JP2007317551A - 負極及び二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】容量が大きく、サイクル特性に優れた二次電池を提供する。
【解決手段】正極及び負極と共に電解質を備えた電池であって、負極は、負極集電体と、負極活物質層とを有し、この負極活物質層は、天然黒鉛によって表面の少なくとも一部が被覆されているメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を有する二次電池を構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)及び天然黒鉛を用いた負極及び、それを用いた二次電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(videotape recorder)、携帯電話あるいはラップトップコンピュータなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型化および軽量化が図られている。それに伴い、これら電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池について、エネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。
二次電池の中でも、負極に炭素材料を用いたリチウムイオン二次電池が知られている。この電池は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池あるいはニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、非常に期待されている。
リチウムイオン二次電池の負極用の炭素材料としては、以前から天然黒鉛や、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛が用いられている。
MCMBは、初期効率が高く、また、負極を作製する際のプレス圧に対して、圧縮破壊強度(粒子硬度)が高いため、MCMBの破壊や変形が起こりにくいという利点を持つ。
しかし、初期容量が小さく、さらに、MCMBは、隣り合う粒子間で隙間が生じてしまうため、体積密度を高くすることが難しく、また、体積密度を高めるため、プレス圧を大きくしすぎるとMCMBの破壊や変形が起こり、初期効率の低下を起こしてしまうという問題がある。
また、MCMBに対して、天然黒鉛は容量が大きいが、初期効率が低いという問題がある。また、天然黒鉛は、一般的にその粒子形状が鱗片状、鱗状、板状であるため、負極中で配向して天然黒鉛のベーサル面が負極の膜面に沿った方向に配向しやすい。このため、充放電を繰り返すことにより、黒鉛が膜厚方向に膨張収縮を繰り返し、集電体から黒鉛が剥離してしまい、サイクル特性が低くなってしまうという問題がある。
そこで、容量の大きな天然黒鉛を球形化することによって、天然黒鉛のベーサル面の負極の膜面に沿った方向への配向を抑え、特性の向上が行われている(例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3参照)。
また、MCMBと球形化天然黒鉛を混合することによって、集電体と活物質層との剥離を抑えて、サイクル特性を向上させる方法も行われている(例えば、特許文献4参照)。
特開平11−263612号公報 特開平10−334915号公報 特開2002−179419号公報 特開2002−175810号公報
しかしながら、天然黒鉛を球形化した場合は、負極を形成する際、体積密度を大きくするためにプレス圧を高くすると、球形化した天然黒鉛の破壊や変形が発生してしまい、球形化したことによる利点が失われてしまう。
また、MCMBと球形化天然黒鉛を単に混合しただけでは、体積密度を大きくするためにプレス圧を高くした場合、球形化天然黒鉛の破壊や変形が発生してしまう。
上述した問題の解決のため、本発明は、容量が大きく、サイクル特性に優れた負極及び二次電池を提供するものである。
本発明の負極は、負極集電体と、この集電体に設けられた負極活物質層とを有し、この負極活物質層は、天然黒鉛によって表面の少なくとも一部が被覆されているメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を有することを特徴とする。
本発明の二次電池は、正極及び負極と共に電解質を備えた電池であって、負極は、負極集電体と、負極活物質層とを有し、この負極活物質層は、天然黒鉛によって表面の少なくとも一部が被覆されているメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を有することを特徴とする。
上述の本発明の負極によれば、天然黒鉛をMCMBに被覆させることにより、天然黒鉛及び体積密度の増加によって負極の容量が向上する。また。被覆により体積密度が高くなるため、プレス圧を高くしなくても負極活物質層の体積密度を上げることができ、プレス圧によるMCMBの破壊や変形を防ぐことができる。
上述の本発明の二次電池によれば、天然黒鉛によって被覆されたMCMBを使用するため、天然黒鉛及び体積密度の増加によって電池容量が向上する。また、被覆により体積密度が高くなるため、プレス圧を高くしなくても体積密度が上がり、プレス圧による負極活物質層の崩壊を防ぐことができる。
本発明の負極によれば、天然黒鉛の使用及び体積密度の向上により、負極を高容量化することができる。また、MCMBの破壊や変形を防ぐことができるため、優れたサイクル特性を得ることができる。
本発明の二次電池によれば、負極に天然黒鉛を使用し、さらに被覆により体積密度が向上するため充放電容量を大きくすることができる。また、負極活物質層の崩壊が抑制され、サイクル特性を向上させることができる。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の負極10の構成を表す図である。負極10は、例えば、一対の対向面を有する負極集電体11と、負極集電体11の片面に設けられた負極活物質層12とを有している。
なお、図示しないが、負極集電体11の両面に負極活物質層12を設けるようにしてもよい。
負極集電体11は、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有することが好ましく、銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料により構成されている。
負極活物質層12は、負極活物質として、リチウムイオン等を吸蔵および放出することが可能な炭素材料を使用することができ、必要によって気相成長炭素繊維やカーボンブラック等の導電剤や、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエン樹脂等のバインダーを併せて使用することができる。
本実施の形態では、負極活物質層12に用いるリチウムイオン等を吸蔵および放出することが可能な炭素材料として、天然黒鉛17によって表面の少なくとも一部が被覆されているメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)16からなる複合化炭素15を使用することができる。
なお、負極活物質層12は、複合化炭素15のみによって構成されていても良く、複合化炭素15以外の炭素材料が含まれていても良い。
また、負極活物質層12において、全ての天然黒鉛17がMCMB16の表面を被覆している必要はなく、MCMB16の表面を被覆しない天然黒鉛17が、複合化炭素15とともに負極活物質層12に存在しても良い。
図1に示した負極活物質層12に含まれる複合化炭素15は、MCMB16の全体を一層の天然黒鉛17が被覆する構成となっているが、MCMB16の表面の少なくとも一部を天然黒鉛17が被覆していれば良く、また、天然黒鉛17を複数層有していても良い。
負極活物質層12に用いる複合化炭素15は、MCMB16と天然黒鉛17とをメカノフュージョン処理することにより形成することができる。
ここで、メカノフュージョン装置50の概略図を図2に示す。
図2のメカノフュージョン装置50において、回転容器51内に投入された粉体原料53は、遠心力によりその回転容器51の内壁に押し付けられて固定され、曲率半径の異なるインナーピース52との間で強力な圧縮及びせん断力を受ける。
さらに、回転容器51内の粉体原料53は、3次元的に循環し、これによって、効果的に圧縮及びせん断処理が高速で繰り返される。
以上のように、メカノフュージョン装置50によって、炭素材料の表面処理が行われ、複合化炭素15が形成される。
メカノフュージョン処理には、必要最低限の原材料を使用し、余分な量を仕込む必要がなく、また、洗浄工程が廃止でき、洗浄に用いている溶媒が不要となるため、製造コストを低下させることが可能である。
本実施の形態の負極活物質層12に用いる複合化炭素15は、MCMB16からなる基材粒子と、天然黒鉛17からなる被覆用炭素材料とをメカノフュージョン処理を施して、基材粒子となるMCMB16の表面の少なくとも一部に被覆用炭素材料として天然黒鉛17を被覆させたものである。
このメカノフュージョン処理による炭素材料の被覆は、固相反応によって基材粒子の表面に被覆用炭素材料が被覆する。固相反応による被覆は、作製時に被覆用炭素を過剰に必要としないため、材料コストを抑えることができる。また、固相反応によって被覆を行うことにより、液相炭素化法を用いる場合に必要であった洗浄工程が不要となり、洗浄に用いる溶剤が不要となるため、安価に製造することができる。
さらに、個々のMCMB16の粒子に固相で天然黒鉛17を被覆するため、液相での場合に発生した、炭素材料同士の融着や凝集を防止することができ、粉砕工程が不要となり、粉砕面からの新たな活性な面の生成を抑制できる。このため、電解液の分解を抑制でき、高い充電効率が得られることから良好なサイクル特性を実現することが可能となる。
本実施の形態において、メカノフュージョン処理の条件は、特に限定されるものではなく、基材粒子と被覆用炭素材料との原料比や、処理装置の規模等によって最適化することが好ましい。このとき、処理時間が短いと、基材粒子に充分な量の被覆用炭素材料を被覆させることができず、また、処理時間が長すぎると、基材粒子や、被覆用炭素材料が崩壊する等の問題が発生する。
なお、負極10は、例えば、次のようにして作製することができる。
まず、天然黒鉛17とMCMB16とをメカノフュージョン処理した複合化炭素15と、フッ素系高分子バインダー樹脂からなる結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体11に塗布し溶剤を乾燥させた後、圧縮成型して負極活物質層12を形成することにより作製することができる。
この負極10は、例えば以下のような二次電池に適用することができる。
図3は、本実施の形態の電池の構成を表すものである。この電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた電極巻回体30をフィルム状の外装部材40の内部に封入したものである。
図4は、図3に示した電極巻回体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。電極巻回体30は、正極20と負極10とをセパレータ34を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ35により保護されている。
正極20は、正極集電体21と、正極集電体21上に設けられた正極活物質層22とを有している。
正極20は、正極集電体21と、正極集電体21に設けられた正極活物質層22とを有し、正極活物質層22は、負極活物質層12と対向するように配置されている。
正極集電体21は、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等により構成される。また、正極活物質層22は、正極活物質としてリチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料の少なくとも1種類以上により構成されていることが好ましく、必要によって炭素等の導電剤や、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエン樹脂等のバインダーを併せて使用することができる。
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料としては、一般式LiMIOで表されるリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。
リチウム含有金属複合酸化物を用いることにより、放電の際の電圧を高くすることができ、さらに、高密度であるため、二次電池のさらなる高容量化を図ることができるからである。
なお、一般式中のMIは、一種類以上の遷移金属であり、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)から選ばれる一種類以上の金属が好ましい。また、一般式中のXは、電池の充放電状態により異なり、通常は、0.05≦X≦1.10の範囲内の値である。
リチウム含有金属複合酸化物としては、LiCoO、LiNiO2、LiMnが好ましく、また、これらの2種類以上を混合して使用しても良い。
なお、正極20は、正極活物質と導電剤とバインダーとを混練し、N−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて合剤スラリーを作製し、この合剤スラリーを帯状の金属箔の正極集電体21上に塗布し、乾燥させた後、圧縮成形して正極活物質層22を形成することにより作製することができる。
正極リード31および負極リード32は、外装部材40の内部から外部に向かい、例えば同一方向にそれぞれ導出されている。
正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、外側からナイロンフィルム、アルミニウム箔、ポリエチレンフィルムの順に積層し、接着形成されている矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。
外装部材40は、ポリエチレンフィルム側と巻回型電極体30とが対向するように配設され、外装部材40の外縁部が熱融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
外装部材40とリード31,32との間には、外装部材40を密閉するために、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂のような密着性を有する材料が密着フィルム41として挿入されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成しても良い。
なお、図3及び図4では外装部材40を上記のフィルム状の容器としたが、これに代えて鉄缶や、アルミニウム缶等を使用することもできる。
セパレータ34は、正極20と負極10とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止するものであり、充放電の際にリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータは、ポリエチレンやポリプロピレンにより構成される。
電解質は、電解質塩が非水溶媒に溶解されてなる非水電解液、及び、非水溶媒と電解質塩を高分子マトリックスに含浸したゲル電解質、無機および有機の固体電解質等を適宜選択し使用することができる。
非水電解液を用いる非水電解液二次電池において、電解質を溶解する非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4メチル1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等を使用することができる。
これらの非水溶媒は、単独で使用してもよく、また、複数種混合して用いてもよい。特に、高温での安定性を向上させることができる点で、高沸点溶媒を含有させることが好ましい。
また、電解質塩としては、例えば、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiB(C、CHSOLi、CFSOLi、LiCl、LiBr、LiN(CFSO等を使用することができる。
また、電解質は、保持体に電解液を保持させたゲル状の電解質により構成させることもできる。ゲル状の電解質は、高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液あるいは高温における膨れを防止することができる。電解液を保持するための保持体としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等の高分子材料が使用できる。
また、電解質は、固体電解質により構成させることもできる。
固体電解質としては、リチウムイオン導電性を有する材料であれば無機固体電解質、高分子固体電解質のいずれも用いることができる。無機固体電解質として、窒化リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。また、高分子固体電解質は、電解質塩とそれを溶解する高分子化合物からなり、高分子化合物はポリ(エチレンオキサイド)や同架橋体などのエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)エステル系、アクリレート系等を単独あるいは分子中に共重合、または混合して用いることができる。
この二次電池は以下のように製造することができる。
まず、帯状の薄膜からなる負極10及び正極20のそれぞれの集電体11,21の端部にリード31,32を溶接する。次に、リード31,32が取り付けられた負極10と正極20とをセパレータ34を介して積層した後、長手方向に巻回し、最外周部に保護テープ35を接着して電極巻回体30を形成する。
次に、電極巻回体30を外装部材40に収納し、そこに電解液を注液して真空含浸を行う。次に、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、リード31,32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、上述の構成の負極を用いることにより、MCMBと天然黒鉛の両方の利点を持たせ、メカノフュージョンを用いて変形しにくいMCMBに、容量の大きい天然黒鉛を被覆させる事で、天然黒鉛の剥離を抑え、さらに、容量が大きく、初期容量が高く、サイクル特性を向上させることができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。
まず、本実施例で使用する炭素材料について、メカノフュージョン処理を行う前の天然黒鉛の粒径及びメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)の粒径、並びに、メカノフュージョン処理によってMCMBの表面に天然黒鉛を被覆させた複合化炭素の粒径を表1に示す。
なお、この複合化炭素は、メカノフュージョン(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)の回転容器内に、被覆用炭素材料として天然黒鉛50重量%と、基材粒子としてMCMB50重量%を投入し、メカノフュージョン処理を行うことによって作製した。
Figure 2007317551
表1より、メカノフュージョン処理を行なう前の天然黒鉛及びMCMBの粒径に対して、メカノフュージョン後の複合化炭素の粒径が増加している。これは、MCMB表面への天然黒鉛の被覆により、粒径が増加したためである。
(実施例1)
まず、以下のようにして正極を作製した。
平均粒径10μm、比表面積0.4m/gのLiCoO粉末91重量%と、導電剤である黒鉛6重量%と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド3重量%とを混合して正極合剤を作製した。
次に、これをN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状とした。さらに、このスラリー状の正極合剤を正極集電体となる50mm×350mmの帯状のアルミニウム箔に塗布した後に乾燥させ、加圧して正極活物質層を形成し、正極を作製した。
次に、以下のようにして負極を作製した。
まず、メカノフュージョン(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)の回転容器内に、被覆用炭素材料として天然黒鉛5重量%と、基材粒子としてメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)95重量%を投入してメカノフュージョン処理を行い、実施例1に用いる負極活物質を得た。
次に、上記の負極活物質90重量%と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド10重量%とを混合し、負極合剤を作製した。この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状とした。
このスラリー状にした負極合剤を負極集電体となる52mm×370mmの帯状の銅箔に均一に塗布した後に乾燥させ、体積密度が1.7g/cmとなるように加圧して負極活物質層を形成し、負極を作製した。
また、ゲル状電解質を次のようにして作製した。
まず、エチレンカーボネート(EC)と、プロピレンカーボネート(PC)とを重量比で6:4の割合で混合し、この溶媒に、電解質塩であるLiPFを0.7mol/kgの濃度に混合して電解液を調整した。これに3倍等量のジエチルカーボネートを加えて希釈し、ヘキサフルオロプロピレン6.9%共重合のポリビニリデンフルオライドを混合して溶解させた。
次に、これを負極活物質層及び正極活物質層に均一に塗布した。そして、常温で8時間放置することによってジエチルカーボネートを気化させて除去し、ゲル状電解質を作製した。
上記のゲル状電解質を形成した正極及び負極を、ポリエチレン製のセパレータを介して積層し、帯状の積層体を作製した。
最後に、帯状の積層体を、その長手方向に巻回して巻き取った後、巻回体の外周面を両側から圧縮することにより、電極巻回体を作製し、この電極巻回体をアルミラミネートフィルムからなる外装部材の中に挿入した後、真空封止して、実施例1の二次電池を作製した。
(実施例2)
メカノフュージョン(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)の回転容器内に、被覆用炭素材料として天然黒鉛10重量%と、基材粒子としてMCMB90重量%を投入してメカノフュージョン処理を行い、実施例2に用いる負極活物質を得た。
次に、この負極活物質を用いて実施例1と同様の方法で実施例2の二次電池を作製した。
(実施例3)
メカノフュージョン(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)の回転容器内に、被覆用炭素材料として天然黒鉛30重量%と、基材粒子としてMCMB70重量%を投入してメカノフュージョン処理を行い、実施例3に用いる負極活物質を得た。
次に、この負極活物質を用いて実施例1と同様の方法で実施例3の二次電池を作製した。
(実施例4)
メカノフュージョン(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)の回転容器内に、被覆用炭素材料として天然黒鉛50重量%と、基材粒子としてMCMB50重量%を投入してメカノフュージョン処理を行い、実施例4に用いる負極活物質を得た。
次に、この負極活物質を用いて実施例1と同様の方法で実施例4の二次電池を作製した。
(実施例5)
メカノフュージョン(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)の回転容器内に、被覆用炭素材料として天然黒鉛70重量%と、基材粒子としてMCMB30重量%を投入してメカノフュージョン処理を行い、実施例5に用いる負極活物質を得た。
次に、この負極活物質を用いて実施例1と同様の方法で実施例5の二次電池を作製した。
(実施例6)
メカノフュージョン(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)の回転容器内に、被覆用炭素材料として天然黒鉛80重量%と、基材粒子としてMCMB20重量%を投入してメカノフュージョン処理を行い、実施例6に用いる負極活物質を得た。
次に、この負極活物質を用いて実施例1と同様の方法で実施例6の二次電池を作製した。
次に、作製した実施例1〜6の二次電池について、下記の方法で初期容量、初期効率及び容量維持率を求め、その結果を表2に示す。
(初期容量、初期効率)
作製した二次電池について、25℃の条件下で充放電試験を行なった。
作製された実施例1の二次電池を、充電は0.1Cの定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで行った後、4.2Vの定電圧で12時間行った。放電は0.2Cの定電流密度で電池電圧が3.0Vに達するまで行った。
この時の放電条件による放電容量を、電池の初期容量(mAh/g)とした。また、上記条件によって充電した容量に対する、初期容量の割合により{(初期容量/充電した容量)×100}(%)を初期効率(%)とした。
なお、1.0Cは、理論容量を1時間で放出しきる電流値である。
(容量維持率)
作製した二次電池について、25℃の条件下で充放電試験を行なった。
作製された実施例1の二次電池を、充電は1.0Cの定電流密度で電池電圧が4.2Vに達するまで行った後、4.2Vの定電圧で2.5時間行った。放電は1.0Cの定電流密度で電池電圧が3Vに達するまで行った。
この時の1サイクル目に対する、300サイクル目の放電容量により、{(300サイクル時の放電容量/1サイクル時の放電容量)×100}(%)を容量維持率(%)とした。
Figure 2007317551
表2より、実施例1〜6の二次電池によれば、天然黒鉛とMCMBをメカノフュージョン処理した負極活物質を用いたことにより、良好な初期容量(mAh/g)、初期効率(%)及び容量維持率(%)が得られることがわかる。
また、天然黒鉛の重量比が5重量%である実施例1では、初期効率及び容量維持率が大きいが、初期容量が低下している。
さらに、天然黒鉛の重量比が80重量%である実施例6では、初期容量が大きいが、初期効率及び容量維持率が低下している。
これに対し、実施例2〜5によれば、初期容量、初期効率及び容量維持率の全てにおいて良好な結果が得られた。このため、天然黒鉛とMCMBの混合比は、天然黒鉛の重量比が10%以上70%以下であることが好ましい。
(実施例7)
実施例4で作製した負極活物質90重量%と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド10重量%とを混合し、負極合剤を作製した。この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状とした。
このスラリー状にした負極合剤を負極集電体となる52mm×370mmの帯状の銅箔に均一に塗布した後に乾燥させ、乾燥後に100kgf/cmの加圧を行い、負極活物質層を形成し、実施例7の負極を作製した。
(実施例8)
負極を作製する際、乾燥後に行う加圧を200kgf/cmとした以外は、実施例7と同様の方法で実施例8の負極を作製した。
(比較例1)
負極活物質に使用する炭素材料に、天然黒鉛を用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で比較例1の負極を作製した。
(比較例2)
負極活物質に使用する炭素材料に、天然黒鉛を用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で比較例2の負極を作製した。
(比較例3)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛を用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で比較例3の負極を作製した。
(比較例4)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛を用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で比較例4の負極を作製した。
(比較例5)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物を用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で比較例5の負極を作製した。
(比較例6)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物を用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で比較例6の負極を作製した。
なお、比較例5,6で使用した球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物は、メカノフュージョン処理を行っていないものである。
次に、作製した実施例7,8及び比較例1〜6の負極について、下記の方法で剥離強度を求め、その結果を表3に示す。
(剥離強度)
作製した負極について、活物質層の表面にテープを貼り付け、これを引張り試験機(AGS−H 100N、株式会社島津製作所製)にて、100mm/sの定速で引っ張ることにより、活物質層の剥離強度を求めた。
Figure 2007317551
表3に示した剥離強度は、集電体と活物質層との接着力を表している。集電体と活物質層との接着力が高いと、活物質層を構成する炭素材料の集電体からの剥離を抑制することができる。このため、充放電を繰り返した際の負極活物質の崩壊による、容量維持率の低下を抑制することが可能である。
表3より、天然黒鉛を用いた比較例1,2の負極では、塗布時の加圧により天然黒鉛が配向し、天然黒鉛の剥離が発生しやすいため、剥離強度が低い。
また、球形化天然黒鉛を用いた比較例3,4の負極では、加圧することにより体積密度を向上させようとすると、球形を維持することができず、剥離強度が低下したと考えられる。
球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%を混合した比較例5,6の負極では、剥離強度の高いMCMBと混合することにより、天然黒鉛及び球形化天然黒鉛のみを用いたときよりも、剥離強度の向上が見られるが、負極にかける圧力を200kgf/cmと高くした場合には、球形化天然黒鉛が球形を維持することができず、剥離強度が低下したと考えられる。
実施例7,8の負極によれば、基材粒子となるMCMBにメカノフュージョン処理によって、天然黒鉛が被覆されているため、加圧による天然黒鉛の配向を抑制することができ、剥離強度を向上させることができる。
(実施例9)
まず、メカノフュージョン(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)の回転容器内に、被覆用炭素材料として天然黒鉛50重量%と、基材粒子としてメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)50重量%を投入してメカノフュージョン処理を行い、実施例9に用いる負極活物質を得た。
次に、上記の負極活物質90重量%と、結着剤であるポリビニリデンフルオライド10重量%とを混合し、負極合剤を作製した。この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状とした。
このスラリー状にした負極合剤を負極集電体となる52mm×370mmの帯状の銅箔に均一に塗布した後に乾燥させ、体積密度が1.4g/cmとなるように加圧して負極活物質層を形成し、負極を作製した。
次に、この負極を用いて実施例1と同様の方法で実施例9の二次電池を作製した。
(実施例10)
負極を作製する際に、体積密度が1.5g/cmとなるように加圧を行った以外は、実施例9と同様の方法で実施例10の二次電池を作製した。
(実施例11)
負極を作製する際に、体積密度が1.7g/cmとなるように加圧を行った以外は、実施例9と同様の方法で実施例11の二次電池を作製した。
(実施例12)
負極を作製する際に、体積密度が1.9g/cmとなるように加圧を行った以外は、実施例9と同様の方法で実施例12の二次電池を作製した。
(実施例13)
負極を作製する際に、体積密度が2.0g/cmとなるように加圧を行った以外は、実施例9と同様の方法で実施例13の二次電池を作製した。
(比較例7)
負極活物質に使用する炭素材料に、MCMBを用いた以外は、実施例9と同様の方法で比較例7の二次電池を作製した。
(比較例8)
負極活物質に使用する炭素材料に、MCMBを用いた以外は、実施例10と同様の方法で比較例8の二次電池を作製した。
(比較例9)
負極活物質に使用する炭素材料に、MCMBを用いた以外は、実施例11と同様の方法で比較例9の二次電池を作製した。
(比較例10)
負極活物質に使用する炭素材料に、MCMBを用いた以外は、実施例12と同様の方法で比較例10の二次電池を作製した。
(比較例11)
負極活物質に使用する炭素材料に、MCMBを用いた以外は、実施例13と同様の方法で比較例11の二次電池を作製した。
(比較例12)
負極活物質に使用する炭素材料に、天然黒鉛を用いた以外は、実施例9と同様の方法で比較例12の二次電池を作製した。
(比較例13)
負極活物質に使用する炭素材料に、天然黒鉛を用いた以外は、実施例10と同様の方法で比較例13の二次電池を作製した。
(比較例14)
負極活物質に使用する炭素材料に、天然黒鉛を用いた以外は、実施例11と同様の方法で比較例14の二次電池を作製した。
(比較例15)
負極活物質に使用する炭素材料に、天然黒鉛を用いた以外は、実施例12と同様の方法で比較例15の二次電池を作製した。
(比較例16)
負極活物質に使用する炭素材料に、天然黒鉛を用いた以外は、実施例13と同様の方法で比較例16の二次電池を作製した。
(比較例17)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛を用いた以外は、実施例9と同様の方法で比較例17の二次電池を作製した。
(比較例18)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛を用いた以外は、実施例10と同様の方法で比較例18の二次電池を作製した。
(比較例19)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛を用いた以外は、実施例11と同様の方法で比較例19の二次電池を作製した。
(比較例20)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛を用いた以外は、実施例12と同様の方法で比較例20の二次電池を作製した。
(比較例21)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛を用いた以外は、実施例13と同様の方法で比較例21の二次電池を作製した。
(比較例22)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物を用いた以外は、実施例9と同様の方法で比較例22の二次電池を作製した。
(比較例23)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物を用いた以外は、実施例10と同様の方法で比較例23の二次電池を作製した。
(比較例24)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物を用いた以外は、実施例11と同様の方法で比較例24の二次電池を作製した。
(比較例25)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物を用いた以外は、実施例12と同様の方法で比較例25の二次電池を作製した。
(比較例26)
負極活物質に使用する炭素材料に、球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物を用いた以外は、実施例13と同様の方法で比較例26の二次電池を作製した。
なお、上記比較例22〜26で使用した球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物は、比較例5及び6と同様にメカノフュージョン処理を行っていないものである。
次に、作製した実施例9〜13及び比較例7〜26の二次電池について、上記の方法で初期効率、初期容量及び容量維持率を求め、その結果を表4に示す。
Figure 2007317551
表4より、実施例9〜13の天然黒鉛とMCMBをメカノフュージョン処理した負極活物質を用いた二次電池は、良好な初期容量、初期効率及び容量維持率が得られた。
これに対し、比較例7〜11のMCMBのみを用いた二次電池では、初期容量が低い。これは、MCMBを単独で使用しているため、初期容量が低いというMCMBの特性が出たためである。
比較例12〜16の天然黒鉛のみを用いた二次電池では、容量維持率が低く、体積密度を高くした際の初期効率が低い。これは、塗布時の加圧により天然黒鉛が配向しやすいため、集電体と活物質層の密着性が低く、充放電を繰り返すことにより、活物質が剥離してしまうためである。
比較例17〜21の球形化天然黒鉛のみを用いた二次電池では、体積密度を高くした際の初期効率及び容量維持率が低い。これは、塗布時の加圧が大きくなると、球形化天然黒鉛が球形を維持することができず、充放電を繰り返すことにより、活物質が崩壊するためである。
比較例22〜26の球形化天然黒鉛50重量%とMCMB50重量%との混合物を用いた二次電池では、体積密度を高くした際の容量維持率が低い。これは、塗布時の加圧が大きくなると、球形化天然黒鉛が球形を維持することができず、充放電を繰り返すことにより、活物質が崩壊するためである。
また、実施例9では、同じ体積密度の比較例7、12、17及び22と比べたとき、比較例7に対しては初期容量の増加が認められ、比較例12に対しては容量維持率の増加が認められる。しかし、その他の効果については、実施例10〜12ほど同じ体積密度の比較例との間で顕著な差が発生していない。
さらに、実施例13では、比較例26に対して、初期効率の向上が認められるが、初期容量及び容量維持率に差が発生していない。
これに対し、実施例10〜12によれば、初期容量、初期効率及び容量維持率の全てにおいて良好な結果が得られた。このため、負極の体積密度は、1.5g/cm以上1.9g/cm以下であることが好ましい。
以上、実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明の二次電池は上記の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。
例えば、上記の実施例では、巻回ラミネート型の二次電池について説明したが、本発明の電池の電極の形状については、これに限らず、円筒型、角型、薄型、大型、積層ラミネート型等による二次電池についても同様に適用することができる。
本発明は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
本実施の形態に用いる負極の構成を表す断面図である。 本実施の形態で用いたメカノフュージョン装置の概略図である。 本実施の形態の電極による電極巻回体を用いた電池の構成図である。 図3に示した電極巻回体のI―I線に沿った構成を表す断面図である。
符号の説明
10 負極、11 負極集電体、12 負極活物質層、15 複合化炭素、16 メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、17 天然黒鉛、20 正極、21 正極集電体、22 正極活物質層、30 電極巻回体、31 正極リード、32 負極リード、34 セパレータ、35 保護テープ、40 外装部材、41 密着フィルム、50 メカノフュージョン装置、51 回転容器、52 インナーピース、53 粉体材料

Claims (6)

  1. 負極集電体と、
    前記集電体に設けられた負極活物質層とを有し、
    前記負極活物質層は、天然黒鉛によって表面の少なくとも一部が被覆されているメソカーボンマイクロビーズを有する
    ことを特徴とする負極。
  2. 前記負極活物質層の体積密度が、1.5g/cm以上1.9g/cm以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の負極。
  3. 前記負極活物質層に含まれる、前記天然黒鉛の重量比が10%以上70%以下であることを特徴とする請求項1に記載の負極。
  4. 正極及び負極と共に電解質を備えた電池であって、
    前記負極は、負極集電体と、負極活物質層とを有し、
    前記負極活物質層は、天然黒鉛によって表面の少なくとも一部が被覆されているメソカーボンマイクロビーズを有する
    ことを特徴とする二次電池。
  5. 前記負極活物質層の体積密度が、1.5g/cm以上1.9g/cm以下である
    ことを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
  6. 前記負極活物質層に含まれる、前記天然黒鉛の重量比が10%以上70%以下であることを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
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