JP2010077531A - 疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】継手溶接を行った場合に、ビード断面における止端部の形状が良好で疲労き裂が発生し難く、またたとえ疲労き裂が発生したとしても破断に到るまでの伝播寿命が長い、疲労き裂の発生阻止特性と伝播阻止特性の両者に優れた鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.40%、Si:0.10%以上 2.0%未満、Mn:0.4〜3.0%、Al:0.3〜2.0%、P:0.05%以下およびS:0.05%以下を含有し、かつ残留オーステナイトを面積率で2〜30%含む組織になる母材の両面を、同じく質量%で、C:0.005〜0.5%、Si:2.0〜8.0%、Mn:0.1〜3.0%、Al:0.01〜0.3%、P:0.05%以下およびS:0.03%以下を含有する組成になる合わせ材で覆ったクラッド鋼板とする。
【選択図】図1
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.40%、Si:0.10%以上 2.0%未満、Mn:0.4〜3.0%、Al:0.3〜2.0%、P:0.05%以下およびS:0.05%以下を含有し、かつ残留オーステナイトを面積率で2〜30%含む組織になる母材の両面を、同じく質量%で、C:0.005〜0.5%、Si:2.0〜8.0%、Mn:0.1〜3.0%、Al:0.01〜0.3%、P:0.05%以下およびS:0.03%以下を含有する組成になる合わせ材で覆ったクラッド鋼板とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、船舶、海洋構造物および土木構造物等の素材として好適な、疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板およびその製造方法に関するものである。
本発明におけるクラッド鋼板は、母材の両面をクラッド材で被覆したいわゆる三層クラッド鋼板のみならず、母材の片面のみをクラッド材で被覆したいわゆる二層クラッド鋼板も含むものである。
本発明におけるクラッド鋼板は、母材の両面をクラッド材で被覆したいわゆる三層クラッド鋼板のみならず、母材の片面のみをクラッド材で被覆したいわゆる二層クラッド鋼板も含むものである。
鋼構造物の大型化および軽量化の観点から、これらに使用される素材として高張力鋼の適用が拡大しつつある。鋼構造物のうち、特に船舶や、橋梁などの海洋構造物は、繰返し荷重を受けるために、疲労破壊が重要な問題となる。とくに、高張力鋼の適用に伴い薄肉化した場合は、設計応力が上昇するため疲労破壊には十分配慮する必要がある。
上記したような鋼構造物は、一般に溶接施工により組み立てられることから、疲労破壊は溶接部とくに溶接継手部から発生する場合が多い。
しかしながら、鋼材の引張強度が増加しても、溶接継手の疲労強度は鋼材の引張強度ほどには向上しない。その原因としては、溶接継手の溶接部に生じる引張残留応力も併せて増大することが挙げられる。
しかしながら、鋼材の引張強度が増加しても、溶接継手の疲労強度は鋼材の引張強度ほどには向上しない。その原因としては、溶接継手の溶接部に生じる引張残留応力も併せて増大することが挙げられる。
上記の解決策として、特許文献1には、溶接後の冷却過程において溶接金属をマルテンサイト変態させ、室温においてマルテンサイト変態の開始時よりも膨張した状態にして、溶接継手の溶接金属に生じた引張残留応力を低減するか、あるいは引張残留応力に代えて圧縮残留応力を与えることにより、溶接施工後に、研削等の特別な後処理を行わなくても溶接継手の疲労強度を向上させた溶接材料が開示されている。
しかしながら、引用文献1に開示の溶接材料を用いた溶接継手は、疲労強度は向上するものの、溶接金属の組織がマルテンサイト主体であるため、溶接部の靱性とくに溶接金属の靱性が低値となり、実地において適用できる構造物は少なく、実用的でないという問題があった。
上記の問題を解決するものとして、発明者らは先に、「質量%で、C:0.01〜0.40%、Si:0.10〜3.0%、Mn:0.4〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Al:0.3〜2.0%、N:0.015%以下を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ残留オーステナイトを面積率で2〜30%含む組織を有することを特徴とする疲労き裂伝播特性に優れた鋼材。」を提案した(特許文献2参照)。
上掲特許文献2に開示の技術により、疲労き裂伝播速度をき裂の進展方向によらず有効に低減できる特性すなわち疲労き裂伝播特性に優れ、しかも強度−靱性バランスにも優れた鋼材を得ることができるようになった。
しかしながら、上記の鋼材を用いて継手溶接を行った場合に、ビード断面における止端部の形状不良に起因して疲労き裂が発生する場合が見受けられた。
しかしながら、上記の鋼材を用いて継手溶接を行った場合に、ビード断面における止端部の形状不良に起因して疲労き裂が発生する場合が見受けられた。
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、継手溶接を行った場合に、ビード断面における止端部の形状が良好で疲労き裂が発生し難く、またたとえ疲労き裂が発生したとしても破断に到るまでの伝播寿命が長い、すなわち疲労き裂の発生阻止特性と伝播阻止特性の両者に優れた鋼材を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく、疲労き裂の発生原因について鋭意検討を重ねた。
その結果、疲労き裂が発生した場合と発生しなかった場合とを比較すると、疲労き裂が発生した場合には、疲労き裂が発生しなかった場合に比べて、溶接金属中のSi量が低いことが判明した。
そこで、次に、疲労き裂の発生を防止できる素材中の最少Si量について調べたところ、素材中のSi量が2.0質量%以上の場合には疲労き裂が発生しないこと、換言すれば、素材中のSi量が2.0質量%未満の場合には疲労き裂が発生するおそれが大きいことが新たに知見された。
しかしながら、素材中のSi量が増加すると、靱性の劣化が避け難いため、安易なSi量の増加は必ずしも得策とはいえない。
その結果、疲労き裂が発生した場合と発生しなかった場合とを比較すると、疲労き裂が発生した場合には、疲労き裂が発生しなかった場合に比べて、溶接金属中のSi量が低いことが判明した。
そこで、次に、疲労き裂の発生を防止できる素材中の最少Si量について調べたところ、素材中のSi量が2.0質量%以上の場合には疲労き裂が発生しないこと、換言すれば、素材中のSi量が2.0質量%未満の場合には疲労き裂が発生するおそれが大きいことが新たに知見された。
しかしながら、素材中のSi量が増加すると、靱性の劣化が避け難いため、安易なSi量の増加は必ずしも得策とはいえない。
そこで、本発明では、上記鋼材のSi量が2.0質量%に満たない場合に、かかる鋼材をSiを2.0質量%以上含有する鋼材でクラッドすることにより、母材の靱性を確保しつつ、疲労き裂の発生阻止特性と伝播阻止特性の両者を両立させ、溶接継手の疲労寿命の格段な向上を図ったのである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.01〜0.40%、
Si:0.10%以上 2.0%未満、
Mn:0.4〜3.0%、
Al:0.3〜2.0%、
P:0.05%以下および
S:0.05%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ残留オーステナイトを面積率で2〜30%含む組織になる母材の片面または両面を、同じく質量%で、
C:0.005〜0.5%、
Si:2.0〜8.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
Al:0.01〜0.3%、
P:0.05%以下および
S:0.03%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる合わせ材で覆ったことを特徴とする、疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。
1.質量%で、
C:0.01〜0.40%、
Si:0.10%以上 2.0%未満、
Mn:0.4〜3.0%、
Al:0.3〜2.0%、
P:0.05%以下および
S:0.05%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ残留オーステナイトを面積率で2〜30%含む組織になる母材の片面または両面を、同じく質量%で、
C:0.005〜0.5%、
Si:2.0〜8.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
Al:0.01〜0.3%、
P:0.05%以下および
S:0.03%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる合わせ材で覆ったことを特徴とする、疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。
2.前記母材が、さらに質量%で、Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.1〜5.0%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.10%、V:0.005〜0.10%およびTi:0.005〜0.25%のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする上記1に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。
3.前記合わせ材が、さらに質量%で、Ni:0.001〜1.0%、Cr:0.001〜0.5%、Mo:0.001〜0.5%、Nb:0.001〜0.5%およびV:0.001〜0.5%のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする上記1または2に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。
4.前記クラッド鋼板において、鋼板全厚みに対する合わせ材の厚みの割合が10〜35%であることを特徴とする上記1,2または3に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。
5.質量%で、
C:0.01〜0.40%、
Si:0.10%以上 2.0%未満、
Mn:0.4〜3.0%、
Al:0.3〜2.0%、
P:0.05%以下および
S:0.05%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる母材の片面または両面を、同じく質量%で、
C:0.005〜0.5%、
Si:2.0〜8.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
Al:0.01〜0.3%、
P:0.05%以下および
S:0.03%以下、
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる合わせ材で挟み、700〜900℃に加熱後、圧下率:50〜90%で圧接接合し、該温度域に600〜3600秒間保持したのち、5℃/s以上の冷却速度で500〜350℃の温度域まで冷却し、該温度域に少なくとも60秒間保持することを特徴とする、疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
C:0.01〜0.40%、
Si:0.10%以上 2.0%未満、
Mn:0.4〜3.0%、
Al:0.3〜2.0%、
P:0.05%以下および
S:0.05%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる母材の片面または両面を、同じく質量%で、
C:0.005〜0.5%、
Si:2.0〜8.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
Al:0.01〜0.3%、
P:0.05%以下および
S:0.03%以下、
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる合わせ材で挟み、700〜900℃に加熱後、圧下率:50〜90%で圧接接合し、該温度域に600〜3600秒間保持したのち、5℃/s以上の冷却速度で500〜350℃の温度域まで冷却し、該温度域に少なくとも60秒間保持することを特徴とする、疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
6.前記母材が、さらに質量%で、Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.1〜5.0%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.10%、V:0.005〜0.10%およびTi:0.005〜0.25%のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする上記5に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
7.前記合わせ材が、さらに質量%で、Ni:0.001〜1.0%、Cr:0.001〜0.5%、Mo:0.001〜0.5%、Nb:0.001〜0.5%およびV:0.001〜0.5%のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする上記5または6に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
本発明のクラッド鋼板によれば、溶接継手について、母材靱性を確保した上で、疲労き裂の発生阻止特性と伝播阻止特性の両者を兼備させることができ、その結果、溶接継手の疲労寿命を格段に向上させることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、母材および合わせ材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
まず、本発明において、母材および合わせ材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
最初に母材の成分限定理由について説明する。
C:0.01〜0.40%
Cは、鋼の強度を高める成分であるだけでなく、残留オーステナイトを得る上で有用な元素である。しかしながら、含有量が0.01%未満ではその効果に乏しく、一方0.40%を超えると延性が低下したり、溶接割れの可能性が高くなったりするので、C量は0.01〜0.40%の範囲に限定した。好ましくは0.05〜0.15%の範囲である。
C:0.01〜0.40%
Cは、鋼の強度を高める成分であるだけでなく、残留オーステナイトを得る上で有用な元素である。しかしながら、含有量が0.01%未満ではその効果に乏しく、一方0.40%を超えると延性が低下したり、溶接割れの可能性が高くなったりするので、C量は0.01〜0.40%の範囲に限定した。好ましくは0.05〜0.15%の範囲である。
Si:0.10%以上 2.0%未満
Siは、鋼の脱酸に必要な元素であり、含有量が0.10%未満では、溶製時の脱酸効果が期待できないので、Siは0.10%以上含有させる必要がある。また、Siは残留オーステナイトを得る上でも重要な元素である。
ここで、Siは、本発明で問題とする疲労き裂の改善にも有効に寄与し、Si量が2.0%以上になると良好な疲労き裂発生阻止特性を得ることができるものの、Si量が2.0%未満では十分に満足のいく疲労き裂発生阻止特性を得ることはできない。しかしながら、一方で、Si量が2.0%以上では靱性の劣化が避けられない。
そこで、本発明では、母材の靱性を確保しつつ、合わせ材とのクラッドにより、疲労き裂発生阻止特性と伝播阻止特性の両者を両立させて、溶接継手の疲労寿命の格段の向上を図ることにしたのである。
従って、本発明は、母材として、十分な疲労き裂発生阻止特性は得られないものの、靱性に問題のない鋼材、すなわちSi量が2.0%未満の鋼材を対象とする。
Siは、鋼の脱酸に必要な元素であり、含有量が0.10%未満では、溶製時の脱酸効果が期待できないので、Siは0.10%以上含有させる必要がある。また、Siは残留オーステナイトを得る上でも重要な元素である。
ここで、Siは、本発明で問題とする疲労き裂の改善にも有効に寄与し、Si量が2.0%以上になると良好な疲労き裂発生阻止特性を得ることができるものの、Si量が2.0%未満では十分に満足のいく疲労き裂発生阻止特性を得ることはできない。しかしながら、一方で、Si量が2.0%以上では靱性の劣化が避けられない。
そこで、本発明では、母材の靱性を確保しつつ、合わせ材とのクラッドにより、疲労き裂発生阻止特性と伝播阻止特性の両者を両立させて、溶接継手の疲労寿命の格段の向上を図ることにしたのである。
従って、本発明は、母材として、十分な疲労き裂発生阻止特性は得られないものの、靱性に問題のない鋼材、すなわちSi量が2.0%未満の鋼材を対象とする。
Mn:0.4〜3.0%
Mnは、鋼の強化元素として有用なだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が0.4%未満ではその効果に乏しく、一方3.0%を超えると延性の低下を招くので、Mn量は0.4〜3.0%の範囲に限定した。好ましくは0.5〜2.0%の範囲である。
Mnは、鋼の強化元素として有用なだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が0.4%未満ではその効果に乏しく、一方3.0%を超えると延性の低下を招くので、Mn量は0.4〜3.0%の範囲に限定した。好ましくは0.5〜2.0%の範囲である。
Al:0.3〜2.0%、
Alは、残留オーステナイトを得る上で有用な元素である。しかしながら、含有量が0.3%未満ではその効果に乏しく、一方含有量が2.0%を超えると延性の低下を招くので、Al量は0.3〜2.0%の範囲に限定した。好ましくは0.5〜1.5%の範囲である。
Alは、残留オーステナイトを得る上で有用な元素である。しかしながら、含有量が0.3%未満ではその効果に乏しく、一方含有量が2.0%を超えると延性の低下を招くので、Al量は0.3〜2.0%の範囲に限定した。好ましくは0.5〜1.5%の範囲である。
P:0.05%以下、
Pは、その含有が低いほど好ましく、含有量が0.05%を超えると溶接時の割れ発生の原因となるので、P量は0.05%以下の範囲に限定した。
Pは、その含有が低いほど好ましく、含有量が0.05%を超えると溶接時の割れ発生の原因となるので、P量は0.05%以下の範囲に限定した。
S:0.05%以下
Sは、少ないほど好ましく、含有量が0.05%を超えると靭性や延性の低下を招くので、S量は0.05%以下の範囲に限定した。
Sは、少ないほど好ましく、含有量が0.05%を超えると靭性や延性の低下を招くので、S量は0.05%以下の範囲に限定した。
その他、不純物元素としてNがあるが、このNは、靭性を劣化させる元素であるので、少ないほど好ましい。しかしながら、Alが存在する場合はAl窒化物となり、靭性のさほどの劣化を招かないので、N量は0.015%以下で許容できる。
以上、母材の基本組成について説明したが、本発明では、それら以外にも必要に応じて以下の元素を適宜含有させることができる。
Cu:0.1〜1.5%
Cuは、鋼の強度を向上するのに有用な元素であり、また固溶強化により疲労強度を向上する効果も有する。しかしながら、含有量が0.1%未満ではその効果に乏しく、一方1.5%を超えると靭性が劣化するので、Cu量は0.1〜1.5%の範囲とするのが好ましい。
Cu:0.1〜1.5%
Cuは、鋼の強度を向上するのに有用な元素であり、また固溶強化により疲労強度を向上する効果も有する。しかしながら、含有量が0.1%未満ではその効果に乏しく、一方1.5%を超えると靭性が劣化するので、Cu量は0.1〜1.5%の範囲とするのが好ましい。
Ni:0.1〜5.0%
Niは、鋼の強度向上に有用なだけでなく、靭性も大幅に向上させる効果がある。しかしながら、含有量が0.1%未満ではその効果に乏しく、一方5.0%を超えると効果が飽和するので、Ni量は0.1〜5.0%の範囲とするのが好ましい。
Niは、鋼の強度向上に有用なだけでなく、靭性も大幅に向上させる効果がある。しかしながら、含有量が0.1%未満ではその効果に乏しく、一方5.0%を超えると効果が飽和するので、Ni量は0.1〜5.0%の範囲とするのが好ましい。
Cr:0.1〜1.5%
Crは、鋼の強度向上に有用なだけでなく、靭性を大幅に向上させる元素でもある。しかしながら、含有量が0.1%未満ではその効果に乏しく、一方1.5%を超えると効果が飽和するので、Cr量は0.1〜1.5%の範囲とするのが好ましい。
Crは、鋼の強度向上に有用なだけでなく、靭性を大幅に向上させる元素でもある。しかしながら、含有量が0.1%未満ではその効果に乏しく、一方1.5%を超えると効果が飽和するので、Cr量は0.1〜1.5%の範囲とするのが好ましい。
Mo:0.05〜0.50%
Moは、鋼の強度向上に有用なだけでなく、靭性も大幅に向上させる元素である。しかしながら、含有量が0.05%未満ではその効果に乏しく、一方0.50%を超えると効果が飽和するので、Mo量は0.05〜0.50%の範囲とするのが好ましい。
Moは、鋼の強度向上に有用なだけでなく、靭性も大幅に向上させる元素である。しかしながら、含有量が0.05%未満ではその効果に乏しく、一方0.50%を超えると効果が飽和するので、Mo量は0.05〜0.50%の範囲とするのが好ましい。
Nb:0.005〜0.10%
Nbは、鋼の強度を向上するのに有用な元素である。しかしながら、含有量が0.005%未満ではその効果に乏しく、一方0.10%を超えると靭性が劣化するので、Nb量は0.005〜0.10%の範囲とするのが好ましい。
Nbは、鋼の強度を向上するのに有用な元素である。しかしながら、含有量が0.005%未満ではその効果に乏しく、一方0.10%を超えると靭性が劣化するので、Nb量は0.005〜0.10%の範囲とするのが好ましい。
V:0.005〜0.10%
Vは、鋼の強度を向上するのに有用な元素である。しかしながら、含有量が0.005%未満ではその効果に乏しく、一方0.10%を超えると靭性が劣化するので、V量は0.005〜0.10%の範囲とするのが好ましい。
Vは、鋼の強度を向上するのに有用な元素である。しかしながら、含有量が0.005%未満ではその効果に乏しく、一方0.10%を超えると靭性が劣化するので、V量は0.005〜0.10%の範囲とするのが好ましい。
Ti:0.005〜0.25%
Tiは、鋼の強度を向上するのに有用な元素である。しかしながら、含有量が0.005%未満ではその効果に乏しく、一方0.25%を超えると溶接割れが発生しやすくなるので、Ti量は0.005〜0.25%の範囲とするのが好ましい。
Tiは、鋼の強度を向上するのに有用な元素である。しかしながら、含有量が0.005%未満ではその効果に乏しく、一方0.25%を超えると溶接割れが発生しやすくなるので、Ti量は0.005〜0.25%の範囲とするのが好ましい。
以上、母材の基本成分および選択成分の適正組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に調整するだけでは不十分で、鋼組織について、残留オーステナイトを面積率で2〜30%含む組織とすることも重要である。
残留オーステナイトは、応力がかかると加工誘起変態を起こす。これが起きるのは、疲労き裂先端のみであり、き裂先端では加工誘起変態に伴い局所的な応力集中の緩和作用が働き、疲労き裂伝播速度が低減する。さらに、加工誘起変態によりき裂先端に発生する圧縮残留応力が負荷応力を緩和する作用によっても疲労き裂伝播速度は低減する。
上記した疲労き裂伝播速度低減の効果を得るためには、最低でも2%の残留オーステナイトが存在する必要がある。しかしながら、残留オーステナイトの強度はベイナイトやマルテンサイトに比較して低いため、残留オーステナイト量が30%を超えると、十分な鋼の強度が得られない。従って、残留オーステナイト量は2〜30%の範囲に限定した。好ましくは5〜15%の範囲でである。
残留オーステナイトは、応力がかかると加工誘起変態を起こす。これが起きるのは、疲労き裂先端のみであり、き裂先端では加工誘起変態に伴い局所的な応力集中の緩和作用が働き、疲労き裂伝播速度が低減する。さらに、加工誘起変態によりき裂先端に発生する圧縮残留応力が負荷応力を緩和する作用によっても疲労き裂伝播速度は低減する。
上記した疲労き裂伝播速度低減の効果を得るためには、最低でも2%の残留オーステナイトが存在する必要がある。しかしながら、残留オーステナイトの強度はベイナイトやマルテンサイトに比較して低いため、残留オーステナイト量が30%を超えると、十分な鋼の強度が得られない。従って、残留オーステナイト量は2〜30%の範囲に限定した。好ましくは5〜15%の範囲でである。
ここで、残留オーステナイト量は、X線回折法により測定する。具体的な残留オーステナイト量(面積率)は次のようにして決定する。まず、オーステナイト面積率が100%の標準試料についてX線回折法により標準試料の回折強度を求めておく。次に、被測定試料について、標準試料と同一の条件でX線回折法による回折強度を求める。最後に標準試料の回折強度に対する被測定試料の回折強度の比率を残留オーステナイトの面積率とするのである。
さらに、疲労き裂伝播速度低減の効果を高めるためには、鋼材の組織は、残留オーステナイトを面積率で2〜30%の範囲に調整した上で、ベイナイトを面積率で50%以上含む組織とすることが好ましい。その理由は、ベイナイトの面積率が50%以上であると、き裂伝播速度が高いバンド状の組織であるフェライト・パーライト組織が抑制されるからと考えられる。このように、ベイナイト(組織)は残留オーステナイト(組織)の面積率を低減しない範囲で面積率が高いほど、き裂伝播速度が低くなる効果がある。
なお、ベイナイトの面積率は、3%ナイタールによるエッチング後、100倍の倍率で5平方mm以上の視野を撮影し、写真の目視による組織の分別を行い、組織全体に対するベイナイトの面積率を画像処理等により算出することにより、求めることができる。
なお、ベイナイトの面積率は、3%ナイタールによるエッチング後、100倍の倍率で5平方mm以上の視野を撮影し、写真の目視による組織の分別を行い、組織全体に対するベイナイトの面積率を画像処理等により算出することにより、求めることができる。
次に、母材の両面を覆う合わせ材の基本成分について説明する。
C:0.005〜0.5%
Cは、溶接金属の強度を高める成分として有用である。しかしながら、含有量が0.005%未満ではその効果に乏しく、一方0.5%を超えると延性が低下したり、溶接割れの可能性が高くなるので、C量は0.005〜0.5%の範囲に限定した。
C:0.005〜0.5%
Cは、溶接金属の強度を高める成分として有用である。しかしながら、含有量が0.005%未満ではその効果に乏しく、一方0.5%を超えると延性が低下したり、溶接割れの可能性が高くなるので、C量は0.005〜0.5%の範囲に限定した。
Si:2.0〜8.0%
この合わせ材のSi量は、本発明において特に重要である。
Siは、溶接継手のビード断面における止端部の形状を良好にして、疲労き裂の発生阻止特性を改善する上で極めて重要な元素である。しかしながら、含有量が2.0%未満ではその添加効果に乏しく、一方8.0を超えると溶接金属の靭性が低下するほか、溶接金属内に欠陥が発生する要因となるので、Si量は2.0〜8.0%の範囲に限定した。
この合わせ材のSi量は、本発明において特に重要である。
Siは、溶接継手のビード断面における止端部の形状を良好にして、疲労き裂の発生阻止特性を改善する上で極めて重要な元素である。しかしながら、含有量が2.0%未満ではその添加効果に乏しく、一方8.0を超えると溶接金属の靭性が低下するほか、溶接金属内に欠陥が発生する要因となるので、Si量は2.0〜8.0%の範囲に限定した。
Mn:0.1〜3.0%
Mnは、溶接金属の強化元素として有用であるが、含有量が0.1%未満ではその効果に乏しく、一方3.0%を超えると延性の低下を招くため、Mn量は0.1〜3.0%の範囲に限定した。
Mnは、溶接金属の強化元素として有用であるが、含有量が0.1%未満ではその効果に乏しく、一方3.0%を超えると延性の低下を招くため、Mn量は0.1〜3.0%の範囲に限定した。
Al:0.01〜0.3%
Alは、脱酸元素として有用な元素であるので0.01%以上含有させる。しかしながら、含有量が0.3%を超えると延性の低下を招くので、Al量は0.01〜0.3%の範囲に限定した。
Alは、脱酸元素として有用な元素であるので0.01%以上含有させる。しかしながら、含有量が0.3%を超えると延性の低下を招くので、Al量は0.01〜0.3%の範囲に限定した。
P:0.05%以下
Pは、その含有が低いほど好ましく、含有量が0.05%を超えると溶接時の割れ発生の原因となるので、P量は0.05%以下の範囲に限定した。
Pは、その含有が低いほど好ましく、含有量が0.05%を超えると溶接時の割れ発生の原因となるので、P量は0.05%以下の範囲に限定した。
S:0.03%以下
Sは、少ないほど好ましく、含有量が0.03%を超えると靭性や延性の低下を招くので、S量は0.03%以下の範囲に限定した。
Sは、少ないほど好ましく、含有量が0.03%を超えると靭性や延性の低下を招くので、S量は0.03%以下の範囲に限定した。
その他、不純物元素としてNがあるが、このNは、靭性を劣化させる元素であるので、少ないほど好ましい。しかしながら、Alが存在する場合はAl窒化物となり、靭性のさほどの劣化を招かないので、N量は0.015%以下で許容できる。
以上、合わせ材の基本組成について説明したが、本発明では、それら以外にも必要に応じて以下の元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.001〜1.0%
Niは、鋼の靭性を向上する効果を有するので0.001%以上含有させることが好ましいが、多量に添加すると高価となるため、上限は1.0%とするのが好ましい。
Ni:0.001〜1.0%
Niは、鋼の靭性を向上する効果を有するので0.001%以上含有させることが好ましいが、多量に添加すると高価となるため、上限は1.0%とするのが好ましい。
Cr:0.001〜0.5%
Crは、板の強化に有用であるので0.001%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて多量に添加すると靭性が劣化するため、上限は0.5%とすることが好ましい。
Crは、板の強化に有用であるので0.001%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて多量に添加すると靭性が劣化するため、上限は0.5%とすることが好ましい。
Mo:0.001〜0.5%
Moは、鋼板の強化に有用であるので0.001%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて多量に添加すると靭性が劣化するため、上限は0.5%とすることが好ましい。
Moは、鋼板の強化に有用であるので0.001%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて多量に添加すると靭性が劣化するため、上限は0.5%とすることが好ましい。
Nb:0.001〜0.5%
Nbは、析出強化元素として鋼板の強化に有用であるので0.001%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて多量に添加すると靭性が劣化するため、上限は0.5%とすることが好ましい。
Nbは、析出強化元素として鋼板の強化に有用であるので0.001%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて多量に添加すると靭性が劣化するため、上限は0.5%とすることが好ましい。
V:0.001〜0.5%
Vは、鋼板の強化に有用であるので0.001%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて多量に添加すると靭性が劣化するため、上限は0.5%とすることが好ましい。
Vは、鋼板の強化に有用であるので0.001%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて多量に添加すると靭性が劣化するため、上限は0.5%とすることが好ましい。
本発明におけるクラッド鋼板において、鋼板全厚みに対する合わせ材(外層)の厚みの割合{(外層の厚み/全厚)×100}は10〜35%とすることが好ましい。というのは、この割合が10%に満たないと溶接金属中へのSi量の補給が少ないため疲労き裂の発生阻止特性の改善が十分でなく、一方35%を超えると板厚の1/4位置(全厚の1/4位置)における靱性が低下し、通常の鋼構造物用鋼板としては使用できないレベルとなるからである。
次に、本発明の製造条件について説明する。
本発明では、まず、上述した好適成分組成になる母材と合わせ材とを製造する。これらの鋼板の製造方法については特に制限はなく、従来公知の方法を適用することができる。すなわち、通常の溶製法(転炉法、電気炉法等)により上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、通常の鋳造法(連続鋳造法や造塊法)により鋳造し、得られた鋳片素材を熱間圧延して所定寸法の鋼板とする。
本発明では、まず、上述した好適成分組成になる母材と合わせ材とを製造する。これらの鋼板の製造方法については特に制限はなく、従来公知の方法を適用することができる。すなわち、通常の溶製法(転炉法、電気炉法等)により上記の好適成分組成に調整した溶鋼を、通常の鋳造法(連続鋳造法や造塊法)により鋳造し、得られた鋳片素材を熱間圧延して所定寸法の鋼板とする。
ついで、得られた母材の片面または両面に合わせ材を配置して二層または三層としたクラッド板を、圧接接合すると共に、適正な熱処理を施して組織制御を行う。
すなわち、700〜900℃に再加熱後、圧下率:50〜90%で圧接接合し、この温度域に600〜3600秒間保持したのち、5℃/s以上の冷却速度で500〜350℃の温度域まで冷却し、該温度域に少なくとも60秒間保持するのである。
以下、上記した製造条件の限定理由について説明する。
すなわち、700〜900℃に再加熱後、圧下率:50〜90%で圧接接合し、この温度域に600〜3600秒間保持したのち、5℃/s以上の冷却速度で500〜350℃の温度域まで冷却し、該温度域に少なくとも60秒間保持するのである。
以下、上記した製造条件の限定理由について説明する。
再加熱温度:700〜900℃、保持時間:600〜3600秒
再加熱温度が700℃未満では、2相域に達せず、オーステンパーの効果が得られ難く、一方900℃超では、結晶粒が粗大となるので、再加熱温度は700〜900℃の範囲に限定した。また、この再加熱温度域での保持時間が3600秒超では、粒径が大きくなって靭性の劣化を招き、一方600秒に満たないと均質化の点で問題が生じるので、保持時間は600〜3600秒の範囲に限定した。
再加熱温度が700℃未満では、2相域に達せず、オーステンパーの効果が得られ難く、一方900℃超では、結晶粒が粗大となるので、再加熱温度は700〜900℃の範囲に限定した。また、この再加熱温度域での保持時間が3600秒超では、粒径が大きくなって靭性の劣化を招き、一方600秒に満たないと均質化の点で問題が生じるので、保持時間は600〜3600秒の範囲に限定した。
圧接接合における圧下率:50〜90%
本発明では、上記した再加熱処理中に圧接接合を行って母材と合わせ材の接合強度を高める。その際、圧下率が50%に満たないと十分な接合強度が得られず、一方90%を超えると圧下の際に圧延機に過大な負荷がかかり、製造が困難となるので、圧下率は50〜90%の範囲に限定した。
本発明では、上記した再加熱処理中に圧接接合を行って母材と合わせ材の接合強度を高める。その際、圧下率が50%に満たないと十分な接合強度が得られず、一方90%を超えると圧下の際に圧延機に過大な負荷がかかり、製造が困難となるので、圧下率は50〜90%の範囲に限定した。
500〜350℃の温度域における保持時間:60秒以上
上記の再加熱後、冷却するが、この冷却の途中、500〜350℃の温度域において少なくとも60秒間保持する。
この冷却途中における保持温度(オーステンパー温度という)を500〜350℃の範囲にしたのは、このオーステンパー温度が350℃に満たなかったり500℃を超えると、必要量の残留オーステナイトを生成するのが難しくなるからである。またこのオーステンパー温度域での保持時間が60秒未満では、炭素が十分に拡散することができず濃化が不十分となり、残留オーステナイトを十分に生成できないおそれがある。なお、保持時間の上限については、脱炭防止の観点から1800秒とするのがよい。
上記の再加熱後、冷却するが、この冷却の途中、500〜350℃の温度域において少なくとも60秒間保持する。
この冷却途中における保持温度(オーステンパー温度という)を500〜350℃の範囲にしたのは、このオーステンパー温度が350℃に満たなかったり500℃を超えると、必要量の残留オーステナイトを生成するのが難しくなるからである。またこのオーステンパー温度域での保持時間が60秒未満では、炭素が十分に拡散することができず濃化が不十分となり、残留オーステナイトを十分に生成できないおそれがある。なお、保持時間の上限については、脱炭防止の観点から1800秒とするのがよい。
再加熱温度からオーステンパー温度までの冷却速度:5℃/s以上
再加熱温度からオーステンパー温度までの間の冷却については、冷却速度が遅すぎるとパーライトが析出し残留オーステナイトが少なくなり、かつベイナイト組織の面積率が50%を下回るようになるので、かかる温度域における冷却速度は5℃/s以上とする。
なお、オーステンパー温度での保持完了以後の冷却は放冷でよい。
再加熱温度からオーステンパー温度までの間の冷却については、冷却速度が遅すぎるとパーライトが析出し残留オーステナイトが少なくなり、かつベイナイト組織の面積率が50%を下回るようになるので、かかる温度域における冷却速度は5℃/s以上とする。
なお、オーステンパー温度での保持完了以後の冷却は放冷でよい。
なお、上記のようにして得た鋼材に対し、靭性を向上させるために、さらに300〜500℃の温度域で焼戻し処理を施すことは有利である。
母材および合わせ材として、表1に示す成分組成になる鋼板を用意した。これらを、図1に示すようにクラッドしたのち、表2に示す加熱−圧延−冷却条件で処理して、クラッド鋼板を製造した。図1中、符号1が母材(内層)、2が合わせ材(外層)であり、3でクラッド鋼板(三層クラッド鋼板)を示す。なお、一部については、母材(内層)1の片面のみに合わせ材(外層)2をクラッドさせたクラッド鋼板(二層クラッド鋼板)3も作製した。
かくして得られたクラッド鋼板3を用いて、図2に示す角回し溶接継手を作製し、疲労特性(応力範囲:150 MPa、応力比:0.1 の破断寿命)を調査した。また、溶接部のビード形状についても調査を行った。なお、角回し継手溶接は、軟鋼用のフラックス入りワイヤを用い、溶接電流:350 A、溶接電圧:35 Vの条件で行った。また、ビード形状については、図3に示すように、止端半径rおよび余盛角度θで評価した。この、止端半径が大きいほど、また余盛角度が小さいほど、溶接継手の疲労強度が良好であることが知られている。
かくして得られたクラッド鋼板3を用いて、図2に示す角回し溶接継手を作製し、疲労特性(応力範囲:150 MPa、応力比:0.1 の破断寿命)を調査した。また、溶接部のビード形状についても調査を行った。なお、角回し継手溶接は、軟鋼用のフラックス入りワイヤを用い、溶接電流:350 A、溶接電圧:35 Vの条件で行った。また、ビード形状については、図3に示すように、止端半径rおよび余盛角度θで評価した。この、止端半径が大きいほど、また余盛角度が小さいほど、溶接継手の疲労強度が良好であることが知られている。
表3に、調査結果を併記する。なお、表3には、母材鋼板の残留オーステナイトおよびベイナイトの面積率について調べた結果も併せて示す。
なお、残留オーステナイトおよびベイナイトの面積率は、それぞれ次のようにして測定した。
残留オーステナイトの面積率
残留オーステナイト量は、X線回折法により測定した。具体的な残留オーステナイト量(面積率)は次のようにして決定する。まず、オーステナイト面積率:100%の標準試料について、X線回折法により回折強度を求めておく。次に、被測定試料について、標準試料と同一の条件でX線回折法による回折強度を求める。次に、標準試料の回折強度に対する被測定試料の回折強度の比率を求め、残留オーステナイトの面積率とする。
ベイナイトの面積率
ベイナイトの面積率は、3%ナイタールによるエッチング後、倍率:100倍で5mm2以上の視野を撮影し、写真の目視による組織の分別を行い、組織全体に対するベイナイトの面積率を画像処理等により算出する。
なお、残留オーステナイトおよびベイナイトの面積率は、それぞれ次のようにして測定した。
残留オーステナイトの面積率
残留オーステナイト量は、X線回折法により測定した。具体的な残留オーステナイト量(面積率)は次のようにして決定する。まず、オーステナイト面積率:100%の標準試料について、X線回折法により回折強度を求めておく。次に、被測定試料について、標準試料と同一の条件でX線回折法による回折強度を求める。次に、標準試料の回折強度に対する被測定試料の回折強度の比率を求め、残留オーステナイトの面積率とする。
ベイナイトの面積率
ベイナイトの面積率は、3%ナイタールによるエッチング後、倍率:100倍で5mm2以上の視野を撮影し、写真の目視による組織の分別を行い、組織全体に対するベイナイトの面積率を画像処理等により算出する。
表3に示したとおり、発明例はいずれも、止端半径rが大きくかつ余盛角度θが小さいことから疲労き裂の発生阻止特性に優れ、また継手200万回疲労強度が130 MPa以上と優れることから疲労き裂の伝播阻止特性にも優れ、総合的に優れた疲労特性を有していることが分かる。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.01〜0.40%、
Si:0.10%以上 2.0%未満、
Mn:0.4〜3.0%、
Al:0.3〜2.0%、
P:0.05%以下および
S:0.05%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ残留オーステナイトを面積率で2〜30%含む組織になる母材の片面または両面を、同じく質量%で、
C:0.005〜0.5%、
Si:2.0〜8.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
Al:0.01〜0.3%、
P:0.05%以下および
S:0.03%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる合わせ材で覆ったことを特徴とする、疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。 - 前記母材が、さらに質量%で、Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.1〜5.0%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.10%、V:0.005〜0.10%およびTi:0.005〜0.25%のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする請求項1に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。
- 前記合わせ材が、さらに質量%で、Ni:0.001〜1.0%、Cr:0.001〜0.5%、Mo:0.001〜0.5%、Nb:0.001〜0.5%およびV:0.001〜0.5%のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする請求項1または2に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。
- 前記クラッド鋼板において、鋼板全厚みに対する合わせ材の厚みの割合が10〜35%であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板。
- 質量%で、
C:0.01〜0.40%、
Si:0.10%以上 2.0%未満、
Mn:0.4〜3.0%、
Al:0.3〜2.0%、
P:0.05%以下および
S:0.05%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる母材の片面または両面を、同じく質量%で、
C:0.005〜0.5%、
Si:2.0〜8.0%、
Mn:0.1〜3.0%、
Al:0.01〜0.3%、
P:0.05%以下および
S:0.03%以下、
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる合わせ材で挟み、700〜900℃に加熱後、圧下率:50〜90%で圧接接合し、該温度域に600〜3600秒間保持したのち、5℃/s以上の冷却速度で500〜350℃の温度域まで冷却し、該温度域に少なくとも60秒間保持することを特徴とする、疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板の製造方法。 - 前記母材が、さらに質量%で、Cu:0.1〜1.5%、Ni:0.1〜5.0%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.10%、V:0.005〜0.10%およびTi:0.005〜0.25%のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする請求項5に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
- 前記合わせ材が、さらに質量%で、Ni:0.001〜1.0%、Cr:0.001〜0.5%、Mo:0.001〜0.5%、Nb:0.001〜0.5%およびV:0.001〜0.5%のうちから選んだ一種または二種以上を含有する組成になることを特徴とする請求項5または6に記載の疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板の製造方法。
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JP2009198908A JP2010077531A (ja) | 2008-08-29 | 2009-08-28 | 疲労き裂の発生阻止特性および伝播阻止特性に優れたクラッド鋼板およびその製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008221710 | 2008-08-29 | ||
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WO2020022667A1 (ko) * | 2018-07-27 | 2020-01-30 | 주식회사 포스코 | 성형성 및 피로특성이 우수한 저비중 클래드 강판 및 그 제조방법 |
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-
2009
- 2009-08-28 JP JP2009198908A patent/JP2010077531A/ja not_active Withdrawn
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WO2017222342A1 (ko) * | 2016-06-23 | 2017-12-28 | 주식회사 포스코 | 강도 및 성형성이 우수한 클래드 강판 및 그 제조방법 |
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US11752752B2 (en) | 2018-07-27 | 2023-09-12 | Posco Co., Ltd | Low-density clad steel sheet having excellent formability and fatigue property |
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