JP2007294940A - サーミスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】 優れた耐電圧性を有するサーミスタを提供すること。
【解決手段】 好適な実施形態のサーミスタ1は、一対の電極2と、この一対の電極2間に配置されたサーミスタ層4とを備えている。サーミスタ層4は、高分子マトリックス、100℃を超える融点を有する低分子有機化合物、及び、導電性フィラーを含み、且つ、高分子マトリックスの融点をMA、低分子有機化合物の融点をMB、高分子マトリックスの融解開始温度をSAとしたとき、(MA−MB)が0〜40℃であり、且つ、(MA−SA)が0〜30℃である。
【選択図】 図1
【解決手段】 好適な実施形態のサーミスタ1は、一対の電極2と、この一対の電極2間に配置されたサーミスタ層4とを備えている。サーミスタ層4は、高分子マトリックス、100℃を超える融点を有する低分子有機化合物、及び、導電性フィラーを含み、且つ、高分子マトリックスの融点をMA、低分子有機化合物の融点をMB、高分子マトリックスの融解開始温度をSAとしたとき、(MA−MB)が0〜40℃であり、且つ、(MA−SA)が0〜30℃である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、サーミスタに関する。
温度上昇とともに抵抗値が増大する特性を有する正特性サーミスタは、温度センサや過電流保護素子として用いられている。このような正特性サーミスタの一つとして、結晶性高分子化合物からなるマトリックス(高分子マトリックス)中に導電性フィラーが分散された材料を用いた有機質正特性サーミスタが知られている。この有機質正特性サーミスタにおいては、温度の増大に伴い高分子マトリックスが融解して膨張し、これにより導電性フィラーによる導電経路が切断されることによって抵抗値が増大する。
サーミスタ(本明細書において、「サーミスタ」は、「有機質正特性サーミスタ」のことをいうものとする)は、その用途によって好適な動作温度が異なるものである。そのため、従来、サーミスタは、高分子マトリックスの種類を変えることによって動作温度の調整が行われてきた。しかし、高分子マトリックスとして適用できる高分子化合物の種類は限られており、所望の動作温度を得るのは必ずしも容易ではなかった。そこで、動作温度の調整が容易なサーミスタとして、高分子マトリックスに加えてパラフィンワックス等の低分子有機化合物を組み合わせた材料を用いたものが開示されている(特許文献1)。
特開平11−168005号公報
近年では、サーミスタに対して、従来よりも高い電圧でも破壊等を生じることなく動作できる優れた耐電圧性が求められている。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐電圧性を有するサーミスタを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のサーミスタは、一対の電極と、この一対の電極間に配置されたサーミスタ層とを備え、サーミスタ層は、高分子マトリックス、100℃を超える融点を有する低分子有機化合物、及び、導電性フィラーを含み、且つ、高分子マトリックスの融点をMA、低分子有機化合物の融点をMB、高分子マトリックスの融解開始温度をSAとしたとき、(MA−MB)が0〜40℃であり、且つ、(MA−SA)が0〜30℃であることを特徴とする。
本発明のサーミスタは、上記構成のサーミスタ層を備えるものであるため、優れた耐電圧性を有するものとなる。かかる要因については、必ずしも明らかではないものの、本発明者らは以下のように推測している。すなわち、まず、サーミスタ層に含まれる低分子有機化合物は、100℃を超える融点を有するものであるため、高電圧が印加されて高温となった場合であっても分解等を生じ難い。また、サーミスタ層においては、高分子マトリックスと低分子有機化合物との融点差が40℃以下と小さく、且つ、高分子マトリックスの融点と融解開始温度との差が30℃以下と小さいため、動作温度における抵抗変化率が大きくなる傾向にある。このように抵抗変化率が大きいと、動作開始後に高電圧となった場合であっても十分に熱的平衡を保つことができ、熱暴走を起こすこと等が少なくなる。これらにより、本発明のサーミスタは、高電圧でも動作が可能であり、優れた耐電圧性を有するものとなる。
上記本発明のサーミスタは、(MA−MB)が22℃以下であると好ましい。こうすれば、サーミスタ層が一層均質な組成を有するものとなり、サーミスタの耐電圧性が一層向上する。また、従来のサーミスタは、繰り返しの動作後に高分子マトリックスの劣化や、サーミスタ層中の成分の分離等により動作温度が変化し易かったのに対し、繰り返し動作させた場合であっても動作温度の変化が小さいものとなる。
より具体的には、上記本発明のサーミスタにおいて、低分子有機化合物の重量平均分子量は、700〜2000であると好適であり、1000〜2000であるとより好適である。このような分子量を有する低分子有機化合物は、高分子マトリックスとの相溶性が特に良好である。したがって、かかる低分子有機化合物と高分子マトリックスとを組み合わせて含むサーミスタは、均一であるため高電圧下でも安定な動作が可能であるほか、繰り返し動作後の動作温度の変化が更に小さいものとなる。
本発明によれば、優れた耐電圧性を有するサーミスタを提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、好適な実施形態に係るサーミスタの断面構成を模式的に示す図である。図1に示すように、サーミスタ1は、一対の電極2間にサーミスタ層4が挟持されてなる構成を有する。電極2は、電極材料として通常用いられる導電性材料から構成され、例えば、Ni等の金属箔からなるものが挙げられる。
サーミスタ層4は、高分子マトリックス、低分子有機化合物及び導電性フィラーを含む。高分子マトリックスは、高分子化合物から構成され、熱可塑性を有する結晶性高分子化合物からなるとより好ましい。高分子マトリックスとしては、ポリオレフィン、オレフィンと極性基及びエチレン性不飽和基を有するモノマーとを重合して得られるオレフィン含有コポリマー、ハロゲン化ビニル又はハロゲン化ビニリデンポリマー、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、熱可塑性エラストマー、ポリエチレンオキサイド、ポリアセタール、熱可塑性変性セルロース、ポリスルホン類、ポリメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
高分子マトリックスを構成する高分子化合物としては、上述したなかでも、温度上昇に伴う体積膨張を良好に生じ、導電性フィラーによる導電経路を良好に切断し得るポリオレフィンが好ましい。なお、高分子マトリックスは、これらの高分子化合物の一種類のみから構成されてもよく、複数種を組み合わせて構成されてもよい。また、上記以外のエラストマーや熱硬化性樹脂等を更に含んでいてもよい。
例えば、ポリオレフィンとしては、ポリエチレンが例示できる。具体的には、高密度ポリエチレン(例えば、ハイゼックス2100JP(三井石油化学社製、商品名)、Marlex6003(フィリップ社製、商品名))、低密度ポリエチレン(例えば、LC500(日本ポリケム社製、商品名)、DYNH−1(ユニオンカーバイド社製、商品名))、中密度ポリエチレン(例えば、2604M(ガルフ社製、商品名))等が挙げられる。これらのポリエチレンの中でも、より高い耐熱性が得られる点で高密度ポリエチレン(比重0.92〜0.96)が好ましい。
また、オレフィン含有コポリマーとしては、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー(例えば、DPD6169(ユニオンカーバイド社製、商品名))、エチレン−アクリル酸コポリマー(例えば、EAA455(ダウケミカル社製、商品名))等が例示できる。
さらに、ハロゲン化ビニル又はハロゲン化ビニリデンポリマーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル又はポリフッ化ビニリデンが例示できる。具体的には、ヘキサフルオロエチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(例えば、FEP100(デュポン社製、商品名))、ポリフッ化ビニリデン(例えば、Kynar461(ペンバルト社製、商品名))等が挙げられる。さらにまた、ポリアミドとしては、12−ナイロンが例示できる。
このような高分子マトリックスを構成する高分子化合物は、重量平均分子量(Mw)で10,000〜5,000,000であると好ましく、50,000〜300,000であるとより好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算で得られた値である(以下同様)。ここで、Mwは、次の式(1)により求めることができる。
Mw=Σ(Wi/Mi)/W=Σ(HiNi)/Σ(Hi) …(1)
Mw=Σ(Wi/Mi)/W=Σ(HiNi)/Σ(Hi) …(1)
式(1)中、Wは高分子化合物の総重量、Wiはi番目に測定された高分子化合物の重量、Miはi番目に測定された高分子化合物の溶出時間における分子量、Hiはi番目に測定された高分子化合物の溶出時間におけるピーク高さ、及び、Niは分子量Miの高分子化合物の分子数をそれぞれ示す。
この高分子化合物の重量平均分子量が10,000未満であると、高分子マトリックスとしてサーミスタ層4、ひいてはサーミスタ1全体の形状を保つのが困難となる傾向にある。一方、5,000,000を超えると、高分子化合物が剛直となって導電性フィラーの均一な分散が困難となる傾向にある。
また、高分子マトリックスを構成する高分子化合物の融点は、後述する低分子有機化合物と同じかこれよりも高く、具体的には100〜150℃であると好ましい。この高分子化合物の融点が低分子有機化合物よりも低いと、サーミスタ1の耐電圧が低くなるとともに、繰り返し動作後の動作温度のばらつきが大きくなる。一方、高分子化合物の融点が150℃を超えると、通常サーミスタに求められる範囲の動作温度が得られ難くなる傾向にある。さらに、高分子マトリックスを構成する高分子化合物のASTM D1238で定義されるメルトフローレートは、0.1〜30g/10分であると好ましい。
さらに、高分子マトリックスは、その融点及び融解開始温度を、それぞれMA及びSAとしたとき、(MA−SA)は0〜30℃であり、0〜20℃であると好ましく、0〜12℃であるとより好ましい。こうすれば、上述した耐電圧性の向上効果がさらに良好に得られるようになる。また、上記(MA−SA)は、サーミスタの実用的な応答性を考慮した場合は、10〜15℃であると好ましい。
さらにまた、高分子マトリックスを構成する高分子化合物について、示差走査熱量測定(DSC)を行った場合に、上記(MA−SA)が大きいとDSC曲線が段階的な吸熱ピークを有するが、本発明では、吸熱ピークが段階的とならない程度に上記(MA−SA)が小さいものが好ましい。高分子マトリックスがDSC曲線において段階的にならない吸熱ピークを有する場合は、より優れた耐電圧特性が得られる。
ここで、本明細書において、高分子マトリックスの「融解開始温度」は、高分子マトリックスを構成する高分子化合物を測定試料として示差走査熱量測定法(DSC)により分析した際に得られるDSC曲線を用いて以下のように定義される温度である。すなわち、測定試料及び標準物質(α−Al2O3からなる粉末)を室温(25℃)から一定の昇温速度(2℃/min)で昇温することにより得られるDSC曲線において、最初に現れる吸熱ピークの最も低温側の変曲点における接線L2とベースラインL1(測定開始点を通り、横軸、すなわち温度軸に略平行な直線)との交点における温度を「融解開始温度」とする(後述する図2を参照)。
図2は、本発明で用いることができる高分子マトリックスの一例であるHJ360(ポリエチレン、日本ポリエチレン社製、MA=132℃)のDSC曲線を示す参考図である。図2においては、L1がベースライン(測定開始点を通り、横軸、すなわち温度軸に略平行な直線)であり、L2がDSC曲線において最初に現れる吸熱ピークの最も低温側の変曲点における接線である。図2に示すように、L1とL2の交点における温度が120℃であることから、HJ360の融解開始温度(SA)は、120℃である。そして、このHJ360においては、(MA−SA)が12℃であるところ、図2に示すように吸熱ピークが段階的とはなっていない。
低分子有機化合物は、高分子マトリックス中に溶解又は分散された、100℃以上の融点を有する有機化合物である。サーミスタ層4の特性を均質に得るためには、低分子有機化合物は、高分子マトリックス中に少なくとも一部が溶解していると好ましく、大部分が溶解しているとより好ましい。このような低分子有機化合物は、200〜5000程度の分子量を有する通常ポリマーに分類されない有機化合物であり、パラフィン(メタン列炭化水素)を主成分とするワックス、ワックス及び油脂のうちの少なくとも一種が挙げられる。なお、低分子有機化合物は、動作温度に応じてこれらの成分を複数種組み合わせて含んでいてもよい。
パラフィンを主成分とするワックス(以下、「パラフィン含有ワックス」という)としては、パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス等が挙げられる。これらに含まれるパラフィンとしては、上述した融点が得られる長さの分子鎖を有するものが好ましい。具体的には、例えば、炭素数22以上のアルカン系の直鎖炭化水素が挙げられる。なお、パラフィン含有ワックスは、単一の分子量を有するものであってもよく、分子量の分布を有するものであってもよい。
また、ワックスや油脂は、脂肪酸エステルや脂肪酸アミド等から主として構成される。脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数20以上の飽和脂肪酸とメチルアルコール等の低級アルコールとから得られる飽和脂肪酸のメチルエステルが挙げられる。また、脂肪酸アミドとしては、例えば、炭素数10以下の飽和脂肪酸第一アミドや、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド等が挙げられる。これらの脂肪酸エステルや脂肪酸アミドは、脂肪酸(例えば、炭素数22以上のアルカン系の直鎖炭化水素の脂肪酸)、脂肪族アミン(例えば、炭素数16以上の脂肪族第1アミン)、高級アルコール(具体的には、炭素数16以上のn−アルキルアルコール)等を原料として得られるものであるが、サーミスタ層4は、これらの原料化合物自体を低分子有機化合物として含んでいてもよい。
低分子有機化合物の重量平均分子量は、700〜2000であると好ましく、1000〜2000であるとより好ましい。このような分子量を有する低分子有機化合物は、100℃以上の融点を有する化合物となり易いほか、高分子マトリックスに対する相溶性が良好となる傾向にある。したがって、かかる分子量範囲の低分子有機化合物を用いることで、サーミスタ1の耐電圧性が向上するほか、繰り返し動作させた場合であっても動作温度の変化が小さくなる。
低分子有機化合物としては、上述したなかでもパラフィンワックスが、所望の融点が得られ易く、高分子マトリックスへの相溶性も良好であることから好ましい。このようなパラフィンワックスとしては、具体的には、Polywax725(重量平均分子量725)、Polywax850(重量平均分子量850)、Polywax1000(重量平均分子量1000)、Polywax2000(重量平均分子量2000)、Polywax3000(重量平均分子量3000)(以上、東洋ペトロライト社製、商品名)等が例示できる。なお、低分子有機化合物としては、これらのパラフィンワックスに樹脂類を配合した配合ワックス、これにマイクロクリスタリンワックスを混合した配合ワックス等も適用できる。
このような低分子有機化合物は、より高い耐電圧性が得られ、繰り返し動作後の動作温度の変化を小さくする観点から、サーミスタ層4を構成する材料の総体積に対して、2〜20体積%含まれることが望ましく、2〜10体積%含まれることがより好ましい。低分子有機化合物の含有量が2体積%未満である場合には、本発明の耐電圧性効果が小さくなる傾向があり、20体積%を超える場合には、繰り返し動作により、低分子有機化合物、例えばワックスのブリードアウトが起こり、繰り返し動作後の動作温度の変化が大きくなる傾向にある。
サーミスタ層4において、高分子マトリックス及び低分子有機化合物は、それぞれの融点をMA及びMBとしたとき、(MA−MB)が0〜40℃の範囲となる組み合わせで含まれている。このように、高分子マトリックスと低分子有機化合物との融点差が40℃以下であると、これらを含むサーミスタ層4は、高電圧を印加された場合であっても熱的平衡を良好に維持でき、優れた耐電圧性を発現することができる。
特に、上記(MA−MB)は、22℃以下であると好ましく、6℃以下であるとより好ましい。こうすれば、上述した耐電圧性の向上効果がより良好に得られるようになる。また、サーミスタ層4の組成がより安定化され、サーミスタ1を繰り返し動作させた場合であっても動作温度の変化が生じ難くなる。
サーミスタ層4に含まれる導電性フィラーは、上述した高分子マトリックス及び低分子有機化合物からなる有機混合物中に略均一に分散されたものである。このような導電性フィラーとしては、金属等からなる導電性微粒子が挙げられる。導電性微粒子は、一粒子ごとに分散された一次粒子として含まれていてもよいが、10〜1000個程度の一次粒子が連なった鎖状の状態で含まれているとより好ましい。導電性微粒子を構成する金属としては、Ni、Ni−Fe合金等が比抵抗等の特性の観点から好ましい。また、導電性微粒子としては、Ni系の金属微粒子に加え、カーボンブラック、Ag、Al、Co等の微粒子が併用されてもよい。
導電性フィラーは、サーミスタ層4を構成する材料の総体積に対して、20〜60体積%含まれることが好ましく、25〜50体積%含まれることがより好ましい。
導電性フィラーを構成する導電性微粒子としては、個々の粒子が鋭利な突起を有する微粒子が好ましい。例えば、粒径の1/3〜1/50の高さの円錐状のスパイク状の突起が、表面に複数(10〜500個)存在するものが好ましい。これにより、球状の導電性微粒子を導電性フィラーとして用いた場合に比してトンネル電流が流れ易くなり、その結果、低い初期抵抗が得られるようになる。また、導電性フィラー間の間隔が大きくされるため、動作時には大きな抵抗値が得られるようになる。
このような導電性微粒子としては、例えば、サーミスタ層4において一次粒子の状態で含まれ易いものとして、スパイク状の突起を有するニッケルパウダが挙げられる。具体的には、INCO Type 123ニッケルパウダ(インコ社製、商品名)が例示できる。このニッケルパウダは、平均粒径が3〜7μm程度であり、見かけの密度は1.8〜2.7g/cm3程度であり、比表面積は0.34〜0.44m2/g程度である。
一方、鎖状の状態でサーミスタ層4に含まれ易い導電性微粒子としては、フィラメント状Ni粒子であるINCO Type 255ニッケルパウダ、INCO Type 270ニッケルパウダ、INCO Type 287ニッケルパウダ、INCO Type 210ニッケルパウダ(以上、インコ社製、商品名)等が挙げられる。なかでも、INCO Type 255、277又は287が好ましい。
これらのフィラメント状Ni粒子における一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5〜4.0μmである。なかでも、一次粒子の平均粒径が1.0〜4.0μmのものが好ましい。また、これに0.1μm以上1.0μm未満の平均粒径を有するものを50質量%以下含むものも好適である。なお、平均粒径の値としては、フィッシャー・サブシーブ法で測定した値を採用することができる。また、上述したフィラメント状Ni粒子の見かけの密度は0.3〜1.0g/cm3程度であり、比表面積は0.4〜2.5m2/g程度である。
本実施形態のサーミスタ1におけるサーミスタ層4は、上述の如く、高分子マトリックス、低分子有機化合物及び導電性フィラーを含むものである。このサーミスタ層4における、高分子マトリックスと低分子有機化合物の好適な混合比は、質量比で、高分子マトリックス1に対して低分子有機化合物0.05〜4であると好ましく、0.1〜1であるとより好ましい。高分子マトリックスと低分子有機化合物の混合比をこのような範囲とすることで、サーミスタとしての特性を損なうことなく動作温度の調整が可能となり、また、良好な耐電圧性及び動作温度の安定性が得られるようになる。
高分子マトリックス1に対する低分子有機化合物の質量比が0.2未満であると、動作時の抵抗変化率が不十分となる傾向にある。一方、4を超えると、動作時のサーミスタ層4の変形が大きくなり過ぎ、導電性粒子が十分に均一に分散し難くなる。
また、導電性フィラーの配合量は、高分子マトリックスと低分子有機化合物の合計質量の2〜5倍であると好ましい。こうすれば、非動作時の抵抗(初期抵抗)を低く維持するとともに、動作時の抵抗値の増大が急峻となり、サーミスタとして優れた特性が得られるようになる。導電性フィラーの量が少なすぎると、初期抵抗値を十分に低くできなくなる傾向にあり、多過ぎると、動作時の抵抗変化率が不十分となるほか、高分子マトリックス及び低分子有機化合物中への均一な分散・混合が困難となる傾向にある。
なお、サーミスタ層4は、上述した高分子マトリックス、低分子有機化合物及び導電性フィラーのほか、所望の特性に応じて他の成分を本発明の効果を阻害しない範囲で更に含有していてもよい。例えば、サーミスタ層4の熱劣化を防止する目的で、フェノール類、有機イオウ類、フォスファイト類等の酸化防止剤を更に含有していてもよい。
上記構成を有するサーミスタ1は、例えば、以下に示すようにして製造することができる。すなわち、まず、高分子マトリックス、低分子有機化合物及び導電性フィラーを含むサーミスタ組成物を調製する。このサーミスタ組成物は、例えば、高分子マトリックスを構成する高分子化合物と、低分子有機化合物及び導電性フィラーを、高分子化合物の融点又は軟化点以上の(好ましくはこれらの温度よりも5〜40℃高い)温度で混錬する方法が挙げられる。混錬は、ミル、加圧ニーダ、二軸押出機等の公知の方法で5〜90分程度行うことが好ましい。
また、サーミスタ組成物は、高分子マトリックスを構成する高分子化合物と低分子有機化合物とを予め溶融混合又は溶媒中で溶解して混合させた混合物中に、導電性フィラーを添加して混合する方法によって調製してもよい。
次いで、得られたサーミスタ組成物を、プレス成形等の方法によってシート状に成形する。この段階で、サーミスタ組成物のシートを所望のサイズに切断しておいてもよい。それから、電極2を構成する一対の導体箔を準備し、これらの間にサーミスタ組成物のシートを挟持する。その後、これらを熱プレス等することによって、一対の導体箔間にサーミスタ組成物のシートを固定する。また、サーミスタ組成物からなるシートの両面に、導体箔を熱圧着する。これらにより、図1に示す構造を有するサーミスタ1が得られる。
サーミスタ1の構成を完成させた後には、サーミスタ層4中の高分子マトリックスを架橋させる架橋処理を更に行ってもよい。架橋処理としては、放射線架橋、有機過酸化物による化学架橋、シランカップリング剤をグラフト化してシラノール基間の縮合反応を生じさせる水架橋等が挙げられる。これらは、高分子マトリックスを構成する高分子化合物の種類に応じて適宜選択することができる。このような架橋処理を行うことで、サーミスタ層4の熱に対する安定性が一層向上する傾向にある。
以上、好適な実施形態に係るサーミスタについて説明したが、本発明のサーミスタは上述した構成のものに必ずしも限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成が異なっていてもよい。例えば、サーミスタとしては、一対の電極2間に一層のサーミスタ層4を備える単層型のものを例示したが、これに限定されず、本発明のサーミスタは、電極とサーミスタ層とが交互に複数積層された積層型のものであってもよい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[サーミスタの製造]
(実施例1〜5、比較例1〜7)
まず、総体積を基準として、55体積%の高分子マトリックス、10体積%の低分子有機化合物、35体積%の導電性フィラーを、下記表1に示す組み合わせとなるように分散・混合して各サーミスタ組成物を調製した。得られた各サーミスタ組成物を、それぞれ一対のNi箔で挟み込んだ後、これを150℃で熱プレスした。これにより、一対のNi電極間にサーミスタ層を有し、0.5mmの厚さを有する実施例1〜5及び比較例1〜7のサーミスタをそれぞれ得た。
(実施例1〜5、比較例1〜7)
まず、総体積を基準として、55体積%の高分子マトリックス、10体積%の低分子有機化合物、35体積%の導電性フィラーを、下記表1に示す組み合わせとなるように分散・混合して各サーミスタ組成物を調製した。得られた各サーミスタ組成物を、それぞれ一対のNi箔で挟み込んだ後、これを150℃で熱プレスした。これにより、一対のNi電極間にサーミスタ層を有し、0.5mmの厚さを有する実施例1〜5及び比較例1〜7のサーミスタをそれぞれ得た。
下記表1中の高分子マトリックスであるHJ360(日本ポリエチレン社製、商品名)、2200J(三井化学社製、商品名)、UJ960(日本ポリエチレン社製、商品名)は、それぞれ所定の分子量を有するポリエチレンであり、UBESTA(宇部興産社製、商品名)は12−ナイロンである。また、低分子有機化合物であるPolywax400、Polywax500、Polywax655、Polywax725、Polywax850、Polywax1000、Polywax2000、Polywax3000(以上、東洋ペトロライト製、商品名)、及び、HNP−10(日本精鑞社製、商品名)は、それぞれ所定の分子量を有するポリオレフィンワックスである。
なお、高分子マトリックス及び低分子有機化合物の融点は、DSC測定により求めた。すなわち、まず、約5mgの試料を所定の容器に充填し、10℃/minで室温から160℃まで昇温しながらDSC測定を行った。その際、昇温開始から測定終了までの間、流量を変えることなく窒素ガス(約50ml/分程度)を流し続けた。そして、融解が終了した時点の温度を融点とした。得られた結果を表1に示す。なお、表1には、サーミスタ層に含まれる高分子マトリックスの融点(MA)から低分子有機化合物の融点(MB)を引いた(MA−MB)の値を併せて示した。
また、高分子マトリックスの融解開始温度は、DSC測定により得られたDSC曲線から、上述の方法により求めた。得られた結果を表1に示す。なお、表1には、サーミスタ層に含まれる高分子マトリックスの融点(MA)から高分子マトリックスの融解開始温度(SA)を引いた(MA−SA)の値を併せて示した。
[特性評価:耐電圧の評価]
実施例1〜5及び比較例1〜7の各サーミスタに、過電流を流してトリップさせた後(20A−5V)、その状態から2Vずつサーミスタが破壊されるまで電圧を上昇させた。そして、破壊する直前の電圧を耐電圧(Vb、単位:V)とした。なお、サーミスタは、動作により限流していた電流値が動作直後から2倍の値まで上昇した時点、又は、サーミスタが焼損した時点で破壊されたものと判断した。得られた結果を表1に示す。
実施例1〜5及び比較例1〜7の各サーミスタに、過電流を流してトリップさせた後(20A−5V)、その状態から2Vずつサーミスタが破壊されるまで電圧を上昇させた。そして、破壊する直前の電圧を耐電圧(Vb、単位:V)とした。なお、サーミスタは、動作により限流していた電流値が動作直後から2倍の値まで上昇した時点、又は、サーミスタが焼損した時点で破壊されたものと判断した。得られた結果を表1に示す。
[特性評価:動作温度の安定性の評価]
実施例1〜5及び比較例1〜7のサーミスタについて、以下に示すようにしてそれぞれの動作温度の安定性を評価した。すなわち、まず、製造後のサーミスタについて、1.5A通電した状態で周囲温度を上昇させて、サーミスタが動作した温度(動作温度(℃))を測定した。得られた動作温度を初期動作温度とした。次いで、この初期動作温度測定後のサーミスタに対し、20A−5Vを1000回繰り返す繰り返し動作試験を行った。そして、この繰り返し動作試験後のサーミスタの動作温度を上記と同様に測定し、これを試験後動作温度とした。これにより得られた各サーミスタの初期動作温度、試験後動作温度、及び試験後動作温度と初期動作温度との差(ΔT(℃):初期動作温度−試験後動作温度)を、まとめて表2に示した。
実施例1〜5及び比較例1〜7のサーミスタについて、以下に示すようにしてそれぞれの動作温度の安定性を評価した。すなわち、まず、製造後のサーミスタについて、1.5A通電した状態で周囲温度を上昇させて、サーミスタが動作した温度(動作温度(℃))を測定した。得られた動作温度を初期動作温度とした。次いで、この初期動作温度測定後のサーミスタに対し、20A−5Vを1000回繰り返す繰り返し動作試験を行った。そして、この繰り返し動作試験後のサーミスタの動作温度を上記と同様に測定し、これを試験後動作温度とした。これにより得られた各サーミスタの初期動作温度、試験後動作温度、及び試験後動作温度と初期動作温度との差(ΔT(℃):初期動作温度−試験後動作温度)を、まとめて表2に示した。
表1及び表2より、高分子マトリックスと低分子有機化合物との融点差が0〜40℃であり、且つ、低分子有機化合物の融点が100℃以上であった実施例1〜5のサーミスタは、比較例1〜7のものに比して、耐電圧が大きく、優れた耐電圧性を有していることが確認された。また、実施例1〜5のサーミスタは、試験後動作温度と初期動作温度との差が小さく、動作温度の安定性にも優れていることが確認された。さらに、動作温度の安定性の試験前の、実施例1〜5のサーミスタの室温抵抗値は、サンプリング数10個で17〜42mΩ/cm2に収まり、試験後の室温抵抗値も同レベルにて変動は見られなかった。よって本発明に該当する実施例のサーミスタは、高信頼性を有することが更に確認された。
1…サーミスタ、2…電極、4…サーミスタ層。
Claims (2)
- 一対の電極と、該一対の電極間に配置されたサーミスタ層と、を備え、
前記サーミスタ層は、高分子マトリックス、100℃を超える融点を有する低分子有機化合物、及び、導電性フィラーを含み、且つ、
前記高分子マトリックスの融点をMA、前記低分子有機化合物の融点をMB、前記高分子マトリックスの融解開始温度をSAとしたとき、
(MA−MB)が0〜40℃であり、且つ、
(MA−SA)が0〜30℃である、
ことを特徴とするサーミスタ。 - 前記低分子有機化合物の重量平均分子量が700〜2000である、ことを特徴とする請求項1記載のサーミスタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007092771A JP2007294940A (ja) | 2006-03-31 | 2007-03-30 | サーミスタ |
Applications Claiming Priority (2)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022162940A1 (ja) * | 2021-02-01 | 2022-08-04 | エリーパワー株式会社 | サーミスタ層、電池用電極、電池及びサーミスタ |
-
2007
- 2007-03-30 JP JP2007092771A patent/JP2007294940A/ja not_active Withdrawn
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