JP2007297975A - 内燃機関のピストンユニット及びピストンのリング溝構造 - Google Patents

内燃機関のピストンユニット及びピストンのリング溝構造 Download PDF

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Abstract

【課題】ピストンリングによる気密性を高くし過ぎることなく、且つクランクケース内への新気導入量を増大させることなしに、ブローバイガスのNOx濃度を低減できる内燃機関のピストンユニット及びピストンのリング溝構造を提供する。
【解決手段】ピストン2に形成されるトップリング溝21とそれに嵌め込まれるトップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積Vbaと一気筒の一サイクル当たりに発生するブローバイガス体積Vblとの関係が、「3≦Vba/Vbl≦5」を満たすようにトップリング溝21を設計する。これにより、ピストンユニット1をシリンダ6に挿入する際の組み付け作業性に悪影響を与えることなしに、ブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば自動車用内燃機関等に備えられ、ピストンとピストンリングとで構成されるピストンユニット(ピストン組立体)及び、上記ピストンリングを装着するためにピストンに形成されるリング溝の構造に係る。特に、本発明は、ブローバイガスのNOx濃度低減に鑑みられた構成の改良に関する。尚、上述した如く、本明細書では、ピストンの外周囲にピストンリングが装着されて構成されるユニット(ピストンにピストンリングが組み付けられて構成される部品)をピストンユニットと呼ぶこととする。
従来より、自動車用エンジン等の内燃機関に適用されるピストンには、燃焼室の気密性を保持したり燃焼室へのオイルの浸入を抑制するためにピストンリングが装着されている。このピストンリングは、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、ピストン外周面に形成されたリング溝に嵌め込まれている。一般的なエンジンでは、燃焼室の気密保持の役割を主として担うコンプレッションリングと、シリンダ内面に残存するオイルをオイルパンに向けて掻き落とす役割を主として担うオイルリングとの2種類のピストンリングがピストンに装着されている。また、上記コンプレッションリングとしては、トップリング及びセカンドリングの2本のピストンリングが採用される場合が多い。
ところで、エンジンの駆動中には、シリンダとピストンとの隙間から気筒内の燃焼ガスの一部がブローバイガスとしてクランクケース内に吹き抜けている。このブローバイガス中には排気ガスと同様にNOxが含まれており、このブローバイガスがクランクケース内に吹き抜けてオイルパン内のエンジンオイルに接触すると、上記NOxによってエンジンオイルが劣化し、その潤滑性能等に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、エンジンオイルが早期に劣化してしまう状況ではエンジンオイルの交換頻度が高くなってしまい、ユーザの負担が大きくなるばかりでなく、廃油を処理せねばならないため地球環境保護の点からも好ましくない。また、劣化したオイルの継続使用は排気エミッションの悪化や燃費の悪化等といった不具合にも繋がる。
更に、クランクケース内のブローバイガスはPCV(Positive Crankcase Ventilation)装置によってエンジンの吸気系に送り込まれるため、上記NOxもエンジンの吸気系に流れ込み、これがシリンダヘッド内部等におけるスラッジの発生原因となって、このスラッジがエンジン内部に堆積してしまうといった不具合を招く可能性もある。
このような不具合を回避する手段として、ブローバイガスの吹き抜け量を抑制することでクランクケース内へ排出されるNOx量を削減したり、PCV装置によるクランクケース内の換気性能を高めることでクランクケース内のNOx濃度を低減することが考えられる。例えば、ピストンリング(特にコンプレッションリング)外周面のシリンダ内面に対する押圧力を高く設定してピストンリングによる気密性を高くし、これによってブローバイガスの吹き抜け量を抑制する構成が挙げられる。また、PCV装置の外気導入通路径を大きく設定してクランクケース内への新気導入量を増大させ、これによってクランクケース内のNOx濃度を低減する構成が挙げられる。
実開昭56−66046号公報 特開2004−308568号公報
しかしながら、上記ピストンリングによる気密性を高くする構成では、ピストンリングとシリンダとの摺動抵抗が大きくなり、所謂フリクションロスの増大を招いてしまってエンジンの高出力化の弊害となってしまう。また、ブローバイガスは、クランクケース内に向けて吹き抜ける際に、シリンダ内面に残存するオイルをオイルパンに向けて押し流す機能を有しているため、このブローバイガスをある程度発生させることはオイル消費量を削減する点から有効であり、この点からもピストンリングによる気密性を高くし過ぎることは好ましくない。
また、クランクケース内への新気導入量を増大させる構成では、この新気導入量の増大に伴ってPCV装置からエンジンの吸気系へ導入される空気量が増大することになる。一般に、このPCV装置から吸気系への空気導入位置はエアフローメータよりも下流側(具体的はスロットルバルブよりも下流側)となっている。また、エンジンの燃料噴射量はエアフローメータにより検出された吸入空気量に基づいて所定の空燃比が得られるように設定される。このため、PCV装置からの空気導入量を増大させた場合、燃料噴射量の演算に使用される吸入空気量に対して実際に気筒内に導入される空気量が大幅に多くなってしまって空燃比がリーン側にずれてしまう可能性がある。その結果、所望のエンジン出力が得られなくなったり、エンジンのアイドリング運転時には回転数の不安定化(ラフアイドル)を招いてしまうことになる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ブローバイガスの吹き抜け量を抑制したり、クランクケース内への新気導入量を増大させたりすることなしに、ブローバイガスのNOx濃度を低減できる内燃機関のピストンユニット及びピストンのリング溝構造を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、ピストンに形成されるリング溝とそれに嵌め込まれるピストンリングとの間で形成されるバッククリアランスの体積とクランクケース内に吹き抜けるブローバイガスの体積との関係について規定し、この両者の比を規定することで、ブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減できるようにしたものである。また、上記バッククリアランスの体積とブローバイガスの体積との比を所定の範囲内に規定することで、ピストンユニットをシリンダに挿入する際の組み付け作業性に悪影響を与えることなしに、ブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減できるようにもしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、外周面にリング溝が形成されたピストンと、このリング溝に嵌め込まれるピストンリングとを備えた内燃機関のピストンユニットを前提とする。このピストンユニットに対し、上記内燃機関の運転時における一気筒の一サイクル中にその気筒から発生するブローバイガスの体積をVblとし、上記リング溝とピストンリングとの間で形成されるバッククリアランス体積をVbaとしたとき、
2≦Vba/Vbl …(1)
となる構成としている。つまり、上記式(1)が成立するようにピストンのリング溝及びピストンリングの形状を設計している。
また、より好ましくは、
3≦Vba/Vbl …(2)
となる構成とする。つまり、上記式(2)が成立するようにピストンのリング溝及びピストンリングの形状を設計している。
更に、上記各解決手段の何れか一つにおいて、
Vba/Vbl≦5 …(3)
となる構成も掲げられる。つまり、以下の式の何れかが成立するようにピストンのリング溝及びピストンリングの形状を設計している。
2≦Vba/Vbl≦5 …(3−1)
3≦Vba/Vbl≦5 …(3−2)
ここで、「内燃機関の運転時における一気筒の一サイクル中にその気筒から発生するブローバイガスの体積Vbl」とは、内燃機関を構成する複数の気筒のうちの特定の気筒(単一の気筒)のピストンが吸入行程の上死点から圧縮、膨張、排気の各行程を経て、この排気行程の上死点(次のサイクルにおける吸入行程の上死点と一致)までの一サイクル中にクランクケース内に吹き抜けてきたブローバイガスの総体積である。特に、このブローバイガスの大部分は膨張行程時に発生する。
また、「リング溝とピストンリングとの間で形成されるバッククリアランス体積Vba」とは、リング溝の底面(リング溝においてピストン外周側に向いている面:ピストンが鉛直方向に往復移動する内燃機関にあってはリング溝内の鉛直面)とピストンリングの内周面(上記リング溝の底面に対向する面)との間で形成される空間の体積(容積)であり、リング溝の周方向の全体に亘って連続形成されたリング形状の空間の体積である。
以下、上記数値限定の理由について述べる。上記「Vba/Vbl」の値を「2」未満に設定した場合、この値が小さくなるほどクランクケース内に吹き抜けてくるブローバイガスのNOx濃度は高くなっていくことが本願発明の発明者らの実験により確認された(図4参照)。これに対し、「Vba/Vbl」の値を「2」以上や「3」以上に設定すると、この値が大きくなってもブローバイガスのNOx濃度は大幅に変化することはなく、特に「3」以上に設定した場合には殆ど変化せず、低い値(図4における点A付近の値)が維持される。これは、燃焼ガスが燃焼室からクランクケースに向けて吹き抜ける際にその一部がバッククリアランス内に一時的に蓄えられる状況となり、この一時的に蓄えられる燃焼ガス量の大小がブローバイガスのNOx濃度を左右していると考えられる。つまり、バッククリアランス内に一時的に蓄えられる燃焼ガスの量が少ない場合には燃焼室内の燃焼ガス(NOx濃度が高い燃焼ガス)の大部分がそのままバッククリアランスを通過しブローバイガスとしてクランクケース内に吹き抜けるのに対し、バッククリアランス内に一時的に蓄えられる燃焼ガスの量が比較的多い場合にはNOx濃度が高い燃焼ガスのクランクケース内への吹き抜け量が少なくなることに起因していると推測される。また、その効果は、バッククリアランス体積がある程度大きくなった時点で減少(特に「3」に達した時点では急速に減少)するものと推測される。従って、このように、内燃機関の運転時における一気筒の一サイクル中にその気筒から発生するブローバイガスの体積「Vbl」と、リング溝とピストンリングとの間で形成されるバッククリアランス体積「Vba」との関係を特定することにより、ブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することが可能になる。
次に、上記「Vba/Vbl」の値を「5」以下に設定した理由について述べる。「Vba/Vbl」の値を大きく設定するほどリング溝の底面とピストンリングの内周面との間隔寸法(以下、バッククリアランス寸法と呼ぶ)は大きくなっていき、ピストンユニットをシリンダ内に挿入する際の組み付け性に影響を及ぼす。この「バッククリアランス寸法」とは、リング溝の底面とピストンリングの内周面との間隔寸法(ピストン半径方向の寸法)がピストン全周囲に亘って均等になっている場合におけるこの間隔寸法である。一般に、この「バッククリアランス寸法」が1.8mmを超えてしまうと、ピストンユニットの挿入作業が著しく困難になると言われており、図4から、「Vba/Vbl」の値としては「5」以下に設定する必要がある。以上の点から、本解決手段では、「Vba/Vbl」の値としては、「2」以上で且つ「5」以下、より好ましくは「3」以上で且つ「5」以下としている。これにより、ピストンユニットの組み付け作業性に悪影響を与えることなしに、ブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することが可能になる。
上記ブローバイガスの体積Vblを求めるための手法として具体的には以下の手段が挙げられる。つまり、内燃機関の運転時における一気筒の一サイクル中にその気筒から発生するブローバイガスの体積Vblを、
Vbl=L・106・Patm・Tg/Ne・2・C・Tb・Pg …(4)
(L:ブローバイガスの流量(クランクケースから排出されるブローバイガスの単位時間当たりの流量)、Patm:大気圧、Tg:燃焼ガスの温度(膨張行程における気筒内圧力最大時の燃焼ガスの温度)、Ne:内燃機関の回転数、C:内燃機関の気筒数、Tb:ブローバイガスの温度(膨張行程の気筒内圧力最大時においてクランクケース内に吹き抜けてきたブローバイガスの温度)、Pg:燃焼ガスの圧力(膨張行程における気筒内最大圧力))
により求めるようにしている。
尚、本発明に係る上記式(1)、(2)、(3−1)または(3−2)が成立するようなピストンのリング溝及びピストンリングの形状は、内燃機関の設計段階で決定されるものであり、上記L、Patm、Tg、Ne、C、Tb、Pgの各値も内燃機関の設計段階での実験において設定または検出されるものである。
ここで、ブローバイガスの流量Lの単位としては例えば「L/min」が挙げられる。内燃機関の設計段階での実験においては、このブローバイガスの流量LはPCV装置によりクランクケースから排出される単位時間当たりのブローバイガス流量として得られる。また、上記式(4)における106は車両の走行条件を100km/hとしてブローバイガス排出状態を対象とするための補正値である(上記ブローバイガスの流量Lの単位ではminを使用しているため、この車両の走行条件(105m/h)による補正値(時速を基準とした補正値)では位を一つ切り上げて106としている。内燃機関の気筒数で除算している理由は、クランクケースからのブローバイガスの総排出量は全気筒(例えば4気筒エンジンの場合には4気筒)からのブローバイガス排出量の総量であるので、これを気筒数で除算することにより単一の気筒からのブローバイガス排出量に換算するためである。また、4ストロークエンジンではピストンの2往復(クランクシャフトの2回転)で個々の気筒の1サイクルが完了するため、更に「2」で除算している。
この式(4)により、上記式(1)、(2)、(3−1)または(3−2)での演算に使用するブローバイガス体積Vblとしては、ブローバイガスの発生量が最も多くなるタイミングである「膨張行程における気筒内圧力最大時」の燃焼ガス圧力に相当する圧力状態のブローバイガス体積に換算したものとして得ることができる。つまり、ブローバイガスの圧力は、クランクケース内への吹き抜け途中で変化していくものであるため、ある特定の圧力状態を基準にしたブローバイガス体積により演算を行わねば正確な値を算出することができない。このため、この式(4)では「膨張行程における気筒内圧力最大時」の燃焼ガス圧力に相当する圧力状態のブローバイガス体積を求め、これを基準にして上記式(1)、(2)、(3−1)または(3−2)での演算が行えるようにしている。これにより、単一の気筒から一サイクル中に発生するブローバイガスの体積を上記式(1)、(2)、(3−1)または(3−2)での演算に使用可能な値として容易且つ正確に算出することが可能になり、上記「Vba/Vbl」の値(ブローバイガスの体積に対するバッククリアランス体積の比)の信頼性を高めることができる。
上述した解決手段の適用形態として具体的には以下のものが挙げられる。先ず、ピストンリングは、コンプレッションリングとしてピストンの頂部側からトップリング及びセカンドリングの2本のリングが設けられており、上記式(1)、(2)、(3−1)または(3−2)を、トップリングとそれが嵌め込まれるトップリング溝との間においてのみ成立する構成としたものである。
つまり、膨張行程時に燃焼ガス圧に晒されるトップリングとそれが嵌め込まれるトップリング溝との間に本発明を適用するものである。このトップリングとトップリング溝との間に本発明を適用したことで、セカンドリングに向けて吹き抜けるブローバイガスのNOx濃度を低減することができる。つまり、トップリングとセカンドリングとの間におけるNOx濃度の低減が図れるため、膨張行程において発生した燃焼ガスのNOxの大部分を気筒内に残存させることができ、この大部分のNOxを内燃機関の排気系で処理(触媒コンバータにより浄化処理)することが可能になる。その結果、オイルパン内のオイルがNOxにより劣化してしまうことを抑制できると共に、吸気系へのNOx導入量を大幅に削減できることになりNOxが原因でスラッジが発生して内燃機関の内部に大量に堆積してしまうといった不具合を効果的に回避することができる。
上記式(1)、(2)、(3−1)または(3−2)を満たすべく加工されるリング溝の具体的な形状としては以下のものが挙げられる。つまり、リング溝の各内面のうちピストン外周側に向かう底面の形状を、内燃機関の膨張行程時においてリング溝の内面に作用する応力の分布を分散するような凹部が形成された形状に設計している。
この特定事項によれば、リング溝の両側(ピストンの軸心に沿う方向の両側)に位置するランド部に対する局部的な応力の集中を回避できる。このため、このランド部の保護(破損等の防止)を図ることができ、ランド部の薄肉化が可能になり、また、ピストンに使用可能な材料の選択の幅も拡大することができる。
この場合における凹部の形状としては以下の2タイプが挙げられる。先ず、リング溝に形成されている凹部の形状を、ピストンの軸心に沿う方向でのリング溝の中心点を通り且つ上記ピストンの軸心に直交する面(仮想面)に対して対称となる形状に設計するものである(図5、図7、図8、図9を参照)。また、リング溝に形成されている凹部の形状を、ピストンの軸心に沿う方向でのリング溝の中心点を通り且つ上記ピストンの軸心に直交する面(仮想面)に対して非対称となる形状に設計するものである(図10及び図11を参照)。
凹部の形状を上記対称となる形状に設計した場合には、リング溝の両側(ピストンの軸心に沿う方向の両側)に位置する各ランド部に対して共に局部的な応力の集中を回避でき、各ランド部の保護が図れる。一方、凹部の形状を上記非対称となる形状に設計した場合には、リング溝の両側に位置する各ランド部のうち凹部深さの小さい側のランド部に対しての局部的な応力の集中を効果的に回避でき、このランド部を特に保護することが可能になる。つまり、各ランド部のうちの一方のランド部の強度を特に高くしたいといった要求に応えることができる構成である。
また、ブローバイガスのNOx濃度を更に低減させるための手段としては以下の構成を付加することも挙げられる。つまり、ピストンの外周面に、ピストン軸心方向に亘って複数のリング溝を形成し、上記複数のリング溝のうちピストンの頂部に最も近い位置に形成されたトップリング溝とピストンの頂部との間のピストン外周面をトップランド部に形成する。そして、このトップランド部におけるピストン軸心に沿う方向の長さ寸法を、膨張行程時における燃焼室内の燃焼ガス温度よりもトップランド部とシリンダ内面との間に流れ込む燃焼ガス温度が低くなるような長さ寸法に設定するものである。
この特定事項によれば、トップランド部とシリンダ内面との間の空間におけるピストン軸心に沿う方向の長さを長く確保しておくことにより、この空間を経てトップリングのバッククリアランスに流れ込む燃焼ガスの温度を低く抑えることができる。このように燃焼ガスの温度を低くすることはNOxの発生量を低減することに繋がり、その結果、トップリングのバッククリアランスに流れ込む燃焼ガス(ブローバイガス)中のNOx濃度を低減できることになる。このように、本解決手段では、ピストンの形状を改良することで燃焼ガス温度を調整する(将来的にブローバイガスとなる可能性の高い燃焼ガスの温度を低く抑える)ことによるNOx濃度の低減効果を図ることができ、仮にこの燃焼ガスがブローバイガスとしてクランクケース内へ吹き抜けたとしてもクランクケース内でのNOx濃度を大幅に低減させることができる。
尚、上述した各解決手段のうち何れか一つに記載の内燃機関のピストンユニットに使用されるピストンのリング溝構造も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、ピストンリングとの間で形成するバッククリアランス体積が上記式(1)、(2)、(3−1)または(3−2)を満たす形状に設計されたピストンのリング溝構造である。
本発明では、ピストンに形成されるリング溝とそれに嵌め込まれるピストンリングとの間で形成されるバッククリアランスの体積とブローバイガス体積との関係について規定し、この両者の比を規定することで、ブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減できるようにしている。また、このバッククリアランスの体積とブローバイガス体積との比を所定の範囲内に規定することで、ピストンユニットをシリンダ内に挿入する際の組み付け作業性に悪影響を与えることなしに、ブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減できるようにしている。
このため、ブローバイガスの吹き抜け量を抑制する構成を採用したり、クランクケース内への新気導入量を増大させる構成を採用したりすることなしに、ブローバイガスのNOx濃度の低減を図ることができる。その結果、NOxによるエンジンオイルの劣化を回避でき、また、NOxが吸気系に流れ込むことが原因となってスラッジが内燃機関内部に堆積してしまうといった状況も抑制できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用エンジンに適用されるピストンユニットに本発明を適用した場合について説明する。
(第1実施形態)
−ピストンユニットの概略構成−
先ず、図1及び図2を用いて、ピストン2とピストンリング3,4,5とで構成されるピストンユニット1の概略構成について説明する。図1はピストンユニット1の一部を破断した側面図であり、図2は図1におけるII−II線に沿った断面図である。
図1に示すように、ピストン2は、その外周面に3つのリング溝(周溝)21,22,23が形成されている。これらリング溝21,22,23のうちピストン2の頭部側から1番目のトップリング溝21にはコンプレッションリングとしてのトップリング3が、2番目のセカンドリング溝22には同じくコンプレッションリングとしてのセカンドリング4が、また、3番目のオイルリング溝23にはオイルリング5がそれぞれ装着されている。
上記コンプレッションリングとしてのトップリング3及びセカンドリング4は、例えば高炭素鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼等により形成されており、周方向の一箇所に合い口31が形成された平面視略C形の平板状部材からなっている。
オイルリング5は、それぞれ周方向の一箇所に合い口が形成された平面視略C形の平板状のアッパーリング51及びロアリング52を備え、これらリング51,52の間にセンターリング53を介装して組み立てられた3ピース構造になっている。尚、このオイルリング5の構成としては3ピース構造に限られるものではない。
これらリング3,4,5は、一旦弾性的に拡径された状態でピストン2の各リング溝21,22,23内に組み入れられ、その弾性復元力によって縮径して、各リング溝21,22,23の内部に嵌め込まれる。この状態では、各リング3,4,5の外周部がピストン2の外周面から外周側に突出した状態になっている。上記ピストン2において頭部とトップリング溝21との間の外周面をトップランド部24と呼び、トップリング溝21とセカンドリング溝22との間の外周面をセカンドランド部25と呼び、セカンドリング溝22とオイルリング溝23との間の外周面をサードランド部26と呼ぶ。つまり、各リング3,4,5の外周部が各ランド部24,25,26よりも外方に突出した状態になっている。これら各リング3,4,5を装着したピストン2をシリンダ6内に挿入する際には、各リング3,4,5を弾性的に縮径させた状態でシリンダ6内に挿入することになる。このため、ピストンユニット1をシリンダ6内に挿入した状態では、各リング3,4,5がその弾性力によってシリンダ6の内壁面に押し付けられた状態となり、トップリング3及びセカンドリング4は燃焼室の気密性を保持する機能を果たし、オイルリング5はシリンダ6の内壁面に残存するオイルを掻き落とす機能を果たすことになる。
また、オイルリング5が装着されるオイルリング溝23の底部には、ピストン2の径方向に延びてオイルリング溝23からピストン2の内部空間に亘って貫通するオイル戻し孔27が円周方向に等間隔で複数個設けられている。このオイル戻し孔27は、円形孔とされるが、例えば楕円形孔、矩形孔等、適宜の形状とすることができる。また、オイル戻し孔27の数や大きさは、例えばピストン2の強度等を考慮して適宜設定される。
尚、図1における7はコネクティングロッドであり、その小端部71がピストンピン72によってピストン2に対する相対的な揺動が可能に連結されている。
−バッククリアランス体積の説明−
次に、本発明の特徴とする構成であるバッククリアランス体積について説明する。特に、ここでは上記トップリング溝21とトップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積について説明する。
図1に示すように上記各リング3,4,5がピストン2のリング溝21,22,23にそれぞれ装着され且つ、ピストンユニット1がシリンダ6内に挿入された状態では、図3(トップリング3の装着位置を拡大して示す断面図)に示すように、トップリング溝21の底面21a(トップリング溝21において外周側に向いている面)とトップリング3の内周面32(上記トップリング溝21の底面21aに対向する内周面)との間には空間C1が形成されている。この空間C1はバッククリアランスと呼ばれ、その容積はバッククリアランス体積(Vba)と呼ばれている。
そして、本実施形態の特徴としては、このバッククリアランス体積(Vba)を以下の条件で設計していることにある。つまり、エンジンの運転時における一気筒の一サイクルにおいて発生するブローバイガスの体積をVblとし、上記トップリング溝21とトップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積をVbaとしたとき、下記の式(3−2)が成立するようにバッククリアランス体積Vbaを設計する。
3≦Vba/Vbl≦5 …(3−2)
また、本発明は、下記の式(3−1)が成立するようにバッククリアランス体積Vbaを設計することも技術的思想の範疇である。
2≦Vba/Vbl≦5 …(3−1)
ここでいう、「ブローバイガスの体積Vbl」とは、エンジンを構成する複数の気筒のうちの特定の気筒(単一の気筒)のピストン2が吸入行程の上死点から圧縮、膨張、排気の各行程を経て、この排気行程の上死点までの一サイクル中にクランクケース内に吹き抜けてきたブローバイガスの体積である。
また、上記ブローバイガスの体積Vblは、下記の式(4)によって求められる。
Vbl=L・106・Patm・Tg/Ne・2・C・Tb・Pg …(4)
(L:ブローバイガスの流量(クランクケースから排出されるブローバイガスの単位時間当たりの流量)、Patm:大気圧、Tg:燃焼ガスの温度(膨張行程における気筒内圧力最大時の燃焼ガスの温度)、Ne:エンジンの回転数、C:エンジンの気筒数、Tb:ブローバイガスの温度(膨張行程の気筒内圧力最大時においてクランクケース内に吹き抜けてきたブローバイガスの温度)、Pg:燃焼ガスの圧力(膨張行程における気筒内最大圧力))
より具体的には、トップリング3の構成は設計変更することなく(従来品と同様に設計しながら)、トップリング溝21の深さ寸法を従来品よりも大きく設計(トップリング溝21の底面21aの外径寸法を従来品よりも小さく設計)して上記式(3−2)や式(3−1)が成立するようにしている。
この設計は、エンジンの設計段階で行われる実験の結果に基づいて行われる。つまり、エンジンを実験装置に搭載して運転させた状態で上記L、Patm、Tg、Ne、C、Tb、Pgの各値からブローバイガスの体積Vblを演算し、その値と、現在実験中のエンジンに採用しているピストンユニット1における上記バッククリアランス体積Vbaとを比較していきながら、上記式(3−2)や式(3−1)が成立するようなピストンユニット1が得られる設計が行われる。尚、この実験において、ブローバイガスの流量Lは、PCV装置によりクランクケースから排出される単位時間当たりのブローバイガス流量として検出する。燃焼ガスの温度Tg及び燃焼ガスの圧力Pgは、気筒内に配置したセンサにより検出される。エンジンの回転数Neはクランク角センサの出力信号に基づいて算出される。ブローバイガスの温度Tbはクランクケース内に配置したセンサにより検出される。
尚、上記式(4)において、ブローバイガスの流量Lの単位としては例えば「L/min」が挙げられる。また、上記式(4)における106は車両の走行条件を100km/hとしてブローバイガス排出状態を対象とするための補正値である(上記ブローバイガスの流量Lの単位ではminを使用しているため、この車両の走行条件(105m/h)による補正値(時速を基準とした補正値)では位を一つ切り上げて106としている。エンジンの気筒数で除算している理由は、クランクケースからのブローバイガスの総排出量は全気筒からのブローバイガス排出量の総量であるので、これを気筒数で除算することにより単一の気筒からのブローバイガス排出量に換算するためである。また、4ストロークエンジンではピストン2の2往復で個々の気筒の1サイクルが完了するため、更に「2」で除算している。
この式(4)により、上記式(3−2)や式(3−1)での演算に使用するブローバイガス体積Vblとしては、ブローバイガスの発生量が最も多くなるタイミングである「膨張行程における気筒内圧力最大時」の燃焼ガスの圧力に相当する圧力状態のブローバイガス体積に換算したものとして得られることになる。つまり、ブローバイガスの圧力は、クランクケース内への吹き抜け途中で変化していくため、ある特定の圧力状態を基準にしたブローバイガス体積により演算を行わねば正確な値を算出することができない。このため、この式(4)では「膨張行程における気筒内圧力最大時」の燃焼ガスの圧力に相当する圧力状態のブローバイガス体積を求め、これを基準にして上記式(3−2)や式(3−1)での演算が行えるようにしている。これにより、単一の気筒から一サイクル中に発生するブローバイガスの体積を上記式(3−2)や式(3−1)での演算に使用可能な値として容易且つ正確に算出することが可能になり、上記「Vba/Vbl」の値の信頼性を高めることができるようになっている。
次に、上記式(3−2)や式(3−1)の如く数値範囲を設定した理由について述べる。図4は「Vba/Vbl」の値を横軸とし、これを変化させた場合におけるブローバイガスのNOx濃度の変化状態、及びトップリング溝21の底面21aとトップリング3の内周面32との間の長さ(図2に示すようにトップリング溝21の底面21aとトップリング3の内周面32との間隔寸法(ピストン半径方向の寸法)がピストン全周囲に亘って均等になっている場合における間隔寸法(図中寸法t)であって、以下、バッククリアランス寸法tと呼ぶ)の変化を示す図である。
先ず、「Vba/Vbl」の値を「3」以上または「2」以上に設定した理由について述べる。図4から明らかなように、「Vba/Vbl」の値が「2」未満である場合には、この値が小さくなるほどブローバイガスのNOx濃度は高くなっていく、これに対し、「Vba/Vbl」の値が「2」以上や「3」以上になると、この値が大きくなってもブローバイガスのNOx濃度は大幅に変化することはなく、特に「3」以上に設定した場合には殆ど変化せず、低い値(図4における点A(例えば130ppm)付近の値)が維持される。このため、「Vba/Vbl」の値としては「2」以上、好ましくは「3」以上に設定することが望ましいことが解る。
次に、「Vba/Vbl」の値を「5」以下に設定した理由について述べる。図4から明らかなように、「Vba/Vbl」の値が大きくなるほど上記バッククリアランス寸法tは大きくなっていく。このバッククリアランス寸法tはピストンユニット1をシリンダ6内に挿入する際の組み付け性に大きな影響を及ぼす。つまり、このバッククリアランス寸法tが大きくなるに従ってトップリング溝21内でのトップリング3の移動可能範囲が拡大していくためその位置規制が難しくなりシリンダ6内への挿入作業が困難になっていく。一般に、このバッククリアランス寸法tが1.8mmを超えてしまうと、この挿入作業が著しく困難になってしまうと言われている。このため、図4から、「Vba/Vbl」の値としては「5」以下に設定する必要があることが解る。
以上の点を考慮し、本発明では、「Vba/Vbl」の値としては、「2」以上で且つ「5」以下、好ましくは「3」以上で且つ「5」以下としている。これにより、ピストンユニット1の組み付け作業性に悪影響を与えることなしに、ブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することが可能になる。その結果、ピストンリング3,4による気密性を高くし過ぎることなく、且つクランクケース内への新気導入量を増大させることなしに、ブローバイガスのNOx濃度の低減を図ることができ、NOxによるエンジンオイルが劣化を回避でき、また、NOxがエンジンの吸気系に流れ込んでスラッジがエンジン内部に堆積してしまうといった状況も抑制できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、トップリング溝21を断面矩形状としていた。本実施形態は、このトップリング溝21の断面形状が第1実施形態のものと異なっている。そして、このトップリング溝21を以下に述べるような断面形状に変更することでトップランド部24やセカンドランド部25に対する局部的な応力の集中を回避できるようにした点に特徴がある。以下、本実施形態における複数のタイプについて説明する。
−第1タイプ−
図5(a)は本実施形態の第1タイプにおけるトップリング3の装着位置を拡大して示す断面図である。また、図5(b)は従来例におけるトップリングaの装着位置を拡大して示す断面図である。
図5(a)に示すように、本タイプのトップリング溝21の断面形状としては、上記トップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積として上記式(3−1)または式(3−2)が成立するように設計しながらも、トップリング溝21の底面21a(トップリング溝21において外周側に向いている面)を断面円弧形状の凹部に形成している。この凹部の断面形状として詳しくは、図6に示すように、トップリング溝21の下面21bと底面21a(上記凹部を構成するための湾曲面)との境界点における接線(上記凹部の円弧に対する接線)L1と、上記下面21bの延長線(水平方向に延びる直線)L2との成す角度αが10°以上であって且つ85°以下(鉛直方向に対して5°以上)の範囲で設定されるようにしている。図6に示すものでは上記角度αは約40°に設定されている。また、この図6及び図5(a)における仮想線は、従来例におけるトップリング溝bの底面cの位置を示している。
このようにトップリング溝21の断面形状を設定することにより、上述した第1実施形態の場合と同様にピストンユニット1の組み付け作業性に悪影響を与えることなしにブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することを可能にしながらも、以下の効果を奏することが可能になる。
図5(b)に示す従来のものでは、膨張行程時において燃焼ガスの圧力がトップリングaを介してトップリング溝bの下面dに作用することになり、トップリング溝bの底面cと下面dとの境界点付近に局部的に応力が集中する(図5(b)における応力分布図を参照)。このため、セカンドランド部eに高い強度が要求されることになって、セカンドランド部eの肉厚を大きく設計したり、ピストンの構成材料として高い強度が得られるものを適用する必要が生じる。
これに対し、本実施形態では、図5(a)の応力分布図に示すように、トップリング溝21の底面21aと下面21bとの境界点付近に局部的に応力が集中することを回避できる。このため、セカンドランド部25の保護(破損等の防止)を図ることができ、セカンドランド部25の薄肉化が可能になり、また、ピストン2に使用可能な材料の選択の幅も広げることが可能になる。また、本実施形態の構成では、トップリング溝21の底面21aと上面21cとの境界点付近に局部的に応力が集中することも回避できるため、トップランド部24の保護を図ることもできる。
−第2タイプ−
図7は本実施形態の第2タイプにおけるトップリング3の装着位置を拡大して示す断面図である。この図7に示すように、本タイプのトップリング溝21の断面形状としては、上記トップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積として上記式(3−1)または式(3−2)が成立するように設計しながらも、トップリング溝21の底面21aを断面略三角形状の凹部に形成している。また、この図7における仮想線は、従来例におけるトップリング溝の底面の位置を示している。
本タイプの如くトップリング溝21の形状を設定することによっても、上述した第1タイプの場合と同様に、ピストンユニット1の組み付け作業性に悪影響を与えることなしにブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することを可能にしながらも、セカンドランド部25及びトップランド部24の保護を図ることができる。
−第3タイプ−
図8は本実施形態の第3タイプにおけるトップリング3の装着位置を拡大して示す断面図である。この図8に示すように、本タイプのトップリング溝21の断面形状としては、上記トップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積として上記式(3−1)または式(3−2)が成立するように設計しながらも、トップリング溝21の底面21aを断面略台形状の凹部に形成している。また、この図8における仮想線は、従来例におけるトップリング溝の底面の位置を示している。
本タイプの如くトップリング溝21の形状を設定することによっても、上述した各タイプの場合と同様に、ピストンユニット1の組み付け作業性に悪影響を与えることなしにブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することを可能にしながらも、セカンドランド部25及びトップランド部24の保護を図ることができる。
−第4タイプ−
図9は本実施形態の第4タイプにおけるトップリング3の装着位置を拡大して示す断面図である。本タイプのトップリング溝21の断面形状としては、上記トップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積として上記式(3−1)または式(3−2)が成立するように設計しながらも、トップリング溝21の底面21aを段部21d,21dを介して更に矩形状に凹陥させた形状にしている。また、この図9における仮想線は、従来例におけるトップリング溝の底面の位置を示している。
本タイプにおいても、ピストンユニット1の組み付け作業性に悪影響を与えることなしにブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することを可能にしながらも、セカンドランド部25及びトップランド部24の保護を図ることができる。
−第5タイプ−
図10は本実施形態の第5タイプにおけるトップリング3の装着位置を拡大して示す断面図である。本タイプのトップリング溝21の断面形状としては、上記トップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積として上記式(3−1)または式(3−2)が成立するように設計しながらも、トップリング溝21の底面21aをピストン2の頭部に向かってピストン軸心側に傾斜する傾斜面で形成している。これにより、従来のバッククリアランス(図中の仮想線参照)に対して断面略三角形状の空間を増大させた空間としてバッククリアランスC1が形成されるようになっている。
本タイプの如くトップリング溝21の形状を設定した場合には、ピストンユニット1の組み付け作業性に悪影響を与えることなしにブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することを可能にしながらも、特に、セカンドランド部25の保護を図ることができる。
−第6タイプ−
図11は本実施形態の第6タイプにおけるトップリング3の装着位置を拡大して示す断面図である。本タイプのトップリング溝21の断面形状としては、上記トップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積として上記式(3−1)または式(3−2)が成立するように設計しながらも、トップリング溝21の底面21aをピストン2の下部に向かってピストン軸心側に傾斜する傾斜面で形成している。これにより、従来のバッククリアランス(図中の仮想線参照)に対して断面略三角形状の空間を増大させた空間としてバッククリアランスC1が形成されるようになっている。
本タイプの如くトップリング溝21の形状を設定した場合には、ピストンユニット1の組み付け作業性に悪影響を与えることなしにブローバイガスのNOx濃度を大幅に低減することを可能にしながらも、特に、トップランド部24の保護を図ることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は上述した第2実施形態の第1タイプのもの(図5に示すもの)に対して更に改良を加えたものである。以下、具体的に説明する。
図12は本実施形態におけるトップリング3の装着位置を拡大して示す断面図である。この図12に示すように、本タイプのトップリング溝21の断面形状としては、上記トップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積として上記式(3−1)または式(3−2)が成立するように設計しながらも、トップリング溝21の底面21aを断面円弧形状の凹部に形成している。この点は上述した第2実施形態の第1タイプのものと同様である。
そして、本実施形態の特徴として、トップランド部24の高さ寸法(図中の寸法t1)を従来の高さ寸法(図12の仮想線Bを参照)に対して長く設定している。
このようにトップランド部24の高さ寸法を長く設定した場合、トップランド部24とシリンダ6の内面との間の空間Sにおけるピストン軸心に沿う方向の長さを長く確保しておくことができる。これにより、この空間Sを経てトップリング3のバッククリアランスC1に流れ込む燃焼ガスの温度を低く抑えることが可能になる。このように燃焼ガスの温度を低くすることはNOxの発生量を低減することに繋がり、その結果、トップリング3のバッククリアランスC1に流れ込む燃焼ガスのNOx濃度を低減できることになって、仮にこの燃焼ガスがブローバイガスとしてクランクケース内へ吹き抜けたとしてもクランクケース内でのNOx濃度を大幅に低減させることが可能になる。この効果を発揮するためのトップランド部24の高さ寸法として具体的には、従来のトップランド部の高さ寸法に対して40%以上長くすることが挙げられる。
尚、本実施形態では、バッククリアランスC1の体積が上記式(3−1)または式(3−2)が成立するように設計されたものに対してトップランド部24の高さ寸法を長く設定した場合について説明した。上記式(3−1)や式(3−2)が成立しているか否かに関わりなくトップランド部24の高さ寸法を長く設定すること自体でトップリング3のバッククリアランスC1に流れ込む燃焼ガスのNOx濃度を低減でき、この燃焼ガスがブローバイガスとしてクランクケース内へ吹き抜けた場合のクランクケース内でのNOx濃度を大幅に低減させる効果を奏することができる。このため、このトップランド部24の高さ寸法を長く設定する構成のみを単独で採用することによってもクランクケース内でのNOx濃度の低減が可能になる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。上述した各実施形態ではトップリング溝21の断面形状がその周方向の全体に亘って同一形状のものであった。これに対し、本実施形態ではトップリング溝21の断面形状として、部分的に大きく凹陥させることにより上記式(3−1)または式(3−2)が成立するようにしたものである。具体的に以下に説明する。
図13は本実施形態における図2に相当する図である。この図に示すように、本実施形態におけるトップリング溝21は、周方向の複数箇所に部分的に大きく凹陥された拡大凹部21e,21e,…が形成されており、これによってバッククリアランスC1の体積が大きく得られるようにしている。このような拡大凹部21eの加工方法としては、従来と同様の加工方法によって周方向の全体に亘って矩形状の凹部としてのトップリング溝21を形成した後に、トップリング溝21の底面21aの一部を切削加工によって拡大凹部21e,21e,…することが挙げられる。
−その他の実施形態−
以上説明した各実施形態では、自動車用エンジンに適用されるピストンユニット1に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、その他の内燃機関(船舶用や発電機用等)のピストンユニットに適用することも可能である。
また、上述した各実施形態では、トップリング溝21とトップリング3との間で形成されるバッククリアランスC1の体積について上記式(3−1)または式(3−2)を成立する構成とした場合について説明した。本発明はこれに限らず、セカンドリング溝22とセカンドリング4との間で形成されるバッククリアランスC2(図1を参照)の体積について上記式(3−1)または式(3−2)が成立する構成としてもよいし、トップリング3のバッククリアランスC1の体積及びセカンドリング4のバッククリアランスC1の体積の両方について上記式(3−1)または式(3−2)を成立する構成としてもよい。
また、上述した各実施形態では、トップリング溝21の底面21aを加工することによりバッククリアランスC1の体積を拡大させて上記式(3−1)または式(3−2)が成立する構成としていた。本発明はこれに限らず、トップリング溝21の下面21bや上面21cを加工することによりバッククリアランスC1の体積を拡大させて上記式(3−1)または式(3−2)が成立する構成を採用するようにしてもよい。例えば、トップリング溝21の下面21bや上面21cの周方向に亘って間欠的に凹部を形成することによってバッククリアランスC1の体積を拡大させる構成などである。また、トップリング3の内周面32の周方向に亘って間欠的に凹部を形成することによってバッククリアランスC1の体積を拡大させる構成を採用してもよい。
ピストンユニットの一部を破断した側面図である。 図1におけるII−II線に沿った断面図である。 トップリングの装着位置を拡大して示す断面図である。 「Vba/Vbl」の値を変化させた場合におけるブローバイガスのNOx濃度の変化及びバッククリアランス寸法の変化を示す図である。 図5(a)は第2実施形態の第1タイプにおけるトップリングの装着位置を拡大して示す断面図、図5(b)は従来例におけるトップリングの装着位置を拡大して示す断面図である。 第2実施形態の第1タイプにおけるトップリング溝の底面の形状を説明するための図である。 第2実施形態の第2タイプにおけるトップリングの装着位置を拡大して示す断面図である。 第2実施形態の第3タイプにおけるトップリングの装着位置を拡大して示す断面図である。 第2実施形態の第4タイプにおけるトップリングの装着位置を拡大して示す断面図である。 第2実施形態の第5タイプにおけるトップリングの装着位置を拡大して示す断面図である。 第2実施形態の第6タイプにおけるトップリングの装着位置を拡大して示す断面図である。 第3実施形態におけるトップリングの装着位置を拡大して示す断面図である。 第4実施形態における図2に相当する図である。
符号の説明
1 ピストンユニット
2 ピストン
21 トップリング溝
21a 底面
22 セカンドリング溝
24 トップランド部
3 トップリング
4 セカンドリング
6 シリンダ
C1 バッククリアランス
Vbl ブローバイガス体積
Vba バッククリアランス体積

Claims (10)

  1. 外周面にリング溝が形成されたピストンと、このリング溝に嵌め込まれるピストンリングとを備えた内燃機関のピストンユニットにおいて、
    上記内燃機関の運転時における一気筒の一サイクル中にその気筒から発生するブローバイガスの体積をVblとし、上記リング溝とピストンリングとの間で形成されるバッククリアランス体積をVbaとしたとき、
    2≦Vba/Vbl …(1)
    となるよう構成されていることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  2. 外周面にリング溝が形成されたピストンと、このリング溝に嵌め込まれるピストンリングとを備えた内燃機関のピストンユニットにおいて、
    上記内燃機関の運転時における一気筒の一サイクル中にその気筒から発生するブローバイガスの体積をVblとし、上記リング溝とピストンリングとの間で形成されるバッククリアランス体積をVbaとしたとき、
    3≦Vba/Vbl …(2)
    となるよう構成されていることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  3. 上記請求項1または2記載の内燃機関のピストンユニットにおいて、
    Vba/Vbl≦5 …(3)
    となるよう構成されていることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  4. 上記請求項1、2または3記載の内燃機関のピストンユニットにおいて、
    内燃機関の運転時における一気筒の一サイクル中にその気筒から発生するブローバイガスの体積Vblは、
    Vbl=L・106・Patm・Tg/Ne・2・C・Tb・Pg …(4)
    (L:ブローバイガスの流量(クランクケースから排出されるブローバイガスの単位時間当たりの流量)、Patm:大気圧、Tg:燃焼ガスの温度(膨張行程における気筒内圧力最大時の燃焼ガスの温度)、Ne:内燃機関の回転数、C:内燃機関の気筒数、Tb:ブローバイガスの温度(膨張行程の気筒内圧力最大時においてクランクケース内に吹き抜けてきたブローバイガスの温度)、Pg:燃焼ガスの圧力(膨張行程における気筒内最大圧力))
    により求められるものであることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  5. 上記請求項1〜4のうち何れか一つに記載の内燃機関のピストンユニットにおいて、
    ピストンリングは、コンプレッションリングとしてピストンの頂部側からトップリング及びセカンドリングの2本のリングが設けられており、上記式は、トップリングとそれが嵌め込まれるトップリング溝との間においてのみ成立する構成とされていることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  6. 上記請求項1〜5のうち何れか一つに記載の内燃機関のピストンユニットにおいて、
    リング溝の各内面のうちピストン外周側に向かう底面の形状は、内燃機関の膨張行程時においてリング溝の内面に作用する応力の分布を分散するような凹部が形成された形状に設計されていることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  7. 上記請求項6記載の内燃機関のピストンユニットにおいて、
    リング溝に形成されている凹部の形状は、ピストンの軸心に沿う方向でのリング溝の中心点を通り且つ上記ピストンの軸心に直交する面に対して対称となる形状に設計されていることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  8. 上記請求項6記載の内燃機関のピストンユニットにおいて、
    リング溝に形成されている凹部の形状は、ピストンの軸心に沿う方向でのリング溝の中心点を通り且つ上記ピストンの軸心に直交する面に対して非対称となる形状に設計されていることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  9. 上記請求項1〜8のうち何れか一つに記載の内燃機関のピストンユニットにおいて、
    ピストンの外周面にはピストン軸心方向に亘って複数のリング溝が形成されており、
    上記複数のリング溝のうちピストンの頂部に最も近い位置に形成されたトップリング溝とピストンの頂部との間のピストン外周面はトップランド部に形成されており、このトップランド部におけるピストン軸心に沿う方向の長さ寸法は、膨張行程時における燃焼室内の燃焼ガス温度よりもトップランド部とシリンダ内面との間に流れ込む燃焼ガス温度が低くなるような長さ寸法に設定されていることを特徴とする内燃機関のピストンユニット。
  10. 上記請求項1〜9のうち何れか一つに記載の内燃機関のピストンユニットに使用されるピストンのリング溝構造であって、ピストンリングとの間で形成するバッククリアランス体積が上記式を満たす形状に設計されていることを特徴とするピストンのリング溝構造。
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