以下、本発明の複層塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
本発明の複層塗膜形成方法(以下、「本方法」ということがある。)は、被塗物に、水性着色ベースコート塗料を塗装してベースコート塗膜を形成せしめ、該ベースコート塗膜が未硬化の状態で、その上に水性クリヤコート塗料を塗装し、次いでベースコート塗膜及びクリヤコート塗膜を一緒に加熱硬化させることを含んでなる複層塗膜形成方法において、クリヤコート塗料塗装時において、ベースコート塗膜の固形分濃度が85質量%以上であって、かつ、20℃におけるベースコート塗膜の吸水率が10質量%以下であることを特徴とする複層塗膜形成方法である。
本発明の複層塗膜形成方法の被塗物としては、特に限定されないが、例えば、自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体であるのが好ましい。また、これら車体を形成する冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等であってもよい。
また、該被塗物は、上記車体や金属基材の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
水性着色ベースコート塗料
水性着色ベースコート塗料としては、通常、自動車等の塗装において用いられるものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の主体樹脂に、アミノ樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物等の架橋剤、及び顔料等を配合した水性着色ベースコート塗料を好適に使用することができる。また、これらの主体樹脂、架橋剤、着色顔料等はそれぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記主体樹脂としては、樹脂を水溶性化もしくは水分散化するのに十分な量の親水性基及び硬化剤と架橋反応しうる官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができ、これらは1種で又は2種以上組合せて使用することができる。中でも、アクリル樹脂又はポリエステル樹脂が好ましい。親水性基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等を挙げることができ、中でも、カルボキシル基が好ましい。また、架橋剤と架橋反応しうる官能基としては水酸基が好ましい。
主体樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂又は水酸基含有ポリエステル樹脂が特に好適である。
主体樹脂が親水性基としてカルボキシル基などのイオン生成基を有する場合には、該基を、例えば塩基性物質又は酸で中和することにより水溶化又は水分散化することができる。また、主体樹脂の重合による製造に際して、モノマー成分を界面活性剤や水溶性高分子物質の存在下に乳化重合することによっても主体樹脂の水分散化を行うことができる。
上記水酸基含有アクリル樹脂としては、カルボキシル基含有不飽和単量体等の親水性基含有不飽和単量体、水酸基含有不飽和単量体及びその他の不飽和単量体からなる混合物を共重合してなるアクリル樹脂を挙げることができる。該アクリル樹脂の数平均分子量は、3,000〜100,000の範囲内、さらに好ましくは5,000〜50,000の範囲内であることが好適である。
なお、本明細書において、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂等の樹脂の平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した平均分子量を、ポリスチレンの平均分子量を基準にして換算した値である。この測定においては、カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも商品名、東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min、検出器RIの測定条件で測定を行った。
該アクリル樹脂の水酸基価は、30〜200mgKOH/gの範囲内、さらに好ましくは50〜180mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
また、該アクリル樹脂の酸価は、10〜150mgKOH/gの範囲内、さらに好ましくは15〜100mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
前記水酸基含有不飽和単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上使用することができる。
前記カルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらのジカルボン酸のハーフモノアルキルエステル化物等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上使用することができる。
また、その他の不飽和単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−、i−、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上使用することができる。
アクリル樹脂の重合方法としては、公知の方法が特に制限なく採用され、例えば乳化重合、溶液重合等、いずれの方法であってもよい。
また、水分散性アクリル樹脂は、例えば、不飽和単量体の混合物を、界面活性剤のような分散安定剤の存在下で、1段階反応又は多段階反応で乳化重合せしめることによって得ることができる。
アクリル樹脂のカルボキシル基は、必要に応じて塩基性物質を用いて中和される。中和は、架橋剤等との混合前に行うことが好ましい。
塩基性物質は、水溶性であることが好ましく、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モルホリン、メチルエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上使用することができ、中でも、2−(ジメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好適である。
前記水酸基含有ポリエステル樹脂は、多価アルコール、多価カルボン酸、及び必要に応じて使用するその他の化合物等を用いて得ることができる。
該ポリエステル樹脂の数平均分子量は、500〜50,000、さらに好ましくは1,000〜20,000の範囲内であることが好適である。該ポリエステル樹脂の水酸基価は、30〜200mgKOH/gの範囲内、さらに好ましくは50〜180mgKOH/gの範囲内であることが好適である。また、該ポリエステル樹脂の酸価は、10〜150mgKOH/gの、さらに好ましくは15〜100mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
多価アルコールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用いることができ、これらは1種又は2種以上使用できる。
多価カルボン酸は特に限定されず、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等を用いることができ、これらは1種又は2種以上使用できる。
また、必要に応じて使用するその他の化合物としては特に限定されず、例えば、δ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;変性剤としてヤシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸等の各種飽和及び/又は不飽和脂肪酸;カージュラE10P(分岐状アルキル基を有するモノエポキシド、ジャパンエポキシレジン社製、商品名)等を用いることができ、これらは1種又は2種以上使用できる。
ポリエステル樹脂は、上記原料を常法に従い脱水縮合などによりエステル化することによって製造することができる。
ポリエステル樹脂において、カルボキシル基は、例えば1分子中に3個以上のカルボキシル基を有するトリメリット酸やピロメリット酸等の多塩基酸を併用したり、水酸基含有ポリエステルにジカルボン酸をハーフエステル付加することによって導入でき、また、水酸基は、例えば1分子中に3個以上の水酸基を有するグリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールを併用することによって導入できる。
ポリエステル樹脂のカルボキシル基の中和は、前記アクリル樹脂の説明で例示した塩基性物質を用いて行うことができ、架橋剤等との混合前に行うことが望ましい。
前記架橋剤としては、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を使用することができ、なかでもアミノ樹脂を使用することが好ましい。
アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。
また、このメチロール化アミノ樹脂をアルコールによってエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
また、アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましく、中でも、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、メチルアルコールでエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールでエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルアルコール及びブチルアルコールでエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種のアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。
前記ブロックポリイソシアネート化合物としては、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をオキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタン等のブロック剤でブロックしたものを使用することができる。
水性着色ベースコート塗料において、主体樹脂と架橋剤との構成比率は、特に制限されないが、該両成分の合計固形分に基づいて、主体樹脂は40〜90質量%、特に50〜80質量%、架橋剤は60〜10質量%、特に50〜20質量%の範囲内であるのが好ましい。
前記顔料としては、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等をあげることができる。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの無機もしくは有機系の着色顔料などを挙げることができる。
体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイトなどをあげることができる。
光輝性顔料は、塗膜にキラキラとした光輝感又は光干渉性を付与する顔料であり、りん片状であることが好ましい。りん片状光輝性顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク顔料、蒸着アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、雲母状酸化鉄、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆シリカ、酸化鉄被覆アルミナなどをあげることができる。
光輝性顔料の平均粒子径は、3〜30μmの範囲内、さらに好ましくは5〜25μmの範囲内であることが好適である。平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定された体積基準粒度分布のメジアン径(d50)により測定することができる。この測定は、例えば、マイクロトラック粒度分布測定装置「MT3300」(商品名、日機装社製)を用いて行うことができる。
顔料の添加は例えば、前記した主体樹脂成分の一部を使用してペーストをつくり、これを残りの樹脂成分に他の成分と共に添加することにより行なうことができる。ペーストの作製にあたっては必要に応じて適宜、消泡剤、分散剤、表面調整剤などの慣用の添加剤を使用することができる。
水性着色ベースコート塗料にはその他必要に応じて、塩基性中和剤、防腐剤、防錆剤、シランカップリング剤、ポリマー微粒子、硬化触媒、表面調整剤、劣化防止剤、レオロジーコントロール剤、流れ防止剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を配合することができる。
水性着色ベースコート塗料は、通常、上記主体樹脂、架橋剤及び顔料等を溶媒である水に溶解又は分散した態様で提供される。溶媒の一部は有機溶剤であっても良く、溶媒中の水の含有率が51〜100質量%、有機溶剤の含有率が0〜49質量%で、有機溶剤に比べて水の方を多く含む。
水性着色ベースコート塗料は、クリヤコート塗料塗装時におけるベースコート塗膜の吸水率を10質量%以下とするため、水膨潤性の低い水性着色ベースコート塗膜を得られるものであるのが好ましい。水膨潤性の低い水性着色ベースコート塗膜とするためには、水性着色ベースコート塗料の構成成分である主体樹脂は疎水性の高いものであるのが好ましく、また、水性着色ベースコート塗料の樹脂成分において、低分子量成分の割合が少ないものであるのが好ましい。
水性クリヤコート塗料
水性クリヤコート塗料としては、通常、自動車等の塗装において用いられるものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の主体樹脂に、ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂等の架橋剤等を配合した水性クリヤコート塗料を好適に使用することができる。また、これらの主体樹脂、架橋剤等はそれぞれ、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
上記主体樹脂としては、樹脂を水溶性化もしくは水分散化するのに十分な量の親水性基及び硬化剤と架橋反応しうる官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができ、これらは1種で又は2種以上組合せて使用することができる。中でも、アクリル樹脂又はポリエステル樹脂が好ましい。親水性基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等を挙げることができ、中でも、カルボキシル基が好ましい。また、架橋剤と架橋反応しうる官能基としては水酸基が好ましい。
主体樹脂が親水性基としてカルボキシル基などのイオン生成基を有する場合には、該基を、例えば塩基性物質又は酸で中和することにより水溶化又は水分散化することができる。
水酸基含有アクリル樹脂又は水酸基含有ポリエステル樹脂は前記水性着色ベースコート塗料の説明で例示したものを同様に使用することができる。
水性クリヤコート塗料の主体樹脂として、とくに好ましいものとして、水酸基価が30〜200mgKOH/g、酸価が5〜50mgKOH/gの範囲内である水酸基含有樹脂(a)を水分散してなる平均粒子径が50〜300nmの水酸基含有樹脂粒子(A)をあげることができる。
水酸基含有樹脂(a)は水酸基価が30〜200mgKOH/g、酸価が5〜50mgKOH/gの範囲内であれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂などをあげることができ、好ましいものとして、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有ポリウレタン樹脂をあげることができる。
水酸基含有アクリル樹脂は、前記水性着色ベースコート塗料の説明で例示したものと同様の方法により製造することができる。また、特に塗膜の耐ワキ性の観点から、全水酸基価のうちの少なくとも5%以上が2級の水酸基由来のものである水酸基含有アクリル樹脂を特に好ましいものとしてあげることができる。2級の水酸基をもたらす水酸基含有不飽和単量体としては、たとえば2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等をあげることができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂は、前記水性着色ベースコート塗料の説明で例示したものと同様の方法により製造することができる。
また、水酸基含有樹脂(a)には、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂及びウレタン変性ポリエステル樹脂も包含される。
水酸基含有樹脂(a)の水酸基価は、塗膜の硬化性及び耐水性の観点から30〜200mgKOH/g、好ましくは50〜180mgKOH/gである。
水酸基含有樹脂(a)の酸価は、水分散性及び塗膜の耐水性の観点から5〜50mgKOH/g、好ましくは10〜40mgKOH/gである。
水酸基含有樹脂(a)の重量平均分子量の好ましい範囲は塗膜の耐酸性及び塗面平滑性の観点から3,000〜30,000、さらに好ましくは5000〜20000である。
水酸基含有樹脂(a)のガラス転移温度の好ましい範囲は塗膜硬度及び塗面平滑性等の観点から、−30℃〜40℃、さらに好ましくは−20℃〜20℃である。
なお、本明細書において、ガラス転移温度はDSC(示差走査型熱量計;セイコー電子工業SSC5200)でJISK7121(プラッスチックの転移温度測定方法)に基づいて10℃/分の昇温スピードで測定した値である。試料をサンプル皿に所定量秤取した後、130℃で3時間乾燥させてから測定を行なった。
水酸基含有樹脂粒子(A)は、上記水酸基含有樹脂(a)を水分散してなる平均粒子径が50〜300nmの水酸基含有樹脂粒子である。水酸基含有樹脂(a)の水分散は例えば以下のように行なうことができる。前記の水酸基含有樹脂(a)をその固形分濃度が95質量%となるまで溶剤の減圧留去を行なう。通常、水酸基含有樹脂(a)の水分散は水酸基含有樹脂の合成に引き続いて行われる。この減圧留去は常法により樹脂合成時の反応温度(例えば145℃)を保ったまま冷却することなく行なう。減圧留去時の温度は場合に応じて最適温度に設定して行なわれる。溶剤(揮発成分)はVOC削減の観点から可能な限り留去したほうが好ましい。減圧留去終了後、温度を90℃程度として中和剤を加えて中和した後、所定量の脱イオン水を80℃程度の温度で攪拌下、滴下して添加することにより水酸基含有樹脂粒子(A)を得ることができる。
中和剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、イソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、モルホリン、ピリジン、イソプロパノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミンなどのアミン化合物を好適に使用することができる。
添加する中和剤の量は適宜選択することができるが、水酸基含有樹脂(a)の酸基に対して0.4〜0.9当量、さらには0.5〜0.8当量であるのが分散安定性の観点から好ましい。上記水分散においては、分散性向上の観点から必要に応じて乳化剤を使用することもできる。
本方法の水性クリヤコート塗料において、好適に使用される水酸基含有樹脂粒子(A)の平均粒子径は、50〜300nm、好ましくは100〜250nm、さらに好ましくは100〜200nmの範囲内となるように水酸基含有樹脂(a)を水分散して得られるものである。平均粒子径が50nm未満であると水酸基含有樹脂粒子(A)の粘度が高くなり、耐ワキ性等の塗装作業性が低下する場合があり、300nmを越えると塗面平滑性が低下する場合がある。本明細書において、平均粒子径はサブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。
水酸基含有樹脂粒子(A)の好ましい粘度は、良好な塗面平滑性、塗装作業性及び塗膜硬度等の観点から、該樹脂粒子の固形分96質量%以上での測定温度140℃におけるせん断速度が564秒−1の時の溶融粘度が、1Pa・s〜12Pa・s、より好ましくは1Pa・s〜8Pa・s、さらに好ましくは1Pa・s〜6Pa・sの範囲内である。
なお、上記溶融粘度は、該樹脂粒子の固形分が96質量%以上であるすべての固形分質量濃度において、上記溶融粘度の範囲内であることを意味するものである。
本明細書において、水酸基含有樹脂粒子(A)の溶融粘度の測定は、上記により水酸基含有樹脂(a)を水分散して得た水酸基含有樹脂粒子(A)の水分散体を、ガラス板にアプリケーター等で塗装し、130℃で3時間乾燥させ、固形分が96質量%以上となるように調整した後、マイセック社のコーンアンドプレート型粘度計VISCONE CV−1を使用して100Pローター(コーン直径14.5mm、コーン角度2°)を用いてせん断速度564秒−1、140℃での粘度を測定する方法により行なった。
水酸基含有樹脂粒子(A)の水分散体の固形分質量濃度は、例えば、上記測定における
水酸基含有樹脂粒子(A)の水分散体塗装後の乾燥条件(例えば乾燥温度、乾燥時間)により変動させることができる。
水酸基含有樹脂粒子(A)は単独で又は2種以上を併用して使用することができ、水酸基含有樹脂粒子(A)としては、水酸基含有樹脂(a)として、水酸基含有アクリル樹脂又は水酸基含有ポリエステル樹脂を水分散して得られるものが好ましい。
水性クリヤコート塗料の架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂を用いることができる。なかでも特にポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、従来からポリウレタンの製造に使用されているものを使用することができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などをあげることができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどをあげることができる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどをあげることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどをあげることができる。
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDIなどをあげることができる。
これらポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、耐候性などの面から、脂肪族ジイソシアネート脂環族ジイソシアネート、およびこれらの誘導体を好適に使用することができる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記した1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物である。
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものであり、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、水酸基と容易に反応することができる。かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチルピロリドン(NMP)のような溶剤をあげることができる。
アミノ樹脂としては、前記水性着色ベースコート塗料の説明で例示したものを使用することができる。
架橋剤は、1種又は2種以上を混合して使用することができ、特に、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物又はメラミン樹脂から選ばれる少なくとも1種の架橋剤であるのが好ましい。
水性クリヤコート塗料は、塗膜の硬化性や塗料安定性等の観点から、架橋剤として、ポリイソシアネート化合物及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する場合、主体樹脂の水酸基と架橋剤中のポリイソシアネート化合物及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は好ましくは0.5〜2.0、さらに好ましくは0.8〜1.5の範囲内である。
また、主体樹脂と架橋剤との固形分質量比は、好ましくは50/50〜90/10、さらに好ましくは60/40〜80/20の範囲内である。
水性クリヤコート塗料には、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤を使用することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等をあげることができる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン誘導体を挙げることができる。
水性クリヤコート塗料には、その他必要に応じて、硬化触媒、レオロジーコントロール剤、表面調整剤、着色顔料、メタリック顔料、光干渉性顔料、体質顔料などの添加剤を含有させることができる。上記着色顔料、メタリック顔料、光干渉性顔料、体質顔料等は塗膜の透明性を阻害しない範囲の量で使用することができる。
水性クリヤコート塗料の架橋剤として、ポリイソシアネート化合物を使用する場合は、常温で容易に架橋反応するので、2液型として、主体樹脂と架橋剤をあらかじめ分離しておき、塗装直前に混合することが好ましい。その際、適宜使用される上記の如き添加剤は、一般に、主体樹脂成分側に配合しておくことが望ましい。混合は、例えばディスパー、ホモジナイザー等の混合装置を用いて行うことができる。
本方法の水性クリヤコート塗料は、得られる塗膜の耐ワキ性等の塗装作業性及び塗面平滑性向上の観点から、塗料固形分90質量%以上での30〜150℃における周波数0.1Hzの時の粘性率の最低値が30Pa・s以下、特に20Pa・s以下、さらに特に15Pa・s以下であるのが好ましい。なお、上記粘性率の最低値は、水性クリヤコート塗料の塗料固形分が90質量%以上であるすべての固形分質量濃度において、上記粘性率の最低値の範囲内であることを意味する。
本方法の水性クリヤコート塗料において、粘性率の最低値とは水性クリヤコート塗料塗装後、加熱されて熱フローし、水性クリヤコート塗料中の各成分が溶融する際に示す複素粘性率の最低値である。本明細書において、粘性率の最低値の測定は、レオストレスRS−150(HAAKE社製、粘弾性測定装置)を用いて行なった。具体的には、300×450×0.3mmのイソプロパノールを用いて脱脂したブリキ板の表面に、塗装粘度に調整した水性クリヤコート塗料を乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、60℃で10分間加熱した後、ブリキ板上に形成された未硬化の塗膜を掻き取ってサンプル瓶に収集し、直ちに蓋をして密閉したものを試料とし、試料1.0gをRS−150を用いて、ひずみ制御による動的粘弾性測定(周波数0.1Hz、ひずみ1.0、昇温速度6℃/分、センサー:パラレルプレート(Φ=20mm)、ギャップ:0.5mm)を30℃から150℃の温度範囲で行ない、複素粘性率の最低値を測定することにより行った。
塗料固形分質量濃度は上記試料約2.0gを直径約5cmのアルミカップカップに採取し、110℃で1時間加熱して、加熱残分を算出し、塗料固形分質量濃度とした。
水性クリヤコート塗料の固形分質量濃度は、例えば、上記測定における水性クリヤコート塗料のエアスプレー塗装後の加熱条件(例えば加熱温度、加熱時間)により変動させることができる。
塗料固形分90質量%以上とは、水性クリヤコート塗料を塗装後、加熱されて熱フローする際の塗料固形分が90質量%以上であることに基くものである。
上記粘性率の最低値の範囲とするためには、主体樹脂によるところが大きく、具体的には、例えば、前述したように、主体樹脂として、水酸基含有樹脂粒子(A)を用い、該樹脂粒子の固形分96質量%以上での測定温度140℃におけるせん断速度が564秒−1の時の溶融粘度が、その好ましい粘度範囲である1Pa・s〜12Pa・sのものを使用することにより行なうことができる。また、上記好ましい粘度範囲となる水酸基含有樹脂粒子(A)は、例えば、前述したように、水酸基含有樹脂(a)として、その重量平均分子量が3000〜30000、又は、そのガラス転移点が−30℃〜40℃の好ましい範囲内である水酸基含有樹脂を水分散してなるものを使用することにより得ることができる。
塗膜形成方法
本発明の複層塗膜形成方法は、一般に、表面処理されていてもよい被塗物に、又は架橋硬化したもしくは未硬化状態の塗膜の塗面に対して行なうことができる。
本方法においては、まず前記被塗物に水性着色ベースコート塗料を塗装する。水性着色ベースコート塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、常法により行なうことができ、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などが挙げられ、これらの塗装方法によりウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。この中でも特に静電印加によるエアスプレー塗装が好ましい。また、かかる塗装方法により所望の膜厚となるように、1回ないし数回に分けて塗装することができる。この際、水性ベースコート塗料の塗装時の塗料粘度は、通常、必要に応じて脱イオン水、溶剤等で希釈してB型粘度計を用いて60回転の条件で20℃で測定した粘度が100〜2000mPa.s、好ましくは200〜1500mPa.s、さらに好ましくは300〜1000mPa.sの範囲となるように調整して塗装することができる。塗料粘度が100mPa・s未満であると水性着色ベースコート塗料塗膜の耐タレ性が低下することがあり、2000mPa・sを越えると平滑性等の仕上り外観が低下することがある。
水性着色ベースコート塗料塗装後、通常、水等の揮発成分の揮散を促進するために、50〜100℃の温度で1〜20分間程度のプレヒートを行なうことができる。ベースコート塗膜の固形分濃度を85質量%以上で、かつ、20℃におけるベースコート塗膜の吸水率を10質量%以下とするため、プレヒート温度は、50〜100℃、特に70〜100℃が好ましく、プレヒート時間は、1〜20分間、特に3〜15分間であるのが好ましい。塗装膜厚は硬化塗膜において、5〜40μm、好ましくは10〜35μmの範囲内が適している。
水性着色ベースコート塗料塗装後、或いは必要に応じて上記プレヒートを行なった後、通常、1〜30分間経過後、未硬化の水性着色ベースコート塗膜上に水性クリヤコート塗料が塗装される。この水性クリヤコート塗料塗装時において、水性着色ベースコート塗膜の固形分濃度が85質量%以上であって、かつ、20℃における水性着色ベースコート塗膜の吸水率が10質量%以下であることが必要である。水性着色ベースコート塗膜の固形分濃度及び吸水率が上記範囲に調整されていることにより、水性クリヤコート塗料塗装後におけるクリヤコート層からベースコート層への水の拡散及び浸透を抑えて少なくすることができ、ベースコート塗膜の水の吸い込みによるクリヤコート塗膜の粘度上昇を抑えることができる。これにより、水性ベースコート塗膜及び水性クリヤコート塗膜からなる複層塗膜の仕上り外観を向上させることができ、複層塗膜の耐ワキ性を向上させることができる。
水性着色ベースコート塗膜の吸水率を上記範囲とするためには、水性着色ベースコート塗膜は水膨潤性が低いものであるのが好ましく、前記水性着色ベースコート塗料の説明で記載したように水性着色ベースコート塗料の、構成成分である主体樹脂の疎水性の向上、樹脂成分における低分子量成分を削減することによって、また、水性着色ベースコート塗膜のプレヒート条件を調整することにより、該吸水率を10質量%以下とすることができる。
本発明において、水性着色ベースコート塗膜の吸水率及び固形分濃度の測定は以下のようにして行なった。正規の塗板塗装と併せて、あらかじめ質量(W1)を測定しておいた10cm×15cmのサイズにカットしたOHPフィルム(XEROX FILM No.V515、富士ゼロックス社製)上にも水性着色ベースコート塗料を塗装し、必要に応じてプレヒートを行なった後、クリヤコート塗料を塗装する時間に合わせて水性着色ベースコート塗料が塗装されたOHPフィルムの質量(W2)を測定した。その後、水性着色ベースコート塗料が塗装されたOHPフィルムを20℃の脱イオン水に5分間浸漬した後に取り出し、フィルムに付着している余分な水分をろ紙で軽く拭った後の該フィルムの質量(W3)を測定する。さらに、該フィルムを乾燥機により120℃で2時間乾燥させた後の質量(W4)を測定する。吸水率及び固形分濃度は以上のW1〜W4の質量測定結果から下記式(1)及び(2)により求めた。
吸水率(%)={(W3−W2)/(W2−W1)}×100 (1)
固形分濃度(%)={(W4−W1)/(W2−W1)}×100 (2)
上記吸水率は、10質量%以下、好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。吸水率が10質量%を越えると、水性クリヤコート塗料塗装後、水性クリヤコート塗膜の水分がベースコート塗膜中へ吸い込まれ、クリヤコート塗膜の粘度が急激に上昇することにより仕上り外観が低下し、耐ワキ性が低下する場合がある。
上記固形分濃度は、85質量%以上、好ましくは87質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。吸水率が85質量%未満であると、水性クリヤコート塗料塗装後、ベースコート層とクリヤコート層の混層等により、複層塗膜の仕上り外観が低下する場合がある。
水性クリヤコート塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、常法により行なうことができ、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などが挙げられ、これらの塗装方法によりウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。この中でも特に静電印加によるエアスプレー塗装が好ましい。また、かかる塗装方法により所望の膜厚となるように、1回ないし数回に分けて塗装することができる。この際、水性クリヤコート塗料の塗装時の塗料粘度は、必要に応じて脱イオン水又は溶剤で希釈して、例えば、フォードカップ粘度計#4を用いて、20℃において20〜55秒、好ましくは25〜50秒の粘度に調整して塗装することができる。塗料粘度が上記において、25秒未満であると水性クリヤコート塗料塗膜の耐タレ性が低下することがあり、55秒を越えると平滑性等の仕上り外観が低下することがある。
また、水性クリヤコート塗料の塗装時の固形分濃度は、40〜65質量%、特に42〜60質量%の範囲内であるのが好ましい。上記固形分濃度が40質量%未満であると、ウエット塗膜の膜厚を厚くする必要があるため、耐タレ性が低下する場合があり、65質量%を超えると塗料の微粒化状態が不良となることにより平滑性等の仕上り外観が低下することがある。
また、水性クリヤコート塗料は、塗装時において、0〜150g/l、さらに0〜100g/lの範囲内のVOC濃度であるのが好ましい。ここで、VOCとは、世界保健機構(WHO)により定義されている「高揮発性有機化合物」および「揮発性有機化合物」に分類される揮発性有機化合物のことである。
本方法において、水性クリヤコート塗料塗装後3分後の複層塗膜上における水平面に対して30°の角度での質量1.03±0.001gの鋼球の転球速度が、170mm/秒以上、特に200mm/秒以上であるのが仕上り外観及び耐ワキ性の観点から好ましい。
本発明において、上記転球速度の測定はベースコート及びクリヤコートからなる複層塗膜について下記の方法で行なった。水性クリヤコート塗料塗装後、塗装塗板を23℃において、水平面に対して30°の角度に保持し、水性クリヤコート塗料塗装後3分後、質量1.03±0.001g、直径0.60±0.01cmの鋼球をピンセットでつまんで塗面に置き、鋼球を塗板に置いた直後から15秒間の間で転がった距離L(mm)を測定する。得られたL(mm)の値から下記式(3−1)により、転球速度(mm/秒)を算出した。
ここで、転球の転がった距離が300mm以上の場合は、300mm転がるのに要した時間T(秒)を測定し、下記式(3−2)により、転球速度を算出した。
転球速度(mm/秒)=L(mm)/15(秒) (3−1)
転球速度(mm/秒)=300(mm)/T(秒) (3−2)
水性クリヤコート塗料塗装後、水等の揮発成分の揮散を促進するために、40〜100℃の温度で1〜20分間程度のプレヒートを行なうことができる。プレヒート温度は、40〜100℃、特に50〜80℃が好ましく、プレヒート時間は、1〜20分間、特に3〜15分間であるのが好ましい。塗装膜厚は硬化塗膜において15〜60μm、好ましくは20〜55μmの範囲内が適している。
水性着色ベースコート塗料及び水性クリヤコート塗料による塗膜からなる複層塗膜の加熱硬化は、水性クリヤコート塗料塗装後、3〜15分間程度セッティングを行なった後、公知の加熱手段により行うことができる。例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、80〜180℃、好ましくは100〜160℃の範囲内が適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常、10〜40分間程度とすることができる。
本発明の複層塗膜形成方法は、塗面平滑性、またワキ等の塗面異常が発生せず塗装作業性に優れているので、上塗塗装、特にメタリック仕上げ上塗塗装を行なう際の複層塗膜形成方法として特に適している。
被塗物としては、例えば、乗用車、オートバイなどの自動車の金属製又はプラスチック製の車体外板部などが挙げられ、これらの被塗物はあらかじめ化成処理、下塗塗装(例えばカチオン電着塗装など)及び場合によりさらに中塗り塗装などを必要に応じて行なっておくことが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものであり、また、膜厚は硬化塗膜に基くものである。
(製造例1)水性着色ベースコート塗料の製造
アルミニウム顔料ペースト「GX−180」(旭化成メタルズ社製、商品名、アルミニウム顔料含有率73%)17.8部、エチレングリコールモノブチルエーテル25部、顔料分散用樹脂(*1)8部及びジメチルエタノールアミン0.2部を均一に混合して顔料分散液を得た。
アクリルエマルション(*2)200部、ポリエステル水溶液(*3)57部、サイメル327(メラミン樹脂、商品名、日本サイテックインダストリー社製、固形分90%)33部及び上記顔料分散液51部を均一に混合し、更に脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを加えて、800mPa・s(B型粘度計により、20℃、60rpmの測定条件で測定)、pHが7.8、固形分濃度25%の水性着色ベースコート塗料を得た。
上記(*1)〜(*3)については、以下のとおりである。
(*1)顔料分散樹脂
攪拌機、温度調整器及び冷却器を備えた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル120部を入れ、110℃に加熱し、同温度に保持してから、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート6部、アシッドホスホキシペンタ(オキシプロピレン)グリコールモノメタクリレート34部、n−ブチルアクリレート30部、スチレン20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3部からなる混合物103部を4時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに1時間攪拌して熟成をおこなった。その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1部とプロピレングリコールモノメチルエーテル30部とからなる開始剤溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後さらに1時間攪拌して熟成することにより固形分含有率40%の顔料分散樹脂(*1)を得た。
(*2)アクリルエマルション
温度計、サーモスタット、攪拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水32.1部、「NEWCOL562SF」(日本乳化剤社製、商品名、乳化剤)0.267部を加え、80℃に加温してから、脱イオン水1.11部に溶解した過硫酸アンモニウム0.033部及び下記のプレエマルション1の全量の1%量を投入し、同温度で20分間熟成した。その後、残りのプレエマルション1を2時間かけて反応容器に滴下し、その後1時間熟成した。次いで下記プレエマルション2を、過硫酸アンモニウム0.003部を脱イオン水1.11部に溶解したものと同時に、2時間かけて滴下した。その後、1時間熟成して、脱イオン水19.53部に2−(ジメチルアミノ)エタノール0.294部を溶解したものを投入し、固形分含有率25%、pH8.5、粒子径120nmのアクリルエマルション(*2)を得た。
プレエマルション1:メチルメタクリレート14.45部、n−ブチルメタクリレート7.12部、アリルメタクリレート0.67部、脱イオン水21.63部及び「NEWCOL562SF」0.267部を混合してプレエマルション化したもの。
プレエマルション2:メチルアクリレート2.29部、n−ブチルメタクリレート2.48部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.98部、メタクリル酸0.78部、脱イオン水9.77部及び「NEWCOL562SF」0.114部を混合し、プレエマルション化したもの。
(*3)ポリエステル水溶液
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール78.75部(0.75モル)、トリメチロールプロパン34.13部(0.25モル)、アジピン酸65.7部(0.45モル)及びイソフタル酸74.7部(0.45モル)を仕込み、3時間を要して150℃から230℃に昇温し、同温度で1.5時間保持して縮合水を系外に流出させながら縮合反応を行った。その後、トルエン3部を加えて還流させながら、攪拌と脱水を継続して行い、カルボキシル基による酸価が8mgKOH/gになるまで反応せしめ、生成する水をトルエンと共沸させて除去した。その後、温度を170℃とし、無水トリメリット酸6.72部(0.035モル)を投入し、同温度で30分間熟成してからジエチレングリコールモノブチルエーテル20部を加え、温度を80℃として、酸価が25mgKOH/g、水酸基価が93mgKOH/g、数平均分子量が1700のポリエステルを得た。これに2−(ジメチルアミノ)エタノール9部を加えて中和し、脱イオン水を加えることにより固形分含有濃度35%のポリエステル水溶液(*3)を得た。
(製造例2)水性クリヤコート塗料の製造
水酸基含有樹脂粒子水分散体(*4)を138.3部及びXP−2570(住化バイエルウレタン社製、スルホン酸変性ポリイソシアネート、固形分100%)35部をディスパーを用いて攪拌混合した。その後、エチレングリコールモノブチルエーテル/ソルベントナフサ混合溶液(重量比で1/1)20%と脱イオン水80%からなる混合液を加えて、フォードカップ#4を用いて20℃で45秒の粘度にすることにより、塗料固形分濃度49%、VOC量90g/l、塗料固形分90質量%以上での30〜150℃における周波数0.1Hzの条件で測定した粘性率の最低値が10Pa・sの水性クリヤコート塗料を得た。上記(*4)については以下のとおりである。
(*4)水酸基含有樹脂粒子水分散体
加熱装置、攪拌装置、温度計、還流冷却器、水分離器を備えた4つ口フラスコにプロピレングリコールモノプロピルエーテルを30部仕込み、窒素ガス通気下で145℃に昇温した後、窒素ガスの通気を止め、1段目として、スチレン15部、n−ブチルアクリレート31部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート29部、ジ−t−ブチルパーオキサイド2.6部を4時間かけて滴下した。その後30分間、同温度で保持した。更に、2段目として、n−ブチルアクリレート15.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.0部、アクリル酸3.5部、ジt−ブチルパーオキサイド0.88部を30分間かけて滴下した後1時間熟成させた。その後、固形分濃度が95質量%となるまで溶剤を減圧留去してから90℃に冷却した。その後、ジメチルエタノールアミンを3部加えたのち、脱イオン水105部を80℃で滴下することにより水酸基含有樹脂粒子水分散体を得た。水酸基含有樹脂粒子水分散体の固形分濃度は47%、粘度は570mPa・s(B型粘度計を使用し、20℃で60rpmの条件で測定した)、pHは7.08、平均粒子径は140nmであった。また、水酸基含有樹脂粒子水分散体を110℃で3時間乾燥して、固形分濃度96%とした時の140℃におけるせん断速度が564秒−1の時の溶融粘度は4.0Pa.sであった。水酸基含有樹脂粒子水分散体は、水酸基価150mgKOH/g、酸価27mgKOH/g、重量平均分子量15000、Tgは0℃であった。
VOC量及び粘性率の最低値は以下のようにして測定を行なった。
VOC量:粘度調整後の水性クリヤコート塗料の上記塗料固形分濃度、比重(JIS K−5400 4.6.2による比重カップ法によって測定)、及び水分量(自動水分測定装置(商品名「KF−100」、カールフィッシャー法、三菱化学社製)によって測定)を用いて、下記式に従って、粘度調整後の水性クリヤコート塗料のVOC量を算出した。
VOC量(g/l)={[100−(S+W)]×ρ}/[100−(W×ρ)]
上記式において、Sは塗料固形分濃度(wt%)を、Wは塗料の水分量(wt%)を、ρは塗料の比重(g/l)をそれぞれ示す。
粘性率の最低値:300×450×0.3mmのイソプロパノールで脱脂したブリキ板に、粘度調整後の水性クリヤコート塗料を乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装して60℃で10分間加熱した後、ブリキ板上に形成された未硬化の塗膜を掻き取ってサンプル瓶に収集し、蓋をして密閉したものを測定用試料とし、測定用試料1.0gをレオストレスRS−150(HAAKE社製 粘弾性測定装置、条件:周波数0.1Hz、ひずみ1.0、センサー:パラレルプレート(Φ=20mm)、ギャップ:0.5mm、昇温速度6℃/分)を用いてひずみ制御による動的粘弾性を測定し、30℃から150℃までの範囲で行ない、複素粘性率の最低値を測定することにより行なった。なお、上記60℃で10分加熱後の塗着塗料固形分質量濃度は92質量%であった。
(被塗物の作製)
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、りん酸亜鉛処理)を施した冷延鋼板(大きさ400×300×0.8mm)に、エレクロンGT−10(関西ペイント社製、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させ、該塗膜上にアミラックTP−65−2(関西ペイント社製、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗塗料)を膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させたものを被塗物とした。
試験板の作成及び試験
製造例1で得た水性着色ベースコート塗料の塗装後のプレヒート条件により、水性着色ベースコート塗膜の固形分濃度及び吸水率の異なる試験板を作成し、各々につき試験(実施例1〜4及び比較例1〜4)を行なった。
上記被塗物に、製造例1で得た粘度調整後の水性着色ベースコート塗料を膜厚15μmとなるように塗装した。その後、表1に示した温度及び時間の条件でプレヒートを行なった。
この時、正規の塗板と併せて、転球速度試験用の塗板(大きさ200×300×0.8mm)及び水性着色ベースコート塗膜の固形分濃度及び吸水率測定用のOHPフィルム(XEROX FILM No.V515、富士ゼロックス社製、重量測定済みの10cm×15cmのサイズにカットしたもの)上にも塗装を行なった。各条件のプレヒートを行なった後、水性着色ベースコート塗膜が塗布された該OHPフィルムについては、水性クリヤコート塗料が塗装されるタイミングで重量を測定してから、固形分濃度及び吸水率の測定を行なった。試験方法は前記塗膜形成方法で記載した方法で行なった。
上記プレヒート終了後3分経過した後、製造例2で得た粘度調整後の水性クリヤコート塗料を膜厚35μmとなるように塗装した。転球速度試験用の塗板については水性クリヤコート塗装後3分後、30°の傾斜台に塗板をセットし、転球速度の測定を行なった。
正規の塗板については、水性クリヤコート塗装後10分間経過した後、60℃で10分間プレヒートを行なった後、140℃で20分間加熱してベースコート塗膜及びクリヤコート塗膜を一緒に硬化させることにより試験板を得た。その後、仕上がり性及び耐ワキ性の評価を行なった。
上記試験結果を併せて表1に示す。なお、仕上がり性、ツヤ感、耐ワキ性の評価方法は以下のとおりである。
仕上がり性:BYK Gardner社製のWave Scan(商品名)により測定した。Wave ScanによりLong Wave値(LW)及びShort Wave値(SW)を測定した。Long Wave値は、600〜1,000μm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、塗面の中波肌の具合を評価することができる。Short Wave値は、100〜600μm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、塗面の微少肌の具合を評価することができる。また、各Wave Scan値は、測定値が小さいほど塗面平滑性が高いことを示す。目安として、一般にWave Scan値が10未満であれば、塗面平滑性が良好とされる。
ツヤ感:目視でツヤ感の評価を行なった。○:良好、△:やや劣る、×:劣る
耐ワキ性:ワキの発生がみられるものを×とした。