JP2007308793A - 金属部材の窒化・酸化処理方法 - Google Patents

金属部材の窒化・酸化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】窒化・酸化処理の温度範囲が広く、熱間工具鋼の耐熱疲労特性を向上させることができ、被処理物の寸法精度保持が可能であり、不動態皮膜を有する鉄基合金及び非鉄基合金を窒化することができ、鉄基合金と非鉄基合金との焼付け及び溶損反応を抑制することができ、アルミ合金鋳造用金型におけるヒートクラック及び焼付け・溶損の問題を解決出来る処理方法を提供する。
【解決手段】窒化・酸化処理温度以下の温度で分解して窒化性ガスを発生し得る固形窒素化合物粉体と、窒化・酸化処理条件下で変化しない無機物粉体とからなる固形窒化剤粉体中に、金属部材の窒化・酸化処理を必要とする部分を埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させながら窒化・酸化処理する、金属部材の窒化・酸化処理。
【選択図】なし

Description

本発明は鉄基合金及び非鉄基合金の窒化・酸化処理方法に関し、より詳しくは、窒化・酸化処理温度以下の温度で分解して窒化性ガスを発生し得る固形窒素化合物粉体と窒化・酸化処理条件下で変化しない無機物粉体とからなる固形窒化剤粉体を用いることによる鉄基合金及び非鉄基合金の窒化・酸化処理方法に関する。
窒化処理方法として、従来、塩浴(軟)窒化法、粉末窒化法、ガス(軟)窒化法、イオン窒化法等が実施されている。例えば、鉄基合金を窒化処理した場合には、通常、最表面にFe2-3N、Fe3-4Nが形成され、また、窒素が拡散して拡散層を形成するので、最表面層から拡散層まで硬くなり、強度は向上するが靭性は劣化する。熱間工具鋼を窒化処理した場合には、耐熱疲労性が劣る傾向がある。また、従来の各種の窒化処理においては、酸素を排除してから窒化処理するので、最表面には酸化物が無く、また拡散層内には酸素の拡散がないため、非鉄基合金溶湯に対する耐焼付け性及び耐溶損性が弱い。
塩浴(軟)窒化処理の場合には、窒化処理温度が高く、被処理物の寸法変化及び硬度軟化が生じる。イオン窒化処理の場合には、拡散層が深くなるが、形状の複雑な被処理物の表面に均一な窒化層を形成することは難しい。
粉末を用いる窒化処理も何種類か知られている。従来の粉末窒化処理は窒素化合物の熱分解反応特性に依存して、窒化処理時間は3時間以内で窒化処理温度は500〜600℃と制限されている。3時間以内と500℃という条件の組合せでは、高炭素の冷間工具鋼(SKD)の金型や部品を窒化処理するのは困難である。その理由は母材中の炭素の量が多ければ多いほど、窒素が母材基地に侵入し難いからである。3時間以内で冷間工具鋼を窒化するためには、窒化処理温度を500℃よりも高くする必要があるが、このような温度条件下では寸法精度の維持が難しく、寸法精度がミクロ単位で要求される金型や部品の場合には実用化できない。従来の粉末窒化処理では、窒素化合物の熱分解・窒素発生の温度領域が低いので、高温領域で窒化層が形成されるように窒素化合物の熱分解・窒素発生の温度領域及び時間を大幅に調整・変化させるのが難しいので、600℃を越えると窒化効果は増大しない。
従来の粉末窒化処理においては、被処理物の窒化開始温度は約500℃であり、窒化処理時間は3時間以内で窒化処理温度は500〜600℃という処理条件に制限される。従って、大物及び大ロットの処理を取り扱う場合、炉内雰囲気の加熱・昇温速度について、粉末窒化剤の加熱・分解に必要な昇温速度と被処理物の昇温速度及び保持温度とのバランスを取らなければならない。しかしながら、従来の粉末窒化処理では、各鋼種の使用用途に合わせて有効な窒化をするように該バランスを取ることは困難である。
アルミ合金の鋳造法として、重力鋳造、低圧鋳造、差圧鋳造、半凝固鋳造、スクイズ鋳造、ダイカスト鋳造等が知られている。鋳造においては、金型のキャビティ側表面の焼付け、溶損の問題と亀裂の問題があり、亀裂問題は熱疲労に起因している。金型のキャビティ側表面に設けられる意匠造形により金型に肉厚の違いが生じ、その肉厚の違いにより鋳造作業で金型のキャビティ側表面に温度差が発生し、また、加熱−冷却の繰り返しで金型表面に熱応力、引張応力がかかり、金属疲労が起こる。金型が加熱−冷却の繰り返しによって金属疲労を起こし、クラック(亀裂)が発生する現象は熱疲労と呼ばれている。
ADC12、A356.1等のAl合金の溶湯は620〜750℃の高温で数十秒から数分間、金型のキャビティ内部に保持され、鋳造される。この際、Al合金溶湯と金型材料との間で金属間化合物と呼ばれるFe−Al−Si化合物層が形成され(これは焼付きと呼ばれる)、その後、鋳造作業により脱落する。このような繰り返しの現象は溶損と呼ばれる。
従来、金型材として、JIS規格のSKD−61系を焼鈍材のまま、或いは焼入れ−焼戻しを施してから使用している。金型材の精錬技術及び熱処理技術はかなり改善され、様々な表面処理技術が生まれてきたが、亀裂及び焼付け・溶損問題については依然として未解決のままである。
従来の窒化処理法では、不動態皮膜を有する鉄基合金及び非鉄基合金を窒化することは難しく、不動態皮膜を除去する前処理が必要であった。
窒化処理+酸化処理の処理法は今までに実施されたこと或いは文献に発表されたことがあったが(例えば、特許文献1参照)、非鉄基合金の溶湯に対しては耐溶損性の効果はあまり良くなかった。ホモ処理ではスチームを用い、酸化皮膜を形成させるが、耐溶損性の効果は明確ではなかった。耐溶損性の効果を上げるためには、窒化処理による化合物層を厚くすることが有効であると認められているが、CrN層、酸化物層を形成させる場合に、窒化拡散層を深く生成させないと酸化物層が出にくく、深く生成させると剥離もしくはクラックの問題が起こる。
特開平2−25560号公報
本発明の目的は、上記の諸問題を解決し得る金属部材の窒化・酸化処理方法を提供すること、即ち、窒化・酸化処理の温度範囲が広く、熱間工具鋼の耐熱疲労特性を向上させることができ、被処理物の寸法精度保持が可能であり、不動態皮膜を有する鉄基合金及び非鉄基合金を窒化することができ、鉄基合金と非鉄基合金との焼付け及び溶損反応を抑制することができ、アルミ合金鋳造用金型におけるヒートクラック及び焼付け・溶損の問題を解決出来る金属部材の窒化・酸化処理方法を提供することにある。
本発明者は上記の諸問題を解決するために鋭意検討した結果、窒化・酸化処理温度以下の温度で分解して窒化性ガスを発生し得る固形窒素化合物粉体と窒化・酸化処理条件下で変化しない無機物粉体とからなる固形窒化剤粉体を用いることにより上記の目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明の金属部材の窒化・酸化処理方法は、平均粒径が1〜10μmであり、窒化・酸化処理温度以下の温度で分解して窒化性ガスを発生し得る固形窒素化合物粉体10〜90容量%と、平均粒径が20〜100μmであり、窒化・酸化処理条件下で変化しない無機物粉体90〜10容量%とからなる固形窒化剤粉体中に、鉄基合金又は非鉄基合金からなる金属部材の窒化・酸化処理を必要とする部分を埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させながら、400〜900℃で0.5〜20時間窒化・酸化処理することを特徴とする。
固形窒化剤粉体を用いる本発明の金属部材の窒化・酸化処理方法により、
1.窒化・酸化処理温度の範囲を従来の500〜600℃から400〜900℃に広げることができる。
2.熱間工具鋼の耐熱疲労特性を向上させることができる。即ち、本発明においては、酸化物層、窒化物層、拡散層の性質を調整することができる。工具鋼の耐熱疲労特性を改善するために、Fe2-3N、Fe3-4N層を無くし、緩やかな硬度勾配を形成することが有効であることは周知である。本発明はそのことを実現できる。
3.低温窒化・酸化処理により、被処理物の寸法精度を保持することができ、耐摩耗性が要求される冷間工具鋼、合金鋼の金型及び部品に適用できる。即ち、本発明の金属部材の窒化・酸化処理方法は500℃以下の低温でも実施できるので、工具鋼及び合金鋼の寸法精度をミクロン単位で抑制することが出来る。
4.本発明の金属部材の窒化・酸化処理方法においては、固形窒素化合物粉体の高温分解によって水素イオンが生成し、その水素イオンが不動態酸化皮膜の酸素と還元反応を起こすので、不動態酸化皮膜を除去するための前処理を実施する必要なしで不動態酸化皮膜を有する鉄基合金及び非鉄基合金を窒化・酸化処理することができる。
5.拡散層の靭性を改善し、圧縮応力を形成することができるので、アルミ合金鋳造用金型におけるヒートクラック及び焼付け・溶損の問題を解決することができる。また、Cr23とCr2Nとの混合物層の厚みを制御することによって、アルミ合金溶湯との反応を遮断し、結晶粒界の早期破壊を遅らせて上記の問題を解決することができる。
本発明の金属部材の窒化・酸化処理方法においては、平均粒径が1〜10μmであり、窒化・酸化処理温度以下の温度で分解して窒化性ガスを発生し得る固形窒素化合物粉体10〜90容量%と、平均粒径が20〜100μmであり、窒化・酸化処理条件下で変化しない無機物粉体90〜10容量%とからなる固形窒化剤粉体中に、鉄基合金又は非鉄基合金からなる金属部材の窒化・酸化処理を必要とする部分を埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させながら、400〜900℃で0.5〜20時間窒化・酸化処理する。
本発明の窒化・酸化処理方法においては、固形窒素化合物粉体と無機物粉体とからなる固形窒化剤粉体を用いるが、この固形窒素化合物粉体は窒化・酸化処理温度又は窒化・酸化処理温度よりも低い温度で分解して窒化性ガス(発生期の活性化窒素)を発生し得るものである必要がある。このような固形窒素化合物としてシアナミドの二量体(ジシアンジアミド)、シアナミドの三量体(メラミン)、ジシアナミド、シアヌル酸トリアジド、シアヌル酸ジアミド等を挙げることができ、それらは単独で又は少なくとも2種からなる混合物として用いることができる。
無機物粉体は窒化・酸化処理条件下で変化しないこと、即ち、窒化・酸化処理条件下で被窒化金属部材と反応したり、溶融したりしないものであることが必要である。このような無機物として金属酸化物、金属複合酸化物、セラミックス、鉱物等を挙げることができ、それらは単独で又は少なくとも2種からなる混合物として用いることができる。
本発明で用いる固形窒化剤粉体は、固形窒素化合物粉体10〜90容量%と無機物粉体90〜10容量%とからなることが好ましく、また、固形窒素化合物粉体の平均粒径が1〜10μmであり、無機物粉体の平均粒径が20〜100μmであることが好ましい。本発明においては、平均粒径は走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した粒子像の画像解析によって求めた値である。固形窒素化合物粉体の相対量が10容量%未満(従って、無機物粉体の相対量が90容量%超)である場合には窒化が不十分になる傾向があるので好ましくない。逆に、固形窒素化合物粉体の相対量が90容量%超(従って、無機物粉体の相対量が10容量%未満)である場合には固形窒化剤粉体中の空隙内に保有される酸素含有ガスの量が不十分となり、酸化物の生成が不十分になる傾向があるので好ましくない。
本発明の窒化・酸化処理方法で処理する金属部材を構成する鉄基合金又は非鉄基合金(例えば、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン基合金)は被窒化元素としてCr、Mo、Mn、W、V又はAlを含有することが好ましい。この鉄基合金又は非鉄基合金からなる金属部材の窒化・酸化処理の際には、金属部材の窒化・酸化処理を必要とする部分を固形窒化剤粉体中に埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガス(空気又は酸素富化空気)を常に存在させながら、400〜900℃で窒化・酸化処理する。この場合の保持時間(窒化・酸化処理時間)は好ましくは0.5〜20時間程度である。この窒化・酸化処理は、例えば、電気炉を使用し、大気開放式、大気遮断式、酸素量制御式の何れでも実施できる。
本発明の窒化・酸化処理においては、固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させて(必要ならば、酸素含有ガスを固形窒化剤粉体中の空隙内に供給しながら)実施するので、被処理金属部材の表面から酸素が内部に拡散し、酸素が被処理金属部材中のCrと反応して拡散層にCr23析出物が形成される。この内部酸化現象が発生するので窒素の拡散が遅れ、それで硬度勾配が緩やかになり、母材の靭性特性が確保される。なお、従来の窒化処理では拡散層に酸化物(Cr23)の析出物が形成されない。
本発明の窒化・酸化処理においては次のような昇温管理で実施することによって、処理初期の湿気を無くすることができる。また、窒素ガスの発生温度及び経過時間と被処理物の加熱温度及び経過時間とを考慮しながら制御する事によって大物或いは大ロットの窒化・酸化処理が可能となる。
<固形窒化剤粉体及び被処理物の同時加熱法>
1.昇温所要時間の設定は炉の加熱能力と被処理物の寸法によって、炉を稼動する毎に常に調整する。
2.室温から、直接に設定温度まで昇温させ、保持する。
3.室温から200℃±20℃の領域まで昇温させ、一旦、その温度に一定時間保持してから再び設定温度まで昇温させ、保持する。この昇温管理の目的は水分を蒸発させて乾かし、固形窒化剤粉体を予熱し、被処理物の温度を制御することである。
4.室温から360℃±20℃の領域まで昇温させ、一旦、その温度に一定時間保持してから再び設定温度まで昇温させ、保持する。この昇温管理の目的は水分を蒸発させて乾かし、固形窒化剤粉体を予熱し、低温領域でのアンモニアガスの発生を遅らせ、被処理物の温度を制御することである。
5.室温から200℃±20℃の領域まで昇温させ、一旦、その温度に一定時間保持し、次に360℃±20℃の領域まで昇温させ、一旦、その温度に一定時間保持してから再び設定温度まで昇温させ、保持する。この昇温管理の目的は水分を蒸発させて乾かし、固形窒化剤粉体を予熱し、低温領域及び高温領域でのアンモニアガスの発生を遅らせ、被処理物の温度を制御することである。
<固形窒化剤粉体及び被処理物の個別加熱法>
固形窒化剤粉体を180℃±20℃に予熱し、保持する。被処理物を設定温度まで加熱し、その加熱した被処理物をその予熱された固形窒化剤粉体中に投入するか、その加熱した被処理物の周りにその予熱された固形窒化剤粉体を投入する。この昇温管理の目的は被処理物を窒化できる温度まで先に加熱しておくことによって、発生する窒化性ガスの最大限の利用を可能とし、超大物の処理を可能とすることである。なお、被処理物が大きければ大きい程、被処理物の昇温速度と、炉内熱雰囲気の昇温速度及び固形窒化剤粉体の昇温速度との差が大きい。個別加熱法はその差を無くすための手法である。
本発明の窒化・酸化処理で得られる表面化合物層及び拡散層の厚み及び組成は、例えば、次の通りである。
酸化物層:厚み1〜3μmでFe23、Fe34、FeCr24、Cr23を含む、
窒化物層:厚み1〜2μmでCr2N、CrNを含む、
拡散層:厚み10〜150μmで窒素拡散層、Cr23析出物を含む。
工具鋼、合金鋼及び不動態皮膜を有する金属部材を固形窒化剤粉体で窒化・酸化処理する場合のポイントは次の通りである。
1.高い表面硬度及び耐磨耗性を重視する場合には、固形窒化剤粉体中の固形窒素化合物粉体の混合比率を40容量%以下とし、窒化・酸化処理温度を500〜540℃とすることが望ましい。このような窒化・酸化処理方法は、例えば、高炭素冷間工具鋼のSKD11や高速工具鋼の金型や部品、及びエロージョン現象が激しい熱間工具鋼のSKD61のダイカスト金型や部品に適用することが好ましい。即ち、高炭素鋼への窒素の拡散を促進するためには固形窒化剤粉体中の固形窒素化合物粉体の混合比率を低くして酸素量を増やすことが望ましい。
2.耐熱疲労性及び拡散層の緩やかな硬度勾配を重視する場合には、固形窒化剤粉体中の固形窒素化合物粉体の混合比率を20〜60容量%とし、窒化・酸化処理温度を520〜560℃とすることが望ましい。このような窒化・酸化処理方法は、例えば、熱疲労現象が激しい熱間工具鋼のSKD61のダイカスト金型及び熱間ハンマ金型に適用することが好ましい。
3.衝撃による磨耗及び高温作業による硬度軟化が発生する金型や部品の場合には、固形窒化剤粉体中の固形窒素化合物粉体の混合比率を60容量%以上とし、窒化・酸化処理温度を540〜580℃とすることが望ましい。このような窒化・酸化処理方法は、例えば、熱間鍛造金型に適用することが望ましい。
4.冷間工具鋼に関しては表面強度及び耐磨耗性が必要であり、それで拡散層に緩やかな硬度勾配を重視する場合には、固形窒化剤粉体中の固形窒素化合物粉体の混合比率を20〜60容量%とし、窒化・酸化処理温度を480〜520℃とすることが望ましい。このような窒化・酸化処理方法は、例えば、冷間鍛造や打ち抜き金型に適用することが望ましい。
高Cr鋼(例えば、ステンレス鋼SUS304)を固形窒化剤粉体で窒化・酸化処理する場合のポイントは次の通りである。
1.固形窒化剤粉体中の固形窒素化合物粉体の混合比率を40〜80容量%とすることが望ましい。
2.高Cr鋼は寸法精度が要求される金型及び部品に多く用いられるので、窒化・酸化処理温度を500〜540℃とすることが望ましい。しかし、ミクロ単位の寸法精度が要求される場合には、窒化・酸化処理温度を480〜500℃とし、窒化・酸化処理の保持時間を延ばすことが望ましい。
3.金型及び部品の公差精度が大きい場合には、窒化・酸化処理温度を540〜560℃とすることが望ましい。
4.固形窒化剤粉体による窒化・酸化処理を実施した後、再酸化処理を実施することが望ましい。
不動態皮膜を有する金属部材、例えば、チタン合金からなる金属部材を固形窒化剤粉体で窒化・酸化処理する場合のポイントは、この場合には、頑丈な不動態皮膜があるので、窒化・酸化処理温度を700℃以上とすることが望ましい。
本発明による固形窒化剤粉体による窒化・酸化処理を施すのに適した鉄基合金としてCr、Mo、Mn、W、V、Al等の元素を含有する高速度工具鋼、合金工具鋼、超強力鋼、構造用合金鋼等を挙げることができる。最表面層にCr23の酸化層を形成し、拡散層内にCr23析出物を形成するのが本処理の特徴であり、Crを1質量%以上含有させることが望ましい。
本発明で処理できる鉄基合金として以下の材料を挙げることができる。
Figure 2007308793
上記の工具鋼は焼入れ−焼き戻しを施してから使用する事がほとんどなので、組織変態による寸法変化を考慮すれば、窒化・酸化処理を440〜560℃の範囲内が実施することが望ましい。精密度が要求される場合には、520℃以下の温度で処理することが望ましい。炭素を0.6質量%以上含有する高炭素鋼の場合には、事前にサブゼロ処理を施すことが望ましく、500℃以下の温度で処理することが望ましい。尚、上記の鋼材の焼鈍材の処理も可能である。
表面に不動態酸化皮膜を有する金属部材の場合でも、アモニアの高温分解によって水素イオンが生成され、その水素イオンが不動態酸化皮膜の酸素と還元反応を起こすので、酸化皮膜を除去する前処理無しで窒化・酸化処理を実施することができる。
以下に実施例により具体的に説明する。
実施例1
大気開放式の電気炉を使用し、平均粒径が6μmであるジシアンジアミド20容量%と、平均粒径が70μmであるFe3480容量%とからなる固形窒化剤粉体中に、SKD61からなる金属部材を埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させながら、460℃、480℃、500℃、520℃、540℃、560℃又は580℃で15時間窒化・酸化処理を実施した。このように各々の温度で処理した金属部材の硬度分布を測定した。それらの結果は図1に示す通りであった。なお、図1において横軸は表面からの距離(μm)であり、縦軸はビッカ−ス硬度(Hv)である。
実施例2
大気開放式の電気炉を使用し、平均粒径が6μmであるジシアンジアミド40容量%と、平均粒径が70μmであるFe3460容量%とからなる固形窒化剤粉体中に、SKD61からなる金属部材を埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させながら、460℃、480℃、500℃、520℃、540℃、560℃又は580℃で15時間窒化・酸化処理を実施した。このように各々の温度で処理した金属部材の硬度分布を測定した。それらの結果は図2に示す通りであった。なお、図2において横軸は表面からの距離(μm)であり、縦軸はビッカ−ス硬度(Hv)である。
実施例3
大気開放式の電気炉を使用し、平均粒径が6μmであるジシアンジアミド70容量%と、平均粒径が70μmであるFe3430容量%とからなる固形窒化剤粉体中に、SKD61からなる金属部材を埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させながら、460℃、480℃、500℃、520℃、540℃、560℃又は580℃で15時間窒化・酸化処理を実施した。このように各々の温度で処理した金属部材の硬度分布を測定した。それらの結果は図3に示す通りであった。なお、図3において横軸は表面からの距離(μm)であり、縦軸はビッカ−ス硬度(Hv)である。
実施例4
大気開放式の電気炉を使用し、平均粒径が6μmであるジシアンジアミド10容量%、20容量%、30容量%、40容量%、60容量%、70容量%又は90容量%と、残余量の平均粒径が70μmであるFe34とからなる固形窒化剤粉体中に、SKD61からなる金属部材を埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させながら、520℃で15時間窒化・酸化処理を実施した。このように種々の含有割合でジシアンジアミドを含有する固形窒化剤粉体で処理した金属部材を、その後、大気中で520℃で6時間酸化処理を実施した。このように処理した各々の金属部材の硬度分布を測定した。それらの結果は図4に示す通りであった。なお、図4において横軸は表面からの距離(μm)であり、縦軸はビッカ−ス硬度(Hv)である。
実施例5
大気開放式又は密閉式の電気炉を使用し、平均粒径が6μmであるジシアンジアミド20容量%と、平均粒径が70μmであるFe3480容量%とからなる固形窒化剤粉体中に、SKD61からなる金属部材を埋め込み、540℃で10時間又は20時間窒化・酸化処理を実施した。このように処理した金属部材の硬度分布を測定した。それらの結果は図5に示す通りであった。
また、大気開放式又は密閉式の電気炉を使用し、平均粒径が6μmであるジシアンジアミド20容量%と、平均粒径が70μmであるFe3480容量%とからなる固形窒化剤粉体中に、SKD61からなる金属部材を埋め込み、540℃で10時間窒化・酸化処理を実施した。このように処理した金属部材を、その後、大気開放式又は密閉式の電気炉を使用し、再度540℃で10時間窒化・酸化処理を実施した。このように処理した各々の金属部材の硬度分布を測定した。それらの結果は図5に示す通りであった。なお、図5において横軸は表面からの距離(μm)であり、縦軸はビッカ−ス硬度(Hv)である。
実施例1で測定した硬度分布を示すグラフである。 実施例2で測定した硬度分布を示すグラフである。 実施例3で測定した硬度分布を示すグラフである。 実施例4で測定した硬度分布を示すグラフである。 実施例5で測定した硬度分布を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 平均粒径が1〜10μmであり、窒化・酸化処理温度以下の温度で分解して窒化性ガスを発生し得る固形窒素化合物粉体10〜90容量%と、平均粒径が20〜100μmであり、窒化・酸化処理条件下で変化しない無機物粉体90〜10容量%とからなる固形窒化剤粉体中に、鉄基合金又は非鉄基合金からなる金属部材の窒化・酸化処理を必要とする部分を埋め込み、該固形窒化剤粉体中の空隙内に酸素含有ガスを常に存在させながら、400〜900℃で0.5〜20時間窒化・酸化処理することを特徴とする金属部材の窒化・酸化処理方法。
  2. 被窒化元素としてCr、Mo、Mn、W、V又はAlを含有する鉄基合金又は非鉄基合金からなる金属部材を用いる請求項1記載の金属部材の窒化・酸化処理方法。
  3. 無機物粉体が金属酸化物、金属複合酸化物、セラミックス及び鉱物の少なくとも1種からなる粉体である請求項1又は2記載の金属部材の窒化・酸化処理方法。
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