JP2007305793A - 半導体素子の特性調整方法及び特性調整装置 - Google Patents

半導体素子の特性調整方法及び特性調整装置 Download PDF

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Abstract

【課題】製造過程におけるウエハロットやウエハの違いに係わらず、半導体素子の特性のばらつきを解消することができ、並列接続される半導体素子の特性のばらつきを低減するための管理を不要とするとともに、並列接続される半導体素子の個々の性能を十分に生かせ、その半導体素子により構成される半導体モジュール全体の性能を向上させる。
【解決手段】パワートランジスタ20(半導体素子)の、ゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより変化する電気特性(閾値電圧)を測定し、測定した電気特性の結果に基づき、パワートランジスタ30のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理(X線源2からのX線の照射)を施して、パワートランジスタ30の前記電気特性を、予め設定した所定の範囲内となるように変化させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えばIGBTモジュール等のパワーモジュールに用いられる半導体素子に用いて好適な半導体素子の特性調整方法及び特性調整装置に関する。
従来から、例えばIGBT等のパワートランジスタから構成される電力用のパワーモジュールにおいては、その電流容量を確保する等ため、出力段の複数のパワートランジスタが並列接続される場合がある。
複数のパワートランジスタが並列接続される構成においては、電流が不均一となり、特定のパワートランジスタに電流が集中する場合がある。電流が集中したパワートランジスタは、発熱量が多くなって他のパワートランジスタに比べて素子温度が高くなり、これが特性劣化(寿命劣化)の原因となる。また、素子温度がパワートランジスタの限界温度を超えると破壊(過電流破壊)するおそれもある。
こうしたパワートランジスタが並列接続されることに起因する問題を解決するための技術として、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。本文献には、ダイオードチップと複数のパワートランジスタ(スイッチング素子チップ)とが並列接続される構成において、各チップから引出端子(各チップを外部回路と接続するための端子)までの配線インダクタンスの差を低減することで、各チップ間の電流の不均一を低減させるという技術が示されている。
他方、並列接続されるパワートランジスタ間の電流の不均一は、パワートランジスタの特性(閾値電圧など)のばらつきによっても生じる。すなわち、一般的に、パワートランジスタ等の半導体素子は、その製造に際し多数の工程を経るために製造上の様々な要因により特性がばらつく。そして、並列接続され組み合わされたパワートランジスタの特性のばらつきが大きいと、電流が不均一となり、前述のような特定のパワートランジスタに対する電流の集中にともなう問題が生じる。
このようなパワートランジスタの特性のばらつきに起因する問題を解消するため、例えば、ハイブリッド自動車などに搭載されるモータのインバータ制御に用いられる大電流容量のパワーモジュールでは、一枚の同じウエハから製作されたパワートランジスタが組み合わされ、一つのパワーモジュールに実装されることで、特性の近寄ったパワートランジスタが組み合わされている場合がある。
すなわち、パワートランジスタの特性は、その量産過程において、時間的に間が離れたウエハロットで生産されるもの同士と比べ、連続的に流されるウエハロット内で生産されるもの同士の方が近く、また、同じウエハロット内で生産されるパワートランジスタでも、プロセス温度、処理ガスの組成・流量、蒸着やスパッタの成膜量などの処理状況がわずかにばらつくことからその特性は若干異なる。これに比べ、同じウエハから製作されるパワートランジスタは、各工程で同時に処理され、前記処理状況もほぼ同じであるため、特性のばらつきが小さい。
そこで、パワーモジュールにおいては、前記のとおり同じウエハから製作されたパワートランジスタが組み合わされて用いられている。
特開平5−206449号公報
しかし、一つのウエハ内であっても、プロセス温度や成膜量などの処理状況が分布を持つ場合があるため、同じウエハから製作されるパワートランジスタであっても、その特性にばらつきが生じる場合がある。したがって、同じウエハから製作されるパワートランジスタであっても、その特性のばらつきによる影響をより小さくしようとすると、ウエハにおいて隣接しあるいは近傍に位置していた素子同士を選んで組み合せ、それらを並列接続することが望ましいという考えに至る。
このように、同じウエハから製作されるパワートランジスタを一つのパワーモジュールに実装しようとすると、次のような問題が生じる。
すなわち、パワーモジュールの製造過程において、素子構造が形成されたウエハからダイシングによりチップとして切り出されるパワートランジスタが、チップに個片化されてからパワーモジュールに実装されるまで、それらが同じウエハから製作されたものであることをトレーやラベル等を用いて管理しながら工程を進める必要がある。このため、管理の手間やそのためのコスト等が必要となる。このような管理のための負担は、前述したように同じウエハ内でさらに部位ごと(隣接していた素子ごと等)に管理しようとするとより大きなものなる。また、一つのウエハから切り出されるパワートランジスタの数が、一つのパワーモジュールに用いられるパワートランジスタの数に対して端数を生じさせる場合、余分なパワートランジスタの処理の問題も生じる。
また、パワートランジスタの特性のばらつきによる過電流破壊を免れるため、その特性のばらつきを見込んで電流量を下げることが考えられるが、その分、パワーモジュール全体での電流容量も低下することとなる。
つまり、パワーモジュールにおいて並列接続されるパワートランジスタの個々の性能を使いきり、パワーモジュール全体としての性能を向上させるためには、組み合わせるパワートランジスタの特性のばらつきをできる限り小さくすることが必要となる。
そこで、本発明の目的は、製造過程におけるウエハロットやウエハの違いに係わらず、半導体素子の特性のばらつきを解消することができ、並列接続される半導体素子の特性のばらつきを低減するための管理を不要とするとともに、並列接続される半導体素子の個々の性能を十分に生かせ、その半導体素子により構成される半導体モジュール全体の性能を向上させることができる半導体素子の特性調整方法及び特性調整装置を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、ゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより変化する電気特性を有する半導体素子を調整対象とする半導体素子の特性調整方法であって、半導体素子の前記電気特性を測定し、測定した電気特性の結果に基づき、半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施して、半導体素子の前記電気特性を、予め設定した所定の範囲内となるように変化させるものである。
請求項2においては、前記調整対象を、ウエハ状態、ベアチップ状態またはベアチップがモールド樹脂で封止された状態のいずれかの状態の半導体素子とするものである。
請求項3においては、前記電気特性を測定する対象を、並列接続された複数の半導体素子を有するものとし、前記各半導体素子から得た測定値のうち、最も前記電気特性を変化させる方向側にある測定値を基準測定値として用いて前記所定の範囲を定め、前記複数の半導体素子のうち、前記測定値が前記基準測定値である半導体素子以外の半導体素子に対して、そのゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施し、前記電気特性を変化させるものである。
請求項4においては、半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を、X線の照射とする一方、前記調整対象を、X線が照射されることにより得られる画像から他部材に対する接合部の欠陥が検査される半導体素子とするものである。
請求項5においては、ゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより変化する電気特性を有する半導体素子を調整対象とする半導体素子の特性調整装置であって、半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施すことにより、半導体素子の前記電気特性を変化させる特性変化手段と、前記電気特性を測定する特性測定手段と、前記特性測定手段により測定された測定値が予め設定された所定の範囲内にあるか否かを判定する特性判定手段と、前記特性測定手段から得られる測定値及び前記特性判定手段から得られる判定結果の少なくともいずれかに基づいて、前記特性変化手段による半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を制御する制御手段と、を備えるものである。
請求項6においては、前記調整対象が、ウエハ状態、ベアチップ状態またはベアチップがモールド樹脂で封止された状態のいずれかの状態の半導体素子であるものである。
請求項7においては、前記特性測定手段による測定対象が、並列接続された複数の半導体素子を有するものであり、前記特性判定手段は、前記特性測定手段により前記各半導体素子から得られる測定値のうち、最も前記電気特性がその変化される側にある測定値を基準測定値として用いて前記所定の範囲を定め、前記特性変化手段は、前記複数の半導体素子のうち、前記測定値が前記基準測定値である半導体素子以外の半導体素子に対して、そのゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施し、前記電気特性を変化させるものである。
請求項8においては、前記特性変化手段に、X線を照射するためのX線源を備え、半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を、X線の照射とする一方、前記半導体素子にX線を照射することにより得られる画像から、該半導体素子の他部材に対する接合部の欠陥を検査するためのX線検査手段を備えるものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、半導体素子の製造過程におけるウエハロットやウエハの違いに係わらず、半導体素子の特性のばらつきを解消することができ、並列接続される半導体素子の特性のばらつきを低減するための管理を不要とするとともに、並列接続される半導体素子の個々の性能を十分に生かせ、その半導体素子により構成されるパワーモジュール等の装置全体の性能を向上させることができる。
請求項2においては、実装前の段階で半導体素子の閾値電圧を所定の整範囲内とすることができるので、半導体素子の汎用性を向上することができる。これにより、任意の半導体素子を組み合せて並列接続することが可能となる。
また、一つのウエハから切り出される半導体素子の数が、ある装置に用いられる半導体素子の数に対して端数を生じさせる場合であっても、余分な半導体素子が発生することなく、労務費や仕損費を低減することができる。
請求項3においては、並列接続された半導体素子と並列接続されていない半導体素子とが混在する構成において、電気特性のばらつきが電流の集中による特性劣化などの等の原因となる並列接続された半導体素子を調整対象とすることができ、電気特性の調整を効率的に行うことが可能となる。
また、ある程度ばらついた電気特性を有する半導体素子が実装され並列接続されたとしても、その後に電気特性を自由に調整することが可能となるので、従来、NG品として廃棄されていた半導体装置などを救済することができ、コストの削減を図ることができる。
請求項4においては、半導体素子の他部材に対する接合部の欠陥の検査とともに、半導体素子の特性の調整を行うことができる。また、既存の設備を用いることができる。したがって、半導体素子の特性を調整するに際し、半導体素子を用いて構成される半導体装置やパワーモジュール等の製造過程における加工リードタイムの短縮及び設備投資の低減を図ることができる。
請求項5においては、半導体素子の製造過程におけるウエハロットやウエハの違いに係わらず、半導体素子の特性のばらつきを解消することができ、並列接続される半導体素子の特性のばらつきを低減するための管理を不要とするとともに、並列接続される半導体素子の個々の性能を十分に生かせ、その半導体素子により構成されるパワーモジュール等の装置全体の性能を向上させることができる。
請求項6においては、実装前の段階で半導体素子の閾値電圧を所定の整範囲内とすることができるので、半導体素子の汎用性を向上することができる。これにより、任意の半導体素子を組み合せて並列接続することが可能となる。また、一つのウエハから切り出される半導体素子の数が、ある装置に用いられる半導体素子の数に対して端数を生じさせる場合であっても、余分な半導体素子が発生することなく、労務費や仕損費を低減することができる。
請求項7においては、並列接続された半導体素子と並列接続されていない半導体素子とが混在する構成において、電気特性のばらつきが電流の集中による特性劣化などの原因となる並列接続された半導体素子を調整対象とすることができ、電気特性の調整を効率的に行うことが可能となる。
また、ある程度ばらついた電気特性を有する半導体素子が実装され並列接続されたとしても、その後に電気特性を自由に調整することが可能となるので、従来、NG品として廃棄されていた半導体装置などを救済することができ、コストの削減を図ることができる。
請求項8においては、半導体素子の他部材に対する接合部の欠陥の検査とともに、半導体素子の特性の調整を行うことができる。また、前記接合部の欠陥を検査するための装置と兼用することができる。したがって、半導体素子の特性を調整するに際し、半導体素子を用いて構成される半導体装置やパワーモジュール等の製造過程における加工リードタイムの短縮及び設備投資の低減を図ることができる。
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る半導体素子の特性調整方法及び特性調整装置は、例えば、パワーモジュールを構成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のバイポーラトランジスタやMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の電界効果トランジスタ等の電力用半導体素子(パワーデバイス)を調整対象とし、その素子特性を調整するものである。そして、調整する素子特性を、半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより変化する電気特性としている。
すなわち、以下に説明する半導体素子の特性調整方法は、ゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより変化する電気特性を有する半導体素子を調整対象とするものである。
まず、本発明に係る半導体素子の特性調整方法の基本原理について説明する。
前記のようなパワーデバイス(MOSデバイス)では、X線などの放射線が照射されることにより、ゲート酸化膜中に固定正電荷(正の固定電荷)が発生することが知られている。その原因としては、MOSデバイスが放射線を受けると、ゲート酸化膜(一般にSiO2)の内部で電子−正孔対が生成され、その生成された電子のうち、一部は正孔と再結合して電気的に中性となるが、一部は再結合する前にゲート酸化膜の外に逃げてしまう。ところが、正孔は電子に比べその移動性が低く、複雑な運動をするため、電子と再結合できない正孔はゲート酸化膜から出ることができず、閉じ込められた状態となる。こうして正孔がゲート酸化膜に溜まっていき、これにより固定正電荷が発生する。
そして、MOSデバイスにおいてゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより、半導体素子の電気特性が変化する。その変化する電気特性の代表的なものとして閾値電圧がある。閾値電圧とは、トランジスタがオフ状態からオン状態に移り変わるときの境界となるゲート電圧のことである。
すなわち、MOSデバイスは、一般的な構造として、シリコン(Si)基板に形成される二箇所の電極(ソース・ドレイン)を端子として有するとともに、これら電極間において、基板の表面に形成される酸化ケイ素(SiO2)の酸化膜(ゲート酸化膜)及びこの酸化膜上に蒸着される金属からなるゲートを端子として有する。そして、前記のとおりゲート酸化膜中に固定正電荷が発生すると、その固定正電荷が蓄積することにより、ゲートに正の電圧が印加されたのと同じ状態となり、結果として閾値電圧が低下することとなる。
そこで、このような現象を用いることにより、以下に説明する実施の形態においては、ゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより変化する電気特性として閾値電圧を用い、半導体素子の閾値電圧を測定して変化させることにより、半導体素子の電気特性を調整する。
以下、本発明に係る半導体素子の特性調整方法及び特性調整装置について、実施の形態に即して具体的に説明する。
第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体素子の特性調整装置(以下「特性調整装置1」とする。)は、例えばパワーモジュールを構成するIGBT等の半導体素子(以下「パワートランジスタ20」とする。)を調整対象とする。
特性調整装置1は、パワートランジスタ20のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施すことにより、パワートランジスタ20の電気特性(閾値電圧)を変化させる特性変化手段を構成するX線源(X線発生器)2と、前記閾値電圧を測定する特性測定手段としての特性測定部6と、この特性測定部6により測定された測定値が予め設定された所定の範囲内にあるか否かを判定する特性判定手段としての特性判定部9と、特性測定部6から得られる測定値及び特性判定部9から得られる判定結果の少なくともいずれかに基づいて、前記特性変化手段によるパワートランジスタ20のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を制御する制御手段としての総合制御部10とを備える。
X線源2は、パワートランジスタ20にX線を照射する。X線源2は、X線照射制御部3に接続され、このX線照射制御部3により、照射するX線の強度(電子銃の電流、加速電圧)や照射時間などが制御される。つまり、本実施形態においては、X線源2及びX線照射制御部3を含む構成が特性変化手段となり、この特性変化手段により行われる、パワートランジスタ20のゲート酸化膜に固定正電荷を発生させる処理は、パワートランジスタ20にX線を照射することとなる。
X線源2からのパワートランジスタ20に対するX線の照射は、筐体4により形成される調整室4a内において行われる。
X線源2は、調整室4a内の所定の位置に設けられる。パワートランジスタ20は、図示せぬベルトコンベア等を備える搬送装置5により、例えば載置台5aに載置された状態で搬送され、調整室4a内においてX線源2からのX線の照射を受ける所定の位置(以下「セット位置」という。)に搬送される。なお、図示は省略するが、搬送装置5は筐体4に形成されるシャッター等の遮蔽部を介して筐体4外部に延設され、この搬送装置5により、調整室4a内へのパワートランジスタ20の搬入(取込み)及び調整室4a内からの搬出(払出し)が行われる。
また、X線源2は、調整室4a内において、図示せぬ移動機構により移動可能に構成され、そのX線の照射位置が前記X線照射制御部3により制御される。具体的には、X線源2は、X線の照射対象物であるパワートランジスタ20に対して近接離間方向や、照射面に平行な方向などに移動可能に構成され、その調整室4a内における移動(位置)がX線照射制御部3に制御され、X線の照射位置が制御される。
特性測定部6は、パワートランジスタ20の閾値電圧を検出するための検出手段としての測定用プローブ7を備える。測定用プローブ7は、パワートランジスタ20の閾値電圧を検出するためにゲート電圧が検出可能な部分(例えばパッド等)に当接するプローブピン7a・7bを有する。
すなわち、特性測定部6は、測定用プローブ7により検出されたパワートランジスタ20の閾値電圧の検出値に基づき、パワートランジスタ20の閾値電圧を測定しその測定値を導出する。
また、特性調整装置1は、プローブ系及び搬送系の制御手段としての駆動制御部8を備える。駆動制御部8は、プローブ系を構成する測定用プローブ7の動作(プローブピン7a・7bの移動など)や、搬送系を構成する搬送装置5の動作(ベルトコンベアの駆動など)を制御する。
すなわち、特性調整装置1においては、駆動制御部8により搬送装置5及び測定用プローブ7の動作が制御されることにより、搬送装置5による調整室4a内へのパワートランジスタ20の取込み(セット位置への移動)及び払出し、並びに測定用プローブ7におけるプローブピン7a・7bの、パワートランジスタ20の所定の位置に対するセット(当接)を含む移動が行われる。
特性判定部9は、特性測定部6により得られた測定値、つまりパワートランジスタ20の閾値電圧の値が、予め設定された所定の範囲内にあるかを判定し、範囲内であればOK、範囲外であればNGとして、そのパワートランジスタ20についての良否を判定する。つまり、特性判定部9は、予め設定した所定の範囲を記憶するROMや、特性測定部6により得られる測定値を一時的に記憶するRAM等の記憶手段を備え、特性測定部6から得た測定値と所定の範囲内の値とを比較することにより、閾値電圧の測定値が所定の範囲内にあるか否かの判定を行う。
特性判定部9による判定結果(OK/NG)は、例えば図1に示すように、特性判定部9に接続されるとともに筐体4に付設される報知ランプ14により表示され、警報音などとともに作業者などに報知される。
ここで、特性判定部9における前記所定の範囲は、例えば、パワートランジスタ20の種類や用途など、あるいはこのパワートランジスタ20が用いられて構成されるパワーモジュールの用途や構成などから要求される閾値電圧のばらつきの許容範囲などにより予め設定される。以下、特性判定部9において予め設定される所定の範囲を「特性許容範囲」とする。
また、総合制御部10は、特性調整装置1の装置全体を総合的に制御するものであり、その制御の一つとして、特性測定部6から得られる測定値(パワートランジスタ20の閾値電圧の値)及び特性判定部9から得られる判定結果(パワートランジスタ20の閾値電圧の値が特性許容範囲内にあるか否か)の少なくともいずれかに基づいて、X線源2によるX線の照射を制御する。
すなわち、総合制御部10は、特性測定部6から得られる測定値や特性判定部9から得られる判定結果に基づいて、X線照射制御部3に制御信号を送り、このX線照射制御部3を介して、X線源2により照射されるX線の強度や照射時間、またはX線源2の調整室4a内における位置を制御することにより、パワートランジスタ20に照射されるX線を一定の値としたり前記測定値や判定結果に応じて変化させたりする。
また、総合制御部10は、プローブ系及び搬送系を制御する駆動制御部8に対しての制御信号を生成する。
すなわち、総合制御部10は、駆動制御部8に制御信号を送り、この駆動制御部8を介して、搬送装置5及び測定用プローブ7を制御する。例えば、順次調整対象となる複数の半導体装置に対して搬送装置5及び測定用プローブ7が周期的な動作を行うように制御したり、特性判定部9による判定結果に基づいて調整後のパワートランジスタ20を所定の搬送経路(OK用経路、NG用経路など)に従って払い出すように搬送装置5を制御したりする。
このように、特性調整装置1においては、X線照射制御部3、特性測定部6、駆動制御部8及び特性判定部9が、それぞれ総合制御部10に接続されて信号の出入力が行われる構成となっており、各部が独立してまたは関連して制御される。
なお、X線照射制御部3、駆動制御部8、特性測定部6及び特性判定部9は、総合制御部10を含めそれぞれ独立した装置とする構成であってもよく、また、いずれかあるいは全部を一つの装置とする構成であってもよい。
以上のような構成を備える特性調整装置1により、パワートランジスタ20の電気特性の調整が行われる。
本実施形態に係るパワートランジスタ20の特性調整方法は、パワートランジスタ20の閾値電圧を測定し、測定した閾値電圧の結果(測定値)に基づき、パワートランジスタ20のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施して、パワートランジスタ20の閾値電圧を、予め設定した所定の範囲内となるように変化させる。
具体的には、本実施形態に係るパワートランジスタ20の特性調整方法は、パワートランジスタ20の閾値電圧を測定する特性測定ステップと、特性測定ステップにより測定した測定値が特性許容範囲内にあるか否かを判定する特性判定ステップと、パワートランジスタ20に、そのゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施すことにより、パワートランジスタ20の閾値電圧を変化させる特性変化ステップとを有する。
すなわち、特性測定ステップでは、特性測定部6により調整対象であるパワートランジスタ20の閾値電圧を測定し、特性判定ステップでは、特性判定部9によりパワートランジスタ20の閾値電圧の値が特性許容範囲内となったか否かを判定し、特性変化ステップでは、X線源2によるX線の照射によりパワートランジスタ20の閾値電圧を変化させる。そして、総合制御部10により、パワートランジスタ20の閾値電圧の値が特性許容範囲内となるように各部を制御する。
前記各ステップを用いたパワートランジスタ20の特性調整方法の一態様について、図2に示すフロー図を用いて説明する。
まず、搬送装置5により調整対象であるパワートランジスタ20を調整室4a内に取り込んでセット位置へと移動させるとともに、測定用プローブ7をセットさせ、そのパワートランジスタ20の閾値電圧を、特性測定部6により測定する(ステップ(以下、「S」と略す)110)。このS110が特性測定ステップに相当する。
次に、S110により測定した閾値電圧の測定値Vthが、予め設定した所定の下限値VthLL以上であるか否かを、特性判定部9により判定する(S120)。ここで測定値Vthと比較される閾値電圧の下限値VthLLが、特性許容範囲の下限値となる。
すなわち、本実施形態において測定及び調整する対象である閾値電圧は、前述したようにX線の照射により低下するものであるため、調整(合わせ込み)不可能な値として特性許容範囲の下限値VthLLを設定し、調整しようとするパワートランジスタ20の閾値電圧の値が下限値VthLLよりも低い場合は、そのパワートランジスタ20を調整対象から除く処理を行う。
したがって、特性判定部9がS120において測定値Vthが下限値VthLL以上でないと判定した場合は、そのパワートランジスタ20についてはNG判定とし(S125)、報知ランプ14のNGランプを点灯させ、搬送装置5によるNG用経路などへの払い出しあるいは作業者によるNG品の除去などの所定の処理を行い、そのパワートランジスタ20についての処理は終了する。
一方、特性判定部9がS120において測定値Vthが下限値VthLL以上であると判定した場合は、S110により測定した測定値Vthが予め設定した所定の目標値VthTであるか否かを、特性判定部9により判定する(S130)。つまり、ここで測定値Vthと比較される閾値電圧の目標値VthTが、特性許容範囲の上限値となる。
特性判定部9が、S130において測定値Vthが目標値VthT以下であると判定した場合は、そのパワートランジスタ20の閾値電圧は特性許容範囲内にあることになるので、閾値電圧を変化させる必要がなく、X線の照射は行わない。つまり、そのパワートランジスタ20についてはOK判定とし(S135)、報知ランプ14のOKランプを点灯させ、搬送装置5によるOK用経路などへの払い出しあるいは作業者によるOK品の選出などの所定の処理を行い、そのパワートランジスタ20についての処理は終了する。
このように、パワートランジスタ20の閾値電圧の測定値Vthが特性許容範囲にあるか否かの判定を行うS120及びS130が特性判定ステップに相当する。
一方、特性判定部9がS130において測定値Vthが目標値VthT以下でないと判定した場合は、X線源2によりそのパワートランジスタ20にX線を照射させる(S140)。
つまりこの場合、パワートランジスタ20の閾値電圧が特性許容範囲を上回っていることとなるので、その値を特性許容範囲内の値に変化させるため、パワートランジスタ20にX線を照射してその閾値電圧を低下させる。
S140におけるパワートランジスタ20に対するX線の照射は、予め設定した設定照射時間の間行う。つまり、X線の照射を開始してからの経過時間(照射時間)が設定照射時間以上であるか否かの判断を行う(S150)。つまりS150により、X線の照射時間が設定照射時間を経過するまでX線の照射を継続する。
なお、パワートランジスタ20に対するX線の照射に関し、S130における測定値Vthと目標値VthTとの比較の際、測定値Vthと目標値VthTとの乖離量(差の大きさ)を求め、その大きさによって、照射時間も含め、パワートランジスタ20に対するX線源2の距離やX線の強度(電子銃の電流、加速電圧)などの制御を行うこともできる。
このように、パワートランジスタ20に対するX線の照射を行うS140及びS150が特性変化ステップに相当する。
そして、S150にて、パワートランジスタ20に対するX線の照射を開始してからの経過時間(照射時間)が設定照射時間以上となった(経過した)と判断した場合は、S110に戻り、前述したステップ(S110〜150)を繰り返す。
以上のようなフローに従って前記各ステップを行うことにより、閾値電圧が特性許容範囲内にあるパワートランジスタ20が得られる。つまり、パワートランジスタ20の閾値電圧を特性許容範囲内に調整することができる。
なお、以上説明した第一実施形態においては、パワートランジスタ20のゲート酸化膜に固定正電荷を発生させる処理を、X線源2によるX線の照射として説明したが、これに限定するものではない。
すなわち、X線に限らず電子線やプロトンやγ線などの他の放射線であってもパワートランジスタ20のゲート酸化膜に固定正電荷を発生させることができ、これらの放射線を用いることができる。
また、パワートランジスタ20に対してイオン注入を行うことによっても、そのゲート酸化膜に固定正電荷を発生させることができる。つまり、放射線の照射に代えてイオン注入を行うことができる。この場合、特性調整装置1における特性変化手段として、イオンを発生させるイオン源や、イオンを高エネルギーまで電気的に加速させる加速器などを備える一般的なイオン注入装置を用いて行うことができる。
以上のような、特性調整装置1及び特性調整方法を用いることにより、パワートランジスタ20の製造過程におけるウエハロットやウエハの違いに係わらず、パワートランジスタ20の特性のばらつきを解消することができ、並列接続されるパワートランジスタ20の特性のばらつきを低減するための管理を不要とするとともに、並列接続されるパワートランジスタ20の個々の性能を十分に生かせ、そのパワートランジスタ20により構成されるパワーモジュール全体の性能を向上させることができる。
また、第一実施形態における調整対象としてのパワートランジスタ20は、例えばベアチップ状態のように絶縁基板に実装される前の状態、または絶縁基板などに実装され半導体装置を構成した状態、さらにその半導体装置が所定の個数、所定の配置で放熱板にはんだ付けされパワーモジュールを構成した状態のいずれの状態であってもよい。
ただし、調整対象を、ウエハ状態、ベアチップ状態またはベアチップがモールド樹脂で封止された状態のいずれかの状態、つまり絶縁基板などの他の部材に実装する前の状態のパワートランジスタ20とすることにより、次のような効果を得ることができる。
すなわち、チップに個片化される前の状態であるウエハやそのウエハにおける位置などによらず、パワートランジスタ20の電気特性のばらつきを低減させ、電気特性の均一化を図ることができる。これにより、例えばパワーモジュールを構成する際など、任意のパワートランジスタ20を組み合せて並列接続することが可能となる。
つまり、実装する前のパワートランジスタ20の閾値電圧の調整対象とすることにより、実装前の段階でパワートランジスタ20の閾値電圧を特性調整範囲内とすることができるので、パワートランジスタ20の汎用性を向上することができる。
これにより、パワートランジスタ20が、ウエハからチップに個片化されてから、例えばパワーモジュールに実装されるまで、それらが同じウエハから製作されたものであることを管理する必要がなくなり、管理のための手間やコストを削減することができる。
また、電気特性の均一化が図れることから、一つのウエハから切り出されるパワートランジスタ20の数が、一つのパワーモジュールに用いられるパワートランジスタの数に対して端数を生じさせる場合であっても、余分なパワートランジスタが発生することなく、労務費や仕損費を低減することができる。
なお、ウエハ状態のパワートランジスタ20を調整対象とする際は、ウエハに形成されている個々の素子部分に対してそれぞれ前述したような閾値電圧の調整を行う。
つまり、ウエハにおける個々の素子部分に対して、測定用プローブ7によるプローブピン7a・7bの当接、及びX線源2によるX線の局所的な照射を行う。
ここで、X線を局所的に照射する方法としては、次のような方法が考えられる。例えば、X線を照射する素子部分に対し、X線源2を、その照射するX線が他の素子部分に照射されないかあるいは素子特性に影響を及ぼさない程度に近接させた状態でX線の照射を行う方法がある。また、他の方法としては、X線源2とウエハとの間に、所定の部分にのみX線を透過させるマスク部材を介在させることにより、照射する素子部分以外の部分に対するX線を遮蔽することで局所的なX線の照射を行う方法がある。
一方、特性調整装置1においては、例えば、パワートランジスタ20により構成される半導体装置が放熱板にはんだ付けされボンディングワイヤやバスバー等の電気配線が施されることにより構成されるパワーモジュール等のように、複数のパワートランジスタ20が並列接続されたものを、特性測定部6による測定対象とすることができる。
この場合、例えば次のようにしてパワートランジスタ20の閾値電圧の調整を行うことができる。
すなわち、特性測定部6における閾値電圧を測定する対象を、並列接続された複数のパワートランジスタ20を有するものとし、並列接続されている各パワートランジスタ20から得た測定値のうち、最も閾値電圧を変化(低下)させる方向側、つまり最も閾値電圧が低い測定値を基準測定値として用いて特性許容範囲を定め、複数のパワートランジスタ20のうち、閾値電圧の測定値が前記基準測定値であるパワートランジスタ20以外のパワートランジスタ20に対して、そのゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施し、閾値電圧を変化させる。
この場合、特性測定ステップ(S110)では、特性測定部6により、並列接続されている複数のパワートランジスタ20それぞれについて閾値電圧を測定する。
ここで、閾値電圧の測定に際して用いられる測定用プローブ7は、複数のパワートランジスタ20に対して一つを共用して順次閾値電圧の検出及び測定を行ってもよく、各パワートランジスタ20について測定用プローブ7を設ける構成であってもよい。
次に、並列接続された複数のパワートランジスタ20から得られる閾値電圧の測定値のうち、最も低い測定値を基準測定値VthSとし、この基準測定値VthSを用いて特性許容範囲を定める。つまり、特性測定ステップ(S110)と特性判定ステップ(S120・S130)との間に、複数のパワートランジスタ20から得られる測定値から基準測定値VthSを選定するステップと、この基準測定値を用いて特性許容範囲を設定するステップとを行わせる。
特性許容範囲は、基準測定値VthSを基準として、並列接続されるパワートランジスタ20の閾値電圧のばらつきを合わせ込みたい範囲となるように定める。具体的には、例えば特性許容範囲を基準測定値VthS±0.1(V)等のように設定する。この場合、特性許容範囲の下限値VthLLが基準測定値VthS−0.1(V)となり、上限値である目標値VthTが基準測定値VthS+0.1(V)となり、これらの値と、他のパワートランジスタ20の測定値との比較が特性判定ステップ(S120・S130)において行われる。
そして、特性変化ステップ(S140・S150)においては、並列接続されたパワートランジスタ20のうち、閾値電圧の測定値が基準測定値VthSであるパワートランジスタ20以外のパワートランジスタ20にX線を照射し、それぞれのパワートランジスタ20について例えば前述したフローに沿って閾値電圧の調整を行う。
ここで、複数あるパワートランジスタ20に対するX線の照射は、一つのX線源2を共用して順次行ってもよく、複数のX線源を設けて同時に行ってもよい。なお、複数のパワートランジスタ20に対する選択的なX線の照射は、前述したX線を局所的に照射する方法と同様に、X線源2のパワートランジスタ20に対する位置の調節やマスク部材を用いること等により行うことができる。
このように、並列接続された複数のパワートランジスタを測定対象とするとともに、その各測定値のうち、最も低い閾値電圧の値を基準測定値として特性許容範囲を定めてパワートランジスタの電気特性の調整を行うことにより、例えばパワーモジュール等のように、複数の半導体装置が実装され、並列接続されたパワートランジスタと並列接続されていないパワートランジスタとが混在する構成において、電気特性のばらつきが電流の集中による特性劣化などの原因となる並列接続されたパワートランジスタのみを調整対象とすることにより、電気特性の調整を効率的に行うことが可能となる。
また、ある程度ばらついた電気特性を有するパワートランジスタが実装され並列接続されたとしても、その後に電気特性を自由に調整することが可能となるので、従来、NG品として廃棄されていた半導体装置などを救済することができ、コストの削減を図ることができる。また、ウエハからチップに個片化されてから、実装されて並列接続されるまでにおけるパワートランジスタ20の特性のばらつきを低減するための管理が不要となり、管理のための手間やコストを削減することができる。
なお、本実施形態では、パワートランジスタ20電気特性として、X線などの照射によるゲート酸化膜に固定正電荷が発生することにより低下する閾値電圧を用いているため、並列接続された複数のパワートランジスタ20から得られる閾値電圧の測定値のうち、最も低い値を基準測定値VthSとして用いているが、これに限定されるものではない。
すなわち、閾値電圧とは逆に、ゲート酸化膜に固定正電荷が発生することにより上昇する電気特性を用いる場合は、「最も電気特性を変化させる方向側にある測定値」として、その電気特性の一般的な測定値として並列接続されるパワートランジスタ20から得られる測定値のうち最も高い測定値を基準測定値VthSとして用い、特性許容範囲を定める。つまり、電気特性として、ゲート酸化膜に固定正電荷が発生することにより変化し、周知の装置などによって測定できるものを有する半導体素子であれば、本発明に係る調整対象とすることができる。
ところで、例えばIGBT等のパワーモジュール用のパワートランジスタは、半導体装置を構成する際には、例えばDBA基板などの絶縁基板にはんだにより接合され、さらにこの半導体装置が電極などを介して放熱板にはんだ付けされ、熱的・電気的に接続される。つまり、パワートランジスタ等の半導体素子は、絶縁基板や放熱板などの他部材にはんだを介して電気的・熱的・機械的に接合される。
このように、パワートランジスタの他部材に対する接合部となるはんだ部分においては、パワートランジスタの通電による発熱を放熱板に放熱させるためや、電気的・機械的な接続の信頼性を確保する等のため、ボイド(気泡の空洞)などの欠陥が少なくなくてはならない。このため、パワートランジスタを用いた半導体装置やパワーモジュール等の製造過程においては、はんだによる接合部のボイド等の欠陥が一定量以下であることの検査が、X線透過画像の撮像により行われている。つまり、このような接合欠陥の検査の際には、パワートランジスタにX線が照射される。
そこで、パワートランジスタを用いた半導体装置やパワーモジュール等の製造過程において、はんだ等による接合欠陥の検査に用いられるX線を、パワートランジスタの電気特性の調整に用いることができる。
つまり、前述したようなパワートランジスタの電気特性の調整に際し、パワートランジスタのゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理をX線の照射とすることにより、パワートランジスタの電気特性の調整ができるとともに、パワートランジスタの接合欠陥の検査を行うことができる。言い換えると、既存のX線検査装置を用いて、前述したようなパワートランジスタの電気特性の調整方法を使用することができる。
次に、第二実施形態について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る半導体素子の特性調整装置51は、特性変化手段にX線源2を備えゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理をX線の照射とする第一実施形態の特性調整装置1に加え、半導体素子にX線を照射することにより得られる画像から、この半導体素子の他部材に対する接合部の欠陥を検査するためのX線検査手段を備える。なお、第一実施形態と共通する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
特性調整装置51は、ゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を、X線の照射とする一方、調整対象を、X線が照射されることにより得られる画像から他部材に対する接合部の欠陥が検査される半導体素子とする。
具体的には、図3に示すように、半導体装置31において、例えばDBA基板である絶縁基板32にはんだ接合部33により接合されて実装されるIGBT等の半導体素子(以下「パワートランジスタ30」とする。)を調整対象とする。半導体装置31は、所定の個数、放熱板にはんだ付けされ配設されるとともに所定の電気的接続が施されることにより、パワーモジュールを構成する。したがって、パワートランジスタ30の他部材に対する接合部とは、絶縁基板32のように直接的にはんだ付けされる部材に対する接合部に限られず、絶縁基板32を介した放熱板(図示略)に対する接合部のように他の部材を介した接合部を含む。
特性調整装置51は、半導体装置31におけるパワートランジスタ30の絶縁基板32に対する接合部であるはんだ接合部33の欠陥を検査するためのX線検査手段としては、周知の装置構成を用いることができ、具体的には、X線源2からパワートランジスタ30に照射され半導体装置31を透過したX線の透過画像を検出するX線センサーとしてのX線検出部11と、X線検出部11により検出されたX線透過画像を解析するX線画像解析部12と、X線画像解析部12による解析結果が例えば予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する接合欠陥判定部13とを備える。
X線検出部11は、調整室4a内において半導体装置31を透過するX線を検出する位置(本実施形態では搬送装置5の下方位置)に設けられ、半導体装置31を透過したX線をシンチレータ等の蛍光体を介してX線透過画像として検出するCCDカメラ等により構成される。
X線画像解析部12は、総合制御部10に接続され、この総合制御部10からの指令信号やX線検出部11により検出された画像信号などが入力される。
接合欠陥判定部13は、総合制御部10及びX線画像解析部12に接続され、総合制御部10からの指令信号やX線画像解析部12からの解析信号などが入力される。接合欠陥判定部13は、X線解析画像や判定結果などを表示する表示装置などを備え、例えば、ボイドの量が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定し、範囲内であればOK、範囲外であればNGとして、半導体装置31における接合部の良否を判定する。
なお、X線画像解析部12及び接合欠陥判定部13は、総合制御部10を含めそれぞれ独立した装置とする構成であってもよく、また、いずれかあるいは全部を一つの装置とする構成であってもよい。
このような構成において、パワートランジスタ30の電気特性の調整に際し、X線源2からパワートランジスタ30にX線が照射されると、X線検出部11によりX線が検出され、この検出されたX線画像信号に基づきX線画像解析部12がはんだ接合部33の透過画像が取得され解析される。そして、接合欠陥判定部13により、X線画像解析部12による解析結果に基づいて、はんだ接合部33の接合欠陥が所定の許容範囲内にあるか否か等の判定が行われる。
なお、パワートランジスタ30の電気特性の調整方法及びその他の構成などについては、第一実施形態と同様であり、説明を省略する。
このように、特性調整装置51にX線検査手段を備えることで、パワートランジスタ30の他部材(絶縁基板32など)に対する接合部(はんだ接合部33など)の欠陥の検査とともに、パワートランジスタ30の特性の調整を行うことができる。また、X線検査装置との兼用及び既存のX線検査装置の利用を図ることができる。したがって、パワートランジスタ30の特性を調整するに際し、パワートランジスタ30を用いて構成される半導体装置やパワーモジュール等の製造過程における加工リードタイムの短縮及び設備投資の低減を図ることができる。
すなわち、パワートランジスタ30の電気特性の調整及びはんだ接合部33の接合欠陥の検査を同時に行うことができるので、これらの調整及び検査を個別に行う場合と比べ、短い加工リードタイムを実現することができる。
また、特性調整装置51にX線検査手段を備えることにより、特性調整装置51をはんだ接合部のX線検査装置として兼用することができるとともに、既存のX線検査装置を用いることができるので、パワートランジスタ30の電気特性の調整を行うに際し、ゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施すための装置が不要となり、設備費用を低減することができる。
第一実施形態の特性調整装置の構成を示す図。 半導体素子の特性調整方法の一態様を示すフロー図。 第一実施形態の特性調整装置の構成を示す図。
符号の説明
1 特性調整装置
2 X線源
3 X線照射制御部
6 特性測定部
9 特性判定部
10 総合制御部
11 X線検出部
12 X線画像解析部
13 接合欠陥判定部
20 パワートランジスタ(半導体素子)
30 パワートランジスタ(半導体素子)
31 半導体装置
33 はんだ接合部
51 特性調整装置

Claims (8)

  1. ゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより変化する電気特性を有する半導体素子を調整対象とする半導体素子の特性調整方法であって、
    半導体素子の前記電気特性を測定し、
    測定した電気特性の結果に基づき、半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施して、半導体素子の前記電気特性を、予め設定した所定の範囲内となるように変化させる、
    ことを特徴とする半導体素子の特性調整方法。
  2. 前記調整対象を、ウエハ状態、ベアチップ状態またはベアチップがモールド樹脂で封止された状態のいずれかの状態の半導体素子とする、
    ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の特性調整方法。
  3. 前記電気特性を測定する対象を、並列接続された複数の半導体素子を有するものとし、
    前記各半導体素子から得た測定値のうち、最も前記電気特性を変化させる方向側にある測定値を基準測定値として用いて前記所定の範囲を定め、
    前記複数の半導体素子のうち、前記測定値が前記基準測定値である半導体素子以外の半導体素子に対して、そのゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施し、前記電気特性を変化させる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の特性調整方法。
  4. 半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を、X線の照射とする一方、
    前記調整対象を、X線が照射されることにより得られる画像から他部材に対する接合部の欠陥が検査される半導体素子とする、
    ことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の半導体素子の特性調整方法。
  5. ゲート酸化膜中に固定正電荷が発生することにより変化する電気特性を有する半導体素子を調整対象とする半導体素子の特性調整装置であって、
    半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施すことにより、半導体素子の前記電気特性を変化させる特性変化手段と、
    前記電気特性を測定する特性測定手段と、
    前記特性測定手段により測定された測定値が予め設定された所定の範囲内にあるか否かを判定する特性判定手段と、
    前記特性測定手段から得られる測定値及び前記特性判定手段から得られる判定結果の少なくともいずれかに基づいて、前記特性変化手段による半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする半導体素子の特性調整装置。
  6. 前記調整対象が、ウエハ状態、ベアチップ状態またはベアチップがモールド樹脂で封止された状態のいずれかの状態の半導体素子であることを特徴とする請求項5に記載の半導体素子の特性調整装置。
  7. 前記特性測定手段による測定対象が、並列接続された複数の半導体素子を有するものであり、
    前記特性判定手段は、前記特性測定手段により前記各半導体素子から得られる測定値のうち、最も前記電気特性がその変化される側にある測定値を基準測定値として用いて前記所定の範囲を定め、
    前記特性変化手段は、前記複数の半導体素子のうち、前記測定値が前記基準測定値である半導体素子以外の半導体素子に対して、そのゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を施し、前記電気特性を変化させることを特徴とする請求項5に記載の半導体素子の特性調整装置。
  8. 前記特性変化手段に、X線を照射するためのX線源を備え、
    半導体素子のゲート酸化膜中に固定正電荷を発生させる処理を、X線の照射とする一方、
    前記半導体素子にX線を照射することにより得られる画像から、該半導体素子の他部材に対する接合部の欠陥を検査するためのX線検査手段を備えることを特徴とする請求項5または請求項7に記載の半導体素子の特性調整装置。
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JP2016207732A (ja) * 2015-04-17 2016-12-08 三菱電機株式会社 半導体装置及びその製造方法
JP2018143030A (ja) * 2017-02-27 2018-09-13 トヨタ自動車株式会社 電力変換装置の製造方法

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