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項58に記載の方法。
- 第1の薬剤中の少なくとも1つのsiRNAが、異なるsiRNAの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項58に記載の方法。
- 第1の薬剤中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を、薬剤が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ぶ、請求項58に記載の方法。
- 哺乳動物はヒトであり、ここでSTK6遺伝子を標的とするsiRNAは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
- 哺乳動物はヒトであり、TPX2遺伝子を標的とするsiRNAが配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択される、請求項45または56に記載の方法。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を評価する方法であって、前記細胞中のSTK6またはTPX2遺伝子の発現レベルを測定することを含み、所定の閾値を越える前記発現レベルは前記細胞が前記KSPインヒビターの増殖抑制効果に耐性があることを示す方法。
- STK6またはTPX2遺伝子の発現レベルは、それぞれSTK6またはTPX2遺伝子中のヌクレオチド配列を含む1以上のポリヌクレオチドプローブを用いてSTK6またはTPX2遺伝子の発現レベルを測定することを含む方法により決定する、請求項67に記載の方法。
- 1以上のポリヌクレオチドプローブはマイクロアレイ上のポリヌクレオチドプローブである、請求項67または68に記載の方法。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を評価する方法であって、前記細胞中のSTK6またはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の存在量のレベルを測定することを含み、所定の閾値を越える前記タンパク質の存在量の前記レベルは前記細胞が前記KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性があると示すことを含む方法。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を評価する方法であって、前記細胞中のSTK6またはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性のレベルを測定することを含み、所定の閾値レベルを越える前記活性レベルは前記細胞が前記KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性があることを示す方法。
- 細胞がヒト細胞である、請求項70または71に記載の方法。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節する方法であって、前記細胞を、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現ならびに/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する十分な量の薬剤と接触させることを含む方法。
- 哺乳動物におけるKSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節する方法であって、前記哺乳動物に、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現ならびに/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する治療上十分な量の薬剤を投与することを含む方法。
- 細胞の増殖を調節する方法であって、前記細胞をi)STK6もしくはTPX2遺伝子の発現ならびに/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する十分な量の薬剤;ならびにii) 十分な量のKSPインヒビターと接触させることを含む方法。
- 薬剤が細胞におけるSTK6またはTPX2遺伝子の発現を低減する、請求項73、74、または75に記載の方法。
- 薬剤がSTK6遺伝子を標的とするsiRNAを含む、請求項73、74、または75に記載の方法。
- 薬剤が、STK6またはTPX2遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項77に記載の方法。
- 薬物中の異なるsiRNAの全siRNA濃度はSTK6またはTPX2遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで前記最適濃度はさらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項78に記載の方法。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である、請求項79に記載の方法。
- それぞれの異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである、請求項79に記載の方法。
- 異なるsiRNAのそれぞれの濃度はお互いに50%未満、20%未満、または10%未満だけ異なる、請求項79に記載の方法。
- 薬剤中のいずれのsiRNAも異なるsiRNAの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項79に記載の方法。
- 薬剤中の少なくとも1つのsiRNAは、異なるsiRNAの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項79に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を、薬剤が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ぶ、請求項79に記載の方法。
- 細胞がヒト細胞であり、ここでsiRNAは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される、請求項77に記載の方法。
- 細胞がヒト細胞であり、ここでsiRNAは配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択される、請求項77に記載の方法。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節することができる薬剤であって、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現ならびに/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートできる薬剤を同定する方法であって、前記薬剤の存在のもとでの前記STK6またはTPX2遺伝子を発現する細胞に対する前記KSPインヒビターの抑制効果を前記薬剤の不在のもとでの前記STK6もしくはTPX2遺伝子を発現する細胞に対する前記KSPインヒビターの抑制効果と比較することを含み、前記KSPインヒビターの前記抑制効果に差があれば前記薬剤は前記細胞の前記KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する耐性を調節することができると同定する方法。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節することができる薬剤であって、STK6もしくはTPX2遺伝子の発現ならびに/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートできる薬剤を同定する方法であって、(a) 前記STK6またはTPX2遺伝子を発現する第1の細胞を前記KSPインヒビターと前記薬剤の存在のもとで接触させ、そして第1の増殖抑制効果を測定するステップ;(b) 前記STK6またはTPX2遺伝子を発現する第2の細胞を前記KSPインヒビターと前記薬剤の不在のもとで接触させ、そして第2の増殖抑制効果を測定するステップ;ならびに(c) 前記ステップ(a)と(b)で測定した前記第1と第2の抑制効果を比較するステップを含み、前記第1と第2の抑制効果に差があれば、前記薬剤は前記KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節することができると同定するステップを含む方法。
- 薬剤がSTK6またはTPX2遺伝子の発現を低減する分子を含む、請求項88または89に記載の方法。
- 薬剤がSTK6またはTPX2遺伝子を標的とするsiRNAである、請求項88または89に記載の方法。
- 細胞がヒト細胞であり、ここでsiRNAは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
- 細胞がヒト細胞であり、ここでsiRNAは配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択することができる、請求項91に記載の方法。
- 細胞中にSTK6またはTPX2遺伝子を標的とする1以上の異なる小干渉RNA(siRNA)を含む細胞。
- 1以上の異なるsiRNAは2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項94に記載の細胞。
- 細胞は1以上の異なるsiRNAの組成物を用いてトランスフェクションにより作製され、前記組成物の全siRNA濃度は前記STK6またはTPX2遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで前記最適濃度はさらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項95に記載の細胞。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加させることのない濃度である、請求項96に記載の細胞。
- それぞれの異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである、請求項96に記載の細胞。
- 異なるsiRNAのそれぞれの濃度はお互いに50%未満、20%未満、または10%未満だけ異なる、請求項96に記載の細胞。
- 組成物中のいずれのsiRNAも異なるsiRNAの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項96に記載の細胞。
- 組成物中の少なくとも1つのsiRNAは、異なるsiRNAの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項96に記載の細胞。
- 組成物中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度は、前記組成物が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ばれる、請求項96に記載の細胞。
- 細胞がヒト細胞である、請求項94に記載の細胞。
- 哺乳動物はヒトであり、ここで1以上の異なるsiRNAのそれぞれは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載のsiRNAからなる群から選択される、請求項103に記載の細胞。
- 哺乳動物はヒトであり、siRNAは配列番号1237、配列番号1238、および配列番号1239に記載のsiRNAからなる群から選択される、請求項103に記載の細胞。
- 細胞がマウス細胞である、請求項94に記載の細胞。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を診断するためのマイクロアレイであって、前記マイクロアレイは1以上のポリヌクレオチドプローブを含み、それぞれの前記ポリヌクレオチドプローブはSTK6またはTPX2遺伝子中のヌクレオチド配列を含むマイクロアレイ。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を診断するためのキットであって、1以上の容器中に1以上のポリヌクレオチドプローブを含み、それぞれの前記ポリヌクレオチドプローブはSTK6またはTPX2遺伝子中のヌクレオチド配列を含むキット。
- KSPインヒビターの増殖抑制効果に対する細胞の耐性を調節する薬剤をスクリーニングするためのキットであって、1以上の容器中に、(i)請求項94に記載の細胞;および(ii)KSPインヒビターを含むキット。
- 癌を有する哺乳動物を治療するキットであって、1以上の容器中に(i)STK6もしくはTPX2遺伝子の発現ならびに/または前記STK6もしくはTPX2遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する十分な量の薬剤;および(ii)KSPインヒビターを含むキット。
- KSPインヒビターは、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンである、請求項42〜43、67、70〜71、74〜75および88〜89のいずれか1項に記載の方法。
- 接触ステップ(a)をそれぞれの1以上の細胞のグループに対して別々に行う、請求項1、2、または3に記載の方法。
- 接触ステップ(a)をそれぞれの1以上の細胞のグループに対して別々に行う、請求項18、19、または20のいずれか1項に記載の方法。
- KSPインヒビターは、(1S)-1-{[(2S)-4-(2,5-ジフルオロフェニル)-2-フェニル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル]カルボニル}-2-メチルプロピルアミンである、請求項109または110のキット。
- ある細胞型の細胞中の一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子を同定する方法であって、(a)1以上の前記細胞型の細胞をある薬剤と接触させるステップであって、前記薬剤は二次標的遺伝子の発現および/または前記二次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートし、そして前記1以上の細胞は前記一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現するステップ;(b)1以上の前記クローンの細胞に対する前記薬剤の効果を、前記第1のsiRNAを発現しない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較するステップ;ならびに(c)もし前記第1のsiRNAを発現する前記1以上の細胞に対する前記薬剤の効果が前記第1のsiRNAを発現しない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して異なれば、前記二次標的遺伝子を前記細胞型の細胞中の前記一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子として同定するステップを含む方法。
- ある細胞型の細胞中の一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子を同定する方法であって、(a) 前記一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現する前記細胞型の細胞のクローンを作製するステップ;(b) 前記クローンの1以上の細胞を、二次標的遺伝子の発現および/または前記二次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートする薬剤と接触させるステップ;(c) 前記クローンの前記1以上の細胞に対する前記薬剤の効果を、前記第1のsiRNAを発現しない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較するステップ;および(d)もし前記第1のsiRNAを発現する前記1以上の細胞に対する前記薬剤の効果が前記第1のsiRNAを発現しない前記細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して異なれば、前記二次標的遺伝子を前記細胞型の細胞中の前記一次標的遺伝子と相互作用する遺伝子として同定するステップを含む方法。
- 第1のsiRNAは細胞のゲノムに組み込まれたヌクレオチド配列により発現される、請求項116に記載の方法。
- 薬剤が二次標的遺伝子を標的としかつサイレンシングする1以上の第2のsiRNAを含む、請求項116に記載の方法。
- 薬剤が二次標的遺伝子のインヒビターである、請求項116に記載の方法。
- 第1のsiRNAを発現する1以上の細胞に対する薬剤の効果は、前記第1のsiRNAを発現しない細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して増強される、請求項118に記載の方法。
- 第1のsiRNAを発現する1以上の細胞に対する薬剤の効果は、前記第1のsiRNAを発現しない細胞型の細胞に対する前記薬剤の効果と比較して低減される、請求項118に記載の方法。
- 1以上の第2のsiRNAは少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで前記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される、請求項120に記載の方法。
- 薬剤中の少なくともk種類の異なるsiRNAの全siRNA濃度は、二次標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで前記最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項122に記載の方法。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である、請求項123に記載の方法。
- それぞれの少なくともk種類の異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである、請求項123に記載の方法。
- 少なくともk種類の異なるsiRNAのそれぞれの濃度はお互いに50%未満、20%未満、または10%未満だけ異なる、請求項123に記載の方法。
- 薬剤中のいずれのsiRNAも異なるsiRNAの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項123に記載の方法。
- 薬剤中の少なくとも1つのsiRNAは、少なくともk種類の異なるsiRNAの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項123に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を、前記薬剤が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ぶ、請求項123に記載の方法。
- 細胞型は癌細胞型であり、そして一次標的遺伝子はp53である、請求項122に記載の方法。
- さらに多数の異なる二次標的遺伝子のそれぞれに対してステップ(b)-(d)を繰り返すステップ(e)を含む、請求項130に記載の方法。
- 多数の二次標的遺伝子は、少なくとも5、10、100、1,000、および5,000種類の異なる遺伝子からなる群から選択される異なる遺伝子の数を含む、請求項131に記載の方法。
- 効果がある薬物に対する細胞型の細胞の感受性の変化である、請求項132に記載の方法。
- 薬物はDNA損傷剤である、請求項133に記載の方法。
- DNA損傷剤はトポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択される、請求項134に記載の方法。
- DNA損傷剤はドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択される、請求項135に記載の方法。
- ある薬物の処置に対するある細胞型の細胞の応答性を評価する方法であって、(a)1以上の前記細胞型の細胞を前記薬物と接触させるステップであって、前記1以上の細胞が一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現し、そして前記1以上の細胞を、1以上の二次標的遺伝子の発現および/または前記1以上の二次標的遺伝子がそれぞれコードする1以上のタンパク質の活性をモジュレートする組成物で処置するステップ;(b)一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現しない1以上の前記細胞型の細胞を前記薬物と接触させるステップであって、前記1以上の細胞を、二次標的遺伝子の発現および/または二次標的遺伝子がコードするあるタンパク質の活性をモジュレートする前記薬剤で処置するステップ;ならびに(c)ステップ(a)で測定した前記1以上の細胞に対する前記薬物の効果をステップ(b)で測定した前記1以上の細胞に対する前記薬物の効果と比較し、それにより前記薬物の処置に対する前記細胞の応答性を評価するステップを含む方法。
- ある薬物の処置に対するある細胞型の細胞の応答性を評価する方法であって、(a)一次標的遺伝子を標的とする第1の小干渉RNA(siRNA)を発現する前記細胞型の細胞のクローンを作製するステップ;(b) 前記第1のsiRNAを発現する前記クローンの1以上の細胞を前記薬物と接触させるステップであって、前記1以上の細胞を、ある二次標的遺伝子の発現および/または前記二次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートするある薬剤で処置するステップ;(c) 前記一次標的遺伝子を標的とする小干渉RNA(siRNA)を発現しない1以上の前記細胞型の細胞を前記薬物と接触させるステップであって、前記1以上の細胞をある二次標的遺伝子の発現および/または前記二次標的遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートする前記薬剤で処置するステップ;ならびに(d)ステップ(b)で測定した前記1以上の細胞に対する前記薬物の効果をステップ(c)で測定した前記1以上の細胞に対する前記薬物の効果と比較し、それにより前記薬物の処置に対する前記細胞の応答性を評価するステップを含む方法。
- 薬物の第1のsiRNAを発現する1以上の細胞に対する効果が、前記薬物の前記第1のsiRNAを発現しない細胞型の細胞に対する効果と比較して増強される、請求項137または138に記載の方法。
- 薬物の第1のsiRNAを発現する1以上の細胞に対する効果が、前記薬物の前記第1のsiRNAを発現しない細胞型の細胞に対する効果と比較して低減される、請求項137または138に記載の方法。
- 組成物が1以上の二次標的遺伝子の1以上のインヒビターを含む、請求項137または138に記載の方法。
- 組成物が1以上の二次標的遺伝子を標的としかつサイレンシングする1以上の第2のsiRNAを含む、請求項137または138に記載の方法。
- 1以上の第2のsiRNAが少なくともk種類の異なるsiRNAを含み、ここで前記kは2、3、4、5、6および10からなる群から選択される、請求項142に記載の方法。
- 薬剤中の少なくともk種類の異なるsiRNAの全siRNA濃度が、二次標的遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで前記最適濃度はさらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項143に記載の方法。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である、請求項144に記載の方法。
- 少なくともk種類の異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである、請求項144に記載の方法。
- 少なくともk種類の異なるsiRNAのそれぞれの濃度はお互いに50%未満、20%未満、または10%未満だけ異なる、請求項144に記載の方法。
- 薬剤中のいずれのsiRNAも異なるsiRNAの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項144に記載の方法。
- 薬剤中の少なくとも1つのsiRNAは、異なるsiRNAの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項144に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を、前記薬剤が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ぶ、請求項144に記載の方法。
- 細胞型は癌細胞型であり、一次標的遺伝子はp53である、請求項137または138に記載の方法。
- さらに多数の異なる二次標的遺伝子のそれぞれに対してステップ(b)-(d)を繰り返すステップ(e)を含む、請求項138に記載の方法。
- さらに多数の異なる二次標的遺伝子のそれぞれに対してステップ(a)-(b)を繰り返すステップ(e)を含む、請求項137に記載の方法。
- 多数の二次標的遺伝子は、少なくとも5、10、100、1,000、および5,000種類の異なる遺伝子からなる群から選択される異なる遺伝子の数を含む、請求項152または153に記載の方法。
- 薬物はDNA損傷剤である、請求項154に記載の方法。
- DNA損傷剤はトポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択される、請求項155に記載の方法。
- DNA損傷剤はドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択される、請求項156に記載の方法。
- 癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、前記哺乳動物に、ある遺伝子の発現および/または前記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する治療上十分な量の薬剤を投与することを含み、前記哺乳動物を、前記哺乳動物に1以上のDNA損傷剤を含む治療上十分な量の組成物を投与することを含む療法で処置する方法。
- 癌を有する哺乳動物を治療する方法であって、前記哺乳動物にi)ある遺伝子の発現および/または前記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する治療上十分な量の薬剤、ならびにii)1以上のDNA損傷剤を含む治療上十分な量の組成物を投与することを含む方法。
- 薬剤が癌細胞中の遺伝子の発現を低減する、請求項158または159に記載の方法。
- 薬剤が癌細胞中の遺伝子の発現を増強する、請求項158または159に記載の方法。
- 1以上のDNA損傷剤はトポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択され、そして遺伝子はEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される、請求項161に記載の方法。
- 1以上のDNA損傷剤はドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択され、そして遺伝子はEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される、請求項161に記載の方法。
- 薬剤が遺伝子を標的とするsiRNAを含む、請求項163に記載の方法。
- ある薬剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を評価する方法であって、前記細胞中の1以上の遺伝子のそれぞれの転写物レベルを測定するステップを含み、それぞれの遺伝子に対してそれぞれの所定の閾値レベルより低い前記転写物レベルは、前記細胞が前記DNA損傷剤の増殖抑制効果に感受性があると示す方法。
- 薬剤は、トポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択されるDNA損傷剤であり、そして遺伝子はEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される、請求項165に記載の方法。
- DNA損傷剤はドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択され、そして遺伝子はEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される、請求項165に記載の方法。
- 1以上の遺伝子が少なくとも約5〜約50種類の異なる遺伝子を含む、請求項166〜167のいずれか1項に記載の方法。
- それぞれの転写物レベルが閾値レベルから1.5倍、2倍または3倍低下している、請求項168に記載の方法。
- 遺伝子の転写物レベルを、それぞれが前記遺伝子中のヌクレオチド配列を含む1以上のポリヌクレオチドプローブを用いて前記遺伝子の転写物レベルを測定することを含む方法により決定する、請求項166〜167のいずれか1項に記載の方法。
- 1以上のポリヌクレオチドプローブがあるマイクロアレイ上のポリヌクレオチドプローブである、請求項170に記載の方法。
- あるDNA損傷剤の増殖抑制効果に対するある細胞の感受性を評価する方法であって、前記細胞中のある遺伝子がコードするあるタンパク質の存在量のレベルを測定するステップを含み、所定の閾値レベルより低い前記タンパク質の存在量の前記レベルは、前記細胞が前記DNA損傷剤の増殖抑制効果に対して感受性のあることを示す方法。
- あるDNA損傷剤の増殖抑制効果に対するある細胞の感受性を評価する方法であって、前記細胞中のある遺伝子がコードするあるタンパク質の活性のレベルを測定するステップを含み、所定の閾値レベルを超える前記タンパク質の活性の前記レベルは、前記細胞が前記DNA損傷剤の増殖抑制効果に対して感受性のあることを示す方法。
- DNA損傷剤がトポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択され、そして遺伝子がEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される、請求項172または173に記載の方法。
- DNA損傷剤がドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択され、そして遺伝子がEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される、請求項174に記載の方法。
- 細胞がヒト細胞である、請求項172または173に記載の方法。
- DNA損傷に対する細胞の感受性を調節する方法であって、前記細胞を、EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または前記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する十分な量の薬剤と接触させることを含む方法。
- DNA損傷はDNA損傷剤により引き起こされる、請求項177に記載の方法。
- DNA損傷剤がトポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択される、請求項178に記載の方法。
- DNA損傷剤がドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択される、請求項179に記載の方法。
- 細胞の増殖を調節する方法であって、前記細胞をi)EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または前記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する十分な量の薬剤;ならびにii) 十分な量のDNA損傷剤と接触させることを含む方法。
- 薬剤が細胞中の遺伝子の発現を低減する、請求項177または181に記載の方法。
- 薬剤が遺伝子を標的とするsiRNAを含む、請求項177または181に記載の方法。
- 薬剤が遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項183に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの全siRNA濃度は遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで前記最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項184に記載の方法。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である、請求項185に記載の方法。
- それぞれの異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである、請求項185に記載の方法。
- 異なるsiRNAのそれぞれの濃度はお互いに50%未満、20%未満、または10%未満だけ異なる、請求項185に記載の方法。
- 薬剤中のいずれのsiRNAも異なるsiRNAの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項185に記載の方法。
- 薬剤中の少なくとも1つのsiRNAは、異なるsiRNAの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項185に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を、薬剤が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満、または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ぶ、請求項185に記載の方法。
- DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節することができる薬剤であって、EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または前記遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートできる薬剤を同定する方法であって、薬剤の存在のもとでの前記遺伝子を発現する細胞に対する前記DNA損傷剤の抑制効果を薬剤の不在のもとでの前記遺伝子を発現する細胞に対する前記DNA損傷剤の抑制効果と比較することを含み、前記DNA損傷剤の前記抑制効果に差があれば、薬剤を、前記DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する前記細胞の感受性を調節することができると同定する方法。
- DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節することができる薬剤であって、EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または前記遺伝子がコードするタンパク質の活性をモジュレートできる薬剤を同定する方法であって、(a)薬剤の存在のもとで前記遺伝子を発現する第1の細胞を前記DNA損傷剤と接触させて第1の増殖抑制効果を測定するステップ;(b)薬剤の不在のもとで前記遺伝子を発現する第2の細胞を前記DNA損傷剤と接触させて第2の増殖抑制効果を測定するステップ;ならびに(c) 前記ステップ(a)と(b)で測定した前記第1と第2の抑制効果を比較して、前記第1と第2の抑制効果の間に差があれば、薬剤を、前記DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節することができると同定するステップを含む方法。
- 細胞が一次標的遺伝子を標的とするsiRNAを発現する、請求項192または193に記載の方法。
- 一次標的遺伝子がp53である、請求項194に記載の方法。
- 薬剤が遺伝子の発現を低減する分子を含む、請求項192または193に記載の方法。
- 薬剤が遺伝子を標的とするsiRNAを含む、請求項196に記載の方法。
- 薬剤が遺伝子を標的とする2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項197に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの全siRNA濃度が遺伝子をサイレンシングするための最適濃度であり、ここで前記最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを実質的に増加することのない濃度である、請求項198に記載の方法。
- 最適濃度は、さらに濃度を増加してもサイレンシングのレベルを20%を超えて、10%を超えて、または5%を超えて増加することのない濃度である、請求項199に記載の方法。
- それぞれの異なるsiRNAの濃度はほぼ同じである、請求項199に記載の方法。
- 異なるsiRNAのそれぞれの濃度は50%未満、20%未満、または10%未満だけお互いに異なる、請求項199に記載の方法。
- 薬剤中のいずれのsiRNAも、異なるsiRNAsの全siRNA濃度の80%を超える、50%を超える、または20%を超える濃度を有しない、請求項199に記載の方法。
- 薬剤中の少なくとも1つのsiRNAは、異なるsiRNAsの全siRNA濃度の20%を超えるまたは50%を超える濃度を有する、請求項199に記載の方法。
- 薬剤中の異なるsiRNAの数およびそれぞれのsiRNAの濃度を、前記薬剤が標的としない遺伝子の10%未満、1%未満、0.1%未満または0.01%未満のサイレンシングを引き起こすように選ぶ、請求項199に記載の方法。
- 細胞中のEPHB3、WEE1、ELK1、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択されるある遺伝子を標的とする1以上の異なる小干渉RNA(siRNA)を含む細胞。
- 1以上の異なるsiRNAは2、3、4、5、6、または10種類の異なるsiRNAを含む、請求項206に記載の細胞。
- 細胞がヒト細胞である、請求項206に記載の細胞。
- 細胞がマウス細胞である、請求項206に記載の細胞。
- DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を診断するためのマイクロアレイであって、1以上のポリヌクレオチドプローブを含み、ここで、それぞれの前記ポリヌクレオチドプローブはEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される1以上の遺伝子中のあるヌクレオチド配列を含むマイクロアレイ。
- DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を診断するためのキットであって、1以上の容器中に1以上のポリヌクレオチドプローブを含み、ここでそれぞれの前記ポリヌクレオチドプローブはEPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される1以上の遺伝子中のあるヌクレオチド配列を含むキット。
- DNA損傷剤の増殖抑制効果に対する細胞の感受性を調節する薬剤をスクリーニングするためのキットであって、1以上の容器中に(i)請求項206〜211のいずれか1つの請求項に記載の細胞;および(ii)前記DNA損傷剤を含むキット。
- 癌を有する哺乳動物を治療するキットであって、1以上の容器中に(i)EPHB3、WEE1、ELK1、STK6、BRCA1、BRCA2、BARD1、およびRAD51からなる群から選択される遺伝子の発現および/または前記遺伝子がコードするタンパク質の活性を調節する十分な量の薬剤;ならびに(ii)DNA損傷剤を含むキット。
- DNA損傷剤がトポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択される、請求項192〜193のいずれか1項に記載の方法。
- DNA損傷剤がドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択される、請求項に214記載の方法。
- DNA損傷剤がトポイソメラーゼIインヒビター、トポイソメラーゼIIインヒビター、DNA結合剤、および電離放射線からなる群から選択される、請求項212に記載のキット。
- DNA損傷剤がドキソルビシン、カンプトセシン、およびシスプラチンからなる群から選択される、請求項216に記載の方法。
- 一次標的遺伝子のサイレンシングのレベルを制御する、請求項21、117、137または138に記載の方法。
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