JP2008156751A - 板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】板厚方向[Z−LもしくはZ−T方向]の靭性が、圧延方向[L−T方向]および圧延直角方向[T−L方向]の靭性より低く、板厚の1%以上の領域において所定のミクロ組織とし、さらに、フェライトの長軸方向の平均結晶粒径が5μm以上でアスペクト比が2以上とするか、または、旧オーステナイト粒の長軸方向の平均粒径が10μm以上でアスペクト比が2以上とする。前記ミクロ組織の領域を含む、板厚方向の厚さ10mm以上の領域において、表面2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られるエネルギー遷移温度に対し板厚貫通方向のエネルギー遷移温度が20℃以上高くなるようにした鋼板である。
【選択図】図1
Description
大型コンテナ船やバルクキャリアーなどの船殻における隅肉溶接構造体の被溶接材(フランジ)のクラックアレスターとして好適なものに関する。
また、板厚方向の靭性とは、図3に示す[Z−L方向]のシャルピー衝撃試験片もしくは[Z−T方向]のシャルピー衝撃試験片により得られる靭性のことである。
1.板厚方向[Z−LもしくはZ−T方向]の靭性が、圧延方向[L−T方向]および圧延直角方向[T−L方向]の靭性より低く、前記板厚方向の板厚の1%以上の領域におけるミクロ組織が、フェライトとパーライトの混合組織、または、フェライト、パーライトおよびベイナイトの混合組織からなり、前記フェライトの長軸方向の平均結晶粒径が5μm以上でアスペクト比が2以上である、板厚方向[L−Z方向]の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板。
2.前記板厚方向の板厚の1%以上の領域におけるミクロ組織が、フェライトとベイナイトの混合組織、または、ベイナイトとマルテンサイトの混合組織、もしくは、ベイナイト単相組織、あるいは、マルテンサイト単相組織からなり、旧オーステナイト粒の長軸方向の平均粒径が10μm以上でアスペクト比が2以上である、1記載の板厚方向[L−Z方向]の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板。
3.更に、前記ミクロ組織の領域を含む、板厚方向の厚さ10mm以上の領域において、板厚貫通2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られるエネルギー遷移温度vTrE[L−T]と表面2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られるエネルギー遷移温度vTrE[L−Z]が下式(1)を満足することを特徴とする、1または2記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板。
vTrE[L−Z]≦vTrE[L−T]−20(℃)・・・・・(1)
4.鋼組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:0.60%以下、Mn:0.80〜1.80%、S:0.001〜0.05%を含み、Ti:0.005〜0.050%またはNb:0.001〜0.1%の内から選んだ少なくとも1種を含み、更に、Cu:2.0%以下、V:0.2%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、W:0.5%以下、B:0.0050%以下、Zr:0.5%以下の内から選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板。
5.4に記載の成分組成を有する鋼素材を、900〜1350℃の温度に加熱し、次いで鋼板表面温度1000〜850℃の温度域において累積圧下率10%以上圧延した後、鋼板素材表面温度900〜600℃で且つ鋼板内部温度が鋼板表面温度より50〜150℃高温となる状態とした後に、1パス圧下率7%以下、累積圧下率50%以上で、圧延終了時の鋼板表面温度800〜550℃の条件にて熱間圧延することを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れる、板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板の製造方法。
6.更に、熱間圧延を終了した後、5℃/s以上の冷却速度で400℃まで冷却することを特徴とする5記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板の製造方法。
7.更に、熱間圧延を終了した後、7℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却することを特徴とする5記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板の製造方法。
8.1乃至4のいずれか一つに記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板を少なくとも被溶接材(フランジ)に用いたことを特徴とするT字もしくは十字型隅肉溶接構造体。
9.1乃至4のいずれか一つに記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板を少なくクラックアレスター用鋼板(高アレスト鋼板)として選別することを特徴とするクラックアレスター用鋼板(高アレスト鋼板)の選別方法。
図2に、成分組成と圧延条件を変化させて製造した、板厚50mmの種々の鋼板について、板厚貫通ノッチの2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られるエネルギー遷移温度vTrE[L−T]と、表面ノッチの2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られるエネルギー遷移温度vTrE[L−Z]の関係を示す。
[成分組成]
C:0.15%以下
Cは強度を確保するために必要であるが、0.15%を超えると溶接熱影響部(HAZ)靭性が低下するので、0.15%以下に限定した。なお、(211)面および(100)面の集合組織をより一層発達させるために好ましい範囲は0.03%以下である.
Si:0.60%以下
Siは強度上昇に有効な元素であるが、0.60%を超えると溶接熱影響部(HAZ)靭性を著しく劣化させるので、0.60%以下に限定した.なお、0.20%未満では強度上昇に効果が少なく、好ましくは0.20〜0.60%である。
Mnは高強度化に有効な元素であり、強度確保の観点から下限を0.80%とした。しかし、Mn量が1.80%を超えると、母材靭性の劣化が懸念される。このため,Mnは0.80〜1.80%の範囲とした。なお、好ましい範囲は1.00〜1.70%である。
本発明においては、脆性亀裂前縁にクラック(鋼板表面に平行な割れ)を発生させる必要があるため、Sの0.001%以上の添加が必要である。しかし、Sは非金属介在物を形成し延性・靭性を劣化させるため、0.05%以下に制限した。
Tiは、炭化物や窒化物の析出物を形成することにより、鋼板製造時の加熱段階でのオーステナイト粒の成長を抑制して細粒化に寄与するとともに、溶接熱影響部(HAZ)の結晶粒粗大化も抑制しHAZ靱性を向上する効果がある。これらの効果を得るには、0.005%以上の含有が必要である。一方、過度の含有は、靱性を劣化するため、0.05%を上限とする。
Nbは析出強化および靱性の向上にも有効である。また、オーステナイトの再結晶を抑制し、後述する圧延条件による効果を促進する。これらの効果を得るためには、0.001%以上の添加が必要であるが、0.1%をこえて添加すると、焼き入れ組織が針状化して靱性が劣化する傾向にあるため、0.1%を上限とする。
Cuは、主として析出強化のために用いることができるが、2.0%をこえて添加すると、析出強化が過多となり靱性が劣化する。
Vは固溶と析出強化効果が利用できる成分であるが、0.2%を超えて含有すると、母材靭性および溶接性を大きく損なうので、0.2%以下に限定した.
Ni:2.0%以下
Niは、強度および靱性を向上し、またCuを添加した場合には圧延時のCu割れを防止するのに有効であるが、高価である上、過剰に添加してもその効果が飽和するため、2.0%以下の範囲で添加することが好ましい。なお、より好ましい添加量は0.05%以上である。
Crは、強度を上昇させる効果を有するが、0.6%を超えて含有すると溶接部靱性が劣化するため、Cr含有量は0.6%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましい含有量は0.05%以上である。
Moは、常温および高温での強度を上昇させる効果を有するが、0.6%を超えて含有すると、溶接性が劣化するため、含有量は0.6%以下の範囲とするのが好ましい。なお、より好ましい含有量は0.05%以上である。
Wは、高温強度を上昇させる効果を有しているが、0.5%を超えると靱性を劣化させるだけでなく、高価であるので、0.5%以下の範囲で含有するのが好ましい。なお、より好ましい含有量は0.05%以上である。
Bは圧延中にBNとして析出し、圧延後のフェライト粒を細かくするが、0.0050%を超えると靱性が劣化するので0.0050%以下に限定した。
Zrは、強度を上昇させるほか、亜鉛めっき材の耐めっき割れ性を向上させる元素であるが、0.5%を超えて含有すると溶接部靱性が劣化するので、Zr含有量は0.5%を上限とするのが好ましい。なお、より好ましい含有量は0.05%以上である。
[加熱温度]
鋼素材は、900〜1350℃の温度に加熱する。加熱温度を900℃以上とするのは、材質の均質化と後述する制御圧延を行うために必要な加熱であり1350℃以下とするのは、過度に高温になると表面酸化が顕著になるとともに、結晶粒の粗大化が避けられなくなるからである。なお、靱性の向上のためには、上限を1150℃とすることが好ましい。
鋼板表面温度1000〜850℃の温度域において累積圧下率10%以上圧延
当該温度域で圧延することによって、オーステナイト粒が部分的に再結晶するため、組織が微細かつ均一になる。
400℃までの温度域を5℃/s以上の冷却速度で冷却すると、フェライトに混合する組織がパーライトから脆い上部ベイナイトを適度に含んだ組織に移行するため、脆性き裂前縁におけるクラックの生成が一層促進され、き裂が停止し易くなる。なお上記冷却方法においては、より好ましい冷却開始温度は700℃以上である。
Claims (9)
- 板厚方向[Z−LもしくはZ−T方向]の靭性が、圧延方向[L−T方向]および圧延直角方向[T−L方向]の靭性より低く、前記板厚方向の板厚の1%以上の領域におけるミクロ組織が、フェライトとパーライトの混合組織、または、フェライト、パーライトおよびベイナイトの混合組織からなり、前記フェライトの長軸方向の平均結晶粒径が5μm以上でアスペクト比が2以上である、板厚方向[L−Z方向]の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板。
- 前記板厚方向の板厚の1%以上の領域におけるミクロ組織が、フェライトとベイナイトの混合組織、または、ベイナイトとマルテンサイトの混合組織、もしくは、ベイナイト単相組織、あるいは、マルテンサイト単相組織からなり、旧オーステナイト粒の長軸方向の平均粒径が10μm以上でアスペクト比が2以上である、請求項1記載の板厚方向[L−Z方向]の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板。
- 更に、前記ミクロ組織の領域を含む、板厚方向の厚さ10mm以上の領域において、板厚貫通2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られるエネルギー遷移温度vTrE[L−T]と表面2mmVノッチシャルピー衝撃試験により得られるエネルギー遷移温度vTrE[L−Z]が下式(1)を満足することを特徴とする、請求項1または2記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板。
vTrE[L−Z]≦vTrE[L−T]−20(℃)・・・・・(1) - 鋼組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:0.60%以下、Mn:0.80〜1.80%、S:0.001〜0.05%を含み、Ti:0.005〜0.050%またはNb:0.001〜0.1%の内から選んだ少なくとも1種を含み、更に、Cu:2.0%以下、V:0.2%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.6%以下、Mo:0.6%以下、W:0.5%以下、B:0.0050%以下、Zr:0.5%以下の内から選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板。
- 請求項4に記載の成分組成を有する鋼素材を、900〜1350℃の温度に加熱し、次いで鋼板表面温度1000〜850℃の温度域において累積圧下率10%以上圧延した後、鋼板素材表面温度900〜600℃で且つ鋼板内部温度が鋼板表面温度より50〜150℃高温となる状態とした後に、1パス圧下率7%以下、累積圧下率50%以上で、圧延終了時の鋼板表面温度800〜550℃の条件にて熱間圧延することを特徴とする脆性亀裂伝播停止特性に優れる、板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板の製造方法。
- 更に、熱間圧延を終了した後、5℃/s以上の冷却速度で400℃まで冷却することを特徴とする請求項5記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板の製造方法。
- 更に、熱間圧延を終了した後、7℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却することを特徴とする請求項5記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板を少なくとも被溶接材(フランジ)に用いたことを特徴とするT字もしくは十字型隅肉溶接構造体。
- 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の板厚方向の脆性亀裂伝播停止特性に優れる板厚50mm以上の鋼板を少なくクラックアレスター用鋼板(高アレスト鋼板)として選別することを特徴とするクラックアレスター用鋼板(高アレスト鋼板)の選別方法。
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US20130000798A1 (en) * | 2008-12-26 | 2013-01-03 | Jfe Steel Corporation | Steel material excellent in resistance of ductile crack initiation from welded heat affected zone and base material and method for manufacturing the same |
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2007
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US20130000798A1 (en) * | 2008-12-26 | 2013-01-03 | Jfe Steel Corporation | Steel material excellent in resistance of ductile crack initiation from welded heat affected zone and base material and method for manufacturing the same |
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