JP2007285817A - 電極装置 - Google Patents

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幸彦 河野
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Abstract

【課題】コンクリート母材16の任意の位置に電極18を固定することのできる、電極装置10を提供する。
【解決手段】電極装置10は、コンクリート母材16の表面に真空吸着される吸着部材20と、コンクリート母材16の表面に鉄筋14と対向して配設される電極18を有する電極部材22と、吸着部材20と電極部材22とを連結する連結部材24と、界面活性剤が含浸されており、電極18とコンクリート母材16との間に配設される接合シート26とを備えている。したがって、吸着部材20をコンクリート母材16の表面に真空吸着させると同時に、吸着部材20に連結された電極部材22をコンクリート母材16の表面に固定することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、コンクリート構造物における鉄筋の腐食の程度を電気的手法で評価する際に、コンクリート母材の表面に固定される、電極装置に関する。
護岸構造物や橋梁基礎等のコンクリート構造物においては、コンクリート母材中に鉄筋が埋設されているが、この鉄筋は、(a) かぶりコンクリートの中性化や、(b) コンクリート母材に含まれる塩分や、(c) 外部環境からコンクリート母材内へ浸透した塩分等によって徐々に腐食されていくことが分かっている。
このような鉄筋の腐食機構は、上記腐食因子(a)、(b)または(c)による電位場の乱れが主原因で起こる電池作用であると考えられており、従来では、「自然電位法」や「分極抵抗法」のような電気的手法によって鉄筋の腐食状態を評価するようにしていた。つまり、コンクリート母材の表面に鉄筋と対向する電極を配設し、鉄筋と電極との間に通電したときの電気的特性を電流計等によって検出し、その検出結果を所定の方式で処理することによって鉄筋の腐食状態を評価するようにしていた(特許文献1)。
このような評価方法において、鉄筋−電極間への通電中に電極が少しでも動くと、コンクリート母材と電極との界面における抵抗値が大きく変動するため、検出結果にノイズが発生してしまう。そこで、従来では、図9に示すような電極装置1を用いて、電極装置1に含まれる電極2をコンクリート母材3の表面に確実に固定するようにしていた。
この電極装置1は、地面または床面等の水平面4上に配設される基台5と、基台5の上面に立設された支柱6と、支柱6に高さ調整自在に固定されたアーム7と、アーム7の先端に取り付けられた電極2とを備えている。そして、使用時には、アーム7の高さや基台5の水平方向位置を調整することによって、電極2をコンクリート母材3の所定箇所に押し付けた後、電源8aを駆動して電極2と鉄筋9との間に通電するとともに、電流計8bによって通電時の電気的特性を検出するようにしていた。
特開2004−177124号
従来の電極装置1では、電極2の固定位置が支柱6の長さに依存しており、支柱6の長さよりも高い位置に電極2を固定することができなかった。また、基台5を水平面4上に配設する必要があったため、地面または床面等が傾斜している場合には適用できなかった。
それゆえに、本発明の主たる課題は、支柱の長さや、地面または床面等の状態にかかわらず、コンクリート母材の任意の位置に電極を固定することのできる、電極装置を提供することである。
請求項1に記載した発明は、「コンクリート母材16中に埋設されている鉄筋14の腐食の程度を電気的手法で評価する際に、前記コンクリート母材16の表面に固定される電極装置10であって、前記コンクリート母材16の表面に真空吸着される吸着部材20と、前記コンクリート母材16の表面に前記鉄筋14と対向して配設される電極18を有する電極部材22と、前記吸着部材20と前記電極部材22とを連結する連結部材24と、界面活性剤が含浸されており、前記電極18と前記コンクリート母材16との間に配設される接合シート26とを備える、電極装置10」である。
この発明では、吸着部材20と電極部材22とが連結部材24を介して連結されているため、吸着部材20をコンクリート母材16の表面に吸着固定すると同時に、吸着部材20に連結された電極部材22をコンクリート母材16の表面に固定することができる。また、電極18とコンクリート母材16との間には、界面活性剤が含浸された接合シート26が配設されているので、電極18とコンクリート母材16との界面における抵抗の影響を抑えることができる。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「電極装置10」において、「前記電極部材22を前記コンクリート母材16側へ押圧する押圧部材28をさらに備える」ことを特徴とする。
この発明では、押圧部材28によって電極部材22をコンクリート母材16の表面に押し当てることができる。
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「電極装置10」において、「前記連結部材24は、長手方向へ間隔を隔てて形成された複数の孔70を有する棒状部材であり、前記吸着部材20は、前記孔70に挿通された固定ネジ42によって前記連結部材24に取り付けられている」ことを特徴とする。
この発明では、固定ネジ42を通す孔70を変更することによって、連結部材24に対する吸着部材20の取付位置を変更することができ、吸着部材20と電極部材22との間隔を調整することができる。
請求項4に記載した発明は、請求項1または2に記載した「電極装置10」において、「前記連結部材24は、長手方向へ延びて形成された長孔80を有する棒状部材であり、前記吸着部材20は、前記長孔80に挿通された固定ネジ42によって前記連結部材24に取り付けられている」ことを特徴とする。
この発明では、長孔80に対する固定ネジ42の位置を変更することによって、連結部材24に対する吸着部材20の取付位置を変更することができ、吸着部材20と電極部材22との間隔を調整することができる。
請求項1〜3に記載した発明によれば、コンクリート母材16の表面に吸着部材20を真空吸着させることによって、コンクリート母材16の任意の位置に電極18を固定することができる。
請求項2に記載した発明によれば、電極部材22をコンクリート母材16の表面に押し当てることができるので、界面活性剤が含浸された接合シート26の存在と相俟って、電極18とコンクリート母材16との電気的接合性を高めることができる。
請求項3および4に記載した発明によれば、電極部材22と吸着部材20との間隔を適宜調整することができるので、コンクリート母材16の表面にひび割れや凹凸が生じている場合でも、そのひび割れ等を回避して吸着部材20を吸着させることができる。
図1は、本発明が適用された電極装置10を示す正面図であり、図2は、図1におけるII-II線断面図である。また、図3は、電極装置10を示す部分拡大図である。以下の説明では、図2および図3中の右側を「上」とし、左側を「下」とするが、この上下方向は説明の便宜上用いるものであり、鉛直方向を意味するものではない。
電極装置10(図1〜3)は、図4に示すように、鉄筋コンクリート構造物12を構成する鉄筋14の腐食の程度を電気的手法で評価する際に、「作用極」である鉄筋14に対する「対極」となる電極18をコンクリート母材16の表面に固定するものであり、2つの吸着部材20と、電極18を有する電極部材22と、連結部材24と、接合シート26と、押圧部材28とによって構成されている。
なお、鉄筋14の腐食状態を評価する電気的手法としては、「自然電位法」や「分極抵抗法」等が知られているが、本発明に係る電極装置10は、これらを含むあらゆる電気的手法に適用可能である。
吸着部材20は、コンクリート母材16の表面に真空吸着により固定されるものであり、図3に示すように、金属または合成樹脂等の高剛性材料からなる本体30と、独立発泡スポンジゴム等の弾性材料からなる円筒状の吸着部32とによって構成されている。
本体30は、円盤状の保持部34と、保持部34の上面中央部に立設された支柱36とを有しており、保持部34および支柱36の中心部には、保持部34の下面に設けられた開口38aと、支柱36の側面に設けられた開口38bとを連通する通気孔38が形成されている。また、保持部34の下面には、吸着部32の上端部が接合される溝40が形成されており、支柱36の上端面には、固定ネジ42が螺合されるネジ穴44が形成されている。さらに、開口38bには、雌ネジ46が形成されており、この雌ネジ46には、排気管48の端部に接続された継手50が螺合されている。
電極部材22は、図3に示すように、コンクリート母材16(図4)の表面に接合シート26を介して当接される当接部52と、電極18とによって構成されている。
当接部52は、合成樹脂等の絶縁材料によって形成された円盤状の当接盤54を有しており、当接盤54の上面中央部には、所定長さの円柱状の支柱56が立設されている。そして、当接盤54の下面中央部には、電極装着穴58が形成されており、この電極装着穴58に電極18が装着されている。また、当接盤54の上面の所定位置には、給電線60が接続される端子62が設けられており、端子62と電極18とが導電線64を介して接続されている。
連結部材24は、図1および図2に示すように、金属または合成樹脂等の高剛性材料からなる断面略コ状の棒状部材であり、連結部材24の長手方向中央部には、支柱56が挿通される孔66が形成されており、この孔66には、支柱56を収容する保護管68が取り付けられている。また、連結部材24には、吸着部材18を固定する固定ネジ42が挿通される複数の孔70が、長手方向へ所定の間隔を隔てて形成されている。
接合シート26は、電気的接合性を高めることを目的として、電極18とコンクリート母材16との間に配設されるものであり、不織布等からなるシート本体72に石鹸等の界面活性剤を含浸させることによって構成されている。
押圧部材28は、電極部材22をコンクリート母材16側へ押圧する弾性部材であり、この実施例では、「コイルバネ」が押圧部材28として用いられている。腐食評価の際に取得する電気的特性を安定させるためには、電極部材22の下面をコンクリート母材16に所定の押圧力で押し当てる必要がある。そのため、押圧部材28の「自然状態」すなわち「圧縮されていない状態」の長さLは、図3に示すように、電極部材22の下面を吸着部材20の下面よりも下方(図3中の左側)に位置させるように設定されている。
電極装置10を組み立てる際には、電極部材22の支柱56の外周に押圧部材(コイルバネ)28を配設し、この支柱56を連結部材24の孔66から保護管68の内部に挿入する。また、吸着部材20の支柱36を、連結部材24の任意の孔70に対して位置決めするとともに、固定ネジ42を孔70に通して支柱36のネジ穴44に螺合する。そして、界面活性剤が含浸された接合シート26を電極部材22の下面に配設する。
電極装置10をコンクリート母材16の表面に固定する際には、図4に示すように、予め吸着部材20の開口38bに継手50を介して排気管48の一端を接続するとともに、電極部材22の端子62に給電線60の一端を接続する。そして、鉄筋14の評価対象部位を図面または探査装置等によって特定し、その部位に対向するようにして、コンクリート母材16の表面に電極部材22および接合シート26を位置決めする。また、連結部材24をコンクリート母材16側へ押すことによって、各吸着部材20をコンクリート母材16の表面に位置決めする。
このとき、吸着部材20の固定位置にひび割れや凹凸があれば、その位置に吸着部材20を真空吸着させることが困難であるため、その場合には、電極18を中心として連結部材24を回転させることによって、吸着部材20の固定位置を変更する。また、連結部材24を回転させることによってもひび割れ等を回避できない場合には、固定ネジ42を外し、吸着部材20の連結部材24に対する取付位置を変更することによって、吸着部材20の固定位置を変更する。
コンクリート母材16に対する吸着部材20の位置決めが完了すると、排気管48に接続された真空ポンプ74を駆動することによって、吸着部材20を構成する吸着部32の内部空間から空気を吸引し、吸着部32内に生じた負圧によって、吸着部材20をコンクリート母材16の表面に真空吸着させる。
そして、電極装置10をコンクリート母材16の表面に固定した後は、給電線60に接続された電源76を駆動することによって、鉄筋14と電極18との間に通電し、電源76に対して直列接続された電流計78によって、通電時の電気的特性を検出する。
なお、上述の実施例では、連結部材24に2つの吸着部材20を取り付けた場合について説明したが、吸着部材20の数は特に限定されるものではなく、少なくとも1つあればよい。吸着部材20が1つの場合には、2つの場合に比べて固定力は低下するが、図5に示すように、連結部材24の長さを短くすることができる。
また、上述の実施例では、連結部材24に複数の孔70を形成するようにしているが、図6に示すように、複数の孔70に代えて長孔80を形成し、この長孔80に蝶ネジ等の固定ネジ42を通すようにしてもよい。この場合には、長孔80に対する固定ネジ42の位置を変更することによって、連結部材24に対する吸着部材20の取付位置を容易に変更することができ、コンクリート母材16の表面に生じたひび割れ等を簡単に回避することができる。
また、押圧部材28としては、「コイルバネ」に代えて「板バネ」が用いられてもよい。この場合には、図7または図8に示すように、連結部材24にバネ弾性を持たせることによって、連結部材24に押圧部材28の機能(押圧機能)を併有させることができるので、連結部材24とは別に押圧部材28を設ける必要はない。つまり、図7に示した電極装置82では、連結部材24の長手方向中央部にバネ弾性を持たせることによって、その部分を「押圧部材28」とすることができ、図8に示した電極装置84では、連結部材24の端部を湾曲させるとともに、そこにバネ弾性を持たせることによって、湾曲部分を「押圧部材28」とすることができる。
さらに、吸着部材20と電極部材22との間隔は、連結部材24に対する電極部材22の取付位置を変更することによって調整してもよいし、吸着部材20および電極部材22の双方の取付位置を変更することによって調整してもよい。
電極装置を示す正面図 電極装置を示すII-II線断面図 電極装置を示す部分拡大図 電極装置の使用状態を示す断面図 他の電極装置(吸着部材が1つ)を示す正面図 他の電極装置(長孔あり)を示す正面図 他の電極装置(コイルバネなし)を示す断面図 他の電極装置(吸着部が1つで、コイルバネなし)を示す断面図 従来技術の使用状態を示す側面図
符号の説明
10,82,84… 電極装置
12… 鉄筋コンクリート構造物
14… 鉄筋
16… コンクリート母材
20… 吸着部材
22… 電極部材
24… 連結部材
26… 接合シート
28… 押圧部材
32… 吸着部
42… 固定ネジ
44… ネジ穴
70… 孔
80… 長孔

Claims (4)

  1. コンクリート母材中に埋設されている鉄筋の腐食の程度を電気的手法で評価する際に、前記コンクリート母材の表面に固定される電極装置であって、
    前記コンクリート母材の表面に真空吸着される吸着部材と、前記コンクリート母材の表面に前記鉄筋と対向して配設される電極を有する電極部材と、前記吸着部材と前記電極部材とを連結する連結部材と、界面活性剤が含浸されており、前記電極と前記コンクリート母材との間に配設される接合シートとを備える、電極装置。
  2. 前記電極部材を前記コンクリート母材側へ押圧する押圧部材をさらに備える、請求項1記載の電極装置。
  3. 前記連結部材は、長手方向へ間隔を隔てて形成された複数の孔を有する棒状部材であり、前記吸着部材は、前記孔に挿通された固定ネジによって前記連結部材に取り付けられている、請求項1または2記載の電極装置。
  4. 前記連結部材は、長手方向へ延びて形成された長孔を有する棒状部材であり、前記吸着部材は、前記長孔に挿通された固定ネジによって前記連結部材に取り付けられている、請求項1または2記載の電極装置。
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