JP2007321945A - クラッチピストンシールの製造方法 - Google Patents

クラッチピストンシールの製造方法 Download PDF

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Yoshibumi Araki
義文 荒木
Masanobu Kato
雅信 加藤
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Abstract

【課題】接着部位への接着剤の未塗布を防止しつつ、塗りむらによる外観上の不具合を解消することができるクラッチピストンシールの製造方法を提供する。
【解決手段】金属環1の所定部位にゴム状弾性体製リップ2が接着されてなるクラッチピストンシールSの製造方法。金属環1における少なくとも前記所定部位を含む部分に実質的に無色透明な接着剤を塗布する工程と、接着剤が塗布された前記所定部位にゴム状弾性体製リップ2を接着する工程とを含んでいる。前記接着剤に蛍光増白剤を含有させている。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば自動車に装備される自動変速機などに用いられるクラッチピストンシールの製造方法に関する。
自動車などに装備される自動変速機に用いられるクラッチピストンシール(ボンデッドピストンシール)は、前記自動変速機の内部において油圧作動(往復動)する複雑な形状をした金属環と、この金属環の所定部位(外径側縁部、内径側縁部)に接着されてシール作用をなすゴム状弾性体製のシール(リップ)とからなっており、一般に、金属環に接着剤を塗布し、この接着剤を乾燥させた後に所定部位にゴムを加硫接着させている。
従来より、前記接着剤を金属環に塗布する工程では、当該金属環を接着剤の入った槽にディッピング(浸漬)させていたが、このディッピングによる塗布の場合、金属環の全面に接着剤を塗布することになり、金属環とゴムの接着部位以外にも接着剤が塗布されてしまい、接着剤の使用量が非常に多くなっていた。また、接着剤を塗布した後に行われる乾燥工程では、接着剤中に含まれる有機溶剤が大量に空気中に拡散してしまい、環境保全に逆行するものとなっていた。
さらに、金属環が複雑な形状をしていることから、ディッピング後に接着剤の液溜りが生じ、その部分の接着剤がそのまま乾燥して固形化することによって、接着剤の塗布状態にばらつきが生じ、金属環とゴムの接着力が部位により差が生じてしまうという問題があった。また、固形化した接着剤によって当該接着剤が存在する金属環の部位の寸法が大きくなり、規定の寸法精度を満足することができないという問題もあった。
そこで、ディッピングによって接着剤を金属環全面に塗布することに起因する問題を解消するものとして、金属環とゴムの接着部位だけに接着剤を塗布することが提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1には、精密ノズルによるスプレー方式によって、金属環の所定部位に接着剤を部分塗布することが記載されている。
特開2006−29373号公報
しかしながら、スプレーノズルを用いて接着剤を部分塗布する場合、接着剤の塗布が必要である前記接着部位への未塗布を防止するために、接着部位以外にも接着剤を塗布することから、接着剤の塗りむらという外観上の不具合が生じてしまう。現状では、茶色とか黄色の接着剤が多く使用されているが、前述した塗りむらは、視覚的な面で製品品質のばらつきに結びつくため、容認されないものである。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、接着部位への接着剤の未塗布を防止しつつ、塗りむらによる外観上の不具合を解消することができるクラッチピストンシールの製造方法を提供することを目的としている。
本発明のクラッチピストンシールの製造方法は、金属環の所定部位にゴム状弾性体製リップが接着されてなるクラッチピストンシールの製造方法であって、
金属環における少なくとも前記所定部位を含む部分に実質的に無色透明な接着剤を塗布する工程と、
接着剤が塗布された前記所定部位にゴム状弾性体製リップを接着する工程と
を含んでおり、前記接着剤に蛍光増白剤を含有させたことを特徴としている。
本発明のクラッチピストンシールの製造方法では、シール作用をなすゴム状弾性体製リップを金属環に接着するための接着剤として、実質的に無色透明な接着剤を用いているので、前記金属環とゴム状弾性体製リップの接着部位の周辺部分に接着剤が塗布されたとしても、この部分の接着剤が塗りむらとして視認されることがなく、外観上の不具合を解消することができる。これにより、視覚的な面での製品品質を安定したものにすることができる。なお、本明細書において、「実質的に無色透明」とは、完全な無色透明だけではなく、視覚的に接着剤の存在があまり目立たない程度(外観上の不具合と認識されない程度)のものを含む概念である。
一方、実質的に無色透明な接着剤を用いた場合、金属環とゴム状弾性体製リップの接着部位に確実に接着剤が塗布されているか否かの確認を視覚的にすることが困難であるが、本発明では、前記接着剤に蛍光増白剤を含有させていることから、この蛍光増白剤が発光することで接着剤の塗布状態を視覚的に容易に確認することができる。したがって、接着剤塗布後に検査工程を設けることにより、接着剤不足のままゴムが接着されてしまい、これが製品検査の結果不良品として廃棄されてしまうのを未然に防止することができる。その結果、不良品の発生を削減して、製造コストを下げることができる。
前記蛍光増白剤が、自然光の下で紫外線を照射した場合に発光する蛍光増白剤であるのが好ましい。この場合、製造ライン中に紫外線を照射する放電管などを設置して、この放電管から紫外線を金属環の接着部位付近に照射することにより、接着剤中の蛍光増白剤が発光するので、接着部位への接着剤の塗布を容易に確認することができる。
前記蛍光増白剤の含有率が0.1〜5重量%であるのが好ましい。蛍光増白剤の含有率が0.1重量%未満であると、発光量が不十分であり、接着剤塗布の有無が確認しにくくなり、一方、5重量%を超えると蛍光増白剤により接着剤としての機能が阻害される惧れがある。
スプレーノズルを用いて前記接着剤を金属環に塗布することができる。この構成によれば、刷毛塗りなどの手作業に比べて所定部位への接着剤の塗布を迅速且つ確実に行うことができる。
本発明のクラッチピストンシールの製造方法によれば、接着部位への接着剤の未塗布を防止しつつ、塗りむらによる外観上の不具合を解消することができる。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のクラッチピストンシールの製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の製造方法に係るクラッチピストンシールの一例の部分断面説明図であり、このクラッチピストンシールSは、自動車などに装備される自動変速機の内部において油圧作動(往復動)する形状を呈する金属環1と、この金属環の所定部位に接着されてシール作用をなすゴム状弾性体製のリップ2とで構成されている。
前記金属環1は、例えばJIS G 3113に規定されているSAPH(自動車構造用熱間圧延鋼板)にプレス加工、研磨加工、切削加工などを施すことにより作製することができる。この金属環1は、平面部と曲面部とが組み合わされた複雑な形状を呈しているが、その形状及び寸法は、用途に応じて適宜選定すればよく、本発明において特に限定されるものではない。
前記リップ2は、金属環1の外径側縁部付近に配設される外側リップ2aと、内径側縁部に配設される内側リップ2bとからなっており、両リップ2a、2bは、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムで作製することができる。
かかるクラッチピストンシールSを製造するには、例えば、まず、前記SAPHなどの鋼板にプレス加工及び切削加工を施して所定の形状及び寸法の金属環1を作製し、ついでこの金属環1に脱脂処理を施す。つぎにショットブラストにより金属環1の表面を研磨し、ついでエアを吹き付けて表面の洗浄を行う。
つぎに、リップ2が接着される、金属環1の所定部位にスプレーノズルを用いて接着剤の塗布を行う。図1に示されるクラッチピストンシールSの場合、Aで示される外径側縁部付近と、Bで示される内径側縁部に接着剤が塗布されるが、この塗布は、それぞれの噴出口が前記A又はBで示される部分に対向するようにスプレーノズル3a、3bを配設し、作業テーブル(図示せず)上に固定した金属環1を回転させつつ、前記スプレーノズル3a、3bから接着剤を噴霧することで行うことができる。スプレーノズル3a、3bを用いて接着剤を塗布することで、刷毛塗りなどの手作業に比べて所定部位への接着剤の塗布を迅速且つ確実に行うことができる。
前記接着剤は、ゴム状弾性体からなるリップ2を金属環1に接着することができる、実質的に無色透明なものであれば、本発明において、特に制限なく用いることができるが、例えば塩化ゴム系接着剤及び蛍光増白剤を揮発性有機溶剤に溶かしたものを用いることができる。染料の一種である蛍光増白剤は、目に見えない紫外線を吸収し、それを目に見える青色の可視光線(蛍光)に変えて放出するものであり、市販の蛍光増白剤を適宜用いることができる。
接着剤が実質的に無色透明であることから、スプレーノズル3によって前記金属環1とリップ2の接着部位の周辺部分に接着剤が塗布されたとしても、この部分の接着剤が塗りむらとして視認されることがなく、外観上の不具合を解消することができる。これにより、視覚的な面での製品品質を安定したものにすることができる。
また、前記接着剤に蛍光増白剤を含有させていることから、金属環1とリップ2の接着部位に確実に接着剤が塗布されているか否かの確認を前記蛍光増白剤の発光を利用して視覚的に行うことができる。その際、前記蛍光増白剤として、自然光の下で紫外線を照射した場合に発光する蛍光増白剤を用いると、製造ライン中に紫外線を照射する放電管などを設置して、この放電管から紫外線を金属環1の接着部位付近に照射することにより、接着剤中の蛍光増白剤が発光するので、接着部位への接着剤の塗布を容易に確認することができる。
前記蛍光増白剤の含有率は0.1〜5重量%であるのが好ましい。蛍光増白剤の含有率が0.1重量%未満であると、発光量が不十分であり、接着剤塗布の有無が確認しにくくなり、一方、5重量%を超えると蛍光増白剤により接着剤としての機能が阻害される惧れがある。
接着剤を塗布した金属環1は、その後、70〜120℃で数分程度乾燥される。このときに、金属環1とリップ2の接着部位に確実に接着剤が塗布されているか否かの検査を行う。具体的には、金属環1を低速で回転させながら、長波長紫外線を照射することができる放電管(図示せず)を用いて当該金属環1に紫外線を照射し、接着剤中の蛍光増白剤を発光させることで、接着部位への接着剤の塗布を確認することができる。この蛍光増白剤の発光は、目視でも確認することができるが、金属環1の接着部位の近傍に監視用カメラを設置し、当該金属環1から離れた場所でモニターにより蛍光増白剤の発光状態を確認することもできる。
検査の結果、接着剤の塗布が不十分であると判断された金属環1は、次工程に送らずに、塗布工程に戻して接着剤の再塗布を行う。このようにして、接着剤の塗布工程の後に検査工程を設けることにより、接着剤不足による接着不良を防止することができ、最終的な製品検査の段階における接着不良を原因とする不良品をなくすことができる。その結果、廃棄品(不良品)を減らして、製造コストを下げることができる。
検査の結果、接着剤の塗布状態が良好であると判断された金属環1は、つぎの接着工程に廻される。ここで、金属環1は、80〜150℃で数分程度予熱され、予め接着剤が塗布されているリップ2の接着部位に、押出成形され所定の寸法に裁断されたリップ2が配置され、所定の温度にて加硫接着が行われる。
リップ2が加硫接着されたクラッチピストンシールSは、冷却された後、検査工程、エアブローによる洗浄工程を経て、防錆処理が施された後に製品として包装される。
本発明の製造方法に係るクラッチピストンシールの一例の部分断面説明図である。
符号の説明
1 金属環
2 リップ
3 スプレーノズル
S クラッチピストンシール

Claims (4)

  1. 金属環の所定部位にゴム状弾性体製リップが接着されてなるクラッチピストンシールの製造方法であって、
    金属環における少なくとも前記所定部位を含む部分に実質的に無色透明な接着剤を塗布する工程と、
    接着剤が塗布された前記所定部位にゴム状弾性体製リップを接着する工程と
    を含んでおり、前記接着剤に蛍光増白剤を含有させたことを特徴とするクラッチピストンシールの製造方法。
  2. 前記蛍光増白剤が、自然光の下で紫外線を照射した場合に発光する蛍光増白剤である請求項1に記載のクラッチピストンシールの製造方法。
  3. 前記蛍光増白剤の含有率が0.1〜5重量%である請求項1〜2のいずれかに記載のクラッチピストンシールの製造方法。
  4. スプレーノズルを用いて前記接着剤を金属環に塗布する請求項1〜3のいずれかに記載のクラッチピストンシールの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018059630A (ja) * 2016-09-30 2018-04-12 内山工業株式会社 複合体

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