JP2007298159A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決すると共に、組立時におけるボール傷の発生を防止し、軸受の音響特性の向上と長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】第3世代構造の車輪用軸受装置において、複列の転動体のうちアウター側の転動体がボール3、インナー側の転動体が円錐ころ4であり、このインナー側の円錐ころ4のピッチ円直径PCDiがアウター側のボール3のピッチ円直径PCDoよりも小径に設定されると共に、外方部材2のアウター側の外側転走面2aにおけるカウンタ部Bの角部およびカウンタ内径20が、熱処理後に総型砥石によって当該転走面2aと同時研削により加工され、角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成され、カウンタ内径20の表面粗さが3.2Ra以下に規制されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車等の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、高剛性化と軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置に関するものである。
従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるためのハブ輪を転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式が、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。この車輪用軸受装置には、所望の軸受剛性を有し、ミスアライメントに対しても耐久性を発揮すると共に、燃費向上の観点から回転トルクが小さい複列アンギュラ玉軸受が多用されている。一方、オフロードカーやトラック等、車体重量が嵩む車両には複列円錐ころ軸受が使用されている。
また、車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第1世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第2世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第3世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第4世代構造とに大別されている。
こうした車輪用軸受装置において、従来は両列の軸受が同一仕様のため、静止時には充分な剛性を有するが、車両の旋回時には必ずしも最適な剛性が得られていない。すなわち、静止時の車重は複列の転がり軸受の略中央に作用するように車輪との位置関係が決められているが、旋回時には、旋回方向の反対側(右旋回の場合は車両の左側)の車軸により大きなラジアル荷重やアキシアル荷重が負荷される。したがって、旋回時には、インナー側の軸受列よりもアウター側の軸受列の剛性を高めることが有効とされている。そこで、装置を大型化させることなく旋回時の剛性を向上させた車輪用軸受装置として、図6に示すものが知られている。
この車輪用軸受装置50は、外周にナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ51cを一体に有し、内周に複列の外側転走面51a、51bが形成された外方部材51と、一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ53を一体に有し、外周に複列の外側転走面51a、51bに対向する一方の内側転走面52aと、この内側転走面52aから軸方向に延びる小径段部52bが形成されたハブ輪52、およびこのハブ輪52の小径段部52bに外嵌され、複列の外側転走面51a、51bに対向する他方の内側転走面54aが形成された内輪54からなる内方部材55と、これら両転走面間に収容された複列のボール56、57と、これら複列のボール56、57を転動自在に保持する保持器58、59とを備えた複列アンギュラ玉軸受で構成されている。
内輪54は、ハブ輪52の小径段部52bを径方向外方に塑性変形させて形成した加締部52cによって軸方向に固定されている。そして、外方部材51と内方部材55との間に形成される環状空間の開口部にシール60、61が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
ここで、アウター側のボール56のピッチ円直径D1が、インナー側のボール57のピッチ円直径D2よりも大径に設定されている。これに伴い、ハブ輪52の内側転走面52aが内輪54の内側転走面54aよりも拡径され、あわせて外方部材51のアウター側の外側転走面51aがインナー側の外側転走面51bよりも拡径されている。そして、アウター側のボール56がインナー側のボール57よりも多数収容されている。このように、各ピッチ円直径D1、D2をD1>D2に設定することにより、車両の静止時だけでなく旋回時においても剛性が向上し、車輪用軸受装置50の長寿命化を図ることができる。
特開2004−108449号公報
然しながら、こうした従来の車輪用軸受装置50の場合、アウター側の軸受列の剛性に対し、インナー側の軸受列の剛性が不足すると共に、ハブ輪52のアウター側が拡径されて形成されているため、少なくともこの拡径分の重量アップは避けることができず、装置の軽量化には限界があった。また、装置の組立工程において、外方部材51のアウター側の外側転走面51aに保持器58を介してボール56が仮組みされる際、外側転走面51aカウンタ部の内径にボール56が擦れながら挿入されるため、ボール56に微小な傷が発生し、軸受の音響特性が低下するだけでなく、短寿命の原因となる恐れがあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決すると共に、組立時におけるボール傷の発生を防止し、軸受の音響特性の向上と長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することを目的としている。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1記載の発明は、外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記複列の転動体のうちアウター側の転動体がボール、インナー側の転動体が円錐ころであり、このインナー側の円錐ころのピッチ円直径が前記アウター側のボールのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、前記外方部材のアウター側の外側転走面におけるカウンタ部の角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成され、当該カウンタ内径の表面粗さが3.2Ra以下に規制されている。
このように、外周に車体取付フランジを有する外方部材と、一端部に車輪取付フランジを有するハブ輪、およびこのハブ輪に圧入された内輪からなる内方部材と、この内方部材と外方部材間に収容された複列の転動体とを備えた第3世代構造の車輪用軸受装置において、複列の転動体のうちアウター側の転動体がボール、インナー側の転動体が円錐ころであり、このインナー側の円錐ころのピッチ円直径がアウター側のボールのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、外方部材のアウター側の外側転走面におけるカウンタ部の角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成され、カウンタ内径の表面粗さが3.2Ra以下に規制されているので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決すると共に、組立時のボール接触傷やボール振動による打ち傷等を抑制することができ、軸受の音響特性の向上を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記アウター側の軸受列における各転走面のカウンタ部および溝肩部の角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成されていれば、組立時におけるボール傷の発生を防止して軸受の音響特性の向上を図ると共に、各転走面とボールとの接触による接触楕円が溝肩部にかかってもエッジロードが発生するのを抑制することができ、軸受の長寿命化を図ることができる。
また、請求項3に記載の発明のように、前記アウター側の軸受列における各転走面のカウンタ部、溝肩部およびカウンタ内径が熱処理後に総型砥石によって当該転走面と同時研削により形成されていれば、表面を一層滑らかに形成することができる。
また、請求項4に記載の発明は、前記ハブ輪の内側転走面の溝底部から前記小径段部に亙って軸方向に延びる軸状部が形成され、この軸状部と前記内輪と突き合わされる肩部との間にテーパ状の段部が形成されると共に、前記凹所の深さが、前記内側転走面の溝底を越え前記段部付近までの深さとされていれば、装置の剛性を損なうことなく軽量化を図ることができる。
また、請求項5に記載の発明のように、前記小径段部の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部により前記内輪が所定の予圧が付与された状態で軸方向に固定されていれば、一層軽量・コンパクト化を図ることができると共に、初期に設定した予圧を長期間に亘って維持することができる。
本発明に係る車輪用軸受装置は、外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記複列の転動体のうちアウター側の転動体がボール、インナー側の転動体が円錐ころであり、このインナー側の円錐ころのピッチ円直径が前記アウター側のボールのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、前記外方部材のアウター側の外側転走面におけるカウンタ部の角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成され、当該カウンタ内径の表面粗さが3.2Ra以下に規制されているので、装置の軽量・コンパクト化と高剛性化という相反する課題を解決すると共に、組立時のボール接触傷やボール振動による打ち傷等を抑制することができ、軸受の音響特性の向上を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列のボールとを備え、前記小径段部の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部により前記内輪がハブ輪に対して軸方向に固定された車輪用軸受装置において、前記複列の転動体のうちアウター側の転動体がボール、インナー側の転動体が円錐ころであり、このインナー側の円錐ころのピッチ円直径が前記アウター側のボールのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、前記外方部材のアウター側の外側転走面におけるカウンタ部の角部およびカウンタ内径が、熱処理後に総型砥石によって当該転走面と同時研削により加工され、前記角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成され、前記カウンタ内径の表面粗さが3.2Ra以下に規制されている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1のアウター側の軸受列を示す要部拡大図、図3は、組立状態を示す説明図、図4(a)は、ハブ輪におけるアウター側の内側転走面の研削加工を示す説明図、(b)は、外方部材における外側転走面の研削加工を示す説明図、図5は、外方部材へのボール仮組みを示す説明図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図面左側)、中央寄り側をインナー側(図面右側)という。
この車輪用軸受装置は第3世代と呼称される従動輪用であって、内方部材1と外方部材2、および両部材1、2間に転動自在に収容された複数のボール3および円錐ころ4とを備えている。内方部材1は、ハブ輪5と、このハブ輪5に所定のシメシロを介して圧入された内輪6とからなる。
ハブ輪5は、一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ7を一体に有し、外周に一方(アウター側)の円弧状の内側転走面5aと、この内側転走面5aから軸方向に延びる軸状部8を介して小径段部5bが形成されている。車輪取付フランジ7にはハブボルト7aが周方向等配に植設されると共に、これらハブボルト7a間には円孔7bが形成されている。この円孔7bは軽量化に寄与できるだけでなく、装置の組立・分解工程において、レンチ等の締結治具をこの円孔7bから挿入することができ作業を簡便化することができる。
内輪6は、外周に他方(インナー側)のテーパ状の内側転走面6aが形成され、この内側転走面6aの大径側に円錐ころ4を案内するための大鍔6bと、小径側に円錐ころ4の脱落を防止するための小鍔6cがそれぞれ形成されている。そして、この内輪6はハブ輪5の小径段部5bに所定のシメシロを介して圧入されると共に、この小径段部5bの端部を塑性変形させて形成した加締部9によって所定の予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。これにより、軽量・コンパクト化を図ると共に、初期に設定した予圧を長期間に亘って維持することができる。
ハブ輪5はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面5aをはじめ、後述するアウター側のシール12が摺接する車輪取付フランジ7のインナー側の基部7cから小径段部5bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、加締部9は鍛造加工後の表面硬さのままとされている。これにより、車輪取付フランジ7に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、内輪6の嵌合部となる小径段部5bの耐フレッティング性が向上すると共に、加締加工時に微小なクラック等の発生がなく加締部9の塑性加工をスムーズに行うことができる。なお、内輪6、ボール3および円錐ころ4はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
外方部材2は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ2cを一体に有し、内周にハブ輪4の内側転走面4aに対向するアウター側の円弧状の外側転走面2aと、内輪5の内側転走面5aに対向するインナー側のテーパ状の外側転走面2bが一体に形成されている。この外方部材2はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、複列の外側転走面2a、2bが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。そして、両転走面2a、4aおよび2b、5a間に保持器10、11を介して複数のボール3および円錐ころ4が転動自在に収容されている。また、外方部材2と内方部材1との間に形成された環状空間の開口部にはシール12および磁気エンコーダ13が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
本実施形態は、インナー側の円錐ころ4列のピッチ円直径PCDiがアウター側のボール3列のピッチ円直径PCDoよりも小径に設定されている。これにより、外方部材2におけるインナー側の外径Dを小径に設定することができ、円錐ころ4を使用することにより、インナー側の転動体列の基本定格荷重を低下させることなくナックルサイズを小さくでき、装置の軽量・コンパクト化を図りつつ、インナー側の転動体列部分の剛性が高くなる。
ハブ輪5のアウター側端部には、軽量化を図るために鍛造工程においてすり鉢状の凹所14が形成され(二点鎖線にて示す)、この凹所14よりさらに軸方向に深く形成された凹所15が形成されている。この凹所15の深さは、内側転走面5aの溝底を越え、段部21付近までの深さとされている。そして、ハブ輪5の外郭形状は、内側転走面5aの溝底部から軸方向に延びる軸状部8、テーパ状の段部8a、および内輪6が突き合わされる肩部8bを介して小径段部5bに続き、凹所15に対応して肉厚が均一となるように形成されている。
一方、外方部材2において、ピッチ円直径PCDo、PCDiの違いに伴い、アウター側の外側転走面2aがインナー側の外側転走面2bよりも拡径され、アウター側の外側転走面2aから円筒状の肩部16と段部16aを介して小径側の肩部17に続き、インナー側の外側転走面2bに至っている。
ここで、アウター側のボール3列における各転走面5a、2aのカウンタ部A、Bおよび溝肩部C、Dの角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成されている。具体的には、図2に拡大して示すように、内側転走面5aの溝底部近傍にこの溝底径よりも大径で所定幅に形成されたカウンタ部Aが形成されている。このカウンタ部Aは、1.0〜5Rの角アールRを有する滑らかな円弧状に形成されている。また、カウンタ部Bおよび溝肩部C、Dの角部における面取りの軸方向寸法Laが0.15〜0.8mm、好ましくは、0.15〜0.3mm、径方向寸法Lrが0.15〜0.8mm、好ましくは、0.15〜0.3mmの範囲に形成され、そして、角アールRが0.15〜2.0R、好ましくは、0.45〜0.7Rの範囲に設定され、各繋ぎ部が滑らかに形成されている。この角アールRが0.15R未満となれば、ボール3に擦り傷がつき易くなってしまい、一方、角アールRが2.0Rを超えると、溝肩部C、Dにおいてはボール3の接触楕円が乗り上げて内側転走面4aから外れ易くなって好ましくない。
このようにアウター側のボール3列における各転走面5a、2aのカウンタ部A、Bおよび肩部C、Dが、所定の角Rを有する滑らかな円弧状に形成されていることにより、図3に示すような軸受の組立において、アウター側のボール3がカウンタ部A、Bおよび肩部C、Dに接触してもボール3に傷が発生するのを防止することができ、軸受の音響特性を向上させると共に、シール12を装着する際、そのリップが角部Cに接触して外挿されても損傷するのを防止することができ、品質の信頼性と密封性の向上を図ることができる。また、装置に大きなモーメント荷重が負荷された場合、内側転走面5aとボール3との接触による接触楕円が肩部C、Dにかかってもエッジロードが発生するのを防止することができ、軸受の長寿命化を図ることができる。
これらのカウンタ部A、Bおよび肩部C、Dは、図4に示すように、熱処理後、総型砥石によって各転走面5a、2aと同時に研削加工されている。すなわち、図4(a)に示すように、シールランド部となる車輪取付フランジ7の基部7cおよび内側転走面5aは総型砥石18によって一体に研削加工されて形成されるが、この時、カウンタ部Aおよび溝肩部Cもこの総型砥石18によって同時研削される。カウンタ部Aが内側転走面5aと同時研削されることにより、バリ等が発生するのを防止することができると共に、カウンタ部Aの外径をバラツキなく極めて精度良く形成することができる。
また、図4(b)に示すように、外方部材2の複列の外側転走面2a、2bは総型砥石19によって一体に研削加工されて形成されるが、この時、溝肩部Dおよびカウンタ部Bもこの総型砥石19によって同時研削される。ここで、カウンタ内径20およびシール12が装着されるシール嵌合面21も一体に研削加工され、その表面粗さが3.2Ra以下に規制されている。Raは、JISの粗さ形状パラメータの一つで(JIS B0601−1994)、算術平均粗さ、すなわち、平均線から絶対値偏差の平均値を言う。このようにカウンタ内径20の表面粗さを規制することにより、図5に示すように、アウター側の外側転走面2aにボール3を仮組みする際、ボール3が外側転走面2aのカウンタ内径20に擦れながら挿入されてもボール3表面に転写して傷が発生することはなく、また、カウンタ部Bの角部にボール3が接触しても打ち傷が付くのを抑制することができる。
なお、ここでは、カウンタ内径20が外側転走面2aと総型砥石によって同時に研削加工されたものを例示したが、これに限らず、予め旋削加工によって形成されても良い。この場合、旋削目がリード目あるいは交差目であればボール3に転写する恐れがあるため、トラバース加工でなくプランジカットによる旋削加工が好ましい。表1は、バイト送り速度に対してカウンタ内径20の表面粗さとボール3における傷深さとの関係を示したものであるが、この表からも明らかなように、トラバース加工であっても、バイト送りを0.2mm/rev.以下に遅くして加工することにより、カウンタ内径20の表面粗さを3.3Ra以下に改善することができ、ボール3の傷発生を防止することができる。
Figure 2007298159
このように本実施形態では、アウター側の軸受列における各転走面のカウンタ部A、Bおよび溝肩部C、Dが、各転走面5a、2aと共に総型砥石18、19によって同時研削され、角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成されると共に、カウンタ内径20が所定の表面粗さ以下に規制されているので、各転走面5a、2aとボール3との接触による接触楕円が溝肩部C、Dにかかってもエッジロードが発生するのを抑制することができ、軸受の長寿命化を図ることができるだけでなく、組立時のボール接触傷やボール振動による打ち傷等を防止することができ、軸受の音響特性を向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る車輪用軸受装置は、駆動輪用、従動輪用に拘わらず、第3世代構造の車輪用軸受装置に適用することができる。
本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。 図1のアウター側の軸受列を示す要部拡大図である。 同上、組立状態を示す説明図である。 (a)は、ハブ輪の研削加工を示す説明図である。 (b)は、外方部材の研削加工を示す説明図である。 外方部材へのボール仮組みを示す説明図である。 従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
符号の説明
1・・・・・・・・・・・・・・・・内方部材
2・・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
3・・・・・・・・・・・・・・・・ボール
4・・・・・・・・・・・・・・・・円錐ころ
5・・・・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
5a、6a・・・・・・・・・・・・内側転走面
5b・・・・・・・・・・・・・・・小径段部
6・・・・・・・・・・・・・・・・内輪
6b・・・・・・・・・・・・・・・大鍔
6c・・・・・・・・・・・・・・・小鍔
7・・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
7a・・・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
7b・・・・・・・・・・・・・・・円孔
7c・・・・・・・・・・・・・・・基部
8・・・・・・・・・・・・・・・・軸状部
8a、16a・・・・・・・・・・・段部
8b・・・・・・・・・・・・・・・肩部
9・・・・・・・・・・・・・・・・加締部
10、11・・・・・・・・・・・・保持器
12・・・・・・・・・・・・・・・シール
13・・・・・・・・・・・・・・・磁気エンコーダ
14、15・・・・・・・・・・・・凹所
16、17、C、D・・・・・・・・溝肩部
18、19・・・・・・・・・・・・総型砥石
20・・・・・・・・・・・・・・・カウンタ内径
21・・・・・・・・・・・・・・・シール嵌合面
50・・・・・・・・・・・・・・・車輪用軸受装置
51・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
51a・・・・・・・・・・・・・・アウター側の外側転走面
51b・・・・・・・・・・・・・・インナー側の外側転走面
51c・・・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
52・・・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
52a、54a・・・・・・・・・・内側転走面
52b・・・・・・・・・・・・・・小径段部
52c・・・・・・・・・・・・・・加締部
53・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
54・・・・・・・・・・・・・・・内輪
55・・・・・・・・・・・・・・・内方部材
56、57・・・・・・・・・・・・ボール
58、59・・・・・・・・・・・・保持器
60、61・・・・・・・・・・・・シール
A、B・・・・・・・・・・・・・・カウンタ部
D1・・・・・・・・・・・・・・・アウター側のボールのピッチ円直径
D2・・・・・・・・・・・・・・・インナー側のボールのピッチ円直径
La・・・・・・・・・・・・・・・面取りの軸方向寸法
Lr・・・・・・・・・・・・・・・面取りの径方向寸法
PCDo・・・・・・・・・・・・・アウター側のボールのピッチ円直径
PCDi・・・・・・・・・・・・・インナー側のボールのピッチ円直径
R・・・・・・・・・・・・・・・・角アール

Claims (5)

  1. 外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、
    一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、
    この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、
    前記複列の転動体のうちアウター側の転動体がボール、インナー側の転動体が円錐ころであり、このインナー側の円錐ころのピッチ円直径が前記アウター側のボールのピッチ円直径よりも小径に設定されると共に、前記外方部材のアウター側の外側転走面におけるカウンタ部の角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成され、当該カウンタ内径の表面粗さが3.2Ra以下に規制されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
  2. 前記アウター側の軸受列における各転走面のカウンタ部および溝肩部の角部が面潰しされて滑らかな円弧状に形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  3. 前記アウター側の軸受列における各転走面のカウンタ部、溝肩部およびカウンタ内径が熱処理後に総型砥石によって当該転走面と同時研削により形成されている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
  4. 前記ハブ輪の内側転走面の溝底部から前記小径段部に亙って軸方向に延びる軸状部が形成され、この軸状部と前記内輪と突き合わされる肩部との間にテーパ状の段部が形成されると共に、前記凹所の深さが、前記内側転走面の溝底を越え前記段部付近までの深さとされている請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受装置。
  5. 前記小径段部の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部により前記内輪が所定の予圧が付与された状態で軸方向に固定されている請求項1乃至4いずれかに記載の車輪用軸受装置。
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