JP2007323096A - 液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】迅速にスプレイ配向からベンド配向への配向の転移を行うことができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】互いに対向する第1の基板と第2の基板との間に保持された液晶に電場を印加し、前記液晶の配向をベンド配向に転移させる方法であって、前記液晶のスプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn≧k11≧6×10-7dynの範囲とし、且つ、前記第1の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ1とし、前記第2の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ2としたとき、1.57rad>|θ1−θ2|≧0.0002radなる関係を満たすことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【選択図】図41
【解決手段】互いに対向する第1の基板と第2の基板との間に保持された液晶に電場を印加し、前記液晶の配向をベンド配向に転移させる方法であって、前記液晶のスプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn≧k11≧6×10-7dynの範囲とし、且つ、前記第1の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ1とし、前記第2の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ2としたとき、1.57rad>|θ1−θ2|≧0.0002radなる関係を満たすことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【選択図】図41
Description
本発明は,テレビジョン画像やパーソナルコンピューター、マルチメディア画像を表示する高速応答で広視野のOCBモードの液晶表示装置及びその製造方法、並びに液晶表示装置の駆動方法に関する。
従来、液晶表示装置として、例えばその液晶表示モードとして、誘電率異方性が正のネマティック液晶を用いたツイステッドネマティック(TN)モ−ドの液晶表示素子が実用化されているが、応答が遅い、視野角が狭いなどの欠点がある。また、応答が速く、視野角が広い強誘電性液晶(FLC)や反強誘電性液晶などの表示モ−ドもあるが、焼き付き、耐ショック性、特性の温度依存性などに大きな欠点がある。また、視角が極めて広い、面内で液晶分子を横電界駆動する面内スイッチング(IPS)モードがあるが、応答が遅くかつ開口率が低く輝度が低い。フルカラー動画を大画面で表示しようとすると、広視野、高輝度、高速の表示性能を持つ液晶モードが必要であるが、これを同時に完璧に満足する実用的な液晶表示モードは現在のところ、存在しない。
従来、少なくとも広視野で高輝度をめざした液晶表示装置として、上記のTNモード液晶領域を配向2分割にして視野角を上下に拡大したものがある(SID92 DIGEST P798〜801)。即ち、液晶表示装置の各表示画素内に誘電率異方性が正のネマチック液晶を用い、TNモードでかつ液晶分子の配向方位が異なる2つの液晶領域を形成し、すなわち配向2分割TNモードによって視野角を拡大するものである。
図48にその従来の液晶表示装置の構成概念図を示す。図48において、701,702はガラス基板であり、703,704は電極であり、705,705’,706,706’は配向膜である。一方の配向領域Aにおいて対向する上下基板界面から若干傾いた誘電率異方性が正のネマチックの液晶分子707,707’の大,小のプレチルト角を形成し、他方の配向領域Bにおいては対向する上下基板界面に対してプレチルト角の大きさを前記配向領域Aとは逆の設定にする。その大小のプレチルト角はいずれも数度で差がつくように設定している。上記互いに上下基板にプレチルト角が異なる配向領域を形成する従来の作製法の例として、配向膜にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフ技術でマスキングをし所定の方向に所望の配向膜面をラビングをする作業を繰り返すなどの方法がある。上記構成で図48の如く、配向領域A,Bで液晶層中央部の液晶分子群の向きが互いに逆向きとなり、電圧印加とともに各配向領域の液晶分子が逆に立ち上がっていくために、画素単位で入射光線に対して屈折率異方性が平均化されて視野角の拡大が図れるものである。上記の従来の配向2分割TNモードでは、通常のTNモードより視野角は拡大され、上下視野角はコントラスト10で±35度程度となる。
しかし、応答速度はTNモードと本質的に変化なく約50mS程度である。このように上記従来の配向2分割TNモードでは視野角,応答とも不十分である。
また、配向膜界面で液晶分子をほぼ垂直に配向させるいわゆるホメオトロピック配向モードを利用した液晶表示モードで、フィルム位相差板,配向分割技術を付加して広視野,高速応答の液晶表示装置があるが、それでも白黒の2値間応答速度は約25msかかり、特にグレー階調間の応答速度は50〜80msで遅く、人間の目の視認速度と言われる約1/30sより長く、動画像は流れて見える。
これらに対して、基板間の液晶分子がベンド配向した状態における各液晶分子の立ち上がり角の変化による屈折率変化を利用するベンド配向型の液晶表示装置(OCBモードの液晶表示装置)が提案されている。ベンド配向した各液晶分子のオン状態とオフ状態での配列変化速度は、TN型液晶表示装置のオン,オフ状態との間の配列変化速度に比べてはるかに高速であり、応答速度が速い液晶表示装置とすることができる。さらに、上記ベンド配向型の液晶表示装置は全体に液晶分子が上下基板間でベンド配向しているため、光学位相差的に自己補償でき、かつフィルム位相差板で位相差補償をするため低電圧で広視野の液晶表示装置となる可能性を持つ。
ところで、上記液晶表示装置は通常無電圧下で液晶分子を基板間でスプレイ配向状態にして作製する。ベンド配向を利用して屈折率を変化させるためには、液晶表示装置の使用開始前に、表示部全体を上記スプレイ配向状態からベンド配向状態に均一に転移させておく必要がある。対向する表示電極間に電圧を印加すると、スプレイ配向からベンド配向への転移核が発生する場所は一様でなく、分散されたスペーサ周囲や、あるいは配向膜界面の配向ムラ,キズ部などである。また、常に一定の上記場所からその転移核が発生する訳でもないので転移が起きたり、起きなかったりで表示欠陥を生じ易い。従って、使用開始前に、表示部全体を少なくとも全画素部全体を均一にスプレイ配向からベンド配向へ転移をさせておくのは極めて重要である。
しかし、従来、単純な交流電圧を印加しても、転移が起きなかったり、起きても極めて転移時間が長く掛かった。
本発明の目的は、ベンド配向転移がほぼ確実に発生し、かつ極めて短時間に転移が完了することにより表示欠陥が無い、応答速度が速く動画像表示に適しかつ広視野のベンド配向型の液晶表示装置及びその製造方法、並びに液晶表示装置の駆動方法を提案するものである。
請求項1記載の発明は、互いに対向する第1の基板と第2の基板との間に保持された液晶に電場を印加し、前記液晶の配向をベンド配向に転移させる方法であって、前記液晶のスプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn≧k11≧6×10-7dynの範囲とし、且つ、前記第1の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ1とし、前記第2の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ2としたとき、1.57rad>|θ1−θ2|≧0.0002radなる関係を満たすことを特徴とする。
このような構成にしたことにより、液晶転移の臨界電場を低下させ、液晶分子の配向状態を、初期状態からベンド配向へ速やかに転移させることが可能となる。
請求項2記載の発明は、互いに対向する第1の基板と第2の基板との間に保持された液晶に電場を印加し、前記液晶の配向をベンド配向に転移させる方法であって、前記液晶のスプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn≧k11≧6×10-7dynの範囲とし、且つ、前記電場が、空間的に均一に印加される主電場に、空間的に不均一に印加される副電場を重畳させた電場であり、前記主電場をE0とし、前記副電場の最大値をE1としたとき、1.0>E1/E0>1/100なる関係を満たすことを特徴とする。
このような構成によっても、液晶転移の臨界電場を低下させ、液晶分子の配向状態を、初期状態からベンド配向へ速やかに転移させることが可能となる。
請求項3記載の発明は、前記第1の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ1とし、前記第2の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ2とした時、1.57rad>|θ1−θ2|≧0.0002radなる関係を満たすことを特徴とする。
このような構成によっても、液晶転移の臨界電場を低下させ、液晶分子の配向状態を、初期状態からベンド配向へ速やかに転移させることが可能となる。
なお、前記プレチルト角は、各基板表面に接する液晶分子の電場印加前の配向角であり、基板表面に接する液晶分子の分子軸の、基板に平行な平面に対する傾きを、基板に平行な平面を基準(=0)として反時計回りに正として、−π/2〜π/2radの範囲で表した角度である。また、前記第1の基板に対する前記液晶のプレチルト角と、前記第2の基板に対する前記液晶のプレチルト角とは互いに異符号の角度である。
また、請求項4記載の発明は、請求項2に記載の液晶表示装置の駆動方法において、前記副電場が、前記第1の基板の表面に形成された薄膜トランジスタのソース電極あるいはゲート電極と、前記第2の基板の表面に形成された透明電極との間に印加される電場であることを特徴とする。
また、請求項5記載の発明は、請求項2に記載の液晶表示装置の駆動方法において、前記副電場が、時間の経過に伴って減衰振動させた交流電場であることを特徴とする。
以上のように本発明によれば、互いに対向する第1の基板と第2の基板との間に保持された液晶に電場を印加し、前記液晶の配向をベンド配向に転移させる方法であって、前記液晶のスプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn≧k11≧6×10-7dynの範囲とし、且つ、前記第1の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ1とし、前記第2の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ2としたとき、1.57rad>|θ1−θ2|≧0.0002radなる関係を満たすため、液晶をベンド配向に速やかに転移させることができる。
また、本発明によれば、互いに対向する第1の基板と第2の基板との間に保持された液晶に電場を印加し、前記液晶の配向をベンド配向に転移させる方法であって、前記液晶のスプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn≧k11≧6×10-7dynの範囲とし、且つ、前記電場が、空間的に均一に印加される主電場に、空間的に不均一に印加される副電場を重畳させた電場であり、前記主電場をE0とし、前記副電場の最大値をE1としたとき、1.0>E1/E0>1/100なる関係を満たすため、液晶をベンド配向に速やかに転移させることができる。
本発明は、ベンド配向型のOCBセルを備えた液晶表示装置において、以下に述べるスプレイ配向からベンド配向への転移メカニズムに着目した結果得られたものである。従って、先ず、該転移メカニズムについて詳細に説明した後、本発明の具体的内容を実施の形態を用いて説明することにする。
図1はベンド配向型のOCBセルを備えた液晶表示装置の一部分を示す斜視図である。図1を参照して、ベンド配向型のOCBセルを備えた液晶表示装置の構成を簡単に説明すると、相互に平行配置した基板10と11との間に、液晶分子12を含む液晶層13が挿入されている。図には示さないが、基板10,11の相互に対向する表面には、それぞれ液晶層13に電界を印加するための表示電極、及び液晶分子の配向を規制するための配向膜が形成されている。上記配向膜は図に示すように基板界面付近の液晶分子12を約5〜7度プレチルトし、基板面内における配向方位が相互に同じ方向に、すなわち平行配向になるように配向処理されている。基板10,11表面から離れるに従って液晶分子12は徐々に立ち上がり、液晶層13の厚さ方向のほぼ中央において液晶分子のチルト角が90度になるベンド配向となる。基板10,11の外側には、偏光板15,16と光学補償板17,18が配置され、上記2枚の偏光板15,16は、偏光軸が相互に直交あるいは平行に配置され、その偏光軸と液晶分子の配向方位とは45度の角度になるよう配置されている。そして、高電圧を印加したオン状態と低電圧を印加したオフ状態との液晶層の屈折率異方性の差を利用して、上記偏光板、光学補償板を通してその偏光状態を変化させ光の透過率を制御して表示させることになる。
上記のベンド配向型のOCBセルを備えた液晶表示装置は、使用前には液晶層がスプレイ配向となっているため、液晶表示駆動に先立って電圧印加により液晶層をスプレイ配向状態からベンド配向状態に転移させておく必要がある。
かかる配向転移のため転移臨界電圧以上の高電圧を印加した場合における液晶層のスプレイ配向からベンド配向へ転移する配向転移のメカニズムを図2に模式的に示す。
図2は、2枚の基板を平行配向配置した場合の、液晶分子を模式的に図示して液晶分子配列を概念的に示した液晶セルの断面図である。
図2(a)は初期のスプレイ配列状態を示す。基板間が無電界時には、液晶層13の中央の液晶分子12の長軸は基板面にほぼ平行になるエネルギ−状態の低いスプレイ配向状態をとっている。ここで、説明の便宜上、基板に平行な液晶分子を参照符号12aで示すことにする。
次に図2(b)は、基板10,11に形成された電極(図示せず)間に高い電圧を印加開始した時の液晶分子配列状態を示す。液晶層13中の中央の液晶分子12は電界により若干傾斜し始め、その結果、基板面に平行に向いた液晶分子12aは一方の基板面(図では基板11側へ)側に向かって移動して行く。
次に図2(c)は、電圧を印加後、更に時間が経過したときの液晶分子配列状態を示す。液晶層13の中央の液晶分子12が基板面に対して更に傾斜して、これに対して、基板面にほぼ平行に向いた液晶分子12aは基板界面近傍に来て、配向膜からの強い規制力を受ける。
次に図2(d)は、ベンド配向へ転移した一段とエネルギー状態の高い液晶分子配列状態を示す。液晶層13の中央の液晶分子12は基板面に対して垂直になり、基板10上の配向膜(図示せず)界面に接した液晶分子は、配向膜から強い規制力を受けて、傾斜配向状態を維持し、このとき図2(a)〜(c)に存在した基板面に平行に向いた液晶分子12aはほぼ無くなる。
図2(d)より更に時間が経過すると、上記配向状態は基板間で図1に示すベンド配向状態へ移行して転移は完了する。
このように、電圧を印加した時に起きるスプレイ配向からベンド配向へ転移する状況が上述の様に考えられる。
しかし、これが起きる場所は通常、基板面内の液晶層全体で一度に起きることはなく、配向領域の一部の部分でエネルギ−の移動がし易い部分であり、通常、間隙に分散されたスペーサ周囲部分や、配向ムラ部などで転移核は発生し、そこからベンド配向領域が広がる。従って、OCBセルにおいて配向転移させるためには、基板面内の液晶層の少なくとも一部の領域に転移核を発生させることと、外部からエネルギ−を与えてスプレイ配向状態よりエネルギーの高いベンド配向状態へ遷移させてこれを維持させておく必要がある。
このような配向転移のメカニズムを考慮した結果、本発明者等は転移核を確実に発生させ、かつ極めて短時間で転移を完了させる液晶表示装置及びその製造方法、並びに液晶表示装置の駆動方法を完成するに至った。具体的な内容を、実施の形態に基づいて説明する。
(参考形態1)
図3は本発明の参考形態1に係る液晶表示装置の駆動法による画素単位の構成概念図を示す。先ず、図3を参照して、本参考形態1に係る駆動方法に関連する液晶表示装置の構成を説明する。本参考形態1に係る液晶表示装置は、駆動回路部を除いた構成に関して、一般的なOCBセルを備えた液晶表示装置と同一の構成を有している。即ち、一対のガラス基板20,21と、ガラス基板20,21間に挟持された液晶層26とを有する。ガラス基板20,21は、一定の間隔を隔てて対向配置されている。ガラス基板20の内側面には、ITOの透明電極からなる共通電極22が形成され、ガラス基板21の内側面には、ITOの透明電極からなる画素電極23が形成されている。上記共通電極22及び画素電極23上には、ポリイミド膜からなる配向膜24,25が形成されており、この配向膜24,25は配向方向が互いに平行方向になるように配向処理されている。そして、配向膜24,25間には、P型のネマティック液晶からなる液晶層26が挿入されている。また、配向膜24,25上の液晶分子のプレチルト角は約5度に設定されており、スプレイ配向からベンド配向へ転移する臨界電圧は2.5Vに設定されている。光学補償板29のリターデーションはオン状態時に白あるいは黒表示となるように選択されている。なお、図1において、27,28は偏光板である。
また、図中、30は配向転移用駆動回路であり、31は液晶表示用駆動回路である。また、32a,32bはスイッチ回路であり、33はスイッチ回路32a,32bのスイッチング態様の切換えを制御するスイッチ制御回路である。前記スイッチ回路32aは、2つの個別接点P1,P2,と、1つの共通接点Q1を備えており、前記スイッチ回路32bは、2つの個別接点P3,P4,と、1つの共通接点Q2を備えている。共通接点Q1は、スイッチ制御回路33からのスイッチ切換信号S1に応じて、個別接点P1,P2の何れかに接続した状態となる。同様に共通接点Q2は、スイッチ制御回路33からのスイッチ切換信号S2に応じて、個別接点P3,P4の何れかに接続した状態となる。共通接点Q1が個別接点P1に接続され且つ共通接点Q2が個別接点P3に接続された状態では、配向転移用駆動回路30からの駆動電圧が電極22,23に印加されることになる。また、共通接点Q1が個別接点P2に接続され且つ共通接点Q2が個別接点P4に接続された状態では、液晶表示用駆動回路33からの駆動電圧が電極22,23に印加されることになる。
次いで、本参考形態1に係る駆動方法について説明する。
先ず、本来の画像信号に基づく液晶表示駆動に先立って、ベンド配向への転移のために、初期化処理を行う。先ず、電源投入により、スイッチ制御回路33は、スイッチ回路32a,32bにスイッチ切換え信号S1,S2を出力し、共通接点Q1を個別接点P1に接続し且つ共通接点Q2を個別接点P3に接続した状態とする。これにより、配向転移用駆動回路30から図4に示す駆動電圧が電極22,23間に印加される。この駆動電圧は、図4に示すように交流矩形波電圧Aがバイアス電圧Bと重畳された交流電圧であり、しかも駆動電圧の値は、スプレイ配向からベンド配向への転移を発生させるために必要な最小の電圧である臨界電圧よりも大きい電圧値に設定されている。このような駆動電圧の印加により、単純な交流電圧を印加する従来例よりも格段に転移時間を短くすることが可能となる。なお、転移時間が短くなる理由については後述する。こうして、ベンド配向への転移に関する初期化処理が完了する。
次いで、電極全面が完全にベンド配向に転移する転移時間が経過すると、スイッチ制御回路33は共通接点Q1を個別接点P2側に切り換える切換信号S1をスイッチ回路32aに出力すると共に、共通接点Q2を個別接点P4側に切り換える切換信号S2をスイッチ回路32bに出力する。これにより、共通接点Q1と個別接点P2とが接続され、且つ共通接点Q2と個別接点P4とが接続された状態となり、液晶表示用駆動回路31からの駆動信号電圧が電極22,23間に印加され、希望する画像が表示されることになる。ここで、液晶表示用駆動回路31は、30Hzの矩形波電圧2.7Vにしてベンド配向状態を維持してこれをオフ状態とし、30Hzの矩形波電圧7Vをオン状態として、OCBパネルを表示した。
次いで、本発明者が、上記構成の液晶表示装置を作製し、上記駆動方法で初期化処理の実験を行ったので、その結果を述べる。なお、実験条件は以下のとおりである。
電極面積を2cm2とし、セルギャップを約6μmとし、交流矩形波電圧Aの周波数を30Hz、振幅を±4Vとした。
上記条件下において、バイアス電圧Bを0V、2V、4V、5Vの4種類の電圧に設定した場合のそれぞれの転移時間を測定したので、その結果を図5に示す。ここで、転移時間とは、電極面積の全領域で配向の転移が完了するに要した時間を意味する。
図5より明らかなよう、バイアス電圧Bが0Vのとき、転移時間は140秒要した。これに対して、バイアス電圧Bを4Vにすると、転移時間は8秒となって短縮できた。これは、バイアス電圧の重畳により、バイアス電圧によって液晶層の液晶分子配向が揺さぶられて基板間で図2(d)の如く片寄りが生じてより多くの転移核が発生し、更に実効電圧のアップで転移時間が速くなったとものと考えられる。
以上のように、バイアス重畳された交流電圧を連続印加することにより、単純な交流電圧印加の場合より、転移時間を短縮できる。
上記実験例では、交流矩形波電圧信号は周波数30Hzで,±4Vの値であったが本発明はこれに限定されるものではなく、液晶が動作する周波数であればよく例えば10kHzなどの値でも良く,また交流電圧Aの振幅を増大すれば転移時間は速くなることはもちろんである。このとき、バイアス電圧Bを高く重畳すればするほど速くなる。但し、駆動電圧の低電圧化を考慮すれば、バイアス電圧は希望する転移時間に応じた最適な電圧レベルに設定してことが望ましい。また,波形として矩形波を用いたが,デューティ比の異なる交流波形を用いても良い。
(参考形態2)
図6は参考形態2に係る液晶表示装置の画素単位の構成概念図である。本参考形態2では、バイアス電圧を重畳した交流電圧を前記基板間に印加する工程と、前記基板間を電気的に開放状態(オープン状態)にする工程とを交互に繰り返して、液晶層をスプレイ配向からベンド配向に転移させることを特徴とするものである。
本参考形態2に係る液晶表示装置において、上記参考形態1に係る液晶表示装置と同一構成部分には、同一の参照符号を付して説明は省略する。本参考形態2では、参考形態1の配向転移用駆動回路30、スイッチ回路32a、及びスイッチ制御回路32に代えて、配向転移用駆動回路40、スイッチ回路42a、及びスイッチ制御回路43が用いられる。スイッチ回路42aは、個別接点P1,P2に加えて個別接点P5を備えた3端子切換スイッチ回路である。このスイッチ回路42aのスイッチ切り換えは、スイッチ制御回路43により制御されている。また、前記配向転移用駆動回路40は、図7に示す駆動電圧を基板22,23間に印加する。この駆動電圧は、図7に示すように交流矩形波電圧Cがバイアス電圧Dと重畳された交流電圧であり、しかも駆動電圧の値は、スプレイ配向からベンド配向への転移を発生させるために必要な最小の電圧である臨界電圧よりも大きい電圧値に設定されている。
なお、スイッチ回路42aの共通接点Q1は、スイッチ制御回路42からのスイッチ切換信号S3により、個別接点P1,P2,P5の何れかに接続した状態となる。共通接点Q1が個別接点P5に接続した状態では、電極22,23が配向転移用駆動回路40から切り離されたオープン状態となる。共通接点Q1が個別接点P1に接続され且つ共通接点Q2が個別接点P3に接続された状態では、配向転移用駆動回路40からの駆動電圧が電極22,23に印加されることになる。また、共通接点Q1が個別接点P2に接続され且共通接点Q2が個別接点P4に接続された状態では、液晶表示用駆動回路31からの駆動電圧が電極22,23に印加されることになる。
次いで、本参考形態2に係る駆動方法について説明する。
先ず、本来の画像信号に基づく液晶表示駆動に先立って、ベンド配向への転移のために、初期化処理を行う。先ず、電源投入により、スイッチ制御回路43は、スイッチ回路42aにスイッチ切換信号S3を出力すると共に、スイッチ回路32bにスイッチ切換信号S2を出力し、共通接点Q1と個別接点P1とを接続状態とし、且つ共通接点Q2と個別接点P3とを接続状態する。これにより、配向転移用駆動回路30から図7に示す駆動電圧が電極22,23間に印加される。そして、一定期間T2経過すると、スイッチ制御回路43は、スイッチ回路42aにスイッチ切換信号S3を出力し、共通接点Q1と個別接点P5とを接続状態とする。これにより、電極22,23は、配向転移用駆動回路40から切り離されてオープン状態となる。このようなオープン状態が期間W2維持され、このオープン状態期間W2中、電極22,23間は充電保持状態となる。
オープン状態期間W2経過すると、スイッチ制御回路43は、スイッチ回路42aにスイッチ切換信号S3を出力し、共通接点Q1と個別接点P1とを再び接続状態とする。そして、このような配向転移用駆動とオープン状態とを交互に繰り返し、電源投入時から一定期間経過すると、電極全面が完全にベンド配向に転移する。
そして、この一定期間経過時に、スイッチ制御回路43は、スイッチ回路42aにスイッチ切換信号S3を出力すると共に、スイッチ回路32bにスイッチ切換信号S2を出力し、共通接点Q1と個別接点P2とを接続状態とし、且つ共通接点Q2と個別接点P43とを接続状態する。これにより、液晶表示用駆動回路31からの駆動信号電圧が電極20,21間に印加され、希望する画像が表示されることになる。ここで、液晶表示用駆動回路31は、上記参考形態1と同様に30Hzの矩形波電圧2.7Vにしてベンド配向状態を維持してこれをオフ状態とし、30Hzの矩形波電圧7Vをオン状態として、OCBパネルを表示する。
次いで、本発明者が、上記構成の液晶表示装置を作製し、上記駆動方法で初期化処理の実験を行ったので、その結果を述べる。なお、実験条件は以下のとおりである。
電極面積を2cm2とし、セルギャップを約6μmとし、バイアス電圧Bを2Vとし、交流矩形波電圧Dの周波数及び振幅を周波数30Hz、±4Vとし、印加時間T2を2秒に固定した。
上記条件下において、オ−プン状態時間W2を0秒、0.2秒、2秒、3秒と変化させ、電圧印加状態とオ−プン状態とを交互に繰り返したときの転移時間を測定したので、その結果を図8に示す。ここで、転移時間とは、電極面積の全領域で配向の転移が完了するに要した時間を意味する。
図8より明らかなよう、オープン状態時間W2が0秒すなわちバイアス電圧を重畳した交流電圧を連続に印加した時,転移時間は80秒要した.これに対して,オープン状態時間W2を0.2秒として、上記バイアス重畳された交流電圧と交互に切り替え繰り返すと,転移時間は40秒と時間短縮した.しかし,オープン状態時間W2を2秒とすると逆に転移時間は420秒と長くなり,さらにW2を3秒とすると転移を完了することは出来なかった。
また、印加時間T2を0.3秒,オープン状態期間W2を0.3秒とした以外は上記実験例と同一条件で転移時間を測定すると、転移時間は28秒であった。
ちなみに、T2を2秒に固定し、W2を0.1秒以上、0.5秒以下に設定した場合、良好な結果が得られた。
以上のようにバイアスされた交流電圧とオープン状態とを切り替え繰り返えすことによって、スプレイ配向からベンド配向への状態遷移時間が極めて短くなったのは、以下の理由によると考えられる。即ち、バイアス重畳された交流電圧印加で,液晶層の液晶分子配向が揺さぶられて基板間で図2(d)の如く片寄りが生じて乱れ、次に短いオープン状態への切り替えで転移核が発生し、転移時間が速くなったものと考えられる。
上記でバイアス重畳された交流電圧を印加する工程の前か後に、更に他の電圧信号を加え、次にオープン状態を入れてもその効果を得ることができる。
また,バイアス電圧や交流電圧の電圧値,印加時間やオープン状態の維持時間などは要望される転移時間により選択することができる。交流電圧の周波数は液晶が動作する周波数であればよく、例えば10kHzなどの値でも良い。波形として矩形波を用いたが,デューティ比の異なる交流波形を用いても良い。
(参考形態3)
図9は参考形態3に係る液晶表示装置の画素単位の構成概念図である。本参考形態3では、バイアス電圧を重畳した交流電圧を前記基板間に印加する工程と、前記基板間に0電圧あるいは低電圧を印加する工程とを交互に繰り返して、液晶層をスプレイ配向からベンド配向に転移させることを特徴とするものである。
本参考形態3に係る液晶表示装置において、上記参考形態2に係る液晶表示装置と同一構成部分には、同一の参照符号を付して説明は省略する。本参考形態3では、参考形態2のスイッチ回路32b、及びスイッチ制御回路43に代えて、スイッチ回路42b、及びスイッチ制御回路53が用いられる。また、本参考形態3では、配向転移用駆動回路40に加えて、電極22,23間に低電圧を印加する配向転移用駆動回路50が設けられている。
前記スイッチ回路42bは、個別接点P3,P4に加えて個別接点P6を備えた3端子切換スイッチ回路である。このスイッチ回路42bのスイッチ切り換えは、スイッチ制御回路53により制御されている。なお、スイッチ回路42bの共通接点Q2は、スイッチ制御回路53からのスイッチ切換信号S4により、個別接点P3,P4,P6の何れかに接続した状態となる。
共通接点Q1が個別接点P5に接続され、且つ共通接点Q2が個別接点P3に接続された状態では、配向転移用駆動回路40からの駆動電圧が電極22,23に印加されることになる。また、共通接点Q1が個別接点P5に接続され、且つ共通接点Q2が個別接点P6に接続された状態では、配向転移用駆動回路50からの駆動電圧が電極22,23に印加されることになる。更に、共通接点Q1が個別接点P2に接続され且共通接点Q2が個別接点P4に接続された状態では、液晶表示用駆動回路31からの駆動電圧が電極22,23に印加されることになる。
次いで、本参考形態3に係る駆動方法について説明する。
先ず、本来の画像信号に基づく液晶表示駆動に先立って、ベンド配向への転移のために、初期化処理を行う。先ず、電源投入により、スイッチ制御回路53は、スイッチ回路42aにスイッチ切換信号S3を出力すると共に、スイッチ回路42bにスイッチ切換信号S4を出力し、共通接点Q1と個別接点P1とを接続状態とし、且つ共通接点Q2と個別接点P3とを接続状態する。これにより、配向転移用駆動回路40から図10に示す駆動電圧が電極22,23間に印加される。そして、一定期間T3経過すると、スイッチ制御回路53は、スイッチ回路42aにスイッチ切換信号S3を出力すると共に、スイッチ回路42bにスイッチ切換信号S4を出力し、共通接点Q1と個別接点P5とを接続状態とし、且つ共通接点Q2と個別接点P6とを接続状態する。これにより、配向転移用駆動回路50から図10に示す低電圧が電極22,23間に印加される。このような低電圧印加が、期間W3維持される。
次いで、低電圧印加期間W3経過すると、スイッチ制御回路53はスイッチ回路42aにスイッチ切換信号S3を出力すると共にスイッチ回路42bにスイッチ切換信号S4を出力し、再び、共通接点Q1と個別接点P1とを接続状態とし且つ共通接点Q2と個別接点P3とを接続状態する。そして、このような交流電圧印加工程と低電圧印加工程を交互に繰り返し、電源投入時から一定期間経過すると、電極全面が完全にベンド配向に転移する。
そして、この一定期間経過時に、スイッチ制御回路53は、スイッチ回路42aにスイッチ切換信号S3を出力すると共に、スイッチ回路42bにスイッチ切換信号S4を出力し、共通接点Q1と個別接点P2とを接続状態とし、且つ共通接点Q2と個別接点P43とを接続状態する。これにより、液晶表示用駆動回路31からの駆動信号電圧が電極20,21間に印加され、希望する画像が表示されることになる。ここで、液晶表示用駆動回路31は、上記参考形態1と同様に30Hzの矩形波電圧2.7Vにしてベンド配向状態を維持してこれをオフ状態とし、30Hzの矩形波電圧7Vをオン状態として、OCBパネルを表示する。
次いで、本発明者が、上記構成の液晶表示装置を作製し、上記駆動方法で初期化処理の実験を行ったので、その結果を述べる。なお、実験条件は以下のとおりである。
電極面積を2cm2とし、セルギャップを約6μmとし、バイアス電圧Dを2Vとし、交流矩形波電圧Cの周波数及び振幅を周波数30Hz、±4Vとし、印加時間T3を1秒に固定した。また、低電圧印加期間W3中の印加電圧を−2Vの直流電圧した。
上記条件下において、低電圧印加期間W3を変化させ、交流電圧印加状態と印加電圧印加状態とを交互に繰り返したときの転移時間を測定したので、その結果を図11に示す。
図11より明らかなよう、低電圧印加時間が0秒すなわちバイアス電圧を重畳した交流電圧を連続に印加した時,転移時間は約80秒要した.これに対して,低電圧印加時間W3を0.1秒として上記バイアス重畳された交流電圧と交互に切り替え繰り返すと,転移時間は60秒と時間短縮した.しかし,低電圧印加時間W3を1秒とすると逆に転移時間は360秒と長くなり,さらにW3を3秒とすると転移を完了することは出来なかった。
また、バイアス電圧を2V重畳した交流電圧±4Vと直流電圧0Vとの切り替え繰り返しでは最短で50秒内で転移が完了した。また、バイアス2V重畳した交流電圧±4Vと交流低電圧±2Vとの切り替え繰り返しでは最短で50秒以内の転移時間が得られた。
ちなみに、T3を1秒に固定し、W2を0.1秒以上、0.5秒以下に設定した場合、良好な結果が得られた。
以上のようにバイアス重畳した交流電圧を単に連続印加した場合よりも、バイアス重畳された交流電圧印加と低電圧印加とを切り替え繰り返えすことによって、スプレイ配向からベンド配向への転移時間が短くなる。これは,バイアス重畳された交流電圧印加で,液晶層の液晶分子配向が揺さぶられて基板間で図2(d)の如く片寄りが生じて乱れ、次に短い低電圧印加状態への切り替えで転移核が発生し、転移時間が速くなったものと考えられる。
また,バイアス電圧や交流電圧の電圧値,印加時間や低電圧値、印加時間などは上記値でなく、要望される転移時間により選択して変えることができる。交流電圧の周波数は液晶が動作する周波数であればよく、例えば10kHzなどの値でも良い。波形として矩形波を用いたが,デューティ比の異なる交流波形を用いても良い。
また、上記例では、低電圧印加期間W3中において−2Vの低電圧を印加するようにしたけれども、0Vを印加するようにしてもよい。
次いで、交流電圧印加期間T3と低電圧印加期間W3の比、及び1秒間当たりの交流電圧印加と低電圧印加の繰り返し回数について説明する。ここで、説明の便宜上、低電圧印加期間W3での電圧を0Vとし、交流電圧印加と0V印加の交互の繰り返しを、図10の破線Lで示すように1つの転移電圧と考える。かかる場合に、転移時間の短くするためには、転移電圧Lの周波数は、0.1Hzから100Hzの範囲で、且つ転移電圧Lのデューティ比は1:1から1000:1の範囲に設定する必要がある。更に、転移電圧Lの周波数は、0.1Hzから10Hzの範囲で、且つ転移電圧Lのデューティ比は2:1から1000:1の範囲にするのが、望ましい。以下にその理由について詳述する。
繰り返し印加電圧のデューティ比が電圧印加期間よりも電圧印加休止期間の方が大きくなるようなデューティ比の範囲(例えばデューティ比1:1から1:10等の範囲)では、パルス幅印加で転移核が発生しても、その後のパルス間隔の電圧印加休止状態で緩和されスプレイ配向へ戻り、転移が完了しないものと考えられる。従って、電圧印加期間の方が電圧印加休止期間よりも大きくなるようなデューティ比の範囲に設定する必要がある。そして、転移領域が拡大するためには、デューティ比はパルス幅がパルス間隔より広くなる1:1から1000:1の範囲、望ましくは2:1から100:1がよい。1000:1から直流連続では、パルス繰り返し印加が殆ど無くなるため、転移核発生の機会が減少していき転移が若干長くなるものと考えられる。
また、転移用電圧印加の上記繰り返し周波数は、連続から100Hz程度までよいが、望ましくは転移拡大には100ms程度以上のパルス幅が得られる10Hzから、デューティ比1000:1で10ms程度以上のパルス間隔が得られる0.1Hzまでがよい。
表1より明らかなように、周波数が0.1Hzから10Hzの範囲で且つデューティ比が2:1から1000:1の範囲の場合に転移時間が極めて小さく、周波数が0.1Hzから100Hzの範囲で且つデューティ比が1:1から1000:1の範囲の場合であっても、十分に小さい転移時間となっていることが認められる。
(参考形態4)
図12は参考形態4に係る液晶表示装置の画素単位の構成概念図である。本参考形態4では、本発明をアクティブマトリックス型液晶表示装置の駆動方法に適用した例が示されている。
先ず、図12を参照して、本参考形態4に係る駆動方法に関連する液晶表示装置の構成を説明する。本参考形態4に係る液晶表示装置は、駆動回路部を除いた構成に関して、一般的なOCBセルを備えたアクティブマトリックス型液晶表示装置と同一の構成を有している。即ち、一対のガラス基板60,61と、ガラス基板60,61間に挟持された液晶層66とを有する。ガラス基板60,61は、一定の間隔を隔てて対向配置されている。ガラス基板60の内側面には、ITOの透明電極からなる共通電極62が形成され、ガラス基板61の内側面には、画素スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)70と、TFT70に接続したITOの透明電極からなる画素電極63が形成されている。上記共通電極62及び画素電極63上には、ポリイミド膜からなる配向膜64,65が形成されており、この配向膜64,65は配向方向が互いに平行方向になるように配向処理されている。そして、配向膜64,65間には、P型のネマティック液晶からなる液晶層66が挿入されている。また、配向膜64,65上の液晶分子のプレチルト角は約5度に設定されており、スプレイ配向からベンド配向へ転移する臨界電圧は2.6Vに設定されている。光学補償板67のリターデーションはオン状態時に白あるいは黒表示となるように選択されている。なお、図中、68,69は偏光板である。
また、図中、71,72は配向転移用駆動回路であり、この配向転移用駆動回路71は共通電極62に図14に示す共通電極中心を基準として駆動電圧を印加し、且つ画素電極63に0Vを印加する働きをなす。なお、他の構成として、配向転移用駆動回路72は、共通電極62及び画素電極63に0Vを印加する働きをなす。また、73は液晶表示用駆動回路であり、液晶表示用駆動回路73は図13に示す電圧波形を有する駆動電圧を共通電極62及び画素電極63に印加する働きをなす。即ち、液晶表示用駆動回路73は、図13の参照符号M1に示す電圧を画素電極63に印加し、且つ図13の参照符号M2に示す電圧を共通電極62に印加する。なお、上記構成では、配向転移期間中において、画素電極63に0Vを印加するようにしたけれども、これに代えて、配向転移期間中においても液晶表示用駆動回路73から画素電極電圧を印加するようにしてもよい。
また、74a,74bはスイッチ回路であり、75はスイッチ回路74a,74bのスイッチング態様の切換えを制御するスイッチ制御回路である。前記スイッチ回路74aは、3つの個別接点P7,P8,P9,と、1つの共通接点Q1を備えており、前記スイッチ回路74bは、3つの個別接点P10,11,12と、1つの共通接点Q2を備えている。共通接点Q1が個別接点P7に接続され且つ共通接点Q2が個別接点P10に接続された状態では、配向転移用駆動回路71からの駆動電圧が電極62,63に印加されることになる。また、共通接点Q1が個別接点P2に接続され且つ共通接点Q2が個別接点P4に接続された状態では、液晶表示用駆動回路73からの駆動電圧が電極62,63に印加されることになる。
次いで、本参考形態4に係る駆動方法について説明する。
先ず、本来の画像信号に基づく液晶表示駆動に先立って、ベンド配向への転移のために、初期化処理を行う。先ず、電源投入により、スイッチ制御回路75は、スイッチ回路74aにスイッチ切換信号を出力すると共に、スイッチ回路74bにスイッチ切換信号を出力し、共通接点Q1と個別接点P7とを接続状態とし、且つ共通接点Q2と個別接点P10とを接続状態する。これにより、配向転移用駆動回路71から図14に示す駆動電圧が共通電極62に印加される。即ち、共通電極62には、共通電極中心を基準として、バイアス電圧−GVが重畳された、垂直同期信号に同期した交流電圧が印加される。なお、画素電極には0Vが印加される。そして、この交流電圧の印加を 期間T4維持する。
次いで、交流電圧印加期間T4経過すると、スイッチ制御回路75は、スイッチ回路74aにスイッチ切換信号を出力すると共に、スイッチ回路74bにスイッチ切換信号を出力し、共通接点Q1と個別接点P9とを接続状態とし、且つ共通接点Q2と個別接点P12とを接続状態する。これにより、配向転移用駆動回路72から、図14に示すように共通電極62及び画素電極63に0Vが印加される。そして、この0V電圧印加を期間W4維持する。
次いで、0V電圧印加期間W4経過すると、スイッチ制御回路75はスイッチ回路742aにスイッチ切換信号を出力すると共にスイッチ回路74bにスイッチ切換信号を出力し、再び、共通接点Q1と個別接点P7とを接続状態とし且つ共通接点Q2と個別接点P10とを接続状態する。そして、このような交流電圧印加工程と0V電圧印加工程を交互に繰り返し、電源投入時から一定期間経過すると、電極全面が完全にベンド配向に転移する。
そして、この一定期間経過時に、スイッチ制御回路75は、スイッチ回路74aにスイッチ切換信号を出力すると共に、スイッチ回路74bにスイッチ切換信号を出力し、共通接点Q1と個別接点P8とを接続状態とし、且つ共通接点Q2と個別接点P11とを接続状態する。これにより、液晶表示用駆動回路73からの駆動信号電圧が電極62,63に印加され、希望する画像が表示されることになる。ここで、液晶表示用駆動回路73は、両電極間にベンド配向状態を維持する駆動電圧2.7Vを最低にしてこれをオフ状態とし、上限の電圧を7Vにしてこれをオン状態として、OCBパネルを表示する。
上記駆動方法によって、広視野で高速応答のベンド配向型であるOCBのアクティブマトリックス型の液晶表示装置が配向欠陥が全くなく高品質駆動表示できた。
次いで、本発明者が、上記構成の液晶表示装置を作製し、上記駆動方法で初期化処理の実験を行ったので、その結果を述べる。なお、実験条件は以下のとおりである。
セルギャップを約6μmとし、バイアス電圧Gを−6Vとし、交流矩形波電圧の周波数及び振幅を7.92kHz、±10Vとし、印加時間T3を0.5秒とした。また、0V電圧印加期間W4を0.5秒とした。
上記実験結果によれば、上記液晶表示装置のパネル全画素内の配向転移がほぼ2秒以内で完了することができた。
なお、バイアス電圧を重畳しないときには,表示面全体の配向状態を転移させるのに約20秒必要であった。よって、本参考形態4においても、バイアス電圧を重畳して駆動するのが、転移時間の短縮化を達成できることが認められる。
(参考形態5)
OCBモードのアクティブマトリックス型液晶表示装置の配向転移に関する駆動方法としては、上記の図14に示す駆動電圧波形に代えて、図15の駆動電圧波形を用いて駆動するようにしてもよい。即ち、交流電圧印加期間T4においては、共通電極62に共通電極中心を基準として、直流電圧−15Vを0.5秒間印加する。次いで、0V電圧印加期間W4においては、0Vを0.2秒間印加する。そして、直流電圧−15V印加と0V電圧印加を交互に繰り返す。このよう駆動方法においても、転移を確実に且つ極めて短時間に完了することができる。
なお、本発明者が上記駆動方法を用いて実験したところ、2秒以内の転移時間が得られた。
(参考形態6)
本参考形態6は、上記参考形態4,5に用いたアクティブマトリックス型の液晶表示装置に代えて、スイッチング素子の上に平坦化膜を配置し、その上に画素電極を構成するいわゆる平坦化膜構成の液晶表示装置に上記に参考形態4,5の駆動方法を適用したことを特徴とするものである。駆動方法を具体的に説明すると、上記参考形態4におけるバイアス重畳した配向転移用電圧を0.5秒印加し、次いで、オープン状態を0.5秒とし、これを交互に繰り返した。この駆動方法によると、転移時間は1秒以内で更に転移がスムーズに行えた。これは、平坦化膜構成により、画素電極間隔を小さくでき、この結果、スプレイ配向からベンド配向へスムーズに転移したものと考えられる。
(その他の事項)
(1)上記参考形態では、バイアス電圧を重畳した交流電圧を印加するようにしたけれども、直流電圧を印加するようにしてもよく、このようにすれば、片極性電圧でよいため、駆動回路が簡略化できる。
(2)上記参考形態では、バイアス電圧を重畳された交流電圧信号はバイアス電圧を直流として説明したが、信頼性向上のために、低周波の交流信号でもよい。
(3)繰返し電圧の周波数及びデューティ比の最適範囲は、参考形態3以外の他の参考形態にも適用できる。
(4)上記参考形態では、発明の液晶表示装置の駆動法は透過型液晶表示装置で説明したが、反射型の液晶表示装置でもよい。また、これらはカラーフィルターを使用したフルカラー型の液晶表示装置や,カラフィルターレスの液晶表示装置でもよい。
(参考形態7)
図16は本発明の参考形態7に係る液晶表示装置の概略断面図、図17は同じく概略平面図を示す。 図16に示す液晶表示装置は、偏光板101・102と、該偏光板101の内側に配置された光学補償用の位相補償板103と、前記偏光板101・102の間に配置されたアクティブマトリックス型の液晶セル104とを有する。 前記液晶セル104は、ガラス等からなるアレー基板106と、該アレー基板106に対向する対向基板105とを有し、前記アレー基板106の内面上には透明電極である画素電極108が形成され、前記対向基板105の内面上には共通電極107が形成されている。さらに、該画素電極108上に配向膜110が形成され、共通電極107上には配向膜109が形成されている。
また、前記アレー基板106上には、例えばa−Si系のTFT素子などからなるスイッチング素子111が配置され、該スイッチング素子111は前記画素電極108に接続されている。
また、前記配向膜109・110の間には、図示せぬ直径5ミクロンのスペ−サ、および正の誘電率異方性のネマティック液晶材料からなる液晶層112が配置されている。また、前記配向膜109・110はその表面上の液晶分子のプレチルト角が正負逆の値を持ち、互いにほぼ平行方向になるよう同一方向に平行配向処理されている。従って、前記液晶層112は、無電圧印加状態では液晶分子が斜めに広がった配向領域からなるいわゆるスプレイ配向を形成している。
また、前記配向膜110は、大きい値のプレチルト角B2(第3のプレチルト角)の配向膜110aと、小さい値のプレチルト角A2(第1のプレチルト角)の配向膜110bよりなる。また、前記配向膜109は、小さい値のプレチルト角D2(第4のプレチルト角)の配向膜109aと、大きい値のプレチルト角C2(第2のプレチルト角)の配向膜109bよりなり、プレチルト角A2に対向してプレチルト角C2が配置され、プレチルト角B2に対向してプレチルト角D2が配置されている。
また、前記配向膜109・110は、ラビングクロスで信号電極線113とほぼ直角方向に、上下基板同一方向(図16中の左側から右側に)に平行配向処理されている。
また、図示せぬが、液晶表示装置には、液晶表示用駆動回路以外に、第1の電圧印加手段と第2の電圧印加手段とよりなる配向転移用駆動回路が設けられている。そして、前記第1の電圧印加手段により画素電極108と共通電極107の間に第1の電圧を印加して、第1の液晶セル領域と前記第2の液晶セル領域との境界付近においてディスクリネーション線を形成し、第2の電圧印加手段により画素電極108と対向電極107の間に前記第1の電圧よりも高い第2に電圧を印加して、ディスクリネーション線において転移核を発生させ、スプレイ配向からベンド配向へ転移させようにしている。
次に、この液晶表示装置の製造方法について説明する。
まず、アレー基板106の内面上に信号走査線113、スイッチング素子111および画素電極108を形成した。
次に、前記画素電極108上に、日産化学工業(株)社製のポリアミック酸タイプの約5度の大きい値を持つ第3のプレチルト角としてのプレチルト角B2のポリイミド配向膜材料を塗布し、乾燥後焼成し、画素電極108上に配向膜110aを形成した。
次に、前記配向膜110aの紙面上左側片側領域に紫外線を照射して、第1のプレチルト角としてのプレチルト角A2の約2度の小さい値に変化させ、配向膜110bを形成した。
対向基板105の内面上には、共通電極107を形成した。
次に、前記共通電極107上には、日産化学工業(株)社製のポリアミック酸タイプの約5度の大きい値の第2のプレチルト角としてのプレチルト角C2を界面液晶分子に付与するポリイミド配向膜材料を塗布し、乾燥後焼成し、共通電極107上に配向膜109bを形成した。
次に、前記配向膜109bの紙面上右側片側領域(プレチルト角の大きい値を持つプレチルト角B2に対向する領域)に、紫外線を照射して第4のプレチルト角としてのプレチルト角D2の約2度の小さい値に変化させ、配向膜109aを形成した。
以上のようにして、図16の如く小さい値のプレチルト角A2(第1のプレチルト角)に対向して大きい値のプレチルト角C2(第2のプレチルト角)を配置させ、大きい値のプレチルト角B2(第3のプレチルト角)に対向して小さい値のプレチルト角D2(第4のプレチルト角)を配置させることができた。
また、以下のようにしてプレチルト角を制御することも可能である。
即ち、図18(a)に示すように、アレー基板106上にa−Si系のTFT素子などからなるアクティブマトリックス型のスイッチング素子(図示せぬ)と、それに接続して画素電極108を形成した。
次に、図18(b)に示すように、前記画素電極108の左側領域にオゾン雰囲気下で紫外線を照射して、画素電極108の右側領域に比較して平坦化し、平坦化領域108aを形成した。
次に、図18(c)に示すように、前記画素電極108上にJSR社製のプレイミド型のポリイミド配向材料を塗布乾燥あるいは焼成して、配向膜110を形成した。
このように形成した場合、画素電極108の平坦化領域108a上に位置する液晶分子140のプレチルト角は、未平坦化領域108b上に位置する液晶分子140のプレチルト角よりも小さい値とすることができる。さらに、共通電極についても同様の処理を行うことによって、図16と同様に、第1の液晶セル領域と、第2の液晶セル領域と、を同一画素内に有する液晶表示装置とすることができる。
次に、図16に示すように、前記のように形成した互いに大小のプレチルト角を付与する配向膜109および配向膜110の表面をラビングクロスで信号電極線113に対して直角方向に上下基板同一方向(図16中の左側から右側)に平行配向処理し、正のネマティック液晶材料からなる液晶層112を配置した。
このようにして作成された液晶表示装置において、前記画素電極108の配向元(ラビングの処理方向の上流側)には小さいプレチルト角A2が、その対向する側には大きい値のプレチルト角C2が配置され、図16の画素の(イ)領域(第1の液晶セル領域)には、共通電極107と画素電極108の間に第1の電圧として2.5Vを印加すると、液晶分子をアレー基板106側にスプレイ配向させたb−スプレイ配向120が、画素の(ロ)領域(第2の液晶セル領域)には液晶分子を対向基板105側にスプレイ配向させたt−スプレイ配向121が形成されやすくなる。
即ち、図16、図17に示すように、前記液晶セル104のスイッチング素子111を通して共通電極107と画素電極108間に第1の電圧としての2.5Vを印加すると、画素内にb−スプレイ配向領域(第1の液晶セル領域)とt−スプレイ配向領域(第2の液晶セル領域)が形成され、その境界にディスクリネーション線123が信号電極線113に沿って、かつゲート電極線114・114’に渡って明瞭に形成された(ディスクリネーション線形成工程)。
さらに、前記共通電極107と前記画素電極108との間に、第2の電圧として電圧−15Vパルスを繰り返し印加することにより、図17に示すようにディスクリネーション線123から転移核が発生してベンド配向124へ転移拡大し、TFTパネル画素全体は約3秒で速かに転移した(配向転移工程)。
これは、b−スプレイ配向状態とt−スプレイ配向領域の境界であるディスクネーション線領域は周囲より歪みのエネルギーが高くなっており、この状態に、上下電極間に高電圧が印加されることによって更にエネルギーが与えられスプレイ配向がベンド配向に転移したものと考えられる。
(参考形態8)
図19は本発明の参考形態8に係る液晶表示装置の概略図を示す。
通常表示時には、ゲート電極線は線順次にオンされ走査されるが、通常の表示の前に、ゲート電極線を順次オンし、前記共通電極107と前記画素電極108との間に第2の電圧として電圧−15Vパルスを繰り返し印加することにより、画素電極108とゲート電極線114、114’の間で電位差に起因する横電界が発生する。そして、前記横電界により、図19の如くディスクリネーション線123とゲート電極線114、114’付近から転移核が発生してベンド配向へ転移拡大し、TFTパネル画素全体は約1秒で更に速かにベンド配向へ拡大転移した(配向転移工程)。
これは、b−スプレイ配向状態とt−スプレイ配向領域の境界であるディスクリネーション線領域が周囲より歪みのエネルギーが高くなっており、この状態に、横に配置されているゲート電極線からも前記ディスクリネーション線に横電界が印加されることによって更にエネルギーが与えられ、速く転移したものと考えられる。なお、転移が完了した後、ゲート電極線114・114’は通常の走査状態にもどる。
なお、前記画素電極と共通電極の間に印加する第2の電圧は連続的に印加されてもよい。また、パルス状の電圧が繰り返し印加する場合は、その周波数が0.1Hzから100Hzの範囲であり、且つ第2の電圧のデューティー比は少なくとも1:1から1000:1の範囲で転移を速める効果が得られる。
(その他の事項)
参考形態7、8では、共通電極の配向先領域のプレチルト角D2を小さい値としたが、大きい値でも良い。また、画素電極の配向先領域のプレチルト角B2を大きい値としたが、横電界の影響でt−スプレイ配向となるため小さい値でも効果は得られる。
また、一方の基板側のプレチルト角A2の2度に対して対向のプレチルト角C2を5度としているが、その比が大きければ転移時間短縮の効果があり更に転移時間を速くすることができる。
また、前記では、小さい方のプレチルト角A2の値を2度としたが、b−スプレイ配向させベンド配向へ容易に転移させるために、小さい値のプレチルト角A2、D2の値として3度以下であれば良く、大きい値のプレチルト角B2、C2は4度以上であれば良い。
また、配向処理方向を信号電極線113に対して直角方向に上下基板同一方向に平行配向処理したが、ゲート電極線114に対して直角方向(即ち、図16のおける紙面に対して垂直方向)に上下基板同一方向に平行配向処理しても良い。その際、ディスクリネーション線の形成場所が異なる。
また、前記平行に配向処理される方向が、該画素電極に沿う電極線の直角方向から例えば約2度ずれて配向処理すると、画素内に形成されたディスクリネーション線に電極から横電界が斜めに印加されるため、スプレイ配向した液晶分子にねじれる力が加わりベンド配向へ転移しやすくなり、転移が確実に速い液晶表示装置となる。
なお、第1の電圧としては、ディスクリネーション線を形成することが可能な電圧以上であれば良い。また、画素電極と共通電極の間に第2の電圧を印加するとしたが、共通電極に印加してもよい。
また、前記配向膜材料としてポリイミド材料を使用したが、単分子膜材料などの他の材料でもよい。
他の液晶表示装置においては、例えば、基板はプラスチック基板から形成することもできる。また、基板の一方を反射性基板から形成し、例えば、シリコンで形成してもよい。
(参考形態9)
本参考形態は、信号電極線と画素電極、およびゲート電極線と画素電極に、それぞれ嵌合する形状の凹凸を形成したものである。
図20、図21に、本参考形態の液晶表示装置の要部を概念的に示す。
本図は、アクティブマトリックス型のOCBモードの液晶表示装置の画素を表示面上方(使用者側)から見たものである。
図20において、206は信号電極線(バスライン)であり、207はゲート電極線であり、208はスイッチングトランジスタ(素子)である。
なお、図では信号電極線206とゲート電極線207は交差しているが、両方の電極線は絶縁膜(図示せぬ)を介して立体配置されているのは勿論である。
また、TFTからなるスイッチングトランジスタ208は、図では略正方形状の画素電極202aに接続されている。そして、信号電極線206、ゲート電極線207、スイッチングトランジスタ208、画素電極202aの機能、動作、作用はOBCモードのみならず従来の液晶表示装置と何等異ならない。
また、最初に液晶分子211をスプレイ配向させるため、上下の配向膜203a・203bにラビングクロス等を使用しての配向処理がなされているのも同じである。
更に、偏光板204a・204b等の作用と共に、画素内のスプレイ配向状態から、液晶分子を対向基板間でベンド配向状態としたベンド配向領域に画素内の液晶分子全体を転移させる作用によって明暗の表示がなされるのも同じである。
しかしながら、図20(a)に示すように、略正方形状の画素電極202aの各辺の略中央部に、凹部221aおよび凸部222aが形成されている。一方、これに近接して配線されている信号電極線206及びゲート電極線207は、前記凹部221aおよび凸部222aに嵌合するように凸部261・271と凹部262・272に変形した配線とされている。このため、画素電極202aの上下、左右位置(図20(a)における紙面上)に、変形した転移励起用の横電界印加部を形成することとなるのが、従来の液晶表示装置と相違する。
次に、この液晶表示装置の製造方法について説明する。
横電界印加部を含めた画素電極202a面上と共通電極202b面上に、日産化学工業(株)社製のポリアミック酸タイプの約5度の大きさのプレチルト角のポリイミド配向膜材料を塗布乾燥焼成して、それぞれの電極面の液晶層210側に配向膜203a・203bを形成した。
次に、前記配向膜203a・203bの表面を、共にラビングクロスで図20(a)に示すように信号電極線206とほぼ直交する方向に配向処理した。
以上のもとで、上下の基板間に正のネマティック液晶材料を真空注入して液晶層210を形成した。
このため、図示せぬが、上下の配向膜203a・203bの表面では、液晶分子211が、そのプレチルト角が正負逆の値を持ち、しかも分子の直軸方向は互いにほぼ平行になるよう配向し、液晶層210はいわゆる無電圧印加状態で液晶分子が斜めに広がったいわゆるスプレイ配向となる。
次に、液晶表示装置の表示のための動作について説明する。
以上のもとで、共通電極202bと画素電極202a間に−15Vという液晶分野では比較的電圧の高いパルス状の電圧を繰り返し印加すると共に、ゲート電極線207を通常の走査状態か、あるいは殆ど全てオンさせた状態にする。これにより、横電界印加部によって、ゲート電極線207、信号電極線206と画素電極202a間に周囲の通常の横電界より強い横電界が印加される。その結果、画素領域内のスプレイ配向領域において、信号電極線206とほぼ直交する方向にラビングした場合、主にゲート電極線207と画素電極202a間の横電界印加部を基点とした液晶層299にベンド配向への転移核が発生する。また、図21に示すように、ゲート電極線207と直交する方向にラビングした場合、主に信号電極線206と画素電極202a間の横電界印加部を基点とした液晶層298にベンド配向への転移核が発生する。
更に、この転移核をもとにベンド配向領域が拡大し、その結果画素領域全体を約0.5秒でベンド配向へ完了させることができた。
なお、TFTパネル全体では、約2秒で速かに転移した。
この機構であるが、上下電極間に高電圧が印加されて、図20(b)に示すように、液晶層210がb―スプレイ配向状態となり、周囲より歪みのエネルギーが高くなり、この液晶分子配向状態方向に横電界印加部からほぼ直角(図20(b)面垂直方向)に横電界が印加されるため、図20(b)のb―スプレイ配向における下基板側の液晶分子がねじれる力を受け、転移核の発生が起きるものと考えられる。
以上の説明では、横電界印加部は、凹凹に変形した画素電極部と両方の信号電極線の凹凸部は、相互に嵌合するように形成されるものとしたが、図22に示すように、画素電極202aのみ、信号電極線206のみ、ゲート電極線207のみに形成されてもよいのは勿論である。
即ち、本図においては、信号電極線206の凸部263、ゲート電極線207の凸部273、画素電極202aの凸部223a・224aはいずれか一方のみにあり、嵌合型となっていないのが図20に示すものと相違する。
また、凹凸部の平面形状は、図20乃至図22に示す三角形状、四角形状以外の形状、例えば台形形状、半円形状、円形状、楕円形状等であってもよいのは勿論である。
更に、図20乃至図22では、横電界印加部は1画素の上下左右に合計4カ所設けているが、画素の大きさ等によっては上下の2個のみ、あるいは1個だけ設けても良く、更にまた電極縁にそって凹凸が連続的に形成されていてもよいのは勿論である。また、これまで、ラビング方向を信号電極線あるいはゲート電極線のほぼ直交するとしたが、ラビング方向を斜め方向にしても良い。この場合、信号およびゲート電極線と画素電極間の横電界印加部の液晶層からベンド配向へ転移が発生する。また、少なくとも、ラビング方向とほぼ直交する方向に横電界を印加できる横電界印加部を画素単位に少なくとも1個配置することが望ましい。
また、図20乃至図22は平面図であるため、両電極線(信号電極線206およびゲート電極線207)と画素電極202aは同一平面にあるように見えるが、これは少なくとも一方の電極線が画素電極とアレー基板上異なる高さに配置されていても良い。
このように、画素電極の周辺の一部を基板面に平行な面内で凹凸に変形した電極変形部からなる横電界印加部は、平面視では0.5〜10μm程度離れて、該横電界印加部の側方に存在する信号電極線若しくはゲート電極線の凸部や0.5〜10μm程度凹んだ凹部の存在により、横電界を発生させる。
(参考形態10)
本参考形態は、横電界印加用の電極線を設けるものである。
以下、図23を参照しつつ本参考形態を説明する。
本図の(a)は、基板上面より見た平面図である。(b)は、液晶表示装置のゲート電極線207に平行な面での断面図である。
本図の(a)と(b)において、209は、アレー基板201a上の信号電極線206のほぼ直下部分に横電界印加専用に布設された電線である。212は、前記横電界印加用線209と信号電極線206、ゲート電極線207等を絶縁するための透明絶縁膜である。従って、この画素を上部(表示面に直交する使用者側方向)から見た場合には、図23(a)に示すごとく、画素の左右中央部にて横電界印加用線209の平面視三角形状の凸部291が信号電極線206の側方に突出している。なお、前記信号電極線206および画素電極202aは従来技術のものと何等かわりがない。
前記横電界印加用線209は、前記信号電極線206若しくはゲート電極線207が接続された駆動回路に接続され、さらに、前記横電界印加用線209は、配向転移後の通常の液晶表示時には、駆動回路と遮断されるよう構成されている。
また、前記横電界印加用線209を、信号電極線206に対する上部の信号電極線とし、透明絶縁膜を介して画素電極に近接して設け、横電界印加の効果を増し、併せて透明絶縁膜中の図示していないコンタクトホールで電気的に接続されていてもよい。この場合、信号電極線が2本となるため冗長度が増し電気抵抗が低下するという効果もある。
即ち、図23(c)に示すように、横電界印加用線209aは、信号電極線206の直上に透明絶縁膜213を介して設けられている。なお、画素中央部への平面視三角形状の凸部291aがあるのは同じである。
また、図23(d)は、本参考形態の他の例である。図に示すように、横電界印加用線209bが平坦化透明絶縁膜212bによって被覆され、さらに、専用線209bの下に信号電極線206が平坦化透明絶縁膜212cによって被覆され、画素電極202aが前記平坦化透明絶縁膜212bの上に設けられている。なお、画素中央部への三角形状の凸部291bがあるのは同じである。
また、図ではこの横電界印加用の専用線の凸部を三角形状としているが、これは画素電極に対向する部分全てに連続的に凸部を設けたり、更には上方へ突出した凸部を有する等、立体的な構造を有していてもよいのは勿論である。
また、横電界印加用の専用線は信号電極線でなく、ゲート電極線の直下、直上に設けても良い。更には、両電極線の直下等に設けても良い。
(参考形態11)
本参考形態は、画素電極内に少なくとも1カ所の切欠きを設けて欠陥部を形成するものである。
図24に、本参考形態の液晶表示装置の画素単位の平面と特徴を概念的に示す。本図に示すように、ITO膜からなる画素電極202aは、例えば数μm幅でエッチングにより除去されて平面視クランク形状の電極欠陥部225が形成されている。
なお、この電極欠陥部225を含めた画素電極202a面上および図示せぬ共通電極面上には、日産化学工業(株)社製のポリアミック酸タイプの約5度の大きさのプレチルト角のポリイミド配向膜材料を塗布乾燥焼成して、それぞれ配向膜(図示せず)を形成し、更にそれらの表面をラビングクロスでゲート電極線207と直交する方向に配向処理がなされ、このため液晶分子のプレチルト角が正負逆の値を持ち、互いにほぼ平行方向になるよう同一方向に平行配向されているのは、第9および第10の参考形態と同じである。
従って、液晶層はいわゆる無電圧印加状態で液晶分子が斜めに広がった配向領域からなるいわゆるスプレイ配向の液晶セルを形成しているのも同じである。
しかしながら、表示前の画素の共通電極と画素電極間に15V、あるいは共通電極に−15Vの電圧のパルスを繰り返し印加すると共に、ゲート電極を通常の走査状態か、あるいは殆ど全てオンさせた状態にすると、画素単位には電極欠陥部225が存在するため、図24(b)に示すように、該電極欠陥部225の縁で強い歪みの斜め横電界280が発生する。
このため、画素領域内のスプレイ配向は、この電極欠陥部225の液晶層299にベンド配向への転移核が発生し、更にこのベンド配向領域が拡大して画素領域全体を約0.5秒でベンド配向へ完了させる。また、TFTパネル全体では、約2秒で速かに転移する。
これは、電極欠陥部225からなる横電界印加部で強い横電界を受け、この付近の液晶分子は基板面に水平状態に配向され、いわゆるb−スプレイ配向状態となり、周囲より歪みのエネルギーが高くなっており、この状態のもとで上下電極間に高電圧が印加されるため更にエネルギーが与えられ、その結果、電極欠陥部225において転移核が発生し、ベンド配向領域が拡大するものと考えられる。
なお、図24では、平面視クランク形状の電極欠陥部225を1本形成しているが、2本以上としても良いのは勿論である。
また、その形状は直線、角型や円形、楕円、更には三角形状等であっても良いのは勿論である。
更に、電極欠陥部225は、共通電極側に形成しても良い。
更にまた、画素電極および共通電極の両方に形成しても良いのも勿論である。
(参考形態12)
本参考形態は、横電界を発生させると共に、これに併せてあらかじめ画素平面内にチルト角の相違する領域を形成しておくものである。
図25に、本参考形態の液晶表示装置の画素単位の構成と特徴を概念的に示す。本図の(a)は、ゲート電極線に平行な方向の画素の断面図であり、同一画素であるが、左側の(イ)と右側の(ロ)とで、チルト角が相違している様子を示す。
図25(b)は、上(使用者側)方向より見た画素の平面図であり、画素電極202aの上下左右に凹凸部221a・222aが設けられ、更に信号電極線206およびゲート電極線207の対応する位置に前記凹凸部221a・222aに相嵌合するように凹凸部261・262・271・272が設けられており、前述した参考形態7と同様に、第1の電圧である2.5Vを印加して、図25(a)の(イ)と(ロ)の境界にディスクリネーション線226が形成されている。
以下、本参考形態の液晶表示装置の製造方法について説明する。
アクティブマトリックス型の液晶セルの対向する基板内面上にはそれぞれ配向膜203am・203bmが形成され、この配向膜203am・203bmは、液晶層210が無電圧印加状態でスプレイ配向を形成する処理がされていること、画素電極202aやこれに近接して配線されているゲート電極線207等に転移励起用の横電界印加部を形成すること等は、先の第1の参考形態と同じである。
しかしながら、配向膜の処理が異なる。即ち、図25(a)において、横電界印加部を含めた画素電極202a面上に、日産化学工業(株)社製のポリアミック酸タイプの約5度の大きい値を持つプレチルト角B2のポリイミド配向膜材料を塗布乾燥焼成し、配向膜203amを形成する。
次に、この配向膜203amの左側片側領域203ahのみ、即ち、(イ)に示す方のみに紫外線を照射してプレチルト角E2が約2度の小さい値の配向膜に変化させる。
これに対して、対向基板201b上には日産化学工業(株)社製のポリアミック酸タイプの約5度の大きい値のプレチルト角F2を界面液晶分子に付与するポリイミド配向膜材料を塗布乾燥焼成し、共通電極202b上に配向膜203bhを形成する。
このようにして、図25(a)の(イ)に示す如くアレー基板201a側左半分の配向膜203ahの小さい値のプレチルト角E2に対向して対向基板201b側左半分の配向膜203bhの大きい値のプレチルト角F2を配置させ、(ロ)に示すごとくアレー基板側201a右半分の配向膜203amの大きい値のプレチルト角B2に対向して対向基板201b側右半分の配向膜203bmの小さい値のプレチルト角D2を配置させる。
更に、このようにして形成した互いに大小のプレチルト角を付与する配向膜の表面をラビングクロスで図25(b)に示すように信号電極6とほぼ直交する方向に上下基板同一方向に平行配向処理した。その後、正のネマティック液晶材料を充填して、これからなる液晶層210を配置した。
以上の下で、画素電極202aの配向元(ラビングの根本方向)には小さいプレチルト角E2が、該プレチルト角E2に対向する側には大きい値のプレチルト角F2が配置され、図25(a)の画素の(イ)で示す領域には液晶分子を下基板側にスプレイ配向させたb−スプレイ配向227bが、画素の(ロ)で示す領域には液晶分子を上基板側にスプレイ配向させたt−スプレイ配向227tが形成されやすくなる。
次に、液晶セルのスイッチングトランジスタ208を通して対向する電極間に転移臨界電圧付近の2.5Vを印加すると、上述の理由で同一の画素内にb−スプレイ配向領域とt−スプレイ配向領域が形成され、その境界にディスクリネーション線226が信号電極線206に沿って、かつゲート電極線207に渡って明瞭に形成された。
この画素の共通電極と画素電極間に−15Vのパルスを繰り返し印加した。そうすると、図25(b)に示すように、ディスクリネーション線226と横電界印加部付近の液晶層299から転移核が発生してベンド配向領域へ転移が拡大し、TFTパネル画素全体では約1秒で速かに転移した。
これは、b−スプレイ配向状態とt−スプレイ配向領域の境界であるディクリネーション線226領域は周囲より歪みのエネルギーが高くなっていて、この状態に加えて横電界印加部で発生する横電界によってスプレイ配向にねじれが発生して転移し易くなり、これに上下電極間に高電圧が印加されて更にエネルギーが与えられベンド転移したものと考えられる。
以上、本発明を幾つかの参考形態に基づいて説明してきたが、本発明は何もこれらに限定されないのは勿論である。即ち、例えば以下のようにしてもよい。
1)画素電極と共通電極間に印加する電圧を連続的、あるいは間欠的とする。
2)高電圧パルスが繰り返し印加される場合、その周波数は0.1Hzから100Hzの範囲であり、且つ第2の電圧のデューティー比は少なくとも1:1から1000:1の範囲で、転移を速める値を選択する。
3)使用する基板をプラスチック製とし、電極として有機導電膜を採用する。
4)基板の一方を反射性基板により形成し、例えばシリコンとしたり、あるいは、アルミニウム等の反射電極よりなる反射性基板により形成し、反射型液晶表示装置とする。
5)画素電極、共通電極に基板面に直交する方向の強電極電界発生用突起を設ける等の手段をも併用する。
6)両基板間を一定に保持する球状ガラスやシリカに換えて、そのための突起物を形成し、該突起物に液晶分子を配列させる機能を持たせる等の手段をも併用する。
7)前記突起部の上部若しくは下部を前記強電極発生用突起に兼用する。
8)画素電極の形状は、正方形状でなく、長方形状や3角形状とする。
9)画素を液晶の配向の異なる領域に分割するのは2つではなく、3つや4つとしたりする。
10)プレチルト角に大小を付けるのに、透明電極をO2 アッシャー等で表面状態を変え、該透明電極に配向膜を形成する等の手段を採用している。
(参考形態13)
図26は参考形態13に係る液晶表示装置に用いられる液晶セルの構成外観図であり、図27、および図28は凸形状物作製を説明するための製造プロセスの一部である。
ガラス基板308上にJSR株式会社製PC系レジスト材料を塗布形成し厚さ1μmのレジスト薄膜を形成する。次にレジスト薄膜320に、矩形状のパターンの開口部322を設けたフォトマスク321を通して、平行光紫外線323で照射露光する。平行光で露光された上記レジスト薄膜320を現像、リンスし、90℃でプリベークして図28に示すように断面が凸状の形状物310を形成する。
次に、前記基板上に、定法に従いITO電極7を2000A製膜し、電極付ガラス基板308とした。その後、透明電極302を有するガラス基板301、および上記凸形状物の形成されたガラス基板308上に日産化学工業製配向膜塗料SE−7492をスピンコート法にて塗布し、恒温槽中180℃、1時間硬化させ配向膜303、306を形成する。その後、レーヨン製ラビング布を用いて図29に示す方向にラビング処理を施し、積水ファインケミカル(株)製スペーサ5、およびストラクトボンド352A(三井東圧化学(株)製シール樹脂の商品名)を用いて基板間隔が6.5μmとなるように貼り合わせ、液晶セル309(液晶セルAとする)を作成した。
この時、配向膜界面での液晶プレチルト角が約5度となるようにラビング処理を行った。
次に、液晶MJ96435(屈折率異方性Δn=0.138)を真空注入法にて液晶セルAに注入し、テストセルAとした。
次に、テストセルAに、その偏光軸が配向膜のラビング処理方向と45度の角度をなし、かつ、お互いの偏光軸方向が直交するように偏光板を貼合し、7V矩形波を印加してスプレイ配向からベンド配向への転移を観察したところ、約5秒で全電極領域がスプレイ配向からベンド領域へと転移した。
凸形状物310の形成された領域では、液晶層厚が周囲の液晶層領域に比べて小さく実効的に電界強度が大きく、この部分よりベンド転移が確実に発生する。発生したベンド配向は速やかに他の領域に広がっていく。
即ち、確実かつ高速なスプレイ→ベンド転移が達成出来る。
凸形状物としては、その断面形状が本実施例の如く矩形状のほか、台形状、三角状、半円状でも良いことは言うまでもない。
比較例として、凸形状部310を有しない透明電極付きガラス基板を用いること以外、同様のプロセスで、スプレイ配向液晶セルRを作製し、液晶MJ96435を封入してテストセルRとした。このテストセルRに7V矩形波を印加した時の、全電極領域がスプレイ配向からベンド領域へと転移するに要する時間は42秒であり、本発明の効果は明らかである。
(参考形態14)
図30は参考形態14に係る液晶表示装置に用いられる液晶セルの構成外観図であり、図31はその平面図である。図30は図31の矢視X1−X1から見た断面図である。参考形態14は、凸形状物310を、表示画素領域外に形成された透明電極307a上に設けたことを特徴とするものである。以下に、その作製手順を説明する。
透明電極302を有するガラス基板301、および凸形状物の形成されたガラス基板308上に日産化学工業製配向膜塗料SE−7492をスピンコート法にて塗布し、恒温槽中180℃、1時間硬化させ配向膜303,306,306aを形成する。その後、レーヨン製ラビング布を用いて図29に示す方向にラビング処理を施し、積水ファインケミカル(株)製スペーサ5、およびストラクトボンド352A(三井東圧化学(株)製シール樹脂の商品名)を用いて基板間隔が6.5μmとなるように貼り合わせ、液晶セル(液晶セルBとする)を作成した。
この時、配向膜界面での液晶プレチルト角が約5度となるようにラビング処理を行った。
次に、液晶MJ96435(屈折率異方性Δn=0.138)を真空注入法にて液晶セルBに注入した。
次に、液晶セルBに、その偏光軸が配向膜のラビング処理方向と45度の角度をなし、かつ、お互いの偏光軸方向が直交するように偏光板を貼合し、7V矩形波を印加してスプレイ配向からベンド配向への転移を観察したところ、約7秒で全電極領域がスプレイ配向からベンド領域へと転移した。
本参考形態では、表示画素領域外に凸形状部を設け、表示画素領域外でベンド転移核発生をさせたものであるが、発生したベンド配向は表示画素領域外から表示画素領域内に速やかに広がっていくことが確認された。
表示画素領域とベンド核発生用電極領域との間には、電界の印加されない(電極部を有しない)領域が存在するが、微小領域でありさえすればこの領域を越えてベンド配向は展開する。
(参考形態15)
図32は参考形態15に係る液晶表示装置に用いられる液晶セルの構成外観図であり、図27、図28、および図33は凸形状物作製を説明するための製造プロセスの一部である。
ガラス基板308上にJSR株式会社製PC系レジスト材料を塗布形成し厚さ1μmのレジスト薄膜を形成する。次にレジスト薄膜320に、矩形状のパターンの開口部322を設けたフォトマスク321を通して、平行光紫外線323で照射露光する。平行光で露光された上記レジスト薄膜20を現像、リンスし、90℃でプリベークして図28に示すように断面が凸状の形状物310を形成する。
次に、上記レジスト薄膜材料のガラス転移点以上の150℃でポストベークして凸形状物310の肩をなだらかに順方向に傾斜させて、図32に示すようにその断面形状を山形様に形成する工程で製造する。
次に、前記基板上に、定法に従いITO電極を2000Åの厚みで製膜し、電極付ガラス基板308とした。その後、透明電極302を有するガラス基板301、および上記凸形状物の形成されたガラス基板308上に日産化学工業製配向膜塗料SE−7492をスピンコート法にて塗布し、恒温槽中180℃、1時間硬化させ配向膜303、306を形成する。その後、レーヨン製ラビング布を用いて図29に示す方向にラビング処理を施し、積水ファインケミカル(株)製スペーサ305、およびストラクトボンド352A(三井東圧化学(株)製シール樹脂の商品名)を用いて基板間隔が6.5μmとなるように貼り合わせ、液晶セル309(液晶セルCとする)を作成した。
この時、配向膜界面での液晶プレチルト角が約5度となるようにラビング処理を行った。
次に、液晶MJ96435(屈折率異方性Δn=0.138)を真空注入法にて液晶セルCに注入し、テストセルCとした。
次に、テストセルCに、その偏光軸が配向膜のラビング処理方向と45度の角度をなし、かつ、お互いの偏光軸方向が直交するように偏光板を貼合し、7V矩形波を印加してスプレイ配向からベンド配向への転移を観察したところ、約7秒で全電極領域がスプレイ配向からベンド領域へと転移した。
本テストセルCは、上記三角形状先端部に電界の集中が起こり、この部分よりベンド配向が発生する。また、三角形状物60上部では、ラビング処理による擦り上げ部と擦り下げ部が存在するため、結果として液晶プレチルト角の符号が反対の領域が出来る。即ち前記凸形状部の近傍では液晶ダイレクタが基板面に水平になっており、このことも高速なスプレイ−ベンド転移に寄与しているものと思われる。
本実施例では画素領域内に電界集中部を設けたが、画素領域外に設けても同様な効果が認められた。また、本実施例では電界集中部位は基板片側に配設したのみであるが、基板両側に配設しても良いことは言うまでもない。
(参考形態16)
図34は参考形態16に係る液晶表示装置に用いられる液晶セルの構成外観図であり、図35は本参考形態で用いたガラス基板302の電極パターンを表している。
開口部380を有する透明電極302、及び開口部を有しない透明電極307を有する2枚のガラス基板301、308上に日産化学工業製配向膜塗料SE−7492をスピンコート法にて塗布し、恒温槽中180℃、1時間硬化させ配向膜303、306を形成する。その後、レーヨン製ラビング布を用いて図29に示す方向にラビング処理を施し、積水ファインケミカル(株)製スペーサ305、およびストラクトボンド352A(三井東圧化学(株)製シール樹脂の商品名)を用いて基板間隔が6.5μmとなるように貼り合わせ、液晶セル309(液晶セルDとする)を作成した。
この時、配向膜界面での液晶プレチルト角が約5度となるようにラビング処理を行った。
次に、液晶MJ96435(屈折率異方性Δn=0.138)を真空注入法にて液晶セルDに注入し、テストセルDとした。
次に、その偏光軸が配向膜のラビング処理方向と45度の角度をなし、かつ、お互いの偏光軸方向が直交するように偏光板を貼合し、電圧を印加しながらスプレイ配向からベンド配向への転移を観察した。
このテストセルDに、ガラス基板8側電極に2V、30Hz、矩形波を、ガラス基板1側電極に7V、30Hz、矩形波を印加した時の、全電極領域がスプレイ配向からベンド領域へと転移するに要する時間は5秒であり、極めて高速なベンド転移が実現された。
本実施例においては、二枚の電極間に挟持された液晶層に5V(=7V−2V)の電界が印加されるが、電極開口部の液晶層には7V(=7V−0V)の実効電界が印加されることになるため、ここよりベンド配向が発生する。
本実施例では開口部形状を矩形としたが、円形、三角形状など他の形状でも良いことは言うまでもない。
(参考形態17)
図36は参考形態17に係る液晶表示装置に用いられる液晶セルの要部断面図であり、図37はその一部の拡大図である。この液晶セルは、ガラス基板308上に画素スイッチング素子380、信号電極線381、ゲート信号線(図示せず)が形成されており、これらスイッチング素子380、信号電極線381及びゲート信号線を覆って平坦化膜382が形成されている。そして、平坦化膜382上に表示電極307が形成されており、この表示電極307とスイッチング素子380とは、平坦化膜382に開口したコンタクトホール383内を挿通する中継電極384を介して電気的に接続されている。中継電極384は、コンタクトホール383の上開口側の部分が、図37に示すように凹部384aとなっている。このような凹部384aにより、表示電極307に開口が形成されることになり、この凹部384a付近で電界の集中を生じさせることが可能となる。よって、転移時間の短縮化を達成することができる。
(参考形態18)
図38は参考形態18に係る液晶表示装置の構成外観図である。
参考形態16で作成したテストセルDに、主軸がハイブリット配列した負の屈折率異方性もつ光学媒体よりなる位相差板312、315、負の一軸性位相差板311、314、正の一軸性位相差板319、偏光板313、316を図39に示される配置で貼合し、液晶表示装置を作成した。
この時の位相差板312、315、311、314、319のリターデーション値は波長550nmの光に対して、それぞれ26nm、26nm、350nm、350nm、および150nmであった。
図40は25℃における液晶表示装置の正面での電圧−透過率特性である。10Vの矩形波電圧を10秒印加しベンド配向を確認した後、電圧を降下させながら測定した。本液晶表示素子ではベンド配向からスプレイ配向への転移が2.1Vで起こるため、実効的には2.2V以上の電圧で表示を行う必要がある。
次に、白レベル電圧を2.2V、黒レベル電圧を7.2Vとした時のコントラスト比の視角依存性を測定したところ、上下126度、左右160度の範囲でコントラスト比10:1以上が達成されており、基板配向膜面上に液晶ダイレクタ方位が周囲とは異なる部位を一部設けても、充分な広視野角特性が維持されることが確認された。また、目視観察においても、配向不良および表示品位不良は認められなかった。
また、3V〜5V間の応答時間を測定したところ、立ち上がり時間は5ミリ秒、立ち下がり時間は6ミリ秒であった。
以上より明らかなように、本発明液晶表示装置は、従来のOCBモードの広視野角特性や応答特性を犠牲にすることなく、高速なスプレイ−ベンド配向転移を達成することが出来、その実用的な価値は極めて大きい。
(実施の形態1)
図41は本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の要部断面図である。ベンド配向型セルとして動作させる液晶セルは、2枚の平行な基板400,401間に液晶層402を封入した、いわゆるサンドイッチセルである。通常、一方の基板には透明電極が、他方の基板には薄膜トランジスタを備えた画素電極が、各々形成されている。
図41(a)は、電場を印加しない初期状態の配向を示す模式図である。初期状態の配向は、液晶分子の分子軸が基板400,401平面に対して若干の傾きを有しながらもほぼ平行に且つ実質的に一様に配向した状態、すなわちホモジニアス配向である。基板との界面に存在する液晶分子は、上下両基板400,401において、互いに逆方向に傾斜している。すなわち、基板との界面に存在する液晶分子の配向角θ1およびθ2(すなわち、プレチルト角)は、互いに異符号となるように調整されている。なお、以下の説明において、配向角およびプレチルト角は、基板に平行な平面に対する液晶分子の分子軸の傾きを、基板に平行な平面を基準に反時計回りに正として表した角度である。
図41(a)の状態の液晶層402に、基板平面に対して垂直方向にある値を超える強さの電場を印加すると、液晶の配向状態が変化し、図41(b)に示すような配向へと転移する。
図41(b)に示す配向は、ベンド配向と呼ばれるものであり、両基板表面付近においては基板平面に対する液晶分子の分子軸の傾き、すなわち配向角の絶対値が小さく、液晶層402の中心部分においては液晶分子の配向角の絶対値が大きくなっている。また、液晶層全体に渡って、実質的にねじれ構造を有してない。
このような、ホモジニアス配向からベンド配向への転移を詳細に観察すると、まず、液晶層402の一部においてベンド配向の核が発生しており、この核が、ホモジニアス配向である他の領域を蚕食しながら次第に成長し、最終的には液晶層全体がベンド配向となる。換言すれば、液晶層のベンド配向への転移には、核の発生、すなわち微小領域でのホモジニアス配向からベンド配向への転移が必要である。
そこで、発明者らは、液晶分子配向の単位ベクトル(以下、「ディレクター」とする。)の運動方程式を解くことにより、微小領域でのベンド配向への転移について解析し、核が容易に発生し得る条件を見出した。以下に、その手法について説明する。
液晶の配向状態は、ディレクターによって記述される。なお、ディレクターnは、[数1]で表される関数である。
ここで、k11、k22、k33はFrankの弾性定数であり、各々、スプレイ、ツイスト、ベンドの弾性定数を表す。Δεは、液晶の分子軸方向の誘電率とそれに直交する方向の誘電率との差、すなわち誘電率異方性を表す。また、Eは、外部電場である。
[数2]において、第1項、第2項、第3項は、各々、液晶の広がり、捻じれ、曲がりによる弾性エネルギーを表わす。また、第4項は、外部電場と液晶との電気的相互作用による電気エネルギーを表す。電気エネルギーは、Δε>0であればnがEと平行となるときに最小となり、Δε<0であればnがEに直交するときに最小となる。従って、ある特定の強さを超える電場Eが印加されると、液晶分子は、Δε>0であれば分子長軸が電場方向に平行になるように配向し、Δε<0であれば分子長軸が電場方向に直交するように配向する。
初期状態の分子配向が外部電場による変形を受けたときの液晶の全自由エネルギーFは、fの体積積分として表すことができる。
[数3]に示すように、全自由エネルギーFは、ディレクターを表す未知関数n(x)を変数として定義される関数(すなわち、汎関数)である。外部電場印加下において出現する液晶の配向状態は、適当な境界条件のもとで、全自由エネルギーFを最小とするn(x)で記述される。すなわち、Fを最小とするn(x)が決まれば、液晶の配向状態を予測することができる。更に、適当な境界条件のもとでFを最小とするような、時間変化をも考慮したディレクターn(x,t) を決めることができれば、光学定数などのデバイスのあらゆる挙動を予測することができる。これは、物理的にいえば典型的な最小作用の原理であり、数学的にいえば境界値付きの変分極小問題である。
そこで、[数3]を原理的に解く。しかし、例えば、Eulerの方程式を用いるような解析的方法では、複雑な非線形方程式が現れるため、ディレクターn(x)の関数形を簡単に決定することは困難である。
そこで、[数3]を容易に解くために、次のような方法を採用する。まず、積分空間を有限要素法と同様の手法により離散化する。すなわち、全積分空間をnp個の要素に分割し、[数3]を各要素の積分の和として表わす。
ここで、部分積分空間ΔVにおけるディレクターn(x)に対して、以下のような近似を行う。nx 、ny、nzは、[数2]式に示すように本来ならばx、y、zの関数であるが、ΔVにおいては一定であると仮定する。また、dnx,j/dx=(nx,j+1−dnx,j)/Δxと近似する。なお、nx,jは、第j番目の要素中におけるnxであり、前述したようにΔVにおいては一定ではあるが、未知数である。この部分積分空間ΔVにおけるn(x)の近似は粗いものであるが、これを積分空間の分割を細かくすることによってカバーし、近似を高めることができる。
上記近似によれば、[数4]において、nx,j、ny,j、nz,jは1つの要素中では定数であるため、積分自体は容易に計算できる。しかし、この段階でも、全自由エネルギーFを表す式は、分割数に比例する多数の未知数nx,j、ny,j、nz,jの高次項および非線型項が存在し、依然として複雑である。但し、nx,0、ny,0、nz,0などの値は、境界条件として容易に与えることができる。
上記近似によれば、全自由エネルギーFは、
という形に変換される。すなわち、全自由エネルギーFは、未知関数n(x)を変数として定義される汎関数から、未知数nx,j、ny,j、nz,jの関数に変換される。未知数nx,j、ny,j、nz,jは、多次元のパラメーター空間内で、関数Fを最小とする値である。
で表される。但し、θは、基板に平行な平面に対する液晶分子の傾き、すなわち配向角である。また、θは、液晶分子の基板からの距離zのみに依存するものとする。図2は、このディレクターを示した模式図である。
[数6]を[数4]に代入し、np個の要素に分割して離散化を行い、各要素について、Fを最小化するようなθjを求める。すなわち、各要素について、
なる方程式を満足するθjを求める。なお、dはL/npであり、Lは基板間距離である。
しかし、[数7]のような複雑な非線型方程式を、np個連立させて解くのは容易ではない。そこで、以下のような回路類推を行うことにより、[数7]を解く。ディレクターの運動方程式は、
で表される。なお、ηは、液晶の粘性率である。[数8]について、以下のような回路類推を行う。
[数8]は、
に変換される。[数10]に対応する回路は、図3に示すように、np個のCR回路で構成されている。 [数10]の第二項は、CR回路を流れる電流を表す。なお、Rjは放電緩和のための抵抗であって、CR回路を流れる電流(i)を、i=∂F(Vj)/∂Vjとして規定する電圧制御抵抗である。
電流i(=∂F/∂Vj)は、特定のVjでゼロに収束する。すなわち、Vjは、回路シミュレーターでCR回路を流れる電流がゼロとなるときの電圧を求めれば、自動的に求めることができる。
このように、ディレクターの運動方程式を等価回路に置き換えることにより、液晶の配向現象を表現する非線型連立方程式を回路シミュレーター上で解析し、外部電場Eと配向状態(配向角θj)との関係を求めることができる。
上記手法においては、配向現象を表現する非線型連立方程式を、電気回路的な類推によって回路に置き換えて回路シミュレーター上で解析するため、プログラム中には等価回路が設定されるだけで、方程式自身を解くための計算プロセスは含まれない。よって、プログラムの単純化および縮小を実現することができる。
更に、上記手法に基づいて、外部電場Eの増加に伴う配向角θjの変化を計算すれば、配向角θjが突然変化するときの外部電場Eとして、液晶転移の臨界電場Ecを求めることができる。
図44は、上記手法に基づく計算結果の一例であり、外部電場Eを時間とともに増加させたときの、θjの時間変化を表す。なお、図4の結果は、境界条件をθ0=+0.1rad、θnp-1=−0.1radとして固定し、k11=6×10-7dyn、k33=12×10-7dyn、Δε=10として計算した結果である。図4に示すように、電場印加初期においては、配向角θjがいずれも比較的小さく、液晶の配向状態がホモジニアス配向であることがわかる。しかし、一定時間経過後、すなわち外部電場Eが一定値を超えると(E>Ec)、配向角θjが突然変化して転移が生じる。転移後の配向角θjは、両基板近傍から液晶層の中心部に向かってその絶対値が大きくなっており、転移後の液晶の配向状態がベンド配向であることがわかる。
臨界電場Ecが小さいほど、液晶の配向状態をホモジニアス配向からベンド配向へと速やかに転移させることができる。そこで、上記手法に基づいて、液晶の配向を決める条件を種々変化させて、各条件下での臨界電場Ecを計算した。その結果、臨界電場Ecは、特に、液晶の弾性定数(スプレイ弾性定数)、プレチルト角の非対称性に影響されることが見出された。
図45は、スプレイ弾性定数k11と臨界電場Ecとの関係を求めた結果を示したものである。なお、図45は、境界条件をθ0=+0.1rad、θnp-1=−0.1radとし、k33=12×10-7dyn、Δε=10として計算した結果である。図45に示すように、スプレイ弾性定数k11が大きいほど、臨界電場Ecが増大する。特に、k11>10×10-7dynの範囲では、k11の増大に伴って、Ecが急激に増大する。
従って、速やかな液晶転移を実現するためには、スプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn未満、好ましくは、8×10-7dyn以下とすることが有効である。また、スプレイ弾性定数k11の下限については、特に限定するものではないが、6×10-7dyn以上とすることが好ましい。k11<6×10-7dynの液晶材料を合成または調製することは、通常、困難であるからである。
上記のようなスプレイ弾性定数k11を有する液晶材料としては、特に限定するものではないが、例えば、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビフェニル系液晶などを挙げることができる。
プレチルト角の非対称性は、上下基板間でのプレチルト角の絶対値の差(Δθ)で表すことができる。また、前述したように、プレチルト角θ0およびθnp-1は互いに異符号とされるため、プレチルト角の絶対値の差(Δθ)は、Δθ=|θ0+θnp-1|で表すことができる。
図46(a)は、上下基板間でのプレチルト角の絶対値の差(Δθ)と臨界電場Ecとの関係を求めた結果を示すものである。図6のaは、k11=6×10-7dyn、k33=12×10-7dyn、Δε=10として計算した結果である。図46(a)に示すように、プレチルト角の差Δθが大きいほど、臨界電場Ecが低下する。特に、Δθ≧0.0002radの範囲では、Δθの増大に伴って、Ecが急激に低下する。
従って、速やかな液晶転移を実現するためには、プレチルト角の差Δθを、0.0002rad以上、好ましくは0.035rad以上とすることが有効である。また、プレチルト角の差Δθの上限については、特に限定するものではないが、通常、1.57rad未満、好ましくは0.785rad以下とする。
なお、プレチルト角θ0およびθnp-1は、その絶対値が、通常、0radを超え且つ1.57rad未満、好ましくは0.017rad以上0.785rad以下となるように調整される。プレチルト角の調整は、基板表面に、斜方蒸着法およびラングミュア−ブロジェット(LB)法などの方法により、適当な液晶配向膜を形成することによって制御することができる。液晶配向膜としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン樹脂、ポリシンナメート樹脂、カルコン系樹脂、ポリペプチド樹脂および高分子液晶などを挙げることができる。また、液晶配向膜の材料選択のほか、斜方蒸着法を採用する場合は蒸着方向の基板表面に対する傾きを調製することによって、LB法を採用する場合は基板の引き上げ速度などの条件を調整することによって、プレチルト角を制御することができる。
また、臨界電場Ecは、液晶層内の電場の不均一性に影響される。液晶層に発生する電場の歪みが、液晶分子の配向状態の安定性に影響するからである。なお、電場の不均一性は、液晶層に実質的に均一に印加される主電場E0と、不均一に印加される副電場E1との比(E1/E0)で表すことができる。なお、E1は、印加される副電場の最大値とする。
図47は、上記手法に基づいて、E1/E0の値を種々変化させて、各条件下での臨界電場Ecを計算した計算結果の一例である。なお、図7の結果は、境界条件をθ0=+0.26rad、θnp-1=−0.25radとして固定し、k11=6×10-7dyn、k33=12×10-7dyn、Δε=10として計算した結果である。図47に示すように、E1/E0が大きいほど、すなわち電場の不均一性が大きいほど、臨界電場Ecが増大し、E1/E0=1付近ではEcは無限小となる。これは、液晶層の電場に歪みが存在すると、電場が一様である場合に比べてホモジニアス配向が不安定となり、その結果、ベンド配向への転移が速やかに発現するからであると考えられる。
従って、速やかな液晶転移を実現するためには、液晶層に、実質的に均一な主電場E0とともに、空間的に不均一な電場E1を印加することが有効である。特に、0.01<E1/E0<1とすることが有効である。E1/E0≦0.01の範囲では、不均一電場印加による液晶転移を促進する効果を十分に得ることは困難であり、E1/E0≧1の範囲では、印加電圧が大きくなり過ぎるため実際の使用に適当でないという問題があるからである。更には、0.5≦E1/E0≦1とすることが好ましい。
不均一電場E1は、薄膜トランジスタのソース電極(またはゲート電極)と透明電極との間に印加した電圧を利用することにより、液晶層に対して基板に垂直な方向に印加することができる。また、不均一電場E1は、周波数100kHz以下の交流電場とすることが好ましく、更には、振幅を時間的に減衰させることが好ましい。
臨界電場Ecを低下させる条件である、スプレイ弾性定数(k11)、プレチルト角の非対称性(Δθ)および電場の不均一性(E1/E0)という3条件のうち、2条件ないし3条件を組み合わせて満足させることが好ましい。これらの条件を組み合わせることにより、各条件を1つのみ満足させる場合に比べ、更に確実に臨界電場Ecをより確実に低下させることができるからである。
例えば、図46(b)は、実質的に均一な外部電場E0とともに、不均一な電場E1を印加すること以外は、図46(a)と同条件で計算した結果である。なお、図46(b)は、E1/E0=0.03とした場合の結果である。図46(a)および(b)の比較からわかるように、プレチルト角の非対称性および電場の不均一性の2条件を組み合わせて満足させることにより、臨界電場Ecをより低下させ、更に速やかな液晶転移を実現することができる。
本発明は、迅速にスプレイ配向からベンド配向への配向の転移を行うことができる液晶表示装置が得られる。
20,21 基板
22,23 電極
24,25 配向膜
26 液晶層
30,40,50,71,72 配向転移用駆動回路
31 液晶表示駆動回路
101・102 偏光板
103 位相補償板
104 液晶セル
105 対向基板
106 アレー基板
107 共通電極
108 画素電極
109・110 配向膜
111 スイッチング素子
112 液晶層
113 信号電極線
114・114’ ゲート電極線
120 b−スプレイ配向
121 t−スプレイ配向
123 ディスクリネーション線
124 ベンド配向
A2・B2・C2・D2 プレチルト角
201a アレー基板
201b 対向基板
202a 画素電極
221a 画素電極の凹部
222a 画素電極の凸部
223a 画素電極の非嵌合型凸部
224a 画素電極の非嵌合型凸部
202b 共通電極
203a 配向膜
203am 配向膜
203ah 配向膜
203b 配向膜
203bm 配向膜
203bh 配向膜
204a 偏光板
204b 偏光板
205 位相補償板
206 信号電極線
261 信号電極線の凸部
262 信号電極線の凹部
263 信号電極線の非嵌合型凸部
207 ゲート電極線
271 ゲート電極線の凸部
272 ゲート電極線の凹部
273 ゲート電極線の非嵌合型凸部
208 スイッチングトランジスタ(素子)
209 横電界印加用線
291 横電界印加用線の凸部
209a 横電界印加用線
291a 横電界印加用線の凸部
210 液晶層
298 液晶層
299 液晶層
211 液晶分子
212 透明絶縁膜
225 電極欠陥部
226 ディスクリネーション線
227b b−スプレイ配向
227t t−スプレイ配向
301,308 ガラス基板
302,307 透明電極
303,306 配向膜
304 液晶層
304a 電圧無印加時の液晶配向(スプレイ配向)
304b 電圧印加時の液晶配向(ベンド配向)
305 スペーサ
309 テストセル
310 凸形状物
311,314 負の一軸性フィルム位相板
312,315 主軸がハイブリッド配列した負の屈折率異方性を有する光学媒体よりなる位相差板
313,316 偏光板
317,318 位相補償板
319 正の一軸性フィルム位相板
320 レジスト薄膜
321 フォトマスク
322 フォトマスク開口部
323 平行紫外線
360 三角形状物
380 電極開口部
22,23 電極
24,25 配向膜
26 液晶層
30,40,50,71,72 配向転移用駆動回路
31 液晶表示駆動回路
101・102 偏光板
103 位相補償板
104 液晶セル
105 対向基板
106 アレー基板
107 共通電極
108 画素電極
109・110 配向膜
111 スイッチング素子
112 液晶層
113 信号電極線
114・114’ ゲート電極線
120 b−スプレイ配向
121 t−スプレイ配向
123 ディスクリネーション線
124 ベンド配向
A2・B2・C2・D2 プレチルト角
201a アレー基板
201b 対向基板
202a 画素電極
221a 画素電極の凹部
222a 画素電極の凸部
223a 画素電極の非嵌合型凸部
224a 画素電極の非嵌合型凸部
202b 共通電極
203a 配向膜
203am 配向膜
203ah 配向膜
203b 配向膜
203bm 配向膜
203bh 配向膜
204a 偏光板
204b 偏光板
205 位相補償板
206 信号電極線
261 信号電極線の凸部
262 信号電極線の凹部
263 信号電極線の非嵌合型凸部
207 ゲート電極線
271 ゲート電極線の凸部
272 ゲート電極線の凹部
273 ゲート電極線の非嵌合型凸部
208 スイッチングトランジスタ(素子)
209 横電界印加用線
291 横電界印加用線の凸部
209a 横電界印加用線
291a 横電界印加用線の凸部
210 液晶層
298 液晶層
299 液晶層
211 液晶分子
212 透明絶縁膜
225 電極欠陥部
226 ディスクリネーション線
227b b−スプレイ配向
227t t−スプレイ配向
301,308 ガラス基板
302,307 透明電極
303,306 配向膜
304 液晶層
304a 電圧無印加時の液晶配向(スプレイ配向)
304b 電圧印加時の液晶配向(ベンド配向)
305 スペーサ
309 テストセル
310 凸形状物
311,314 負の一軸性フィルム位相板
312,315 主軸がハイブリッド配列した負の屈折率異方性を有する光学媒体よりなる位相差板
313,316 偏光板
317,318 位相補償板
319 正の一軸性フィルム位相板
320 レジスト薄膜
321 フォトマスク
322 フォトマスク開口部
323 平行紫外線
360 三角形状物
380 電極開口部
Claims (5)
- 互いに対向する第1の基板と第2の基板との間に保持された液晶に電場を印加し、前記液晶の配向をベンド配向に転移させる方法であって、前記液晶のスプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn≧k11≧6×10-7dynの範囲とし、且つ、前記第1の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ1とし、前記第2の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ2とした時、1.57rad>|θ1−θ2|≧0.0002radなる関係を満たすことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
- 互いに対向する第1の基板と第2の基板との間に保持された液晶に電場を印加し、前記液晶の配向をベンド配向に転移させる方法であって、前記液晶のスプレイ弾性定数k11を、10×10-7dyn≧k11≧6×10-7dynの範囲とし、且つ、前記電場が、空間的に均一に印加される主電場に、空間的に不均一に印加される副電場を重畳させた電場であり、前記主電場をE0とし、前記副電場の最大値をE1としたとき、1.0>E1/E0>1/100なる関係を満たすことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
- 前記第1の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ1とし、前記第2の基板に対する前記液晶のプレチルト角の絶対値をθ2とした時、1.57rad>|θ1−θ2|≧0.0002radなる関係を満たすことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
- 前記副電場が、前記第1の基板の表面に形成された薄膜トランジスタのソース電極あるいはゲート電極と、前記第2の基板の表面に形成された透明電極との間に印加される電場である請求項2に記載の液晶表示装置の駆動方法。
- 前記副電場が、時間の経過に伴って減衰振動させた交流電場である請求項2に記載の液晶表示装置の駆動方法。
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JPH09176645A (ja) * | 1995-12-27 | 1997-07-08 | Chisso Corp | 液晶表示素子及び液晶組成物 |
-
2007
- 2007-09-10 JP JP2007234768A patent/JP2007323096A/ja active Pending
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