JP2007290937A - 塩化ニッケル水溶液の精製方法 - Google Patents

塩化ニッケル水溶液の精製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液から不純物元素を除去する際に、高塩酸濃度の液を用いることなく、安全かつ経済的に、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素を除去することができるとともに、得られた精製液を電解液として用いた電解採取法において、不純物元素含有量が低い電解ニッケルを高電流効率で得ることができる塩化ニッケル水溶液の精製方法を提供する。
【解決手段】不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液に水溶性金属塩化物を添加し、全塩素濃度を8.5〜10.0モル/L、及び塩酸濃度を3モル/L以下に調整した後、次いで調整後の塩化ニッケル水溶液を強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させて不純物元素を吸着除去することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は塩化ニッケル水溶液の精製方法に関し、さらに詳しくは、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液から不純物元素を除去する際に、高塩酸濃度の液を用いることなく、安全かつ経済的に、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素を除去することができるとともに、得られた精製液を電解液として用いた電解採取法において、不純物元素含有量が低い電解ニッケルを高電流効率で得ることができる塩化ニッケル水溶液の精製方法に関する。
従来、ニッケルは、その固有の磁気特性、耐食性、耐熱性等の優れた特性を利用する電子材料及び合金材料として広く使われている。さらに、近年、半導体の内部電極としても有望な材料として注目されている。これらの用途に対しては、不純物元素が存在すると特性を大きく損ねることがあるため、市販されている純度99.9重量%レベルの電気ニッケルを大幅に上回る純度、例えば6N(99.9999重量%)クラスの高純度ニッケルが求められ、このため様々な手段での精製処理が試みられている。
ところで、不純物元素の含有量が少ない金属ニッケルを製造するためには、まず、不純物元素の含有量が少ない水溶液を得て、それを用いて電解採取法により電気ニッケルを得ることが一般的である。例えば、粗ニッケルを5〜12M濃度の塩酸で溶解し、得られた酸性塩化ニッケル水溶液を0.01〜1の通液量(SV)で陰イオン交換樹脂に通液して不純物元素を精製した液から、濃縮又は拡散透析によって遊離塩酸分を除去し、その後電解し、得られた電気ニッケルを真空溶解する。これにより、Fe、Coがそれぞれ1ppm以下のニッケルが得られるとしている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、これら従来の方法では、一般の電気ニッケルと大差ない含有量の不純物元素が含まれていたり、また、銅のように精製効果が未確立な不純物元素があった。特に、コバルトについては、その性質上ニッケルとの相互分離が一般に困難であるため、原料中の含有量が上昇した場合に、イオン交換樹脂での分離も不完全となりまたばらつきが生じるので、十分な精製処理が実現していないという課題があった。
特に、通常、陰イオン交換樹脂への通液は、塩酸濃度の高い液を用いるので、ミストの発生による設備腐食及び安全性などで難点があった。また、通液した後に金属化するための電解工程では、このように高塩酸濃度でpHが低くなると、カソードでは電解析出よりも水素の発生が優先して電流効率が著しく低下したり、或いは電着状態が悪化することが知られている。このため、pHを上げて効率の良い電解採取を行うために、通液した後の液を、中和又は拡散透析などで処理し、塩酸分を除去することも考えられる。しかしながら、高濃度の塩酸液を中和する際には、大量の中和剤が必要となるため、コスト増加及びコンタミの恐れがある。さらに、拡散透析などの設備を設けることは、液バランスの増加及びメンテナンスの手間を要し実用的ではなかった。
以上の状況から、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液から、これら不純物元素を除去する際に、高塩酸濃度の液を用いることなく、安全かつ経済的に不純物元素を除去することができる塩化ニッケル水溶液の精製方法が求められている。
特開平11−152592号公報(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液から不純物元素を除去する際に、高塩酸濃度の液を用いることなく、安全かつ経済的に、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素を除去することができるとともに、得られた精製液を電解液として用いた電解採取法において、不純物元素含有量が低い電解ニッケルを高電流効率で得ることができる塩化ニッケル水溶液の精製方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、塩化ニッケル水溶液の精製方法について、鋭意研究を重ねた結果、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液の全塩素濃度を特定の濃度に調整した後、強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させて不純物元素を吸着除去させたところ、高塩酸濃度の液を用いることなく、安全かつ経済的に、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素をすることができ、得られた精製液を電解液として用いた電解採取法において、不純物元素含有量が低い電解ニッケルを高電流効率で得ることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液に水溶性金属塩化物を添加し、全塩素濃度を8.5〜10.0モル/L、及び塩酸濃度を3モル/L以下に調整した後、次いで調整後の塩化ニッケル水溶液を強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させて不純物元素を吸着除去することを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記水溶性金属塩化物は、塩化ニッケル、或いはリチウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物であることを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記調整後の塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度が250〜290g/Lであることを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる際の液温は、40〜60℃であることを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる際に、強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したイオン交換カラムを使用し、それに酸性塩化ニッケル水溶液を通液するとともに、該カラムへの1時間あたりの通液量をSV1〜3に調整することを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、吸着された不純物元素を含む樹脂が充填されたカラムに、該樹脂容積の1〜3倍量に当たる、全塩素濃度が8モル/Lの塩酸、或いはリチウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物の水溶液を通液して樹脂に付着した液を洗浄した後、溶離液を通液して樹脂に吸着した不純物元素を溶離することを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6いずれかの発明において、前記不純物元素は、コバルト、鉄又は銅から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法が提供される。
本発明の高純度ニッケルの製造方法は、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液から不純物元素を除去する際に、高塩酸濃度の液を用いることなく、安全かつ経済的に、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素を除去することができるとともに、得られた精製液を電解液として用いた電解採取法において、不純物元素含有量が低い電解ニッケルを高電流効率で得ることができるので、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法を詳細に説明する。
本発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法は、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液に水溶性金属塩化物を添加し、全塩素濃度を8.5〜10.0モル/L、及び塩酸濃度を3モル/L以下に調整した後、次いで調整後の塩化ニッケル水溶液を強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させて不純物元素を吸着除去することを特徴とする。
本発明において、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液を強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる際に、水溶性金属塩化物を添加して、その全塩素濃度を8.5〜10.0モル/Lに、また塩酸濃度を3モル/L以下に調整することが重要である。これにより、塩酸濃度が低いので、安全かつ経済的にイオン交換樹脂による精製が行なえ、さらに電解が行なえる。すなわち、従来技術では、陰イオン交換樹脂を用いて塩化ニッケル水溶液中のコバルトイオンを吸着させるためには、通常8〜12モル/Lのような高塩酸濃度の液が用いられていた。これに対して、本発明の方法では、高塩酸濃度の代わりに、塩酸の使用量を極力抑えて塩酸以外の可溶性塩化物を添加して全塩素濃度を所定値に調整する。
本発明に用いる不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液としては、特に限定されるものではなく、原料鉱石、粗ニッケル原料、一般的な製品グレードの金属ニッケルを塩素ガス、酸素ガス等の酸化剤の存在下に浸出し、或いは溶解して得られる酸性塩化ニッケル水溶液が用いられる。ここで、粗ニッケル原料としては、不純物元素を含有する各種の塩類、金属ニッケル、ニッケル硫化物等が挙げられる。また、一般的な製品グレードの金属ニッケルとしては、純度99.9重量%レベルの電気ニッケルが含まれる。ただし、遊離の塩酸を多量に含むものは、前述した高塩酸濃度の液に伴う問題を発生させるので、遊離塩酸の濃度が3モル/L以下になるように塩酸の使用量を極力抑えて製造することが要求される。
上記不純物元素としては、原料、製造方法等により異なるが、通常は銅、鉄、コバルト、亜鉛等のいずれか1種以上が含有されているが、これらに加えて、強塩基性陰イオン交換樹脂により吸着される他の金属が含まれていてもよい。この中で、コバルトは他の不純物元素に比べてより普遍的な共存元素イオンであり、最もニッケルとの分離が困難な元素の一つである。
上記方法において、まず、上記酸性塩化ニッケル水溶液に水溶性金属塩化物を添加して全塩素濃度を8.5〜10.0モル/Lに調整する。すなわち、全塩素濃度が8.5モル/L以上の液であれば、コバルトイオンは強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着される。また、銅イオン及び鉄イオンでは、これ以下の全塩素濃度でも樹脂に吸着される。一方、全塩素濃度が10.0モル/Lを超えると、コバルト吸着のそれ以上の増加は見られない。
ここで、強塩基性陰イオン交換樹脂でのコバルトの吸着への酸性塩化ニッケル水溶液の全塩素濃度の影響を図を用いて説明する。図1は、酸性塩化ニッケル水溶液の調整後の全塩素濃度と強塩基性陰イオン交換樹脂を用いたカラムからの通過後液のコバルト濃度の関係を表す。図1より、酸性塩化ニッケル水溶液の調整後の全塩素濃度が上昇し、8.5モル/L以上で、コバルトの吸着が完全になることが分かる。
上記水溶性金属塩化物は全塩素濃度を所定値に調整するために使用されるが、この水溶性金属塩化物としては、特に限定されるものではないが、塩化ニッケル、或いはリチウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物が好ましく、塩化ニッケルがより好ましい。すなわち、これらの塩化物の添加により塩酸を用いる場合と同等の吸着効果が得られる。しかも、塩酸を添加しない塩化物水溶液の場合には、液のpHを0以上にすることができるので、安全上有効である。また、これらの中で、塩化ニッケルを用いる方が、電着するニッケルをそのまま利用することができ、かつコンタミの防止、コスト低減等にも有効であるので、他の金属塩化物に比べて明らかに有利である。
上記調整後の塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度は、特に限定されるものではないが、例えば、製錬プロセスからの産出液に水溶性金属塩化物として塩化ニッケルが添加される場合、或いは原料として塩化ニッケル結晶が溶解される場合には、ニッケル濃度が250〜290g/Lであることが好ましい。すなわち、ニッケル濃度が250g/L未満では、全塩素濃度が不十分である。一方、電解液のニッケル濃度が高いほど、電流密度を上昇させやすく生産性の向上に貢献することは知られているが、ニッケル濃度が290g/Lを超えると、液の粘性が上昇してイオン交換樹脂を充填したカラムへの通液が阻害されるようになる。また、より高いニッケル濃度とした場合は、過飽和となって液中に塩化物の結晶が析出し、通液の障害となることがあるので、上限を290g/Lに留めるのが適当である。
上記方法において、次いで、調整後の塩化ニッケル水溶液を強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させて不純物元素を吸着除去する。これにより、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素が除去された精製液が得られる。
上記強塩基性陰イオン交換樹脂としては、特に限定されるものではなく、市販のダイアイオンSA10A(三菱化学(株)製)、アンバーライトIRA−402(オルガノ(株)製)、ダウエックス1−X4(ダウケミカル(株)製)等が挙げられる。
強塩基性陰イオン交換樹脂と酸性塩化ニッケル水溶液との接触方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、酸性塩化ニッケル水溶液中で強塩基性陰イオン交換樹脂を混合撹拌する方法等が用いられるが、特に、効率性から、強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したイオン交換カラムを使用して酸性塩化ニッケル水溶液を通液し、吸着、洗浄、及び溶離の操作を連続的に行なう方法が好ましい。
このとき、前記カラムへの1時間あたりの通液量としては、SV(空間速度)3以下に調整することが好ましく、1〜3がより好ましい。すなわち、一般に強塩基性陰イオン交換樹脂は不純物元素との分配に差があり、例えば、銅イオンは強塩基性陰イオン交換樹脂への分配が、コバルト及び鉄に比べて小さく、カラム内に吸着される前に流失したり、他の不純物元素に置換されたりして通液中に溶離することも知られている。これに対して、強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したカラムを使用する際に、該カラムへの1時間あたりの通液量をSV1〜3とすることにより、カラム出口での銅イオン濃度を0.5mg/L以下まで低減することができる。
上記強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる際の液温は、特に限定されるものではないが、40〜60℃が好ましい。すなわち、高濃度にニッケルを含む液を室温で通液する際には、カラム内に気泡が蓄積する場合がある。これは、高ニッケル濃度の液は、塩酸酸性の液よりも比重と粘性が大きいため、空気を巻き込んだりするなどして発生した気泡がなかなかカラム内の液面から抜け出すことができないためと考えられる。この状態を放置すると、気泡がカラム内の樹脂層中に留まって均一な液流れを阻害することがある。これに対して、液の温度を上げることで気泡の発生を抑制して円滑な通液が実現できる。なお、液温は高いほど通液性は良好であるが、樹脂、カラム、配管等の材質、取扱い上の安全性及び蒸発による濃縮の防止等の点から、上記範囲が好適である。
上記方法により得られる精製液としては、上記イオン交換カラム出口での銅、鉄、コバルト濃度のいずれもが0.1mg/L以下であり、これを用いて、電解採取において銅、鉄及びコバルト品位がそれぞれ1ppm以下である電解ニッケルを得ることができる。
さらに、必要に応じて、不純物元素を吸着した樹脂を、洗浄及び溶離を行なうことで再使用することができる。例えば、不純物元素を吸着した樹脂が充填されているカラムに、樹脂容積の1〜3倍量に当たる、全塩素濃度が8モル/Lの塩酸、或いはリチウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物の水溶液を通液して樹脂に付着した液を洗浄した後、溶離液を通液して樹脂に吸着した不純物元素を溶離する。
ここで、不純物元素を溶離する際に、まず、樹脂容積の1倍量の濃度0.5〜1モル/Lの塩酸水溶液を通液することにより鉄イオンを溶離し、次いで樹脂容積の1〜3倍量以上の水を通液することにより銅、コバルト、亜鉛を順次選択的に溶離する。すなわち、樹脂からの不用意な溶離や吸着を防ぐために、洗浄には吸着液と同じ塩酸濃度のものが好ましい。また、溶離は水でおこなえるが、洗浄との間に0.5〜1モル/L程度の弱塩酸性溶液を樹脂容積と同量程度流すことで鉄の沈殿生成を抑制し、同時に銅又はコバルトをそれぞれ別々に溶離し、分離して回収することもできる。
以上のように、上記精製方法により、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液から不純物元素を除去する際に、高塩酸濃度の液を用いることなく、安全かつ経済的に、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素を除去することができる。また、得られた精製液を電解液として用いた電解採取法において、不純物元素含有量が低い電解ニッケルを高電流効率で得ることができる。
すなわち、上記精製液の場合には、電解液のpHを0以上とすることができる。これにより、電解工程における電流効率が向上する。また、電解時に塩酸ミストが発生しずらいので、電解時の液温を室温よりも高く設定することができる。すなわち、電解液の温度を60℃程度に高くすることにより、電解での槽電圧が低下し、電着応力が低減するなどコストと品質の面で好ましい効果が得られる。
上記電解採取法としては、特に限定されるものではないが、電解槽内部をカソード室とアノード室とに隔膜により分割し、カソードと不溶性アノードとの間に通電することによってニッケルをカソード表面上に電解析出させる隔膜電解法が用いられる。
ここで、上記精製液を用いて、コバルト、鉄、及び銅含有量がそれぞれ0.1〜1ppmの電解ニッケルを、90%以上の電流効率で得ることができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属元素、全塩素、及び塩酸濃度の分析は、以下の通りであった。
(1)金属元素の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)全塩素の分析:蛍光X線で行った。
(3)塩酸濃度の分析:中和滴定法で行った。
(実施例1)
まず、酸性塩化ニッケル水溶液として、不純物元素としてコバルト:4ppm、銅:0.6ppm、及び鉄:0.5ppmを含有する試薬塩化ニッケルを純水に溶解し、全塩素濃度が8.62モル/Lの元液を調製した。このときのニッケル濃度は、253g/Lであった。また、コバルト濃度は3.9mg/L、銅濃度は0.58mg/L、及び鉄濃度は0.6mg/Lであった。
次いで、強塩基性陰イオン交換樹脂(商品名:ダイアイオンSA10A)90mLを充填したカラム内に、上記元液を単位時間当たりの通液量(SV)を3として、常温で通液した。その際、カラム内に気泡が生じたときには、通液する液の温度を50〜60℃まで上昇することで、気泡をカラムの上方に抜きカラム内での偏流を防止することができた。その後、樹脂量の10倍量まで通液した後、通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1、2に示す。
引き続いて、カラム内に濃度8モル/Lの塩酸を樹脂量の3倍量をSV3で通液し、不純物元素を吸着した樹脂を洗浄した。その後、濃度0.5モル/Lの塩酸水溶液を樹脂量と同量だけ通液し、吸着されていた鉄を溶離した。引き続いて純水を樹脂の3〜5倍量通液し、吸着されていた銅とコバルトを溶離した。
その後、容量1リットルの塩化ビニール製の電解槽内に、上記通過後液を満たした。それから、電極面積が100×50mmとなるようにマスキングしたアノード1枚とカソード1枚を装入した。アノードとしてはペルメレック社製の不溶性電極(DSA)を、カソードとしてはチタン板を用いた。液温は常温とし、通電電流2A(電流密度400A/m)で24時間通電し、そのときの電流効率と電着状態を求めた。結果を表3に示す。また、通電終了後得られた電解ニッケルの銅、鉄、及びコバルト品位を求めたところ、いずれも、1ppm以下であった。
なお、電流効率は、通電終了後カソードの電着量を測定し、次の関係式で算出した。
電流効率(%)=電着量(g)/[電流(A)×通電時間(H)×1.09]×100
(実施例2)
酸性塩化ニッケル水溶液として、全塩素濃度が8.5モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は、250g/Lであった。
(実施例3)
酸性塩化ニッケル水溶液として、試薬塩化ニッケルと塩酸を用いて全塩素濃度が8.84モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は195g/L、また塩酸濃度は2.2モル/Lであった。
(実施例4)
酸性塩化ニッケル水溶液として、試薬塩化ニッケルと塩化ナトリウムを用いて全塩素濃度が8.84モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は195g/Lであった。
(比較例1)
酸性塩化ニッケル水溶液として、試薬塩化ニッケルをニッケル濃度が30g/L及び塩酸濃度が8モル/Lになるように塩酸に溶解し、全塩素濃度を9モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。
また、上記通過後液を用いた電解採取における電流効率と電着状態を求めた。結果を表3に示す。
(比較例2)
酸性塩化ニッケル水溶液として、試薬塩化ニッケルをニッケル濃度が30g/L及び塩酸濃度が7モル/Lになるように塩酸に溶解し、全塩素濃度を8モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。
(比較例3)
酸性塩化ニッケル水溶液として、試薬塩化ニッケルをニッケル濃度が30g/L及び塩酸濃度が9モル/Lになるように塩酸に溶解し、全塩素濃度を10モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。
(比較例4)
酸性塩化ニッケル水溶液として、試薬塩化ニッケルをニッケル濃度が30g/L及び塩酸濃度が6モル/Lになるように塩酸に溶解し、全塩素濃度を7モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。
(比較例5)
酸性塩化ニッケル水溶液として、全塩素濃度が8.42モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は、248g/Lであった。
(比較例6)
酸性塩化ニッケル水溶液として、全塩素濃度が8.38モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は、246g/Lであった。
(比較例7)
酸性塩化ニッケル水溶液として、全塩素濃度が8.31モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は、244g/Lであった。
(比較例8)
酸性塩化ニッケル水溶液として、全塩素濃度が8.01モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は、235g/Lであった。
(比較例9)
酸性塩化ニッケル水溶液として、全塩素濃度が6.58モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は、193g/Lであった。
(比較例10)
酸性塩化ニッケル水溶液として、試薬塩化ニッケルと塩酸を用いて全塩素濃度が7.61モル/Lの元液を調製したこと以外は、実施例1と同様に行ない、イオン交換カラムの通過後液を得て、その組成を分析した。結果を表1に示す。なお、このときのニッケル濃度は194g/L、また塩酸濃度は1モル/Lであった。
Figure 2007290937
表1より、実施例1〜4では、元液の全塩素濃度が8.5モル/L以上で、かつ金属塩化物が添加され塩酸濃度が0〜3モル/Lに調整され、本発明にしたがって行なわれたので、通過後液のコバルトが低下しており十分に吸着除去されていることが分かる。
これに対して、比較例1〜4では、全塩素濃度が8モル/L以上である場合に、コバルトが吸着除去されているが、いずれも塩酸濃度が高いことが分かる。したがって、高塩酸濃度の液を用いることによる安全上の課題のほか、後述の電解に際しての問題がある。また、比較例5〜10では、全塩素濃度がこれらの条件に合わないため、コバルトの吸着除去において満足すべき結果が得られないことが分かる。
Figure 2007290937
表2より、実施例1では、コバルトとともに、銅と鉄が低下しており十分に吸着除去されていることが分かる。
Figure 2007290937
表3より、実施例1では、本発明に従って得られたニッケル濃度が高い電解液を用いて電解採取がなされたので、90%以上の電流効率が得られ、また得られた電着物の表面状態も良好であった。しかも、前述したように、得られた電解ニッケルの銅、鉄、及びコバルト品位がいずれも1ppm以下であることから、高純度ニッケルが得られることが分かった。これに対して、比較例1では、塩酸濃度が高いため、電流効率と電着物の表面状態のいずれにおいても満足すべき結果が得られないことが分かる。
以上より明らかなように、本発明の塩化ニッケル水溶液の精製方法によって、不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液から、銅、鉄、コバルト、亜鉛等の不純物元素が十分に除去された精製液が得られる。したがって、これを電解液として用いた電解採取法により、高純度の電解ニッケルが得られるので、半導体などの電子材料及び合金材料など不純物の少ない金属ニッケルを製造しようとする分野に利用できる。
酸性塩化ニッケル水溶液の調整後の全塩素濃度と強塩基性陰イオン交換樹脂を用いたカラムからの通過後液のコバルト濃度の関係を表す図である。

Claims (7)

  1. 不純物元素を含有する酸性塩化ニッケル水溶液に水溶性金属塩化物を添加し、全塩素濃度を8.5〜10.0モル/L、及び塩酸濃度を3モル/L以下に調整した後、次いで調整後の塩化ニッケル水溶液を強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させて不純物元素を吸着除去することを特徴とする塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  2. 前記水溶性金属塩化物は、塩化ニッケル、或いはリチウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  3. 前記調整後の塩化ニッケル水溶液のニッケル濃度が250〜290g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  4. 強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる際の液温は、40〜60℃であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  5. 強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる際に、強塩基性陰イオン交換樹脂を充填したイオン交換カラムを使用し、それに酸性塩化ニッケル水溶液を通液するとともに、該カラムへの1時間あたりの通液量をSV1〜3に調整することを特徴とする請求項1に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  6. 吸着された不純物元素を含む樹脂が充填されたカラムに、該樹脂容積の1〜3倍量に当たる、全塩素濃度が8モル/Lの塩酸、或いはリチウム、ナトリウム、カリウム及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の塩化物の水溶液を通液して樹脂に付着した液を洗浄した後、溶離液を通液して樹脂に吸着した不純物元素を溶離することを特徴とする請求項5に記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
  7. 前記不純物元素は、コバルト、鉄又は銅から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塩化ニッケル水溶液の精製方法。
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