JP2007321008A - 改質された吸水性樹脂の製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加圧下吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、通液性等に優れた改質された吸水性樹脂を高効率かつ低コストで製造可能な方法を提供する。
【解決手段】改質された吸水性樹脂の製法であって、(a)ラジカル重合性化合物を添加せずに、水溶性ラジカル重合開始剤または熱分解型ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂が有機溶媒中に分散してなる分散液を得る工程と、(b)得られた分散液に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む、改質された吸水性樹脂の製法により、上記課題は解決される。
【選択図】なし

Description

本発明は、改質された吸水性樹脂の製法に関し、より詳細には、ラジカル重合性化合物を添加することなく、水溶性ラジカル重合開始剤または熱分解型ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂が有機溶媒中に分散してなる分散液に活性エネルギー線を照射して、吸水性樹脂を改質する方法に関する。
従来、生理綿、紙おむつ、あるいはその他の体液を吸収する衛生材料の一構成材料として吸水性樹脂が用いられている。このような吸水性樹脂としては、例えば、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、これらの架橋体やポリアクリル酸部分中和物架橋体等がある。これらは、いずれも内部架橋構造を有し、水に不溶である。
このような吸水性樹脂に望まれる特性として、高吸収倍率、優れた吸収速度、高いゲル強度、基材から水を吸い上げるための優れた吸引力等がある。しかし、吸水特性は架橋密度に影響を受けるため、架橋密度が大きくなるとゲル強度は増加するが吸水倍率が低下するなど、特性間の関係は必ずしも正の相関を示さない。特に、吸収倍率と、吸収速度、ゲル強度および吸引力等とは時として相反する関係にある。このため、吸収倍率が向上した吸水性樹脂では、粒子が液体に接した場合に、吸水が均一に行なわれず吸水性樹脂の塊が形成されたり、吸水性樹脂粒子全体に水が拡散しないため吸収速度等が極端に低下したりする場合がある。
このような現象を緩和し、吸収倍率が高く、かつ吸収速度等も比較的良好な吸水性樹脂を得るために、吸水性樹脂粒子の表面を界面活性剤や非揮発性炭化水素によりコーティングする方法がある。この方法では、初期に吸収する水の分散性は改良されるが、粒子個々の吸収速度や吸引力の向上という面では効果が十分でない。
また、吸水特性の改良されたポリアクリル酸系高吸水性重合体の製造方法として、ポリアクリル酸の部分アルカリ金属塩を主成分とし、架橋密度が低い重合体の水性組成物を、水溶性過酸化物ラジカル開始剤の存在下で加熱し、ラジカル架橋によって架橋を導入する方法がある(特許文献1)。一般に、内部架橋を重合体内部に均一に分布させることは困難であり、架橋密度の調整も容易でない。このため、当該特許文献1では、架橋密度が低く水溶性のポリアクリル酸ゲルを含む重合体を得た後、重合開始剤である過硫酸塩などを添加して加熱する。この方法では、開始剤添加量を調整することで架橋密度の精密な制御が可能であり、かつ架橋が均一に重合体中に存在するため、優れた吸水特性が得られ、かつ粘着性がない吸水性樹脂が得られた、としている。
上記特許文献1に記載の技術において、使用された過硫酸塩は熱によって分解されるが、紫外線によっても分解されてラジカルを発生する(非特許文献1)。過硫酸塩は重合開始剤としての作用を有するから、水溶性ビニル系単量体の水溶液に光エネルギーを照射すれば、重合と同時にラジカル架橋が起こり、ハイドロゲルを製造することができる(特許文献2)。また、親水性重合体成分および光重合開始剤に加えて、更に架橋剤を添加して、紫外線照射によって内部架橋を形成させる反応系もある(特許文献3)。
一方、吸水特性に優れた吸水性樹脂を得るための手法として、吸水性樹脂の表面の架橋密度を高める方法も知られている(例えば、特許文献4および5)。上記の例で示したような吸水性樹脂の表面には、反応性の官能基が存在する。このような官能基と反応し得る表面架橋剤を吸水性樹脂に添加して官能基間に架橋を導入すれば、表面架橋密度が増加し、加圧下でも優れた吸水特性を発揮する。
また、上記表面架橋剤を使用すると、架橋形成反応に高温あるいは長持間を要し、未反応架橋剤が残存するといった問題があるため、過酸化物ラジカル開始剤を含む水溶液を樹脂に接触させ、当該樹脂を加熱してラジカル開始剤の分解を通じて樹脂の表面近傍部の重合体分子鎖に架橋を導入する方法もある(特許文献6)。当該特許文献6の実施例では、130℃の過熱水蒸気で6分加熱し、吸水倍率の向上した吸水性樹脂を得ている。
さらに、アゾ系重合開始剤を主成分とする開始剤系で重合を開始した後、重合完了前に各種パーオキシドなどの酸化性重合開始剤をさらに添加する工程を有する吸水性樹脂の製造方法もまた、各種の性能に優れた吸水性樹脂の製造方法として提案されている(特許文献7)。当該特許文献7には実質的に、重合方法として逆相懸濁重合を採用する形態が開示されている。そして、重合終了後に共沸脱水処理を施して含水量を調整し、次いで架橋剤を添加して加熱することにより、吸水性樹脂に対して表面架橋を導入している。
米国特許第4910250号明細書 特開2004−99789号公報 国際公開第2004/031253号パンフレット 米国特許第4666983号明細書 米国特許第5422405号明細書 米国特許第4783510号明細書 特開平11−335404号公報、段落「0017」および実施例 J.Phys.Chem.,1975,79,2693、J.Photochem.Photobiol.,A,1988,44,243
吸水性樹脂に表面架橋を導入する目的は、吸収特性のバランスに優れた吸水性樹脂を提供することにある。吸水性樹脂に表面架橋を導入するには、吸水性樹脂表面に存在する官能基と反応しうる官能基を少なくとも2つ有する架橋剤を吸水性樹脂に作用させる方法が工業的によく用いられている。このような架橋剤としては、多価アルコール類、多価グリシジルエーテル類、ハロエポキシ化合物類、多価アルデヒド類、多価アミン類、多価金属塩類等があるが、一般的に反応性が低いために反応を高温で行う必要があり、場合によっては長時間加熱下に置く場合もある。このため、多くのエネルギーおよび時間が消費される。
逆相懸濁重合により吸水性樹脂を製造し、共沸脱水処理後に架橋剤を添加して加熱することにより表面架橋を導入する特許文献7においても同様に、共沸脱水や表面架橋の際に加熱のためのエネルギーが消費される。このようなエネルギー消費は、吸水性樹脂の製造コストの高騰を招いていた。
このような現状に鑑み、本発明は、加圧下吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、通液性等に優れた改質された吸水性樹脂を高効率かつ低コストで製造可能な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。そしてその過程において、水溶性ラジカル重合開始剤または熱分解型ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂が有機溶媒中に分散している分散液に紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって、加熱処理の場合と比較して短時間でより均一な架橋構造を吸水性樹脂の表面に導入しうることを見出した。また、本発明者らは、前記分散液の分散溶媒として有機溶媒を用いると、処理時間がより一層短縮され、かつ導入される架橋構造の均一性がさらに向上しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1は、改質された吸水性樹脂の製造方法であって、(a)ラジカル重合性化合物を添加せずに、水溶性ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂を有機溶媒中に分散させて分散液を得る工程と、(b)得られた分散液に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む、改質された吸水性樹脂の製造方法である。
また、本発明の第2は、改質された吸水性樹脂の製造方法であって、(a)ラジカル重合性化合物を添加せずに、熱分解型ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂を有機溶媒中に分散させて分散液を得る工程と、(b)得られた分散液に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む、改質された吸水性樹脂の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、従来の加熱処理を採用せずに、活性エネルギー線を照射するのみで表面架橋を導入することが可能である。従って、均一な架橋構造を有し、加圧下吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、通液性等に優れた改質された吸水性樹脂を短時間で高効率に、かつ低コストで製造可能である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、改質された吸水性樹脂の製造方法であって、(a)ラジカル重合性化合物を添加せずに、水溶性ラジカル重合開始剤または熱分解型ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂を有機溶媒中に分散させて分散液を得る工程(以下、単に「工程(a)」とも称する)と、(b)得られた分散液に活性エネルギー線を照射する工程(以下、単に「工程(b)」とも称する)と、を含む、改質された吸水性樹脂の製造方法である。なお、「改質」とは、吸水性樹脂に対する全ての物理的または化学的修飾を意味し、吸水性樹脂の表面架橋、孔の形成、親水化、疎水化などが挙げられる。
以下、本発明の製造方法について工程順に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態に限定されることはなく、下記の形態以外の形態についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施されうる。
[工程(a)]
(吸水性樹脂)
本工程においては、まず、水溶性ラジカル重合開始剤または熱分解型ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂を準備する。
本工程において準備される吸水性樹脂は、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性かつ水不溶性の架橋重合体である。本発明において「水膨潤性」とは、遠心分離機保持容量が2g/g以上であることを意味し、好ましくは5〜100g/g、より好ましくは10〜60g/gである。また、「水不溶性」とは、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子;以下、「溶出可溶分」とも称する)の含有量が0〜50重量%であることを意味し、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。なお、遠心分離機保持容量および溶出可溶分の数値としては、後述する実施例で規定する測定方法により測定される値を採用するものとする。
本工程において準備される吸水性樹脂としては、エチレン性不飽和単量体由来の構成単位を必須に含む樹脂であれば、その具体的な形態は特に制限されない。例えば、吸水性樹脂の入手経路は特に制限されない。所望の吸水性樹脂が商品として市販されている場合には当該商品を購入したものを用いてもよいし、自ら製造した吸水性樹脂を用いてもよい。
エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されず、好ましくは末端に不飽和二重結合を有する単量体、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のアニオン性単量体やその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等のノニオン性親水基含有単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のアミノ基含有不飽和単量体やそれらの4級化物;等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、これらの塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化物、(メタ)アクリルアミドが用いられ、特に好ましくは、(メタ)アクリル酸および/またはその塩が用いられる。
単量体として(メタ)アクリル酸塩を用いる場合、当該単量体は、吸水性樹脂の吸水性能の観点からは(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩から選ばれる(メタ)アクリル酸の1価塩であることが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩であり、特に好ましくは、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれる塩である。
吸水性樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記単量体以外の単量体由来の構成単位を有していてもよい。かような単量体としては、例えば、炭素数8〜30の芳香族エチレン性不飽和単量体、炭素数2〜20の脂肪族エチレン性不飽和単量体、炭素数5〜15の脂環式エチレン性不飽和単量体、アルキル基の炭素数4〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの疎水性単量体が挙げられる。これら疎水性単量体の割合は、一般に、上記エチレン性不飽和単量体100重量部に対し、0〜20重量部の範囲である。疎水性単量体が20重量部を超えると、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下する場合がある。
本工程において準備される吸水性樹脂は、内部架橋の形成によって水不溶性となる。このような内部架橋は、架橋剤を使用しない自己架橋型であってもよいが、一分子内に2個以上の重合性不飽和基および/または2個以上の反応性官能基を有する内部架橋剤の使用により形成されたものであってもよい。
このような内部架橋剤としては、特に限定されず、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、(メタ)アクリル酸多価金属塩、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの内部架橋剤は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
内部架橋剤の使用量は、吸水性樹脂を製造する際に用いる単量体成分の全量に対して、好ましくは0.0001〜1モル%、より好ましくは0.001〜0.5モル%、さらに好ましくは0.005〜0.2モル%である。0.0001モル%を下回ると、内部架橋が樹脂中に導入されない場合がある。一方、1モル%を超えると、吸水性樹脂のゲル強度が高くなりすぎ、吸水倍率が低下する場合がある。上記内部架橋剤を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後のいずれかの時点で反応系に添加すればよい。
自ら吸水性樹脂を製造する場合の製造方法としては、例えば、所望の単量体を含む単量体成分を重合する方法が挙げられる。この際、吸水性樹脂の製造方法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。重合方法としては特に限定されず、例えば、水溶液重合、逆相懸濁重合、沈殿重合、塊状重合等が採用されうる。これらの方法の中でも、重合反応の制御の容易さや、得られる吸水性樹脂の性能面から、単量体成分が水溶液に溶解した状態で重合が進行する水溶液重合や、有機溶媒中のミセル中で重合が進行する逆相懸濁重合が好ましい。水溶液重合については、例えば、米国特許第4,625,001号、同4,873,299号、同4,286,082号、同4,973,632号、同4,985,518号、同5,124,416号、同5,250,640号、同5,264,495号、同5,145,906号、同5,380,808号、欧州特許第0811636号、同0955086号,同0922717号などに記載されている。一方、逆相懸濁重合については、例えば、米国特許第4,093,776号、同4,367,323号、同4,446,261号、同4,683,274号、同5,244,735号などに記載されている。これらの文献に記載の重合形態(例えば、単量体や重合開始剤)が本工程において用いられてもよい。
単量体成分を重合して吸水性樹脂を製造する際には、重合開始剤を用いることが好ましい。ここで、用いられうる重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、水溶性ラジカル重合開始剤や、熱分解型ラジカル重合開始剤、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤などが挙げられる。なお、水溶性ラジカル重合開始剤および熱分解型ラジカル重合開始剤の具体的な形態については、後述する。また、例えば、上記水溶性ラジカル重合開始剤や熱分解型ラジカル重合開始剤に、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸、第2鉄塩等の還元剤を組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。後述するように水溶液重合または逆相懸濁重合により吸水性樹脂を製造する場合には、重合開始剤として水溶性ラジカル重合開始剤または熱分解型ラジカル重合開始剤を用いることで、本工程において得られた分散液がそのまま後述する工程(b)において用いられうるため、好ましい。
水溶液重合や逆相懸濁重合の水溶液中における単量体成分の濃度は特に制限されないが、一例を挙げると、単量体成分の濃度は、単量体水溶液の全量に対して好ましくは20〜80重量%であり、より好ましくは25〜70重量%であり、さらに好ましくは30〜60重量%であり、最も好ましくは35〜50重量%である。この濃度が20重量%を下回ると、生産効率が低下し、製造コストが高騰する虞がある。一方、この濃度が80重量%を超えると吸水特性が低下する場合がある。
また、逆相懸濁重合において用いられる有機溶媒の量は特に制限されないが、単量体100重量部に対して、好ましくは50〜5000重量部であり、より好ましくは100〜3000重量部であり、さらに好ましくは200〜1000重量部である。逆相懸濁重合に用いられる有機溶媒の量が50重量部よりも少ないと、工程(b)において吸水性樹脂に対して活性エネルギー線が均一に照射されない虞がある。一方、有機溶媒の量が5000重量部を超えると、生産効率が低下して製造コストが高騰する虞がある。
重合を開始させるには、加熱や電磁波の照射によって前述の重合開始剤の作用を発揮させて重合を開始させるのが一般的である。ただし、紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を単独で用いて重合を開始させてもよい。重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。重合開始時の温度が上記の範囲を外れると、得られる吸水性樹脂の残存単量体の増加や、過度の自己架橋反応が進行して吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがあるので好ましくない。
本工程において、単量体の重合による吸水性樹脂の製造は逆相懸濁重合により行われることが好ましい。逆相懸濁重合では有機溶媒中において重合が進行することから、(1)水溶性ラジカル重合開始剤が重合に用いられ、重合終了時に残存する形態、または(2)重合終了後に水溶性ラジカル重合開始剤が別途添加される形態、によって、「有機溶媒中に水溶性ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂が分散してなる分散液」を得ることが可能となる。そして、当該分散液はそのまま後述する工程(b)において用いられうる。すなわち、重合から表面架橋の導入までの工程を1ポットで行うことが可能となる。従って、かような手法によれば、重合後に共沸脱水により吸水性樹脂を取り出し、さらに表面架橋剤を添加して加熱することにより吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入するという従来の手法と比較して、短時間かつ低コストで改質された吸水性樹脂の製造が可能となるという利点がある。
なお、逆相懸濁重合により吸水性樹脂を製造する場合において、樹脂の製造に用いられる装置の具体的な形態は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、特開昭51−150592号公報、特開平3−41104号公報、特開平3−296502号公報、特開平9−157313号公報、特開2001−158802号公報、特開2003−26706号公報、特開2004−269593号公報、特開2005−132957号公報などに記載の重合反応器が、逆相懸濁重合による吸水性樹脂の製造に用いられうる。また、当該重合反応器は、撹拌翼を有するのが一般的である。
ここで、逆相懸濁重合を行う際には、反応系に分散剤を添加した状態で重合を行う。分散剤の具体的な形態は特に制限されず、重合体の製造分野において従来公知の知見が適宜参照されうるが、一例としては、界面活性剤、高分子保護コロイドが好ましく用いられうる。ここで、界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との混合物などが挙げられる。具体的には、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアシルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等が例示されうる。なかでも、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく用いられる。これらの界面活性剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
一方、高分子保護コロイドとしては、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、酸化変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマーなどが挙げられる。これらの高分子保護コロイドもまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
分散剤の添加量は、吸水性樹脂の凝集を抑制し、有機溶媒における吸水性樹脂の分散性を向上させうるものであれば特に制限されないが、例えば、溶媒中における吸水性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜40重量部、より好ましくは0.05〜10重量部であり、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。
なお、吸水性樹脂を製造する場合には、(メタ)アクリル酸等の部分中和物を重合してもよいし、(メタ)アクリル酸等の酸基含有単量体を重合した後に水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物により重合物を中和してもよい。さらに言えば、本工程において準備される吸水性樹脂は、酸基を含有しかつ所定の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)を有するものであることが好ましい。この際、得られる吸水性樹脂の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)は、好ましくは25〜100モル%であり、より好ましくは50〜90モル%であり、さらに好ましくは50〜75モル%であり、最も好ましくは60〜70モル%である。吸水性樹脂を製造した場合、重合により得られる重合体は通常、含水ゲル状架橋重合体である。
本工程において、水溶液重合により吸水性樹脂を製造する場合には、得られた含水ゲル状架橋重合体をそのまま吸水性樹脂として使用してもよいが、好ましくは乾燥させて、含水率(重量%)(100−固形分(重量%)により算出される)を制御する。ここで、乾燥後の吸水性樹脂の含水率は特に制限されないが、好ましくは1〜40重量%であり、より好ましくは2〜30重量%であり、さらに好ましくは5〜20重量%である。本工程においてより好ましくは、さらに粉砕処理および分級処理を施して、所望の粒径を有する粉末状の吸水性樹脂を得る。なお、重合により得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥は、例えば、熱風乾燥機などの乾燥機を用い、好ましくは100〜220℃、より好ましくは120〜200℃にて乾燥させればよい。このようにして得られた粉末状の吸水性樹脂は、後述する有機溶媒に分散させた後、工程(b)に供される。
また、粉砕処理に用いられる粉砕機としては、例えば、粉体工学便覧(粉体工学会編、初版)の表1.10に記載の粉砕機が用いられうるが、なかでも、剪断粗砕機、衝撃破砕機、高速回転式粉砕機に分類され、切断、剪断、衝撃、摩擦といった粉砕機構の1つ以上の機構を有するものが好ましく用いられ、これらに該当する粉砕機の中でも切断、剪断が主機構である粉砕機が特に好ましく用いられる。例えば、ロールミル(ロール回転形)粉砕機が好ましく用いられうる。
本工程において、粉末状の吸水性樹脂を準備する場合、当該粉末の粒径分布は特に制限されないが、好ましくは150〜850μm(ふるい分級で規定)の範囲の粒径の粒子を90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%含むことが好ましい。850μmよりも大きい粒径を有する吸水性樹脂粒子は、後述する工程(b)を経て改質されて、例えばおむつ等に適用された場合に、肌触りが悪く、おむつのバックシートを破ったりする場合がある。一方、150μmよりも小さい粒径を有する吸水性樹脂粒子が10重量%を超えると、後工程における取扱い時に微粉が飛散したり、製造時に配管が閉塞してしまう虞がある。また、粉末状の吸水性樹脂の重量平均粒径は、好ましくは10〜1,000μmであり、より好ましくは200〜600μmであり、さらに好ましくは300〜500μmである。重量平均粒径が10μmを下回ると、安全衛生上好ましくない場合がある。一方、1,000μmを超えると、おむつなどに用いることができない場合がある。なお、このような粒径を有する粉末状の吸水性樹脂を調製する際には、粒径を増大させるための造粒処理や、不必要分をカットするための分級処理(例えば、篩い分け)などが行われてもよい。
さらに、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.45以下であり、より好ましくは0.40以下であり、さらに好ましくは0.35以下であり、特に好ましくは0.30以下である。また、σζは、好ましくは0.20以上である。なお、σζの値が小さいほど、粒度分布が狭いことを表す。ここで、σζが0.45を超えると、粒度分布がブロードになる、すなわち850μmよりも大きい粒度や150μmよりも小さい粒度が増加するため、好ましくない。一方、σζを0.20未満とするには、生産性が非常に低下する設備が必要となり、製造コストが高騰する虞がある。なお、粉末状の吸水性樹脂の粒径の値としては、後述する実施例の粒度分布の測定方法により測定される値を採用するものとする。
本工程において準備される吸水性樹脂は、低位の中和率の吸水性樹脂前駆体を得た後、当該吸水性樹脂前駆体に塩基を作用させることによって得られたものであることが好ましい。これは以下の理由による。
すなわち、従来の手法では、多官能表面処理剤を使用することで吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入していた。この多官能表面処理剤は、吸水性樹脂中のカルボキシル基(−COOH)とは反応するがその塩(例えば、−COONa)とは反応しないという性質を有する。このため、予め−COOH/−COONaの存在割合が適当な範囲になるように調節したエチレン性不飽和単量体混合物(例えば、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの混合物)を重合することにより、−COOHと−COONaが均一に分布した吸水性樹脂を製造して、これを多官能表面処理剤による表面架橋に使用すれば、均一な架橋構造が得られる。
これに対し、(メタ)アクリル酸等の酸型のエチレン性不飽和単量体を主成分として重合した後、得られた重合体を水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物で中和することにより得られる吸水性樹脂は、ゲル強度が高いが、多官能表面処理剤を用いて表面に架橋構造を導入しようとすると、−COOHと−COONaとが均一に分布していないことに起因して、吸水特性が低下してしまうという問題がある。このため、後者のような方法で得られた吸水性樹脂の表面に、従来のような多官能表面処理剤を用いて架橋構造を導入することは望ましくなかった。
しかしながら、本発明の方法においては、水溶性ラジカル重合開始剤または熱分解型ラジカル重合開始剤を用いることにより、吸収性樹脂中での−COOHの分布の不均一性に起因する架橋反応の進行の阻害が最小限に抑制されうる。
以上のことから、本発明の方法によれば、一旦、アクリル酸等の酸型のエチレン性不飽和単量体を主成分とする単量体またはその混合物を重合して、低位の中和率の吸水性樹脂前駆体を得た後、当該吸水性樹脂前駆体を水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物で中和することによって得られる吸水性樹脂を用いた場合であっても、十分な改質が達成され、得られた改質された吸水性樹脂は、高いゲル強度および優れた吸水特性を発揮しうるのである。
なお、「低位の中和率の吸水性樹脂前駆体」とは、中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)が低いまたは酸基が中和されていない(中和率が0である)吸水性樹脂前駆体を意味し、具体的には、中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)が0〜50モル%、より好ましくは0〜20モル%程度のものをいう。このような低位の中和率の吸水性樹脂前駆体は、上述した方法において、好ましくは中和率が上述した範囲内の値となるように、アクリル酸などの酸基を有する単量体を主成分とした単量体またはその混合物を使用することによって上記と同様の方法によって得られるため、詳細な説明はここでは省略する。
本工程において準備される吸水性樹脂は、上述した方法で製造されたものに限定されず、他の方法で製造されたものであってもよい。また、上述した方法で得られた吸水性樹脂は、表面架橋されていない吸水性樹脂であるが、本工程において用いるための吸水性樹脂として、予め多価アルコール、多価エポキシ化合物、アルキレンカーボネート、オキサゾリドン化合物等を用いて表面架橋された吸水性樹脂を準備してもよい。
(水溶性ラジカル重合開始剤)
本発明の第1において、本工程で準備される吸水性樹脂は、水溶性ラジカル重合開始剤を含む。ここで、本工程において、準備された吸水性樹脂は後述するように有機溶媒中に分散して分散液を形成するが、吸水性樹脂が「水溶性ラジカル重合開始剤を含む」とは、(1)吸水性樹脂の製造工程において用いられた水溶性ラジカル重合開始剤が製造された吸水性樹脂中にそのまま残存している形態;および(2)準備された吸水性樹脂に対して水溶性ラジカル重合開始剤が別途添加された形態、の双方の形態を包含する概念である。
従来、吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入する際には、表面架橋剤を用いることが一般的であった。表面架橋剤を用いると、樹脂表面に存在する官能基と表面架橋剤とが化学的に強固に結合し、これによって安定な表面架橋構造が樹脂表面に導入されうる。また、表面架橋剤の鎖長を適宜選択することで架橋点間距離を調整することができ、配合量を調整すれば架橋密度を制御することができる。しかしながら、本発明では、このような表面架橋剤を用いなくとも、水溶性ラジカル重合開始剤を使用するだけで、吸水性樹脂を改質(具体的には、吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入)しうることが判明したのである。
特に「水溶性ラジカル重合開始剤」としたのは、水溶性を示すことで、重合開始剤が親水性および吸水性に優れる吸水性樹脂の表面に均一に容易に分散できるためである。これによって、吸水特性に優れる吸水性樹脂を製造することができる。
本発明で用いられる水溶性ラジカル重合開始剤としては、水(25℃)に1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上溶解するものであり、具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド;過酸化水素;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等の水溶性アゾ化合物などが挙げられる。なかでも、好ましくは過硫酸塩、過酸化水素および水溶性アゾ化合物が用いられ、特に好ましくは過硫酸塩が用いられる。特に過硫酸塩を使用すると、改質後の吸水性樹脂の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率(本明細書では、単に「加圧下吸収倍率」とも称する)、食塩水流れ誘導性、生理食塩水に対する遠心分離機保持容量(本明細書では、単に「遠心分離機保持容量」とも称する)がいずれも優れる点で好ましい。
吸水性樹脂に含まれる水溶性ラジカル重合開始剤の含有量は、好ましくは吸水性樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部であり、より好ましくは0.1〜15重量部であり、特に好ましくは0.5〜10重量部であり、最も好ましくは1〜5重量部である。水溶性ラジカル重合開始剤の含有量が0.01重量部よりも少ないと、工程(b)において活性エネルギー線を照射しても吸水性樹脂を改質することができない場合がある。一方、水溶性ラジカル重合開始剤の含有量が20重量部よりも多いと、改質された吸水性樹脂の吸水性能が低下する場合がある。
本発明の第1では、水溶性ラジカル重合開始剤を必須に使用することで、水溶性ラジカル重合開始剤を全く用いない場合、例えば、油溶性ラジカル重合開始剤、特に油溶性光重合開始剤のみを使用する場合などに比べて、優れた物性を達成できる。なお、「油溶性光重合開始剤」とは、例えば水への溶解度が1重量%未満の化合物である。
本工程においては、吸水性樹脂が水溶性ラジカル重合開始剤を含むことが必須であるが、水溶性ラジカル重合開始剤以外の他の重合開始剤をさらに含んでもよい。他の重合開始剤としては、例えば、油溶性のベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体などの光重合開始剤、また油溶性のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカルボネートなどの油溶性有機過酸化物が挙げられる。かかる光重合開始剤としては市販品でもよく、チバ・スペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア(登録商標)184(ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)、長瀬産業株式会社製の商品名イルガキュア2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)などが例示されうる。これらの他の重合開始剤もまた、吸水性樹脂の製造工程からそのまま樹脂中に残存したものであってもよいし、別途添加されたものであってもよい。
他の重合開始剤を併用する場合、その含有量は、好ましくは吸水性樹脂100重量部に対して0〜20重量部であり、より好ましくは0〜15重量部であり、特に好ましくは0〜10重量部であり、最も好ましくは0〜5重量部である。そして、他の重合開始剤の含有比率は水溶性ラジカル重合開始剤よりも少ないことが好ましく、より好ましくは水溶性ラジカル重合開始剤に対して重量比で1/2以下であり、さらに好ましくは1/10以下であり、特に好ましくは1/50以下である。
(熱分解型ラジカル重合開始剤)
本発明の第2において、本工程で準備される吸水性樹脂は、熱分解型ラジカル重合開始剤を含む。ここで、本工程において、準備された吸水性樹脂は後述するように有機溶媒中に分散して分散液を形成するが、吸水性樹脂が「熱分解型ラジカル重合開始剤を含む」とは、(1)吸水性樹脂の製造工程において用いられた熱分解型ラジカル重合開始剤が製造された吸水性樹脂中にそのまま残存している形態;および(2)準備された吸水性樹脂に対して熱分解型ラジカル重合開始剤が別途添加された形態、の双方の形態を包含する概念である。
本発明の第2によっても、上述した水溶性ラジカル重合開始剤を用いる本発明の第1と同様の効果が得られることが見出された。すなわち、従来の表面架橋剤を用いる表面架橋に対して、本発明の第2においては、表面架橋剤を用いなくとも、熱分解型ラジカル重合開始剤を使用するだけで、吸水性樹脂を改質(具体的には、吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入)しうることが判明したのである。
ここで、熱分解型ラジカル重合開始剤とは、加熱によりラジカルを発生する化合物であり、なかでも10時間半減期温度が0℃以上120℃以下のものが好ましく、20℃以上100℃以下のものがより好ましく、活性エネルギー線を照射する温度条件等を考慮すると、40℃以上80℃以下のものが特に好ましい。10時間半減期温度が0℃(下限値)未満では、貯蔵時に不安定であり、120℃(上限値)を超えると化学的に安定過ぎて反応性が低くなる。
本発明の第2において、特に「熱分解型ラジカル重合開始剤」としたのは、吸水性樹脂に特定の10時間半減期温度を示す重合開始剤を添加し、活性エネルギー線を照射することで、低温かつ短時間で表面改質ができ、高いゲル強度および優れた吸水特性を達成できるためである。本発明の第2において、熱分解型ラジカル重合開始剤としては、油溶性および水溶性のいずれも用いられうる。油溶性熱分解型ラジカル重合開始剤は、水溶性熱分解型ラジカル重合開始剤と比較して分解速度がpHやイオン強度の影響を受けにくいという特徴がある。しかし、吸水性樹脂は親水性であるため、吸水性樹脂への浸透性を考慮すると、水溶性熱分解型ラジカル重合開始剤を使用することがより好ましい。
熱分解型ラジカル重合開始剤は、光分解型ラジカル重合開始剤として市販されている化合物と比べて比較的安価で、厳密な遮光が必ずしも必要でないため製造プロセス、製造装置を簡略化できる。代表的な熱分解型ラジカル重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過炭酸ナトリウムなどの過炭酸塩;過酢酸、過酢酸ナトリウムなどの過酢酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−2(−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。なかでも、10時間半減期温度が40〜80℃である、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、および2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−2(−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)などのアゾ化合物が好ましい。これらの中でも、特に過硫酸塩を使用すると、加圧下吸収倍率、遠心分離機保持容量がいずれも優れる点で好ましい。
熱分解型ラジカル重合開始剤の使用量は、吸水性樹脂100重量部に対し、0.01〜20重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜15重量部の範囲、特に好ましくは1〜10重量部の範囲である。熱分解型ラジカル重合開始剤の混合量が0.01重量部よりも少ないと、活性エネルギー線を照射しても吸水性樹脂を改質することができなくなる場合がある。一方、熱分解型ラジカル重合開始剤の混合量が20重量部よりも多いと、改質された吸水性樹脂の吸水性能が低下することがある。
本発明の第2においては、吸水性樹脂が熱分解型ラジカル重合開始剤を含むことが必須であるが、熱分解型ラジカル重合開始剤以外の他の重合開始剤をさらに含んでもよい。他の重合開始剤としては、例えば、油溶性のベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体などの光重合開始剤、また油溶性のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカルボネートなどの油溶性有機過酸化物が挙げられる。かかる光重合開始剤としては市販品でもよく、チバ・スペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア(登録商標)184(ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)、長瀬産業株式会社製の商品名イルガキュア2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)などが例示されうる。これらの他の重合開始剤もまた、吸水性樹脂の製造工程からそのまま樹脂中に残存したものであってもよいし、別途添加されたものであってもよい。
他の重合開始剤を併用する場合、その含有量は、好ましくは吸水性樹脂100重量部に対して0〜20重量部であり、より好ましくは0〜15重量部であり、特に好ましくは0〜10重量部であり、最も好ましくは0〜5重量部である。そして、他の重合開始剤の含有比率は水溶性ラジカル重合開始剤よりも少ないことが好ましく、より好ましくは水溶性ラジカル重合開始剤に対して重量比で1/2以下であり、さらに好ましくは1/10以下であり、特に好ましくは1/50以下である。
(有機溶媒)
本工程において吸水性樹脂を分散させるための有機溶媒は特に制限されず、疎水性であってもよいし、親水性であってもよい。
疎水性有機溶媒とは、水への溶解度が20g/100g(20℃)以下の有機溶媒を意味する。疎水性有機溶媒としては、例えば、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物;n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、(削除)、n−アミルアルコールなどの脂肪族アルコール;メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルなどの脂肪族エステル等が挙げられる。
一方、親水性有機溶媒とは、水への溶解度が20g/100g(20℃)超の有機溶媒を意味する。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級脂肪族アルコール;アセトンなどの脂肪族ケトン;ジオキサン、テトラヒドロフラン、メトキシ(ポリ)エチレングリコールなどのエーテル化合物;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド化合物;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール等が挙げられる。ここで、原料としての吸水性樹脂の製造に逆相懸濁重合の手法を用いた場合を考えると、重合終了時の反応液がそのまま本工程における「分散液」として用いられることが、製造工程の簡素化および製造コストの削減などの観点から好ましい。かような観点から、本工程において用いられる「有機溶媒」は、吸水性樹脂の製造において逆相懸濁重合の反応溶媒として用いられるものであることが好ましい。具体的には、上述した疎水性有機溶媒が用いられることが好ましく、なかでも炭化水素化合物が用いられることがより好ましく、飽和炭化水素化合物が用いられることがさらに好ましく、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘプタンが用いられることが特に好ましく、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ペンタンが用いられることが最も好ましい。
(有機溶媒中への吸水性樹脂の分散)
本工程においては、例えば、上記で準備した吸水性樹脂を、有機溶媒中に分散させる。これにより、分散液が得られる。ただし、上述したように、吸水性樹脂の製造の溶媒として有機溶媒が用いられた場合には、重合完了後の溶液がそのまま本工程における「分散液」として用いられてもよい。かような形態においては、「吸水性樹脂を有機溶媒中に添加して、分散させる」工程があえて行われない場合もありうる。
このように、吸水性樹脂の分散媒体として有機溶媒を用い、さらに後述する工程(b)において当該分散液に活性エネルギー線を照射することで、吸水性樹脂の表面に均一な架橋構造を短時間で導入することが可能である。なお、上述したように、前記吸水性樹脂は、樹脂の製造工程からの残存に伴って水溶性ラジカル重合開始剤または熱分解型ラジカル重合開始剤(以下、水溶性ラジカル重合開始剤および熱分解型ラジカル重合開始剤を一括して、単に「ラジカル重合開始剤」とも称する)を含むものであってもよいし、樹脂の製造工程終了時点ではラジカル重合開始剤を含まないものであってもよい。後者の場合には、吸水性樹脂の有機溶媒への分散の前後または分散と同時に、ラジカル重合開始剤が別途有機溶媒中に添加される。これにより、吸水性樹脂は「水溶性ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂」または「熱分解型ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂」となる。
本工程においては、ラジカル重合性化合物を添加せずに、吸水性樹脂を有機溶媒中に分散させる。なお、本発明において「ラジカル重合性化合物を添加せずに」としたのは、活性エネルギー線を照射することにより活性化されたラジカル重合開始剤が、吸水性樹脂の表面に作用する前にラジカル重合性化合物と反応して消費されてしまうことを避けるためである。なお、「ラジカル重合性化合物を添加せずに」との概念は、「ラジカル重合性化合物を意図的に添加することはせずに」との意味であって、不純物(例えば、吸水性樹脂の製造時の残存モノマー)としてのラジカル重合性化合物の混入は許容されうる。
吸水性樹脂を分散させる有機溶媒の量は特に制限されないが、ラジカル重合開始剤の量を含めない吸水性樹脂単独の量100重量部に対して、好ましくは50〜5000重量部であり、より好ましくは100〜3000重量部であり、さらに好ましくは200〜1000重量%である。分散液における有機溶媒の量が50重量部を下回ると、工程(b)において活性エネルギー線が吸水性樹脂に均一に照射されない虞がある。一方、有機溶媒の量が5000重量%を超えると、生産効率が低下し、製造コストが高騰する虞がある。ただし、これらの範囲を外れる形態の分散液が得られてもよい。
上述した通り、吸水性樹脂は製造工程からの残存に伴ってラジカル重合開始剤を含んでもよいし、ラジカル重合開始剤が別途添加されることにより当該ラジカル重合開始剤を含むようになってもよいが、いずれにしても本工程においてはラジカル重合開始剤を有機溶媒中に別途添加して、分散液におけるラジカル重合開始剤の濃度を調節することが好ましい。ラジカル重合開始剤を有機溶媒中に別途添加する形態は特に制限されず、そのまま添加してもよいが、水や親水性有機溶媒などに溶解させた溶液の形態で添加することが好ましく、水溶液の形態で添加することがより好ましい。なお、当該親水性有機溶媒の具体的な形態は特に制限されず、吸水性樹脂を分散させるための有機溶媒として上述した形態が同様に用いられうる。また、水溶液の形態で添加する場合、当該水溶液における水の量は特に制限されず適宜調節されうるが、吸水性樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部であり、より好ましくは2〜30重量部であり、さらに好ましくは5〜20重量部である。
本工程においては、得られる分散液における吸水性樹脂の分散性を向上させるため、混合助剤を添加することが好ましい。混合助剤を添加することによって、吸水性樹脂の凝集を抑制して、有機溶媒と吸水性樹脂とが均一に混合されうるため、後の工程(b)において活性エネルギー線を照射する際に、活性エネルギー線を吸水性樹脂に均等に照射することができ、吸水性樹脂の表面全体に均一な架橋構造を導入することが可能となる。この際、混合助剤の添加時期は特に制限されず、吸水性樹脂の有機溶媒中への添加の前後であってもよいし、添加と同時であってもよいが、吸水性樹脂の有機溶媒中への添加の前であることが好ましい。なお、逆相懸濁重合により吸水性樹脂を製造する場合には、重合時に添加される分散剤が当該混合助剤としても用いられうる。すなわち、逆相懸濁重合における分散剤と、本工程において添加される混合助剤との範囲は同一である。従って、ここでは混合助剤についての詳細な説明を省略する。ただし、かような場合であっても、上述した分散剤を混合助剤として用いる目的で、逆相懸濁重合後に得られた溶液に添加してもよい。
混合助剤を添加する場合の有機溶媒中への添加形態は特に制限されず、粉末の形態で添加されてもよいし、適当な溶媒中に溶解または分散させた形態で添加されてもよい。
また、混合助剤を添加する場合の、混合助剤の添加順序もまた特に制限されず、吸水性樹脂に予め混合助剤を加えた後、これを有機溶媒中に添加する方法、混合助剤を有機溶媒に添加した後に吸水性樹脂を添加する方法、および吸水性樹脂が分散している有機溶媒中に混合助剤を添加する方法などどのような方法も使用可能である。
なお、吸水性樹脂および有機溶媒、並びに必要に応じて重合開始剤を混合する混合手段としては、通常の混合機、例えばV型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、回転円板型混合機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、パドル型混合機、鋤型混合機、撹拌羽根を備えた反応釜等が挙げられる。
[工程(b)]
本工程においては、上記の工程(a)において得られた分散液に活性エネルギー線を照射する。これにより、分散液中の吸水性樹脂の表面に架橋構造が導入され、改質された吸水性樹脂の製造が完了する。
(活性エネルギー線)
吸水性樹脂の製造において、活性エネルギー線を照射し、重合率を向上させることは公知である。例えば、重合性単量体成分に内部架橋剤および光重合開始剤を配合し、紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を照射することで、内部架橋を有する不溶性吸水性樹脂が調製されうる。また、表面架橋剤を使用し、加温条件下において反応を促進させて吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入することも公知である。この際には、表面架橋剤として、多価アルコールや多価グリシジルエーテル、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒドなどの、1分子中に複数の官能基を有する化合物を使用する。一般に、100〜300℃に加熱すると、これらの官能基が吸水性樹脂の表面に存在するカルボキシル基などと反応し、吸水性樹脂の表面に架橋構造が導入される。しかしながら、本発明によれば、このような表面架橋剤などが存在しなくとも、活性エネルギー線の照射によって、吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入しうる点に特徴がある。また、これによって、改質(表面架橋の導入)後の吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)や食塩水流れ誘導性(SFC)等の吸水特性を向上させることができる。
本発明において、活性エネルギー線の照射は、吸水性樹脂と有機溶媒との混合による分散液の形成中に行なってもよく、両者が完全に混合されて得られた分散液に対して照射を行ってもよい。しかしながら、均一な表面架橋を形成しうる点で、両者が完全に混合されて得られた分散液に対して活性エネルギー線を照射する方法が好ましく用いられる。また、吸水性樹脂に活性エネルギー線を照射している間は、吸水性樹脂を含む有機溶媒を常に流動状態に置くことがさらに好ましい。なお、本発明において、逆相懸濁重合により吸水性樹脂を製造する場合には、重合反応終了後に、反応液に対して共沸脱水処理を施してもよいが、当該共沸脱水処理の前またはその最中に、反応液(すなわち、本発明における「分散液」)に対して活性エネルギー線を照射してもよい。
また、活性エネルギー線照射時の吸水性樹脂の含水率について特に制限はないが、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは2〜30重量%であり、さらに好ましくは5〜20重量%である。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、γ線の1種または2種以上が用いられる。好ましくは、紫外線または電子線である。なかでも、波長400nm以下の紫外線がより好ましく、さらに好ましくは波長300nm以下の紫外線であり、特に好ましくは波長180〜290nmの紫外線であり、最も好ましくは波長200〜250nmの紫外線である。
照射条件は特に制限されないが、例えば紫外線を用いる場合には、好ましくは、照射強度が3〜1000mW/cm、照射量が100〜10000mJ/cmである。紫外線を照射する装置としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を例示することができる。紫外線が照射される限り、好ましくは300nm以下の紫外線が照射される限り、他の放射線や波長を含んでもよく、その手法は特に限定されるものではない。なお、電子線を用いる場合には、好ましくは加速電圧を50〜800kV、吸収線量を0.1〜100Mradとする。
一般に、活性エネルギー線を照射する時間は、好ましくは0.1分以上60分未満であり、より好ましくは0.2分以上30分未満、さらに好ましくは1分以上15分未満であ
る。場合によっては60分を超える処理時間を要する従来の表面架橋剤を使用した加熱による処理と比較すると、同一架橋密度の表面架橋の形成に要する時間が大幅に短縮されうる。
活性エネルギー線を照射して表面処理する際には、加温する必要はない。ただし、活性エネルギー線を照射すると、輻射熱が発生する場合がある。一般には、吸水性樹脂を、好ましくは150℃未満、より好ましくは120℃未満、さらに好ましくは室温〜100℃、特に好ましくは50〜100℃の範囲に加温した状態で活性エネルギー線を照射するとよい。従って、加熱する場合でも従来の表面処理温度よりも処理温度を低く設定することができる。
活性エネルギー線の照射の際には、吸水性樹脂が分散してなる分散液を撹拌することが好ましい。撹拌によって、吸水性樹脂に対して活性エネルギー線を均一に照射することができる。活性エネルギー線の照射の際に吸水性樹脂を撹拌するための撹拌手段としては、振動型混合機、振動フィーダー、リボン型混合機、円錐型リボン型混合機、スクリュー型混合機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、パドル型混合機、高速流動式混合機、浮上流動式混合機、撹拌羽根を備えた反応釜等が挙げられる。なお、これらの撹拌手段を用いて撹拌しながら活性エネルギー線を照射する場合、活性エネルギー線を分散液まで十分に到達させる必要がある。このような目的を達成するための手法としては、例えば、撹拌手段における活性エネルギー線の透過部を開口部とする手法や、活性エネルギー線の透過によっても損傷を受けず実質的に透明な部材(例えば、石英ガラス)で構成する手法が例示される。
活性エネルギー線の照射後には、乾燥などのために、必要に応じて、吸水性樹脂を50〜250℃の温度で加熱処理してもよい。
また、活性エネルギー線照射後に、従来周知の多価アルコール、多価エポキシ化合物、アルキレンカーボネート等の表面架橋剤を使用して、表面架橋を形成させてもよい。
本発明の改質された吸水性樹脂の製造方法では、活性エネルギー線照射の前後または同時に、吸水性樹脂に通液性向上剤を添加してもよい。このような通液性向上剤の例としては、タルク、カオリン、フラー土、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライトなどの鉱産物;硫酸アルミニウム14〜18水塩(または無水物)、硫酸カリウムアルミニウム12水塩、硫酸ナトリウムアルミニウム12水塩、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物類、及びそれらの水溶液;その他の多価金属塩類;親水性のアモルファスシリカ(例、乾式法:トクヤマ社 ReolosilQS−20、沈殿法:DEGUSSA社 Sipernat22S, Sipernat2200)類;酸化ケイ素・酸化アルミ・酸化マグネシウム複合体(例、ENGELHARD社 Attagel#50)、酸化ケイ素・酸化アルミニウム複合体、酸化ケイ素・酸化マグネシウム複合体などの酸化物複合体類などがある。このような通液性向上剤は、改質後の吸水性樹脂100重量部に対して、0〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部を混合する。通液性向上剤では、水に溶けるものは水溶液で、溶けないものは粉末やスラリーで添加することができる。また、これらの通液性向上剤は、重合開始剤と混合して添加してもよい。その他、添加剤として、抗菌剤、消臭剤、キレート剤などを適宜前記範囲で添加してもよい。
[改質された吸水性樹脂]
本発明の製造方法によれば、改質された吸水性樹脂が得られる。具体的には、表面に架橋構造が導入された吸水性樹脂が得られる。そして、得られた吸水性樹脂は、改質前と比較して、加圧下吸収倍率が向上する。
従来、吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入すると、自由膨潤倍率は若干低下するが、圧力をかけた状態でも吸液を維持できる能力、すなわち加圧下吸収倍率が向上することが知られている。本発明の製造方法によれば、表面架橋剤や加熱処理を採用しなくとも、加圧下吸収倍率が向上しうる。具体的には、改質の前後で、吸水性樹脂の4.83kPa(0.7psi)の加圧下吸収倍率が1g/g以上増加する。このことは、本発明の方法によって吸水性樹脂の表面に架橋構造が導入されたことを示すものと考えられる。また、改質された吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)の絶対値は、4.83kPaの加圧下における値として、好ましくは8g/g以上、より好ましくは12g/g以上、さらに好ましくは15g/g以上、特に好ましくは20g/g以上、最も好ましくは22g/g以上である。なお、改質された吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)の上限値は特に問わないが、製造の困難性による製造コストの高騰のおそれから40g/g程度で十分である場合もある。
また、改質された吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)は、好ましくは50g/g以下であり、より好ましくは40g/g以下であり、さらに好ましくは35g/g以下である。下限値は特に限定されないが、好ましくは10g/g以上であり、より好ましくは20g/g以上であり、さらに好ましくは25g/g以上である。遠心分離機保持容量(CRC)が50g/gを超えると、ゲル強度が低下し、それに伴って加圧下吸水倍率が低下する虞がある。一方、遠心分離機保持容量(CRC)が10g/g未満であると、十分な吸収倍率が得られず、おむつとして使用した際に尿漏れが発生する虞がある。
さらに、改質された吸水性樹脂の食塩水流れ誘導性(SFC)は、好ましくは10(×10−7・cm・s・g−1)以上、より好ましくは30(×10−7・cm・s・g−1)以上、さらに好ましくは50(×10−7・cm・s・g−1)以上、特に好ましくは70(×10−7・cm・s・g−1)以上、最も好ましくは100(×10−7・cm・s・g−1)以上である。上限値は特に制限されないが、好ましくは2000(×10−7・cm・s・g−1)以下であり、さらに好ましくは500(×10−7・cm・s・g−1)以下である。SFCが10未満であると、おむつとしての使用時にゲルブロッキングが発生し、尿漏れを引き起こす虞がある。一方、SFCが2000を超えると、吸収倍率が低下する虞がある。
なお、これらの加圧下吸収倍率(AAP)、遠心分離機保持容量(CRC)および食塩水流れ誘導性(SFC)の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
また、本発明の製造方法によって得られる改質された吸水性樹脂は、残存モノマー量が極めて少ないという特徴がある。これは、ラジカル重合開始剤への活性エネルギー線の照射に起因して生成するラジカルが、吸水性樹脂の残存モノマーと反応するためと考えられる。吸水性樹脂は、紙おむつなどの衛生材料に使用されるため、残存モノマーは臭気や安全性の面から少なければ少ないほどよい。通常、ベースポリマーとしての吸水性樹脂に含まれる残存モノマーは200〜500ppmであるが、本発明によって得られる改質された吸水性樹脂の残存モノマーは、多くの場合200ppm以下(下限は0ppm)である。改質された吸水性樹脂の残存モノマーは、好ましくは200ppm以下、より好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である(下限は0ppm)。ただし、残存モノマー量が上記の範囲内の値となる製造方法のみに、本発明の技術的範囲が限定されるわけではない。
本発明の製造方法によって得られる改質された吸水性樹脂の形状は、処理前の吸水性樹脂の形状などの処理条件や、処理後の造粒・成形などによって適宜調整できるが、一般には粉末状である。かかる粉末は、重量平均粒子径(ふるい分級で規定)が好ましくは10〜1,000μm、好ましくは200〜600μmの粉末状であり、より好ましくは粒子径が150〜850μmの粒子の含有量が90〜100重量%であり、さらに好ましくは95〜100重量%である。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)の値は特に制限されないが、好ましくは0.2〜0.45である。
本発明の製造方法では、吸水性樹脂の表面架橋時に、吸水性樹脂の製造時に発生する微粉を造粒する効果がある。このため、改質前の吸水性樹脂に微粉が含まれていても、本発明の改質された吸水性樹脂の製造方法を行なうと、含まれる微粉が造粒されるため、得られる表面処理された吸水性樹脂に含まれる微粉量を低減させることができる。すなわち、得られる改質された吸水性樹脂の粒度分布が改質前の吸水性樹脂と比較して高粒度側へシフトしうるのである。ただし、シフトする割合は、吸水性樹脂に含まれるラジカル重合開始剤の種類や量、分散液における有機溶媒および水の使用量、活性エネルギー線の照射条件、照射時の流動のさせ方などにより変化する。また、かような形態のみに制限されることはなく、粒度分布が変化しない、または低粒度側へシフトする場合があったとしても、本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の製造方法で得られる改質された吸水性樹脂は、表面全体に亘って均一でかつ高密度に架橋構造が導入されており、吸水性樹脂に望まれる特性、例えば、吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、吸引力などが極めて高いレベルに向上しうる。なお、従来のように多価アルコール、多価エポキシ化合物、アルキレンカーボネート等の表面架橋剤を用いてアクリル酸系吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入する場合には、表面架橋の導入の速度や程度は吸水性樹脂の中和率に依存していた。具体的には、中和率が低いと表面架橋の導入が速く進行し、中和率が高いと表面架橋が導入されにくくなる。また、ポリアクリル酸の後中和によって得られる吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入するには、表面架橋処理後に、均一に後中和する必要性があった。しかしながら本発明では、吸水性樹脂の中和率や後中和の均一性に依存することなく、吸水性樹脂を改質して、吸水特性に優れる吸水性樹脂を製造することができる。表面架橋の導入が、ラジカル重合開始剤による吸水性樹脂の主鎖などへの作用に依存するため、カルボキシル基が酸で存在するか、塩となっているかなどを問題とすることなく、進行することによると考えられる。
なお、工程(a)でラジカル重合性化合物を添加して工程(b)を行うと、ラジカル重合開始剤がラジカル重合性化合物の重合に消費されてしまう。従って、かような形態は本発明の意図するものではない。
本発明によれば、吸水性樹脂を表面処理するにあたって、室温付近の反応温度でも十分に表面処理可能であり、しかも、得られる改質(表面架橋の導入)された吸水性樹脂は、吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、吸引力など吸水性樹脂に望まれる特性が極めて高いレベルにある。従って、本発明の製造方法によって得られる吸水性樹脂は、生理綿、紙おむつ、またはその他の体液を吸収する衛生材料や農業用の吸水性樹脂としても最適なものである。
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲下記の形態のみに限定されない。以下の記載では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、特記しない限り、全ての作業を室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下において行った。実施例および比較例における、改質前後の吸水性樹脂における種々のパラメータの測定方法および評価方法を以下に示す。
(1)遠心分離機保持容量(Centrifuge Retention Capacity;「CRC」とも称する)
CRCは、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液(以下、単に「生理食塩水」とも称する)に対する無加圧下、30分間における吸収倍率を示す。
吸水性樹脂0.200gを不織布(南国パルプ工業株式会社製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)製の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温にて大過剰(約500mL)の生理食塩水中に浸漬させた。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式:H−122)を用いてedena ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の重量を測定した。この重量をW1(g)とした。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その際の重量をW0(g)とした。そして、これらW1およびW0の値から、下記数式に従ってCRC(g/g)を算出した。
(2)食塩水流れ誘導性(Saline Flow Conductivity;「SFC」とも称する)
SFCは、吸水性樹脂粒子の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示す。
特表平9−509591号公報記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
具体的には、図1に示す装置を用いて、SFCを測定した。図1に示す装置において、タンク31には、ガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置されている。タンク31中の0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を捕集する捕集容器48が配置されており、捕集容器48は上皿天秤49の上に設置されている。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されている。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水性樹脂またはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてある。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置されている。
上記人工尿は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、リン酸2水素アンモニウム0.85g、リン酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものである。
測定操作としては、容器40に均一に入れた吸水性樹脂(0.900g)を人工尿中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。コンピューターおよび天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(t)は増加重量(g)を増加時間(s)で割ることにより[g/s]の単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータのみを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(t=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。具体的には、Fs(t)対時間の最小2乗法の結果をt=0に外挿することにより、Fs(t=0)を算出した。
(3)加圧下吸収倍率0.7psi(Absorbency Against Pressure;「AAP0.7」とも称する)
AAP0.7は、生理食塩水に対する4.83kPa(0.7psi)加圧下、60分間における吸収倍率を示す。
図2に示すように、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目開き38μm)を融着させ、金網上に吸水性樹脂0.900gを均一に散布し、その上に、吸水性樹脂に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒100の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン103と荷重104とをこの順に載置して、この測定装置一式の重量を測定した。この重量をW2(g)とした。
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、生理食塩水(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙107(ADVANTEC東洋株式会社製、商品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で所定時間吸収させた。この吸収時間は、測定開始から算出して、1時間後とした。具体的には、1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その重量を測定した。この重量をW3(g)とした。なお、この重量測定はできるだけ迅速に、かつ振動を与えないように行わなくてはならない。そして、W2およびW3から、下記数式に従ってAAP0.7を算出した。
(4)重量平均粒子径(「D50」とも称する)および粒度分布の対数標準偏差(「σζ」とも称する)
吸水性樹脂を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmのJIS標準ふるい(株式会社飯田製作所製、THE IIDA TESTING SIEVE、径:8cm)を用いて篩い分けした。具体的には、このJIS標準ふるいに吸水性樹脂を仕込み、振動分級器(株式会社飯田製作所製、SIEVE SHAKER、型式:ES−65、SER.No.0501)により、5分間分級を行った。次いで、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。このプロットからR=50重量%に対応する粒子径を重量平均粒子径(D50)として読み取った。また、R=84.1重量%およびR=15.9重量%に対応する粒子径をそれぞれX1およびX2として、粒度分布の対数標準偏差(σζ)を下記数式に従って算出した。なお、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
(5)溶出可溶分
250mL容量の蓋付きプラスチック容器(直径6cm×高さ9cm)に、生理食塩水184.3gを測り取り、その中に吸水性樹脂1.00gを加え、16時間、直径8mm、長さ25mmの磁気撹拌子を用いて500rpmの回転数で撹拌することにより、樹脂中の溶出可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙(ADVANTEC東洋株式会社、品名:JIS P 3801、No.2、厚さ:0.26mm、保留粒子径:5μm)1枚を用いて濾過し、得られた濾液の50.0gを測り取り、測定溶液とした。
はじめに生理食塩水のみを、まず、0.1N水酸化ナトリウム水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、1N塩酸でpH2.7まで滴定して空滴定量(それぞれ、[bNaOH]、[bHCl]と称する)を得た。
同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより、滴定量(それぞれ、[NaOH]、[HCl]と称する)を得た。
例えば、既知量のアクリル酸およびそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂の場合、当該単量体の平均分子量および上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の溶出可溶分を下記数式に従って算出した。未知量の場合は滴定により下記数式に従って求めた中和率を用いて単量体の平均分子量を算出した。
(6)含水率
底面の直径が4cm、高さ2cmのアルミニウム製カップの底面に吸水性樹脂1.00gを均一に広げ、この吸水性樹脂入りカップの重量を測定した。この重量をW4(g)とした。次いで、このカップを180℃に調温した熱風乾燥機中に3時間放置し、熱風乾燥機から取り出した直後(少なくとも1分以内)の吸水性樹脂入りカップの重量を測定した。この重量をW5(g)とした。そして、W4およびW5から、下記数式に従って含水率を算出した。
<製造例1>
シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中に、70モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5433g(単量体濃度:39重量%)を仕込み、当該水溶液に内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)12.83gを溶解させて反応液とした。次いで、この反応液を窒素ガス雰囲気下において脱気した。続いて、重合開始剤である過硫酸ナトリウムの10重量%水溶液29.43gおよびL−アスコルビン酸の0.1重量%水溶液24.53gを撹拌しながら反応液に添加した。その結果、約1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃にて重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体の粒子径は5mm以下であった。この粉砕された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、175℃にて50分間熱風乾燥した。このようにして、不定形で、容易に粉砕されうる粉末状凝集体を得た。
得られた粉末状凝集体をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmのJIS標準ふるいを用いて分級した。次いで、前記の操作で目開き710μmのふるいを通過した粒子を目開き150μmのJIS標準ふるいを用いて分級し、目開き150μmのふるいを通過した粒子を除去した。このようにして、吸水性樹脂(A1)を得た。
得られた吸水性樹脂(A1)の各種評価結果を下記の表1に示す。また、得られた吸水性樹脂(A1)の粒度分布を下記の表2に示す。なお、本明細書の実施例および比較例の欄において、「含水率補正後」の値については、下記数式に従って算出した。
(>Aμm)は目開きAμmのふるい上に残存した樹脂を示す
(<Bμm)は目開きBμmのふるいを通過した樹脂を示す
(C〜Dμm)は目開きCμmのふるいを通過し、目開きDμmのふるい上に残存した樹脂を示す
<実施例1>
上記の製造例1で得た吸水性樹脂(A1)10gを石英製セパラブルフラスコに仕込み、撹拌羽根を用いて400rpmで撹拌しながら、過硫酸アンモニウム(和光純薬工業株式会社製)0.10g、ポリエチレングリコールメチルエーテル(アルドリッチ社製、CH(OCHCHOH、数平均分子量(Mn):2000)0.050g、および純水0.80gを混合した処理液を添加した。
処理液の添加後3分間撹拌を続けた後、レオドールSP−S10(花王株式会社製、ソルビタンモノステアレート、非イオン性界面活性剤)0.20gをシクロヘキサン300gに溶解させた溶液を添加し、さらに7分間撹拌を続けた。
撹拌羽根の回転数を200rpmに変更した後、メタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製、UVL−1500M2−N1)を取り付けた紫外線照射装置(同、UV−152/1MNSC3−AA06)を用いて、照射強度60mW/cmで10分間、室温で紫外線を照射した。
撹拌を停止し、上澄みの溶液をデカンテーションによって可能な限り除去した。セパラブルフラスコ中に残存した混合物を70℃、3Torr(約400Pa)の減圧下において、乾燥機(ヤマト科学株式会社製、真空低温乾燥機、型式:DP33、真空ポンプ:アルバック機工株式会社製、型式:GVD−100A)を用いて1時間乾燥させて、改質(表面に架橋構造が導入)された吸水性樹脂(1)を得た。この吸水性樹脂(1)の処理条件を下記の表3に示し、吸水特性を下記の表4に示す。
<実施例2>
紫外線の照射時間を5分間としたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、改質(表面に架橋構造が導入)された吸水性樹脂(2)を得た。この吸水性樹脂(2)の処理条件を下記の表3に示し、吸水特性を下記の表4に示す。
<実施例3>
紫外線の照射時間を1分間としたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、改質(表面に架橋構造が導入)された吸水性樹脂(3)を得た。この吸水性樹脂(3)の処理条件を下記の表3に示し、吸水特性を下記の表4に示す。
<実施例4>
レオドールSP−S10を使用せず、さらに紫外線照射時の撹拌羽根の回転数を400rpmとしたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、改質(表面に架橋構造が導入)された吸水性樹脂(4)を得た。この吸水性樹脂(4)の処理条件を下記の表3に示し、吸水特性を下記の表4に示す。
<比較例1>
上記の製造例1で得た吸水性樹脂(A1)10gを石英製セパラブルフラスコに仕込み、撹拌羽根を用いて400rpmで撹拌しながら、過硫酸アンモニウム(和光純薬工業株式会社製)0.10g、ポリエチレングリコールメチルエーテル(アルドリッチ社製、CH(OCHCHOH、数平均分子量(Mn):2000)0.050g、および純水0.80gを混合した処理液を添加した。
処理液の添加後3分間撹拌を続けた後、シクロヘキサン300gを添加し、さらに17分間撹拌を続けた。
撹拌を停止し、上澄みの溶液をデカンテーションによって可能な限り除去した。セパラブルフラスコ中に残存した混合物を70℃、3Torr(約400Pa)の減圧下において、乾燥機(ヤマト科学株式会社製、真空低温乾燥機、型式:DP33、真空ポンプ:アルバック機工株式会社製、型式:GVD−100A)を用いて1時間乾燥させて、比較吸水性樹脂(1)を得た。この比較吸水性樹脂(1)の処理条件を下記の表3に示し、吸水特性を下記の表4に示す。
<比較例2>
上記の製造例1で得た吸水性樹脂(A1)10gを石英製セパラブルフラスコに仕込み、撹拌羽根を用いて400rpmで撹拌しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−810)0.003g、1,4−ブタンジオール0.032g、プロピレングリコール0.05g、および純水0.273gを混合した処理液を添加した。
処理液の添加後3分間撹拌を続けた後、シクロヘキサン300gを添加し、さらに2分間撹拌を続けた。次いで、セパラブルフラスコを約85℃のウォーターバスに浸し、15分間加温した(シクロヘキサン溶液の温度:加温開始から5分後で73℃、15分後で78℃)。
撹拌を停止し、上澄みの溶液をデカンテーションによって可能な限り除去した。セパラブルフラスコ中に残存した混合物を70℃、3Torr(約400Pa)の減圧下において、乾燥機(ヤマト科学株式会社製、真空低温乾燥機、型式:DP33、真空ポンプ:アルバック機工株式会社製、型式:GVD−100A)を用いて1時間乾燥させて、比較吸水性樹脂(2)を得た。この比較吸水性樹脂(2)の処理条件を下記の表3に示し、吸水特性を下記の表4に示す。
<比較例3>
処理液として、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−810)0.01g、イソプロピルアルコール0.05g、および純水0.3gを混合した液を用いたこと以外は、上記の比較例2と同様の手法により、比較吸水性樹脂(3)を得た。この比較吸水性樹脂(3)の処理条件を下記の表3に示し、吸水特性を下記の表4に示す。
表4に示す結果から、本発明の製造方法によれば、従来のような加熱処理を用いることなく吸水性樹脂の表面に架橋構造が導入されうることが示される。また、加熱処理ではなく活性エネルギー線照射を用いることで、短時間でかつ均一性の高い架橋構造の導入が可能となる。さらに、本発明の製造方法により製造された改質(表面架橋の導入)された吸水性樹脂は、加圧下吸収倍率や通液性等の吸水特性に優れる。
本発明によれば、加熱処理を用いることなく吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入することが可能であり、得られる改質された吸水性樹脂は、吸水特性に優れるため、紙おむつ等として利用することができ、産業上有用である。
食塩水流れ誘導性(SFC)の測定に用いる測定装置の概略図である。 加圧下吸収倍率(APP0.7)の測定に用いる測定装置の概略図である。
符号の説明
31 タンク、
32 ガラス管、
33 0.69重量%塩化ナトリウム水溶液、
34 L字管、
35 コック、
40 容器、
41 セル、
42、43 金網、
44 膨潤したゲル、
45 ガラスフィルター、
46 ピストン、
47 穴、
48 捕集容器、
49 上皿天秤、
100 支持円筒、
101 金網、
102 膨潤ゲル、
103 ピストン、
104 荷重、
105 ペトリ皿、
106 ガラスフィルター、
107 濾紙、
108 0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)。

Claims (19)

  1. 改質された吸水性樹脂の製法であって、
    (a)ラジカル重合性化合物を添加せずに、水溶性ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂が有機溶媒中に分散してなる分散液を得る工程と、
    (b)得られた分散液に活性エネルギー線を照射する工程と、
    を含む、改質された吸水性樹脂の製法。
  2. 改質された吸水性樹脂の製法であって、
    (a)ラジカル重合性化合物を添加せずに、熱分解型ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂が有機溶媒中に分散してなる分散液を得る工程と、
    (b)得られた分散液に活性エネルギー線を照射する工程と、
    を含む、改質された吸水性樹脂の製法。
  3. 前記ラジカル重合開始剤を含む吸水性樹脂を、吸水性樹脂にラジカル重合開始剤を添加することにより得る、請求項1または2に記載の製法。
  4. 前記ラジカル重合開始剤を水溶液の形態で添加する、請求項3に記載の製法。
  5. 前記水溶液における水の量が、前記吸水性樹脂100重量部に対して1〜50重量部である、請求項4に記載の製法。
  6. 前記有機溶媒が疎水性有機溶媒である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製法。
  7. 前記分散液を、逆相懸濁重合により得る、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製法。
  8. 前記分散液を得る工程において、前記有機溶媒中に界面活性剤および/または高分子保護コロイドを混合助剤として添加する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製法。
  9. 前記分散液における前記混合助剤の添加量が、前記吸水性樹脂100重量部に対して0.01〜40重量部である、請求項8に記載の製法。
  10. 前記ラジカル重合開始剤は、過硫酸塩、過酸化水素及び水溶性アゾ化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製法。
  11. 前記分散液における前記ラジカル重合開始剤の含有量が、前記吸水性樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製法。
  12. 前記吸水性樹脂が、酸基を含有しかつ25〜100モル%の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製法。
  13. 前記活性エネルギー線が紫外線である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製法。
  14. 前記分散液が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体成分を重合して得られる粉末状の吸水性樹脂を有機溶媒中に分散させて得られるものである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製法。
  15. 前記吸水性樹脂が、低位の中和率の吸水性樹脂前駆体を得て、当該吸水性樹脂前駆体と塩基とを混合することによって得られる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製法。
  16. 前記吸水性樹脂が、150〜850μmの範囲の粒径の粒子を90〜100重量%含み、前記吸水性樹脂の重量平均粒子径が200〜600μmであり、前記吸水性樹脂の粒度分布の対数標準偏差が0.45以下である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製法。
  17. 改質後の吸水性樹脂の4.83kPaにおける生理食塩水に対する加圧下吸収倍率が、改質前の吸水性樹脂の加圧下吸収倍率よりも1g/g以上高い、請求項1〜16のいずれかに記載の改質された吸水性樹脂の製法。
  18. 改質後の吸水性樹脂の4.83kPaにおける生理食塩水に対する加圧下吸収倍率が、8〜40g/gである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製法。
  19. 改質後の吸水性樹脂の食塩水流れ誘導性が、10(×10−7・cm・s・g−1)以上である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009532567A (ja) * 2006-04-10 2009-09-10 ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー 改質された吸収性樹脂を備える吸収性部材
EP2163266A1 (en) 2008-09-12 2010-03-17 The Procter & Gamble Absorbent article comprising water-absorbing material
JP2012236898A (ja) * 2011-05-11 2012-12-06 Sumitomo Seika Chem Co Ltd 吸水性樹脂、及びその製造方法
US8562862B2 (en) 2008-09-12 2013-10-22 Basf Se Water absorbing material

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