JP2007315340A - 内燃機関の特性パラメータ計測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】計測工数を少なく抑えつつ各計測点について比較的信頼性の高い特性パラメータの計測値を得ることができる特性パラメータ計測方法を提供する。
【解決手段】特性パラメータ計測方法では、原則的に触媒温度が安定するまで点火時期を所定値に維持したときに計測される触媒温度を、点火時期が所定値であるときの触媒温度の定常計測値として検出する。そして、触媒温度が安定するまで点火時期を第一の値ig1に維持してから点火時期を中間値ig2へ遅角させ、その後触媒温度が安定する前までの触媒温度を遅角時の触媒温度として検出し、一方、触媒温度が安定するまで点火時期を第二の値ig3に維持してから点火時期を中間値ig2へ進角させ、その後触媒温度が安定する前までの触媒温度を進角時の触媒温度として検出する。そして、遅角時の触媒温度と進角時の触媒温度とに基づいて点火時期が中間値であるときの触媒温度の定常計測値を算出する。
【選択図】図2
【解決手段】特性パラメータ計測方法では、原則的に触媒温度が安定するまで点火時期を所定値に維持したときに計測される触媒温度を、点火時期が所定値であるときの触媒温度の定常計測値として検出する。そして、触媒温度が安定するまで点火時期を第一の値ig1に維持してから点火時期を中間値ig2へ遅角させ、その後触媒温度が安定する前までの触媒温度を遅角時の触媒温度として検出し、一方、触媒温度が安定するまで点火時期を第二の値ig3に維持してから点火時期を中間値ig2へ進角させ、その後触媒温度が安定する前までの触媒温度を進角時の触媒温度として検出する。そして、遅角時の触媒温度と進角時の触媒温度とに基づいて点火時期が中間値であるときの触媒温度の定常計測値を算出する。
【選択図】図2
Description
本発明は、内燃機関の特性パラメータ計測方法に関する。
一般に、内燃機関の制御は、トルク、エミッション及び燃費等についての要求を満たすようにスロットル開度、点火時期、吸気弁又は排気弁の開閉弁特性、燃料噴射量等の制御パラメータの値を変化させることによって行われる。斯かる制御パラメータには、そのときの機関運転条件(例えば、機関負荷及び機関回転数等)毎に最適な値が存在する。このような機関運転条件毎の制御パラメータの最適な値は、一般に、各機関運転条件毎に制御パラメータを様々な値に設定し、そのときのトルク、燃料消費量又はNOX排出量等の特性パラメータの計測値から、制御パラメータの最適な値を求める作業、いわゆる適合作業によって求められる。
斯かる適合作業においては、機関運転状態が定常状態にあるときの特性パラメータの値を計測する必要があることから、各計測点毎に機関運転状態が安定するまで待ってから、例えばトルク、吸気管内圧力等がほぼ一定の値に収束するまで待ってから計測が行われる。このため、各計測点において特性パラメータの計測値を得るまでに時間がかかる。また、適合精度を高いものとするためには、多くの計測点において計測が必要であり、場合によっては計測点数が数千〜数十万点にも及ぶ。このため、適合作業全体の計測工数は膨大なものとなる。
そこで、各計測点間の間隔を広げ、すなわち各計測点間の制御パラメータの値の差を大きくして、計測点数を低減すると共に、特性パラメータの計測値に基づいてモデル式を求め、斯かるモデル式に基づいて各制御パラメータの値に対する特性パラメータの値を推定することが提案されている(特許文献1)。これにより、計測工数を低減させることができる。
しかしながら、こうして推定される特性パラメータの値は、計測点間については、モデル式を用いたとしてもあくまで推定された値であるため、その信頼性はそれほど高いものではない。よって、特性パラメータの値の信頼性を高いものとするためには、各計測点において実際に計測を行って値を求める必要がある。
従って、本発明の目的は、計測工数を少なく抑えつつ各計測点について比較的信頼性の高い特性パラメータの計測値を得ることができる特性パラメータ計測方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、第1の発明では、内燃機関の制御パラメータの変化に追従して特性パラメータが変化し得る内燃機関において、特性パラメータの値が安定するまで制御パラメータの値を所定値に維持したときに計測される特性パラメータの値を、上記制御パラメータの値が上記所定値であるときの特性パラメータの定常計測値として検出する、特性パラメータ計測方法において、上記特性パラメータの値が安定するまで上記制御パラメータの値を第一の値に維持してから制御パラメータの値を一方向に中間値へ変化させると共に制御パラメータの値を変化させてから特性パラメータの値が安定する前までに特性パラメータの値を一方向変化時の計測値として検出し、上記特性パラメータの値が安定するまで上記制御パラメータの値を第二の値に維持してから制御パラメータの値を逆方向に中間値へ変化させると共に制御パラメータの値を変化させてから特性パラメータの値が安定する前までに特性パラメータの値を逆方向変化時の計測値として検出し、上記特性パラメータの一方向変化時の計測値及び逆方向変化時の計測値に基づいて上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出する。
第1の発明によれば、制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を求めるにあたり、特性パラメータの値が安定するまで制御パラメータの値を中間値に維持しておらず、よって特性パラメータの定常計測値を求める計測工数を低減することができる。また、第1の発明によれば、一方向変化時の計測値と逆方向変化時の計測値とに基づいて制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出することとしており、よって斯かる定常計測値を比較的高い精度で求めることができる。
なお、制御パラメータとは、機関運転状態に影響を与える制御可能なパラメータであり、例えば、充填効率、スロットル開度、点火時期、機関回転数、吸気弁又は排気弁の開閉弁特性、燃料噴射量、空燃比等が挙げられる。一方、特性パラメータとは、上記制御パラメータを変更することによりその値が変わり得るパラメータであって内燃機関の特性を表すパラメータであり、例えば、トルク、出力、機関回転数、空燃比、排気ガスの温度、排気浄化触媒の温度、排気エミッション等が挙げられる。なお、上記説明からわかるように、同じパラメータが制御パラメータ及び特性パラメータのいずれにも該当し得る。例えば、空燃比は、特性パラメータとして用いられることもあれば特性パラメータとして用いられることもあり得る。
第1の発明によれば、制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を求めるにあたり、特性パラメータの値が安定するまで制御パラメータの値を中間値に維持しておらず、よって特性パラメータの定常計測値を求める計測工数を低減することができる。また、第1の発明によれば、一方向変化時の計測値と逆方向変化時の計測値とに基づいて制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出することとしており、よって斯かる定常計測値を比較的高い精度で求めることができる。
なお、制御パラメータとは、機関運転状態に影響を与える制御可能なパラメータであり、例えば、充填効率、スロットル開度、点火時期、機関回転数、吸気弁又は排気弁の開閉弁特性、燃料噴射量、空燃比等が挙げられる。一方、特性パラメータとは、上記制御パラメータを変更することによりその値が変わり得るパラメータであって内燃機関の特性を表すパラメータであり、例えば、トルク、出力、機関回転数、空燃比、排気ガスの温度、排気浄化触媒の温度、排気エミッション等が挙げられる。なお、上記説明からわかるように、同じパラメータが制御パラメータ及び特性パラメータのいずれにも該当し得る。例えば、空燃比は、特性パラメータとして用いられることもあれば特性パラメータとして用いられることもあり得る。
第2の発明では、第1の発明において、上記制御パラメータの値を上記第一の値から上記中間値へ変化させるとき及び上記制御パラメータの値を上記第二の値から上記中間値へ変化させるときには制御パラメータの値をステップ状に変化させるようにした。
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記制御パラメータの値を上記第一の値から一方向に中間値へ変化させて該中間値で維持した後に上記第二の値へ変化させて上記特性パラメータの値が安定するまで制御パラメータの値を第二の値に維持し、その後、上記制御パラメータの値を上記第二の値から逆方向に中間値へ変化させて該中間値で維持するようにした。
第4の発明では、第1〜第3のいずれか一つの発明において、上記中間値は上記第一の値と第二の値との中央の値である。
第5の発明では、第1〜第4のいずれか一つの発明において、上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出するときには、上記一方向変化時の計測値に基づいて上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値の予想値を算出し、上記逆方向変化時の計測値に基づいて上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値の予想値を算出し、これら予想値に基づいて上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出する。
第6の発明では、第5の発明において、上記一方向変化時の計測値に基づいて算出される予想値は、該一方向変化時の計測値に基づいて漸化式モデルを用いて算出され、上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出される予想値は、該逆方向変化時の計測値に基づいて漸化式モデルを用いて算出される。
第7の発明では、第5の発明において、上記一方向変化時の計測値に基づいて算出される予想値は、該一方向変化時の計測値のうち最も遅く検出された値とされ、上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出される予想値は、該逆方向変化時の計測値のうち最も遅く検出された値とされる。
第8の発明では、第5〜第7のいずれか一つの発明において、上記予想値に基づいて定常計測値を算出するときには、上記一方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値と、上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値との平均値を定常計測値とする。
第9の発明では、第5〜第7のいずれか一つの発明において、上記制御パラメータの値が上記第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と上記一方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値との差分と、上記制御パラメータの値が上記第二の値であるときの特性パラメータの定常計測値と上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値との差分との比を変化比とし、上記一方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値と上記制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値との差分と、上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値と上記制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値との差分との比を誤差比とすると、上記予想値に基づいて定常計測値を算出するときには上記誤差比が上記変化比に一致するように上記制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値を算出する。
第10の発明では、第9の発明において、所定の機関運転条件において、上記制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と上記一方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値との差分に対する上記制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と上記制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値との差分の比率を誤差係数として算出し、上記所定の機関運転条件とは異なる機関運転条件において特性パラメータの値が安定するまで制御パラメータの値を第一の値に維持してから制御パラメータの値を中間値へ変化させると共に特性パラメータの値が安定する前までに特性パラメータの値を一方向変化時の計測値として検出し、検出された一方向変化時の計測値に基づいて予想値を算出し、算出された予想値と上記制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値との差分に上記誤差係数を乗算することで上記所定の機関運転条件とは異なる機関運転条件における制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出する。
本発明によれば、計測工数を少なく抑えつつ各計測点について比較的信頼性の高い特性パラメータの計測値を得ることができるようになる。
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。図1は後述する適合作業の対象となる内燃機関及び当該適合作業に用いられる計測装置を示している。
図1を参照すると1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。またピストン3の頂面上には燃料噴射弁11の下方から点火プラグ10の下方まで延びるキャビティ12が形成されている。
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15に連結される。吸気管15内にはステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結され、排気マニホルド19は排気浄化触媒20を内蔵したケーシング21に連結される。また、吸気弁6には吸気弁6の開閉弁時期等、すなわち位相角及び作用角を変更するための可変動弁機構22が取付けられている。
一般に、図1に示したような内燃機関の制御は、内燃機関の運転中に変化するトルク、排気エミッション及び燃費等についての要求を満たすように、すなわち実際のトルク、排気エミッション及び燃費等が目標トルク、目標排気エミッション及び目標燃費等となるように、機関運転状態に影響を与える制御可能なパラメータ(以下、「制御パラメータ」と称す)の値を変化させることによって行われる。
このような制御パラメータには、そのときの内燃機関に対する要求及び機関運転条件(例えば、機関負荷及び機関回転数等)毎に最適な値が存在する。例えば、点火プラグ10による点火時期については、内燃機関のトルク、燃費や失火等を考慮すると、一般に、トルクが最も大きくなるような最小進角時期、いわゆるMBT(Minimum Advance for Best Torque)付近で点火を行うのが好ましい。このMBTは、全ての機関運転条件に対して同じではなく、例えば機関回転数が異なると、MBTも異なる時期となる。また、一方で、内燃機関の排気浄化のために排気浄化触媒20を高温にする必要があるような場合には、機関本体1から排出される排気ガスの温度(以下、「排気温度」と称す)を高めるために上記MBTよりも或る程度進角側の時期に点火を行うのが好ましい。
このような内燃機関に対する要求及び機関運転条件に対する制御パラメータの最適な値は、数値計算等のみから算出することは困難であるため、通常、内燃機関の形式毎に適合作業によって求められる。ここで、適合作業とは、各機関運転条件毎に特定の制御パラメータを様々な値に設定し、各制御パラメータの値毎に特性パラメータ(制御パラメータの値を変更することによりその値が変わり得るパラメータであって内燃機関の特性を表すパラメータ)を計測し、これら特性パラメータの計測値から各機関運転条件における制御パラメータの最適な値を求める作業を意味する。
図1には、適合作業の対象となる内燃機関に加えて、この内燃機関の特性パラメータの計測装置が示されている。図示したように、適合作業の対象となる内燃機関に対しては、スロットル弁18の開度を計測するためのスロットル開度センサ31がスロットル弁18に取付けられ、また、吸気管15内を流れる空気の流量を計測するエアフロメータ32がスロットル弁18上流側の吸気管15内に取付けられる。さらに、機関本体1から排出された排気ガスの温度を計測する排気温度センサ33及び機関本体1から排出された排気ガスの空燃比を計測する空燃比センサ34が排気ポート又は排気マニホルド19に取付けられる。さらに、排気浄化触媒20の温度(以下、「触媒温度」と称す)を検出する触媒温度センサ35がケーシング21に取り付けられ、機関本体1のクランクシャフト(図示せず)には内燃機関による駆動力であるトルクを検出するためのトルクセンサ(図示せず)が取り付けられる。これらセンサ31〜35は、計測装置本体40に接続され、計測装置本体40ではこれらセンサ31〜35によって計測された各特性パラメータの値が表示、保存される。
一方、上述したスロットル弁駆動用のステップモータ17、燃料噴射弁11及び点火プラグ10は計測装置本体に接続され、これらステップモータ17等は計測装置本体40によって駆動、制御される。すなわち、計測装置本体40によって制御パラメータの値が変更される。
例えば、適合作業によって様々な機関運転条件におけるMBTを求める場合を考えると、まず、或る機関運転条件において点火時期のみを変化させた複数の計測点において各計測点毎に特性パラメータであるトルク、失火等の計測を行う。得られたトルク、失火等の計測値に基づいてその機関運転条件におけるMBTが求められる。そして、機関運転条件を僅かに変化させてから、例えば機関負荷のみを僅かに変えてから再び上記方法でその機関運転条件におけるMBTが求められる。このような作業を、実際に運転が行われると想定される全ての機関運転条件(以下、単に「全ての機関運転条件」と称す)について行う。こうして、全ての機関運転条件におけるMBTが求められる。しかしながら、このように全ての機関運転条件において特性パラメータの値を計測するとなると、その計測点数は非常に多いものとなる。
また、上述したように点火時期を変化させて特性パラメータの計測を行う場合、特性パラメータとして例えば排気ガスの温度、触媒温度及び機関冷却水の温度等、トルク以外のパラメータも計測される。すなわち、例えば内燃機関の排気浄化のために排気浄化触媒20を高温にする必要があるような場合等には点火時期を上記MBTにせずに触媒温度が高温になるような点火時期に点火を行うのが好ましい。斯かる点火時期に点火を行うためには各機関運転条件における点火時期毎に排気浄化触媒20の達する温度等を計測する必要がある。このため、上述したようなトルク以外の特性パラメータも計測される。
ここで、例えば、点火プラグ10による点火時期を変えると、トルクや機関本体1から排出される排気温度は比較的迅速に変わるが、触媒温度等は迅速には変わらず、点火時期が変化した後或る程度時間が経過しないと触媒温度等は安定しない。このような特性パラメータの値が安定しないときにその特性パラメータの値の計測を行うと、その点火時期における特性パラメータの値を正確に計測することができない。そこで、このような適合作業においては、通常、或る計測点における特性パラメータの値の計測は制御パラメータの値を変えた後或る程度時間が経過して、特性パラメータの値が安定して定常状態となってから行われる。これにより、機関運転状態が定常状態となったときの特性パラメータの計測値(以下、「定常計測値」と称す)が検出される。
ところが、このように各計測点毎に特性パラメータの値が安定するまで待ってから計測を行うと、上述したように計測点数が非常に多いことを考えると、計測工数は膨大なものとなってしまう。
そこで、本実施形態では、一部の計測点においては特性パラメータの値が安定して定常状態となるまで待たずに計測を行うこととしている。以下では、制御パラメータとして点火時期を変化させて、特性パラメータとして触媒温度を計測する場合を例にとって説明する。
図2は、点火時期以外の機関運転条件(機関負荷及び機関回転数等)を一定に維持しつつ点火時期(制御パラメータ)を変化させた場合における触媒温度(特性パラメータ)のタイムチャートである。図中の点火時期ig1〜ig3は、各機関運転条件における点火時期の計測点の一部を示しており、点火時期ig1からig3に向けて同じ角度間隔で徐々に遅角された点火時期となっている。図2を参照すると、時刻t0から時刻t1までは点火時期がig1に維持されており、これに伴って時刻t1の直前においては触媒温度が温度T1で安定する。従って、温度T1は、触媒温度が安定するまで点火時期をig1に維持したときに触媒温度がとる温度であり、点火時期がig1であるときの触媒温度の定常計測値として検出される。
そして図2に示した例では、時刻t1において、点火時期がig1からig2へとステップ的に遅角せしめられる。これに伴って触媒温度は温度T1から徐々に低下していく。
ここで、点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値を検出する場合、従来であれば、点火時期を遅角してから触媒温度が安定するまで点火時期をig2に維持するようにしていた。しかしながら、本実施形態では、図2に示したように、触媒温度が安定するまで点火時期をig2には維持せず、点火時期をig2に遅角してから時間Aが経過すると点火時期をig3に遅角することとしている(時刻t2)。ここで、時間Aは点火時期をig2に遅角してから触媒温度が安定するまでにかかる時間よりも短い時間である。
そして、時刻t2において点火時期をig3にすると触媒温度は徐々に低下していく。その後、時刻t3まで点火時期がig3に維持されており、これに伴って時刻t3の直前においては触媒温度が温度T3で安定する。従って、温度T3は、触媒温度が安定するまで点火時期をig3に維持したときに触媒温度がとる温度であり、点火時期がig3であるときの触媒温度の定常計測値として検出される。
その後、図2に示した例では、時刻t3において、点火時期がig3から再びig2へとステップ的に進角せしめられる。これに伴って触媒温度は温度T3から徐々に上昇していく。このときも、本実施形態では、図2に示したように、触媒温度が安定するまで点火時期をig2には維持せず、点火時期をig2に進角させてから時間Aが経過すると点火時期をig1に進角させることとしている(時刻t4)。そして、時刻t4において点火時期をig1にすると触媒温度は徐々に上昇していく。
点火時期をこのように変化させることにより、上述したように点火時期がig1であるときの触媒温度の定常計測値T1と、点火時期がig3であるときの触媒温度の定常計測値T3とを直接検出することができる。さらに、本実施形態によれば、点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値が、時刻t1〜t2に検出された触媒温度の計測値及び時刻t3〜t4に検出された触媒温度の計測値に基づいて算出される。以下、点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値の算出方法について説明する。
図3は、触媒温度のタイムチャートであり、曲線αは時刻tXにおいて点火時期をig1からig2に遅角させた後の触媒温度の推移、曲線βは時刻tXにおいて点火時期をig3からig2に進角させた後の触媒温度の推移をそれぞれ示している。図3の曲線αから分かるように時刻tXにおいて点火時期をig1からig2に遅角してからig2に維持すると、触媒温度は温度T1から徐々に低下していき、最終的には時刻tZ以降において温度Trとなる。一方、図3の曲線βから分かるように時刻tXにおいて点火時期をig3からig2に進角してからig2に維持すると、触媒温度はT3から徐々に上昇していき、この場合も最終的には時刻tZ以降において温度Trとなる。従って、この温度Trは、点火時期がig2であるときの触媒温度の真の定常値であり、また点火時期をig2に変化させてから触媒温度が安定するまでにかかる時間は時刻tX〜tZである。
ここで、上述した時間Aは点火時期をig2にしてから触媒温度が安定するまでにかかる期間よりも短く、例えば図3の時刻tX〜tYに相当する。従って、点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値を時刻t1〜t2に検出された触媒温度の計測値及び時刻t3〜t4に検出された触媒温度の計測値に基づいて算出することは、点火時期の遅角後に時刻tX〜tYに検出された触媒温度の計測値(すなわち、曲線αのうち時刻tX〜tYの部分)及び点火時期の進角後に時刻tX〜tYに検出された触媒温度の計測値(すなわち、曲線βのうち時刻tX〜tYの部分)から点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値を算出することを意味する。なお、本実施形態では、時刻tX〜tYの時間は時刻tX〜tZの時間の半分よりも短い。
そこで、本実施形態では、点火時期の遅角後に時刻tX〜tYに検出された触媒温度の計測値に基づいて予想される点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値の予想値(以下、「遅角時の予想定常計測値」と称す)Trtと、点火時期の進角後に時刻tX〜tYに検出された触媒温度に基づいて予想される点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値の予想値(以下、「進角時の予想定常計測値」と称す)Tadとを算出すると共に、これら予想定常計測値に基づいて点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値を算出することとしている。
ここで、本実施形態では、点火時期の遅角後に時刻tX〜tYに検出された触媒温度のうち最も遅い時刻tY(時刻t2)において検出された触媒温度T4を遅角時の予想定常計測値Trtとして採用し、点火時期の進角後に時刻tX〜tYに検出された触媒温度のうち最も遅い時刻tY(時刻t4)において検出された触媒温度T5を進角時の予想定常計測値Tadとして採用することとしている。
そして、本実施形態では、このようにして算出された予想定常計測値の平均値を点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2として算出することとしている(T2=(Trt+Tad)/2)。従って、図2に示したように点火時期を変化させることにより、点火時期がig1、ig2、ig3であるときの触媒温度の定常計測値をそれぞれ検出又は算出することができる。
すなわち、本実施形態では、制御パラメータの値に対応する特性パラメータの定常計測値を検出又は算出するにあたって、まず、特性パラメータ(上記例では触媒温度)の値が安定して定常状態となるまで制御パラメータ(上記例では点火時期)の値を第一の値(上記例では点火時期ig1)に維持する。この第一の値は、制御パラメータの計測点のうちの一つである。これにより、制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値が検出される。
その後、制御パラメータの値を第一の値から一方向に中間値(上記例では点火時期ig2)へと変化させ、特性パラメータの値が安定する前に他の値へと変化させる。この「他の値」は、第一の値又は中間値以外の値であり、後述する第二の値であってもよいし第二の値以外の値であってもよい。また、中間値は、制御パラメータの計測点のうちの一つである。制御パラメータの値が中間値に維持されている間には、特性パラメータの値が一方向変化時の計測値として検出される。
次いで、特性パラメータの値が安定して定常状態となるまで制御パラメータの値を第二の値(上記例では点火時期ig3)に維持する。これにより、制御パラメータの値が第二の値であるときの特性パラメータの定常計測値が検出される。第二の値は、制御パラメータの計測点のうちの一つであり、上記中間値が第一の値と第二の値との間の値となるような値とされる。その後、制御パラメータの値を第二の値から上記一方向とは逆方向に中間値へと変化させ、特性パラメータの値が安定する前に他の値へと変化させる。この「他の値」は、第一の値、第二の値及び中間値以外の値であるのが好ましい。制御パラメータの値が中間値に維持されている間には、特性パラメータの値が逆方向変化時の計測値として検出される。
そして、制御パラメータの値を第一の値から中間値へと変化させた後の特性パラメータの計測値(一方向変化時の計測値)と、制御パラメータの値を第二の値から中間値へと変化させた後の特性パラメータの計測値(逆方向変化時の計測値)とに基づいて、制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値が算出される。
このように、本実施形態によれば、特性パラメータの値が安定して定常状態となるまで制御パラメータの値を中間値に維持することなく制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出することができるようになる。特に、本実施形態では、制御パラメータの値を第一の値から中間値へと変化させてから中間値に維持する時間と、制御パラメータの値を第二の値から中間値へと変化させてから中間値に維持する時間とを合計した時間は、制御パラメータの値を中間値に維持して特性パラメータの値を安定させるのに必要な時間よりも短い。従って、制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を短い時間で求めることができる。
さらに、本実施形態によれば、制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を、制御パラメータを一方向に変化させて中間値にしたときの特性パラメータの値と、制御パラメータを逆方向に変化させて中間値にしたときの特性パラメータの値とに基づいて算出することとしている。このため、制御パラメータを一方向に変化させて中間値にしたときの特性パラメータの値のみに基づいて算出する場合に比べて、制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を高い精度で算出することができるようになる。
このように、本実施形態によれば、制御パラメータの各値に対応する特性パラメータの定常計測値の算出精度を高く維持しつつ、計測工数を少なくすることができる。
なお、特性パラメータの値が安定して定常状態にあるか否かの判断は、単位時間当たりの特性パラメータの値の変化量が所定量以下の少ない量となっているか否かに基づいて判断され、単位時間当たりの特性パラメータの値の変化量が所定量以下となっている場合に特性パラメータの値が安定していると判断される。例えば、上記実施形態では、点火時期を変化させた後に触媒温度の単位時間当たりの変化温度が所定温度以下となっている場合に触媒温度が安定したと判断される。或いは、制御パラメータの値を変化させた後に通常特性パラメータの値が安定するまでにかかる時間を予め実験等により求め、使用時においては制御パラメータの値を変化させた後に上記時間が経過したときに特性パラメータの値が安定したと判断するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、時刻t4以降点火時期を再びig1に戻しているが、このように時刻t4以降に点火時期を戻す必要はなく、時刻t4以降において点火時期を他の計測点に変えて時刻t0〜t4のサイクルを再び繰り返すようにするのが好ましい。例えば、図4に示したように、時刻t0〜t4までの間に三つの点火時期ig1、ig2、ig3について触媒温度の定常計測値が算出されている場合、これら点火時期とは異なる点火時期(例えば、ig4、ig5、ig6等)について時刻t0〜t4のサイクルを繰り返すのが好ましい。すなわち、時刻t4において、既に計測が行われた点火時期とは異なる点火時期ig4に点火時期を変化させると共に、触媒温度が安定するまで点火時期をig4に維持する。そして、触媒温度が安定して点火時期をig4としたときの触媒温度の定常計測値を計測した後、時刻t5において点火時期をig4からig5へと変化させる。そして、点火時期をig5へと変化させてからは触媒温度が安定するまで点火時期をig5には維持せず、点火時期をig5に変化させてから上記時間Aが経過すると点火時期をig6へと変化させる。その後、触媒温度が安定するまで点火時期をig6に維持し、点火時期を再びig5へと変化させる。このように点火時期を順次変化させることにより、点火時期ig4〜ig6における触媒温度の定常計測値が計測される。
さらに、上記実施形態では、点火時期を進角又は遅角させるに当たってステップ状に変化させているが、ステップ状でなく徐々に変化させるようにしてもよい。これは、例えば機械式の可変動弁機構を用いていて制御パラメータとして吸気弁の位相角を用いている場合、吸気弁の位相角を変える際には位相角をステップ的に変化させることは困難なであるが、そのような場合であっても本発明を適用することを意味している。この場合、制御パラメータが徐々に変化せしめられた後に計測対象の値(所定の計測点)となってから特性パラメータの値の計測が行われる。
次に、本発明の上記第一実施形態の変更例について説明する。上記実施形態では、点火時期の遅角後に時刻tX〜tYに検出された触媒温度のうち最も遅い時刻tY(時刻t2)における触媒温度T4を遅角時の予想定常計測値Trtとして採用し、点火時期の進角後に時刻tX〜tYに検出された触媒温度のうち最も遅い時刻tY(時刻t4)における触媒温度T5を進角時の予想定常計測値Tadとして採用することとしているが、予想定常計測値は他の方法で算出されてもよい。
別の方法としては、例えば漸化式モデルを用いて予想定常計測値を算出することが考えられる。そこで、本変更例では、漸化式モデルとして後述するARXモデルを用いて予想定常計測値を算出することとしている。
図5は、入力値(例えば、点火時期)yを変化させた場合の入力値y及び出力値(例えば、触媒温度)uのタイムチャートである。図示した例では、時刻t7においてステップ入力があった場合における出力値の一般的な推移を示しており、出力値は漸近線のように推移している。
一般に、時刻t7においてステップ入力があった後の出力値の推移は、下記式(1)で表される。
y(k+1)=a・y(k)+b・u(k) …(1)
ここで、kは時刻t7以降における出力値の計測回数を表しており、y(1)は時刻t7以降の第1回目の計測時における出力値、u(1)は時刻t7以降の第1回目の計測時における入力値をそれぞれ表している。また、a、bは定数である。
y(k+1)=a・y(k)+b・u(k) …(1)
ここで、kは時刻t7以降における出力値の計測回数を表しており、y(1)は時刻t7以降の第1回目の計測時における出力値、u(1)は時刻t7以降の第1回目の計測時における入力値をそれぞれ表している。また、a、bは定数である。
ここで、時刻t7から時間Aだけ後の時刻をt8として、時刻t7〜t8において出力値を少なくとも3回計測すると、下記式(2)に示したような二つの等式が求まる。
このようにして求められた連立方程式を解けば、定数a、bの値が求まる。ただし、実際には、例えば触媒温度のような出力値にはデータのバラツキやノイズ等が存在するため、時刻t7〜t8においてできるだけ多く計測を行うと共に検出された多数の出力値に基づいて最小二乗法等により定数a、bを算出するのが好ましい。
ここで、時刻t7以降、入力値uを一定の値に維持すると(すなわち、u(1)=u(2)=u(3)=…=u(∞))、出力値yの値はやがて或る値y(∞)で安定する。このような値y(∞)は、入力値がu(∞)であるときの出力値yの定常計測値を表しており、下記式(3)で表される。
上記実施形態について考えると、入力値uを点火時期とし、出力値yを触媒温度とすると、例えば図2の時刻t1〜t2の間に少なくとも3回触媒温度を計測すれば、これら触媒温度の計測値に基づいて上記ARXモデルを用いて点火時期がig2であるときの遅角時の予想定常計測値Trtを算出することができ、また図2の時刻t3〜t4の間に少なくとも3回触媒温度を計測すれば、これら触媒温度の計測値に基づいて上記ARXモデルを用いて点火時期がig2であるときの進角時の予想定常計測値Tadを算出することができる。
このように、ARXモデルを用いて予想定常計測値を算出すると、予想定常計測値自体を真の定常値に近似した値とすることができるようになる。このように真の定常値に近似した予想定常計測値に基づいて定常計測値を算出することにより、定常計測値の算出精度を高いものとすることができるようになる。
すなわち、本実施形態では、制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出するにあたり、一方向変化時の計測値に基づいて制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値の予想値(以下、「一方向変化時の予想値」と称す)を算出すると共に、逆方向変化時の計測値に基づいて制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値の予想値(以下、「逆方向変化時の予想値」と称す)を算出し、これら予想値に基づいて制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出するようにしている。
特に、上記第一実施形態では、一方向変化時の予想値は一方向変化時の計測値のうち最も遅く検出された値とされ、逆方向変化時の予想値は逆方向変化時の計測値のうち最も遅く検出された値とされるのに対し、上記変更例では一方向変化時の予想値は一方向変化時の計測値に基づいてARXモデルを用いて算出され、逆方向変化時の予想値は逆方向変化時の計測値に基づいてARXモデルを用いて算出される。従って、上記第一実施形態によれば、小さい計算負荷で予想値を算出することができ、変更例によれば高い精度で予想値を算出することができるようになる。
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、基本的に上記第一実施形態と同様にして各制御パラメータの値に対する特性パラメータの値が検出及び算出される。しかしながら、上記実施形態では、遅角時の予想定常計測値Trtと進角時の予想定常計測値Tadとの平均値を点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2としているが、本実施形態では、これら予想定常計測値Trt、Tadに基づいて算出された上記平均値とは別の値を点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値としている。
具体的には本実施形態によれば、点火時期がig1であるときの触媒温度の定常計測値T1と遅角時の予想定常計測値Trtとの差分をΔb、点火時期がig3であるときの触媒温度の定常計測値T3と進角時の予想定常計測値Tadとの差分をΔaとすると、点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2は下記式(4)に基づいて算出される。
T2=(Δa・Trt+Δb・Tad)/(Δa+Δb) …(4)
T2=(Δa・Trt+Δb・Tad)/(Δa+Δb) …(4)
このように点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2を上記式(4)に基づいて算出することにより、点火時期と触媒温度との関係のように制御パラメータと特性パラメータとが比例関係にない場合であっても、定常計測値T2をより正確に算出することができるようになる。この理由について以下に説明する。
図6は、図3と同様な触媒温度のタイムチャートであり、曲線αは時刻tXにおいて点火時期をig1からig2に遅角させた後の触媒温度の推移、曲線βは時刻tXにおいて点火時期をig3からig2に進角させた後の触媒温度の推移をそれぞれ示している。
図6に示したように、点火時期がig1であるときの触媒温度の定常計測値T1と遅角時の予想定常計測値Trtとの差分をΔb、点火時期がig3であるときの触媒温度の定常計測値T3と進角時の予想定常計測値Tadとの差分をΔaとし、また遅角時の予想定常計測値Trtと点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2との差分をΔd、進角時の予想定常計測値Tadと点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2との差分をΔcとする。
ここで、一般に点火時期と触媒温度とは比例関係となっておらず、このため点火時期ig1〜ig2の角度間隔と点火時期ig2〜ig3の角度間隔とが等しくても、点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2を点火時期がig2であるときの遅角時の予想定常計測値Trtと点火時期がig2であるときの進角時の予想定常計測値Tadとの平均値として算出すると、点火時期がig2であるときの触媒温度の真の定常値に対して多少の誤差が生じてしまう場合がある。
一方、このように点火時期と触媒温度とが比例関係になくても、Δa:Δb(変化比)とΔc:Δd(誤差比)の比率を同一と仮定して点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2を算出すると、算出された定常計測値T2と真の定常値との誤差は極めて小さくなると考えられる。そこで、Δa:Δb=Δc:Δdとすると、下記式(5)が導かれ、この式(5)より上記式(4)が導かれる。
Δa・|Trt−T2|=Δb・|T2−Tad| …(5)
Δa・|Trt−T2|=Δb・|T2−Tad| …(5)
すなわち、本実施形態では、上記第一実施形態と同様にして一方向変化時の予想値と逆方向変化時の予想値とを算出する。そして、制御パラメータが第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と一方向変化時の予想値との差分と制御パラメータが第二の値であるときの特性パラメータの定常計測値と逆方向変化時の予想値との差分との比を変化比とし、一方向変化時の予想値と制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値との差分と逆方向変化時の予想値と制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値との差分との比を誤差比とすると、誤差比が変化比に一致するように制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値を算出する。これにより、制御パラメータと特性パラメータとが比例関係となっていない場合であっても、点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2を高い精度で算出することができるようになる。
なお、上記実施形態では、上記式(4)においては点火時期がig1であるときの触媒温度の定常計測値T1と遅角時の予想定常計測値Trtとの差分Δa及び点火時期がig3であるときの触媒温度の定常計測値T3と進角時の予想定常計測値Tadとの差分Δbを用いているが、これら差分Δa及びΔbはそれぞれ点火時期をig1からig2に遅角した後の触媒温度の変化量及び点火時期をig3からig2に進角した後の触媒温度の変化量を表すようなものであれば如何なるパラメータが用いられても良く、例えば、Δaの代わりに点火時期をig1からig2に遅角した後から時間Aの間の触媒温度の変化量を用いると共にΔbの代わりに点火時期をig3からig2に進角した後から時間Aの間の触媒温度の変化量を用いるようにしてもよい。
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態では、基本的に上記第二実施形態と同様にして各制御パラメータの値に対する特性パラメータの定常計測値が検出及び算出される。しかしながら、上記実施形態では、全ての機関運転条件において上述したようにして制御パラメータが各値であるときの特性パラメータの定常計測値が検出及び算出されるのに対して、本実施形態では或る一つの機関運転条件においてのみ上述したようにして制御パラメータが各値であるときの特性パラメータの定常計測値を検出及び算出すると共に他の機関運転条件においては別の方法で斯かる特性パラメータの定常計測値を検出及び算出することとしている。
具体的には、或る機関運転条件において上記第二実施形態に示したように点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2を算出する。このようにして定常計測値T2を算出した場合、Δa:Δb=Δc:Δdであることから、(Δb+Δd)/Δbの値と(Δa+Δc)/Δaの値とは等しくなる。そこで、これら値を誤差係数Kとして下記式(6)のように定める。
このようにして定められた誤差係数Kは、点火時期がig1であるときの触媒温度の定常計測値T1と遅角時の予想定常計測値Trtとの差分Δbと、点火時期がig1であるときの触媒温度の定常計測値T1と点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2との差分(Δb+Δd)との比率、及び点火時期がig3であるときの触媒温度の定常計測値T3と進角時の予想定常計測値Tadとの差分Δaと、点火時期がig3であるときの触媒温度の定常計測値T3と点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2との差分(Δa+Δc)との比率を表している。
このような比率は、機関運転条件が変化しても大きく変化せず、機関運転条件に関わらずほぼ一定の値となる。そこで、本実施形態では、或る機関運転条件において上記第二実施形態と同様にしてこれら比率を表す誤差係数Kを算出すると共に、この機関運転条件とは別の機関運転条件においては点火時期をig1からig2に遅角させた後の時間Aの間の触媒温度の計測値のみに基づいて、或いは点火時期をig3からig2に進角させた後の時間Aの間の触媒温度の計測値のみに基づいて、点火時期ig2に対応する触媒温度が算出される。
すなわち、上記別の機関運転条件においては点火時期をig1からig2に遅角させた後の時間Aの間の触媒温度の計測値に基づいて遅角時の予想定常計測値Trtが算出されると共に、算出された遅角時の予想定常計測値Trtから点火時期がig1であるときの定常計測値T1を減算した値に上記誤差係数Kを乗算したものを点火時期がig1であるときの定常計測値T1に加算することによって点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2が算出される(T2=T1+K・(Trt−T1)。
或いは、上記別の機関運転条件においては点火時期をig3からig2に進角させた後の時間Aの間の触媒温度の計測値に基づいて遅角時の予想定常計測値Tadが算出されると共に、算出された遅角時の予想定常計測値Tadから点火時期がig3であるときの定常計測値T3を減算した値に上記誤差係数Kを乗算したものを点火時期がig3であるときの定常計測値T3に加算することによって点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2が算出される(T2=T3+K・(Trt−T3)。
このようにして点火時期がig2であるときの触媒温度の定常計測値T2を算出することにより、定常計測値T2を算出するにあたって、上記別の機関運転条件においては点火時期をig1からig2に遅角させた後の期間Aの間の触媒温度の計測値のみ、或いは点火時期をig3からig2に進角させた後の期間Aの間の触媒温度の計測値のみが必要となるため、計測工数を低減することができるようになる。
このように、本実施形態では、まず、上記第二実施形態と同様にして或る機関運転条件において制御パラメータが中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出し、制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と一方向変化時の予想値との差分に対する制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値との差分の比率、又は制御パラメータの値が第二の値であるときの特性パラメータの定常計測値と逆方向変化時の予想値との差分に対する制御パラメータの値が第二の値であるときの特性パラメータの定常計測値と制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値との差分の比率を誤差係数として算出する。その後、上記或る機関運転条件とは異なる機関運転条件において、一方向変化時の予想値又は逆方向変化時の予想値を算出すると共に、制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と一方向変化時の予想値との差分に誤差係数を乗算することによって又は制御パラメータの値が第二の値であるときの特性パラメータの定常計測値と逆方向変化時の予想値との差分に誤差係数を乗算することによって制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出することとしている。
これにより、本実施形態によれば、計測工数を少なくしつつ比較的正確に定常計測値を算出することができるようになる。
1 機関本体
5 吸気弁
8 排気弁
10 点火プラグ
11 燃料噴射弁
18 スロットル弁
31 スロットル開度センサ
32 エアフロメータ
33 排気温度センサ
34 空燃比センサ
40 計測装置本体
5 吸気弁
8 排気弁
10 点火プラグ
11 燃料噴射弁
18 スロットル弁
31 スロットル開度センサ
32 エアフロメータ
33 排気温度センサ
34 空燃比センサ
40 計測装置本体
Claims (10)
- 内燃機関の制御パラメータの変化に追従して特性パラメータが変化し得る内燃機関において、特性パラメータの値が安定するまで制御パラメータの値を所定値に維持したときに計測される特性パラメータの値を、上記制御パラメータの値が上記所定値であるときの特性パラメータの定常計測値として検出する、特性パラメータ計測方法において、
上記特性パラメータの値が安定するまで上記制御パラメータの値を第一の値に維持してから制御パラメータの値を一方向に中間値へ変化させると共に制御パラメータの値を変化させてから特性パラメータの値が安定する前までに特性パラメータの値を一方向変化時の計測値として検出し、
上記特性パラメータの値が安定するまで上記制御パラメータの値を第二の値に維持してから制御パラメータの値を逆方向に中間値へ変化させると共に制御パラメータの値を変化させてから特性パラメータの値が安定する前までに特性パラメータの値を逆方向変化時の計測値として検出し、
上記特性パラメータの一方向変化時の計測値及び逆方向変化時の計測値に基づいて上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出する、内燃機関の特性パラメータ計測方法。 - 上記制御パラメータの値を上記第一の値から上記中間値へ変化させるとき及び上記制御パラメータの値を上記第二の値から上記中間値へ変化させるときには制御パラメータの値をステップ状に変化させるようにした、請求項1に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
- 上記制御パラメータの値を上記第一の値から一方向に中間値へ変化させて該中間値で維持した後に上記第二の値へ変化させて上記特性パラメータの値が安定するまで制御パラメータの値を第二の値に維持し、その後、上記制御パラメータの値を上記第二の値から逆方向に中間値へ変化させて該中間値で維持するようにした、請求項1又は2に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
- 上記中間値は上記第一の値と第二の値との中央の値である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
- 上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出するときには、上記一方向変化時の計測値に基づいて上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値の予想値を算出し、上記逆方向変化時の計測値に基づいて上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値の予想値を算出し、これら予想値に基づいて上記制御パラメータの値が上記中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
- 上記一方向変化時の計測値に基づいて算出される予想値は、該一方向変化時の計測値に基づいて漸化式モデルを用いて算出され、上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出される予想値は、該逆方向変化時の計測値に基づいて漸化式モデルを用いて算出される、請求項5に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
- 上記一方向変化時の計測値に基づいて算出される予想値は、該一方向変化時の計測値のうち最も遅く検出された値とされ、上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出される予想値は、該逆方向変化時の計測値のうち最も遅く検出された値とされる、請求項5に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
- 上記予想値に基づいて定常計測値を算出するときには、上記一方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値と、上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値との平均値を定常計測値とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
- 上記制御パラメータの値が上記第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と上記一方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値との差分と、上記制御パラメータの値が上記第二の値であるときの特性パラメータの定常計測値と上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値との差分との比を変化比とし、上記一方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値と上記制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値との差分と、上記逆方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値と上記制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値との差分との比を誤差比とすると、
上記予想値に基づいて定常計測値を算出するときには上記誤差比が上記変化比に一致するように上記制御パラメータの値が中間値であるときの定常計測値を算出する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。 - 所定の機関運転条件において、上記制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と上記一方向変化時の計測値に基づいて算出された予想値との差分に対する上記制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値と上記制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値との差分の比率を誤差係数として算出し、上記所定の機関運転条件とは異なる機関運転条件において特性パラメータの値が安定するまで制御パラメータの値を第一の値に維持してから制御パラメータの値を中間値へ変化させると共に特性パラメータの値が安定する前までに特性パラメータの値を一方向変化時の計測値として検出し、検出された一方向変化時の計測値に基づいて予想値を算出し、算出された予想値と上記制御パラメータの値が第一の値であるときの特性パラメータの定常計測値との差分に上記誤差係数を乗算することで上記所定の機関運転条件とは異なる機関運転条件における制御パラメータの値が中間値であるときの特性パラメータの定常計測値を算出する、請求項9に記載の内燃機関の特性パラメータ計測方法。
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-
2006
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