図1は、本発明の実施例に係る電磁駆動弁を有する内燃機関の概略図である。同図に示す内燃機関1は、複数の気筒3を有しており、各気筒3は内部に燃焼室16が形成されたシリンダヘッド8及びシリンダブロック9を有している。また、シリンダブロック9の内部には、気筒3内を往復運動可能に設けられたピストン10が内設されており、当該内燃機関1の運転時におけるピストン10の下死点方向には、クランク軸であるクランクシャフト15が設けられている。このように配設されるピストン10とクランクシャフト15とは、コネクティングロッド14によって接続されている。これにより、クランクシャフト15はピストン10の往復運動に伴い回転運動が可能に設けられている。
また、シリンダブロック9には、運転時の内燃機関1を循環して内燃機関1を冷却する冷却水が通る冷却水路18が形成されている。また、シリンダヘッド8は、シリンダブロック9の、当該シリンダブロック9におけるピストン10が上死点に向かう方向側の端部に、ガスケット(図示省略)を介して固定されている。
また、シリンダヘッド8には、点火プラグ25と、電磁駆動弁40とが設けられており、これらの点火プラグ25及び電磁駆動弁40は、複数形成される気筒3のそれぞれの気筒3に設けられている。このうち、電磁駆動弁40には、当該電磁駆動弁40に電流を供給することにより往復運動が可能な弁体45が、各電磁駆動弁40に設けられている。また、燃焼室16には吸気通路21と排気通路22とが接続されており、前記電磁駆動弁40は、この吸気通路21側と排気通路22側とに設けられ、吸気通路21側に設けられる電磁駆動弁40は吸気側電磁駆動弁41、排気通路22側に設けられる電磁駆動弁40は排気側電磁駆動弁42となっている。
また、これらのように設けられる電磁駆動弁40の弁体45は、往復運動をすることにより気筒3内を開閉可能な吸排気バルブとして設けられている。詳しくは、電磁駆動弁40の弁体45のうち、吸気側電磁駆動弁41の弁体45は、往復運動をすることにより吸気通路21と気筒3内、或いは燃焼室16とを連通または遮断するように設けられた吸気弁である吸気バルブ46として設けられている。また、電磁駆動弁40の弁体45のうち、排気側電磁駆動弁42の弁体45は、往復運動をすることにより排気通路22と気筒3内、或いは燃焼室16とを連通または遮断するように設けられた排気弁である排気バルブ47として設けられている。これらのように、電磁駆動弁40は、弁体45が往復運動をすることにより、吸気バルブ46や排気バルブ47の開弁や閉弁が可能に設けられている。これらの吸気バルブ46及び排気バルブ47は、シリンダヘッド8に設けられた電磁駆動弁40が有しているため、吸気バルブ46及び排気バルブ47は、内燃機関1運転時におけるピストン10の上死点方向に設けられている。
また、点火プラグ25は、吸気側電磁駆動弁41と排気側電磁駆動弁42との間に設けられており、さらに、高電圧をかけた際に放電する点火部26を有し、この点火部26が燃焼室16内に位置するように設けられている。また、吸気通路21には、内燃機関1の運転時に使用される燃料を吸気通路21内に噴射する燃料供給手段であるインジェクタ30が設けられている。また、シリンダヘッド8には、電磁駆動弁40の開弁時や閉弁時に、弁体45の加速度を検出する加速度検出センサ35が設けられている。
また、電磁駆動弁40には、当該電磁駆動弁40に駆動電流である励磁電流を供給する駆動回路33が接続されている。電磁駆動弁40は、この駆動回路33から供給される励磁電流により作動可能に設けられている。このように設けられる駆動回路33や加速度検出センサ35は、当該内燃機関1を搭載する車両(図示省略)の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)80に接続されている。
ECU80には、処理部81、記憶部88及び入出力部89が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、ECU80に接続されている駆動回路33は、入出力部89に接続されており、入出力部89は、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部88には、本発明に係る内燃機関1を制御するコンピュータプログラム、即ち、本発明に係る内燃機関1の制御方法を実現するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部88は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、処理部81は、メモリ(図示省略)及びCPU(Central Processing Unit)(図示省略)により構成されており、少なくとも、電磁駆動弁40の弁体45を作動させ、吸排気バルブの開閉を制御をする電磁駆動弁制御手段である電磁駆動弁制御部82と、電磁駆動弁40の開閉時における弁体45の加速度を取得する加速度取得手段である加速度取得部83と、弁体45とピストン10とが干渉しているかを判断する干渉判断手段である干渉判断部84と、電磁駆動弁40が起動中であるかを判断する起動判断手段である起動判断部85と、電磁駆動弁40の弁体45が開弁動作中か閉弁動作中であるかを判断する開閉判断手段である開閉判断部86と、電磁駆動弁40の開弁時のリフト量を判断するリフト量判断手段であるリフト量判断部87と、を有している。
当該内燃機関1に設けられる電磁駆動弁40の制御は、車両の各部に設けられたセンサ(図示省略)による検出結果に基づいて、処理部81が前記コンピュータプログラムを当該処理部81に組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて駆動回路33に制御信号を送ることにより、電磁駆動弁40を制御する。その際に処理部81は、適宜記憶部88へ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このように電磁駆動弁40を有する内燃機関1を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU80とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
図2は、図1のA部詳細図である。電磁駆動弁40の弁体45、即ち、吸気バルブ46と排気バルブ47とは、ピストン10に対向する面が球面の一部となって形成されたバルブ側曲面48を有しており、具体的には、バルブ側曲面48は、ピストン10の方向に凸となった球面の一部の形状で形成されている。また、ピストン10には、燃焼室16側の面である頂壁上面11に、当該頂壁上面11において吸気バルブ46や排気バルブ47の往復運動の方向における位置に、凹んで形成されたバルブリセス12が形成されている。このバルブリセス12は、全ての吸気バルブ46及び排気バルブ47に対応する位置に設けられている。また、ピストン10には、このバルブリセス12にピストン側曲面13が形成されている。このピストン側曲面13は、バルブ側曲面48に対向して形成されており、バルブ側曲面48が凸になっている方向と同一方向に凸になって形成された球面の一部の形状で形成されている。即ち、バルブ側曲面48は、ピストン側曲面13の方向に凸となっており、ピストン側曲面13は、バルブ側曲面48に対して凹んで形成されている。
図3は、図2のB部詳細図である。バルブ側曲面48とピストン側曲面13とは、上記のように共に球面の一部の形状となっているため、その断面形状は、円弧となって形成されている。この形状の詳細を、吸気バルブ46のバルブ側曲面48で説明すると、吸気バルブ46のバルブ側曲面48は、吸気バルブ46の往復運動の方向における断面形状が円弧となって形成されている。これに対し、吸気バルブ46のバルブ側曲面48に対向してピストン10に形成されたピストン側曲面13は、吸気バルブ46の往復運動の方向における断面形状が円弧となって形成されている。このように形成されるバルブ側曲面48の円弧の曲率半径r1とピストン側曲面13の曲率半径r2とは、ピストン側曲面13の断面形状である円弧の曲率半径r2の方が、バルブ側曲面48の断面形状である円弧の曲率半径r1よりも大きくなっている。つまり、バルブ側曲面48の円弧とピストン側曲面13の円弧とは、双方の円弧の径方向において外側に位置する円弧であるピストン側曲面13の円弧の曲率半径r2の方が、内側に位置する円弧であるバルブ側曲面48の円弧の曲率半径r1よりも大きくなっている。
さらに、バルブ側曲面48の断面形状である円弧の中心c1と、ピストン側曲面13の断面形状である円弧の中心c2とは、吸気バルブ46の往復運動の方向における同一直線上に位置しており、詳しくは、後述する吸気バルブ46のバルブステム50の中心軸である中心線49上に位置している。なお、このように形成されるバルブ側曲面48とピストン側曲面13とは、吸気バルブ46側のみでなく、排気バルブ47側においても、同様な形状で形成されている。
図4は、図1に示す電磁駆動弁の詳細図である。電磁駆動弁40が有する弁体45は、略円柱形に形成された軸であるバルブステム50に連結されており、バルブステム50は、シリンダヘッド8の内部に固定されたバルブガイド51により軸方向に変位可能に保持されている。このバルブステム50には、当該バルブステム50の両端部のうち、弁体45側の端部の反対側に位置する端部付近にロアリテーナ55が保持されている。さらに、このロアリテーナ55が保持されている側のバルブステム50の端部には、非磁性材料によって略円筒形の形状で形成された軸であるアーマチャシャフト52が接続されている。
また、ロアリテーナ55における弁体45側には、螺旋状に形成されたバネ部材であるロアスプリング56が配設されており、ロアリテーナ55に当接している。このロアスプリング56のロアリテーナ55側に位置する端部の反対側の端部、即ち、弁体45側の端部は、シリンダヘッド8に当接している。このロアスプリング56は、ロアリテーナ55に対して、アーマチャシャフト52方向の付勢力を与えており、ロアリテーナ55を介してバルブステム50及びアーマチャシャフト52もロアスプリング56によって同方向の付勢力が与えられている。
また、アーマチャシャフト52の両端部のうち、バルブステム50側に位置する端部の反対側の端部には、アッパリテーナ60が固定されている。さらに、アッパリテーナ60における前記弁体45側の反対側には、螺旋状に形成されたバネ部材であるアッパスプリング61が配設されており、アッパリテーナ60に当接している。
また、このアッパスプリング61の周囲には、その外周を取り巻くように略円筒形の形状で形成されたアッパキャップ65が配設されている。このように円筒形の形状で形成されるアッパキャップ65の両端部のうち、前記弁体45側に位置する端部の反対側の端部には、当該アッパキャップ65に螺合したアジャストボルト66が設けられており、アッパスプリング61は、アッパリテーナ60に当接している側の反対側の端部が、このアジャストボルト66に当接している。このアッパスプリング61は、アッパリテーナ60に対して、ロアリテーナ55方向の付勢力を与えており、アッパリテーナ60を介してアーマチャシャフト52及びバルブステム50もアッパスプリング61によって同方向の付勢力が与えられている。
また、アーマチャシャフト52の外周には、アーマチャ53が接合されている。このアーマチャ53は、軟磁性材料で構成された環状の部材となっている。このアーマチャ53におけるアッパリテーナ60側には、アッパコイル62及びアッパコア63が配設されており、アーマチャ53におけるロアリテーナ55側には、ロアコイル57及びロアコア58が配設されている。これらのアッパコア63及びロアコア58は、共に磁性材料で構成された部材となっている。
また、アッパコア63及びロアコア58は、中央部に貫通孔が形成された略円筒形の形状で形成されており、アーマチャシャフト52は、アッパコア63及びロアコア58に形成された貫通孔を通り、摺動可能に保持されている。また、アッパコイル62及びロアコイル57は、前記駆動回路33(図1参照)に接続されている。この駆動回路33は、ECU80から供給される制御信号に応じてアッパコイル62及びロアコイル57に駆動電流である励磁電流を供給する。
アッパコア63及びロアコア58の外周には、略円筒形の形状で形成された外筒68が配設されている。アッパコア63とロアコア58とは、双方の間に所定の間隔が確保されるように、外筒68により保持されている。また、アッパキャップ65は、アッパコア63におけるロアコア58側の端部の反対側に位置する端部の端面に固定されている。また、アジャストボルト66は、アッパキャップ65に螺合しているので、螺合している部分をねじ込むことによりアッパキャップ65に対する位置を調整することができ、アジャストボルト66に当接しているアッパスプリング61のアッパキャップ65に対する相対的な位置を調整することができる。これにより、アッパスプリング61に当接しているアッパリテーナ60及びアッパリテーナ60が固定されているアーマチャシャフト52を介してアーマチャ53の位置を調整することができ、この調整により、アーマチャ53の中立位置は、アッパコア63とロアコア58との中央に調整される。即ち、アッパコイル62及びロアコイル57に励磁電流を供給していない状態のアーマチャ53の位置が、アッパコア63とロアコア58との中央になるようにアジャストボルト66により調整される。
この実施例に係る内燃機関1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。前記内燃機関1の運転中は、ピストン10がシリンダブロック9内で往復運動を繰り返すことにより、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程を1つのサイクルとしてこのサイクルを繰り返して運転し、クランクシャフト15が回転する。また、このように内燃機関1を運転する際には、ECU80から制御信号を受けた駆動回路33が電磁駆動弁40に対して励磁電流を供給することにより、電磁駆動弁40を作動させる。この作動は、詳しくは、内燃機関1の運転時には、ECU80の処理部81が有する電磁駆動弁制御部82から制御信号を駆動回路33に対して送信し、制御信号を受けた駆動回路33が電磁駆動弁40のアッパコイル62やロアコイル57に対して励磁電流を供給することにより、電磁駆動弁40を作動させる。
図5は、図1のA部詳細図であり、弁体の開閉状態を示す説明図である。電磁駆動弁40のアッパコイル62やロアコイル57に励磁電流を与えない状態では、アーマチャシャフト52やバルブステム50は、アッパスプリング61やロアスプリング56の付勢力がつり合う位置に保持され、アーマチャ53は、アッパコア63とロアコア58との中央に位置し、中立位置となる(図4参照)。このように、アーマチャ53等が中立位置となっている場合には、弁体45は吸気通路21や排気通路22を閉じておらず、半分開いた状態となる。即ち、中立状態70の弁体45は、吸気通路21または排気通路22から離れ、ピストン10の方向に若干突出している。なお、前記バルブリセス12(図2参照)は、弁体45が少なくとも閉弁状態71から中立状態70の間に位置する場合には、弁体45とピストン10とが干渉しない深さでピストン10の頂壁上面11に凹んで形成されている。
図6は、図4に示す電磁駆動弁の閉弁状態を示す説明図である。また、電磁駆動弁40を閉弁させる際には、ECU80の電磁駆動弁制御部82から駆動回路33に制御信号を送り、駆動回路33からアッパコイル62に対して励磁電流を供給する。アッパコイル62に駆動電流が供給されると、アッパコイル62に電磁力が発生し、アッパコイル62の電磁力に伴いアッパコア63にも電磁力が発生する。このようにアッパコア63に電磁力が発生すると、この電磁力はアーマチャ53をアッパコア63の方向に吸引する吸引力となってアーマチャ53に作用する。アッパコア63からアーマチャ53に作用するこの吸引力は、アッパスプリング61からアッパリテーナ60に作用する付勢力に対向する力となるが、アッパコア63の吸引力はアッパスプリング61の付勢力よりも大きくなっている。このため、アーマチャ53はアッパコア63の吸引力が作用する方向に移動し、アッパコア63の方向に移動してアッパコア63に当接して停止する。
また、このように、アーマチャ53が移動すると、アーマチャ53と一体に形成されたアーマチャシャフト52やバルブステム50も一体となって移動し、弁体45も移動する。アーマチャ53がアッパコア63の方向へ移動し、弁体45が同方向に移動すると、弁体45は吸気通路21または排気通路22に近付く方向に移動する。これにより、吸気通路21側に設けられる弁体45である吸気バルブ46は吸気通路21を閉弁し、排気通路22側に設けられる弁体45である排気バルブ47は排気通路22を閉弁する(図5参照)。即ち、閉弁状態71の弁体45は、吸気通路21または排気通路22と燃焼室16内とを遮断する。
図7は、図4に示す電磁駆動弁の開弁状態を示す説明図である。また、電磁駆動弁40を開弁させる際には、ECU80の電磁駆動弁制御部82から駆動回路33に制御信号を送り、駆動回路33からロアコイル57に対して励磁電流を供給する。ロアコイル57に駆動電流が供給されると、ロアコイル57に電磁力が発生し、ロアコイル57の電磁力に伴いロアコア58にも電磁力が発生する。このようにロアコア58に電磁力が発生すると、この電磁力はアーマチャ53をロアコア58の方向に吸引する吸引力となってアーマチャ53に作用する。ロアコア58からアーマチャ53に作用するこの吸引力は、ロアスプリング56からロアリテーナ55に作用する付勢力に対向する力となるが、ロアコア58の吸引力はロアスプリング56の付勢力よりも大きくなっている。このため、アーマチャ53はロアコア58の吸引力が作用する方向に移動し、ロアコア58の方向に移動してロアコア58に当接して停止する。
また、このように、アーマチャ53が移動すると、アーマチャ53と一体に形成されたアーマチャシャフト52やバルブステム50も一体となって移動し、弁体45も移動する。アーマチャ53がロアコア58の方向へ移動し、弁体45が同方向に移動すると、弁体45は吸気通路21または排気通路22から離れる方向に移動する。これにより、吸気通路21側に設けられる弁体45である吸気バルブ46は吸気通路21を開弁し、排気通路22側に設けられる弁体45である排気バルブ47は排気通路22を開弁する(図5参照)。即ち、開弁状態72の弁体45は、吸気通路21または排気通路22と燃焼室16内とを連通させる。
内燃機関1の運転時には、このようにロアコイル57とアッパコイル62とに必要に応じて交互に励磁電流を流すことにより、弁体45を開弁状態72と閉弁状態71とを繰り替えして作動させる、即ち往復運動させることができ、吸気通路21や排気通路22と気筒3、或いは燃焼室16との連通と遮断とを繰り返すことができる。
内燃機関1の運転時には、このように電磁駆動弁40が作動することより弁体45が往復運動して吸気通路21や排気通路22と燃焼室16との連通と遮断とを繰り返すことにより、吸排気を行ない、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程を繰り返す。各行程の概略は、吸気行程ではインジェクタ30から燃料を噴射することにより吸気通路21内で燃料と空気との混合気を生成し、吸気側電磁駆動弁41が有する吸気バルブ46の開弁時に混合気を気筒3内に吸気する。圧縮行程では、吸気バルブ46も排気バルブ47も閉弁し、この状態でピストン10が上死点方向に移動することにより、気筒3内の混合気を圧縮する。
また、燃焼行程では、点火プラグ25に高電圧の電流を印加し、点火プラグ25の点火部26にアーク放電を発生させることにより、圧縮した混合気が点火する。これにより、圧縮した混合気中の燃料が燃焼するので、燃焼時の圧力によりピストン10が下死点方向に移動し、ピストン10の移動に伴って、コネクティングロッド14を介してピストン10に接続されたクランクシャフト15が回動する。また、排気行程では、吸気バルブ46は閉弁し、排気バルブ47は開弁した状態でピストン10が上死点方向に移動することにより、燃料の燃焼後の排気ガスが気筒3内から排気通路22の方向に流れ、排気される。
内燃機関1の運転時には、このように各部が作動し、電磁駆動弁40の弁体45は往復運動をするが、この弁体45はピストン10と機械的に連動していないため、電磁駆動弁40の作動不良が生じた場合には、ピストン10が上死点に位置している場合に開弁する虞がある。ピストン10にはバルブリセス12が形成されているが、このバルブリセス12は、弁体45が少なくとも閉弁状態71から中立状態70の間に位置する場合に弁体45とピストン10とが干渉しない深さで形成されているので、ピストン10が上死点付近に位置した状態で開弁した場合、電磁駆動弁40の弁体45とピストン10とが干渉する虞がある。
図8は、図3に示す吸気バルブとピストンとが干渉した状態を示す説明図である。電磁駆動弁40の弁体45とピストン10とが干渉した状態を、吸気バルブ46と排気バルブ47とのうち吸気バルブ46で説明すると、吸気バルブ46がピストン10に干渉する場合、吸気バルブ46のバルブ側曲面48とピストン10のピストン側曲面13とが接触する。ここで、ピストン側曲面13の断面形状である円弧の曲率半径r2は、バルブ側曲面48の断面形状である円弧の曲率半径r1よりも大きくなっている。また、バルブ側曲面48の断面形状である円弧の中心c1とピストン側曲面13の断面形状である円弧の中心c2とは、吸気バルブ46の中心線49上に位置しているので、バルブ側曲面48がピストン側曲面13に接触した場合、吸気バルブ46の中心線49上でバルブ側曲面48とピストン側曲面13とは接触する。このため、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とは、ほぼ一点で接触する。
図9は、図1に示す電磁駆動弁の制御を示す説明図であり、パターン1の干渉時制御の説明図である。次に、電磁駆動弁40の弁体45とピストン10とが干渉した場合における電磁駆動弁40の制御、つまり、吸排気バルブとピストン10との干渉時に、吸排気バルブとピストン10との干渉を低減させるために電磁駆動弁40に対して行なう制御である干渉時制御について説明する。なお、以下の説明では、ピストン10と干渉する弁体45として吸気バルブ46で説明するが、以下の制御は、排気バルブ47の場合も同様の制御を行なう。また、これらの制御は、ECU80の処理部81が有する電磁駆動弁制御部82が、駆動回路33を介して行なう。まず、吸気バルブ46が閉弁する場合においてリフト量が全リフト量の半分以下の位置で吸気バルブ46とピストン10とが干渉した場合について説明する。吸気バルブ46は、開弁する場合には、ロアコイル57に電流を供給してアーマチャ53をロアコア58に引き付ける。その際、開弁の初期段階では、図9のロアコイル電流線105で示すように、ロアコイル57に流す電流を大きくしてアーマチャ53をロアコア58に引き付け、アーマチャ53がロアコア58に近付いたらロアコイル57に流す電流を少なくし、ロアコイル57に流す電流が少ない状態で、アーマチャ53がロアコア58に接触した状態を維持する。これにより、図9のリフト量線100で示すように吸気バルブ46はリフト量が大きくなり、開弁する。
開弁状態の吸気バルブ46を閉じる場合には、ロアコイル57への電流の供給を停止する。ロアコイル57への電流の供給を停止すると、ロアスプリング56の付勢力により、アーマチャ53がアッパコア63方向に移動する。その後、図9のアッパコイル電流線102で示すように、アッパコイル62に電流を流して、アーマチャ53をアッパコア63に引き付ける。その際、通常は、閉弁の初期段階ではアッパコイル62に流す電流を大きくしてアーマチャ53をアッパコア63に引き付け、アーマチャ53がアッパコア63に近付いたらアッパコイル62に流す電流を少なくして、アッパコイル62に流す電流が少ない状態で、アーマチャ53がアッパコア63に接触した状態を維持する。これにより、吸気バルブ46は閉弁する。
吸気バルブ46の閉弁時には、このようにアッパコイル62に電流を流すことにより閉弁するが、例えば、経年劣化等により電磁駆動弁40のアッパスプリング61の付勢力とロアスプリング56の付勢力とのバランスが変化し、中立状態70の位置が初期設定位置から変化するなどした場合には、吸気バルブ46の閉弁時においてリフト量が全リフト量の半分以下の状態で吸気バルブ46のバルブ側曲面48とピストン側曲面13とは干渉する虞がある。つまり、図9のリフト量線100に示すように、閉弁時における全リフト量の半分以下の位置に干渉発生点101が位置した場合、アッパコイル62に流す電流を少なくする際に、通常の電磁駆動弁40の作動時よりも低減する電流の量を減少させる。つまり、アッパコイル62に流す電流を少なくする際に、通常の電磁駆動弁40の作動時に流す電流(図9、通常時電流線103)よりもアッパコイル62に流す電流を多くする(図9、干渉時電流線104)。これにより、アーマチャ53はアッパコア63に引き付けられ易くなる。つまり、吸気バルブ46を早急に閉弁する。この干渉時制御の制御パターンを、パターン1とする。なお、パターン1の干渉時制御は上記以外の制御パターンでもよく、吸気バルブ46とピストン10との干渉後、アッパコイル62に流す電流を増加させればよい。
図10は、図1に示す電磁駆動弁の制御を示す説明図であり、パターン2の干渉時制御の説明図である。次に、閉弁状態の吸気バルブ46が開弁する際に、図10のリフト量線100で示すようにリフト量が全リフト量の半分以下の状態で吸気バルブ46のバルブ側曲面48とピストン側曲面13とが干渉した場合には、ロアコイル57への通電を停止する。つまり、リフト量線100に示すように、開弁時における全リフト量の半分以下の位置に干渉発生点101が位置した場合には、ロアコイル57への通電を停止する。さらに、アッパコイル62に、図10の干渉時電流線104で示すように、通常の閉弁時と同様に電流を流す。これにより、アーマチャ53はアッパコア63に引き付けられ、開弁の途中の吸気バルブ46は閉弁する。この干渉時制御の制御パターンを、パターン2とする。
図11は、図1に示す電磁駆動弁の制御を示す説明図であり、パターン3の干渉時制御の説明図である。次に、閉弁状態の吸気バルブ46が開弁する際に、図11のリフト量線100で示すようにリフト量が全リフト量の半分以上の状態で吸気バルブ46のバルブ側曲面48とピストン側曲面13とが干渉した場合には、ロアコイル57及びアッパコイル62の双方への通電を停止する。つまり、リフト量線100に示すように、開弁時における全リフト量の半分以上の位置に干渉発生点101が位置した場合には、ロアコイル57及びアッパコイル62の双方への通電を停止する。これにより、吸気バルブ46は、リフト量線100で示すようにロアスプリング56及びアッパスプリング61の弾性力により、開弁方向及び閉弁方向を往復するように振動しながら、徐々に振幅が小さくなり、中立状態70となって停止する。この干渉時制御の制御パターンを、パターン3とする。
図12は、図1に示す電磁駆動弁の制御を示す説明図であり、パターン4の干渉時制御の説明図である。次に、開弁状態の吸気バルブ46が閉弁する際に、図12のリフト量線100で示すようにリフト量が全リフト量の半分以上の状態で吸気バルブ46のバルブ側曲面48とピストン側曲面13とが干渉した場合には、アーマチャ53をアッパコア63に引き付ける際に、通常の電磁駆動弁40の作動時にアッパコイル62に流す電流(図12、通常時電流線103)よりも、早いタイミングで多くの電流を流す(図12、干渉時電流線104)。つまり、リフト量線100に示すように、閉弁時における全リフト量の半分以上の位置に干渉発生点101が位置した場合には、通常の電磁駆動弁40の作動時にアッパコイル62に流す電流よりも、早いタイミングで多くの電流をアッパコイル62に流す。これにより、アーマチャ53はアッパコア63に引き付けられ易くなり、吸気バルブ46は早急に閉弁する。この干渉時制御の制御パターンを、パターン4とする。即ち、パターン4の干渉時制御は、吸気バルブ46とピストン10との干渉後、早急にアッパコイル62に流す電流を増加させる。
図13は、図1に示す電磁駆動弁の制御を示す説明図であり、パターン5の干渉時制御の説明図である。次に、内燃機関1の運転開始時、即ち、電磁駆動弁40の起動時において電磁駆動弁40の弁体45とピストン10とが干渉した場合について、ピストン10と干渉する弁体45として吸気バルブ46を例に挙げて説明する。電磁駆動弁40の起動時には、吸気バルブ46は開弁方向及び閉弁方向を往復するように振動しながら通常作動に移行するが、電磁駆動弁40の起動時において、図13のリフト量線100で示すように全リフト量の半分以上の位置に干渉発生点101が位置した場合には、ロアコイル57及びアッパコイル62の双方への通電を停止する。これにより、吸気バルブ46は、リフト量線100で示すようにロアスプリング56及びアッパスプリング61の弾性力により、開弁方向及び閉弁方向を往復するように振動しながら、徐々に振幅が小さくなり、中立状態70となって停止する。この干渉時制御の制御パターンを、パターン5とする。
図14は、図1に示す電磁駆動弁の制御を示す説明図であり、パターン6の干渉時制御の説明図である。次に、電磁駆動弁40の起動時において、図14のリフト量線100で示すように全リフト量の半分以下の位置に干渉発生点101が位置した場合には、通常、電磁駆動弁40の起動時にアッパコイル62に流す電流よりも多くの電流をアッパコイル62に電流を流す。これにより、吸気バルブ46は、リフト量線100で示すように、アーマチャ53はアッパコア63に引き付けられ、吸気バルブ46は早急に閉弁する。この干渉時制御の制御パターンを、パターン6とする。
図15は、本発明の実施例に係る内燃機関の処理手順を示すフロー図である。次に、実施例に係る内燃機関1の制御方法、即ち、当該内燃機関1の処理手順について説明する。内燃機関1の運転時において当該処理手順を行なう場合には、まず、吸気バルブ46や排気バルブ47、即ち吸排気バルブの加速度を取得する(ステップST101)。吸排気バルブの加速度を取得する場合には、加速度検出センサ35で検出した検出結果がECU80の処理部81が有する加速度取得部83に伝達され、この加速度取得部83で取得される。次に、吸排気バルブとピストン10とが干渉しているかを判断する(ステップST102)。この判断は、加速度取得部83で取得した吸排気バルブの加速度より、ECU80の処理部81が有する干渉判断部84で行ない、取得した加速度が大きく減速している場合には、吸排気バルブとピストン10とは干渉していると判断する。この判断により、吸排気バルブとピストン10とが干渉していないと判断された場合には、この処理手順から抜け出る。
次に、電磁駆動弁40は起動中であるかを判断する(ステップST103)。この判断は、ECU80の処理部81が有する起動判断部85によって行なう。この起動判断部85では、電磁駆動弁制御部82から駆動回路33に送られる制御信号を検出し、検出した制御信号が電磁駆動弁40の起動時の制御信号であるかを判断する。この判断により、電磁駆動弁40は起動中ではないと判断された場合、即ち、電磁駆動弁40は通常作動中であると判断された場合には、次に、吸排気バルブは開弁動作中であるかを判断する(ステップST104)。この判断は、ECU80の処理部81が有する開閉判断部86によって行なう。この開閉判断部86では、起動判断部85と同様に電磁駆動弁制御部82から駆動回路33に送られる制御信号を検出し、検出した制御信号が開弁動作中の制御信号であるかを判断する。この判断により、吸排気バルブは開弁動作中であると判断された場合には、次に、開弁動作中の吸排気バルブのリフト量は全リフト量の半分以下であるかを判断する(ステップST105)。この判断は、ECU80の処理部81が有するリフト量判断部87によって行なう。このリフト量判断部87では、起動判断部85や開閉判断部86と同様に電磁駆動弁制御部82から駆動回路33に送られる制御信号を検出し、検出した制御信号が、全リフト量の半分以下の状態におけるリフト量の制御信号であるかを判断する。この判断により、リフト量が全リフト量の半分以下であると判断された場合、即ち、ピストン10と干渉した吸排気バルブが開弁動作中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以下であると判断された場合には、その吸排気バルブを有する電磁駆動弁40は、上述したパターン2の干渉時制御により制御する(ステップST106)。
これに対し、ステップST105での判断により、開弁動作中の吸排気バルブのリフト量は全リフト量の半分以下ではないと判断された場合には、その吸排気バルブを有する電磁駆動弁40は、上述したパターン3の干渉時制御により制御する(ステップST107)。つまり、ピストン10と干渉した吸排気バルブが開弁動作中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以上であると判断された場合には、その吸排気バルブを有する電磁駆動弁40は、パターン3の干渉時制御により制御する。
また、ステップST104での判断により、吸排気バルブは開弁動作中ではないと判断された場合、つまり、吸排気バルブは閉弁動作中であると判断された場合には、次に、閉弁動作中の吸排気バルブのリフト量は全リフト量の半分以下であるかを、リフト量判断部87で判断する(ステップST108)。この判断は、ECU80のリフト量判断部87によって行ない、リフト量判断部87での判断により、リフト量が全リフト量の半分以下であると判断された場合、即ち、ピストン10と干渉した吸排気バルブが閉弁動作中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以下であると判断された場合には、その吸排気バルブを有する電磁駆動弁40は、上述したパターン1の干渉時制御により制御する(ステップST109)。
これに対し、ステップST108での判断により、閉弁動作中の吸排気バルブのリフト量は全リフト量の半分以下ではないと判断された場合には、その吸排気バルブを有する電磁駆動弁40は、上述したパターン4の干渉時制御により制御する(ステップST110)。つまり、ピストン10と干渉した吸排気バルブが閉弁動作中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以上であると判断された場合には、その吸排気バルブを有する電磁駆動弁40は、パターン4の干渉時制御により制御する。
また、ステップST103での判断により、電磁駆動弁40は起動中であると判断された場合には、次に、干渉時の吸排気バルブのリフト量は全リフト量の半分以下であるかを、リフト量判断部87で判断する(ステップST111)。リフト量判断部87での判断により、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以下ではないと判断された場合、即ち、電磁駆動弁40は起動中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以上であると判断された場合には、電磁駆動弁40は、上述したパターン5の干渉時制御により制御する(ステップST112)。
これに対し、ステップST111での判断により、起動中の電磁駆動弁40が有する吸排気バルブのリフト量は全リフト量の半分以下であると判断された場合には、その吸排気バルブを有する電磁駆動弁40は、上述したパターン6の干渉時制御により制御する(ステップST113)。つまり、ピストン10と干渉した吸排気バルブを有する電磁駆動弁40が起動中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以下であると判断された場合には、その電磁駆動弁40は、パターン6の干渉時制御により制御する。
以上の内燃機関1は、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とが、吸気バルブ46や排気バルブ47、即ち吸排気バルブの往復運動の方向における断面形状が、共に円弧となって形成され、これらの円弧が同一方向に凸となって形成されている。さらに、バルブ側曲面48の円弧とピストン側曲面13の円弧とは、双方の円弧の径方向における外側に位置する円弧の曲率半径r2の方が、内側に位置する円弧の曲率半径r1よりも大きくなっている。このため、内燃機関1の吸排気バルブとピストン10とが干渉した際に、円弧同士のうち、吸排気バルブの往復運動の方向において最も接近している一点が接触し、接触時に吸排気バルブに作用する曲げモーメントが小さくなる。従って、吸排気バルブに大きな力が作用することを抑制でき、吸排気バルブの損傷が発生し難くすることができる。この結果、吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、バルブ側曲面48の断面形状である円弧の中心c1と、ピストン側曲面13の断面形状である円弧の中心c2とは、吸排気バルブの往復運動の方向における同一直線上、即ち、吸排気バルブの中心線49上に位置しているので、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とが干渉した際に、より確実に一点で接触させることができる。つまり、バルブ側曲面48とピストン側曲面13との双方の円弧の中心c1、c2を、共に吸排気バルブの中心線49上に位置させることにより、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とが干渉した際に、この中心線49上の一点で接触させることができる。これにより、より確実にバルブ側曲面48とピストン側曲面13とが接触した際における、吸排気バルブに作用する曲げモーメントを小さくすることができ、吸排気バルブに大きな力が作用することを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、バルブ側曲面48は、ピストン側曲面13の方向に凸となっており、ピストン側曲面13は、バルブ側曲面48に対して凹んでいる。さらに、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とは、バルブ側曲面48の断面形状である円弧の曲率半径r1よりもピストン側曲面13の断面形状である円弧の曲率半径r2の方が大きくなっている。これらにより、バルブ側曲面48とピストン側曲面13との接触時には、バルブ側曲面48やピストン側曲面13の断面形状である円弧の径方向において、バルブ側曲面48の外側方向の面とピストン側曲面13の内側方向の面、即ち中心c2方向の面とが、ほぼ一点で接触する。従って、より確実にバルブ側曲面48とピストン側曲面13とが接触した際における、吸排気バルブに作用する曲げモーメントを小さくすることができ、吸排気バルブに大きな力が作用することを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、このように、バルブ側曲面48の断面形状である円弧とピストン側曲面13の断面形状である円弧とは、円弧の径方向において外側に位置する円弧であるピストン側曲面13の円弧の曲率半径r2の方が、内側に位置する円弧であるバルブ側曲面48の円弧の曲率半径r1よりも大きくなっているので、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とが干渉する際に、バルブ側曲面48がピストン側曲面13に喰い込むことを抑制できる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、上述したバルブ側曲面48を有する吸排気バルブを、ロアスプリング56とアッパスプリング61とが設けられた電磁駆動弁40を用いて作動させることにより、吸排気バルブとピストン10とが干渉した際に、干渉時の衝撃をロアスプリング56やアッパスプリング61で吸収することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、このように吸排気バルブを、電磁駆動弁40を用いて作動させた場合においてバルブ側曲面48とピストン側曲面13とが接触した場合、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とは吸排気バルブの中心線49近傍の一点で接触するので、曲げモーメントが小さい状態で接触する。これにより、吸排気バルブは、当該吸排気バルブの通常作動時における往復運動の方向に跳ね返り易くなるので、より確実に干渉時の衝撃を吸収することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、電磁駆動弁制御部82は、吸排気バルブとピストン10との干渉時には干渉時制御を行なうので、吸排気バルブとピストン10が干渉した場合においても、早急に干渉状態を解消することができ、吸排気バルブとピストン10との干渉を低減することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合において、ピストン10と干渉した吸排気バルブが閉弁動作中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以下である場合に、パターン1の干渉時制御をすることにより、吸排気バルブの跳ね上がりによる吸排気バルブの作動不良を低減できる。これにより、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合に、早急に吸排気バルブとピストン10とが干渉する虞のある状態を解消することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合において、ピストン10と干渉した吸排気バルブが開弁動作中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以下である場合に、パターン2の干渉時制御をすることにより、2度目の吸排気バルブとピストン10との干渉を抑制することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合において、ピストン10と干渉した吸排気バルブが開弁動作中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以上である場合に、パターン3の干渉時制御をすることにより、2度目の吸排気バルブとピストン10との干渉を抑制することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストンとの干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合において、ピストン10と干渉した吸排気バルブが閉弁動作中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以上である場合に、パターン4の干渉時制御をすることにより、吸排気バルブの跳ね上がりによる吸排気バルブの作動不良を低減できる。これにより、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合に、早急に吸排気バルブとピストン10とが干渉する虞のある状態を解消することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合において、電磁駆動弁40は起動中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以上であると判断された場合に、パターン5の干渉時制御をすることにより、2度目の吸排気バルブとピストン10との干渉を抑制することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合において、電磁駆動弁40が起動中で、且つ、干渉時のリフト量が全リフト量の半分以下であると判断された場合に、パターン6の干渉時制御をすることにより、吸排気バルブの跳ね上がりによる吸排気バルブの作動不良を低減できる。これにより、吸排気バルブとピストン10とが干渉した場合に、早急に吸排気バルブとピストン10とが干渉する虞のある状態を解消することができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
図16は、実施例に係る内燃機関の変形例を示す要部詳細図である。なお、上述した内燃機関1に設けられる吸排気バルブのバルブ側曲面48とピストン側曲面13とは、バルブ側曲面48がピストン側曲面13の方向に凸となっており、ピストン側曲面13はバルブ側曲面48に対して凹んでいるが、この関係は逆でもよい。例えば、吸排気バルブの一例として吸気バルブ46で説明すると、図16に示すように、ピストン側曲面112が、吸気バルブ46のバルブ側曲面111の方向に凸となり、バルブ側曲面111がピストン側曲面112に対して凹んでいてもよい。この場合、バルブ側曲面111とピストン側曲面112とは、ピストン側曲面112の断面形状である円弧の曲率半径r4よりもバルブ側曲面111の断面形状である円弧の曲率半径r3の方が大きくする。また、バルブ側曲面111の断面形状である円弧の中心c3と、ピストン側曲面112の断面形状である円弧の中心c4とは、共に吸気バルブ46の中心線49上に位置させる。
図17は、図16に示す吸気バルブとピストンとが干渉した状態を示す説明図である。このようにバルブ側曲面111とピストン側曲面112とを形成した場合、バルブ側曲面111とピストン側曲面112との接触時に、バルブ側曲面111やピストン側曲面112の断面形状である円弧の径方向において、ピストン側曲面112の外側方向の面とバルブ側曲面111の内側方向の面、即ち中心c3方向の面とが、ほぼ一点で接触する。従って、このようにバルブ側曲面111とピストン側曲面112とを形成した場合においても、より確実にバルブ側曲面111とピストン側曲面112とが接触した際における、吸排気バルブに作用する曲げモーメントを小さくすることができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
図18は、実施例に係る内燃機関の変形例を示す要部詳細図である。また、実施例に係る内燃機関1に設けられるピストン側曲面13の断面形状である円弧の曲率半径r2は、バルブ側曲面48の断面形状である円弧の曲率半径r1よりも大きくなっているが、このピストン側曲面13の曲率半径r2は、内燃機関1の運転時に発生する異物などを考慮して定めてもよい。例えば、図18に示すように、ピストン側曲面13の断面形状である円弧の曲率半径r2は、気筒3内で燃料が燃焼することにより発生するカーボン115などの異物がピストン側曲面13に堆積した場合に、堆積したカーボン115の表面の曲率半径r5が少なくともバルブ側曲面48の断面形状である円弧の曲率半径r1よりも大きくなる大きさとなっていればよい。即ち、ピストン側曲面13の断面形状である円弧の曲率半径r2は、内燃機関1の運転時にピストン側曲面13に堆積するカーボン115の厚さαを考慮して、予め大きく(例えば、1mm程度)設定してもよい。これにより、内燃機関1を長時間運転し、ピストン側曲面13にカーボン115等の異物が堆積した場合でも、カーボン115の表面、即ちバルブ側曲面48に対向する面の曲率半径r5を、バルブ側曲面48の断面形状である円弧の曲率半径r1よりも大きくすることができる。従って、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とが接触した際、詳しくは、バルブ側曲面48とカーボン115とが接触した際における、吸排気バルブに作用する曲げモーメントを、より確実に小さくすることができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
図19は、実施例に係る内燃機関の変形例を示す要部詳細図である。また、バルブ側曲面111をピストン側曲面112に対して凹ませて形成した場合には、ピストン側曲面13の曲率半径r2を内燃機関1の運転時に発生する異物を考慮して定めるのと同様に、バルブ側曲面111の曲率半径r3を、内燃機関1の運転時に発生する異物などを考慮して定めてもよい。例えば、図19に示すように、バルブ側曲面111の断面形状である円弧の曲率半径r3は、気筒3内で燃料が燃焼することにより発生するカーボン115などの異物がバルブ側曲面111に堆積した場合に、堆積したカーボン115の表面の曲率半径r6が少なくともピストン側曲面112の断面形状である円弧の曲率半径r4よりも大きくなる大きさとなっていればよい。即ち、バルブ側曲面111の断面形状である円弧の曲率半径r3は、内燃機関1の運転時にバルブ側曲面111に堆積するカーボン115の厚さβを考慮して、予め大きく設定してもよい。これにより、バルブ側曲面111にカーボン115等の異物が堆積した場合でも、ピストン側曲面112に対向するカーボン115の表面の曲率半径r6を、ピストン側曲面112の断面形状である円弧の曲率半径r4よりも大きくすることができる。従って、バルブ側曲面111とピストン側曲面112とが接触した際、詳しくは、ピストン側曲面112とカーボン115とが接触した際における、吸排気バルブに作用する曲げモーメントを、より確実に小さくすることができる。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
図20は、実施例に係る内燃機関の変形例を示す要部詳細図である。また、ピストン10は、通常は一種類の部材により形成されているが、複数の部材により形成されていてもよい。例えば、図20に示すように、ピストン10は複数の部材により形成してもよく、具体的には、反発係数の異なる2種類の部材により形成してもよい。この場合、ピストン側曲面13は、2種類の部材のうち、ピストン10の少なくとも他の一部を形成する部材である小反発係数部材122よりも反発係数が大きい部材である大反発係数部材121により形成する。つまり、ピストン10の大部分が、小反発係数部材122の一例であるアルミ合金により形成されていた場合には、アルミ合金よりも反発係数が大きな部材として、例えば、ばね鋼、ピアノ線、オイルテンパー線、ステンレス線などを大反発係数部材121として用いて、この大反発係数部材121をピストン10の頂壁上面11に鋳ぐるむ等により埋め込み、ピストン側曲面13を含むバルブリセス12を大反発係数部材121により形成してもよい。これにより、吸排気バルブとピストン10とが干渉し、バルブ側曲面48とピストン側曲面13とが接触した場合でも、ピストン側曲面13は反発係数が大きい大反発係数部材121により形成されているので、吸排気バルブは跳ね返り易くなり、干渉時の衝撃が吸収される。この結果、より確実に吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、上述した吸気バルブ46や排気バルブ47などの吸排気バルブは、電磁駆動弁40により作動するように設けられているが、吸排気バルブは、電磁駆動弁40以外の作動手段により作動可能に設けてもよい。例えば、吸排気バルブは、回転するカムシャフト(図示省略)に設けられたカム(図示省略)によって往復運動可能に設けられていてもよい。吸排気バルブは、電磁駆動弁40以外の作動手段により作動する場合でも、内燃機関1運転時の不具合によりピストン10と干渉する虞があるが、この場合でも、吸排気バルブやピストン10に、上述したバルブ側曲面48やピストン側曲面13を形成することにより、吸排気バルブとピストン10とが干渉した際に、吸排気バルブに作用する曲げモーメントを小さくすることができる。従って、吸排気バルブに大きな力が作用することを抑制でき、吸排気バルブの損傷が発生し難くすることができる。この結果、吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。
また、上述したバルブ側曲面48、111とピストン側曲面13、112とは、共に球面の一部により形成されているが、これらは球面以外の形状により形成されていてもよい。例えば、吸排気バルブの往復運動の方向、即ち、吸排気バルブの中心線49に沿った方向における断面形状である円弧の曲率半径r1、r2、または曲率半径r3、r4が、異なる断面において変化してもよい。即ち、バルブ側曲面48、111とピストン側曲面13、112とは、同一の断面における断面形状の円弧の曲率半径r1、r2、または曲率半径r3、r4が、上述した形状で形成されていればよい。同一の断面におけるバルブ側曲面48、111とピストン側曲面13、112との形状が上述した関係になるように、これらを形成することにより、吸排気バルブとピストン10とが干渉した際に吸排気バルブに作用する曲げモーメントを小さくすることができ、吸排気バルブの損傷が発生し難くすることができる。この結果、吸排気バルブとピストン10との干渉時の損傷を最小限にすることができる。