JP2007327137A - 隅肉および十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚物鋼板およびその製造方法 - Google Patents

隅肉および十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚物鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2007327137A
JP2007327137A JP2007123585A JP2007123585A JP2007327137A JP 2007327137 A JP2007327137 A JP 2007327137A JP 2007123585 A JP2007123585 A JP 2007123585A JP 2007123585 A JP2007123585 A JP 2007123585A JP 2007327137 A JP2007327137 A JP 2007327137A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel plate
crack propagation
brittle crack
less
thickness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2007123585A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5135872B2 (ja
Inventor
Tsunehisa Handa
恒久 半田
Ryuji Muraoka
隆二 村岡
Shinichi Suzuki
伸一 鈴木
Takahiro Kubo
高宏 久保
Fumimaru Kawabata
文丸 川端
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2007123585A priority Critical patent/JP5135872B2/ja
Publication of JP2007327137A publication Critical patent/JP2007327137A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5135872B2 publication Critical patent/JP5135872B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

【課題】大型船の船体構造に好適な、脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の厚鋼板を提供する。
【解決手段】板厚方向の板厚の20%以上の領域で、表層から板厚の10%以内の領域を除く部分において、供用温度における板厚25mm相当の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上で、圧延面での(211)面および(100)面のX線強度比が1.5以上の集合組織を有し、前記圧延面での(211)面X線強度比X(211)と(100)面X線強度比X(100)および同部位の2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られる破面遷移温度vTrs(℃)が(1)式を満足する。vTrs−12X(100)−22X(211)≦(T−75)/0.64・・・(1)ここで、Tは鋼板の供用温度(℃)。
【選択図】図1

Description

本発明は、隅肉および十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚物鋼板およびその製造方法に関し、特に、大型コンテナ船やバルクキャリアーなどの隅肉および十字溶接継手の、板厚50mm以上のフランジ材として好適な、ものに関する。
溶接構造体であるコンテナ船やバルクキャリアーは、積載能力の向上や荷役効率の向上等のため、上部開口部を大きくとった構造となっている。このため、これらの船では特に船体外板を厚肉化する必要がある。
近年、コンテナ船は大型化し、6,000〜20,000TEUの大型船が建造されるようになってきており、それに伴い、用いられる船体外板は50mm以上の厚肉化の傾向にある。
船体構造においては、万一溶接部から脆性破壊が発生した場合にも、脆性亀裂の伝播を停止させ船体分離を防止することが必要と考えられ、例えば特許文献1には、船舶の船殻外板の補強材に、特定のミクロ組織を有し、耐脆性破壊に優れた鋼板を用いることが記載されている。
板厚50mm未満の造船用鋼板溶接部の脆性亀裂伝播挙動については、日本造船研究協会第147委員会において、実験的に検討がなされている。
第147委員会では、溶接部にて強制的に発生させた脆性亀裂の伝播経路、伝播挙動を実験的に調査した結果、溶接部の破壊靱性がある程度確保されていれば、溶接残留応力の影響により脆性亀裂は溶接部から母材側に逸れてしまうことが多いが、溶接部に沿って脆性亀裂が伝播した例も複数確認された。このことは、脆性破壊が溶接部に沿って直進伝播する可能性が無いとは言い切れないことを示唆している。
しかしながら、第147委員会で適用した溶接と同等の溶接を板厚50mm未満の鋼板に適用して建造された船舶が異常なく就航しているという多くの実績があることに加え、靱性が良好な鋼板母材(造船E級鋼など)は脆性亀裂を停止する能力が十分にあるとの認識から、造船用鋼材溶接部の脆性亀裂伝播停止特性は船級規則等には要求されてこなかった。
特開2004−232052号公報
しかし、最近の6,000TEUを越える大型コンテナ船では鋼板の板厚は50mmを超え、板厚効果により破壊靱性が低下することに加え、溶接入熱もより大きくなるため、溶接部の破壊靭性が一層低下する傾向にある。
最近、このような厚肉大入熱溶接継手では、溶接部から発生した脆性亀裂は母材側に反れずに直進し、骨材等の鋼板母材部でも停止しない可能性があることが実験的に示され(山口ら:「超大型コンテナ船の開発 ― 新しい高強度極厚鋼板の実用 ―」,日本船舶海洋工学会誌,3,(2005),P70.)、50mm以上の板厚の鋼板を適用した船体構造の安全確保の上で大きな問題となっている。
そこで、本発明は、大型コンテナ船やバルクキャリアーなどの隅肉溶接継手のフランジ材として好適な、脆性亀裂伝播特性に優れた板厚50mm以上の厚鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決に向けて、種々の鋼について、集合組織および脆性亀裂伝播停止靭性Kcaの関係を鋭意検討したところ、隅肉溶接部の被溶接部材(フランジ)の板厚方向の板厚20%以上の領域における集合組織を適切に制御し、十分な脆性亀裂伝播停止性能を付与することにより、溶接部材(ウェブ)から伝播してきた脆性亀裂を被溶接部材(フランジ)で停止できること、および脆性亀裂伝播停止靱性を得るための集合組織を実現するために好適な鋼材成分範囲と製造方法を見出した。尚、本発明において隅肉溶接部には十字溶接部を含むものとする。すなわち、本発明は、
1.板厚方向の板厚の20%以上の領域において、供用温度における板厚25mm相当の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上であることを特徴とする、隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
2.前記脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上の部位が、表層から板厚の10%以内の領域を除く部分に存在することを特徴とする1記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
3.前記脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上である部位における圧延面での(211)面および(100)面のX線強度比が1.5以上の集合組織を有することを特徴とする1または2記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
4.前記圧延面での(211)面X線強度比X(211)と(100)面X線強度比X(100)および同部位の2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られる破面遷移温度vTrs(℃)が下式を満足することを特徴とする3記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
vTrs−12X(100)−22X(211)≦(T−75)/0.64
ここで、Tは鋼板の供用温度(℃)である。
5.成分組成が、mass%で、C:0.15%以下、Si:0.60%以下、Mn:0.80〜1.80%、且つTi:0.005〜0.050%およびNb:0.001〜0.1%の内から選んだ少なくとも1種を含み、Cu:2.0%以下、V:0.2%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、W:0.5%以下、B:0.0050%以下、Zr:0.5%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする1乃至4の何れか一つに記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
6.5記載の成分組成を有する鋼素材を、900〜1350℃の温度に加熱し、次いで鋼板表面温度1000〜850℃の温度域において累積圧下率10%以上で圧延した後、鋼板素材表面温度900〜600℃で且つ鋼板内部温度が鋼板表面温度より50〜150℃高温となる状態とした後に、1パス圧下率7%以下、累積圧下率50%以上で、圧延終了時の鋼板表面温度850〜600℃にて熱間圧延することを特徴とする隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板の製造方法。
7.熱間圧延終了後、5℃/s以上の冷却速度で400℃まで冷却することを特徴とする6記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板の製造方法。
8.1乃至5のいずれか一つに記載の鋼板を、クラックアレスター用鋼板に用いることを特徴とする鋼構造物。
9.1乃至5のいずれか一つに記載の鋼板を、少なくともフランジに用いることを特徴とするT字または十字型隅肉溶接構造体。
本発明によれば、板厚の一部の領域における脆性亀裂伝播停止靱性を極めて高くしたので、これまで困難であった板厚50mm以上の厚物材を被溶接部材(フランジ)に用いた隅肉溶接部において、溶接部材(ウェブ)から被溶接部材(フランジ)への脆性亀裂の伝播を停止させることが可能となり、産業上極めて有用である。
本発明は、板厚方向の板厚の20%以上の領域において、供用温度における板厚25mm相当の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaを10,000N/mm3/2以上とする。以下に本発明の限定理由について説明する。
板厚方向の板厚20%以上の領域において、供用温度における板厚25mm相当の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上
高Kcaとなる領域が板厚方向の板厚20%未満となると、溶接部材(ウェブ)から被溶接部材(フランジ)へ伝播した脆性亀裂は一旦高Kca域で停止しようとするものの、その慣性力等で脆性もしくは延性的に高Kca域を通り抜けてしまう。このため、高Kcaとなる領域を板厚方向の板厚20%以上の領域とした。
また、脆性亀裂伝播停止靱性Kcaは全厚で6,000N/mm3/2以上あれば十分であるが、本発明のように鋼板の一部の領域(高Kca域)で脆性亀裂を停止させる場合の高Kca域の値としては不十分である。本発明では、高Kca域のKca値として板厚25mm相当で10,000N/mm3/2とする。
本発明で対象としている隅肉溶接部においては、表層から板厚の10%以内の領域は溶接熱影響を受け材質が変化もしくは劣化する。このため表層部付近に上述した高Kca域を付与した場合には、所定の脆性亀裂停止性能を発揮できない可能性がある。よって、高Kca域は表層から板厚の10%以内の領域を除く部分とすることが好ましい。
脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上である部位は、そのミクロ組織が、圧延面での(211)面および(100)面のX線強度比が1.5以上の集合組織を有する。
圧延面での(211)面および(100)面のX線強度比が1.5以上になると、微細なサブクラックが発生し、脆性亀裂伝播面の凹凸が大きくなり、亀裂伝播抵抗が増し、脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが大きく向上する。X線強度比が1.5未満ではこの効果は認められない。
尚、本発明に係る厚鋼板は、供用温度において上述した対象部位のKcaとして10,000N/mm3/2以上を満足するものであるが、供用温度においてシャルピー破面遷移温度vTrsも良好(低温)でなければならないことより、圧延面での(211)面X線強度比X(211)と(100)面X線強度比X(100)および前記対象部位の2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られる破面遷移温度vTrs(℃)は(1)式を満足する。但し、(1)式のTは鋼板の供用温度(℃)を示す。
vTrs−12X(100)−22X(211)≦(T−75)/0.64・・・(1)
尚、脆性亀裂伝播停止靭性Kca向上のためには、(211)面および(100)面のX線強度比が1.5以上である必要があるが、(211)面集合組織の方がKca向上への寄与が大きく、その寄与率は(1)式の係数で表される。
本発明鋼として好ましい成分組成は以下の通りである。%はmass%とする。
C:0.15%以下
Cは強度を確保するために必要であるが、0.15%を超えると溶接熱影響部(HAZ)靭性が低下するので、0.15%以下に限定した。なお、(211)面および(100)面の集合組織をより一層発達させるために好ましい範囲は0.03%以下である。
Si:0.60%以下
Siは強度上昇に有効な元素であるが、0.60%を超えると溶接熱影響部(HAZ)靭性を著しく劣化させるので、0.60%以下に限定した.なお、0.20%未満では強度上昇に効果が少なく、好ましくは0.20〜0.60%である。
Mn:0.80〜1.80%
Mnは高強度化に有効な元素であり、強度確保の観点から下限を0.80%とした。しかし、Mn量が1.80%を超えると、母材靭性の劣化が懸念される。このため,Mnは0.80〜1.80%の範囲とした。なお、好ましい範囲は1.00〜1.70%である。
Ti:0.005〜0.050%、Nb:0.001〜0.1%の少なくとも1種以上
Tiは、炭化物や窒化物の析出物を形成することにより、鋼板製造時の加熱段階でのオーステナイト粒の成長を抑制して細粒化に寄与するとともに、溶接熱影響部(HAZ)の結晶粒粗大化も抑制しHAZ靱性を向上する効果がある。これらの効果を得るには、0.005%以上の含有が必要である。一方、過度の含有は、靱性を劣化するため、添加する場合は、0.05%を上限とする。
Nbは析出強化および靱性の向上にも有効である。また、オーステナイトの再結晶を抑制し、後述する圧延条件による効果を促進する。これらの効果を得るためには、0.001%以上の添加が必要であるが、0.1%をこえて添加すると、焼き入れ組織が針状化して靱性が劣化する傾向にあるため、添加する場合は、0.1%を上限とする。
Cu,V,Ni,Cr,Mo,W,B,Zrの一種または二種以上
Cu:2.0%以下
Cuは、主として析出強化のために用いることができるが、2.0%をこえて添加すると、析出強化が過多となり靱性が劣化する。
V:0.2%以下
Vは固溶と析出強化効果が利用できる成分であるが、0.2%を超えて含有すると、母材靭性および溶接性を大きく損なうので、添加する場合は、0.2%以下に限定する。
Ni:2.0%以下
Niは、強度および靱性を向上し、またCuを添加した場合には圧延時のCu割れを防止するのに有効であるが、高価である上、過剰に添加してもその効果が飽和するため、添加する場合は、2.0%以下の範囲で添加することが好ましい。なお、より好ましい添加量は0.05%以上である。
Cr:0.6%以下
Crは、強度を上昇させる効果を有するが、0.6%を超えて含有すると溶接部靱性が劣化するため、Cr含有量は添加する場合は、0.6%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましい含有量は0.05%以上である。
Mo:0.6%以下
Moは、常温および高温での強度を上昇させる効果を有するが、0.6%を超えて含有すると、溶接性が劣化するため、添加する場合は0.6%以下の範囲とするのが好ましい。なお、より好ましい含有量は0.05%以上である。
W:0.5%以下
Wは、高温強度を上昇させる効果を有しているが、0.5%を超えると靱性を劣化させるだけでなく、高価であるので、添加する場合は、0.5%以下の範囲で含有するのが好ましい。なお、より好ましい含有量は0.05%以上である。
B:0.0050%以下
Bは圧延中にBNとして析出し、圧延後のフェライト粒を細かくするが、0.0050%を超えると靱性が劣化するので添加する場合は0.0050%以下に限定した。
Zr:0.5%以下
Zrは、強度を上昇させるほか、亜鉛めっき材の耐めっき割れ性を向上させる元素であるが、0.5%を超えて含有すると溶接部靱性が劣化するので、添加する場合は、0.5%を上限とするのが好ましい。なお、より好ましい含有量は0.05%以上である。
次に上述した成分組成の厚鋼板の製造条件について説明する。
スラブ加熱温度:900〜1350℃
スラブ加熱温度を900℃以上とするのは、材質の均質化と後述する制御圧延を行うために必要な加熱であり1350℃以下とするのは、余りに高温になると表面酸化が顕著になるとともに、結晶粒の粗大化が避けられなくなるからである。なお、靱性の向上のためには、上限を1150℃とすることが好ましい。
熱間圧延条件
熱間圧延はまず、鋼板表面温度1000〜850℃の温度域において累積圧下率10%以上で行う。当該温度域で圧延することによって、オーステナイト粒が部分的に再結晶するため、組織が微細かつ均一になる。
なお、1000℃を超える温度での圧延は、オーステナイト粒の成長を助長するので、細粒化のためには好ましくない。一方、850℃未満では完全に未再結晶域に入るので、結晶粒の均一化のためには好ましくない。
次に、鋼板素材表面温度900〜600℃で且つ鋼板内部温度が鋼板表面温度より50〜150℃高温となる状態とした後に、1パス圧下率7%以下、累積圧下率50%以上で、圧延終了時の鋼板表面温度850〜600℃の条件にて熱間圧延する
鋼板素材表面温度900〜600℃で且つ鋼板内部温度が鋼板表面温度より50〜150℃高温となる状態とすることにより、表面近傍がほぼ2相域で且つ鋼板内部がほぼγ未再結晶域となる。
この条件で1パス圧下率7%以下の圧延を施すと、相対的に強度の低くなっている鋼板内部に優先的に圧延歪が導入され、集合組織が導入される。この工程により、オーステナイト粒に集合組織が形成される。
すなわち、脆性亀裂伝播停止靱性向上に特に効果的な変態集合組織の一種である(211)面集合組織の基礎が形成される。その後、鋼板表面温度850〜600℃まで圧延することにより、鋼板内部が2相域で圧延され(100)面集合組織が形成される。
上記集合組織の集積度を脆性亀裂伝播停止性能に効果的なレベル(集積度1.5以上)にするには、累積圧下率50%以上が必要となる。
熱間圧延を終了した後、5℃/s以上の冷却速度で400℃まで冷却すると、(211)面が優勢な集合組織のオーステナイト集合組織からの受け継ぎが促進され、脆性亀裂伝播停止靱性が向上する。すなわち、(211)面のX線面強度がより強くなり、サブクラックの発生がより一層促進され、亀裂が停止し易くなる。なお上記冷却方法においては、より好ましい冷却開始温度は700℃以上である。
本発明において、隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れるとは、本発明に係る厚鋼板を隅肉溶接継手または十字溶接継手の被溶接部材(フランジ)に用いると、溶接部材(ウェブ)から被溶接部材(フランジ)に流れ込んできた脆性亀裂を停止させる場合に優れた性能を発揮することを意味する。図1に本発明に係る厚鋼板を用いた隅肉溶接継手を説明する模式図を示す。
すなわち、本発明鋼は脆性亀裂が板厚方向に突入することが予想される部材にクラックアレスター用鋼板として用いた場合、優れた性能を発揮する。
尚、厚さ50mm未満の場合、現行鋼板(例えば造船用E級鋼など)で対象とする脆性亀裂を停止させることが可能であることから明らかなように、本発明鋼は厚さ50mm未満でも優れた性能が得られる。
表1に示す種々の化学組成に調整した鋼スラブを用いて、種々の条件に従って厚鋼板を製造した。得られた各厚鋼板について、対象部位(高Kca想定域)の(211)面と(100)面のX線強度比の測定を行うとともに、対象部位(高Kca想定域)のシャルピー破面遷移温度vTrsおよび脆性亀裂伝播停止靱性を調査した。
対象部位(高Kca想定域)の脆性亀裂伝播停止靱性は、厚さ方向の全域が対象部位(高Kca想定域)となるように厚さ10mmに減厚した鋼板を用いて、温度勾配型ESSO試験により調査した。
温度勾配型ESSO試験は日本溶接協会の鋼種認定要領に準拠して実施した。得られた供用温度(本実施例では−10℃)における板厚10mmのKca値は、日本溶接協会規格WES3003に示される板厚効果係数の式により板厚25mm相当のKca値に変換し評価に用いた。
次に、前記の厚鋼板(元厚まま)を被溶接材(フランジ)に用いて、完全溶け込みT字型の隅肉溶接継手(未溶着部の無い隅肉溶接継手,図1参照)を作製した。かくして得られたT字型隅肉溶接継手を用いて、図2に示す十字型ESSO試験片を作製し、脆性亀裂伝播停止試験(ESSO試験)に供した。
試験は、応力24kgf/mm、温度−10℃の条件にて実施した。機械ノッチに打撃を与え脆性亀裂を発生させ、伝播した脆性亀裂が、隅肉溶接部で停止するか否かを調査した。ここで、応力24kgf/mmは、船体に多用されている降伏強度36kgf/mm級鋼板の最大許容応力であり、温度−10℃は船舶の設計温度である。
表2に供試鋼板の製造条件と温度勾配型ESSO試験結果及び十字型ESSO試験片による脆性亀裂伝播停止試験結果を併せて示す。成分組成または製造条件が本発明範囲内の供試鋼板の場合(No.2,3,5,6,8,10,12,14)、温度勾配型ESSO試験によるKca値として、いずれも10,000N/mm3/2以上が得られ、十字型ESSO試験片による脆性亀裂伝播停止試験では、ウエブからフランジへの脆性亀裂伝播が阻止された。
一方、成分組成または製造条件のいずれかが本発明範囲外の供試鋼板の場合(No.1,4,7,9,11,13,15,16)、温度勾配型ESSO試験によるKca値は、いずれも10,000N/mm3/2未満で、十字型ESSO試験片による脆性亀裂伝播停止試験では、ウエブからフランジへ脆性亀裂が伝播した。
Figure 2007327137
Figure 2007327137
Figure 2007327137
本発明に係る厚鋼板を用いた隅肉溶接継手を説明する図。 十字型ESSO試験片の形状を説明する図。

Claims (9)

  1. 板厚方向の板厚の20%以上の領域において、供用温度における板厚25mm相当の脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上であることを特徴とする、隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
  2. 前記脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上の部位が、表層から板厚の10%以内の領域を除く部分に存在することを特徴とする請求項1記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
  3. 前記脆性亀裂伝播停止靭性Kcaが10,000N/mm3/2以上である部位における圧延面での(211)面および(100)面のX線強度比が1.5以上の集合組織を有することを特徴とする請求項1または2記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
  4. 前記圧延面での(211)面X線強度比X(211)と(100)面X線強度比X(100)および同部位の2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られる破面遷移温度vTrs(℃)が下式を満足することを特徴とする請求項3記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
    vTrs−12X(100)−22X(211)≦(T−75)/0.64
    ここで、Tは鋼板の供用温度(℃)である。
  5. 成分組成が、mass%で、C: 0.15%以下、Si:0.60%以下、Mn:0.80〜1.80%、且つTi:0.005〜0.050%およびNb:0.001〜0.1%の内から選んだ少なくとも1種を含み、Cu: 2.0%以下、V: 0.2%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、W:0.5%以下、B:0.0050%以下、Zr:0.5%以下の1または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板。
  6. 請求項5記載の成分組成を有する鋼素材を、900〜1350℃の温度に加熱し、次いで鋼板表面温度1000〜850℃の温度域において累積圧下率10%以上で圧延した後、鋼板素材表面温度900〜600℃で且つ鋼板内部温度が鋼板表面温度より50〜150℃高温となる状態とした後に、1パス圧下率7%以下、累積圧下率50%以上で、圧延終了時の鋼板表面温度850〜600℃にて熱間圧延することを特徴とする隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板の製造方法。
  7. 熱間圧延終了後、5℃/s以上の冷却速度で400℃まで冷却することを特徴とする請求項6記載の隅肉または十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚さ50mm以上の厚鋼板の製造方法。
  8. 請求項1乃至5のいずれか一つに記載の鋼板を、クラックアレスター用鋼板に用いることを特徴とする鋼構造物。
  9. 請求項1乃至5のいずれか一つに記載の鋼板を、少なくともフランジに用いることを特徴とするT字または十字型隅肉溶接構造体。
JP2007123585A 2006-05-12 2007-05-08 隅肉および十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚物鋼板およびその製造方法 Active JP5135872B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007123585A JP5135872B2 (ja) 2006-05-12 2007-05-08 隅肉および十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚物鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006133579 2006-05-12
JP2006133579 2006-05-12
JP2007123585A JP5135872B2 (ja) 2006-05-12 2007-05-08 隅肉および十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚物鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007327137A true JP2007327137A (ja) 2007-12-20
JP5135872B2 JP5135872B2 (ja) 2013-02-06

Family

ID=38927789

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007123585A Active JP5135872B2 (ja) 2006-05-12 2007-05-08 隅肉および十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚物鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5135872B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012108543A1 (ja) * 2011-02-08 2012-08-16 Jfeスチール株式会社 長大脆性き裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の厚鋼板およびその製造方法ならびに長大脆性き裂伝播停止性能を評価する方法および試験装置
JP2017003377A (ja) * 2015-06-09 2017-01-05 Jfeスチール株式会社 厚鋼板の脆性破壊伝播停止性能の評価方法
JP2018158345A (ja) * 2017-03-22 2018-10-11 Jfeスチール株式会社 溶接構造体

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002020835A (ja) * 2000-05-02 2002-01-23 Nippon Steel Corp 脆性き裂伝播停止特性と板厚方向破壊特性の優れた鋼材およびその製造方法
JP2004232052A (ja) * 2003-01-31 2004-08-19 Nippon Steel Corp 耐脆性破壊に優れた溶接構造体

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002020835A (ja) * 2000-05-02 2002-01-23 Nippon Steel Corp 脆性き裂伝播停止特性と板厚方向破壊特性の優れた鋼材およびその製造方法
JP2004232052A (ja) * 2003-01-31 2004-08-19 Nippon Steel Corp 耐脆性破壊に優れた溶接構造体

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012108543A1 (ja) * 2011-02-08 2012-08-16 Jfeスチール株式会社 長大脆性き裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の厚鋼板およびその製造方法ならびに長大脆性き裂伝播停止性能を評価する方法および試験装置
JP2012180590A (ja) * 2011-02-08 2012-09-20 Jfe Steel Corp 長大脆性き裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の厚鋼板およびその製造方法ならびに長大脆性き裂伝播停止性能を評価する方法および試験装置
CN103348030A (zh) * 2011-02-08 2013-10-09 杰富意钢铁株式会社 长脆性裂纹传播停止特性优异的板厚为50mm以上的厚钢板及其制造方法、以及评价长脆性裂纹传播停止性能的方法及试验装置
KR20130114239A (ko) * 2011-02-08 2013-10-16 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 장대 취성 균열 전파 정지 특성이 우수한 판 두께 50㎜ 이상의 후강판 및 그의 제조 방법 그리고 장대 취성 균열 전파 정지 성능을 평가하는 방법 및 시험 장치
JP2014145131A (ja) * 2011-02-08 2014-08-14 Jfe Steel Corp 長大脆性き裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の厚鋼板およびその製造方法
KR101584235B1 (ko) 2011-02-08 2016-01-11 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 장대 취성 균열 전파 정지 특성이 우수한 판 두께 50㎜ 이상의 후강판 및 그의 제조 방법 그리고 장대 취성 균열 전파 정지 성능을 평가하는 방법 및 시험 장치
CN108130479A (zh) * 2011-02-08 2018-06-08 杰富意钢铁株式会社 长脆性裂纹传播停止特性优异的板厚为50mm以上的厚钢板及其制造方法
JP2017003377A (ja) * 2015-06-09 2017-01-05 Jfeスチール株式会社 厚鋼板の脆性破壊伝播停止性能の評価方法
JP2018158345A (ja) * 2017-03-22 2018-10-11 Jfeスチール株式会社 溶接構造体

Also Published As

Publication number Publication date
JP5135872B2 (ja) 2013-02-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5598485B2 (ja) 長大脆性き裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の厚鋼板およびその製造方法
JP5217391B2 (ja) 板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板およびその製造方法
JP5337412B2 (ja) 脆性亀裂伝播停止特性に優れた厚鋼板およびその製造方法
WO2017047088A1 (ja) 構造用高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2010202931A (ja) 脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2007204781A (ja) 疲労亀裂伝播特性に優れる鋼材の製造方法
JP2008111165A (ja) 脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2005314811A (ja) 延性と耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法
JP5147276B2 (ja) 脆性亀裂発生抑制・停止特性および溶接熱影響部の低温靭性に優れた高張力鋼板
JP5135872B2 (ja) 隅肉および十字溶接部の脆性亀裂伝播停止特性に優れる厚物鋼板およびその製造方法
JP2005314812A (ja) 板厚方向の強度差が小さい疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法
JP5432565B2 (ja) 脆性亀裂伝播停止特性および疲労亀裂進展抑制特性に優れた厚鋼板
JP5284015B2 (ja) 脆性亀裂伝播停止特性に優れた厚鋼板
JP5124865B2 (ja) 高張力冷延鋼板およびその製造方法
JP2008111166A (ja) 脆性亀裂伝播停止特性に優れた構造用高強度厚鋼板およびその製造方法
TWI478786B (zh) A thick steel sheet excellent in fatigue resistance in the thickness direction and a method for producing the same, and a thick welded steel joint
KR101687687B1 (ko) 판두께 방향의 내피로 특성이 우수한 후강판 및 그의 제조 방법, 그 후강판을 이용한 필렛 용접 조인트
JP2012092419A (ja) 耐疲労特性に優れた厚鋼板およびその製造方法
JP5401915B2 (ja) 抵抗スポット溶接の継手強度に優れた高耐食性フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2010077531A (ja) 疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板およびその製造方法
JP5470904B2 (ja) TSが570MPa以上、全伸びが25%以上、ΔK=15MPa√mでの疲労き裂伝播速度8.75x10−9m/cycle以下の、全伸びと疲労き裂伝播抵抗性に優れた板厚20mm以下の厚鋼板の製造方法
JP6135595B2 (ja) 耐衝突性に優れた鋼板の高能率製造方法
JP3578126B2 (ja) 耐衝突性に優れた鋼材およびその製造方法
JP2005281816A (ja) 成形性が良好でかつ、プロジェクション溶接性が優れた高強度冷延鋼板及びその製造方法
JP2008156751A (ja) 板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100422

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120314

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20120321

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20120327

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120418

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120531

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121016

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121029

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5135872

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151122

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250