JP2007335220A - 燃料電池の膜状態判断装置、燃料電池の発電制御装置、燃料電池の膜状態判断方法及び燃料電池の発電制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池の膜状態について、信頼性の高いインピーダンス測定結果を利用することが可能とすることである。
【解決手段】燃料電池スタックのインピーダンスZを測定し、所定値ZUを超えるか否かが判断される(S10,S12)。インピーダンスZが所定値ZUを超えると判断されると、次に燃料電池スタックの端部電圧Vendが測定される(S14)。端部に配置される単電池は、中央部に配置される単電池に比べ、その温度が低くなるので、乾燥状態が比較的緩やかで、比較的適度に濡れており、電圧が比較的に高くなる。そこで、この現象を用いて、端部の単電池の電圧Vendが所定値VLを超えるか否かが判断され(S16)、超えるときは、測定で得られたインピーダンスZを真値として扱い、それに基づいて発電制御が行われる(S18)。
【選択図】図2
【解決手段】燃料電池スタックのインピーダンスZを測定し、所定値ZUを超えるか否かが判断される(S10,S12)。インピーダンスZが所定値ZUを超えると判断されると、次に燃料電池スタックの端部電圧Vendが測定される(S14)。端部に配置される単電池は、中央部に配置される単電池に比べ、その温度が低くなるので、乾燥状態が比較的緩やかで、比較的適度に濡れており、電圧が比較的に高くなる。そこで、この現象を用いて、端部の単電池の電圧Vendが所定値VLを超えるか否かが判断され(S16)、超えるときは、測定で得られたインピーダンスZを真値として扱い、それに基づいて発電制御が行われる(S18)。
【選択図】図2
Description
本発明は、燃料電池の膜状態判断装置、燃料電池の発電制御装置、燃料電池の膜状態判断方法及び燃料電池の発電制御方法に係り、特に、燃料電池のインピーダンスを用いる燃料電池の膜状態判断装置、燃料電池の発電制御装置、燃料電池の膜状態判断方法及び燃料電池の発電制御方法に関する。
電気化学反応による発電方式を用いた燃料電池は、高効率と優れた環境特性を有することから近年脚光を浴びている。その中で、水素イオン導電性のイオン交換膜を電解質とする固体高分子型燃料電池が、常温で起動し、起動時間が速い等の利点を有しており、実用化が進められている。
この固体高分子型燃料電池は、固体高分子電解質膜を、触媒層を介して2枚のガス拡散層で挟みこれらを一体として接合したセルを積層して構成される。このガス拡散層の一方を燃料ガス極あるいは水素極(アノード)としてその表面に燃料ガスである水素を供給し、他方のガス拡散層を酸化ガス極あるいは酸素極(カソード)としてその表面に酸化ガスを供給することによって、電気化学反応を起こし、起電力を得る。そのとき、カソード側に電気化学反応により水が生成される。
この水がカソードに滞留し、あるいは電解質膜を透してアノード側に滞留すると、ガス拡散層等の電極基材の細孔を閉塞し、ガスの拡散を阻害し、燃料電池の出力が低下する。一方で、固体高分子電解質膜の中をプロトン(H+)が移動する際は、水を随伴して水和状態で移動するので、アノード等の電極基材が乾きすぎると、随伴する水分子が不足し、固体高分子電解質膜の抵抗が高くなり、燃料電池の出力が低下する。
このように、固体高分子型燃料電池においては、電解質膜を含む膜が適当に濡れていることが必要であるので、その膜状態を管理することが行われる。
例えば特許文献1には、固体高分子型燃料電池における各ガス拡散電極表面及び電解質膜の濡れ状態を検出する方法として、アノード側とカソード側の電極の他に、電解質膜表面にPt電極を立て、これを基準電極とし、アノード側電極と基準電極との間の電圧V1、カソード側電極と基準電極との間の電圧V2、アノード側の電極とカソード側の電極との間の電圧V3の比較から、アノード側又はカソード側のいずれかが理想状態から逸脱していることを判断することが述べられている。そして、アノード側の電極とカソード側の電極との間のインピーダンスを測定し、インピーダンスの低下からその逸脱が濡れすぎであることを、インピーダンスの上昇からその逸脱が乾きすぎであることを判断することが述べられている。
特許文献2には、燃料電池内の電圧降下を、1)電気化学反応の活性化エネルギに起因する活性化過電圧の成分、2)燃料電池の内部抵抗に起因する抵抗過電圧、3)水素、酸素の拡散が阻害されることに起因する拡散過電圧に分け、水不足の場合は2)が増加し、水過剰の場合は3)が増加することが述べられている。そして燃料電池の等価回路において、2)の成分をR1、3)の成分をR2とすると、交流インピーダンス法を用い、周波数が∞のときのインピーダンスの実成分がR1となり、周波数が0のときのインピーダンスの実成分がR1+R2となることが示され、これによってR1とR2を分離できることが述べられている。
ここで、交流インピーダンス法とは、燃料電池から出力される直流電流に正弦波電流を印加し、このときの燃料電池の出力電圧を電圧センサで検出し、出力電流を電流センサで検出し、それらの検出信号をフィルタ処理のあと高速フーリエ変換(FFT変換)を行い、FFT変換後の電圧信号をFFT変換後の電流信号で除して、インピーダンスの実成分と虚成分とに分ける方法である。
また、特許文献3には、固体高分子電解質膜の電気抵抗値と、燃料電池の出力電圧とに基づき、電気抵抗値が高いと固体高分子電解質膜が乾燥気味で、電気抵抗値が低くかつ出力電圧が低いと固体電解質膜がフラッディング気味で濡れすぎの状態にあると判断し、水蒸気発生装置と流量制御弁とを用いて加湿制御を行うことが述べられている。
従来技術では、固体高分子型燃料電池の膜状態を判断するのに、電圧、抵抗、インピーダンスの測定が行われる。ここでインピーダンスの測定法自体は公知のものであるが、車両に搭載された実績がまだ十分多くはなく、信頼性の確立がまだ十分ではない。したがって、インピーダンス測定結果のみでは燃料電池の膜状態の判断が不正確なものとなることがある。
本発明の目的は、燃料電池の膜状態について、信頼性の高いインピーダンス測定結果を利用することが可能な燃料電池の膜状態判断装置、燃料電池の発電制御装置、燃料電池の膜状態判断方法及び燃料電池の発電制御方法を提供することである。
本発明に係る燃料電池の膜状態判断装置は、複数の単電池を組み合わせた燃料電池スタックのインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、燃料電池スタックの端部における電圧である端部電圧を測定する電圧検出部と、測定されたインピーダンスを予め任意に定めた所定値と比較し、さらに端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較して、測定されたインピーダンスが真値として扱えるか否かを判断する判断部と、を含み、真値として扱えるインピーダンスに従って膜の状態を判断することを特徴とする。
また、本発明に係る燃料電池の膜状態判断装置において、判断部は、測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較し、端部電圧が平均電圧より高いときに、測定されたインピーダンスを真値として扱えるものと判断することが好ましい。
また、本発明に係る燃料電池の発電制御装置は、複数の単電池を組み合わせた燃料電池スタックのインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、燃料電池スタックの端部における電圧である端部電圧を測定する電圧検出部と、測定されたインピーダンスを予め任意に定めた所定値と比較し、さらに端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較して、測定されたインピーダンスが真値として扱えるか否かを判断する判断部と、真値として扱えるインピーダンスに従って燃料電池スタックの発電を制御する発電制御部と、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る燃料電池の発電制御装置において、判断部は、測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較し、端部電圧が平均電圧より高いときに、測定されたインピーダンスを真値として扱えるものと判断することが好ましい。
また、発電制御部は、特定されたインピーダンスに基づき、燃料電池スタックの水温の監視水準を設定して、燃料電池スタックの発電制御を行うことが好ましい。
また、本発明に係る燃料電池の膜状態判断方法は、複数の単電池を組み合わせた燃料電池スタックのインピーダンスを測定する工程と、燃料電池スタックの端部における電圧である端部電圧を測定する工程と、測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧が燃料電池スタックの平均電圧を超えるか否かを判断する判断工程と、判断工程において、端部電圧が平均電圧を超えるときに、測定されたインピーダンスの値を真値として特定する工程と、を含み、特定されたインピーダンスに基づいて燃料電池スタックの膜の状態を判断することを特徴とする。
また、本発明に係る燃料電池の発電制御方法は、複数の単電池を組み合わせた燃料電池スタックのインピーダンスを測定する工程と、燃料電池スタックの端部における電圧である端部電圧を測定する工程と、測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧が燃料電池スタックの平均電圧を超えるか否かを判断する判断工程と、判断工程において、端部電圧が平均電圧を超えるときに、測定されたインピーダンスの値を真値として特定する工程と、特定されたインピーダンスに基づき、燃料電池スタックの発電制御を行う発電制御工程と、を含むことを特徴とする。
上記構成の少なくとも1つにより、燃料電池スタックのインピーダンスを測定し、また、複数の単電池から構成される燃料電池スタックの配置の端部における端部電圧を測定し、測定されたインピーダンスを予め任意に定めた所定値と比較し、さらに端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較して、測定されたインピーダンスが真値として扱えるか否かを判断し、真値として扱えるインピーダンスに従って膜の状態を判断する。
例えば、燃料電池スタックの膜状態が乾いているときは、燃料電池スタックの全体としては発電状態がよくないので電圧が低いが、端部は温度が低いので膜が乾かずに適当に濡れていて端部の電圧が平均電圧に比べ高くなる。一方、燃料電池スタックの膜状態が適当に濡れているときは、燃料電池スタックの全体として発電状態がよく、電圧が高いが、端部は温度が低いので膜はむしろ濡れすぎとなって電圧が平均電圧に比べ低くなる。したがって、これらの現象を利用し、端部電圧の測定によってインピーダンス測定の結果を補強し、インピーダンスの測定結果の信頼性を高めることができる。そして、真値として扱えるインピーダンスに従って、膜状態を判断し、発電状態を制御するので、燃料電池の膜状態について、信頼性の高いインピーダンス測定結果を利用することが可能となる。
また、測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較し、端部電圧が平均電圧より高いときに、測定されたインピーダンスを真値として扱えるものと判断する。上記のように、この場合は、インピーダンスの測定結果が膜の乾燥気味を示し、端部電圧の測定結果も膜の乾燥気味を示しているので、端部電圧の測定によってインピーダンス測定の結果を補強し、インピーダンスの測定結果の信頼性を高めることができる。
また、真値として特定されたインピーダンスに基づき、燃料電池スタックの水温の監視水準を設定して、燃料電池スタックの発電制御を行う。
例えば、インピーダンスが比較的低い場合は、膜状態が比較的濡れていて反応生成物の水が多いと考えられるので、燃料電池スタックの水温の監視水準を高温側として膜における水分の持ち去り量を多くする。逆にインピーダンスが比較的高いときは、膜状態が比較的乾燥気味であるので、水温の監視水準を低温側とし、膜の水分の持ち去り量を抑制する。このようにして、インピーダンスの測定結果に燃料電池スタックの水温を対応付けて設定することで、膜状態を電気化学反応に適した状態として、発電制御を効果的に行うことが可能となる。
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、燃料電池スタックとして、単電池を約200個直列接続して配置したものを2組組み合わせたものとして説明するが、それ以外の組み合わせの燃料電池の組合せであってもよい。また、燃料電池の膜のインピーダンス測定には、公知の交流インピーダンス法を用いるものとしたが、それ以外の測定方法によってインピーダンスを測定するものとしてもよい。
図1は、燃料電池の膜状態に応じて発電を制御する発電制御システム10の構成を示す図である。発電制御システム10は、燃料電池スタック40のインピーダンスと、燃料電池スタック40を構成する複数の単電池42の電圧に基づいて燃料電池スタック40の膜状態を判断し、発電制御部20に指示を与えて燃料電池スタック40の発電を制御する機能を有する。
燃料電池の発電制御システム10は、制御の対象である燃料電池スタック40を除く部分で構成されるが、さらに発電制御部20を除いた部分が、燃料電池の膜状態を判断して発電制御部20に指示を与える燃料電池膜状態判断装置11に相当する。
燃料電池スタック40は、複数の単電池42を組み合わせて高電圧の電池パックとするものである。例えば、端子電圧が約1.2Vの単電池を約200個直列接続し、これを2組組み合わせて、合計約400個の単電池で約500Vの高電圧の電池パックとすることができる。
燃料電池の膜状態判断装置11は、CPU12と、燃料電池スタック40を構成する各単電池42に設けられる各電圧センサに対するインタフェース回路である電圧検出I/F14と、燃料電池スタック40のインピーダンスを測定するための交流インピーダンス測定回路を含むインピーダンス測定I/F16と、燃料電池スタック40に設けられる冷却水水温センサに対するインタフェース回路である水温検出I/F18とを含んで構成される。各要素は、信号線あるいは内部バスによって相互に接続される。また、CPU12は、発電制御部20と接続される。
インピーダンス測定I/F16に含まれる交流インピーダンス測定回路は、公知の構成を用いることができる。例えば、燃料電池スタック40の全体から出力される直流電流に正弦波電流を印加する正弦波印加部と、これを出力電流として検出する電流センサと、このときの燃料電池スタック40の全体についての出力電圧を検出する電圧センサと、それらの検出信号をフィルタ処理するフィルタ部と、フィルタ部の出力を高速フーリエ変換するFFT変換部と、FFT変換後の電圧信号をFFT変換後の電流信号で除してインピーダンスとするインピーダンス算出部とを有する回路ブロックを交流インピーダンス測定回路として用いることができる。
かかる燃料電池の膜状態判断装置11は、車載用コンピュータによって構成することができる。あるいは、燃料電池の膜状態判断装置11の機能を、車両に搭載される他の制御用コンピュータの機能に含ませることができる。例えば、発電制御部20を構成するコンピュータに、燃料電池の膜状態判断装置11の機能を実行させるものとすることができる。
CPU12は、インピーダンス測定I/F16に指示して燃料電池スタック40のインピーダンスを検出させ、その結果を取得するインピーダンス測定モジュール30と、電圧検出I/F14から各単電池42の電圧検出データを受け取って処理して燃料電池スタック40の端部電圧を求める端部電圧測定モジュール32と、インピーダンスと端部電圧とに基づいて燃料電池スタック40の膜状態を判断する膜状態判断モジュール34と、膜状態判断に基づいて発電制御部20に発電制御の指示を与える発電制御モジュール36とを含んで構成される。かかる機能は、ソフトウェアで実現でき、具体的には、膜状態に基づく発電制御プログラムを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実現するものとすることもできる。
かかる構成の燃料電池の発電制御システム10の作用、特にCPU12の各機能の内容につき、図2のフローチャートと、図3、図5の燃料電池スタックの特性図と、図4の燃料電池スタックにおける単電池の配置図と、図6のインピーダンス−目標水温関係図を用いて、以下に説明する。図2は、燃料電池スタック40の膜状態に基づいて実行される発電制御の手順を示すフローチャートである。図3は燃料電池スタックの温度と電圧の特性を示す図で、図5は、燃料電池スタック40の膜状態が適度に濡れている場合の温度と電圧の特性を参考のために示す図である。図4は、図3における単電池の配置位置を説明する図である。図6は、インピーダンスに基づいて発電制御を行うために、燃料電池スタック40の冷却水の目標水温をインピーダンスに関連付けて示す図である。
図2に従って、燃料電池スタック40の膜状態に基づいて発電制御を行う手順の最初は、燃料電池スタック40のインピーダンスZを測定する(S10)。この機能は、CPU12のインピーダンス測定モジュール30によって実行される。具体的には、動作している燃料電池スタック40に対し、その出力電流に任意の正弦波信号を加え、出力電流と出力電圧とについてFFT変換を行ってインピーダンスを算出する。インピーダンスは、実部のみを算出してもよく、実部と虚部の二乗和の平方根である実効値で算出してもよい。
次に算出されたインピーダンスZを予め任意に定めた所定値Z0と比較する。所定値Z0は、インピーダンス測定によって、燃料電池スタック40の膜状態が乾燥しているか、適当に濡れている状態かを確実に区別できる値とすることが好ましい。ここで適当に濡れている状態とは、膜状態が電気化学反応に適した状態で、出力電圧が所望の範囲に入る状態のことである。したがって、所定値Z0は、燃料電池スタック40の構成等によって異なる値で、実験あるいは経験上から定めることができる。例えば、燃料電池スタック40の膜状態が適度の濡れ状態にあるとき、インピーダンスの上限値がZUで、下限値がZ0であるとすると、膜が乾燥しているか否かの判断ための所定値をZUとすることができる。
そこで、インピーダンスZが所定値ZUを超えるか否かが判断される(S12)。インピーダンスZが所定値ZUを超えると判断されると、次に燃料電池スタック40の端部電圧Vendが測定される(S14)。この機能は、CPU12の端部電圧測定モジュール32によって実行される。
端部電圧とは、複数の単電池を整列配置して燃料電池スタック40を構成するときにおいて、燃料電池スタック40の端部の単電池の電圧、すなわち、単電池の一方側が他の単電池であるが他方側が外部に面している単電池の電圧のことである。端部に配置される単電池は、他方側が外部に面しているので、両側が他の単電池に挟まれている中央部に配置される単電池に比べ、その温度が低くなる。そのために、仮に燃料電池スタック40の膜状態が乾いているとすると、中央部の各単電池は乾燥状態で水が不足するが、端部の単電池は温度が低いため、乾燥状態が比較的緩やかで、したがって、比較的適度に濡れており、電圧が比較的高くなる。
その状態を図3に示す。図3は、横軸に燃料電池スタック40を構成する各単電池42の配置位置を示し、縦軸には、横軸を共通にして各単電池42についての温度と電圧とを示したものである。各単電池42の配置位置のうち、a,b,cで示す位置が端部の単電池の配置位置である。図4は、燃料電池スタック40における各単電池42の配置状態を平面図で示すもので、上記のように燃料電池スタック40は、約200個の単電池42を2つ組み合わせて構成されるので、その端部は、図4に示すように、a,b,cの3箇所となる。
したがって、図3において、単電池42の温度は、端部a,b,cに配置される単電池の温度が、他の部分に配置される単電池の温度に比べ、低くなる。そして、燃料電池スタック40の中央部の単電池の膜状態が乾燥しており、それらの単電池の電気化学反応が不十分となり、電圧が低下しても、端部の単電池は温度が低い分、乾燥が緩やかとなり、その電圧が中央部の単電池の電圧よりも高くなることが示されている。図3では、中央部の単電池の電圧がVLとして示され、端部の単電池の電圧がVendは、VLより高いことが示されている。
参考のため、燃料電池スタック40の膜状態が適当に濡れている場合の各単電池42の配置位置と電圧との関係を図5に示す。図5は、図3に対応する図で、図3と同様に、単電池42の温度は、端部a,b,cに配置される単電池の温度が、他の部分に配置される単電池の温度に比べ、低くなることが示されている。そして、燃料電池スタック40の中央部の単電池の膜状態が適当に濡れているときは、それらの単電池の電気化学反応が十分であり、電圧が所望の値となる。しかし、端部の単電池は温度が低い分、乾燥が不十分、すなわち、濡れすぎとなって、いわゆるフラッディング状態となり、水分によって膜が覆われ、燃料ガスあるいは酸化ガスが拡散せず、その電圧が中央部の単電池の電圧よりも低くなることが示されている。図5では、中央部の単電池の電圧がV0として示され、端部の単電池の電圧がVendは、V0より低いことが示されている。
図3と図5とを比較すると、端部電圧Vendを中央部の単電池の電圧と比較することで、燃料電池スタックの膜の状態を定性的に知ることができることが分かり、特に、膜が乾燥しているときは、端部電圧Vendが燃料電池スタックの中央部の単電池の電圧よりも高くなることが分かる。
そこで、この現象を用いて、端部の単電池の電圧Vendが、燃料電池スタック40の平均電圧を超えるか否かが判断される。燃料電池スタック40の平均電圧は、実際的には、燃料電池スタック40の中央部の単電池の電圧VLをそのまま用いることができる。したがって、以下ではVLを燃料電池スタック40の平均電圧とする(S16)。
そして、S12においてインピーダンスZが所定値ZUを超え、S16において端部電圧Vendが所定値VLを超えるときは、インピーダンスZの測定の結果も膜の乾燥状態を示し、端部電圧Vendの測定結果もまた膜の乾燥状態を示しているので、膜が乾燥していると判断できる。この機能は、CPU12の膜状態判断モジュール34によって実行される。
また、S12においてインピーダンスZが所定値ZUを超え、S16において端部電圧Vendが所定値VLを超えるときは、測定で得られたインピーダンスZを真値として扱うことができる。なお、S12においてインピーダンスZが所定値ZU以下と判断され、あるいはS16において端部電圧Vendが所定値VL以下であると判断されると、インピーダンスZは真値と扱われず、以後の処理にこのインピーダンスZは用いられない(S20)。ここでは、インピーダンスZの真値判断が行われている。そして、真値と判断されたインピーダンスZを用いて、発電制御が行われる(S18)。これらの機能は、CPU12の発電制御モジュール36によって実行される。特に、交流インピーダンス法は、インピーダンスZの値が高い方が精度がよいので、この真値とされたインピーダンスZの値に基づいて、発電制御を定量的に行うことができる。
発電制御は、インピーダンスZの値に従って、燃料ガスの量あるいは酸化ガスの量等を制御して実行することができる。また、燃料電池スタック40の冷却水の水温の監視水準を用いて発電制御を行うことができる。例えば、燃料電池スタック40の冷却水の水温が下がると、膜における水分の持ち去り量が減少し、膜が濡れ気味になる。逆に冷却水の水温が上がると、膜における水分の持ち去り量が増加し、膜が乾燥気味となる。そこで、インピーダンスZの測定値が高いときは、冷却水水温の監視水準を低温側とし、逆にインピーダンスZの測定値が低いときは、冷却水水温の監視水準を高温側とすることで、膜の濡れ状態を電気化学反応に適したものに維持し、発電を効率よく行うことができる。
図6は、燃料電池スタック40の膜の濡れ状態を電気化学反応に適したものに維持するための条件として、インピーダンスZと冷却水の水温とを関係づけたものである。例えば、インピーダンスZが200mΩのときは、燃料電池スタック40の冷却水の水温の監視水準を70℃とし、インピーダンスZが300mΩと高くなると、水温の監視水準を下げて65℃とする。このように、インピーダンスZの測定値に応じて、燃料電池スタック40の冷却水の水温監視水準を変更して、発電制御を行うことができる。
なお、以上では、膜が乾燥している場合、すなわちインピーダンスZが所定値ZUを超える場合について説明した。同様に、膜が濡れすぎてフラッディング状態にある場合についても、インピーダンス測定の結果に対し、端部電圧のデータによる補強あるいは裏づけを行って、インピーダンスZの真値判断をすることが可能である。
10 燃料電池発電制御システム、11 燃料電池膜状態判断装置、12 CPU、14 電圧検出I/F、16 インピーダンス測定I/F、18 水温検出I/F、20 発電制御部、30 インピーダンス測定モジュール、32 端部電圧測定モジュール、34 膜状態判断モジュール、36 発電制御モジュール、40 燃料電池スタック、42 単電池。
Claims (7)
- 複数の単電池を組み合わせた燃料電池スタックのインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、
燃料電池スタックの端部における電圧である端部電圧を測定する電圧検出部と、
測定されたインピーダンスを予め任意に定めた所定値と比較し、さらに端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較して、測定されたインピーダンスが真値として扱えるか否かを判断する判断部と、
を含み、真値として扱えるインピーダンスに従って膜の状態を判断することを特徴とする燃料電池の膜状態判断装置。 - 請求項1に記載の燃料電池の膜状態判断装置において、
判断部は、
測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較し、端部電圧が平均電圧より高いときに、測定されたインピーダンスを真値として扱えるものと判断することを特徴とする燃料電池の膜状態判断装置。 - 複数の単電池を組み合わせた燃料電池スタックのインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と、
燃料電池スタックの端部における電圧である端部電圧を測定する電圧検出部と、
測定されたインピーダンスを予め任意に定めた所定値と比較し、さらに端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較して、測定されたインピーダンスが真値として扱えるか否かを判断する判断部と、
真値として扱えるインピーダンスに従って燃料電池スタックの発電を制御する発電制御部と、
を含むことを特徴とする燃料電池の発電制御装置。 - 請求項3に記載の燃料電池の発電制御装置において、
判断部は、
測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧を燃料電池スタックの平均電圧と比較し、端部電圧が平均電圧より高いときに、測定されたインピーダンスを真値として扱えるものと判断することを特徴とする燃料電池の発電制御装置。 - 請求項3に記載の燃料電池の発電制御装置において、
発電制御部は、特定されたインピーダンスに基づき、燃料電池スタックの水温の監視水準を設定して、燃料電池スタックの発電制御を行うことを特徴とする燃料電池の発電制御装置。 - 複数の単電池を組み合わせた燃料電池スタックのインピーダンスを測定する工程と、
燃料電池スタックの端部における電圧である端部電圧を測定する工程と、
測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧が燃料電池スタックの平均電圧を超えるか否かを判断する判断工程と、
判断工程において、端部電圧が平均電圧を超えるときに、測定されたインピーダンスの値を真値として特定する工程と、
を含み、特定されたインピーダンスに基づいて燃料電池スタックの膜の状態を判断することを特徴とする燃料電池の膜状態判断方法。 - 複数の単電池を組み合わせた燃料電池スタックのインピーダンスを測定する工程と、
燃料電池スタックの端部における電圧である端部電圧を測定する工程と、
測定されたインピーダンスが予め任意に定めた所定値に比べ高いときに、端部電圧が燃料電池スタックの平均電圧を超えるか否かを判断する判断工程と、
判断工程において、端部電圧が平均電圧を超えるときに、測定されたインピーダンスの値を真値として特定する工程と、
特定されたインピーダンスに基づき、燃料電池スタックの発電制御を行う発電制御工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池の発電制御方法。
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JP2006165502A JP2007335220A (ja) | 2006-06-15 | 2006-06-15 | 燃料電池の膜状態判断装置、燃料電池の発電制御装置、燃料電池の膜状態判断方法及び燃料電池の発電制御方法 |
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2006
- 2006-06-15 JP JP2006165502A patent/JP2007335220A/ja active Pending
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