JP2007276402A - 低密着性材料、樹脂成形型及び防汚性材料 - Google Patents

低密着性材料、樹脂成形型及び防汚性材料 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた低密着性材料、及び、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた樹脂成形型を得ることである。
【解決手段】上型1は、キャビティ4の内底面5を構成するキャビティ部材6と、周辺部材7とを有する。キャビティ部材6は、本発明に係る低密着性材料であって、本体部8と本体部8の面のうち流動性樹脂が接触する側にある下面9に形成された表面層10とによって構成される。本体部8は、3YSZからなる第1の材料とZrNからなる第2の材料とから所定の比率で構成される。表面層10は、硬化樹脂に対する低密着性を有するYから構成され、その熱膨張係数は本体部8よりも小さい。本体部8と表面層10とが高温下で接合された後に冷却されることによって、熱膨張係数の差に起因して表面層10において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層10に存在している。
【選択図】図1

Description

本発明は、塩基性を有する物質に対して低い密着性を有する材料、すなわち低密着性材料と、その低密着性材料によって少なくとも型面の一部が構成された樹脂成形型とに関するものである。
従来、トランスファ成形法又は射出成形法により、樹脂成形用の金型にそれぞれ設けられた樹脂流路とキャビティとを使用して、樹脂流路を経由してキャビティに流動性樹脂を充填し、充填された流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成して、硬化樹脂を有する成形体を完成させている。そして、例えば、流動性樹脂としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されているとともに、金型材料として工具鋼等の鋼系材料や超硬合金(WC−Co系合金)等が使用されている。この場合には、容易に成形体を取り出すことができるように、硬化樹脂と金型の表面(型面)との間の密着性を低下させる、言い換えれば、硬化樹脂と型面との間の離型性を向上させることが好ましい。
ところで、本出願の発明者らは、空気中において安定な焼結体であるY(イットリア)がエポキシ樹脂に対する低密着性を有することを見出した。ここでいう低密着性とは、「従来の金型材料である鋼系材料や超硬合金等とエポキシ樹脂に代表される塩基性を有する物質との間の密着性に比較した場合に、低い密着性であること」を意味する。そして、本出願の発明者らにより、Y等の酸化物(塩基性酸化物)を使用して型面又は樹脂成形型を構成することが提案されている(特許文献1参照)。また、本出願の出願人らによる別の特許出願においては、樹脂成形型を構成する低密着性材料として、Y固溶体、イットリア複合酸化物(LaYO)、及び、Y固溶体とイットリア複合酸化物との混合物が示されている(特願2006−017335号)。これらの技術によれば、硬化樹脂に対する低密着性材料であるY等の塩基性酸化物、Y固溶体等が、型面を構成する樹脂成形型用材料に含まれる。したがって、優れた離型性を有する樹脂成形型が実現される。
しかしながら、上述した従来の技術、すなわちY等の塩基性酸化物、Y固溶体等(以下「塩基性酸化物等」という。)を含む樹脂成形型用材料を使用して型面又は樹脂成形型を構成する技術によれば、次の2つの問題がある。第1の問題は、樹脂成形型の耐摩耗性が不十分であるということである。特に問題になるのは、リードフレームやプリント基板等(以下「基板」という。)に装着されたLSIチップ等のチップ状の電子部品(以下「チップ」という。)を樹脂封止する場合である。この場合には、流動性樹脂として、セラミックスからなるフィラーを含有する熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)が使用される。このフィラーによって、樹脂成形型の型面を構成する塩基性酸化物等が摩耗する。第2の問題は、塩基性酸化物等は、外部から衝撃を受けるとチッピングが発生しやすいこと、言い換えれば耐衝撃性が低いということである。したがって、単に低密着性材料である塩基性酸化物等によって型面又は樹脂成形型を構成する技術によれば、優れた離型性を有する樹脂成形型は得られるが、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた樹脂成形型を得ることは困難であった。
特開2005−274478号公報(第8−9頁,図2)
本発明が解決しようとする課題は、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた低密着性材料を得ること、及び、優れた離型性に加えて優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた樹脂成形型を得ることが困難であるという点である。
課題を解決するための手段を説明する前に、摩耗について説明する。ここでいう摩耗はエロージョン摩耗である。そして、文献(S.Srinivasan and R.O.Scattergood, R curve effects in solid particle erosion of ceramics, Wear, 142(1991) 115.)によれば、このエロージョン摩耗は、材料硬さ(H)、破壊靱性値(KIC)の増加に伴い低下するとされている(同文献のP.117,TABLE 1に記載された式を参照)。したがって、一般に、脆性材料において、硬質粒子に対する耐摩耗性を向上させるためには、破壊靭性値を増大させることが有効であるといえる。また、脆性材料において耐衝撃性を向上させるためにも、破壊靭性値を増大させることが有効である。これらのことに鑑み、本発明の発明者らは、次の手段を講じた。
上述の課題を解決することを目的として、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、塩基性を有する物質に対する低密着性を有する低密着性材料(6,14)であって、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備えるとともに、表面層(10,17)は塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在していることを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、表面層(10,17)はY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、本体部(8,15)は、ZrOを主成分としてYやCeO等を含むZrO系材料からなる第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、本体部(8,15)は導電性を有することを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、キャビティ(4)に充填された流動性樹脂を硬化させることによって塩基性を有する物質からなる硬化樹脂を形成し該硬化樹脂を含む成形体を成形する際に使用される樹脂成形型(1,14)であって、樹脂成形型(1,14)において流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部に重なるようにして設けられた本体部(8,15)と、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部を構成するようにして本体部(8,15)の表面(9,16)に形成された表面層(10,17)とを備えるとともに、表面層(10,17)は硬化樹脂に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在していることを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、上述の樹脂成形型(1,14)において、表面層(10,17)はY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、上述の樹脂成形型(1,14)において、本体部(8,15)は、ZrOを主成分としてYやCeO等を含むZrO系材料からなる第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、上述の樹脂成形型(1,14)において、本体部(8,15)は導電性を有することを特徴とする。
本発明に係る低密着性材料(6,14)は、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備える。また、その表面層(10,17)は、塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料によって構成される。また、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差に起因して表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層(10,17)に存在している。そして、表面層(10,17)における圧縮残留応力の存在によって表面層(10,17)における破壊靭性値が増大すると考えられる。したがって、表面層(10,17)における破壊靭性値が増大することにより、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、塩基性を有する物質に対する低密着性を各々有するY、Y固溶体、又は、イットリア複合酸化物の少なくともいずれかが、上述した低密着性材料(6,14)の表面層(10,17)に含まれる。したがって、Y等を含み、塩基性を有する物質に対する優れた低密着性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、本体部(8,15)に、ZrO系材料からなる第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とが含まれる。そして、第1の材料と第2の材料との比率を変えることにより、本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差を変えることができる。したがって、本体部(8,15)と表面層(10,17)との界面剥離が発生せず、かつ、表面層(10,17)における破壊靭性値が増大するように、本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差が最適に定められた低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、本体部(8,15)は導電性を有するので、本体部(8,15)自体が発熱することによって、樹脂成形型(1,14)におけるキャビティ(4)の内底面(5)及び型面(18)を効率よく加熱することができる。これにより、樹脂成形型(1,14)を加熱する際の省エネルギー化が可能になる。ここで、本体部(8,15)自体を発熱させるには、本体部(8,15)に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部(8,15)を自己発熱させればよい。加えて、本体部(8,15)の導電性を利用して、本体部(8,15)に対して放電加工による精密加工を行うことができる。
上型(1)は、型面のうちキャビティ(4)の内底面(5)を構成する直方体状のキャビティ部材(6)と、キャビティ部材(6)以外の部分を構成する周辺部材(7)とを有する。このキャビティ部材(6)は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されており、具体的には、本体部(8)と、その本体部(8)の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面(9)に形成された表面層(10)とによって構成されている。本体部(8)は、3YSZ(3mol%Y,97mol%ZrO)からなる第1の材料と、導電性を有するZrNからなる第2の材料とから所定の比率で構成され、熱膨張係数は10.5×10−6/°Cである。表面層(10)は、硬化樹脂に対する低密着性を有するYから構成され、その熱膨張係数は本体部(8)よりも小さい8.4×10−6/°Cである。そして、本体部(8)と表面層(10)とが高温下で接合された後に冷却されることによって、本体部(8)と表面層(10)との熱膨張係数の差に起因して表面層(10)において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層(10)に存在している。
本発明の実施例1に係る樹脂成形型と低密着性材料とを、図1−図3を参照して説明する。この低密着性材料は、直方体状の本体部とその本体部における1つの表面に形成された表面層とからなる積層構造体である。図1は、本実施例に係る樹脂成形型を示す断面図である。図2は、本実施例に係る低密着性材料を製造する工程を示す流れ図である。図3は、本実施例に係る低密着性材料における表面層の厚みとその低密着性材料の破壊靱性値との関係を示す説明図である。以下に示されるいずれの図についても、わかりやすくするために誇張して描かれている。
また、以下の説明においては、樹脂成形の例としてトランスファ成形を示すとともに、基板に装着されたチップを樹脂封止する場合を説明する。この樹脂封止では、ワイヤによって配線されたチップをキャビティに収容し、型締めした状態でキャビティに流動性樹脂を充填し、流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成して、基板と硬化樹脂とを有する成形体(パッケージ)を完成させる。
図1に示されている上型1と下型2とは、併せて樹脂封止型を構成する。また、上型1が、本実施例に係る樹脂成形型に相当する。上型1には、流動性樹脂(図示なし)が流動する樹脂流路3と、樹脂流路3に連通され流動性樹脂が充填されるキャビティ4とが、それぞれ凹部状に設けられている。また、上型1は、型面のうちキャビティ4の内底面5を構成する直方体状のキャビティ部材6と、キャビティ部材6以外の部分を構成する周辺部材7とを有する。このキャビティ部材6は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されており、具体的には、本体部8と、その本体部8の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面9に形成された表面層10とによって構成されている。したがって、樹脂成形型における流動性樹脂が接触する型面のうちキャビティ4の内底面5においては、表面層10が露出していることになる。なお、本体部8と表面層10とを構成する材料については後述する。
下型2は、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等によって構成されている。下型2の型面の上には基板11が載置されている。基板11の上にはチップ12が装着され、基板11とチップ12との電極(いずれも図示なし)同士がワイヤ13によって電気的に接続されている。なお、下型2を、一定の機械的特性を有するセラミックス系材料によって構成してもよい。
さて、本実施例に係る低密着性材料からなるキャビティ部材6の本体部8と表面層10とをそれぞれ構成する材料について説明する。まず、本体部8は、第1の材料とその第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含んでいる。本実施例では、本体部8は、YSZ(Y含有安定化ZrO)系材料である3YSZ(3mol%Y,97mol%ZrO)からなる第1の材料と、導電性を有するZrNからなる第2の材料とから構成されることにした。そして、第1の材料と第2の材料との比率を、75vol%:25vol%とした。ここで、3YSZの熱膨張係数は11.4×10−6/°C、ZrNの熱膨張係数は 7.8×10−6/°Cである。そして、上述した比率で3YSZとZrNとから構成される材料(本体部8を構成する材料)の熱膨張係数は10.5×10−6/°Cである。なお、第1の材料は、ZrOを主成分としてYやCeO等を含むZrO系材料であればよい。また、第2の材料としては、第1の材料よりも小さい適当な熱膨張係数を有する材料を使用すればよく、例えば、導電性を有するZrB等や非導電性材料を使用することができる。
キャビティ部材6において、本体部8をこれらのように構成した目的は、次の3つである。第1に、樹脂成形型として必要な一定の機械的特性をキャビティ部材6に持たせることである。ここでいう機械的特性とは、例えば、破壊強度、破壊靱性、耐衝撃性等を意味する。第2に、本体部8と表面層10とを構成する材料同士の熱膨張係数の差を小さくするとともに、本体部8の熱膨張係数を表面層10の熱膨張係数よりも大きくすることである。第3に、本体部8に導電性を持たせることである。
また、キャビティ部材6においては、表面層10は、Y、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物のうちの少なくともいずれかを含んでいる。このことにより、表面層10は、硬化樹脂に対する低密着性を有する。本実施例では、表面層10はYから構成されることとした。そして、高温プロセス、すなわち高温下で処理されるプロセスによって、表面層10は、本体部8の表面(図では下面9)に接合するようにして形成されている。ここで、Yの熱膨張係数は8.4×10−6/°Cであって、本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)よりも小さい。また、高温プロセスにおける処理温度は、上述した本体部8と表面層10とが接合後に冷却されることにより、それらの熱膨張係数の差に基づいて表面層10にある程度の大きさの圧縮残留応力が発生する程度の温度である。
上述したキャビティ部材6を有する上型1は、次の4つの特徴を有している。第1に、導電性と一定の機械的強度とを有する本体部8の表面に高温下で接合された表面層10を有し、その表面層10の熱膨張係数(8.4×10−6/°C)は本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)よりも小さいことである。そして、本体部8と表面層10とが高温下で接合された後に冷却されることによって、本体部8と表面層10との熱膨張係数の差に起因して表面層10において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層10に存在している。この圧縮残留応力が表面層10に存在することによって表面層10における破壊靭性値が増大すると考えられる。したがって、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料によって構成された樹脂成形型が得られる。
第2に、表面層10は、硬化樹脂に対する低密着性を有する材料であるYから構成されていることである。これにより、優れた離型性を有する低密着性材料によって構成された樹脂成形型が得られる。
第3に、本体部8が、それぞれ熱膨張係数が11.4×10−6/°Cである3YSZ(第1の材料)と、 7.8×10−6/°CであるZrN(第2の材料)とから構成されており、これらの材料が一定の比率になっていることである。これにより、本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)は、表面層10の熱膨張係数(8.4×10−6/°C)に対して、これよりも大きくかつこれに近い適当な値になっている。本体部8と表面層10との熱膨張係数のこのような組合せによって、本体部8と表面層10とを高温下で接合する際に界面剥離が発生することが防止される。したがって、本体部8と表面層10との間において界面剥離が発生しない低密着性材料と、その低密着性材料から構成された樹脂成形型とが得られる。
第4に、本体部8が、導電性を有することである。これにより、本体部8に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部8を自己発熱させることができる。したがって、本体部8自体が発熱することによって、樹脂成形型1におけるキャビティ4の内底面5を効率よく加熱することができる。これにより、樹脂成形型1を加熱する際の省エネルギー化が可能になる。また、本体部8の導電性を利用して、必要に応じて本体部8に対して放電加工による精密加工を行うことができる。
図1に示された樹脂成形型の動作を説明する。まず、下型2の上に位置決めして基板11を配置し、吸着等の方法によって基板11を固定する。次に、上型1を下降させて下型2との型締めを完了させる。次に、プランジャ(図示なし)を使用して熱硬化性樹脂からなり一定の粘性を有する流動性樹脂(図示なし)を押圧することにより、樹脂流路3を経由してキャビティ4に流動性樹脂を充填する。次に、上型1と下型2とに設けられたヒータ(図示なし)を使用して、流動性樹脂を加熱しこれを硬化させることによって、硬化樹脂を形成する。この工程では、導電性を有する本体部8に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部8を自己発熱させてもよい。次に、上型1を上昇させて型開きを行い、硬化樹脂によって基板11とチップ12とワイヤ13とが一体的に封止された成形体を取り出す。この工程で、硬化樹脂に対する低密着性を有する材料であるYから構成されている表面層10に対して、硬化樹脂が容易に離型する。
以上説明したように、本実施例によれば、優れた低密着性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料が得られる。また、その低密着性材料によって構成され優れた離型性を有する樹脂成形型が得られる。
本実施例に係る低密着性材料と樹脂成形型とは、次のような方法によって製造される。まず、図2に示すように、工程S1において、本体部8の材料である3YSZとZrNとの粉末を所定の比率で調合する。次に、工程S2において、調合された粉末に対してボールミル混合を行う。次に、工程S3において、ボールミル混合された材料を乾燥させてふるいにかける。次に、工程S4において、仮成形を行って直方体状の部材(図1の本体部8に相当)を完成させる。
また、上述した直方体状の部材の製作とは別に、まず、図2に示すように、工程S5において、表面層10の材料であるYの粉末を、必要な量だけ準備する。次に、工程S6において、Yの粉末を仮成形して、薄板状の部材を製作する。
次に、それぞれ仮成形された直方体状の部材とYからなる薄板状の部材とをホットプレスによって積層化して、積層構造体を形成する。この場合における処理条件は、例えば、N雰囲気中において処理温度が1350℃、処理時間が1時間、プレス圧力が48kNである。その後に、形成された積層構造体を処理温度から室温まで冷却する。この冷却は、積層構造体を室温又は室温以下の雰囲気に放置することにより行ってもよく、送風等の手段を使用して強制的に行ってもよい。ここまでの工程により、本体部と表面層とからなる積層構造体、すなわち本実施例に係る低密着性材料(図1における本体部8と表面層10とからなるキャビティ部材6に相当)が完成する。なお、完成した低密着性材料においては、1350℃という高温下で処理されるプロセスにより、本体部8に含まれる3YSZに対して表面層10に含まれるYが固相拡散している。これにより、本体部8に表面層10が接合される。
次に、図1に示すように、製作された低密着性材料からなるキャビティ部材6を、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等からなる周辺部材7に取り付ける。これにより、本実施例に係る樹脂成形型である上型1が完成する。
以下、本実施例に係る低密着性材料において、Yから構成される表面層10の厚みと、その低密着性材料の破壊靱性値との関係を、図3を参照して説明する。この関係を評価するために、表面層の厚みが異なる3つの試料(n=5)を製作し、JIS IF法(JIS R 1607)によって各試料の破壊靱性値を測定した(押込加重=1kgf≒9.8N)。その結果、表面層の厚みが1.4mmである試料について0.9MPa・m1/2、0.9mmである試料について1.7MPa・m1/2、及び、0.25mmである試料について2.3MPa・m1/2の破壊弾性値が得られた。得られた結果を図3に示す。なお、支持層8−表面層10の界面における表面層側の残留圧縮応力の値は、算出式によって682MPa程度であると算出された。ここで、残留圧縮応力σの算出式は、式σ=EΔα・ΔT/(1−ν)で表される。式中の記号Eは表面層の縦弾性係数、νはポアソン比、Δαは支持層と表面層との線膨張係数の差、ΔTは処理温度と使用温度との差である。また、このときの各パラメータの値は、E=171GPa、ΔT=1350−20=1330℃、ν=0.3である。なお、図3においてハッチングを付した破壊靱性値の範囲は、Y単体で樹脂成形型を構成した場合の破壊靱性値を示す。
得られた結果を示した図3によれば、図1に示された本体部8と表面層10との間の界面と表面層10の表面との距離を近づけるほど、言い換えれば圧縮残留応力が存在する表面層10の厚さを小さくするほど、破壊靱性値が増加しているという関係が見出される。この関係とY単体で樹脂成形型を構成した場合の破壊靱性値とを考慮すれば、低密着性材料として適当な表面層10の厚みは1.2mm以下であって小さいほうがよい。そして、表面層10の好ましい厚みは1.0mm以下であり、より好ましい厚みは0.25mm以下であると考えられる。また、表面層10の厚みの下限は、表面層10を構成する物質が単位格子を形成する程度(例えば、数nm程度)であればよい。
なお、ここまでの説明では、上型1を構成する部材のうちキャビティ4の内底面5を構成する直方体状のキャビティ部材6を、本実施例に係る低密着性材料によって構成した。これに代えて、樹脂流路3の内底面を構成する部材を、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。更に、樹脂成形型において、型面のうち流動性樹脂が接触する面のすべてを含む部分を(又はその面の大部分を)、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。例えば、図1におけるキャビティ4の内底面5と樹脂流路3の内底面とを含む部分を、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。要は、キャビティ部材6の本体部8が、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部に平面視して重なるようにして設けられ、表面層10が、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部を構成するようにして本体部8の表面に形成されていればよい。
本発明の実施例2に係る樹脂成形型と低密着性材料とについて、図4を参照して説明する。本実施例に係る低密着性材料は、直方体状の母材に対して表面(1つの面;図では下面)に凹部が設けられた本体部と、その表面に形成された表面層とからなる積層構造体である。図4は、本実施例に係る樹脂成形型を示す断面図である。
図4に示されている上型14が、本実施例に係る低密着性材料及び樹脂成形型に相当する。また、上型14は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されている。具体的には、上型14は、本体部15と、その本体部15の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面16の全面に形成された表面層17とによって構成されている。したがって、上型14における流動性樹脂が接触する型面のすべては表面層17によって構成されていることになる。
本体部15は、実施例1における本体部8と同じ材料によって、すなわち3YSZからなる第1の材料と導電性を有するZrNからなる第2の材料とによって構成されている。また、表面層17は、実施例1における表面層10と同じ材料によって、すなわちY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含む材料によって構成されている。本実施例においても、表面層17はYによって構成されていることとした。本実施例によれば、流動性樹脂が接触する型面18においてこの表面層10が存在することによって、図1に示された樹脂成形型及び低密着性材料の場合と同様の効果が得られる。
図2に示された樹脂成形型は、次のようにして得られる。まず、切削加工等によって直方体状の原材料を適当に加工して、樹脂流路3とキャビティ4とに相当する凹部を形成する。次に、凹部が形成された面である下面16に、周知の方法のうち適切な方法を使用して、層状(膜状)の表面層17を形成する。ここでいう周知の方法とは、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ゾルゲル法、溶射法等の各種コーティング、及び、シート状材料のホットプレス積層化等の方法である。また、これらの周知の方法においても、実施例1の場合と同様に、一定の高温下で表面層17が形成され、冷却後の表面層17においてある程度の大きさの圧縮残留応力が発生している。
なお、上述した各実施例においては、基板11に装着されたチップ12を樹脂封止する際に使用される樹脂成形型を例に挙げて説明した。これに限らず、一般的なトランスファ成形、射出成形、圧縮成形等のように、キャビティに流動性樹脂が充填された状態でその流動性樹脂を硬化させて成形体を成形する際に使用される樹脂成形型に対して、本発明を適用することができる。
また、本体部8,15を、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等によって構成してもよい。そして、上述した各実施例と同様に、本体部8,15と表面層10,17の熱膨張係数を適切に定めることによって、表面層10,17において圧縮残留応力を存在させることができる。
また、各実施例においては、それぞれ本発明に係る低密着性材料とこれを使用した樹脂成形型とについて説明した。これに限らず、低密着性材料を、樹脂成形型以外の用途に使用することができる。その用途とは、塩基性を有する物質に対する濡れ性が低いことに加えて、耐摩耗性と耐衝撃性とが要求される他の用途である。具体的には、本発明に係る低密着性材料を、部材等における流動性樹脂が接触する部分のコーティング等に使用することができる。
更に、本発明に係る低密着性材料は、樹脂以外の物質であって塩基性を有する物質に対する低密着性に加えて、耐摩耗性と耐衝撃性とが要求される用途に使用されることが可能である。例えば、このような低密着性材料を、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する材料として使用することができる。具体的にいえば、建物の外壁等に使用される建材、浴槽、衛生陶器やこれに類する機器等の材料として使用することが考えられる。また、これらの用途に使用される部材の表面をコーティングする材料として、本発明に係る低密着性材料を使用してもよい。
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
図1は、本発明の実施例1に係る樹脂成形型を示す断面図である。 図2は、本発明の実施例1に係る低密着性材料を製造する工程を示す流れ図である。 図3は、本発明の実施例1に係る低密着性材料における表面層の厚みとその低密着性材料の破壊靱性値との関係を示す説明図である。 図4は、本発明の実施例2に係る樹脂成形型を示す断面図である。
符号の説明
1 上型(樹脂成形型)
2 下型
3 樹脂流路
4 キャビティ
5 内底面
6 キャビティ部材(低密着性材料)
7 周辺部材
8,15 本体部
9,16 下面
10,17 表面層
11 基板
12 チップ
13 ワイヤ
14 上型(低密着性材料、樹脂成形型)
18 型面
本発明は、塩基性を有する物質に対して低い密着性を有する材料、すなわち低密着性材料と、その低密着性材料によって少なくとも型面の一部が構成された樹脂成形型と、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する防汚性材料とに関するものである。
従来、トランスファ成形法又は射出成形法により、樹脂成形用の金型にそれぞれ設けられた樹脂流路とキャビティとを使用して、樹脂流路を経由してキャビティに流動性樹脂を充填し、充填された流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成して、硬化樹脂を有する成形体を完成させている。そして、例えば、流動性樹脂としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されているとともに、金型材料として工具鋼等の鋼系材料や超硬合金(WC−Co系合金)等が使用されている。この場合には、容易に成形体を取り出すことができるように、硬化樹脂と金型の表面(型面)との間の密着性を低下させる、言い換えれば、硬化樹脂と型面との間の離型性を向上させることが好ましい。
ところで、本出願の発明者らは、空気中において安定な焼結体であるY(イットリア)がエポキシ樹脂に対する低密着性を有することを見出した。ここでいう低密着性とは、「従来の金型材料である鋼系材料や超硬合金等とエポキシ樹脂に代表される塩基性を有する物質との間の密着性に比較した場合に、低い密着性であること」を意味する。そして、本出願の発明者らにより、Y等の酸化物(塩基性酸化物)を使用して型面又は樹脂成形型を構成することが提案されている(特許文献1参照)。また、本出願の出願人らによる別の特許出願においては、樹脂成形型を構成する低密着性材料として、Y固溶体、イットリア複合酸化物(LaYO)、及び、Y固溶体とイットリア複合酸化物との混合物が示されている(特願2006−017335号)。これらの技術によれば、硬化樹脂に対する低密着性材料であるY等の塩基性酸化物、Y固溶体等が、型面を構成する樹脂成形型用材料に含まれる。したがって、優れた離型性を有する樹脂成形型が実現される。
しかしながら、上述した従来の技術、すなわちY等の塩基性酸化物、Y固溶体等(以下「塩基性酸化物等」という。)を含む樹脂成形型用材料を使用して型面又は樹脂成形型を構成する技術によれば、次の2つの問題がある。第1の問題は、樹脂成形型の耐摩耗性が不十分であるということである。特に問題になるのは、リードフレームやプリント基板等(以下「基板」という。)に装着されたLSIチップ等のチップ状の電子部品(以下「チップ」という。)を樹脂封止する場合である。この場合には、流動性樹脂として、セラミックスからなるフィラーを含有する熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)が使用される。このフィラーによって、樹脂成形型の型面を構成する塩基性酸化物等が摩耗する。第2の問題は、塩基性酸化物等は、外部から衝撃を受けるとチッピングが発生しやすいこと、言い換えれば耐衝撃性が低いということである。したがって、単に低密着性材料である塩基性酸化物等によって型面又は樹脂成形型を構成する技術によれば、優れた離型性を有する樹脂成形型は得られるが、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた樹脂成形型を得ることは困難であった。
特開2005−274478号公報(第8−9頁,図2)
本発明が解決しようとする課題は、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた低密着性材料を得ること、及び、優れた離型性に加えて優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた樹脂成形型を得ることが困難であるという点である。
課題を解決するための手段を説明する前に、摩耗について説明する。ここでいう摩耗はエロージョン摩耗である。そして、文献(S.Srinivasan and R.O.Scattergood, R curve effects in solid particle erosion of ceramics, Wear, 142(1991) 115.)によれば、このエロージョン摩耗は、材料硬さ(H)、破壊靱性値(KIC)の増加に伴い低下するとされている(同文献のP.117,TABLE 1に記載された式を参照)。したがって、一般に、脆性材料において、硬質粒子に対する耐摩耗性を向上させるためには、破壊靭性値を増大させることが有効であるといえる。また、脆性材料において耐衝撃性を向上させるためにも、破壊靭性値を増大させることが有効である。これらのことに鑑み、本発明の発明者らは、次の手段を講じた。
上述の課題を解決することを目的として、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、塩基性を有する物質に対する低密着性を有する低密着性材料(6,14)であって、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備えるとともに、表面層(10,17)は塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在していることを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、表面層(10,17)はY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、本体部(8,15)は、ZrOを主成分としてYやCeO等を含むZrO系材料からなる第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、本体部(8,15)は導電性を有することを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、キャビティ(4)に充填された流動性樹脂を硬化させることによって塩基性を有する物質からなる硬化樹脂を形成し該硬化樹脂を含む成形体を成形する際に使用される樹脂成形型(1,14)であって、樹脂成形型(1,14)において流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部に重なるようにして設けられた本体部(8,15)と、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部を構成するようにして本体部(8,15)の表面(9,16)に形成された表面層(10,17)とを備えるとともに、表面層(10,17)は硬化樹脂に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在していることを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、上述の樹脂成形型(1,14)において、表面層(10,17)はY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、上述の樹脂成形型(1,14)において、本体部(8,15)は、ZrOを主成分としてYやCeO等を含むZrO系材料からなる第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、上述の樹脂成形型(1,14)において、本体部(8,15)は導電性を有することを特徴とする。
また、本発明に係る防汚性材料は、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する防汚性材料であって、本体部と、本体部における表面の少なくとも一部に形成された表面層とを備えるとともに、表面層は塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部に表面層が形成され、本体部と表面層とが冷却されることによって表面層において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在していることを特徴とする。
また、本発明に係る防汚性材料は、上述の防汚性材料において、表面層はY 、Y 固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る防汚性材料は、上述の防汚性材料において、本体部は、ZrO を主成分とする第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る防汚性材料は、上述の防汚性材料において、本体部は導電性を有することを特徴とする。
本発明に係る低密着性材料(6,14)は、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備える。また、その表面層(10,17)は、塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料によって構成される。また、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差に起因して表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層(10,17)に存在している。そして、表面層(10,17)における圧縮残留応力の存在によって表面層(10,17)における破壊靭性値が増大すると考えられる。したがって、表面層(10,17)における破壊靭性値が増大することにより、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、塩基性を有する物質に対する低密着性を各々有するY、Y固溶体、又は、イットリア複合酸化物の少なくともいずれかが、上述した低密着性材料(6,14)の表面層(10,17)に含まれる。したがって、Y等を含み、塩基性を有する物質に対する優れた低密着性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、本体部(8,15)に、ZrO系材料からなる第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とが含まれる。そして、第1の材料と第2の材料との比率を変えることにより、本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差を変えることができる。したがって、本体部(8,15)と表面層(10,17)との界面剥離が発生せず、かつ、表面層(10,17)における破壊靭性値が増大するように、本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差が最適に定められた低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、本体部(8,15)は導電性を有するので、本体部(8,15)自体が発熱することによって、樹脂成形型(1,14)におけるキャビティ(4)の内底面(5)及び型面(18)を効率よく加熱することができる。これにより、樹脂成形型(1,14)を加熱する際の省エネルギー化が可能になる。ここで、本体部(8,15)自体を発熱させるには、本体部(8,15)に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部(8,15)を自己発熱させればよい。加えて、本体部(8,15)の導電性を利用して、本体部(8,15)に対して放電加工による精密加工を行うことができる。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備える。また、その表面層(10,17)は、塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料によって構成される。また、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差に起因して表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層(10,17)に存在している。そして、表面層(10,17)における圧縮残留応力の存在によって表面層(10,17)における破壊靭性値が増大すると考えられる。したがって、表面層(10,17)における破壊靭性値が増大することにより、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料(6,14)が得られる。そして、上述した低密着性材料(6,14)は、防汚性材料として使用されることが可能である。
上型(1)は、型面のうちキャビティ(4)の内底面(5)を構成する直方体状のキャビティ部材(6)と、キャビティ部材(6)以外の部分を構成する周辺部材(7)とを有する。このキャビティ部材(6)は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されており、具体的には、本体部(8)と、その本体部(8)の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面(9)に形成された表面層(10)とによって構成されている。本体部(8)は、3YSZ(3mol%Y,97mol%ZrO)からなる第1の材料と、導電性を有するZrNからなる第2の材料とから所定の比率で構成され、熱膨張係数は10.5×10−6/°Cである。表面層(10)は、硬化樹脂に対する低密着性を有するYから構成され、その熱膨張係数は本体部(8)よりも小さい8.4×10−6/°Cである。そして、本体部(8)と表面層(10)とが高温下で接合された後に冷却されることによって、本体部(8)と表面層(10)との熱膨張係数の差に起因して表面層(10)において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層(10)に存在している。
本発明の実施例1に係る樹脂成形型と低密着性材料とを、図1−図3を参照して説明する。この低密着性材料は、直方体状の本体部とその本体部における1つの表面に形成された表面層とからなる積層構造体である。図1は、本実施例に係る樹脂成形型を示す断面図である。図2は、本実施例に係る低密着性材料を製造する工程を示す流れ図である。図3は、本実施例に係る低密着性材料における表面層の厚みとその低密着性材料の破壊靱性値との関係を示す説明図である。以下に示されるいずれの図についても、わかりやすくするために誇張して描かれている。
また、以下の説明においては、樹脂成形の例としてトランスファ成形を示すとともに、基板に装着されたチップを樹脂封止する場合を説明する。この樹脂封止では、ワイヤによって配線されたチップをキャビティに収容し、型締めした状態でキャビティに流動性樹脂を充填し、流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成して、基板と硬化樹脂とを有する成形体(パッケージ)を完成させる。
図1に示されている上型1と下型2とは、併せて樹脂封止型を構成する。また、上型1が、本実施例に係る樹脂成形型に相当する。上型1には、流動性樹脂(図示なし)が流動する樹脂流路3と、樹脂流路3に連通され流動性樹脂が充填されるキャビティ4とが、それぞれ凹部状に設けられている。また、上型1は、型面のうちキャビティ4の内底面5を構成する直方体状のキャビティ部材6と、キャビティ部材6以外の部分を構成する周辺部材7とを有する。このキャビティ部材6は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されており、具体的には、本体部8と、その本体部8の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面9に形成された表面層10とによって構成されている。したがって、樹脂成形型における流動性樹脂が接触する型面のうちキャビティ4の内底面5においては、表面層10が露出していることになる。なお、本体部8と表面層10とを構成する材料については後述する。
下型2は、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等によって構成されている。下型2の型面の上には基板11が載置されている。基板11の上にはチップ12が装着され、基板11とチップ12との電極(いずれも図示なし)同士がワイヤ13によって電気的に接続されている。なお、下型2を、一定の機械的特性を有するセラミックス系材料によって構成してもよい。
さて、本実施例に係る低密着性材料からなるキャビティ部材6の本体部8と表面層10とをそれぞれ構成する材料について説明する。まず、本体部8は、第1の材料とその第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含んでいる。本実施例では、本体部8は、YSZ(Y含有安定化ZrO)系材料である3YSZ(3mol%Y,97mol%ZrO)からなる第1の材料と、導電性を有するZrNからなる第2の材料とから構成されることにした。そして、第1の材料と第2の材料との比率を、75vol%:25vol%とした。ここで、3YSZの熱膨張係数は11.4×10−6/°C、ZrNの熱膨張係数は 7.8×10−6/°Cである。そして、上述した比率で3YSZとZrNとから構成される材料(本体部8を構成する材料)の熱膨張係数は10.5×10−6/°Cである。なお、第1の材料は、ZrOを主成分としてYやCeO等を含むZrO系材料であればよい。また、第2の材料としては、第1の材料よりも小さい適当な熱膨張係数を有する材料を使用すればよく、例えば、導電性を有するZrB等や非導電性材料を使用することができる。
キャビティ部材6において、本体部8をこれらのように構成した目的は、次の3つである。第1に、樹脂成形型として必要な一定の機械的特性をキャビティ部材6に持たせることである。ここでいう機械的特性とは、例えば、破壊強度、破壊靱性、耐衝撃性等を意味する。第2に、本体部8と表面層10とを構成する材料同士の熱膨張係数の差を小さくするとともに、本体部8の熱膨張係数を表面層10の熱膨張係数よりも大きくすることである。第3に、本体部8に導電性を持たせることである。
また、キャビティ部材6においては、表面層10は、Y、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物のうちの少なくともいずれかを含んでいる。このことにより、表面層10は、硬化樹脂に対する低密着性を有する。本実施例では、表面層10はYから構成されることとした。そして、高温プロセス、すなわち高温下で処理されるプロセスによって、表面層10は、本体部8の表面(図では下面9)に接合するようにして形成されている。ここで、Yの熱膨張係数は8.4×10−6/°Cであって、本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)よりも小さい。また、高温プロセスにおける処理温度は、上述した本体部8と表面層10とが接合後に冷却されることにより、それらの熱膨張係数の差に基づいて表面層10にある程度の大きさの圧縮残留応力が発生する程度の温度である。
上述したキャビティ部材6を有する上型1は、次の4つの特徴を有している。第1に、導電性と一定の機械的強度とを有する本体部8の表面に高温下で接合された表面層10を有し、その表面層10の熱膨張係数(8.4×10−6/°C)は本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)よりも小さいことである。そして、本体部8と表面層10とが高温下で接合された後に冷却されることによって、本体部8と表面層10との熱膨張係数の差に起因して表面層10において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層10に存在している。この圧縮残留応力が表面層10に存在することによって表面層10における破壊靭性値が増大すると考えられる。したがって、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料によって構成された樹脂成形型が得られる。
第2に、表面層10は、硬化樹脂に対する低密着性を有する材料であるYから構成されていることである。これにより、優れた離型性を有する低密着性材料によって構成された樹脂成形型が得られる。
第3に、本体部8が、それぞれ熱膨張係数が11.4×10−6/°Cである3YSZ(第1の材料)と、 7.8×10−6/°CであるZrN(第2の材料)とから構成されており、これらの材料が一定の比率になっていることである。これにより、本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)は、表面層10の熱膨張係数(8.4×10−6/°C)に対して、これよりも大きくかつこれに近い適当な値になっている。本体部8と表面層10との熱膨張係数のこのような組合せによって、本体部8と表面層10とを高温下で接合する際に界面剥離が発生することが防止される。したがって、本体部8と表面層10との間において界面剥離が発生しない低密着性材料と、その低密着性材料から構成された樹脂成形型とが得られる。
第4に、本体部8が、導電性を有することである。これにより、本体部8に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部8を自己発熱させることができる。したがって、本体部8自体が発熱することによって、樹脂成形型1におけるキャビティ4の内底面5を効率よく加熱することができる。これにより、樹脂成形型1を加熱する際の省エネルギー化が可能になる。また、本体部8の導電性を利用して、必要に応じて本体部8に対して放電加工による精密加工を行うことができる。
図1に示された樹脂成形型の動作を説明する。まず、下型2の上に位置決めして基板11を配置し、吸着等の方法によって基板11を固定する。次に、上型1を下降させて下型2との型締めを完了させる。次に、プランジャ(図示なし)を使用して熱硬化性樹脂からなり一定の粘性を有する流動性樹脂(図示なし)を押圧することにより、樹脂流路3を経由してキャビティ4に流動性樹脂を充填する。次に、上型1と下型2とに設けられたヒータ(図示なし)を使用して、流動性樹脂を加熱しこれを硬化させることによって、硬化樹脂を形成する。この工程では、導電性を有する本体部8に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部8を自己発熱させてもよい。次に、上型1を上昇させて型開きを行い、硬化樹脂によって基板11とチップ12とワイヤ13とが一体的に封止された成形体を取り出す。この工程で、硬化樹脂に対する低密着性を有する材料であるYから構成されている表面層10に対して、硬化樹脂が容易に離型する。
以上説明したように、本実施例によれば、優れた低密着性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料が得られる。また、その低密着性材料によって構成され優れた離型性を有する樹脂成形型が得られる。
本実施例に係る低密着性材料と樹脂成形型とは、次のような方法によって製造される。まず、図2に示すように、工程S1において、本体部8の材料である3YSZとZrNとの粉末を所定の比率で調合する。次に、工程S2において、調合された粉末に対してボールミル混合を行う。次に、工程S3において、ボールミル混合された材料を乾燥させてふるいにかける。次に、工程S4において、仮成形を行って直方体状の部材(図1の本体部8に相当)を完成させる。
また、上述した直方体状の部材の製作とは別に、まず、図2に示すように、工程S5において、表面層10の材料であるYの粉末を、必要な量だけ準備する。次に、工程S6において、Yの粉末を仮成形して、薄板状の部材を製作する。
次に、それぞれ仮成形された直方体状の部材とYからなる薄板状の部材とをホットプレスによって積層化して、積層構造体を形成する。この場合における処理条件は、例えば、N雰囲気中において処理温度が1350℃、処理時間が1時間、プレス圧力が48kNである。その後に、形成された積層構造体を処理温度から室温まで冷却する。この冷却は、積層構造体を室温又は室温以下の雰囲気に放置することにより行ってもよく、送風等の手段を使用して強制的に行ってもよい。ここまでの工程により、本体部と表面層とからなる積層構造体、すなわち本実施例に係る低密着性材料(図1における本体部8と表面層10とからなるキャビティ部材6に相当)が完成する。なお、完成した低密着性材料においては、1350℃という高温下で処理されるプロセスにより、本体部8に含まれる3YSZに対して表面層10に含まれるYが固相拡散している。これにより、本体部8に表面層10が接合される。
次に、図1に示すように、製作された低密着性材料からなるキャビティ部材6を、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等からなる周辺部材7に取り付ける。これにより、本実施例に係る樹脂成形型である上型1が完成する。
以下、本実施例に係る低密着性材料において、Yから構成される表面層10の厚みと、その低密着性材料の破壊靱性値との関係を、図3を参照して説明する。この関係を評価するために、表面層の厚みが異なる3つの試料(n=5)を製作し、JIS IF法(JIS R 1607)によって各試料の破壊靱性値を測定した(押込加重=1kgf≒9.8N)。その結果、表面層の厚みが1.4mmである試料について0.9MPa・m1/2、0.9mmである試料について1.7MPa・m1/2、及び、0.25mmである試料について2.3MPa・m1/2の破壊弾性値が得られた。得られた結果を図3に示す。なお、支持層8−表面層10の界面における表面層側の残留圧縮応力の値は、算出式によって682MPa程度であると算出された。ここで、残留圧縮応力σの算出式は、式σ=EΔα・ΔT/(1−ν)で表される。式中の記号Eは表面層の縦弾性係数、νはポアソン比、Δαは支持層と表面層との線膨張係数の差、ΔTは処理温度と使用温度との差である。また、このときの各パラメータの値は、E=171GPa、ΔT=1350−20=1330℃、ν=0.3である。なお、図3においてハッチングを付した破壊靱性値の範囲は、Y単体で樹脂成形型を構成した場合の破壊靱性値を示す。
得られた結果を示した図3によれば、図1に示された本体部8と表面層10との間の界面と表面層10の表面との距離を近づけるほど、言い換えれば圧縮残留応力が存在する表面層10の厚さを小さくするほど、破壊靱性値が増加しているという関係が見出される。この関係とY単体で樹脂成形型を構成した場合の破壊靱性値とを考慮すれば、低密着性材料として適当な表面層10の厚みは1.2mm以下であって小さいほうがよい。そして、表面層10の好ましい厚みは1.0mm以下であり、より好ましい厚みは0.25mm以下であると考えられる。また、表面層10の厚みの下限は、表面層10を構成する物質が単位格子を形成する程度(例えば、数nm程度)であればよい。
なお、ここまでの説明では、上型1を構成する部材のうちキャビティ4の内底面5を構成する直方体状のキャビティ部材6を、本実施例に係る低密着性材料によって構成した。これに代えて、樹脂流路3の内底面を構成する部材を、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。更に、樹脂成形型において、型面のうち流動性樹脂が接触する面のすべてを含む部分を(又はその面の大部分を)、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。例えば、図1におけるキャビティ4の内底面5と樹脂流路3の内底面とを含む部分を、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。要は、キャビティ部材6の本体部8が、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部に平面視して重なるようにして設けられ、表面層10が、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部を構成するようにして本体部8の表面に形成されていればよい。
本発明の実施例2に係る樹脂成形型と低密着性材料とについて、図4を参照して説明する。本実施例に係る低密着性材料は、直方体状の母材に対して表面(1つの面;図では下面)に凹部が設けられた本体部と、その表面に形成された表面層とからなる積層構造体である。図4は、本実施例に係る樹脂成形型を示す断面図である。
図4に示されている上型14が、本実施例に係る低密着性材料及び樹脂成形型に相当する。また、上型14は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されている。具体的には、上型14は、本体部15と、その本体部15の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面16の全面に形成された表面層17とによって構成されている。したがって、上型14における流動性樹脂が接触する型面のすべては表面層17によって構成されていることになる。
本体部15は、実施例1における本体部8と同じ材料によって、すなわち3YSZからなる第1の材料と導電性を有するZrNからなる第2の材料とによって構成されている。また、表面層17は、実施例1における表面層10と同じ材料によって、すなわちY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含む材料によって構成されている。本実施例においても、表面層17はYによって構成されていることとした。本実施例によれば、流動性樹脂が接触する型面18においてこの表面層10が存在することによって、図1に示された樹脂成形型及び低密着性材料の場合と同様の効果が得られる。
図2に示された樹脂成形型は、次のようにして得られる。まず、切削加工等によって直方体状の原材料を適当に加工して、樹脂流路3とキャビティ4とに相当する凹部を形成する。次に、凹部が形成された面である下面16に、周知の方法のうち適切な方法を使用して、層状(膜状)の表面層17を形成する。ここでいう周知の方法とは、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ゾルゲル法、溶射法等の各種コーティング、及び、シート状材料のホットプレス積層化等の方法である。また、これらの周知の方法においても、実施例1の場合と同様に、一定の高温下で表面層17が形成され、冷却後の表面層17においてある程度の大きさの圧縮残留応力が発生している。
なお、上述した各実施例においては、基板11に装着されたチップ12を樹脂封止する際に使用される樹脂成形型を例に挙げて説明した。これに限らず、一般的なトランスファ成形、射出成形、圧縮成形等のように、キャビティに流動性樹脂が充填された状態でその流動性樹脂を硬化させて成形体を成形する際に使用される樹脂成形型に対して、本発明を適用することができる。
また、本体部8,15を、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等によって構成してもよい。そして、上述した各実施例と同様に、本体部8,15と表面層10,17の熱膨張係数を適切に定めることによって、表面層10,17において圧縮残留応力を存在させることができる。
また、各実施例においては、それぞれ本発明に係る低密着性材料とこれを使用した樹脂成形型とについて説明した。これに限らず、低密着性材料を、樹脂成形型以外の用途に使用することができる。その用途とは、塩基性を有する物質に対する濡れ性が低いことに加えて、耐摩耗性と耐衝撃性とが要求される他の用途である。具体的には、本発明に係る低密着性材料を、部材等における流動性樹脂が接触する部分のコーティング等に使用することができる。
更に、本発明に係る低密着性材料は、樹脂以外の物質であって塩基性を有する物質に対する低密着性に加えて、耐摩耗性と耐衝撃性とが要求される用途に使用されることが可能である。例えば、このような低密着性材料を、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する材料として使用することができる。具体的にいえば、建物の外壁等に使用される建材、浴槽、衛生陶器やこれに類する機器等の材料として使用することが考えられる。また、これらの用途に使用される部材の表面をコーティングする材料として、本発明に係る低密着性材料を使用してもよい。
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
図1は、本発明の実施例1に係る樹脂成形型を示す断面図である。 図2は、本発明の実施例1に係る低密着性材料を製造する工程を示す流れ図である。 図3は、本発明の実施例1に係る低密着性材料における表面層の厚みとその低密着性材料の破壊靱性値との関係を示す説明図である。 図4は、本発明の実施例2に係る樹脂成形型を示す断面図である。
符号の説明
1 上型(樹脂成形型)
2 下型
3 樹脂流路
4 キャビティ
5 内底面
6 キャビティ部材(低密着性材料)
7 周辺部材
8,15 本体部
9,16 下面
10,17 表面層
11 基板
12 チップ
13 ワイヤ
14 上型(低密着性材料、樹脂成形型)
18 型面
本発明は、塩基性を有する物質に対して低い密着性を有する材料、すなわち低密着性材料と、その低密着性材料によって少なくとも型面の一部が構成された樹脂成形型と、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する防汚性材料とに関するものである。
従来、トランスファ成形法又は射出成形法により、樹脂成形用の金型にそれぞれ設けられた樹脂流路とキャビティとを使用して、樹脂流路を経由してキャビティに流動性樹脂を充填し、充填された流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成して、硬化樹脂を有する成形体を完成させている。そして、例えば、流動性樹脂としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されているとともに、金型材料として工具鋼等の鋼系材料や超硬合金(WC−Co系合金)等が使用されている。この場合には、容易に成形体を取り出すことができるように、硬化樹脂と金型の表面(型面)との間の密着性を低下させる、言い換えれば、硬化樹脂と型面との間の離型性を向上させることが好ましい。
ところで、本出願の発明者らは、空気中において安定な焼結体であるY(イットリア)がエポキシ樹脂に対する低密着性を有することを見出した。ここでいう低密着性とは、「従来の金型材料である鋼系材料や超硬合金等とエポキシ樹脂に代表される塩基性を有する物質との間の密着性に比較した場合に、低い密着性であること」を意味する。そして、本出願の発明者らにより、Y等の酸化物(塩基性酸化物)を使用して型面又は樹脂成形型を構成することが提案されている(特許文献1参照)。また、本出願の出願人らによる別の特許出願においては、樹脂成形型を構成する低密着性材料として、Y固溶体、イットリア複合酸化物(LaYO)、及び、Y固溶体とイットリア複合酸化物との混合物が示されている(特願2006−017335号)。これらの技術によれば、硬化樹脂に対する低密着性材料であるY等の塩基性酸化物、Y固溶体等が、型面を構成する樹脂成形型用材料に含まれる。したがって、優れた離型性を有する樹脂成形型が実現される。
しかしながら、上述した従来の技術、すなわちY等の塩基性酸化物、Y固溶体等(以下「塩基性酸化物等」という。)を含む樹脂成形型用材料を使用して型面又は樹脂成形型を構成する技術によれば、次の2つの問題がある。第1の問題は、樹脂成形型の耐摩耗性が不十分であるということである。特に問題になるのは、リードフレームやプリント基板等(以下「基板」という。)に装着されたLSIチップ等のチップ状の電子部品(以下「チップ」という。)を樹脂封止する場合である。この場合には、流動性樹脂として、セラミックスからなるフィラーを含有する熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)が使用される。このフィラーによって、樹脂成形型の型面を構成する塩基性酸化物等が摩耗する。第2の問題は、塩基性酸化物等は、外部から衝撃を受けるとチッピングが発生しやすいこと、言い換えれば耐衝撃性が低いということである。したがって、単に低密着性材料である塩基性酸化物等によって型面又は樹脂成形型を構成する技術によれば、優れた離型性を有する樹脂成形型は得られるが、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた樹脂成形型を得ることは困難であった。
特開2005−274478号公報(第8−9頁,図2)
本発明が解決しようとする課題は、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた低密着性材料を得ること、及び、優れた離型性に加えて優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを共に備えた樹脂成形型を得ることが困難であるという点である。
課題を解決するための手段を説明する前に、摩耗について説明する。ここでいう摩耗はエロージョン摩耗である。そして、文献(S.Srinivasan and R.O.Scattergood, R curve effects in solid particle erosion of ceramics, Wear, 142(1991) 115.)によれば、このエロージョン摩耗は、材料硬さ(H)、破壊靱性値(KIC)の増加に伴い低下するとされている(同文献のP.117,TABLE 1に記載された式を参照)。したがって、一般に、脆性材料において、硬質粒子に対する耐摩耗性を向上させるためには、破壊靭性値を増大させることが有効であるといえる。また、脆性材料において耐衝撃性を向上させるためにも、破壊靭性値を増大させることが有効である。これらのことに鑑み、本発明の発明者らは、次の手段を講じた。
上述の課題を解決することを目的として、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、塩基性を有する物質に対する低密着性を有する低密着性材料(6,14)であって、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備えるとともに、表面層(10,17)は塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在しており、表面層(10,17)はY を含み、本体部(8,15)は第1の材料と該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含む混合材料からなり、第1の材料はZrO を主成分とすることを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、塩基性を有する物質に対する低密着性を有する低密着性材料(6,14)であって、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備えるとともに、表面層(10,17)は塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在しており、表面層(10,17)はY 固溶体又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含み、本体部(8,15)は、第1の材料と該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含む混合材料、鋼系材料、又は超硬合金からなることを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、第1の材料はZrO を主成分とすることを特徴とする。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、上述の低密着性材料(6,14)において、混合材料は導電性を有することを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、キャビティ(4)に充填された流動性樹脂を硬化させることによって塩基性を有する物質からなる硬化樹脂を形成し該硬化樹脂を含む成形体を成形する際に使用される樹脂成形型(1,14)であって、樹脂成形型(1,14)において流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部に重なるようにして設けられた本体部(8,15)と、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部を構成するようにして本体部(8,15)の表面(9,16)に形成された表面層(10,17)とを備えるとともに、表面層(10,17)は硬化樹脂に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在しており、表面層(10,17)はY を含み、本体部(8,15)は第1の材料と該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含む混合材料からなり、第1の材料はZrO を主成分とすることを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、キャビティ(4)に充填された流動性樹脂を硬化させることによって塩基性を有する物質からなる硬化樹脂を形成し該硬化樹脂を含む成形体を成形する際に使用される樹脂成形型(1,14)であって、樹脂成形型(1,14)において流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部に重なるようにして設けられた本体部(8,15)と、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部を構成するようにして本体部(8,15)の表面(9,16)に形成された表面層(10,17)とを備えるとともに、表面層(10,17)は硬化樹脂に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在しており、表面層はY 固溶体又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含み、本体部は、第1の材料と該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含む混合材料、鋼系材料、又は超硬合金からなることを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、上述の樹脂成形型(1,14)において、第1の材料はZrO を主成分とすることを特徴とする。
また、本発明に係る樹脂成形型(1,14)は、上述の樹脂成形型(1,14)において、混合材料は導電性を有することを特徴とする。
また、本発明に係る防汚性材料は、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する防汚性材料であって、本体部と、本体部における表面の少なくとも一部に形成された表面層とを備えるとともに、表面層は塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部に表面層が形成され、本体部と表面層とが冷却されることによって表面層において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在しており、表面層はY を含み、本体部は第1の材料と該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含む混合材料からなり、第1の材料はZrO を主成分とすることを特徴とする。
また、本発明に係る防汚性材料は、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する防汚性材料であって、本体部と、本体部における表面の少なくとも一部に形成された表面層とを備えるとともに、表面層は塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、高温下において本体部に表面層が形成され、本体部と表面層とが冷却されることによって表面層において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在しており、表面層はY 固溶体又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含み、本体部は、第1の材料と該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含む混合材料、鋼系材料、又は超硬合金からなることを特徴とする。
また、本発明に係る防汚性材料は、上述の防汚性材料において、第1の材料はZrO を主成分とすることを特徴とする。
また、本発明に係る防汚性材料は、上述の防汚性材料において、混合材料は導電性を有することを特徴とする。
本発明に係る低密着性材料(6,14)は、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備える。また、その表面層(10,17)は、塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料によって構成される。また、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差に起因して表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層(10,17)に存在している。そして、表面層(10,17)における圧縮残留応力の存在によって表面層(10,17)における破壊靭性値が増大すると考えられる。したがって、表面層(10,17)における破壊靭性値が増大することにより、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、塩基性を有する物質に対する低密着性を各々有するY、Y固溶体、又は、イットリア複合酸化物の少なくともいずれかが、上述した低密着性材料(6,14)の表面層(10,17)に含まれる。したがって、Y等を含み、塩基性を有する物質に対する優れた低密着性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、本体部(8,15)に、ZrO系材料からなる第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とが含まれる。そして、第1の材料と第2の材料との比率を変えることにより、本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差を変えることができる。したがって、本体部(8,15)と表面層(10,17)との界面剥離が発生せず、かつ、表面層(10,17)における破壊靭性値が増大するように、本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差が最適に定められた低密着性材料(6,14)が得られる。加えて、この低密着性材料(6,14)によって少なくとも型面の一部が構成されることにより、優れた離型性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する樹脂成形型(1,14)が得られる。
また、本発明によれば、本体部(8,15)は導電性を有するので、本体部(8,15)自体が発熱することによって、樹脂成形型(1,14)におけるキャビティ(4)の内底面(5)及び型面(18)を効率よく加熱することができる。これにより、樹脂成形型(1,14)を加熱する際の省エネルギー化が可能になる。ここで、本体部(8,15)自体を発熱させるには、本体部(8,15)に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部(8,15)を自己発熱させればよい。加えて、本体部(8,15)の導電性を利用して、本体部(8,15)に対して放電加工による精密加工を行うことができる。
また、本発明に係る低密着性材料(6,14)は、本体部(8,15)と、本体部(8,15)における表面(9,16)の少なくとも一部に形成された表面層(10,17)とを備える。また、その表面層(10,17)は、塩基性を有する物質に対する低密着性と本体部(8,15)よりも小さな熱膨張係数とを有する材料によって構成される。また、高温下において本体部(8,15)に表面層(10,17)が形成され、本体部(8,15)と表面層(10,17)とが冷却されることによって本体部(8,15)と表面層(10,17)との熱膨張係数の差に起因して表面層(10,17)において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層(10,17)に存在している。そして、表面層(10,17)における圧縮残留応力の存在によって表面層(10,17)における破壊靭性値が増大すると考えられる。したがって、表面層(10,17)における破壊靭性値が増大することにより、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料(6,14)が得られる。そして、上述した低密着性材料(6,14)は、防汚性材料として使用されることが可能である。
上型(1)は、型面のうちキャビティ(4)の内底面(5)を構成する直方体状のキャビティ部材(6)と、キャビティ部材(6)以外の部分を構成する周辺部材(7)とを有する。このキャビティ部材(6)は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されており、具体的には、本体部(8)と、その本体部(8)の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面(9)に形成された表面層(10)とによって構成されている。本体部(8)は、3YSZ(3mol%Y,97mol%ZrO)からなる第1の材料と、導電性を有するZrNからなる第2の材料とから所定の比率で構成され、熱膨張係数は10.5×10−6/°Cである。表面層(10)は、硬化樹脂に対する低密着性を有するYから構成され、その熱膨張係数は本体部(8)よりも小さい8.4×10−6/°Cである。そして、本体部(8)と表面層(10)とが高温下で接合された後に冷却されることによって、本体部(8)と表面層(10)との熱膨張係数の差に起因して表面層(10)において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層(10)に存在している。
本発明の実施例1に係る樹脂成形型と低密着性材料とを、図1−図3を参照して説明する。この低密着性材料は、直方体状の本体部とその本体部における1つの表面に形成された表面層とからなる積層構造体である。図1は、本実施例に係る樹脂成形型を示す断面図である。図2は、本実施例に係る低密着性材料を製造する工程を示す流れ図である。図3は、本実施例に係る低密着性材料における表面層の厚みとその低密着性材料の破壊靱性値との関係を示す説明図である。以下に示されるいずれの図についても、わかりやすくするために誇張して描かれている。
また、以下の説明においては、樹脂成形の例としてトランスファ成形を示すとともに、基板に装着されたチップを樹脂封止する場合を説明する。この樹脂封止では、ワイヤによって配線されたチップをキャビティに収容し、型締めした状態でキャビティに流動性樹脂を充填し、流動性樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成して、基板と硬化樹脂とを有する成形体(パッケージ)を完成させる。
図1に示されている上型1と下型2とは、併せて樹脂封止型を構成する。また、上型1が、本実施例に係る樹脂成形型に相当する。上型1には、流動性樹脂(図示なし)が流動する樹脂流路3と、樹脂流路3に連通され流動性樹脂が充填されるキャビティ4とが、それぞれ凹部状に設けられている。また、上型1は、型面のうちキャビティ4の内底面5を構成する直方体状のキャビティ部材6と、キャビティ部材6以外の部分を構成する周辺部材7とを有する。このキャビティ部材6は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されており、具体的には、本体部8と、その本体部8の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面9に形成された表面層10とによって構成されている。したがって、樹脂成形型における流動性樹脂が接触する型面のうちキャビティ4の内底面5においては、表面層10が露出していることになる。なお、本体部8と表面層10とを構成する材料については後述する。
下型2は、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等によって構成されている。下型2の型面の上には基板11が載置されている。基板11の上にはチップ12が装着され、基板11とチップ12との電極(いずれも図示なし)同士がワイヤ13によって電気的に接続されている。なお、下型2を、一定の機械的特性を有するセラミックス系材料によって構成してもよい。
さて、本実施例に係る低密着性材料からなるキャビティ部材6の本体部8と表面層10とをそれぞれ構成する材料について説明する。まず、本体部8は、第1の材料とその第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含んでいる。本実施例では、本体部8は、YSZ(Y含有安定化ZrO)系材料である3YSZ(3mol%Y,97mol%ZrO)からなる第1の材料と、導電性を有するZrNからなる第2の材料とから構成されることにした。そして、第1の材料と第2の材料との比率を、75vol%:25vol%とした。ここで、3YSZの熱膨張係数は11.4×10−6/°C、ZrNの熱膨張係数は 7.8×10−6/°Cである。そして、上述した比率で3YSZとZrNとから構成される材料(本体部8を構成する材料)の熱膨張係数は10.5×10−6/°Cである。なお、第1の材料は、ZrOを主成分としてYやCeO等を含むZrO系材料であればよい。また、第2の材料としては、第1の材料よりも小さい適当な熱膨張係数を有する材料を使用すればよく、例えば、導電性を有するZrB等や非導電性材料を使用することができる。
キャビティ部材6において、本体部8をこれらのように構成した目的は、次の3つである。第1に、樹脂成形型として必要な一定の機械的特性をキャビティ部材6に持たせることである。ここでいう機械的特性とは、例えば、破壊強度、破壊靱性、耐衝撃性等を意味する。第2に、本体部8と表面層10とを構成する材料同士の熱膨張係数の差を小さくするとともに、本体部8の熱膨張係数を表面層10の熱膨張係数よりも大きくすることである。第3に、本体部8に導電性を持たせることである。
また、キャビティ部材6においては、表面層10は、Y、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物のうちの少なくともいずれかを含んでいる。このことにより、表面層10は、硬化樹脂に対する低密着性を有する。本実施例では、表面層10はYから構成されることとした。そして、高温プロセス、すなわち高温下で処理されるプロセスによって、表面層10は、本体部8の表面(図では下面9)に接合するようにして形成されている。ここで、Yの熱膨張係数は8.4×10−6/°Cであって、本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)よりも小さい。また、高温プロセスにおける処理温度は、上述した本体部8と表面層10とが接合後に冷却されることにより、それらの熱膨張係数の差に基づいて表面層10にある程度の大きさの圧縮残留応力が発生する程度の温度である。
上述したキャビティ部材6を有する上型1は、次の4つの特徴を有している。第1に、導電性と一定の機械的強度とを有する本体部8の表面に高温下で接合された表面層10を有し、その表面層10の熱膨張係数(8.4×10−6/°C)は本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)よりも小さいことである。そして、本体部8と表面層10とが高温下で接合された後に冷却されることによって、本体部8と表面層10との熱膨張係数の差に起因して表面層10において圧縮残留応力が発生し、その圧縮残留応力が表面層10に存在している。この圧縮残留応力が表面層10に存在することによって表面層10における破壊靭性値が増大すると考えられる。したがって、優れた耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料によって構成された樹脂成形型が得られる。
第2に、表面層10は、硬化樹脂に対する低密着性を有する材料であるYから構成されていることである。これにより、優れた離型性を有する低密着性材料によって構成された樹脂成形型が得られる。
第3に、本体部8が、それぞれ熱膨張係数が11.4×10−6/°Cである3YSZ(第1の材料)と、 7.8×10−6/°CであるZrN(第2の材料)とから構成されており、これらの材料が一定の比率になっていることである。これにより、本体部8の熱膨張係数(10.5×10−6/°C)は、表面層10の熱膨張係数(8.4×10−6/°C)に対して、これよりも大きくかつこれに近い適当な値になっている。本体部8と表面層10との熱膨張係数のこのような組合せによって、本体部8と表面層10とを高温下で接合する際に界面剥離が発生することが防止される。したがって、本体部8と表面層10との間において界面剥離が発生しない低密着性材料と、その低密着性材料から構成された樹脂成形型とが得られる。
第4に、本体部8が、導電性を有することである。これにより、本体部8に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部8を自己発熱させることができる。したがって、本体部8自体が発熱することによって、樹脂成形型1におけるキャビティ4の内底面5を効率よく加熱することができる。これにより、樹脂成形型1を加熱する際の省エネルギー化が可能になる。また、本体部8の導電性を利用して、必要に応じて本体部8に対して放電加工による精密加工を行うことができる。
図1に示された樹脂成形型の動作を説明する。まず、下型2の上に位置決めして基板11を配置し、吸着等の方法によって基板11を固定する。次に、上型1を下降させて下型2との型締めを完了させる。次に、プランジャ(図示なし)を使用して熱硬化性樹脂からなり一定の粘性を有する流動性樹脂(図示なし)を押圧することにより、樹脂流路3を経由してキャビティ4に流動性樹脂を充填する。次に、上型1と下型2とに設けられたヒータ(図示なし)を使用して、流動性樹脂を加熱しこれを硬化させることによって、硬化樹脂を形成する。この工程では、導電性を有する本体部8に電流を供給し、又は、電磁誘導による誘導電流を発生させて、本体部8を自己発熱させてもよい。次に、上型1を上昇させて型開きを行い、硬化樹脂によって基板11とチップ12とワイヤ13とが一体的に封止された成形体を取り出す。この工程で、硬化樹脂に対する低密着性を有する材料であるYから構成されている表面層10に対して、硬化樹脂が容易に離型する。
以上説明したように、本実施例によれば、優れた低密着性と耐摩耗性と耐衝撃性とを有する低密着性材料が得られる。また、その低密着性材料によって構成され優れた離型性を有する樹脂成形型が得られる。
本実施例に係る低密着性材料と樹脂成形型とは、次のような方法によって製造される。まず、図2に示すように、工程S1において、本体部8の材料である3YSZとZrNとの粉末を所定の比率で調合する。次に、工程S2において、調合された粉末に対してボールミル混合を行う。次に、工程S3において、ボールミル混合された材料を乾燥させてふるいにかける。次に、工程S4において、仮成形を行って直方体状の部材(図1の本体部8に相当)を完成させる。
また、上述した直方体状の部材の製作とは別に、まず、図2に示すように、工程S5において、表面層10の材料であるYの粉末を、必要な量だけ準備する。次に、工程S6において、Yの粉末を仮成形して、薄板状の部材を製作する。
次に、それぞれ仮成形された直方体状の部材とYからなる薄板状の部材とをホットプレスによって積層化して、積層構造体を形成する。この場合における処理条件は、例えば、N雰囲気中において処理温度が1350℃、処理時間が1時間、プレス圧力が48kNである。その後に、形成された積層構造体を処理温度から室温まで冷却する。この冷却は、積層構造体を室温又は室温以下の雰囲気に放置することにより行ってもよく、送風等の手段を使用して強制的に行ってもよい。ここまでの工程により、本体部と表面層とからなる積層構造体、すなわち本実施例に係る低密着性材料(図1における本体部8と表面層10とからなるキャビティ部材6に相当)が完成する。なお、完成した低密着性材料においては、1350℃という高温下で処理されるプロセスにより、本体部8に含まれる3YSZに対して表面層10に含まれるYが固相拡散している。これにより、本体部8に表面層10が接合される。
次に、図1に示すように、製作された低密着性材料からなるキャビティ部材6を、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等からなる周辺部材7に取り付ける。これにより、本実施例に係る樹脂成形型である上型1が完成する。
以下、本実施例に係る低密着性材料において、Yから構成される表面層10の厚みと、その低密着性材料の破壊靱性値との関係を、図3を参照して説明する。この関係を評価するために、表面層の厚みが異なる3つの試料(n=5)を製作し、JIS IF法(JIS R 1607)によって各試料の破壊靱性値を測定した(押込加重=1kgf≒9.8N)。その結果、表面層の厚みが1.4mmである試料について0.9MPa・m1/2、0.9mmである試料について1.7MPa・m1/2、及び、0.25mmである試料について2.3MPa・m1/2の破壊弾性値が得られた。得られた結果を図3に示す。なお、支持層8−表面層10の界面における表面層側の残留圧縮応力の値は、算出式によって682MPa程度であると算出された。ここで、残留圧縮応力σの算出式は、式σ=EΔα・ΔT/(1−ν)で表される。式中の記号Eは表面層の縦弾性係数、νはポアソン比、Δαは支持層と表面層との線膨張係数の差、ΔTは処理温度と使用温度との差である。また、このときの各パラメータの値は、E=171GPa、ΔT=1350−20=1330℃、ν=0.3である。なお、図3においてハッチングを付した破壊靱性値の範囲は、Y単体で樹脂成形型を構成した場合の破壊靱性値を示す。
得られた結果を示した図3によれば、図1に示された本体部8と表面層10との間の界面と表面層10の表面との距離を近づけるほど、言い換えれば圧縮残留応力が存在する表面層10の厚さを小さくするほど、破壊靱性値が増加しているという関係が見出される。この関係とY単体で樹脂成形型を構成した場合の破壊靱性値とを考慮すれば、低密着性材料として適当な表面層10の厚みは1.2mm以下であって小さいほうがよい。そして、表面層10の好ましい厚みは1.0mm以下であり、より好ましい厚みは0.25mm以下であると考えられる。また、表面層10の厚みの下限は、表面層10を構成する物質が単位格子を形成する程度(例えば、数nm程度)であればよい。
なお、ここまでの説明では、上型1を構成する部材のうちキャビティ4の内底面5を構成する直方体状のキャビティ部材6を、本実施例に係る低密着性材料によって構成した。これに代えて、樹脂流路3の内底面を構成する部材を、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。更に、樹脂成形型において、型面のうち流動性樹脂が接触する面のすべてを含む部分を(又はその面の大部分を)、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。例えば、図1におけるキャビティ4の内底面5と樹脂流路3の内底面とを含む部分を、本実施例に係る低密着性材料によって構成してもよい。要は、キャビティ部材6の本体部8が、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部に平面視して重なるようにして設けられ、表面層10が、流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部を構成するようにして本体部8の表面に形成されていればよい。
本発明の実施例2に係る樹脂成形型と低密着性材料とについて、図4を参照して説明する。本実施例に係る低密着性材料は、直方体状の母材に対して表面(1つの面;図では下面)に凹部が設けられた本体部と、その表面に形成された表面層とからなる積層構造体である。図4は、本実施例に係る樹脂成形型を示す断面図である。
図4に示されている上型14が、本実施例に係る低密着性材料及び樹脂成形型に相当する。また、上型14は、本実施例に係る低密着性材料によって構成されている。具体的には、上型14は、本体部15と、その本体部15の表面のうち流動性樹脂が接触する側の面である下面16の全面に形成された表面層17とによって構成されている。したがって、上型14における流動性樹脂が接触する型面のすべては表面層17によって構成されていることになる。
本体部15は、実施例1における本体部8と同じ材料によって、すなわち3YSZからなる第1の材料と導電性を有するZrNからなる第2の材料とによって構成されている。また、表面層17は、実施例1における表面層10と同じ材料によって、すなわちY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含む材料によって構成されている。本実施例においても、表面層17はYによって構成されていることとした。本実施例によれば、流動性樹脂が接触する型面18においてこの表面層10が存在することによって、図1に示された樹脂成形型及び低密着性材料の場合と同様の効果が得られる。
図2に示された樹脂成形型は、次のようにして得られる。まず、切削加工等によって直方体状の原材料を適当に加工して、樹脂流路3とキャビティ4とに相当する凹部を形成する。次に、凹部が形成された面である下面16に、周知の方法のうち適切な方法を使用して、層状(膜状)の表面層17を形成する。ここでいう周知の方法とは、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ゾルゲル法、溶射法等の各種コーティング、及び、シート状材料のホットプレス積層化等の方法である。また、これらの周知の方法においても、実施例1の場合と同様に、一定の高温下で表面層17が形成され、冷却後の表面層17においてある程度の大きさの圧縮残留応力が発生している。
なお、上述した各実施例においては、基板11に装着されたチップ12を樹脂封止する際に使用される樹脂成形型を例に挙げて説明した。これに限らず、一般的なトランスファ成形、射出成形、圧縮成形等のように、キャビティに流動性樹脂が充填された状態でその流動性樹脂を硬化させて成形体を成形する際に使用される樹脂成形型に対して、本発明を適用することができる。
また、本体部8,15を、通常の樹脂成形型用材料、例えば、工具鋼等の鋼系材料や超硬合金等によって構成してもよい。そして、上述した各実施例と同様に、本体部8,15と表面層10,17の熱膨張係数を適切に定めることによって、表面層10,17において圧縮残留応力を存在させることができる。
また、各実施例においては、それぞれ本発明に係る低密着性材料とこれを使用した樹脂成形型とについて説明した。これに限らず、低密着性材料を、樹脂成形型以外の用途に使用することができる。その用途とは、塩基性を有する物質に対する濡れ性が低いことに加えて、耐摩耗性と耐衝撃性とが要求される他の用途である。具体的には、本発明に係る低密着性材料を、部材等における流動性樹脂が接触する部分のコーティング等に使用することができる。
更に、本発明に係る低密着性材料は、樹脂以外の物質であって塩基性を有する物質に対する低密着性に加えて、耐摩耗性と耐衝撃性とが要求される用途に使用されることが可能である。例えば、このような低密着性材料を、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する材料として使用することができる。具体的にいえば、建物の外壁等に使用される建材、浴槽、衛生陶器やこれに類する機器等の材料として使用することが考えられる。また、これらの用途に使用される部材の表面をコーティングする材料として、本発明に係る低密着性材料を使用してもよい。
また、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
図1は、本発明の実施例1に係る樹脂成形型を示す断面図である。 図2は、本発明の実施例1に係る低密着性材料を製造する工程を示す流れ図である。 図3は、本発明の実施例1に係る低密着性材料における表面層の厚みとその低密着性材料の破壊靱性値との関係を示す説明図である。 図4は、本発明の実施例2に係る樹脂成形型を示す断面図である。
符号の説明
1 上型(樹脂成形型)
2 下型
3 樹脂流路
4 キャビティ
5 内底面
6 キャビティ部材(低密着性材料)
7 周辺部材
8,15 本体部
9,16 下面
10,17 表面層
11 基板
12 チップ
13 ワイヤ
14 上型(低密着性材料、樹脂成形型)
18 型面

Claims (8)

  1. 塩基性を有する物質に対する低密着性を有する低密着性材料であって、
    本体部と、
    前記本体部における表面の少なくとも一部に形成された表面層とを備えるとともに、
    前記表面層は前記塩基性を有する物質に対する低密着性と前記本体部よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、
    高温下において前記本体部に前記表面層が形成され、前記本体部と前記表面層とが冷却されることによって前記表面層において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在していることを特徴とする低密着性材料。
  2. 請求項1に記載の低密着性材料において、
    前記表面層はY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする低密着性材料。
  3. 請求項2に記載の低密着性材料において、
    前記本体部は、ZrOを主成分とする第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含むことを特徴とする低密着性材料。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の低密着性材料において、
    前記本体部は導電性を有することを特徴とする低密着性材料。
  5. キャビティに充填された流動性樹脂を硬化させることによって塩基性を有する物質からなる硬化樹脂を形成し該硬化樹脂を含む成形体を成形する際に使用される樹脂成形型であって、
    前記樹脂成形型において前記流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部に重なるようにして設けられた本体部と、
    前記流動性樹脂が接触する型面の少なくとも一部を構成するようにして前記本体部の表面に形成された表面層とを備えるとともに、
    前記表面層は前記硬化樹脂に対する低密着性と前記本体部よりも小さな熱膨張係数とを有する材料からなり、
    高温下において前記本体部に前記表面層が形成され、前記本体部と前記表面層とが冷却されることによって前記表面層において圧縮残留応力が発生し、該圧縮残留応力が存在していることを特徴とする樹脂成形型。
  6. 請求項5に記載の樹脂成形型において、
    前記表面層はY、Y固溶体、又はイットリア複合酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする樹脂成形型。
  7. 請求項6に記載の樹脂成形型において、
    前記本体部は、ZrOを主成分とする第1の材料と、該第1の材料よりも小さな熱膨張係数を有する第2の材料とを含むことを特徴とする樹脂成形型。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の樹脂成形型において、
    前記本体部は導電性を有することを特徴とする樹脂成形型。
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