JP2007273284A - 電子放出材料及びその製造方法、電子放出材料が形成された基材、電子放出装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の電子放出材料の製造方法は、エラストマー30に、多層カーボンナノチューブ40を混合させ、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料1を得る工程を含む。炭素繊維複合材料1は、多層カーボンナノチューブ40を8〜16体積%含むことを特徴とする。
【選択図】図5
Description
エラストマーに、多層カーボンナノチューブを混合させ、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程を含み、
前記炭素繊維複合材料は、前記多層カーボンナノチューブを8〜16体積%含む。
前記炭素繊維複合材料と溶剤とを混合して塗布液を得る工程と、
前記塗布液を基材上に塗布して薄膜を形成する工程と、
を含むことができる。
前記エラストマーは、分子量が5000ないし500万とすることができる。
前記エラストマーは、多層カーボンナノチューブに対して親和性を有する不飽和結合または基を有することができる。このような構成とすることで、炭素繊維複合材料を得る工程において、エラストマーの不飽和結合または基が、多層カーボンナノチューブの活性な部分、特に多層カーボンナノチューブの末端のラジカルと結合することにより、多層カーボンナノチューブの凝集力を弱め、エラストマーに多層カーボンナノチューブを均一に分散させることができる。
前記多層カーボンナノチューブは、平均直径が5〜30nmであることができる。
前記薄膜を形成する工程は、スピンコート法、ディッピング法、スクリーン印刷法、スプレー法、インクジェット法から選ぶことができる。
エラストマー中に多層カーボンナノチューブが分散された炭素繊維複合材料であって、
前記炭素繊維複合材料は、前記多層カーボンナノチューブを8〜16体積%含む。
前記電子放出材料を含む陰極と、
前記陰極から所定の間隔をあけて配置された陽極と、
を具備し、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することで前記電子放出材料から電子を放出する。
エラストマーは、分子量が好ましくは5000ないし500万、さらに好ましくは2万ないし300万である。エラストマーの分子量がこの範囲であると、エラストマー分子が互いに絡み合い、相互につながっているので、エラストマーは多層カーボンナノチューブを分散させるために良好な弾性を有している。エラストマーは、粘性を有しているので凝集した多層カーボンナノチューブの相互に侵入しやすく、さらに弾性を有することによって多層カーボンナノチューブ同士を分離することができる。エラストマーの分子量が5000より小さいと、エラストマー分子が相互に充分に絡み合うことができず、後の工程で剪断力をかけても弾性が小さいため多層カーボンナノチューブを分散させる効果が小さくなる。また、エラストマーの分子量が500万より大きいと、エラストマーが固くなりすぎて加工が困難となる。
本実施の形態にかかる多層カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有しており、3層以上に巻いた多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)を用いる。カーボンナノチューブとしては、例えば、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWNT)、2層に巻いた2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWNT)、気相成長炭素繊維(VGCF:昭和電工社の登録商標)などがあるが、本実施の形態に用いる多層カーボンナノチューブはこれらを含まない。カーボンナノチューブを含む炭素繊維複合材料の電子放出特性は、用いられるカーボンナノチューブの種類に応じて最適なカーボンナノチューブの体積割合がある。炭素繊維複合材料中における多層カーボンナノチューブの最適体積割合は、8〜16体積%である。
本実施の形態では、炭素繊維複合材料を得る工程として、図1を用いてロール間隔が0.5mm以下の薄通しを行なうオープンロール法を用いた例について述べる。
本実施の形態にかかる塗布液を得る工程は、炭素繊維複合材料と溶剤とを混合させる。本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料は、多層カーボンナノチューブとエラストマーとの濡れがよいため、溶剤中に溶解させても沈殿しない。これは、多層カーボンナノチューブが、溶解したエラストマー分子に絡まったままの状態で塗布液中に均一に懸濁するためである。しかも、多層カーボンナノチューブは、界面相に覆われたまま塗布液中に存在する。
本実施の形態にかかる塗布液を基材上に塗布して薄膜を形成する工程は、基材上に塗布液を均一の厚さに塗布する方法を採用することができる。そのような塗布する方法としては、スピンコート法、ディッピング法、静電塗装などのスクリーン印刷法、スプレー法、インクジェット法から選ばれる方法によって実施されることが好ましい。さらに、このようにして塗布された塗布液は、減圧恒温炉中で凍結乾燥や熱処理乾燥、あるいは紫外線などによる硬化によって薄膜を形成する。薄膜の膜厚は、薄膜の成形方法によって異なるが、例えば0.5〜10μmが好ましい。
本実施の形態にかかる製造方法で基材に形成された薄膜は、多層カーボンナノチューブが均一に分散されている。本実施の形態にかかる薄膜は、優れた電磁気特性を有するため、電磁気材料として用いることができる。
本実施の形態にかかる製造方法で得られた電子放出材料は、シート状の炭素繊維複合材料の形態においても、基材に形成された薄膜の炭素繊維複合材料の形態においても、同様に優れた電子放出特性を有する。
図8は、本実施の形態にかかる電子放出装置を用いたフィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)110の構成を示す模式図である。フィールド・エミッション・ディスプレイ110は、前記工程で得られた薄膜(電子放出材料)2が電極基板60上に形成された陰極8と、ゲート電極4を挟んで、陰極2から所定の間隔をあけて対向配置されたガラス基板5と、を例えば真空気密容器中に有している。ガラス基板5の陰極2側には陽極6及び蛍光体7が積層して形成されている。したがって、フィールド・エミッション・ディスプレイ110は、薄膜2を含む陰極8と、陽極6と、陰極8と陽極6との間に配置されたゲート電極4と、を具備する、電子放出装置を含む。
(1)サンプルの作製
(a)炭素繊維複合材料の作製
第1の工程:ロール径が6インチのオープンロール(ロール温度10〜20℃)に、表1、2に示す所定量のエラストマーを投入して、ロールに巻き付かせた。
第2の工程:次に、表1、2に示す量(炭素繊維複合材料におけるCNTの体積%)のカーボンナノチューブ(表1では「CNTの種類」の欄に「MWNT」と記載する)をエラストマーに投入した。このとき、ロール間隙を1.5mmとした。
第3の工程:カーボンナノチューブを投入し終わったら、エラストマーとカーボンナノチューブとの混合物をロールから取り出した。
第4の工程:ロール間隙を1.5mmから0.3mmと狭くして、混合物を投入して薄通しをした。このとき、2本のロールの表面速度比を1.1とした。薄通しは繰り返し10回行った。
第5の工程:ロールを所定の間隙(1.1mm)にセットして、薄通しした炭素繊維複合材料を投入し、分出しした。
なお、表1、表2における「MWNT」は平均直径13nmのILJIN社製多層カーボンナノチューブであった。表1、表2において、「NR」が天然ゴム(分子量300万、T2n(30℃)700μ秒)、「SBR」(分子量15万、T2n(30℃)400μ秒)がJSR社製スチレン−ブタジエンゴム、「NBR」(分子量20万、T2n(30℃)300μ秒)が日本ゼオン社製ニトリルゴムであった。
このようにして得られた炭素繊維複合材料をロールで圧延後、プレス成形して、実施例1〜4及び比較例1、2の無架橋の電子放出材料(厚さ1mmのシート形状)を得た。また、実施例6は、第2の工程でパーオキサイド2phrを投入し、175℃で20分間プレス架橋した。さらに、実施例5の電子放出材料サンプルは、炭素繊維複合材料を5倍量のトルエンに投入し、攪拌して溶解させて塗布液を得て、アルミニウム製の基板上にスクリーン印刷法で塗布液を塗布し、乾燥させて、基板上に膜厚10μmのフィルム状の薄膜を形成した。
実施例1〜6及び比較例1、2の電子放出材料のしきい値及び飽和電流密度を、図11に示した装置で測定した。しきい値の測定は、陽極と陰極の間に徐々に電圧をかけ、電子放出し始める電界(電圧/電極間距離)をしきい値電界とした。飽和電流密度は、陽極と陰極の間に徐々に電圧をかけ、電流密度がほぼ飽和状態になった値を飽和電流密度とした。測定結果を表1、表2に示した。また、実施例1、2、比較例1、2の測定結果を図15に示した。
2 薄膜(電子放出材料)
4 ゲート電極
5 ガラス基板
6 陽極
7 蛍光体
8 陰極
10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
34 セル
36 界面相
40 多層カーボンナノチューブ
50 多層カーボンナノチューブの側面を流れる電気伝導を示す矢印
52 多層カーボンナノチューブの内部を流れる電気伝導を示す矢印
53 多層カーボンナノチューブ同士の接触箇所を流れる電気伝導を示す矢印
60 基板
70 基板支持台
80 モーター
90 塗布ノズル
100 塗布液
110 フィールド・エミッション・ディスプレイ
120 ガラス板
121 ガラス外囲器
122 ITOガラス板
130 蛍光色素膜
140 グリッド
150 スペーサ
152 口金
160 陰極
162 陰極薄膜
170 基板
172 電極棒
180 真空状態の空間
200〜206 平面照明装置
208 曲面照明装置
210 管状照明装置
Claims (12)
- エラストマーに、多層カーボンナノチューブを混合させ、かつ剪断力によって分散させて炭素繊維複合材料を得る工程を含み、
前記炭素繊維複合材料は、前記多層カーボンナノチューブを8〜16体積%含む、電子放出材料の製造方法。 - 請求項1において、
前記炭素繊維複合材料と溶剤とを混合して塗布液を得る工程と、
前記塗布液を基材上に塗布して薄膜を形成する工程と、
を含む、電子放出材料の製造方法。 - 請求項1または2において、
前記エラストマーは、分子量が5000ないし500万である、電子放出材料の製造方法。 - 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記エラストマーは、多層カーボンナノチューブに対して親和性を有する不飽和結合または基を有する、電子放出材料の製造方法。 - 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、未架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし3000μ秒である、電子放出材料の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記エラストマーは、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって30℃で測定した、架橋体における、ネットワーク成分のスピン−スピン緩和時間(T2n)が100ないし2000μ秒である、電子放出材料の製造方法。 - 請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記多層カーボンナノチューブは、平均直径が5〜30nmである、電子放出材料の製造方法。 - 請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記薄膜を形成する工程は、スピンコート法、ディッピング法、スクリーン印刷法、スプレー法、インクジェット法から選ばれる、電子放出材料の製造方法。 - 請求項1ないし8のいずれかに記載の製造方法によって得られた電子放出材料。
- 請求項2に記載の製造方法によって得られた電子放出材料が形成された基材。
- エラストマー中に多層カーボンナノチューブが分散された炭素繊維複合材料であって、
前記炭素繊維複合材料は、前記多層カーボンナノチューブを8〜16体積%含む、電子放出材料。 - 請求項11に記載の電子放出材料を含む陰極と、
前記陰極から所定の間隔をあけて配置された陽極と、
を具備し、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することで前記電子放出材料から電子を放出する、電子放出装置。
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