上述のような片面2層タイプの光ディスクでは、光ビームの入射側から第1の記録ディスク(以下では、第1情報部ともいう)、スペーサ層及び第2の記録ディスク(以下では、第2情報部ともいう)がこの順で設けられた構造を有する。第2情報部に対して情報を記録再生する際には、光ビームは、第1情報部及びスペーサ層を介して第2情報部に照射される。
しかしながら、このような片面2層タイプの光ディスクでは、第1情報部の基板には鏡面部、プリフォーマットされた情報領域等の基板形状の異なる領域が形成されているので、第1情報部を通過する光ビームの光線透過率は、第1情報部の基板上に形成された形状の異なる各領域で異なる。また、第1情報部を通過する光ビームの光線透過率は、第1情報部の記録層内の未記録の情報記録領域、記録後の情報記録領域等でも異なる。すなわち、第1情報部内の基板の形状や記録層の記録状態によって、第1情報部を通過する光ビームの光線透過率が異なる。そのため、片面2層タイプの光ディスクの第2情報部に対して情報の記録再生を行う際に、光ビームが第1情報部の光線透過率の異なる領域に亘って通過すると、光ヘッドから照射される光量が一定であっても、第2情報部に到達する光ビームの照射光量は変化してしまう。
上述した第2情報部に到達する光ビームの光量変動は、第2情報部からの反射光量以外で検出することはできない。従って、第2情報部の再生信号に対して、AGC(Auto Gain Control)を行うことにより、この光量変動に対応することは可能である。しかしながら、光ビーム内の光強度分布が不均一になるため、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に対してオフセットが生じる。このようなオフセットは、第2情報部の再生信号品質に対して光ビームの光量変動による影響以上の悪影響を及ぼし、情報再生にエラーを生じさせる原因となる。場合によっては、第2情報部の記録再生時のフォーカス制御あるいはトラッキング制御が維持できなくなることもある。
さらに、第2情報部に到達する光ビームの光量変動は、情報記録時において次のような致命的な影響を及ぼす。第1情報部の光透過率の高い領域を通過する光ビームで第2情報部の記録パワーを設定した場合、第1情報部の光透過率の低い領域を通過する光ビームが照射される第2情報部の領域では、光ビームの記録パワーがパワー不足となり信号に大きなアシンメトリを生じる可能性がある。また、逆の場合、すなわち、第1情報部の光透過率の低い領域を通過する光ビームで第2情報部の記録パワーを設定した場合、第1情報部の光透過率の高い領域を通過する光ビームが照射される第2情報部の領域では、オーバーパワーで信号を書き込むことになるので、クロスライト(隣のトラックの信号に重ね書きしてしまうこと)を起こしてしまう可能性がある。また、第2情報部の記録パワーを決めるためのテスト中に光ビームの光透過率変動があれば、記録パワーの決定に際して記録光量変動及び再生振幅変動の両方の影響を受けるため、記録パワーが決定できないままテスト動作が終了し、第2情報部全体の記録が不可能になる恐れがある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、2つ以上の情報部を有する光記録媒体において、光入射側から遠い側の情報部に対する情報の記録再生を安定に且つ信頼性高く行うことのできる光記録媒体を提供することである。
本発明の第1の態様に従えば、光ビームの照射により情報が記録再生される光記録媒体であって、
第1基板及び第1記録層を有し、上記光ビームが第1基板側から入射される第1情報部と、
第2基板及び第2記録層を有し、第2記録層が第1情報部の第1記録層側に配置されている第2情報部とを備え、
第1情報部が、内周側から第1プリフォーマット領域と、第1遷移領域と、第1内周側テスト領域と、第1情報記録領域と、第1外周側テスト領域とをこの順で有し、第1プリフォーマット領域に対応する第1基板上の領域にはエンボスピットが設けられており、第1遷移領域に対応する第1基板上の領域が鏡面であり、第1情報記録領域、第1内周側テスト領域及び第1外周側テスト領域に対応する第1基板上の領域には上記光ビームの案内溝が設けられており、
第2情報部が、内周側から第2プリフォーマット領域と、第2遷移領域と、第2内周側テスト領域と、第2情報記録領域と、第2外周側テスト領域とをこの順で有し、第2プリフォーマット領域に対応する第2基板上の領域にはエンボスピットが設けられており、第2遷移領域に対応する第2基板上の領域が鏡面であり、第2情報記録領域、第2内周側テスト領域及び第2外周側テスト領域に対応する第2基板上の領域には上記光ビームの案内溝が設けられており、
第2内周側テスト領域の最内周トラックの半径位置及び第2外周側テスト領域の最外周トラックの半径位置における上記光記録媒体の中心からの距離をそれぞれR1及びR2とし、第2情報部に上記光ビームが集光されている際の第1情報部における上記光ビームの半径をrとし、上記光記録媒体の偏心量をRRp−pとしたときに、
第1プリフォーマット領域、第1遷移領域、第1内周側テスト領域及び第1外周側テスト領域が、第1情報部の上記光記録媒体の中心からの距離R1−RRp−p−r〜R2+RRp−p+rの領域と異なる領域に配置されていることを特徴とする光記録媒体が提供される。
本発明の第2の態様に従えば、光ビームの照射により情報が記録再生される光記録媒体であって、
第1情報部と、
第1情報部を介して上記光ビームが照射される第2情報部とを備え、
第1情報部が、内周側から第1プリフォーマット領域と、第1遷移領域と、第1内周側テスト領域と、第1情報記録領域と、第1外周側テスト領域とをこの順で有し、第1プリフォーマット領域にはエンボスピットが設けられており、第1遷移領域が鏡面であり、第1情報記録領域、第1内周側テスト領域及び第1外周側テスト領域には上記光ビームの案内溝が設けられており、
第2情報部が、内周側から第2プリフォーマット領域と、第2遷移領域と、第2内周側テスト領域と、第2情報記録領域と、第2外周側テスト領域とをこの順で有し、第2プリフォーマット領域にはエンボスピットが設けられており、第2遷移領域が鏡面であり、第2情報記録領域、第2内周側テスト領域及び第2外周側テスト領域には上記光ビームの案内溝が設けられており、
第2内周側テスト領域の最内周トラックの半径位置及び第2外周側テスト領域の最外周トラックの半径位置における上記光記録媒体の中心からの距離をそれぞれR1及びR2とし、第2情報部に上記光ビームが集光されている際の第1情報部における上記光ビームの半径をrとし、上記光記録媒体の偏心量をRRp−pとしたときに、
第1プリフォーマット領域、第1遷移領域、第1内周側テスト領域及び第1外周側テスト領域が、第1情報部の上記光記録媒体の中心からの距離R1−RRp−p−r〜R2+RRp−p+rの領域と異なる領域に配置されていることを特徴とする光記録媒体が提供される。
本発明の第3の態様に従えば、光ビームの照射により情報が記録再生される光記録媒体であって、
第1基板及び第1記録層を有し、上記光ビームが第1基板側から入射される第1情報部と、
第2基板及び第2記録層を有し、第1情報部を介して上記光ビームが照射される第2情報部とを備え、
第1情報部が、内周側から第1プリフォーマット領域と、第1遷移領域と、第1内周側テスト領域と、第1情報記録領域と、第1外周側テスト領域とをこの順で有し、第1プリフォーマット領域に対応する第1基板上の領域にはエンボスピットが設けられており、第1遷移領域に対応する第1基板上の領域が鏡面であり、第1情報記録領域、第1内周側テスト領域及び第1外周側テスト領域に対応する第1基板上の領域には上記光ビームの案内溝が設けられており、
第2情報部が、内周側から第2プリフォーマット領域と、第2遷移領域と、第2内周側テスト領域と、第2情報記録領域と、第2外周側テスト領域とをこの順で有し、第2プリフォーマット領域に対応する第2基板上の領域にはエンボスピットが設けられており、第2遷移領域に対応する第2基板上の領域が鏡面であり、第2情報記録領域、第2内周側テスト領域及び第2外周側テスト領域に対応する第2基板上の領域には上記光ビームの案内溝が設けられており、
第2内周側テスト領域の最内周トラックの半径位置及び第2外周側テスト領域の最外周トラックの半径位置における上記光記録媒体の中心からの距離をそれぞれR1及びR2とし、第2情報部に上記光ビームが集光されている際の第1情報部における上記光ビームの半径をrとし、上記光記録媒体の偏心量をRRp−pとしたときに、
第1プリフォーマット領域、第1遷移領域、第1内周側テスト領域及び第1外周側テスト領域が、第1情報部の上記光記録媒体の中心からの距離R1−RRp−p−r〜R2+RRp−p+rの領域と異なる領域に配置されていることを特徴とする光記録媒体が提供される。
本発明の光記録媒体では、さらに、第1情報部と第2情報部との間にスペーサ層を備えることが好ましい。
片面2層タイプの光記録媒体における第1情報部と第2情報部との物理フォーマットの位置関係の一例を図4に示した。図4に示した例では、第2情報部の第2情報記録領域内の内周近傍及び外周近傍にテスト領域が設けられた場合の光記録媒体である。すなわち、図4中の第2情報記録領域の内周近傍のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)、第2情報記録領域の外周近傍のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)、第1情報部の第1情報記録領域の最内周案内溝の半径位置R(0,G,i)、及び、第1情報部の第1情報記録領域の最外周案内溝の半径位置R(0,G,o)における光記録媒体の中心からの距離をそれぞれR1、R2、R3及びR4としたきに、上記各領域の半径位置の間に、下記(1)及び(2)式の両方の関係が成立する場合の本発明の光記録媒体である。
R1≧R3+r …(1)
R2≦R4−r …(2)
なお、上記表記の半径位置R(P1,P2,P3)の括弧内の各パラメータの意味は次の通りである。第1のパラメータP1は、半径位置Rが第1情報部及び第2情報部のいずれの情報部のものであるかを示すパラメータであり、第1情報部(L0層)の場合には「0」で表示し、第2情報部(L1層)の場合には「1」を表示している。第2のパラメータP2は、物理フォーマット中のどの領域の半径位置であるかを示すパラメータであり、第2情報記録領域の内周近傍のテスト領域の場合には「TI」で表示し、第2情報記録領域の外周近傍のテスト領域の場合には「TO」で表示し、情報記録領域(溝が形成されている領域)の場合には「G」で表示し、そして、ユーザ情報等が記録される情報記録再生領域の場合には「D」で表示している。また、第3のパラメータP3は、半径位置がパラメータP2で指定された領域の最内周位置であるのか、最外周位置であるのかを表示するパラメータであり、最内周位置である場合には「i」で表示し、最外周位置である場合には「o」で表示している。
図4は、スペーサ層30(接着層)を介して隣接する第1情報部10(以下では、L0層ともいう)及び第2情報部20(以下では、L1層ともいう)の各物理フォーマットの半径方向の概略構成断面図であり、図面の左側から右側に向かう方向が光記録媒体の外周方向となる。図4の例では、L0層10の物理フォーマットは、光記録媒体の内周側からプリフォーマット領域51(ROM領域)と、遷移領域52(ミラー領域)と、情報記録領域50と、ミラー領域58とから構成される。また、L0層10の情報記録領域50は、図4に示すように、2つのバッファ領域53,57と、2つのテスト領域54,56と、情報記録再生領域55とから構成され、テスト領域54及び56は、それぞれ情報記録領域50の内周近傍及び外周近傍に設けられている。図4の例では、L1層20もまたL0層10と同様の物理フォーマット構成を有する。
図4(a)は、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対して、上記(1)式の下限条件(R1=R3+rの関係)が成立する場合のL0層10及びL1層20間の物理フォーマットの位置関係を示した図である。一方、図4(b)は、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対して、上記(2)式の上限条件(R2=R4−rの関係)が成立する場合のL0層10及びL1層20間の物理フォーマットの位置関係を示した図である。なお、通常、L0層10とL1層20とを貼り合わせた際には偏心があり、図4の例では、L0層10及びL1層20の外周端が偏心量の仕様値RRp−p(PEAK TO PEAK値)だけずれた例を示した。
L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4(a)に示すような半径位置の関係が成立する光記録媒体では、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対して、R1=R3+rの関係(上記(1)式の関係)が成立するので、図4(a)に示すように、テスト領域64の最内周トラック位置R(1,TI,i)に光ビーム40を集光させても、その光ビーム40はL0層10の遷移領域52及びプリフォーマット領域51を通過しない。
また、図4(a)から明らかなように、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対しては、R2<R4−rの関係(上記(2)式の関係)が成立するので、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周位置R(1,TO,o)に光ビーム40を集光させても、光ビーム40はL0層10の外周側のミラー領域58を通過しない。
一方、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4(b)に示すような半径位置の関係が成立する光記録媒体では、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対してR2=R4−rの関係(上記(2)式の関係)が成立するので、図4(b)に示すように、テスト領域66の最外周トラック位置R(1,TO,o)に光ビーム40を集光させても、その光ビーム40はL0層10のミラー領域58を通過しない。
また、図4(b)から明らかなように、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対して、R1>R3+rの関係(上記(1)式の関係)が成立するので、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周位置R(1,TI,i)に光ビーム40を集光させても、光ビーム40はL0層10の遷移領域52及びプリフォーマット領域51を通過しない。
すなわち、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4(a)及び(b)に示すような半径位置の関係(上記(1)及び(2)式の関係)が成立する光記録媒体では、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65の全域に渡って集光される光ビームは、L0層10のプリフォーマット領域51、遷移領域52及びミラー領域58を通過せず、情報記録領域50のみを通過する。L0層10の情報記録領域50に対応する第1基板上の領域には、全域に渡って溝が形成されている領域(均一な凹凸パターンが形成されている領域)であるので、L0層10の情報記録領域50を通過する光ビーム40の透過率は情報記録領域50全域に渡ってほぼ一定となる。それゆえ、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4(a)及び(b)に示すような半径位置の関係が成立する光記録媒体では、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65に照射される光ビーム40は透過率がほぼ一定のL0層10の情報記録領域50のみを通過するので、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65に到達する光ビーム40の光量変動を抑制することができる。
上述のように、L1層20の第2情報記録領域の内周近傍及び外周近傍にテスト領域を有する光記録媒体において、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に上記(1)及び(2)式で表される半径位置の関係が成立させることにより、光量変動の非常に小さい光ビーム40がL1層20の内周側及び外周側のテスト領域64及び66に照射されるので、情報記録の際の最適な記録パワーを確実に決定することができる。さらに、L1層20の情報記録再生領域65に到達する光ビームの光量変動もまた非常に小さいので、最適な記録パワーで安定してユーザ情報等をL1層20の情報記録再生領域65に記録することができる。それゆえ、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの半径位置の関係を上記(1)及び(2)式の関係が成立するように調整することにより、光ビーム40の入射側から遠い側の情報部(L1層)に対して、情報の記録再生を安定に且つ信頼性高く行うことができる。
なお、上述の説明では、光ビームの入射側から遠い側の第2情報部(L1層)の第2情報記録領域の内周近傍及び外周近傍の両方にテスト領域を有する光記録媒体に対して説明したが、第2情報部の第2情報記録領域の内周近傍のみにテスト領域を設けた場合には、上記(1)式の関係のみが成立するように、光ビームの入射側の第1情報部(L0層)の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの半径位置の関係を調整すれば良いし、また、第2情報部の第2情報記録領域の外周近傍のみにテスト領域を設けた場合には、上記(2)式の関係のみが成立するように、第1情報部の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの半径位置の関係を調整すれば良い。いずれの場合においても、上述した第2情報部の第2情報記録領域の内周近傍及び外周近傍の両方にテスト領域を有する光記録媒体の場合と同様の効果が得られる。
なお、本明細書において「第1情報部における光ビームの半径r」とは、第1情報部(L0層)の第1記録層と第1基板との界面における光ビームの半径のことをいう。なお、第2情報部(L1層)に光ビームを集光している際の第1情報部における光ビームの半径rは、図6から以下のようにして求められる。
図6に示すように、第1情報部(図6中のL0)と第2情報部(図6中のL1)との間にあるスペーサ層の厚みをD、スペーサ層の屈折率をns、絞り込みレンズの開口数をNAとすると、図6に示した幾何学的関係から、第1情報部における光ビームの半径rは下記の数式で求めることができる。ただし、図6中の実線L0は第1情報部内の第1記録層の位置を表わし、実線L1は第2情報部内の第2記録層の位置を表わす。なお、図6では、第1記録層及び第2記録層の厚みを考慮していないが、これは、第1及び第2記録層の膜厚がスペーサ層の厚みに対して非常に小さいためである。例えば、後述する実施例では、第1及び第2記録層の膜厚は、スペーサ層の厚みに対して約0.4%未満の値となるので、第1情報部における光ビームの半径rを計算する際に第1及び第2記録層の膜厚を考慮しなくても、光ビームの半径rの値に大きな影響を与えない。なお、後述する実施例では、記録層とスペーサ層との間に、反射層、界面層等が設けられているが、これらの層の膜厚も、スペーサ層の厚みに比べると非常に小さいので、これらの層の膜厚を考慮しなくても、光ビームの半径rの値に大きな影響を与えない。
なお、片面2層タイプの光記録媒体を設計する段階では、製造された光記録媒体の第1及び第2情報部間の物理フォーマットの位置関係が上記(1)及び/または(2)式を満たすように各情報部の物理フォーマットの半径位置を設定するが、その際には第1情報部と第2情報部とを貼り合せたときの偏心による中心位置のずれを考慮して設計することが好ましい。なお、第1情報部と第2情報部の中心位置のずれが最大値となるのは、ディスククランプ中心を挟んで反対方向に偏心したときである。
具体的には、第2情報部の第2情報記録領域の内周近傍のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)及び第2情報記録領域の外周近傍のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)における第2情報部の中心からの距離をそれぞれR1’及びR2’とし、第1情報部の第1情報記録領域の最内周案内溝の半径位置R(0,G,i)及び第1情報記録領域の最外周案内溝の半径位置R(0,G,o)における第1情報部の中心からの距離をそれぞれR3’及びR4’とし、第2情報部に光ビームが集光されている際の第1情報部における光ビームの半径をrとし、そして、偏心の仕様値をRRp−p(PEAK TO PEAK値)としたとき、第2情報部の第2情報記録領域の内周近傍にテスト領域を設けた場合には、下記(1)’式
R1’≧R3’+RRp−p+r …(1)’
が成立するように各情報部の物理フォーマットの半径位置を設計し、第2情報部の第2情報記録領域の外周近傍にテスト領域を設けた場合には、下記(2)’式
R2’≦R4’−RRp−p−r …(2)’
が成立するように各情報部の物理フォーマットの半径位置を設計することが好ましい。また、第2情報部の第2情報記録領域の内周近傍及び外周近傍の両方にテスト領域を設けた場合には、上記(1)’及び(2)’式が成立するように各情報部の物理フォーマットの半径位置を設計することが好ましい。
実際に片面2層タイプの光ディスクを作製する際には、必ず偏心量が仕様値内に収まるように作製されるので、上記(1)’及び/または(2)’式を満足するように、第1及び第2情報部間の物理フォーマットの位置関係を設計しておけば、製造された光記録媒体では、必ず第1情報部の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの間に上記(1)及び/または(2)式の半径位置の関係が成立する。
より現実的には、設計段階で、さらに、基板収縮やそれに伴うグルーブの真円度からのずれ、マスタリング装置の位置設定精度等の誤差要因を上記(1)’及び(2)’式に追加して各情報部の物理フォーマットの半径位置を設定することが好ましい。
本発明の光記録媒体では、第1情報記録領域内で情報が記録されている最内周トラックの半径位置、及び、第1情報記録領域内で情報が記録されている最外周トラックの半径位置における上記光記録媒体の中心からの距離をそれぞれR5及びR6としたとき、下記式(3)
R1≧R5+r …(3)
が成立し、且つ、下記式(4)
R2≦R6−r …(4)
が成立する。
なお、本明細書において「第1情報記録領域内で情報が記録されている最内周トラックの半径位置」とは、第1情報記録領域内においてユーザにより情報が追記される領域の最内周トラックの半径位置のことを意味する。
第1情報部を通過する光ビームの光線透過率は、上述のように第1情報部の第1基板の形状によって変動するが、さらには、第1情報部の第1記録層の未記録の情報記録領域、記録後の情報記録領域等、すなわち、第1記録層の記録状態によっても変化する場合がある。例えば、第1情報部の第1記録層を色素材料で形成した場合、第1記録層への情報の記録前後で透過率が変化してしまうことがある。特に、記録パワーを決めるテスト領域では記録パワーを低い方から最適な記録パワーより大きなパワーまで変化させて記録するので透過率変動はより大きくなる。また、テスト領域全域に渡って必ずしも試し書きが行われているとは限らないので、テスト領域内には記録領域と未記録領域とが混在する場合もある。そのような場合にもまた、テスト領域内で光ビームの透過率が大きく変化し、第2情報部に到達する光ビームの光量が変動する恐れがある。
上述のように第1情報部のテスト領域の記録状態によって第2情報部に到達する光ビームの光量が変動する場合には、第2情報部のテスト領域及び情報記録領域に光ビームを照射する際に、光ビームが第1情報部のテスト領域を通過しないように、第1情報部の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの位置関係を調整すれば良い。そのような位置関係を満足させるための条件が上記(3)及び(4)式で示した関係である。なお、上記(3)及び(4)式は、第1情報部の第1基板の形状及び第1記録層の記録状態の両方によって透過率が変動する場合の条件式であるので、上記(3)及び(4)式の条件範囲はそれぞれ上記(1)及び(2)式の条件範囲に含まれる。
上記(3)及び(4)式の両方の関係を満足する場合の第1情報部の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの位置関係の一例を図5に示す。図5は、スペーサ層30を介して隣接する第1情報部10(L0層)及び第2情報部20(L1層)の各物理フォーマットの半径方向の概略構成断面図であり、図面の左側から右側に向かう方向が光記録媒体の外周方向となる。
図5(a)は、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対して、上記(3)式の下限条件(R1=R5+rの関係)が成立する場合のL0層10及びL1層20間の物理フォーマットの位置関係を示した図である。一方、図5(b)は、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対して、上記(4)式の上限条件(R2=R6−rの関係)が成立する場合のL0層10及びL1層20間の物理フォーマットの位置関係を示した図である。なお、通常、L0層10とL1層20とを貼り合わせた際には偏心があり、図5の例では、L0層10及びL1層20の外周端が偏心量の仕様値RRp−pだけずれた例を示した。
L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5(a)に示すような半径位置の関係が成立する光記録媒体では、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対してR1=R5+r(上記(3)式の関係)が成立するので、図5(a)に示すように、L1層20のテスト領域64の最内周トラック位置R(1,TI,i)に光ビーム40を集光させても、その光ビーム40はL0層10のテスト領域54、遷移領域52及びプリフォーマット領域51を通過しない。
また、図5(a)から明らかなように、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対しては、R2<R6−rの関係(上記(4)式の関係)が成立するので、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周位置R(1,TO,o)に光ビーム40を集光させても、光ビーム40はL0層10の外周側のテスト領域56及びミラー領域58を通過しない。
一方、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5(b)に示すような半径位置の関係が成立する光記録媒体では、L1層20の外内周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対して、R2=R6−r(上記(4)式の関係)が成立するので、図5(b)に示すように、テスト領域66の最外周トラック位置R(1,TO,o)に光ビーム40を集光させても、その光ビーム40はL0層10の外周側のテスト領域56及びミラー領域58を通過しない。
また、図5(b)から明らかなように、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対しては、R1>R5+rの関係(上記(3)式の関係)が成立するので、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周位置R(1,TI,i)に光ビーム40を集光させても、光ビーム40はL1層10の内周側のテスト領域54、遷移領域52及びプリフォーマット領域51を通過しない。
すなわち、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5(a)及び(b)に示すような半径位置の関係(上記(3)及び(4)式の関係)が成立する光記録媒体では、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65の全域に渡って集光される光ビームは、L0層10のプリフォーマット領域51、遷移領域52、ミラー領域58及びテスト領域54,56を通過せず、L0層10の情報記録再生領域55のみを通過する。L0層10の情報記録再生領域55には全域に渡って溝が形成されており、所定の記録パワーで情報が記録される。また、通常、情報記録はL0層10から行われるので、L1層20に情報を記録する時点ではL0層10の情報記録再生領域55全域に渡って均一にユーザ情報等が記録されている状態である。それゆえ、L0層10の情報記録再生領域55を通過する光ビームの透過率はほぼ均一になる。従って、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5(a)及び(b)に示すような半径位置の関係が成立する光記録媒体では、L0層10の第1基板の形状のみならずテスト領域54,56の記録状態によって光透過率が変動するような場合であっても、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65に照射される光ビーム40は透過率がほぼ一定のL0層10の情報記録再生領域55のみを通過するので、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65に到達する光ビーム40の光量変動を抑制することができる。
上述のように、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に上記(3)及び(4)式で表される半径位置の関係が成立する光記録媒体では、L0層10の第1基板の形状のみならずテスト領域54,56の記録状態によって光透過率が変動するような場合であっても、光量変動の非常に小さい光ビーム40がL1層20の内周側及び外周側のテスト領域64及び66に照射されるので、情報記録の際の最適な記録パワーを確実に決定することができる。さらに、L1層20の情報記録再生領域65に到達する光ビームの光量変動もまた非常に小さいので、最適な記録パワーで安定してユーザ情報等をL1層20の情報記録再生領域65に記録することができる。それゆえ、L0層10の第1基板の形状及びテスト領域の記録状態によって光透過率が変動するような場合には、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの半径位置の関係を上記(3)及び(4)式の関係が成立するように調整することにより、光ビーム40の入射側から遠い側の情報部(L1層)に対して、情報の記録再生を安定に且つ信頼性高く行うことができる。
なお、上述の説明では、光ビームの入射側から遠い側の第2情報部(L1層)の第2情報記録領域の内周近傍及び外周近傍の両方にテスト領域を有する光記録媒体に対して説明したが、第2情報部の第2情報記録領域の内周近傍のみにテスト領域を設けた場合には、上記(3)式の関係のみが成立するように、光ビームの入射側の第1情報部(L0層)の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの半径位置の関係を調整すれば良いし、また、第2情報部の第2情報記録領域の外周近傍のみにテスト領域を設けた場合には、上記(4)式の関係のみが成立するように、第1情報部の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの半径位置の関係を調整すれば良い。いずれの場合においても、上述した第2情報部の第2情報記録領域の内周近傍及び外周近傍の両方にテスト領域を有する光記録媒体の場合と同様の効果が得られる。
なお、上記(3)及び(4)式の関係が成立する本発明の光記録媒体を設計する際には、第1情報部と第2情報部とを貼り合せたときの偏心による中心位置のずれを考慮して設計することが好ましい。
具体的には、図5中の第2情報部の第2情報記録領域の内周近傍のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)及び第2情報記録領域の外周近傍のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)における第2情報部の中心からの距離をそれぞれR1’及びR2’とし、第1情報記録領域内で情報が記録されている最内周トラックの半径位置R(0,D,i)及び第1情報記録領域内で情報が記録されている最外周トラックの半径位置R(0,D,o)における第1情報部の中心からの距離をそれぞれR5’及びR6’とし、第2情報部に光ビームが集光されている際の第1情報部における光ビームの半径をrとし、そして、偏心の仕様値をRRp−pとしたとき、下記(3)’式
R1’≧R5’+RRp−p+r …(3)’
が成立し、且つ、下記(4)’式
R2’≦R6’−RRp−p−r …(4)’
が成立するように各情報部の物理フォーマットの半径位置を設計することが好ましい。
実際に片面2層タイプの光ディスクを作製する際には、必ず偏心量が仕様値内に収まるように作製されるので、上記(3)’及び(4)’式を満足するように、第1及び第2情報部間の物理フォーマットの位置関係を設計しておけば、製造された光記録媒体では、必ず第1情報部の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの間に上記(3)及び(4)式の半径位置の関係が成立する。
本発明の光記録媒体では、第1情報部のトラックピッチが第2情報部のトラックピッチ以上の大きさであることが好ましい。
また、本発明の光記録媒体では、第1情報部の記録容量と第2情報部の記録容量とが同一であることが好ましい。
第1情報部の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの位置関係を、例えば、図5で説明したような位置関係にすると、第2情報部のユーザ情報を記録することができる領域(図5では情報記録再生領域65)が第1情報部のユーザ情報を記録することができる領域(図5では情報記録再生領域55)より狭くなる。それゆえ、第2情報部のトラックピッチを第1情報部のトラックピッチより狭くすると、第1情報部と第2情報部の記録容量を同一にすることができる。
第1情報部と第2情報部の記録容量を同一にする場合の設計方法について、青色レーザ対応の光ディスクを例にとり具体的に説明する。
スペーサ層の厚さDを25μm、スペーサ層の屈折率nsを1.5、レンズのNAを0.65としたとき、上記数式(数1)から、第2情報部にレーザ光を集光している際の第1情報部における光ビームの半径rは約13.3μmとなる。
また、第1情報部と第2情報部とを貼合わせた際の偏心を考慮して、偏心の仕様値RRp−pを50μmとすると、本例の場合は、第2情報部の第2情報記録領域(グルーブが形成されている領域)の内外周の半径が共に第1情報部の第1情報記録領域より63.3μm以上狭くなるように作れば良い。そして、第1情報部の第1情報記録領域を半径23.8mmから58.0mmとし、第1情報部のトラックピッチを0.400μmとしたとき、第2情報部のトラックピッチを0.398μm、すなわち第1情報部のトラックピッチより約0.4%狭いトラックピッチにすることにより、第1情報部と第2情報部のトラック数を等しくすることができ、同一容量にすることができる。
本発明の光記録媒体では、第1情報部の物理フォーマットと第2情報部の物理フォーマットとの位置関係が上記(3)及び(4)式を満足するように形成されているので、光ビーム入射側から遠い側の第2情報部のテスト領域及びユーザ情報等を記録する情報記録再生領域に光量変動の非常に小さい光ビームを照射することができる。それゆえ、光ビーム入射側から遠い側の第2情報部に対して情報記録を行う場合、最適な記録パワーを確実に決定することができるとともに、その最適な記録パワーで安定してユーザ情報等を記録することができる。従って、本発明の片面2層タイプの光記録媒体では、光ビームの入射側から遠い側の情報部(第2情報部)に対して情報の記録再生プロセスをより安定に且つ信頼性高く行うことできる。
以下に、図面を参照しながら、本発明の光記録媒体の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
参考形態
[膜構成]
参考形態では片面2層構造の光ディスクについて説明する。その概略断面図を図1に示した。本参考形態の光ディスク100は、図1に示すように、第1情報部10(以下では、L0層ともいう)と第2情報部20(以下では、L1層ともいう)とが接着層30(以下では、スペーサ層ともいう)を介して貼り合わされた構造を有する。
L0層10は、図1に示すように、第1基板11上に、第1記録層12及び第1反射層13がこの順で積層されている。また、L1層20は、図1に示すように、第2基板21上に、第2反射層23、第2記録層22及び界面層24がこの順で積層されている。そして、L0層10の第1反射層13とL1層20の界面層24とが対向するように、スペーサ層30を介してL0層10とL1層20とが貼り合わされている。なお、この例では、図1に示すように、光ビーム40をL0層10の第1基板11側から入射する。
第1基板11及び第2基板21は透光性の基板であり、各基板表面には予め各層(L0層またはL1層)用のディスク管理情報等を記録するためのエンボスピット並びにユーザ情報等を記録するための案内溝(グルーブ)が形成されている。第1基板11及び第2基板21の材料としては、屈折率が1.4〜1.7の範囲であり、透過率が大きく、そして耐衝撃性に優れた樹脂が望ましい。具体的には、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、アクリル等が用い得る。ただし、基板材料はこれに限定されず、上記性質を有する材料であれば任意の材料が基板材料として用い得る。なお、第2基板21は、図1に示すように、光ビームの入射側とは反対側に配置されるので、光を透過する必要はないが、L0層10とL1層20とを接着した後の機械特性を良好に保つことを考慮すると第1基板11と同じ材料であることが好ましい。
第1記録層12及び第2記録層22は、照射された光ビームを吸収して発熱し、溶融、蒸発、昇華、変形、変性あるいは相変化、相変態し、記録層自身や基板の表面に記録ピットを形成する作用を有する層である。追記型の光ディスクを作製する場合、第1記録層12及び第2記録層22の形成材料としては、光吸収性の有機色素が望ましく、シアニン色素、ポリメチン色素、トリアリールメタン色素、ピリリウム色素、フェナンスレン色素、アゾ色素、テトラデヒドロコリン色素、トリアリールアミン色素、スクアリリウム色素、クロコニックメチン色素等が用い得る。ただし、記録層に用い得る色素材料としては、上述の色素材料に限定されない。上述した第1記録層12及び第2記録層22の形成材料に、他の色素、添加剤、高分子(例えば、ニトロセルロース等の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー)等を含ませても良い。
第1記録層12及び第2記録層22の形成材料として上記色素材料またはそれに任意の添加剤を含んだ材料を用いる場合、第1記録層12及び第2記録層22は、上記色素材料またはそれに任意の添加剤を含んだ材料を公知の有機溶媒(例えば、テトラフルオロプロパノール、ケトンアルコール、アセチルアセトン、メチルセルロブ、トルエン等)で溶解・溶媒和したものをそれぞれ第1基板11及び第2反射層23上にスピン塗布するなどの方法によって形成される。記録層の形成手段としてスピンコート法を用いた場合、色素溶液の濃度、粘度、溶剤の乾燥速度を調節することにより、記録層の膜厚を制御できる。なお、第1記録層12及び第2記録層22をスピンコート法で形成する場合、色素材料、塗布条件、溶媒等を用途に応じて適宜変えて形成してもよい。
また、追記型あるいは書換型の光ディスクを作製する場合には、第1記録層12及び第2記録層22の形成材料として、相変化材料を用いてもよい。相変化材料としては、例えばBi−Ge−Te系材料の一部をSi,B,Pb,Sn等で置換した材料、Ge−Sn−Sb−Te系材料にAg,Al,Cr,Mn等の金属を添加した材料、Ag−In−Sb−Te系記録材料等が用い得る。ただし、記録層に用い得る相変化材料としては、上記材料に限定されない。なお、第1及び第2記録層を上記相変化材料で形成する場合には、蒸着法やスパッタ法で形成することが好ましい。
第1反射層13及び第2反射層23は、金属膜からなり、例えば、金、銀、アルミニウム等、または、これらの金属元素を含む合金で形成される。これらの金属膜はスパッタ法等の手段により形成される。
L1層20の界面層24は、L0層10とL1層20とを貼り合せる際に、第2記録層22を接着剤及び/または接着剤の溶媒から化学的に保護するためには必須の層である。界面層24の形成材料としては、各種の誘電体材料が適しており、SiO2,Al2O3,TiO2,Ta2O5等の酸化物、SiN,AlN,TiN等の窒化物、ZnS等の硫化物等を用いることが可能である。なお、界面層24には、光学的に吸収が少なく、化学的に安定で保護効果のあるとい性質が必要である。
スペーサ層30は、耐衝撃性の優れた樹脂によって形成されることが望ましい。例えば、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより形成される。また、スペーサ層30をウレタン等の弾性材で形成してもよい。
2層構造の光記録媒体の膜構成は、図1に示した構成に限定されない。第1基板11と第1記録層12との間に、SiO2、ZnS−SiO2等のエンハンス層や耐溶剤層を設けてもよい。また、記録層と反射層の間に、SiO2、ZnS−SiO2、Al2O3等からなるエンハンス層や耐酸化層等を設けてもよい。さらに、反射層上に保護層を形成してもよい。この場合、保護層としては記録層及び反射層を保護できる機能を有する層であればよく、例えば、紫外線硬化樹脂、シリコーン系樹脂等によって形成し得る。また、必要に応じて第2基板21上に、印刷層あるいは印刷受容層を設けてもよい。
[物理フォーマットの構成]
次に、参考形態の光ディスクにおける物理フォーマットの構成について説明する。
参考形態の光ディスクの光入射側に近い側の情報部(L0層)の物理フォーマットの構成例を図2に示した。L0層10は、図2に示すように、内周側から、プリフォーマット領域51(以下では、ROM領域ともいう)と、情報記録領域50とを有する。ROM領域51に対応する第1基板11上の領域には、ディスク管理情報などを予めエンボスピットなどの形態にて記録されており、情報記録領域50に対応する第1基板11上の領域には、光ビームの案内溝(グルーブ)が形成されている。情報記録領域50は、図2に示すように、ユーザ情報等の追記情報が記録再生される情報記録再生領域55と、情報記録再生領域55の内周側及び外周側にそれぞれ設けられた情報記録再生領域55への記録条件を決めるためのテスト領域54及び56と、テスト領域54の内周側及びテスト領域56の外周側にそれぞれ設けられたバッファ領域53及び57とから構成される。なお、バッファ領域53及び57は、色素塗布型の光記録媒体等の作製において、記録層をスピンコートして形成する際に、記録を行う領域までの記録層膜厚を平坦に保つために設けられている。また、外周側のバッファ領域57の外周側には、図2に示すように、ミラー領域58(鏡面部)を設けた。
また、参考形態の光ディスクでは、図2に示すように、ROM領域51と情報記録領域50との間には第3の領域として、遷移領域52を設けた。参考形態では、遷移領域50に対応する第1基板11上の領域は鏡面とした。遷移領域50は異なるフォーマット構成の間に設けられた領域であり、(1)ROM領域51の再生信号と、情報記録領域50の再生信号のクロストークを防止する目的、及び、(2)色素塗布型の光記録媒体の記録層を基板上にスピンコートして形成する際に、ROM領域51で発生した塗布液の乱れを整えて記録層の膜厚を均一に形成するための安定化目的のために設けられる領域である。
一方、スペーサ層30を介してL0層10と隣接するL1層20の物理フォーマットは、ROM領域を設けない構成にしても良いが、参考形態の光ディスクでは、L0層10と同じ物理フォーマット構成(図2の構成)とした。ただし、参考形態の光ディスクでは、後述するように、L0層10の物理フォーマット内の各領域の半径位置とL1層20の物理フォーマット内の各領域の半径位置とをずらして形成した。なお、L0層10及びL1層20共に、ROM領域、情報記録領域、及び遷移領域を含むディスクの全領域上には、図1に示した各構成膜の積層体が形成されている。
参考形態の光ディスクの各情報部におけるROM領域、遷移領域及び情報記録領域(第1基板上にグルーブが形成されている領域であり、情報記録再生領域、テスト領域、バッファ領域を含む領域)に対応する第1基板上に形成される凹凸パターンの一例を、図3に模式的に示す。ROM領域31には、図3に示すように、ピット31aが形成されており、このピット31aにより各情報部の管理情報などが記録されている。また、情報記録領域33には、情報記録領域33にユーザ情報等を記録する際の光ビームを案内するための溝(グルーブ)33aがスパイラル状に形成されている。情報記録領域33には、記録マークにより情報が記録される。なお、情報記録領域33にはアドレス情報などの付加情報を付与するためのプリピットが設けられていても良いし、また、グルーブを蛇行させて付加情報を記録しても良い。そして、プリフォーマット領域31と情報記録領域33との間に設けられた遷移領域32は通常、溝もピットも施されない鏡面部のまま残される。なお、各々の領域上の構成膜が同じ積層構造であってもエンボスピットや溝による回折、溝部での記録層の膜厚変化等によって、各領域の反射率及び透過率は異なる。
[L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係]
参考形態の光ディスクでは、光入射側から遠い側の情報部であるL1層のテスト領域及び情報記録再生領域の範囲に光ビームを照射する際に、光ビームが通過するL0層の領域の透過率が一定となるように、L0層の物理フォーマット内の各領域の半径位置とL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置とをずらして形成した。具体的には、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域の範囲に光ビームを照射する際に、光ビームが、透過率の変動するL0層のROM領域、遷移領域及びミラー領域を通過しないように、L0層及びL1層の各物理フォーマットの半径位置を調整した。
上記内容を具体的に数式で表わすと次のようになる。L1層の内周側のテスト領域の最内周トラックの半径位置、L1層の外周側のテスト領域の最外周トラックの半径位置、L0層の情報記録領域の最内周案内溝の半径位置、及び、L0層の情報記録領域の最外周案内溝の半径位置における光ディスクの中心からの距離をそれぞれR1、R2、R3及びR4とし、L1層に光ビームが集光されている際のL0層における光ビームの半径をrとしたときに、
R1≧R3+r …(1)
R2≦R4−r …(2)
の関係が両方成立するように、L0層及びL1層の各物理フォーマットの半径位置を調整する。
上記(1)及び(2)式の関係を満足するL0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係の一例を示したのが図4である。なお、実際に参考形態の光ディスクのL0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係を設計する段階では、上述したようにL0層とL1層とを貼り合わせた際の偏心を考慮して、上記(1)’及び(2)’式を用いて設計することが好ましい。
図4は、スペーサ層30を介して隣接するL0層10及びL1層20の各物理フォーマットの半径方向の概略構成断面図(図2中のA−A断面)であり、図面の左側から右側に向かう方向が外周側方向となる。図4(a)は、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対して、上記(1)式の下限条件が成立する場合のL0層10及びL1層20間の物理フォーマットの位置関係を示した図である。すなわち、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)及びL0層10の情報記録領域50の最内周案内溝の半径位置R(0,G,i)における光ディスクの中心からの距離R1及びR3と、L1層20に光ビームが集光されている際のL0層10における光ビームの半径rとの間に、R1=R3+rの関係が成立する場合のL0層10及びL1層20の物理フォーマット間の位置関係を示した図である。
一方、図4(b)は、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対して上記(2)式の上限条件が成立する場合のL0層10及びL1層20間の物理フォーマットの位置関係を示した図である。すなわち、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)及びL0層10の情報記録領域50の最外周案内溝の半径位置R(0,G,o)における光ディスクの中心から距離R2及びR4と、L1層20に光ビームが集光されている際のL0層10における光ビームの半径rとの間に、R2=R4−rの関係が成立する場合のL0層10及びL1層20の物理フォーマット間の位置関係を示した図である。
L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4(a)に示すような半径位置の関係が成立する光ディスクでは、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対してR1=R3+r(上記(1)式の関係)が成立する。それゆえ、図4(a)に示すように、テスト領域64の最内周トラック位置R(1,TI,i)に光ビーム40を集光させても、その光ビーム40はL0層10の遷移領域52及びROM領域51を通過しない。
また、図4(a)から明らかなように、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対しては、R2<R4−rの関係(上記(2)式の関係)が成立するので、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周位置R(1,TO,o)に光ビーム40を集光させても、光ビーム40はL0層10の外周側のミラー領域58を通過しない。
一方、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4(b)に示すような半径位置の関係が成立する光ディスクでは、L1層20の外内周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対してR2=R4−r(上記(2)式の関係)が成立する。それゆえ、図4(b)に示すように、テスト領域66の最外周トラック位置R(1,TO,o)に光ビーム40を集光させても、その光ビーム40はL0層10のミラー領域58を通過しない。
また、図4(b)から明らかなように、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対しては、R1>R3+rの関係(上記(1)式の関係)が成立するので、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周位置R(1,TI,i)に光ビーム40を集光させても、光ビーム40はL0層10の遷移領域52及びROM領域51を通過しない。
すなわち、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4(a)及び(b)に示すような位置関係(上記(1)及び(2)式の関係)が成立する光ディスクでは、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65の全域に渡って集光される光ビームは、透過率が変動するL0層10のROM領域51、遷移領域52及びミラー領域58を通過せず、L0層10のグルーブが形成されている領域(情報記録領域)50のみを通過する。L0層10の情報記録領域50は、全域に渡って溝が形成されている領域(均一な凹凸パターンが形成されている領域)であるので、L0層10の情報記録領域50を通過する光ビーム40の透過率は情報記録領域50全域に渡ってほぼ一定となる。それゆえ、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4(a)及び(b)に示すような半径位置の関係が成立する光ディスクでは、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65に照射される光ビーム40は、透過率がほぼ一定のL0層10の情報記録領域50のみを通過するので、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65に到達する光ビーム40の光量変動を抑制することができる。
上述のように、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図4に示すような位置関係(上記(1)及び(2)式の関係)が成立する参考形態の光ディスクでは、光量変動の非常に小さい光ビーム40がL1層20の内周側及び外周側のテスト領域64及び66に照射されるので、情報記録の際の最適な記録パワーを確実に決定することができる。さらに、L1層20の情報記録再生領域65に到達する光ビームの光量変動もまた非常に小さいので、最適な記録パワーで安定してユーザ情報等をL1層20の情報記録再生領域65に記録することができる。それゆえ、参考形態の光ディスクのように、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの位置関係を上記(1)及び(2)式の関係が成立するように調整することにより、光ビーム40の入射側から遠い側の情報部(L1層)に対して、情報の記録再生を安定に且つ信頼性高く行うことができる。
なお、上記参考形態では、上述のように、L1層の第2情報記録領域の内周近傍及び外周近傍の両方にテスト領域を有する光ディスクに対して説明したが、参考形態はこれに限定されない。L1層の第2情報記録領域の内周近傍のみにテスト領域を設けた場合には、上記(1)式の関係のみが成立するように、L0層の物理フォーマットとL1層の物理フォーマットとの半径位置の関係を調整すれば良いし、また、L1層の第2情報記録領域の外周近傍のみにテスト領域を設けた場合には、上記(2)式の関係のみが成立するように、L0層の物理フォーマットとL1層の物理フォーマットとの半径位置の関係を調整すれば良い。いずれの場合においても、上述した参考形態の場合と同様に効果が得られることは明らかである。
実施形態
光ビームの入射側に近い側の情報部(L0層)の透過率は、L0層の基板形状の影響以外に、L0層の記録層の記録状態によっても変動する場合がある。例えば、L0層の記録層を色素材料で形成した場合、記録層への情報の記録前後で透過率が変化してしまうことがある。特に、記録パワーを決めるテスト領域では、記録パワーを低い方から最適な記録パワーより大きなパワーまで変化させて記録するので透過率変動はより大きくなる。また、テスト領域全域に渡って必ずしも試し書きが行われているとは限らないので、テスト領域内には記録領域と未記録領域とが混在する場合があり、そのような場合にもテスト領域を通過する光ビームの透過率が大きく変動する恐れがある。
実施形態では、L0層を通過する光ビームの光線透過率が、L0層内の基板形状のみならずテスト領域の記録状態によっても変化する場合を考慮した片面2層タイプの光ディスクの物理フォーマットについて説明する。なお、実施形態では、参考形態と同様に、L1層の第2情報記録領域内の内周近傍及び外周近傍の両方にテスト領域を設けた光ディスクの物理フォーマットについて説明する。
[物理フォーマットの構成]
上述のような課題を解決するためには、光ビームの入射側から遠い側の情報部(L1層)のテスト領域に光ビームを照射して試し書きを行う際、及び、L1層の情報記録再生領域に光ビームを照射してユーザ情報等を記録再生する際に、光ビームがL0層のテスト領域を通過しないように、L0層の物理フォーマットとL1層の物理フォーマットとの位置関係を調整すれば良い。
上記内容を具体的に数式で表わすと次のようになる。L1層の内周側のテスト領域の最内周トラックの半径位置、L1層の外周側のテスト領域の最外周トラックの半径位置、L0層の情報記録領域内で情報が記録されている最内周トラックの半径位置、及び、L0層の情報記録領域内で情報が記録されている最外周トラックの半径位置における光ディスクの中心からのそれぞれの距離をR1、R2、R5及びR6とし、L1層に光ビームが集光されている際のL0層における光ビームの半径をrとしたときに、
R1≧R5+r …(3)
R2≦R6−r …(4)
の関係が両方成立するように、L0層及びL1層の各物理フォーマットの半径位置を調整する。なお、実施形態では、L0層の物理フォーマットとL1層の物理フォーマットとの位置関係を変えたこと以外は、参考形態で説明した片面2層タイプの光ディスクと同じ膜構成(図1参照)とし、物理フォーマットの構成も同じ(図2参照)とした。
上記(3)及び(4)式の関係を満足するL0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係の一例を示したのが図5である。なお、実際に実施形態の光ディスクのL0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係を設計する段階では、参考形態と同様に、L0層とL1層とを貼り合わせた際の偏心を考慮して、上記(3)’及び(4)’式を用いて設計することが好ましい。
図5は、スペーサ層30を介して隣接するL0層10及びL1層20の各物理フォーマットの半径方向の概略構成断面図(図2中のA−A断面)であり、図面の左側から右側に向かう方向が外周側方向となる。図5(a)は、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対して、上記(3)式の下限条件が成立する場合のL0層10及びL1層間の物理フォーマットの位置関係を示した図である。すなわち、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)及びL0層10の情報記録領域50内で情報(ユーザ情報等の追記情報)が記録されている最内周トラックの半径位置R(0,D,i)(図5中のL0層10の情報記録再生領域55の最内周トラック位置)における光ディスクの中心からの距離R1及びR5と、L1層20に光ビーム40を集光している際のL0層10における光ビームの半径rとの間に、R1=R5+rの関係が成立する場合のL0層10及びL1層20の物理フォーマット間の位置関係を示した図である。
一方、図5(b)は、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対して、上記(4)式の上限条件が成立する場合のL0層10及びL1層間の物理フォーマットの位置関係を示した図である。すなわち、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)及びL0層10の情報記録領域50内で情報が記録されている最外周トラックの半径位置R(0,D,o)(図5中のL0層10の情報記録再生領域55の最外周トラック位置)における光ディスクの中心からの距離R2及びR6と、L1層20に光ビーム40を集光している際のL0層10における光ビームの半径rとの間に、R2=R6−rの関係が成立する場合のL0層10及びL1層20の物理フォーマット間の位置関係を示した図である。
L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5(a)に示すような半径位置の関係が成立する光ディスクでは、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対してR1=R5+r(上記(3)式の関係)が成立する。それゆえ、図5(a)に示すように、テスト領域64の最内周トラック位置R(1,TI,i)に光ビーム40を集光させても、その光ビーム40はL0層10のテスト領域54、遷移領域52及びROM領域51を通過しない。
また、図5(a)から明らかなように、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対しては、R2<R6−rの関係(上記(4)式の関係)が成立するので、L1層20の外周側のテスト領域66の最外周位置R(1,TO,o)に光ビーム40を集光させても、光ビーム40はL0層10の外周側のテスト領域56及びミラー領域58を通過しない。
一方、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5(b)に示すような半径位置の関係が成立する光ディスクでは、L1層20の外内周側のテスト領域66の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)に対してR2=R6−r(上記(4)式の関係)が成立する。それゆえ、図5(b)に示すように、テスト領域66の最外周トラック位置R(1,TO,o)に光ビーム40を集光させても、その光ビーム40はL0層10の外周側のテスト領域56及びミラー領域58を通過しない。
また、図5(b)から明らかなように、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)に対しては、R1>R5+rの関係(上記(3)式の関係)が成立するので、L1層20の内周側のテスト領域64の最内周位置R(1,TI,i)に光ビーム40を集光させても、光ビーム40はL1層10の内周側のテスト領域54、遷移領域52及びROM領域51を通過しない。
すなわち、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5(a)及び(b)に示すような位置関係(上記(3)及び(4)式の関係)が成立する光ディスクでは、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65の全域に渡って集光される光ビームは、透過率が変動するL0層10のROM領域51、遷移領域52及びミラー領域58のみならず記録状態によって透過率が変動する可能性のあるテスト領域54,56を通過せず、L0層10の情報記録再生領域55のみを通過する。L0層10の情報記録再生領域55には全域に渡って溝が形成されており、所定の記録パワーで情報が記録される。また、通常、情報記録はL0層10から行われるので、L1層20に情報を記録する時点ではL0層10の情報記録再生領域55全域に渡って均一にユーザ情報等が記録されている状態である。それゆえ、L0層10の情報記録再生領域55を通過する光ビームの透過率はほぼ均一になる。従って、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5(a)及び(b)に示すような半径位置の関係が成立する本実施形態の光ディスクでは、L0層10の第1基板の形状のみならずテスト領域54,56の記録状態によって光透過率が変動するような場合であっても、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65に照射される光ビーム40は、透過率がほぼ一定のL0層10の情報記録再生領域55のみを通過するので、L1層20のテスト領域64,66及び情報記録再生領域65に到達する光ビーム40の光量変動を抑制することができる。
上述のように、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの間に図5に示すような位置関係(上記(3)及び(4)式の関係)が成立する実施形態の光ディスクでは、L0層10の第1基板の形状のみならずテスト領域54,56の記録状態によって光透過率が変動するような場合であっても、光量変動の非常に小さい光ビーム40がL1層20の内周側及び外周側のテスト領域64及び66に照射されるので、情報記録の際の最適な記録パワーを確実に決定することができる。
さらに、L1層20の情報記録再生領域65に到達する光ビームの光量変動もまた非常に小さいので、最適な記録パワーで安定してユーザ情報等をL1層20の情報記録再生領域65に記録することができる。
それゆえ、本実施形態の片面2層タイプの光ディスクのように、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの半径位置の関係を上記(3)及び(4)式の関係が成立するように調整することにより、光ビーム40の入射側から遠い側の情報部(L1層)に対して、情報の記録再生を安定に且つ信頼性高く行うことができる。
[参考例1]
参考例1では、記録層を色素材料で形成した片面2層タイプの赤色レーザ対応の追記型光ディスクを作製した。この例の光ディスクでは、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(1)及び(2)式を満足するように、各情報部の物理フォーマットを調整した。また、この例の光ディスクの膜構成は図1に示した膜構成と同じとした。
なお、図1に示すような片面2層タイプの光記録媒体の作製には、大別すると主に2種類の方法がある。第1の方法は、一枚の基板上にL0層及びL1層の2つの記録層を順次積層する方法である。第2の方法は、L0層とL1層の記録層を別の基板上に積層したのち、両者を張り合わせる方法である。第2の方法で作製する場合には、L1層内の基板上の各積層膜の積層順序は、L0層の積層順序と逆にする必要がある。参考例1の光ディスクに対しては、上記いずれの作製方法を用いてもその効果を発揮できるが、この例では、後者の方法を採用した。
[透過率評価用テストディスクの作製及び透過率測定]
まず、参考例1の光ディスクの詳細を説明する前に、記録層に色素材料を用いた片面2層タイプの赤色レーザ対応の光ディスクにおけるL0層の物理フォーマットと透過率との関係について説明する。そこで、L0層の物理フォーマットと透過率との関係を調べるために、DVD−Rと同様の物理フォーマットを有する片面2層タイプのテストディスク(以下では、透過率評価用テストディスクともいう)を作製した。
透過率評価用テストディスクのL0層の物理フォーマットは、図7に示すように、内周側からROM領域91、遷移領域92及び情報記録領域93(バッファ領域、テスト領域及び情報記録再生領域を含む)から構成した。ROM領域91に対応するL0層の基板上の領域にはエンボスピットを形成し、情報記録領域93に対応する基板上には溝を形成した。また、遷移領域92に対応するL0層の基板上の領域は鏡面とした。具体的には、ROM領域91に対応するL0層の基板上の領域には、トラックピッチ0.74μm、半値幅0.32μmのピット列を形成してDVD−ROMデータを記録した。情報記録領域93に対応する基板上には、トラックピッチ0.74nm、半値幅0.32μm及び深さ170nmの溝を形成した。また、遷移領域92の径方向の幅は約100μmとした。一方、透過率評価用テストディスクのL1層の基板表面には、ディスクの最内周から最外周までトラックピッチ0.74μm、半値幅0.37μm、深さ30nmの溝(グルーブ)を形成した。なお、透過率評価用テストディスクの膜構成は図1に示した構成とした。
さらに、ここでは、透過率評価の基準となるテストディスクとして、L0層の代わりにダミー基板(表面に凹凸パターンが形成されていない基板)をL1層と貼り合わせたテストディスク(以下では、基準用テストディスクともいう)も作製した。
次に、図1を参照ながら透過率評価用テストディスクの作製方法について説明する。なお、参考例1の片面2層タイプの光ディスクの作製方法は、以下に説明する透過率評価用テストディスクの作製方法と同様である。
まず、L0層10を次のようにして作製した。第1基板11上に形成されるピット列及び溝(グルーブ)パターンに対応する凹凸パターンが形成されたスタンパを作製する。次いで、作製されたスタンパを既存の射出成型機に装着し、光情報記録媒体グレードのポリカーボネート樹脂を射出成型することによりテストディスクのL0層10の第1基板11を得た。ここでは、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を作製した。
次いで、第1基板11の凹凸パタ−ン形成面上に、下記化学式(化1)で表わされるアゾ系色素1.3重量%の濃度を有するテトラフルオロプロパノール溶液を、スピンコート法により塗布した。なお、上記色素溶液を塗布する際に、色素溶液をフィルタで濾過して不純物を取り除いた。スピンコートは回転数100rpmで回転している第1基板11上に色素溶液0.5gをディスペンサーで供給し、その後、1000rpmから3000rpmまで第1基板11を回転させ、最後に5000rpmで2秒間回転させた。このとき、上記溶液を、グルーブ部分で厚さが130nmとなるように塗布した。次いで、上記色素材料を塗布した第1基板11を70℃にて1時間乾燥させ、さらに、室温にて1時間冷却した。こうして、第1基板11上に第1記録層12を形成した。
さらに、第1記録層12上に、スパッタ法を用いて、第1反射層13として厚さ160nmのAg膜を形成した。このようにしてL0層10を作製した。
次に、L1層20を次のようにして作製した。まず、L1層20の第2基板21をL0層10の第1基板11と同様にして作製した。L1層20の第2基板21は、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板であり、基板表面には上述のように、内周側から外周側に渡ってトラックピッチ0.74μm、半値幅0.37μm、深さ30nmの溝を形成した。なお、L1層20においては、レーザ光は第2基板21の溝パターン形成面側から照射されることになるので、該溝パターンはそれを考慮してL0層10とは逆方向のスパイラルに形成した。そして、L1層20では、第2基板21の溝パタ−ン形成面上にL0層10とは逆の順序で各構成層を形成した。
まず、第2基板21上に、スパッタ法を用いて、第2反射層23として厚さ160nmのAg膜を形成した。次いで、第2反射層23上に、上記化学式(化1)で表わされるアゾ系色素を1.3重量%の濃度で有するテトラフルオロプロパノール溶液を、スピンコート法により塗布して第2記録層22を形成した。なお、この際、上述したL0層10の第1記録層12の形成時と同じ条件で上記溶液を塗布し、第2記録層22を形成した。膜厚は200nmとした。次いで、上記色素材料を塗布した第2基板21を70℃にて1時間乾燥させ、さらに、室温にて1時間冷却した。次いで、第2記録層22上に、スパッタ法により、界面層24として膜厚10nmのZnS−SiO2膜を形成した。このようにしてL1層20を形成した。
次に、上述のようにして作製されたL0層10とL1層20とを次のようにして貼り合せた。まず、L0層10の第1反射層13上に、スペーサ層30としてUV樹脂材料をスピンコート法により塗布した。さらに、その上にL1層20を載置した。この際、L0層10の第1反射層13と、L1層20の界面層24とがスペーサ層30を介して対向するようにL1層20をスペーサ層30上に載置した。次いで、この状態で、L0層10の第1基板11側からUV照射を施すことにより、該UV樹脂材料を硬化させて、L0層10とL1層20とを貼り合せた。スペーサ層30の厚さは50〜55μmが好適であり、参考例1では55μmとした。上述のようにして、透過率評価用テストディスクを作製した。なお、基準用テストディスクは、L0層の代わりにダミー基板をL1層と貼り合わせたこと以外は、上記方法と同じ方法で作製した。
上述の作製方法で用意した透過率評価用テストディスク及び基準用テストディスクにおけるL0層の透過率を測定した。なお、溝部(情報記録領域)におけるL0層の透過率は、未記録の状態及び記録後の状態で測定した。この際の記録条件は、線速度をDVDの2倍速相当の線速度とし、記録パワーを12mWとした。測定に用いたレーザ光の波長は650nmとし、絞り込みレンズの開口数はNA=0.6とした。透過率測定は波長650nmの平行光を用いて行った。L0層の透過率の評価結果を表1に示した。なお、表1中の「無し」の欄の透過率は、基準用テストディスクの透過率である。
さらに、L0層の各領域を介してL1層にレーザ光を照射した場合の、L1層における記録パワーの最適値を調べた。その際、記録パルスのストラテジーは同じとし、アシンメトリがない記録パワーを最適記録パワーとした。その結果を表2に示した。なお、表2中の「無し」の欄の最適記録パワーは、基準用テストディスクの最適記録パワーである。
表1及び2の結果から明らかなように、光ビームが通過するL0層の第1基板の形状により、L0層の透過率が異なり、L1層における最適な記録パワーも変化することが分かった。また、表1から明らかなように、この例では、記録層に色素材料を用いているため、第1記録層の記録状態によってもL0層の透過率が多少変動することが分かった。それゆえ、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域に光ビームを照射して情報の記録再生等を行う場合には、光ビームが通過するL0層の領域の透過率を一定に保つようにすることが重要であることが明らかになった。
[参考例1の光ディスクの構成]
参考例1では、L0層及びL1層がともに図2に示すような物理フォーマットで形成され、L0層及びL1層間の物理フォーマット内の各領域の位置関係が表3に示すような関係を有する片面2層タイプの光ディスクを作製した。なお、表3には、L0層及びL1層の物理フォーマットを構成する各領域の開始半径位置と終了半径位置を記載した。また、表3に記載の数値は光ディスクの設計段階の値であり、L0層の欄に記載の数値はL0層の中心からの距離であり、L1層の欄に記載の数値はL1層の中心からの距離である。
また、この例の光ディスクでは、L0層のトラック数とL1層のトラック数が同じになるように、すなわち、L0層とL1層の記録容量が同じになるように、L1層のトラックピッチをL0層のトラックピッチより狭くした。具体的には、L0層のトラックピッチを0.74μmとし、L1層のトラックピッチを0.736μmとした。なお、この例の光ディスクにおけるL0層の情報記録領域に対応する第1基板上の領域に形成された溝の寸法は、透過率評価用ディスクと同様の寸法(トラックピッチ0.74μm、半値幅0.32μm及び深さ170nm)とし、L1層の情報記録領域に対応する第2基板上の領域に形成された溝の寸法は、トラックピッチ0.736μm、半値幅0.37μm及び深さ30nmとした。
この例の光ディスクでは、L0層及びL1層の物理フォーマット構成を同じにしたこと、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置を表3に示すように調整したこと、並びにL1層とL0層とのトラックピッチを変えたこと以外は、上記透過率評価用テストディスクと同じ構造とした。また、この例の光ディスクは、上記透過率評価用テストディスクと同様の方法で作製した。
上述の透過率の測定結果(表1)で明らかにしたように、光ビームが通過するL0層の第1基板の形状により、L0層の透過率が大きく変動するので、この例の光ディスクでは、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域の全域に渡って集光される光ビームが、透過率が変動するL0層のROM領域、遷移領域及びミラー領域を通過せず、透過率変動の少ないL0層の情報記録領域(溝が形成されている領域)のみを通過するように、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の位置関係を調整した。
この例の光ディスクでは、表3から明らかなように、設計段階においては、L1層の内周側のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)におけるL1層中心からの距離R1’=23.910mm、L1層の外周側のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)におけるL1層中心からの距離R2’=57.920mm、L0層の情報記録領域の最内周案内溝の半径位置R(0,G,i)におけるL0層中心からの距離R3’=23.810mm、そして、L0層の情報記録領域の最外周案内溝の半径位置R(0,G,o)におけるL0層中心からの距離R4’=58.020mmとなる。また、この例の光ディスクの記録再生には、波長650nmのレーザ光を用い、絞り込みレンズには開口数NA=0.6のレンズを用いた。さらに、光ディスクのスペーサ層は波長650nmにおける屈折率ns=1.5である材料で形成し、その厚さDを55μmとしたので、この例の光ディスクにおいて、レーザ光をL1層に集光している際のL0層におけるレーザ光の半径rは約20μmとなる。また、この例では、L0層とL1層との貼り合わせ時の偏心量の仕様値RRp−pを70μmとした。
それゆえ、この例の光ディスクでは、設計段階において、L1層の内周側のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)及びL1層の外周側のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)におけるL1層中心からの距離R1’及びR2’と、L0層の情報記録領域の最内周案内溝の半径位置R(0,G,i)及びL0層の情報記録領域の最外周案内溝の半径位置R(0,G,o)におけるL0層中心からの距離R3’およびR4’と、L0層におけるレーザ光の半径rと、偏心量RRp−pとの間に、上記(1)’及び(2)’式の関係が成立する。それゆえ、上記設計内容で作製されたこの例の光ディスクでは、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(1)及び(2)式を満足する。従って、この例で作製された光ディスクでは、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域の全域に渡って集光される光ビームが、透過率が変動するL0層のROM領域、遷移領域及びミラー領域を通過せず、透過率変動の非常に小さいL0層の情報記録領域のみを通過する。
[参考例2]
参考例2では、L0層及びL1層がともに同一トラックピッチで形成され、且つ、表4に示すように、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置が同一である片面2層タイプの光ディスクを作製した。すなわち、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(1)及び(2)式を満足しない光ディスクを作製した。なお、L0層及びL1層のトラックピッチを同じにしたこと、並びにL0層とL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置を同じにしたこと以外は、参考例1の光ディスクと同じ構成とし、同じ方法で作製した。また、表4の記載の半径位置は設計段階での値であり、L0層の欄に記載の数値はL0層中心からの距離であり、L1層の欄に記載の数値はL1層中心からの距離である。
[記録特性]
参考例1及び2の片面2層タイプの光ディスクを各々5枚ずつ試作して、L0層に記録を行った後、L1層に記録を行った。その結果、参考例1の光ディスクでは、5枚全てにおいて1回の記録動作でL1層に正常に記録することができた。しかしながら、参考例2の光ディスクでは、1回の記録動作でL1層に正常に記録できたディスクが1枚、記録動作を複数回繰り返した後にL1層に正常に記録できたディスクが3枚、残りの1枚は、記録を行うことができなかった。この結果から、参考例1の光ディスクのように、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの位置関係を上記(1)及び(2)式の関係が成立するように調整することにより、L1層に対して情報の記録再生を安定に且つ信頼性高く行うことができることが分かった。
また、参考例2の光ディスクのうち記録動作をリトライした光ディスク及び記録できなかった光ディスクのL1層の内周側のテスト領域を調べたところ、トラック1周当たりに1周期の振幅変動があることが分かった。これは、L1層の内周側のテスト領域に到達するレーザ光が、L0層とL1層との貼り合わせ時の偏心の影響によってL0層の鏡面領域及びROM領域を通過したためである。
実施例1では、記録層を色素材料で形成した片面2層タイプの青色レーザ対応の追記型光ディスクを作製した。この例の光ディスクでは、記録層を色素材料で形成しているので、参考例1の表1で説明したように、光入射側から遠い側の情報部(L1層)に対して情報の記録再生を行う際に、光入射側から近い側の情報部(L0層)のテスト領域の記録状態によってはレーザ光の透過率が多少変動する可能性がある。それゆえ、この例の光ディスクでは、さらにこの点を考慮し、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(3)及び(4)式を満足するように、各情報部の物理フォーマットを調整した。また、この例の光ディスクの膜構成は図1に示した膜構成と同じとした。
[透過率評価用テストディスクの作製及び透過率測定]
まず、実施例1の光ディスクの詳細を説明する前に、参考例1と同様に、記録層に色素材料を用いた片面2層タイプの青色レーザ対応の光ディスクにおけるL0層の物理フォーマットと透過率との関係について説明する。そこで、L0層の物理フォーマットと透過率との関係を調べるための片面2層タイプのテストディスク(以下、透過率評価用テストディスクともいう)を作製した。さらに、透過率評価の基準となるテストディスクとして、L0層の代わりにダミー基板をL1層と貼り合わせたテストディスク(以下、基準用テストディスクともいう)も作製した。
透過率評価用テストディスクのL0層の物理フォーマットは、図7に示すように、内周側からROM領域91、遷移領域92及び情報記録領域93(バッファ領域、テスト領域及び情報記録再生領域を含む)から構成した。ROM領域91に対応するL0層の基板上の領域にはエンボスピットを形成し、情報記録領域93に対応する基板上の領域には溝を形成した。また、遷移領域92に対応するL0層の基板上の領域は鏡面とした。具体的には、ROM領域91に対応するL0層の基板上の領域には、トラックピッチ400nm、半値幅160nmのピット列を形成してROMデータを記録した。情報記録領域93に対応する基板上の領域には、トラックピッチ400nm、半値幅220nm及び深さ70nmの溝を形成した。また、遷移領域92の径方向の幅は約10μmとした。一方、透過率評価用テストディスクのL1層の基板表面には、ディスクの最内周から最外周に渡ってトラックピッチ400nm、半値幅220nm及び深さ15nmの溝(グルーブ)を形成した。なお、この例における透過率評価用テストディスクの膜構成は図1に示した構成とした。
次に、図1を参照ながら透過率評価用テストディスクの作製方法について説明する。なお、実施例1の片面2層タイプの光ディスクの作製方法は、以下に説明する透過率評価用テストディスクの作製方法と同様である。
まず、L0層10を次のようにして作製した。第1基板11上に形成されるピット列及び溝(グルーブ)パターンに対応する凹凸パターンが形成されたスタンパを作製する。次いで、作製されたスタンパを既存の射出成型機に装着し、光情報記録媒体グレードのポリカーボネート樹脂を射出成型することによりテストディスクのL0層10の第1基板11を得た。ここでは、第1基板11として、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を作製した。
次いで、第1基板11の凹凸パタ−ン形成面上に、下記化学式(化2)で表わされるアゾ系色素を0.7重量%の濃度で含有するテトラフルオロプロパノール溶液を、スピンコート法により塗布した。なお、上記色素溶液を塗布する際に、色素溶液をフィルタで濾過して不純物を取り除いた。スピンコートは回転数100rpmで回転している第1基板11上に色素溶液0.5gをディスペンサーで供給し、その後、1000rpmから3000rpmまで第1基板11を回転させ、最後に5000rpmで2秒間回転させた。このとき、上記溶液を、グルーブ部分で厚さが110nmとなるように塗布した。次いで、上記色素材料を塗布した第1基板11を80℃にて1時間乾燥させ、さらに、室温にて1時間冷却した。こうして、第1基板11上に第1記録層12を形成した。
さらに、第1記録層12上に、スパッタ法を用いて、第1反射層13として厚さ10nmのAg膜を形成した。このようにしてL0層10を作製した。
次に、L1層20を次のようにして作製した。まず、L1層20の第2基板21はL0層10の第1基板11と同様にして作製した。なお、L1層20においては、レーザ光は第2基板21の溝パターン形成面側から照射されることになるので、該溝パターンはそれを考慮してL0層とは逆方向のスパイラルに形成した。そして、L1層20では、第2基板21の溝パタ−ン形成面上にL0層10とは逆の順序で各構成膜を形成した。
まず、第2基板21上に、スパッタ法を用いて、第2反射層23として厚さ130nmのAg膜を形成した。次いで、第2反射層23上に、上記化学式(化2)で表わされるアゾ系色素を0.7重量%の濃度で含有するテトラフルオロプロパノール溶液を、スピンコート法により塗布して第2記録層22を形成した。なお、この際、上記L0層10の第1記録層12の形成時と同じ条件で上記溶液を塗布して第2記録層22を形成した。膜厚は100nmとした。上記色素材料を塗布した第2基板21を80℃にて1時間乾燥させ、さらに、室温にて1時間冷却した。次いで、第2記録層22上に、スパッタ法により、界面層24としてZnS−SiO2膜を10nmの厚さで形成した。このようにしてL1層20を形成した。
次に、上述のようにして作製されたL0層10とL1層20とを次のようにして貼り合せた。まず、L0層10の第1反射層13上に、スペーサ層30としてUV樹脂材料をスピンコート法により塗布した。さらに、その上にL1層20を載置した。この際、L0層10の第1反射層13と、L1層20の界面層24とがスペーサ層30を介して対向するようにL1層20をスペーサ層30上に載置した。次いで、この状態で、L0層10の第1基板11側からUV照射を施すことにより、該UV樹脂材料を硬化させて、L0層10とL1層20とを貼り合せた。スペーサ層30の厚さは15〜25μmが好適であり、本実施例では25μmとした。上述のようにして、透過率評価用テストディスクを作製した。なお、基準用テストディスクは、L0層の代わりにダミー基板をL1層と貼り合わせたこと以外は、上記方法と同じ方法で作製した。
上述の作製方法で用意した透過率評価用テストディスク及び基準用テストディスクにおけるL0層の透過率を測定した。なお、溝部(情報記録領域)におけるL0層の透過率は、未記録の状態及び記録後の状態で測定した。この測定における記録条件は、線速度を6.61m/sとし、記録パワーを9.0mWとした。その評価結果を表5に示した。なお、測定に用いたレーザ光の波長は405nmとし、絞り込みレンズの開口数はNA=0.65とした。透過率測定は、波長405nmの平行光を用いて行った。なお、表5中の「無し」の欄の透過率は、基準用テストディスクの透過率である。
さらに、L0層の各領域を介してL1層にレーザ光を照射した場合の、L1層における記録パワーの最適値を調べた。その際、記録パルスのストラテジーは同じとし、アシンメトリがない記録パワーを最適記録パワーとした。その結果を表6に示した。なお、表6中の「無し」の欄の最適記録パワーは、基準用テストディスクの最適記録パワーである。
表5及び6の結果から明らかなように、記録層を色素材料で形成した場合には、参考例1の透過率の評価結果と同様に、波長405nmのレーザ光に対しても、光ビームが通過するL0層の第1基板の形状によってL0層の透過率が異なり、L1層における最適な記録パワーも変化することが分かった。また、表5から明らかなように、第1記録層の記録状態によっても、L0層の透過率が多少変動することが分かった。それゆえ、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域に光ビームを照射して情報の記録再生等を行う場合には、光ビームが通過するL0層の領域の透過率を一定に保つようにすることが重要であることが明らかになった。
[実施例1の光ディスクの構成]
実施例1では、L0層及びL1層がともに図2に示すような物理フォーマットで形成され、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が表7に示すような関係を有する片面2層タイプの光ディスクを作製した。なお、表7には、L0層及びL1層の物理フォーマットを構成する各領域の開始半径位置と終了半径位置を記載した。また、表7に記載の半径位置は設計段階での値であり、L0層の欄に記載の数値はL0層中心からの距離であり、L1層の欄に記載の数値はL1層中心からの距離である。
また、この例の光ディスクでは、L1層のトラック数とL0層のトラック数を同じにするため、すなわち、L0層及びL1層の記録容量を同一にするため、並びに、各領域の開始半径位置及び終了半径位置を調整するために、L1層のトラックピッチをL0層のトラックピッチより狭くした。具体的には、L0層のトラックピッチを400nmとし、L1層のトラックピッチを395nmとした。なお、この例の光ディスクにおけるL0層の情報記録領域に対応する第1基板上の領域に形成された溝の寸法は、透過率評価用ディスクと同様(トラックピッチ400nm、半値幅220nm及び深さ70nm)とし、L1層の情報記録領域に対応する第2基板上の領域に形成された溝の寸法は、トラックピッチ395nm、半値幅218nm及び深さ15nmとした。
なお、この例の光ディスクでは、L0層及びL1層の物理フォーマット構成を同じにしたこと、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置を表7に示すように調整したこと、並びにL1層とL0層とのトラックピッチを変えたこと以外は、上記透過率評価用テストディスクと同じ構造とした。また、この例の光ディスクは、上記透過率評価用テストディスクと同様の方法で作製した。
上述の透過率の測定結果(表5に示した結果)で明らかにしたように、L0層の記録層に色素材料を用いた場合には記録層の記録状態によっても透過率が変動するので、この例の光ディスクでは、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域の全域に渡って集光される光ビームが、透過率が変動するL0層のROM領域、遷移領域、ミラー領域及びテスト領域を通過せず、透過率変動の少ないL0層の情報(ユーザ情報等の追記情報)が記録される領域(図2中の情報記録再生領域55)のみを通過するように、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の位置関係を調整した。
この例の光ディスクでは、表7から明らかなように、設計段階において、L1層の内周側のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)におけるL1層中心からの距離R1’=24.064mm、L1層の外周側のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)におけるL1層中心からの距離R2’=57.857mm、L0層の情報記録再生領域の最内周トラックの半径位置R(0,D,i)におけるL0層中心からの距離R5’=24.000mm、そして、L0層の情報記録再生領域の最外周トラックの半径位置R(0,D,o)におけるL0中心からの距離R6’=57.921mmとなる。また、この例の光ディスクの記録再生には、波長405nmのレーザ光を用い、絞り込みレンズには開口数NA=0.65のレンズを用いた。さらに、光ディスクのスペーサ層は波長405nmにおける屈折率ns=1.5である材料で形成し、その厚さDを25μmとしたので、この例の光ディスクにおいて、レーザ光をL1層に集光している際のL0層におけるレーザ光の半径rは11.5μmとなる。また、この例では、L0層とL1層との貼り合わせ時の偏心量の仕様値RRp−pを50μmとした。
それゆえ、この例の光ディスクでは、設計段階において、L1層の内周側のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)及びL1層の外周側のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)におけるL1層中心からの距離R1’及びR2’と、L0層の情報記録再生領域の最内周トラックの半径位置R(0,D,i)及びL0層の情報記録再生領域の最外周トラックの半径位置R(0,D,o)におけるL0層中心からの距離R5’及びR6’と、L0層におけるレーザ光の半径rと、偏心量の仕様値RRp−pとの間に、上記(3)’及び(4)’式の関係が成立する。それゆえ、上記設計内容で作製されたこの例の光ディスクでは、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(3)及び(4)式を満足する。従って、この例で作製された光ディスクでは、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域の全域に渡って集光される光ビームが、透過率が変動するL0層のROM領域、遷移領域、ミラー領域及びテスト領域を通過せず、透過率変動の非常に小さいL0層の情報記録再生領域のみを通過する。
[比較例1]
比較例1では、L0層及びL1層がともに同一トラックピッチで形成され、且つ、表8に示すように、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置が同一である片面2層タイプの光ディスクを作製した。すなわち、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(3)及び(4)式を満足しない光ディスクを作製した。なお、L0層及びL1層のトラックピッチを同じにしたこと、並びにL0層とL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置を同じにしたこと以外は、実施例1の光ディスクと同じ構成とし、同じ方法で作製した。また、表8に記載の半径位置は設計段階での値であり、L0層の欄に記載の数値はL0層中心からの距離であり、L1層の欄に記載の数値はL1層中心からの距離である。
[記録特性]
実施例1及び比較例1の片面2層タイプの光ディスクを各々5枚ずつ試作して、L0層に記録を行った後、L1層に記録を行った。その結果、実施例1の光ディスクでは、5枚全てにおいて1回の記録動作でL1層に正常に記録することができた。しかしながら、比較例1の光ディスクでは、L1層への1回の記録動作で正常に記録できたディスクが1枚、記録動作を複数回繰り返した後にL1層に正常に記録できたディスクが3枚、残りの1枚は、記録を行うことができなかった。この結果から、実施例1の光ディスクのように、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの位置関係を上記(3)及び(4)式の関係が成立するように調整することにより、L1層に対して情報の記録再生を安定に且つ信頼性高く行うことができることが分かった。
また、比較例1の光ディスクのうち記録動作をリトライした光ディスク及び記録できなかった光ディスクのL1層の内周側のテスト領域を調べたところ、トラック1周当たりに1周期の振幅変動があることが分かった。これは、L1層の内周側のテスト領域に到達するレーザ光が、L0層とL1層との貼り合わせ時の偏心の影響によってL0層の鏡面領域及びROM領域を通過したためである。
[参考例3]
参考例3では、記録層を相変化材料で形成した片面2層タイプの青色レーザ対応の書換型光ディスクを作製した。この例の光ディスクでは、記録層を相変化材料で形成しているので、後述するように、光入射側から遠い側の情報部(L1層)に対して情報の記録再生を行う際に、光入射側から近い側の情報部(L0層)の基板形状によりレーザ光の透過率は変動するが、テスト領域の記録状態によってはレーザ光の透過率はほとんど変動しない。それゆえ、この例の光ディスクでは、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(1)及び(2)式を満足するように、各情報部の物理フォーマットを調整した。
この例で作製した片面2層タイプの書換型光ディスクの概略断面図を図8に示した。この例の光ディスク300は、図8に示すように、L0層70(第1情報部)とL1層80(第2情報部)とをスペーサ層90を介して貼り合せた構造を有する。
L0層70は、図8に示すように、第1基板71上に、第1保護層72、第1界面層73、第1記録層74、第2界面層75、第2保護層76、第1反射層77及び第3保護層78が順次積層された構造を有する。また、L1層80は、図8に示すように、第2基板81上に、第2反射層87、第2保護層86、第2界面層85、第2記録層84、第1界面層83及び第1保護層82が順次積層された構造を有する。そして、L0層70の第3保護層78とL1層80の第1保護層82とが対向するように、L0層70とL1層80とがスペーサ層90を介して貼り合わされている。なお、この例では、図8に示すように、L0層70の第1基板71側からレーザ光40が入射される。
[透過率評価用テストディスクの作製及び透過率測定]
まず、参考例3の光ディスクの詳細を説明する前に、この例においても、記録層に相変化材料を用いた片面2層タイプの青色レーザ対応の光ディスクにおけるL0層の物理フォーマットと透過率との関係について説明する。そこで、L0層の物理フォーマットと透過率との関係を調べるための片面2層タイプのテストディスク(以下、透過率評価用テストディスクともいう)を作製した。さらに、透過率評価の基準となるテストディスクとして、L0層の代わりにダミー基板をL1層と貼り合わせたテストディスク(以下、基準用テストディスクともいう)も作製した。なお、透過率評価用テストディスクの膜構成は図8に示した膜構成とした。
以下に、図8を参照しながら透過率評価用テストディスクの作製方法について説明する。なお、参考例3の片面2層タイプの書換型光ディスクの作製方法は、以下に説明する透過率評価用テストディスクの作製方法と同様である。
まず、L0層70は次のようにして作製した。L0層70の第1基板71には、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用いた。なお、L0層70の物理フォーマットの構成は、図7に示すように、内周側からROM領域91、遷移領域92及び情報記録領域93から構成した。ROM領域91に対応するL0層の第1基板71上の領域にはエンボスピットを形成し、情報記録領域93に対応する第1基板71上の領域には溝を形成した。また、遷移領域92に対応する第1基板71上の領域は鏡面とした。具体的には、ROM領域91に対応するL0層の第1基板71上の領域には、トラックピッチ400nm、半値幅160nmのピット列を形成した。情報記録領域93に対応する第1基板71上の領域には、トラックピッチ400nm、半値幅220nm、深さ20nmの溝を形成した。そして、遷移領域92に対応する第1基板71上の領域は径方向の幅が約10μmの鏡面で形成した。このような第1基板71上の凹凸パターンは、参考例1と同様にスタンパを用いて形成した。
次に、L0層70の第1基板71上に、スパッタリングプロセスにより、第1保護層72、第1界面層73、第1記録層74、第2界面層75、第2保護層76、第1反射層77及び第3保護層78を順次積層した。この際、第1保護層72は膜厚50nmの(ZnS)80(SiO2)20で形成し、第1界面層73は膜厚1nmのGe8Cr2−Nで形成し、第1記録層74は膜厚7nmのBi4.5Ge48Te47.5で形成し、第2界面層75は膜厚2nmのGe8Cr2−Nで形成し、第2保護層76は膜厚7nmの(ZnS)80(SiO2)20で形成し、第1反射層77は膜厚8nmのAgで形成し、そして、第3保護層78は膜厚25nmの(ZnS)80(SiO2)20で形成した。
そして、上記のように作製したL0層70の単板ディスクに対して、波長810nm、ビーム長径96μm及び短径1μmの楕円ビームを有するレーザ光を照射して初期化を行った。このようにして、L0層70を作製した。
次に、L1層80を次のようにして作製した。まず、L1層80の第2基板81には、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用いた。第2基板81の表面にはディスク最内周から最外周までトラックピッチ400nm、半値幅180nm、深さ20nmの溝(グルーブ)を形成した。なお、レーザ光40は、図8に示すように、L1層80に対して第2基板81の溝パターン形成面側から照射されることになるので、該溝パターンはそれを考慮してL0層70とは逆方向のスパイラルで形成した。
次に、L1層80の第2基板81の溝パターン形成面上に、スパッタリングプロセスにより、第2反射層87、第2保護層86、第2界面層85、第2記録層84、第1界面層83及び第1保護層82を順次積層した。すなわち、L1層80では、L0層70の構成膜の積層順序とは逆の順序でL1層80の各構成膜を形成した。この際、第2反射層87は膜厚150nmのAgで形成し、第2保護層86は膜厚11nmの(ZnS)80(SiO2)20で形成し、第2界面層85は膜厚2nmのGe8Cr2−Nで形成し、第2記録層84は膜厚11nmのBi4.5Ge48Te47.5で形成し、第1界面層83は膜厚7nmのGe8Cr2−Nで形成し、そして、第1保護層82は膜厚60nmの(ZnS)80(SiO2)20で形成した。このようにしてL1層80を作製した。
次いで、L1層80の第1保護層82上に、UV樹脂材料をスピンコート法により塗布した。この状態で、UV照射を施して該UV樹脂材料を硬化し、スペーサ層90の一部であるUV樹脂層90aを形成した。UV樹脂層90aの膜厚は10μmとした。次いで、UV樹脂層90aが形成されたL1層80の単板ディスクに対して、L0層70と同様に、波長810nm、ビーム長径96μm及び短径1μmの楕円ビームを有するレーザ光を照射して初期化を行った。この際、初期化に用いた装置では、レーザ光を照射する光ヘッドと上記単板ディスクとの間に0.6mm厚の光学ガラスを挿入して球面収差補正を行った。
次に、上記方法で作製されたL0層70とL1層80とを次のようにして貼り合わせた。まず、L0層70の第3保護層78上にUV樹脂材料をスピンコート法により塗布して、UV樹脂層90bを形成した。さらに、その上にL1層80を載置した。この際、図8に示すように、L0層70の第3保護層78とL1層80の第1保護層82とがスペーサ層90を介して対向するようにL1層80を載置した。この状態で、L0層70側からUV照射を施すことにより、UV樹脂層90bのUV樹脂材料を硬化させてスペーサ層90を形成するとともに、L0層70とL1層80とを貼り合わせた。スペーサ層90の厚さは15〜25μmが好適であり、この例では25μmとした。また、スペーサ層90は、波長405nmでの屈折率1.50の樹脂で形成した。上述のようにして、この例の透過率評価用テストディスクを作製した。なお、基準用テストディスクは、L0層の代わりにダミー基板をL1層と貼り合わせたこと以外は、上記方法と同じ方法で作製した。
上述の作製方法で用意した透過率評価用テストディスク及び基準用テストディスクにおけるL0層の透過率を測定した。なお、溝部(情報記録領域)におけるL0層の透過率は、消去状態及び記録状態で測定した。この測定における記録条件は、線速度を6.61m/sとし、記録パワーを8.5mWとし、消去パワーを4.0mWとした。その評価結果を表9に示した。なお、この測定に用いたレーザ光の波長は405nmとし、集光用対物レンズの開口数はNA=0.65とした。透過率測定は、波長405nmの平行光を用いて行った。なお、表9中の「無し」の欄の透過率は、基準用テストディスクの透過率である。
さらに、L0層の各領域を介してL1層にレーザ光を照射した場合の、L1層における記録パワー及び消去パワーの最適値を調べた。その際、記録パルスのストラテジーは同じとし、アシンメトリがない記録パワー及び消去パワーをそれぞれの最適値とした。その結果を表10に示した。なお、表10中の「無し」の欄の最適記録パワー及び最適消去パワーは、基準用テストディスクの最適記録パワー及び最適消去パワーである。
表9及び10の結果から明らかなように、記録層を相変化材料で形成した場合には、L0層の第1記録層の記録状態によってL0層の透過率は変化しなかったが、L0層の第1基板の形状によっては、L0層の透過率が異なり、最適な記録及び再生パワーも変化することが分かった。それゆえ、この例においても、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域に光ビームを照射して情報の記録再生等を行う場合には、光ビームが通過するL0層の領域の透過率を一定に保つようにすることが重要であることが明らかになった。
[参考例3の光ディスクの構成]
参考例3では、L0層及びL1層がともに図2に示すような物理フォーマットで形成され、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が表11に示すような関係を有する片面2層タイプの書換型光ディスクを作製した。なお、表11には、L0層及びL1層の物理フォーマットを構成する各領域の開始半径位置と終了半径位置を記載した。また、表11に記載の半径位置は設計段階での値であり、L0層の欄に記載の数値はL0層中心からの距離であり、L1層の欄に記載の数値はL1層中心からの距離である。
また、この例の光ディスクでは、L1層のトラック数とL0層のトラック数を同じにするため、すなわち、L0層及びL1層の記録容量を同一にするため、表11に示すように、L1層の情報記録再生領域の配置位置をL0層の情報記録再生領域より外周側にずらして配置した。なお、この例の光ディスクにおけるL0層の情報記録領域に対応する第1基板上の領域に形成された溝の寸法は、透過率評価用ディスクと同様(トラックピッチ400nm、半値幅220nm及び深さ20nm)とし、L1層の情報記録領域に対応する第2基板上の領域に形成された溝の寸法は、トラックピッチ400nm、半値幅180nm及び深さ20nmとした。
なお、この例の光ディスクでは、L0層及びL1層の物理フォーマット構成を同じにしたこと、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置を表11に示すように調整したこと、並びにL1層とL0層とのトラックピッチを変えたこと以外は、上記透過率評価用テストディスクと同じ構造とした。また、この例の光ディスクは、上記透過率評価用テストディスクと同様の方法で作製した。
上述の透過率の測定結果(表9に示した結果)で明らかにしたように、記録層に相変化材料を用いた場合には、L0層のROM領域、遷移領域及びミラー領域で透過率が変動する。それゆえ、この例の光ディスクでは、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域の全域に渡って集光される光ビームが、透過率が変動するL0層のROM領域、遷移領域及びミラー領域を通過せず、透過率変動の少ないL0層の溝が形成されている領域(図2中の情報記録領域50)のみを通過するように、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の位置関係を調整した。
この例の光ディスクでは、表7から明らかなように、設計段階において、L1層の内周側のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)におけるL1層中心からの距離R1’=23.870mm、L1層の外周側のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)におけるL1層中心からの距離R2’=58.080mm、L0層の情報記録領域の最内周案内溝の半径位置R(0,G,i)におけるL0層中心からの距離R3’=23.800mm、そして、L0層の情報記録領域の最外周案内溝の半径位置R(0,G,o)におけるL0層中心からの距離R4’=58.499mmとなる。また、この例の光ディスクの記録再生には、波長405nmのレーザ光を用い、絞り込みレンズには開口数NA=0.65のレンズを用いた。さらに、光ディスクのスペーサ層は波長405nmにおける屈折率ns=1.5である材料で形成し、その厚さDを25μmとしたので、この例の光ディスクにおいて、レーザ光をL1層に集光している際のL0層におけるレーザ光の半径rは11.5μmとなる。また、この例では、L0層とL1層との貼り合わせ時の偏心量の仕様値RRp−pを50μmとした。
それゆえ、この例の光ディスクでは、設計段階においては、L1層の内周側のテスト領域の最内周トラックの半径位置R(1,TI,i)及びL1層の外周側のテスト領域の最外周トラックの半径位置R(1,TO,o)におけるL1層中心からの距離R1’及びR2’と、L0層の情報記録領域の最内周案内溝の半径位置R(0,G,i)及びL0層の情報記録領域の最外周案内溝の半径位置R(0,G,o)におけるL0層中心からの距離R3’及びR4’と、L0層におけるレーザ光の半径rと、偏心量の仕様値RRp−pとの間には、上記(1)’及び(2)’式の関係が成立する。それゆえ、上記設計内容で作製されたこの例の光ディスクでは、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(1)及び(2)式を満足する。従って、この例で作製された光ディスクでは、L1層のテスト領域及び情報記録再生領域の全域に渡って集光される光ビームが、透過率が変動するL0層のROM領域、遷移領域及びミラー領域を通過せず、透過率変動の非常に小さいL0層の情報記録領域のみを通過する。
[参考例4]
参考例4では、L0層及びL1層がともに同一トラックピッチで形成され、且つ、上記表8に示すように、L0層及びL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置が同一である片面2層タイプの書換型光ディスクを作製した。すなわち、L0層及びL1層間の物理フォーマットの位置関係が上記(1)及び(2)式を満足しない光ディスクを作製した。なお、L0層、及びL1層のトラックピッチを同じにしたこと、並びにL0層とL1層の物理フォーマット内の各領域の半径位置を同じにしたこと以外は、参考例3の光ディスクと同じ構成とし、同じ方法で作製した。
[記録特性]
参考例3及び4の片面2層タイプの書換型光ディスクを各々5枚ずつ試作して、L0層に記録を行った後、L1層に記録を行った。その結果、参考例3の光ディスクでは、5枚全てにおいて1回の記録動作でL1層に正常に記録することができた。しかしながら、参考例4の光ディスクでは、1回の記録動作でL1層に正常に記録できたディスクが無く、記録動作を複数回繰り返した後にL1層に正常に記録できたディスクが2枚、残りの3枚は、記録を行うことができなかった。この結果から、参考例3の光ディスクのように、L0層10の物理フォーマットとL1層20の物理フォーマットとの位置関係を上記(1)及び(2)式の関係が成立するように調整することにより、L1層に対して情報の記録再生を安定に且つ信頼性高く行うことができることが分かった。
また、参考例4の全ての光ディスクのL1層の内周側のテスト領域を調べたところ、トラック1周当たりに1周期の振幅変動があることが分かった。これは、L1層の内周側のテスト領域に到達するレーザ光が、L0層とL1層との貼り合わせ時の偏心の影響によってL0層の鏡面領域及びROM領域を通過したためである。
上記実施例1では、2つの情報部を備える光記録媒体について説明したが、本発明はこれに限定されない。3つ以上の情報部を備える光記録媒体に対しても本発明を適用することができる。光記録媒体が3つ以上の情報部を備える場合、隣り合う各情報部のうち光ビームが入射される側の一方の情報部を第1情報部とし、他方の情報部を第2情報部とすると、第2情報記録領域の内周近傍にテスト領域が設けられている場合には上記式(3)が成立し、第2情報記録領域の外周近傍にテスト領域が設けられている場合には上記式(4)が成立し、第2情報記録領域の内周近傍及び外周近傍の両方にテスト領域が設けられている場合には上記式(3)及び(4)が成立するように、各情報部の物理フォーマットの位置関係を調整すればよい。