JP2007282876A - Ac133陽性細胞移植による神経再生治療 - Google Patents
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Abstract
【課題】 細胞移植による神経再生治療のために,従来よりも簡単に取得でき,かつ強力な神経再生能を有する細胞ソースを提供すること。
【解決手段】 細胞ソースとしてAC133陽性細胞に着目した。AC133陽性細胞を,坐骨神経損傷モデル及び脊髄損傷モデルに移植したところ,非常に強力な神経再生能が認められた。また,AC133陽性細胞は,末梢血から採取することができるので,容易に入手することができるし,ドナーへの負担も軽減される。さらに,倫理的問題もないため,細胞移植による神経再生治療において極めて有用な細胞ソースとなることが見出された。
【選択図】図2
【解決手段】 細胞ソースとしてAC133陽性細胞に着目した。AC133陽性細胞を,坐骨神経損傷モデル及び脊髄損傷モデルに移植したところ,非常に強力な神経再生能が認められた。また,AC133陽性細胞は,末梢血から採取することができるので,容易に入手することができるし,ドナーへの負担も軽減される。さらに,倫理的問題もないため,細胞移植による神経再生治療において極めて有用な細胞ソースとなることが見出された。
【選択図】図2
Description
本発明は,末梢血由来のAC133陽性細胞移植を用いた神経再生治療に関する。
神経は,全ての動物の生命活動において極めて重要な役割を担う組織であるが,身体の他の組織と比較して再生能に乏しいため,今日の医療レベルでは神経損傷患者を完全に救うことは難しい。そのため,損傷した神経組織を再生する治療法についてこれまで様々な角度から研究がなされてきた。当初は,非生物学的物質(例えば,シリコンチューブ)を用いた治療が試みられていたが,十分な効果が得られず,有効な治療法として確立するには至らなかった。
このような状況の中,近年の細胞生物学の急速な発展に伴い,神経系の様々な細胞に分化することができる神経幹細胞の存在が明らかにされ,これを契機として細胞移植による神経再生治療という新たな治療アプローチが注目されることになった。現在の整形外科領域における細胞移植をベースとした神経再生療法を目指した研究では,神経幹細胞 (Murakami T. et al., Brain Res., 2003, Fujiwara Y. et al., Neurosci Lett., 2004)や骨髄由来間葉系幹細胞(Neuhuber B. et al., Brain Res., 2005)によるものがその中心となっている。
他方,神経形成や軸索ガイダンスにおける神経と血管の相互作用が明らかにされつつある中,血管新生を介した神経再生という別の試みも進められている。その一例としては,臍帯血由来のCD34陽性細胞をマウス脳梗塞モデルに移植し,血管新生を介して神経を再生したとする報告(Taguchi A. et al., J Clin Invest., 2004)が挙げられる。
AC133は,分子量120kDaの糖タンパク質抗原である(Yin H. et al., Blood, 1997)。AC133抗原は,ヒト胎児肝臓,骨髄,及び血液由来のCD34陽性造血幹細胞/前駆細胞の表面に選択的に発現することが知られている。AC133抗体によって,コミットされていない全てのCD34陽性細胞及び顆粒球/単核球経路にコミットされたCD34陽性細胞が染色されるが,(CD34抗体では染色される)ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)や線維芽細胞は染色されない。従って,AC133は,未成熟・未発達な細胞集団のマーカーとして用いられている。例えば,特表2005−526482には,VEGFR−1抗体を用いて臍帯血,骨髄又は末梢血などから幹細胞を分離するプロセスの前段階または後段階として,AC133(またはCD34)を標識に分離することが記載されている。
特表2005−526482
Murakami T. et al., Brain Res. 974:17-24(2003)
Fujiwara Y. et al., Neurosci Lett. 366:287-291(2004)
Neuhuber B. et al., Brain Res. 1035(1):73-85(2005)
Taguchi A. et al., J Clin Invest. 114(3):330-338(2004)
Yin H. et al., Blood 90:5002-5012(1997)
細胞移植による神経再生治療を実現する上でのボトルネックは,治療に用いる細胞の性質にある。前述のような神経幹細胞は現在の日本においては倫理的な問題もあり実際の臨床応用は難しい。また骨髄由来間葉系幹細胞は,採取は比較的容易で自己の細胞を利用できるメリットもあるが,培養を要するため設備やそれにかかるコストなどの問題点が存在する。
臍帯血由来CD34陽性細胞の場合は,細胞取得の側面では上記のような問題はないものの,CD34陽性選択された集団の中には,分化レベルが進んでいる細胞を多く含んでいるものと考えられ,(特に損傷度の高い神経に対しては,)臨床的に十分な治療効果が得られないことが予想される。
従って,細胞移植による神経再生治療法の実現のための細胞ソースの探索に対する要望は,未だ満たされていないと言える。
本発明者らは,神経再生治療の細胞ソースとして,CD34陽性細胞よりも幼若な集団であり,高い増殖能が確認さており,かつ,臨床応用に移行し易いであろうと考えられる末梢血から分離することのできる点でAC133陽性細胞に着目し,インビトロの器官培養モデル,インビボの末梢神経損傷モデル及び脊髄損傷モデルにおいてその能力を試したところ,すべての実験系において神経再生を強力に促進することを見出し,本発明を完成するに至った。
すなわち,本発明は,以下の特徴を有する治療剤に関する。
1。脊髄損傷,坐骨神経損傷,及び神経断裂から群より選択される神経障害の治療剤であって,AC133陽性細胞を含むことを特徴とする,治療剤。
2。AC133陽性細胞が末梢血由来,臍帯血由来,胎盤血由来,又は骨髄由来である,(1)に記載の治療剤。
3。AC133陽性細胞が末梢血由来である,(2)に記載の治療剤。
4。AC133陽性細胞がヒト由来である,(3)に記載の治療剤。
5。神経障害が脊髄損傷である,(2)〜(4)のいずれかに記載の治療剤。
6。神経障害が坐骨神経損傷である,(2)〜(4)のいずれかに記載の治療剤。
7。神経障害が神経断裂である,(2)〜(4)のいずれかに記載の治療剤。
8。坐骨神経損傷が絞扼性神経障害である,(6)に記載の治療剤。
1。脊髄損傷,坐骨神経損傷,及び神経断裂から群より選択される神経障害の治療剤であって,AC133陽性細胞を含むことを特徴とする,治療剤。
2。AC133陽性細胞が末梢血由来,臍帯血由来,胎盤血由来,又は骨髄由来である,(1)に記載の治療剤。
3。AC133陽性細胞が末梢血由来である,(2)に記載の治療剤。
4。AC133陽性細胞がヒト由来である,(3)に記載の治療剤。
5。神経障害が脊髄損傷である,(2)〜(4)のいずれかに記載の治療剤。
6。神経障害が坐骨神経損傷である,(2)〜(4)のいずれかに記載の治療剤。
7。神経障害が神経断裂である,(2)〜(4)のいずれかに記載の治療剤。
8。坐骨神経損傷が絞扼性神経障害である,(6)に記載の治療剤。
本発明はまた,以下の特徴を有する治療法に関する。
9。脊髄損傷,坐骨神経損傷,及び神経断裂から群より選択される神経障害の治療法であって,AC133陽性細胞を移植することを特徴とする,方法。
10。AC133陽性細胞が末梢血由来,臍帯血由来,胎盤血由来,又は骨髄由来である,(9)に記載の方法。
11。AC133陽性細胞が末梢血由来である,(10)に記載の方法。
12。AC133陽性細胞がヒト由来である,(11)に記載の方法。
13。神経障害が脊髄損傷である,(10)〜(12)のいずれかに記載の方法。
14。神経障害が坐骨神経損傷である,(10)〜(12)のいずれかに記載の方法。
15。神経障害が神経断裂である,(10)〜(12)のいずれかに記載の方法。
16。坐骨神経損傷が絞扼性神経障害である,(15)に記載の方法。
9。脊髄損傷,坐骨神経損傷,及び神経断裂から群より選択される神経障害の治療法であって,AC133陽性細胞を移植することを特徴とする,方法。
10。AC133陽性細胞が末梢血由来,臍帯血由来,胎盤血由来,又は骨髄由来である,(9)に記載の方法。
11。AC133陽性細胞が末梢血由来である,(10)に記載の方法。
12。AC133陽性細胞がヒト由来である,(11)に記載の方法。
13。神経障害が脊髄損傷である,(10)〜(12)のいずれかに記載の方法。
14。神経障害が坐骨神経損傷である,(10)〜(12)のいずれかに記載の方法。
15。神経障害が神経断裂である,(10)〜(12)のいずれかに記載の方法。
16。坐骨神経損傷が絞扼性神経障害である,(15)に記載の方法。
第一に,AC133陽性細胞は強力な神経再生促進能を有している。その機序としては,AC133陽性細胞は血管内皮前駆細胞を含むか画分であることから,血管再生による神経再生の促進と,移植細胞により分泌される様々な因子(例えば,血管内皮増殖因子(VEGF)など)が神経再生の場の環境改善因子として作用していることが考えられる。第二に,これらの細胞群は末梢血中を通常循環しており,臨床の場で通常用いられている機器を用いて比較的容易に分離することができ,しかも自己の細胞を利用することができるため,倫理的問題点で立ち遅れている神経幹細胞と異なり,臨床応用への移行が容易な移植療法になりうる。
上述の通り,本発明の特徴は,神経再生治療においてAC133陽性細胞を用いる点にある。
AC133陽性細胞は末梢血や臍帯血,胎盤血又は骨髄などから採取することができる。実際に臨床の場で使用する場合は,取得の容易さやドナーへの負担などを考慮して,末梢血を供給源として利用するのが適しているし,末梢血を利用することで本発明の利益を最大限に享受することができる。しかし,本発明は,神経再生治療にAC133陽性細胞を使用することを特徴とするものであり,AC133陽性細胞の供給源が何であるかによって限定されるべきではないことを認識されたい。
AC133陽性細胞群をその供給源(例えば,末梢血)から分離する方法としては,当業者に周知の磁気細胞分離法(MACS:Magnetic Cell Sorting),蛍光標識細胞分離法(FACS:Fluorescence Activated Cell Sorting)などが挙げられる。MACSについては,例えば,ミルテニー・バイオテク社(Miltenyi Biotech GmbH)が,FACSについては,例えば,ベクトン・ディッキンソン社(Becton, Dickinson and Company)が,それぞれこれらの方法を実施するのに必要な試薬・機器等を供給しているので,詳細についてはそちらを参照されたい。
AC133陽性細胞の由来は,自己(auto),同種異系(allo),及び異種(zeno)のいずれであってもよいが,本発明をヒトの治療に適用する場合,好ましくは自己由来又は同種異系由来であり,最も好ましくは自己由来の細胞である。異種供給源としては,ブタやサル,その他の哺乳動物が挙げられる。神経系(特に中枢神経系)は他の臓器,組織と比較して免疫拒絶反応の起こりにくい部位なので,異種由来の細胞であっても許容できる程度の免疫抑制剤を用いて移植細胞を生着させることが十分に可能である。現在使用されている免疫抑制剤としては,シクロスポリン,アクロリムス水和物,シクロホスファミド,アザチオプリン,ミゾリビン,及びメトトレキセート等が挙げられる。
AC133陽性細胞は,上記いずれかの供給源(例えば,自己または他者(ドナー)の末梢血)から採取したものを,直接的に移植することもできるし,一旦生体外で培養増殖した後に移植するシステムを採用することもできる。
AC133陽性細胞は,細胞懸濁液で得ることができるので様々な形で移植することが可能である。例えば,細胞懸濁液の神経損傷部局所,神経縫合部,脊髄腔内への注入や,抗原性の無いアテロコラーゲンゲルなどの担体に充填し局所に注入する方法,もしくは人工神経とハイブリットのものを作製して移植することも考えられる。損傷脊髄部位への細胞移植については,外科的に椎弓を切除して脊髄を露出させて細胞を注入する方法も存在するし,MRI画像を見ながら椎弓を切除することなく最小限の侵襲で細胞を損傷部位に注入する方法もある。さらに,以下の実施例で示すように,AC133陽性細胞は,経静脈注射によっても損傷部位に送達することができる。本発明の特徴は,神経再生治療にAC133陽性細胞を用いる点にあり,AC133陽性細胞の損傷部位への移植方法は本発明の本質的な構成要素ではないので,いかなる方法を用いようとも神経再生治療にAC133陽性細胞を用いる限り,それらは本発明の範囲内に含まれるものであることに注意されたい。
AC133陽性細胞移植の際には,その効果を妨げない限り,薬学的に許容できる任意の担体と混合して移植することができる。薬学的に許容できる担体としては,例えば,水,生理食塩水,リン酸緩衝生理食塩水,デキストロース,グリセロール,エタノール,及び以下の実施例で用いたアテロコラーゲンなどが挙げられる。薬学的に許容できる任意の担体はまた,当該分野で周知の少量の補助物質を含み得る。本発明のAC133陽性細胞はまた,当該分野で周知の技術を用いて,迅速な放出,持続的な放出,または遅延放出を達するよう処方され得る。AC133陽性細胞はまた,神経再生治療の単独の成分として十分な効果を発揮するが,状況に応じて他の有効成分と組み合わせて使用することも考えられる。他の成分と併用する場合であっても,AC133陽性細胞が本明細書に記載されるのと同等の効果を奏する以上,それは本発明の実施に該当するものと解釈されるべきである。
本発明の治療のターゲットとしては,いくつか例示するならば,末梢神経の絞扼性神経障害,外傷などによる神経断裂,欠損,脊髄損傷などが挙げられる。神経断裂については,部分断裂のみならず完全断裂に対しても本発明の再生治療が有効であることが,以下の実施例で実証されている。脊髄損傷については,延髄や頚髄等の脳に近い部位から胸髄,腰髄,仙髄等に至るまで,どの部位に対しても適用できる。症状の重篤度にも特に限定されることなく,軽度の麻痺から対麻痺,四肢麻痺,あるいは呼吸麻痺を伴うような重度の症状に対しても適用できる。損傷の原因についても特に制限はなく,交通事故や落下事故等の外傷性の損傷から脳卒中で錐体路が切断した場合のような疾患に起因する損傷まで幅広く適用できる。
本発明の治療は,急性期,すなわち受傷後数時間内に行うのが好ましいが,慢性期,すなわち受傷後数年が経過した場合に対しても適用できることが思慮される。
本発明を説明するのに使用した用語は,当該分野で一般的に認識されているのと同じ意味で用いている。本発明の範囲を明確にするのに特に必要となるいくつかの用語については,その定義を以下に示す。
「AC133陽性細胞」とは,表面抗原AC133(CD133とも称される)を発現する細胞をいう。
「末梢血」とは,全身の血管中を流れる血液をいう。
「末梢血由来AC133陽性細胞」とは,末梢血から採取したAC133陽性細胞だけでなく,末梢血から採取した後,生体外で培養増殖したAC133陽性細胞も意味する。「臍帯血由来AC133陽性細胞」,「骨髄由来AC133陽性細胞」,及び「胎盤血由来AC133陽性細胞」についても同様とする。
「神経断裂」には,神経系組織の完全な断裂だけでなく,部分的な断裂も含む。
(実施例1)
本実施例では,インビトロ器官培養モデルを用いて,ヒト末梢血由来AC133陽性細胞の軸索伸長促進能を検討した。
本実施例では,インビトロ器官培養モデルを用いて,ヒト末梢血由来AC133陽性細胞の軸索伸長促進能を検討した。
脳皮質及び脊髄のインビトロ器官培養モデルは,以前に報告された方法に従って調製した(Oishi Y et al., J Neurotrauma 21:339-356(2004))。脳及び脊髄は,生後3日(P3)又は生後7日(P7)のSDラットから得た。脳の切断には,ビブラトーム(Vibratome;堂坂イーエム)を用いた。皮質領域は,脳の冠状断,脊髄は,矢状断より得られた切片を用いた。6ウェル組織プレート上に,1mlの血清培地(50% basal medium Eagle with Earle’s Salts(BME;Sigma), 25% inactivated horse serum(Gibco),25% Earle’s Balanced Salt Solution(EBSS;Sigma),1mM L−グルタミン及び0.5% D−グルコース)を準備し,その中にメンブレン(Millicell-CM; Millipore, Billerica, MA, USA)を浸し,切り出した皮質及び脊髄をメンブレン上で1日インキュベートした。インキュベート後,脊髄片を,皮質の白質部分と接するように配置した(図1を参照のこと)。この共培養物を,37℃,5% CO2下でインキュベートした。培地は3日毎に交換し,2週間インキュベートした。
AC133陽性細胞(1×104細胞/2μl PBS)は,皮質と脊髄を相互に接触させた後に,脊髄部分に滴下した(AC133陽性細胞群)。AC133陽性細胞は,Histopaque-1077(Sigma)を用いた密度勾配遠心法により末梢血から採取した単核球画分から,ミルテニー・バイオテク社の自動磁気細胞分離装置autoMACSTM及びCD133 Cell Isolation Kitを用いて分離したものを用いた。
比較のため,AC133陽性細胞の代わりに,単核球細胞(MNC;1×104細胞/2μl PBS)及びPBSのみを,同様の方法で滴下したものを対象群とした(それぞれ,MNC群及びPBS群とする)。
皮質から脊髄への軸索の伸長は,蛍光色素Dilを用いた順行性軸索染色法により標識した。すなわち,共培養物を,4℃で5日間,4%パラホルムアルデヒド中で固定した後,皮質の中央にDil結晶を置き,0。1M リン酸緩衝液中でさらに14日間,37℃,5% CO2下でインキュベートした。その結果を図2に示す。MNC群においても軽度の軸索伸長が認められるが,AC133陽性細群では特に顕著な軸索伸長が認められた。
軸索の伸長を分析するため,皮質と脊髄の接触部から500,1000,1500,2000及び2500μmの距離に基準線を設け,これらの基準線を超えた軸索の数をカウントした。結果は,平均±s.e.で評価した。各パラメータにおける統計的有意差は,マン−ホイットニーのU検定(Mann-Whitney U test)により評価した。
その結果を図3に示す。500,1000μmの領域では,MNC群及びPBS群でも若干の軸索伸長が認められたが,AC133陽性細胞群は,これらと比較して突起数で遥かに勝っていた。1500,2000μmの領域ではAC133陽性細胞群において軸索伸長が認められたが,MNC群及びPBS群においてはほとんど認められなかった。
軸索の距離と量は,機能の再生に大きく関与する因子である。軸索の伸長が認められたとしても短い距離範囲にしか届かないのであれば,それらは本来の標的に届かない異所性投射でしかなく,機能的再生も小規模のものになる。真の意味で損傷した神経を再生するには,正常のものと同等の投射を再構築できる程度に十分な距離及び量の軸索が形成されることが欠かせない。
以上より,これらの結果は,AC133陽性細胞の移植が,損傷した神経機能を回復できる程度に強力な軸索伸長促進能を有することを示唆するものであると言える。
(実施例2)
本実施例では,ヒト末梢血由来AC133陽性細胞を免疫不全ラット坐骨神経欠損モデルに移植し,末梢神経の再生効果を検討した。
本実施例では,ヒト末梢血由来AC133陽性細胞を免疫不全ラット坐骨神経欠損モデルに移植し,末梢神経の再生効果を検討した。
ヌードラットにペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)を腹腔内注射して麻酔し,左坐骨神経を露出させて,その一部(15mm分)を除去した。次に,アテロコラーゲンにAC133陽性細胞1×105個を充填したシリコンチューブを作製し,ヌードラットの坐骨神経の欠損部を架橋した(図4を参照のこと)。また,対照群として,別のラットを,アテロコラーゲンのみを注入したシリコンチューブを用いて架橋した。それぞれの群に対し移植後8週にて,肉眼的評価,組織学的評価,電気生理学的評価とともに筋湿重量を測定した。
その結果を図5に示す。肉眼的にチューブ内神経組織架橋形成はAC133陽性細胞群で全例に見られたが,対照群では架橋は見られなかった(図5A,B)。組織学的にはAC133陽性細胞群で良好な軸索再生が認められた。電気生理学的評価においては,AC133陽性細胞群では全例で,健常なものと同等の筋誘発電位の導出が可能であった(図5D)のに対し,対照群で導出された例はなかった。前脛骨筋における筋湿重量は実験群と対照群で筋萎縮の差を認めなかった。
これらの結果は,末梢血由来AC133陽性細胞が,末梢神経(坐骨神経)の損傷を物理的にも機能的にも再生することができることを示すものである。
(実施例3)
本実施例では,経静脈投与されたAC133陽性細胞の損傷脊髄部位への集積及び損傷脊髄の再生効果を検討した。
本実施例では,経静脈投与されたAC133陽性細胞の損傷脊髄部位への集積及び損傷脊髄の再生効果を検討した。
ヌードラットにペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)を腹腔内注射して麻酔下に,腹臥位にて第7胸椎を切除,硬膜を露出させ,25gの重錘を90秒間置き,圧挫損傷モデルを作製した(図6を参照のこと)。次にPBSに懸濁したAC133陽性細胞1×105個を大腿静脈より経静脈的に移植した。また,対照群として,ヌードラットで同様の脊髄圧挫モデルを作製し,PBSのみを大腿静脈より移植した。それぞれの群に対して移植後6週での組織学的評価,行動学的評価を行った。
その結果を図7〜9に示す。移植後1週の損傷部の免疫組織染色において,実験群においては移植細胞の損傷部への集積が確認でき(図7C,D赤色),一部血管内皮へと分化している細胞も認めた(図7D緑色)。移植後6週においては対照群では全例,損傷部の脊髄内に空洞を形成していたが,実験群においては認められなかった(図8)。BBBscore(胸髄レベルで脊髄損傷を作製した際の下肢機能を評価するスコアシート;詳細については,Basso et al., J. Neurotrauma 12 : 1-21(1995)を参照のこと)を用いた行動学的評価においても実験群では有意に回復していた(図9)。
これらの結果は,AC133陽性細胞群が,経静脈投与を通じて,中枢神経(脊髄)の損傷を物理的にも機能的にも再生することができることを示すものである。
Claims (8)
- 脊髄損傷,坐骨神経損傷,及び神経断裂から群より選択される神経障害の治療剤であって,AC133陽性細胞を含むことを特徴とする,治療剤。
- AC133陽性細胞が末梢血由来,臍帯血由来,胎盤血由来,又は骨髄由来である,請求項1に記載の治療剤。
- AC133陽性細胞が末梢血由来である,請求項2に記載の治療剤。
- AC133陽性細胞がヒト由来である,請求項3に記載の治療剤。
- 神経障害が脊髄損傷である,請求項2〜4のいずれか1項に記載の治療剤。
- 神経障害が坐骨神経損傷である,請求項2〜4のいずれか1項に記載の治療剤。
- 神経障害が神経断裂である,請求項2〜4のいずれか1項に記載の治療剤。
- 坐骨神経損傷が絞扼性神経障害である,請求項6に記載の治療剤。
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