特許文献1に記載の発明は、土壌との併用であり、土壌の飛散の課題が残されている。特許文献2に記載の発明は、発泡板材の積層であり、植物が根を張るための適当な空隙の確保が課題として残されている。
特許文献3における1つの例は、大きな空隙率の発泡ガラス焼成体として、直径1〜10mm程度の粒状体としてこれを多数集合させて発泡焼成し、隣接する粒状の発泡体の間の空隙を植物の根の張る空間として利用しようとするものである。しかし、ここでは、粒状発泡体の間の空隙の大きさと、集合体の結合の強さが相反する。たとえば、発泡が強い条件の下では集合体の結合が強くなるが空隙は小さくなる。発泡が弱い条件の下では空隙は大きくなるが集合体の結合が弱くなる。2つ目の例は、発泡粒子を適当なブロックにまとめ、再焼成するものである。ここでは、一旦発泡焼成したものを再焼成するのであるから、集合体の結合が十分でないおそれがある。3つ目の例は、発泡粒子を粉砕し、再焼成するもので、ここでは一旦発泡焼成したものを粉砕して再焼成するので、再焼成時の発泡において空隙の大きさが十分でなく、また集合体の結合が十分でないおそれがある。
このように、土壌を用いないでガラス砕片を利用する緑化基盤材について、従来技術では、植物が根を張るための空隙の確保と、ガラス発泡体の結合の確保とについて課題が残されている。
本発明の目的は、植物が根を張るための空隙を確保し、ガラス発泡体の結合を確保することができるガラス砕片利用緑化基盤材の製造方法及びガラス砕片利用緑化基盤材を提供することである。
本発明に係るガラス砕片利用緑化基盤材の製造方法は、ガラス砕片を微粉に破砕してガラス微細粉とする粉砕工程と、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球として成形する未焼成造粒球形成工程と、未焼成造粒球を焼成して発泡させ、任意のかさ密度の空間調整球とする空間調整球形成工程と、複数の未焼成造粒球と、複数の空間調整球とを任意の混合率で混合し、焼成して、未焼成造粒球を発泡させると共に、発泡した造粒球と空間調整球とを結合させて、発泡小球が結合され積層された緑化基盤材とする結合工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係るガラス砕片利用緑化基盤材の製造方法は、ガラス砕片を微粉に破砕してガラス微細粉とする粉砕工程と、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球として成形する未焼成造粒球形成工程と、未焼成造粒球を焼成して発泡させ、任意のかさ密度の発泡小球とする発泡小球形成工程と、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成グリーンシートとして成形する未焼成グリーンシート形成工程と、未焼成グリーンシートの上に複数の発泡小球を配置して任意の積層数で積層し、焼成して、未焼成グリーンシートを発泡させると共に、発泡したグリーンシートと発泡小球とを結合させて、発泡小球が結合され積層された緑化基盤材とする結合工程と、を含むことを特徴とする。
また、ガラス砕片利用緑化基盤材の製造方法は、ガラス砕片を微粉に破砕してガラス微細粉とする粉砕工程と、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球として成形する未焼成造粒球形成工程と、未焼成造粒球を焼成して発泡させ、任意のかさ密度の空間調整球とする空間調整球形成工程と、ガラス微細粉と結合剤とを混合し、未焼成ガラス板として成形する未焼成ガラス板形成工程と、複数の未焼成造粒球と、複数の空間調整球とを任意の混合率で混合し、未焼成ガラス板の上に積層し、焼成して、未焼成造粒球を発泡させると共に、発泡した造粒球と空間調整球と未焼成ガラス板とを結合させて、未焼成ガラス板を焼成した防水性層の上に発泡小球が結合され積層された緑化基盤材とする結合工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係るガラス砕片利用緑化基盤材の製造方法は、ガラス砕片を微粉に破砕してガラス微細粉とする粉砕工程と、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球として成形する未焼成造粒球形成工程と、未焼成造粒球を焼成して発泡させ、任意のかさ密度の発泡小球とする発泡小球形成工程と、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成グリーンシートとして成形する未焼成グリーンシート形成工程と、ガラス微細粉と結合剤とを混合し、未焼成ガラス板として成形する未焼成ガラス板形成工程と、未焼成グリーンシートの上に複数の発泡小球を配置して任意の積層数で積層し、これを未焼成ガラス板の上にさらに積み、焼成して、未焼成グリーンシートを発泡させると共に、発泡したグリーンシートと発泡小球と未焼成ガラス板とを結合させて、未焼成ガラス板を焼成した防水性層の上に発泡小球が結合され積層された緑化基盤材とする結合工程と、を含むことを特徴とする。
また、空間調整球形成工程は、その後の結合工程における焼成条件の下での発泡率が1以下となるように、焼成条件が設定されることが好ましい。
また、結合工程は、未焼成造粒球と空間調整球の混合比は、質量比で、未焼成造粒球:空間調整球=1:1〜1:3とすることが好ましい。
また、本発明に係るガラス砕片利用緑化基盤材の製造方法において、発泡剤は、炭酸カルシウムであり、結合剤は、水ガラスであることが好ましい。
また、未焼成造粒球形成工程は、ガラス微細粉に対し、発泡剤が4%質量比〜10%質量比で混合され、結合剤として、水によって1%質量濃度〜10%質量濃度に希釈された水ガラスが用いられることが好ましい。
また、本発明に係るガラス砕片利用緑化基盤材の製造方法において、未焼成造粒球を焼成発泡させるために、未焼成造粒球をベルトに載せ、トンネル炉の中を通過させて加熱処理する装置を用いる場合には、トンネル炉の温度設定を、ガラスが軟化し始める温度を超え、かつガラスと発泡剤とが反応し始める温度を超える温度とすることを特徴とする。
また、本発明に係るガラス砕片利用緑化基盤材は、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合して焼成した発泡小球が結合され積層された緑化基盤材であって、発泡小球の体積に対する発泡小球の内部に吸水される水の体積の比を吸水率として、吸水率が異なる2種類の発泡小球が混合されて含まれることを特徴とする。
また、本発明に係るガラス砕片利用緑化基盤材において、吸水率の大きい通常発泡小球と、吸水率の小さい空間調整発泡小球との質量比が、通常発泡小球:空間調整発泡小球=1:1〜1:3であることが好ましい。
また、本発明に係るガラス砕片利用緑化基盤材において、吸水率が少なくとも3倍以上異なる2種類の発泡小球を含むことが好ましい。
上記構成の少なくとも1つにより、ガラス砕片を微粉に破砕したガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球を成形する。そして、未焼成造粒球を焼成して発泡させ、任意のかさ密度の空間調整球とする。この空間調整球と未焼成造粒球とを任意の混合率で混合し、焼成して、未焼成造粒球を発泡させると共に、発泡した造粒球と空間調整球とを結合させる。ここでは、焼成された空間調整球が後の結合工程で発泡した造粒球が互いに結合することを抑制して、適当な空隙を確保する機能を果たすことができ、一方で、後の結合工程で発泡した造粒球は、空間調整球との間に入って、空間調整球同士を結合する機能を果たすことができる。これによって、植物が根を張るための植物が根を張るための空隙を確保し、ガラス発泡体である空間調整球、及び後の結合工程で発泡した造粒球との間の結合を確保することができる。
また、上記構成の少なくとも1つにより、ガラス砕片を微粉に破砕したガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球を成形する。そして、未焼成造粒球を焼成して発泡させ、任意のかさ密度の発泡小球とする。一方で、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し未焼成グリーンシートを形成する。この未焼成グリーンシートの上に発泡小球を配置し任意の積層数で積層し、焼成して、未焼成グリーンシートを発泡させると共に、発泡したグリーンシートと発泡小球とを結合させる。ここでは、焼成された発泡小球が後の結合工程で発泡したグリーンシートが互いに結合することを抑制して、適当な空隙を確保する機能を果たすことができ、一方で、後の結合工程で発泡したグリーンシートは、発泡小球との間に入って、発泡小球同士を結合する機能を果たすことができる。これによって、植物が根を張るための空隙を確保し、ガラス発泡体の間、すなわち、発泡小球、及び後の結合工程で発泡したグリーンシートとの間の結合を確保することができる。
また、上記構成の少なくとも1つにより、ガラス砕片を微粉に破砕したガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球を成形する。そして、未焼成造粒球を焼成して発泡させ、任意のかさ密度の空間調整球とする。また、ガラス微細粉と結合剤とを混合し、未焼成ガラス板を成形する。この空間調整球と未焼成造粒球とを任意の混合率で混合し、未焼成ガラス板の上に積層し、焼成して、未焼成造粒球を発泡させると共に、発泡した造粒球と空間調整球と未焼成ガラス板とを結合させる。これによって、植物が根を張るための空隙を確保し、空間調整球、及び後の結合工程で発泡した造粒球との間の結合を確保することができる。また、未焼成ガラス板は、結合工程によって焼成ガラス板となり、緑化基盤材として水が注がれたときの防水性を向上させることができる。
また、上記構成の少なくとも1つにより、ガラス砕片を微粉に破砕したガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球を成形する。そして、未焼成造粒球を焼成して発泡させ、任意のかさ密度の発泡小球とする。一方で、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し未焼成グリーンシートを形成する。また、ガラス微細粉と結合剤とを混合し、未焼成ガラス板として成形する。この未焼成グリーンシートの上に複数の発泡小球を配置して任意の積層数で積層し、これを未焼成ガラス板の上にさらに積み、焼成して、未焼成グリーンシートを発泡させると共に、発泡したグリーンシートと発泡小球と未焼成ガラス板とを結合させる。ここでは、焼成された発泡小球が後の結合工程で発泡したグリーンシートが互いに結合することを抑制して、適当な空隙を確保する機能を果たすことができ、一方で、後の結合工程で発泡したグリーンシートは、発泡小球との間に入って、発泡小球同士を結合する機能を果たすことができる。これによって、植物が根を張るための空隙を確保し、発泡小球、及び後の結合工程で発泡したグリーンシートとの間の結合を確保することができる。また、未焼成ガラス板は、結合工程によって焼成ガラス板となり、緑化基盤材として水が注がれたときの防水性を向上させることができる。
また、空間調整球形成工程は、その後の結合工程における焼成条件の下での発泡率が1以下となるように、焼成条件が設定されるので、空間調整球は、後の結合工程で実質上発泡せず、後の結合工程で発砲した造粒球が互いに結合することを効果的に抑制でき、これによって適当な空隙を確保することができる。
また、結合工程は、未焼成造粒球と空間調整球の混合比は、質量比で、未焼成造粒球:空間調整球=1:1〜1:3とする。空間調整球は、すでに発泡して空隙をその内部等に有しているので、この体積比を大きくとりすぎると、後の結合工程での加熱の際に熱伝導が低くなり、未焼成造粒球の発泡が抑制される。一方でこの体積比を小さくとると、適当な間隙を確保できない。質量比を1:1〜1:3、好ましくは1:2とすることで、適当な発泡と適当な間隙を確保できる。
また、発泡剤を炭酸カルシウムとし、結合剤を水ガラスとするので、公知の材料を用いて、植物が根を張るための空隙を確保し、ガラス発泡体の結合を確保することができるガラス砕片利用緑化基盤材を得ることができる。
また、発泡剤はガラス微細粉に対し4%質量比〜10%質量比で混合され、結合剤は、水によって1%質量濃度〜10%質量濃度に希釈された水ガラスが用いられる。これらの条件によって、焼成時において、ガラスが軟化した粘性及び表面張力と、発泡剤からの発泡ガスの圧力とのバランスをとって、ガラスを効果的に膨らませ発泡させることができる。
また、未焼成造粒球を焼成発泡させるために、未焼成造粒球をベルトに載せ、トンネル炉の中を通過させて加熱処理する装置を用いる場合には、トンネル炉の温度設定を、ガラスが軟化し始める温度を超え、かつガラスと発泡剤とが反応し始める温度を超える温度とする。これにより、ガラスが軟化し始める温度と、ガラスと発泡剤とが反応し始める温度との間の温度範囲を短時間で通過でき、発泡反応を安定して行わせることができる。
また、上記構成の少なくとも1つにより、吸水率が異なる2種類の発泡小球が混合されて含まれる。また、吸水率の大きい通常発泡小球と、吸水率の小さい空間調整発泡小球との質量比が、通常発泡小球:空間調整発泡小球=1:1〜1:3、好ましくは1:2である。また、吸水率が少なくとも3倍以上異なる2種類の発泡小球を含む。これらは、同じ材質であっても、焼成工程の履歴の異なる発泡小球が混合されていることを示している。
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態に付き、詳細に説明する。以下において、「球」とは、広義の意味で用い、小さな塊を意味する。したがって、丸い球形以外に、丸みを帯びた塊、直方体状の塊等も含む。また、以下で示す寸法、数値等は、説明のための例示であって、緑化基盤材の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、緑化基盤材の利用形態として、水が漏れないように周壁を防水処理し、フレームにほぼ水平に保持されるものを説明するが、これ以外の形態で利用してもよい。例えば、周壁を防水処理せず、適当に排水するものとしてもよく、また縦壁材として用いてもよい。
図1は、緑化基盤材20の構造と、それが利用される形態を説明する図である。緑化基盤材20は、およそ50mm×50mm×10mm程度の大きさのブロックで、底面がガラス微細粉を水ガラスとともに焼成した焼成ガラス板22で、その上にガラス発泡体が積層された発泡小球積層体24が一体となって配置されたものである。なお、緑化基盤材20の周壁には、防水処理として漆喰28を塗ることが好ましい。なお、ブロックの上記の大きさは、評価等に適したものであるが、ある程度の広さの屋上緑化等に用いるには、さらに大きいブロックのほうが取り扱いやすい。そのような場合には、ブロックの大きさを、例えば300mm角程度、厚さを数cmのものとすることができる。もちろん用途にあわせ、適当な大きさ、形状のブロックとしてもよい。
発泡小球積層体24は、焼成履歴の異なる2種類の発泡小球26,27が結合されて積層されたものである。2種類の発泡小球26,27は、焼成履歴の相違から吸水率が異なり、吸水率の高い発泡小球を通常発泡小球26として、吸水率の低い発泡小球は通常発泡小球26に対し、適当な間隙を保ちながら相互に結合させる機能を有するので、空間調整発泡小球又は単に空間調整球27と呼ぶことができる。通常発泡小球26も空間調整球27も、ともにガラス微細粉と、発泡剤と、水を含む結合剤とを混合して発泡焼成されたもので、最初にガラス微細粉と、発泡剤と、水を含む結合剤とを混合して未焼成造粒球をつくり、これを焼成して空間調整球27を形成し、つぎに、この1度焼成履歴を経た空間調整球27と、未焼成造粒球を混合して焼成する。この2度目の焼成で、未焼成造粒球は発泡して1度の焼成履歴を受けた通常発泡小球26となり、空間調整球27は2度の焼成履歴を受けることになる。
このように、2種類の発泡小球にそれぞれ焼成履歴を異ならせたのは、2度目の焼成において、すでに焼成を受けた空間調整球27があまり発泡せず、通常発泡小球26に対し適当な空隙を確保するように機能させるためである。発泡小球の間のこの適当な空隙は、植物の根を張らすのに好適である。また、通常発泡小球26は、2度目の焼成で初めて加熱され、発泡剤の作用により発泡すると共に、結合剤の作用により、空間調整球27と通常発泡小球26とが相互に結合される。したがって、2種類の発泡小球にそれぞれ焼成履歴を異ならせて積層焼成することで、植物が根を張るための空隙を確保し、ガラス発泡体の結合を確保する発泡小球積層体24を得ることができる。
2種類の焼成履歴を異なる発泡体を用いるのは、上記のように適当な空隙の確保と、発泡体の間の適当な結合の確保のためであるので、2種類の発泡小球の組み合わせの他に、2度の焼成履歴を受ける発泡小球と、1度の焼成履歴を受ける発泡性グリーンシートとの組み合わせでもよい。すなわち、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成造粒球として成形し、これを焼成して発泡させ、任意のかさ密度の発泡小球とし、一方ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合し、未焼成グリーンシートとして成形する。そして、未焼成グリーンシートの上に複数の発泡小球を配置して任意の積層数で積層し、焼成して、未焼成グリーンシートを発泡させると共に、発泡したグリーンシートと発泡小球とを結合させて、発泡小球が結合され積層された緑化基盤材とすることができる。
焼成ガラス板22は、ガラス微細粉と、水を含む結合剤としての水ガラス希釈水とを混合して焼成したものである。この焼成は、発泡小球積層体24の2度目の焼成工程の中で兼ねることができる。
緑化基盤材20は、屋上緑化等の目的に合わせた大きさに適合するように複数個が組み合わされて、集合ブロック18とされ、フレーム10に収められる。フレーム10は、適当な材料で作られる筐体12と、集合ブロック18の底面を適当に支持する支持棒14を含んで構成することができる。図1の例では、緑化基盤材20が4×4=16組み合わされた集合ブロック18がフレーム10に収められる様子が示されている。
かかる構成の緑化基盤材20は、廃ガラスを原材料として作ることができる。以下に、図2に示すフローチャートに従って、ガラス砕片利用の緑化基盤材の製造方法、および各工程における製造条件の設定について詳細に説明する。
ガラス砕片利用の緑化基盤材の製造方法については、ガラス瓶の回収(S10)から未焼成造粒球成形(S22)までの前半工程と、それ以後における各工程、すなわち、焼成して空間調整球形成(S24)から緑化基盤材形成(S32)を経てフレーム内配置(S34)までの後半工程とに分けて説明する。前半工程は、主に、未焼成造粒球を形成するためのガラス微細粉、発泡剤、結合剤等の設定条件をどのようにして定めるかを説明する。後半工程は、主に、植物が根を張るための空隙と、ガラス発泡体の結合を確保するために、発泡小球をどのように積層結合するかを説明する。
最初に、前半工程を説明する。前半工程は、ガラス瓶の回収(S10)、ガラス瓶の破砕(S12)、さらなる微粉砕(S14)、ガラス微細粉のふるい分け(S16)、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤とを混合(S18)、混合物の平板状成形(S20)、これを小さな塊とする未焼成造粒球成形(S22)の各工程を含む。
最初の工程は、ガラス瓶の回収である(S10)。日常生活で多く使用されるガラス瓶の回収処理は、いくつかのルートに分かれて行われる。1つは、空き瓶を洗浄等の適当な処理を行い、そのまま再び使用される。他の1つは、空き瓶を破砕し、再溶融し、ガラス原料として、別のガラス瓶として成形されて使用される。これら2つの再使用に適さないガラス瓶は、適当に破砕され、廃棄処理場において埋め立てられる。再使用に適さないガラス瓶は、例えば着色瓶である。着色瓶には、着色のために微量元素が添加され、この微量元素の分離にコストがかかるため、再溶融して一般的なガラス材料に戻すことができない。わが国では、年間およそ100万トンの着色ガラス瓶が再利用できずに埋め立てられているといわれている。
これら着色ガラス瓶の着色用元素は、緑色のための酸化クロム、赤色のためのマンガン、青色のための銅、茶色のための酸化鉄等で、ごく微量含まれる。これらの着色用元素の他、外国製着色ガラス瓶等においては、融点を下げる触媒としての砒素等が含まれることがある。したがって、着色ガラス瓶を緑化基盤材の原料として利用するには、これら元素の有害性を考慮する必要がある。実際に着色ガラス瓶を破砕し、元素溶出テストを実施してみると、溶出元素の濃度は、わが国及び各都道府県の排出基準をはるかに下回る微量であることが分かっている。また、一度吸水・洗浄を行うと、以後はほとんど溶出しないことも明らかにされているので、着色ガラス瓶を緑化基盤材の原料をして十分利用することができる。そこで、緑化基盤材の製造は、まずガラス瓶の回収から始まる。ここでは、茶色、透明、緑色等のガラス瓶を用いることができる。
回収されたガラス瓶は、破砕される(S12)。破砕はハンマー等の適当な工具で行うことができ、4mm程度の破砕片とされる。このようにガラス瓶を破砕したものは、カレット等と呼ばれる。カレットは、さらに微細に粉砕され、ガラス微細粉とされる(S14)。微細粉にするには、石臼で轢いて粉末にした後、さらにボールミルを用いて均一な形状及び寸法とすることが望ましい。微細粉は、適当なメッシュフィルタにかけられ、メッシュを通らない粗いガラス粉末が取り除かれる。図3は、同じメッシュのふるいをかけた後の微細粉の様子を示す模式図で、(a)が石臼のみの粉末加工を行ったもので、(b)は石臼加工の後、さらにボールミル加工を加えたものである。メッシュは、いずれも16μmである。図3に示されるように、同じメッシュを通した微細粉でも、石臼加工の後さらにボールミルをかけたものの方が、寸法も形状も揃っている。
図4は、同じメッシュを通した微細粉について、その状態でのかさ密度を比較したものである。かさ密度とは、質量を体積で除したもので、一般的な密度と同じ次元を有する特性値である。粉末においては、形状や寸法が揃っているほど、かさ密度が大きくなる。図4では、16μmのメッシュを通した微細粉について、石臼加工のみの場合と、石臼加工とボールミル加工を加えた場合が示されている。図4から、石臼加工にさらにボールミル加工を行う方が、かさ密度が大きいことが分かる。したがって、以後においては、特に断らない限り、ガラス微細粉として、石臼加工とボールミル加工を加えたものをいうことにする。
図5は、ガラス微細粉に発泡剤と結合剤とを加え、発泡焼成した後の発泡小球におけるかさ密度を示し、図6は、そのときの発泡率を示す図である。発泡率は、発泡焼成前の体積で発泡焼成後の体積を除して得られる特性値である。図5、図6において、横軸は発泡焼成の時間であり、パラメータは、ガラス微細粉をふるい分けるメッシュフィルタのサイズである。発泡剤と結合剤の条件はいずれも同じとしてある。図5、図6から、メッシュサイズを最も細かい16μmとするガラス微細粉を用いて焼成したものが、発泡焼成温度800℃、850℃のいずれにおいても、かさ密度が最も高く、発泡率が低いことが分かる。一般的にガラス微細粉は細かければ細かいほどよい、といわれているが、ガラス微細粉が細かくなると発泡剤を均一に攪拌することが困難となることがあり、このため、図6のように、最も細かい微細粉のものが発泡率の低い結果となったものと考えることができる。メッシュサイズ30μm、50μmのものは、微細粉の大きさと焼成温度との関係がかさ密度と発泡率に及ぼす影響が一様ではない。このように、発泡焼成における発泡については、ガラス微細粉のメッシュサイズは、一概に細かいほどよいとも言い切れない。したがって、メッシュサイズが50μm以下であれば、焼成発泡における発泡に大きな差がないと考え、以後においては、特に断らない限り、ガラス微細粉として、石臼加工とボールミル加工を加え、50μm以下のメッシュでそろえたものをいうことにする。
メッシュフィルタ等でふるいにかけられたガラス微細粉は、発泡剤と、水を含む結合剤と共に混合される(S18)。発泡剤と結合剤の条件を出すには、その後の発泡焼成の温度を、評価用に決めておく必要がある。図7は、発泡焼成後のかさ密度と焼成条件の関係を示す図である。ここでは、ガラス微細粉、発泡剤、結合剤の条件は同じとしてある。図7は、横軸に発泡焼成時間をとり、パラメータは焼成温度である。図7には、焼成温度が800℃より850℃の方がかさ密度が低くなるが、900℃ではかえってかさ密度が高くなることが示されている。これは、900℃においてはガラスの軟化速度も速くなり、粘度も低下するので、発泡時においてガラスの粘度や表面張力に発泡ガスの圧力が早くに打ち勝ってしまい、発泡が進み、かさ密度が低下するものと考えられる。したがって、以下では、特に断らない限り、発泡焼成温度は850℃又は800℃とする。
発泡剤としては、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、タルク等を用いることができるが、ここでは炭酸カルシウムを使用する。
図8は、発泡焼成におけるかさ密度に及ぼす炭酸カルシウムの効果を示す図である。(a)は発泡焼成温度を800℃、(b)は発泡焼成温度を850℃として、横軸に発泡焼成時間をとり、パラメータとして炭酸カルシウムの配合割合を示した。炭酸カルシウムの配合割合は、ガラス微細粉に対する質量%で表わしてある。図8の結果からは、炭酸カルシウムが3%質量比のものは、発泡剤の配合が少ないことから、かさ密度が高く、発泡球のふくらみが十分でないことが分かる。炭酸カルシウムの質量比を増すと、かさ密度は低くなるが、焼成時間が3〜5分においてはほとんど変化しない。このことから、炭酸カルシウムの配合割合の効果は、ガラス微細粉に対し5%質量比で飽和するものと考えられる。したがって、炭酸カルシウムの配合割合は4%質量比から10%質量比の範囲、好ましくは5%質量比とし、以下では、特に断らない限り、発泡剤としての炭酸カルシウムの配合割合は、ガラス微細粉に対し、5%質量比とする。また、図5から図7までにおける実験の発泡剤は、炭酸カルシウムの配合割合を、ガラス微細粉に対し、5%質量比としたものである。
結合剤としては、Na2Oを含む水ガラスを水に希釈したものを用いることができる。ガラス微細粉に対する結合剤の配合割合は、適当に練れる程度であればよく、例えば、ガラス微細粉に対し、30%質量比から40%質量比の範囲、好ましくは35%質量比とすることができる。したがって、上記の発泡剤の配合割合との関係もまとめると、混合物の質量組成は、ガラス微細粉100に対し、発泡剤を4から10の範囲、好ましくは5、水ガラスを30から40の範囲、好ましくは35で配合されたものである。
図9は、発泡焼成におけるかさ密度に及ぼす水ガラスの濃度の効果を示す図である。図9では、発泡焼成温度を850℃とし、横軸に発泡焼成時間をとり、パラメータとして水ガラスの濃度を示した。水ガラスの濃度は、水に対する希釈割合を質量%で示してある。図9の結果から、水ガラス濃度は1%〜10%質量濃度の間での変化は、発泡焼成におけるかさ密度にはほとんど影響しないことが分かる。したがって、水ガラスは1%質量濃度から10%質量濃度の範囲、好ましくは1%質量濃度とし、以下では、特に断らない限り、結合剤としての水ガラスの濃度は、水によって1%質量濃度で希釈されたものとする。また、図5から図8までにおける実験の結合剤は、水ガラスの1%質量濃度のものである。
次に、ガラス微細粉に発泡剤と結合剤を加えて混合し、これを加熱処理することで発泡するメカニズムについて一定の知見を得たので、図10から図13を用いてそれを説明する。
図10は、発泡剤も結合剤も共に用いず、ガラス微細粉のみを加熱し、かさ密度及び発泡率における加熱温度の効果を調べた結果である。ここで加熱時間は60分とした。図11は、ガラス微細粉に、発泡剤として炭酸カルシウムを5%質量比、結合剤として水によって1%質量比に希釈された水ガラスを混合して加熱し、かさ密度及び発泡率における加熱温度の効果を調べた結果である。ここでも加熱時間は60分とした。
図10の結果から、ガラス微細粉は、600℃付近から徐々に収縮しはじめ、650℃でほぼ飽和状態で収縮を終え、破砕前の元のガラスのように焼結されることが分かる。また、図11の結果から、発泡剤を混ぜて加熱焼成したガラスは、ガラスのみの場合と同様に600℃付近から収縮し始め、650℃付近で飽和するが、670℃付近で発泡が生じ、かさ密度が低くなることが分かる。
図12は、炭酸カルシウム単体を加熱したときの反応を見るために、炭酸カルシウム(CaCO3)のX線回折強度と、炭酸カルシウムが熱分解して生成される酸化カルシウム(CaO)のX線回折強度とを調べた結果を示す図である。なお、X線回折強度は、炭酸カルシウムについて211面(2θ=29.4°)、酸化カルシウムについて200面(2θ=37.1°)について測定した。図12の結果からは、およそ700℃付近から発泡剤である炭酸カルシウムの熱分解が始まることが分かる。炭酸カルシウムの熱分解によって発泡ガスであるCO2が生じる。しかし、この結果からは、図11の670℃付近で発泡が生じることを説明できない。
図13は、ガラス微細粉と炭酸カルシウムとを1:1で混合したものを加熱し、そのときの炭酸カルシウムと酸化カルシウムのX線回折強度とを調べた結果を示す図である。X線回折強度の測定に用いた回折面は図12の場合と同じである。図13の結果からは、660℃から670℃の間で炭酸カルシウムのX線回折強度がおよそ半分に減少しており、炭酸カルシウムの反応が生じていることが分かる。この反応は、図12の結果と合わせると、ガラス微細粉と炭酸カルシウムとの間の反応と考えられる。具体的には、CaCO3+SiO2=CaO・SiO2+CO2の反応が生じているものと考えられる。この反応で生じるCO2は、発泡ガスとして寄与する。
したがって、ガラス微細粉と炭酸カルシウムを混合したものは、炭酸カルシウム単体の熱分解温度より低い温度でガラス微細粉と炭酸カルシウムとの反応が生じる。図14は、ガラス微細粉と炭酸カルシウムを混合したものを500℃から800℃の各温度でそれぞれ60分加熱し、その後、それぞれを再び800℃で60分加熱し、その再加熱においてかさ密度がどのように変化するかを調べた結果を示す図である。図14の結果からは、ガラス微細粉が軟化し始める600℃付近より若干高めの620℃付近から、図13で推測されるガラス微細粉と炭酸カルシウムとの反応が生じる660℃付近までの間の温度で長時間加熱したものは、かさ密度が高いことが分かる。すなわち、620℃から660℃の範囲で長時間加熱すると、その後の高温の長時間加熱によっても発泡が生じない。このことは、ガラス微細粉が軟化する温度より高く、ガラス微細粉と炭酸カルシウムとが反応する温度より低い温度範囲で長時間加熱すると、その間に、ガラス微細粉の−O−Si−O−の結合力が増すためと考えられる。すなわち、この結合力が増すため、再度高温で長時間加熱しても、発泡ガスの圧力よりもガラスの結合力が強く、発泡が閉じ込められてしまうものと考えることができる。結合剤に水ガラスを添加することも、この関係を強化することに寄与すると考えられる。
以上の図10から図14の結果から、ガラス微細粉と炭酸カルシウムとを混合し、加熱するときの発泡のメカニズムは次のように考えられる。すなわち、600℃付近でガラスが軟化し始め、発泡剤である炭酸カルシウムを取り込み、取り込まれた炭酸カルシウムと軟化したガラスが660℃付近で反応し、反応した発泡ガスが温度上昇と共に体積増大し、軟化したガラスの粘度や表面張力に打ち勝って膨らみ、発泡すると考えられる。この反応モデルでは、図14で説明したように、ガラスが軟化し始める600℃からガラスと炭酸カルシウムが反応し始める660℃までの温度範囲で長時間加熱すると、再加熱しても、かさ密度を下げることができないので、この温度範囲での長時間加熱を避けることが必要である。
上記のように、未焼成造粒球を焼成発泡させる際に、ガラスが軟化し始める600℃からガラスと発泡剤とが反応し始める660℃までの温度範囲を短時間で通過させることが好ましいことが分かった。これを実現するため、次のようにすることができる。未焼成造粒球を、固定の熱処理炉で加熱処理する場合には、上記温度範囲における温度上昇を速くし、所定の時間内にこの温度範囲を通過するように設定する。所定の通過時間としては、例えば1分から3分とすることができる。また、未焼成造粒球をベルトに載せ、トンネル炉の中を通過させて加熱処理する場合には、トンネル炉の温度設定を上記温度範囲以上として、その温度設定の雰囲気の中を未焼成造粒球がベルトに載って通過するものとすることができる。これにより、未焼成造粒球は、ベルトに載って加熱される際、急速に設置温度まで上昇するので、上記温度範囲を短時間で通過することができる。
以上で、発泡剤と結合剤の効果についての一連の実験の結果に基づく条件設定の説明を行ったので、再び図2に戻る。ガラス微細粉と発泡剤と結合剤を所定の設定条件で混合するS18の工程の後は、平板状に成形する(S20)。上記のように結合剤は水で希釈された水ガラスであるので、混合物は、水を含む流動体である。これを適当な大きさの枠に入れ、上部から板を載せて適当に加圧し、平板状に成形する。例えば、53mm×53mm×3mm程度の枠を用いて、その大きさの平板状に成形する。成形したものは適度な軟らかさを有しており、これを適当な大きさに分けて、未焼成造粒球として成形する(S22)。
その様子を図15に示す。ここでは、枠30に、ガラス微細粉と発泡剤と結合剤の混合物32が詰められ、適当に加圧され成形されて取り出され、平板状成形体34が得られる。平板状成形体34に対し、適当なピッチで複数の刃が平行配置された押切具36を押し当て、まず、一方向に平行な複数の切り溝が付けられた第1中間体38を作る。中間体38を90°回転した状態のもの39に、先ほどの切り溝に直角方向に、平行な複数の切り溝をつけて、格子状に切り溝が付けられた第2中間体40を作る。第2中間体40は、押切具36の平行な刃のピッチを一辺の長さとする正方形断面の塊であり、これを未焼成造粒球とする。図16は、未焼成造粒球50の様子を示す図である。未焼成造粒球50の大きさは、この例では、3mm×3mm×3mmの立方体である。もちろん、これ以外の寸法に成形することもできる。
以上で前半工程の説明を行ったので、次に後半工程の説明に入る。後半工程は、未焼成造粒球を焼成して空間調整球を形成する工程(S24)、これと平行して未焼成ガラス板を形成する工程(S26)、そして未焼成造粒球と、空間調整球とを混合し、未焼成ガラス板の上に積層する工程(S28)、これらを結合焼成する工程(S30)、これによって緑化基盤材を得て(S32)、フレーム内に配置する工程を含む(S34)。後半工程の説明においては、S28の工程を行うに至った一連の実験の内容の説明をまず行う。
前半工程において成形された未焼結造粒球を単体で800℃又は850℃で加熱処理すれば、上記で説明したようなメカニズムで発泡反応が生じ、発泡小球を得ることができる。発泡小球自体はその表面の発泡穴等によって適当な保水性を有するので、適当な容器に発泡小球を複数配置し、これを屋上緑化に役立てることができる。しかしながら、発泡小球単体はそのままでは結合していないので、取り扱いが不便であり、また、ばらばらの発泡小球の間に植物が根をしっかり張ることも困難である。そこで、複数の発泡体を積層し、これらを適当な空隙を持たせて結合することが望ましい。そこで、以下において、複数の発泡体を積層して結合するいくつかの方法の検討結果について説明する。
複数の発泡体を積層して結合するために従来から知られている第1の方法は、未焼結造粒球を適当に積層し、これを加熱して発泡焼結するものである。積層された未焼成造粒球が焼成工程でどのように発泡するかを、模式的に図17から図20に示す。図17は、未焼成造粒球を適当に複数積層し、大気炉において800℃で5分加熱したときの様子を示すもので、(a)は上面図、(b)は断面図、(c)は側面図である。同様に、図18は、800℃で10分加熱、図19は800℃で30分加熱、図20は800℃で60分加熱したときの様子で、それぞれ(a)は上面図、(b)は断面図を示す。
これらの焼成条件の下における発泡及び結合の様子を調べた結果は以下の通りである。焼成時間が5分の場合は、図17に示されるように、造粒球同士が結合しておらず、また各造粒球も単体で800℃5分加熱した場合に比べて発泡が不十分であった。図18における焼成時間が10分の場合は、造粒球同士は結合しているが、積層体全体の表面はその結合によって隙間が埋められてくる。その結果、全体が1つの発泡球のようになって、積層体内部に発泡ガス等が溜り、図18(b)に示されるように、内部に大きな空洞が生成される。図19における焼成時間が30分も同様の傾向であり、図20における焼成時間が60分となると、積層体全体が完全に1つの発泡体となってくる。
このように、未焼成造粒球のみを積層して焼成する場合においては、焼成時間が短いと図17に示すように造粒球同士の結合も発泡も不十分で、焼成時間が長いと、図18と図19に示すように、造粒球同士が結合して塊となり、積層体の内部には空洞が生じるが、その表面に植物が根を張るための空隙が形成されない。さらに焼成時間が長くなると図20のように積層体が1つの発泡体の塊となってしまう。したがって、未焼成造粒球のみを積層して焼成するいずれの場合においても、そのままでは緑化基盤材として用いることが困難である。
従来技術で検討されている第2の方法は、未焼成造粒球を単体で発泡焼成した発泡小球を積層し、再度加熱するものである。そこで、未焼成造粒球の単体を850℃で発泡焼成し、得られた発泡小球を積層し、再び800℃で加熱した。図21は、その様子を示す図である。図21(a)は、未焼成造粒球の単体を850℃4分で発泡焼成し、得られた発泡小球を積層し、再び800℃30分で加熱した場合、(b)は未焼成造粒球の単体処理を850℃5分とした場合における状態を上面図で示したものである。いずれの場合も、発泡小球同士は結合するが、その結合は弱いもので、すぐ脱落、剥がれが生じる。すなわち、再焼成したものは、結合力が弱い。
図22は、再焼成したものの結合力が弱いことを考察するために行った実験の結果を示すものである。ここでは、発泡焼成温度を850℃として焼成時間を2分から7分まで変化させて得られた発泡小球を、それぞれ一度粉砕し、再び800℃で40分加熱したものについて、密着強度を示す最大曲げ応力と、炭酸カルシウムの211面におけるX線回折強度とを調べたものである。図22の結果からは、最初の発泡焼成の時間が進むにつれ、炭酸カルシウムの反応も進み、これに応じ、再度の加熱後の密着強度が低下していくことが分かる。これは、ガラス微細粉に含まれるNa2OとCaOについて、これらがガラス製造時には融剤として作用し、その働きはNa2Oの方が大きく、Na2OがCaOと置き換わることで温度特性と耐熱性を向上させ、ガラス自身の強度も向上させることが知られていることから、次のように考えることができる。すなわち、炭酸カルシウムを混ぜて一度発泡焼成した発泡小球自体は高強度であるが、再びそれを再加熱する場合には、CaOの軟化温度と耐熱性が低いことから、密着強度が低下するものと考えられる。したがって、一度焼成した発泡小球を積層して再加熱する方法では、結合強度が不十分となるので、そのままで緑化基盤材として用いると不便である。
このように、従来技術の方法で発泡小球の積層を試みても十分ではない。そこで、図2のS24に示されるように、未焼成造粒球を単体で発泡焼成して空間調整球を形成し、S28に示されるように、複数の空間調整球と、別途成形しておいた複数の未焼成造粒球とを適当に積層し、この積層体を加熱して結合することを試みた。ここで、空間調整球とは、少なくとも2度焼成工程履歴を受けることになる発泡小球のことで、図21、図22で説明したように、2度目以降の焼成によっては、それらの間での発泡に伴う結合が強くなく、むしろ、体積変化も少なく、全面的溶融をしないことから、発泡球の間の空隙を維持する機能が期待されるものである。空間調整球との名称は、この発泡球の間の空隙空間を維持する機能を表している。
図23は、未焼成造粒球を単体で発泡焼成して形成した空間調整球と、別途成形しておいた未焼成造粒球とを、質量比で1:1としてそれぞれ複数個を混合し、積層し、さらに加熱したときの様子を示す模式図である。空間調整球の焼成は、850℃4分でおこない、空間調整球と未焼成造粒球とを積層しての加熱は800℃で、加熱時間は、図23(a)が10分、(b)が30分、(c)が60分である。これらの図は、積層加熱後における断面図である。
図23に示されるように、この場合には、加熱時間によらず、それぞれの球同士が結合し、積層体全体が膨らむこともなく、未焼成造粒球が膨らみ、空間調整球は体積変化をせず、むしろ収縮し、球と球との間に空隙が確保されている。したがって、空間調整球と未焼成造粒球とを混合して、加熱焼成することで、適当な空隙の確保と、球同士の適当な結合が得られることが分かる。
図24は、未焼成造粒球と空間調整球の混合比を変えて、空隙と結合の様子を調べた結果を示す図である。図24(a)は、未焼成造粒球:空間調整球=1:1、(b)は、未焼成造粒球:空間調整球=1:2、(c)は、未焼成造粒球:空間調整球=1:3で、これらの図はいずれも、混合積層後、800℃30分加熱した後の側面図である。
未焼成造粒球:空間調整球を混合比として、混合比=1:1の場合は、未焼成造粒球の割合が多く、発泡の塊が見られ、そこの部分については、図18から図20に関連して説明したように、未焼成造粒球のみを積層して発泡の塊が生じる場合に似ている。混合比=1:3の場合は、未焼成造粒球の割合が少ないために、空間調整球のみで積層する部分があり、その部分で発泡球が数個剥がれ落ちることがあった。混合比=1:2の場合は、未焼成造粒球と空間調整球とがある程度均一にまざっており、球が剥がれ落ちることもなく、未焼成造粒球同士による発泡の塊もほとんどなかった。したがって、混合比は、1:1〜1:3とするが、好ましくは1:2がよい。
図25は、混合比が積層体の内部の熱伝導に及ぼす効果を示す図である。ここでは次のような実験を行った。すなわち、50mm×50mm×40mmの適当な容器に、(a)未焼成造粒球のみ、(b)空間調整球のみ、(c)質量比において、未焼成造粒球:空間調整球=1:1、で積層し、発泡が生じない約500℃の雰囲気の大気炉の中に置き、それぞれについて積層体の内部に熱電対を挿入し、その温度を測定した。
図25に示されるように、積層体の中心の温度が大気炉の雰囲気温度に到達する時間が最も短いのは、空間調整球のみの場合で、未焼成造粒球の混合される割合が増えるにつれ、温度の立ち上がりが遅くなる。これは、未焼成造粒球をいれるにつれて、球と球との間の隙間が少なくなり、空気の対流による熱伝導が起こりにくくなっているものと考えられる。したがって、混合比は、あまり大きくしないほうが好ましいことが分かる。
空間調整球は、上記のように、未焼成造粒球を焼成したものであり、この焼成工程で発泡するが、その後に、未焼成造粒球が混合されて再び加熱される。この再加熱工程は、混合された未焼成造粒球が発泡し、空間調整球を介して相互に結合されるので、結合焼成工程と呼ぶことができる。そして、空間調整球は、適当な空隙を確保する機能を担うものであるので、結合焼成工程において、発泡があまり起こらないように、すなわち、結合焼成工程を経ても、その形状があまり変化しないことが望ましい。結合焼成工程の条件は、未焼成造粒球の発泡性が優先されるので、むしろ、未焼成造粒球から空間調整球を形成する1回目の焼成条件が、以後の結合焼成工程によって空間調整球があまり発泡しないように、設定されることが望ましい。
図26は、結合焼成工程の条件を同一にして、未焼成造粒球から空間調整球を形成するときの焼成条件を変化させた場合の結果を示す図である。図26(a)は空間調整球を形成する焼成温度を800℃、(b)は、その温度を850℃にした場合で、それぞれにおいて横軸は空間調整球形成のための焼成時間をとり、縦軸は、結合焼成工程の後における発泡率及びかさ密度である。なお、ここで、結合焼成条件を模擬する再加熱条件は、800℃60分とした。
空間調整球は、その担っている機能からいえば、結合焼成工程の再加熱において、発泡せずに体積をほぼ一定のまま維持されるか、あるいは収縮することが好ましい。したがって、図26において発泡率が1以下となる点に注目すると、焼成温度が850℃、焼成時間が3〜4分程度が好ましいことが分かる。したがって、以下では、特に断らない限り、空間調整球の焼成条件は、850℃3分とする。
空間調整球は、発泡焼成された後に再加熱されるので、その前後で吸水率が変化する。ここで、吸水率とは、発泡小球の体積に対する発泡小球の内部に吸水される水の体積の比である。図27はその様子を示す図である。ここでは、再加熱を行う前の空間調整球と、800℃60分の再加熱を行った後の空間調整球とについて、それぞれを、水の中に7日間浸漬して吸水率を測定した。なお、ここでは原材料であるガラス瓶の着色による差についても比較してある。図27に示すように、いずれの色のガラス微細粉の原料を用いても、再加熱前後の吸水率は、6倍程度の相違が認められる。
上記のように、未焼成造粒球と空間調整球とを混合し、適当に積層して結合焼成することで、適当な空隙と、適当な結合とを有する発泡小球積層体が得られるが、この場合に、未焼成造粒球は1度の加熱履歴を受け、空間調整球は2度の加熱履歴を受ける。したがって、これらの間に吸水率の相違が生じる。図27において、空間調整球の形成条件は再加熱条件と異なっているので、再加熱前の空間調整球の吸水率は、必ずしも積層体における1度の加熱履歴を受けた発泡小球の吸水率と同じではないが、かなり近い値となる。実際に、積層体を構成する2種類の吸水率の異なる発泡小球は、その吸水率が3倍から6倍程度の範囲で相違が認められる。
上記のように、適当な空隙と、適当な結合とを有する発泡小球積層体が得られるが、図27に示されるように保水性があり、植物の潅水のために水を補給すると、その水を吸収する。すなわち、防水性がない。発泡小球積層体を緑化基盤材として利用するには、その底面に軽量で防水性の床を配置することが望ましい。そこで、ガラス微細粉に発泡剤を混合せずに、水ガラスのみを配合して発泡性を確かめた。
図28は、ガラス微細粉に水ガラスのみを混合して板材とし、それを焼成したときの発泡性を調べた結果を示す図である。図28(a)は水ガラスを全く加えず、ガラス微細粉のみを水で混合して焼成した場合、(b)は、水によって1%質量濃度に希釈された水ガラスとガラス微細粉を混合して板材として焼成した場合、(c)は水によって10%質量濃度に希釈された水ガラスとガラス微細粉を混合して焼成した場合である。焼成条件は、発泡小球積層体の結合焼成と同じ800℃60分とした。
図28から分かるように、ガラス微細粉に水ガラスを混合することで、均一な発泡が生じている。この発泡ガラス板の吸水性を調べるため、食紅を溶かした水に7日間浸漬したが、水ガラスを加えないもの、及び1%質量濃度の水ガラスを混合して焼成したものは、全く食紅が内部に浸透していない。10%質量濃度の水ガラスを混合して焼成したものは、食紅の浸透が見られたが、外周より0.5mm程度である。これにより、ガラス微細粉に、水に対し10%質量濃度以下の水ガラスを加えて焼成することで、軽量で防水性のあるガラス板を得ることができる。好ましくは、水ガラス濃度は、1%以下がよい。
上記の結果に基づき、緑化基盤材の形成の後半工程は、図2のS24以下のように構成することができる。すなわち、前半工程で得られた未焼成造粒球を用い、これを単体で焼成して空間調整球を形成する(S24)。この焼成工程は、以後の結合焼成で発泡が生じない程度に焼成されることがよく、例えば850℃で3〜4分で焼成される。これと平行して、未焼成ガラス板を形成する(S26)。未焼成ガラス板は、上記のように、ガラス微細粉に、好ましくは1%質量濃度以下の水ガラスを加えて混合し、板材としたものである。つぎに、未焼成ガラス板の上に、未焼成造粒球と、空間調整球とを、好ましくは混合比=1:2で混合し、適当に積層する(S28)。そして、これらを積層状態のまま、加熱し、結合焼成する(S30)。結合焼成の条件は、例えば800℃60分とすることができる。これによって、底面に軽量で防水性のあるガラス板を有し、その上にガラス板と適当に結合し、適当な空隙と発泡小球同士の適当な結合を有する発泡小球積層体が配置された緑化基盤材が得られる(S32)。緑化基盤材は適当なフレーム内に配置されて用いられる(S34)。
10 フレーム、12 筐体、14 支持棒、18 集合ブロック、20 緑化基盤材、22 焼成ガラス板、24 発泡小球積層体、26 通常発泡小球、27 空間調整球、28 漆喰、30 枠、32 混合物、34 平板状成形体、36 押切具、38,40 中間体、50 未焼成造粒球。