JP2007296596A - 切削加工装置および切削加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】3次元的に広がりをもつ薄肉のワークに高精度かつ効率的に溝加工をおこなうことのできる切削加工装置と切削加工方法を提供する。
【解決手段】切削加工装置10は、X軸ガイド1に沿って移動する移動部2と、YZ面内を回動する回動部3と、スピンドル61とエンドミル62とからなる切削部6と、該切削部6を進退移動させるリニアガイド5、ソレノイド7、進退プレート42と、ワークの形状や加工パターンを記憶する記憶手段と、ワークを載置してY軸方向に移動させるテーブル8と、移動部2の移動制御と、回動部3の回動制御と、切削部6の進退制御と、テーブル8の移動制御のいずれか1つまたは複数の制御をおこない、切削部6の回転制御をおこなう制御手段と、から構成されている。この制御手段により、ワークWの加工面に対してエンドミル62が常に垂直に姿勢制御され、エンドミル62の移動量が制御される。
【選択図】図4

Description

本発明は、切削加工装置と切削加工方法に係り、特に、3次元的に広がりをもつ薄肉のワークに高精度かつ効率的に溝加工をおこなうことのできる切削加工装置と切削加工方法に関するものである。
ワークに溝加工を施す切削加工装置は、NC加工機や多関節ロボットアームの先端に切削具を装着してなる装置など多岐に亘る。ワークの形状に応じて高精度な溝加工を実現する上では、ロボットアームなどのマニピュレータに比して汎用NC加工機が加工精度に優れている。かかるNC加工機を適用して溝加工をおこなう従来技術として、例えば特許文献1,2を挙げることができる。
汎用NC加工機を適用するメリットは上記する高い加工精度を享受できる点であるが、そのデメリットとして、ワークや切削具の位置決めに時間を要すること、高い切削精度を担保するために高トルクモータを搭載した高剛性のガイドレールを稼動させることから、加工時間を要することなどが挙げられる。その一方で、切削工具の先端位置の高精度な位置決めが困難であり、例えば、車両のインストルメントパネルの裏側に穿設されるエアバック用の開裂溝の加工など、薄肉部材の高精度で効率的な溝加工はさらに困難である。発明者等の検証によれば、汎用NC加工機にて上記開裂溝の加工をおこなった場合、加工機のエンドミルの主軸が開裂溝の溝深さ方向に上下動する際に時間を要し、トータルの加工時間が長時間に及ぶことが特定されている。
そこで、発明者等は上記の問題を解決すべく鋭意研究を重ね、エアバック用の開裂溝の加工など、薄肉部材の溝加工を高精度かつ効率的におこなうことのできる装置と方法にかかる技術の発案に至り、特許文献3にその開示がある。
かかる装置は、エアバックティアラインを構成する表皮を受ける受台と、直交3軸方向に移動可能で、少なくとも1軸上に所定距離往復可能な切削工具を有する装置である。
特開平10−80817号公報 特開2004−338030号公報 特開2005−96705号公報
上記する特許文献3に開示の装置によれば、効率的かつ高精度に薄肉部材の溝加工をおこなうことが可能となる。しかし、この装置は、平面状のワークを主に対象としたものであり、例えば3次元的に広がりをもつ任意形状のワークに対しては、任意のワーク加工面に対してエンドミルを垂直姿勢に制御することができず、結果として高精度な溝加工を実現することは困難である。なお、ここでいう高精度な溝加工とは、任意のワーク面に対して、臨機に該ワーク面に垂直方向に所望形状および深度の溝を加工することである。そこで、かかる任意形状の特に薄肉のワークに対し、効率的かつ高精度な溝加工をおこなうことのできる装置の開発が切望されていた。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、3次元的に広がりをもつ薄肉のワークに高精度かつ効率的に溝加工をおこなうことのできる切削加工装置および切削加工方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による切削加工装置は、3次元的に広がりをもつワークに溝加工をおこなう切削加工装置であって、前記切削加工装置は、X軸方向に延設するX軸ガイドに沿って移動する第1の移動手段と、X軸に直交するY軸とZ軸とからなるYZ面内で該第1の移動手段を中心に回動する回動手段と、スピンドルと該スピンドルに装着されたエンドミルとからなる切削手段と、該切削手段を前記回動手段に対して相対移動させる第2の移動手段と、少なくともワークの形状と加工パターンを記憶する記憶手段と、ワークを載置するとともに、Y軸方向に移動自在なテーブルと、前記記憶手段における加工パターンに基づいて、第1の移動手段の移動制御と、回動手段の回動制御と、第2の移動手段の進退制御と、テーブルの移動制御のいずれか1つまたは複数の制御をおこない、かつ、切削手段の回転制御をおこなう制御手段と、からなり、制御手段によって、ワークの加工面に対してエンドミルが垂直に姿勢制御され、かつ、前記第2の移動手段の移動量が制御されることを特徴とする。
本発明の切削加工装置は、硬質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタラートなどの樹脂成形品などに溝加工をおこなうのに好適であり、記述するインストルメントパネルの裏側に穿設されるエアバック用の開裂溝(ティアラインを構成する間欠凹溝)の加工も含まれるものである。
この切削加工装置は、3次元的に広がりのあるワーク、すなわち、2以上の方向に広がる面材や、平面と曲面が組み合わされてなる面材などに対し、エンドミルを常に溝加工面に垂直姿勢に制御しながら所望の深度および平面形状の溝を穿孔するものである。
本発明の切削加工装置では、X軸方向に移動する第1の移動手段に回動手段がY−Z面内で回動自在に取り付けられ、この回動手段に別途の移動手段(第2の移動手段)がワークに対して進退移動自在に取り付けられ、この第2の移動手段にスピンドルとエンドミルとからなる切削手段が回転可能に取り付けられている。なお、エンドミルの刃先形状やその径は任意に設定できるが、例えば、2枚刃のスクエア形状であって、すくい角を30度程度とでき、刃先の直径を0.5〜1.5mmの範囲で設定することができる。また、スピンドルの回転速度は、ワークの材質等によって適宜に調整できる。
一方、被加工物であるワークは、例えば真空吸引等によってワークを保持しながら、Y軸方向に移動自在なテーブル上に載置される。このテーブルのワーク載置面はワークの形状に適合した面形状となっているのが好ましい。
ここで、切削加工装置を構成するエンドミルの回転速度や各移動手段の移動量および移動速度、回動手段の回動量(回動角)などを制御する制御手段と、ワークの溝加工パターンが入力ないしはティーチングされた情報を記憶する記憶手段とを備えた制御機構に基づいて、装置を構成する各駆動部が作動するようになっている。この入力情報にはワークの形状(3次元情報)も含まれており、同時に溝加工位置とその形状、深度も含まれている。これらの情報に基づいて、エンドミルの姿勢が常にワークの加工面に対して垂直に姿勢制御されながら、所定の溝加工が実施されるようになっている。
本発明の切削加工装置によれば、3次元的に広がりのある任意形状のワークに対して、常に溝の壁面が垂直で、かつ溝の底面がワーク面に並行な凹溝を高精度に加工することができる。したがって、例えばエアバック用のティアラインの開裂溝のように、加工対象が薄肉ワークであり、その溝深度(または残厚)管理が厳しい加工に際しても効率的かつ高精度な溝加工をおこなうことが可能となる。
また、本発明による切削加工装置の他の実施の形態は、3次元的に広がりをもつワークに溝加工をおこなう切削加工装置であって、前記切削加工装置は、Y軸方向に延設するY軸ガイドと、該Y軸ガイドに移動自在に装着されたX軸ガイドと、該X軸ガイドに沿って移動する第1の移動手段と、X軸に直交するY軸とZ軸とからなるYZ面内で該第1の移動手段を中心に回動する回動手段と、スピンドルと該スピンドルに装着されたエンドミルとからなる切削手段と、該切削手段を前記回動手段に対して相対移動させる第2の移動手段と、少なくともワークの形状と加工パターンを記憶する記憶手段と、ワークを載置するテーブルと、前記記憶手段における加工パターンに基づいて、X軸ガイドの移動制御と、第1の移動手段の移動制御と、回動手段の回動制御と、第2の移動手段の進退制御のいずれか1つまたは複数の制御をおこない、かつ、切削手段の回転制御をおこなう制御手段と、からなり、制御手段によって、ワークの加工面に対してエンドミルが垂直に姿勢制御され、かつ、前記第2の移動手段の移動量が制御されることを特徴とする。
本発明の切削加工装置は、スピンドルおよびエンドミルを3次元的に移動および回動させる装置であり、ワークを載置するテーブルの移動制御を必ずしも必要としない実施の形態である。具体的には、X軸ガイドがY軸方向に延設するY軸ガイドに沿って移動するとともに、このX軸ガイドに沿って第1の移動手段がX軸方向に移動し、この第1の移動手段にYZ面内を回動自在な回動手段が取り付けられ、この回動手段に第2の移動手段がワークに対して進退移動自在に取り付けられ、この第2の移動手段に切削手段が回転可能に取り付けられている。
本発明の切削加工装置によれば、テーブル側を移動させることなく、切削手段のみをワークの加工面に対して随時、移動ないしは回動させて溝加工をおこなうことが可能となり、装置の制御の簡素化を図ることが可能となる。
また、本発明による切削加工装置の他の実施の形態は、3次元的に広がりをもつワークに溝加工をおこなう切削加工装置であって、前記切削加工装置は、X軸方向に延設するX軸ガイドに沿って移動する第1の移動手段と、スピンドルと該スピンドルに装着されたエンドミルとからなる切削手段と、該切削手段を前記回動手段に対して相対移動させる第2の移動手段と、少なくともワークの形状と加工パターンを記憶する記憶手段と、ワークを載置するとともに、Y軸方向に移動自在であって、かつ、X軸に直交するY軸とZ軸とからなるYZ面内で回動するテーブルと、前記記憶手段における加工パターンに基づいて、第1の移動手段の移動制御と、第2の移動手段の進退制御と、テーブルの移動制御および/または回動制御のいずれか1つまたは複数の制御をおこない、かつ、切削手段の回転制御をおこなう制御手段と、からなり、制御手段によって、ワークの加工面に対してエンドミルが垂直に姿勢制御され、かつ、前記第2の移動手段の移動量が制御されることを特徴とする。
本発明の切削加工装置は、ワークを載置するテーブルが一方向(Y軸方向)に移動するとともに、エンドミルがワークの加工面に垂直姿勢となるようにテーブル自体が回動するように制御された実施の形態である。
また、本発明による切削加工装置の好ましい実施の形態において、前記第2の移動手段は、リニアガイドと、該リニアガイドを駆動させるソレノイド、シリンダユニット機構、サーボモータのいずれか1種と、からなることを特徴とする。
第2の移動手段は、切削手段をワークの加工面に垂直に姿勢制御した後に、該切削手段を所定の深度だけワークの厚さ方向に移動させる手段である。ワークが薄肉部材の場合には、加工される溝の深度も高精度に管理される必要があることから、第2の移動手段には高精度な移動(進退)制御が要求される。さらには、既述する従来の汎用NC加工機の問題点である、切削手段の進退移動の際に時間がかかるといった問題を解決することが溝加工の全所要時間の大幅な短縮に繋がる。
そこで、本発明の切削加工装置では、第2の移動手段を、リニアガイドと、該リニアガイドを駆動させるソレノイドやシリンダユニット機構、サーボモータのいずれか1種とから構成することにより、移動量制御(停止位置の制御も含む)の精度と移動の際の時間短縮の双方を満足するようにしたものである。
また、本発明による切削加工装置の好ましい実施の形態において、前記スピンドルが、45000〜60000rpmの範囲で回転制御されることを特徴とする。
発明者等によるエンドミルの刃先直径とスピンドル(によるエンドミル)の回転速度に関する実験によれば、使用する刃先の直径が0.5〜1.5mmにおいて、スピンドルの回転数が45000回転を下回る低速の場合(例えば20000rpm)や60000回転を上回る高速の場合(例えば80000rpm)において、刃先の折れやワーク残厚の破れ、バリの発生等の問題が生じることが実証されている。なお、エンドミルの回転数は、上記範囲の中でも60000rpmに制御するのがより好ましい結果となることが実証されている。
また、本発明による切削加工方法は、3次元的に広がりをもつワークをテーブル上に載置する工程と、X軸方向およびY軸方向およびZ軸方向に移動する移動手段と、所定の面内で回動する回動手段とによって姿勢制御されるスピンドルに装着されたエンドミルにより、予め設定されている溝加工パターンに従って凹溝を穿設する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の切削加工方法は、上記する切削加工装置の中で、切削手段の3次元的な移動制御と回動制御により、ワークの加工面に対してエンドミルの姿勢を制御する切削加工装置を使用してなる切削加工方法である。本発明の切削加工方法も、インストルメントパネルのエアバック用の開裂溝等、薄肉の微細溝の加工に好適である。
さらに、本発明による切削加工方法は、3次元的に広がりをもつワークをY軸方向に移動するとともに該Y軸に直交するX軸方向に対して直交するYZ面内で回動するテーブル上に載置する工程と、X軸方向に移動する移動手段に対してワークの加工面に直交する方向に進退移動するスピンドルに装着されたエンドミルにより、予め設定されている溝加工パターンに従って凹溝を穿設する工程と、からなることを特徴とする。
本発明の切削加工方法は、上記する切削加工装置の中で、テーブルが一方向(Y軸方向)に移動するとともに、このY軸に直交するX軸に対して直交するYZ面内で回動するように構成されており、切削手段がX軸方向へ移動制御されるとともに回転制御されてなる切削加工装置を使用した切削加工方法である。
本発明の切削加工方法によっても、薄肉ワークに高精度かつ効率的に微細溝加工をおこなうことができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の切削加工装置および切削加工方法によれば、3次元的に広がりのあるワークの任意の加工面に対し、常にエンドミルを垂直姿勢に姿勢制御しながら高精度で効率的な溝加工をおこなうことができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、車両の助手席側のインストルメントパネルを示した模式図を、図2は、図1のII部の拡大図であって、インストルメントパネルの裏面を示した模式図である。図3は、本発明の切削加工装置の一実施の形態の正面図を、図4は、図3の切削加工装置の側面図を、図5は、切削加工装置の制御機構を示したブロック図をそれぞれ示している。図6,7はそれぞれ、本発明の切削加工装置の他の実施の形態の側面図を示している。なお、図示する実施の形態では、ワークとしてインストルメントパネルを取り上げているが、3次元的に広がりがある他のワーク(2次元方向に広がりのある面材を含むことは勿論のことである)も加工対象としていることは勿論のことである。
図1に示すように、車両のダッシュボード上面の表皮はインストルメントパネルWによって構成されており、助手席側のエアバックはパネルWの下に配設されている。パネルWのエアバック配設部には、エアバックティアラインに沿ってパネルが開裂し、該エアバックがパネルWから突出できるようになっている。
図2は、インストルメントパネルWの裏面を示した図である。ティアラインは、パネルWの裏面W1において複数の間欠凹溝W2によって構成されている。ティアラインの全体形状の図示は省略するが、例えば、横長の多角形状等に形成される。このパネルWの厚みと凹溝W2の切削深度は、通常使用時のパネルの強度確保とエアバック使用時のスムーズなパネルの開裂およびエアバックの膨張確保の観点から、例えば、板厚3mmのパネルWに対し、深さ2.5mm程度の凹溝W2を穿設し、パネルWの残厚を0.5mm程度とすることができる。
上記するインストルメントパネルWをワークとして、その裏面にティアラインを構成する間欠凹溝を切削加工する切削加工装置について以下に詳述する。
図3,4は、切削加工装置の一実施の形態の正面図および側面図を示したものである。この切削加工装置10は、X軸方向に延設するX軸ガイド1と、このX軸ガイド1に沿って移動可能な移動部2、この移動部2に対してYZ面内で回動する回動部3、回動部3に固着された加工ブロック41に対して進退移動する進退プレート42、この進退プレート42に取り付けられた切削部6、さらにはワークWを載置するテーブル8とから大略構成されている。なお、X軸ガイド1を支持する支持架構等の図示は省略している。また、切削加工装置10を構成する各部の移動ないしは回動、回転を制御する制御機構は不図示のPC内に格納されている。
X軸ガイド1に沿って移動する移動部2は例えば送りねじ機構のナット部材からなり、X軸ガイド1がねじ軸からなり、サーボモータにてナット部材がねじ軸に沿って移動する形態や、ラックピニオン機構とサーボモータからなる形態など、移動部の直線運動を可能とする適宜の機構を適用することができる。
この移動部2の一端に、回動部3がYZ面内を回転軸31を中心に回動可能(P1方向)に軸支されている。この回動部3の回動は、不図示のサーボモータ等のアクチュエータによっておこなわれる。
回動部3の一側面に加工ブロック41が固着されており、この加工ブロック41の一側面に進退プレート42がリニアガイド5を介して取り付けられている。加工ブロック41には、さらにソレノイド7が取り付けられており、このソレノイド7により、進退プレート42の進退移動がおこなわれる(図4のZ1方向)。このソレノイド7は、外部信号によって制御されており、ソレノイド7を構成する電磁石を作動させることにより、進退プレート42の移動量が制御される。切削部6を進退移動させる機構をリニアガイドとソレノイドから構成することにより、迅速かつ高精度な切削部の移動制御を実現することができる。なお、駆動源は、ソレノイドのほかに、サーボモータやシリンダユニット機構(空気圧、油圧)などのアクチュエータを適用することもできる。なお、図示を省略するが、例えば、加工ブロック等に光センサ等を装着しておき、凹溝の深度や残厚を常時計測しながら、計測結果を適宜フィードバックして凹溝の加工精度を確保することもできる。
進退プレート42には切削部6を構成するスピンドル61が回転可能に軸支されており、その先端に切削工具であるエンドミル62が装着されている。このエンドミル62は、例えば0.2mm〜3.0mmの範囲の直径のものを使用することができる。
一方、ワークWを載置するテーブル8は、台座81、ワークWの形状に適合した載置面82’を備えた載置台82、載置台82を台座81上でY軸方向(図4のY1方向)に移動させる移動部83から構成されている。
載置台82の内部には、載置面82’に連通する不図示の吸引孔が開設されており、この吸引孔を介してワークWを真空吸引することにより、加工時のワークの不測のずれ等を防止することができる。
図4に示すように、ワークWは、3次元的に広がりのある形状、すなわち、異なる2以上の方向に広がる面から構成された形状となっている。本発明の切削加工装置10は、各加工面に対してエンドミル62が常に垂直姿勢となるようにエンドミルの姿勢制御をおこないながら(図4参照)、各面においては、所定のティアラインを構成する間欠凹溝を加工するために、図3に示すようなエンドミル62のX1方向への移動(所定深度までの切削降下、X軸方向への切削移動、エンドミルの上昇、隣接する凹溝への移動)をおこなうものである。
上記するエンドミルの移動(昇降移動、水平移動)は、制御機構へのティーチングないしは入力された加工態様に関するデータ(凹溝の深度、長さ、ライン等)や、ワークの3次元的な形状と凹溝の開設位置データに基づいておこなわれる。また、スピンドルおよびエンドミルの回転数は、後述する発明者等の実験結果に基づいて、最適な回転速度に制御される。
図5は、切削加工装置を構成する各駆動部とそれぞれの駆動部を制御する制御機構の概要を示したブロック図である。ここで、テーブル移動部100は、図3,4に示す移動部83を、第1の移動部110は移動部2を、回動部120は回動部3を、切削部130は切削部6を、第2の移動部140はソレノイド7およびリニアガイド5をそれぞれ示している。
これらの駆動部の移動制御、回動制御、回転制御は不図示のPC内の制御部(CPU)220により、I/F回路210を介して制御される。ROM230には、制御部220の実行に必要な命令やデータが格納されている。また、上記する加工態様に関するデータやワークの座標データ、スピンドルの回転数等に関するデータは、キーボード等を介して入力され、I/F回路250を介して記憶部(RAM)240に格納される。この格納データに基づいて、制御部220は各駆動部に所定の駆動指令を送信し、送信信号に基づいて各駆動部が所定の駆動動作をおこなうものである。
図6は、切削加工装置の他の実施の形態を示した側面図である。この切削加工装置10Aは、X軸ガイド1に沿って移動部2が移動することにより切削部6のX軸方向への移動制御をおこない、ワークWの他の移動制御、すなわち、Y軸方向への移動(Y1方向)とYZ面内での回動(P2方向)をテーブル側でおこなう装置である。なお、X軸ガイド1を支持する支持架構の図示は省略している。
テーブル8aは、台座81と、該台座81上を移動可能な移動部83、移動部83に取り付けられた回動部84、回動部84に回動可能に取り付けられた載置台82から構成されている。
また、図7は、切削加工装置のさらに他の実施の形態を示した側面図である。この切削加工装置10Bは、切削加工装置10Aと同様にテーブル側でワークWをY軸方向へ移動させるとともに(Y1方向)、YZ面内で回動させる装置である。この装置では、テーブル8bが、送りねじ機構とリンク機構の組み合わせで構成されている。具体的には、送りねじ機構を構成するねじ軸86に沿ってナット部材85が移動し、このナット部材に回動可能(P3方向)に載置台82が取り付けられている。載置台82と台座81とは、複数のリンク部材88a,88bにて接続されており、ナット部材85の移動に応じてリンク部材88a,88bが回動することにより、載置台82を回動させることができる。
上記する切削加工装置10,10A,10Bによれば、任意形状のワークに対して、加工面にエンドミルを常に垂直姿勢に制御しながら所定の態様の凹溝を高精度かつ効率的に開設することが可能となる。なお、ワークの加工面に対して垂直姿勢のエンドミルにて凹溝が加工されるため、ワークに開設された凹溝の底面はワーク面に並行に開設されることとなる。その結果、加工後に凹溝の深度(またはワークの残厚)を例えば3点計測等する際に、計測部位によって凹溝の深度が異なるといった問題が生じ得ない。
[エンドミルの回転数と刃先の直径、ワークの残厚や加工時間等に関する実験とその結果]
次に、発明者等によっておこなわれたエンドミルの最適な回転数、エンドミルの最適な刃先径を特定するための実験と、X軸方向(ティアラインに沿った方向)へのエンドミルの最適な送り速度を特定するための実験について説明する。
実験は、本発明の切削加工装置を使用して、刃先の直径が0.5mm、1.0mm、1.5mmの3ケースのエンドミルを使用し、さらには、回転数を最大80000rpmまで変化させて、各ケースにおける刃の折れの有無や、残厚精度、加工時間等を調べた。
[実験結果(エンドミルの回転数について)]
実験の結果、エンドミルの回転数の上限は60000rpmであることが望ましく、エンドミルの回転数の下限は、加工速度に影響を及ぼさない程度の値である45000rpmであることが望ましいと結論づけることができる。
[実験結果(刃先径およびその形状について)]
刃先の直径がφ1.5mmの場合に、凹溝が貫通してしまうという結果となった。加工中の凹溝を観察すると、加工中にワークが浮いた姿勢となっており、すくい角による引き上げ効果が原因であるものと特定された。刃先の折れを併せて考察すると、刃先の直径はφ1.0mmが最適であると結論づけることができる。なお、凹溝のバリの状況に関しては、1刃あたりの切削量が大きくなるにしたがってバリも大きくなる。この場合、エンドミルの回転数を上昇させても効果は上がらなかった。
また、切削部の溶解の有無に関し、刃先径がφ0.5mmのケース、φ1.0mmのケースともに、回転数が80000rpmの場合に切削部が溶解した。回転速度による摩擦発熱のほかに、エンドミル刃先の昇温が加わって溶解が生じるものと特定される。しかし、回転数が60000rpmでは溶解の発生確率が格段に低減する。
[実験結果(エンドミルの送り速度と加工時間について)]
ティアランに沿った方向へのエンドミルの送り速度は、刃先の折れが生じない範囲で最大の速度を特定する必要がある。本実験の結果、送り速度を7500mm/minまで高めた際に刃先が折れ易いという結果になったが、エンドミルの回転数を上記する60000rpmに制御した際には、刃先の折れは生じ難いことが判明した。
上記する実験の結果から特定された最適条件、すなわち、エンドミルの刃先直径をφ1.0mm、エンドミルの回転数を60000rpm、エンドミルのティアライン方向への送り速度を7500mm/minとした場合のワークの残厚測定の結果は以下の通りとなる。
不図示のワークに複数の残厚測定ポイントを設定し、許容誤差を0.1mmに設定した場合の実験結果は、残厚値が目標値に対して±0.05mm未満の範囲内となり、十分に設定許容誤差を満足する結果となった。
また、ワークの加工面に対してエンドミルを垂直姿勢に制御しない従来の装置と、本発明の切削加工装置とを使用した場合の加工時間についての実験結果は、加工されるティアラインの加工長を814mm、74個の凹溝を加工する実験において、従来の装置の場合に要する加工時間は目標時間を大幅に超過する結果となった。
次に、1)エンドミルの刃先径をφ0.5mmとし、そのほかの条件は上記する最適条件にて加工した場合、2)エンドミルの刃先径をφ1.0mmとした最適条件の場合、3)刃先径がφ1.5mmの場合の各条件のもとで実験をおこなった。
実験の結果、上記2)のエンドミルの刃先径がφ1.0mmの場合が加工時間が最も短くなることが判明した。なお、上記3)の刃先径がφ1.5mmの場合には、刃先のすくい角でワークが浮き上がってしまい、残厚値が許容誤差を逸脱する結果となった。
以上の実験結果から、本発明の切削加工装置を使用するとともに、エンドミルの仕様や回転速度等を最適な条件に設定することにより、可及的に短時間で高精度な溝加工を実現できることが実証された。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。例えば、図示する切削加工装置10,10A,10Bのほかに、テーブル側は何らの駆動もおこなわず、切削部側のみが移動および回動しながらエンドミルの姿勢制御をおこなう実施の形態であってもよい。
車両の助手席側のインストルメントパネルを示した模式図。 図1のII部の拡大図であって、インストルメントパネルの裏面を示した模式図。 本発明の切削加工装置の一実施の形態の正面図。 図3の切削加工装置の側面図。 切削加工装置の制御機構を示したブロック図。 本発明の切削加工装置の他の実施の形態の側面図。 本発明の切削加工装置のさらに他の実施の形態の側面図。
符号の説明
1…X軸ガイド、2…移動部、3…回動部、41…加工ブロック、42…進退プレート、5…リニアガイド、6…切削部、61…スピンドル、62…エンドミル、7…ソレノイド、8a,8b,8c…テーブル、81…台座、82…載置台、83…移動部、84…回動部、85…ナット部材、86…ねじ軸、87…サーボモータ、88a,88b…リンク部材、10,10A,10B…切削加工装置、W…ワーク(インストルメントパネル)、W1…裏面、W2…凹溝

Claims (7)

  1. 3次元的に広がりをもつワークに溝加工をおこなう切削加工装置であって、
    前記切削加工装置は、
    X軸方向に延設するX軸ガイドに沿って移動する第1の移動手段と、
    X軸に直交するYZ面内で該第1の移動手段を中心に回動する回動手段と、
    スピンドルと該スピンドルに装着されたエンドミルとからなる切削手段と、該切削手段を前記回動手段に対して相対移動させる第2の移動手段と、
    少なくともワークの形状と加工パターンを記憶する記憶手段と、
    ワークを載置するとともに、Y軸方向に移動自在なテーブルと、
    前記記憶手段における加工パターンに基づいて、第1の移動手段の移動制御と、回動手段の回動制御と、第2の移動手段の進退制御と、テーブルの移動制御のいずれか1つまたは複数の制御をおこない、かつ、切削手段の回転制御をおこなう制御手段と、からなり、
    制御手段によって、ワークの加工面に対してエンドミルが垂直に姿勢制御され、かつ、前記第2の移動手段の移動量が制御されることを特徴とする切削加工装置。
  2. 3次元的に広がりをもつワークに溝加工をおこなう切削加工装置であって、
    前記切削加工装置は、
    Y軸方向に延設するY軸ガイドと、
    該Y軸ガイドに移動自在に装着されたX軸ガイドと、
    該X軸ガイドに沿って移動する第1の移動手段と、
    X軸に直交するYZ面内で該第1の移動手段を中心に回動する回動手段と、
    スピンドルと該スピンドルに装着されたエンドミルとからなる切削手段と、該切削手段を前記回動手段に対して相対移動させる第2の移動手段と、
    少なくともワークの形状と加工パターンを記憶する記憶手段と、
    ワークを載置するテーブルと、
    前記記憶手段における加工パターンに基づいて、X軸ガイドの移動制御と、第1の移動手段の移動制御と、回動手段の回動制御と、第2の移動手段の進退制御のいずれか1つまたは複数の制御をおこない、かつ、切削手段の回転制御をおこなう制御手段と、からなり、
    制御手段によって、ワークの加工面に対してエンドミルが垂直に姿勢制御され、かつ、前記第2の移動手段の移動量が制御されることを特徴とする切削加工装置。
  3. 3次元的に広がりをもつワークに溝加工をおこなう切削加工装置であって、
    前記切削加工装置は、
    X軸方向に延設するX軸ガイドに沿って移動する第1の移動手段と、
    スピンドルと該スピンドルに装着されたエンドミルとからなる切削手段と、該切削手段を前記回動手段に対して相対移動させる第2の移動手段と、
    少なくともワークの形状と加工パターンを記憶する記憶手段と、
    ワークを載置するとともに、Y軸方向に移動自在であって、かつ、X軸に直交するYZ面内で回動するテーブルと、
    前記記憶手段における加工パターンに基づいて、第1の移動手段の移動制御と、第2の移動手段の進退制御と、テーブルの移動制御および/または回動制御のいずれか1つまたは複数の制御をおこない、かつ、切削手段の回転制御をおこなう制御手段と、からなり、
    制御手段によって、ワークの加工面に対してエンドミルが垂直に姿勢制御され、かつ、前記第2の移動手段の移動量が制御されることを特徴とする切削加工装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の切削加工装置において、
    前記第2の移動手段は、リニアガイドと、該リニアガイドを駆動させるソレノイド、シリンダユニット機構、サーボモータのいずれか1種と、からなることを特徴とする切削加工装置。
  5. 前記スピンドルが、45000〜60000rpmの範囲で回転制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の切削加工装置。
  6. 3次元的に広がりをもつワークをテーブル上に載置する工程と、X軸方向およびY軸方向およびZ軸方向に移動する移動手段と、所定の面内で回動する回動手段とによって姿勢制御されるスピンドルに装着されたエンドミルにより、予め設定されている溝加工パターンに従って凹溝を穿設する工程と、からなることを特徴とする切削加工方法。
  7. 3次元的に広がりをもつワークをY軸方向に移動するとともに該Y軸に直交するX軸方向に対して直交するYZ面内で回動するテーブル上に載置する工程と、X軸方向に移動する移動手段に対してワークの加工面に直交する方向に進退移動するスピンドルに装着されたエンドミルにより、予め設定されている溝加工パターンに従って凹溝を穿設する工程と、からなることを特徴とする切削加工方法。
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