本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施の形態に係る光拡散フィルムの製造方法を説明する為の工程図である。
本実施の形態に係る光拡散フィルムの製造方法は、少なくとも、光透過性基材の少なくとも片面に感光層を形成する工程と、前記光透過性基材又は感光層上に光拡散フィルム原版を密着して貼り付け、積層体を形成する工程と、前記積層体を連続的に走行させながら、前記感光層に電磁波を照射して記録層を形成する工程とを有する。
先ず、図1(a)に示すように、感光層12の形成工程は、例えば長尺状の光透過性基材11の一方の面に感光性材料を塗布した後、乾燥して行う。塗布方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用することができる。具体的には、例えば、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビアロールコーター、ドクターブレード等の適宜な方式が例示できる。塗布量は適宜設定され得る。また、乾燥方法についても特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用することができる。具体的には、例えば50〜130℃の範囲内に於ける任意の温度で、1〜2分間加熱して乾燥させる方法が例示できる。尚、光透過性基材11及び感光性材料の詳細については、後述する。
前記感光層12の厚さは、1〜100μmの範囲内であることが好ましく、5〜50μmの範囲内であることがより好ましい。感光層12の厚さを前記範囲内にすることにより、良好な光拡散特性を示すことができる。
次に、図1(b)に示すように、光透過性基材11又は感光層12上に、長尺状の光拡散フィルム原版14を密着して貼り付け、積層体15を形成する。光拡散フィルム原版14の貼り付けには、接着剤層13を介して行うのが好ましい。接着剤層13には、粘着剤からなる粘着剤層(感圧接着剤層)が含まれる。貼り付け方法としては特に限定されず、具体的には、例えば一対の貼り付けローラー間に光透過性基材11、感光層12及び光拡散フィルム原版14を順次積層したものを通し、これらの厚み方向に圧力を加えてラミネートする方法等が例示できる。ラミネートを行うことにより、光拡散フィルム原版14と接着剤層13との間に気泡が生じるのを防止することができ、外観の良好な光拡散フィルムが得られる。尚、圧着の際に加える圧力としては、0.01〜1N/mm2の範囲内であることが好ましい。ラミネート処理を行った後にオートクレーブ処理を行うと、微細な気泡を除去できる為好ましい。
前記接着剤層13に用いられる接着剤又は粘着剤としては、特に制限されない。例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度なぬれ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性等に優れるという点で、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
前記接着剤又は粘着剤には、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また、接着剤層13が粘着剤からなる場合には、必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤や酸化防止剤等の適宜な添加剤を粘着剤に配合することもできる。また、粘着剤中に透明微粒子を含有させて光拡散性を示す接着剤層とすることもできる。
尚、前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.01〜20μmのシリカ、酸化カルシウム、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム若しくは酸化アンチモン等の導電性の無機系微粒子、又はポリメチルメタクリレート若しくはポリウレタン等の適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子等適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
前記接着剤又は粘着剤は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた固形分濃度が10〜50重量%程度の接着剤溶液として用いられる。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の接着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。前記接着剤層13の膜厚は、粘着剤の場合、使用目的や接着力等に応じて適宜設定でき、例えば1〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましく、3〜30μmが特に好ましい。
前記接着剤層13の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的に剥離紙又は離型フィルム(セパレータともいう)が仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で接着剤層13への接触を防止することができる。前記セパレータとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したもの等の、従来に準じた適宜なものを用いることができる。
ここで積層体としては、図2(a)に示すように、感光層12の両面に光透過性基材11が設けられたものに、接着剤層13を介して光拡散フィルム原版14を貼り合わせた構造の積層体17とすることも可能である。また、同図(b)に示すように、光透過性基材11及び感光層12が交互に積層され、かつ感光層12上に接着剤層13を介して光拡散フィルム原版14を貼り合わせた構造の積層体18とすることも可能である。
前記光拡散フィルム原版14又は光透過性基材11の表面には、各種表面処理を行うことにより、感光層12又は光透過性基材11と光拡散フィルム原版14との接着性を向上させることができる。前記表面処理としては従来公知の処理を採用することができ、より具体的には、低圧プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、又は酸若しくはアルカリ処理等が例示できる。また、光透過性基材11の材料としてトリアセチルセルロースを用いる場合には、該光透過性基材11の表面にアルカリ鹸化処理を行うのが好ましい。アルカリ鹸化処理は、次の通りにして行う。即ち、光透過性基材11の表面をアルカリ溶液に浸漬した後、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液等が例示できる。また、アルカリ溶液に於ける水酸化イオンの規定濃度は0.1N〜3.0Nであることが好ましく、0.5N〜2.0Nであることがより好ましい。また、アルカリ溶液の液度は25℃〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃がより好ましい。その後、水洗処理、乾燥処理を行い、表面処理を施したトリアセチルセルロースを得ることができる。
続いて、図1(c)に示すように、感光層12に電磁波を照射することにより、光拡散情報を記録して記録層16を形成する。このとき、電磁波の照射は、積層体15を連続的に走行させながら行う。即ち、感光層12と等方性の光拡散フィルム原版14とが一体となって走行させるので、感光層12に記録される光拡散特性(光拡散情報)は異方性を有しておらず、その結果光拡散特性を任意に制御することができる。電磁波の照射は所定の照射領域に対して行い、該照射領域内を積層体15が走行する様にする。電磁波の照射方法としては特に限定されず、例えば光源から出射した電磁波を従来公知のレンズを用いて平行光にする等して行う。また、照射は、積層体15の搬送状態に合わせて連続的に行うが、走行速度を考慮した間欠的な照射であってもよい。電磁波の照射角度としては、光拡散フィルムの用途に応じて適宜設定すればよい。具体的には、積層体15の表面(照射面)の法線に対し、0〜80度の範囲内であることが好ましく、0〜70度の範囲内であることが好ましい。
前記電磁波としては、レーザー光、可視光、紫外線、赤外線、X線等が例示できる。更に、前記レーザー光としては、気体レーザーであるヘリウムネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、液体レーザーである色素レーザー、固体レーザーであるYAGレーザー、YAG(1/2)レーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー等が例示できる。
積層体15の連続的な走行は、例えば一対の巻き出しロール及び巻き取りロールを用いることにより可能である。また、巻き出しロール及び巻き取りロールの回転速度を一定にすることにより、積層体15を一定速度で所定方向に搬送させることができる。巻き出しロール及び巻き取りロールは、電磁波の照射面の両側に位置するように配置される。積層体15の搬送速度としては、1〜100m/分の範囲内であることが好ましく、2〜50m/分の範囲内であることがより好ましい。前記範囲内であると、生産性を向上させることができる。
ここで、図3(a)に示すように、感光性材料として相対屈折率の大きいラジカル重合性化合物と相対屈折率の小さいカチオン重合性化合物を少なくとも含有するものを使用する場合、感光層12に前記電磁波としてレーザー光を照射した後(同図(b))、該感光層12を加熱し(同図(c))、更に紫外線を照射する(同図(d))ことが好ましい。感光層12の所定の記録領域12’にレーザー光を照射することによりラジカル重合性化合物をラジカル反応させ、該感光層12に光拡散特性の初期パターンを記録する。次に、初期パターンの状態では光拡散特性の機能が不十分な為、感光層12の全域を加熱することにより感光層12を構成するラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを物質移動させて相分離させ、パターンを明確にする。更に、紫外線を感光層12の全域に照射することにより、カチオン重合性化合物をカチオン反応させると共に、未反応のラジカル重合性化合物もラジカル反応させる。これにより、所定の光拡散特性を記録した記録層16を形成することができる。
感光層12に対する加熱温度としては、40〜140℃の範囲内であることが好ましく、60〜120℃の範囲内であることがより好ましい。また、加熱時間としては、1〜120分の範囲内であることが好ましく、5〜60分の範囲内であることがより好ましい。加熱温度が40℃未満であり、かつ加熱時間が1分間未満であると、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との相分離が不十分な場合がある。また、加熱温度が140℃より高く、かつ加熱時間が120分を超えると、感光層12や光拡散フィルム原版14等が溶融する場合がある。
感光層12に対する紫外線の照射条件としては、例えば照射量が0.1〜10J/cm2の範囲内であることが好ましい。照射量が0.1J/cm2未満であると、カチオン重合性化合物のカチオン反応が不十分な場合がある。また、照射量が10J/cm2を超えると、光透過性基材11が変形する場合がある。
光拡散フィルム原版14としては、具体的には、例えば表面ホログラム、体積ホログラム、回折格子、表面凹凸フィルム、無機微粒子若しくは有機微粒子などの粒子を含有した光拡散フィルム、又は無機微粒子若しくは有機微粒子などの粒子を含有した表面凹凸フィルムが例示できる。前記表面ホログラムとしては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えばホログラム基材となる透明基板の表面層に凹凸を形成し、凹凸の段差で0次回折光と1次回折光の比を制御する位相変調型ホログラム、ホログラム基材表面に金属薄膜パターン等で光遮光部と光透過部をもつ周期的なスリットからなるレンズパターンを形成し、回折光を発生させる振幅変調型ホログラム等が例示できる。また、前記体積ホログラムとしては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、前記各種の表面ホログラムにより形成された体積ホログラムが例示できる。また、前記回折格子としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、前記表面凹凸フィルムとしては特に限定されず、例えば、フィルム又はフィルム上に形成した樹脂層の表面を予めサンドブラストやエンボスロール、化学エッチング等の適宜な方式で粗面化処理してフィルム表面に微細凹凸構造にすることにより得られるものが例示できる。また、前記粒子を含有した表面凹凸フィルムとしては特に限定されず、前記粒子を含有した光拡散フィルムの表面に凹凸構造を有するものが例示できる。
本発明の製造方法は、光拡散フィルム原版14を記録層16から剥離する工程を行うこともできる(図1(d)参照)。この場合、光拡散フィルム原版14には、感光層12との貼り合わせ面に剥離処理を施していることが好ましい。剥離処理の方法としては、例えばシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、又は硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理する等、従来に準じた適宜の処理が例示できる。尚、光拡散フィルム原版14を光透過性基材11上に貼り合わせて光拡散フィルムを製造する場合は、該光透過性基材11との貼り合わせ面に剥離処理を行えばよい。
前記光透過性基材11としては、可視光の光線透過率及び光透過性に優れるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光透過性プラスチックフィルム基材が例示できる。
前記光透過性プラスチックフィルムとしては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。更に、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーをブレンドしたもの等の透明ポリマーからなるフィルム等も挙げられる。これらのフィルムのうち、光学的に複屈折の少ないものが特に好適である。
光透過性基材11の可視光に対する光線透過率としては90%以上であることが好ましく、91〜95%であることがより好ましい。また、光透過性の指標を表すヘイズ値としては1%以下であることが好ましく、0.01〜0.5%であることがより好ましい。
光透過性基材11の厚さは、適宜に決定し得るが、一般には強度や取り扱い性等の作業性、薄層性等の点より10〜500μm程度が好ましく、20〜300μmがより好ましく、30〜200μmが特に好ましい。更に、光透過性基材11の相対屈折率としては特に限定されず、通常1.30〜1.80程度であり、特に1.40〜1.70であることが好ましい。
前記感光性材料としては、相対屈折率が相互に異なる少なくとも2種類の材料を含むものを使用することができる(日本国特許第2849021号参照)。より具体的には、例えば、9,9−ジアリールフルオレン骨格を有し、かつ常温で液状であるラジカル重合性化合物(成分A)と、カチオン重合性化合物、9,9−ジアリールフルオレン骨格を有さないラジカル重合性化合物、可塑剤の群から選ばれる成分Aと相溶する化合物(成分B)とを含む感光性材料が挙げられる。成分Aの平均相対屈折率は、成分Bの平均相対屈折率よりも大きく、その差は0.02以上であることが好ましい。成分Aの平均相対屈折率が成分Bの平均相対屈折率以下の場合、屈折率変調が不十分となる場合がある。また、感光性材料には、特定波長のレーザー光等に感光して成分Aを重合させる光ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。
成分Bとしては、カチオン重合性化合物の使用が可能である。この場合、前記該特定波長の光に対しては低感光性であり、別の波長の光に感光して成分Bを重合させる光カチオン重合開始剤系Dを更に含有する。
前記成分Aとしては、分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和二重結合を有するもの、より具体的には、下記一般式で表されるものを用いる。
R1、R2:少なくともどちらか一方の末端には、アクリロイル基又はメタクリロイル基等のラジカル重合性基を有し、このラジカル重合性基とベンゼン環は少なくとも1つのオキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、ウレタン結合、アミド結合等を介して結合している。X1〜X4の具体例:H、アルキル基(C1〜C4)、アルコキシ基(C1〜C4)、アミノ基、ジアルキルアミノ基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基等で表される。
これらの中で特にR1、R2に於いてアクリロイル基又はメタクリロイル基がオキシエチレン鎖又はオキシプロピレン鎖を介してベンゼン環と結合しているものが好ましい。それらの具体例としては、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシトリエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシテトラエトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジプロポキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシジエトキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロキシエトキシ−3,5−ジメチル)フルオレン及び前記の「アクリロキシ」を「メタクリロキシ」に変えた化合物等がある。但し、成分Aはこれらによって限定されるものではない。これらの1種以上を混合して使用してもよい。
前記成分Bとしては、成分Aと相溶し、かつ前述のように平均の相対屈折率が成分Aの平均相対屈折率より小さいものが用いられ、特に常温で液状のものが好ましい。成分Bとして常温で液状のものを用いることにより、成分Aの光ラジカル重合を終始比較的低粘度の組成物中で行うことができ、これにより成分Aの拡散移動が助長されてより大きな屈折率変調が得られる。更に、成分Bとしてはカチオン重合性化合物が好ましい。カチオン重合性化合物を使用した場合、レーザー光等とは別の波長の光を照射することにより、光カチオン重合開始剤系Dを分解しカチオン重合性化合物を重合させることができる。その結果、被膜強度に優れた光拡散フィルムの作製が可能にある。
カチオン重合性化合物の具体例としては、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、パラターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、1,2,5,6−ジエポキシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、及び下記化学式で表される化合物が挙げられ、これらの一種以上を使用してよい。
また、成分Bとして9,9−ジアリールフルオレン骨格を有しないラジカル重合性化合物の使用が可能である。9,9−ジアリールフルオレン骨格を有しないラジカル重合性化合物の具体例としては、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、3−アクリロキシグリセリンモノメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、n−ブトキシエチルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、アリルジグリコールカーボネート等がある。
成分Bに9,9−ジアリールフルオレン骨格を有しないラジカル重合性化合物を用いた場合、他の成分B若しくは後述の高分子結合剤を併用することが好ましい。前記以外の成分Bとしては、成分Aと相溶する可塑剤が挙げられる。可塑剤の具体例としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル及びリン酸トリクレシルのようなリン酸エステル;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルドデシル、フタル酸ジイソデシル及びフタル酸ブチルベンジルのようなフタル酸エステル;オレイン酸ブチル及びグリセリンモノオレイン酸エステルのような脂肪族一塩基酸エステル;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル及びセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルのような脂肪族二塩基酸エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートのような二価アルコールエステル;アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート及びアセチルクエン酸トリブチルのようなオキシ酸エステル;塩化パラフィン;塩素化ビフェニル;2−ニトロビフェニル;ジノニルナフタレン;0−トルエンスルホンエチルアミド;P−トルエンスルホンエチルアミド;ショウ脳及びアビエチン酸メチル等がある。
本発明に使用する光ラジカル重合開始剤系Cは、レーザー光等の照射によって活性ラジカルを生成し、その活性ラジカルが、本発明の構成成分の1つである前記ラジカル重合性化合物Aを重合させるような開始剤系であればよい。そのような光ラジカル重合開始剤系Cとしては、例えば米国特許第4,766,055号、同第4,868,092号、同4,965,171号、特開昭54−151024号公報、同58−15,503号公報、同58−29,803号公報、同59−189340号公報、同60−76735号公報、特開平1−28715号公報、特願平3−5589号及び「プロシーディングス・オブ・コンファレンス・オン・ラジエーション・キュアリング・エイジア)(PROCEEDINGS OF CONFERENCE ON RADIATION CURING ASIA)」(P.461〜477、1988年)等に記載されている公知な開始剤系が使用出来るがこの限りでない。
尚、本明細書中「開始剤系」とは、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いることが出来ることを意味する。光ラジカル重合開始剤系に於ける増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、最終製品としての光拡散フィルムに対し無色透明性が要求される場合(例えば、自動車等のヘッドアップディスプレーとして使用する場合)の増感剤としては、シアニン系色素の使用が好ましい(特開昭58−29803号公報、特開平1−287105号公報、特願平3−5569号参照)。シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3’−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3’,9’−ジエチル−2,2’チアカルボシアニンベタイン、3,3’,9−トリエチル−2,2’−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3’,9−トリエチル−2,2’−(4,5,4’,5’−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ヘンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1’,3,3,3’,3’−ヘキサメチル−2,2’−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3’−ジエチル−2,2’−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3’−カルボキシメチル−5’−クロロ−2,2’−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5’−ジフェニル−9−エチル−3,3’−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩が挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
シアニン系色素と組み合わせて用いてもよい活性ラジカル発生化合物としては、前記の特開昭58−29803号公報、特開平1−287105号公報、特願平3−5569号に記載されているようなジアリールヨードニウム塩類、又は2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が例示できる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム塩類の使用が特に好ましい。
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤系Dは、最初に照射する電磁波に対しては低感光性であり、レーザー光の照射とは異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸、又はルイス酸を発生させ、これらが前記のカチオン重合性化合物Bを重合させるような開始剤系であればよい。本発明に於いては、電磁波の照射でラジカル重合性化合物を重合する間は常温液状のカチオン重合性化合物が殆ど反応しないまま存在することが好ましい。これにより、従来技術よりも大きい屈折率変調が得られると考えられる。従って、光カチオン重合開始剤系Dとしては、電磁波による最初の照射に於いては、カチオン重合性化合物を重合させないものが特に好ましい。光カチオン重合開始剤系Dは、例えば「UV硬化;科学と技術(UV CURING:SCIENCE AND TECHNOLOGY)」(pp.23〜76、S.ピーター・パーパス(S.PETERPAPPAS)編集、ア・テクノロジー・マーケッティング・パブリケーション(A TECHNOLOGY MARKETING PUBLICATION)]及び「コメンツ・インオーグ.ケム.(Comments Inorg. Chem.)」(B.クリンゲルト、M.リーディーカー及びA.ロロフ(B.KLINGERT、M.RIEDIK ER and A.ROLOFF)、第7巻、No.3、pp109−138(1988)]等に記載されているものが挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
本発明で用いられる特に好ましい光カチオン重合開始剤系Dとしては、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、又は鉄アレン錯体類等が例示できる。光カチオン重合開始剤系Dとしてのジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては、前記光ラジカル重合開始剤Cで示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート及びヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセンスルホン酸塩等が挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフェニルスルホニウム等のスルホニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート及びヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸塩等が挙げられる。
本発明の感光性材料には、必要に応じて高分子結合剤、熱重合防止剤、シランカップリング剤、着色剤等を併用してよい。高分子結合剤は、光拡散フィルム形成前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。高分子結合剤は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性組成物と相溶性のよいものであれば良く、その具体例としては塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロース等が挙げられる。高分子結合剤は、その側鎖又は主鎖にカチオン重合性基等の反応性を有していてもよい。
本発明の感光性材料の組成に於いて、組成物全重量に対し、成分Aは5〜80wt%(特に30〜60wt%)、成分Bは10〜80wt%(特に30〜60wt%)、光ラジカル重合開始剤系Cは0.3〜8wt%(特に1〜5wt%)及び光カチオン重合開始剤系Dは0.3〜8wt%(特に1〜5wt%)がそれぞれ好ましい。
本発明の感光性材料は通常の方法で調製することができる。例えば上述の必須成分A〜D及び任意成分をそのまま若しくは必要に応じて溶媒(例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒)を配合し、冷暗所にて例えば高速撹拌機を使用して混合することにより調製できる。
本発明に係る光拡散フィルムは、粘着剤又は接着剤を介して、LCDやELDに用いられる光学部材に貼り合せることができる。前記光学部材としては、例えば、偏光子又は偏光板が挙げられる。偏光板は、通常、偏光子の片側又は両側に透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
次に、本発明の光拡散フィルムを積層した光学素子について、偏光板を例にして説明する。本発明の光拡散フィルムは、接着剤や粘着剤等を用いて偏光子又は偏光板と積層することによって、本発明の機能を有した偏光板を得ることができる。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
前記偏光子としては特に制限されず、各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。更に必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
前記偏光子の片面又は両面に設けられる透明保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性等に優れるものが好ましい。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリロニトリル・エチレン・スチレン樹脂、スチレン・マレイミド共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。また、シクロ系オレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂、芳香族ポリイミドやポリイミドアミド等のイミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、エポキシ系樹脂又は前記樹脂のブレンド物等からなる高分子フィルム等も前記透明保護フィルムを形成する樹脂の例として挙げられる。また、前記透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルム、例えば、(A)側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換及び/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が挙げられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物の高分子フィルムが挙げられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品等からなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板等の保護フィルムに適用した場合には歪みによるムラ等の不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
前記透明保護フィルムとして好ましくは、偏光特性や耐久性等の点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、及びノルボルネン系樹脂からなるフィルムが用いられる。これらのフィルムは、例えば、「フジタック」(商品名、富士写真フィルム(株)製)や、「ゼオノア」(商品名、日本ゼオン(株)製)、「アートン」(商品名、JSR(株)製)等により入手可能である。
前記透明保護フィルムの厚さは適宜に決定し得るが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性等の点より1〜500μm程度である。より好ましくは、5〜200μmである。特に好ましくは、10〜150μmである。前記の範囲であれば、偏光子を機械的に保護し、高温高湿下に曝されても偏光子が収縮せず、安定した光学特性を保つことができる。
また、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。従って、Rth=(nx−nz)・d(但し、nxはフィルム平面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルムの膜厚である)で表されるフィルムの膜厚方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。膜厚方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。膜厚方向位相差値(Rth)は、更に好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
前記透明保護フィルムは、フィルム面内の位相差値及び膜厚方向の位相差値が液晶表示装置の視野角特性に影響を及ぼす場合があるので、位相差値が最適化されたものを用いることが好ましい。但し、位相差値の最適化が望まれる透明保護フィルムとは、液晶セルに近い側の偏光子の表面に積層される透明保護フィルムであり、液晶セルに遠い側の偏光子の表面に積層される透明保護フィルムは、液晶表示装置の光学特性を変化させることはないので、この限りではない。
前記液晶セルに近い側の偏光子の表面に積層される透明保護フィルムの位相差値としては、フィルム面内の位相差値(Re:(nx−ny)・d)が0〜5nmであることが好ましい。より好ましくは、0〜3nmである。更に好ましくは、0〜1nmである。膜厚方向の位相差値(Rth)は、0〜15nmであることが好ましい。より好ましくは0〜12nmである。更に好ましくは0〜10nmである。特に好ましくは0〜5nmである。最も好ましくは、0〜3nmである。
光拡散フィルムを積層した偏光板は、光拡散フィルムに透明保護フィルム、偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよいし、光拡散フィルムに偏光子、透明保護フィルムを順次に積層したものでもよい。
その他、透明保護フィルムの偏光子を接着させない面は、ハードコート層やスティッキング防止や目的とした処理を施したものであってもよい。ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止等を目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系等の適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式等にて形成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。尚、前記ハードコート層、スティッキング防止層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
また偏光板の層間へ、例えばハードコート層、プライマー層、接着剤層、粘着剤層、帯電防止層、導電層、ガスバリヤー層、水蒸気遮断層、水分遮断層等を挿入、又は偏光板表面へ積層してもよい。また、偏光板の各層を作成する段階では、例えば、導電性粒子あるいは帯電防止剤、各種微粒子、可塑剤等を各層の形成材料に添加、混合等することにより改良を必要に応じて行ってもよい。
前記透明保護フィルムの偏光子との積層方法は、特に限定されず、例えばアクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、あるいはホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミンやシュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤等を介して行うことができる。これにより湿度や熱の影響で剥がれにくく光透過率や偏光度に優れるものとすることができる。前記接着剤としては、偏光子の原料であるポリビルアルコールとの接着性に優れる点より、ポリビニルアルコール系接着剤を用いることが好ましい。
前記ノルボルネン系樹脂を含む高分子フィルムを透明保護フィルムとして、偏光子と積層する場合の粘着剤としては、透明性に優れ、複屈折等が小さく、薄い層として用いても充分に粘着力を発揮できるものが好ましい。そのような粘着剤としては、例えば、ポリウレタン系樹脂溶液とポリイソシアネート樹脂溶液を混合するドライラミネート用接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤、エポキシ系二液硬化型接着剤、例えば、エポキシ樹脂とポリチオールの二液からなるもの、エポキシ樹脂とポリアミドの二液からなるもの等を用いることができ、特に溶剤型接着剤、エポキシ系二液硬化型接着剤が好ましく、透明のものが好ましい。接着剤によっては、適当な接着用下塗り剤を用いることで接着力を向上させることができるものがあり、そのような接着剤を用いる場合は接着用下塗り剤を用いることが好ましい。
前記接着用下塗り剤としては、接着性を向上できる層であれば特に制限はないが、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤、同一分子内にチタンを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するチタネート系カップリング剤、及び同一分子内にアルミニウムを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するアルミネート系カップリング剤等のいわゆるカップリング剤、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エステルウレタン系樹脂等の有機反応性基を有する樹脂を用いることができる。なかでも、工業的に取扱いやすいという観点から、シラン系カップリング剤を含有する層であることが好ましい。
前記偏光板は、液晶セルへの積層を容易にするため、両面又は片面に接着剤層や粘着剤層を設けておくことが好ましい。当該接着剤層又は粘着剤層としては、前述の接着剤層13と同様のものを使用することができる。
前記接着剤層又は粘着剤層は、組成又は種類が異なったものを積層物として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。前記接着剤又は粘着剤の膜厚は、使用目的や接着力等に応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
前記接着剤層又は粘着剤層等の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的に剥離紙又は離型フィルム(セパレータともいう)が仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で接着剤層又は粘着剤層に接触することを防止できる。前記セパレータとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したもの等の、従来に準じた適宜なものを用いることができる。
次に、本実施の形態に係る偏光板と併用して用いられる他の光学部材について説明する。前記他の光学部材については特に限定はないが、例えば、楕円偏光板又は円偏光板に、更に反射板又は半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板又は半透過型偏光板が挙げられる。また、前記の反射型偏光板や半透過型偏光板と、位相差板とを組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板等であってもよい。また、本実施の形態に係る光拡散フィルム、又は偏光板を、透過型又は半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEF等)と併用することにより、更に表示特性の高い表示装置を得ることができる。
前記光拡散フィルムと、偏光板等とは、画像表示装置の製造過程で順次別個に積層することよっても形成することができる。しかし、予め積層しておくほうが、品質の安定性や積層作業性等に優れ、画像表示装置等の製造効率を向上させることができるため好ましい。
本実施の形態に係る光拡散フィルム又はそれを備えた偏光板は、液晶表示装置、有機EL表示装置等の各種画像表示装置に実装することができる。特に、本発明のホログラフィック拡散板は、光拡散方向に異方性を有する光拡散特性を有する為、特定の視認方向に於いて視野角特性の向上を図ることが可能であり、よって、例えば携帯電話に於ける表示ディスプレイや車載用モニター等に好適に用いることができる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
(露光装置)
本実施例で使用した露光装置について説明する。図4に示すように、本実施例で使用した露光装置に於いては、Nd/YVO4レーザ(532nm)としてコヒーレント社製Verdi−8V、ガリレオ式ビームエキスパンダーとしてシグマ光機社製3倍(出射レンズ径の20mm)及び105倍(出射レンズ径の100mm)を用い、これらをシグマ光機社製防振台HOA−2010−150LAに設置して構成した。この露光装置に於いて光源が出射されたレーザー光の照射域はビームエキスパンダーにより拡大され、拡大されたレーザー光は、50mm×50mmサイズの窓を通過させることで、照射域の中央部分の光強度がほぼ均一の領域だけを出射できるようにした。レーザー光は各ビームセキスパンダーを通過した後に、全面が平行光になるようにレンズ調整を行った。レーザー光の平行度は、シグマ光機社製コリメーションチェッカーSPV−25を用いて確認した。レーザー光の光強度は、シグマ光機社製バリアブルアッテネータを使用することで減光し、gentec社製パワーメーターPH−100Si及びSOLOモニターを用いて、所定の値に調整した。尚、面内の露光均一性については、パワーメーターにφ1mmのアパーチャを取り付けて、50mm×50mm面内均等に25点を測定し、誤差が15%以内であることを確認した。
更に、サンプルホルダーは、照射面がレーザー光の照射方向に対して垂直となる様に設置し、シグマ光機社製エアスライダーSAS−1251を用いて、露光位置への固定又は移動が可能となる様にした。
(実施例1)
[試験片の作製]
感光性材料(日本ペイント社製、商品名;フォトポリマーNPN−2)を、テスター産業社製アプリケーターを用いて、長尺の光透過性基材(東レ社製、商品名;PETフィルムS27W(長さ50cm、幅20cm、厚さ75μm))に塗布した。
次に、ESPEC社製加熱装置SPH−201を用いて、90℃、5分間の条件で乾燥し、感光層としての塗布フィルム(塗布厚さ30μm、100mm×150mm)を得た。更に、前記塗布フィルムの塗布面を松浪硝子工業社製マイクロスライドガラス(130×180mm、厚さ1.3mm)にラミネートした。
続いて、粘着剤層(日東電工株式会社製、商品名;粘着剤No.7(厚さ23μm))を形成した光拡散フィルム原版(Physicaloptics Corporation社製、商品名;光拡散フィルムLSD60PE5)を、前記マイクロスライドガラスに於ける光透過性基材面に貼り付けて試験板とした。光拡散フィルム原版としては、長さ及び幅が光透過性基材と同一のものを使用した。以上の作業に於いては、ASANUMA社製セーフライトガラスNo.3を装着した白熱灯(20W)の点灯下で行った。また、作製した試験片はアルミホイルで包装した。
[光拡散フィルムの作製]
本実施例に係る記録方法の概略を図5(a)に示す。前述の露光装置を用いて、感光層に光拡散フィルム原版を介してレーザー光を連続的に照射した。照射条件としては、光強度2.00mW/cm2とし、試験片を設置したサンプルホルダーを2.86mm/sの一定速度で搬送させながら150mm露光を行った。その後、光拡散フィルム原版を剥離し、加熱装置(ESPEC社製、商品名;SPH−201)に載置したガラス板上で、100℃、10分間の加熱条件で加熱した。
更に、UV照射装置(ウシオ電機(株)製、商品名;UVC−321AM1、高圧水銀灯)を用いて、4J/cm2の紫外線照射を行い、本実施例に係る光拡散フィルムを得た。以上の作業に於いては、ASANUMA社製セーフライトガラスNo.3を装着した白熱灯(20W)の点灯下で行った。また、作製した試験片はアルミホイルで包装した。
(比較例1)
[試験片の作製]
本比較例に於いては、長さ6cm、幅6cm、厚さ135μmの光拡散フィルム原版を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて、本比較例に係る試験片を作製した。
[光拡散フィルムの作製]
本比較例に係る記録方法の概略を図5(b)に示す。前述の露光装置を用いて、感光層に光拡散フィルム原版を介してレーザー光を照射した。このとき、レーザー光の照射は、光拡散フィルム原版を感光層に密着させて行った。照射条件としては、光強度2.00mW/cm2とし、試験片を設置したサンプルホルダーを固定した状態で17.5s露光を行った。更に、光拡散フィルム原版を感光層に密着した状態で試験片のみを50mmずらし、再び露光を繰り返し行うことで、150mmサンプルを作製した。その後、光拡散フィルム原版を剥離し、実施例1と同様にして加熱及び紫外線の照射を行った。これにより、本比較例に係る光拡散フィルムを得た。
(比較例2)
[試験片の作製]
本比較例に於いては、前記比較例1と同様の方法にて、本比較例に係る試験片を作製した。
[光拡散フィルムの作製]
本比較例に係る記録方法の概略を図5(c)に示す。同図に示すように、本比較例に於いては、光拡散フィルム原版を感光層に密着させずに、10mm離間させて露光を行った。また、光拡散フィルム原版としては、前記比較例1と同様のものを用いた。それ以外は、前記実施例1と同様にしてレーザー光の照射、加熱及び紫外線照射を行い、これにより、本比較例に係る光拡散フィルムを得た。
(感光層の厚さの測定)
各実施例及び比較例の試験片に於ける感光層の厚みは、ミツトヨ製マイクロゲージ式厚み計を用いて測定した。より詳細には、感光層が形成された光透過性基材についてその総厚を測定し、測定値から光透過性基材の厚みを差し引くことで感光層の厚さを算出した。
(ヘイズ値の測定)
各実施例及び比較例の試験片についてヘイズ値を測定した。ヘイズ値の測定は、JIS−K7136のへイズ(曇度)に準じ、村上色彩技術研究所社製へイズメーターHM150(商品名)を用いて行った。結果を下記表1に示す。
(光拡散情報の継ぎ目の有無)
各実施例及び比較例の試験片に於ける光拡散特性の継ぎ目の有無を目視にて判定した。結果を下記表1に示す。
(評価)
前記表1から明らかな通り、実施例1の試験片に於いてはヘイズ値が51であり、かつ光拡散情報の継ぎ目も視認されなかった。その一方、比較例1の試験片に於いてはヘイズ値が52であったが、光拡散情報の継ぎ目が視認された。また、比較例2の試験片に於いては光拡散情報の継ぎ目は視認されないものの、ヘイズ値が10と低い結果になった。