JP2007271409A - 土壌中のウラン及び/またはトリウム分析方法 - Google Patents

土壌中のウラン及び/またはトリウム分析方法 Download PDF

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憲一 上村
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Abstract

【課題】予め土壌主成分とウラン及び/またはトリウムを分離する方法,並びに,ICP質量分析法により微量のウラン及び/またはトリウムを精度良く定量する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ウラン及び/またはトリウムを少なくとも含む土壌に硝酸,塩酸及び過酸化水素水を加えて反応が終了するまで放置し,
次いでフッ化水素酸を添加し,土壌主成分である珪酸を加熱溶解及び乾固操作により揮発除去し,
硝酸を加えて再度加熱乾固することにより,前処理で生成する一部のトリウムのフッ化物を分解し,
次工程の硝酸液性における陰イオン交換樹脂にウラン及び/またはトリウムを吸着させ,
さらに硝酸を添加することにより珪酸以外の土壌主成分を分離除去した後,測定手法にICP質量分析法を適用するウラン及び/またはトリウムの分析方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は,土壌中の微量のウラン及び/またはトリウムを簡便に,また,土壌主成分を分離除去して,ICP質量分析法により精度良く定量するための方法に関する。
土壌は水,大気とともに環境の重要な構成要素として人間をはじめとする生物の生存の基盤であり物質循環の要として重要な役割を担っており,土壌環境を保全するには,関係法令の遵守などにより土壌汚染の未然防止に努めることが必要である。
しかしながら,土壌は水,大気と比べてその組成は複雑で有害物質に対する反応も多様であり,一旦汚染されるとその影響が長期にわたり持続する蓄積性の汚染となるため,汚染原因となる重金属などがどのような種類で,またどの程度の濃度で含有しているかを調査することは,発生源の探知の重要なパラメータとなる。
これに対応して,土壌地盤の評価指標の一つでもあるα線,γ線及びβ線の線量率を把握する上で放射性元素が深く関っているため,土壌に含まれるウラン及び/またはトリウムを精度良く定量する分析法が必要とされている。
ウラン及びトリウムの定量方法としては,日本規格協会により確立された方法が知られているが,微量のウラン及びトリウムには適用できない。また,同時定量ができず,対象も当該定量成分を含有している鉱石の試料に限られている。更に定量装置としては,微量元素分析の主力であるICP質量分析法を利用して定量されていると考えられるが,開示がなされていないのが現状である。
また,特開平07-301610号(出願人:ウエスチングハウス・エレクトリック・コーポレイション)(特許文献1)には,高感度即発ガンマ線中性子放射化分析方法により土壌中の不純物元素としてウランやトリウムなどを定量しているが,全く分析方法が異なる。
特開平07-301610号(出願人:ウエスチングハウス・エレクトリック・コーポレイション)
本発明は,土壌に含まれる微量のウラン及び/またはトリウムを定量することができる微量元素分析の主力手法であるICP質量分析法を適用するものである。
しかしながら,測定溶液中に土壌主成分が共存するとスペクトル干渉や質量差別効果などの影響で定量精度の低下を招くおそれがある。
そこで,予め土壌主成分とウラン及び/またはトリウムを分離する方法,並びに,ICP質量分析法により微量のウラン及び/またはトリウムを精度良く定量する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため以下の発明を成した。
(1)ウラン及び/またはトリウムを少なくとも含む土壌に硝酸,塩酸及び過酸化水素水を加えて反応が終了するまで放置し,
次いでフッ化水素酸を添加し,土壌主成分である珪酸を加熱溶解及び乾固操作により揮発除去し,
硝酸を加えて再度加熱乾固することにより,前処理で生成する一部のトリウムのフッ化物を分解し,
次工程の硝酸液性における陰イオン交換樹脂にウラン及び/またはトリウムを吸着させ,
さらに硝酸を添加することにより珪酸以外の土壌主成分を分離除去した後,測定手法にICP質量分析法を適用する土壌中のウラン及び/またはトリウムの分析方法。
(2)上記(1)の硝酸液性における陰イオン交換樹脂に吸着したウラン及び/またはトリウムに対して,
フッ化水素酸−硝酸混合液を用いて流出させる土壌中のウラン及び/またはトリウムの分析方法。
上記の発明から以下の効果を有する。
(1)土壌中のウラン及び/またはトリウムを簡便な方法により,精度良く定量できる。
(2)特に,前処理工程により生成する一部のトリウムのフッ化物を分解することにより,硝酸液性における陰イオン交換樹脂に吸着できる。
以下,本発明について,詳細に説明する。
本発明の対象となる土壌は,少なくともウラン及び/またはトリウムが
0.001ppm(質量分率)から10ppm(質量分率)程度含有している。また,その他の主成分としては,珪酸,アルミニウム,鉄等である。
これらの土壌は,特定の工場あるいは事業所に面する建設造成地で採取されたものである。
土壌の前処理において,硝酸,塩酸及び過酸化水素水を加えて反応が終了するまで放置する。これは,土壌中の金属成分並びに微量の有機物を予め酸化し,後工程において浸出容易とするためである。
室温で放置する時間は,10分程度である。
上記処理完了後,前記処理土壌にフッ化水素酸を添加して加熱溶解及び乾固操作を行うことにより,主成分である珪酸を揮発除去する。
フッ化水素酸の添加量は,5mLから10mLである。
この操作により,土壌に含まれる珪酸としては,60%(質量分率)程度あったものが,1ppm(質量分率)以下まで減少する。
上記処理完了後,再び硝酸を5mL添加し,加熱乾固操作を2回繰返す。
該処理により,前処理工程において生成するトリウムのフッ化物を分解する。
トリウムのフッ化物は,3.0ppm(質量分率)から4.0ppm(質量分率)有ったものが,0.001ppm(質量分率)以下と減少する。
上記処理完了後,処理後の土壌を硝酸に溶解し,陰イオン交換樹脂にウラ
ン及び/またはトリウムを吸着させる。
この操作により,鉄やアルミニウム等とウラン及び/またはトリウムを簡便に分離することができる。
陰イオン交換樹脂は,[MCI GEL CA08P(75〜150μ)(三菱化成製)]を使用した。
上記処理により,鉄やアルミニウムは,5%(質量分率)から20%(質量分率)程度含まれていたものが,1ppm(質量分率)以下まで低減する。
さらに,珪酸以外の土壌主成分である鉄やアルミニウム等は,硝酸を陰イオン交換樹脂に添加することにより当該樹脂から分離除去した。
この場合の硝酸の添加量は,20mLである。
また,当該樹脂に吸着したウラン及び/またはトリウムはフッ化水素酸−硝酸混合液を用いることにより流出することを確認した。
上記の混合液は,1Mフッ化水素酸と0.1M硝酸である。
この場合のウラン及び/またはトリウムを流出するための1Mフッ化水素酸−0.1M硝酸の添加量は,30mLである。
上記の土壌主成分から分離して得られたウラン及び/またはトリウムの流出液をICP質量分析法により,土壌に含まれる当該元素の濃度を求める。
そして,微量に含まれる当該元素の定量を精度良く行うことができ,土壌のみならず岩石など多岐に亘る試料にも有用である。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。図1は実施例においてウラン及び/またはトリウムを定量分析する手順を示す図である。この実施例では以下の試薬を用いた。
(1)水:超純水製造装置(ミリQ Labo)による超純水を用いた。
(2)硝酸,塩酸及び過酸化水素水:和光純薬工業製電子工業用を用いた。
(3)フッ化水素酸:森田化学工業製半導体用を用いた。
(4)標準ウラン溶液(0.1μg/mL):八酸化三ウラン(純度99.9%以上)0.1179gを硝酸(1+1)20mLで溶解し,水を用いて全量を100mLとしたものを適宜希釈して用いた。
(5)標準トリウム溶液(0.1μg/mL):硝酸トリウムニ水和物0.238gを硝酸(1+1)20mLで溶解し,水を用いて全量を100mLとしたものを適宜希釈して用いた。
また,分析器具及び装置として以下のものを使用した。
(1)イオン交換樹脂カラム:陰イオン交換樹脂を3MのNaOHと3MのHClとを用いて活性化した後,R-Cl型とし,水で洗浄してほぼ中性としたものを使用した。この樹脂5mLをカラム(8mmΦ×20mmL)に気泡が入らないように流し込んだ。この樹脂に1Mフッ化水素酸-0.1M硝酸,水及び7M硝酸をそれぞれ20mLずつ流して使用した。
(2)ICP質量分析装置:SIIナノテクノロジー社製SPQ9000型を使用した。
まず,容量100mLのテフロン(登録商標)ビーカに,0.10gの土壌をはかり採り,硝酸10mL,塩酸5mL及び過酸化水素水1mLを加えて反応が終了するまで放置する。さらにフッ化水素酸5mLを添加して加熱溶解及び乾固する。
また,加熱乾固した試料に硝酸(1+1)10mLを加えて,加熱溶解及び乾固を行う。この操作を繰返す。なお,この加熱乾固は,前処理操作において生成するトリウムのフッ化物を分解するために行う。
加熱乾固した試料に硝酸(1+1)10mLを加えて加熱溶解させ放冷した後,陰イオン交換樹脂に流通させるとともに,陰イオン交換樹脂に7M硝酸を20mL流通させた。さらに,陰イオン交換樹脂に1Mフッ化水素酸-0.1M硝酸30mLを流通させ,この流出液をテフロンビーカに取り,この溶液を加熱して固形分を乾燥固化した。なお,この加熱乾固は,測定のための酸濃度を調整するための操作である。
次いで,加熱乾固した試料に硝酸(1+1)5mLを加えて,この試料を加熱溶解した。この試料を放冷した後,20〜100mLの水を加えて所定の体積とし(定容),これを測定溶液とした。この測定溶液中のウラン及びトリウム濃度を,上記ICP質量分析装置を用いて測定した。このICP質量分析装置の測定条件は以下の通りである。
高周波出力 : 1.4kW
プラズマガス流量 : 16.0L/min
補助ガス流量 : 1.0L/min
キャリアガス流量 : 1.0L/min
チャンバーガス流量 : 100Pa
測光位置 : 20mm
質量数 : 232Th及び238U
上記ICP質量分析法による岩石標準試料(JB-1a)中のウラン及びトリウムの定量値は1.5ppm(質量分率)及び8.7
ppm(質量分率)であり,
認証値の1.5 ppm(質量分率)及び9.0
ppm(質量分率)とよく一致しており,極めて正確な結果を得ることができた。
本発明の分析にかかる一態様を示す。

Claims (3)

  1. ウラン及び/またはトリウムを少なくとも含む土壌に硝酸,塩酸及び過酸化水素水を加えて反応が終了するまで放置し,
    次いでフッ化水素酸を添加し,土壌主成分である珪酸を加熱溶解及び乾固操作により揮発除去し,
    硝酸を加えて再度加熱乾固することにより,前処理で生成する一部のトリウムのフッ化物を分解し,
    次工程の硝酸液性における陰イオン交換樹脂にウラン及び/またはトリウムを吸着させ,
    さらに硝酸を添加することにより珪酸以外の土壌主成分を分離除去した後,測定手法にICP質量分析法を適用すること
    を特徴とするウラン及び/またはトリウムの分析方法。
  2. 硝酸液性における陰イオン交換樹脂に吸着したウラン及び/またはトリウムに対して,
    フッ化水素酸−硝酸混合液を用いて流出させること
    を特徴とする請求項1記載のウラン及び/またはトリウムの分析方法。
  3. 請求項1〜2の土壌は,人造石・粘土鉱物や非晶質物質が混合した岩石であることを特徴とするウラン及び/またはトリウムの分析方法。

















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