JP2007303655A - ベルト式無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】プーリが配置される空間を密封する密封装置を設けた場合に、プーリの軸線方向に大型化することを抑制できるベルト式無段変速機を提供する。
【解決手段】プライマリプーリの溝幅を制御する第1シリンダと、セカンダリプーリの溝幅を制御する第2シリンダと、プライマリプーリおよびセカンダリプーリが配置された空間を密封する第1および第2密封装置とを有するベルト式無段変速機において、第1密封装置には第1円筒部が形成され、第2密封装置には第2円筒部が形成されており、セカンダリプーリの半径方向で第2円筒部の内側に第2シリンダが配置されて、セカンダリプーリの軸線方向で第2円筒部の配置領域と第2シリンダの配置領域とが重なる構成を有している。
【選択図】 図1

Description

この発明は、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間で、ベルトによりトルク伝達がおこなわれるように構成され、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間の変速比を、無段階に変更可能なベルト式無段変速機に関するものである。
従来、プライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトを巻き掛けたベルト式無段変速機が知られており、その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたベルト式無段変速機においては、第1シャフトおよび第2シャフトが設けられており、前記第1シャフトには第1プーリが設けられ、前記第2シャフトには第2プーリが設けられている。前記第1プーリは第1固定ディスクおよび第1可動ディスクを有しており、前記第2プーリは第2固定ディスクおよび第2可動ディスクを有している。そして、前記第1プーリおよび第2プーリにベルトが巻き掛けられている。また、第2可動ディスクには円筒壁が取り付けられており、この円筒壁内には第1ピストンが設けられている。さらに、前記第2可動ディスクと第1ピストンとの間に第1チャンバが形成されている。また、前記円筒壁内にはシリンダが設けられており、そのシリンダ内には第2ピストンが設けられている。この第2ピストンと前記シリンダとの間に第2チャンバが形成されている。さらに、前記第2ピストンが軸受の内輪に取り付けられ、この軸受の外輪が変速機ハウジングに取り付けられている。このように、前記第2ピストンの周囲を第1ピストンが部分的に包囲することにより、軸方向に沿って双方の要素が部分的に重なり合い、それによって第2プーリを軸受に接近させることが可能となり、コンパクトなプーリと変速機を得られるものとされている。なお、軸方向長さの短縮を可能としたベルト式無段変速機の例が下記の特許文献2にも記載されている。
特開平7−198010号公報 特開2001−65652号公報
ところで、ベルト式無段変速機においては、プーリおよびベルトが設けられた空間を密封装置でシールする場合があり、この密封装置を設けると、前記プーリの軸線方向でベルト式無段変速機の全長が長くなるという問題があった。
この発明は、上記の事情を背景にしてなされたものであり、プーリが配置される空間をシールする密封装置を設ける場合に、前記プーリの軸線方向に大型化することを抑制できるベルト式無段変速機を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、無端状のベルトが巻き掛けられ、かつ、同軸上に配置されるプライマリプーリおよびセカンダリプーリと、このプライマリプーリのベルト取り付け溝を形成し、かつ、前記プライマリプーリの軸線方向に動作可能な第1可動片と、この第1可動片に与える軸線方向の力を発生する第1油圧室と、この第1油圧室を形成し、かつ、前記プライマリプーリの軸線方向に延ばされた第1シリンダと、前記セカンダリプーリのベルト取り付け溝を形成し、かつ、前記セカンダリプーリの軸線方向に動作可能な第2可動片と、この第2可動片に与える軸線方向の力を発生する第2油圧室と、この第2油圧室を形成し、かつ、前記セカンダリプーリの軸線方向に延ばされた第2シリンダと、前記プライマリプーリおよび前記セカンダリプーリおよび前記ベルトが配置された収納室と、この収納室を密封し、かつ、前記プライマリプーリと同軸に配置された環状の第1密封装置と、前記収納室を密封し、かつ、前記セカンダリプーリと同軸に配置された環状の第2密封装置とを有するベルト式無段変速機において、前記第1密封装置には、前記プライマリプーリの軸線方向に延ばされた第1円筒部が形成され、前記第2密封装置には、前記セカンダリプーリの軸線方向に延ばされた第2円筒部が形成されており、前記プライマリプーリの半径方向で前記第1円筒部の内側に前記第1シリンダが配置されて、前記プライマリプーリの軸線方向で前記第1円筒部の配置領域と前記第1シリンダの配置領域とが重なる構成、または前記セカンダリプーリの半径方向で前記第2円筒部の内側に前記第2シリンダが配置されて、前記セカンダリプーリの軸線方向で前記第2円筒部の配置領域と前記第2シリンダの配置領域とが重なる構成のうち、少なくとも一方の構成を有していることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、プライマリプーリの軸線方向で、第1円筒部の配置領域と第1シリンダの配置領域とが重なるか、または、セカンダリプーリの軸線方向で、第2円筒部の配置領域と第2シリンダの配置領域とが重なる。したがって、プライマリプーリまたはセカンダリプーリの少なくとも一方で、軸線方向における部品の配置スペースが狭められ、ベルト式無段変速機の全長を短縮できる。
つぎに、この発明の基本的な原理を説明する。この発明のベルト式無段変速機は、動力源から被駆動部材に至る動力伝達経路に配置される。より具体的には、ケーシングの内部にベルト式無段変速機が設けられる。このベルト式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに無端状のベルトを巻き掛けて構成されており、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間の変速比を、無段階、つまり連続的に変更可能である。また、無端状のベルトとしては、金属ベルトまたはゴムベルトを用いることが可能である。この金属ベルトとしては、多数の金属ブロック(エレメント)を厚さ方向に積層し、これらの金属ブロックを環状のキャリヤで保持するとともに、エレメントがプーリに接触する構成のベルトを用いることができる。また、前記金属ベルトとして、多数のピンを多数のリンクで繋ぎ合わせ、多数のピンの両端がプーリに接触するチェーン構造のベルトを用いることもできる。
この発明のベルト式無段変速機は、変速比および伝達トルクが油圧制御されるように構成されている。具体的には、前記プライマリプーリの溝幅を制御するために軸線方向に動作可能な第1可動片と、この第1可動片に与える軸線方向の力を発生する第1油圧室と、この第1油圧室を形成するために軸線方向に延ばされた第1シリンダとが設けられている。さらに、前記セカンダリプーリの溝幅を制御するために軸線方向に動作可能な第2可動片と、この第2可動片に与える軸線方向の力を発生する第2油圧室と、この第2油圧室を形成するために軸線方向に延ばされた第2シリンダとが設けられている。さらに、前記ケーシングの内部には収納室が形成されており、この収納室内に前記プライマリプーリおよび前記セカンダリプーリおよび前記ベルトが設けられている。そして、前記収納室と、前記ケーシング内部の「他の空間(周囲の空間)」とを隔てる密封装置が設けられている。この密封装置には、前記プライマリプーリ側に設けられる前記第1密封装置と、前記セカンダリプーリ側に設けられる第2密封装置とが含まれる。前記「他の空間」とは、歯車伝動装置などの伝動装置、または、後述する前後進切換装置などのトルク伝達機構が配置される空間である。
すなわち、その他の空間には、前記動力源から被駆動部材にトルクを伝達する機構、または、前記動力源から被駆動部材に伝達されるトルクを制御する機構などが配置される。そして、前記第1密封装置および前記第2密封装置は、前記収納室と「その他の空間」との間で、流体や異物(塵埃・摩耗粉)などが行き来することを防止する部品である。例えば、「その他の空間」に作動油や潤滑油が供給され、前記収納室に作動油や潤滑油を供給しない構成である場合は、「その他の空間」の作動油や潤滑油が前記収納室に進入することを、前記第1密封装置および前記第2密封装置により防止する。これに対して、「その他の空間」に作動油や潤滑油が収容され、前記収納室にも作動油や潤滑油が収容される構成であるとともに、「その他の空間」の作動油や潤滑油と、前記収納室の作動油や潤滑油とが、種類や特性、もしくは成分が異なる場合は、「その他の空間」と前記収納室との間で、作動油や潤滑油が行き来することを、前記第1密封装置および第2密封装置により防止する。
前記第1シリンダは、前記プライマリプーリの回転軸線を中心として円筒形状に構成されている。そして、前記第1密封装置は、前記第1可動片の周囲に設けられた環状体であり、前記第1密封装置は、前記ケーシングまたは前記第1可動片に固定される第1円筒部を有している。この第1密封装置の取り付け構造としては、前記ケーシングに固定されてそのシールリップが前記第1可動片に接触する構造、または、前記第1可動片に固定されてそのシールリップが前記ケーシング接触する構造のいずれでもよい。この第1円筒部は軸線方向に延ばされた円筒形状に構成されており、前記第1円筒部と前記第1シリンダとが半径方向に配置されている。そして、前記プライマリプーリの軸線方向で、第1円筒部の配置領域と前記第1シリンダの配置領域とを重ならせることができる。
この第2シリンダは、前記セカンダリプーリの回転軸線を中心とする円筒形状に構成されている。前記第2密封装置は、前記第2可動片の周囲に設けられた環状体であり、前記第2密封装置は、前記ケーシングまたは前記第2可動片に固定される第2円筒部を有している。この第2密封装置の取り付け構造としては、前記ケーシングに固定されてそのシールリップが前記第2可動片に接触する構造、または、前記第2可動片に固定されてそのシールリップが前記ケーシング接触する構造のいずれでもよい。この第2円筒部は軸線方向に延ばされた円筒形状に構成されており、前記第2円筒部と前記第2シリンダとが半径方向に配置されている。そして、前記セカンダリプーリの軸線方向で、第2円筒部の配置領域と前記第2シリンダの配置領域とを重ならせることができる。
この発明のベルト式無段変速機は、動力源と被駆動部材との間の動力伝達経路に配置される。また、前記動力源としては、エンジン、電動モータ、油圧モータなどのうち、少なくとも一つを用いることができる。エンジンは、燃料を燃焼させて動力を出力する形式の動力装置である。すなわち、熱エネルギを出力軸の運動エネルギに変換する装置である。このエンジンとしては、内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、LPGエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、水素エンジンなどを用いることができる。また、電動モータは、電気エネルギを出力軸の運動エネルギに変換する回転装置である。また、電動モータは、出力軸の運動エネルギを電気エネルギに変換する機能を兼備したモータ・ジェネレータであってもよい。例えば3相交流型のモータ・ジェネレータを用いることができる。さらに、油圧モータは、流体(オイル)のエネルギを出力軸の運動エネルギに変換する装置である。このように、動力源としては動力の発生原理が異なる複数種類のものを用いることができる。
この発明のベルト式無段変速機は、車両、自動二輪、産業用工作機械などに用いることが可能である。この発明のベルト式無段変速機を車両に用いる場合は、駆動力源(動力源)から車輪(被駆動部材)に至る動力伝達経路にベルト式無段変速機が配置される。前記駆動力源は、前記車輪に伝達するトルクを発生する装置である。また、ベルト式無段変速機を車両に用いる場合、車輪の回転方向を正・逆に切り換えるために前後進切換装置が設けられる。この前後進切換装置は、前記駆動力源と前記ベルト式無段変速機との間、または、前記ベルト式無段変速機と前記車輪との間、のいずれに設ける構成であってもよい。この前後進切換装置としては、例えば、遊星歯車機構または平行軸歯車を用いることが可能である。この遊星歯車機構は、シングルピニオン式の遊星歯車機構、またはダブルピニオン式の遊星歯車機構のいずれでもよい。さらに、ベルト式無段変速機を車両に用いる場合、駆動力源のトルクが前輪または後輪のいずれか一方に伝達される構成の二輪駆動車、駆動力源のトルクが前輪および後輪の両方に伝達される構成の四輪駆動車のいずれでもよい。なお、ベルト式無段変速機を工作機械に用いる場合は、回転運動または往復運動する工具や刃物が、被駆動部材となる。
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。図2は、この発明のベルト式無段変速機1を車両2に搭載した場合の模式図、図2は図1の要部を示す断面図である。この図2に示すように、エンジン3から車輪4に至る動力伝達経路に、ダンパ機構5、前後進切換装置6、ベルト式無段変速機1、終減速機7などが設けられている。これらのダンパ機構5、前後進切換装置6、ベルト式無段変速機1、終減速機7などは、いずれもケーシングK1の内部に設けられている。前記エンジン3のクランクシャフト8には、前記ダンパ機構5を介在させてインプットシャフト9が連結されている。前記クランクシャフト8およびインプットシャフト9は、車両1の幅方向の軸線A1を中心として回転可能に配置されている。そして、前記インプットシャフト9と前記ベルト式無段変速機1との間の動力伝達経路に、上記前後進切換装置6が設けられている。この前後進切換装置6は、回転要素の回転方向を正・逆に切り換える機構である。図2に示す例では、前記ケーシングK1の内部に、軸線方向で異なる位置に隔壁10,11が設けられており、この隔壁10と隔壁11との間に収納室B1が形成されており、この収納室B1に前後進切換装置6が設けられている。なお、前記ダンパ機構5は、前記回転軸線方向で前後進切換装置6とエンジン3との間に配置されている。
図2に示す例では、前後進切換装置6としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、前記インプットシャフト9と一体回転するサンギヤ12と、このサンギヤ12と同軸上に配置されたリングギヤ13とが設けられ、これらのサンギヤ12とリングギヤ13との間に、前記サンギヤ12に噛合した第1ピニオンギヤ14と、この第1ピニオンギヤ14および前記リングギヤ13に噛合した第2ピニオンギヤ15が設けられている。また、上記第1ピニオンギヤ14および第2ピニオンギヤ15を自転、かつ、公転可能に保持するキャリヤ16が設けられている。このキャリヤ16がベルト式無段変速機1のプライマリシャフト17に連結されている。さらに、前記サンギヤ12および前記インプットシャフト9および前記キャリヤ16を一体回転可能に連結する前進用クラッチCLが設けられている。また、前記リングギヤ13を固定、またはリングギヤ13の回転を許容することにより、前記インプットシャフト9の回転方向に対して、前記プライマリシャフト17の回転方向を正・逆に切り換える後進用ブレーキBRが設けられている。
この実施例では、上記前進用クラッチCLおよび後進用ブレーキBRとして、湿式の多板クラッチおよび湿式の多板ブレーキが用いられており、前進用クラッチCLの係合・解放、および後進用ブレーキBRの係合・解放が、後述する油圧制御装置によりおこなわれるように構成されている。また、前記収納室B1に潤滑油を供給する油路(図示せず)が、前記インプットシャフト9などに設けられており、前後進切換装置6を構成するギヤおよび前進用クラッチCLおよび後退用ブレーキBRを潤滑および冷却する構成になっている。なお、前記プライマリシャフト17とキャリヤ16とが一体回転するように連結されている。上記構成の収納室B1は、前記隔壁10の軸孔に取り付けられたオイルシール18、および隔壁11で保持されたシール軸受19によりシールされている。
前記ケーシングK1における前記エンジン3から最も離れた側の端部にリヤカバー20が設けられており、そのリヤカバー20と前記隔壁11との間に収納室C1が形成されている。つまり、前記収納室B1と収納室C1とが軸線方向に配置されている。具体的には、収納室C1と前記エンジン3との間に収納室B1が配置されている。その収納室C1に前記ベルト式無段変速機1が配置されている。このベルト式無段変速機1は、プライマリプーリ21およびセカンダリプーリ22を有しており、前記プライマリプーリ21の回転軸線A1と前記セカンダリプーリ22の回転軸線D1とが平行に配置されている。前記エンジン2のトルクがプライマリプーリ21を経由してセカンダリプーリ22に伝達される場合は、前記プライマリプーリ21が駆動プーリとなり、前記セカンダリプーリ22が従動プーリとなる。
まず、プライマリプーリ21は、前記プライマリシャフト17と一体回転するように構成されている。具体的には、プライマリシャフト17と一体的に設けられた固定片23と、軸線方向で固定片23とは異なる位置に配置され、かつ、プライマリシャフト17に対して軸線方向に移動可能に取り付けられた可動片24とを有している。また、プライマリシャフト17は、前記シール軸受19および他の軸受25により回転可能に支持されている。この軸受25の内輪25Aがプライマリシャフト17に固定され、軸受25の外輪25Bが前記リヤカバー20により保持されている。そして、前記プライマリシャフト17の軸線方向で、前記シール軸受19と軸受25との間に前記プライマリプーリ21が配置されている。また、シール軸受19の内輪26はプライマリシャフト17の外周に固定されており、そのシール軸受19の外輪27は隔壁11により保持されている。このように、前記軸受25およびシール軸受19により、前記プライマリシャフト17が、前記ケーシングK1に対して軸線方向に位置決めされている。つまり、前記軸受25およびシール軸受19が、前記プライマリシャフト17の位置決め機構を兼ねている。なお、前記シール軸受19は、内輪26と外輪27との間が密封装置(図示せず)によりシールされた公知の構造を有している。
さらに、前記可動片24をプライマリシャフト17の軸線方向に動作させる油圧サーボ機構28が設けられている。この油圧サーボ機構28は、前記プライマリシャフト17の軸線方向で軸受25と可動片24との間に設けられている。まず、環状のシリンダ29がプライマリシャフト17の外周に取り付けられており、そのシリンダ29は軸線方向に延ばされた円筒部30を有している。このシリンダ29内には環状のピストン31が設けられており、このピストン31はシリンダ29に対して軸線方向に移動可能に構成されている。また、前記可動片24の外周には段部32が形成されており、その段部32に前記ピストン31が接触させられている。そして、ピストン31の内周にはOリングなどのシール部材33が取り付けられ、ピストン31の外周にはOリングなどのシール部材34が取り付けられている。このシール部材34がシリンダ29の円筒部30の内周面に接触してシール面を形成し、このシール部材33が前記可動片24の外周に接触してシール面を形成する。
このようにして、前記シリンダ28の内部に環状の第1油圧室E1が形成されており、前記プライマリシャフト17には前記第1油圧室E1に接続された油路35が形成されている。そして、油路35は油圧制御装置(図示せず)に接続されており、前記第1油圧室E1に圧油を供給し、または第1油圧室E1のオイルが排出されて、第1油圧室E1の油圧が制御され、その油圧がピストン31に与えられて軸線方向の推力を発生する構成になっている。一方、前記ケーシングK1に連続して前記シリンダ29の外側を取り囲む円筒形状の壁部36が形成されており、その壁部36の内周端にはオイルシール37が取り付けられている。すなわち、オイルシール37は、ゴム状弾性体に金属製の補強環を組み合わせたものであり、オイルシール37の外周部分を構成する円筒部38が、前記壁部36の内周に嵌合固定されている。
また、オイルシール37の円筒部38に連続して半径方向の内側に向けて延ばされた内向きフランジ部39を有している。この内向きフランジ部39は、軸線方向で前記固定片23に最も近い位置の端部に形成されている。このように、オイルシール37の円筒部38と内向きフランジ部39とにより、断面形状が略L字形に構成されている。この内向きフランジ部39の内周端にはシールリップ40が形成されている。このシールリップ40の先端が可動片24の外周に接触されてシール面を形成している。なお、シールリップ40の背面側には、ガータースプリングが取り付けられている。そして、前記プライマリシャフト17の周囲において、前記シール軸受19およびオイルシール37により、前記収納室C1がシールされている。
一方、前記セカンダリプーリ22は、セカンダリシャフト41と一体回転するように構成されている。このセカンダリシャフト41は軸線D1を中心として回転する。セカンダリプーリ22は、このセカンダリシャフト41と一体的に設けられた固定片42と、軸線方向で固定片42とは異なる位置に配置され、かつ、セカンダリシャフト41に対して軸線方向に移動可能に取り付けられた可動片43とを有している。そして、前記プライマリプーリ21の固定片23と可動片24との間にベルト取り付け溝44が形成され、セカンダリプーリ22の固定片42と可動片43との間にベルト取り付け溝45が形成され、ベルト取り付け溝44,45に無端状のベルトである金属ベルト46が巻き掛けられている。この実施例では、前記収納室C1には潤滑油が供給されず、いわゆる乾式ベルトとなっている。また、セカンダリシャフト41は軸受47により回転可能に支持されている。また、セカンダリシャフト41には段部48が形成され、セカンダリシャフト41の外周にはスナップリング49が取り付けられている。そして、軸受47が段部48とスナップリング49とにより挟み付けられている。
さらに、前記可動片43をセカンダリシャフト41の軸線方向に動作させる油圧サーボ機構50が設けられている。この油圧サーボ機構50の構成について説明すると、環状のシリンダ51がセカンダリシャフト41の外周に取り付けられており、そのシリンダ51は軸線方向に延ばされた円筒部52を有している。このシリンダ51内には環状のピストン53が設けられており、ピストン53はシリンダ51に対して軸線方向に移動可能に構成されている。また、前記可動片43の外周には段部54が形成されており、その段部54に前記ピストン53が接触させられている。そして、ピストン53の内周にはOリングなどのシール部材55が取り付けられ、ピストン53の外周にはOリングなどのシール部材56が取り付けられている。このシール部材56が円筒部52に接触してシール面を形成し、このシール部材55が前記可動片43の外周に接触してシール面を形成する。
このようにして、前記シリンダ51の内部に第2油圧室F1が形成されており、セカンダリシャフト41には前記第2油圧室F1に接続された油路57が形成されている。この油路57は油圧制御装置に接続されており、前記第2油圧室F1に圧油を供給し、または第2油圧室F1のオイルが排出されて、第2油圧室F1の油圧が制御され、その油圧がピストン53に与えられて軸線方向の推力を発生する構成になっている。一方、前記ケーシングK1に連続して前記シリンダ51の外側を取り囲む壁部58が形成されており、その壁部58の内周にオイルシール59が取り付けられている。すなわち、オイルシール59は、ゴム状弾性体に金属製の補強環を組み合わせたものであり、オイルシール59の外周部分を構成する円筒部60が、前記壁部58に嵌合固定されている。また、オイルシール59の円筒部60に連続して半径方向の内側に向けて延ばされた内向きフランジ部61を有している。この内向きフランジ部61は、軸線方向で、円筒部60における前記固定片42に最も近い位置の端部に形成されている。このように、オイルシール59の円筒部60と内向きフランジ部61とにより、断面形状が略L字形に構成されている。その内向きフランジ部61の内周端にはシールリップ62が形成されている。そのシールリップ62の先端が可動片43の外周に接触されてシール面を形成している。なお、シールリップ62の背面側には、ガータースプリングが取り付けられている。そして、前記セカンダリシャフト41の周囲では、前記オイルシール59により、前記収納室C1がシールされている。
さらに、前記セカンダリシャフト41の軸線方向において、前記ダンパ機構5と前記油圧サーボ機構50との間には第1減速ギヤ63が設けられており、この第1減速ギヤ63が前記セカンダリシャフト41に取り付けられている。この第1減速ギヤ63はセカンダリシャフト41と一体回転するように構成されており、第1減速ギヤ63のボス部(円筒部)65が軸受64により支持されている。このボス部65にはスナップリング66が取り付けられており、スナップリング66と第1減速ギヤ63とにより軸受64が挟み付けられている。そして、この第1減速ギヤ63と、前記セカンダリシャフト41に設けられた段部67との間に、前記シリンダ50が挟み付けられている。そして、前記ケーシングK1に形成された段部68に、軸受64の外輪69の端面が接触し、前記ケーシングK1に形成された段部70に、前記軸受47の外輪71の端面が接触することにより、前記ケーシングK1に対して前記セカンダリシャフト41が、その軸線方向に位置決めされている。
さらに、セカンダリシャフト41の軸線方向におけるオイルシール59とシリンダ50との位置関係を説明する。前記ケーシングK1に対してセカンダリシャフト41が軸線方向に位置決めされた状態で、前記シリンダ51の円筒部52の先端の一部が、前記オイルシール59の円筒部60の内側に配置されている。ここで、オイルシール59の内側とは、前記セカンダリシャフト41の半径方向で内側を意味する。つまり、セカンダリシャフト41の軸線方向で、オイルシール59の円筒部60の一部の配置領域と、前記シリンダ51の一部の配置領域とが重なっている。また、前記可動片43が軸方向に動作した場合でも、ピストン53の外周に取り付けられたシール部材56が、常時シリンダ51の円筒部52の内周面に接触した状態を維持できるように、軸線方向におけるシリンダ51の長さが構成されている。
また、ケーシングK1の内部には軸受72,73により回転可能に支持された回転軸74が設けられており、この回転軸74には第2減速ギヤ75およびピニオンギヤ76が形成されている。この第2減速ギヤ75は前記第1減速ギヤ63に噛合されている。また、前記終減速機7のデフケース77の外周にはリングギヤ78が形成されており、このリングギヤ78が前記ピニオンギヤ76に噛合されている。前記セカンダリシャフト41の軸線方向で、前記オイルシール59とケーシングK1におけるエンジン3側の壁部79との間の空間に、前記油圧サーボ機構、第1減速ギヤおよび第2減速ギヤなどが配置された収納室G1が形成されている。前記終減速機7にはドライブシャフト80を介して車輪4が接続されている。そして、前記ケーシングK1の内部、具体的には収納室G1の底部には潤滑油が貯溜されており、前記リングギヤ78の回転によって掻き上げられた潤滑油が、前記第1減速ギヤ63および第2減速ギヤ75側に供給される構成となっている。このように、ケーシングK1の内部にベルト式無段変速機1および終減速機7が収納されたユニットとしてのトランスアクスルを構成している。
上記のように、図2に示す車両2は、クランクシャフト8、インプットシャフト9、プライマリシャフト17、セカンダリシャフト41などが車両2の幅方向(左右方向)に配置されており、前記エンジン3が車両2の前部に搭載され、そのエンジントルクが車輪(前輪)4に伝達されるように構成されたFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型式の車両である。つぎに、図2に示された車両の制御系統を説明する。まず、図示しない電子制御装置(ECU)が設けられており、この電子制御装置には、エンジン回転数を示す信号、プライマリシャフトの回転数を示す信号、セカンダリシャフトの回転数を示す信号、加速要求(アクセル開度)を示す信号、制動要求を示す信号、シフトポジションを示す信号などが入力される。この電子制御装置からは、エンジンを制御する信号、油圧制御装置を制御する信号などが出力される。この油圧制御装置は、油圧回路および切換バルブおよびソレノイドバルブなどを有している。
上記のように構成された車両において、前記エンジン3から出力されたトルクが、前記ダンパ機構5を経由して前記インプットシャフト9に伝達される。そして、シフトポジションとして前進ポジション、例えば、D(ドライブ;走行)ポジションが選択されている場合は、前後進切換装置6の前進用クラッチCLに作用する油圧が高められて係合され、かつ、後進用ブレーキBRに作用する油圧が低下されて解放される。すると、前記インプットシャフト9およびキャリヤ16およびプライマリシャフト17が一体回転する。このプライマリシャフト17のトルクは、前記ベルト46を介してセカンダリシャフト41に伝達され、セカンダリシャフト41のトルクが、第1減速ギヤ63を経由して回転軸74に伝達される。その回転軸74のトルクがドライブシャフト80を経由して車輪4に伝達されて駆動力が発生する。これに対して、シフトポジションとして後進ポジションが選択された場合は、前進用クラッチCLに作用する油圧が低下されて解放され、かつ、後進用ブレーキBRに作用する油圧が高められて係合される。つまり、前記リングギヤ13が固定される。すると、エンジントルクがサンギヤ12に伝達された場合は、前記リングギヤ13が反力要素となり、前記キャリヤ16にトルクが伝達される。なお、後進ポジションが選択された場合におけるキャリヤ16の回転方向は、前進ポジションの場合とは逆になる。
つぎに、ベルト式無段変速機1の制御を説明する。前記のように、エンジントルクがプライマリシャフト17に伝達されるとともに、電子制御装置に入力される各種の信号、および電子制御装置に予め記憶されているデータに基づいて、ベルト式無段変速機1の変速比およびトルク容量が制御される。すなわち、前記プライマリシャフト17の軸線方向における可動片24の位置が制御されて、前記プライマリプーリ21の溝幅が調整される。すると、前記プライマリプーリ21における前記ベルト46の巻掛け半径が連続的に変化し、変速比が無段階に変化する。例えば、前記第1油圧室E1の油圧が高められた場合は、前記ピストン31が図1で右方向に動作し、前記可動片24に対して与えられる推力が増加する。その結果、前記プライマリプーリ21における前記ベルト46の巻掛け半径が大きくなる変速、つまり、アップシフトがおこなわれる。これに対して、前記第1油圧室E1の油圧が低下された場合は、前記可動片24に与えられる推力が低下して、前記ベルト46の張力などにより前記可動片24が図1で左方向に動作する。その結果、前記プライマリプーリ21における前記ベルト46の巻掛け半径が小さくなる変速、つまり、ダウンシフトがおこなわれる。なお、第1油圧室E1の油圧が略一定に制御された場合は、ベルト式無段変速機1の変速比が略一定となる。
また、前記セカンダリシャフト41の軸線方向における可動片43の位置が制御されて、前記ベルト46に加えられるセカンダリプーリ45の挟圧力が調整される。例えば、前記第2油圧室F1の油圧が高められた場合は、前記ピストン53が図1で左方向に動作し、前記可動片43に与えられる推力が増加する。その結果、前記プライマリプーリ21と前記セカンダリプーリ22との間で伝達されるトルクが増加する。これとは逆に、前記第2油圧室F1の油圧が低下された場合は、前記可動片43に与えられる推力が低下する。その結果、前記プライマリプーリ21と前記セカンダリプーリ22との間で伝達されるトルクが低下する。なお、第2油圧室F1の油圧が略一定に制御された場合は、前記プライマリプーリ21と前記セカンダリプーリ22との間で伝達されるトルクが略一定となる。
そして、前記収納室B1には潤滑油が供給されて、ギヤおよび前進用クラッチCLおよび後進用ブレーキBRが潤滑および冷却される。そして、前記第1油圧室E1の作動油が、前記シール部材33,34によって形成されたシール面から漏れ出した場合でも、前記オイルシール37が設けられているため、その作動油が前記収納室C1に進入することを抑制できる。また、前記シール軸受19が設けられているため、前記収納室B1の潤滑油が前記収納室C1に進入することを抑制できる。さらに、前記オイルシール59が設けられているため、前記収納室G1の潤滑油が前記収納室C1に進入することを抑制できる。さらに、この実施例では、前記セカンダリシャフト41の軸線方向で、前記オイルシール59の配置領域と、前記シリンダ51の配置領域とが重なっているため、軸線方向における部品の配置スペースが狭められ、トランスアクスルの全長を短縮できる。また、ケーシングK1の壁部79とダンパ機構5との隙間を確保し易くなり、車載性が向上する。
なお、上記の説明では、セカンダリシャフト41の軸線方向で、セカンダリシャフト41の周囲に配置されたオイルシール59の配置領域と、シリンダ51の配置領域とが重なる構成を具体的に述べている。これに対して、プライマリシャフト17の軸線方向で、プライマリシャフト17の周囲に配置されたオイルシール37の配置領域と、シリンダ29の配置領域とを重ならせることも可能である。すなわち、セカンダリシャフト側またはプライマリシャフト側の少なくとも一方で、軸線方向でオイルシールの配置領域と、シリンダの配置領域とが重なる構成を採用可能である。また、可動片にオイルシールを固定し、オイルシールのシールリップをケーシングに接触させる構成であってもよい。また、上記の実施例では、エンジン3からベルト式無段変速機1に至る動力伝達経路に前後進切換装置6が設けられているが、ベルト式無段変速機から車輪に至る動力伝達経路に前後進切換装置が設けられている構成にも、この実施例を適用可能である。
ここで、実施例で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、可動片24が、この発明の第1可動片に相当し、可動片43が、この発明の第2可動片に相当し、第1油圧室E1が、この発明の第1油圧室に相当し、第2油圧室F1が、この発明の第2油圧室に相当し、シリンダ29が、この発明の第1シリンダに相当し、シリンダ51が、この発明の第2シリンダに相当し、オイルシール37が、この発明の第1密封装置に相当し、オイルシール59が、この発明の第2密封装置に相当し、収納室C1が、この発明の空間に相当し、円筒部38が、この発明の第1円筒部に相当し、円筒部60が、この発明の第2円筒部に相当する。
この発明のベルト式無段変速機におけるセカンダリシャフト側の構成を示す断面図である。 この発明のベルト式無段変速機を車両に用いた場合のパワートレーンの構成を示す概念図である。
符号の説明
1…ベルト式無段変速機、 2…車両、 3…エンジン、 21…プライマリプーリ、 22…セカンダリプーリ、 24,43…可動片、 29,51…シリンダ、 37,59…オイルシール、 44,45…ベルト取り付け溝、 38,60…円筒部、 46…ベルト、 C1,G1…収納室。

Claims (1)

  1. 無端状のベルトが巻き掛けられ、かつ、同軸上に配置されるプライマリプーリおよびセカンダリプーリと、このプライマリプーリのベルト取り付け溝を形成し、かつ、前記プライマリプーリの軸線方向に動作可能な第1可動片と、この第1可動片に与える軸線方向の力を発生する第1油圧室と、この第1油圧室を形成し、かつ、前記プライマリプーリの軸線方向に延ばされた第1シリンダと、前記セカンダリプーリのベルト取り付け溝を形成し、かつ、前記セカンダリプーリの軸線方向に動作可能な第2可動片と、この第2可動片に与える軸線方向の力を発生する第2油圧室と、この第2油圧室を形成し、かつ、前記セカンダリプーリの軸線方向に延ばされた第2シリンダと、前記プライマリプーリおよび前記セカンダリプーリおよび前記ベルトが配置された収納室と、この収納室を密封し、かつ、前記プライマリプーリと同軸に配置された環状の第1密封装置と、前記収納室を密封し、かつ、前記セカンダリプーリと同軸に配置された環状の第2密封装置とを有するベルト式無段変速機において、
    前記第1密封装置には、前記プライマリプーリの軸線方向に延ばされた第1円筒部が形成され、前記第2密封装置には、前記セカンダリプーリの軸線方向に延ばされた第2円筒部が形成されており、
    前記プライマリプーリの半径方向で前記第1円筒部の内側に前記第1シリンダが配置されて、前記プライマリプーリの軸線方向で前記第1円筒部の配置領域と前記第1シリンダの配置領域とが重なる構成、または前記セカンダリプーリの半径方向で前記第2円筒部の内側に前記第2シリンダが配置されて、前記セカンダリプーリの軸線方向で前記第2円筒部の配置領域と前記第2シリンダの配置領域とが重なる構成のうち、少なくとも一方の構成を有していることを特徴とするベルト式無段変速機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN105782406A (zh) * 2015-01-12 2016-07-20 加特可株式会社 带式无级变速器的旋转轴的支承构造

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