JP2007331056A - 真空吸着装置および吸引力推定方法 - Google Patents

真空吸着装置および吸引力推定方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 空気漏れを防ぐとともに、装置の複雑化を防いで、吸引力を推定可能な真空吸着装置およびその吸引力推定方法を提供する。
【解決手段】 空気噴射手段30によって真空室40の空気を加圧した加圧状態で、正圧測定手段32によって真空室の空気の圧力値Sを測定し、測定結果を出力する。この出力結果に基づくことで、ワーク22を吸引する吸引力Fに影響する吸引面積Aを見積もることが可能となる。したがって逆止弁50の開閉状態を検出する複数の検出センサを不要として、吸引面積Aおよび吸引力Fを推定することが可能となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、吸着搬送物を真空吸着する真空吸着装置に関し、特に吸着対象物を搬送するために用いられる真空吸着装置と、その吸引力を推定する吸引力推定方法に関する。
第1の従来技術の真空吸着パッドは、真空吸着パッドの真空室の気体を減圧することで、真空吸着パッドの吸着面が吸着対象物であるワークに密着し、ワークを吸着することができる。しかしながら、真空吸着パッドの吸着面の一部が、ワークの被吸着面に形成される凹凸部分に位置すると、真空吸着パッドの吸着面と、ワークの被吸着面との隙間から空気漏れが生じる。この場合、真空室の真空度が設定圧力値に達することが妨げられ、所望の吸引力を維持できない。
第1の従来技術の問題を軽減する他の従来技術がある。第2の従来技術として、複数の真空吸着パッドを並列に配置し、さらに各真空吸着パッドの吸引路の直径を0.5mm程度の小径にする技術がある。この技術だと、複数の真空吸着パッドのうち1つが、ワークで塞がれていなくても、真空吸着パッドの吸引路の直径が小さいので、その分、漏れ量を少なく抑えることができる。
図11は、第3の従来技術の真空吸着パッド1を示す断面図である。第3の従来技術の真空吸着パッド1は、真空室2を形成する真空室形成部3に、小径の吸引路4が複数形成される。また真空吸着パッド1は、真空室2の気体を減圧する減圧手段5を備える。
第2および第3の従来技術では、第1の従来技術に比べて少ないが、ワークに形成される凹凸部分で、少なからず空気漏れが生じる。したがって空気漏れを補償するために、ワークを吸着する吸着期間にわたって、減圧手段5によって真空室の減圧を継続する必要がある。また第2および第3の従来技術での真空吸着パッドの吸引力は、ワークの被吸着面によって塞がれる吸引路4の数に依存することとなる。
図12は、第4の従来技術の真空吸着パッド6を示す断面図である。第4の従来技術の真空吸着パッド6は、チェックバルブである逆止弁7が各吸引路4にそれぞれ設けられる。その他の構成は、第3の従来技術と同様であるので、同様の構成については、説明を省略する。
減圧手段5によって真空室2の気体を減圧した場合、吸引対象物8によって塞がれていない吸引路4では、逆止弁7によって吸引路4が閉じられる。これによってワーク8の凹凸部分8aが形成されても、逆止弁7によって、吸引路4での空気漏れが防がれる。したがって第4の従来技術の真空吸着パッド6は、全ての吸引路4が吸引対象物8によって塞がれる場合と同等の真空度を達成することができる。
このように逆止弁7を用いた場合、真空度に関しては、ワーク8に凹凸部分8aがあっても、全ての吸引路4がワーク8によって塞がれる場合と同等の値を得ることができる。真空吸着パッドでワーク8を吸着する場合の吸引力Fは、真空室の気体の圧力値Pに対応する真空度(真空圧)と、ワーク8によって塞がれる複数の吸引路4の外方空間側開口の総断面積である吸引面積Aとに基づいて決定される。
第4の従来技術の真空吸着パッド6について、次のような問題がある。ワーク8では塞がれずに逆止弁7によって塞がれた吸引路4があれば、吸引面積Aは低くなり、吸引力Fは低くなる。したがって真空室の真空度が十分であっても、吸引面積Aが小さいことで、吸引力Fが不足する場合がある。この結果、圧力センサ9による真空度の検出だけでは吸引力Fを判断することができず、吸着不良が生じるおそれがあり、吸着不良に起因して、ワーク8の吸着ずれおよび落下等の搬送不良が生じるおそれがある。
第5の従来技術が、特許文献1に開示されている。吸引力Fを正確に推定するには、真空度の他に、吸引面積Aを推定する必要がある。第5の従来技術では、吸引面積Aを求める。この技術では、逆止弁7毎に設けられ、対応する逆止弁7の動作状態を検出する検出センサをそれぞれ備える。
各検出センサは、吸引路形成部分10に電極およびプリント基板回路を備えたものであり、浮動子の位置変化によって、通電状態が変化する。この通電変化によって逆止弁7の動作状態を検出している。このような構造では、吸引路形成部分10毎に検出センサをそれぞれ備える必要がある。したがって真空吸着パッドの構造は複雑化する。たとえば吸引路4の数が増えるとともに、吸引路4が緻密に配列される場合には、検出センサを小形化して複数設ける必要がある。また吸引路形成部分10毎に検出センサをそれぞれ設けることで、製造コストが増大してしまうという問題がある。また検出センサが小形であるとともに接触式であるので、検出センサの信頼性が低く、吸引面積Aを精度よく推定することができない場合がある。また破損等によって信頼性が低下するおそれがある。
特開平11−207678号公報
上述したように第1の従来技術では、ワークに対する真空吸着パッドの位置決めが正確になされていない場合や、凹凸部分が形成されるワークを吸着する場合などによって、複数の真空吸着パッドの一部がワークに接触しない場合があると、ワークに接触していない真空吸着パッドの吸引路から、空気が漏れてしまう。この場合、必要とする真空度を得ることができず、ワークを吸着できない場合が生じる。これを回避するために、第2〜第4の従来技術があるが、これらにも下記のように課題がある。
第2および第3の従来技術では、図11に示すように、各吸引路4を小径に形成する。これによって全ての吸引路4がワーク8に塞がれていない場合においても、ワーク8に塞がれていない吸引路4からの空気漏れ量を極力抑えることで真空度ロスを極力減らす。しかし、ワーク8と密着していない吸引路4の数が多いほど、そこからの漏れ量は多くなり、必要とする真空度が維持できない場合がある。
第4の従来技術では、図12に示すように、吸引路毎に逆止弁7をそれぞれ備え、ワーク8によって塞がれない吸引路4を逆止弁7によって塞ぐ。この技術であれば、全ての吸引路4によってワーク8が塞がれていない場合においても、空気漏れを防いで、全ての吸引路4がワーク8に塞がれている場合と同様の真空度に維持することができる。しかし、ワーク8と真空吸着パッド6の吸着面との接触状態に関わらず、真空度が一定の値を示すので、吸引面積Aを見積もることができず、吸引力Fが十分であるか否かを判断できない。
第5の従来技術では、吸引路4毎に検出センサをそれぞれ備え、逆止弁7の作動状態を検出することで、吸引面積Aを求めることができる。しかしながら、小径の吸引路4が緻密に配列されると、装置が複雑化し、製造コストが増大してしまうとともに、信頼性の確保が困難になる。
したがって本発明の目的は、空気漏れを防ぐとともに、装置の複雑化を防いで、吸引力を推定可能な真空吸着装置およびその吸引力推定方法を提供することである。
本発明は、内部空間に真空室を形成する真空室形成部と、
吸着対象物に当接する吸着面を形成するとともに、吸着面に臨む外方空間に開放して、外方空間と真空室とを連通する複数の吸引路をそれぞれ形成する吸着部と、
吸引路毎にそれぞれ設けられ、真空室から外方空間に吸引路を気体が流れることを許容するとともに、外方空間から真空室に吸引路を気体が流れることを阻止する逆止弁と、
真空室の気体の圧力を、大気圧未満に減圧する減圧手段と、
真空室の気体の圧力を、大気圧を超えて加圧する加圧手段と、
加圧手段によって真空室の気体の圧力が加圧される加圧状態において、真空室の気体の圧力値Sを測定可能な正圧測定手段とを備えることを特徴とする真空吸着装置である。
本発明に従えば、吸着面を吸着対象物に当接させた状態で、減圧手段によって真空室の気体を減圧することで、吸着対象物を吸着面に吸引することができる。吸着対象物に形成される凹凸部分によって、吸着面の一部と吸着対象物との間に隙間空間が形成されることがある。この場合、外方空間に存在する気体が、隙間空間および吸引路を介して真空室に侵入しようとする。本発明では、逆止弁が吸引路を閉じて、気体の流れを阻止することで、外方空間に存在する気体が真空室に侵入することを防ぐことができる。これによって真空室の気体の圧力が不所望に高くなることを防いで、必要とする真空度を維持することができる。
また吸着面を吸着対象物に当接させた状態で、加圧手段によって真空室の気体を加圧する。この場合、吸着面の一部と吸着対象物とが接していると、吸引路が吸着対象物によって塞がれて、真空室に存在する気体が外方空間に脱出することが妨げられる。これに対して、吸着面の他の一部と吸着対象物との間に隙間空間が形成されていると、外方空間と真空室との圧力差の影響で、真空室に存在する気体が、吸引路および隙間空間を介して外方空間に脱出しようとする。このとき、逆止弁が気体の流れを許容することで、真空室に存在する気体が外方空間に排出される。
真空室の気体を加圧した加圧状態では、吸着対象物によって塞がれる吸引路の数が多いほど真空室の圧力低下が抑制され、真空室の圧力が高くなる。言換えると、隙間空間に開放される吸引路の数が多いほど真空室の圧力低下が促進され、真空室の圧力が低くなる。したがって加圧状態における真空室の気体の圧力値Sは、吸着対象物によって塞がれる複数の吸引路の外方空間側開口の総断面積と一対一の関係となる。この総断面積は、吸引時に吸着対象物を吸引するのに有効に作用する複数の吸引路の外方空間側開口の断面積をそれぞれ総合した吸引面積Aに相当する。すなわち加圧状態における真空室の気体の圧力値Sは、吸引面積Aと一対一の関係となる。吸引面積Aは、真空吸着装置が吸着対象物を吸引する吸引力Fを決定する要因のうちの1つとなる。
本発明では、加圧手段によって真空室の気体を加圧した加圧状態で、正圧測定手段によって真空室の気体の圧力値Sを測定し、測定結果を出力する。この出力結果に基づくことで、吸着対象物を吸引する吸引力Fに影響する吸引面積Aを見積もることが可能となる。したがって第5の従来技術に比べて、逆止弁の開閉状態を検出する複数の検出センサを不要として、吸引面積Aを見積もることが可能となる。
また本発明は、吸引時に吸着対象物を吸引するのに有効に作用する複数の吸引路での、外方空間側開口の断面積を総合した吸引面積を、加圧状態における真空室の気体の圧力値Sに基づいて推定する吸引面積推定手段をさらに備えることを特徴とする。
本発明に従えば、吸引面積推定手段は、正圧測定手段から真空室の気体の圧力値Sが与えられる。加圧状態における真空室の気体の圧力値Sと、吸引面積Aとは、一対一の関係となる。この関係に従って、吸引面積推定手段は、加圧状態における真空室の圧力値Sから、吸引面積Aを推定する。これによって作業者が、加圧状態の真空室の気体の圧力値Sから、吸引面積Aを手動で求める必要がなく、利便性を向上することができる。
また本発明は、加圧状態における真空室の気体の圧力値Sに基づいて、吸引時に吸着対象物の吸着が可能であるか否かを判断する吸着可否判断手段をさらに備えることを特徴とする。
本発明に従えば、吸着可否判断手段は、加圧状態の真空室の気体の圧力値Sが、正圧測定手段から与えられる。加圧状態における真空室の気体の圧力値Sと、吸引面積Aとは、一対一の関係となる。また吸着すべき吸着対象物が決定すると、吸着対象物を吸着するのに最低限必要な吸引力FMinは、既知となる。吸引力Fは、吸引時の真空室の気体の圧力値Pと、吸引面積Aとに基づいて決定される。したがって吸引時の真空室の気体の圧力値Pと、最低限必要な吸引力FMinとが既知であると、最低限必要な吸引面積AMinを求めることができる。
吸着対象物によって塞がれる複数の吸引路の外方空間側開口の総面積が、前記最低限必要な吸引面積AMinに相当するように、吸着対象物を吸着部の吸着面に当接させた場合における、加圧状態における真空室の気体の第1設定圧力値SMinを前もって求めておく。そのあとで、加圧状態における真空室の気体の圧力値Sが、前記第1設定圧力値SMin以上であると、吸引面積Aが、吸着に最低限必要な吸引面積AMin以上となり、吸着対象物の吸着が可能であると判断することができる。また加圧状態における真空室の気体の圧力値Sが、前記第1設定圧力値SMin未満であると、吸引面積Aが、吸着に最低限必要な吸引面積AMin未満となり、吸着対象物の吸着が不可能であると判断することができる。
このように吸着可否判断手段は、前記加圧状態における真空室の気体の圧力値Sを、予め定められる第1設定圧力値SMinと比較することで、吸着対象物の吸着が可能であるか否かを判断することができる。これによって吸着動作前に吸着可能か否かを判断することができる。
また本発明は、減圧手段によって減圧される減圧状態において、真空室の気体の圧力値Pを測定可能な負圧測定手段をさらに備えることを特徴とする。
本発明に従えば、負圧測定手段によって、減圧状態での真空室の気体の圧力値Pを測定して測定結果を出力する。このように直接的に測定することで、間接的に求める場合に比べて、減圧状態での真空室の気体の圧力値Pを精度よく得ることができる。またこの出力結果に基づくことで、吸着対象物を吸着するのに必要な、減圧状態での真空室の気体の第2設定圧力値PMaxに到達したことを判断させることができる。
また本発明は、減圧状態における真空室の気体の圧力値Pに基づいて、吸着対象物を吸着した吸着状態であるか否かを判断する吸着状態判断手段をさらに備えることを特徴とする。
本発明に従えば、吸着状態判断手段は、負圧測定手段から減圧状態での真空室の気体の圧力値Pが与えられる。これによって減圧状態での真空室の気体の圧力が、吸着対象物を吸着するのに必要な第2設定圧力値PMaxに到達しているか否かを判断することができる。また減圧状態での真空室の気体の圧力値Pが、第2設定圧力値PMaxに到達したことを判断すると、吸着部が吸着対象物を充分に吸着した状態であると判断することができる。これによって作業者が、吸着部が吸着対象物を充分に吸着した状態であるか否かを手動で判断する必要がなく、利便性を向上することができる。
また本発明は、内部空間に真空室を形成する真空室形成部と、吸着対象物に当接する吸着面を形成するとともに、吸着面に臨む外方空間に開放して、外方空間と真空室とを連通する複数の吸引路をそれぞれ形成する吸着部と、吸引路毎にそれぞれ設けられ、真空室から外方空間に吸引路を気体が流れることを許容するとともに、外方空間から真空室に吸引路を気体が流れることを阻止する逆止弁とを備える真空吸着パッドについて、吸着対象物に対する吸引力を推定する吸引力推定方法であって、
吸着部の吸着面に吸着対象物を当接させて、真空室の気体の圧力を、大気圧を超えて加圧して、真空室の気体の圧力値Sを測定する正圧測定工程と、
正圧測定工程で測定される真空室の気体の圧力値Sに基づいて、真空吸着パッドの吸引力を推定する推定工程とを含むことを特徴とする吸引力推定方法である。
本発明に従えば、正圧測定工程で、吸着部の吸着面に吸着対象物を当接させた状態で、真空室の気体を加圧し、加圧状態での真空室の気体の圧力を測定する。推定工程では、正圧測定工程で測定した圧力値Sに基づいて、真空吸着パッドの吸引力を推定する。加圧状態における真空室の気体の圧力値Sは、吸引面積Aと一対一の関係となる。吸引面積Aは、吸引時に吸着対象物を吸引するのに有効に作用する複数の吸引路の外方空間側開口の断面積をそれぞれ総合した総面積を意味する。
吸引力Fは、吸引時の真空室の気体の圧力値Pと、吸引面積Aとに基づいて決定される。吸引時の真空室の気体の圧力値Pが既知である場合、吸引力Fは、吸引面積A、言換えると加圧状態における真空室の気体の圧力値Sによって決定することができる。このようにして、推定工程では、吸引時の真空室の気体の圧力値Pが既知である場合、加圧状態における真空室の気体の圧力値Sから、真空吸着パッドの吸引力Fを推定することができる。
また本発明は、内部空間に真空室を形成する真空室形成部と、吸着対象物に当接する吸着面を形成するとともに、吸着面に臨む外方空間に開放して、外方空間と真空室とを連通する複数の吸引路をそれぞれ形成する吸着部と、吸引路毎にそれぞれ設けられ、真空室から外方空間に吸引路を気体が流れることを許容するとともに、外方空間から真空室に吸引路を気体が流れることを阻止する逆止弁とを備える真空吸着パッドを用いて、吸着対象物を搬送する搬送方法であって、
吸着部の吸着面に吸着対象物を当接させて、真空室の気体の圧力を、大気圧を超えて加圧して、真空室の気体の圧力値Sを測定する正圧測定工程と、
正圧測定工程で測定される真空室の気体の圧力値Sに基づいて、真空吸着パッドによる吸着対象物の吸着が可能であるか否かを判断する判断工程と、
判断工程で真空吸着パッドによる吸着が可能であることを判断すると、真空室の気体の圧力を、吸着対象物を吸着可能な大気圧未満の圧力値に減圧して、吸着部の吸着面に吸着対象物を吸着させる減圧工程と、
減圧工程後に、吸着対象物を吸着した真空吸着パッドを搬送する搬送工程とを含むことを特徴とする搬送方法である。
本発明に従えば、判断工程で、加圧状態における真空室の気体の圧力値Sに基づいて、真空吸着パッドが吸着対象物を吸着可能であるか否かを判断し、吸着可能であると判断すると、減圧工程に進む。減圧工程では、真空室の気体を減圧して、吸着部の吸着面に吸着対象物を吸着させる。次に搬送工程で、吸着対象物を吸着した真空吸着パッドとともに、吸着対象物を搬送する。本発明では、減圧工程および搬送工程の前に、審空吸着パッドが吸着対象物を吸着可能か否かを判断することができ、吸着不良に起因する搬送不良を防ぐことができる。
本発明によれば、逆止弁が吸引路毎に設けられるので、吸引対象物の被吸着面に凹凸部分が形成される場合でも、吸引時に外方空間から真空室に気体が侵入することを防いで、真空室の真空度を設定圧力値に維持することができ、吸引力の低下を防ぐことができる。さらに加圧手段と正圧測定手段とを備えることで、逆止弁の開閉状態を検出する複数の検出センサを設ける必要なく、吸引面積Aを推定可能に構成される。検出センサを不要とすることで、装置の構成を簡単化することができ、製造コストを低下させることができる。また吸引路を小径および緻密化することができ、吸着に関する信頼性を向上することができる。また吸引面積Aを推定可能とすることで、たとえば吸引力Fを精度よく推定することができ、吸引力が小さい状態で吸着対象物を吸着するといった吸着ミスを防ぐことができる。
また本発明によれば、吸引面積推定手段が吸引面積Aを推定する。これによって作業者が吸引面積Aを手動で求める必要がなく、利便性を向上することができる。また吸引面積Aに関する信号を出力することによって、吸引面積Aの大きさに基づいて、真空吸着装置またはその他の装置を制御することができる。
また本発明によれば、吸着可否判断手段が吸着可能か否かの判断を行う。これによって真空吸着装置が吸着対象物を吸着可能か否かを、作業者自身が判断する必要がなく、利便性を向上することができる。また吸着可能か否かを示す信号を出力することによって、吸着可能か否かに基づいて、真空吸着装置またはその他の装置を制御することができる。
また本発明によれば、減圧状態での真空室の気体の圧力値Pが、予め定める第2設定圧力値PMaxに到達したことを判断可能とすることができる。設定圧力値PMaxに達した後で、吸着後の動作を行わせることで、吸着不良が生じる可能性を防ぐことができる。また吸着前に吸着後の動作が行われることを防ぐことができる。これによって作業効率を高めるとともに、吸着に関する信頼性を向上することができる。
また本発明によれば、吸着状態判断手段が、吸着部が吸着対象物を充分に吸着した状態であると判断する。これによって吸着部が吸着対象物を吸着した状態であるか否かを、作業者が手動で判断する必要がなく、利便性を向上することができる。また吸着状態判断手段による判断結果を出力することによって、吸着状態か否かに基づいて、真空吸着装置またはその他の装置を制御することができる。
また本発明によれば、正圧測定工程で、吸着部の吸着面に吸着対象物を当接させた状態で、真空室の気体を加圧し、加圧状態での真空室の気体の圧力を測定する。次に、推定工程で、加圧状態の真空室の気体の圧力値Sに基づいて、真空吸着パッドの吸引力を推定する。このように加圧状態での真空室の気体の圧力に基づいて、真空吸着パッドの吸引力を推定することで、真空吸着パッドの構成を複雑にすることなく、吸引力を推定することができる。
また本発明によれば、加圧状態の真空室の気体の圧力値Sに基づいて、真空吸着パッドが吸着対象物を吸着可能であるか否かを判断し、吸着可能であると判断すると、吸着および搬送工程を行う。これによって推定した吸引力が過小であって、真空吸着パッドが吸着対象物を吸着不可能であることを判断すると、吸着動作が行われず、吸着ミスを防ぐことができる。これによって吸引力Fが過小な状態で、吸着対象物を搬送することが防がれ、搬送時に吸着対象物が吸着部から落下することを防ぐことができる。また逆止弁を有する真空吸着パッドを用いることで、真空室の気体の圧力の低下を防いで、吸着対象物を搬送することができる。
図1は、本発明の第1実施形態である真空吸着装置20を示す断面図である。図2は、真空吸着装置20を含む搬送システム24を簡略化して示す図である。真空吸着装置20は、真空吸着パッド21を有する。真空吸着パッド21は、真空吸着によって、吸着対象物であるワーク22を吸着する。真空吸着パッド21は、多関節ロボット23のロボットアーム26の手先25に装着される。搬送システム24は、多関節ロボット23によって真空吸着パッド21を移動させることによって、真空吸着パッド21に吸着したワーク22を搬送する。
真空吸着装置20は、真空吸着パッド21と、空気噴射手段30と、減圧手段31と、圧力測定手段32,33と、加圧用管路34と、減圧用管路35とを備える。真空吸着パッド21は、ワーク22を吸着する吸着体であり、内部に真空室40が形成される。空気噴射手段30は、圧縮空気を発生し、発生した圧縮空気を噴射する。加圧用管路34は、空気噴射手段30と真空吸着パッド21の真空室40とを接続し、空気噴射手段30によって噴射される圧縮空気を真空室40に案内する。空気噴射手段30は、汎用の送風機または圧縮機によって実現される。
減圧手段31は、減圧室を有し、減圧室の空気の圧力を大気圧未満に減圧する。減圧用管路35は、減圧手段31の減圧室と真空吸着パッド21の真空室とを接続し、真空室40の空気を減圧室に案内する。圧力測定手段32,33は、真空室40の空気の圧力値S,Pを測定する。圧力測定手段32,33は、正圧測定手段32と、負圧測定手段33とを含む。
正圧測定手段32は、加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sを測定可能であって、大気圧以上の正圧を測定範囲にもつ圧力センサである。たとえば大気圧に対する差圧であるゲージ圧で、0MPa以上1MPa以下の測定範囲を持つ圧力計によって正圧測定手段32が実現される。正圧測定手段32は、たとえば高速応答性をもつ半導体圧力センサなどが用いられる。
負圧測定手段33は、減圧状態における真空室40の空気の圧力値Pを測定可能であって、大気圧以下の負圧測定範囲にもつ圧力センサである。たとえばゲージ圧で、−0.1MPa以上0MPa以下の測定範囲を持つ真空計によって負圧測定手段33が実現される。負圧測定手段33は、上記正圧測定手段32と同様に高速応答性をもつ半導体圧力センサが用いられる。正圧測定手段32と負圧測定手段33とを別体に設けることで、1つの測定手段で測定する場合に比べて、正圧であっても負圧であっても、真空室40の空気の圧力を精度よく測定することができる。
真空吸着パッド21は、内部空間に真空室40を形成する真空室形成部41と、ワーク22に当接する吸着面42を形成する吸着部43と、逆止弁形成部44とを有する。本実施の形態では、真空吸着パッド21の外形形状は、扁平な直方体形状に形成され、厚み方向一方の外表面が吸着面42となる。
真空室形成部41は、直方体形状の真空室40を形成する略箱状に形成される。吸着部43は、平坦なシート状に形成され、逆止弁形成部44を介して真空室形成部41に固定される。吸着部43は、吸着面42を形成するとともに、2つ以上の吸引路46を形成する。吸引路46は、吸着面42に臨む外方空間45に開放して、外方空間45と真空室40とを連通する。複数の吸引路46は、真空吸着パッド21の長手方向および幅方向に並んで、たとえば千鳥状に配列される。
各吸引路46は、吸着面42に垂直な方向に延びて略円筒状にそれぞれ形成される。したがって吸着面42には、吸引路46による外方空間側開口がそれぞれ形成された水玉模様の穴あき形状に形成される。たとえば吸引路46の内径は、約10mmに設定される。吸引路46は、それぞれ同一形状に形成され、吸引路46を通過する空気の流路抵抗は、全て同一となるように設定される。
吸着部43は、ワーク22と吸着面42とが接触したときに、空気が漏れにくい材料によって実現される。具体的には、吸着部43は、ゴム材またはスポンジ材などの、可撓性および弾発性を有する材料によって実現される。
吸着部43にゴム材を用いる場合、弾性があってワークとの密着性がよく、空気漏れが少ない材料であるゴム材が用いられることが好ましい。また吸着部43にスポンジ材を用いる場合、比較的軟質で、たとえば10mm以上の厚みを有する者が好ましい。スポンジ材を用いた場合には、スポンジ材が軟質、かつ厚みがあるため、複雑な凹凸形状を有するワーク22に対しても、スポンジ材の厚み、また弾性の範囲内において、ワークの凹凸に沿って接触できるため有効である。
逆止弁形成部44は、吸引路46毎にそれぞれ設けられる逆止弁50を形成する。逆止弁50は、チェックバルブであって、対応する吸引路46を空気が一方向に流れることを許容し、他方向に流れることを阻止する。具体的には、逆止弁50は、真空室40から外方空間45に吸引路46を空気が流れることを許容するとともに、外方空間45から真空室40に吸引路46を空気が流れることを阻止する。各逆止弁50は、それぞれ独立して動作可能に構成され、それぞれ同一形状に形成される。逆止弁50に形成される弁室53を通過する空気の流路抵抗は、全て同一となるように設定される。
本実施の形態では、減圧手段31は、エジェクタ真空ポンプによって実現される。エジェクタ真空ポンプは、高速で噴出する作動流体の巻込み作用 によって気体輸送を行う運動量輸送式真空ポンプである。ここで、作動流体は、空気噴射手段30によって噴射される空気が用いられる。したがってエジェクタ真空ポンプは、エジェクタ70と、空気噴射手段30とを含んで構成される。
エジェクタ70は、管状に形成され、一次側ポート71と、2次側ポート72と、排気ポート73とが形成される。一次側ポート71は、空気噴射手段30によって噴射される圧縮空気が導かれる。一次側ポート71に導かれた圧縮空気は、エジェクタ内部に設けられるノズル75を通過して、排気ポート73から排気される。また2次側ポート72は、減圧用管路35に接続される。
エジェクタ内でノズル75から勢いよく圧縮空気を噴流として噴射させると、ノズル75周辺の空気は噴流に巻き込まれて持ち去られる。この結果、ノズル75の周辺の領域に減圧室74が形成され、減圧室74の空気は大気圧よりも低い圧力を有する。減圧室74は、2次側ポート72に連通する。これによって2次側ポート72および減圧用管路35を介して、真空室40の空気が、エジェクタ内の減圧室74にひきつけられて、真空室40の空気の圧力が減圧される。
本実施の形態では、真空吸着装置20は、方向切換弁60を有する。方向切換弁60は、空気噴射手段30の噴射方向を切換えるための方向切換手段となる。方向切換弁60は、1つの入口に対して、2つの出口のうちのいずれかを選択可能に構成される。方向切換弁60は、少なくとも3つのポートである、入力ポート61と、加圧時出力ポート62と、減圧時出力ポート63とを有する。また方向切換弁60は、少なくとも弁体が2つの位置を取りうる。
第1の位置である加圧位置に弁体が位置すると、弁体は、入力ポート61と加圧時出力ポート62とを連通させて、入力ポート61と減圧時出力ポート63との連通を阻止する。また第2の位置である減圧位置に弁体が位置すると、弁体は、入力ポート61と減圧時出力ポート63とを連通させて、入力ポート61と加圧時出力ポート62との連通を阻止する。
本実施の形態では、方向切換弁60は、電磁弁によって実現され、さらに具体的には、5ポート2ポジション切換弁が用いられる。方向切換弁60は、入力ポート61と、加圧時出力ポート62と、減圧時出力ポート63と、第1リリースポートと、第2リリースポートとが形成される。入力ポートは、空気噴射手段30から噴射される圧縮空気を導く噴射管路に接続される。加圧時出力ポート62は、加圧用管路34に接続される。減圧時出力ポート63は、減圧用管路35に接続される。各リリースポートは、図示しない排気管路にそれぞれ接続される。各排気管路には、管内の圧力が設定値を超えると管路を開き、管内の圧力が設定値未満であると管路を閉じる圧力調整弁が介在する。
方向切換弁60は、制御手段からの制御電流が与えられることで、弁体位置を加圧位置と減圧位置とのいずれかに切換える。弁体が加圧位置に変位駆動されることで、入力ポート61と加圧時出力ポート62と第1リリースポートとを連通させるとともに、入力ポート61と減圧時出力ポート63との連通を阻止する。弁体が減圧位置に変位駆動されることで、入力ポート61と減圧時出力ポート63と第2リリースポートとを連通させるとともに、入力ポート61と加圧時出力ポート62との連通を阻止する。各リリースポートが排気管路と接続されることで、真空室40の空気の圧力が不所望に増加および減少することを防ぐことができる。また5ポート2ポジション切換弁で方向切換弁60が形成されることで、圧縮空気の流路の切換えを1つの電磁弁で実現することができ、構成を簡単化することができる。また方向切換弁60は上述以外の他の方向切換弁で実現されてもよい。また本実施の形態では、真空吸着装置20は、排気ポート72に接続されるサイレンサ76を備える。サイレンサ76は、消音器であって、排気ポート72から排気される圧縮空気を放出する際に発生する騒音を低減する。
また本実施の形態では、真空吸着装置20は、ストップバルブである開閉弁64を有する。開閉弁64は、減圧用管路35を開閉するための開閉手段であって、減圧用管路35に介在される。開閉弁64は、弁体が開放位置に移動すると、減圧用管路35を開放する。また開閉弁64は、弁体が閉鎖位置に移動すると、減圧用管路35を閉鎖する。開閉弁64は、電磁弁によって実現される。
方向切換弁60の弁体を減圧位置に移動させるとともに、開閉弁64の弁体を解放位置に移動させた状態で、空気噴射手段30によって圧縮空気を噴射すると、圧縮空気がエジェクタ70を通過してサイレンサ76から排出される。これによってエジェクタ70内の減圧室74の空気の圧力が大気圧に対して低下し、真空室40の空気がエジェクタ内の減圧室74にひきつけられて、真空室40の空気の圧力が減圧される。本実施の形態では、空気噴射手段30によって、真空室40の空気をゲージ圧で、0.5MPa以上に加圧可能である。
方向切換弁60の弁体を加圧位置に移動させるとともに、開閉弁64の弁体を閉鎖位置に移動させた状態で、空気噴射手段30によって圧縮空気を噴射すると、圧縮空気は真空室40に案内される。圧縮空気によって、真空室40の空気が大気圧に対して増大すると、真空室40の空気は吸引路46から排出される。本実施の形態では、エジェクタ真空ポンプによって、真空室40の空気をゲージ圧で、−0.05MPa以下に減圧可能である。
図3は、真空吸着パッド21を示す底面図である。図3において、2点鎖線でハッチングした領域は、吸着面42にワーク22が密着する密着領域47を示す。またハッチングしていない領域は、吸着面42とワーク22とが密着していない離間領域48を示す。離間領域48は、ワーク22の被吸着面に、開口部分または凹凸部分が形成される場合に生じる。
このように被吸着面に凹凸部分が形成されるワーク22に、真空吸着パッド21の吸着面42を当接させた場合、複数の吸引路46aは、ワーク22に塞がれる吸引路46aと、ワーク22に塞がれていない吸引路46bとが存在することになる。吸着面42のうちの前記密着領域47に形成される吸引路46aが、ワーク22に塞がれることになる。また吸着面42のうちの前記離間領域48に形成される吸引路46bが、ワーク22に塞がれないことになる。
図4は、逆止弁形成部44を拡大して示し、真空室の空気の圧力が、大気圧よりも高い状態を示す断面図である。逆止弁50は、弁室部51と、弁体52とを含んで構成される。弁室部51は、対応する吸引路46と真空室40とを連通する弁室53が形成される。弁室53は、吸着面42に垂直な方向に延びて、略円錐台形状に形成される。弁室53は、吸着面42に垂直な方向に真空室40に近づくにつれて縮径する形状に形成される。本実施の形態では、吸引路46は、外方空間45と、逆止弁形成部44に形成される弁室53とを連通し、この弁室53を介して、外方空間45と真空室40とが間接的に連通する。
また弁体52は、浮動子であって、吸着部43の厚み方向に自由に移動可能なフローティング状態で、弁室53に収容される。また弁室部51には、弁体52が着座する着座部54が形成される。弁体52が移動して着座部54に当接することで、弁体52が弁室53を塞ぐ。また弁体52が移動して着座部54から離間することで、弁室53を貫通する流路が形成される。弁体52は、球状に形成される。弁体52は、弁室の真空室40側開口の直径よりも大きい直径を有する。また着座部54は、弁室部51の一部であって、弁室53に臨む内周面に位置する。
真空室40の空気の圧力が大気圧よりも低い場合、ワーク22に塞がれた吸引路46aでは、ワーク22と吸着面42との間に隙間55が形成されず、閉じた空間となる。これによって、真空室40と、弁室53と、吸引路46aとにそれぞれ存在する空気の圧力は、それぞれ等しくなり圧力差が生じない。この場合、弁室53および吸引路46aでの空気の流れが生じないので、弁体52は、真空室40に向かって変位移動させる押付け力が与えられず、弁体52が着座部54に当接することがない。
また吸引路46aの空気の圧力が大気圧よりも低くなることで、真空吸着パッド21は、吸引路46aを塞ぐワーク22を吸引する吸引力Fが発生する。1つの吸引路46aで発生する吸引力fは、ワーク22によって塞がれている吸引路46aの外方空間側開口の断面積aと、大気圧P0から吸引路46aの空気の圧力Pを減算した差圧(P0−P)とを乗算した値a・(P0−P)となる。n個の吸引路46aがワーク22によって塞がれている場合、真空吸着パッド21の全体の吸引力Fは、1つの吸引路46aで発生する吸引力fのn倍の値a・n・(P0−P)となる。吸引路46aの空気の圧力Pは、真空室40の空気の圧力と等しい。
正確には、真空吸着パッド21の全体の吸引力Fは、吸引時にワーク22によって塞がれる複数の吸引路4の外方空間側開口aの断面積を総合した吸引面積Aと、大気圧P0から真空室40の空気の圧力Pを減算した差圧(P0−P)とを乗算した値A・(P0−P)となる。このように真空室40の空気を減圧することで、ワーク22に対する吸引力Fを真空吸着パッド21に発生することができる。真空吸着パッド21は、吸引力Fが充分であるならば、ワーク21を吸着することができる。
真空室40の空気の圧力が大気圧よりも低い場合、ワーク22に塞がれていない吸引路46bでは、ワーク22と吸着面42との間に隙間55が形成される。この隙間が外方空間に開放される。この場合、外方空間45の空気が、隙間55、吸引路46、弁室53を順に通過して、真空室40に侵入しようとする。外方空間45の空気が弁室53に流れ込むことで、空気の流れが生じて、弁体52は、真空室40側に向かって変位移動される。弁室53は、真空室40に向かうにつれて縮径するテーパ形状に形成されるので、変位移動された弁体52は、着座部54に当接する。着座部54に弁体52が当接した状態では、弁室53が弁体52によって塞がれ、外方空間45から真空室40に向けて空気が流れることが阻止される。
このとき、弁室53のうちで、弁体52に対して真空室40と反対側の空間と、吸引路46とに存在する空気の圧力は、大気圧と等しくなる。これに対して、弁室53のうちで、弁体52に対して真空室40側の空間に存在する空気の圧力は、大気圧よりも低い。したがって弁体52の周囲で圧力差が生じることとなり、圧力差が解消されるまで、弁体52が真空室40に向けて押付けられて、着座部40に弁体52が当接して弁室53を塞いだ状態が維持される。弁室53を塞ぐことで、外方空間45の空気が、隙間55、吸引路46bおよび弁室53を介して、真空室40に侵入することが防がれる。
このように吸引路46毎に、逆止弁50を備えることで、ワーク22に対して吸引に寄与していない、言わば無効な吸引路46bが存在する場合であっても、逆止弁50によって塞いで、無効な吸引路46bから真空室40への空気漏れを防ぐことができる。したがって真空室40の真空度が低下することを防ぎ、高い真空度でワーク22を吸引することができる。
また上述する構成に追加して、弁室53を塞ぐように弁体52にバネ力を与える補助機構を備えてもよい。これによって弁体52が着座部54に押付けられる押し付け力を補助することができ、無効な吸引路46に対応する弁体52を、減圧時に着座部54に密着させやすくすることができる。また逆止弁50は、上述した浮動子タイプ以外のスイング式やリフト式などを用いてもよい。このように本発明に用いられる逆止弁50は、気体が逆流することを防ぐ機能を有していればよく、その方式および機構について限定されない。また逆止弁50は、理想的には流路閉鎖状態において空気が完全に流れない状態であればよいが、必ずしも、流路開放状態において、流路抵抗が全くない構成である必要はなく、たとえばその機構上、数%の損失を伴う抵抗が発生している場合であっても問題ない。
図5は、逆止弁形成部44を拡大して示し、真空室の空気の圧力が、大気圧よりも高い状態を示す断面図である。図5に示すように、被吸着面に凹凸が形成されるワーク22に、真空吸着パッド21の吸着面42を当接させた場合、複数の吸引路46aは、ワーク22に塞がれる吸引路46aと、ワーク22に塞がれていない吸引路46bとが存在することになる。
真空室40の空気の圧力が大気圧よりも高い場合、ワーク22に塞がれた吸引路46aでは、ワーク22と吸着面42との間に隙間55が形成されず、閉じた空間となる。これによって吸引路46aを通過して、真空室40から外方空間へ空気が漏れることが防がれる。これに対して、ワーク22に塞がれていない吸引路46bでは、ワーク22と吸着面42との間に隙間55が形成される。この隙間が外方空間45に開放される。この場合、真空室40の空気が、弁室53、吸引路46b、隙間55を順に通過して、外方空間45に脱出しようとする。このとき、逆止弁50の弁体52は、着座部54から離れる方向に力を受け、弁室53を開く。これによってワーク22に塞がれていない吸引路46bから、真空室40の空気が外方空間45に漏れ出す。逆止弁50の性質上、流路抵抗による数%の損失はあるが、真空室40の空気は、ワーク22に塞がれていない吸引路46bから比較的円滑に排出される。
ワーク22の被吸着面に凹凸部分がなく平坦面に形成される場合、全ての吸引路46がワーク22によって塞がれる。この場合、言わば密閉状態になり、基本的には各吸引路46からの空気漏れはない。これに対して、ワーク22の被吸着面に開口部分や凹凸部分がある場合においては、ワーク22に塞がれない吸引路46bが生じるので、真空室内を加圧することで、ワーク22に塞がれない吸引路46bからは空気が外部に漏れることになる。
ワーク22に塞がれていない吸引路46bが多いほど、真空室40から空気が漏れる量が大きくなる。また真空室40から空気が漏れる量が大きいほど、真空室40の圧力低下が大きくなる。したがって真空室22の空気の圧力は、空気の漏れ量に依存する。空気の漏れ量が多い場合は低い圧力を示し、空気の漏れ量が少ない場合においては高い圧力を示す。
つまり、真空室40の空気の圧力を大気圧以上にした場合、ワーク22によって塞がれる吸引路46aが多ければ多いほど、高い圧力に達する。真空室22の空気の圧力は、正圧測定手段32によって測定することが可能である。全体の吸引路46の数nに対する、ワーク22によって塞がれる有効な吸引路46aの数mの比率m/nと、そのときの真空室内の圧力変動を定量化できていれば、真空室内の圧力を測定することで、全体の吸引路46の数nに対する、有効な吸引路46aの数mの比率m/nを見積もることができる。以下、ワーク22によって塞がれて、ワーク22を吸引するのに有効に作用する吸引路46aを有効な吸引路46aと称する場合がある。
ワーク22によって吸引路46の少なくとも一部が塞がれた場合の加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sは、有効な吸引路46の数mを全体の吸引路46の数nで割算した比率値(m/n)に関して変数とする関数(S=f(m/n))によって表わされる。たとえば線形近似した場合、吸引路46の少なくとも一部が塞がれた場合の加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sは、k1+k2・(m/n)を演算することで求めることができる。ここで、(m/n)は、前記比率値を示す。またk1,k2は、予め定められる定数を示す。
言換えると、前記比率値m/nは、加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sの関数(m/n=f(S))で表わされる。たとえば線形近似した場合、前記比率値m/nは、k3・(S−k4)を演算することで求めることができる。ここで、Sは、ワーク22によって吸引路46の少なくとも一部が塞がれた場合の加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sを示す。またk3,k4は、予め定められる定数を示す。このような演算式に従うことによって、真空室内の圧力値Sから、全体の吸引路46の数nに対する、有効な吸引路46aの数mの比率値m/nを見積もることができる。
このようにして、ワーク22と吸着部43とを当接させた状態で、推定される比率値m/nは、当接させた状態を維持して加圧状態から減圧状態に移行したときに、減圧状態において吸引に有効に働く吸引面積Aと比例した値となる。したがって吸着地の真空吸着パッド21の吸引力Fは、加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sと、減圧状態における真空室40の空気の圧力値Pとの関数(F=f(S,P))で表わされる。
たとえば線形近似した場合、吸引力Fを求める関係式は、F=k5・(S−k6)・(P0−P)となる。ここで、Fは、吸引力を示す。Sは、加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sを示す。またk5,k6は、予め定められる定数を示す。またP0は、大気圧の値を示す。Pは、減圧状態における真空室40の空気の圧力値Pを示す。k5,k6,P0,Pが一定であるならば、したがって吸引力Fは、加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sに比例(F∝S)する。
したがって減圧状態での真空室40の空気の圧力Pが既知であると、加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sを求めることで、真空吸着パッド21の吸引面積Aおよび吸引力Fのそれぞれのおおよその値を見積もることができる。また加圧時の真空室40の空気の圧力値Sから、吸引力Fを求める関係式は、減圧状態での真空室40の空気の圧力Pが既知であれば、使用環境的要因および経時的要因で変動するものでない。したがって、吸引路46の直径など真空吸着パッド21の固有の構成が決定すれば、事前に関係式をデータベース化または数式化して定量的に表わすことが可能である。
図6は、真空吸着装置20を含む搬送システム24を示すブロック図である。上述したように、真空吸着装置20は、上述した空気噴射手段30と、方向切換弁60と、開閉弁64と、正圧測定手段32と、負圧測定手段33とを備え、さらに制御手段36と、報知手段37とをさらに含む。
制御手段36は、空気噴射手段30、方向切換弁60、開閉弁64および報知手段37を制御するとともに、正圧測定手段32および負圧測定手段33から測定結果が与えられる。具体的には、制御手段36は、空気噴射手段30に噴射開始指令と噴射終了指令とを与える。空気噴射手段30は、制御手段36から噴射開始指令が与えられることで圧縮空気を噴射し、噴射終了指令が与えられることで圧縮空気の噴射を終了する。
制御手段36は、方向切換弁60に加圧位置移動指令と減圧位置移動指令とを与える。方向切換弁60は、制御手段36から加圧位置移動指令が与えられることで、弁体を加圧位置に移動させて、空気噴射手段30によって噴射される圧縮空気を加圧用管路34に案内可能とする。また方向切換弁60は、制御手段36から減圧位置移動指令が与えられることで、弁体を減圧位置に移動させて、空気噴射手段30によって噴射される圧縮空気をエジェクタ70の一次側ポート71に案内可能とする。
制御手段36は、開閉弁64に開放指令と閉鎖指令とを与える。開閉弁64は、制御手段36から開放指令が与えられることで、弁体を開放位置に移動させて、減圧用管路35を開放する。また開閉弁64は、制御手段36から閉鎖指令が与えられることで、弁体を閉鎖位置に移動させて、減圧用管路35を閉鎖する。
制御手段36は、正圧測定手段32から測定結果が与えられることで、加圧時の真空室40の空気の圧力値Sを得ることができる。また制御手段36は、負圧測定手段32から測定結果が与えられることで、減圧時の真空室40の空気の圧力値Pを得ることができる。また制御手段36は、エラー信号を報知手段37に与える。報知手段37は、制御手段36からエラー信号が与えられることで、吸着不良を報知する。たとえば報知手段37は、表示手段または放音手段であって、吸着不良を示す映像または音声を出力する。また制御手段36は、多関節ロボット23のロボットコントローラ23aに吸着状態を示す状態信号を与えるとともに、ロボットコントローラ23aから動作指令が与えられる。ロボットコントローラ23aは、予め定める動作プログラムに従って、ロボットアーム駆動部23bに変形指令を与える。ロボットアーム駆動部23bは、ロボットコントローラ23aから与えられる変形指令に従って、ロボットアーム26を変形させる。これによってロボットアーム26の手先25に装着される真空吸着パッド21を移動させることができる。本実施の形態では、ロボットは、垂直多関節型ロボットであって、真空吸着パッド21の位置および姿勢を変化させることができる。
制御手段36は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理回路と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶回路とを有するマイクロコンピュータによって実現される。演算処理回路が、記憶回路に記憶される動作プログラムを読み出して実行することによって、制御手段36として機能する。
また制御手段36は、吸着可否判断手段38を兼ねる。吸着可否判断手段38は、正圧測定手段32から与えられる、加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sに基づいて、吸引時にワーク22の吸着が可能であるか否かを判断する。この場合、制御手段36は、前記加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sが、予め定める第1設定圧力値SMin未満となる場合に、ワーク22を吸着するのに必要な吸引面積Aが不足していることを判断して、エラー信号を出力する。また前記加圧状態における真空室40の空気の圧力値Sが、予め定める第1設定圧力値SMin以上となる場合に、ワーク22を吸着するのに必要な吸引面積Aを有しており、真空吸着パッド21によるワーク22の吸着が可能であることを判断する。
ここで第1設定圧力値SMinは、吸着面42にワーク22が当接した場合に、ワーク22を吸着するために最低限必要となる複数の吸引路46がワーク22によって塞がれた状態での、加圧状態における真空室40の空気の圧力値である。
また制御手段36は、吸着状態判断手段39を兼ねる。吸着状態判断手段39は、負圧測定手段33から与えられる、減圧状態における真空室40の空気の圧力値Pに基づいて、ワーク22を吸着した吸着状態であるか否かを判断する。この場合、制御手段36は、前記減圧状態における真空室40の空気の圧力値Pが、予め定める第2設定圧力値PMax以上となる場合に、ワーク22を吸着した吸着状態に達していないことを判断する。また前記減圧状態における真空室40の空気の圧力値Pが、予め定める第2設定圧力値PMax未満となる場合に、ワーク22を吸着した吸着状態に達していることを判断する。
ここで第2設定圧力値PMaxは、吸着面42にワーク22が当接した場合に、ワーク22を吸着するために最低限必要となる複数の吸引路46がワーク22によって塞がれた状態で、ワーク22を吸着するために必要な真空室40の空気の最大の圧力値である。
図7は、ロボットコントローラ23aによる搬送制御動作を示すフローチャートである。ステップa0では、真空吸着パッド21が吸着状態可能に調整される。また多関節ロボット23の手先25に真空吸着パッド21が装着されて、多関節ロボット23によって真空吸着パッド21が移動可能となるように準備が行われる。
ワーク22は、他の第1搬送装置、たとえばコンベアによって、ワーク待機台80に配置される。必要によっては、ワーク待機台80に配置された状態で、さらにワーク22を待機第80のうちの設定位置に位置決めされて、ワークが高精度に位置決めされる作業が行われてもよい。
このように準備が完了した状態で、ロボットコントローラ23aは、図2に示すように、予め定めるワーク待機台80にワーク22が搬送されたことを示す信号が与えられると、ステップa1に進み、搬送制御動作を開始する。ロボットコントローラ23aは、予め記憶される搬送制御動作プログラムを実行することによって、搬送制御動作を行うことができる。
ステップa1では、ロボットコントローラ23aは、ロボットアーム駆動部23bに変形指令を与える。ロボットコントローラ23aは、ロボットアーム26によって、真空吸着パッド21を変位移動させて、真空吸着パッド21の吸着面42を、ワーク22の被吸着面に当接させる。たとえば真空吸着パッド21の吸着面42を、ワーク22の被吸着面に真上に移動させる。次にそのまま降下させ、吸着面42と被吸着面とを接触させ、吸着面42によって被吸着面を下方に押圧する。このとき、ワーク22の吸着面には凹凸部分が形成されることで、吸着面42の全域が被吸着面に接することはない。ワーク22と接することができる位置関係にある吸着面42とワーク22の被吸着面との間には隙間なく、確実に密着させる高さまで降下して押付ける。ロボットコントローラ23aは、ワーク22に真空吸着パッド21が当接したことを判断すると、ステップa2に進む。
ステップa2では、ロボットコントローラ23aは、真空吸着装置20の制御手段36に吸着指令を与え、ステップa3に進む。ステップa3では、ロボットコントローラ23aは、真空吸着装置20の制御手段36からエラー信号が与えられたか否かを判断する。エラー信号が与えられていないと、ステップa4に進む。ステップa4では、ロボットコントローラ23aは、真空吸着装置20の制御手段36から吸着完了信号が与えられたか否かを判断する。吸着完了信号が与えられていないと、ステップa4を繰り返し、吸着完了信号が与えられると、ステップa5に進む。
ステップa5では、ロボットコントローラ23aは、ロボットアーム駆動部23bに変形指令を与える。ロボットコントローラ23aは、ロボットアーム26によって、真空吸着パッド21を、予め定める移動経路に沿って変位移動させる。ロボットコントローラ23aは、真空吸着パッド21によって吸着されるワーク22を、図2に示すように、予め定めるワーク載置台81に配置すると、ステップa6に進む。
ステップa6では、ロボットコントローラ23aは、真空吸着装置20の制御手段36に吸着解除指令を与え、ステップa7に進む。ステップa7では、ロボットコントローラ23aは、真空吸着装置20の制御手段36から吸着解除完了信号が与えられたか否かを判断する。吸着解除完了信号が与えられていないと、ステップa7を繰り返し、吸着解除完了信号が与えられると、ステップa8に進む。
ステップa8では、ロボットコントローラ23aは、予め定める終了条件を満足するか否かを判断する。終了条件を満足していると判断すると、ステップa9に進み、搬送制御動作を終了する。またステップa8において、終了条件を満足していないと判断すると、ステップa1に戻る。たとえば、予め定める数のワークを搬送すると、終了条件を満足したと判断する。
このようにステップa1〜ステップa8を繰返すことで、順次ワーク待機台80に配置されるワーク22をワーク載置台81に搬送することができる。ワーク載置台81に載置されたワーク22は、他の第2搬送装置、たとえばコンベアによってワーク載置台81から移動される。
またステップa3において、ロボットコントローラ23aは、真空吸着装置20の制御手段36から、吸引力不足を示すエラー信号が与えられると、ステップa9に進み、ステップa9で搬送制御動作を終了する。またロボットコントローラ23aは、停止スイッチによって停止指令が与えられることで、ステップa1〜ステップa8の動作中であっても、搬送制御動作を停止する。
このようにしてロボットコントローラ23aは、真空吸着装置20の制御手段36から、エラー信号が与えられず、かつ吸着完了信号が与えられることで、ワーク22の搬送を開始する。エラー信号が与えられた場合には、搬送制御動作を終了する。したがって吸引力不足となる状態で、ワーク22を搬送することが防がれ、吸引力不足に起因する搬送不良を防ぐことができる。具体的には、ワーク22の持上げ時および搬送時に、吸着ミスによるワーク落下を未然に防止することができる。
また本実施形態の変形例として、ロボットコントローラ23aは、エラー信号が与えられた場合に、リトライ動作を行ってもよい。具体的には、ワーク22の被吸着面に、真空吸着パッド21の吸着面が当接する位置をずらすように設定して、ステップa1に戻ってもよい。位置をずらしてワークに再度当接させることで、吸引面積Aを変化させて、吸着が可能となる状態とすることができる可能性がある。これによって吸着不良による搬送システムの停止を防ぐことができ、ワーク22またはロボットのティーチングにずれが生じたとしても、そのずれに起因する搬送停止回数を低下させることができる。この場合、永久的にリトライ動作を繰返すことを防ぐために、リトライ回数が、予め定める回数に達しても、エラー信号が与えられる場合には、動作を停止する。
図8は、真空吸着装置20の制御手段36による吸着制御動作を示すフローチャートである。ステップb0では、制御手段36は、図7に示すステップa2で示すように、ロボットコントローラ23aから吸着指令が与えられると、ステップb1に進み、吸着制御動作を開始する。制御手段36は、予め記憶される吸着制御動作プログラムを実行することによって、吸着制御動作を行うことができる。
ステップb1では、制御手段36は、方向切換弁60に加圧位置移動指令を与えるとともに、開閉弁64に閉鎖指令を与える。これによって方向切換弁60の弁体を加圧位置に移動させ、開閉弁64の弁体を閉鎖位置に移動させる。このように方向切換弁60および開閉弁64に指令を与えることで、空気噴射手段30に噴射される圧縮空気を真空室40に導く加圧用流路に切換えることができる。制御手段36は、加圧用流路への切換えが完了すると、ステップb2に進む。
ステップb2では、制御手段36は、空気噴射手段30に噴射開始指令を与え、ステップb3に進む。これによって真空室40に圧縮空気が導かれ、真空室40の空気の圧力が大気圧よりも高くなる。ステップb3では、制御手段36は、ステップb2での噴射開始指令を与えてから予め定める時間が経過すると、空気噴射手段30に噴射停止指令を与えるとともに、正圧測定手段32によって測定される圧力値Sを取得し、ステップb4に進む。
ステップb4では、制御手段36は、吸着可否判断手段38としての機能を実行する。具体的には、加圧状態の真空室40の圧力値Sと、予め定める第1設定圧力値SMinとを比較することで、吸着可能か否かを判断する。加圧状態の真空室40の圧力値Sが上述した第1設定圧力値SMin以上であることを判断すると、吸着可能であることを判断し、ステップb5に進む。
ステップb5では、制御手段36は、方向切換弁60に減圧位置移動指令を与えるとともに、開閉弁64に開放指令を与える。これによって方向切換弁60の弁体を減圧位置に移動させ、開閉弁64の弁体を解放位置に移動させる。このように方向切換弁60および開閉弁64に指令を与えることで、空気噴射手段30に噴射される圧縮空気をエジェクタ70に導く減圧用流路に切換えることができる。制御手段36は、減圧用流路への切換えが完了すると、ステップb6に進む。
ステップb6では、制御手段36は、空気噴射手段30に噴射開始指令を与え、ステップb7に進む。これによってエジェクタ70に圧縮空気が導かれ、真空室40の空気がエジェクタ70に向かって吸引されて、真空室40の圧力が大気圧よりも低くなる。ステップb7では、制御手段36は、負圧測定手段32によって測定される圧力値Pを取得し、ステップb8に進む。
ステップb8では、制御手段36は、吸着状態判断手段39としての機能を実行する。具体的には、減圧状態の真空室40の圧力値Pと、上述した第2設定圧力値PMaxとを比較することで、吸着状態か否かを判断する。減圧状態の真空室40の圧力値Pが、予め定める第2設定圧力値PMaxを超えることを判断すると、吸着状態に達していないことを判断し、ステップb7に戻る。
ステップb8において、減圧状態の真空室40の圧力値Pが、第2設定圧力値PMax以下であることを判断すると、吸着状態に達したことを判断し、ステップb9に進む。ステップb9では、吸着完了信号をロボットコントローラ23aに与え、ステップb10進む。
ステップb10では、制御手段36は、開閉弁64に閉鎖指令を与える。これによって開閉弁64の弁体を閉鎖位置に移動させる。次に、制御手段36は、空気噴射手段30に噴射停止指令を与え、ステップb11に進む。これによって真空室40の空気の圧力は、第2設定圧力値PMax以下に保たれ、空気噴射手段30の噴射を停止させた状態で、ワーク22の吸着状態を維持させる。ステップb11では、制御手段36は、吸着制御動作を終了する。
またステップb4において、加圧状態の真空室40の圧力値Sが、予め定める第1設定圧力値SMin未満となると、ステップb12に進む。ステップb12では、ワーク22を吸着するのに必要な吸引面積Aが不足していることを示すエラー信号をロボットコントローラ23aに与えるとともに、吸引面積Aが不足していることを示す情報を報知手段によって報知させ、ステップa11に進む。ステップa11では、制御手段36は、吸着制御動作を終了する。エラー信号をロボットコントローラ23aに与えることで、ロボットコントローラ23aに、吸引力が不足していることを知らせることができ、吸引力が不足した状態で、ロボットコントローラ23aによる搬送動作が継続されることを防ぐことができる。
このようにして制御手段36は、真空吸着パッド21の吸着面42を、ワーク22の被吸着面に当接させた状態で、真空室40の空気を加圧させる。このときの真空室40の空気の圧力値Sと、第1設定圧力値SMinとを比較にする。これによって制御手段36は、それぞれの逆止弁50の開閉状態を検出する複数の検出センサを不要として、吸引面積Aが充分か否かを判断することができる。言換えるとワーク22を吸着可能か否かを判断することができる。
またステップb0での吸着面42を被吸着面に当接させた状態を維持したうえで、真空室40の空気を減圧させる。このときの真空室40の空気の圧力値Pと、第2設定圧力値PMaxとを比較にする。これによって制御手段36は、推定した吸引面積Aでの、真空室40の空気の圧力Pを求めることができ、真空吸着パッド21にワーク22が吸着した吸着状態か否かを精度よく求めることができる。また制御手段36は、吸着完了信号をロボットコントローラ23aに与える。
これによってロボットコントローラ23aは、ワーク22の吸着が完了された状態を正確に判断することができ、ワーク22を確実にワーク待機位置80から移載することができる。したがってワーク22の持上げ時および搬送時に、吸着ミスによるワーク22の落下をより確実に防ぐことができる。またワーク22を吸着した状態で、不所望に待機することが防がれ、ワーク22の持上げ動作を短縮することができる。
また吸着完了信号を出力したあとに、開閉弁64に閉鎖指令を与えて、真空室40を塞ぐことによって、真空室40の空気が漏れ出ることを防いで、空気噴射手段30による圧縮空気の噴射を停止させて、ワーク22の吸着状態を維持することができる。このように空気噴射手段30による圧縮空気の噴射を停止させることで、搬送時に圧縮空気の噴射に費やすエネルギーを減らすことができる。また搬送時にサイレンサから噴射する圧縮空気による排気音をなくし、周辺環境に対する騒音の影響を軽減することができる。
また本実施の形態では、ステップb3において、空気噴射手段30に噴射停止指令を与えたあとに、正圧測定手段32によって測定される圧力値Sを取得することによって、変動を減らして、安定した圧力値を得ることができる。また噴射開始指令を与えてから予め定める時間が経過したあとで、正圧測定手段32によって測定される圧力値Sを取得することで、初期時の圧力変動の影響を減らして、真空室40の空気の圧力を正確に測定することができる。
また本実施の形態の変形例として、ステップb3において、空気噴射手段30に噴射停止指令を与える代わりに、方向切換弁60に減圧位置移動指令を与えてもよい。これによっても真空室40に圧縮空気が導かれることを阻止することができ、空気噴射手段30に噴射停止指令を与えることと同様の効果を得ることができる。この場合、ステップb3〜b6で空気噴射手段30が圧縮空気を噴射した状態を維持することで、ステップb6で空気噴射手段30に噴射開始指令を与える場合に比べて、短時間で真空室40の空気を減圧することができる。
また他の変形例として、ステップb3において、空気噴射手段30に噴射停止指令を与えずに、空気噴射手段30によって単位時間あたりに一定量の空気を真空室40に案内した状態で、正圧測定手段32によって測定される圧力値Sを取得してもよい。この場合も、ステップb3〜b6で空気噴射手段30が圧縮空気を噴射した状態を維持することで、ステップb6で空気噴射手段30に噴射開始指令を与える場合に比べて、短時間で真空室40の空気を減圧することができる。
また他の変形例として、ステップb10を行うことなく、コントローラ23aから吸着解除指令が与えられるまで、エジェクタ70によって真空室40の空気の圧力を低下する動作を継続してもよい。これによって真空室40に空気漏れがある場合も、真空室40を負圧に保つことができ、吸引力Fの低下を防ぐことができ、より確実にワーク22の持上げおよび搬送を行うことができる。
またさらに他の変形例として、制御手段36は、ステップb6の動作を行うと、ステップb10に進んでもよい。この場合、ロボットコントローラ23aは、ステップa4で、ステップa2で吸着指令を制御手段36に与えてから、真空室40の空気の圧力が第2設定圧力値SMin未満となるであろう予め定める吸着時間が経過すると、ステップa5に進む。
図9は、真空吸着装置20の制御手段36による吸着解除制御動作を示すフローチャートである。ステップc0では、制御手段36は、図7に示すステップa6で示すように、ロボットコントローラ23aから吸着解除指令が与えられると、ステップc1に進み、吸着解除制御動作を開始する。制御手段36は、予め記憶される吸着解除動作プログラムを実行することによって、吸着解除制御動作を行うことができる。
ステップc1では、制御手段36は、開閉弁64に開放指令を与える。これによって開閉弁64の弁体を閉鎖位置に移動させ、ステップc2に進む。このように開閉弁64に指令を与えることで、サイレンサ76、エジェクタ70および減圧用管路35を順に空気が流れて、外方空間から真空室40に空気が侵入する。
ステップc2では、制御手段36は、負圧測定手段32によって測定される圧力値Pを取得し、ステップc3に進む。ステップc3では、制御手段36は、減圧状態の真空室40の圧力値Pと、予め定める第2設定圧力値PMaxとを比較することで、吸着状態か否かを判断する。減圧状態の真空室40の圧力値Pが、予め定める第2設定圧力値PMax以下であることを判断すると、吸着状態が解除されていないことを判断し、ステップc3に戻る。
ステップc3において、減圧状態の真空室40の圧力値Pが、予め定める第2設定圧力値PMaxを超えることを判断すると、吸着状態が解除されていることを判断し、ステップc4に進む。ステップc4では、制御手段36は、吸着解除完了信号をロボットコントローラ23aに与え、ステップc5に進む。ステップc5では、制御手段36は、吸着解除制御動作を終了する。
このようにして制御手段36は、開閉弁64を開放して真空室40に空気を導いた状態で、真空室の圧力値を測定して、吸着解除完了信号をロボットコントローラ23aに与える。これによってロボットコントローラ23aは、ワーク22の吸着が解除された状態を正確に判断することができ、ワーク22を確実にワーク載置位置81に載置することができる。したがってワーク22の載置不良を防ぐことができる。またワークを吸着解除した状態で、不所望に待機することが防がれ、ワーク22の載置動作を短縮することができる。
また本実施の形態の変形例として、ステップc1で、制御手段36が、方向切換弁60に加圧位置移動指令を与えるとともに、空気噴射手段30に噴射開始指令を与えてもよい。これによって強制的に真空室40の空気を加圧することができ、短時間で吸着解除を行うことができる。たとえば空気噴射手段30とエジェクタ70とを用いて、真空室40を減圧状態に維持してワーク22が搬送される場合、方向切換弁60に加圧位置移動指令を与えるとともに、開閉弁64に閉鎖指令を与えることで真空室40の空気を加圧することができる。このように空気噴射手段30の駆動を継続しているならば、弁60,64を切換えるだけで、加圧状態とすることができ、ワーク22の吸着解除を極めて短時間で行うことができる。これによってワークの吸着解除にかかる時間を短縮することができ、搬送作業の効率を向上することができる。
また他の変形例として、制御手段36は、ステップc1の動作を行うと、ステップc5に進み、吸着解除動作を終了してもよい。この場合、ロボットコントローラ23aは、ステップa7で、ステップa6の吸着解除指令を制御手段36に与えてから、真空室40の空気の圧力が第2設定圧力値PMax以上となるであろう予め定める吸着解除時間が経過すると、ステップb8に進む。
またさらに他の変形例として、制御手段36は、吸引面積推定手段38を兼ねてもよい。吸引面積推定手段38は、加圧状態における真空室の空気の圧力値Sに基づいて、吸引面積Aを推定する。吸引面積Aは、全ての吸引路46の開口側開口を総合した総面積Qと、有効な吸引路46の数mを全体の吸引路46の数nで割算した比率値(m/n)とを、乗算した値(Q・(m/n))で表わすことができる。上述したように、前記比率値(m/n)は、加圧状態における真空室の空気の圧力値Sから求められる。
これによって制御手段36は、加圧状態における真空室の空気の圧力値Sに基づいて、吸引面積Aを推定することができる。制御手段36は、ステップb3で加圧時の真空室40の空気の圧力値Sを取得すると、取得結果に基づいて吸引面積Aを演算してもよい。この場合、制御手段36は、演算結果を示す情報を報知手段に与えて、吸引面積Aを作業者等に報知させてもよい。これによって作業者は、おおよその吸引面積Aを把握することができ、利便性をさらに向上することができる。
以上のように本実施の形態では、逆止弁50が吸引路46毎に設けられるので、ワーク22の被吸着面に凹凸部分が形成される場合でも、吸引時に外方空間から真空室40に空気が侵入することを防いで、真空室40の真空度を第2設定圧力値PMax以下に維持することができ、吸引力Fの低下を防ぐことができる。
また空気噴射手段30と正圧測定手段32とを有することで、逆止弁50の開閉状態を検出する複数の検出センサを設ける必要なく、吸引面積Aを推定可能に構成される。検出センサを不要とすることで、装置の構成を簡単化することができ、製造コストを低下させることができる。また吸引路46を小径および緻密化することができ、吸着に関する信頼性を向上することができる。また単純な構成であるので、電気的なセンサ等によって逆止弁50の開閉状態を個別に検出する場合に比べて、吸引面積Aを短時間で推定することができるとともに、推定した吸引面積Aの信頼性を高めることができる。
このように吸引面積Aを推定可能とすることで、吸引力Fを精度よく推定することができ、吸引力Fが小さい状態でワーク22を吸着するといった吸着ミスを防ぐことができる。特に、高価なワーク22や、重量の大きいワーク22の場合においては、好適に用いることができる。また開口部または凹凸部が形成されるワーク22のほか、ワーク22の位置決めが充分になされていない場合、ロボットの位置決め精度および教示位置が正確でない場合、ワーク22の凹凸形状がランダムであるワークについても、吸着ミスを防ぐことができる。
また本実施の形態では、制御手段36が吸着可否判断手段38を兼ねる。これによって真空吸着パッドがワーク22を吸着可能か否かを、作業者自身が判断する必要がなく、利便性を向上することができる。また吸着可能か否かを示すエラー信号を出力することによって、吸着可能か否かに基づいて、真空吸着装置の制御対象部分または多関節ロボットを制御することができる。本実施の形態では、制御手段36がエラー信号をロボットコントローラ23aに与えることで、作業者が加圧時の真空室の圧力値Sに基づいて、エラー信号を与える場合に比べて、短時間でロボットを制御することができる。
また本実施形態では、制御手段36が吸着状態判断手段39を兼ねる。これによって真空吸着パッドがワーク22を吸着した吸着状態か否かを、作業者自身が判断する必要がなく、利便性を向上することができる。また吸着状態か否かを示す吸着状態完了信号を出力することによって、吸着可能か否かに基づいて、真空吸着装置の制御対象部分または多関節ロボットを制御することができる。本実施の形態では、制御手段36が吸着状態完了信号をロボットコントローラ23aに与えることで、作業者が減圧時の真空室の圧力値Pに基づいて、吸着状態完了信号を与える場合に比べて、短時間でロボットを制御することができる。
また本実施形態では、減圧手段31は、空気噴射手段30とエジェクタ70とによって構成されるエジェクタ真空ポンプによって実現されることで、減圧源として別途ポンプなどを有する必要がなく、構成を簡単化することができる。また従来の真空吸着装置に比べて構成を大きく変更する必要がなく、吸引時にワーク22の吸着が可能であるか否かを推定可能とすることができる。
また本実施形態では、複数の吸引路46の流路抵抗がそれぞれ同一に形成されるとともに、複数の逆止弁50の弁室53の流路抵抗がそれぞれ同一に形成されることによって、上述する加圧時の真空室40の圧力値Sから、吸引面積Aなどを求める関係式を定量化しやすくすることができ、精度よく吸引面積Aを求めることができる。また加圧することによって、吸引路46に詰まった異物を吹き飛ばすことができ、吸引路46が目詰まりすることを防ぐことができ、吸引力Fの低下を防ぐことができる。
図10は、本発明の第2実施形態である真空吸着装置120を示す断面図である。第2実施形態の真空吸着装置120は、第1実施形態の真空吸着装置120の真空吸着パッド21と同様の真空吸着パッド21を有し、同様の構成については第1実施形態と同一の参照符号を付して、説明を省略する。
真空吸着装置120は、真空室40の空気の圧力について、大気圧を超えて加圧する加圧手段100と、大気圧未満に減圧する減圧手段101とを有する。加圧手段100は、第1実施形態のように、圧縮空気を噴射する空気噴射手段30によって実現されてもよく、圧縮機および送風機などを用いることができ、たとえばコンプレッサによって実現される。また加圧手段100は、真空室40の空気を加圧可能であれば、他の手段を用いてもよい。加圧手段100は、加圧用管路34によって、真空吸着パッド21の真空室40に接続される。加圧用管路34には、加圧用管路開閉弁102が介在される。
減圧手段101は、加圧手段100とは別体に形成される。減圧手段101は、加圧手段100とは独立して形成されるエジェクタ真空ポンプによって実現されてもよい。また減圧手段101は、たとえばドライポンプなどの真空発生機によって実現されてもよい。また減圧手段101は、真空室40の空気を減圧可能であれば、他の手段を用いてもよい。減圧手段101は、減圧用管路35によって、真空吸着パッド21の真空室40に接続される。減圧用管路35には、減圧用管路開閉弁103が介在される。
加圧用管路34と、減圧用管路35とは、それぞれ独立して別経路に形成される。加圧手段100は、減圧手段101の駆動にかかわらず、真空室40を直接加圧する。また減圧手段101は、加圧手段100の駆動にかかわらず、真空室40を直接減圧する。第2実施形態の真空吸着装置120は、真空室40の加圧および減圧する構成が異なり、残余の構成については、第1実施形態と同一である。したがって真空吸着装置120は、正圧測定手段32、負圧測定手段33と、制御手段36とを有する。
制御手段36は、真空室40の空気を加圧する場合、加圧用管路開閉弁102を開放するとともに、減圧用管路開閉弁103を閉鎖する。この状態で、加圧手段100を駆動させて、加圧手段100によって噴射される圧縮空気を真空室40に導くことで、真空室40の空気を加圧することができる。また制御手段36は、真空室40の空気を減圧する場合、加圧用管路開閉弁102を閉鎖するとともに、減圧用管路開閉弁103を開放する。この状態で、減圧手段101を駆動させて、減圧手段101によって減圧用管路35の空気を吸引することで、減圧用管路35に連なる真空室40の空気を減圧することができる。
以上のように本実施の形態の真空吸着装置120は、上述した第1実施形態と同様の方法を制御手段36およびロボットコントローラ23aに行わせることができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。たとえば、真空室40内を減圧してワーク22を吸着する前に、ワーク22に対して吸着面42を当接させた状態で真空室40内を加圧し、加圧時の真空室内の圧力を測定することで、全体の吸引路46の数nに対する、有効な吸引路46aの数mの比率m/n、吸引面積Aおよび吸引力Fの少なくともいずれかを推定することができる。
また制御手段36は、減圧手段101を制御することで真空室の空気の圧力値を設定可能である場合、吸引面積Aを求めることによって、ワークを吸引するのに必要な吸引力を選ることができる設定圧力値Psetを演算してもよい。この場合、制御手段36は、吸引時に、真空室の空気の圧力が、演算した設定圧力値Pset以下となる圧力値を示す設定圧指令を減圧手段101に与える。減圧手段101は、制御手段36から与えられる設定圧力指令に従って、真空室40の圧力を設定圧力に設定することで、吸引面積Aがばらついたり、小さかったりしても、ワーク22を吸引可能な吸引力Fを発生させることができる。
また本実施の形態では、加圧用管路開閉弁102に代えて、加圧手段100から噴射される圧縮空気が真空室40に向かって流れることを許容し、真空室40から加圧手段100に向かって空気が流れることを阻止する逆止弁が、加圧用管路34に設けられてもよい。同様に、減圧用管路開閉弁103に代えて、真空室40から空気が減圧手段101に向かって流れることを許容し、減圧手段101から真空室40に向かって空気が流れることを阻止する逆止弁が、減圧用用管路34に設けられてもよい。これによって制御手段36によって、加圧用管路開閉弁102および減圧用管路開閉弁103を制御することなく、第1実施形態と同様の動作を行うことができ、同様の効果を得ることができる。
以上のような本実施の形態は、発明の例示に過ぎず、発明の範囲内で構成を変更することができる。たとえば本実施の形態では、制御手段36とロボットコントローラ23aとが別体に形成されたが、それらが1つの手段で実現されてもよい。この場合、上述した制御手段36が行うべき動作プログラムと、ロボットコントローラ23aが行うべき動作プログラムを記憶した1つのコンピュータによって実現されてもよい。また正圧測定手段32と負圧測定手段33とが1つの測定手段によって実現されてもよい。また真空室および外方空間に存在する気体は、空気以外の気体であってもよい。
また本実施形態では、ロボット23によって真空吸着パッド21を搬送したが、ロボット以外の搬送装置によって真空吸着パッド21を移動させても同様の効果を得ることができる。この場合、ロボットコントローラ23aに代えて、搬送装置の制御部を用い、アーム駆動部23bに代えて、搬送装置の駆動部を用いることができる。たとえば搬送装置は、互いに直交する3つの軸となる直交座標系に手先部分を移動させる装置であってもよい。
また本実施の形態では、制御手段36によって真空吸着パッド21がワーク22を吸着可能か否かを判断したが、作業者が正圧測定手段32の出力結果を読取ることで、吸着可能か否かを判断したり、吸引力Fを推定したり、吸引面積Aを推定したりしてもよい。また図8,図9に示す制御手段36の動作および図7に示すロボットコントローラ23aの動作を作業者が行ってもよい。この場合でも、逆止弁50の開閉状態を検出する複数の検出センサを不要とすることができる。したがって制御手段36または作業者が、加圧時の真空室40の空気の圧力値Sに基づいて、吸引力F、吸引面積Aを推定する推定方法と、推定結果に基づいて、吸着が可能であることを判断すると、ワーク22を吸着させて搬送する搬送方法も本発明に含まれる。
本発明の第1実施形態である真空吸着装置20を示す断面図である。 真空吸着装置20を含む搬送システム24を簡略化して示す図である。 真空吸着パッド21を示す底面図である。 逆止弁形成部44を拡大して示し、真空室の空気の圧力が、大気圧よりも高い状態を示す断面図である。 逆止弁形成部44を拡大して示し、真空室の空気の圧力が、大気圧よりも高い状態を示す断面図である。 真空吸着装置20を含む搬送システム24を示すブロック図である。 ロボットコントローラ23aによる搬送制御動作を示すフローチャートである。 真空吸着装置20の制御手段36による吸着制御動作を示すフローチャートである。 真空吸着装置20の制御手段36による吸着解除制御動作を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態である真空吸着装置120を示す断面図である。 第3の従来技術の真空吸着パッド1を示す断面図である。 第4の従来技術の真空吸着パッド6を示す断面図である。
符号の説明
20 真空吸着装置
21 真空吸着パッド
22 ワーク
23 多関節ロボット
30 空気噴射手段
32 正圧測定手段
33 負圧測定手段
36 制御手段
40 真空室
41 真空室形成部
42 吸着面
43 吸着部
44 逆止弁形成部
45 外方空間
46 吸引路
50 逆止弁
70 エジェクタ

Claims (7)

  1. 内部空間に真空室を形成する真空室形成部と、
    吸着対象物に当接する吸着面を形成するとともに、吸着面に臨む外方空間に開放して、外方空間と真空室とを連通する複数の吸引路をそれぞれ形成する吸着部と、
    吸引路毎にそれぞれ設けられ、真空室から外方空間に吸引路を気体が流れることを許容するとともに、外方空間から真空室に吸引路を気体が流れることを阻止する逆止弁と、
    真空室の気体の圧力を、大気圧未満に減圧する減圧手段と、
    真空室の気体の圧力を、大気圧を超えて加圧する加圧手段と、
    加圧手段によって真空室の気体の圧力が加圧される加圧状態において、真空室の気体の圧力値Sを測定可能な正圧測定手段とを備えることを特徴とする真空吸着装置。
  2. 吸引時に吸着対象物を吸引するのに有効に作用する複数の吸引路での、外方空間側開口の断面積を総合した吸引面積を、加圧状態における真空室の気体の圧力値Sに基づいて推定する吸引面積推定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の真空吸着装置。
  3. 加圧状態における真空室の気体の圧力値Sに基づいて、吸引時に吸着対象物の吸着が可能であるか否かを判断する吸着可否判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の真空吸着装置。
  4. 減圧手段によって減圧される減圧状態において、真空室の気体の圧力値Pを測定可能な負圧測定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の真空吸着装置。
  5. 減圧状態における真空室の気体の圧力値Pに基づいて、吸着対象物を吸着した吸着状態であるか否かを判断する吸着状態判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の真空吸着装置。
  6. 内部空間に真空室を形成する真空室形成部と、吸着対象物に当接する吸着面を形成するとともに、吸着面に臨む外方空間に開放して、外方空間と真空室とを連通する複数の吸引路をそれぞれ形成する吸着部と、吸引路毎にそれぞれ設けられ、真空室から外方空間に吸引路を気体が流れることを許容するとともに、外方空間から真空室に吸引路を気体が流れることを阻止する逆止弁とを備える真空吸着パッドについて、吸着対象物に対する吸引力を推定する吸引力推定方法であって、
    吸着部の吸着面に吸着対象物を当接させて、真空室の気体の圧力を、大気圧を超えて加圧して、真空室の気体の圧力値Sを測定する正圧測定工程と、
    正圧測定工程で測定される真空室の気体の圧力値Sに基づいて、真空吸着パッドの吸引力を推定する推定工程とを含むことを特徴とする吸引力推定方法。
  7. 内部空間に真空室を形成する真空室形成部と、吸着対象物に当接する吸着面を形成するとともに、吸着面に臨む外方空間に開放して、外方空間と真空室とを連通する複数の吸引路をそれぞれ形成する吸着部と、吸引路毎にそれぞれ設けられ、真空室から外方空間に吸引路を気体が流れることを許容するとともに、外方空間から真空室に吸引路を気体が流れることを阻止する逆止弁とを備える真空吸着パッドを用いて、吸着対象物を搬送する搬送方法であって、
    吸着部の吸着面に吸着対象物を当接させて、真空室の気体の圧力を、大気圧を超えて加圧して、真空室の気体の圧力値Sを測定する正圧測定工程と、
    正圧測定工程で測定される真空室の気体の圧力値Sに基づいて、真空吸着パッドによる吸着対象物の吸着が可能であるか否かを判断する判断工程と、
    判断工程で真空吸着パッドによる吸着が可能であることを判断すると、真空室の気体の圧力を、吸着対象物を吸着可能な大気圧未満の圧力値に減圧して、吸着部の吸着面に吸着対象物を吸着させる減圧工程と、
    減圧工程後に、吸着対象物を吸着した真空吸着パッドを搬送する搬送工程とを含むことを特徴とする搬送方法。
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