超臨界流体を洗浄室に流通させて洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、その被洗浄物を洗浄室から取り出すには、洗浄室内の超臨界流体の圧力を大気圧にまで下げ、超臨界流体を通常流体に戻す必要がある。前記公報に開示の洗浄システムでは、洗浄後の被洗浄物を洗浄室から取り出すときに、圧力調節バルブを一気に開き、超臨界流体を洗浄室から汚染分離室に流出させて洗浄室内の流体の圧力を大気圧に戻すから、洗浄室内における超臨界流体の圧力が不規則に低下する。超臨界流体の圧力が不規則に低下すると、洗浄室内の流体の密度が臨界点の前後において急速に低下し、被洗浄物の内部に浸透した超臨界流体の急激な密度変化によって被洗浄物が変形、膨張、発泡等のダメージを受ける場合がある。
本発明の目的は、洗浄室内の洗浄流体の急激な密度変化を防ぐことができ、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることがない洗浄システムおよび流体密度制御方法を提供することにある。
前記課題を解決するための本発明の前提は、超臨界流体または亜臨界流体のいずれかの洗浄流体が流入する気密構造洗浄室を備えた洗浄容器と、洗浄室から流出する洗浄流体の流出量を調節可能な第1調節バルブとを有し、洗浄室に洗浄流体を流通させて該洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄する洗浄システムである。
前記前提における本発明の特徴として、この洗浄システムでは、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、第1調節バルブにおける洗浄流体の流量を制御しつつ、該第1調節バルブを介して洗浄室から洗浄流体を漸次流出させて該洗浄室内の洗浄流体の圧力を次第に低下させる流体圧力逓減手段を実行し、流体圧力逓減手段によって洗浄室内の洗浄流体の密度を略一定の下り勾配で低下させることにある。
本発明の一例として、洗浄システムでは、超臨界流体または亜臨界流体が二酸化炭素ガスを5.0〜30.0MPaの圧力に加圧しつつ30〜120℃の温度に加熱することで作られ、流体圧力逓減手段では、洗浄流体の臨界圧力を挟んだ±5.0MPaの範囲において該洗浄流体の圧力を0.5MPa/h〜10.0MPa/hの減圧速度で低下させる。
本発明の他の一例としては、洗浄システムが洗浄容器の温度を調節可能なヒータを含み、この洗浄システムでは、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、ヒータの温度を調節して洗浄容器の温度を制御する第1温度制御手段を実行し、第1温度制御手段によって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。
本発明の他の一例としては、洗浄システムが、洗浄室に流入する洗浄流体を予熱する予熱タンクと、予熱タンクで予熱された洗浄流体の洗浄室への流入量を調節可能な第2調節バルブとを含み、この洗浄システムでは、洗浄室内に収容された被洗浄物を洗浄した後、第2調節バルブにおける洗浄流体の流量を制御しつつ、予熱された洗浄流体を該第2調節バルブを介して予熱タンクから洗浄室に除々に流入させる流入量制御手段を実行し、第1温度制御手段と流入量制御手段とによって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。
本発明の他の一例として、洗浄システムでは、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、予熱タンクの温度を制御する第2温度制御手段を実行し、第1温度制御手段と第2温度制御手段とによって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。
本発明の他の一例としては、洗浄システムが洗浄容器の温度を調節可能なヒータを含み、この洗浄システムでは、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、ヒータの温度を調節して洗浄容器の温度を制御する第3温度制御手段を実行し、第3温度制御手段によって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。
本発明の他の一例としては、洗浄システムが、洗浄室に流入する洗浄流体を予熱する予熱タンクと、予熱タンクで予熱された洗浄流体の洗浄室への流入量を調節する第2調節バルブとを含み、この洗浄システムでは、洗浄室内に収容された被洗浄物を洗浄した後、第2調節バルブにおける洗浄流体の流量を制御しつつ、予熱された洗浄流体を該第2調節バルブを介して予熱タンクから洗浄室に除々に流入させる流入量制御手段を実行し、第3温度制御手段と流入量制御手段とによって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。
本発明の他の一例として、洗浄システムでは、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、予熱タンクを制御する第4温度制御手段を実行し、第3温度制御手段と第4温度制御手段とによって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。
前記課題を解決するための本発明の第2は、超臨界流体または亜臨界流体のいずれかの洗浄流体が流入する気密構造洗浄室を備えた洗浄容器と、洗浄室から流出する洗浄流体の流出量を調節可能な第1調節バルブとを含み、洗浄室に洗浄流体を流通させて該洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、第1調節バルブにおける洗浄流体の流量を制御しつつ、該第1調節バルブを介して洗浄室から洗浄流体を漸次流出させて該洗浄室内の洗浄流体の圧力を次第に低下させ、それによって洗浄室内の洗浄流体の密度を略一定の下り勾配で低下させる流体密度制御方法である。
前記流体密度制御方法の一例としては、超臨界流体または亜臨界流体が二酸化炭素ガスを5.0〜30.0MPaに加圧しつつ30〜120℃に加熱することで作られ、この流体密度制御方法では、洗浄流体の臨界圧力を挟んだ±5.0MPaの範囲において該洗浄流体の圧力を0.5MPa/h〜10.0MPa/hの減圧速度で低下させる。
前記流体密度制御方法の一例としては、流体密度制御方法が洗浄容器の温度を調節可能なヒータを含み、この流体密度制御方法では、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、ヒータの温度を調節して洗浄容器の温度を制御することで、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。
前記流体密度制御方法の一例としては、流体密度制御方法が、洗浄室に流入する洗浄流体を予熱する予熱タンクと、予熱タンクで予熱された洗浄流体の洗浄室への流入量を調節可能な第2調節バルブとを含み、この流体密度制御方法では、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、洗浄容器の温度を制御しつつ、第2調節バルブにおける洗浄流体の流量を制御し、予熱された洗浄流体を該第2調節バルブを介して予熱タンクから洗浄室に除々に流入させることで、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。
前記流体密度制御方法の一例として、流体密度制御方法では、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、洗浄容器の温度を制御しつつ、予熱タンクの温度を制御することで、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。
前記流体密度制御方法の一例としては、流体密度制御方法が洗浄容器の温度を調節可能なヒータを含み、この流体密度制御方法では、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、ヒータの温度を調節して洗浄容器の温度を制御することで、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。
前記流体密度制御方法の一例としては、流体密度制御方法が、洗浄室に流入する洗浄流体を予熱する予熱タンクと、予熱タンクで予熱された洗浄流体の洗浄室への流入量を調節可能な第2調節バルブとを含み、この流体密度制御方法では、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、洗浄容器の温度を制御しつつ、第2調節バルブにおける洗浄流体の流量を制御し、予熱された洗浄流体を該第2調節バルブを介して予熱タンクから洗浄室に除々に流入させることで、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。
前記流体密度制御方法の一例として、流体密度制御方法では、洗浄室に収容された被洗浄物を洗浄した後、洗浄容器の温度を制御しつつ、予熱タンクの温度を制御することで、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。
本発明にかかる洗浄システムによれば、被洗浄物を洗浄した後、洗浄室内の洗浄流体の圧力を次第に低下させる流体圧力逓減手段を実行し、それによって洗浄室内の洗浄流体の密度を一定の下り勾配で低下させるから、洗浄室内において洗浄流体の圧力が不規則に低下することはなく、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができる。この洗浄システムは、洗浄流体の急激な密度変化による被洗浄物の変形や膨張、発泡等を防ぐことができるから、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることはない。
洗浄流体の臨界圧力を挟んだ±5.0MPaの範囲において洗浄流体の圧力を0.5MPa/h〜10.0MPa/hの減圧速度で低下させる洗浄システムは、洗浄流体の臨界圧力の前後において洗浄流体の圧力を前記減圧速度でゆっくりと低下させるから、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができ、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。
被洗浄物を洗浄した後、洗浄容器の温度を制御する第1温度制御手段を実行し、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる洗浄システムは、洗浄室内において洗浄流体の温度を不規則に低下させることによる洗浄流体の急激な温度変化を防ぐことができるとともに、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができ、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。
被洗浄物を洗浄した後、洗浄流体を予熱タンクから洗浄室に徐々に流入させる流入量制御手段を実行し、第1温度制御手段と流入量制御手段とによって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる洗浄システムは、第1温度制御手段に加えて流入量制御手段を実行することで、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で確実に低下させることができる。この洗浄システムは、洗浄室内において洗浄流体の温度を不規則に低下させることによる洗浄流体の急激な温度変化を防ぐことができるとともに、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができ、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。
被洗浄物を洗浄した後、予熱タンクの温度を制御する第2温度制御手段を実行し、第1温度制御手段と第2温度制御手段とによって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる洗浄システムは、第1温度制御手段に加えて第2温度制御手段を実行することで、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で確実に低下させることができる。この洗浄システムは、洗浄室内において洗浄流体の温度を不規則に低下させることによる洗浄流体の急激な温度変化を防ぐことができるとともに、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができ、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。
被洗浄物を洗浄した後、洗浄容器の温度を制御する第3温度制御手段を実行し、洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する洗浄システムは、洗浄後における洗浄室内の洗浄流体の温度を所定の温度に保持することで、洗浄室内の洗浄流体の急激な温度変化を防ぐことができるとともに、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができ、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。この洗浄システムは、洗浄室内の洗浄流体の温度を所定の温度に保持することで、洗浄後の被洗浄物を洗浄室内において乾燥させることができる。
被洗浄物を洗浄した後、洗浄流体を予熱タンクから洗浄室に徐々に流入させる流入量制御手段を実行し、第3温度制御手段と流入量制御手段とによって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する洗浄システムは、第3温度制御手段に加えて流入量制御手段を実行することで、洗浄後における洗浄室内の洗浄流体の温度を所定の温度に保持することができ、洗浄室内の洗浄流体の急激な温度変化を防ぐことができる。洗浄システムは、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができ、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。この洗浄システムは、洗浄室内の洗浄流体の温度を所定の温度に保持することで、洗浄後の被洗浄物を洗浄室内において乾燥させることができる。
被洗浄物を洗浄した後、予熱タンクの温度を制御する第4温度制御手段を実行し、第3温度制御手段と第4温度制御手段とによって洗浄室内の洗浄流体の温度を略一定に保持する洗浄システムは、第3温度制御手段に加えて第4温度制御手段を実行することで、洗浄後における洗浄室内の洗浄流体の温度を所定の温度に保持することができ、洗浄室内の洗浄流体の急激な温度変化を防ぐことができる。洗浄システムは、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができ、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。この洗浄システムは、洗浄室内の洗浄流体の温度を所定の温度に保持することで、洗浄後の被洗浄物を洗浄室内において乾燥させることができる。
本発明に係る流体密度制御方法によれば、被洗浄物を洗浄した後、洗浄室内の洗浄流体の圧力を次第に低下させ、それによって洗浄室内における洗浄流体の密度を一定の下り勾配で低下させるから、洗浄室内の洗浄流体の圧力が不規則に低下することはなく、被洗浄物の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができる。この流体密度制御方法は、それを実行することで洗浄流体の急激な密度変化による被洗浄物の変形や膨張、発泡等を防止することができるから、洗浄後の被洗浄物がダメージを受けることはない。
添付の図面を参照し、本発明に係る洗浄システムおよび流体密度制御方法の詳細をフィルタの洗浄を例として説明すると、以下のとおりである。図1は、一例として示す洗浄システム10の構成図である。洗浄システム10は、気体を濾過した後の使用済みのエアフィルタ26(被洗浄物)の洗浄や液体を濾過した後の使用済みのリキッドフィルタ26(被洗浄物)の洗浄に好適に利用される(図2,3参照)。それらフィルタ26の洗浄には、超臨界流体または亜臨界流体のいずれかの洗浄流体が使用される。なお、この洗浄システム10で洗浄される被洗浄物には、フィルタ26のみならず、超臨界流体または亜臨界流体によって洗浄可能な全ての洗浄物が含まれる。
この洗浄システム10は、液化二酸化炭素を収容したボンベ11と、二酸化炭素ガスを所定の圧力に加圧するポンプ12と、二酸化炭素ガスを所定の温度に加熱する加熱器13と、洗浄流体の温度を一定に保持する予熱タンク14と、フィルタ26を収容かつ洗浄する洗浄容器15と、洗浄流体を冷却かつ減圧する冷却減圧装置16と、コントローラ17とから形成されている。ボンベ11やポンプ12、加熱器13、予熱タンク14、洗浄容器15、冷却減圧装置16は、管路18を介して連結されている。加熱器13と予熱タンク14との間に延びる管路18には、調節バルブ57と流量計19とが取り付けられている。予熱タンク14と洗浄容器15との間に延びる管路18には、調節バルブ20(第2調節バルブ)が取り付けられ、洗浄容器15と冷却減圧装置16との間に延びる管路18には、調節バルブ21(第1調節バルブ)が取り付けられている。予熱タンク14には、ヒータ22が取り付けられ、洗浄容器15には、温度計23と圧力計24とヒータ25とが取り付けられている。
ボンベ11から供給される二酸化炭素ガスは、管路18を通ってポンプ12に流入し、ポンプ12によって5.0〜30.0MPaの圧力に加圧された後、加熱器13に流入し、加熱器13によって30〜120℃の温度に加熱されることで、超臨界流体または亜臨界流体のいずれかの洗浄流体になる。洗浄流体は、ポンプ12を介して強制的に加熱器13から予熱タンク14に送られるとともに、予熱タンク14から洗浄容器15に供給され、洗浄容器15の後記する気密構造洗浄室38に流入する。洗浄容器15から流出した洗浄流体は冷却減圧装置16で冷却かつ減圧されて非超臨界または非亜臨界の通常流体に戻り、通常流体が管路18を通って再びポンプ12に流入する。通常流体は、ポンプ12と加熱器13とによって再び洗浄流体になる。フィルタ26の洗浄中は、洗浄流体と通常流体とがシステム10を循環する。フィルタ26の洗浄中では、洗浄室38への洗浄流体の流入量がポンプ12や調節バルブ20によって調節され、洗浄流体の洗浄室38からの流出量が調節バルブ21によって調節されている。なお、この洗浄システム10には、図示はしていないが、循環中の洗浄流体または通常流体に含まれる不純物を濾過する濾過装置が取り付けられている。濾過装置は、冷却減圧装置16とポンプ12との間に延びる管路18に設置される。
ポンプ12や加熱器13、調節バルブ57、流量計19、ヒータ22、調節バルブ20、温度計23、圧力計24、ヒータ25、調節バルブ21、冷却減圧装置16は、インターフェイス(有線または無線)を介してコントローラ17に接続されている。ポンプ12や加熱器13、流量計19、調節バルブ20,21、ヒータ22,25、温度計23、圧力計24は、コントローラ17とともに洗浄中における洗浄流体の流量や温度、圧力を目標値の範囲に一致させるフィードバック制御の制御要素を形成する。コントローラ17は、中央処理装置(CPUまたはMPU)と記憶装置とを有するコンピュータである。コントローラ17には、大容量ハードディスクが内蔵され、図示はしていないが、キーボードやディスプレイ、プリンタがインターフェイス(有線または無線)を介して接続されている。
記憶装置の内部アドレスファイルには、このシステム10においてフィルタ26の洗浄を実行するための洗浄プログラムが格納され、さらに、フィルタ26洗浄後の各手段を実行するための流体密度制御プログラムが格納されている。コントローラ17の中央処理装置は、オペレーティングシステムによる制御に基づいて、記憶装置の内部アドレスファイルに格納された各プログラムを起動し、洗浄プログラムに従ってフィルタ26の洗浄を実行するとともに、流体密度制御プログラムに従ってフィルタ26洗浄後の流体圧力逓減手段や第1〜第4温度制御手段、流入量制御手段等の各手段を実行する。システム10の稼働中、コントローラ17には、流量計19を介して管路18を流れる洗浄流体の流量が常時入力され、温度計23を介して洗浄室38内の洗浄流体の温度が常時入力されるとともに、圧力計24を介して洗浄室38内の洗浄流体の圧力が常時入力される。コントローラ17には、調節バルブ20に取り付けられた流量計(図示せず)からバルブ20の弁機構を通過する洗浄流体の流量(洗浄室に流入する洗浄流体の流量)が常時入力され、調節バルブ21に取り付けられた流量計(図示せず)からバルブ21の弁機構を通過する洗浄流体の流量(洗浄室から流出する洗浄流体の流量)が常時入力されている。
図2,3は、蓋31を省略した一例として示す洗浄容器15の上面図と、蓋31を取り付けた状態で示す図2の3−3線矢視断面図とであり、図4は、台座44と被覆材45と管材46との一例を示すそれらの斜視図である。図2,3では、縦方向を矢印A(図3のみ)、径方向を矢印Bで示し、周方向を矢印Cで示す(図2のみ)。図2,3に示す洗浄容器15の気密構造洗浄室38には、エアフィルタ26またはリキッドフィルタ26が収容されている。
それらフィルタ26は、気体中や液体中に存在する不純物を除去する機能を有し、気体や液体を浄化する。フィルタ26を性能別に分類すると、粗大な不純物を除去するプレフィルタ、微細な不純物を除去する中性能フィルタまたは高性能フィルタ、極めて微細な不純物を除去するHEPA(ヘパ)フィルタやULPA(ウルパ)フィルタ、化学物質を除去するケミカルフィルタがある。エアフィルタ26には、セパレータ型エアフィルタやミニプリーツ型エアフィルタ等がある。エアフィルタ26は、主に空調用フィルタや空気清浄用フィルタ、排気処理用フィルタ、車両用エアコンフィルタとして使用される。リキッドフィルタ26は、浄水装置用フィルタや浸透圧を利用する膜装置用フィルタとして使用される。
図示のエアフィルタ26やリキッドフィルタ26は、ガラス繊維や吸着剤、合成樹脂繊維を濾材とし、フィルタハウジングまたはフィルタカートリッジに収納して使用される。それらフィルタ26は、蛇腹に折り畳まれた立体構造を有し、四角形の上面27および下面28と、上下面27,28の間に延びる四角形の4つの側面29(周面)とを有する6面体である。なお、この洗浄システム10で洗浄されるフィルタには、立体構造を有するそれの他に、略扁平のフィルタも含まれ、さらに、上下面の形状が円形や楕円形、多角形のフィルタも含まれる。
吸着剤には、活性炭やセラミック多孔体等がある。合成樹脂繊維には、ポプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルフォン、ポリスルホン、ナイロン6、ポリフェニレンサルファイド等がある。濾材としては、繊維間に粒状活性炭や粒状セラミック多孔体等の吸着剤を担持させたもの、重なり合う繊維集合物の間に粒状活性炭や粒状セラミック多孔体等の吸着剤を介在させたものも含まれる。なお、超臨界流体または亜臨界流体のいずれかの洗浄流体は、気体と液体との性質を有し、フィルタ26を形成する濾材の微細な間隙に容易に進入して濾材表面に付着した汚れを容易に溶かし込むとともに、濾材内部に容易に浸透して濾材内部に滲入した汚れを容易に溶かし込む。洗浄流体は、それを利用することで濾材表面に付着した汚れを落とすことができるのみならず、濾材内部に滲入した汚れを落とすことができる。
洗浄容器15は、容器本体30および蓋31と、本体30に蓋31を固定するクランプ32とから形成されている。容器本体30は、縦方向へ長い略円柱状を呈し、底壁33と、底壁33の周縁から上方へ延びる周壁34と、円形の上部開口35とを有する。周壁34の上部外周面には、周方向へ交互に並ぶ凹部36と凸部37とが形成されている。容器本体30の内部には、底壁33と周壁34とに囲繞された気密構造洗浄室38が形成されている。底壁33には、洗浄室38に洗浄流体を流入させる5つの流入口39と、洗浄室38から洗浄流体を流出させる流出口40とが形成されている。流入口39と流出口40とは、底壁33を貫通して洗浄室38から容器本体30の外側に通じている。流入口30は調節バルブ20から延びる管路18につながり、流出口40は容器本体30から延びる管路18につながっている。蓋31は、その平面形状が円形を呈し、上下面と上下面の間に延びる周面とを有する。蓋31の周面には、容器本体30と同様に、周方向へ交互に並ぶ凹部(図示せず)と凸部41とが形成されている。蓋31を容器本体30に乗せると、蓋31の周縁部が周壁34の上部に当接し、本体30の上部開口35が蓋31によって閉塞される。クランプ32は、リング状を呈し、その内周面に周方向へ交互に並ぶ凹部42と凸部43とが形成されている。
気密構造洗浄室38は、円筒状を呈し、フィルタ26を収容可能な所定の容積を有する。洗浄室38には、フィルタ26を乗せる台座44と、フィルタ26を覆う被覆材45と、洗浄流体が流れる中空の管材46とが設置されている。台座44や被覆材45、管材46は、ステンレスやアルミ、鉄等の金属から作られている。台座44は、複数の貫通孔47が等間隔で形成された四角形の整流板48と、整流板48の周縁から下方へ延びる脚部49とから形成されている。脚部49は、底壁33に当接している。整流板48には、フィルタ26の下面28が当接している。整流板48は底壁33から上方へ離間した状態にあり、底壁33と整流板48との間には空間50が形成されている。なお、台座44は、洗浄流体が容易に通過する四角形の金網と、金網の周縁から下方へ延びる脚部とから形成されていてもよい。流入口39は、5つのそれらが台座44を挟んでフィルタ26の下方に位置し、底壁33と台座44との間に形成された空間50に突出している。それら流入口39は、1つが台座44の中心に位置し、他の4つが台座44の脚部49の間の長さ寸法を二分した箇所に位置している。
被覆材45は、フィルタ26の4つの側面29(周面)の周方向外方に位置する周縁部51と、フィルタ26の上面27から上方へ離間する中央部52とを有する。中央部52は、その平面形状が四角形を呈し、その面積がフィルタ26の上面27のそれと略同一またはフィルタ26の上面27のそれよりもわずかに大きく、フィルタ26の上面27全域を覆っている。周縁部51は、中央部52の周縁から下方へ延び、縦方向の寸法がフィルタ26の側面29のそれよりも大きく、フィルタ26の側面29全域を覆っている。被覆材45の周縁部51とフィルタ26の側面29との間に隙間がないことが好ましいが、フィルタ26の大きさによってはわずかに隙間が形成される場合もある。フィルタ26の上面27と被覆材45の中央部52との間にはフィルタ26を通流した洗浄流体を捕集して洗浄流体を管材46に導くスペース53が形成され、洗浄室38にはスペース53を除く空間54が形成されている。
管材46は、流出口40の側に位置する第1部分55と、第1部分55から5本に分岐する第2部分56とから形成されている。第1部分55は、流出口40につながり、流出口40から上方へ延びた後、被覆材45の中央部52の中心部分に向かって径方向へ水平に延び、さらに、中央部52の中心部分で下方へわずかに延びている。第2部分56は、被覆材45の中央部52の中心部分につながるとともに、中央部52の4つの角部分(複数箇所)につながっている。第2部分56は、第1部分55から中央部52の角部分に向かって径方向へ水平に延びた後、中央部52の角部分で下方に延びている。
この洗浄容器15を使用して使用済みのエアフィルタ26やリキッドフィルタ26を洗浄する手順の一例は、以下のとおりである。フィルタ26を気密構造洗浄室38に入れ、フィルタ26の下面28を整流板48に当接させた状態でフィルタ26を台座44に乗せた後、被覆材45をフィルタ26に被せ、被覆材45によってフィルタ26の上面27と側面29とを覆う。フィルタ26は、その上面27全域と側面29全域とが被覆材45に覆われ、台座44と被覆材45との間に位置する。フィルタ26を洗浄室38に設置した後は、容器本体30の凸部37と蓋31の凸部41とを互いに一致させた状態で蓋31を本体30の周壁34上部に乗せ、蓋31を介して本体30の上部開口35を閉じる。次に、容器本体30の凹部36と蓋31の凹部との間にクランプ32の凸部43を差し込み、クランプ32を本体30の周壁34と蓋31の周面とに嵌め込んだ後、クランプ32を周方向へ回して本体30および蓋31の凸部37,40とクランプ32の凸部43とを縦方向へ並べる。容器本体30および蓋31の凸部37,40とクランプ32の凸部43とが縦方向へ並ぶと、蓋31の下面が本体30の周壁34上部に圧接し、蓋31を本体30に密着させることができ、洗浄室38を密閉することができる。蓋31によって容器本体30の上部開口35を閉塞した後、洗浄システム10を起動させる。
洗浄システム10を起動させると、コントローラ17やポンプ12、加熱器13、予熱タンク14、ヒータ22,25、バルブ20,21の弁機構、冷却減圧装置16が稼動するとともに、流量計19、温度計23、圧力計24、調節バルブ20,21の流量計が計測を開始し、ボンベ11から二酸化炭素ガスが管路18に供給される。二酸化炭素ガスは、ポンプ12と加熱器13とによって超臨界流体または亜臨界流体のいずれかの洗浄流体になり、図3に矢印L1で示すように、洗浄流体が流入口39から洗浄室38に流入するとともに、管材46を通って流出口40から洗浄容器15の外側に流出する。フィルタ26の洗浄中、コントローラ17は、調節バルブ57の弁機構を全開に保持する。フィルタ26の洗浄中、コントローラ17は、ポンプ12や調節バルブ20,21を制御し、管路18を流れる洗浄流体の流量を目標値に保持し、洗浄流体の洗浄室38への流入量や洗浄室38からの洗浄流体の流出量を目標値に保持するとともに、洗浄室38内の洗浄流体の圧力を目標値に保持する。さらに、コントローラ17は、加熱器13の熱量や予熱タンク14のヒータ22の熱量、容器15に取り付けられたヒータ25の熱量を制御し、洗浄室38内の洗浄流体の温度を目標値に保持する。なお、キーボードから目標値を入力することで、コントローラ17の記憶装置に格納された各目標値を随時変更することができる。
コントローラ17の中央処理装置は、フィルタ26の洗浄中にシステム10を循環する洗浄流体の流量が目標値の範囲から外れ、洗浄流体の洗浄室38への流入量や洗浄室38からの洗浄流体の流出量が目標値から外れると、ポンプ12の出力やバルブ20,21の弁機構を調節して洗浄流体の流量や流入量、流出量を目標値の範囲内に復帰させる。中央処理装置は、フィルタ26の洗浄中にシステム10を循環する洗浄流体の圧力が目標値の範囲から外れると、ポンプ12の出力やバルブ20,21の弁機構を調節して洗浄流体の圧力を目標値の範囲内に復帰させる。中央処理装置は、フィルタ26の洗浄中に洗浄室38内の洗浄流体の温度が目標値の範囲から外れると、加熱器13の熱量や予熱タンク14のヒータ22の熱量、容器15に取り付けられたヒータ25の熱量を調節して洗浄室38内の洗浄流体の温度を目標値の範囲内に復帰させる。
流入口39から洗浄室38に流入した洗浄流体は、台座44の整流板48に当たり、整流板48の流体抵抗により、整流板48全域に満遍なく分布した後、貫通孔47を通り抜け、フィルタ26の下面28の略全域からフィルタ26の内部(濾材間隙)に進入し、下面28から上面27に向かって通流する。洗浄流体は、フィルタ26を形成する濾材の間隙を通って濾材に付着した汚れを落とし、さらに、濾材の内部に浸透して濾材に滲入した汚れを落とし、フィルタ26を洗浄する。フィルタ26の上面27から流出した洗浄流体は、それの流路となるスペース53に捕集され、図3に矢印L2で示すように、スペース53を通って管材46に向かって流れ、管材46に吸引される。洗浄流体は、管材46を通って流出口40に達し、流出口40から洗浄容器15の外側に流出した後、バルブ21を通って冷却減圧装置16に流入し、冷却減圧装置16で冷却かつ減圧されて通常流体に戻る。
通常流体は、濾過装置によってそれに含まれる不純物が濾過された後、再びポンプ12と加熱器13とによって洗浄流体となり、洗浄容器15の洗浄室38に流入する。フィルタ26の洗浄中は、冷却減圧装置16によって洗浄流体を通常流体に戻し、ポンプ12と加熱器13とによって通常流体を洗浄流体に戻すサイクルを繰り返し、ポンプ12によって通常流体と洗浄流体とを強制的に循環させながら、洗浄流体を常時洗浄室38に流通させる。ここで、フィルタ26の洗浄時間は、洗浄するフィルタによって異なり、約5〜120分である。洗浄時間はコントローラ17の記憶装置にあらかじめ格納されているが、キーボードから洗浄時間を入力することで、記憶装置に格納された洗浄時間を随時変更することができる。
図5は、フィルタ26を洗浄した後における洗浄室38内の洗浄流体の温度や圧力、密度の時系列変化の一例を示す図である。図5の左縦軸には洗浄流体の密度ρ(kg/m3)が表示され、右縦軸には洗浄流体の温度T(℃)および圧力P(MPa)が表示されている。図5の横軸には時間t(min)が表示されている。フィルタ26の洗浄直後の洗浄流体は、図5に示すように、密度ρが約840kg/m3、温度Tが約40℃、圧力Pが約20MPaである。フィルタ26を洗浄室38から取り出すときの通常流体は、密度ρが1.82kg/m3、洗浄流体の温度を次第に低下させた場合の温度Tが約20℃、洗浄流体の温度を略一定に保持した場合の温度Tが約40℃、圧力Pが0.1MPaである。フィルタ26を洗浄した後、コントローラ17は、その記憶装置に格納された流体密度制御プログラムを起動させて流体密度制御を自動的に実行し、洗浄室38内の洗浄流体の密度を略一定の下り勾配で下げ、洗浄流体の密度を臨界点以下にして洗浄室38内の洗浄流体を通常流体に戻す。システム10では、コントローラ17が洗浄室38内の洗浄流体を通常流体に戻した後、クランプ32を外して蓋31を開け、洗浄室38から洗浄済みのフィルタ26を取り出す。
洗浄室38内の洗浄流体の密度を略一定の下り勾配で下げる流体密度制御は、コントローラ17の制御に基づいて、ポンプ12や予熱タンク14、調節バルブ20,21,57、ヒータ22,25を使用して行う。この洗浄システム10が実行する流体密度制御の一例は、以下のとおりである。システム10において洗浄流体を所定時間循環させるとコントローラ17の中央処理装置は、フィルタ26の洗浄が完了したと判断し、流体密度制御を自動的に実行する。具体的には、中央処理装置が流体圧力逓減手段や第1温度制御手段、流入量制御手段、第2温度制御手段を同時に実行し、洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させるとともに、洗浄室38内の洗浄流体の密度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。なお、流体圧力逓減手段や第1温度制御手段、流入量制御手段、第2温度制御手段の実行時間は、10分〜6時間の範囲にある。
フィルタ26の洗浄時間が経過すると、コントローラ17の中央処理装置は、フィルタ26の洗浄が完了したと判断し、ポンプ12の稼動と加熱器13の稼動とを停止するとともに、調節バルブ57の弁機構を全閉にし、加熱器13と予熱タンク14との間に延びる流路18を遮断して加熱器13から先へ洗浄流体が流れることを防止する。中央処理装置は、バルブ21の弁機構(流量)を制御して洗浄室38から流出する洗浄流体の流出量を調節し、洗浄室38から洗浄流体を徐々に流出させて洗浄室38内の洗浄流体の圧力を次第に低下させる(流体圧力逓減手段)。中央処理装置は、流体圧力逓減手段と平行し、予熱タンク14のヒータ22(熱量)を調節してタンク14の温度を制御し(タンク温度の上昇下降制御:第2温度制御手段)、それによって洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。中央処理装置は、流体圧力逓減手段と平行し、バルブ20の弁機構(流量)を制御してタンク14から洗浄室38に流入する洗浄流体の流入量を調節し、タンク14から洗浄室38に予熱された洗浄流体を徐々に流入させる(流入量制御手段)。さらに、中央処理装置は、流体圧力逓減手段と平行し、洗浄容器15に取り付けられたヒータ25(熱量)を調節して容器15の温度を制御し(容器温度の上昇下降制御:第1温度制御手段)、それによって洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。中央処理装置は、第1温度制御手段や流入量制御手段、第2温度制御手段を同時に実行することで洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。第1温度制御手段、流入量制御手段、第2温度制御手段において中央処理装置は、設定、調節、操作、検出の各要素が閉ループを形成するフィードバック制御を実行する。なお、フィードバック制御の制御動作は、PID制御である。
流体圧力逓減手段においてコントローラ17の中央処理装置は、洗浄流体の臨界圧力(約7.3MPa)を挟んだ±5.0MPaの範囲において洗浄流体の圧力を0.5MPa/h〜10.0MPa/hの減圧速度で低下させる。好ましくは、洗浄流体の臨界圧力を挟んだ±5.0MPaの範囲において洗浄流体の圧力を1.0MPa/h〜5.0MPa/hの減圧速度で低下させる。より好ましくは、洗浄流体の臨界点を挟んだ±7.5MPaの範囲において洗浄流体の圧力を1.0MPa/h〜5.0MPa/hの減圧速度で低下させる。図5では、洗浄流体の圧力を10MPaから5MPaまで下げる間に、洗浄流体の圧力を1.0MPa/h〜5.0MPa/hの減圧速度で低下させている。洗浄流体圧力の減圧速度が0.5MPa/h未満では、流体密度の下り勾配の傾きが小さくなり、洗浄室38内の洗浄流体の密度を所定時間内に低下させることができず、システム10における洗浄効率が低下する。洗浄流体圧力の減圧速度が10.0MPa/hを超過すると、洗浄室38内の洗浄流体がその臨界点の前後において急激な密度変化を起こし、それによってフィルタ26やフィルタ構成部材が変形、膨張、発泡等のダメージを受ける場合がある。
第2温度制御手段の一例は、以下のとおりである。第2温度制御手段においてコントローラ17の中央処理装置は、洗浄室38内の洗浄流体の温度を計測しつつ、洗浄室38内の洗浄流体の温度が略一定の下り勾配で次第に低下するように、予熱タンク14のヒータ22を0〜100℃の範囲で調節してタンク14の温度を上昇または下降させるフィードバック制御を行う。流入量制御手段の一例は、以下のとおりである。流入量制御手段においてコントローラ17の中央処理装置は、調節バルブ20の弁機構を調節してバルブ20における洗浄流体の流量を制御し、洗浄室38の容積に対する所定割合の洗浄流体を予熱タンク14から洗浄室38に流入させる。洗浄室38の容積に対する洗浄流体の割合は、10%/h〜200%/hの範囲にある。中央処理装置は、調節バルブ20の弁機構の開度を計測し、洗浄流体の割合が前記範囲になるように、弁機構の開度を増減させるフィードバック制御を行う。第1温度制御手段の一例は、以下のとおりである。第1温度制御手段においてコントローラ17の中央処理装置は、洗浄室38内の洗浄流体の温度を計測しつつ、洗浄室38内の洗浄流体の温度が略一定の下り勾配で次第に低下するように、ヒータ25を0〜100℃の範囲で調節して洗浄容器15の温度を上昇または下降させるフィードバック制御を行う。
流体密度制御の実行中では、タンク14の温度と洗浄容器15の温度とが上昇または下降しつつ、予熱タンク14から洗浄流体が洗浄室38に徐々に流入するとともに、洗浄室38内の洗浄流体が洗浄室38から徐々に流出して冷却減圧装置16に流入する。この洗浄システム10では、コントローラ17の中央処理装置が流体圧力逓減手段や第1温度制御手段、流入量制御手段、第2温度制御手段を実行することで、図5に示すように、洗浄室38内の洗浄流体の温度が略一定の下り勾配で次第に低下するとともに、洗浄室38内に存在する洗浄流体の密度が略一定の下り勾配で次第に低下する。それら手段の実行時間が経過すると、洗浄流体の圧力が大気圧に戻り、洗浄流体の密度が臨界点以下に低下して洗浄流体が通常流体に戻る。流体密度制御を実行した後の洗浄室38内の通常流体は、その密度ρが1.82kg/m3、その温度Tが約20℃、その圧力Pが0.1MPaである。
洗浄システム10では、流体密度制御においてコントローラ17が流体圧力逓減手段、第1温度制御手段、流入量制御手段、第2温度制御手段を同時に実行しているが、コントローラ17が流体圧力逓減手段と第1温度制御手段とを同時に実行してもよく、コントローラ17が流体圧力逓減手段と第1温度制御手段と流入量制御手段とを同時に実行してもよい。また、コントローラ17が流体圧力逓減手段と第1温度制御手段と第2温度制御手段とを同時に実行してもよい。
洗浄システム10は、流体圧力逓減手段における減圧速度が前記範囲にあり、洗浄流体の臨界圧力の前後において洗浄流体の圧力をゆっくりと低下させるから、洗浄室38内において洗浄流体の圧力が不規則に低下することはなく、洗浄室38内の洗浄流体の密度を略一定の下り勾配で低下させることができ、フィルタ26の内部やフィルタ構成部材の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を防ぐことができる。また、この洗浄システム10は、第1温度制御手段や流入量制御手段、第2温度制御手段を実行することで、洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定の下り勾配で低下させるから、洗浄室38内の洗浄流体の温度が急速に低下することはなく、洗浄室38内の洗浄流体の急激な温度変化を防ぐことができ、洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を確実に防ぐことができる。洗浄システム10は、洗浄流体の急激な密度変化によるフィルタ26やフィルタ構成部材の変形、膨張、発泡等を防ぐことができるから、洗浄後のフィルタ26やフィルタ構成部材がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。
この洗浄システム10が実行する流体密度制御の他の一例は、以下のとおりである。システム10において洗浄流体を所定時間循環させるとコントローラ17の中央処理装置は、フィルタ26の洗浄が完了したと判断し、流体密度制御を自動的に実行する。具体的には、中央処理装置が流体圧力逓減手段や第3温度制御手段、流入量制御手段、第4温度制御手段を同時に実行し、洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定に保持しつつ、洗浄室38内の洗浄流体の密度を略一定の下り勾配で次第に低下させる。なお、流体圧力逓減手段や第3温度制御手段、流入量制御手段、第4温度制御手段の実行時間は、10分〜6時間の範囲にある。
フィルタ26の洗浄時間が経過すると、コントローラ17の中央処理装置は、フィルタ26の洗浄が完了したと判断し、ポンプ12の稼動と加熱器13の稼動とを停止するとともに、調節バルブ57の弁機構を全閉にする。中央処理装置は、バルブ21の弁機構(流量)を制御して洗浄室38から流出する洗浄流体の流出量を調節し、洗浄室38から洗浄流体を徐々に流出させて洗浄室38内の洗浄流体の圧力を次第に低下させる(流体圧力逓減手段)。中央処理装置は、流体圧力逓減手段と平行し、予熱タンク14のヒータ22(熱量)を調節してタンク14の温度を制御し(タンク温度の上昇下降制御:第4温度制御手段)、それによって洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。中央処理装置は、流体圧力逓減手段と平行し、バルブ20の弁機構(流量)を制御してタンク14から洗浄室38に流入する洗浄流体の流入量を調節し、タンク14から洗浄室38に予熱された洗浄流体を徐々に流入させる(流入量制御手段)。さらに、中央処理装置は、流体圧力逓減手段と平行し、洗浄容器15に取り付けられたヒータ25(熱量)を調節して容器15の温度を制御し(容器温度の上昇下降制御:第3温度制御手段)、それによって洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。中央処理装置は、第3温度制御手段や流入量制御手段、第4温度制御手段を同時に実行することで洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定に保持する。第3温度制御手段、流入量制御手段、第4温度制御手段において中央処理装置は、設定、調節、操作、検出の各要素が閉ループを形成するフィードバック制御を実行する。なお、フィードバック制御の制御動作は、PID制御である。
流体圧力逓減手段においてコントローラ17の中央処理装置は、洗浄流体の臨界圧力(約7.3MPa)を挟んだ±5.0MPaの範囲において洗浄流体の圧力を0.5MPa/h〜10.0MPa/hの減圧速度で低下させる。好ましくは、洗浄流体の臨界圧力を挟んだ±5.0MPaの範囲において洗浄流体の圧力を1.0MPa/h〜5.0MPa/hの減圧速度で低下させる。より好ましくは、洗浄流体の臨界点を挟んだ±7.5MPaの範囲において洗浄流体の圧力を1.0MPa/h〜5.0MPa/hの減圧速度で低下させる。
この流体密度制御における第4温度制御手段の一例は、以下のとおりである。第4温度制御手段においてコントローラ17の中央処理装置は、洗浄室38内の洗浄流体の温度を計測しつつ、洗浄室38内の洗浄流体の温度が略一定になるように、予熱タンク14のヒータ22を0〜100℃の範囲で調節してタンク14の温度を上昇または下降させるフィードバック制御を行う。この流体密度制御における流入量制御手段の一例は、以下のとおりである。流入量制御手段においてコントローラ17の中央処理装置は、調節バルブ20の弁機構を調節してバルブ20における洗浄流体の流量を制御し、洗浄室38の容積に対する所定割合の洗浄流体を予熱タンク14から洗浄室38に流入させる。洗浄室38の容積に対する洗浄流体の割合は、10%/h〜200%/hの範囲にある。中央処理装置は、調節バルブ20の弁機構の開度を計測し、洗浄流体の割合が前記範囲になるように、弁機構の開度を増減させるフィードバック制御を行う。この流体密度制御における第3温度制御手段の一例は、以下のとおりである。第3温度制御手段においてコントローラ17の中央処理装置は、洗浄室38内の洗浄流体の温度を計測しつつ、洗浄室38内の洗浄流体の温度が略一定になるように、ヒータ25を0〜100℃の範囲で調節して洗浄容器15の温度を上昇または下降させるフィードバック制御を行う。
流体密度制御の実行中では、タンク14の温度と洗浄容器15の温度とが上昇または下降しつつ、予熱タンク14から洗浄流体が洗浄室38に徐々に流入するとともに、洗浄室38内の洗浄流体が洗浄室38から徐々に流出して冷却減圧装置16に流入する。この洗浄システム10では、コントローラ17の中央処理装置が流体圧力逓減手段や第3温度制御低下手段、流入量制御手段、第4温度制御手段を実行することで、図5に示すように、洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定に保持しつつ、洗浄室38内に存在する洗浄流体の密度が略一定の下り勾配で次第に低下する。それら手段の実行時間が経過すると、洗浄流体の圧力が大気圧に戻り、洗浄流体の密度が臨界点以下に低下して洗浄流体が通常流体に戻る。流体密度制御を実行した後の洗浄室38内の通常流体は、その密度ρが1.82kg/m3、その温度Tが約40℃、その圧力Pが0.1MPaである。
洗浄システム10では、流体密度制御においてコントローラ17が流体圧力逓減手段、第3温度制御手段、流入量制御手段、第4温度制御手段を同時に実行しているが、コントローラ17が流体圧力逓減手段と第3温度保持手段とを同時に実行してもよく、コントローラ17が流体圧力逓減手段と第3温度保持手段と流入量制御手段とを同時に実行してもよい。また、コントローラ17が流体圧力逓減手段と第3温度保持手段と第4温度保持手段とを同時に実行してもよい。
この洗浄システム10は、第3温度保持手段や流入量制御手段、第4温度保持手段を実行することで、タンク14の温度と容器15の温度とを所定温度に保持し、洗浄室38内の洗浄流体の温度を略一定に保持するから、洗浄室38内の洗浄流体の温度変化を防ぐことができ、フィルタ26の内部やフィルタ構成部材の内部に浸透した洗浄流体の臨界点前後における急激な密度変化を確実に防ぐことができる。洗浄システム10は、洗浄流体の急激な密度変化によるフィルタ26やフィルタ構成部材の変形、膨張、発泡等を防止することができるから、洗浄後のフィルタ26やフィルタ構成部材がダメージを受けることを確実に防ぐことができる。この洗浄システム10は、洗浄室38内の洗浄流体の温度を所定の温度に保持することで、洗浄後の被洗浄物を洗浄室38内において乾燥させることができる。
この洗浄システム10で使用される洗浄容器15では、被覆材45がフィルタ26の上面27全域と側面29全域とを覆い、フィルタ26を通流した洗浄流体の流路となるスペース53がフィルタ26の上面27と被覆材45の中央部52との間に形成されているから、洗浄流体をフィルタ26の下面28から上面27に向かって確実に通流させることができる。洗浄容器15は、フィルタ26を通流しない洗浄流体の発生を防ぐことができ、洗浄流体の無駄な消費を防ぐことができる。洗浄容器15は、整流作用を有する整流板48の流体抵抗により、洗浄流体を整流板48全域に満遍なく分布させつつ、洗浄流体をフィルタ26に通流させることができるから、洗浄流体をフィルタ26の下面28の略全域から上面27の略全域に向かって確実に通流させることができ、フィルタ26に対する高い洗浄機能を有する。
このシステム10で使用される洗浄容器15は、被覆材45の周縁部51が立体構造を有するフィルタ26の側面29(周面)の周方向外方に位置して側面29全域を覆っているから、立体構造を有するフィルタ26であっても、洗浄流体をその略全域に確実に通流させることができる。洗浄容器15は、管材46がその第1部分55から5本に分岐して被覆材45の中央部52の複数箇所につながる第2部分56を有するから、フィルタ26を通流した洗浄流体を被覆材45の複数箇所から管材46に捕集することができ、フィルタ26の全域に略均一の流量の洗浄流体を通流させることができる。洗浄容器15は、洗浄流体の流入口39が被覆材45の中央部52の中心部分の下方に形成され、さらに、被覆材45の周縁部51の一辺の長さ寸法を二分した位置の下方に形成され、洗浄流体を5つのそれら流入口39から放出してフィルタ26の複数部分に満遍なく当てることができるから、フィルタ26の略全域に略均一の流量の洗浄流体を通流させることができる。
この洗浄システム10では洗浄流体の原料として二酸化炭素ガスを使用しているが、洗浄流体の原料として、二酸化炭素ガスの他に、水やメタノールを使用することができる。洗浄流体の原料に水を使用する場合は、ポンプ12によって圧力が22.1MPa以上に加圧されるとともに、加熱器13によって温度が374℃以上に加熱される。また、洗浄流体の原料にメタノールを使用する場合は、ポンプ12によって圧力が7.9MPa以上に加圧されるとともに、加熱器13によって温度が239℃以上に加熱される。