JP2007302947A - 溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管および高強度鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼管母材として、低C―Moフリー−高Cr−低Nb−Ti−低Al系の母材成分によって、良好なHAZ靭性を確保し、さらに塗装加熱後の変形能を確保することである。この基本成分系を適用するに際し、目標とする強度を確保するために、合金元素添加量をPb値で定義される適正な範囲に限定すること、および溶接金属として靭性の劣化を損なうことなく目標とする強度を満足させるために合金元素添加量をPwで定義される適正な範囲に限定すること、さらに優れた変形能を確保するために母材部の金属組織が粒径10μm以下のフェライトを5〜50%含有すること、母材部の金属組織が平均アスペクト比2未満のマルテンサイトとオーステナイトの混合体(M−A constituent)を2〜7%含有することである。
【選択図】なし
Description
例えば、TiNを微細に分散させ、490MPa級高張力鋼の大入熱溶接時のHAZ靭性を改善する手段が開示されている(例えば、非特許文献3参照)。しかし、これらの析出物は溶融線近傍においては1400℃以上の高温にさらされるため大部分が粗大化或いは溶解し、HAZ組織が粗大化してHAZ靭性が劣化するという欠点を有する。
しかしながら、高強度になるとM−Aの生成が顕著になり、Ti酸化物からIGFの生成だけでは組織を十分に微細化することができず、HAZ靭性が劣化するため、X100ラインパイプのHAZ靭性の改善が強く望まれている。
(1)
質量%で、C:0.03%〜0.08%、Si:0.6%以下、Mn:0.8〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.001〜0.005%、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.02%未満、Nb:0.01以上0.025%未満、Ti:0.005〜0.030%、Al:0.005%以下、N:0.001〜0.006%、O:0.001〜0.006%を含有し、さらにNi:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.2%、V:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.002%、Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、Pb=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+Vで定義されるPb値が2.5〜4.0の範囲にある母材部と、
質量%で、C:0.035〜0.08%、Si:0.6%以下、Mn:1.5〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Ni:0.2〜2.5%、Cr:0.2〜1.5%、Mo:0.2〜1.5%、Nb:0.01〜0.05%、Ti:0.005〜0.03%、B:0.0003〜0.002%、Al:0.05%以下、N:0.001〜0.01%、O:0.015〜0.045%を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、Pw=C+0.11Si+0.03Mn+0.02Ni+0.04Cr+0.07Mo+1.46Nbで定義されるPw値が0.2〜0.35の範囲にある溶接金属部とを有し、
250℃以下の温度に加熱された場合、加熱前後の母材部の管軸方向の引張試験における降伏強度の差が70MPa以下であることを特徴とする溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管。
前記溶接金属部が、さらに質量%で、Cu:0.1〜1.0%、V:0.01〜0.1%、Mg:0.0001〜0.005%、Ca:0.0005〜0.005%のうち1種または2種以上を含有していることを特徴とする請求項1に記載の溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管。
前記母材部の金属組織が粒径10μm以下のフェライトを5〜50%含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管。
前記母材部の金属組織が平均アスペクト比2未満のマルテンサイトとオーステナイトの混合体(M−A constituent)を2〜7%含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管。
質量%で、C:0.03%〜0.08%、Si:0.6%以下、Mn:0.8〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.001〜0.005%、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.02%未満、Nb:0.01以上0.025%未満、Ti:0.005〜0.030%、Al:0.005%以下、N:0.001〜0.006%、O:0.001〜0.006%を含有し、さらにNi:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.2%、V:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.002%、Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、Pb=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+Vで定義されるPb値が2.5〜4.0の範囲にある鋳片を、
950〜1200℃に加熱した後、950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上、15℃/秒未満の冷却速度で250℃〜400℃の温度まで冷却し、その後空冷することを特徴とする溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管用の高強度鋼板の製造方法。
質量%で、C:0.03%〜0.08%、Si:0.6%以下、Mn:0.8〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.001〜0.005%、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.02%未満、Nb:0.01以上0.025%未満、Ti:0.005〜0.030%、Al:0.005%以下、N:0.001〜0.006%、O:0.001〜0.006%を含有し、さらにNi:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.2%、V:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.002%、Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、Pb=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+Vで定義されるPb値が2.5〜4.0の範囲にある鋳片を、
950〜1200℃に加熱した後、950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上、15℃/秒未満の冷却速度で400℃以下の温度まで冷却し、その後、300℃〜450℃に加熱した後、空冷することを特徴とする溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管用の高強度鋼板の製造方法。
質量%で、C:0.03%〜0.08%、Si:0.6%以下、Mn:0.8〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.001〜0.005%、Cr:0.5〜1.5%、Mo:0.02%未満、Nb:0.01以上0.025%未満、Ti:0.005〜0.030%、Al:0.005%以下、N:0.001〜0.006%、O:0.001〜0.006%を含有し、さらにNi:0.1〜1.0%、Cu:0.1〜1.2%、V:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.002%、Mg:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、Pb=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+Vで定義されるPb値が2.5〜4.0の範囲にある鋳片を、
950〜1200℃に加熱した後、950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上の冷却速度で400℃以下の任意の温度まで冷却し、その後、加熱速度10℃/秒以上で300℃〜450℃に加熱することを特徴とする溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管用の高強度鋼板の製造方法。
本発明の高強度鋼管は、低C―Moフリー−高Cr−低Nb−Ti−低Al系を基本とする母材部と、低C-Mn-Ni-Cr-Mo-B系の溶接金属部とから構成され、良好なHAZ靭性を有し、母材部の一様伸びが大きく、さらに塗装加熱時の加熱前後における降伏強度の差の小さいX100級の高強度鋼管である。
また、塗装加熱時の時効挙動には、固溶C、固溶N量やひずみ(転位)量が大きな影響を与えることが知られている。
そして、母材部がMoを実質的に添加しないこと、Nb添加量を0.025%未満とすること、かつ0.5%以上のCrを添加することによって、目的とする強度が得られつつ、M−Aの生成量が大幅に低減することを見出した。とくにCr添加量が多い場合、C量とNb量を低減することがM−A生成量の低減に極めて有効である。さらにHAZにおいてγ粒内から粒内フェライト(IGF)を生成させることにより、HAZの結晶粒の微細化とともに生成するM−Aの大きさが小さくなることから、HAZ靭性が著しく改善できる。さらに、本発明者は、C量、Nb量を低下させて、Moを実質添加しないことによって、塗装時に250℃程度に加熱される場合でも時効による降伏強度の上昇を抑制することができることを見出し、本発明に至った。
Moは焼入れ性を向上させて強度を増加させる元素として知られている。しかしながら、高強度鋼のHAZにおいてM−Aの生成量が多くなるのでMo添加量は極力低減する必要があり、できるだけ添加しないことが好ましい。不可避的に混入する量を考慮すると母材部のMo添加量は0.02%未満にする必要がある。
(1)鋳片を950〜1200℃に加熱した後、950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上、15℃/秒未満の冷却速度で250℃〜400℃の温度まで冷却し、その後空冷する方法。
(3)鋳片を950〜1200℃に加熱した後、950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上の冷却速度で400℃以下の任意の温度まで冷却し、その後、加熱速度10℃/秒以上で300℃〜450℃に加熱する方法。
Siは脱酸や強度向上のため添加する元素であるが、多く添加すると現地溶接性、HAZ靭性を劣化させるので、上限を0.6%とした。鋼の脱酸はTiのみでも十分であり、Siは必ずしも添加する必要はない。
Mnは強度、低温靭性を確保する上で不可欠な元素であり、その下限は0.8%である。しかし、Mnが多すぎると鋼の焼入性が増加して現地溶接性、HAZ靭性を劣化させるだけでなく、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、低温靭性も劣化させるので上限を2.5%とした。
Tiは微細なTiNを形成し、スラブ再加熱時及びHAZのν粒の粗大化を抑制して、ミクロ組織を微細化して、母材及びHAZの低温靭性を改善する。またTiを含む酸化物を形成し、MnSの析出との複合効果によってIGF生成核として機能する。この機能を発揮させるためには、0.005%以上の添加が必要である。また、多すぎるとTiNの粗大化やTiCによる析出硬化が生じ、低温靭性を劣化させるので、その上限の値を0.030%に限定した。
Oは、Ti、Mg、Caなどを含有する酸化物を形成してHAZにおいてIGF変態核として機能する。これらの機能を発揮させるためには、0.001%以上のOが必要である。しかし、Oが0.006%を超えると10μmを超える粗大な酸化物が生成し、母材やHAZにおいて脆性破壊の発生点となるため、0.006%を上限の値とした。
CuはNiとほぼ同様の効果を有すると共に耐食性、耐水素誘起割れ性などにも効果があり、0.1%以上の添加が必要である。しかし、過剰に添加すると析出硬化により母材、HAZ靭性劣化や熱間圧延時にCu−クラックが発生するために、その上限の値を1.2%とした。
Bは極微量で鋼の焼入性を飛躍的に高め、良好な強度と靭性が得られる。この効果を発揮させるためには0.0003%以上の添加が必要である。また、多すぎるとHAZ靭性を劣化させるので、その上限の値を0.002%に限定した。
Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、低温靭性を向上(シャルピー試験における吸収エネルギーの増加など)させるほか、耐サワー性の向上にも著しい効果を発揮する。0.0005%未満ではその効果が薄く、また0.0050%を超えて添加するとCaO−CaSが大量に生成してクラスター、大型介在物となり、鋼の清浄度を害するだけでなく、現地溶接性にも悪影響を及ぼす。このためCa添加量を0.0005〜0.0050%に制限した。
溶接金属の高温割れを防止するために、C量は0.035%以上必要である。0.035%未満では溶接後、凝固する過程でδ凝固が起こり、高温割れが発生するためである。しかしながら、C量が0.08%を超えると、溶接金属の低温靭性が劣化するために、その上限の値を0.08%とした。
Siは脱酸や強度向上のため添加する元素であるが、多く添加すると低温靭性や現地溶接性を劣化させるので、上限を0.6%とした。
Niを添加する目的は、低温靭性や現地溶接性を劣化させることなく、強度を上昇させるためである。しかし、添加量が多すぎると経済性だけでなく、低温靭性などを劣化させるので、その上限を2.5%、下限を0.2%とした。
Moを添加する理由は、鋼の焼入性を向上させるためである。この効果を得るためには、Moは最低0.2%必要である。しかし、過剰なMo添加は低温靭性、現地溶接性を劣化させるので、その上限を1.5%とした。
Nbは鋼を強靭化する作用を有し、0.01%以上必要である。しかし、Nbを0.05%を超えて添加すると現地溶接性や低温靭性に悪影響をもたらすので、その上限を0.05%とした。
Bは極微量で鋼の焼入性を飛躍的に高める元素である。このような効果を得るためには、Bは最低でも0.0003%必要である。一方、過剰に添加すると、低温靭性を劣化させるだけでなく、かえってBの焼入性向上効果を消失せしめることもあるので、その上限を0.002%とした。
NはTiNを形成して低温靭性を向上させる。このために必要な最小量は0.001%である。しかし、多すぎると低温靭性を劣化させるので、その上限は0.01%に抑える必要がある。
Oは溶接金属中において酸化物を形成し、粒内変態フェライトの核として作用し、組織の微細化に効果がある。しかし、多すぎると溶接金属の低温靭性が劣化すると共に、スラグ巻きこみなどの溶接欠陥を起こす。このため、O量の下限を0.015%、上限を0.045%とした。
溶接金属部の基本となる成分にさらに、必要に応じてこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、溶接金属部の強度・低温靭性などの特性の向上をはかるためである。したがって、その添加量は自ら制限されるべき性質のものである。
CuはNiと同様に低温靭性や現地溶接性を劣化させることなく、強度を上昇させる。しかし、過剰に添加すると低温靭性が劣化するので、その上限を1.0%とした。Cuの下限0.1%は添加による材質上の効果が顕著になる最小値である。
Mgは硫化物(MnS)の形態を制御し、低温靭性を向上(シャルピー試験における吸収エネルギーの増加など)させる。しかし、Mg量が0.0001%以下では実用上効果がなく、また0.005%を超えて添加すると粗大なMg酸化物発生して、溶接欠陥を発生させる。このためMg添加量を0.0001〜0.005%に限定した。
不連続凍土地帯に敷設されるパイプラインにおいては、凍土の融解、凍結により3%程度の歪がパイプラインに負荷され、延性きれつ発生防止のためには、母材部の管軸方向の引張試験における一様伸びを大きくし低降伏比とすること、さらに円周方向溶接部の降伏強度を鋼管母材の降伏強度よりも高くすることによって、変形能すなわち、延性きれつが発生する限界ひずみを大きくすることが可能となる。
また、鋼管をパイプラインに使用する場合、防食の観点から塗装が施されるが、塗装する時、鋼管は250℃程度に加熱される。250℃に加熱されても時効による降伏強度の上昇を抑制し、円周溶接部の降伏強度とのマッチング(円周方向溶接部の溶接金属部の降伏強度が母材部の降伏強度よりも高いこと)を保つ必要がある。塗装加熱後の降伏強度の上昇代を70MPa以下に抑制することによって、円周方向溶接金属の降伏強度より母材部の降伏強度を低く保持できるため大きな変形能が維持できる。さらに、引張試験におけるS−Sカーブをラウンド型(降伏点が出現しない形)に保つことによって耐座屈限界ひずみを大きく保つ必要がある。
(1)鋳片を950〜1200℃に加熱した後、950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上、15℃/秒未満の冷却速度で250℃〜400℃の温度まで冷却し、その後空冷する方法。
(3)鋳片を950〜1200℃に加熱した後、950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上の冷却速度で400℃以下の任意の温度まで冷却し、その後、加熱速度10℃/秒以上で300℃〜450℃に加熱する方法。
第一の加速冷却の条件としては、圧延後650〜800℃の温度範囲から冷却速度5℃/秒以上、15℃/秒未満の冷却速度で250℃以上、400℃以下の温度まで冷却し、その後空冷しなければならない。
次に、本発明の実施例について述べる。
転炉−連続鋳造法で種々の鋼成分の鋼片から製造された鋼板を用いて、実験例1〜実験例48の鋼管を製造し、諸性質を調査した。表1〜表5に、高強度鋼管の母材部と溶接金属部の化学成分を示し、表6〜表7に鋼板製造条件および母材部のミクロ組織を示し、そして、表8〜表9に高強度鋼管の母材部の機械的性質を示し、表10〜表11に鋼管溶接部の機械的性質および変形能を示した。
塗装加熱後の引張特性の調査は、鋼管を300mm×300mmの小片に切り出し、インダクションヒータによって250℃に加熱し、5分保持した後、空冷した小片から引張試験片を採取して調査した。鋼管の変形能は円周方向溶接した試験体の引張破壊ひずみおよび鋼管の曲げ座屈試験の限界座屈ひずみで評価した。
実験例16は母材のS量が少ないためにHAZ靭性が劣る。
実験例17は母材のNb量が多すぎるためにHAZ靭性が劣るとともに、加熱前の降伏強度に対して250℃加熱後の降伏強度の増加量が70MPaを超え、S−Sカーブで降伏点が出現するために引張破壊ひずみおよび座屈限界ひずみが小さい。
実験例18は母材のAl量が多いためにHAZ靭性が劣る。
実験例20は母材のMo量が多いためにHAZ靭性が劣るとともに、加熱前の降伏強度に対して250℃加熱後の降伏強度の増加量が70MPaを超え、S−Sカーブで降伏点が出現するために引張破壊ひずみおよび座屈限界ひずみが小さい。
実験例21は母材のPb値が低すぎるために母材の強度がX100を満足しない。
実験例22は母材のNi量が多く、母材のPb値が高すぎるために母材の強度が高くなり過ぎてHAZ靭性も劣る。
実験例23は溶接金属のC量が少ないために溶接金属の高温割れが発生する。
実験例24は溶接金属のC量が多すぎるために溶接金属の低温靭性が劣る。
実験例26は溶接金属のCu量が多く、Pw値が高すぎるために溶接金属の靭性が劣る。
実験例28は10μm以下のフェライト分率が50%を超えるために母材の強度がX100ぎりぎりである。
実験例29は平均アスペクト比2未満のM−A分率が2%未満であるために、座屈限界ひずみがやや小さい。
実験例30は平均アスペクト比2未満のM−A分率が7%を超えるために低温靭性がやや低い。
実験例31は平均アスペクト比2以上であるために低温靭性がやや低い。
実験例35は950℃以下の圧下量が50%未満であるために低温靭性がやや低い。
実験例36は圧延終了温度が850℃を超えるために低温靭性がやや低い。実験例37は圧延終了温度が700℃未満であるために低温靭性がやや低い。
実験例38は一様伸びは向上するが、冷却開始温度が800℃を超えるため、座屈限界ひずみがやや小さい。実験例39は冷却開始温度が650℃未満であるために強度はぎりぎりである。
実験例42は冷却停止温度が400℃を超えるために強度がぎりぎりである。実験例43は冷却停止温度が250℃未満であるために加熱前の降伏強度に対して250℃加熱後の降伏強度の増加量が70MPaを超え、S−Sカーブで降伏点が出現するために引張破壊ひずみおよび座屈限界ひずみが小さい。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.03%〜0.08%、
Si:0.6%以下、
Mn:0.8〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.001〜0.005%、
Cr:0.5〜1.5%、
Mo:0.02%未満、
Nb:0.01以上0.025%未満、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.005%以下、
N :0.001〜0.006%、
O :0.001〜0.006%、
を含有し、さらに
Ni:0.1〜1.0%、
Cu:0.1〜1.2%、
V:0.01〜0.1%、
B:0.0003〜0.002%、
Mg:0.0001〜0.0050%、
Ca:0.0005〜0.0050%
の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
Pb=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+V
で定義されるPb値が2.5〜4.0の範囲にある母材部と、
質量%で、
C:0.035〜0.08%、
Si:0.6%以下、
Mn:1.5〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.005%以下、
Ni:0.2〜2.5%、
Cr:0.2〜1.5%、
Mo:0.2〜1.5%、
Nb:0.01〜0.05%、
Ti:0.005〜0.03%、
B:0.0003〜0.002%、
Al:0.05%以下、
N:0.001〜0.01%、
O:0.015〜0.045%
を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、
Pw=C+0.11Si+0.03Mn+0.02Ni+0.04Cr+0.07Mo+1.46Nbで定義されるPw値が0.2〜0.35の範囲にある溶接金属部とを有し、
250℃以下の温度に加熱された場合、加熱前後の母材部の管軸方向の引張試験における降伏強度の差が70MPa以下であることを特徴とする溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管。 - 前記溶接金属部が、さらに質量%で、
Cu:0.1〜1.0%、
V:0.01〜0.1%、
Mg:0.0001〜0.005%、
Ca:0.0005〜0.005%
のうち1種または2種以上を含有していることを特徴とする請求項1に記載の溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管。 - 前記母材部の金属組織が粒径10μm以下のフェライトを5〜50%含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管。
- 前記母材部の金属組織が平均アスペクト比2未満のマルテンサイトとオーステナイトの混合体(M−A constituent)を2〜7%含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管。
- 質量%で、
C:0.03%〜0.08%、
Si:0.6%以下、
Mn:0.8〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.001〜0.005%、
Cr:0.5〜1.5%、
Mo:0.02%未満、
Nb:0.01以上0.025%未満、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.005%以下、
N :0.001〜0.006%、
O :0.001〜0.006%、
を含有し、さらに
Ni:0.1〜1.0%、
Cu:0.1〜1.2%、
V:0.01〜0.1%、
B:0.0003〜0.002%、
Mg:0.0001〜0.0050%、
Ca:0.0005〜0.0050%
の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
Pb=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+V
で定義されるPb値が2.5〜4.0の範囲にある鋳片を、
950〜1200℃に加熱した後、
950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、
650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上、15℃/秒未満の冷却速度で250℃〜400℃の温度まで冷却し、
その後空冷することを特徴とする溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管用の高強度鋼板の製造方法。 - 質量%で、
C:0.03%〜0.08%、
Si:0.6%以下、
Mn:0.8〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.001〜0.005%、
Cr:0.5〜1.5%、
Mo:0.02%未満、
Nb:0.01以上0.025%未満、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.005%以下、
N :0.001〜0.006%、
O :0.001〜0.006%、
を含有し、さらに
Ni:0.1〜1.0%、
Cu:0.1〜1.2%、
V:0.01〜0.1%、
B:0.0003〜0.002%、
Mg:0.0001〜0.0050%、
Ca:0.0005〜0.0050%
の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
Pb=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+V
で定義されるPb値が2.5〜4.0の範囲にある鋳片を、
950〜1200℃に加熱した後、
950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、
650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上、15℃/秒未満の冷却速度で400℃以下の温度まで冷却し、
その後、300℃〜450℃に加熱した後、空冷することを特徴とする溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管用の高強度鋼板の製造方法。 - 質量%で、
C:0.03%〜0.08%、
Si:0.6%以下、
Mn:0.8〜2.5%、
P:0.015%以下、
S:0.001〜0.005%、
Cr:0.5〜1.5%、
Mo:0.02%未満、
Nb:0.01以上0.025%未満、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.005%以下、
N :0.001〜0.006%、
O :0.001〜0.006%、
を含有し、さらに
Ni:0.1〜1.0%、
Cu:0.1〜1.2%、
V:0.01〜0.1%、
B:0.0003〜0.002%、
Mg:0.0001〜0.0050%、
Ca:0.0005〜0.0050%
の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
Pb=2.7C+0.4Si+Mn+0.8Cr+0.45(Ni+Cu)+Mo+V
で定義されるPb値が2.5〜4.0の範囲にある鋳片を、
950〜1200℃に加熱した後、
950℃以下の圧下率を50%以上とし、700〜850℃の温度範囲で圧延を終了した後、
650〜800℃の温度範囲から5℃/秒以上の冷却速度で400℃以下の任意の温度まで冷却し、
その後、加熱速度10℃/秒以上で300℃〜450℃に加熱することを特徴とする溶接部靭性と変形能に優れた高強度鋼管用の高強度鋼板の製造方法。
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