第1の従来の技術の誘電体導波路デバイスの1つである移相器では、たとえば±π(rad)といった十分な位相変化量を得ようとすると、デバイスが大形化してしまいやすく、小形化が困難であるという問題がある。また、回転体を回転させることによって、伝送路の長さを機械的に変化させるので、デバイスが自体が大きくなったり、機構が複雑化してしまったりして量産には適さないという問題もある。デバイスが大型化すると、表面実装化が進む他の電子部品に比べて著しく実装性が良くないという問題点がある。
また第2の従来の技術の誘電体導波路デバイスの1つである移相器では、デバイスを子形化しやすいが、プリント回路基板などの平面回路基板上に表面実装しにくく、移相器と平面回路基板に形成される伝送線路との接続が困難であるという問題がある。
したがって本発明の目的は、小形で、良好な位相制御が可能であって、かつ平面回路基板への表面実装に適した誘電体導波路デバイス、これを備える移相器、高周波スイッチおよび減衰器、ならびに高周波送信器、高周波受信器、高周波送受信器、レーダ装置およびアレイアンテナ装置を提供することにある。
本発明の誘電体導波路デバイスは、印加電界に応じて誘電率または寸法の少なくともいずれか一方が変化する変化部を含み、電磁波が伝播する誘電体線路、および前記誘電体線路を挟持する一対の平板導電体部を含む非放射性誘電体線路と、
前記誘電体線路に沿って設けられ、前記誘電体線路および一対の前記平板導電体部が重なる方向に垂直な方向に、一対の前記平板導電体部間の間隔よりも狭い間隔をあけた状態で、前記誘電体線路を挟み、前記変化部に電界を印加するための一対の電極と、
一対の前記平板導電体部のうちのいずれか一方の、前記誘電体線路とは反対側の表面部に設けられる誘電体部と、
前記誘電体部の、前記平板導電体部とは反対側の表面部に、前記誘電体線路に一部が重なって設けられるストリップ導体部とを含み、
前記平板導電体部には、前記誘電体線路の一部と前記ストリップ導体部の一部とが重なる位置に貫通孔が形成されることを特徴とする。
また本発明の誘電体導波路デバイスは、一対の前記電極が、前記誘電体線路を伝播する電磁波に対する表皮厚さよりも薄く形成され、前記誘電体線路を挟持することを特徴とする。
また本発明の誘電体導波路デバイスは、一対の前記電極が、それぞれが異なる前記平板導電体部に接続されることを特徴とする。
また本発明の誘電体導波路デバイスは、一対の前記平板導電体部の間に設けられ、前記誘電体線路および前記電極を挟持し、前記誘電体線路の誘電率よりも誘電率が低い第2誘電体部を含むことを特徴とする。
また本発明の移相器は、前記誘電体導波路デバイスを備え、
前記変化部に印加される電界に応じて、前記変化部の誘電率および寸法の少なくとも一方が変化することによって、伝送線路を伝播する電磁波の位相を変化させることを特徴とする。
また本発明の高周波スイッチは、前記誘電体導波路デバイスを備え、
前記変化部に印加される電界に応じて、前記変化部の誘電率および寸法の少なくとも一方が変化することによって、前記伝送線路におけるカットオフ周波数が、前記伝送線路を伝播する電磁波の周波数より低くなる伝播状態と、高くなるカットオフ状態とを切り替え可能であることを特徴とする。
また本発明の減衰器は、誘電体導波路デバイスを備え、
前記変化部に印加される電界に応じて、前記変化部の誘電率および寸法の少なくとも一方を変化させて、伝送線路を伝播する電磁波を減衰させることを特徴とする。
また本発明の高周波送信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、前記高周波発振器からの高周波信号を伝送する伝送線路と、
前記伝送線路に接続され、高周波信号を放射するアンテナと、
高周波信号が前記誘電体線路を通過するように、前記伝送線路に挿入される前記移相器と、
高周波信号の伝送方向における前記移相器の上流側および下流側のうち少なくとも一方で前記伝送線路に設けられるスタブとを含むことを特徴とする。
また本発明の高周波受信器は、高周波信号を捕捉するアンテナと、
前記アンテナに接続され、前記アンテナによって捕捉される高周波信号を伝送する伝送線路と、
前記伝送線路に接続され、前記伝送線路に伝送される高周波信号を検波する高周波検波器と、
高周波信号が前記誘電体線路を通過するように、前記伝送線路に挿入される前記移相器と、
高周波信号の伝送方向における前記移相器の上流側および下流側のうち少なくとも一方で前記伝送線路に設けられるスタブとを含むことを特徴とする。
また本発明の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、高周波信号を伝送する第1伝送線路と
第1、第2および第3端子を有し、前記第1端子が前記第1伝送線路に接続され、前記第1端子に与えられる高周波信号を前記第2端子または前記第3端子に選択的に出力する分岐器と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子から与えられる高周波信号を伝送する第2伝送線路と、
第4、第5および第6端子を有し、前記第2伝送線路を介して前記第4端子に与えられる高周波信号を前記第5端子に出力し、かつ前記第5端子に与えられる高周波信号を前記第6端子に出力する分波器と、
前記第5端子に接続され、前記第5端子から出力される高周波信号を伝送し、前記第5端子に高周波信号を伝送する第3伝送線路と、
前記第3伝送線路に接続され、高周波信号を放射および捕捉するアンテナと、
前記第3端子に接続され、前記第3端子から出力される高周波信号を伝送する第4伝送線路と、
前記第6端子に接続され、前記第6端子から出力される高周波信号を伝送する第5伝送線路と、
前記第4および第5伝送線路に接続され、前記第4および第5伝送線路から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力するミキサと、
高周波信号が前記誘電体線路を通過するように、前記第1〜第5伝送線路のうち少なくともいずれかの1つに挿入される前記移相器を含むことを特徴とする。
また本発明の高周波送信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、前記高周波発振器からの高周波信号を伝送する高周波伝送線路と、
前記高周波伝送線路に接続され、高周波信号を放射するアンテナと、
前記高周波伝送線路に挿入され、前記伝播状態とすることによって前記高周波伝送線路に伝送される高周波信号を透過し、前記カットオフ状態とすることによって前記高周波伝送線路に伝送される高周波信号を遮断する前記高周波スイッチとを含むことを特徴とする。
また本発明の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、高周波信号を伝送する第1高周波伝送線路と
第1、第2および第3端子を有し、前記第1端子が前記第1高周波伝送線路に接続され、前記第1端子に与えられる高周波信号を前記第2端子または前記第3端子に選択的に出力する分岐器と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子から与えられる高周波信号を伝送する第2高周波伝送線路と、
第4、第5および第6端子を有し、前記第2高周波伝送線路を介して前記第4端子に与えられる高周波信号を前記第5端子に出力し、かつ前記第5端子に与えられる高周波信号を前記第6端子に出力する分波器と、
前記第5端子に接続され、前記第5端子から出力される高周波信号を伝送し、前記第5端子に高周波信号を伝送する第3高周波伝送線路と、
前記第3高周波伝送線路に接続され、高周波信号を放射および捕捉するアンテナと、
前記第3端子に接続され、前記第3端子から出力される高周波信号を伝送する第4高周波伝送線路と、
前記第6端子に接続され、前記第6端子から出力される高周波信号を伝送する第5高周波伝送線路と、
前記第4および第5高周波伝送線路に接続され、前記第4および第5高周波伝送線路から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力するミキサとを含み、
前記分岐器は、前記高周波スイッチを2つ備え、第1高周波スイッチは、前記伝播状態とすることによって前記第1端子および前記第2端子間で高周波信号を透過し、かつ前記カットオフ状態とすることによって前記第1端子および前記第2端子間で高周波信号を遮断し、第2高周波スイッチは、前記伝播状態とすることによって前記第1端子および前記第3端子間で高周波信号を透過し、かつ前記カットオフ状態とすることによって前記第1端子および前記第3端子間で高周波信号を遮断することを特徴とする。
また本発明の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、高周波信号を伝送する第1高周波伝送線路と
第1、第2および第3端子を有し、前記第1端子が前記第1高周波伝送線路に接続され、前記第1端子に与えられる高周波信号を前記第2端子または前記第3端子に選択的に出力する分岐器と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子から与えられる高周波信号を伝送する第2高周波伝送線路と、
第4、第5および第6端子を有し、前記第2高周波伝送線路を介して前記第4端子に与えられる高周波信号を前記第5端子に出力し、かつ前記第5端子に与えられる高周波信号を前記第6端子に出力する分波器と、
前記第5端子に接続され、前記第5端子から出力される高周波信号を伝送し、前記第5端子に高周波信号を伝送する第3高周波伝送線路と、
前記第3高周波伝送線路に接続され、高周波信号を放射および捕捉するアンテナと、
前記第3端子に接続され、前記第3端子から出力される高周波信号を伝送する第4高周波伝送線路と、
前記第6端子に接続され、前記第6端子から出力される高周波信号を伝送する第5高周波伝送線路と、
前記第4および第5高周波伝送線路に接続され、前記第4および第5高周波伝送線路から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力するミキサとを含み、
前記分波器は、前記高周波スイッチを2つ備え、第3高周波スイッチは、前記伝播状態とすることによって前記第4端子および前記第5端子間で高周波信号を透過し、かつ前記カットオフ状態とすることによって前記第4端子および前記第5端子間で高周波信号を遮断し、第4高周波スイッチは、前記伝播状態とすることによって前記第5端子および前記第6端子間で高周波信号を透過し、かつ前記カットオフ状態とすることによって前記第5端子および前記第6端子間で高周波信号を遮断することを特徴とする。
また本発明の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、
前記高周波発振器に接続され、高周波信号を伝送する第1高周波伝送線路と
第1、第2および第3端子を有し、前記第1端子が前記第1高周波伝送線路に接続され、前記第1端子に与えられる高周波信号を前記第2端子または前記第3端子に選択的に出力する分岐器と、
前記第2端子に接続され、前記第2端子から与えられる高周波信号を伝送する第2高周波伝送線路と、
第4、第5および第6端子を有し、前記第2高周波伝送線路を介して前記第4端子に与えられる高周波信号を前記第5端子に出力し、かつ前記第5端子に与えられる高周波信号を前記第6端子に出力する分波器と、
前記第5端子に接続され、前記第5端子から出力される高周波信号を伝送し、前記第5端子に高周波信号を伝送する第3高周波伝送線路と、
前記第3高周波伝送線路に接続され、高周波信号を放射および捕捉するアンテナと、
前記第3端子に接続され、前記第3端子から出力される高周波信号を伝送する第4高周波伝送線路と、
前記第6端子に接続され、前記第6端子から出力される高周波信号を伝送する第5高周波伝送線路と、
前記第4および第5高周波伝送線路に接続され、前記第4および第5高周波伝送線路から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力するミキサと、
前記伝播状態としたときに高周波信号が前記誘電体線路を通過するように、前記第1〜第3伝送線路のうち少なくともいずれか1つに挿入される前記高周波スイッチとを含むことを特徴とする。
また本発明の高周波送受信器は、前記分波器が、ハイブリッド回路またはサーキュレータによって形成されることを特徴とする。
また本発明のレーダ装置は、前記高周波送受信器と、
前記高周波送受信器からの中間周波信号に基づいて、前記高周波送受信器から探知対象物までの距離を検出する距離検出器とを含むことを特徴とする。
また本発明のアレイアンテナ装置は、アンテナ素子と、前記移相器とを有する移相器付アンテナを複数並べて構成されることを特徴とする。
また本発明のレーダ装置は、前記アレイアンテナ装置と、
前記アレイアンテナ装置に接続され、前記アレイアンテナ装置に高周波信号を与え、かつ前記アレイアンテナ装置によって捕捉した高周波信号を受信する高周波送受信器とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、非放射性誘電体線路の誘電体線路が、印加電界に応じて誘電率が変化する変化部を含み、この変化部には、電極によって電界を印加することができる。非放射性誘電体線路は、NRDガイドである。変化部に電界を印加することによって、変化部の誘電率および寸法の少なくともいずれか一方が変化し、誘電体線路を伝播する電磁波の位相を変化させたり、カットオフ周波数を変化させたり、伝送線路を伝播する電磁波を減衰させたりすることができる。電極は、誘電体線路および一対の平板導電体部が重なる方向に垂直な方向に、一対の平板導電体部間の間隔よりも狭い間隔をあけた状態で、前記誘電体線路を挟み、前記誘電体線路に沿って設けられるので、一対の平板導電体部に電圧を印加して誘電体変化部に電界を印加するよりも、高い電界強度の電界を印加することができ、変化部の誘電率および寸法の少なくともいずれか一方を安定に変化させることができる。変化部に電界を印加するために電極に与える電圧を小さくしても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられ、また伝送線路の線路長が短くても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられるので、小型で、かつ低電圧で動作させることができる、移相器、高周波スイッチおよび減衰器などの誘電体導波路デバイスを実現することができる。
一対の前記平板導電体部のうちのいずれか一方の、前記誘電体線路とは反対側の表面部には、誘電体部が設けられ、この誘電体部の、平板導電体部とは反対側の表面部には、ストリップ導体部が設けられる。平板導電体部には、誘電体線路の一部とストリップ導体部の一部とが重なる位置に貫通孔が形成されるので、誘電体線路を伝播する電磁波をストリップ導体部、誘電体部および誘電体部が設けられる平板導電体部とを含んで形成される平面線路に結合させて、この平面線路に伝播させることができる。誘電体部と、ストリップ導体部とが、表面実装部分として機能するので、この部分をプリント回路基板などの平面回路基板上に表面実装することによって、誘電体導波路デバイスと平面回路基板に形成される伝送線路との接続を好適に行うことができる。
また本発明によれば、一対の電極は、誘電体線路を伝播する電磁波に対する表皮厚さよりも薄く形成され、誘電体線路の両側に設けられて誘電体線路を挟持する。誘電体線路を伝播する電磁波が、電極を透過することができるので、カットオフになることなく電磁波を伝播することができ、電極を誘電体線路に近接させたときに生じる伝送損失を抑制した状態で、電極によって誘電体変化部に大きな電界強度の電界を印加することができる。
本発明の誘電体導波路デバイスでは、非放射性誘電体線路を伝播するLSEモードのカットオフ近傍において、周波数に対する位相変化が大きいという特性を有するので、この特性を利用すれば、誘電体線路を挟持する一対の電極によって、誘電体線路を伝播するLSEモードの高周波信号の位相を大きく変化させることができる。したがって、誘電体導波路デバイスを移相器として用いるときに、線路長が短くても低い駆動電圧で十分な大きさの位相変化量が得られるので、小型で、かつ良好な位相制御が可能な移相器が実現される。
また本発明によれば、一対の電極は、それぞれが異なる平板導電体部に接続されるので、一対の平板導電体部に電位差を与えるだけで、一対の電極間に電位差を与えることができる。電極に電位を与えるための配線を平板導電体部が兼ねることによって、電極に電位を与えるための配線を別途に形成する必要がない。
また本発明によれば、第2誘電体部が、平板導電体部を支える支持部材として働くので、平板導電体部を薄膜形成技術、厚膜印刷技術またはシート状セラミック技術などを用いて製造することができるようになり、製造においても小型化に適した誘電体導波路デバイスを実現することができる。第2誘電体部は、変化部のうち最も誘電率が低い部分の誘電率よりも低い誘電率を有する。すなわち第2誘電体部は、変化部に電界が印加されている電界印加時、および変化部に電界が印加されていない電界無印加時において、変化部のうち最も誘電率が低い部分の誘電率よりも低い誘電率を有する。これによって、第2誘電体部において伝播する電磁波の波長を、この電磁波が空気を伝播するときの波長よりも小さくすることができ、これによって誘電体導波路デバイスを小型化することができる。
また本発明によれば、変化部に電界を印加するために電極に与える電圧を小さくしても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられ、また伝送線路の線路長が短くても、大きな位相変化が得られるので、小型で、かつ低電圧で動作させることができる移相器を実現することができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い移相器を実現することができる。
また本発明によれば、変化部に印加される電界に応じて、伝送線路におけるカットオフ周波数が、誘電体部を伝播する電磁波の周波数より低くなる伝播状態と、前記電磁波の周波数より高くなるカットオフ状態とを切り替え可能であるので、電極に印加する電圧を変化させることによって、前記伝播状態と前記カットオフ状態とを容易に切り替えることができる。スイッチング態様がOFF状態の時は、カットオフ状態になるので、本質的に高いON/OFF比を得ることができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを実現することができる。変化部に電界を印加するために電極に与える電圧を小さくしても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられ、また伝送線路の線路長が短くても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられるので、小型で、かつ低電圧で動作させることができる高周波スイッチを実現することができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを実現することができる。
また本発明によれば、変化部に電界を印加するために電極に与える電圧を小さくしても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられ、また伝送線路の線路長が短くても、大きな減衰が得られるので、小型で、かつ低電圧で動作させることができる減衰器を実現することができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い減衰器を実現することができる。
また本発明によれば、高周波発振器とアンテナとの途中にはスタブが設けられ、高周波発振器の高周波伝送線路への接続部やアンテナの高周波伝送線路への接続部における不整合を整合できるようになっている。これによって接続部での反射を小さく抑えることができ、安定な発振特性が得られるとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力が得られる。ただし、たとえば高周波発振器を接続するためのワイヤーやバンプの形状ばらつきや高周波伝送線路の配線幅のばらつきなどによって一律に整合することができない。本発明では、高周波伝送線路には、この高周波伝送線路を伝送される高周波信号の電磁波が前記誘電体線路を通過するように、前記移相器が挿入されるので、たとえば高周波発振器を接続するためのワイヤーやバンプの形状ばらつきや高周波伝送線路の配線幅のばらつきなどによって高周波伝送線路に起因して発生する位相のずれを個々に調整して整合をとることができ、安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ高周波送信器を実現することができる。また移相器を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器を設けても高周波送信器を小型に形成することができ、また移相器に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
また本発明によれば、アンテナによって捕捉した高周波信号は、伝送線路に伝送されて高周波検波器によって検波される。アンテナと高周波検波器との途中にはスタブが設けられ、高周波検波器の高周波伝送線路への接続部やアンテナの高周波伝送線路への接続部における不整合を整合できるようになっている。これによって接続部での反射を小さく抑えることができ、安定な検波特性が得られるとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力が得られる。ただし、たとえば高周波検波器を接続するためのワイヤーやバンプの形状ばらつきや高周波伝送線路の配線幅のばらつきなどによって一律に整合することができない。本発明では、高周波伝送線路には、この高周波伝送線路を伝送される高周波信号の電磁波が前記誘電体線路を通過するように、前記移相器が挿入されるので、たとえば高周波発振器を接続するためのワイヤーやバンプの形状ばらつきや高周波伝送線路の配線幅のばらつきなどによって高周波伝送線路に起因して発生する位相のずれを個々に調整して、整合をとることができ、安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ高周波受信器を実現することができる。また移相器を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器を設けても高周波受信器を小型に形成することができ、また移相器に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
また本発明によれば、高周波発振器が発生した高周波信号は、第1伝送線路に伝送されて分岐器の第1端子に与えられ、分岐器の第2端子から第2伝送線路に与えられ、分波器の第4端子に与えられて、分波器の第5端子から第3伝送線路に与えられて、アンテナから放射される。またアンテナによって受信した高周波信号は、第3伝送線路に与えられて、分波器の第5端子に与えられ、分波器の第6端子から第5伝送線路に与えられて、ミキサに与えられる。またミキサには、分岐器の第3端子から第4伝送線路を介して、高周波発振器が発生した高周波信号がローカル信号として与えられる。ミキサは、高周波発振器が発生した高周波信号とアンテナによって受信した高周波信号とを混合して、中間周波信号を出力することによって、受信した高周波信号に含まれる情報が得られる。
高周波信号が前記誘電体線路を通過するように、前記第1〜第5伝送線路のうち少なくともいずれかの1つに、前記移相器が挿入されることによって、たとえば配線幅のばらつきなどによって伝送線路に起因して不所望に変化する高周波信号の位相を調整して、たとえば安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ高周波送受信器を実現することができ、また、たとえば安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ高周波送受信器を実現することができ受信した高周波信号の信頼性を向上させることができ、また、たとえばミキサによって生成される中間周波数信号の信頼性を向上させることができる。また移相器を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器を設けても高周波送受信器を小型に形成することができ、また移相器に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
また本発明によれば、高周波スイッチが伝播状態のとき、高周波発振器が発生した高周波信号は高周波スイッチを透過するので、高周波伝送線路を伝送されてアンテナに与えられ、電波として放射される。また高周波スイッチがカットオフ状態のとき、高周波発振器が発生した高周波信号は高周波スイッチを透過しないので、遮断されて、アンテナからは放射されない。高周波スイッチの伝播状態とカットオフ状態とを切換えることによって、アンテナからパルス信号波を放射することができる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを用いることによって、信頼性の高い高周波送信器を実現することができる。
また本発明によれば、高周波発振器が発生した高周波信号は、第1高周波伝送線路に伝送されて分岐器の第1端子に与えられ、分岐器の第2端子から第2高周波伝送線路に与えられ、分波器の第4端子に与えられて、分波器の第5端子から第3高周波伝送線路に与えられて、アンテナから放射される。またアンテナによって受信した高周波信号は、第3高周波伝送線路に与えられて、分波器の第5端子に与えられ、分波器の第6端子から第5高周波伝送線路に与えられて、ミキサに与えられる。またミキサには、分岐器の第3端子から第4高周波伝送線路を介して、高周波発振器が発生した高周波信号がローカル信号として与えられる。ミキサは、高周波発振器が発生した高周波信号とアンテナによって受信した高周波信号とを混合して、中間周波信号を出力することによって、受信した高周波信号に含まれる情報が得られる。
分岐器は、前記高周波スイッチを2つ備え、第1高周波スイッチは、前記伝播状態とすることによって前記第1端子および前記第2端子間で高周波信号を透過し、かつ前記カットオフ状態とすることによって前記第1端子および前記第2端子間で高周波信号を遮断し、第2高周波スイッチは、前記伝播状態とすることによって前記第1端子および前記第3端子間で高周波信号を透過し、かつ前記カットオフ状態とすることによって前記第1端子および前記第3端子間で高周波信号を遮断する。第1高周波スイッチが伝播状態のときに、第2高周波スイッチをカットオフ状態とし、第1高周波スイッチがカットオフ状態のときに、第2高周波スイッチを伝播状態とすることによって、第1端子から入力される高周波信号を、第2および第3端子から選択的に出力することができる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを用いて分岐器を構成することによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。
また本発明によれば、高周波発振器が発生した高周波信号は、第1高周波伝送線路に伝送されて分岐器の第1端子に与えられ、分岐器の第2端子から第2高周波伝送線路に与えられ、分波器の第4端子に与えられて、分波器の第5端子から第3高周波伝送線路に与えられて、アンテナから放射される。またアンテナによって受信した高周波信号は、第3高周波伝送線路に与えられて、分波器の第5端子に与えられ、分波器の第6端子から第5高周波伝送線路に与えられて、ミキサに与えられる。またミキサには、分岐器の第3端子から第4高周波伝送線路を介して、高周波発振器が発生した高周波信号がローカル信号として与えられる。ミキサは、高周波発振器が発生した高周波信号とアンテナによって受信した高周波信号とを混合して、中間周波信号を出力することによって、受信した高周波信号に含まれる情報が得られる。前記分波器は、前記高周波スイッチを2つ備え、第3高周波スイッチは、前記伝播状態とすることによって前記第4端子および前記第5端子間で高周波信号を透過し、かつ前記カットオフ状態とすることによって前記第4端子および前記第5端子間で高周波信号を遮断し、第4高周波スイッチは、前記伝播状態とすることによって前記第5端子および前記第6端子間で高周波信号を透過し、かつ前記カットオフ状態とすることによって前記第5端子および前記第6端子間で高周波信号を遮断する。第3高周波スイッチが伝播状態のときに、第4高周波スイッチをカットオフ状態とし、第3高周波スイッチがカットオフ状態のときに、第4高周波スイッチを伝播状態とすることによって、第4端子から入力される高周波信号を第5端子から出力し、第5端子から入力する高周波信号を第6端子に出力することができる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを用いて分岐器を構成することによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。
また本発明によれば、第1〜第3高周波伝送線路のうち少なくともいずれか1つに挿入される高周波スイッチの全てを伝播状態とすることによって、高周波発振器が発生した高周波信号は、第1高周波伝送線路に伝送されて分岐器の第1端子に与えられ、分岐器の第2端子から第2高周波伝送線路に与えられ、分波器の第4端子に与えられて、分波器の第5端子から第3高周波伝送線路に与えられて、アンテナから放射される。また第1〜第3高周波伝送線路のうち少なくともいずれか1つに挿入される高周波スイッチが1つでもカットオフ状態となると、高周波発振器が発生した高周波信号は高周波スイッチを透過しないので、遮断されて、アンテナからは放射されない。高周波スイッチの伝播状態とカットオフ状態とを切換えることによって、アンテナからパルス信号波を放射することができる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを用いることによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。またアンテナによって受信した高周波信号は、第3高周波伝送線路に与えられて、分波器の第5端子に与えられ、分波器の第6端子から第5高周波伝送線路に与えられて、ミキサに与えられる。またミキサには、分岐器の第3端子から第4高周波伝送線路を介して、高周波発振器が発生した高周波信号がローカル信号として与えられる。ミキサは、高周波発振器が発生した高周波信号とアンテナによって受信した高周波信号とを混合して、中間周波信号を出力することによって、受信した高周波信号に含まれる情報が得られる。
また本発明によれば、前記分波器は、ハイブリッド回路によって形成されてもよいし、サーキュレータによって形成されてもよい。ハイブリッド回路は、方向性結合器であって、マジックT、ハイブリッドリングまたはラットレースなどによって実現される。
また本発明によれば、高周波送受信器からの中間周波信号に基づいて、距離検出器が高周波送受信器から探知対象物までの距離を検出するので、検知対象物までの距離を正確に検出することができるレーダ装置となる。
また本発明によれば、アンテナ素子に前記移相器を付加して構成される移相器付のアンテナを複数並べてアレイアンテナ装置が構成される。各アンテナ素子に付加される移相器によって、アンテナ素子に供給される高周波信号の位相をずらすことによって、各アンテナ素子から放射される電波の位相を調整して、放射ビームをアレイアンテナの正面から所定の方向に傾けることができる。移相器は、小形でかつ低電圧で動作させることができるので、アレイアンテナ装置が大型化することない。またアレイアンテナ装置は、移相器を備えることによって、前述したように放射ビームの方向を変更することができ、これによってアンテナ素子を機械的に動作させることなく、放射ビームの方向を変更することができ、利便性を向上させることができる。
また本発明によれば、前記アレイアンテナ装置と、前記アレイアンテナ装置に接続され、前記アレイアンテナ装置に高周波信号を与え、かつ前記アレイアンテナ装置によって捕捉した高周波信号を受信する高周波送受信器とを含んでレーダ装置が構成されるので、レーダ装置が大型化することなく、また放射ビームの方向を容易に変更することができるので、利便性の高いレーダ装置を実現することができる。
図1は、本発明の実施の一形態の移相器1の構成を模式的に示す断面図であり、図2の切断面線I−Iから見た断面図である。図2は、移相器1の平面図である。図3は、図2の切断面線III−IIIから見た断面図である。
移相器1は、非放射性誘電体線路(NRDガイド)2と、第1および第2電極3a,3bと、実装部4とを含んで構成される。
非放射性誘電体線路2は、電磁波が伝播する誘電体線路5と、誘電体線路5を挟持し、すなわち誘電体線路5の両側に設けられる一対の平板導電体部6a,6bとを含んで構成される。以下、一対の平板導電体部6a,6bをそれぞれ、第1および第2平板導電体部6a,6bという。
誘電体線路5は、所定の方向に延在する。誘電体線路5は、この誘電体線路5の延在方向Xに垂直な断面形状が矩形状に形成される。誘電体線路5の前記断面形状は、完全な矩形からややずれていても構わないが、少なくとも第1および第2平板導電体部6a,6bと接する面は、できるだけ平坦でありかつ平行度が高いのが望ましい。本実施の形態では誘電体線路5は、直方体形状に形成される。
誘電体線路5は、誘電体から成り、印加電界に応じて、誘電率が変化する変化部を含んで形成される。本実施の形態では、誘電体線路5は変化部から成り、たとえばBa(1−x)SrxTiO3(略称BST)、Mg(1−x)CaxTiO3、Zn(1−x)SnxTiO3、BaO−PbO−Nd2O3−TiO3、またはBi1.5Zn1.0Nb1.5O7などによって形成される。誘電体線路5は、印加電界が大きくなるに連れて、すなわち印加される電界強度が高くなるに連れて、誘電率が低くなる。
第1および第2平板導電体部6a,6bは、板状に形成され、予め定める間隔L1をあけて設けられる。本実施の形態では、第1および第2平板導電体部6a,6bは同じ大きさに形成され、厚さ方向を一致させ、相互に対向させて設けられる。第1および第2平板導電体部6a,6bの相互に臨む表面は平面に形成される。第1および第2平板導電体部6a,6bは、可及的に平行に配置して、第1および第2平板導電体部6a,6bの相互に臨む表面を、誘電体線路5を密着させるのが好ましい。
予め定める間隔L1は、誘電体線路5を伝播する電磁波の、第1および第2平板導電体部6a,6bに挟まれる領域のうち、誘電体線路5を除く部分において、第1および第2平板導電体部6a,6b間から第1および第2平板導電体部6a,6bに平行に偏波した電磁波が遮断されるように設定される。すなわち、誘電体線路5を伝播する電磁波の、第1および第2平板導電体部6a,6bに挟まれる領域のうち、誘電体線路5を除く部分中、すなわち後述する平板間誘電体部9を伝播する電磁波の波長の2分の1以下に選ばれる。
また誘電体線路5の幅は、LSEモードのカットオフ周波数が、電波させる電磁波の周波数、すなわち使用周波数未満になるように選ばれる。誘電体線路5は、前記延在方向Xに垂直な断面が、第1および第2平板導電体部6a,6bに接する辺が短辺となる矩形状に形成される。誘電体線路5の前記矩形状の断面における長辺の長さL2は、前記予め定める間隔L1に等しい。誘電体線路5の前記矩形状の断面における短辺の長さL3に対する長辺の長さL2の比を、短辺の長さL3を小さくしたり、長辺の長さL2を大きくしたりして、LSMモードがカットオフとなりLSEモードのみが伝播する状態となるまで大きくする。誘電体線路5の前記矩形状の断面における短辺の長さL3に対する長辺の長さL2の比、すなわちL3/L2は、好ましくは、可及的に大きくしてLSEモードがカットオフ付近で伝播するように設定することが望ましい。
第1および第2平板導電体部6a,6bは、体積抵抗率が10−4Ω・m以下、好ましくは10−5Ω・m以下の良導体によって形成され、たとえば金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、チタン(Ti)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)およびクロム(Cr)からなる群から選ばれるいずれか1つ、または前記郡から選ばれる少なくとも2つを含む合金またはこれらの積層体、あるいはITO
(Indium Tin Oxide)、酸化錫、酸化イリジウム、SrRuO3などの酸化物導電体によって形成される。
第1および第2平板導電体部6a,6bは、前記延在方向Xと、第1および第2平板導電体部6a,6bならびに誘電体線路5とが積層される積層方向Zとに垂直な幅方向Yに、誘電体線路5の前記幅方向Yの端部から外方に予め定める距離L4の位置まで延びる。前記予め定める距離L4は、電磁波の減衰が10分の1になる長さより大きく選ばれる。
また第1および第2平板導電体部6a,6bは、誘電体線路5の前記延在方向Xの第1端面8から、前記延在方向Xに予め定める距離L5の位置まで延びる。前記予め定める距離L5は、電磁波の減衰が10分の1になる長さより大きく選ばれる。
第1および第2電極3a,3bは、変化部に電界を印加する、すなわち誘電体線路5に電界を印加するために設けられる。第1および第2電極3a,3bは、誘電体線路5に沿って設けられ、前記幅方向Yに、前記第1および第2平板導電体部6a,6b間の間隔L1よりも狭い間隔をあけた状態で、誘電体線路5を挟んで設けられる。第1および第2電極3a,3bは、誘電体線路5を挟持し、誘電体線路5の前記幅方向Yの両端面上にそれぞれ積層して設けられる。第1および第2電極3a,3bは、前記延在方向Xにおいて予め定める長さL6に形成される。予め定める長さL6は、必要な位相変化が得られる長さに選ばれる。
第1および第2電極3a,3bは、それぞれが異なる平板導電体部6a,6bに接続される。本実施の形態では、第1電極3aが、第1平板導電体部6aに接続され、第2電極3bが第2平板導電体部6bに接続される。第1および第2電極3a,3bは、直方体形状であって板状に形成される。
第1電極3aは、前記積層方向Zにおいて、第2平板導電体部6bに予め定める距離L7離間して設けられる。また第2電極3bは、前記積層方向Zにおいて、第1平板導電体部6aに予め定める距離L7離間して設けられる。予め定める距離L7は、第1電極3aと第2平板導電体部6bとが接触しない程度であって、また第2電極3bと第1平板導電体部6aとが接触しない程度に選ばれ、たとえば1μm〜100μmに選ばれる。
第1および第2電極3a,3bは、前述した第1および第2平板導電体部6a,6bと同様な物質によって形成されるか、またはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)および砒化ガリウム(GaAs)などの半導体材料、あるいは窒化タンタルおよびNiCr合金などの高抵抗材料を用いて形成される。
第1および第2電極3a,3bは、その厚さL8が、誘電体線路5を伝播させるべき電磁波に対する表皮厚さ未満に選ばれる。表皮厚さを「δ」とし、透磁率を「μ」とし、導電率を「σ」とし、角周波数を「ω」としたとき、表皮厚さは、式(1)で表される。なお、ω=2πf(fは、周波数)である。導体内に電磁波が進入すると、前記表皮厚さのところで振幅が1/eになる。
これによって、第1および第2電極3a,3bを誘電体線路5に接触させて設けても、誘電体線路5を伝播する電磁波が、第1および第2電極3a,3bを透過することができるので、カットオフになることなく電磁波を伝播することができ、第1および第2電極3a,3bを誘電体線路5に近接させたときに生じる伝送損失を抑制した状態で、第1および第2電極3a,3bによって誘電体線路5に大きな電界強度の電界を印加することができ、電磁波の位相を安定に変化させることができる。移相器1は、非放射性誘電体線路2を伝播するLSEモードのカットオフ近傍において、周波数に対する位相変化が大きいという特性を有するので、この特性を利用すれば、誘電体線路5の両側に設けられて誘電体線路5を挟持する第1および第2電極3a,3bによって、誘電体線路5を伝播するLSEモードの高周波信号の位相を大きく変化させることができる。したがって、線路長が短くても低い駆動電圧で十分な大きさの位相変化量が得られるので、小型で、かつ良好な位相制御が可能な移相器が実現される。
本実施の形態における第1および第2電極3a,3bの体積抵抗率は、10−5Ω・m以上、好ましくは10−4Ω・m以上に選ばれる。ただし、第1および第2電極3a,3bを薄くし過ぎると、第1および第2電極3a,3bにおいて電荷が移動しにくくなり、第1および第2電極3a,3bの全体にわたって均一に電界がかかりにくくなるので、第1および第2電極3a,3bは、これら第1および第2電極3a,3bにおける電荷の移動を妨げとなることがなく、第1および第2電極3a,3bの全体にわたって均一に電界を印加することができるような予め定める厚さ以上に形成される。
第1および第2電極3a,3bの抵抗率は、10−5Ω・m以上かつ108Ω・m以下に選ばれるのが好ましい。第1および第2電極3a,3bの抵抗率が10−5Ω・m未満になると、電極中の電磁波の減衰が大きくなり、損失が大きくなって好ましくない。第1および第2電極3a,3bの抵抗率が10−5Ω・mよりもさらに小さくなると所望のモードがカットオフになって伝播しなくなってしまう。逆に第1および第2電極3a,3bの抵抗率が108Ω・mを超えて大きくなりすぎると、第1および第2電極3a,3bによって挟まれる誘電体との抵抗率の差が小さくなり、電圧降下のために所望の電圧が誘電体に印加できなくなってしまう。
第1および第2電極3a,3bの厚さは、第1および第2電極3a,3bに用いる材質の抵抗率によって決定され、厚すぎると損失が大きくなり、さらに厚くなると所望のモードがカットオフになって伝送しなくなってしまう。薄すぎると電圧降下のために所望の電圧が誘電体に印加できなくなってしまう。たとえば第1および第2電極3a,3bとして、抵抗率が1×10−4(Ω・m)のもの(材質としてTaNを用いる場合を想定)および抵抗率が1×10−3(Ω・m)のものを想定した場合において、電磁界解析をそれぞれ行ったときの、77GHzの電磁波に対する1mmあたりの電極による損失を、表1に示す。
表1および表2に示す電磁界解析の結果から、電極の抵抗率が1×10−4(Ω・m)の場合で実用上は、電極の厚さを30nm以下とするのが好ましく、電極の抵抗率が1×10−3(Ω・m)の場合で実用上は、電極の320nm以下とするのが好ましい。ここでは、実用上好ましいという基準を損失3dBとしている。
非放射性誘電体線路2は、第1および第2平板導電体部6a,6bの間に設けられ、誘電体線路5ならびに第1および第2電極3a,3bを挟持し、誘電体線路5ならびに第1および第2電極3a,3bを挟んで設けられる第2誘電体部である平板間誘電体部9を含んで構成される。平板間誘電体部9は、低誘電率の誘電体によって形成され、ガラス、単結晶、セラミックスまたは樹脂によって形成される。ガラスとしては、石英ガラス、結晶化ガラスなどが用いられる。単結晶としては、水晶、サファイア、MgOまたはLaAlO3などが用いられる。セラミックスとしては、アルミナ、フォルステライトまたはコーディライトなどが用いられる。樹脂としては、エポキシ樹脂または含フッ素樹脂、液晶ポリマーなどが用いられる。
平板間誘電体部9は、第1および第2平板導電体部6a,6b間で、誘電体線路5の前記幅方向Yの両側および誘電体線路5の延在方向Xにおける第1端面8の外方に設けられ、第1および第2平板導電体部6a,6bに挟まれる領域のうち、誘電体線路5および第1および第2電極3a,3bが形成される領域を除く残余の領域を埋めて設けられる。
平板間誘電体部9は、誘電体線路5の誘電率よりも低い誘電率を有する。平板間誘電体部9は、誘電体線路5に電界が印加されている電界印加時、および誘電体線路5に電界が印加されていない電界無印加時において、誘電体線路5のうち最も誘電率が低い部分の誘電率よりも低い誘電率を有する。平板間誘電体部9は、第1および第2平板導電体部6a,6bおよび誘電体線路5ならびに第1および第2電極3a,3bに接触して設けられる。前記平板間誘電体部9を設けることによって、第1および第2平板導電体部6a,6bに挟まれる部分のうち誘電体線路5を除く部分中を伝播する電磁波の波長を、空気中における波長と比較して短縮することができ、これによって非放射性誘電体線路2を小形に形成することができる。また平板間誘電体部9によって第1および第2平板導電体部6a,6bが機械的に支持されるので、機械的な強度を向上させることができる。
実装部4は、誘電体部である実装誘電体部11と、ストリップ導体部12と、接地導体部13と、貫通導体部14とを含んで構成される。
実装誘電体部11は、第1平板導電体部6aの、誘電体線路5とは反対側、すなわち前記積層方向Zにおいて第1平板導電体部6aの第2平板導電体部6bとは反対側の表面部15に設けられる。実装誘電体部11は、前記表面部15に積層して設けられ、表面部15の全領域にわたって形成される。
実装誘電体部11は、直方体形状に形成される。実装誘電体部11の材質は、絶縁性が高く、高周波信号に対する誘電正接の小さいものが適している。実装誘電体部11は、たとえば、二酸化珪素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミ(AlN)または酸化マグネシウム(MgO)などによって形成される。実装誘電体部11は、予め定める厚さL9に形成される。
ストリップ導体部12は、実装誘電体部11の、第1平板導電体部6aとは反対側の表面部16に設けられる。ストリップ導体部12は、前記表面部16に積層して設けられ、表面部16の全領域にわたって形成される。
ストリップ導体部12は、直方体形状に形成される。ストリップ導体部12は、前述した前述した平板間誘電体部9と同様の物質によって形成される。
ストリップ導体部12は、積層方向Zにおいて誘電体線路5に一部が重なって設けられる。ストリップ導体部12は、前記延在方向Xに平行に延びる。ストリップ導体部12は、予め定める厚さL10に形成される。ストリップ導体部12の幅方向Yの長さL11は、後述する貫通孔19における高周波信号との整合状態が良好となるように選ばれる。整合状態が良好とは2ポート回路の場合、反射が小さく、伝送量も確保されている状態のことをいう。1ポート回路では反射が小さい状態をいう。定量的には反射で−10dB以下であれば、伝送される電磁波の約90%が返ってこないので整合状態が良好であると言える。また表面実装する際に用いられるバンプを実装することができ、すなわちストリップ導体部12にバンプを実装したときに、バンプがストリップ導体部12からはみ出さない程度に選ばれる。
ストリップ導体部12は、前記延在方向Xにおける第1端部17が、誘電体線路5の前記延在方向Xにおける第1端部18に重なって設けられる。ストリップ導体部12の第1端部17および誘電体線路5の第1端部18は、前記延在方向Xにおいて予め定める長さL12重なって形成される。
第1平板導電体部6aには、前記誘電体線路5の第1端部18とストリップ導体部12の第1端部17とが重なる位置に貫通孔19が形成される。貫通孔19は、第1平板導電体部6aを前記積層方向Zに貫通して形成される。貫通孔19は、この貫通孔19に臨む第1平板導電体部6aの内周面21の積層方向Zに垂直な断面が、矩形状となるように形成される。前記内周面21は、幅方向Yまたは延在方向Xに平行となる。貫通孔19は、LSEモードの定在波の電界が最大となる部分に形成される。
また貫通孔19は、非放射性誘電体線路2とストリップ導体部12を含むマイクロストリップ線路との間で高周波信号を結合する結合部を構成する。非放射性誘電体線路2におけるLSEモードの定在波の電界が最大となる位置に形成される。非放射性誘電体線路2とストリップ導体部12を含むマイクロストリップ線路との接続部においては、ストリップ導体部12を有するマイクロストリップ線路の高周波信号の入力ポートからみて、貫通孔19から非放射性誘電体線路2への伝播特性において高周波信号との整合がよい構成が望ましく、反射特性においては−10dB以下となり、接続損失を可及的に低く抑制することができる構造とすることが望ましい。このため前記貫通孔19の前記積層方向Zに延びる中心軸線を含み、前記延在方向Xに垂直な仮想一平面と、誘電体線路5の開放端である第1端部18の端面との間の距離L13は、非放射性誘電体線路2を伝播させる電磁波の波長の(2n−1)/4(nは自然数)に選ばれる。また、前記貫通孔19の前記積層方向Zに延びる中心軸線を含み、前記延在方向Xに垂直な仮想一平面と、ストリップ導体部12の開放端である第1端部17の端面との間の距離L14は、ストリップ導体部12および第1平板導電体部6a間を伝播させる電磁波の波長の(2m−1)/4(mは自然数)に選ばれる。前記長さL12は、前記距離L13と前記距離L14とを加算した値に選ばれる。このように距離L13および距離L14を選ぶことによって、伝送される電磁波が非放射性誘電体線路2とストリップ導体部12および実装誘電体部11とによって形成されるマイクロストリップ線路との接合部分における反射波を打ち消すことができ、接続損失を低減することができる。
貫通孔19に臨む内周面21の前記延在方向Xの内寸法L15と、前記幅方向Yの内寸法L16とは、ストリップ導体からみた入力インピーダンスが整合の取れた状態になるように決定される。
図2では、非放射性誘電体線路2の延在方向Xにおける第1端部における構成を示しているが、非放射性誘電体線路2の延在方向Xにおける第2端部においても、同様の貫通孔19が形成され、また実装部4が設けられる。これによって、入力側のストリップ導体部12から位相制御すべき高周波信号を、非放射性誘電体線路2の誘電体線路5に結合させ、この誘電体線路5を伝播させる間に、前記高周波信号の位相を制御した後、出力側のストリップ導体部12に、位相制御された高周波信号を結合させ、出力側のストリップ導体部12から位相制御された高周波信号が取り出される。
接地導体部13は、ストリップ導体部12の幅方向Yの両側に予め定める距離L17離間して設けられ、またストリップ導体部12の第1端部17から延在方向Xに予め定める距離L18離間して形成される。実装部4は、ストリップ導体部12と接地導体部13および第1平板導電体部6aとの間が高周波信号の伝送線路として機能するものである。このため実装誘電体部11の厚さL9、ストリップ導体部12の厚さL10、予め定める距離L17、予め定める距離L18および実装誘電体部11の誘電率が、非放射性誘電体線路2の特定インピーダンスと整合するように、予め設定される特性インピーダンスになるように調整される。接地導体部13のうち、ストリップ導体部12の幅方向Yの両側に形成される部分は、ストリップ導体部12に平行に形成される。接地導体部13のうち、ストリップ導体部12の幅方向Yの両側に形成される部分は、実装誘電体部11の幅方向Yの端部にわたって形成される。接地導体部13の積層方向Zの長さは、ストリップ導体部12の積層方向Zの長さL10と等しく選ばれる。
貫通導体部14は、実装誘電体部11を積層方向Zに貫通して設けられる。貫通導体部14は、前述した前述した平板間誘電体部9と同様の物質によって形成される。貫通導体部14は、ストリップ導体部12と、接地導体部13とを、電気的に接続する。貫通導体部14は、複数設けられ、接地導体部13のうち、ストリップ導体部12の幅方向Yの両側に形成される部分の、幅方向Yの中央に接続され、積層方向Zに延びる。貫通導体部14によって、接地導体部13と平板導電体部6aとを電気的に接続することができるので、移相器1をプリント回路基板などの平面回路基板に実装したときに、接地導体部13を介して第1電極3aに電位を与えることができる。これによって、第1電極3aを基板に設けられる配線に別途接続するための配線を必要としないので、実装性を向上させることができる。
移相器1は、接地導体部13およびストリップ導体部12を、平面回路基板に対向させて、バンプなどを介して平面回路基板に実装される。接地導体部13および貫通導体部14は、ストリップ導体部12に対する接地導体として機能する他、第1および第2電極3a,3bに電圧を印加するための一方の端子としても機能する。接地導体部13および貫通導体部14を設けることによって、位相制御のために電圧が印加される一方の端子を、表面実装する平面回路基板に形成される配線にバンプなどを介して簡単に接続することができる。また、表面実装された状態では平面回路基板から離反する第2平板導電体部6bが位相制御のために電圧を印加する他方の端子として機能する。第2平板導電体部6bは、ボンディングワイヤなどによって平面回路基板上に配線に接続される。
移相器1は、さらに電圧印加手段23を含んで構成される。電圧印加手段23は、一対の第1および第2電極3a,3b間に予め定める範囲の電圧を印加する電気回路によって実現される。電圧印加手段23は、接地導体部13および第2平板導電体部6bに電気に接続されて、これら接地導体部13および第2平板導電体部6bに所定の電位を与えることによって、第1および第2電極3a,3b間に電圧を与えることができる。接地導体部13に与える電位は、接地電位である。これによって、第1および第2電極3a,3bに挟まれる誘電体線路5に電界が印加される。電圧印加手段23は、たとえば分圧器を含んで構成され、分圧器によって分圧された電圧を第1および第2電極3a,3bに与える。電圧印加手段23は、複数段階の電圧を接地導体部13および第2平板導電体部6bに印加することができる。電圧印加手段23は、伝播する電磁波の周波数よりも低い周波数の交流電圧、または直流電圧を接地導体部13および第2平板導電体部6bに印加する。電圧印加手段23は、シフトすべき位相量に応じた電圧を接地導体部13および第2平板導電体部6bに印加する。
電圧印加手段23によって、第1および第2電極3a,3b間に電圧を印加し、また印加する電圧の大きさを予め定める範囲で変化させることによって、誘電体線路5を導波する電磁波の位相を、印加する電圧の大きさ、すなわち印加電界の大きさに応じて変化させることができる。誘電体線路5を形成する誘電体は、印加電界が大きくなると誘電率が小さくなり、これによって誘電体線路5を導波する電磁波の位相を変化させることができる。
移相器1における、非放射性誘電体線路2のカットオフ周波数fcは、誘電体線路5を形成する誘電体の誘電率および誘電体線路5のサイズ(延在方向Xに垂直な断面の寸法)、第1および第2電極3a,3bの間隔(L3)、第1および第2平板導電体部6a,6bの間隔L1、および平板間誘電体部9を形成する誘電体の誘電率で決まる。カットオフ周波数が、伝播させるべき電磁波の周波数(使用周波数)未満になるように、誘電体線路5のサイズは選ばれる。第1および第2電極3a,3bに所定の電圧を印加して誘電体線路5の誘電率が小さくなったときのカットオフ周波数をfcとし、使用周波数、すなわち誘電体線路5を伝播させる電磁波の周波数をfとしたとき、1.03<f/fc<1.5となるように、好ましくは、1.03<f/fc<1.2となるように誘電体線路5のサイズ、第1および第2電極3a,3bの間隔(L3)、第1および第2平板導電体部6a,6bの間隔L1および平板間誘電体部9を形成する誘電体を設定する。移相器1を作製するとき、まず誘電体線路5および平板間誘電体部9を形成する誘電体を決定し、次に誘電体線路5のサイズを決定した後、これに伴って第1および第2電極3a,3bの間隔L4が決定され、最後に第1および第2平板導電体部6a,6bの間隔L1を決定する。
以上のように移相器1は、小形に形成することができ、位相制御を良好に行うことができ、かつ実装誘電体部11と、ストリップ導体部12とを備える実装部4を平面回路基板上に表面実装することによって、移相器1と平面回路基板に形成される伝送線路との接続を好適に行うことができる。また平板間誘電体部9が、第1および第2平板導電体部6a,6bを支える支持部材として働くので、第1および第2平板導電体部6a,6bを薄膜形成技術、厚膜印刷技術またはシート状セラミック技術などを用いて製造することができるようになり、製造においても小型化に適した移相器1を実現することができる。
また本発明の他の実施の形態では、前述した移相器1において、第1および第2電極3a,3bを誘電体線路5に埋め込んで形成してもよい。第1および第2電極3a,3bは、誘電体線路5に電界を印加可能に設けられる。また第1および第2電極3a,3bの厚さは、誘電体線路5を伝播する電磁波に対する表皮厚さ未満に選ばれる。これによって、第1および第2電極3a,3bを誘電体線路5に埋め込んだときに、第1および第2電極3a,3bによる損失を低減することができる。このような構成であっても、移相器1と同様の効果を達成することができ、さらに前述の移相器1よりも第1および第2電極3a,3bの間隔をより近づけて設けることができるので、より低電圧でスイッチを駆動することができる。本実施の形態における第1および第2電極3a,3bの体積抵抗率は、10−5Ω・m以上、好ましくは10−4Ω・m以上に選ばれる。
また誘電体線路5に第1および第2電極3a,3bを埋め込んで設ける場合、複数の第1および第2電極3a,3bを、幅方向Yに所定の間隔をあけて、第1電極3aと第2電極3bとが幅方向Yに交互に積層されるように形成してもよい。各第1電極3aは、第1平板導電体部6aに接続され、各第2電極3bは、第2平板導電体部6bに接続される。
第1電極3aおよび第2電極3bの数は、多くしたほうが、印加できる電界強度が大きくなるので、より低電圧でスイッチを動作させることができて好ましいが、第1電極3aおよび第2電極3bの数を多くすると損失が大きくなります。電極を積層した場合では、電極の厚さの総和によって損失が決定される。電極の抵抗率が1×10−4(Ω・m)の場合で実用上は、電極の厚さの総和が30nm以下とするのが好ましく、電極の抵抗率が1×10−3(Ω・m)の場合で実用上は、電極の厚さの総和が320nm以下とするのが好ましい。
また前述した実施の形態の移相器1では、誘電体線路5は、誘電率が変化する物質から成るが、本発明の実施のさらに他の形態において、誘電体線路5は、誘電率が変化する物質から成る変化部を含む構成であればよい。前記変化部は、電界強度が高くなる部分に形成されるのが好ましく、たとえば幅方向Yおよび厚さ方向Zの中央部に形成される。このような構成すると、誘電体線路5のうち変化部が占める割合と、誘電体線路5のうち変化部が形成される領域とに応じて、同じ大きさで移相器を作製したときに得られる位相変化量が決定され、誘電体線路5全体が誘電率が変化する物質から成る場合よりも、位相変化量は小さくなるが、前述の実施の形態と同様に、小型な移相器を提供することができる。
図4は、本発明の実施の一形態の高周波送信器60の構成を示す模式図である。高周波送信器60は、前述した図1に示す実施の形態の移相器1と、高周波発振器61と、伝送線路62と、送信用アンテナ63と、スタブ64とを含んで構成される。高周波発振器61は、ガンダイオードを利用したガン発振器、またはインパットダイオードを利用したインパット発振器またはFET(Field Effect Transistor)などを利用したMMIC(
Microwave Monolithic Integrated Circuit)発振器などを含んで構成され高周波信号を発生する。伝送線路62は、マイクロストリップ線路またはストリップ線路、コプレーナ線路によって構成される。伝送線路62の高周波信号の伝送方向の第1端部62aは高周波発振器61に接続され、伝送線路62の高周波信号の伝送方向の第2端部62bは送信用アンテナ63に接続される。送信用アンテナ63は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。高周波信号の伝送方向は、電磁波の伝播方向である。
移相器1は、高周波信号が誘電体線路5を通過するように、伝送線路62に挿入される。スタブ64は、たとえばオープンスタブによって実現され、高周波発振器61の特性調整回路として機能する。スタブ64は、高周波信号の伝送方向における移相器1の上流側および下流側のうち少なくとも一方で、前記伝送線路62に設けられる。
さらに具体的に述べると、伝送線路62は、第1および第2伝送線路68,69を含んで構成される。第1伝送線路68の高周波信号の伝送方向における第1端部68aは、高周波発振器61に接続され、第1伝送線路68の高周波信号の伝送方向における第2端部68bは、移相器1の第1入出力端2aに接続される。第2伝送線路69の高周波信号の伝送方向における第1端部69aは、移相器1の第2入出力端2bに接続され、第2伝送線路69の高周波信号の伝送方向における第2端部69bは、送信用アンテナ63に接続される。
高周波発振器61で発生した高周波信号は、第1伝送線路68、移相器1の誘電体線路5、第2伝送線路69を通過して、送信用アンテナ63に与えられ、送信用アンテナ63から電波として放射される。
高周波送信器60では、高周波発振器61と送信用アンテナ63の途中にはスタブ64が設けられ、高周波発振器61の伝送線路62への接続部や送信用アンテナ63の伝送線路62への接続部における不整合を整合できるようになっている。これによって接続部での反射を小さく抑えることができ、安定な発振特性が得られるとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力が得られる。ただし、スタブ64を設けても、たとえば高周波発振器を接続するためのワイヤーおよび/またはバンプの形状ばらつき、および伝送線路62の配線幅のばらつきなどによって一律に整合することができない。高周波送信器60では、伝送線路62に、伝送線路62を伝送される高周波信号の電磁波が誘電体線路5を通過するように、前記移相器1が挿入されるので、たとえば高周波発振器61を接続するためのワイヤーおよび/またはバンプの形状ばらつき、および伝送線路の配線幅のばらつきなどによって伝送線路62に起因して発生する位相のずれを個々に調整して整合をとることができ、安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ高周波送信器60を実現することができる。また移相器1を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器1を設けても高周波送信器60を小型に形成することができ、また移相器1に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
高周波送信器60では、移相器1を用いているが、前述した各実施の形態の移相器のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。また高周波送信器60において、前記伝送線路62は、マイクロストリップ線路およびストリップ線路の他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現されてもよい。
図5は、本発明の実施の一形態の高周波受信器70の構成を示す模式図である。図5に示す前述した実施の形態の高周波送信器60と同様の構成には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する場合がある。
高周波受信器70は、前述した実施の形態の移相器1と、高周波検波器71と、伝送線路62と、スタブ64と、受信用アンテナ73とを含んで構成される。高周波検波器71は、たとえば、ショットキーバリアダイオード検波器、ビデオ検波器またはミキサMMICなどによって実現される。
伝送線路62の高周波信号の伝送方向の第1端部62aは、高周波検波器71に接続され、伝送線路62の高周波信号の伝送方向の第2端部62bは、受信用アンテナ73に接続される。受信用アンテナ73は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。
移相器1は、高周波信号が誘電体線路5を通過するように、伝送線路62に挿入される。スタブ64は、高周波信号の伝送方向における移相器1の上流側および下流側のうち少なくとも一方で、前記伝送線路62に設けられる。
受信用アンテナ73によって外部から到来する電波を捕捉すると、受信用アンテナ73は電波に基づく高周波信号を伝送線路62に与え、移相器1の誘電体線路5を通過して、高周波検波器71に受信した高周波信号が与えられる。高周波検波器71は、高周波信号を検波して、高周波信号に含まれる情報を検出する。
高周波受信器70では、受信用アンテナ73によって捕捉した高周波信号は、伝送線路62に伝送されて高周波検波器71によって検波される。受信用アンテナ73と高周波検波器71の途中にはスタブ64が設けられ、高周波検波器71の伝送線路62への接続部や受信用アンテナ73の伝送線路62への接続部における不整合を整合できるようになっている。これによって接続部での反射を小さく抑えることができ、安定な検波特性が得られるとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力が得られる。スタブを設けても、たとえば高周波発振器を接続するためのワイヤーおよび/またはバンプの形状ばらつき、および伝送線路62の配線幅のばらつきなどによって一律に整合することができない。高周波受信器70では、伝送線路62には、伝送線路62を伝送される高周波信号の電磁波が前記誘電体線路5を通過するように、前記移相器1が挿入されるので、たとえば高周波検波器71を接続するためのワイヤーおよび/またはバンプの形状ばらつき、および伝送線路の配線幅のばらつきなどによって伝送線路62に起因して発生する位相のずれを個々に調整して、整合をとることができ、安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ高周波受信器70を実現することができる。また移相器1を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器1を設けても高周波受信器70を小型に形成することができ、また移相器1に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
高周波受信器70では、移相器1を用いているが、前記移相器に変えて、前述した実施の形態の移相器のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。また高周波受信器70において、前記伝送線路62は、マイクロストリップ線路およびストリップ線路の他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現されてもよい。
図6は、本発明の実施の一形態の高周波送受信器80を備えるレーダ装置90の構成を示す模式図である。レーダ装置90において、図4および図5に示す前述した実施の形態の高周波送信器60および高周波受信器70と同様の構成には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する場合がある。レーダ装置90は、高周波送受信器80と、距離検出器91を含んで構成される。
高周波送受信器80は、前述した実施の形態の移相器1と、高周波発振器61と、第1〜第5伝送線路81,82,83,84,85と、分岐器86と、分波器87と、送受信用アンテナ88と、ミキサ89と、スタブ64とを含んで構成される。送受信用アンテナ88は、パッチアンテナまたはホーンアンテナによって実現される。第1〜第5伝送線路81,82,83,84,85は、前述した伝送線路62と同様の構成を有する。
第1伝送線路81の高周波信号の伝送方向の第1端部81aは、高周波発振器61に接続され、第1伝送線路81の高周波信号の伝送方向の第2端部81bは、分岐器86に接続される。移相器1は、高周波信号が誘電体線路5を通過するように、第1伝送線路81に挿入される。スタブ64は、高周波信号の伝送方向における移相器1の上流側および下流側のうち少なくとも一方で、前記第1伝送線路81に設けられる。
分岐器(切替器)86は、第1、第2および第3端子86a,86b,86cを有し、第1端子86aに与えられる高周波信号を、第2端子86bおよび第3端子86cに選択的に出力する。分岐器86は、たとえば高周波スイッチ素子によって実現される。分岐器86には、図示しない制御部から制御信号が与えられ、制御信号に基づいて第1端子86aおよび第2端子86b、または第1端子86aおよび第3端子86cを選択的に接続する。レーダ装置90は、パルスレーダによって実現される。前記制御部は、第1端子86aおよび第2端子86bを接続して、パルス状の高周波信号を第2端子86bから出力させた後、第1端子86aおよび第3端子86cを接続して、高周波信号を第3端子86cから出力させる。第2端子86bには、第2伝送線路82の高周波信号の伝送方向の第1端部82aが接続される。前記第3端子86cには、第4伝送線路84の高周波信号の伝送方向の第1端部84aが接続される。
分波器87は、第4、第5および第6端子87a,87b,87cを有し、第4端子87aに与えられる高周波信号を第5端子87bに出力し、第5端子87bに与えられる高周波信号を第6端子87cに出力する。第2伝送線路82の高周波信号の伝送方向の第2端部82bは、前記第4端子87aに接続される。前記第5端子87bには、第3伝送線路83の高周波信号の伝送方向の第1端部83aが接続される。第3伝送線路83の高周波信号の伝送方向の第2端部83bは、送受信用アンテナ88に接続される。
前記第6端子87cには、第5伝送線路85の高周波信号の伝送方向の第1端部85aが接続される。第4伝送線路84の高周波信号の伝送方向の第2端部84bと、第5伝送線路85の高周波信号の伝送方向の第2端部85bとは、ミキサ89に接続される。分波器87は、ハイブリッド回路によって実現される。ハイブリッド回路は、方向性結合器であって、マジックT、ハイブリッドリングまたはラットレースなどによって実現される。
高周波発振器61で発生した高周波信号は、第1伝送線路81および移相器1の誘電体線路5を通過して、分岐器86、第2伝送線路82、分波器87ならびに第3伝送線路82を介して送受信用アンテナ88に与えられ、送受信用アンテナ88から電波として放射される。また、高周波発振器61で発生した高周波信号は、第1伝送線路81および移相器1の誘電体線路5を通過して、分岐器86ならびに第4伝送線路84を介してミキサ89にローカル信号として与えられる。
送受信用アンテナ88によって外部から到来する電波を受信すると、送受信用アンテナ88は電波に基づく高周波信号を第3伝送線路83に与え、分波器87、第5伝送線路85を介してミキサ89に与えられる。
ミキサ89は、第4および第5伝送線路84,85から与えられる高周波信号を混合して中間周波信号を出力する。ミキサ89から出力される中間周波信号は、距離検出器91に与えられる。
距離検出器91は、前述した高周波検波器71を含んで構成され、高周波送受信器80から放射され、測定対象物によって反射された電波(エコー)を受信して得られる前記中間周波信号に基づいて、測定対象物までの距離を算出する。距離検出器91は、たとえばマイクロコンピュータによって実現される。
高周波送受信器80では、高周波信号が前記誘電体線路5を通過するように、前記第1伝送線路81に、前記移相器1が挿入されることによって、たとえば配線幅のばらつきなどによって伝送線路62に起因して不所望に変化する高周波信号の位相を調整して、たとえば安定な発振特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い送信出力を持つ高周波送受信器80を実現することができ、また、たとえば安定な検波特性を持つとともに、挿入損失が小さく抑えられるために高い検波出力を持つ高周波送受信器80を実現することができ、また、たとえばミキサ89によって生成される中間周波数信号の信頼性を向上させることができる。また移相器1を前述したように小型で、かつ低電圧で動作させることができるので、移相器1を設けても高周波送受信器80を小型に形成することができ、また移相器1に電圧を与えるための構成が複雑化してしまうことを抑制することができる。
レーダ装置90では、前記高周波送受信器80からの中間周波信号に基づいて、距離検出器が高周波送受信器80から探知対象物までの距離、たとえば送受信用アンテナ88と探知対象物までの距離を検出するので、検知対象物までの距離を正確に検出することができる。
前記分岐器86は、方向性結合器によって実現されてもよく、この場合第1端子86aに与えられる高周波信号は、第2端子86bおよび第3端子86cに分岐して出力される。この場合には、前述した構成と比較して、送受信用アンテナ88から出力される電波の電力が低くなるが、分岐器86を制御する必要がないので装置の制御が簡単になる。
本実施の形態では、第1伝送線路81に移相器1が挿入されるが、本発明のさらに他の実施では、移相器1は、第1〜第5伝送線路81〜85の少なくともいずれか1つに、高周波信号が前記誘電体線路5を通過するように挿入されてもよい。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。
また高周波送受信器80では、移相器1を用いているが、前述した各実施の形態の移相器のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。
また本発明の実施のさらに他の形態では、前記分波器87は、サーキュレータによって実現されてもよく、この様な構成であっても、同様の効果を達成することができる。
図7は、本発明の実施の形態の移相器1を備えるアレイアンテナ装置99を含むレーダ装置100の構成を示す模式図である。本発明の形態において、前述実施の形態と同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。レーダ装置100は、アレイアンテナ装置99と、高周波送受信器109と距離検出器91を含んで構成される。
アレイアンテナ装置99は、アンテナ素子101とこのアンテナ素子101に付加される移相器1とによって構成される移相器付アンテナ素子105が配列されて設けられるアンテナアレー体102と、各移相器付アンテナ素子105に接続される伝送線路107とを含んで構成される。本発明の実施の形態では、複数のアンテナ素子101は、放射方向を揃えて、一列に並べられる。アンテナ素子101は、配列方向Rに沿って、相互に等しい間隔をあけて設けられる。
アンテナ素子101は、たとえばスロットアンテナ、マイクロストリップアンテナ、ホーンアンテナ、ロットアンテナまたは反射鏡アンテナによって実現される。本発明の実施の形態では、アレイアンテナ装置99は、8つのアンテナ素子101と、8つの移相器1とを有する。
伝送線路107は、分岐器103を含んで構成され、入力部104から入力される高周波信号を分岐器103によって複数に分岐して、各移相器付アンテナ素子105に与える。伝送線路107は、マイクロストリップ線路、ストリップ線路、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現される。
高周波送受信器109は、前述した各実施の形態の高周波送受信器80によって構成されてもよく、また高周波送受信器80において移相器を備えないものであってもよく、アレイアンテナ装置99に高周波信号を与え、かつアレイアンテナ装置99によって捕捉した高周波信号を受信する従来からの高周波送受信器によって構成されてもよい。
伝送線路107と、各移相器付アンテナ素子105のアンテナ素子101との間には、それぞれ移相器1が設けられる。伝送線路107を伝播する高周波信号は、移相器1の誘電体線路5を通過してアンテナ素子101に与えられる。各移相器1によって、高周波信号の位相をずらすことによって、各アンテナ素子から放射される電波の位相を調整して、図16に示すように等位相面を配列方向Rの第1方向R1から第2方向R2に向かうにつれて、隣接するアンテナ素子101から放射される電波の位相を、Δφずつずらすことによって、放射ビーム106の方向を正面からアンテナ素子101の配列方向Rの第1方向R1または第2方向R2に角度θだけ傾けることができる。
移相器1は、小形でかつ低電圧で動作させることができるので、アレイアンテナ装置99が大型化することない。アレイアンテナ装置99は、移相器1を備えることによって、放射ビームの方向を変更することができ、これによってアンテナ素子101を機械的に動作させることなく、放射ビームの方向を変更することができ、利便性を向上させることができる。
またレーダ装置100が大型化することなく、また放射ビームの方向を容易に変更することができるので、利便性の高いレーダ装置を実現することができる。
前記レーダ装置100では移相器1を用いているが、前記移相器1に変えて、前述した実施の形態の移相器のうちのいずれか1つを用いてもよい。このように構成しても、同様の効果を達成することができる。
前記レーダ装置100において移相器1を、前述した各実施の形態の移相器のうちのいずれか1つに変えて構成してもよい。
本発明の実施の一形態の高周波スイッチは、前述した各実施の形態の移相器のうちいずれかと同じ構成を有する。以下、「高周波スイッチ」を、単に「スイッチ」という。このようなスイッチでは、第1および第2電極23a,23bに電圧を印加することによって、非放射性誘電体線路2におけるカットオフ周波数を変更することができる。
電圧印加手段23は、伝播する電磁波の周波数よりも低い周波数の交流電圧、または直流電圧を第1および第2電極3a,3bに印加する。電圧印加手段23が、第1および第2電極3a,3bに電圧を印加することによって、誘電体線路5の誘電率が小さくなり、これによってスイッチのカットオフ周波数が高くなる。電圧印加手段23が、第1および第2電極3a,3bに電圧を印加しないときは、伝播させる電磁波の周波数(使用周波数)よりもスイッチのカットオフ周波数が低くなるようにスイッチが構成される。電圧印加手段23は、スイッチのカットオフ周波数が、前記使用周波数以上になるように第1および第2電極3a,3bに電圧を印加することができる。したがってスイッチは、電圧印加手段23によって、カットオフ周波数が、誘電体線路5を伝播する電磁波の周波数より低くなる伝播状態と、カットオフ周波数が、誘電体線路5を伝播する電磁波の周波数より高くなるカットオフ状態とを切り替え可能である。本発明の実施の形態では、使用周波数は、一定であり、したがって上記の切り替えによってON/OFF動作が可能である。
前記構成のスイッチでは、誘電体線路5に印加される電界に応じて、非放射性誘電体線路2におけるカットオフ周波数が、誘電体線路5を伝播する電磁波の周波数より低くなる伝播状態と、前記電磁波の周波数より高くなるカットオフ状態とを切り替え可能であるので、第1および第2電極23a,23bに印加する電圧を変化させることによって、前記伝播状態と前記カットオフ状態とを容易に切り替えることができる。スイッチング態様がOFF状態の時は、カットオフ状態になるので、本質的に高いON/OFF比を得ることができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを実現することができる。また前記構成によって、低い電圧でカットオフ周波数を変化させることができるスイッチを実現することができる。また前記接続構造によって、LSEモードの高周波信号を、平面線路に良好に取り出すことができるので、平面回路基板上への実装性が良好である高周波スイッチを実現することができる。
また誘電体線路5に電界を印加するために第1および第2電極23a,23bに与える電圧を小さくしても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられ、また誘電体線路5の線路長が短くても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられるので、小型で、かつ低電圧で動作させることができるスイッチを実現することができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを実現することができる。
本発明の実施の一形態の減衰器は、前述した各実施の形態の移相器のいずれかと同じ構成を有する。このような減衰器では、第1および第2電極3a,3bに電圧を印加することによって、非放射性誘電体線路2におけるカットオフ周波数を変更して、伝播特性を変化させることができる。誘電体線路5に印加される電界に応じて、非放射性誘電体線路2における伝播特性を変化させることによって、高周波信号を減衰することができ、また前記接続構造によって、LSEモードの高周波信号を、平面線路に良好に取り出すことができるので、平面回路基板上への実装性が良好である減衰器を実現することができる。減衰器は、前述した移相器と同様にカットオフ周波数をfcとし、使用周波数を周波数をfとしたとき、1.03<f/fc<1.5となるように、好ましくは、1.03<f/fc<1.2となるように形成される。また第1および第2電極3a,3bに与える電圧を小さくしても、変化部に大きな電界強度の電界が与えられ、またカットオフ周波数近傍の減衰特性を用いることから、また伝送線路の線路長が短くても、伝送線路の線路長が短くても電磁波を十分に減衰させることができるので、変化部に大きな電界強度の電界が与えられるので、小型で、かつ低電圧で動作させることができる減衰器を実現することができる。また、機械的な駆動部分がないため、耐久性に優れた信頼性の高い減衰器を実現することができる。
図8は、本発明の実施の他の形態の高周波送信器160の構成を示す模式図である。高周波送信器160は、前述した図4の高周波送信器60の移相器1に代えて、高周波スイッチ161を設け、スタブ64を除いた構成であるので、同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。スイッチ161は、前述した各実施の形態の移相器のいずれかと同じ構成を有する。
スイッチ161は、伝送線路62に挿入され、伝播状態とすることによって伝送線路62に伝送される高周波信号を透過し、カットオフ状態とすることによって伝送線路62に伝送される高周波信号を遮断する。
スイッチ161が伝播状態のとき、高周波発振器61が発生した高周波信号は、伝送線路62に伝送されて、スイッチ161の誘電体線路5を通過して送信用アンテナ63に与えられ、電波として放射される。またスイッチ161がカットオフ状態のとき、高周波発振器61が発生した高周波信号は、スイッチ161を透過しないので送信用アンテナ63には伝送されない。スイッチ161の伝播状態とカットオフ状態とを切換えることによって、送信用アンテナ63からパルス信号波を放射することができる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高い高周波スイッチを用いることによって、信頼性の高い高周波送信器160を実現することができる。電圧印加手段23が、所定の情報に基づいて、スイッチ161に電圧を印加して、スイッチ161をON/OFFすることによって、所定の情報に対応した電波を送信用アンテナ63から放射させることができる。
高周波送信器160において、前記伝送線路62は、マイクロストリップ線路およびストリップ線路の他に、コプレーナ線路、グランド付きコプレーナ線路、スロット線路、導波管または誘電体導波管などによって実現されてもよい。
図9は、本発明の実施の他の形態の高周波送受信器180を備えるレーダ装置190の構成を示す模式図である。高周波送受信器180は、前述した図6の高周波送受信器80の移相器1に代えて、高周波スイッチ161を設けた構成であるので、同様の構成には、同様の参照符号を付してその説明を省略する。
第1伝送線路81に挿入されるスイッチ161を伝播状態とすることによって、高周波発振器61が発生した高周波信号は、第1伝送線路81に伝送されて分岐器86の第1端子86aに与えられ、分岐器86の第2端子86bから第2伝送線路82に与えられ、分波器87の第4端子87aに与えられて、分波器87の第5端子87bから第3伝送線路83に与えられて、送受信用アンテナ88から放射される。また第1伝送線路81に挿入されるスイッチ161がカットオフ状態となると、高周波発振器61が発生した高周波信号はスイッチ161を透過しないので、遮断されて、送受信用アンテナ88からは放射されない。スイッチ161の伝播状態とカットオフ状態とを切換えることによって、送受信用アンテナ88からパルス信号波を放射することができる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高いスイッチ161を用いることによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。本実施の形態では、第1伝送線路81にスイッチ161が挿入されるが、本発明のさらに他の実施では、スイッチ161は、第1〜第3伝送線路81〜83の少なくともいずれか1つに、挿入されてもよい。このような構成であっても、第1〜第3伝送線路81〜83の少なくともいずれか1つに挿入されるスイッチ161を全て伝播状態とし、また第1〜第3伝送線路81〜83の少なくともいずれか1つに挿入されるスイッチ161のうち1つでもカットオフ状態とすることによって、送受信用アンテナ88からパルス信号波を放射することができ、前述のレーダ装置と同様の効果を達成することができる。
本発明の実施のさらに他の形態のレーダ装置は、前記各実施の形態のレーダ装置において、高周波送受信器80を構成する分岐器86を、2つのスイッチ161によって構成してもよい。
図10は、スイッチ161によって構成される分岐器86の構成を示す模式図である。2つのスイッチ161を、第1スイッチ161Aおよび第2スイッチ161Bという。第1スイッチ161Aは、伝播状態とすることによって第1端子86aおよび第2端子86b間で高周波信号を透過し、かつカットオフ状態とすることによって第1端子86aおよび第2端子86b間で高周波信号を遮断する。第2スイッチ161Bは、伝播状態とすることによって第1端子86aおよび第3端子86c間で高周波信号を透過し、かつカットオフ状態とすることによって第1端子86aおよび第3端子86c間で高周波信号を遮断する。第1および第2スイッチ161A,161Bの、電磁波の伝播方向における第1端部同士を接続して第1端子86aとする。また第1スイッチ161Aの電磁波の導波方向Xにおける第2端部を第2端子86とする。また第2スイッチ161Bの電磁波の導波方向Xにおける第2端部を第3端子86とする。
第1および第2スイッチ161A,161Bには、図示しない制御部から制御信号が与えられ、制御信号に基づいて第1スイッチ161Aが伝播状態のときに、第2スイッチ161Bをカットオフ状態とし、第1スイッチ161Aがカットオフ状態のときに、第2スイッチ161Bを伝播状態とすることによって、第1端子86aから入力される高周波信号を、第2および第3端子86b,86cから選択的に出力することができる。レーダ装置は、パルスレーダによって実現される。前記制御部は、第1および第2スイッチ161A,161Bを制御して、第1端子86aおよび第2端子86bを接続して、パルス状の高周波信号を第2端子86bから出力させた後、第1および第2スイッチ161A,161Bを制御して、第1端子86aおよび第3端子86cを接続して、高周波信号を第3端子86cから出力させる。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高いスイッチ161を用いて分岐器86を構成することによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。
本発明の実施のさらに他の形態のレーダ装置は、前記各実施の形態のレーダ装置において、高周波送受信器80を構成する分波器87を、2つのスイッチ161によって構成してもよい。
図11は、スイッチ161によって構成される分波器87の構成を示す模式図である。分波器87は、2つのスイッチ161を含んで構成される。2つのスイッチ161を、第3スイッチ161Cおよび第4スイッチ161Dという。第3スイッチ161Cは、伝播状態とすることによって第4端子87aおよび第5端子87b間で高周波信号を透過し、かつカットオフ状態とすることによって第4端子87aおよび第5端子87b間で高周波信号を遮断する。第4スイッチ161Dは、伝播状態とすることによって第5端子87bおよび第6端子87c間で高周波信号を透過し、かつカットオフ状態とすることによって第5端子87bおよび第6端子87c間で高周波信号を遮断する。第3スイッチ161Cの、電磁波の伝播方向における第1端部を、第4端子87aとする。また第3および第4スイッチ161C,161Dの、電磁波の伝播方向の第2端部同士を共通に接続して、第5端子87bとする。第4スイッチ161Dの電磁波の伝播方向の第1端部を、第6端子87cとする。
第3および第4スイッチ161C,161Dには、図示しない制御部から制御信号が与えられ、制御信号に基づいて第3スイッチ161Cが伝播状態のときに、第4スイッチ161Dをカットオフ状態とし、第3スイッチ161Cがカットオフ状態のときに、第4スイッチ161Dを伝播状態とすることによって、第4端子87aから入力される高周波信号を、第5端子87bから出力し、第5端子87bから入力される高周波信号を、第6端子87cから出力することができる。前記制御部は、第3および第4スイッチ161C,161Dを制御して、第4端子87aおよび第5端子87bを接続して、パルス状の高周波信号を送受信用アンテナに伝送した後、第3および第4スイッチ161C,161Dを制御して、第5端子87bおよび第6端子87cを接続して、送受信用アンテナによって捕捉した高周波信号を第6端子87cから出力させる。制御部は、第1および第3スイッチ161A,161Cが伝播状態となり、かつ第2および第4スイッチ161B,161Dがカットオフ状態となるように、または、第1および第3スイッチ161A,161Cがカットオフ状態となり、第2および第4スイッチ161B,161Dが伝播状態となるように、第1〜第4スイッチ161A〜161Dを制御する。大きなON/OFF比を得ることができるとともに、耐久性に優れた信頼性の高いスイッチ161を用いて分波器87を構成することによって、信頼性の高い高周波送受信器を実現することができる。
前述した各実施の形態において、前記変化部は、印加電界に応じて寸法が変化する圧電素子によってされてもよい。印加電圧に応じて、電磁波の電波方向において圧電素子の寸法が変化する、すなわち圧電素子の前記伝播方向における厚さが変化することによって、変化部を含む誘電体部を伝播する電磁波の位相を変化させることができ、前述した実施の形態と同様の効果を達成することができる。圧電素子は、たとえば水晶、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、Pb(Zr,Ti)O3、BaTiO3、LiNbO3またはSbSIなどによって形成される。以上の各実施の形態の移相器、スイッチおよび減衰器は、誘電体導波路デバイスである。
なお、本発明は以上の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何等差し支えない。