以下、本発明の雰囲気熱処理炉の実施の形態について説明する。
<第一実施形態>
まず、本実施形態の雰囲気熱処理炉が用いられている熱処理設備の構成について説明する。図1に、本実施形態の雰囲気熱処理炉が用いられている熱処理設備の概略図を示す。なお、説明の便宜上、雰囲気熱処理炉1の第一燃焼ケース3U、第二燃焼ケース3D、熱処理用ヒータ24L、24Rは簡略化して示す。
図1に示すように、熱処理設備9は、雰囲気熱処理炉1とバグフィルタ90とブロワ91と煙突92とを備えている。これらの機器は、排気ガス流路Lにより接続されている。排気ガス流路Lは、分岐第一流路L1と分岐第二流路L2と統合流路L3とを備えている。分岐第一流路L1の下流端および分岐第二流路L2の下流端は、統合流路L3の上流端に、分岐接続されている。
分岐第一流路L1の上流端は、後述する第一燃焼ケース3Uの炉外側連通口33Uに接続されている。分岐第一流路L1には、冷却用空気第一流路AL1が分岐接続されている。当該分岐接続点の下流側には、バルブ(電磁弁、他のバルブも同様)V1Aが配置されている。また、冷却用空気第一流路AL1には、バルブV1Bが配置されている。
同様に、分岐第二流路L2の上流端は、後述する第二燃焼ケース3Dの炉外側連通口33Dに接続されている。分岐第二流路L2には、冷却用空気第二流路AL2が分岐接続されている。当該分岐接続点の下流側には、バルブV2Aが配置されている。また、冷却用空気第二流路AL2には、バルブV2Bが配置されている。
次に、本実施形態の雰囲気熱処理炉の構成について説明する。本実施形態の雰囲気熱処理炉1は、炉本体2と第一燃焼ケース3Uと第二燃焼ケース3Dとを備えている。炉本体2は、炉殻20と断熱材21と熱処理用ヒータ24L、24Rとを備えている。
炉殻20は、鋼板製であって、直方体箱状を呈している。断熱材21は、耐火煉瓦製であって、肉厚の厚い直方体箱状を呈している。断熱材21は、炉殻20の内側に収容、配置されている。断熱材21の内側には熱処理室22が区画されている。熱処理室22は直方体状を呈している。熱処理室22の下面(後述する第二燃焼ケース3Dの上面)には、テーブル23が配置されている。テーブル23は、脚付きの矩形板状を呈している。テーブル23の上面には、被処理物Wが搭載されている。被処理物Wは電池材料である。
熱処理用ヒータ24L、24Rは、図示しないヒータ本体と保護管とを備えている。ヒータ本体は、保護管内に収容、配置されている。熱処理用ヒータ24L、24Rは、熱処理室22内におけるテーブル23を挟んだ短手方向両側を、上下方向に貫通するように配策されている。熱処理用ヒータ24L、24Rについては、後で詳しく説明する。
第一燃焼ケース3Uは、熱処理室22の上方に配置されている。第一燃焼ケース3Uは、ケース本体30Uと燃焼用ヒータ36Uとを備えている。ケース本体30Uは、ステンレス製であって、矩形箱状を呈している。ケース本体30Uの内部には、燃焼室31Uが区画されている。また、ケース本体30Uの下面は、熱処理室22上部に表出している。ケース本体30Uの下面には、炉内側連通口32Uが開設されている。炉内側連通口32Uを介して、熱処理室22と燃焼室31Uとは、繋がっている。また、ケース本体30Uの下壁を介して、熱処理室22と燃焼室31Uとは、熱交換可能である。一方、ケース本体30Uの上面には、炉外側連通口33Uが開設されている。前述したように、炉外側連通口33Uは、分岐第一流路L1の上流端に接続されている。
燃焼用ヒータ36Uは、図示しないヒータ本体と保護管とを備えている。ヒータ本体は、保護管内に収容、配置されている。燃焼用ヒータ36Uは、燃焼室31U内を通るように配策されている。
ケース本体30U上壁には、燃焼用空気第一流路OL1の下流端および窒素ガス第一流路NL1の下流端が、各々接続されている。燃焼用空気第一流路OL1の下流端は、第一燃焼ケース3Uの酸素供給口34Uに相当する。並びに、窒素ガス第一流路NL1の下流端は、第一燃焼ケース3Uの雰囲気ガス供給口35Uに相当する。ここで、酸素供給口34Uは、炉内側連通口32Uに近接して配置されている。また、雰囲気ガス供給口35Uは、炉外側連通口33Uに近接して配置されている。つまり、これら四つの開口は、炉内から炉外に向かって、炉内側連通口32U、酸素供給口34U、雰囲気ガス供給口35U、炉外側連通口33Uの順に、配置されている。
燃焼用空気(つまり酸素)を酸素供給口34Uに導入可能な燃焼用空気第一流路OL1には、バルブV1Cが配置されている。並びに、窒素ガスは、窒素ガス第一流路NL1を介して、雰囲気ガス供給口35Uから燃焼室31Uに供給される。窒素ガス第一流路NL1には、バルブV1Dが配置されている。
第二燃焼ケース3Dは、第一燃焼ケース3Uと上下方向に対向して、熱処理室22の下方に配置されている。第二燃焼ケース3Dは、ケース本体30Dと燃焼用ヒータ36Dとを備えている。燃焼用ヒータ36Dは、本発明の加熱装置に含まれる。ケース本体30Dは、ステンレス製であって、矩形箱状を呈している。ケース本体30Dの内部には、燃焼室31Dが区画されている。また、ケース本体30Dの上面は、熱処理室22下部に表出している。ケース本体30Dの上面には、炉内側連通口32Dが開設されている。炉内側連通口32Dを介して、熱処理室22と燃焼室31Dとは、繋がっている。また、ケース本体30Dの上壁を介して、熱処理室22と燃焼室31Dとは、熱交換可能である。一方、ケース本体30Dの下面には、炉外側連通口33Dが開設されている。前述したように、炉外側連通口33Dは、分岐第二流路L2の上流端に接続されている。
燃焼用ヒータ36Dは、図示しないヒータ本体と保護管とを備えている。ヒータ本体は、保護管内に収容、配置されている。燃焼用ヒータ36Dは、燃焼室31D内を通るように配策されている。
ケース本体30D下壁には、燃焼用空気第二流路OL2の下流端および窒素ガス第二流路NL2の下流端が、各々接続されている。燃焼用空気第二流路OL2の下流端は、第二燃焼ケース3Dの酸素供給口34Dに相当する。並びに、窒素ガス第二流路NL2の下流端は、第二燃焼ケース3Dの雰囲気ガス供給口35Dに相当する。ここで、酸素供給口34Dは、炉内側連通口32Dに近接して配置されている。また、雰囲気ガス供給口35Dは、炉外側連通口33Dに近接して配置されている。つまり、これら四つの開口は、炉内から炉外に向かって、炉内側連通口32D、酸素供給口34D、雰囲気ガス供給口35D、炉外側連通口33Dの順に、配置されている。
燃焼用空気(つまり酸素)は、燃焼用空気第二流路OL2を介して、酸素供給口34Dから燃焼室31Dに供給される。燃焼用空気第二流路OL2には、バルブV2Cが配置されている。並びに、窒素ガスは、窒素ガス第二流路NL2を介して、雰囲気ガス供給口35Dから燃焼室31Dに供給される。窒素ガス第二流路NL2には、バルブV2Dが配置されている。
次に、本実施形態の雰囲気熱処理炉の燃焼ケースの構成について説明する。図2に、本実施形態の雰囲気熱処理炉の熱処理室付近の透過斜視図を示す。なお、説明の便宜上、熱処理用ヒータ24L、24R(前出図1参照)は、省略して示す。また、熱処理室内に表出する部位については、ハッチングを施す。
図2に示すように、第一燃焼ケース3Uのケース本体30U上壁には、燃焼用ヒータ36Uの保護管360Uが、U字状に貫通している。燃焼用ヒータ36Uは、熱処理室22の長手方向に沿って、合計七本配置されている。ケース本体30Uの上面には、燃焼用空気第一流路OL1(つまり前出図1の酸素供給口34U)と窒素ガス第一流路NL1(つまり前出図1の雰囲気ガス供給口35U)とが、略対角位置に配置されている。また、ケース本体30Uの上下面には、炉外側連通口33U(上面)と炉内側連通口32U(下面)とが、略対角位置に配置されている。
第二燃焼ケース3Dのケース本体30D下壁には、燃焼用ヒータ36Dの保護管360Dが、U字状に貫通している。燃焼用ヒータ36Dは、熱処理室22の長手方向に沿って、合計七本配置されている。ケース本体30Dの下面には、燃焼用空気第二流路OL2(つまり前出図1の酸素供給口34D)と窒素ガス第二流路NL2(つまり前出図1の雰囲気ガス供給口35D)とが、略対角位置に配置されている。また、ケース本体30Dの上下面には、炉外側連通口33D(下面)と炉内側連通口32D(上面)とが、略対角位置に配置されている。
図3に、第二燃焼ケースの上下方向断面図を示す。なお、説明の便宜上、ケース本体30Dの上壁に配置されている炉内側連通口32Dは、点線で示す。また、前出図2に示すように、第一燃焼ケース3Uの構造と第二燃焼ケース3Dの構造とは同様である(第一燃焼ケース3Uを180°回転配置すると第二燃焼ケース3Dになる)。したがって、ここでは第二燃焼ケース3Dの内部構造についてのみ説明し、第一燃焼ケース3Uの内部構造についての説明を兼ねるものとする。
図3に示すように、第二燃焼ケース3Dの内部には、ステンレス製の仕切板37Dが立設されている。仕切板37Dは、ケース本体30Dの短手方向と略平行に延在している。仕切板37Dは、ケース本体30Dの長手方向に、所定間隔ずつ離間して、合計六枚、互い違いになるように配置されている。これら六枚の仕切板37Dにより、ケース本体30D内部には、ジグザグ状に延在する燃焼室31Dが形成されている。前述したように、燃焼室31Dの一端には、炉内側連通口32Dが配置されている。炉内側連通口32Dの内側には、酸素供給口34Dが並置されている。燃焼室31Dの他端には、炉外側連通口33Dが配置されている。炉外側連通口33Dの内側には、雰囲気ガス供給口35Dが並置されている。燃焼室31Dの合計七つの直線部310Dには、各々、燃焼用ヒータ36Dの保護管360Dが表出している。
次に、本実施形態の雰囲気熱処理炉の熱処理用ヒータの構成について説明する。図4に、本実施形態の雰囲気熱処理炉の熱処理室付近の透過斜視図を示す。なお、説明の便宜上、第一燃焼ケース3U、第二燃焼ケース3D(前出図1参照)は、省略して示す。また、熱処理室内に表出する部位については、ハッチングを施す。
図4に示すように、熱処理室22のテーブル23および被処理物Wを挟んだ短手方向両側には、熱処理用ヒータ24Lの保護管240Lと熱処理用ヒータ24Rの保護管240Rとが、対向して配置されている。保護管240L、240Rは、上下方向に延在している。保護管240L、240Rは、熱処理室22の長手方向に沿って、各々、十本ずつ配置されている。
次に、本実施形態の雰囲気熱処理炉が用いられている熱処理設備の被処理物加熱時の動きについて説明する。図5に、本実施形態の雰囲気熱処理炉が用いられている熱処理設備の加熱時における概略図を示す(図1と対応)。図5中、開通している流路を実線で、遮断されている流路を点線で、それぞれ示す。
図5に示すように、加熱時においては、バルブV1A、V1B、V1C、V2Dが閉じている。このため、分岐第一流路L1、冷却用空気第一流路AL1、燃焼用空気第一流路OL1、窒素ガス第二流路NL2が遮断されている。一方、バルブV2A、V2B、V2C、V1Dが開いている。このため、分岐第二流路L2、冷却用空気第二流路AL2、燃焼用空気第二流路OL2、窒素ガス第一流路NL1が開通している。
また、加熱時においては、熱処理用ヒータ24L、24Rはオンになっている。並びに、第二燃焼ケース3Dの燃焼用ヒータ36Dもオンになっている。一方、第一燃焼ケース3Uの燃焼用ヒータ36Uはオフになっている。
まず、窒素ガスの流れについて説明する。窒素ガスは、窒素ガス第一流路NL1を介して、第一燃焼ケース3Uの雰囲気ガス供給口35Uから、燃焼室31Uに流入する。前出図3を参照して判るように(図3は第二燃焼ケース3D)、雰囲気ガス供給口35U(35D)は炉外側連通口33U(33D)に近接して配置されている。一方、窒素ガスの出口となる炉内側連通口32U(32D)は、燃焼室31U(31D)において、炉外側連通口33U(33D)が配置されていない方の端部に対向、配置されている。このため、窒素ガスは、燃焼室31U(31D)の略全長を、ジグザグ移動することになる。
図5に戻って、燃焼室31Uは、ケース本体30Uの下壁を隔てて、熱処理室22に近接している。このため、窒素ガスは、ケース本体30Uの下壁から伝わる熱処理室22の熱により加熱されながら、燃焼室31U内を移動する。加熱された窒素ガスは、炉内側連通口32Uから、熱処理室22内に流れ込む。そして、熱処理室22内が窒素ガス雰囲気となるように、熱処理室22内に充填される。
次に、被処理物Wの熱処理の様子について説明する。被処理物Wは、窒素ガス雰囲気下で、熱処理用ヒータ24L、24Rにより、加熱される。加熱温度は、900℃〜1000℃程度である。加熱に伴い、熱処理室22には排気ガスが発生する。当該排気ガス中には、被処理物Wから気化したタール分が混入している。
次に、排気ガスの流れについて説明する。排気ガスは、第二燃焼ケース3Dの炉内側連通口32Dから、燃焼室31Dに流れ込む。一方、燃焼室31Dには、燃焼用空気第二流路OL2を介して、酸素供給口34Dから、燃焼用空気が流れ込む。このため、排気ガスは、燃焼用空気と混合される。前出図3に示すように、酸素供給口34Dは炉内側連通口32Dに近接して配置されている。一方、排気ガスの出口となる炉外側連通口33Dは、燃焼室31Dにおいて、炉内側連通口32Dが配置されていない方の端部に対向、配置されている。このため、燃焼用空気と混合された排気ガスは、燃焼室31Dの略全長を、ジグザグ移動することになる。
図5に戻って、燃焼室31Dは、ケース本体30Dの上壁を隔てて、熱処理室22に近接している。このため、燃焼用空気と混合された排気ガスは、ケース本体30Dの上壁から伝わる熱処理室22の熱により加熱されながら、燃焼室31D内を移動する。加えて、前述したように、燃焼用ヒータ36Dはオンとなっている。このため、燃焼用空気と混合された排気ガスは、上記熱処理室22の熱に加え、燃焼用ヒータ36Dの熱により加熱されながら、燃焼室31D内を移動する。燃焼用空気に含まれる酸素、および熱処理室22、燃焼用ヒータ36Dの熱により、排気ガス中の可燃性成分であるタール分は燃焼する。燃焼処理後の排気ガスは、炉外側連通口33Dから分岐第二流路L2に流れ込む。そして、排気ガスは、冷却用空気第二流路AL2を介して導入される冷却用空気と混合される。冷却用空気混合後の排気ガスは、統合流路L3を介して、バグフィルタ90に流れ込む。バグフィルタ90において、排気ガス中の塵埃(燃焼後の灰分など)が分離、除去される。塵埃除去後の排気ガスは、排気ガス吸引用のブロワ91を介して、煙突92から外部に放出される。
以上説明したように、加熱時においては、窒素ガスは、窒素ガス第一流路NL1→雰囲気ガス供給口35U(第一燃焼ケース3U)→燃焼室31U→炉内側連通口32Uを介して、熱処理室22に流入する。一方、熱処理室22にて発生する排気ガスは、炉内側連通口32D(第二燃焼ケース3D)→燃焼室31D(ここで燃焼用空気第二流路OL2→酸素供給口34Dを介して流れ込む燃焼用空気と混合される)→炉外側連通口33D→分岐第二流路L2(ここで冷却用空気第二流路AL2を介して流れ込む冷却用空気と混合される)→統合流路L3(バグフィルタ90、ブロワ91、煙突92)を介して、外部に放出される。
次に、本実施形態の雰囲気熱処理炉が用いられている熱処理設備の被処理物冷却時の動きについて説明する。図6に、本実施形態の雰囲気熱処理炉が用いられている熱処理設備の冷却時における概略図を示す(図1と対応)。図6中、開通している流路を実線で、遮断されている流路を点線で、それぞれ示す。
図6に示すように、冷却時においては、バルブV1A、V1B、V2Dが開いている。このため、分岐第一流路L1、冷却用空気第一流路AL1、窒素ガス第二流路NL2が開通している。一方、バルブV2A、V2B、V2C、V1C、V1Dが閉じている。このため、分岐第二流路L2、冷却用空気第二流路AL2、燃焼用空気第一流路OL1、燃焼用空気第二流路OL2、窒素ガス第一流路NL1が遮断されている。
また、冷却時においては、熱処理用ヒータ24L、24Rはオフになっている。並びに、第一燃焼ケース3Uの燃焼用ヒータ36U、第二燃焼ケース3Dの燃焼用ヒータ36Dもオフになっている。
まず、窒素ガスの流れについて説明する。窒素ガスは、窒素ガス第二流路NL2を介して、第二燃焼ケース3Dの雰囲気ガス供給口35Dから、燃焼室31Dに流入する。前出図3に示すように、雰囲気ガス供給口35Dは炉外側連通口33Dに近接して配置されている。一方、窒素ガスの出口となる炉内側連通口32Dは、燃焼室31Dにおいて、炉外側連通口33Dが配置されていない方の端部に対向、配置されている。このため、窒素ガスは、燃焼室31Dの略全長を、ジグザグ移動することになる。
図6に戻って、燃焼室31Dは、ケース本体30Dの上壁を隔てて、熱処理室22に近接している。このため、窒素ガスは、ケース本体30Dの上壁から伝わる熱処理室22の熱により加熱されながら、燃焼室31D内を移動する。加熱された窒素ガスは、炉内側連通口32Dから、熱処理室22内に流れ込む。そして、熱処理室22内を上昇、拡散する。
次に、被処理物Wの冷却時の様子について説明する。熱処理用ヒータ24L、24Rによる加熱を停止しても、被処理物Wは、熱処理室22内の余熱により加熱されている。このため、熱処理室22には排気ガスが発生する。なお、被処理物Wのタール分は、前記加熱時において、脱気済みである。したがって、冷却時には排気ガス中にタール分は混入しない。
次に、排気ガスの流れについて説明する。排気ガスは、第一燃焼ケース3Uの炉内側連通口32Uから、燃焼室31Uに流れ込む。前出図3を参照して判るように(図3は第二燃焼ケース3D)、排気ガスの出口となる炉外側連通口33U(33D)は、燃焼室31U(31D)において、炉内側連通口32U(32D)が配置されていない方の端部に対向、配置されている。このため、排気ガスは、燃焼室31U(31D)の略全長を、ジグザグ移動することになる。
図6に戻って、燃焼室31Uは、ケース本体30Uの下壁を隔てて、熱処理室22に近接している。このため、排気ガスは、ケース本体30Uの下壁から伝わる熱処理室22の熱により加熱されながら、燃焼室31U内を移動する。燃焼室31Uを通過した排気ガスは、炉外側連通口33Uから分岐第一流路L1に流れ込む。そして、排気ガスは、冷却用空気第一流路AL1を介して導入される冷却用空気と混合される。冷却用空気混合後の排気ガスは、統合流路L3を介して、バグフィルタ90に流れ込む。バグフィルタ90において、排気ガス中の塵埃が分離、除去される。塵埃除去後の排気ガスは、排気ガス吸引用のブロワ91を介して、煙突92から外部に放出される。
以上説明したように、冷却時においては、窒素ガスは、窒素ガス第二流路NL2→雰囲気ガス供給口35D(第二燃焼ケース3D)→燃焼室31D→炉内側連通口32Dを介して、熱処理室22に流入する。一方、熱処理室22にて発生する排気ガスは、炉内側連通口32U(第一燃焼ケース3U)→燃焼室31U→炉外側連通口33U→分岐第一流路L1(ここで冷却用空気第一流路AL1を介して流れ込む冷却用空気と混合される)→統合流路L3(バグフィルタ90、ブロワ91、煙突92)を介して、外部に放出される。
次に、本実施形態の雰囲気熱処理炉の作用効果について説明する。本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、雰囲気熱処理炉1と別に、二次燃焼炉を設置する必要がない。また、二次燃焼炉用の燃料や燃焼用空気や冷却用空気を、排気ガス流路Lに取り込む必要がないので、熱処理設備9全体における排気ガスの流量が小さくなる。このため、熱処理設備9において雰囲気熱処理炉1の下流側に配置されている機器(例えば、バグフィルタ90やブロワ91など)の処理能力が小さくて済む。したがって、熱処理設備9の設置コストを削減することができる。また、二次燃焼炉が不要な分だけ、熱処理設備9の配管の配策経路が簡単になる。また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、炉本体2に第一燃焼ケース3U、第二燃焼ケース3Dを配置しただけなので、構造が簡単である。このため、既存の雰囲気熱処理炉にアドオンしやすい。つまり、本実施形態の雰囲気熱処理炉1は、汎用性が高い。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、従来、炉殻20から炉外に放熱されていた熱処理室22の熱を用いて、排気ガスが加熱される。このため、熱効率が高くなる。また、たとえ排気ガスの温度が低下しても、タール分は燃焼室31Dで燃焼されているので、排気ガス流路Lにタール分が付着するおそれが小さい。このため、タール分の付着に起因するダウンタイムの発生を抑制することができる。したがって、雰囲気熱処理炉1延いては熱処理設備9の稼働率が高くなる。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、炉内側連通口32Dに近接して酸素供給口34Dが配置されている(前出図3参照)。このため、燃焼室31Dにおけるタール分の燃焼区間が長くなる。したがって、より多くのタール分を燃焼させることができる。また、燃焼室31D自体も、ジグザグに形成されている。この点においても、タール分の燃焼区間が長くなる。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、加熱時と冷却時とで、窒素ガスの供給方向および排気ガスの排出方向が、切り替えられる。加熱時においては、窒素ガスは、第一燃焼ケース3Uの燃焼室31Uから熱処理室22に供給される。並びに、排気ガスは、熱処理室22から第二燃焼ケース3Dの燃焼室31Dに排出される。これに対して、冷却時においては、窒素ガスは、第二燃焼ケース3Dの燃焼室31Dから熱処理室22に供給される。並びに、排気ガスは、熱処理室22から第一燃焼ケース3Uの燃焼室31Uに排出される。このように、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、加熱時と冷却時とで、一対の燃焼ケース(第一燃焼ケース3U、第二燃焼ケース3D)を切り替えて使用することができる。具体的には、加熱時においては第一燃焼ケース3Uを窒素ガス予熱用かつ第二燃焼ケース3Dを排気ガス燃焼用として使用することができる。また、冷却時においては第二燃焼ケース3Dを熱処理室22と窒素ガスとの熱交換用、第一燃焼ケース3Uを熱処理室22と排気ガスとの熱交換用として使用することができる。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、加熱時は、熱処理室22からの伝熱により、第一燃焼ケース3Uにおいて窒素ガスを予熱することができる。窒素ガスは、予熱後、熱処理室22に流入するので、熱処理室22は熱を回収することができる。一方、排気ガスは、第二燃焼ケース3Dにおいて、燃焼用空気(酸素)と混合される。そして、熱処理室22からの伝熱および燃焼用ヒータ36Dの発熱を利用して、タール分が燃焼される。
これに対して、冷却時は、熱処理室22からの伝熱により、第二燃焼ケース3Dにおいて窒素ガスが加熱される。言い換えると、窒素ガスの加熱により、熱処理室22の熱が奪われる。一方、排気ガスは、第一燃焼ケース3Uにおいて、熱処理室22からの伝熱により加熱される。言い換えると、排気ガスの加熱により、熱処理室22の熱が奪われる。
このように、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、加熱時においては、熱処理室22からの伝熱を利用して、窒素ガスの予熱とタール分の燃焼処理とを行うことができる。また、冷却時においては、加熱時の残留熱を有する熱処理室22と、窒素ガスおよび排気ガスとが熱交換することにより、熱処理室22の冷却を促進することができる。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、炉外側連通口33U(33D)に近接して雰囲気ガス供給口35U(35D)が配置されている(前出図3参照)。このため、燃焼室31U(31D)における窒素ガスの予熱区間が長くなる。したがって、より高い温度まで、窒素ガスを予熱することができる。また、燃焼室31U(31D)自体も、ジグザグに形成されている。この点においても、窒素ガスの予熱区間が長くなる。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、第一燃焼ケース3Uは熱処理室22の上方に、第二燃焼ケース3Dは熱処理室22の下方に、それぞれ配置されている。加熱時において、窒素ガスは、上方の第一燃焼ケース3Uの燃焼室31Uから、熱処理室22に流入する。ここで、窒素ガスの温度は熱処理室22の上部の温度以下である。このため、窒素ガスは、熱処理室22内を下降、拡散しやすい。したがって、窒素ガスを熱処理室22に充填しやすい。
冷却時において、熱処理室22内の残留ガスは、第一燃焼ケース3Uの炉内側連通口32U→燃焼室31U→炉外側連通口33Uの流路を辿り、分岐第一流路L1に流入する。ここで、第一燃焼ケース3Uの炉内側連通口32Uは、熱処理室22の上方に開口している。つまり、熱処理室22の温度分布における高温領域に、炉内側連通口32Uが配置されている。このため、高温の残留ガスを、低温の残留ガスと混合する前に、優先的に炉外に排出することができる。したがって、より迅速に、加熱後の熱処理室22を冷却することができる。
また、冷却時において、窒素ガスは、下方の第二燃焼ケース3Dの燃焼室31Dから、熱処理室22に流入する。ここで、窒素ガスは、熱処理室22からの伝熱により加熱されるため、熱処理室22内を上昇しやすい。したがって、熱処理室22内の残留ガスを、第一燃焼ケース3Uの炉内側連通口32Uに追い込みやすい。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、第二燃焼ケース3Dに燃焼用ヒータ36Dが配置されている。このため、排気ガスを燃焼処理する際、熱処理室22からの伝熱に加えて、燃焼用ヒータ36Dから熱を加えることができる。したがって、さらに、タール分の燃焼を促進することができる。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、非酸化雰囲気(窒素ガス雰囲気)下で被処理物Wに熱処理が施される。従来、非酸化雰囲気を維持しなければならない熱処理室22に隣接して、燃焼処理(酸化処理)を行う燃焼室31Dを、敢えて配置するという思想は無かった。すなわち、前出特許文献1〜5に示すように、熱処理後の二次燃焼処理は、熱処理炉の外部で行っていた。
これに対して、本実施形態の雰囲気熱処理炉1は、加熱時における熱処理室22の下流側に燃焼室31Dを配置することで、熱処理室22の窒素ガス雰囲気の維持と、排気ガスの燃焼処理とを両立している。熱処理室22と燃焼室31Dとの間には圧力差があるので(加熱時は熱処理室22は正圧、燃焼室31Dは負圧)、燃焼用空気が熱処理室22に逆流するおそれはない。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、冷却時において、窒素ガスは、第二燃焼ケース3Dの燃焼室31Dで、熱処理室22と熱交換を行ってから、熱処理室22に流入する。このため、窒素ガスを熱処理室22に直接導入する場合と比較して、窒素ガス(低温)と熱処理室22の室温(高温)との温度差が小さくなる。したがって、ヒートショックにより、熱処理室22付近に配置された部材(例えば断熱材21、テーブル23、保護管240L、240Rなど)に不具合が生じるおそれが小さい。また、不具合が生じにくいため、これらの部材の寿命を長くすることができる。
<第二実施形態>
本実施形態の雰囲気熱処理炉と、第一実施形態の雰囲気熱処理炉との相違点は、第一燃焼ケース、第二燃焼ケースの構造のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
図7に、本実施形態の雰囲気熱処理炉の第二燃焼ケースの上下方向断面図を示す。なお、図3と対応する部位については同じ符号で示す。また、説明の便宜上、ケース本体30Dの上壁に配置されている炉内側連通口32Dは、点線で示す。また、第一燃焼ケースの構造と第二燃焼ケース3Dの構造とは同様である(第一燃焼ケースを180°回転配置すると第二燃焼ケース3Dになる)。したがって、ここでは第二燃焼ケース3Dの構造についてのみ説明し、第一燃焼ケースの構造についての説明を兼ねるものとする。
図7に示すように、第二燃焼ケース3Dは、長手方向中間部が幅広の六角形状を呈している。ケース本体30Dの内部には、燃焼室31Dが区画されている。燃焼室31Dの長手方向一端には炉内側連通口32Dが、他端には炉外側連通口33Dが、それぞれ配置されている。燃焼室31Dには、ステンレス製の四枚の仕切板38Dが立設されている。これら四枚の仕切板38Dにより、炉内側連通口32Dと炉外側連通口33Dとの間には、五つの分岐流路311Dが形成されている。
本実施形態の雰囲気熱処理炉は、第一実施形態と共通する部分については、第一実施形態の雰囲気熱処理炉と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の雰囲気熱処理炉によると、排気ガス、燃焼用空気、窒素ガスは、燃焼室31Dを通過する際、分岐流路311Dにより分流される。このため、炉内側連通口32Dと炉外側連通口33Dとの間の距離が短いにもかかわらず、充分に排気ガスを燃焼処理することができる。並びに、充分に窒素ガスを予熱することができる。また、燃焼室31Dの流路断面積が大きいため、通気抵抗が小さくなる。
<第三実施形態>
本実施形態の雰囲気熱処理炉と、第一実施形態の雰囲気熱処理炉との相違点は、燃焼ケースが一つしか配置されていない点(第一実施形態における第二燃焼ケースしか配置されていない点)である。また、燃焼ケースに、雰囲気ガス供給口、燃焼用ヒータが配置されていない点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
図8に、本実施形態の雰囲気熱処理炉が用いられている熱処理設備の概略図を示す。なお、図1と対応する部位については、同じ符号で示す。また、説明の便宜上、雰囲気熱処理炉1の燃焼ケース3、熱処理用ヒータ24L、24Rは簡略化して示す。
図8に示すように、雰囲気熱処理炉1には、単一の燃焼ケース3が配置されている。燃焼ケース3は、熱処理室22の下方に配置されている。燃焼ケース3の構成は、第一実施形態の第二燃焼ケース3D(前出図1〜図3参照)と略同様である(ただし、雰囲気ガス供給口35D、燃焼用ヒータ36Dは配置されていない)。
加熱時において、窒素ガスは、窒素ガス流路NLを介して、熱処理室22に直接流入する。熱処理室22においては、熱処理用ヒータ24L、24Rにより、被処理物Wが加熱される。熱処理室22で発生する排気ガスは、炉内側連通口32を介して、ケース本体30の燃焼室31に流入する。一方、燃焼室31には、燃焼用空気流路OLを介して、酸素供給口34から、燃焼用空気(つまり酸素)が流入する。このため、排気ガスは、燃焼用空気と混合される。混合後の排気ガスは、燃焼室31を通過する際、熱処理室22からの伝熱により、燃焼処理される。具体的には、排気ガス中の可燃性成分であるタール分が燃焼する。燃焼後の排気ガスは、炉外側連通口33から排気ガス流路Lに流れ込む。排気ガス流路Lにおいて、排気ガスは、冷却用空気流路ALを介して供給される冷却用空気と混合される。混合後の排気ガスは、バグフィルタ90、ブロワ91を介して、煙突92から外部に放出される。なお、冷却時においては、熱処理用ヒータ24L、24Rがオフになり、燃焼用空気の供給が遮断される(具体的にはバルブV2Cを閉じる)。窒素ガス、排気ガスの流れは、加熱時と同様である。
本実施形態の雰囲気熱処理炉1は、第一実施形態と共通する部分については、第一実施形態の雰囲気熱処理炉と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、単一の燃焼ケース3により、雰囲気熱処理炉1の下流側の機器(例えば、排気ガス流路L、バグフィルタ90)にタール分が付着するのを抑制することができる。また、雰囲気ガス供給口、燃焼用ヒータが配置されていない分、燃焼ケース3延いては雰囲気熱処理炉1の構造が簡単である。
<第四実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、冷却時において、排気ガスに燃焼処理を施す点である。したがって、ここでは、前出図6を用いながら、相違点についてのみ説明する。冷却時においては、前出図6(第一実施形態の雰囲気熱処理炉が用いられている熱処理設備の冷却時における概略図)中、バルブV1A、V1B、V1C、V2Dが開いている。このため、分岐第一流路L1、冷却用空気第一流路AL1、燃焼用空気第一流路OL1、窒素ガス第二流路NL2が開通している。一方、バルブV2A、V2B、V2C、V1Dが閉じている。このため、分岐第二流路L2、冷却用空気第二流路AL2、燃焼用空気第二流路OL2、窒素ガス第一流路NL1が遮断されている。
また、冷却時においては、熱処理用ヒータ24L、24Rはオフになっている。並びに、第二燃焼ケース3Dの燃焼用ヒータ36Dもオフになっている。一方、第一燃焼ケース3Uの燃焼用ヒータ36Uはオンになっている。本実施形態においては、燃焼用ヒータ36Uは、本発明の加熱装置に含まれる。
まず、窒素ガスの流れについて説明する。窒素ガスは、窒素ガス第二流路NL2を介して、第二燃焼ケース3Dの雰囲気ガス供給口35Dから、燃焼室31Dに流入する。前出図3に示すように、雰囲気ガス供給口35Dは炉外側連通口33Dに近接して配置されている。一方、窒素ガスの出口となる炉内側連通口32Dは、燃焼室31Dにおいて、炉外側連通口33Dが配置されていない方の端部に対向、配置されている。このため、窒素ガスは、燃焼室31Dの略全長を、ジグザグ移動することになる。
図6に戻って、燃焼室31Dは、ケース本体30Dの上壁を隔てて、熱処理室22に近接している。このため、窒素ガスは、ケース本体30Dの上壁から伝わる熱処理室22の熱により加熱されながら、燃焼室31D内を移動する。加熱された窒素ガスは、炉内側連通口32Dから、熱処理室22内に流れ込む。そして、熱処理室22内を上昇、拡散する。
次に、被処理物Wの冷却時の様子について説明する。熱処理用ヒータ24L、24Rによる加熱を停止しても、被処理物Wは、熱処理室22内の余熱により加熱されている。このため、熱処理室22には排気ガスが発生する。当該排気ガス中には、被処理物Wから気化したタール分が混入している。すなわち、本実施形態においては、加熱時のみならず、冷却時においても被処理物Wからタール分が発生している。
次に、排気ガスの流れについて説明する。排気ガスは、第一燃焼ケース3Uの炉内側連通口32Uから、燃焼室31Uに流れ込む。一方、燃焼室31Uには、燃焼用空気第一流路OL1を介して、酸素供給口34Uから、燃焼用空気が流れ込む。このため、排気ガスは、燃焼用空気と混合される。前出図3を参照して判るように(図3は第二燃焼ケース3D)、酸素供給口34U(34D)は炉内側連通口32U(32D)に近接して配置されている。一方、排気ガスの出口となる炉外側連通口33U(33D)は、燃焼室31U(31D)において、炉内側連通口32U(32D)が配置されていない方の端部に対向、配置されている。このため、燃焼用空気と混合された排気ガスは、燃焼室31U(31D)の略全長を、ジグザグ移動することになる。
図6に戻って、燃焼室31Uは、ケース本体30Uの下壁を隔てて、熱処理室22に近接している。このため、燃焼用空気と混合された排気ガスは、ケース本体30Uの下壁から伝わる熱処理室22の熱により加熱されながら、燃焼室31U内を移動する。加えて、前述したように、燃焼用ヒータ36Uはオンとなっている。このため、燃焼用空気と混合された排気ガスは、上記熱処理室22の熱に加え、燃焼用ヒータ36Uの熱により加熱されながら、燃焼室31U内を移動する。燃焼用空気に含まれる酸素、および熱処理室22、燃焼用ヒータ36Uの熱により、排気ガス中の可燃性成分であるタール分は燃焼する。燃焼処理後の排気ガスは、炉外側連通口33Uから分岐第一流路L1に流れ込む。そして、排気ガスは、冷却用空気第一流路AL1を介して導入される冷却用空気と混合される。冷却用空気混合後の排気ガスは、統合流路L3を介して、バグフィルタ90に流れ込む。バグフィルタ90において、排気ガス中の塵埃(燃焼後の灰分など)が分離、除去される。塵埃除去後の排気ガスは、排気ガス吸引用のブロワ91を介して、煙突92から外部に放出される。
以上説明したように、冷却時においては、窒素ガスは、窒素ガス第二流路NL2→雰囲気ガス供給口35D(第二燃焼ケース3D)→燃焼室31D→炉内側連通口32Dを介して、熱処理室22に流入する。一方、熱処理室22にて発生する排気ガスは、炉内側連通口32U(第一燃焼ケース3U)→燃焼室31U(ここで燃焼用空気第一流路OL1→酸素供給口34Uを介して流れ込む燃焼用空気と混合される)→炉外側連通口33U→分岐第一流路L1(ここで冷却用空気第一流路AL1を介して流れ込む冷却用空気と混合される)→統合流路L3(バグフィルタ90、ブロワ91、煙突92)を介して、外部に放出される。
本実施形態の雰囲気熱処理炉1は、第一実施形態と共通する部分については、第一実施形態の雰囲気熱処理炉と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、加熱終了後に被処理物Wにタール分が残っている場合であっても、冷却時に当該タール分を燃焼処理することができる。このため、さらに、排気ガス流路Lにタール分が付着するおそれが小さくなる。
また、本実施形態の雰囲気熱処理炉1によると、冷却時において、第一燃焼ケース3Uの燃焼用ヒータ36Uがオンになっている。このため、排気ガスを燃焼処理する際、熱処理室22からの伝熱に加えて、燃焼用ヒータ36Uから熱を加えることができる。したがって、さらに、タール分の燃焼を促進することができる。
<その他>
以上、本発明の雰囲気熱処理炉の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
例えば、雰囲気ガスの種類は特に限定しない。窒素ガスの他、アルゴン、水素ガス、アンモニアガスを用いてもよい。また、熱処理室22において酸化雰囲気下の熱処理(燃焼処理)を行ってもよい。この場合であっても、熱処理室22における不完全燃焼を、燃焼室31、31U、31Dにおける燃焼処理により、補うことができる。
また、熱処理室22における熱処理温度も特に限定しない。被処理物Wの物性に応じて適切な温度とすればよい。また、排気ガス、燃焼用空気、窒素ガスの流路となる配管、燃焼ケース3、3U、3Dの材質は特に限定しない。被処理物Wの熱処理温度、熱処理室22の雰囲気に応じて、適切な材質とすればよい。
また、上記実施形態においては、加熱用に熱処理用ヒータ24L、24R、燃焼用ヒータ36U、36Dを用いたが、例えば、配管内に熱ガスを流すことにより、熱処理用あるいは燃焼用の加熱を行ってもよい。また、燃焼用ヒータの代わりに、蓄熱体を配置してもよい。
また、燃焼室31、31U、31Dの形状、経路も特に限定しない。また、燃焼室31、31U、31D内部に、凹凸部や邪魔板(仕切板37D、38Dではない)を配置してもよい。こうすると、燃焼室内における排気ガス、燃焼用空気、窒素ガスの滞留時間が長くなる。また、伝熱面積を大きくすることができる。また、例えばケース本体30、30U、30Dを薄肉に形成することにより、熱処理室22からの伝熱を容易にしてもよい。また、ケース本体30、30U、30Dを熱伝達係数の高い材料で形成することにより、熱処理室22からの伝熱を容易にしてもよい。
また、被処理物Wは、電池材料の他、積層コンデンサなど他の電子部品材料であってもよい。また、電子部品材料に限らず、各種廃棄物などであってもよい。また、固定式のテーブル23の代わりに、可動式の台車を配置してもよい。
また、上記第一、第二、第四実施形態においては、冷却時に、第二燃焼ケース3Dから熱処理室22に窒素ガスを供給したが、冷却時に窒素ガスを供給しなくてもよい。また、上記第一実施形態においては、酸素供給口34U、および当該酸素供給口34Uに酸素を導入する燃焼用空気第一流路OL1をそれぞれ配置した。しかしながら、冷却時に排気ガスに燃焼処理を施さない場合は、酸素供給口34U、燃焼用空気第一流路OL1を配置しなくてもよい。こうすると、第一燃焼ケース3U、延いては雰囲気熱処理炉1、熱処理設備9の構造が、より簡単になる。
1:雰囲気熱処理炉、2:炉本体、20:炉殻、21:断熱材、22:熱処理室、23:テーブル、24L:熱処理用ヒータ、240L:保護管、24R:熱処理用ヒータ、240R:保護管。
3:燃焼ケース、30:ケース本体、31:燃焼室、32:炉内側連通口、33:炉外側連通口、34:酸素供給口。
3U:第一燃焼ケース、30U:ケース本体、31U:燃焼室、32U:炉内側連通口、33U:炉外側連通口、34U:酸素供給口、35U:雰囲気ガス供給口、36U:燃焼用ヒータ(加熱装置)、360U:保護管。
3D:第二燃焼ケース、30D:ケース本体、31D:燃焼室、310D:直線部、311D:分岐流路、32D:炉内側連通口、33D:炉外側連通口、34D:酸素供給口、35D:雰囲気ガス供給口、36D:燃焼用ヒータ(加熱装置)、360D:保護管、37D:仕切板、38D:仕切板。
9:熱処理設備、90:バグフィルタ、91:ブロワ、92:煙突。
AL:冷却用空気流路、NL:窒素ガス流路、OL:燃焼用空気流路。
AL1:冷却用空気第一流路、AL2:冷却用空気第二流路、L:排気ガス流路、L1:分岐第一流路、L2:分岐第二流路、L3:統合流路、NL1:窒素ガス第一流路、NL2:窒素ガス第二流路、OL1:燃焼用空気第一流路、OL2:燃焼用空気第二流路、V1A〜V1D:バルブ、V2A〜V2D:バルブ、W:被処理物。