JP2007273965A - 固体電解コンデンサ用陽極素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄型の固体電解コンデンサ用焼結体素子を歩留りよく安定的に製造する。スラリー作製で使用するバインダーの使用量を低減し、焼結体中の残留炭素量を少なくする。
【解決手段】弁作用金属粉末が球状に凝集した二次粒子〔図1中の(b)〕をバインダーなどと混合してスラリーとする。そのスラリーによりシート状成形体を作製し、乾燥、脱脂後に焼結する。脱脂では、減圧下のアルゴン雰囲気中で低速昇温加熱を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、タンタル、ニオブなどの弁作用金属の粉末焼結体からなる固体電解コンデンサ用陽極素子及びその製造方法に関する。
コンデンサの一つとして固体電解コンデンサがある。固体電解コンデンサとは、陽極酸化により表面に耐食性及び電気絶縁性の高い不働体酸化膜が形成される弁作用金属を陽極とすると共に、その不働体酸化膜を誘電体とし、更に不働体酸化膜の上に陰極材料を成膜してなる固体コンデンサであり、弁作用金属としてはアルミニウム、タンタル、ニオブ、ジルコニウムなどがあり、アルミニウム固体電解コンデンサ及びタンタル固体電解コンデンサなどが実用化されている。
これらの固体電解コンデンサのなかでもタンタル固体電解コンデンサは、タンタル粉末の多孔質焼結体を陽極素子としており、陽極酸化によりその多孔質焼結体の表面に制御可能な膜厚の酸化物を形成することができる。そして、その多孔質焼結体の優れた機械的性質、広大な表面積のため、更にはタンタル焼結体に特有の高い耐熱性、誘電体被膜形成性のため、タンタル固体電解コンデンサは小型で高周波特性に優れ、携帯電話を始めとする小型デジタル機器向けとして近年特に大きな注目を集めている。
ところで、近時、固体電解コンデンサの分野でも小型化、薄型化が求められており、これに伴って、タンタル固体電解コンデンサに使用される陽極素子の小型化、薄型化の研究が進められている。しかしながら、タンタル固体電解コンデンサに使用される陽極素子は、粉末焼結体であるために薄型化が難しく、0.5mm以下のものは製造が困難とされていた。
すなわち、タンタル固体電解コンデンサに使用される陽極素子は、これまではタンタル金属の微粒子粉末を金型によりプレス成形し、真空中で高温焼結する乾式法により製造されていた。この方法によると、立方体のような厚い陽極素子は問題なく製造できる。しかし厚みが0.5mm以下というようなシート状のものは、金型によるプレス成形による制約のため(粉末圧縮ではハンドリングが可能な機械的強度を有するシートは成形できないため)製造不可能である。このような状況下で開発されたのが、特許文献1及び2に記載されるような湿式法である。
国際公開第2004/003948号明細書 特開2005−097643号公報
特許文献1及び2に記載されたような湿式法では、まずタンタル金属の微粉末を溶剤及び溶剤可溶性バインダーなどと混合してスラリー化する。次いで、そのスラリーをシート状基材の上に剥離可能に且つシート状に形成する。乾燥後(溶剤除去後)にシート状成形体からシート状基材を分離し、そのシート状成形体を真空中での数百℃程度の比較的低温の加熱により脱脂する。乾燥後(脱脂前)の粉末成形体は、タンタル金属の微粉末がバインダーによりシート状に結合された状態であり、脱脂によりそのバインダーを除去される。最後に、脱脂後のシート状成形体を1500℃程度の高温で焼結する。
スラリーを経由する湿式法の採用により、0.5mm以下の厚みの薄型素子の製造の可能性が開けた。また、薄型で且つ大面積の素子の製造の可能性も開けた。更に、多数の素子を1枚の大面積シートに作製するというような大量生産の可能性も開け、製造歩留りの飛躍的な向上も期待されている。しかしながら、工業的規模で実際に湿式法を行おうとすると、次のような障害も回避できないのである。
スラリーをシート状基材の上に塗布し、乾燥させるまでの工程には問題はない。しかし、乾燥後のシート状成形体からシート状基材を分離する工程で第1の問題が発生する。具体的には、乾燥後のシート状成形体は、前述したとおり粉末がバインダーによりシート状に結合された状態にあり、厚みが薄いと機械的強度の確保が本質的に難しい。これに加え、製品である固体電解コンデンサの特性を確保するためには、バインダー量を抑制して残留炭素量等を低く抑える必要がある。つまり、シート状成形体を製造する過程でバインダーを多く使用することができないのである。この制限も乾燥後のシート状成形体の機械的強度の確保を困難にしている。これらの困難のために、厚さが0.5mm以下の場合、シート状成形体とシート状基材を分離する過程で、その極薄のシート状成形体がしばしば破損し、その破損により製造歩留りが十分なレベルまで上がらないという第1の問題が生じる。
第2の問題は、基材から分離した後のシート状成形体の脱脂工程でバインダーが抜けにくいことである。バインダーの残留がコンデンサ特性の低下の原因になることは前述したとおりである。このために、脱脂工程ではバインダーを十分に除去することが必要となるが、従来の湿式法ではバインダーの抜けが良くない。このため、バインダー量を制限しているにもかかわらず、脱脂に時間がかかり、脱脂後の残留炭素量も期待するほどには低下しないのが現状である。
本発明はかかる事情を考慮して創案されたものであり、乾燥後のシート状成形体の段階で高い機械的強度を確保することにより、高い製造歩留りを確保できると共に、バインダーの使用量低減によりコンデンサ特性を改善できる、生産性が高く性能も高い固体電解コンデンサ用陽極素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の別の目的は、脱脂処理でのバインダーの除去効率を高め、脱脂時間の短縮により高い生産性を確保すると共に、残留炭素量の低減によりコンデンサ特性を改善することができる固体電解コンデンサ用陽極素子の製造方法を提供することにある。
タンタル固体電解コンデンサ用陽極素子のごとき多孔質焼結体型素子の薄型化を推進するためには、スラリーを経由する湿式法の採用は不可欠である。ここで問題になる乾燥後のシート状成形体の機械的強度低下を、バインダーの増量に依存せずに回避する方法について、本発明者は多方面からアプローチを試み、思考錯誤を繰り返した。その結果、製造原料であるタンタル金属微粉末の二次粒子の形状が、更にはその二次粒子の大きさが、乾燥後のシート状成形体の機械的強度に大きな影響を与えていることが判明した。
タンタル固体電解コンデンサ用陽極素子の製造原料であるタンタル金属の一次粒子の粒径は例えば約1μmと非常に小さい。このような一次粒子は非常に飛散しやすく、工業的規模で取り扱うことは困難であり、同時に、一次粒子のままで安定に存在することも困難である。このため、タンタル金属の粉末は、一次粒子がある程度の粒径をもつ二次粒子に凝集した状態で取り扱われるのが通例であり、特許文献2に記載された湿式法でも、スラリー化工程ではタンタル金属粉末がこの二次粒子の形態で取り扱われることが説明されている。ただし、特許文献2に記載の湿式法では、一次粒子が凝集により二次粒子になって粒径が大きくなることが、スラリーの塗布性悪化の原因になることから忌避されており、このために二次粒子を細かく解砕して使用している。
これに対し、本発明者はこれまでの種々の粉末焼結体についての多くの研究成果から、むしろ二次粒子がある程度の大きさをもつことが乾燥後のシート状成形体の機械的強度やバインダーの抜け性に好影響を与えると考え、様々な試行を重ねた。その結果、以下のような極めて興味深い事実が判明した。
一次粒子の凝集体であるこの二次粒子の形状は一定でなく、様々な形状を呈している。前述した解砕粉など一般的なものは外表面が角張った不定形であるが、一部には外表面が滑らかな球状のものもある。本発明者はこの球状二次粒子、特にある程度の大きさをもつ球状二次粒子の優れた流動性、これによる優れた充填性及びバインダーによる結合性、更には二次粒子に囲まれた空間の形状がシンプルであり、バインダーが二次粒子内部に均一に侵入しなくともシート状成形体の成形が可能な事実等に着目し、スラリー原料として優れた適性を示し得るとの判断のもとに、多くの比較試験を繰り返した。その結果、タンタル金属粉末の球状二次粒子を用いたスラリーを出発点として、厚みが0.5mm以下の薄型素子を製造したところ、スラリーを乾燥して得た極薄のシート状成形体の機械的強度が飛躍的に向上し、シート状基材との分離でのシート状成形体の破損が効果的に防止されること、脱脂工程でのバインダーの抜け性がよいことなどが確認された。
本発明はかかる知見を基礎として完成されものであり、その固体電解コンデンサ用陽極素子は、弁作用金属粉末が球状に凝集した球状二次粒子が、0.5mm以下の厚みのシート状に焼結されていることを特徴とする。
また、本発明の固体電解コンデンサ用陽極素子の製造方法は、弁作用金属粉末が球状に凝集した球状二次粒子をバインダーと混合してスラリーとするスラリー化工程と、前記スラリーを焼結後の厚みで0.5mm以下となるシート状の成形体に加工する成形工程と、そのシート状成形体を乾燥する乾燥工程と、乾燥して得られたシート状成形体を加熱して成形体中のバインダーを除去する脱脂工程と、バインダーを除去して得られたシート状成形体を焼結する焼結工程とを含むことを特徴とする。
本発明における球状二次粒子とは、弁作用金属粉末の一次粒子が球状に凝集したものである。本発明でいう球状とは、完全な球体に限るものではなく、重心点から外表面各点までの距離のばらつきが少ない(凹凸が少ない)滑らかな外表面形状をいう。二次粒子の形状(球状)に次いで重要な因子は粒径であり、この粒径は平均粒子径で10〜150μmの範囲内、より好ましくは20〜60μmの範囲内で、且つ焼結後の粉末シート厚の1/5以下が望ましい。
平均粒子径については、絶対値が小さすぎると取り扱いの際に飛散しやすくなるだけでなく、乾燥後のシート状成形体が安定して得られない。乾燥後のシート状成形体が安定して得られない理由は、10μmより小さい二次粒子はスラリー中で凝集しやすいため、二次粒子が均一に分散したシート状成形体が安定して得られないことにある。反対に平均粒子径が大きすぎる場合は、球状二次粒子同士の接合箇所が十分に確保されないために、厚さ0.5mm以下のシート状成形体が安定して得られない。また焼結後の粉末シート厚に比して大きすぎる場合も、球状二次粒子同士の接合箇所が十分に確保されないためにシート状成形体が安定して得られない。
この球状二次粒子は又は、次のa,bの少なくとも一つを満足するものが好ましい。
a)粒度分布における平均粒径の頻度が15%以上であり、より好ましくは25%以上である。
b)最大径と最小径の比が2以下、より好ましくは1.3以下である。
平均粒子径の分布については流動性及び充填性の点から、その粒子径が揃っているほど好ましく、この観点から粒度分布における平均粒径の頻度は15%以上が好ましく、25%以上が特に好ましい。球状二次粒子の形状については、表面の滑らかさの他に真球度(楕円度が顕著でないこと)も重要である。なぜなら真球度が高いほど流動性に優れ、充填性も改善されるからである。この観点から、最大径と最小径の比は平均で2以下が好ましく、1.3以下が特に好ましい。なお、ここで言う充填性がよいという意味は、充填密度が高ければよいというものではなく、シート状成形体全体において二次粒子同士の接合箇所が均一に分布しているということであり、効率よくバインダーを除去できる適度な空間を形成する充填形態を表しているのである。
球状二次粒子を構成する一次粒子、すなわち原料金属粉末の材質は弁作用金属であり、具体的にはタンタル、ニオブ、ジルコニウムなどであり、耐熱性、誘電体被膜形成性等の点からタンタルが好ましい。一次粒子の平均径は0.01〜5μmが好ましく、0.01〜2μmが特に好ましい。
球状二次粒子は溶剤及び溶剤可溶性バインダーなどとの混合によりスラリーとされる(スラリー化工程)。バインダー樹脂としては、特に種類を問うものではなく、一般に使用されているものを使用すればよく、例えばポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニルエマルジョン、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などをあげることができる。
バインダー樹脂の配合量としては、配合量が多くなると脱脂、焼結後の残留炭素量が多くなるために、コンデンサ特性を低下させる原因になる。一方、少なすぎると乾燥後のシート状粉末成形体の機械的強度の確保が困難となる。このため、乾燥後のシート状成形体の機械的強度を確保できる範囲内でできるだけ少ないのがよく、具体的には原料金属粉末100重量部あたり0.01〜30重量部の範囲内が好ましく、0.01〜15重量部の範囲内が好ましい。
本発明では、球状二次粒子の使用により、シート状成形体全体において球状二次粒子同士の接合箇所が均一に分布するため、乾燥後のシート状成形体の機械的強度が向上し、バインダーの使用量を低減することができる。また、その少量のバインダーを脱脂工程で効率的に除去することができる。また、機械的強度確保のためにバインダーの使用量を多くしても、そのバインダーを脱脂工程で効率的に除去することができ、製品への悪影響を可及的に小さく抑えることができる。バインダーの使用量を多くすれば、乾燥後のシート状成形体の機械的強度が更に向上し、そのハンドリングが容易となる。
溶剤についても特に種類を問うものではなく、一般に使用されているものを一般的な配合比で使用すればよく、例えば水、各種アルコール類、各種ケトン類など広く使用することができる。溶剤も溶剤可溶性バインダーも、単独で使用する必要はなく、2種類以上を混合して使用することができる。
二次粒子に溶剤及びバインダーを混合するには周知の混合機を使用すればよく、特にその種類を問わない。二次粒子が球状であると、溶剤及びバインダーとの混合がスムーズであり、バインダーが二次粒子内部に均一に侵入しなくとも、シート状成形体が得られるために、混合時間を短縮できる効果もある。
こうして調合されたスラリーは、焼結後の厚みで0.5mm以下となるシート状の粉末成形体に加工される(成形工程)。好ましくは、シート状基材の上にシート状に且つ分離可能に付着される。これにより、スラリーからなるシート状成形体が基材上に形成される。乾燥工程にてスラリー中の溶剤を除去した後、シート状成形体と基体とを分離する。この分離と前後して、シート状成形体を陽極素子形状に切断し、必要に応じてリード線を組み合わせる。
こうして素子形状をしたシート状成形体が作製される。この粉末成形体は、球状二次粒子がバインダーのみで結合してシート状になったものであり、厚みが薄いために機械的強度の確保が本質的に困難であり、粉末圧縮ではハンドリングに耐える強度確保が不可能であり、従来の不定形二次粒子により成形したシート状成形体の場合も十分な強度の安定的確保が困難であるが、球状二次粒子を使用する本発明では、焼結後の厚みが0.5mmという極薄成形体であるにもかかわらず、剥離、移動、搬送等のハンドリングに耐える機械的強度の確保が可能となる。
乾燥を終えたシート状成形体は、バインダー除去のために比較的低温で加熱される(脱脂工程)。粉末成形体は球状二次粒子の集合結合体であるため、比較的均一な大きさの空隙が均一に分布することになり、不定形二次粒子の集合結合体と比べてバインダーが除去されやすい。また、バインダーが二次粒子内部に均一に侵入しなくともシート状成形体が得られる点からもバインダーが除去されやすい。加熱雰囲気は、そのバインダー除去を安定させるために、減圧アルゴン雰囲気が好ましい。従来の真空雰囲気と比べ減圧アルゴン雰囲気でバインダーの除去が安定する理由は、薄くて強度の小さいシート状成形体から徐々にバインダーを除去するためであり、後の昇温速度(低速昇温)との組合せにより、よりバインダー除去の安定化を図ることができる。
減圧アルゴン雰囲気での減圧度としては1Pa〜10kPaが好ましく、10〜500Paが特に好ましい。減圧度が不足すると脱脂時間が長くなり、生産性が低下する。過度の減圧は脱脂時にシート状成形体に割れを発生させる原因になる。昇温速度は遅ければ遅いほど安定してバインダーを除去できるが、生産性を考慮すると20〜300℃/時間が好ましい。加熱温度は使用するバインダーの種類により異なる。
加熱によるバインダー除去が終わると、そのシート状成形体を高温で焼結し、厚さが0.5mm以下の焼結体からなる陽極素子となす(焼結工程)。シート状成形体はバインダー除去後も当初の形状を保持する。なぜなら、球状二次粒子同士の接合点が均一に分布した、安定なブリッジ構造となっているためである。そして、最後に真空雰囲気中の高温焼結により、高強度の多孔質焼結体からなる薄型のタンタル固体電解コンデンサ用陽極素子が完成する。高温焼結条件は従来どおりでよく、例えばタンタル焼結体の場合で約1500℃×1〜3時間が好適である。また、真空度は5×10-3Paが好適である。
本発明の固体電解コンデンサ用陽極素子は、薄型素子の焼結素材として球状の二次粒子を使用したことにより、乾燥後、脱脂前のシート状成形体に高い機械的強度を付与することができる。このため、薄型であるにもかかわらず、その粉末成形体のハンドリングを容易ならしめ、ハンドリングでの破損を効果的に防止できることにより、高い製造歩留りを確保することができる。また、乾燥後、脱脂前のシート状粉末成形体に高い機械的強度を付与することができることにより、バインダーの使用量を低減でき、またバインダーの抜け性も良好である。このため、コンデンサ特性に悪影響を与える製品中の残留炭素量を低減することができる。
本発明の固体電解コンデンサ用陽極素子の製造方法は、薄型素子の焼結素材として球状の二次粒子を使用したことにより、乾燥後、脱脂前の段階でシート状成形体に高い機械的強度を付与することができる。このため、その粉末成形体のハンドリングを容易ならしめ、ハンドリングでの破損を効果的に防止することにより、高い製造歩留りを確保することができ、その製造コスト低減に寄与する。また、乾燥後、脱脂前のシート状成形体に高い機械的強度を付与することができることで、バインダーの使用量を低減でき、しかも、脱脂工程でバインダーを効率的に除去できる。このため、コンデンサ特性に悪影響を与える焼結体中の残留炭素量を低減することができると共に、バインダーを除去するための脱脂時間を短縮でき、この点からも製造コスト低減を図ることができる。更には、脱脂工程を減圧下でのアルゴン雰囲気加熱により実施すれば、焼結体中の残留炭素量をより低減することができ、コンデンサ特性の向上、脱脂時間の短縮に更なる効果をあげることができる。
以下に本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
まず、タンタル金属の微粉末(粒径が約1μmの一次粒子)を球状に凝集させて得た球状二次粒子を用意する。球状二次粒子の製造法としては周知の方法を使用すればよく、例えば一次粒子を液体中に懸濁する懸濁液作製工程、作製された懸濁液を噴霧乾燥する造粒工程等を経て、球状二次粒子は製造される。用意された二次粉末の形状を図1に(b)で示す。球状二次粒子の平均粒径は40μmである。粒度分布における平均粒径の頻度は、図2中のサンプルBに示すように27%である。また最大径と最小径の比は平均で1.3であり、嵩密度は1.76g/cm3 である。
次いで、用意した球状二次粒子を、水溶性アクリル系バインダー(21重量%)、可塑剤(3.5重量%)及び水と共に混練してスラリーを作製する。
作製したスラリーをシート状基材であるPETフィルム(離型剤付き)の上に隙間1.0mmのフィルムアプリケータを使用して目標厚さ0.5mmで塗布することにより、前記基材上にシート状成形体を形成する。
所定形状に切断後、乾燥によりシート状成形体中の水分を除去する。その後、シート状成形体から基材を分離する。乾燥後のシート状粉末成形体はハンドリングに支障ない機械的強度を保有することになる。これを確認するために、シート状粉末成形体の作製、乾燥後の基材分離を10回繰り返したが、一度としてシート状粉末成形体の破損は生じなかった。
乾燥後、基材を分離したシート状粉末成形体を脱脂のために加熱する。この加熱では、アルゴン導入状態で真空度を200Paに維持し、この雰囲気中で500℃×1時間の加熱を行う。最後に脱脂後のシート状粉末成形体を真空度0.5Pa、温度1500℃の条件で焼結する。こうして、タンタル固体電解コンデンサ用陽極素子を想定した厚みが0.5mm以下の薄型試験片が製造される。製造された試験片の両面の顕微鏡写真を図3に示す。試験片の詳細な寸法は100×100×0.47mmであり、面積は100cm2 、気孔率は70%である。バインダーの残留に伴う残留炭素量は95ppmである。
同様の方法で厚さが0、2mmのタンタル固体電解コンデンサ用陽極素子用薄型試験片も製造できることを確認している。
比較のために、タンタル金属微粉末の凝集二次粒子として、図1(a)に示す非球状(不定形)の粗大粒子を用いた。不定形粗大粒子の平均粒径は100μmである。粒度分布における平均粒径の頻度は、図2中のサンプルAに示すように19%である。また嵩密度は1.27g/cm3 である。
二次粒子の種類以外は前記実施形態と同じ条件にて、タンタル固体電解コンデンサ用陽極素子を想定した厚みが0.5mmの薄型試験片の製造を試みた。シート状基材上にスラリーを塗布し、乾燥後に基材を分離する過程でシート状成形体が破損しやすく、乾燥後の基材分離を10回繰り返したところ、全ての操作で100×100mmの完全な正方形のシート状成形体は得られなかった。比較的形状が良好な一部破損のシート状成形体を脱脂、焼結したところ、一応、気孔率が83%のシート状多孔質焼結体が得られたが、焼結体中の残留炭素量は175ppmに増加した。
そこでスラリー作製の際のバインダー量を21重量%から32重量%へ増やし、可塑剤量を3.5重量%から5重量%へ増やした。シート状基材上にスラリーを塗布し、基材を分離する過程でのシート状成形体の破損は抑制され、乾燥後の基材分離を10回繰り返したところ、3回では100×100mmの完全な正方形のシート状成形体が得られた。破損なく分離できたものを脱脂、焼結したところ、気孔率が87%のシート状多孔質焼結体が得られたが、焼結体中の残留炭素量は235ppmと更に増加した。
比較試験に使用した二次粒子の形状を示す顕微鏡写真で、(a)は比較用の不定形粗大粒子、(b)は本発明で使用する球状二次粒子を示す。 比較試験に使用した2種類の二次粒子の粒度分布を示すグラフであり、サンプルAは比較用の不定形粗大粒子、サンプルBは本発明で使用する球状二次粒子である。 本発明の陽極素子の外観を示す顕微鏡写真である。

Claims (8)

  1. 弁作用金属粉末が球状に凝集した球状二次粒子が、0.5mm以下の厚みのシート状に焼結されてなることを特徴とする固体電解コンデンサ用陽極素子。
  2. 前記球状二次粒子は、平均粒子径が10〜150μmの範囲内で焼結体厚の1/5以下である請求項1に記載の固体電解コンデンサ用陽極素子。
  3. 前記球状二次粒子は次のa,bの少なくとも一つを満足する請求項1に記載の固体電解コンデンサ用陽極素子。
    a)粒度分布における平均粒径の頻度が15%以上である。
    b)最大径と最小径の比が2以下である。
  4. 弁作用金属粉末が球状に凝集した球状二次粒子をバインダーと混合してスラリーとするスラリー化工程と、前記スラリーを焼結後の厚みで0.5mm以下となるシート状の成形体に加工する成形工程と、そのシート状成形体を乾燥する乾燥工程と、乾燥して得られたシート状成形体を加熱して成形体中のバインダーを除去する脱脂工程と、バインダーを除去して得られたシート状成形体を焼結する焼結工程とを含む固体電解コンデンサ用陽極素子の製造方法。
  5. 前記球状二次粒子は、平均粒子径が10〜150μmの範囲内で焼結体厚の1/5以下である請求項4に記載の固体電解コンデンサ用陽極素子の製造方法。
  6. 前記球状二次粒子は次のa,bの少なくとも一つを満足する請求項4に記載の固体電解コンデンサ用陽極素子の製造方法。
    a)粒度分布における平均粒径の頻度が15%以上である。
    b)最大径と最小径の比が2以下である。
  7. 前記脱脂工程を減圧下でのアルゴン雰囲気加熱により実施する請求項4に記載の固体電解コンデンサ用陽極素子の製造方法。
  8. 前記成形工程においてスラリーをシート状基材の上にシート状に且つ剥離可能に形成し、乾燥後にシート状基材と分離する請求項4に記載の固体電解コンデンサ用陽極素子の製造方法。
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