JP2007323386A - 非接触タグ - Google Patents

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匡彦 平井
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Hideyuki Sonoya
英之 相野谷
Shinichi Tachibana
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Abstract

【課題】視認で獲得しうる情報を備え、且つ、真贋判定を非接触で可能とする非接触タグを提供する。
【解決手段】アンテナコイル12と、下部電極15,上部電極16とを備えたコンデンサからなる共振回路を含む非接触タグにおいて、該コンデンサの上部電極にアンテナコイル12の一端が電気的に接続され、上記コンデンサの上部電極16と下部電極15とに挟持された誘電体を商標や意匠等の図形パターンを備えた図形パターン部材13とする。
【選択図】図6

Description

本発明は、非接触タグに関するものである。より詳細には、非接触タグを構成する共振回路のアンテナコイル又はコンデンサに、交換可能な図形パターン部材を付加した非接触タグに関するものである。
時計、バッグ、財布などの小物に関しては、一般に高級ブランドメーカーとして広く認知された商標が貼付された商品に人気が集中し、ブランド品として市場において高額で取引されている。これらの商品は製造個数もそれほど多くはなく、その品質維持のため、自社又は認定工場で一定基準を満たした材料及び製造方法などで製造されている。
一方で、ますます高まるブランド志向に便乗した偽造品も多く出回っている。原因は、そういった偽造品が正規品に比較して安価であり、尚且つ、その商品品質も購入者には一般には見分けがつかない程度に確保されているためである。
しかし、商標権の使用許諾を受けていない第三者が同一商標を使って偽造品や類似品を製造、販売すれば商標権侵害となる。
このため、こういったブランド品の真贋判定が必要とされているが、これには、個々のブランド品に対して特別の知識が不可欠であり、鑑定可能な人材が限定されてしまう。又、特に、商品に記されている商標、文字、絵、記号から真贋判定を実施する場合は、鑑定人自身の鑑定能力によるところが大きくなっている。こうした、鑑定の難しさも、ブランド品の偽造品が市場に出回っている一つの要因である。
この結果、正規のブランドメーカーは意匠権や商標権を侵害され、本来の利益を損なうという大きな問題が発生している。又、購入者がその偽造品を使用した際に、その品質や機能が低下した場合、或いは、偽造品と対になった装置類の故障などが発生した場合には、正規メーカーの信頼が損なわれ、無形資産ともいえるコーポレートブランド価値にダメージを受けるという問題も起こる。
この問題を解決するため、特許文献1には不揮発メモリチップを搭載したICタグが偽造品判別用タグとして提案されている。該タグは、商品に埋設することにより、非接触通信で、不揮発メモリに記憶されたデータを読み書きし、それが正規品か否かを容易に判別するシステムである。
又、こうした偽造品判別を目的としてタグを貼付する際には、多くの場合、アンテナコイル付のICタグが使用される。しかしながら、そのコイルパターンは単純な繰り返しパターンであり、美的な外観とは相容れない無機質なものになるという欠点も新たに発生してしまう。そのため、アンテナパターンに光回折構造層を設けるなどの工夫をこらしたものも提案されている(特許文献2参照)。
特開2000−148950号公報 特開2002−366915号公報
上記したようにICタグを商品に埋設する場合、生産個数のそれほど多くない時計、バッグ、財布などの高額ブランド品の場合は、比較的高価な不揮発メモリを搭載したICタグをこれらに埋設しても採算がとれるため問題はない。しかしながら、ブランド小物とは対照的に安価で大量に供給される商品の場合には、このような高価なICタグを利用するのは、コスト的に難しい。又、一方でICタグを使用したとしても、商品情報やロットナンバーなどは内部の不揮発メモリに記憶されているため、商品を手に取った人は、一般的にその情報を簡単に視認することはできない。
又、意匠を重視したアンテナコイルについても、外観を整えることはできても、それが電気的な情報と直接関連付けられているわけではなかった。即ち、例えば商標といった偽造判別の一手段となりうる商品情報は視認専用であり、固有の電気的情報として無線式リーダライタといった装置で認識されることはなかった。
本発明の目的は、視認で獲得しうる情報を備え、且つ、真贋判定を非接触で可能とする非接触タグを提供することにある。
本発明の第1は、アンテナコイルとコンデンサとからなる共振回路を有する非接触タグにおいて、前記非接触タグが、前記コンデンサを構成する電極の少なくとも一方と前記アンテナコイルとに電気的に接続されている導電性の図形パターン部材を有することを特徴とする。
ここで、前記図形パターン部材は二次元バーコードであることが好ましい。また、前記バーコードを構成する導電材料が前記コンデンサの絶縁破壊時に変形することで、バーコードの情報内容が変化することが好ましい。
本発明の第2は、アンテナコイルとコンデンサとからなる共振回路を含む非接触タグにおいて、前記コンデンサが、第1の電極と、誘電体と、第2の電極とからなり、前記誘電体が絶縁性の図形パターン部材からなることを特徴とする非接触タグである。
前記図形パターン部材の図形パターンが商標又は意匠であることが好ましい。
また、前記図形パターン部材が上記共振回路より取り外し交換可能であることが好ましい。
本発明によれば、高価な不揮発メモリなどを使用することなく、真贋判定を非接触で可能なタグを提供することができる。又、商標、文字、絵、記号といった様々な図形を象った部材はそれぞれタグの静電容量を通して固有の共振特性に対応付けられることになり、意匠性にも優れたタグとして、真贋判定を非接触で可能とすることができる。又、図形パターン部材が交換可能であるため、該部材の導電性欠如や絶縁破壊などの発生があっても、タグそのものを交換する必要がなく、経済的である。
本発明は、アンテナコイルとコンデンサ(キャパシタ)からなる共振回路を含む非接触タグにおいて、商品情報である商標や意匠などの図形パターンを備えた部材を上記アンテナコイルやキャパシタに交換可能な形で電気的に接続する。この構成において、図形パターン部材は、アンテナコイルやキャパシタの回路素子の単なる電気部品としてだけではなく、その貼付される商品の情報の一部として機能する。これにより、貼付される商品自体の意匠性を損なわない。更に、タグさえ貼付すれば商品への意匠の印刷といった別工程を省略することも可能であり、コストの低下に寄与することができる。
又、この図形パターン部材は、図形パターンに固有の面積或いは部材の素材に特有の誘電率を有するため、用いる図形パターン部材ごとにキャパシタの静電容量値が自動的に決定する。これにより特定の共振周波数で共振する非接触タグとして機能する。従って、不揮発ICチップを搭載しない共振回路のみからなるような安価な構成にも好適に使用できる。この結果、単なる図形パターンの印刷物などの模造が貼付された偽造品では共振特性を有しないため、安価な非接触タグとして、その真贋を判定することができる。
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。先ず、本発明でいうところの非接触タグとは、自動認識或いは偽造防止システムの媒体として、リーダライタ装置から発信される電波を利用して非接触でデータの送受信が可能なタグである。この非接触タグは共振回路を含むが、ICチップを搭載したものは、多くの場合、ICチップに内蔵されたキャパシタ素子と基板に設けられたアンテナコイルによって共振回路が形成されている。又、ICチップを搭載しない場合は、基板上に予め設けられたコンデンサ素子との間で共振回路が形成される。この場合は、ICチップのような大容量データは扱えないが、安価であるため、情報量が少なくても十分な用途、例えば、万引き防止タグや簡単な偽造防止タグなどの共振タグとして好適に用いることができる。
〔第1の実施形態〕
ICチップ非搭載且つ導電性の図形パターン部材を使用する場合の非接触タグの実施形態について説明する。なお、本発明および本実施形態において、図形パターン部材とは、金属や誘電体を素材とした特定の面積を有する部材のことである。例えば、商標、意匠、マークなど所定の情報を示す図形や文字を象った一定の形状とそれに伴う特定の面積を有する部品のことである。
図1は、本発明の非接触タグの一実施形態に係る平面模式図であり、図2は図1中のA−A’断面模式図である。
本例の非接触タグは、基板1の一方の面上に、アンテナコイル2、図形パターン部材3、コンタクトパッド4が設けられ、他方の面に電極5が設けられる。電極5とアンテナコイル2とはコンタクトパッド4と導通VIA6とを介して電気的に接続されている。また、図形パターン部材3とアンテナコイル2とコンタクトパッド4も電気的に接続されている。なお、導通VIA6は、例えば、レーザーによる穿孔貫通の後、銀ペーストで穴埋めすることで形成される。
基板1はその上に設けられる各素子を支持するためのものであり、特に限定されないが、ガラス基板、樹脂基板、紙等の絶縁性基板が好適に用いられる。
アンテナコイル2、コンタクトパッド4、電極5、導通VIA6には、導電性の材料が用いられる。このような導電性の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル等の金属材料、ITO、カーボン等の無機材料、共役系有機材料、などが挙げられる。その中でも特に、高いQ値などのより良い共振特性のためには、高い導電性を有する材料が好ましい。
本例において図形パターン部材3は導電性であり、後述するコンデンサの電極としても働くため、アルミニウム、金、銀、ニッケル等の金属材料、ITO、カーボン等の無機材料、共役系有機材料、などの導電性材料から適宜選択される。
図3は図1の非接触タグの電気的な等価回路であり、コンデンサCとアンテナコイルLで構成されるLC共振回路である。ここで、コンデンサCは、図2に示すように基板1を図形パターン部材3と電極5で挟むことで構成するコンデンサであり、基板1は誘電体としての機能も果たしている。また、アンテナコイルLは図1や図2に示すように図形パターン部材3やこれと接続されたアンテナコイル2である。このようなLC共振回路において、その共振周波数fはf=1/{2π(LC)1/2}で表される。従って、LとCとを適宜調整すれば、所定の共振特性を持った共振回路を設計することができる。更に、図1で例示したような図形パターン部材3として「★★★」という図形が描画されていた場合、この図形と裏面の電極5の重なり部分がコンデンサとしての実効面積となる。よって、図形の面積Sとして、C=εS/d(ε:誘電体の誘電率、d:誘電体の膜厚)の関係式でコンデンサの静電容量に反映される。このため、ある特定の図形を共振周波数に対応づけることが可能となる。即ち、この図形が、例えば商標であれば、該商標に固有の面積がコンデンサの静電容量という電気的なパラメータに置換され電気的方法でも認識できるものとなる。また、図形パターン部材3は予め描画するのではなく、別途、金属の切り抜きによるなどしてパターン化した部材を用意し、この別部材を電極5と重なるように導電ペーストなどでアンテナコイルに電気的に接続されるように貼付してもよい。この方法によれば、図形パターン部材を交換できる。
或いは、基板1と誘電体が兼用となる上述の方法とは異なる方法を採用してもよい。例えば、樹脂基板上に予めパターン化された金属薄膜を作製しておき、コンデンサの下部電極に対応する部分の上に誘電体として、別途、スパッタリングなどによる酸化物薄膜などを成膜する。更に、その上からコンデンサ上部電極として、スクリーン印刷などで導電性ペーストを塗布し、共振回路として用いても良い。
図1で示した非接触タグは一般的な方法で作製することができる。例えば10μm程度の厚さを有する誘電体のフィルムの両側に金属薄膜を形成し、この金属薄膜を所定のパターンにエッチングし、回路として使用すればよい。又、パターンをエッチングで描画する代わりにスクリーン印刷やインクジェット印刷、或いは複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真プロセスを利用した方法を用いても良い。具体的には特開2004−93785号公報、Advanced Functional Materials,15,51,2005等に開示されている。
〔第2の実施形態〕
ICチップ非搭載且つ絶縁性の図形パターン部材を使用する場合の非接触タグの実施形態について説明する。
図6は、本発明の非接触タグの一実施形態に係る平面模式図であり、図7は図6中のA−A’断面模式図である。
本例の非接触タグは、基板11上に、アンテナコイル12、下部電極15、絶縁性の図形パターン部材13、上部電極16、コンタクトパッド14、導電性接着剤17が設けられている。
基板11は、その上に設けられる各層を支持するためのものであり、特に限定されないが、ガラス基板、樹脂基板、紙等絶縁基材が好適に用いられる。
アンテナコイル12、コンタクトパッド14、上部電極16、下部電極15には、導電性の材料が用いられる。そのような導電性の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル等の金属材料、ITO、カーボン等の無機材料、共役系有機材料、などが挙げられる。その中でも特に、高いQ値などのより良い共振特性のためには、高い導電性を有する材料が好ましい。又、上部電極16に関しては、図形パターン部材13が視認できるようにという観点から透明性の高いものが好ましい。
図形パターン部材13は絶縁性の材料である。絶縁性の材料の例としては、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの無機材料、もしくは、樹脂材料と無機材料の混合物などが挙げられる。又、任意の面積と膜厚をもった部材として成型される。
図8は図6の非接触タグの電気的な等価回路であり、コンデンサC1、C2とアンテナコイルLとで構成されるLC共振回路である。ここで、図形パターン部材13は上部電極16と下部電極15のスペーサーとなり、コンデンサの誘電体として機能する。また、コンデンサC1は、図形パターン部材13をはさむ部分すなわち誘電体を有する領域に起因する容量であり、コンデンサC2は図形パターン部材13をはさまない空隙部分に起因する容量である。コンデンサC1とC2において、下部電極15および上部電極16は共通であることからコンデンサC1およびC2は電気的に接続されている。また、アンテナコイルLは、図6および図7に示すアンテナコイル12である。このようなLC共振回路において、その共振周波数fはf=1/{2π(LC)1/2}で表される。ここで、Cは図形パターン部材13の占める容量C1と空気部分の占める容量C2の合成容量であり、図形パターン部材13の膜厚、誘電率、面積によって決まる。図形パターン部材13の面積をS、誘電率をε、厚みをd、空気の誘電率をεair、上部電極16の面積をS0とした場合、C={εS+εair(S0−S)}/dの関係式で合成静電容量Cに反映される。このため、ある特定の図形を共振周波数に対応づけることが可能となる。また、上部電極16は導電性接着剤17でパッド14と接続されており、剥離することが可能である。したがって、剥離したのち、別途用意した異なる図形パターン部材13を下部電極15上に設置し、再度、上部電極16の端部に導電性接着剤を塗布し、部材13の上からおさえ接着すれば、容易に部材を交換することができる。
〔第3の実施形態〕
ICチップを搭載した非接触タグの場合について説明する。
図11は、本発明の非接触タグの一実施形態に係る平面模式図であり、図12は図11中のA−A’断面模式図、図13は図11中のB−B’断面模式図である。
本例の非接触タグは、基板11の一方の面上に、アンテナコイル12、コンタクトパッド14,22、下部電極15、絶縁性の図形パターン部材13、上部電極16が設けられる。また、基板11の他方の面には、ICチップ21が設けられ、裏面導通配線24、導通VIA25、コンタクトパッド22,23を介してアンテナコイル12に電気的に接続される。
基板11はその上に設けられる各層を支持するためのものであり、第1及び第2の実施形態と同様に、ガラス基板、樹脂基板、紙等の絶縁性基材が好適に用いられる。
又、アンテナコイル12、コンタクトパッド14、22、23、裏面導通配線24、導通VIA25は、導電性材料からなる。そのような導電性材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル等の金属材料、ITO、カーボン等の無機材料、共役系有機材料、などが挙げられる。その中でも特に、高いQ値などのより良い共振特性のためには、高い導電性を有する材料が好ましい。
本例においては、下部電極15と絶縁性図形パターン部材13と上部電極16よりなるコンデンサが共振回路のICチップに加えた付加的な容量成分として機能し、静電容量が微調整される。上部電極16の端部は導電性接着剤17によりコンタクトパッド14と接続される。この絶縁性図形パターン部材13は第2の実施形態と同様の方式で交換可能である。
また、これら実施の形態1〜3のいずれにおいても、コンデンサ内の誘電体を絶縁破壊することにより、共振特性の消去を行うことが可能である。共振特性の消去は、偽造防止のチェック有無などに好適に使用することができる。なお、前記誘電体の絶縁破壊は、プローブなどを誘電体に直接接触させて電圧を印加することによって生じさせても良いが、誘電体外部からの電磁波照射によって起こる共振電圧によって生じさせることが好ましい。
(実施例1)
レーザービームプリンタを用いて図1に示した非接触タグを、裏面の電極5の面積が表面の図形パターン部材を十分にカバーするようにした状態で、図形パターンの「★」を1個として作製した。十分にカバーすることで、図形パターン部材の占める全面積が静電容量に反映される。作製工程を図4を参照しながら説明する。
先ず基板1としてポリイミド(PI)基板を用いた。この基板1上にキヤノン(株)製レーザービームプリンタ「LBP−1310」を使用してパソコン上で作図したパターンを両面印刷した。パターンはアンテナコイル2、図形パターン部材3、コンタクトパッド4以外を黒印刷するパターンであり、このパターンの黒印刷部分がPI基板1上でのトナー7となり、いわゆるマスクとしての役割を果たす。コンタクトパッド4に対応する部分にレーザーにより穿孔貫通させ銀ペーストで穴埋めし、導通VIA6とした〔図4(a)〕。次に、この印刷済みPI基板を真空蒸着器に投入し、アルミニウム薄膜8を真空蒸着した〔図4(b)〕。最後に、このサンプルをトルエン中に浸漬し、超音波を1分かけて、トナー部分を溶かした〔図4(c)〕。この際、トナー部に蒸着されていたアルミニウムも同時に剥離されるため、図1で示したようなアンテナコイル2、図形パターン部材3、コンタクトパッド4の導電性パターンが基板1上に残存し、共振回路として動作する。
このようにレーザービームプリンタで作図する方法では、容易にパターンの変更が可能であるため、小ロット多品種の製造に適しており、そのような小ロットの要望に応える際のコスト低減にも効果的である。
次に、作製した非接触タグの共振周波数の測定をヒューレットパッカード(株)製ネットワークアナライザー(商品名「HP8753E」)を用いて行った。実際には図5に示すような共振特性が観察された。
図5から分かるように、図形パターンが「★」1個の非接触タグは約39MHzの位置に共振ピークが存在する。よって、この「★」1個の図形パターンは39MHzの共振周波数を固有情報として持つといえる。更に、39MHzの共振ピークを持つ「★」を基準として、該部材を「★★」2個、「★★★」3個と面積を大きくした図形パターン部材3に交換して共振周波数を測定した。その結果、図5に示すように、面積を2倍にした「★★」は28MHz、面積を3倍にした「★★★」は19MHzとなった。即ち、作製した図形パターンがその面積に応じて、それぞれ固有の共振周波数を自動的に割り振られることになり、外部から、その図形を電波で固体識別及び真偽判定することが可能となる。もし、図形を商標などにしておけば、商標はその面積に応じた共振周波数に対応されるため、目視による検査に加えて、非接触で真偽判定も可能となる。
尚、ニッケル板を星型に切り抜いておき、それをアンテナコイルに貼付して別途図形パターン部材3を形成しても、同様の結果が得られた。
具体的には、切り抜いたニッケル板は、次のように基板へ交換することができる。ここで基板としては、「★」パターンを持たないように設計された以外は上述した方法でアンテナコイルが印刷されたものを用いた。まず、このアンテナコイルの内側の一端に銀ペーストを塗布した後、この上にニッケル板を貼付し、180℃で加熱接着した。これにより、星型に切り抜かれたニッケル板とアンテナコイルが電気的に接続され図形パターン部材交換済みのサンプルとなる。また、このニッケル板を剥離し、再び同様の方法で別の星の数をもつニッケル板を貼付することを繰り返すことで容易に交換できた。
(実施例2)
図6に示した非接触タグを作製した。
先ず、基板11としてポリイミド(PI)基板を用いた。この基板11上に銅箔を貼り付けたものをエッチングすることで、図6に示すパターンを有するアンテナコイル12、コンタクトパッド14、下部電極15を得た。下部電極15上に、図形パターン部材13を設置し、更にその上から上部ITO電極16で押さえ込み、導電性接着剤17として導電ペーストで接点を通して、コンタクトパッド14と上部ITO電極16を接続した。
尚、図形パターン部材13としては、膜厚5μmのポリイミドフィルムを「★」に切り抜いて使用した。
得られた非接触タグの共振周波数の測定を実施例1と同様に行った。実際には図9に示すような共振特性が観察された。
図9から分かるように、「★」1個は約28MHzの位置に共振ピークが存在する。よって、この「★」1個の図形パターンは28MHzの共振周波数を固有情報として持つといえる。更に、28MHzに共振ピークを持つ「★」1個を基準として「★★」2個、「★★★」3個と面積を大きくした非接触タグを作製した。具体的には、上部電極16を外して、図形パターン部材13を順番に交換、上部電極の端部に導電ペーストを塗布したのち、再び上部電極16で挟み込んで固定し、共振周波数を測定していった。その結果、図9に示すように、面積を2倍にした「★★」は24MHz、面積を3倍にした「★★★」は21MHzとなり、共振周波数が変化した。これにより、図形パターン部材13を誘電体とした場合も、そのパターンによって固有の共振周波数が割り当てられ、無線でその情報を認識することが可能であることがわかった。
(実施例3)
図形パターン部材13の素材を以下のように変えた以外は実施例2と同様にして非接触タグを作製した。
図形パターン部材13の素材としては、アクリロニトリルブタジエン重合体(ABS)樹脂と酸化チタン微粒子(粒径80nm)を混合した複合材料とし、酸化チタン微粒子の体積分率を変えた。この素材を膜厚5μmのフィルム状に成型し、その形状は「★」型とした。図10は、酸化チタン微粒子の体積分率を0%から30%、60%と増加させた場合について、共振特性を調べた結果である。0%、30%、60%の場合、それぞれ29MHz、28MHz、24MHzと共振周波数が観測された。つまり、同じ面積を占めるパターンであっても、誘電率の異なる二種類以上の誘電体を混合することで誘電体の誘電率を制御し、異なる共振周波数を割り当てることができる。これは、異なる図形パターンであっても面積が等しい特別の場合などに共振周波数の重複を回避するために適用できる。また、誘電率の異なる誘電体同士を混合することで、誘電率の微調整も可能となる。
(実施例4)
実施例1と同様にして作製した「★」1個の非接触タグを作製した。該タグは39MHzで共振していた。一方、共振回路内部に誘導起電力を発生させるための電圧印加装置として別途用意したアンテナコイルにパルスジェネレータを接続したものを用意した。この装置によれば、該装置のアンテナコイルから送信された電磁波が非接触タグ側のアンテナコイル2と相互作用して誘導起電力が発生する。尚、以下に記す電圧とはパルスジェネレータからアンテナコイルへ出力される正弦波のピークトゥピーク値とした。ここでピークトゥピーク値20Vの交流信号(39MHz)をアンテナコイルへ導入すると、非接触タグと結合し、誘導起電力が発生した。この結果、非接触タグのコンデンサにおいて絶縁破壊が起こり、タグの共振が観察されなくなった。
この共振特性の消去は、偽造防止のチェック有無などに好適に使用することが可能である。
(実施例5)
図11に示す非接触タグを作製した。
先ず、基板11としてPI基板(75μm厚)を用いた。この基板11上に銅箔を貼り付けたものをエッチングすることで、所定のパターンを有するアンテナコイル12、下部電極15、コンタクトパッド14、22、23、裏面導通配線24を得た。裏面導通配線24はICチップ21のパッド(不図示)へ導電部材で接続される。次いで、下部電極15の上に図形パターン部材13を設置して、透明なITO電極16で挟み込み、非接触タグとした。導通VIA25はパッド22をレーザーで穿孔貫通したのち銀ペーストで穴埋めすることで作成した。
尚、図形パターン部材13は、膜厚5μmのポリイミドフィルムを「★」に切り抜いて使用した。
得られた非接触タグは、市販のリーダライタで問題なく交信することが可能であった。又、図形パターン部材13のパターンを実施例2と同様に変更した場合には、共振周波数の微調整が可能であり、同じく、図形の認識が可能であった。
(実施例6)
図14〜図16を参照して、図形パターン部材13が二次元バーコードである非接触タグの実施例を示す。図14は該非接触タグの平面模式図、図15は図14の非接触タグの二次元バーコード27を外した状態の平面模式図、図16は図14中のA−A’断面模式図である。
先ず、絶縁性の基板11の表面上にコンデンサの下部電極15、及びアンテナコイル12のパターンを形成する。次いで基板11の裏面へ配線をまわすコンタクトパッド22を形成する。基板11の裏面には、コンタクトパッド22と電気的に導通したパッド23が形成され、裏面導通配線24でそれらが更に電気的に接続される。尚、基板11には、コンタクトパッド22と23とを電気的に接続する導通VIA25が形成されている。
次に、メタルマスクを通してアルミナ薄膜26をスパッタリング法により電極15を被覆するように成膜する。この際、アルミナ薄膜26の膜厚を適宜調節することにより望みの静電容量を持つコンデンサを構成することができ、所望の共振周波数に設定することができる。ここでは、アルミナ薄膜の膜厚を200nmとした。尚、アルミナ薄膜の膜厚は1nm以上、1000nm以下が望ましい。膜厚が薄すぎると不可逆な絶縁破壊が発生或いはコンデンサ初期不良率が高くなり、又、厚すぎるとコンデンサの可逆的な静電容量の変化を誘起するのに必要な電圧が高くなるためである。
最後に所定の位置に導電ペーストをスクリーン印刷法にて印刷し、コンデンサの上部電極としても動作する二次元バーコード27のパターンを形成する。この際、二次元バーコード27の外周はアンテナコイル12の一端に導電性接着剤17を介して接続されている。尚、二次元バーコード印刷では、スクリーン印刷の他にインクジェット法、オフセット印刷法を用いてもよい。結果としてコイル12とコンデンサが配線で接続されたLC共振回路が形成される。上記導電ペーストの材料は金、銀、銅やカーボンなど導電性のものであれば任意に選択できるが、共振特性のQ値を良好に保つためになるべく低抵抗なものとすることが望ましい。併せて、二次元バーコード27の読み取りを容易ならしめるため、コントラストが十分にとれるペーストがより好ましい。
こうして形成されたLC共振回路を含む非接触タグの共振周波数の測定はヒューレットパッカード(株)製ネットワークアナライザー(商品名「HP8753E」)を用いて行った。又、非接触タグの回路内部に誘導起電力を発生させるための電圧印加装置としては別途用意したアンテナコイルに信号発生器を接続したものを用いた。この装置により、アンテナコイルから送信された電磁波が共振タグ側のアンテナと相互作用して誘導起電力が発生する。
得られた非接触タグは、二次元バーコード27の外周に接した黒(導電性ペーストで塗られた)セルとそれに連続的に接続された黒セル群がコンデンサの上部電極として働く。最終的に、その連続的なセルの面積の総和が上部電極の総面積となり、コンデンサの容量を介して、共振特性に反映された。
共振周波数1.6MHzの二次元バーコードを備えた非接触タグに外部から周波数1.6MHz、出力500mWの電磁波を信号発生器から照射した。その結果、タグ内に発生した誘導起電力により、タグ内のコンデンサに絶縁破壊が発生し、共振特性を示さなくなった。この際、CCDカメラにて、コンデンサの上部電極でもある、バーコードパターンを観察したところ、電極の一部即ちセルの一部に絶縁破壊に起因する黒化或いは電極のびらんによる欠損がみられた。このため、二次元バーコードとしての読み取りが不可能となった。つまり、二次元バーコードの情報を外部からの電波によって、変更消去することが可能であった。
本発明の第1の実施形態の非接触タグの平面模式図である。 図1の非接触タグの断面模式図である。 図1の非接触タグの等価回路図である。 本発明の実施例1の非接触タグの作製プロセスを示す断面模式図である。 本発明の実施例1の非接触タグの共振特性を示す図である。 本発明の第2の実施形態の非接触タグの平面模式図である。 図2の非接触タグの断面模式図である。 図2の非接触タグの等価回路図である。 本発明の実施例2の非接触タグの共振特性を示す図である。 本発明の実施例3の非接触タグの共振特性を示す図である 本発明の第3の実施形態の非接触タグの平面模式図である。 図11の非接触タグの断面模式図である。 図11の非接触タグの断面模式図である。 本発明の実施例6の非接触タグの平面模式図である。 図14の非接触タグの二次元バーコードを取り外した状態の平面模式図である。 図14の非接触タグの断面模式図である。
符号の説明
1 基板
2 アンテナコイル
3 導電性図形パターン部材
4 コンタクトパッド
5 電極
6 導通VIA
7 トナー粒子
8 アルミニウム薄膜
11 基板
12 アンテナコイル
13 絶縁性図形パターン部材
14 コンタクトパッド
15 下部電極
16 上部電極
17 導電性接着剤
21 ICチップ
22,23 コンタクトパッド
24 裏面導通配線
25 導通VIA
26 アルミナ薄膜
27 二次元バーコード

Claims (6)

  1. アンテナコイルとコンデンサとからなる共振回路を有する非接触タグにおいて、前記非接触タグが、前記コンデンサを構成する電極の少なくとも一方と前記アンテナコイルとに電気的に接続されている導電性の図形パターン部材を有することを特徴とする非接触タグ。
  2. 前記図形パターン部材が二次元バーコードであることを特徴とする請求項1に記載の非接触タグ。
  3. 前記ニ次元バーコードを構成する導電材料が前記コンデンサの絶縁破壊時に変形することで、前記バーコードの情報内容が変化することを特徴とする請求項2に記載の非接触タグ。
  4. アンテナコイルとコンデンサとからなる共振回路を含む非接触タグにおいて、前記コンデンサが、第1の電極と、誘電体と、第2の電極とからなり、前記誘電体が絶縁性の図形パターン部材からなることを特徴とする非接触タグ。
  5. 前記図形パターン部材の図形パターンが商標又は意匠である請求項1または4に記載の非接触タグ。
  6. 前記図形パターン部材が前記共振回路より取り外し交換可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非接触タグ。
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