以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。図中11はガラス基板を示す。ガラス基板11は、一対の主面11a,11bを有する。ガラス基板11には、シリコンで構成されたシリコン製部材12a,12bが埋設されている。シリコン製部材12aは、主面11a上に形成された第1固定電極13aと電気的に接続する導電部材である。シリコン製部材12bは、主面11a上に形成された第2固定電極13bと電気的に接続する導電部材である。シリコン製部材12a,12bは、ガラス基板11の両主面11a,11bで露出している。
ガラス基板11の主面11bで露出するシリコン製部材12a,12b上には、シリコン製部材12a,12bと電気的に接続するように引き出し電極(図示せず)を設けても良い。このように引き出し電極が同一の主面11b上に設けられていることにより、外部機器への接続が容易となる。
ガラス基板11の主面11aで露出するシリコン製部材12a,12b上には、シリコン製部材12a,12bと電気的に接続するように固定電極13a,13bがそれぞれ設けられている。すなわち、シリコン製部材12a上には、第1固定電極13aが形成され、シリコン製部材12b上には、第2固定電極13bが形成されている。第2固定電極13b上には、電極層14が形成されている。第1固定電極13aが相対的に高圧側のレンジに対応する固定電極であり、第2固定電極13b及び電極層14が相対的に低圧側のレンジに対応する固定電極である。すなわち、相対的に高圧側のレンジに対応する固定電極が相対的に薄く、相対的に低圧側のレンジに対応する固定電極が相対的に厚い。
高圧側の固定電極13aと低圧側の固定電極13b,14とは、測定レンジに対応して分割されていれば良く、その形状については特に制限はない。例えば、高圧側の固定電極13aと低圧側の固定電極13b,14とは、図2(a)に示すように、2つに分割されていても良く、図2(b)に示すように、4つに分割され、2つを高圧側の固定電極に割り当て、残り2つを低圧側の固定電極に割り当てても良い。なお、固定電極を分割する数については一例であり、高圧側の固定電極と低圧側の固定電極とに割り当てることを前提とすれば、適宜変更することが可能である。
ガラス基板11の主面11a上には、可動電極であるダイヤフラム15aを有するシリコン基板15が接合されている。このダイヤフラム15aは、可動電極として圧力により変位する。シリコン基板15は、ガラス基板11の主面11aと接合部15bで接合されている。ガラス基板11とシリコン基板15とは、ダイヤフラム15aが高圧側の固定電極13a及び低圧側の固定電極13b,14と所定の間隔をおいて配置されるように位置合わせされた状態で接合部15bにおいて接合される。
このように、ガラス基板11とシリコン基板15とが接合されることにより、キャビティ16が形成され、キャビティ16内に固定電極13a,13b,14が設けられることになる。この場合において、高圧側の固定電極13aと低圧側の固定電極13b,14との間の厚さの差により、ダイヤフラム15aからの距離(ギャップ)が異なる。すなわち、高圧側の固定電極13aとダイヤフラム15aとの間の距離D1が低圧側の固定電極13b,14とダイヤフラム15aとの間の距離D2よりも長くなっている。なお、距離D1と距離D2との差については、測定レンジにより適宜設定することができる。したがって、この測定レンジによる距離D1と距離D2との差に応じて適宜高圧側の固定電極13aと低圧側の固定電極13b,14の厚さを設定する。
ガラス基板11とシリコン製部材12a,12bとの界面は、高い密着性を有することが好ましい。後述するように、これらの界面は、加熱下においてシリコン製部材12a,12bに対応する突出部をガラス基板11に押し込むことにより形成される。このような方法により得られた界面でも高い密着性を発揮できるが、突出部をガラス基板11に押し込んだ後に、陽極接合処理を施すことにより、密着性をより高くすることができる。
ここで、陽極接合処理とは、所定の温度(例えば400℃以下)で所定の電圧(例えば300V〜1kV)を印加することにより、シリコンとガラスとの間に大きな静電引力が発生して、界面で共有結合を起こさせる処理をいう。この界面での共有結合は、シリコンのSi原子とガラスに含まれるSi原子との間のSi−Si結合又はSi−O結合である。したがって、このSi−Si結合又はSi−O結合により、シリコンとガラスとが強固に接合して、両者間の界面で非常に高い密着性を発揮する。このような陽極接合を効率良く行うために、ガラス基板11のガラス材料としては、ナトリウムなどのアルカリ金属を含むガラス材料(例えばパイレックス(登録商標)ガラス)であることが好ましい。
また、ガラス基板11の主面11aとシリコン基板15の接合部15bとの界面は、高い密着性を有することが好ましい。これらの界面は、陽極接合処理を施すことにより、密着性をより高くすることができる。
高圧側の固定電極13a、低圧側の固定電極13b,14、及びシリコン基板15には、制御部17が電気的に接続されている。この制御部17は、高圧側の固定電極13aと低圧側の固定電極13b,14とを切り替える制御を行う。この切替制御は、例えば、高圧側の固定電極13aとダイヤフラム15aとの間で検出される出力(静電容量)、又は低圧側の固定電極13b,14とダイヤフラム15aとの間で検出される出力(静電容量)を監視し、所定の閾値を超えるあるいは下回ることを検知することにより行う。図3は、圧力と容量変化との関係を示す図であり、(b)は(a)の円で囲んだ部分の拡大図である。具体的に、高圧側の固定電極13aから低圧側の固定電極13b,14に切替制御を行う場合には、図3(a)に示す高圧側の固定電極13aとダイヤフラム15aとの間で検出される出力(図3における□、◇、△プロット)が一定の値(図3(b)に示すA部)になったときに切り替える(図3における×プロット)。このように、高圧側の固定電極と低圧側の固定電極とで厚さを変えて、測定レンジに対応させているので、すなわち、測定レンジに対応して適切なギャップを設定するので、高精度に測定を行うことができる。特に低圧側の測定レンジの精度をより高く、しかも直線性良くすることができる。
このような構成を有する静電容量型圧力センサにおいては、ダイヤフラム15aと高圧側の固定電極13a又は低圧側の固定電極13b,14との間に所定の静電容量を有する。この静電容量型圧力センサに圧力がかかると、ダイヤフラム15aが圧力に応じて可動する。これにより、ダイヤフラム15aが変位する。このとき、ダイヤフラム15aと固定電極との間の静電容量が変化する。したがって、この静電容量をパラメータとして、その変化を圧力変化とすることができる。
また、このような静電容量型圧力センサにおいては、一つのダイヤフラム15aに対して高圧側の固定電極13aと低圧側の固定電極13b,14とを設けているので、すなわち測定レンジに対応して固定電極を設けているので、測定レンジ毎に適切なギャップで測定を行うことが可能となる。これにより、高精度に測定を行うことができる。特に低圧側の測定レンジの精度をより高くすることができる。
次に、本実施の形態の静電容量型圧力センサの製造方法について説明する。図4(a)〜(c)、及び図5(a),(b)は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサの製造方法を説明するための断面図である。
図4(a)に示すようなシリコン製部材12a,12bなどの導電性材料を埋め込んだガラス基板11を作製する。具体的には、まず、不純物をドーピングして低抵抗化したシリコン基板を準備する。不純物としては、n型不純物でも良く、p型不純物でも良い。抵抗率としては、例えば0.01Ω・cm程度とする。シリコン基板の一方の主面をエッチングして、シリコン製部材12a,12bに対応する突出部を形成し、加熱下でシリコン基板をガラス基板11に押圧して突出部をガラス基板11の主面11bに押し込み、シリコン基板とガラス基板11とを接合する。このときの温度は、シリコンの融点以下であって、ガラスが変形可能である温度(例えば、ガラスの軟化点温度以下)が好ましい。例えば加熱温度は約600℃である。さらに、シリコン基板の突出部とガラス基板11との界面での密着性をより高めるために、陽極接合処理をすることが好ましい。この場合、シリコン基板及びガラス基板11にそれぞれ電極をつけて、約400℃以下の加熱下で約300V〜1kVの電圧を印加することにより行う。これにより界面での密着性がより高くなる。
次いで、ガラス基板11の主面11a,11b側を研磨処理及びラップ処理することによりシリコン製部材12a,12bを主面11a,11bで露出させる。これにより、ガラス基板11にシリコン製部材12a,12bが埋め込まれた状態となる。このようにしてシリコン製部材12a,12bを埋め込んだガラス基板11を作製する。
次いで、図4(b)に示すように、ガラス基板11の主面11a上に、シリコン製部材12a,12bとそれぞれ電気的に接続するように第1固定電極13a、第2固定電極13bをそれぞれ形成する。すなわち、シリコン製部材12a上に第1固定電極13aを形成し、シリコン製部材12b上に第2固定電極13bを形成する。この場合、まず、ガラス基板11の主面11a上に電極材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、電極形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)し、そのレジスト膜をマスクとして電極材料をエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
次いで、図4(c)に示すように、第2固定電極13b上に電極層14を形成する。この場合、まず、ガラス基板11の主面11a上に電極材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、電極層形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)し、そのレジスト膜をマスクとして電極材料をエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
次いで、可動電極となるシリコン基板15の一方の面にレジスト膜を形成し、凹部形成領域以外にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)する。そして、レジスト膜をマスクとしてシリコン基板15の一方の主面をエッチングして、図5(a)に示すように、凹部15cを設ける。エッチングとしては、ドライエッチングでも良く、ウェットエッチングでも良い。
次いで、上記と同様にして、シリコン基板15の他方の面にレジスト膜を形成し、凹部形成領域以外にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)する。そして、レジスト膜をマスクとしてシリコン基板15の他方の主面をエッチングして凹部15dを設ける。このようにしてダイヤフラム15aを有するシリコン基板15を作製する。
次いで、図1に示すように、シリコン基板15の凹部15cがガラス基板11の主面11a側になるようにして、シリコン基板15をガラス基板11の主面11a上に接合する。すなわち、ガラス基板11の主面11aとシリコン基板15の接合部15bとが接合される。このとき、シリコン基板15及びガラス基板11に対して、約400℃以下の加熱下で約500V程度の電圧を印加することにより陽極接合処理を行う。これによりシリコン基板15とガラス基板11との間の界面での密着性がより高くなる。
このようにして得られた静電容量型圧力センサにおいては、高圧側の固定電極13aがシリコン製部材12aと電気的に接続されており、低圧側の固定電極13b,14がシリコン製部材12bと電気的に接続されている。したがって、ダイヤフラム15aと高圧側の固定電極13a又は低圧側の固定電極13b,14との間で検知された静電容量の信号は、シリコン製部材12a,12bを介して制御部17で取得することができる。これらの信号に基づいて静電容量を算出することができる。この場合、制御部17において、静電容量に基づいて高圧側の固定電極13aと、低圧側の固定電極13b,14とを切り替えることができる。
本実施の形態に係る静電容量型圧力センサは、一つのダイヤフラムに対して分割された固定電極を設けて、圧力範囲毎に使い分けているので、ダイヤフラムと固定電極とで構成されるセンサを2つ設けている構成に比べて小型化を図ることができる。したがって、小型で圧力測定レンジが広い静電容量型圧力センサを実現することができる。
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。図中21はガラス基板を示す。ガラス基板21は、一対の主面21a,21bを有する。ガラス基板21には、シリコンで構成されたシリコン製部材22a,22bが埋設されている。シリコン製部材22aは、主面21a上に形成された第1固定電極23aと電気的に接続する導電部材である。シリコン製部材22bは、主面21a上に形成された第2固定電極23cと電気的に接続する導電部材である。シリコン製部材22a,22bは、ガラス基板21の両主面21a,21bで露出している。
ガラス基板21の主面21bで露出するシリコン製部材22a,22b上には、シリコン製部材22a,22bと電気的に接続するように引き出し電極(図示せず)を設けても良い。このように引き出し電極が同一の主面21b上に設けられていることにより、外部機器への接続が容易となる。
ガラス基板21の主面21aで露出するシリコン製部材22a,22b上には、シリコン製部材22a,22bと電気的に接続するように固定電極23a,23cがそれぞれ設けられている。すなわち、シリコン製部材22a上には、第1固定電極23aが形成され、シリコン製部材22b上には、第2固定電極23cが形成されている。第1固定電極23a上には、電極層23bが形成されている。第2固定電極23cが相対的に高圧側のレンジに対応する固定電極であり、第1固定電極23a及び電極層23bが相対的に低圧側のレンジに対応する固定電極である。すなわち、相対的に高圧側のレンジに対応する固定電極が相対的に薄く、相対的に低圧側のレンジに対応する固定電極が相対的に厚い。
高圧側の固定電極23cと低圧側の固定電極23a,23bとは、測定レンジに対応して分割されていれば良く、その形状については特に制限はない。例えば、高圧側の固定電極23cと低圧側の固定電極23a,23bとは、図7(a)に示すように、同心円状に分割されて形成されていることが好ましい。図7(a)では、高圧側の固定電極23cが円形であり、低圧側の固定電極23a,23bが固定電極23cを囲むリング状である。また、図7(b)に示すように、リング状の電極を複数設けても良い。なお、固定電極を分割する数については一例であり、高圧側の固定電極と低圧側の固定電極とに割り当てることを前提とすれば、適宜変更することが可能である。
高圧側の固定電極23c及び低圧側の固定電極23a,23b上には、絶縁層24が設けられている。このように絶縁層24を設けることにより、低圧側の固定電極23a,23bと後述するダイヤフラムとが接触して、不要な容量を持つことを防止することができる。なお、絶縁層24の厚さや材質については特に制限はない。
ガラス基板21の主面21a上には、可動電極であるダイヤフラム25aを有するシリコン基板25が接合されている。このダイヤフラム25aは、可動電極として圧力により変位する。シリコン基板25は、ガラス基板21の主面21aと接合部25bで接合されている。ガラス基板21とシリコン基板25とは、ダイヤフラム25aが高圧側の固定電極23c及び低圧側の固定電極23a,23bと所定の間隔をおいて配置されるように位置合わせされた状態で接合部25bにおいて接合される。
このように、ガラス基板21とシリコン基板25とが接合されることにより、キャビティ26が形成され、キャビティ26内に固定電極23a,23b,23cが設けられることになる。この場合において、高圧側の固定電極23cと低圧側の固定電極23a,23bとの間の厚さの差により、ダイヤフラム25aからの距離(ギャップ)が異なる。すなわち、高圧側の固定電極23cとダイヤフラム25aとの間の距離D1が低圧側の固定電極23a,23bとダイヤフラム25aとの間の距離D2よりも長くなっている。なお、距離D1と距離D2との差については、測定レンジにより適宜設定することができる。したがって、この測定レンジによる距離D1と距離D2との差に応じて適宜高圧側の固定電極23cと低圧側の固定電極23a,23bの厚さを設定する。
ガラス基板21とシリコン製部材22a,22bとの界面は、実施の形態1と同様に、高い密着性を有することが好ましい。
高圧側の固定電極23c、低圧側の固定電極23a,23b、及びシリコン基板25には、制御部27が電気的に接続されている。この制御部27は、高圧側の固定電極23cと低圧側の固定電極23a,23bとを切り替える制御を行う。この切替制御は、実施の形態1の制御部17と同じように行う。このように、高圧側の固定電極と低圧側の固定電極とで厚さを変えて、測定レンジに対応させているので、すなわち、測定レンジに対応して適切なギャップを設定するので、高精度に測定を行うことができる。特に低圧側の測定レンジの精度をより高く、しかも直線性良くすることができる。
このような構成を有する静電容量型圧力センサにおいては、ダイヤフラム25aと高圧側の固定電極23c又は低圧側の固定電極23a,23bとの間に所定の静電容量を有する。この静電容量型圧力センサに圧力がかかると、ダイヤフラム25aが圧力に応じて可動する。これにより、ダイヤフラム25aが変位する。このとき、ダイヤフラム25aと固定電極との間の静電容量が変化する。したがって、この静電容量をパラメータとして、その変化を圧力変化とすることができる。
また、このような静電容量型圧力センサにおいては、一つのダイヤフラム25aに対して高圧側の固定電極23cと低圧側の固定電極23a,23bとを設けているので、すなわち測定レンジに対応して固定電極を設けているので、測定レンジ毎に適切なギャップで測定を行うことが可能となる。これにより、高精度に測定を行うことができる。特に低圧側の測定レンジの精度をより高くすることができる。
次に、本実施の形態の静電容量型圧力センサの製造方法について説明する。図8(a)〜(d)、及び図9(a),(b)は、本発明の実施の形態2に係る静電容量型圧力センサの製造方法を説明するための断面図である。
図8(a)に示すようなシリコン製部材22a,22bなどの導電性材料を埋め込んだガラス基板21を作製する。次いで、図8(b)に示すように、ガラス基板21の主面21a上に、シリコン製部材22aと部分的に電気的に接続するようにリング状の第1固定電極23aを形成する。この場合、まず、ガラス基板21の主面21a上に電極材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、電極形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)し、そのレジスト膜をマスクとして電極材料をエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
次いで、図8(c)に示すように、第1固定電極23a上に電極層23bを形成すると共に、ガラス基板21の主面21a上に、円形の第2固定電極23cを形成する。この場合、まず、ガラス基板21の主面21a及び第1固定電極23a上に電極材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、電極層形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)し、そのレジスト膜をマスクとして電極材料をエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
次いで、図8(d)に示すように、ガラス基板21の主面21a、第1固定電極23c、及び電極層23b上に絶縁層24を形成する。この場合、まず、ガラス基板21の主面21a、第1固定電極23c及び電極層23b上に絶縁材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、絶縁層形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)し、そのレジスト膜をマスクとして電極材料をエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
次いで、シリコン基板25上にレジスト膜を形成し、凹部形成領域以外にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)する。そして、レジスト膜をマスクとしてシリコン基板25の一方の主面をエッチングして、図9(a)に示すように、凹部25cを設ける。エッチングとしては、ドライエッチングでも良く、ウェットエッチングでも良い。
次いで、上記と同様にして、シリコン基板25上にレジスト膜を形成し、凹部形成領域以外にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)する。そして、レジスト膜をマスクとしてシリコン基板25の他方の主面をエッチングして凹部25dを設ける。このようにしてダイヤフラム25aを有するシリコン基板25を作製する。
次いで、図6に示すように、シリコン基板25の凹部25cがガラス基板21の主面21a側になるようにして、シリコン基板25をガラス基板21の主面21a上に接合する。すなわち、ガラス基板21の主面21aとシリコン基板25の接合部25bとが接合される。このとき、シリコン基板25及びガラス基板21に対して、約400℃以下の加熱下で約500V程度の電圧を印加することにより陽極接合処理を行う。これによりシリコン基板25とガラス基板21との間の界面での密着性がより高くなる。
このようにして得られた静電容量型圧力センサにおいては、低圧側の固定電極23a,23bがシリコン製部材22aと電気的に接続されており、高圧側の固定電極23cがシリコン製部材22bと電気的に接続されている。したがって、ダイヤフラム25aと高圧側の固定電極23c又は低圧側の固定電極23a,23bとの間で検知された静電容量の信号は、シリコン製部材22a,22bを介して制御部27で取得することができる。これらの信号に基づいて静電容量を算出することができる。この場合、制御部27において、静電容量に基づいて高圧側の固定電極23cと、低圧側の固定電極23a,23bとを切り替えることができる。
本実施の形態に係る静電容量型圧力センサは、一つのダイヤフラムに対して分割された固定電極を設けて、圧力範囲毎に使い分けているので、ダイヤフラムと固定電極とで構成されるセンサを2つ設けている構成に比べて小型化を図ることができる。したがって、小型で圧力測定レンジが広い静電容量型圧力センサを実現することができる。また、ダイヤフラムは、外側の固定電極に接触した後も円形状に変形するため、ダイヤフラムに均等な応力が加わる。その結果、耐久性の高い静電容量型圧力センサを実現することが可能である。
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係る静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。図中31はガラス基板を示す。ガラス基板31は、一対の主面31a,31bを有する。ガラス基板31には、シリコンで構成されたシリコン製部材32a,32bが埋設されている。シリコン製部材32aは、主面31a上に形成された第1固定電極33aと電気的に接続する導電部材である。シリコン製部材32bは、主面31a上に形成された第2固定電極33bと電気的に接続する導電部材である。シリコン製部材32a,32bは、ガラス基板31の両主面31a,31bで露出している。
ガラス基板31の主面31bで露出するシリコン製部材32a,32b上には、シリコン製部材32a,32bと電気的に接続するように引き出し電極(図示せず)を設けても良い。このように引き出し電極が同一の主面31b上に設けられていることにより、外部機器への接続が容易となる。
ガラス基板31の主面31aで露出するシリコン製部材32a,32b上には、シリコン製部材32a,32bと電気的に接続するように固定電極33a,33bがそれぞれ設けられている。すなわち、シリコン製部材32a上には、第1固定電極33aが形成され、シリコン製部材32b上には、第2固定電極33bが形成されている。第2固定電極33b上には、絶縁層34が形成されている。第1固定電極33aが相対的に高圧側のレンジに対応する固定電極であり、第2固定電極33bが相対的に低圧側のレンジに対応する固定電極である。
高圧側の固定電極33aと低圧側の固定電極33bとは、測定レンジに対応して分割されていれば良く、その形状については特に制限はない。例えば、高圧側の固定電極33aと低圧側の固定電極33bとは、同心円状に分割されて形成されていることが好ましい。すなわち、低圧側の固定電極33bが円形であり、高圧側の固定電極33aが低圧側の固定電極33bを囲むリング状である。なお、固定電極を分割する数については一例であり、高圧側の固定電極と低圧側の固定電極とに割り当てることを前提とすれば、適宜変更することが可能である。
第2固定電極33b上には、絶縁層34が設けられている。このように絶縁層34を設けることにより、低圧側の固定電極33bと後述するダイヤフラムとが接触して、不要な容量を持つことを防止することができる。なお、絶縁層34の厚さや材質については特に制限はない。このように、第1固定電極33aと第2固定電極33bの厚さを同じとし、一方の固定電極上に絶縁層34を設けて段差を設けても本発明の効果を発揮することができる。
ガラス基板31の主面31a上には、可動電極であるダイヤフラム35aを有するシリコン基板35が接合されている。このダイヤフラム35aは、可動電極として圧力により変位する。シリコン基板35は、ガラス基板31の主面31aと接合部35bで接合されている。ガラス基板31とシリコン基板35とは、ダイヤフラム35aが高圧側の固定電極33a及び低圧側の固定電極33bと所定の間隔をおいて配置されるように位置合わせされた状態で接合部35bにおいて接合される。
このように、ガラス基板31とシリコン基板35とが接合されることにより、キャビティ36が形成され、キャビティ36内に固定電極33a,33bが設けられることになる。この場合において、高圧側の固定電極33aと低圧側の固定電極33bとの間はダイヤフラムの中心部の変位量が大きいために、ダイヤフラム35aからの距離(ギャップ)が異なる。すなわち、高圧側の固定電極33aとダイヤフラム35aとの間の距離D1が低圧側の固定電極33bとダイヤフラム35aとの間の距離D2よりも長くなっている。なお、距離D1と距離D2との差については、測定レンジにより適宜設定することができる。したがって、この測定レンジによる距離D1と距離D2との差に応じて適宜高圧側の固定電極33aと低圧側の固定電極33bの厚さを設定する。
ガラス基板31とシリコン製部材32a,32bとの界面は、実施の形態1と同様に、高い密着性を有することが好ましい。
高圧側の固定電極33a、低圧側の固定電極33b、及びシリコン基板35には、制御部37が電気的に接続されている。この制御部37は、高圧側の固定電極33aと低圧側の固定電極33bとを切り替える制御を行う。この切替制御は、実施の形態1の制御部17と同じように行う。このように、高圧側の固定電極と低圧側の固定電極とで厚さを変えて、測定レンジに対応させているので、すなわち、測定レンジに対応して適切なギャップを設定するので、高精度に測定を行うことができる。特に低圧側の測定レンジの精度をより高く、しかも直線性良くすることができる。
このような構成を有する静電容量型圧力センサにおいては、ダイヤフラム35aと高圧側の固定電極33a又は低圧側の固定電極33bとの間に所定の静電容量を有する。この静電容量型圧力センサに圧力がかかると、ダイヤフラム35aが圧力に応じて可動する。これにより、ダイヤフラム35aが変位する。このとき、ダイヤフラム35aと固定電極との間の静電容量が変化する。したがって、この静電容量をパラメータとして、その変化を圧力変化とすることができる。
また、このような静電容量型圧力センサにおいては、一つのダイヤフラム35aに対して高圧側の固定電極33aと低圧側の固定電極33bとを設けているので、すなわち測定レンジに対応して固定電極を設けているので、測定レンジ毎に適切なギャップで測定を行うことが可能となる。これにより、高精度に測定を行うことができる。特に低圧側の測定レンジの精度をより高くすることができる。
次に、本実施の形態の静電容量型圧力センサの製造方法について説明する。図11(a)〜(c)は、本発明の実施の形態3に係る静電容量型圧力センサの製造方法を説明するための断面図である。
図11(a)に示すようなシリコン製部材32a,32bなどの導電性材料を埋め込んだガラス基板31を作製する。次いで、図11(b)に示すように、ガラス基板31の主面31a上に、シリコン製部材32aと部分的に電気的に接続するようにリング状の第1固定電極33aを形成すると共に、シリコン製部材32bと部分的に電気的に接続するように円状の第2固定電極33bを形成する。この場合、まず、ガラス基板31の主面31a上に電極材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、電極形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)し、そのレジスト膜をマスクとして電極材料をエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
次いで、図11(c)に示すように、第2固定電極33b上に絶縁層34を形成する。この場合、まず、ガラス基板31の主面31a、第1固定電極33a及び第2固定電極33b上に絶縁材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、絶縁層形成領域(第2固定電極33b上)にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)し、そのレジスト膜をマスクとして電極材料をエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
次いで、図9に示すようにして両主面に凹部を有するシリコン基板35を作製し、図10に示すように、シリコン基板35の凹部35cがガラス基板31の主面31a側になるようにして、シリコン基板35をガラス基板31の主面31a上に接合する。すなわち、ガラス基板31の主面31aとシリコン基板35の接合部35bとが接合される。このとき、シリコン基板35及びガラス基板31に対して、約400℃以下の加熱下で約500V程度の電圧を印加することにより陽極接合処理を行う。これによりシリコン基板35とガラス基板31との間の界面での密着性がより高くなる。
このようにして得られた静電容量型圧力センサにおいては、高圧側の固定電極33aがシリコン製部材32aと電気的に接続されており、低圧側の固定電極33bがシリコン製部材32bと電気的に接続されている。したがって、ダイヤフラム35aと高圧側の固定電極33a又は低圧側の固定電極33bとの間で検知された静電容量の信号は、シリコン製部材32a,32bを介して制御部37で取得することができる。これらの信号に基づいて静電容量を算出することができる。この場合、制御部37において、静電容量に基づいて高圧側の固定電極33aと、低圧側の固定電極33bとを切り替えることができる。
本実施の形態に係る静電容量型圧力センサは、一つのダイヤフラムに対して分割された固定電極を設けて、圧力範囲毎に使い分けているので、ダイヤフラムと固定電極とで構成されるセンサを2つ設けている構成に比べて小型化を図ることができる。したがって、小型で圧力測定レンジが広い静電容量型圧力センサを実現することができる。また、この構成では、圧力によるダイヤフラムの変位の不均一性を利用するため、固定電極に段差を設ける必要がなく、工程数の削減が可能となる。
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4に係る静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。図中41はガラス基板を示す。ガラス基板41は、一対の主面41a,41bを有する。ガラス基板41には、シリコンで構成されたシリコン製部材42a,42b,42cが埋設されている。シリコン製部材42aは、第1固定電極として機能するリング状の導電部材である。シリコン製部材42bは、第2固定電極として機能する円柱状の導電部材である。シリコン製部材42a,42bは、ガラス基板41の両主面41a,41bで露出している。
ガラス基板41の主面41bで露出するシリコン製部材42a,42b上には、シリコン製部材42a,42bと電気的に接続するように引き出し電極(図示せず)を設けても良い。このように引き出し電極が同一の主面41b上に設けられていることにより、外部機器への接続が容易となる。
ガラス基板41の主面41a側の第2固定電極42bの領域は、第1固定電極42aの領域よりも、すなわち主面41aの位置よりも窪んでいる。すなわち、第2固定電極42bの領域に凹部が形成されている。第1固定電極42aが相対的に低圧側のレンジに対応する固定電極であり、第2固定電極42bが相対的に高圧側のレンジに対応する固定電極である。
低圧側の固定電極42aと高圧側の固定電極42bとは、測定レンジに対応して分割されていれば良く、その形状については特に制限はない。例えば、低圧側の固定電極42aと高圧側の固定電極42bとは、同心円状に分割されて形成されていることが好ましい。すなわち、高圧側の固定電極42bが円形であり、低圧側の固定電極42aが高圧側の固定電極42bを囲むリング状である。なお、固定電極を分割する数については一例であり、高圧側の固定電極と低圧側の固定電極とに割り当てることを前提とすれば、適宜変更することが可能である。
ガラス基板41の主面41a上には、可動電極であるダイヤフラム44aを有するシリコン基板44が接合されている。このダイヤフラム44aは、可動電極として圧力により変位する。シリコン基板44は、ガラス基板41の主面41aと接合部44bで接合されている。ガラス基板41とシリコン基板44とは、ダイヤフラム44aが低圧側の固定電極42a及び高圧側の固定電極42bと所定の間隔をおいて配置されるように位置合わせされた状態で接合部44bにおいて接合される。
このように、ガラス基板41とシリコン基板44とが接合されることにより、キャビティ45が形成され、キャビティ45内に固定電極42a,42bが設けられることになる。この場合において、低圧側の固定電極42aと高圧側の固定電極42bとの間の厚さの差により、ダイヤフラム44aからの距離(ギャップ)が異なる。すなわち、高圧側の固定電極42bとダイヤフラム44aとの間の距離D1が低圧側の固定電極42aとダイヤフラム44aとの間の距離D2よりも長くなっている。なお、距離D1と距離D2との差については、測定レンジにより適宜設定することができる。したがって、この測定レンジによる距離D1と距離D2との差に応じて適宜高圧側の固定電極42bの凹部の深さを設定する。
ガラス基板41とシリコン製部材42a,42bとの界面は、実施の形態1と同様に、高い密着性を有することが好ましい。
低圧側の固定電極42a、高圧側の固定電極42b、及びシリコン基板44には、制御部46が電気的に接続されている。この制御部46は、低圧側の固定電極42aと高圧側の固定電極42bとを切り替える制御を行う。この切替制御は、実施の形態1の制御部17と同じように行う。このように、高圧側の固定電極と低圧側の固定電極とで厚さを変えて、測定レンジに対応させているので、すなわち、測定レンジに対応して適切なギャップを設定するので、高精度に測定を行うことができる。特に低圧側の測定レンジの精度をより高く、しかも直線性良くすることができる。
このような構成を有する静電容量型圧力センサにおいては、ダイヤフラム44aと低圧側の固定電極42a又は高圧側の固定電極42bとの間に所定の静電容量を有する。この静電容量型圧力センサに圧力がかかると、ダイヤフラム44aが圧力に応じて可動する。これにより、ダイヤフラム44aが変位する。このとき、ダイヤフラム44aと固定電極との間の静電容量が変化する。したがって、この静電容量をパラメータとして、その変化を圧力変化とすることができる。
また、このような静電容量型圧力センサにおいては、一つのダイヤフラム44aに対して低圧側の固定電極42aと高圧側の固定電極42bとを設けているので、すなわち測定レンジに対応して固定電極を設けているので、測定レンジ毎に適切なギャップで測定を行うことが可能となる。これにより、高精度に測定を行うことができる。特に低圧側の測定レンジの精度をより高くすることができる。
次に、本実施の形態の静電容量型圧力センサの製造方法について説明する。図13(a)〜(c)は、本発明の実施の形態4に係る静電容量型圧力センサの製造方法を説明するための断面図である。
図13(a)に示すようなシリコン製部材42a,42bなどの導電性材料を埋め込んだガラス基板41を作製する。次いで、図13(b)に示すように、第2固定電極であるシリコン製部材42bの領域をミリング加工して、主面41a側に凹部41cを形成する。
次いで、図13(c)に示すように、第1固定電極42a及び第2固定電極42b上に絶縁層43を形成する。この場合、まず、ガラス基板41の主面41a、第1固定電極42a及び第2固定電極42b上絶縁材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、絶縁層形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜をパターニング(フォトリソグラフィー)し、そのレジスト膜をマスクとして電極材料をエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
次いで、図9に示すようにして両主面に凹部を有するシリコン基板44を作製し、図12に示すように、シリコン基板44の凹部がガラス基板41の主面41a側になるようにして、シリコン基板44をガラス基板41の主面41a上に接合する。すなわち、ガラス基板41の主面41aとシリコン基板44の接合部44bとが接合される。このとき、シリコン基板44及びガラス基板41に対して、約400℃以下の加熱下で約500V程度の電圧を印加することにより陽極接合処理を行う。これによりシリコン基板44とガラス基板41との間の界面での密着性がより高くなる。
このようにして得られた静電容量型圧力センサにおいては、ダイヤフラム44aと低圧側の固定電極42a又は高圧側の固定電極42bとの間で検知された静電容量の信号は、制御部46で取得することができる。これらの信号に基づいて静電容量を算出することができる。この場合、制御部46において、静電容量に基づいて低圧側の固定電極42aと、高圧側の固定電極42bとを切り替えることができる。
本実施の形態に係る静電容量型圧力センサは、一つのダイヤフラムに対して分割された固定電極を設けて、圧力範囲毎に使い分けているので、ダイヤフラムと固定電極とで構成されるセンサを2つ設けている構成に比べて小型化を図ることができる。したがって、小型で圧力測定レンジが広い静電容量型圧力センサを実現することができる。この構成によれば、金属膜で固定電極を作製する必要がないので、工程数を削減することが可能である。
本発明は上記実施の形態1〜4に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態1〜4における高圧側の固定電極と低圧側の固定電極の位置関係についてはこれに限定されない。また、上記実施の形態1〜4で説明した数値や材質については特に制限はなく、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜組み合わせる又は変更することが可能である。