JP2007302513A - 炭化珪素とシリコンとの分離方法およびそれに用いる装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】不活性ガス雰囲気下、容器中で炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物を第1温度に加熱してシリコン粒を溶融させ、次いで得られた溶融シリコンを含む融液を第2温度に保持し、次いで融液の上層部位に取り出し治具を浸漬して取り出し治具に炭化珪素を析出させ、析出した炭化珪素を回収し、かつ容器から精製された溶融シリコンを回収することにより炭化珪素とシリコンとを分離することを特徴とする炭化珪素とシリコンとの分離方法により、上記の課題を解決する。
【選択図】図1
Description
また、シリコン材料を安価に製造するための技術も提案されている。
例えば、特開2000−34116号公報(特許文献1)には、鉄鋼スラグから炭化珪素およびシリコンの混合物を製造し、これを1410〜1600℃程度で溶融し、セラミックフィルターなどを用いて、溶融物から前記温度で溶融しない炭化珪素を濾過除去して、シリコンを得る方法が開示されている。
しかしながら、上記の特許文献にはいずれも、具体的な方法は記載されておらず、これらの方法を用いた技術は実用化されていない。また、上記の特許文献には、炭化珪素などの不純物を除去することは記載されていても、それを利用することは記載されていない。
また、特開2001−278612号公報(特許文献4)には、シリコン、砥粒(炭化珪素)を含んだ使用済スラリの固液分離で得られた固形物を有機溶剤で洗浄して分散剤を除去し、気流分級装置などを用いて得られた固形分から酸化シリコンおよび砥粒を除去してシリコンを回収する方法が開示されている。しかしながら、充分な純度のシリコンは得られておらず、この方法を用いた技術は実用化されていない。
さらに、特開平7−172998号公報(特許文献5)には、構成元素として炭素を含む坩堝に溶融したシリコンから炭化珪素単結晶を成長させる方法が記載されている。
不活性ガス雰囲気下、
(A)容器中で炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物を第1温度に加熱してシリコン粒を溶融させ、
(B)次いで得られた溶融シリコンを含む融液を第2温度に保持し、
(C)次いで融液の上層部位に取り出し治具を浸漬して取り出し治具に炭化珪素を析出させ、析出した炭化珪素を回収し、かつ容器から精製された溶融シリコンを回収する
ことにより炭化珪素とシリコンとを分離することを特徴とする。
また、不活性ガス雰囲気下、予め前記容器中でシリコンインゴットの切断加工において生じる端材シリコンを前記第1温度に加熱して溶融させ、得られた溶融シリコンの融液に前記混合物を加え、前記第2温度に加熱してシリコン粒を溶融させるのが好ましい。
この分離装置は、第1ステージ(1)上に設置された第1容器(2)と第1加熱手段(3)、第2ステージ(4)上に設置された第2容器(5)と第2加熱手段(6)、第3容器(7)、端材シリコン(8)を第1容器(2)に投入するための第1投入通路(9)、溶融シリコンを含む融液(10)を第1容器(2)から第2容器(5)にオーバーフローさせる第1通路(11)、炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物(12)を第2容器(5)に投入する第2投入通路(13)、第2容器(5)の溶融シリコンを含む融液(14)の上層部位に浸漬する取り出し治具(15)、精製された溶融シリコン(16)を第2容器(5)から第3容器(7)にオーバーフローさせる第2通路(17)からなる。取り出し治具(15)は、析出部(18)を有し、図示しない回転機構により矢印方向に回転し、かつ図示しない移動機構により矢印方向に移動する。
本発明の分離方法は、不活性ガス雰囲気で行われ、図示しない装置全体を密閉するシールドおよびシールド内を不活性ガス雰囲気にするガス供給手段を備えている。
第1加熱手段(3)および第2加熱手段(6)は、それぞれ第1容器(2)および第2容器(5)内のシリコン粒、またはシリコン粒および端材シリコンを溶融し得るものであれば特に限定されず、抵抗加熱体やヒータが挙げられる。
また、取り出し治具(15)には、矢印方向に移動させる移動機構(図示せず)が備えられている。すなわち、取り出し治具(15)の上下移動により、析出した炭化珪素を回収することができる。
第1容器(2)および第2容器(5)として、グラファイトカーボン製の坩堝を用いる場合には、融液に坩堝を構成する炭素が溶融し、析出部(18)を浸漬させたとき、特開平7−172998号公報に記載されているように、析出部(18)を起点として、溶融シリコンを含む融液(14)から炭化珪素の析出が起こり、浮遊物となっている炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物(12)の炭化珪素粒の周りに析出し、これらが一塊となって大きな粒子なるものと考えられる。その粒径は条件により変化するものと考えられる。
第1温度は、シリコン(融点:1414℃)を溶融させ得る温度であり、通常1500〜1700℃程度であり、好ましくは約1650℃である。
図1の分離装置の場合には、不活性ガス雰囲気下、予め第1容器(2)中でシリコンインゴットの切断加工において生じる端材シリコン(8)を第1温度に加熱して溶融させ、第1投入通路(9)を介して端材シリコン(8)の第1容器(2)への追加投入と端材シリコン(8)の溶融を繰り返して、第1通路(11)を介して融液を第1容器から第2容器にオーバーフローさせる。そして、第2容器(5)の融液に炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物(12)を投入し、第2温度に加熱してシリコン粒を溶融させる。
また、炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物は、シリコンインゴットの切断加工において生じる、砥粒としての炭化珪素粒とその分散媒とからなるスラリに切削されたシリコン粒が混入した使用済みスラリを、少なくとも遠心分離処理により精製した混合物、すなわち、シリコンインゴットをマルチワイヤーソーで切断してウエハに加工する際に生じる切削廃液を固液分離し、精製、乾燥した粉状物質であるのが好ましい。このような粉状物質として、特開2001−278612号公報には、シリコンと砥粒よりなる粉体が記載されている。
第2温度は、融液に浮遊物が形成され得る温度であり、通常1430〜1500℃程度であり、好ましくは約1450℃である。
図1の分離装置の場合には、第2温度に保持した融液に炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物(12)を追加投入する。これにより、炭化珪素(1600℃程度まで安定)が析出する。
炭化珪素を効率よく析出させるには、先に述べたように複数の析出部を有する取り出し治具を複数用いるのが好ましい。
炭化水素ガスの割合は、0.1〜1%程度である。
これにより、炭化珪素の回収量が増加し、かつ回収される炭化珪素が強固な粒子になる。これは、メタンから分解した炭素が炭化珪素の生成に加わるためと考えられる。
図1の分離装置において上記のようにガス雰囲気を制御するためには、第1容器の溶融シリコンを不活性ガスと炭化水素ガスとの混合ガス雰囲気にするシールドおよびガス供給手段をさらに備えていればよい。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、この実施例により本発明が限定されるものではない。
図1に示す分離装置を用いて、炭化珪素とシリコンとを分離した。
まず、装置全体をシールド(図示せず)で密閉し、シールド内をアルゴンガス雰囲気にした。
グラファイトカーボン製の第1ステージ(1)上に設置した、内径185mm、高さ250mmのグラファイトカーボン製の坩堝からなる第1容器(2)に、グラファイトカーボン製の第1投入通路(9)を介して7kgの端材シリコン(8)を投入し、抵抗加熱体からなる第1加熱手段(3)で端材シリコン(8)を1650℃まで加熱して完全に溶融させ、溶融シリコンを含む融液(10)を得た。溶融後も同温度で溶融状態を保持した。このとき溶融シリコンを含む融液(10)に第1容器(2)から炭素が溶解しているものと考えられる。
以上の工程を繰り返すことにより、精製された溶融シリコン(16)が第2通路(17)を介して溢れ、グラファイトカーボン製の内径185mm、高さ150mmのグラファイトカーボン製の坩堝からなる第3容器(7)にオーバーフローした。このオーバーフローしたシリコンを分析したところ、純度99%以上のシリコンで、不純物の多くは鉄粉であった。
不純物の鉄粉は炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物(スラリ精製物)に含まれていたものと考えられ、この鉄粉は公知の精製方法により容易に除去することができる。
また回収されたシリコンは、公知の方法、例えば、特開2001−172729号公報に記載の方法により精製することにより、太陽電池用の多結晶シリコンシリコンウエハの原料などに利用できることがわかった。
第1容器(2)と第1容器(2)以外の第2容器(5)を含む装置全体との、雰囲気ガスの混合を防止する隔壁(図示せず)で隔て、第1容器(2)側をアルゴンガスとメタンガス(0.5%)との混合ガス雰囲気にし、第2容器(5)側をアルゴンガス雰囲気とした以外は、実施例1と同様にして、図1に示す分離装置を用いて、炭化珪素とシリコンとを分離した。
回収されたシリコンに差異はなかったが、炭化珪素の回収量が増加し、かつ回収された炭化珪素が強固な粒子となっていた。
2 第1容器(坩堝)
3 第1加熱手段
4 第2ステージ
5 第2容器(坩堝)
6 第2加熱手段
7 第3容器(坩堝)
8 端材シリコン
9 第1投入通路
10、14 溶融シリコンを含む融液(溶湯)
11 第1通路
12 炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物
13 第2投入通路
15 取り出し治具
16 精製された溶融シリコン(溶湯)
17 第2通路
18 析出部
Claims (14)
- 不活性ガス雰囲気下、容器中で炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物を第1温度に加熱してシリコン粒を溶融させ、次いで得られた溶融シリコンを含む融液を第2温度に保持し、次いで融液の上層部位に取り出し治具を浸漬して取り出し治具に炭化珪素を析出させ、析出した炭化珪素を回収し、かつ容器から精製された溶融シリコンを回収することにより炭化珪素とシリコンとを分離することを特徴とする炭化珪素とシリコンとの分離方法。
- 不活性ガス雰囲気下、予め前記容器中でシリコンインゴットの切断加工において生じる端材シリコンを前記第1温度に加熱して溶融させ、得られた溶融シリコンの融液に前記混合物を加え、前記第2温度に加熱してシリコン粒を溶融させる請求項1に記載の分離方法。
- 前記混合物が、シリコンインゴットの切断加工において生じる、砥粒としての炭化珪素粒とその分散媒とからなるスラリに切削されたシリコン粒が混入した使用済みスラリを、少なくとも遠心分離処理により精製した混合物である請求項1または2に記載の分離方法。
- 前記容器および前記取り出し治具が、グラファイトカーボンからなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の分離方法。
- 前記取り出し治具が複数の析出部を有し、複数の析出部を連続して融液の上層部位に浸漬し各析出部に炭化珪素を析出させ、析出した炭化珪素を回収する請求項1〜4のいずれか1つに記載の分離方法。
- 前記取り出し治具が複数あり、複数の取り出し治具を連続して融液の上層部位に浸漬し各取り出し治具に炭化珪素を析出させ、析出した炭化珪素を回収する請求項1〜5のいずれか1つに記載の分離方法。
- 前記第1温度に加熱してシリコン粒、またはシリコン粒および端材シリコンを溶融させる工程またはその工程の一部が、不活性ガス雰囲気に炭化水素ガスを供給して行われる請求項1〜6のいずれか1つに記載の分離方法。
- 前記容器が、第1温度に加熱してシリコン粒、またはシリコン粒および端材シリコンを溶融させる第1容器、溶融シリコンを含む融液を第2温度に保持する第2容器、融液を第1容器から第2容器にオーバーフローさせる第1通路、精製された溶融シリコンを回収する第3容器、および精製された溶融シリコンを第2容器から第3容器にオーバーフローさせる第2通路からなり、第1容器に前記端材シリコンを連続して加え、かつ第2容器に前記混合物を連続して加えることにより、前記分離が連続して行われる請求項2〜7のいずれか1つに記載の分離方法。
- 前記回収した炭化珪素が、シリコンインゴットの切断加工の砥粒として用いられる請求項1〜8のいずれか1つに記載の分離方法。
- 請求項2〜9のいずれか1つに記載の炭化珪素とシリコンとの分離方法に用いる装置であり、シリコンインゴットの切断加工において生じる端材シリコンを第1温度に加熱して溶融させる第1容器およびその第1加熱手段、第1容器に端材シリコンを供給する第1投入通路、シリコン粒を溶融し、かつ溶融シリコンを含む融液を第2温度に保持する第2容器およびその第2加熱手段、融液を第1容器から第2容器にオーバーフローさせる第1通路、第2容器に炭化珪素粒とシリコン粒とを含む混合物を供給する第2投入通路、融液の上層部位に浸漬して炭化珪素を析出させる取り出し治具、精製された溶融シリコンを回収する第3容器、精製された溶融シリコンを第2容器から第3容器にオーバーフローさせる第2通路、装置全体を密閉するシールド、ならびにシールド内を不活性ガス雰囲気にするガス供給手段を備える炭化珪素とシリコンとの分離装置。
- 前記第1容器、前記第2容器および前記取り出し治具が、グラファイトカーボンからなる請求項10に記載の分離装置。
- 前記取り出し治具が、連続して融液の上層部位に浸漬するための複数の析出部を有する請求項10または11に記載の分離装置。
- 前記取り出し治具が、連続して融液の上層部位に浸漬するために複数からなる請求項10〜12のいずれか1つに記載の分離装置。
- 前記第1容器の溶融シリコンを不活性ガスと炭化水素ガスとの混合ガス雰囲気にするシールドおよびガス供給手段をさらに備える請求項10〜13のいずれか1つに記載の分離装置。
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