JP2007328897A - 多層光記録媒体及びその光記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層中の反射層の厚みが極薄であっても充分な放熱効果が得られ、変調度を高くして各情報層の記録性能が向上し、記録感度も向上し、保存安定性に優れた多層光記録媒体及びその光記録方法の提供。
【解決手段】レーザ光の照射によって情報を記録し得る相変化記録層と、反射層を少なくとも含む複数の情報層を有し、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層が少なくとも下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層、及び光透過層を有し、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層の上部保護層及び光透過層がSn酸化物を含有する材料からなり、かつレーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層の上部保護層の厚みが2〜15nmである多層光記録媒体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、レーザ光を照射することにより記録層材料に光学的な変化を生じさせて情報の記録を行うことができ、かつ情報の書き換えが可能な相変化記録層を含む情報層を複数有する多層光記録媒体(以下、「多層相変化型情報記録媒体」、「多層相変化型光記録媒体」、「多層光ディスク」、「多層相変化型光ディスク」と称することもある)及び該多層光記録媒体の光記録方法に関する。
CD−RWなどの相変化型光ディスク(相変化型光記録媒体)は、一般的にプラスチック基板上に相変化材料からなる記録層を設け、その上に記録層の光吸収率を向上させ、かつ熱拡散効果を有する反射層を形成したものを基本構成とし、基板面側からレーザ光を照射して、情報の記録再生を行うものである。
相変化型記録材料は、レーザ光照射による加熱と、その後の冷却によって、結晶状態とアモルファス状態の間を相変化し、急速加熱後に急冷するとアモルファスとなり、徐冷すると結晶化するものである。相変化型光記録媒体は、この性質を情報の記録と再生に応用したものである。
更に、光照射による加熱によって起こる記録層の酸化、蒸散あるいは変形を阻止する目的で、通常、基板と記録層との間に下部保護層、及び記録層と反射層との間に上部保護層が設けられている。これらの保護層は、その厚みを調節することによって、光記録媒体の光学特性の調節機能を有するものであり、また下部保護層は、記録層への記録時の熱によって基板が軟化するのを防止する機能を併せ持つものである。
近年、コンピュータ等で扱う情報量が増加したことによって、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RWのような、書き換え型光ディスクの信号記録容量が増大し、信号情報の高密度化が進んでいる。現在のCDの記録容量は650MB程度で、DVDは4.7GB程度であるが、今後、更に高記録密度化の要求が高まることが予想される。また、情報量の増加に伴い、記録速度の向上も要求されると考えられる。現在、DVDの書き換え型ディスクとしては、単層で8倍速記録が可能なものが開発され、実用化されている。
このような相変化型光記録媒体を用いて高記録密度化する方法として、例えば使用するレーザ波長を青色領域まで短波長化すること、あるいは記録再生を行うピックアップに用いられる対物レンズの開口数NAを大きくして、光記録媒体に照射されるレーザ光のスポットサイズを小さくすることが提案され、研究、開発、更には実用化されるところまで来ている。
光記録媒体自体を改良して記録容量を高める方法として、基板の片面側に少なくとも記録層と反射層からなる情報層を二つ重ね、これらの情報層間を紫外線硬化樹脂等で接着して作製される2層相変化型光記録媒体が各種提案されている。この情報層間の接着部分である分離層(中間層と称することもある)は、2つの情報層を光学的に分離する機能を有するもので、記録再生に用いるレーザ光がなるべく多く奥側の情報層に到達する必要があるため、その光をなるべく吸収しないような材料から構成されている。
この2層相変化型光記録媒体については、未だ多くの課題が存在している。
例えば、レーザ光照射側から見て手前側にある情報層(第1情報層)をレーザ光が十分に透過しなければ、奥側にある情報層(第2情報層)の記録層に情報を記録しそれを再生できないために、第1情報層を構成する反射層は極薄な半透明反射層としなければならない。再生するためにはできるだけ高い反射率が必要であるが、記録層や反射層を2層以上有する光記録媒体では、その光吸収及び光透過が影響し、光記録媒体自体の反射率が低くなるという問題がある。
相変化型光記録媒体への記録は、記録層の相変化型材料にレーザ光を極短時間照射したのち急冷し、結晶をアモルファスに変化させてマークを形成することにより行われる。そのため、10nm程度の非常に薄い厚みの半透明反射層の場合、放熱効果が単層の光記録媒体と比較して極端に小さくなるので、第1情報層の記録層へ記録を行う際にアモルファスマークを形成することが困難になってしまう。その結果、変調度の確保が非常に行いにくいという問題もある。
また、特許文献1には、透明放熱層(光透過層と称することもある)に、AlN、Al、Si、SiO、Ta、TaO、ZrO、ZnO、TiO、SiC、及びこれらの複合材料から選択された材料を用い、透明誘電体層(保護層と称することもある)にZnS−SiOを用いた技術が開示されているが、Sn酸化物の特別な効果に関する記述は無い。
また、特許文献2には、熱拡散層(光透過層と称することもある)が酸化スズを主体とし、少なくとも酸化アンチモンを含む多層相変化型情報記録媒体が開示されているが、上部保護層と熱拡散層、又は下部保護層と上部保護層と熱拡散層がSnの酸化物で構成されているという記載は無い。また、405nmの青色レーザ波長領域での効果を謳っており、本発明とは異なる。
更に、特許文献3には、熱拡散層がITO(酸化インジウム−酸化スズ)を主体とし、Al及びGaの内の少なくとも1種を含む多層相変化型情報記録媒体が開示されているが、上部保護層と熱拡散層、又は下部保護層と上部保護層と熱拡散層がSn酸化物で構成されているという記載は無い。また、405nmの青色レーザ波長領域での効果を謳っているほか、ITOを熱拡散層に用いる特別な効果のみを記載しており、本発明とは構成が異なる。
特開2002−298433号公報 特開2004−47038号公報 特開2004−47034号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層中の反射層の厚みが極薄であっても充分な放熱効果が得られるようにし、変調度を高くして各情報層の記録性能を向上させると共に記録感度も向上させ、保存安定性にも優れ、更には、各情報層の光透過率を高く確保してレーザ光が照射される側から見て一番奥側の情報層の記録感度をも向上させた多層光記録媒体、及び該多層光記録媒体の光記録方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> レーザ光の照射によって情報を記録し得る相変化記録層と、反射層とを少なくとも含む複数の情報層を有し、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層が、少なくとも下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層、及び光透過層を有してなり、
レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層の上部保護層及び光透過層がSn酸化物を含有する材料からなり、かつレーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層の上部保護層の厚みが2〜15nmであることを特徴とする多層光記録媒体である。
<2> レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における上部保護層が、Sn酸化物を50〜90モル%含有する前記<1>に記載の多層光記録媒体である。
<3> レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における光透過層の厚みが、51〜250nmである前記<1>から<2>のいずれかに記載の多層光記録媒体である。
<4> レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における反射層がCuを含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の多層光記録媒体である。
<5> レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における反射層が、更にMo、Ta、Nb、Cr、Zr、Ni、Ge及びAuから選択される少なくとも1種の金属元素を5質量%以下の割合で含有する前記<4>に記載の多層光記録媒体である。
<6> レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における下部保護層が、Sn酸化物を含有する材料からなる前記<1>から<5>のいずれかに記載の多層光記録媒体である。
<7> レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における下部保護層が、2層構造からなり、該2層のうち少なくとも1層がSn酸化物を含有する材料からなる前記<1>から<6>のいずれかに記載の多層光記録媒体である。
<8> 多層光記録媒体が、レーザ光が照射される側から見て第1基板、第1情報層、中間層、第2情報層、及び第2基板をこの順に有してなり、
前記第1情報層が、レーザ光が照射される側から見て第1下部保護層、第1相変化記録層、第1上部保護層、第1反射層、及び光透過層をこの順に有し
前記第2情報層が、第2下部保護層、第2相変化記録層、第2上部保護層、及び第2反射層をこの順に有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の多層光記録媒体である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の多層光記録媒体の光記録方法であって、
レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における記録層に、記録パワーとバイアスパワーの2値で変調したパルスを繰り返し照射することで、長さnT(Tはクロック周期、nは2以上の整数である)の記録マークを形成する際に、先頭パルスと最終パルスの立ち上がりの間隔Trを、下記数式1の範囲に設定することを特徴とする多層光記録媒体への光記録方法である。
<数式1>
(n−1.5)T≦Tr≦(n−0.5)T
<10> レーザ光が照射される側から見て2番目以降の各情報層における記録層に記録する際には、照射パルスの個数をm(mは1以上の整数である)としたとき、nが偶数のときはn=2m、nが奇数のときはn=2m+1の関係を満たす前記<9>に記載の多層光記録媒体の光記録方法である。
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層中の反射層の厚みが極薄であっても充分な放熱効果が得られるようにし、変調度を高くして各情報層の記録性能を向上させると共に記録感度も向上させ、保存安定性にも優れ、更には、各情報層の光透過率を高く確保してレーザ光が照射される側から見て一番奥側の情報層の記録感度をも向上させた多層光記録媒体、及び該多層光記録媒体の光記録方法を提供することができる。
(多層光記録媒体)
本発明の多層光記録媒体は、レーザ光の照射によって情報を記録し得る相変化記録層及び反射層を少なくとも含む複数の情報層を有し、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層が少なくとも下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層、及び光透過層を有し、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
ここで、図1は、本発明の多層光記録媒体の一実施形態に係る2層型光記録媒体の概略断面図である。この2層型光記録媒体は、第1基板3の上に、第1情報層1、中間層4、第2情報層2、及び第2基板5をこの順に積層してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記第1情報層1は、第1下部保護層11、第1相変化記録層12、第1上部保護層13、第1反射層14、及び光透過層15を有している。
前記第2情報層2は、第2下部保護層21、第2相変化記録層22、第2上部保護層23、及び第2反射層24を有している。
なお、第1上部保護層13と第1反射層14との間、及び第2上部保護層23と第2反射層24との間の少なくともいずれかに界面層を設けても構わない。
前記2層型光記録媒体においては、レーザ光が照射される側から見て一番奥側の情報層が第2情報層となり、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の情報層が第1情報層となる。
前記2層型光記録媒体は、好ましくは以下のようにして製造される。即ち、成膜工程、初期化工程、密着工程からなる製造方法を採用し、基本的にこの順に各工程を行う。
前記成膜工程としては、第1基板のグルーブが設けられた面に第1情報層を、第2基板のグルーブが設けられた面に第2情報層をそれぞれ成膜する。
前記第1情報層及び第2情報層の各層は、各種気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等に優れている点から特に好ましい。前記スパッタリング法は、一般にアルゴンなどの不活性ガスを流しながら成膜を行うが、その際、酸素、窒素などを混入させながら反応スパッタリングさせてもよい。
前記初期化工程としては、第1情報層、及び第2情報層に対して、レーザ光などのエネルギー光を照射することにより全面を初期化(記録層を結晶化)させる。初期化工程の際にレーザ光エネルギーにより膜が浮いてきてしまう恐れのある場合には、初期化工程の前に、第1情報層、第2情報層の上にUV樹脂(紫外線硬化樹脂)などをスピンコートし、紫外線を照射して硬化させ、オーバーコートを施してもよい。また、次の密着工程を先に行った後に、第1基板側から第1情報層、第2情報層を初期化させても構わない。
前記密着工程としては、第1情報層と第2情報層とを向かい合わせながら、第1基板と第2基板とを中間層を介して貼り合わせる。例えば、何れか一方の膜面にUV樹脂を塗布し、膜面同士を向かい合わせて両基板を加圧、密着させ、紫外線を照射して樹脂を硬化させることができる。
以上のような情報層を2層有する2層型光記録媒体は、単層の光記録媒体に比べて層数が多く、特に記録層や反射層での光吸収が影響してしまうことから低反射率となる。低反射率であると、再生信号の振幅が取れず、基板の溝に沿ってレーザ光をフォーカスし続けることが非常に困難となる。
そこで、低反射率でも情報を再生できるか否かの指標として「反射率Itop×変調度M」の値(単位は%)を用いることにする。この値が大きいほど光記録媒体の記録性能がよい。
Itopを記録後の第1情報層の結晶質反射率、Ibotを記録後の第1情報層の非晶質反射率とすると、変調度M=(Itop−Ibot)/Itopで表される。
前記変調度Mは、0.55以上が好ましく、0.55〜0.70がより好ましい。前記変調度が0.55未満であると、再生信号の振幅が確保できていないので、単層の相変化型光記録媒体よりも反射率が約3分の1程度と低い多層相変化型光記録媒体では、品質の良い信号を読み取ることが困難となることがある。
ここで、前記光記録媒体の反射率は、例えば、光記録媒体用の評価機等により、媒体の反射強度を測定し、較正用の金属薄膜(例としてAgなど)の反射率と反射強度を用いて、反射強度を反射率に較正することにより測定することができる。
また、初期化後の第1情報層の光透過率は、30〜60%が好ましく、40〜45%がより好ましい。前記光透過率が30%未満であると、レーザ光照射側から見て奥側の情報層にレーザ光が透過しづらくなり、また奥側の反射率が下がるため、奥側の情報層の安定した記録再生を行うことが困難となることがあり、60%を超えると、光透過率が高すぎてしまうため、第1情報層における情報の記録に必要なレーザ強度が高くなるし、第1情報層の反射率が低くなるため、安定した情報の記録再生を行うことが困難となることがある。
ここで、前記第1情報層の光透過率は、例えば貼り合わせる前の第1情報層をSteag社製のエタオプティクスにより測定することができる。
本発明に用いる記録層材料としては、Sb含有量が70%前後のものが好ましい。2層の記録層を有する光記録媒体では、第1情報層は、第2情報層の記録及び再生のことを考慮すると透過率が高いことが要求され、そのために反射層の吸収率を少なくする取り組みと並行して記録層を薄膜化することが要求される。記録層を薄くしていくと結晶化速度が低下するのは公知であり、記録層材料自体を結晶化速度の速いものにすることが有利である。そのため、Sb含有量が70%前後のSbTe共晶組成が好ましい。具体例としては、Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Ge−In−Sb−Te、Ag−Ge−In−Sb−Te、Ge−Sn−Sb−Teなどが挙げられる。これら以外の相変化型記録材料としては、Ge−Te、In−Sb、Ga−Sb、Ge−Sb、In−Sb−Geなども用いることができる。
前記第1相変化記録層の厚みは、5〜10nmが好ましい。また、第2相変化記録層の厚みは10〜20nmの範囲が好ましい。
前記相変化記録層の成膜方法としては、各種の気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが挙げられる。中でも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。
このような相変化記録層を含んだ情報層への記録を行い易くするには、非晶質マークを形成するために照射された光によって生じた余熱が速やかに放熱される必要がある。
しかし、第1反射層の厚みは、第1情報層の光透過性の関係で10nm程度よりも厚くすることができないため放熱性が悪く、第1記録層への記録が行いにくい。特に変調度が高くとれない。そこで、放熱性を高めるため第1上部保護層及び光透過層に熱伝導性のよい透明材料を用いる。
即ち、第1情報層(レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の情報層に相当)の第1上部保護層と光透過層をSn酸化物を含有する層で構成することにより、第1情報層の記録感度を高めることができ、比較的低い記録パワーでも変調度を高く取ることができる。また、従来の単層の書き換え型光記録媒体では上部保護層にZnS−SiOが主に用いられているが、2層の情報層を有する書き換え型光記録媒体では、レーザ光が照射される側から見て手前側の情報層の上部保護層にZnS−SiOを用いると保存安定性が確保できないという課題がある。
しかし、本発明によれば、上記のような2層の情報層を有する光記録媒体にける新たな課題を解決することができる。更に第1情報層の光透過率を高めることができるため、奥側の情報層へ光が透過し易くなり、第2情報層の記録感度も高めることができる。
また、前記第1上部保護層は、Sn酸化物を50モル%以上含有していることが好ましい。前記含有量が50モル%よりも少ないと、第1記録層において充分な結晶化速度が得にくくなり、第1情報層における10m/s程度の高線速の繰り返し記録が難しくなるため、繰り返し10回記録したときのジッタ(DOW10ジッタ)も悪化する(後述する図8参照)。更に、優れた保存安定性を得易くするためには、Sn酸化物の含有量を90モル%以下とすることが好ましい(後述する図11参照)。即ち、図8と図11から分かるように、DOW10ジッタ10%以下の記録特性とDOW10ジッタ変化量1%未満の保存特性を両立させるには、Sn酸化物の含有量を50〜90モル%とすることが好ましく、50〜70モル%がより好ましい。
ここで、図8に示す「転移線速」とは、初期化処理により結晶状態となっているトラックに記録媒体の線速を変化させて連続光(パワーは15mWとした)を照射したときの、反射率が変化し始める線速を言う。図9の例(実施例2で用いた層構成の媒体で実験した例)では、転移線速は矢印で示すように15m/sである。転移線速は、記録層の結晶化速度を代用した値であり、目的の記録速度を達成するための重要な設計事項である。
前述したように、特開2002−298433号公報には、透明放熱層(光透過層)に、AlN、Al、Si、SiO、Ta、TaO、ZrO、ZnO、TiO、SiC、及びこれらの複合材料から選択された材料を用いる旨の記載がある。しかし、何れの場合も変調度が取り難いためItop×M値が低い。また、透過率を確保しにくいという問題もある。
本発明では、光透過層にSn酸化物を含有する誘電体材料を用いることにより、変調度を高くでき、かつ光透過率を高く確保することができる。Sn酸化物の他にIn、ZnO、Ta、SiOなどを添加してもよい。
前記光透過層の厚みは、Sn酸化物を第1下部保護層、第1上部保護層、光透過層に用いる場合、51〜250nmが好ましく、55〜70nmがより好ましい。前記厚みが51nm未満であると、充分な放熱効果が得られず記録が困難となることがあり、250nmを超えると、充分な放熱効果は得られるが光透過率が下がり、第2情報層への記録感度が悪くなることがある。前記光透過層の厚みを上記の範囲に設定すると、光透過率を40〜60%とすることができる。特開2002−298433号公報には、透明放熱層(本発明の光透過層に相当)として前述したような材料を用いた場合の厚みは50nm以下が好ましいとの記載があるが、このような薄い層では放熱性が不充分である。
なお、前記第2上部保護層については、Sn酸化物を用いてもよいが、従来どおりZnS−SiOを用いてもよい。第2相変化記録層に記録する場合は、第2反射層を充分厚くでき、充分な放熱性が得られるためZnS−SiOでも構わない。ただし、第2上部保護層にZnS−SiOを用い、かつ第2反射層にAgを用いる場合は、それらの間にTiC(70モル%)−TiO(30モル%)などからなる界面層を挟むことが好ましい。これは、AgとSが反応して媒体の信頼性を阻害するのを防ぐためである。
前記第2上部保護層の厚みは、3〜30nmが好ましく、15〜30nmがより好ましい。
前記第1下部保護層は、透明で光をよく通し、かつ融点が記録層よりも高い材料からなるものが好ましく、記録層の劣化変質を防ぎ、記録層との接着強度を高め、かつ記録特性を高めるなどの作用を有する金属酸化物、窒化物、硫化物、炭化物などが主に用いられる。
具体例としては、SiO、SiO、ZnO、SnO、Al、TiO、In、MgO、ZrOなどの金属酸化物、Si、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物、ZnS、In、TaSなどの硫化物、SiC、TaC、BC、WC、TiC、ZrCなどの炭化物、ダイヤモンド状カーボン、或いは、それらの混合物が挙げられる。これらの材料は単体で用いても互いの混合物として用いてもよい。また、必要に応じて不純物を含んでもよい。
従来の第1情報層の下部保護層としては、特開2002−298433号公報などに開示されているように、ZnS−SiOがよく用いられているが、その場合の混合比は、ZnS(80モル%)−SiO(20モル%)が好ましい。この材料は、屈折率nが高く消衰係数kがほぼゼロであることから、記録層の光の吸収効率を上げることができ、かつ、熱伝導率が小さいことから光吸収により発生した熱の拡散を適度に抑えることができるため、記録層を溶融可能な温度まで昇温することができる。
しかし、本発明では、第1上部保護層と光透過層だけでなく、第1下部保護層もSn酸化物とすることによって記録感度を高めることもできる。また、第1下部保護層は2層の構造にしてもよい。この場合、2層のうち少なくとも1層はSn酸化物を主成分とする材料から形成するのが好ましい。
前記第1下部保護層の厚みは、40〜80nmが好ましく、60〜80nmがより好ましい。
また、前記第1上部保護層の厚みは、2〜30nmが好ましく、記録特性だけでなく優れた保存安定性も得るためには、2〜15nmとするのがより好ましい。前記厚みが30nmよりも厚いと、優れた保存安定性が得られないことがあり(後述する図10参照)、2nmよりも薄いと、保存安定性は得られるが、反射率が高くなり変調度を確保できなくなるという不具合が生じることがある(後述する図17参照)。
前記第1情報層の光透過層、第1上部保護層、第1下部保護層にSn酸化物を用いた場合と用いない場合の記録特性については、後述する実施例の図6、及び図7の結果から確認することができる。
前記第2下部保護層は、透明で光をよく通し、かつ融点が記録層よりも高い材料からなるものが好ましく、記録層の劣化変質を防ぎ、記録層との接着強度を高め、かつ記録特性を高めるなどの作用を有するもので、金属酸化物、窒化物、硫化物、炭化物などが主に用いられる。具体例としては、SiO、SiO、ZnO、SnO、Al、TiO、In、MgO、ZrOなどの金属酸化物、Si、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物、ZnS、In、TaSなどの硫化物、SiC、TaC、BC、WC、TiC、ZrCなどの炭化物、ダイヤモンド状カーボン、或いはそれらの混合物が挙げられる。これらの材料は単体で保護膜とすることもできるが、互いの混合物としてもよい。更に必要に応じて不純物を含んでもよい。
前記混合物としては、例えば、ZnSとSiOを混合したZnS−SiO、TaとSiOを混合したTa−SiOが挙げられる。特にZnS−SiOがよく用いられるが、その場合の混合比(モル比)は(ZnS)80(SiO20が最も好ましい。この材料は、屈折率nが高く消衰係数kがほぼ0(ゼロ)であり、記録層の光の吸収効率を上げることができ、かつ、熱伝導率が小さいため光吸収により発生した熱の拡散を適度に抑えることができるため、記録層を溶融可能な温度まで昇温することができる。
前記第2下部保護層の厚みは、110〜160nmが好ましい。
以上のような保護層の成膜法としては、各種の気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが挙げられる。これらの中でも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている点から特に好ましい。
更に、前記第1反射層がCuを主成分として含有することによって、第1情報層の透過率や第1記録層での記録特性及び保存特性を良好とすることが可能となる。ここで、前記第1反射層がCuを主成分として含有するとは、Cuを95質量%以上含有することを意味する。
ここで、主にCuで構成された第1反射層が好適である理由を以下に述べる。
図1のような、記録層を2層有する相変化型光記録媒体では、記録再生用のレーザ光ができるだけ第1情報層を透過し、第2情報層に到達することが必要である。したがって、第1反射層を考えた場合に考慮されるべき事項として、第1反射層において光が吸収されにくくかつ透過し易い材料が好ましい。
そこで本発明者らは、各種の反射層膜について波長660nmにおける光学的な測定を行った。ここではA(吸収率)、R(反射率)、T(透過率)のデータを測定した。測定用サンプルは、厚み0.6mmのポリカーボネート基板上に各金属を厚み10nm成膜したものを用いた。
その結果は図2のようになった。この結果からPt、Pd、Tiは透過率が低く、吸収率が高いことから、第1反射層としては好ましくないことが予想される。
次に、透過率が比較的高く吸収率が比較的低いAg、Cuについて厚みを変化させて調査したところ、図3及び図4のような結果が得られ、Agの方が厚みによる変化が大きいことが分かった。これにより、成膜されたときの厚みに対する光学定数の安定性はCuの方が優れていることが分かる。また、DVD媒体で使用されている波長660nmのレーザ光について、Ag、Cu、Auを用いた場合の3TのC/N(キャリアーとノイズの比率)を測定したところ、Cuが最も優れていることが分かった。
更に、厚みが8nmの場合の分光透過率の測定結果を図5に示すが、450nm程度の波長域でAgとCuの透過率が交差していることが分かる。これにより、450nm程度よりも長い波長領域ではCuの方が透過率が高く、660nm付近でのレーザ光に対しては、第1反射層としてCuを用いた方が好適であることが分かる。
また、更に保存特性を良好とするために、Cuに5.0質量%以下の微量な金属元素を添加した第1反射層としてもよい。該微量な金属元素としては、Mo、Ta、Nb、Cr、Zr、Ni、Ge、及びAuから選択される少なくとも1種が好ましい。この場合、Cu単独のときと比べて記録特性を劣化させずに、保存特性も良好とすることができる。
Ta、Nbは、酸素及び窒素との親和力が強い金属であり、酸素及び窒素のゲッター材として使われることがある。元々、金属層の劣化は化学的には酸化であることが多く、特にCuの場合、緑青として知られる反応物は酸化物である。その点からTa、Nbに関してはCuの劣化に対して効果がある。
次に、Mo、Zr、Cr、Ni、Ge、Auに関しては、これらの金属を添加すると、再結晶化の際に膜表面や銅の結晶粒界にCuとの合金が析出し、Cuの粒界拡散を抑制するので、Cuのマイグレーションが阻止され、劣化が防止される。
前記第1反射層の厚みは、6〜12nmの範囲にあることが好ましい。
前記第2反射層は、第1反射層のように半透明である必要は無く、金属材料であれば特に制限なく用いることができる。前記第2反射層の厚みは100〜200nmの範囲にあることが好ましく、120〜150nmがより好ましい。
以上のような反射層の成膜法としては、各種の気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが挙げられる。中でも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。
前記第1基板は、記録再生用の照射光を十分透過するものであることが必要であり、当該技術分野において従来知られているものが適用される。材料としては、通常、ガラス、セラミックス又は樹脂等が用いられるが、特に樹脂が成形性、コストの点で好適である。
樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、成形性、光学特性、コストの点で優れるポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂が特に好ましい。
前記第1基板上の情報層を形成する面には、必要に応じて、レーザ光のトラッキング用のスパイラル状又は同心円状の溝などであって、通常グルーブ部及びランド部と称される凹凸パターンが形成されていてもよく、これは通常、射出成形法又はフォトポリマー法などによって成形される。前記第1基板の厚みは、10〜600μmが好ましく、550〜590μmがより好ましい。
前記第2基板の材料としては、第1基板と同様の材料を用いてもよいが、記録再生光に対して不透明な材料を用いてもよく、第1基板とは材質や溝形状が異なってもよい。
前記第2基板の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1基板の厚みとの合計が1.2mmになるように第2基板の厚みを選択することが好ましい。
前記中間層は、記録再生を行うために照射する光の波長における光吸収が小さいことが好ましく、材料としては成形性やコストの点で樹脂が好適であり、紫外線硬化性樹脂、遅効性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
前記第2基板や中間層には、第1基板と同様な、射出成形法又はフォトポリマー法などによって成形されるグルーブ、案内溝などの凹凸パターンが形成されていてもよい。
前記中間層は、記録再生を行う際に、ピックアップが第1情報層と第2情報層とを識別して光学的に分離可能とするものであり、その厚みは10〜70μmが好ましく、30〜60μmがより好ましい。前記厚みが10μmよりも薄いと、情報層間クロストークが生じることがあり、70μmより厚いと、第2記録層を記録再生するときに球面収差が発生し、記録再生が困難になる傾向がある。
(多層光記録媒体への光記録方法)
本発明の多層光記録媒体への光記録方法は、本発明の前記多層光記録媒体に対する光記録方法であって、
レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における記録層に、記録パワーとバイアスパワーの2値で変調したパルスを繰り返し照射することで、長さnT(Tはクロック周期、nは2以上の整数である)の記録マークを形成する際に、先頭パルスと最終パルスの立ち上がりの間隔Trを、下記数式1の範囲に設定する。
<数式1>
(n−1.5)T≦Tr≦(n−0.5)T
この場合、レーザ光が照射される側から見て2番目以降の各情報層における記録層に記録する際には、照射パルスの個数をm(mは1以上の整数である)としたとき、nが偶数のときはn=2m、nが奇数のときはn=2m+1の関係を満たすことが好ましい。
本発明の多層光記録媒体に対して記録を行うに際し、本発明の光記録方法を採用することにより、多層光記録媒体のレーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の記録層の記録特性を良好とすることができる。
図12に示すように、DVD+RWのような従来の単層型の書き換え型光記録媒体では、例えば1T周期ストラテジ(nTのマークを記録する際にn−1個のパルス列を用いる)を用いる場合、データに対して1Tだけ遅れた時間位置から記録し始める記録方法が主な方法であった(図12のA参照)。しかしながら、相変化記録層を2層以上有する多層光記録媒体の光照射側から見て一番奥側以外の記録層に対する記録方法としては、図12のBやCのように、長さnTのマークを形成する際に先頭パルスと最終パルスの立ち上がり時間幅Trを広くする記録方法を用いた方がよい。
何故ならば、多層光記録媒体の光照射側から見て一番奥側以外の情報層では、透過率を高く確保する必要があるため厚い金属層を成膜することができず、透明誘電体を用いることにより放熱効果を補っているからである。金属層を厚くすれば充分な放熱性が得られ記録マークが形成され易いが、透明誘電体を用いると熱伝導率が金属よりも下がるため充分な放熱効果が得られず非晶質マークの再結晶化が起こり易い。そのため、Trを広く設定することによって所望のマーク長を得ることを狙っている。
本発明の光記録方法では、図12のBのように先頭パルスを時間的に早く立ち上がらせて最終パルスを時間的に遅く立ち上がらせる方法でもよいし、図12のCのように先頭パルスのみを早く立ち上がらせる方法でもよい。
Trの値の範囲は、(n−1.5)T≦Tr≦(n−0.5)Tとするのがよい。例えば8Tマークを記録する場合は、6.5T≦Tr≦7.5Tを満たすTrを用いる。
更に、非晶質マークの形成領域をできるだけ大きく(太く)するため、加熱後の冷却時間を長く取る必要がある。したがって記録パルスの幅Tmpはできるだけ小さくすることが好ましい。クロック周期をTとした場合、記録速度に関係なく、0.12≦(Tmp/記録パルスの周期)≦0.3とするのがよい。
(Tmp/記録パルスの周期)を0.12よりも短くすると高い記録パワーを必要とし、特に、記録速度が9.2m/s程度に速い場合は、1T周期で記録する場合、クロック周期T=15.9nsecであるためTmp=0.12T=1.9nsecとなり、記録装置においてLD(レーザダイオード)から出射されるレーザの応答時間(立ち上がり及び立下り時間)が間に合わず、所望の記録パワーで記録することが困難となる。また、(Tmp/記録パルスの周期)を0.3よりも長くすると冷却時間が足りないために次のパルスの余熱によって再結晶化が生じ、所望の変調度が確保できなくなる不具合が生じる。
一般的には、上記Trの範囲を保ちつつ、図13に示すような記録パルスストラテジのパラメータを用いることが好ましいが、これに限られる訳ではない。例えばDVDでは、3Tマーク及び4Tマークは、他の長いマークに比べて出現個数が多いため、最も記録特性(ジッタ)に影響を及ぼす。そのため、3Tマーク及び4Tマークの記録に限っては、(dTtop3)、(dTtop4)、(dTlp3)、(dTlp4)、(dTera3)、(dTera4)のようなパラメータを個別に設定することも可能である。
更に、本発明の光記録方法により、記録感度を良好とすることができる。
多層光記録媒体の2層目以降では、レーザ光が1層目を透過しなければならないため、単層の光記録媒体と比較した場合、約2倍以上の記録パワーが必要となる。そのため、できるだけ必要な記録パワーを低くした方が都合がよい。図12のような1T周期のパルスを照射するよりも、パルスの個数を減らすことにより冷却時間を長く確保することができるため、アモルファスマークを形成するのに必要な記録パワーを約10%程度低くすることができる(図14及び図15参照)。
図14及び図15は、実施例35で作製した2層光記録媒体の第2記録層に、記録線速9.2m/sで10回繰り返し記録(DOW10)を行った時のデータである。1T周期ストラテジで記録するときにはパルス幅を0.45Tとし、2T周期ストラテジで記録するときにはパルス幅を0.8Tとした。長さnTのアモルファスマークを形成する際に、照射パルスの個数をm(mは1以上の整数である)としたとき、nが偶数のときはn=2m、nが奇数のときはn=2m+1の関係を満たす場合の具体的な2T周期ストラテジの例を図16に示した。図では、長さ10Tのマークを記録する際のパルスの個数及び長さ11のTマークを記録する際のパルスの個数が何れも5個であることを示している。なお、11Tマークなどのような奇数マークの場合には、図示したように最終パルスを約1T分だけ後方にずらした波形を用いるとよい。
本発明によれば、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層中の反射層の厚みが極薄であっても充分な放熱効果が得られるようにし、変調度を高くして各情報層の記録性能を向上させると共に記録感度も向上させ、保存安定性にも優れ、更には各情報層の光透過率を高く確保してレーザ光が照射される側から見て一番奥側の情報層の記録感度をも向上させた多層光記録媒体、及び該多層光記録媒体への光記録方法を提供できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例で作製した2層相変化型光記録媒体は、図1に示すような層構成(ただし、第2反射層と第2上部保護層の間に界面層を有する)であった。
下記実施例及び比較例において、光記録媒体の反射率は、光記録媒体用の評価機を用いて、光記録媒体の反射強度を測定し、較正用の金属薄膜(Ag)の反射率と反射強度を用いて、反射強度を反射率に較正することにより測定した。
また、初期化後の第1情報層の光透過率は、貼り合わせる前の第1情報層をSteag社製のエタオプティクスにより測定した。
成膜には、スパッタ装置として、ユナクシス社製のDVD sprinterを用い、DC及びRFマグネトロンスパッタリング法を採用した。
評価装置としてはパルステック株式会社製のODU−1000を用い、記録時に照射するレーザ波長660nm、対物レンズの開口数NA=0.65、再生光パワー1.2mWとした。なお、記録ストラテジは1T周期ストラテジとした。用いたストラテジを、図13に示したパラメータで表現すると表1のようになる。表中の数値は[1/16]Tを単位とする時間を示し、例えば「3」は[3/16]Tを意味する。また、数値の前の「−」は基準位置から時間的に遅らせていることを意味する。
(実施例1〜21及び比較例1〜5)
第1記録層へ記録を行う際の記録線速は9.2m/sとした。3トラックに繰り返し10回(DOW10)のランダム記録を行い、その真ん中のトラックを再生した。ランダム記録とは、3T〜11T及び14Tの10種類のマークとスペースを不規則に記録することを意味する。
評価基準は、第1情報層の光透過率が40%以上で、かつ変調度が飽和する記録パワーを最適記録パワーPpo[mW]とし、Ppoで第1情報層に記録したときの変調度をM(DOW10)、記録後の結晶質反射率をItop(DOW10)として、「M≧0.55でItop×M≧4.0%」のときを「○」とし、「M≧0.55で4.0%>Itop×M≧3.5%」のときを「△」とし、それ以外を「×」とした。これらの評価結果を纏めて表2に示した。
(実施例1)
直径12cm、厚み0.58mmで、片面にトラックピッチ0.74μmの連続溝によるトラッキングガイドの凹凸を持つポリカーボネート樹脂からなる第1基板上に、ZnS(80モル%)−SiO(20モル%)からなる厚み60nmの第1下部保護層、Ag0.2In3.5Sb69.2Te21.1Geからなる厚み7.6nmの第1記録層、In(7.5モル%)−ZnO(22.5モル%)−SnO(60モル%)−Ta(10モル%)からなる厚み5nmの第1上部保護層、CuにMoを1.1質量%添加した材料からなる厚み8nmの第1反射層、In(7.5モル%)−ZnO(22.5モル%)−SnO(60モル%)−Ta(10モル%)からなる厚み80nmの光透過層を順に、Arガス雰囲気中のスパッタリング法で成膜し、第1情報層を作製した。
第1基板と同様の基板を第2基板とし、その上に、Agからなる厚み140nmの第2反射層、TiC(70モル%)−TiO(30モル%)からなる厚み4nmの界面層、ZnS(80モル%)−SiO(20モル%)からなる厚み20nmの第2上部保護層、Ag0.2In4.98Sb68.61Te23.95Ge2.26からなる厚み15nmの第2記録層、ZnS(80モル%)−SiO(20モル%)からなる厚み140nmの第2下部保護層を順に、Arガス雰囲気中のスパッタリング法で成膜し、第2情報層を作製した。
次に、第1情報層の膜面側上に紫外線硬化樹脂(日本化薬株式会社製、カヤラッドDVD802)を塗布し、第2基板の第2情報層面側を貼り合わせてスピンコートしたのち、第1基板側から紫外線を照射して硬化させて中間層とし、2つの情報層を有する2層相変化型光記録媒体を作製した。中間層の厚みは55μmとした。
次に、第1情報層、第2情報層に対して、第1基板側からレーザ光を照射し初期化処理を行った。初期化は、半導体レーザ(発光波長810±10nm)から出射されるレーザ光を、光ピックアップ(開口数NA=0.55)で集光することにより行った。第1記録層の初期化条件は、CLV(線速度一定)モードにより光記録媒体を回転させ、線速6.8m/s、送り量68μm/回転、初期化パワー1300mWとし、半径位置23〜59mmを全面初期化した。第2記録層の初期化条件は、CLV(線速度一定)モードにより光記録媒体を回転させ、線速7m/s、送り量60μm/回転、初期化パワー1570mWとし、半径位置23〜59mmを全面初期化した。初期化の順番は、第2情報層を初期化してから第1情報層を初期化した。初期化後の第1情報層の光透過率は43.2%であった。
(実施例2)
実施例1において、第1情報層の光透過層の厚みを60nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は43.8%であった。
(実施例3)
実施例1において、第1情報層の光透過層の厚みを51nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は41.8%であった。
(実施例4)
実施例1において、第1情報層の光透過層の厚みを240nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は41.7%であった。
(実施例5)
実施例1において、第1情報層の光透過層の厚みを250nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は40.7%であった。
(実施例6)
実施例1において、第1情報層の第1下部保護層材料をIn(7.5モル%)−ZnO(22.5モル%)−SnO(60モル%)−Ta(10モル%)に変え、その厚みを80nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は43.1%であった。
(実施例7)
実施例1において、第1情報層の第1下部保護層を、基板側から厚み60nmのIn(7.5モル%)−ZnO(22.5モル%)−SnO(60モル%)−Ta(10モル%)、厚み20nmのZnS(80モル%)−SiO(20モル%)の順番に積層した2層構造とした以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は42.8%であった。
(実施例8)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(16モル%)−ZnO(14モル%)−SnO(70モル%)に変え、その厚みを60nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は43.1%であった。
(実施例9)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(16モル%)−ZnO(14モル%)−SnO(70モル%)に変え、その厚みを65nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は42.9%であった。
(実施例10)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(16モル%)−ZnO(14モル%)−SnO(70モル%)に変え、その厚みを70nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は42.7%であった。
(実施例11)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(8.8モル%)−ZnO(41.7モル%)−SnO(35.2モル%)−SiO(14.3モル%)に変え、その厚みを60nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は44.2%であった。
(実施例12)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(8.8モル%)−ZnO(41.7モル%)−SnO(35.2モル%)−SiO(14.3モル%)に変え、その厚みを65nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は44.5%であった。
(実施例13)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(12モル%)−ZnO(80モル%)−SnO(8モル%)に変え、その厚みを60nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は44.7%であった。
(実施例14)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(12モル%)−ZnO(80モル%)−SnO(8モル%)に変え、その厚みを65nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は44.4%であった。
(比較例1)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をTaに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は39.5%であった。
(比較例2)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をTaに変え、その厚みを50nmにした以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は37.5%であった。
(比較例3)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をAlに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は39.2%であった。
(比較例4)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をAlに変え、その厚みを50nmにした以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は37.2%であった。
(実施例15)
実施例1において、第1情報層の光透過層の厚みを40nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は40.5%であった。
(実施例16)
実施例1において、第1情報層の光透過層の厚みを260nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は40.1%であった。
(比較例5)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(90モル%)−ZnO(10モル%)に変え、その厚みを60nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は39.1%であった。
(実施例17)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(8.8モル%)−ZnO(41.7モル%)−SnO(35.2モル%)−SiO(14.3モル%)に変え、その厚みを45nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は43%であった。
(実施例18)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(8.8モル%)−ZnO(41.7モル%)−SnO(35.2モル%)−SiO(14.3モル%)に変え、その厚みを50nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は43.3%であった。
(実施例19)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(12モル%)−ZnO(80モル%)−SnO(8モル%)に変え、その厚みを45nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は43.5%であった。
(実施例20)
実施例において、第1情報層の光透過層材料をIn(12モル%)−ZnO(80モル%)−SnO(8モル%)に変え、その厚みを50nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は43.8%であった。
(実施例21)
実施例1において、第1情報層の光透過層材料をIn(16モル%)−ZnO(14モル%)−SnO(70モル%)に変え、その厚みを50nmに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。第1情報層の初期化後の光透過率は42.7%であった。
上記実施例2、3、6、7及び比較例5について、記録パワー(ピークパワーPp)を変化させたときの変調度M(DOW10)及び繰り返し10回記録後(DOW10)の「Itop×M(%)」を図6及び図7に示す。
比較例5のように、第1情報層の光透過層にSn酸化物を用いず、In(90モル%)−ZnO(10モル%)を用いた場合には、第1情報層に記録速度9.2m/sで記録を行ったところ、図6に示すような低い変調度カーブとなった。記録パワーを上げて行くと、0.6未満で変調度が飽和してしまい、図7に示すように、「Itop×M」の記録性能は4%程度までは高められたが、透過率が取れなくなった。
これに対し、実施例2及び3のように、第1上部保護層及び光透過層をSn酸化物を主成分とする材料にすると、変調度を高めることができた。
また、実施例6のように、第1下部保護層もSn酸化物を主成分とする材料にすると、低パワーで同等の変調度を確保でき記録感度が高まった。更に、実施例7のように、第1下部保護層が2層であっても、その効果を維持することができた。
表2に示すように、本発明によれば、第1情報層の最適な記録パワーPpo[mW]を低くできるし、光透過率を高くできることにより第2情報層の記録パワーも低くすることができるので、記録装置側のレーザ出力用の消費電力を下げることができた。
(実施例22〜35)
実施例1及び各実施例の2層相変化光記録媒体について保存特性を評価した。
第1記録層へ記録を行う際の記録線速は9.2m/sとした。記録は3トラックに繰り返し10回(DOW10)のランダム記録を行い、その内、真ん中のトラックを再生することで評価した。記録方法は1T周期記録ストラテジを用い、特性評価の判断基準は、3T〜11T及び14Tのマークとスペースをランダムに記録したときのジッタとした。ここで、ジッタとは、マークとスペースの反射率レベルをスライスレベルで2値化したとき、その境界とクロックとの時間的なずれをウィンドウ幅で規格化して表したものである。
保存特性の判断基準は、温度80℃、85%RHの環境下、100時間保存後のDOW10ジッタ変化量(上昇量)が1%以下のときを合格、1%を超えたときを不合格とした。これらの評価結果を纏めて表3に示す。
(実施例22)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をTa(2.0質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例23)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をNb(1.0質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例24)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をCr(0.6質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例25)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をZr(1.0質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例26)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をNi(0.7質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例27)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をGe(0.8質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例28)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をZr(0.3質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例29)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をGe(0.2質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例30)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をAu(2.2質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例31)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をMo(4.0質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例32)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をMo(5.0質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例33)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素を無くした以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例34)
実施例1において、第1情報層の第1反射層の添加元素をMo(5.5質量%)に変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。
(実施例35)
実施例1において、第1情報層の第1反射層をAgに変えた以外は、実施例1と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製した。この実施例35のように反射層をAgとしてもよいが、Cuを主成分とした反射層の方が保存特性に対してより効果的である。
(実施例36)
実施例2において、第1上部保護層材料をIn(7.5モル%)−ZnO(22.5モル%)−SnO(60モル%)−SiO(10モル%)に変えた以外は、実施例2と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製し、評価した。
第1情報層の第1記録層に10回繰り返して記録した結果、ジッタは6.9%となり、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存後のジッタの変化量は0.1%であった。
(実施例37)
実施例36において、第1上部保護層材料をIn(7.5モル%)−ZnO(22.5モル%)−SnO(70モル%)に変えた以外は、実施例36と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製し、評価した。
第1情報層の第1記録層に10回繰り返して記録した結果、ジッタは7.5%となり、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存後のジッタの変化量は0.1%であった。
(実施例38)
実施例36において、第1上部保護層材料をSnO(80モル%)−Ta(20モル%)に変えた以外は、実施例36と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製し、評価した。
第1情報層の第1記録層に10回繰り返して記録した結果、ジッタは9%となり、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存後のジッタの変化量は0.3%であった。
(実施例39)
実施例36において、第1上部保護層材料をSnO(90モル%)−Ta(10モル%)に変えた以外は、実施例36と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製し、評価した。
第1情報層の第1記録層に10回繰り返して記録した結果、ジッタは10%となり、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存後のジッタの変化量は0.8%であった。
(実施例40)
実施例36において、第1上部保護層材料をSnO(95モル%)−Ta(5モル%)に変えた以外は、実施例36と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製し、評価した。
第1情報層の第1記録層に10回繰り返して記録した結果、ジッタは10%となり、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存後のジッタの変化量は1.1%であった。
(実施例41)
実施例36において、第1上部保護層材料をIn(9.2モル%)−ZnO(27.5モル%)−SnO(53.3モル%)−Ta(10モル%)に変えた以外は、実施例36と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製し評価した。
第1情報層の第1記録層に10回繰り返して記録した結果、ジッタは7.5%となり、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存後のジッタの変化量は0.2%であった。
(実施例42)
実施例36において、第1上部保護層材料をIn(7.5モル%)−ZnO(22.5モル%)−SnO(50モル%)−Ta(20モル%)に変えた以外は、実施例36と同様にして2層相変化光記録媒体を作製し、評価した。
第1情報層の第1記録層に10回繰り返して記録した結果、ジッタは10%となり、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存後のジッタの変化量は0.1%であった。
(実施例43)
実施例36において、第1上部保護層材料をIn(7.5モル%)−ZnO(22.5モル%)−SnO(45モル%)−Ta(25モル%)に変えた以外は、実施例36と同様にして、2層相変化光記録媒体を作製し、評価した。
第1情報層の第1記録層に10回繰り返して記録した結果、ジッタは18.3%となり、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存後のジッタの変化量は0.3%であった。
実施例43は、実施例42に比べて繰り返し記録のジッタがかなり悪くなったように、SnO含有量が50%を下回ると、優れた保存安定性は確保できるが10m/s程度の繰り返し記録を行うことが容易でなくなる。これは、図8で示すように、転移線速が遅くなり、繰り返し記録時にアモルファスマークを完全に消去することが難しくなっているためであると考えられる。
<評価>
各実施例36〜43について、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存した場合のDOW10ジッタ変化量を、実施例22と同様にして評価した。結果を纏めて図11に示す。また、実施例36、41、42及び43について、転移線速とDOW10ジッタの測定結果を纏めて図8に示す。
(実施例44〜46及び比較例6〜13)
第1上部保護層の厚みを、0nm(比較例6)、2nm(実施例44)、10nm(実施例45)、15nm(実施例46)、20nm(比較例7)、25nm(比較例8)、30nm(比較例9)とした以外は、実施例2と同様にして2層相変化光記録媒体を作製した。
また、第1上部保護層材料をZnS(80モル%)−SiO(20モル%)に変え、厚みを5nm(比較例10)、10nm(比較例11)、15nm(比較例12)、20nm(比較例13)とした点以外は、実施例2と同様にして2層相変化光記録媒体を作製した。
これらの光記録媒体について、実施例22と同様にしてDOW10ジッタ変化量を評価した。結果を実施例2(厚み5nm)の場合と共に纏めて図10に示す。
図から分かるように、ZnS−SiOを用いた比較例では、何れもDOW10ジッタ変化量が3%以上であるのに対し、Sn酸化物を含有し、厚みが15nm以下の場合には、DOW10ジッタ変化量の非常に小さい光記録媒体が得られた。
一方、上記SnOを用いた各光記録媒体及び比較例6の光記録媒体について、変調度M(DOW10)を測定した結果を図17に示すが、図から分かるように、比較例6では60%以上の変調度Mを確保できない。
従って、図10と図17の結果を併せると、第1上部保護層の厚みは2〜15nmの範囲とする必要があることが分かった。
(実施例47〜51及び比較例14〜15)
実施例36で作製した2層相変化光記録媒体を用いて評価を行った。Trの値を変化させ、記録線速9.2m/sで、10回繰り返し記録(DOW10)後、100回繰り返し記録(DOW100)後、500回繰り返し記録(DOW500)後のジッタをそれぞれ測定した。評価基準はジッタ11%以下を合格とした。
結果を表4に示すが、Trを(n−1.5)Tよりも短く設定すると所望のアモルファスマーク長よりも短いマークが形成されるためジッタが悪化した。Trを(n−0.5)Tよりも長くすると所望のアモルファスマーク長よりも長いマークが形成され、それを調整するために消去パワーを高く設定することとなる。熱の影響が寄与するため500回の繰り返し記録特性が悪化した。
本発明の多層光記録媒体及びその光記録方法は、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層中の反射層の厚みが極薄であっても充分な放熱効果が得られるようにし、変調度を高くして各情報層の記録性能を向上させると共に記録感度も向上させ、保存安定性にも優れ、更には、各情報層の光透過率を高く確保してレーザ光が照射される側から見て一番奥側の情報層の記録感度をも向上させることができるので、例えばDVD−RAM、DVD−RW、DVD+RWなどに好適である。
図1は、本発明の一例である2層相変化型光記録媒体の代表的な層構成を示す図である。 図2は、反射層材料の吸収率A、反射率R、透過率Tを示す図である。 図3は、波長660nmでのCu合金の反射率R、透過率T、吸収率Aの厚み依存性を示す図である。 図4は、波長660nmでのAg合金の反射率R、透過率T、吸収率Aの厚み依存性を示す図である。 図5は、Cu系、Ag系材料の透過率の波長依存性を示す図である。 図6は、変調度M(DOW10)の記録パワー(Pp)依存性を示す図である。 図7は、DOW10の「Itop×M」の記録パワー(Pp)依存性を示す図である。 図8は、転移線速及びDOW10ジッタの、第1上部保護層SnO量依存性を示した図である。 図9は、転移線速を説明した図である。 図10は、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存した時のDOW10ジッタ変化量の第1上部保護層厚み依存性を示した図である。 図11は、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存した時のDOW10ジッタ変化量の第1上部保護層(厚み5nm)のSn酸化物含有量依存性を示した図である。 図12は、従来の単層光記録媒体の1Tストラテジ(A)、2層光記録媒体の一番奥側以外の記録層用の記録方法(B又はC)を示した図である。 図13は、1Tストラテジのパラメータを示した図である。 図14は、2層光記録媒体の奥側の記録層に、1T周期ストラテジ及び2T周期ストラテジで記録したときのDOW10ジッタの比較図である。 図15は、2層光記録媒体の奥側の記録層に、1T周期ストラテジ及び2T周期ストラテジで記録したときの変調度M(DOW10)の比較図である。 図16は、2T周期ストラテジの説明図(10Tマークと11Tマークの例)である。 図17は、温度80℃、85%RHの環境下で100時間保存した時の、変調度M(DOW10)の第1上部保護層厚み依存性を示した図である。
符号の説明
A 吸収率
R 反射率
T 透過率
M 変調度
Itop×M 記録後の結晶質反射率×変調度
T クロック周期
Tr 先頭パルスと最終パルスの立ち上がりの間隔
Tmp マルチパルスの長さ
Ttop 第1パルスの長さ
dTtop 第1パルスの立ち上がり時間のシフト量
dTlp 最終パルスの立ち上がり時間のシフト量
dTera 冷却パルスの立ち上がり時間のシフト量

Claims (10)

  1. レーザ光の照射によって情報を記録し得る相変化記録層と、反射層を少なくとも含む複数の情報層を有し、レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層が、少なくとも下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層、及び光透過層を有してなり、
    レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層の上部保護層及び光透過層がSn酸化物を含有する材料からなり、かつレーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層の上部保護層の厚みが2〜15nmであることを特徴とする多層光記録媒体。
  2. レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における上部保護層が、Sn酸化物を50〜90モル%含有する請求項1に記載の多層光記録媒体。
  3. レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における光透過層の厚みが、51〜250nmである請求項1から2のいずれかに記載の多層光記録媒体。
  4. レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における反射層がCuを含有する請求項1から3のいずれかに記載の多層光記録媒体。
  5. レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における反射層が、更に、Mo、Ta、Nb、Cr、Zr、Ni、Ge及びAuから選択される少なくとも1種の金属元素を5質量%以下の割合で含有する請求項4に記載の多層光記録媒体。
  6. レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における下部保護層が、Sn酸化物を含有する材料からなる請求項1から5のいずれかに記載の多層光記録媒体。
  7. レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における下部保護層が、2層構造からなり、該2層のうち少なくとも1層がSn酸化物を含有する材料からなる請求項1から6のいずれかに記載の多層光記録媒体。
  8. 多層光記録媒体が、レーザ光が照射される側から見て第1基板、第1情報層、中間層、第2情報層、及び第2基板をこの順に有してなり、
    前記第1情報層が、レーザ光が照射される側から見て第1下部保護層、第1相変化記録層、第1上部保護層、第1反射層、及び光透過層をこの順に有し
    前記第2情報層が、第2下部保護層、第2相変化記録層、第2上部保護層、及び第2反射層をこの順に有する請求項1から7のいずれかに記載の多層光記録媒体。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の多層光記録媒体の光記録方法であって、
    レーザ光が照射される側から見て一番奥側以外の各情報層における記録層に、記録パワーとバイアスパワーの2値で変調したパルスを繰り返し照射することで、長さnT(Tはクロック周期、nは2以上の整数である)の記録マークを形成する際に、先頭パルスと最終パルスの立ち上がりの間隔Trを、下記数式1の範囲に設定することを特徴とする多層光記録媒体への光記録方法。
    <数式1>
    (n−1.5)T≦Tr≦(n−0.5)T
  10. レーザ光が照射される側から見て2番目以降の各情報層における記録層に記録する際には、照射パルスの個数をm(mは1以上の整数である)としたとき、nが偶数のときはn=2m、nが奇数のときはn=2m+1の関係を満たす請求項9に記載の多層光記録媒体の光記録方法。
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