JP2007294321A - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Abstract
【課題】黄変等の不具合を防いで高い信頼性を実現しつつ、消費電力を低減できるプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】表示電極5が設けられた前面板1と、アドレス電極10が設けられた背面板8と、電極5,8を被覆する誘電体層6,11と、隔壁12と、が設けられている。誘電体層6,11および隔壁12から選ばれる少なくとも1つは、酸化物ガラスを含んでいる。この酸化物ガラスは、酸素(O)を除く他の元素の含有率の合計を100原子%とした場合に、B:55〜85原子%、Si:0〜15原子%、Zn:0〜15原子%、K:0〜10原子%、Na:0〜10原子%、Bi:1〜10原子%、Si+Zn:5〜30原子%、K+Na:1〜10原子%、K+Na+Bi:8〜15原子%、の組成範囲を満たす。
【選択図】図1
【解決手段】表示電極5が設けられた前面板1と、アドレス電極10が設けられた背面板8と、電極5,8を被覆する誘電体層6,11と、隔壁12と、が設けられている。誘電体層6,11および隔壁12から選ばれる少なくとも1つは、酸化物ガラスを含んでいる。この酸化物ガラスは、酸素(O)を除く他の元素の含有率の合計を100原子%とした場合に、B:55〜85原子%、Si:0〜15原子%、Zn:0〜15原子%、K:0〜10原子%、Na:0〜10原子%、Bi:1〜10原子%、Si+Zn:5〜30原子%、K+Na:1〜10原子%、K+Na+Bi:8〜15原子%、の組成範囲を満たす。
【選択図】図1
Description
本発明は、プラズマディスプレイパネルに関し、特に低消費電力と高信頼性とを実現できるプラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する場合がある。)は高速の表示が可能であり、かつ大型化が容易であることから、映像表示装置および広報表示装置などの分野で広く実用化されている。また、近年、高品位テレビジョンの分野などでの進展が非常に期待されている。
このような用途の拡大にともなって、高精細で多数の表示セルを有するフルスペックハイビジョンPDPが注目されている。従来のPDPは、複数対の表示電極、酸化鉛や酸化ビスマスを主成分とする誘電体層および保護層を備えた前面板と、複数のアドレス電極、酸化鉛や酸化ビスマスを主成分とする誘電体層および蛍光体層を備えた背面板との間に設けられた放電空間内で、対向する電極間にプラズマ放電を生じさせ、この放電空間内に封入されている主にNe、Xe等のガスから発生した紫外線を放電空間内に設けられた蛍光体にあてることによって、表示を行う。この場合、放電の広がりを一定領域に押さえ、表示を規定のセル内で行わせると同時に、均一な放電空間を確保するために、隔壁(リブともいう。)が設けられている。
隔壁には、一般的に、酸化鉛や酸化ビスマスを主成分とするガラスに、可視光の反射率を増大させるための各種の金属酸化物粉末をフィラーとして混合した材料が用いられている。この隔壁は、通常、前面ガラス基板や背面ガラス基板上に、前記の隔壁用の材料を含んだ絶縁ペーストを塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィー法で隔壁構造に形成後、焼成することによって作製される。
しかし、前面板や背面板に設けられる誘電体層および隔壁に用いられている酸化鉛や酸化ビスマスを主成分とするガラスの比誘電率は9〜13と高い。一般に、AC型のPDPの電力ロスは誘電率に比例するため、消費電力を低減するには、PDPを構成する誘電体層の低誘電率化が求められている。特にパネルサイズが大型化した場合や、高精細化した場合に、比誘電率が8以下の誘電体層が要望されている。また、従来、直接放電に関係しないと思われていた隔壁についても、PDPの大型化や高精細化にともない、PDPの消費電力の増大に寄与することが判明した。そこで、隔壁に使用されるガラスの誘電率の低減も大きな課題となっていた。
そこで、比誘電率を高くする原因の一つである酸化鉛および酸化ビスマスを主成分とせず、かつ、低軟化温度を実現するための酸化鉛および酸化ビスマスに代わる成分としてアルカリ金属酸化物を添加することによって、低誘電率と低軟化温度との両立を実現したホウ酸亜鉛系ガラスが提案されている(特許文献1参照)。また、PDPの誘電体層や隔壁に使用可能な無鉛系のガラス組成物として、比誘電率はそれほど低くないが、酸化ビスマスおよびアルカリ金属酸化物を同時に含むガラス組成物も提案されている(特許文献2参照)。
特開平9−278482号公報
特開2003−128430号公報
しかし、アルカリ金属酸化物を添加することによって比誘電率を7前後と低くした上記のホウ酸亜鉛系ガラスを誘電体層に用いた場合、ガラス中のアルカリ金属成分が多いために、電極近傍に黄変が生じたり、表示電極およびアドレス電極と駆動回路の接続端子部とにおけるアルカリ金属マイグレーションによって、誘電体層の耐圧不良や駆動回路の故障という不具合が生じたりするといった問題点があった。また、上記の酸化ビスマスおよびアルカリ金属酸化物を同時に含む無鉛ガラスは、比誘電率を8以下とすることが困難であるため、大型で高精細のPDPに適用すると消費電力が増大するという問題があった。
上記の事情に鑑み、本発明は、黄変等の不具合を防いで高い信頼性を実現しつつ、消費電力を低減できるPDPを提供することを目的とする。
本発明のプラズマディスプレイパネルは、第1の電極が設けられた前面板と、前記第1の電極と交差するように第2の電極が設けられており、かつ、前記前面板と対向して配置された背面板と、前記第1の電極および前記第2の電極から選ばれる少なくとも1つの電極を被覆する誘電体層と、放電空間を形成するために前記前面板と前記背面板との間に配置された隔壁と、を含むプラズマディスプレイパネルであって、前記誘電体層および前記隔壁から選ばれる少なくとも1つが酸化物ガラスを含み、前記酸化物ガラスにおいて、酸素(O)を除く他の元素の含有率の合計を100原子%とした場合に、前記酸化物ガラスに含まれるB、Si、Zn、K、NaおよびBiの含有率が以下の範囲にある。
B:55〜85原子%
Si:0〜15原子%
Zn:0〜15原子%
K:0〜10原子%
Na:0〜10原子%
Bi:1〜10原子%
Si+Zn:5〜30原子%
K+Na:1〜10原子%
K+Na+Bi:8〜15原子%
B:55〜85原子%
Si:0〜15原子%
Zn:0〜15原子%
K:0〜10原子%
Na:0〜10原子%
Bi:1〜10原子%
Si+Zn:5〜30原子%
K+Na:1〜10原子%
K+Na+Bi:8〜15原子%
本発明のプラズマディスプレイパネルでは、誘電体層および隔壁から選ばれる少なくとも一方に含まれる酸化物ガラスが、8以下の低い比誘電率を実現できる。したがって、誘電体層や隔壁の比誘電率を低下させることができるので、大型化および高精細化されたプラズマディスプレイパネルであっても低消費電力を実現できる。また、この酸化物ガラスにアルカリ金属成分が含まれる場合でも、その含有率は黄変等の問題が顕著に表れない程度であるため、電極(第1の電極および第2の電極から選ばれる少なくとも1つの電極)を被覆する誘電体層に用いた際の信頼性も確保できる。また、この酸化物ガラスは、軟化温度を低く調整することも容易であり、プラズマディスプレイパネルの誘電体層や隔壁に要求される他の諸物性(例えば、ガラス転移温度および熱膨張係数等)も実現可能である。これより、本発明によれば、低消費電力と高信頼性とを共に備えたプラズマディスプレイパネルを提供できる。
以下、本発明のPDPの実施の形態について説明する。なお、以下の説明は本発明の一例であり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態のPDPの主要構成を示す部分切り取り斜視図である。図2は、図1に示すPDPの断面図であり、図1のPDPにおいて隔壁12の存在しない部分を隔壁12と平行に切断した断面を示している。本実施の形態におけるPDPは、AC面放電型である。
図1は、本実施の形態のPDPの主要構成を示す部分切り取り斜視図である。図2は、図1に示すPDPの断面図であり、図1のPDPにおいて隔壁12の存在しない部分を隔壁12と平行に切断した断面を示している。本実施の形態におけるPDPは、AC面放電型である。
本実施の形態のPDPは、前面板1と背面板8とが貼り合わせられて形成されている。
前面板1は、前面ガラス基板2と、その内側面(放電空間14側の面)に形成された透明導電膜3およびバス電極4からなるストライプ状の表示電極(第1の電極)5と、表示電極5を覆う誘電体層6と、誘電体層6を覆う誘電体保護層7と、を備えている。誘電体層6は、後述する酸化物ガラスを用いて形成されている。
また、背面板8は、背面ガラス基板9と、その内側面(放電空間14側の面)に形成されたストライプ状のアドレス電極(第2の電極)10と、アドレス電極10を覆う誘電体層11と、誘電体層11上に設けられ、互いに隣接するアドレス電極10間に配置された帯状の隔壁12と、互いに隣接する隔壁12の間に形成された蛍光体層13と、を備えている。隔壁12は、各アドレス電極10を互いに隔離して、放電空間14を形成している。蛍光体層13は、カラー表示を可能とするために、赤色蛍光体層13(R)、緑色蛍光体層13(G)および青色蛍光体層13(B)が隔壁12を挟んで順番に配列されて形成されている。蛍光体層13を構成する蛍光体としては、例えば、下記に示すような材料を用いることができる。
青色蛍光体 BaMgAl10O17:Eu
緑色蛍光体 Zn2SiO4:Mn
赤色蛍光体 (Y,Gd)BO3:Eu
青色蛍光体 BaMgAl10O17:Eu
緑色蛍光体 Zn2SiO4:Mn
赤色蛍光体 (Y,Gd)BO3:Eu
前面板1および背面板8は、表示電極5とアドレス電極10の各々の長手方向が互いに直交し、かつ、表示電極5とアドレス電極10とが互いに対向するように配置され、封着部材(図示せず)を用いて互いに接合される。
放電空間14には、例えば、He、XeおよびNeから選ばれる少なくとも1種の希ガス成分からなる放電ガス(封入ガス)が66.5kPa〜79.8kPa(500〜600Torr)程度の圧力で封入されている。
表示電極5を構成する透明導電膜3は、ITO(インジウム錫酸化物)または酸化錫を主成分として形成されている。また、表示電極5を構成するバス電極4は、Ag、CuおよびAlから選ばれる少なくとも1種を主成分として形成でき、中でも、Agは耐酸化性に優れているため好適に用いられる。アドレス電極10は、Ag、CuおよびAlから選ばれる少なくとも1種を主成分として形成でき、同様の理由から、Agが好適に用いられる。
表示電極5とアドレス電極10は、それぞれ外部の駆動回路(図示せず)と接続され、駆動回路から印加される電圧によって放電空間14で放電を発生させる。この放電に伴って発生する短波長(波長147nm)の紫外線で蛍光体層13に含まれる蛍光体が励起されて、可視光が発光する。
次に、本実施の形態のPDPにおける誘電体層6、誘電体層11(以下、誘電体層6および誘電体層11を合わせて、単に誘電体層ということがある。)および隔壁12について説明する。
誘電体層6、誘電体層11および隔壁12の少なくとも一つは酸化物ガラスを含んでいる。この酸化物ガラスにおいて、酸素(O)を除く他の元素の含有率の合計を100原子%とした場合に、この酸化物ガラスに含まれるB、Si、Zn、K、NaおよびBiの含有率は以下の範囲にある。
B:55〜85原子%
Si:0〜15原子%
Zn:0〜15原子%
K:0〜10原子%
Na:0〜10原子%
Bi:1〜10原子%
Si+Zn:5〜30原子%
K+Na:1〜10原子%
K+Na+Bi:8〜15原子%
B:55〜85原子%
Si:0〜15原子%
Zn:0〜15原子%
K:0〜10原子%
Na:0〜10原子%
Bi:1〜10原子%
Si+Zn:5〜30原子%
K+Na:1〜10原子%
K+Na+Bi:8〜15原子%
上記のような組成を有する酸化物ガラス(以下、上記の組成を満たす酸化物ガラスを本実施の形態の酸化物ガラスという。)は、容易に比誘電率を8以下に調整できる。このため、誘電体層および隔壁の材料として用いた場合に、誘電体層および隔壁の比誘電率を低減できるので、電力ロスを低減してPDPの低消費電力化を図ることができる。さらに、本実施の形態の酸化物ガラスの軟化温度は、一般的にPDPのガラス基板に用いられるガラスの軟化温度よりも低くでき、さらに、熱膨張係数も一般的に用いられるガラス基板とマッチングした範囲に調整できる。また、ガラス転移温度等の他の諸物性についても、PDPの誘電体層および隔壁に使用可能な範囲に調整可能である。
次に、本実施の形態の酸化物ガラスの特徴および組成の限定理由について説明する。
本実施の形態の酸化物ガラスの比誘電率は、その組成により左右される。一般に、B2O3およびSiO2の含有率が高い時は低誘電率となり、Bi2O3、PbOおよびAl2O3の含有率が高い時は高誘電率となる。上述したように、PDPにおいて消費電力を低減する場合には、前面ガラス基板上の誘電体層と背面ガラス基板上の誘電体層とに使用される酸化物ガラスの比誘電率をできるだけ小さくすればよい。ただし、比誘電率があまり小さすぎると、例えばAC型PDPの誘電体層におけるメモリー機能が十分働かず誤放電が起こりやすくなるおそれがある。また、隔壁に用いられる酸化物ガラスについても、その比誘電率ができるだけ小さいものを選択すればよいが、あまり小さすぎると隔壁を介して誤放電が起こりやすくなるおそれがある。このような理由から、誘電体層に使用される酸化物ガラスの誘電率や、隔壁に使用される酸化物ガラスの誘電率は、4以上であることが好ましい。酸化物ガラスの比誘電率を4以上とすれば、誤放電の発生をより確実に抑制できる。なお、誤放電とは、所望のセルを放電させた際にそれと隣接するセルの放電も起こってしまう現象のことである。
また、比誘電率を4より小さくするためには、比誘電率が3.8程度である酸化珪素を多く含有することになる。このため、比誘電率を4より小さく設定すると、ガラス転移温度が上昇するので焼成温度が高くなり、基板歪みが発生するおそれがある。これらの理由からも、酸化物ガラスの比誘電率は4以上が好ましい。ガラスの軟化温度の低下、誤放電防止、放電電圧の低下の点から考えると、本実施の形態で用いられる酸化物ガラスの比誘電率は4〜8が好ましく、例えば5.9〜7.7の範囲に容易に調整できる。
また、本発明者らは、詳細な検討の結果、Biと、KまたはNaと、を併用することによって、(i)それらを単独で含有させる場合に比べ、少量にて軟化温度を低くすることができること、(ii)Bが55原子%以上と多い組成においてもガラス転移温度を十分高くできるとともに、熱処理時の成分蒸発量を少なくできること、を見出した。このような組成の酸化物ガラスは、Biの含有率を10原子%以下に抑えつつ、Bの含有率を高くできるので、低誘電率化を図ることが可能である。このような組成を有する本実施の形態の酸化物ガラスは、PDPの誘電体層や隔壁の材料に必要とされる低軟化温度、基板とマッチングする適切な熱膨張係数、低誘電率および高いガラス転移温度の全てを備えることが可能である。本実施の形態のPDPは、このような酸化物ガラスを、電極を被覆する誘電体層や隔壁を形成する材料に用いているため、低消費電力および高信頼性を実現できる。
本実施の形態のPDPに用いられる酸化物ガラスは、B2O3と、K2OまたはNa2Oと、Bi2O3とを必須成分とし、これにSiO2、ZnO、その他の成分を加えることによって、その特性を調整したものである。なお、以下の説明においては、酸化物ガラスに含まれる元素のうち、酸素を除く他の元素の含有率の合計を100原子%と考えて、各元素の含有率を表示する。
B2O3は、本実施の形態の酸化物ガラスの主成分である。Bの含有率が小さすぎると誘電率が高くなり、大きすぎるとガラス転移温度が低くなる。したがって、Bの含有率は、55原子%以上85原子%以下である。
SiO2は、ガラスを安定化させる効果を奏する。ただし、Siの含有率が大きすぎると、ガラス転移温度が低くなり、軟化温度が高くなる。したがって、Siの含有率は、0原子%以上15原子%以下である。
ZnOも、SiO2と同様に、ガラスを安定化させる効果を奏する。ただし、Znの含有率が大きすぎると、誘電率が高くなる。したがって、Znの含有率は、0原子%以上15原子%以下である。
なお、ガラス安定性を確保するため、また、ガラス転移温度が低くなりすぎることを防ぐために、Siの含有率とZnの含有率との合計を、5原子%以上30原子%以下とする。
K2OおよびNa2Oのうち少なくとも一方は、本実施の形態の酸化物ガラスの必須成分であり、軟化温度を下げる効果を奏する。Kの含有率とNaの含有率との合計が小さすぎると均一な組織のガラスを得にくくなる一方、大きすぎると黄変を生じやすくなる。したがって、Kの含有率とNaの含有率との合計は、1原子%以上10原子%以下である。
なお、黄変とは次のような現象のことをいう。成分にアルカリ金属を含有するガラスを、AgやCuを含む電極を被覆する誘電体層の材料として用いた場合、焼成条件等によっては、AgやCuが酸化されてイオン化し、これらのイオンがガラス中を拡散することがある。AgやCuのイオンは、ガラス中を拡散する際に再度還元されてコロイド状金属として析出することによって、誘電体層やガラス基板を黄色く着色する、いわゆる黄変を生じさせる。特に、このようなアルカリ金属成分を含有するガラスをPDPの前面板の誘電体層に用いた場合、黄変が生じると表示性能が劣化することになる。これに対し、本実施の形態の酸化物ガラスはアルカリ金属の含有率が小さいので、アルカリ金属成分と電極材料との反応による黄変現象が生じにくく、電極を被覆する誘電体層に用いた場合でも良好な表示性能を維持できる。
Bi2O3は、本実施の形態における酸化物ガラスの必須成分であり、軟化温度を下げるとともに、ガラスを安定化させる効果を奏する。Biの含有率が小さすぎると、熱処理時のBの蒸発量が多くなるとともに、軟化温度を低下させるためのアルカリ金属成分を多量に含有する必要性が生じるため、黄変が発生しやすくなる。また、Biの含有率が大きすぎると、誘電率が高くなりすぎるとともに、ガラスの着色が強くなる。したがって、Biの含有率は、1原子%以上10原子%以下である。また、ガラスの着色をより確実に防ぐためには、Biの含有率を7原子%以下とすることが好ましい。
さらに、K、NaおよびBiの含有率の合計を、8原子%以上15原子%以下とする。K、NaおよびBiの含有率の合計が小さすぎると軟化温度が高くなりすぎる一方、大きすぎるとガラス転移温度が低くなりすぎるからである。
以上のように、本実施の形態の酸化物ガラスは、Bと、SiおよびZnの少なくとも一方と、KおよびNaの少なくとも一方と、Biとを必須元素とする。
以下、本実施の形態の酸化物ガラスに添加可能な任意成分について説明する。添加可能な任意成分として、Mg、Ca、Sr、Ba、MoおよびWを例示できる。
Mg、Ca、SrおよびBaは必須成分ではないが、これらのアルカリ土類金属を加えることによって、本実施の形態の酸化物ガラスの軟化温度を大きく変化させることなくガラス転移温度を高くできる。ただし、これらアルカリ土類金属の含有率が大きすぎると、誘電率および軟化温度が共に高くなりすぎるため好ましくない。したがって、本実施の形態の酸化物ガラスがMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含有する場合は、Mg、Ca、SrおよびBaの含有率の合計が、0原子%を超え、5原子%以下の範囲となるようにすることが好ましい。また、Mg、Ca、SrおよびBaの各成分の含有率が同じである場合、ガラス転移温度を高くする効果はCaが最も大きく、Sr、Ba、Mgの順で小さくなる。誘電率は、Baが最も高くなり、Sr、Ca、Mgの順で小さくなる。したがって、これらの成分の中では、Caを用いることが好ましい。
また、MoおよびWは必須成分ではないが、これらの成分を加えることによって、本実施の形態の酸化物ガラスをAg等の電極を被覆する誘電体層の材料として用いた場合に、黄変の発生をより確実に抑制できる。ただし、MoおよびWの含有率が大きすぎるとMoおよびW自体による着色が生じる。このため、MoおよびWを添加する場合、MoおよびWの含有率の合計は5原子%未満、好ましくは3原子%以下である。
MoおよびWを加えることによる黄変低減のメカニズムは、現段階では必ずしも明らかではない。しかし、MoおよびWは、ガラス中でMoO4 2-やWO4 2-となり、加熱によって生成してガラス中を拡散するAg+やCu2+と結合してこれら金属イオンを安定化することによって、Ag+やCu2+が還元されて金属コロイドとして析出することを妨げる、すなわちAgイオンやCuイオンの安定化剤として作用している、と考えられる。
本実施の形態の酸化物ガラスは、上記成分を含み、実質的に上記成分のみから構成されていてもよい(換言すれば、上記した成分以外は実質的に含まれなくてもよい)が、本発明の効果が得られる限り、他の成分を含有してもよい。そのような他の成分の含有率の合計は、5原子%以下が好ましく、より好ましくは3原子%、さらに好ましくは1原子%以下である。
他の成分の具体例としては、例えばCu、Co、Ti、V、SbおよびPが挙げられる。これらのうち、Cu、CoおよびTiは、ガラスを青く着色する効果を奏するとともに、Biの存在による着色や、黄変による着色をキャンセルする効果を奏する。ただし、これらの成分を多量に添加すると、ガラスの透明性が低下する。
V、SbおよびPは、ガラス転移温度を10〜20℃程度低下させるが、軟化温度も同程度に低下させることができる。したがって、V、SbおよびPは、基本組成のガラス転移温度および軟化温度が十分高い場合に、これらを低下させるために使用するとよい。ただし、これらの成分を多量に添加すると、ガラスが着色したり、誘電率が高くなったりする。
また、上記以外にも、熱膨張係数の調整、ガラスの安定化および化学的耐久性の向上等のために、Li、Al、Zr、La、Ce、Y、Mn、Nb、Ta、Te、AgおよびSnから選ばれる少なくとも1種を、少量であれば添加してもよい。
また、本実施の形態の酸化物ガラスは、実質的にPbを含まない非鉛系ガラスとすることができる。本明細書において、「Pbを実質的に含まない」とは、除去することが工業的に困難かつ特性に影響を及ぼさないごく微量のPb成分を許容する主旨である。本実施の形態の酸化物ガラスにおいて、具体的には、酸素(O)を除く他の元素の含有率の合計を100原子%とした場合に、Pbの含有率が0.1原子%未満、望ましくは0.05原子%未満、より望ましくは0.01原子%未満、であることをいう。
なお、本明細書においては、本実施の形態の酸化物ガラスに含まれる元素の含有率を陽イオンのみの比率で表記しているが、本実施の形態のガラスは酸化物ガラスであるので、ガラス中には、当然、陰イオンとして酸素が存在する。本実施の形態の酸化物ガラスに含まれる陽イオンを、通常行われるように酸化物基準で表現すると、B2O3、Bi2O3、SiO2、ZnO、K2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、MoO3、WO3となる。ただし、こうした表記は、それぞれの陽イオンのガラス中における価数を限定している訳ではない。例えば、Biは3価以外の価数でもガラス中に存在しうる。
本実施の形態の酸化物ガラスは、以上に説明した範囲内で組成を調整することによって、低い比誘電率と共に、適切な熱膨張係数と軟化温度とを併せ持つものとなる。一般に、PDPに使用されるガラス基板には、フロート法で作製されて一般に入手が容易な窓板ガラスであるソーダライムガラスや、PDP用に開発された高歪点ガラスがある。それらは通常、600℃までの耐熱性、75×10-7〜85×10-7/℃の熱膨脹係数(平均線熱膨張係数)を持っている。このため、本実施の形態のPDPの誘電体層に用いる酸化物ガラスの熱膨脹係数は、ガラス基板の熱膨脹係数よりも少し低い60×10-7〜85×10-7/℃が望ましく、さらに65×10-7〜78×10-7/℃がより望ましい。また、この酸化物ガラスの軟化温度は、ガラスペーストの焼成をガラス基板の歪点である600℃以下で行う必要があることから、600℃以下の温度で焼成しても充分軟化するように、少なくとも595℃以下、より望ましくは590℃以下であることが望ましい。
また、本実施の形態の酸化物ガラスを本実施の形態のPDPの隔壁に用いる場合、その組成は誘電体層に用いる場合と同一である。しかし、蛍光体層の反射輝度を向上させるために、ガラス溶融時に発泡剤や空気を強制的に吹き込んで発泡させることによってガラスに気泡を含有させて、見かけ上は白濁するように加工するか、白色の酸化物フィラーを添加することが望ましい。本実施の形態の酸化物ガラスを発泡させて見かけ上は白濁するように加工すると、空気が内蔵されることによって見かけの誘電率が下がるので、より好ましい。
次に、本実施の形態における誘電体層6,11および隔壁12の形成方法について説明する。ここでは、好ましい例として、誘電体層6,11および隔壁12の全てを、上記に説明した本実施の形態の酸化物ガラスを用いて形成する例について説明するが、前面板1の誘電体層6、背面板8の誘電体層11および隔壁12のうち何れか1つのみが本実施の形態の酸化物ガラスによって形成されていてもよいし、誘電体層6,11のみ、あるいは、誘電体層6,11のうちの1つと隔壁12とが本実施の形態の酸化物ガラスによって形成されていてもよい。
まず、誘電体層6の形成方法について説明する。本実施の形態の酸化物ガラスの粉末(以下、原料粉末ということがある。)に、適量のバインダ樹脂および溶剤を添加することによってガラスペーストとする。このガラスペーストを、前面ガラス基板2上に形成された表示電極5の上から均一の厚さに塗布する。塗布したガラスペーストを前面ガラス基板2および表示電極5とともに焼成(同時焼成)する。このようにして、誘電体層6を形成することができる。なお、焼成は、同時焼成ではなく、表示電極5の焼成後にガラスペーストを塗布して焼成する個別焼成でもよい。
また、ガラスペーストは、原料粉末、溶剤およびバインダ樹脂の他に添加剤を含んでいてもよい。例えば、界面活性剤、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤または顔料染料など、種々の目的に応じた添加剤を使用することができる。
ガラスペーストに含まれるバインダ樹脂の種類は、原料粉末との反応性が低いものであれば、特に限定されない。化学的安定性、コストおよび安全性などの観点から、例えばニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレンfグリコール、カーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂およびメラミン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
ガラスペーストに含まれる溶剤の種類は、原料粉末との反応性が低いものであれば、特に限定されない。化学的安定性、コストおよび安全性などの観点、ならびに、バインダ樹脂との相溶性の観点から、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;脂肪族カルボン酸のエステル類;ターピネオール、ベンジルアルコール等のアルコール類;等の有機溶剤を使用することができる。
ガラスペーストを塗布する方法としては、スクリーン法、バーコーター法、ロールコーター法、ダイコーター法およびドクターブレード法を例示できる。塗布したガラスペーストは、得るべきガラス(誘電体層6)の軟化温度と同程度か、軟化点温度よりも高く、かつ前面ガラス基板2の歪み点よりも低い雰囲気温度に調節した焼成炉内で焼成する。本実施の形態の酸化物ガラスで形成するべき誘電体層6の軟化温度と、前面ガラス基板2の歪み点とが非常に近接している場合、焼成が困難となる。したがって、前面ガラス基板2の歪み点と誘電体層6の軟化温度の差が、例えば5℃以上(より好ましくは10℃以上)であることが望ましい。なお、上記ガラスペーストを用いてグリーンシートを作製し、そのグリーンシートを前面ガラス基板2に貼り付けて焼成することによって、誘電体層6を形成することも可能である。
また、誘電体層6の厚さは、絶縁性と光透過性を両立させるために、10μm〜50μm程度とすることが好ましい。
なお、誘電体層6に含まれる酸化物ガラスの量は、本発明の効果が得られる限り特に限定はないが、通常、50wt%以上(たとえば80wt%以上や90wt%以上)であることが好ましい。一例として、誘電体層6が、実質的に本実施の形態の酸化物ガラスのみから形成されていてもよい。ここで、実質的に酸化物ガラスのみから形成されるとは、誘電体層6に含まれる酸化物ガラスの含有率が99wt%以上であることをいう。一例として、誘電体層6が酸化物ガラスのみから形成されていてもよい。また、本実施の形態の酸化物ガラスを用いてPDPの前面板1の誘電体層6を形成する場合、光学特性を損ねることなくガラス強度の向上や熱膨張係数の調整を行うために、無機充填剤や無機顔料を添加してもよい。無機充填剤や無機顔料としては、たとえば、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、ジルコン、コーディエライト、石英などが挙げられる。
背面板8側に形成される誘電体層11についても、誘電体層6と同様の方法で形成できる。すなわち、本実施の形態の酸化物ガラスの粉末に適量のバインダ樹脂および溶剤を添加することによってガラスペーストを作製し、このガラスペーストを背面ガラス基板9上に形成されたアドレス電極10の上から均一の厚さに塗布する。塗布したガラスペーストを乾燥後焼成する。このようにして、アドレス電極10を覆う誘電体層11を形成できる。使用可能な溶剤およびバインダ樹脂は、誘電体層6の場合と同様である。
次に、隔壁12の形成方法について説明する。
まず、隔壁用のガラスペーストを作製する。本実施の形態の酸化物ガラスの粉末に白色酸化物フィラー(SiO2、Al2O3、TiO2等の粉末)を加えて調製した隔壁用ガラス粉末に、適量のバインダ樹脂および溶剤を添加することによって、隔壁用のガラスペーストを作製する。ここで、隔壁における可視光についての反射率(可視光反射率)を増大させるために添加するAl2O3、TiO2等は、比誘電率が10以上と高い。このため、これらを添加すれば、隔壁の可視光反射率は向上するが隔壁の誘電率は上昇する。したがって、隔壁の誘電率の上昇を5%程度に抑えるためには、白色酸化物フィラーの添加量を1wt%〜10wt%とすることが好ましい。しかし、本実施の形態では、溶融時にアルカリ土類の炭酸塩やカーボン等の発泡剤を少量添加して発泡させた酸化物ガラス(気泡を含有する酸化物ガラス)を用いることで、見かけ上の酸化物ガラスの誘電率を下げ、Al2O3、TiO2等の誘電率の高いフィラーの使用を20wt%まで高めることが可能である。また、誘電率の低いSiO2をフィラーに用いれば、隔壁の誘電率をさらに下げることが可能となり、容易に、可視光反射率の高い隔壁の比誘電率を8以下、例えば6.1〜7.5程度に調整できる。
隔壁用ガラスペーストを塗布する方法としては、スクリーン法、バーコーター法、ロールコーター法、ダイコーター法およびドクターブレード法を例示できる。塗布した隔壁用ガラスペーストを乾燥させた後、その上に隔壁パターンに応じたレジストパターンを形成し、その後、公知のサンドブラスト法にて隔壁を形成する。
また、フォトリソグラフィー法で隔壁を形成する場合は、まず、隔壁用粉末に適量の感光性バインダおよび溶剤を添加して感光性の隔壁用ペーストを作製する。この感光性の隔壁用ペーストを、スクリーン法、バーコーター法、ロールコーター法、ダイコーター法またはドクターブレード法で塗布した後、公知のフォトリソグラフィー法によって隔壁を形成する。
なお、上記に説明した隔壁の形成方法では、気泡を含有する酸化物ガラスを用い、かつ、フィラーを添加する場合について説明したが、気泡を含有する酸化物ガラスにフィラーを添加しないものを隔壁用ガラス粉末として用いることもできるし、気泡を含有しない酸化物ガラスにフィラーを添加したものを隔壁用ガラス粉末として用いることもできる。
以上のように、本実施の形態のPDPは、誘電体層および隔壁を本実施の形態の酸化物ガラスを用いて形成することによって、低消費電力および高信頼性を共に実現することが可能である。
また、隔壁12に含まれる酸化物ガラスの量は、本発明の効果が得られる限り特に限定はないが、通常、50wt%以上(たとえば80wt%以上や90wt%以上)であることが好ましい。
(実施の形態2)
本発明のPDPの別の実施の形態について説明する。本実施の形態では、図3に示すような、表示電極を被覆する誘電体層が2層構造であるPDPの一例について説明する。
本発明のPDPの別の実施の形態について説明する。本実施の形態では、図3に示すような、表示電極を被覆する誘電体層が2層構造であるPDPの一例について説明する。
図3に示すPDPは、表示電極5を被覆する第1の誘電体層15と、第1の誘電体層15上に配置された第2の誘電体層16とが設けられた構造となっている以外は、図1および図2に示した実施の形態1のPDPと同様の構造を有している。なお、図1および図2に示したPDPと同じ部材には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図3に示すように、第1の誘電体層15は透明導電膜3およびバス電極4を被覆し、第2の誘電体層16は、第1の誘電体層15を被覆するように配設されている。したがって、前面ガラス基板2、第1の誘電体層15および第2の誘電体層16が、厚さ方向にこの順番で並ぶ。
本実施の形態のように誘電体層を2層構造とする場合、例えば、表示電極5に直接接する第1の誘電体層15を、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラスで形成し、第2の誘電体層16を、実施の形態1で説明した組成を有する酸化物ガラス(本実施の形態の酸化物ガラス)で形成することができる。この場合、表示電極5に直接接触している第1の誘電体層15がアルカリ金属成分を含まないので、バス電極4に含まれるAgまたはCuのコロイド析出による黄変および耐圧低下の問題が生じない。さらに、第1の誘電体層15は、AgまたはCuのイオンが第2の誘電体層16に拡散することを阻止する機能を有する。したがって、アルカリ金属成分を少量含む本実施の形態の酸化物ガラスで第2の誘電体層16を形成した場合でも、第2の誘電体層16に黄変や耐圧低下といった問題が生じない。
また、従来の鉛系ガラスやビスマス系ガラスは比誘電率が9〜13と大きいが、本実施の形態の酸化物ガラスは、比誘電率を8以下、例えば5.9〜7.7の範囲内に容易に調整できる。例えば比誘電率が5.9〜7.7の範囲である誘電率の低い酸化物ガラスを用いて第2の誘電体層16を形成すれば、第1の誘電体層15に多少比誘電率が高いガラスを使用したとしても、全体として低誘電率の誘電体層を形成でき、消費電力を低減できる。
また、第1の誘電体層15を本実施の形態の酸化物ガラスで形成することも可能である。この酸化物ガラスは含有するアルカリ金属成分が少ないため、直接的に電極を被覆する第1の誘電体層15に用いた場合でも黄変の問題が顕著とならないからである。また、この場合、第2の誘電体層16を、第1の誘電体層15に用いる酸化物ガラスよりも低い誘電率を有する材料によって形成することが好ましい。このようにした場合、表示電極5を被覆する誘電体層全体としてさらなる低誘電率化を実現できるので、より一層の低消費電力化を図ることが可能となる。
図3に示す2層構造の誘電体層は、第1の誘電体層15を形成した後、この上に第2の誘電体層16用のガラスペーストを塗布し、その後焼成することによって形成できる。このような方法で誘電体層を形成するためには、第1の誘電体層15に用いられるガラスの軟化温度が第2の誘電体層に含まれるガラスの軟化温度よりも高いことが好ましい。
また、表示電極5(透明導電膜3およびバス電極4)と第2誘電体層16との絶縁、および界面反応防止を確保するため、第1の誘電体層15の厚さは1μm以上とすることが好ましい。さらに、高い絶縁性と高い可視光透過率を両立させるために、第1の誘電体層15の厚さと第2の誘電体層16の厚さとの合計が10μm〜50μmであることが好ましい。
なお、本実施の形態の酸化物ガラスを誘電体層や隔壁に好適に採用できるPDPとしては、実施の形態1および2で説明した図1〜図3に示すような面放電型のPDPが代表的であるが、これに限定されるものではなく、対向放電型のPDPにも適用可能である。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
[実施例1]
本実施例におけるPDPは実施の形態1で説明した構成のPDPであり、画素が1920(水平)×1080(垂直)の50インチフルスペックのハイビジョンTVとし、1セルピッチ(1隔壁ピッチ)を0.20mm(水平)とした。また、このPDPにおいて、表示電極を構成する透明導電膜の幅は150μm、バス電極の幅は70μm、表示電極の放電ギャップは75μm、隔壁の高さは110μm、隔壁の幅は底面(背面板側)で約80μm、頂部(前面板側)で約40μm、アドレス電極の幅は100μmとした。
本実施例におけるPDPは実施の形態1で説明した構成のPDPであり、画素が1920(水平)×1080(垂直)の50インチフルスペックのハイビジョンTVとし、1セルピッチ(1隔壁ピッチ)を0.20mm(水平)とした。また、このPDPにおいて、表示電極を構成する透明導電膜の幅は150μm、バス電極の幅は70μm、表示電極の放電ギャップは75μm、隔壁の高さは110μm、隔壁の幅は底面(背面板側)で約80μm、頂部(前面板側)で約40μm、アドレス電極の幅は100μmとした。
(前面板の作製)
まず、前面ガラス基板として、フロート法で作製され、79×10-7/℃の平均線熱膨脹係数を有する高歪点ガラスを用意した。このガラス基板上に、ITOからなる透明導電膜およびAgからなるバス電極を形成した。この透明導電膜およびバス電極を覆う誘電体層の形成に用いる酸化物ガラス(誘電体層用酸化物ガラス)として、酸素(O)を除く各元素の原子比が表1に示すとおりであるサンプル1〜31の酸化物ガラスを作製した。
まず、前面ガラス基板として、フロート法で作製され、79×10-7/℃の平均線熱膨脹係数を有する高歪点ガラスを用意した。このガラス基板上に、ITOからなる透明導電膜およびAgからなるバス電極を形成した。この透明導電膜およびバス電極を覆う誘電体層の形成に用いる酸化物ガラス(誘電体層用酸化物ガラス)として、酸素(O)を除く各元素の原子比が表1に示すとおりであるサンプル1〜31の酸化物ガラスを作製した。
本実施例における各サンプルの酸化物ガラスでは、出発原料として、試薬特級以上の金属酸化物粉末または炭酸塩粉末を用いた。これらの原料を、各金属元素の原子%が表1になるように秤量し、混合した後、白金坩堝に入れ、1100℃〜1200℃の電気炉中で1時間溶融した。得られた融液を急冷して、ガラスフリットを得た。このガラスフリットをボールミルで粉砕して、ガラス粉末を作製した。ただし、表1のサンプル17,27,28,29では、均一なガラスが得られなかった。
次に、サンプル17,27,28,29以外のガラス粉末に、バインダ樹脂としてエチルセルロース、溶剤としてブチルカルビトールアセテートおよびターピネオールを添加して、ガラスペーストを作製した。このガラスペーストを、前面ガラス基板上に形成された表示電極の上から均一の厚さに塗布した。塗布したガラスペーストを前面ガラス基板および表示電極とともに焼成(同時焼成)した。このようにして、厚さ約40μmの誘電体層を形成した。さらに、この誘電体層上に、酸化マグネシウム(MgO)を電子ビーム蒸着法によって蒸着した後、500℃で焼成することによって、MgOからなる誘電体保護層を形成した。このようにして、図1および図2に示すようなPDPの前面板を得た。
(背面板の作製)
次に、背面ガラス基板として、同じくフロート法で作製され、79×10-7/℃の平均線熱膨脹係数を有する高歪点ガラスを用意した。このガラス基板上に、Agからなるアドレス電極を形成した。次に、このアドレス電極上に、前面板で用いた誘電体層用酸化物ガラスの各サンプルを使用して、同様の方法で15μmの厚さの誘電体層を形成した。
次に、背面ガラス基板として、同じくフロート法で作製され、79×10-7/℃の平均線熱膨脹係数を有する高歪点ガラスを用意した。このガラス基板上に、Agからなるアドレス電極を形成した。次に、このアドレス電極上に、前面板で用いた誘電体層用酸化物ガラスの各サンプルを使用して、同様の方法で15μmの厚さの誘電体層を形成した。
次に、この誘電体層上に形成する隔壁用のガラス材料を準備した。まず、誘電体層に用いた酸化物ガラスと同様に、各元素の原子比が表1に示すようになるように原料を秤量、混合した。混合した原料を白金坩堝に入れ、1100℃〜1200℃の電気炉中で1時間溶融した。得られた融液を急冷して、ガラスフリットを得た(ただし、サンプル17,27,28,29の酸化物ガラスは除く。)。一部のサンプルについては、溶融時に炭酸バリウムを少量導入しながら撹拌することによって発泡させて、気泡を含有する酸化物ガラスとした。これらのガラスをボールミルで粉砕して、ガラス粉末を作製した。また、一部のサンプルについては、ガラス粉末の一部に、白色の酸化物フィラーとしてTiO2、SiO2、Al2O3の粉末を、ガラス粉末に対して5wt%添加した。
以上のように作製した隔壁用のガラス材料(通常の酸化物ガラス、気泡を含有する酸化物ガラス、白色酸化物フィラーが添加された酸化物ガラス)に、バインダ樹脂としてエチルセルロースを、溶剤としてブチルカルビトールアセテートおよびターピネオールを加えて混合分散させて、隔壁用ガラスペーストを作製した。隔壁用のガラス材料の各サンプルを表2に示す。母ガラス組成のNo.は、表1の各サンプルNo.と対応したものである。したがって、誘電体層を作製する際に均一ガラス化しなかったサンプル17,27,28,29は、隔壁用のガラス材料としても用いなかった。
各サンプルの隔壁用ガラスペーストを、背面ガラス基板上に形成された誘電体層上に均一の厚さで塗布した。塗布した隔壁用ガラスペーストを乾燥させた後、フォトレジストを全面に塗布し、隔壁形成用マスクパターンを用いて露光を行い、現像後、公知のサンドブラスト法にて隔壁パターンを形成した。この隔壁パターンを焼成して、背面ガラス基板上に隔壁を形成した。
次に、互いに隣接する隔壁間に、(Y、Gd)BO3:Euからなる赤色蛍光体、Zn2SiO4:Mnからなる緑色蛍光体およびBaMgAl10O17:Euからなる青色蛍光体をインクジェット法にて塗布し、焼成後、蛍光体層を形成した。
なお、本実施例においては、隔壁に用いたガラス材料の母ガラス組成を誘電体層に用いられているガラス材料の組成と一致させて、すなわち、表1の誘電体層用の酸化物ガラスを用いて誘電体層を形成し、それと同じNo.の表2に示された隔壁用のガラス材料を用いて隔壁を形成して、背面板を作製した。
(PDPの作製)
表1および表2のガラスを用いて作製した前面板と背面板とを、表示電極の長手方向とアドレス電極の長手方向とが互いに直交するような向きに対向させて配置し、封着部材(低融点ガラス)を用いて互いに接合した。放電空間のガスを排気した後、Xe15vol%およびNe85vol%からなる放電ガスを66.5kPa(500Torr)の圧力で封入してパネルとした。さらに駆動回路を実装することによって、PDPを完成させた。なお、本実施例で作製したPDPでは、前面板の誘電体層、背面板の誘電体層および隔壁に用いたガラス材料に、表1および表2に示した同じNo.の材料を用いた。
(PDPの作製)
表1および表2のガラスを用いて作製した前面板と背面板とを、表示電極の長手方向とアドレス電極の長手方向とが互いに直交するような向きに対向させて配置し、封着部材(低融点ガラス)を用いて互いに接合した。放電空間のガスを排気した後、Xe15vol%およびNe85vol%からなる放電ガスを66.5kPa(500Torr)の圧力で封入してパネルとした。さらに駆動回路を実装することによって、PDPを完成させた。なお、本実施例で作製したPDPでは、前面板の誘電体層、背面板の誘電体層および隔壁に用いたガラス材料に、表1および表2に示した同じNo.の材料を用いた。
次に、この駆動回路で、表示電極の放電電圧を180V、200KHzとして、全白画像で駆動した時の消費電力を測定した。その結果を表3に示す。表3では、表1のサンプル1の酸化物ガラスを用いて誘電体層を形成し、かつ、表2のサンプル1のガラス材料を用いて隔壁を形成して作製したPDPをサンプル1とした。このサンプル1のPDPの消費電力を100と規格化し、他のサンプルのPDPの消費電力を測定してサンプル1のPDPの消費電力と比較した。また、表示電極の放電電圧を200Vで100分間印加することによってパネルの加速寿命を調べ、表示性能に不具合が生じないかどうかを調べた。これらの結果も表3に示した。
以下に、本実施例における評価結果について説明する。
まず、表1に示すガラスの熱特性の評価方法について説明する。
作製したガラス粉末を用い、マクロ型示差熱分析計を用いて、軟化温度Tsを測定した。また、熱重量分析により、300℃〜600℃間の重量減少ΔWを測定した。また、作製したガラス粉末を再溶融して4mm×4mm×20mmのロッドを作製し、熱機械分析計を用いて、ガラス転移温度Tgと、30〜300℃における熱膨張係数(平均線熱膨張係数)αを測定した。
表1および表2に示した比誘電率εは、作製したガラス粉末を再溶融して20mm×20mm×厚さ1mmのガラス板を作製し、そのガラス板の表裏にAuを蒸着して電極を形成し、LCRメータにより、周波数1kHz、25℃にて比誘電率を測定することによって得た値である。なお、表2に示す隔壁用ガラスの比誘電率は、フィラーを含むサンプルについては、フィラーが添加された状態のガラス板を作製して測定した値である。なお、表中において、ガラス転移温度Tgと軟化温度Tsの単位は℃、熱膨張係数αの単位は×10-7/℃、加熱重量減少ΔWの単位は質量%である。
表1に示す酸化物ガラスについて、KとBiの含有率を5原子%に固定し、Bの含有率を増加、Zn+Siの含有率を減少させていったサンプル1〜8,10では、Bの増加に伴い比誘電率εが低下した。ただし、同時にガラス転移温度Tgも低下し、B=90原子%となるNo.10では465℃未満となった。一方、Znが多くBが比較的少ないサンプル1〜4は、比誘電率εが8を超える程大きく、低消費電力化には向いていなかった。サンプル1〜4,6,7では、Znのみ減少させ、Siの含有率を一定としている。Siの含有率とZnの含有率とを入れ替えたサンプル4とサンプル5とを比較すると明らかなように、Siの含有率が高いサンプル5では、比誘電率εが低くなるが、軟化温度Tsが高くなった。このため、表3に示すように、サンプル5のガラスを用いたPDPについては、加速寿命において不良が発生した。Znが15原子%以下となるサンプル6〜8は、比誘電率εが8以下、軟化温度Tsも580℃以下で、かつ、ガラス転移温度Tgも465℃を超え、熱膨張係数αも適切で、PDP用に適していた。しかし、SiおよびZnの両方が含まれない(Si+Zn=0)サンプル9では、ガラス転移温度Tgが465℃未満となり、パネルの加速寿命試験(表3参照)でもPDP用には適さなかった。Bが55原子%で、SiおよびZnの含有率がそれぞれ15原子%のサンプル11,12は、良好な特性が得られた。また、サンプル11の比誘電率を、表1に示されている値と表2に示されている値とで比較するとわかるように、表1に示す誘電体層用のガラスを発泡させたガラスは、発泡前よりも、誘電率が3〜5%程度低いことがわかった。
以上を総合的に判断すると、誘電体層用の酸化物ガラスについては、Bの含有率は55原子%以上85原子%以下である必要性があり、より望ましくは60原子%以上85原子%以下、さらには70原子%以上85原子%以下が望ましい。
また、Bを70原子%、KとBiをそれぞれ5原子%に固定し、ZnとSiの含有率を変化させたサンプル6とサンプル13〜16において、Siが20原子%のNo.13は軟化温度Tsが600℃と高く、パネルの加速寿命試験でもPDP用には適さないことがわかった。また、Znが20原子%のサンプル16では、比誘電率が8を越え低消費電力化には向いていなかった。同様に、Si+Znが30原子%を超えるサンプル1〜3も、比誘電率が8を超え低消費電力化には向いていなかった。
また、Bを75原子%に固定し、KとBiとを同量としながら増加させ、その分ZnとSiを減少させたサンプル17〜21において、KとBiとが共に含まれない(K+Bi=0)サンプル17は均一なガラスが得られず、パネルを作製することができなかった。KとBiの含有率の合計が少ないサンプル18は、軟化温度Tsが601℃と高かったため、パネルの加速寿命試験でPDP用には適さないことがわかった。また、KとBiの含有率の合計が多いサンプル21は、ガラス転移温度Tgが459℃と低かったため、パネルの加速寿命試験でPDP用には適さないことがわかった。これに対し、K+Biが8〜15原子%となる、サンプル19および20では、良好な特性が得られた。
また、SiとZnの含有率をそれぞれ5原子%に固定し、Biを含まず、かつ、Kの含有率を変化させたサンプル22〜24では、ガラス転移温度Tgがいずれも低く、しかも加熱時の重量減少ΔWが大きかったため、パネルの加速寿命試験でPDP用には適さないことがわかった。
なお、以上のように軟化温度が高かったり、ガラス転移温度が低かったり、重量減少が多いガラスの場合、例えば、焼結不良箇所が生じたり歪みが残ったりすることがある。したがって、このようなガラスをPDPに用いると、絶縁不良箇所が生じやすくなったり、点灯しないセルが増加しやすくなったりするので、上記のパネルの加速寿命試験で得られたような結果になるものと考えられる。
また、SiとZnの含有率をそれぞれ5原子%に固定し、Kを含まず、かつ、Biの含有率を変化させたサンプル27〜29では、均一なガラスが得られなかったため、パネルを作製することができなかった。
また、B、SiおよびZnの含有率を固定し、KとBiの含有率を変化させた、サンプル7,24〜27を比較すると、KとBiを共存させたサンプル7,25,26において、均一なガラスが得られるとともに、加熱による重量減少ΔWも小さくなり、他の特性も良好なPDPが得られた。
次に、サンプル7のKをNaに全量置き換えたサンプル30、および半量置き換えたサンプル31では、サンプル7に比べてやや熱膨張係数αが低下し、比誘電率εが増加し、軟化温度が低下したが、その変化は大きなものではなく、Kの代用としてNa使用可能であることがわかった。しかし、一般的に、NaはKに比べて熱膨張係数αが小さくなりやすく、黄変を生じやすい傾向があるため、アルカリ金属成分としては、NaよりもKを含有することが望ましい。
以上の結果を勘案すると、軟化温度Tsおよび比誘電率εが十分に低く、かつ熱膨張係数αが最も適当なのは、Bの含有率が75〜85原子%付近であった。また、アルカリ金属成分が少ない方が黄変の発生を抑制できることを考慮すると、黄変抑制の点からは、サンプル7,8が好ましいと考えられる。
なお、表1に示す以外にも、種々の組成の組み合わせを検討したが、いずれの場合にも、B=55〜85原子%、Si=0〜15原子%、Zn=0〜15原子%、Si+Zn=5〜30原子%、K+Na=1〜10原子%、Bi=1〜10原子%、K+Na+Bi=8〜15原子%の範囲で組成を調整することによって、8.0以下の比誘電率ε、465℃以上のガラス転移温度Tg、595℃以下の軟化温度Ts、60〜90×10-7/℃の熱膨張係数α、0.1質量%以下の重量減少ΔWを併せ持つ、良好な特性のガラスが得られた。
また、上記のガラスを用いて作製したPDPについて総合的に判断すると、サンプル6,7,8,11,12,14,15,19,20,25,26,30,31のPDPは、誘電体層の比誘電率が5.9〜7.7、隔壁の比誘電率が6.1〜7.5と低かった。また、これらのPDPに用いた酸化物ガラスは、軟化温度は593℃以下であるためフロート法で作製された一般に入手可能なガラス基板が使用でき、かつ、このガラス基板の熱膨張係数にマッチングした68×10-7〜78×10-7/℃の熱膨張係数を有し、かつ、焼成による重量減少が少なかった。したがって、この酸化物ガラスを誘電体層と隔壁に使用したPDPは、消費電力が少なく、200Vの過電圧で100分間駆動させても、誘電体絶縁破壊やAgマイグレーションによる駆動回路や画像の不具合の少ない、信頼性の高い結果が得られた。
[実施例2]
実施例2では、実施例1でパネル特性の良好なB−Si−Zn−Bi−K系ガラスにおいて、アルカリ土類金属酸化物(Mg,Ca,Sr,Baの酸化物)を添加した場合に得られる効果について実験した。
実施例2では、実施例1でパネル特性の良好なB−Si−Zn−Bi−K系ガラスにおいて、アルカリ土類金属酸化物(Mg,Ca,Sr,Baの酸化物)を添加した場合に得られる効果について実験した。
実施例1と同様の方法で、各元素の原子比が表4に示すとおりであるガラス粉末、ガラスロッドおよびガラス板を作製し、実施例1と同様の方法で、ガラス転移温度Tg、軟化点Ts、熱膨張係数α、比誘電率εを測定した。結果を表4に示す。
表4より明らかなように、Mg、Ca、SrまたはBaを加えることによって、軟化温度Tsをあまり上昇させることなく、ガラス転移温度Tgを上昇させることができ、Tg=480℃以上とすることができた。しかし、これらアルカリ土類金属成分の添加に伴い、比誘電率εと軟化温度Tsも上昇するので、添加量は5原子%以下に抑えるとよいことが分かった。また、添加したアルカリ土類金属の種類で比較すると、ガラス転移温度Tgを480℃以上とするのに必要な添加量は、Caが最も少ないことが確認された。また、Caを添加した場合は、比誘電率εの増加も小さかった。したがって、アルカリ土類金属を添加する場合は、Caを添加することが望ましい。
なお、表4に示す以外のB:Si:Zn:Bi:K比においても、同様のアルカリ土類金属の添加効果を検討したが、いずれも同様の効果が得られた。また、複数種類のアルカリ土類金属の同時添加を検討したところ、平均的な効果が示された。なお、ここでいう平均的な効果とは、複数種類のアルカリ土類金属が添加された場合は、各元素の含有率に応じて、各元素特有の効果が表れるということである。アルカリ土類金属を複数種類添加する場合でも、含有率の合計を5原子%以下とすると良好な結果が得られた。
特に、表4中のサンプル101〜125のガラスは、比誘電率が6.6〜7.2と低かった。さらに、ガラスの軟化点が593℃以下であるため、フロート法で作製されて一般に入手可能なガラス基板が使用できることが確認された。さらに、このように一般に入手可能なガラス基板の熱膨張係数にマッチングした72×10-7〜80×10-7/℃の熱膨張係数を有し、焼成により化学的に重量減少の少ないガラスであることも確認できた。これにより、このガラスをPDPの誘電体層および隔壁に使用したパネルは、実施例1のサンプル6,7,8,11,12,14,15,19,20,25,26,30,31と同様に、消費電力が少なく、200Vの過電圧で100分間駆動させる加速寿命試験でも良好な結果が得られた。
[実施例3]
実施例3では、実施例1でパネル特性の良好なB−Si−Zn−Bi−K系ガラスにおいて、MoおよびWを添加した場合に得られる黄変抑制効果について実験した。本実施例では、Ag電極を被覆する誘電体層を、MoおよびWのうち少なくとも一方を0.05原子%〜5原子%添加した上記組成のガラスを用いて形成し、ガラス基板に発生する黄変について確認した。
実施例3では、実施例1でパネル特性の良好なB−Si−Zn−Bi−K系ガラスにおいて、MoおよびWを添加した場合に得られる黄変抑制効果について実験した。本実施例では、Ag電極を被覆する誘電体層を、MoおよびWのうち少なくとも一方を0.05原子%〜5原子%添加した上記組成のガラスを用いて形成し、ガラス基板に発生する黄変について確認した。
実施例1と同様の方法で、各元素の原子比が、Si:Zn:Bi:K:Ca=3.9:4.9:4.9:5.9:2となり、かつ、B、MoおよびWが表5に示す比率となるガラス粉末を作製し、さらに、ガラスロッドおよびガラス板を作製した。実施例1と同様の方法で、ガラス転移温度Tg、軟化温度Ts、熱膨張係数α、比誘電率εを測定した。また、比較例のため、MoおよびWを共に含まず、かつ、B:Si:Zn:K:Ca=80:2:5:11:2となるガラス試料も作製した。なお、表5では成分の合計が100%とならないが、これは、残部が上記原子比で添加されたSi、Zn、Bi、Kで占められるためである。
次に、上記ガラス粉末に、バインダ樹脂であるエチルセルロースと溶剤であるα−テルピネオールとを、3本ロールで混合および分散させてガラスペーストを得た。
次に、厚さ2.8mmの平坦なソーダライムガラス(耐熱温度:600℃、熱膨張係数:82.7×10-7/℃(30℃〜300℃))からなるガラス基板の主面上に、ITOの材料をPDPの前面ガラス基板の所定パターンで塗工して、乾燥炉内で乾燥させた。これにより、ITO膜付きガラス基板を得た。このITO膜付きガラス基板に対し、Ag粉末と有機ビヒクルとの混合物であるAgペーストを、ITO膜に重なるようにスクリーン印刷法でライン状に塗工した。そして、ガラス基板全体を加熱して、Agペーストを焼成し、電極付きガラス基板とした。
この電極付きガラス基板に対し、予め調製しておいたガラスペーストをブレードコーター法にて塗工した。その後、電極付きガラス基板を雰囲気温度90℃の焼成炉内に30分間保持してガラスペーストを乾燥させ、軟化温度+10℃の雰囲気温度で10分間焼成することにより誘電体層を形成した。そして、作製した電極付きガラス基板の裏面側(電極のない側)において、色彩色差計を用いて反射色を測定した。なお、測定には自然光を用い、基準となる白色板により補正した。結果を表5に示す。
表5中に示すa*およびb*は、L*a*b*表色系に基づく。a*値は、プラス方向に大きくなると赤色が強まり、マイナス方向に大きくなると緑色が強まることを示す。b*値は、プラス方向に大きくなると黄色が強まり、マイナス方向に大きくなると青色が強まることを示す。一般に、a*値が−5〜+5の範囲であり、かつb*値が−5〜+5の範囲であれば、問題となるほどのパネルの着色は観測されない。また、b*値が+5を越えていても、この色をキャンセルするために、添加により青色を呈するCu、Co、Ti等をガラスに加えたり、あるいはカラーフィルターを用いたりすることにより、正常な色目に戻すことが可能である。しかしながら、b*値が10を越えると、より色の濃い着色剤やフィルターを用いる必要が生じ、その結果、トータルとしてのガラスの透過率を低下させることになり、好ましくない。したがって、b*は、+10以下であれば問題はなく(ただし、より低い値であることが望ましい)、+5以下であることが望ましい。
MoとWとのいずれも添加していないサンプル201と、他の成分はほぼ同量であるがKを多量に含みBiを含まない比較例とを比べると、比較例の方が、誘電率が若干低いもののb*の値は明らかに高く、サンプル201についてはb*が10以下であった。すなわち、サンプル201のガラス組成では、Biを含まずアルカリ金属のみを含む従来材料と比較して(実施例1のサンプル22〜24と比較して)、実施例1で述べたように、ガラス転移温度が高く、加熱時の重量減少が少ないとともに、黄変が生じにくい(あるいはその程度が低い)という特徴があった。
次に、Moおよび/またはWを添加したサンプル202〜218では、MoおよびWの添加量が増加していくにつれてb*値が低下し、0.1原子%以上でb*値が5.0以下となって、黄変が抑制された。しかし、さらに添加量を増加させると、b*値も再度上昇しはじめ、添加量5原子%に達すると無添加の場合を越えた。これは、Agコロイドの析出による黄変現象自体は生じにくくなるが、MoやW自体がガラスを着色してしまうためと考えられる。したがって、Moおよび/またはWの添加量としては、0.1原子%以上5原子%未満が好ましく、0.1原子%以上3原子%以下とすることがさらに好ましい。
なお、表5に示した組成に限定されず、本発明の組成範囲内において、母ガラスの主組成比の異なるものや、これにMoやWを添加したものについて、同様の評価を行ったが、いずれの場合もb*値は比較的小さく、さらにMoやWの添加によりb*値を容易に5以下とすることができることも確認できた。
また、表5に示すサンプル201〜218は、比誘電率が6.8〜7.3と低く、ガラスの軟化点593℃以下で、フロート法で作製されて一般に入手可能なガラス基板が使用でき、かつ前記ガラス基板の熱膨張係数にマッチングした、72×10-7〜80×10-7/℃の熱膨張係数を持ち、焼成により化学的に重量減少の少ない酸化物ガラスであった。したがって、この酸化物ガラスをPDPの誘電体層と隔壁に使用したパネルは、実施例1と同様に、消費電力が少なく、200Vの過電圧で100時間駆動させても誘電体層の絶縁破壊や駆動回路の不具合が少なく信頼性が高い結果に加えて、黄変の発生が問題とならないことが確認された。
本発明のプラズマディスプレイパネルは消費電力の低減と信頼性向上が実現できるため、大型化および高精細化されたプラズマディスプレイパネルに好適に用いられる。
1 前面板
2 前面ガラス基板
3 透明導電膜
4 バス電極
5 表示電極(第1の電極)
6 誘電体層
7 誘電体保護層
8 背面板
9 背面ガラス基板
10 アドレス電極(第2の電極)
11 誘電体層
12 隔壁
13 蛍光体
14 放電空間
15 第1の誘電体層
16 第2の誘電体層
2 前面ガラス基板
3 透明導電膜
4 バス電極
5 表示電極(第1の電極)
6 誘電体層
7 誘電体保護層
8 背面板
9 背面ガラス基板
10 アドレス電極(第2の電極)
11 誘電体層
12 隔壁
13 蛍光体
14 放電空間
15 第1の誘電体層
16 第2の誘電体層
Claims (7)
- 第1の電極が設けられた前面板と、前記第1の電極と交差するように第2の電極が設けられており、かつ、前記前面板と対向して配置された背面板と、前記第1の電極および前記第2の電極から選ばれる少なくとも1つの電極を被覆する誘電体層と、放電空間を形成するために前記前面板と前記背面板との間に配置された隔壁と、を含むプラズマディスプレイパネルであって、
前記誘電体層および前記隔壁から選ばれる少なくとも1つが酸化物ガラスを含み、
前記酸化物ガラスにおいて、酸素(O)を除く他の元素の含有率の合計を100原子%とした場合に、前記酸化物ガラスに含まれるB、Si、Zn、K、NaおよびBiの含有率が以下の範囲にあるプラズマディスプレイパネル。
B:55〜85原子%
Si:0〜15原子%
Zn:0〜15原子%
K:0〜10原子%
Na:0〜10原子%
Bi:1〜10原子%
Si+Zn:5〜30原子%
K+Na:1〜10原子%
K+Na+Bi:8〜15原子% - 前記酸化物ガラスは、さらに、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種を含んでおり、
前記酸化物ガラスにおいて、酸素(O)を除く他の元素の含有率の合計を100原子%とした場合に、前記酸化物ガラスに含まれるMg、Ca、SrおよびBaの含有率の合計が、5原子%以下である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記酸化物ガラスは、さらに、MoおよびWから選ばれる少なくとも一方を含んでおり、
前記酸化物ガラスにおいて、酸素(O)を除く他の元素の含有率の合計を100原子%とした場合に、前記酸化物ガラスに含まれるMoおよびWの含有率の合計が、5原子%未満である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記酸化物ガラスの比誘電率が、5.9〜7.7である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
- 前記隔壁が前記酸化物ガラスを含み、
前記隔壁に含まれる前記酸化物ガラスが気泡を含有する請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記隔壁が前記酸化物ガラスとフィラーとを含み、
前記フィラーの材料が、SiO2、TiO2およびAl2O3から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。 - 前記隔壁が前記酸化物ガラスを含み、
前記隔壁の比誘電率が、6.1〜7.5である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
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JP2006122679A JP2007294321A (ja) | 2006-04-26 | 2006-04-26 | プラズマディスプレイパネル |
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JP2010280538A (ja) * | 2009-06-05 | 2010-12-16 | Nippon Electric Glass Co Ltd | 絶縁層形成用ガラス組成物および絶縁層形成材料 |
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- 2006-04-26 JP JP2006122679A patent/JP2007294321A/ja active Pending
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