JP2008051164A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

Abstract

【課題】軽量・コンパクト化を図ると共に、ハブ輪に圧入される内輪の剛性を高めて耐久性を向上させた車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】揺動加締により内輪６が固定された車輪用軸受装置において、複列のボール３、４群のうち車輪取付フランジ７に遠い側のボール４群のピッチ円直径ＰＣＤｉが、車輪取付フランジ７に近い側のボール３群のピッチ円直径ＰＣＤｏ以上に設定されると共に、車輪取付フランジ７に遠い側のボール４群のボール直径ｄｉが、車輪取付フランジ７に近い側のボール３群のボール直径ｄｏよりも小径に、かつそのボール４群のボール個数が、車輪取付フランジ７に近い側のボール３群のボール個数よりも多く設定されているので、インナー側のボール４群の剛性を高めると共に、内輪６の肉厚ｔを厚肉に形成することができ、内輪６自体の剛性を高めて耐久性を向上させることができる。
【選択図】図１

Description

本発明は、自動車等の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、軽量・コンパクト化を図ると共に、ハブ輪に圧入される内輪の剛性を高めて耐久性を向上させた車輪用軸受装置に関するものである。

従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるためのハブ輪を転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式が、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。この車輪用軸受装置には、所望の軸受剛性を有し、ミスアライメントに対しても耐久性を発揮すると共に、燃費向上の観点から回転トルクが小さい複列アンギュラ玉軸受が多用されている。この複列アンギュラ玉軸受は、固定輪と回転輪との間に複数のボールを介在させ、このボールに所定の接触角を付与して固定輪および回転輪に接触させている。

また、車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第１世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第２世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第３世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第４世代構造とに大別されている。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側（図面左側）、中央寄り側をインナー側（図面右側）という。

こうした従来の車輪用軸受装置の代表的な一例を図３に示す。この車輪用軸受装置は第３世代と称され、ハブ輪５１と内輪５２と外輪５３、および複列のボール５４、５４を備えている。ハブ輪５１は、一端部に車輪（図示せず）を取り付けるための車輪取付フランジ５５を一体に有し、外周にアウター側の内側転走面５１ａと、この内側転走面５１ａから軸方向に延びる小径段部５１ｂが形成されている。また、車輪取付フランジ５５の円周等配位置には車輪を固定するためのハブボルト５６が植設されている。

ハブ輪５１の小径段部５１ｂには、外周にインナー側の内側転走面５２ａが形成された内輪５２が圧入されている。そして、ハブ輪５１の小径段部５１ｂの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部５１ｃにより、ハブ輪５１に対して内輪５２が軸方向へ抜けるのを防止している。

外輪５３は、外周に車体取付フランジ５３ｂを一体に有し、内周に複列の外側転走面５３ａ、５３ａが形成されている。これら複列の外側転走面５３ａ、５３ａと、これらに対向する内側転走面５１ａ、５２ａの間には複列のボール５４、５４が転動自在に収容されている。

ハブ輪５１は、炭素の含有量が０．４０〜０．８０重量％である炭素鋼製の素材に鍛造を施すことにより一体に形成され、斜格子で示した部分、すなわち、車輪取付フランジ５５の基部から内側転走面５１ａ、および小径段部５１ｂに亙って高周波焼入れ等によって表面が硬化処理されている。なお、加締部５１ｃは、鍛造後の素材表面硬さの生のままとしている。一方、内輪５２は、ＳＵＪ２等の高炭素クロム軸受鋼のような高炭素鋼製とし、芯部まで焼入れ硬化されている。

これにより、低コストで充分な耐久性を有する車輪用軸受装置が実現でき、加締部５１ｃに亀裂等の損傷が発生することを防止すると共に、この加締部５１ｃによりハブ輪５１に固定される内輪５２の直径が実用上問題になる程度変化するのを防止できる。そして、この内輪５２がその固定作業に伴って損傷する可能性を低くすると共に、予圧を適正値に維持でき、しかも部品点数、部品加工、組立工数の削減によってコスト低減が図れる。
特開平１１−１２９７０３号公報

然しながら、この従来の車輪用軸受装置において、ハブ輪５１における小径段部５１ｂの端部を揺動加締する際、内輪５２が径方向外方に押し広げられることになり、内輪５２が変形するのは否めない。ここで、ハブ輪５１の加締部５１ｃの形状を工夫して内輪５２の変形を抑える提案もされているが、内輪５２の変形に伴うフープ応力を大幅に抑えるには限界がある。また、内輪５２の幅寸法あるいは肉厚を増大させて剛性を高めることもできるが、内輪５２のサイズをアップすれば軽量・コンパクト化が阻害されると言った問題があった。

本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、軽量・コンパクト化を図ると共に、ハブ輪に圧入される内輪の剛性を高めて耐久性を向上させた車輪用軸受装置を提供することを目的としている。

係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項１記載の発明は、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周にこの車輪取付フランジから軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された少なくとも一つの内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体群とを備えた車輪用軸受装置において、前記複列の転動体群のうち前記車輪取付フランジに遠い側の転動体群のピッチ円直径が、前記車輪取付フランジに近い側の転動体群のピッチ円直径以上に設定されている。

このように、複列の転がり軸受からなる車輪用軸受装置において、複列の転動体群のうち車輪取付フランジに遠い側の転動体群のピッチ円直径が、車輪取付フランジに近い側の転動体群のピッチ円直径以上に設定されているので、内輪の肉厚を厚肉に形成することができ、この内輪の肉厚増大によって内輪自体の剛性を高めて耐久性を向上させることができる。

好ましくは、請求項２、３に記載の発明のように、前記車輪取付フランジに遠い側の転動体群の転動体直径が、車輪取付フランジに近い側の転動体群の転動体直径よりも小径に設定され、さらに、前記車輪取付フランジに遠い側の転動体群の転動体個数が、前記車輪取付フランジに近い側の転動体群の転動体個数よりも多く設定されていれば、軽量・コンパクト化を図りつつインナー側の転動体群の剛性を高めて長寿命化を図ることができる。

また、請求項４に記載の発明のように、前記転動体がボールであっても良いし、また、請求項５に記載の発明のように、前記転動体が円錐ころからなり、前記車輪取付フランジに遠い側の円錐ころ群のころ長さまたはころ径のうちの少なくとも一方が、前記車輪取付フランジに近い側の円錐ころ群のころ長さまたはころ径よりも小さく設定されていても良い。

また、請求項６に記載の発明のように、前記内方部材が、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸状部を介して軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪で構成され、前記小径段部の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部により前記ハブ輪に対して前記内輪が軸方向に固定されていれば、軽量・コンパクト化を図りつつインナー側の転動体群の剛性を高めて長寿命化を図ることができると共に、内輪の肉厚増大によって内輪自体の剛性を高めることができ、揺動加締により内輪に発生するフープ応力を抑えて耐久性を向上させることができる。

本発明に係る車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周にこの車輪取付フランジから軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された少なくとも一つの内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体群とを備えた車輪用軸受装置において、前記複列の転動体群のうち前記車輪取付フランジに遠い側の転動体群のピッチ円直径が、前記車輪取付フランジに近い側の転動体群のピッチ円直径以上に設定されているので、内輪の肉厚を厚肉に形成することができ、この内輪の肉厚増大によって内輪自体の剛性を高めて耐久性を向上させることができる。

外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列のボール群とを備え、前記小径段部の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部により、前記ハブ輪に対して前記内輪が軸方向に固定された車輪用軸受装置において、前記複列のボール群のうち前記車輪取付フランジに遠い側のボール群のピッチ円直径が、前記車輪取付フランジに近い側のボール群のピッチ円直径以上に設定されると共に、前記車輪取付フランジに遠い側のボール群のボール直径が、前記車輪取付フランジに近い側のボール群のボール直径よりも小径に、かつそのボール群のボール個数が、前記車輪取付フランジに近い側のボール群のボール個数よりも多く設定されている。

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図１は、本発明に係る車輪用軸受装置の第１の実施形態を示す縦断面図である。
この車輪用軸受装置は第３世代と呼称される従動輪用であって、内方部材１と外方部材２、および両部材１、２間に転動自在に収容された複列のボール３、４群を備えている。内方部材１は、ハブ輪５と、このハブ輪５に所定のシメシロを介して圧入された内輪６とからなる。

ハブ輪５は、アウター側の端部に車輪（図示せず）を取り付けるための車輪取付フランジ７を一体に有し、外周に一方（アウター側）の内側転走面５ａと、この内側転走面５ａから軸方向に延びる軸状部８を介して小径段部５ｂが形成されている。車輪取付フランジ７にはハブボルト７ａが周方向等配に植設されている。

内輪６は、外周に他方（インナー側）の内側転走面６ａが形成され、ハブ輪５の小径段部５ｂに肩部８ａと突合せ状態で圧入され、背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受を構成している。そして、小径段部５ｂの端部を塑性変形（揺動加締）させて形成した加締部５ｃによって内輪６が軸方向に所定の軸受予圧が付与された状態で固定されている。なお、内輪６およびボール３、４はＳＵＪ２等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。

ハブ輪５はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面５ａをはじめ、車輪取付フランジ７のインナー側の基部７ｃから小径段部５ｂに亙って高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。なお、加締部５ｃは鍛造加工後の表面硬さのままとされている。これにより、車輪取付フランジ７に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、内輪６の嵌合部となる小径段部５ｂの耐フレッティング性が向上すると共に、微小なクラック等の発生がなく加締部５ｃの塑性加工をスムーズに行うことができる。

外方部材２は、外周にナックル（図示せず）に取り付けられるための車体取付フランジ２ｃを一体に有し、内周にハブ輪５の内側転走面５ａに対向するアウター側の外側転走面２ａと、内輪６の内側転走面６ａに対向するインナー側の外側転走面２ｂが一体に形成されている。これら両転走面間に複列のボール３、４群が収容され、保持器９、１０によって転動自在に保持されている。

この外方部材２はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、複列の外側転走面２ａ、２ｂが高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。そして、外方部材２と内方部材１との間に形成される環状空間の開口部にはシール１１、１２が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。

本実施形態では、複列のボール３、４群のうちインナー側のボール４群のピッチ円直径ＰＣＤｉが、アウター側のボール３群のピッチ円直径ＰＣＤｏよりも大径（ＰＣＤｉ＞ＰＣＤｏ）に設定されると共に、インナー側のボール４群におけるボール直径ｄｉが、アウター側のボール３群におけるボール直径ｄｏよりも小径（ｄｉ＜ｄｏ）に設定されている。さらに、ボール直径ｄｉ、ｄｏの違いに伴い、インナー側のボール４群におけるボール個数Ｎｉがアウター側のボール３群におけるボール個数Ｎｏよりも多く設定（Ｎｉ＞Ｎｏ）されている。

これにより、軽量・コンパクト化を図りつつインナー側のボール４群の剛性を高めて長寿命化を図ることができると共に、内輪６の肉厚ｔを厚肉に形成することができ、この内輪６の肉厚増大によって内輪６自体の剛性を高めて耐久性を向上させることができる。取り分け、揺動加締により内輪６を固定するこの種のセルフリテイン構造においては、加締工程によって内輪６に発生するフープ応力を抑えることができるためその効果は大きい。

また、複列の外側転走面２ａ、２ｂにおける溝径Ｄｉ、Ｄｏの径差を抑えることができ、研削工程において、総型の研削砥石で同時研削することができる。すなわち、この種の左右のピッチ円直径が異なる従来の車輪用軸受装置において、径差の異なる複列の外側転走面を同時研削する場合、この径差によって左右の研削砥石の周速が異なり、仕上がり面の面粗さだけでなく寸法・形状精度がばらつき、所望の品質を確保することが難しかったが、この同時研削により、仕上がり面の面粗さおよび寸法・形状精度が確保できると共に、外方部材２の加工工数およびサイクルタイムを低減させて低コスト化を図ることができる。

ここでは、インナー側のボール４群のピッチ円直径ＰＣＤｉをアウター側のボール３群のピッチ円直径ＰＣＤｏよりも大径（ＰＣＤｉ＞ＰＣＤｏ）に設定すると共に、インナー側のボール４群におけるボール直径ｄｉをアウター側のボール３群におけるボール直径ｄｏよりも小径（ｄｉ＜ｄｏ）に設定することにより、内輪６の肉厚ｔを増大させるようにしたが、本発明はこうした構成に限らず、例えば、図示はしないが、アウター側のボール３群のピッチ円直径ＰＣＤｏとインナー側のボール４群のピッチ円直径ＰＣＤｉを同一（ＰＣＤｏ＝ＰＣＤｉ）に設定し、インナー側のボール４群におけるボール直径ｄｉを、アウター側のボール３群におけるボール直径ｄｏよりも小径（ｄｉ＜ｄｏ）に設定しても良い。

図２は、本発明に係る車輪用軸受装置の第２の実施形態を示す縦断面図である。この実施形態は、前述した第１の実施形態と基本的には転動体の構成が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。

この車輪用軸受装置は第３世代と呼称される駆動輪用であって、内方部材１３と外方部材１４、および両部材１３、１４間に転動自在に収容された複列円錐ころ１５、１６群を備えている。内方部材１３は、ハブ輪１７と、このハブ輪１７に所定のシメシロを介して圧入された内輪１８とからなる。

ハブ輪１７は、一端部に車輪取付フランジ７を一体に有し、ハブボルト７ａ間に円孔７ｂが形成されている。この円孔７ｂは軽量化に寄与できるだけでなく、装置の組立・分解工程において、レンチ等の締結治具をこの円孔７ｂから挿入することができ作業を簡便化することができる。また、ハブ輪１７の外周には一方（アウター側）のテーパ状の内側転走面１７ａと、この内側転走面１７ａから軸方向に延びる軸状部８を介して小径段部５ｂが形成されている。このハブ輪１７における内側転走面１７ａの大径側には円錐ころ１５を案内するための大鍔１７ｂが形成され、内周にはトルク伝達用のセレーション（またはスプライン）１７ｃが形成されている。

一方、内輪１８の外周には他方（インナー側）のテーパ状の内側転走面１８ａが形成され、この内側転走面１８ａの大径側に円錐ころ１６を案内するための大鍔１８ｂと、小径側に円錐ころ１６の脱落を防止するための小鍔１８ｃがそれぞれ形成されている。そして、この内輪１８はハブ輪１７の小径段部５ｂに所定のシメシロを介して圧入されると共に、この小径段部５ｂの端部を塑性変形させて形成した加締部５ｃによって所定の軸受予圧が付与された状態で軸方向に固定されている。

また、ハブ輪１７はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、アウター側のシール１１が摺接する車輪取付フランジ７の基部７ｃから内側転走面１７ａ、軸状部８、肩部８ａおよび小径段部５ｂに亙って高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理が施されている。また、内輪１８および円錐ころ１５、１６は、ＳＵＪ２等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。

内方部材１３には等速自在継手（図示せず）の外側継手部材２３がトルク伝達可能に内嵌され、ハブ輪１７と外側継手部材２３が軸方向に固定されている。すなわち、外側継手部材２３は、肩部２４から軸方向に延び、外周にセレーション２５ａと雄ねじ２５ｂが形成されたステム部２５を一体に有し、肩部２４を加締部５ｃに当接させた状態で固定ナット２６を介してハブ輪１７と外側継手部材２３が軸方向に固定されている。

外方部材１４は、外周にナックル２２に取り付けられるための車体取付フランジ２ｃを一体に有し、内周にハブ輪１７の内側転走面１７ａに対向するアウター側のテーパ状の外側転走面１４ａと、内輪１８の内側転走面１８ａに対向するインナー側のテーパ状の外側転走面１４ｂが一体に形成されている。なお、図示はしないが、ハブ輪１７に大鍔１７ｂを形成せず、外方部材１４におけるアウター側の外側転走面１４ａの大径側に大鍔が一体に形成されていても良い。これにより、円錐ころ１５を介して負荷される荷重に対してハブ輪１７への応力集中が緩和され、車輪取付フランジ７に大きなモーメント荷重が負荷されてもハブ輪１７に疲労が生じ難く、強度・耐久性を確保することができる。

外方部材１４はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、複列の外側転走面１４ａ、１４ｂが高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。そして、両転走面１４ａ、１７ａおよび１７ｂ、１８ａ間に保持器１９、２０を介して複列の円錐ころ１５、１６群が転動自在にそれぞれ収容されている。また、外方部材１４と内方部材１３との間に形成された環状空間の開口部にはシール１１、２１が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。

ここで、本実施形態は、複列の円錐ころ１５、１６群のうちインナー側の円錐ころ１６群のピッチ円直径ＰＣＤｉが、アウター側の円錐ころ１５群のピッチ円直径ＰＣＤｏよりも大径（ＰＣＤｉ＞ＰＣＤｏ）に設定されると共に、インナー側の円錐ころ１６群におけるころ直径ｄｉが、アウター側の円錐ころ１５群におけるころ直径ｄｏよりも小径（ｄｉ＜ｄｏ）に設定されている。さらに、ころ直径ｄｉ、ｄｏの違いに伴い、インナー側の円錐ころ１６群におけるボール個数Ｎｉがアウター側の円錐ころ１５群におけるボール個数Ｎｏよりも多く設定（Ｎｉ＞Ｎｏ）されている。このピッチ円直径ＰＣＤｉ、ＰＣＤｏおよびころ直径ｄｉ、ｄｏの違いにより、前述した実施形態と同様、軽量・コンパクト化を図りつつインナー側の円錐ころ１６群の剛性を高めて長寿命化を図ることができると共に、内輪１８の肉厚ｔを厚肉に形成することができ、この内輪１８の肉厚増大によって内輪１８自体の剛性を高めることができる。したがって、揺動加締により内輪１８に発生するフープ応力を抑えて耐久性を向上させることができる。

さらには、インナー側の軸受スペースに応じてインナー側の円錐ころ１６群のころ径ｄｉ・ころ長さＬｉをアウター側の円錐ころ１５群のころ径ｄｏ・ころ長さＬｏよりも小さく設定することにより、転動体に円錐ころ１５、１６を使用して装置の軽量・コンパクト化を図るのと相俟って、重量アップを抑えつつアウター側の軸受列に比べインナー側の軸受列の剛性をさらに増大させることができ、軸受の長寿命化を一層図ることができる。

以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。

本発明に係る車輪用軸受装置は、従動輪、駆動輪に拘わらず、第１乃至第４世代構造の車輪用軸受装置に適用することができる。

本発明に係る車輪用軸受装置の第１の実施形態を示す縦断面図である。 本発明に係る車輪用軸受装置の第２の実施形態を示す縦断面図である。 従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。

符号の説明

１、１３・・・・・・・・・・・内方部材
２、１４・・・・・・・・・・・外方部材
２ａ、２ｂ、１４ａ、１４ｂ・・外側転走面
３、４・・・・・・・・・・・・ボール
５、１７・・・・・・・・・・・ハブ輪
５ａ、６ａ、１７ａ、１８ａ・・内側転走面
５ｂ・・・・・・・・・・・・・小径段部
５ｃ・・・・・・・・・・・・・加締部
６、１８・・・・・・・・・・・内輪
７・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
７ａ・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
７ｂ・・・・・・・・・・・・・円孔
７ｃ・・・・・・・・・・・・・基部
８・・・・・・・・・・・・・・軸状部
８ａ、２４・・・・・・・・・・肩部
９、１０、１９、２０・・・・・保持器
１１、１２、２１・・・・・・・シール
１５、１６・・・・・・・・・・円錐ころ
１７ｂ、１８ｂ・・・・・・・・大鍔
１７ｃ、２５ａ・・・・・・・・セレーション
１８ｃ・・・・・・・・・・・・小鍔
２２・・・・・・・・・・・・・ナックル
２３・・・・・・・・・・・・・外側継手部材
２５・・・・・・・・・・・・・ステム部
２５ｂ・・・・・・・・・・・・雄ねじ
２６・・・・・・・・・・・・・固定ナット
５１・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
５１ａ、５２ａ・・・・・・・・内側転走面
５１ｂ・・・・・・・・・・・・小径段部
５１ｃ・・・・・・・・・・・・加締部
５２・・・・・・・・・・・・・内輪
５３・・・・・・・・・・・・・外輪
５３ａ・・・・・・・・・・・・外側転走面
５３ｂ・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
５４・・・・・・・・・・・・・ボール
５５・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
５６・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
Ｄｉ・・・・・・・・・・・・・インナー側の外側転走面の溝径
Ｄｏ・・・・・・・・・・・・・アウター側の外側転走面の溝径
ｄｉ・・・・・・・・・・・・・インナー側の転動体の直径
ｄｏ・・・・・・・・・・・・・アウター側の転動体の直径
Ｌｉ・・・・・・・・・・・・・インナー側の円錐ころの長さ
Ｌｏ・・・・・・・・・・・・・アウター側の円錐ころの長さ
ＰＣＤｉ・・・・・・・・・・・インナー側の転動体のピッチ円直径
ＰＣＤｏ・・・・・・・・・・・アウター側の転動体のピッチ円直径
ｔ・・・・・・・・・・・・・・内輪の肉厚

Claims (6)

1. 内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、
   一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周にこの車輪取付フランジから軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された少なくとも一つの内輪からなる内方部材と、
   この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体群とを備えた車輪用軸受装置において、
   前記複列の転動体群のうち前記車輪取付フランジに遠い側の転動体群のピッチ円直径が、前記車輪取付フランジに近い側の転動体群のピッチ円直径以上に設定されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
2. 前記車輪取付フランジに遠い側の転動体群の転動体直径が、前記車輪取付フランジに近い側の転動体群の転動体直径よりも小径に設定されている請求項１に記載の車輪用軸受装置。
3. 前記車輪取付フランジに遠い側の転動体群の転動体個数が、前記車輪取付フランジに近い側の転動体群の転動体個数よりも多く設定されている請求項１または２に記載の車輪用軸受装置。
4. 前記転動体がボールからなる請求項１乃至３いずれかに記載の車輪用軸受装置。
5. 前記転動体が円錐ころからなり、前記車輪取付フランジに遠い側の円錐ころ群のころ長さまたはころ径のうちの少なくとも一方が、前記車輪取付フランジに近い側の円錐ころ群のころ長さまたはころ径よりも小さく設定されている請求項１乃至３いずれかに記載の車輪用軸受装置。
6. 前記内方部材が、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸状部を介して軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪で構成され、前記小径段部の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部により前記ハブ輪に対して前記内輪が軸方向に固定されている請求項１乃至５いずれかに記載の車輪用軸受装置。

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